JP2019158868A - 特性評価方法、装置およびプログラム - Google Patents

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Kaoru Koike
薫 小池
慶子 平川
Keiko Hirakawa
慶子 平川
曜吉 大野
Yokichi Ono
曜吉 大野
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Yoshimasa Kanawaku
佳雅 金涌
勝吾 中川
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勝吾 中川
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Abstract

【課題】生体試料に由来するFID信号取得にあたり高磁場を不要とする特性評価方法、装置およびプログラムを提供する。【解決手段】生体試料の特性を評価する方法であって、生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数を観測中心としてNMR装置を設定するステップと、設定されたNMR装置を用いて生体試料に由来するFID信号を取得するステップと、FID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出するステップと、を含む。これにより、FID信号取得に高磁場は不要となり、コスト低減が可能になる。例えば、永久磁石による磁場を用いることもできる。【選択図】図1

Description

本発明は、生体試料の特性を評価する特性評価方法、装置およびプログラムに関する。
血清等の体液や組織液は、高分子を含む複雑な混合物である。血清等の体液や組織液に対してNMRのパルスの減衰時間を測定し、時間周波数解析すれば血清等の体液や組織液の特性を評価できることが知られている。
特許文献1、2記載の方法は、属性の明らかな既知混合物試料のそれぞれのNMR測定によるFID信号を時間周波数解析し、多変量解析を行なって属性毎のデータ群に分離させて属性毎のスコアに基づく識別指標を設定している。また、被検混合物試料の合成変量に対するスコアを識別指標と比較することで、被検混合物試料の属性を識別している。
非特許文献1には、タンパク質の試料に対しパルスシーケンスを適用してFID信号を取得し、時間周波数解析を使用して構造情報を抽出することで、NMR構造生物学のための新たな信号処理アルゴリズムが記載されている。
特開2014−020831号公報 特開2015−114157号公報
"Extracting Structural Information Using Time-Frequency Analysis of Protein NMR Data", Christopher James Langmead, Bruce Randall Donald, in Proceedings of the Fifth Annual International Conference on Computational Molecular Biology (RECOMB). ACM Press, 2001, pp. 164-175.
上記の方法では、FID信号を時間周波数解析することで局所的な情報を取得し、情報の精度を高めている。このようなNMR解析は、1Hz以下の周波数分解能で行なわれ、高磁場が必要となる。
しかしながら、血清等においては、生体高分子の構造の違い、生体高分子同士あるいは生体高分子とその他の低分子化合物との相互作用などがその試料を特徴づける。したがって、低分子の挙動を解析するのに適した高い周波数分解能は必ずしも必要ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、生体試料に由来するFID信号取得にあたり高磁場を不要とする特性評価方法、装置およびプログラムを提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の特性評価方法は、生体試料の特性を評価する方法であって、前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数を観測中心としてNMR装置を設定するステップと、前記設定されたNMR装置を用いて前記生体試料に由来するFID信号を取得するステップと、前記FID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出するステップと、を含むことを特徴としている。このように周波数分解能が88Hz以上21Hz以下であれば、FID信号取得に高磁場は不要となり、コスト低減が可能になる。例えば、永久磁石による磁場を用いることもできる。
(2)また、本発明の特性評価方法は、事前に前記生体試料を準備するステップをさらに含み、前記生体試料は、被検体から採取された純粋試料そのもの、または前記純粋試料に重水が混合されることで前記純粋試料の体積濃度が0.5%以上100%未満に調整されたものとして、準備されることを特徴としている。このように濃度を0.5%以上にするため、物質間の距離が離れすぎず、相互作用を検出できる。
(3)また、本発明の特性評価方法は、前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出するステップと、前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を評価するステップと、をさらに含むことを特徴としている。生体試料の重要な情報は、基準値から±1400Hz以下に含まれているため、情報を絞って効率的に特性を評価できる。周波数分解能に加えて周波数帯域を限定することで、試算によればデータ数として50%以上の削減が可能になる。このようにして、試料のFID信号の解析結果である膨大なデータを半減させるとともに、診断の目的を達成できる。
(4)また、本発明の特性評価方法は、前記FID信号が、シングルパルス法の応答信号として取得することを特徴としている。これにより、不要な情報を省いて必要な情報を効率的に得ることができる。
(5)また、本発明の特性評価方法は、ダンテパルス法により、前記自由水のプロトンに由来する共鳴信号を抑制することを特徴としている。これにより、自由水のプロトンに由来する共鳴信号を抑制できる。
(6)また、本発明の装置は、生体試料の特性を評価する装置であって、前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数が観測中心として設定されたNMR装置を用いて取得された前記生体試料に由来するFID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出する算出部と、前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出する抽出部と、前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を出力する出力部と、を備えることを特徴としている。これにより、FID信号取得に高磁場は不要となり、コスト低減が可能になる。
(7)また、本発明のプログラムは、生体試料の特性を評価するプログラムであって、前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数が観測中心として設定されたNMR装置を用いて取得された前記生体試料に由来するFID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出する処理と、前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出する処理と、前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。これにより、FID信号取得に高磁場は不要となり、コスト低減が可能になる。
本発明によれば、FID信号取得に高磁場は不要となり、コスト低減が可能になる。
(a)、(b)それぞれ特性評価システム10の構成を示す概略図および特性評価装置100の構成を示すブロック図である。 本発明の特性評価方法を示すフローチャートである。 実施例1の測定で得られたFID信号の一例を示すグラフである。 (a)、(b)それぞれ実施例1で周波数分解能87.2Hz、21.8Hzで得られたスぺクトログラムを示す図である。 実施例1で生体試料濃度100%、周波数分解能87.2Hzの場合の健常高齢者vsアルツハイマー型認知症のスコアプロットを示す図である。 実施例1で生体試料濃度100%、周波数分解能21.8Hzの場合の健常高齢者vsアルツハイマー型認知症のスコアプロットを示す図である。 実施例1で生体試料濃度0.5%、周波数分解能87.2Hzの場合の健常高齢者vsアルツハイマー型認知症のスコアプロットを示す図である。 実施例1で生体試料濃度0.5%、周波数分解能21.8Hzの場合の健常高齢者vsアルツハイマー型認知症のスコアプロットを示す図である。 実施例2の非膵がんvs膵がんのスコアプロットを示す図である。 実施例3の非乳がんvs乳がんのスコアプロットを示す図である。 実施例4の非浸潤がんvs浸潤がんのスコアプロットを示す図である。 実施例5でリンパ節転移ありvsリンパ節転移なしのスコアプロットを示す図である。 実施例6で浸潤がんのサブタイプ(4種類)のスコアプロットを示す図である。 実施例7で典型AMDvsPCVのスコアプロットを示す図である。 実施例8でPlateau患者vsDH患者のスコアプロットを示す図である。 実施例9で非グリオーマ系脳腫瘍vsグリオーマ系脳腫瘍のスコアプロットを示す図である。 実施例10で3種類の脳疾患のスコアプロットを示す図である。
[1.基本原理]
運動性の異なる原子核由来のNMR信号は異なる減衰時間を有する。したがって、NMR信号に含まれる周波数および時間に伴う信号強度情報の両方を活用すれば、試料に特有の情報を識別することができる。本発明では、生体試料(生体から採取された液体試料)に由来するFID信号を取得し、取得されたFID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムによって生体試料の特性を評価する。これにより、生体試料の構造および機能に関して特性を高精度で評価できる。
このような生体試料には、ヒトのリンパ液、血液、血清、髄液等の体液または組織液または尿が挙げられる。特に、排出されることなく体内に留まる体液や組織液は豊富な情報を有し、その中でも血清は採取しやすく生体試料として好ましい。
生体試料は、一つの超分子とみなすことができ、生体試料に含まれる高分子から特徴となる多くの情報を取得できる。生体試料に対して核磁気共鳴(NMR)測定を行なって得られたFID信号は、その生体試料を特徴づける固有の一つのデータとして取り扱うことができる。NMR現象においては、共鳴周波数がどちらの方向にシフトし、その信号がどのような減衰特性を持つか、を正確に知ることが重要である。共鳴周波数のシフトに着目することでNMR以外の分析技術では得られない情報が得られる。
[2.特性評価システム]
(2−1.特性評価システム)
図1(a)、(b)は、それぞれ特性評価システム10の構成を示す概略図および特性評価装置100の構成を示すブロック図である。図1(a)に示すように、特性評価システム10は、NMR装置50および特性評価装置100で構成されている。NMR装置50は、原子核を磁場の中に入れて核スピンの共鳴現象を観測することで、物質の分子構造を原子レベルで解析するための装置である。特性評価装置100は、例えばPCであり、プログラムを実行できるメモリおよびプロセッサを備えている。
特性評価装置100は、NMR装置50と接続しており、互いに情報の送受信が可能になっている。ユーザは、特性評価装置100により、NMR装置50の操作およびNMR装置50で取得したFID信号の解析ができる。例えば、ユーザ操作により特定の周波数を観測中心としてNMR装置50を設定することが可能である。
(2−2.NMR装置)
NMR装置50は、磁石51、サンプル管55およびプローブ57を備えている。磁石51は、永久磁石、電磁石または超伝導磁石で構成され、空間的に均一かつ時間変動のない高安定度な磁場を発生させる。サンプル管55は、試料を保持する管である。プローブ57は一体型で構成され、プローブ57内には、試料が入っている部分が磁石51の磁場の中心部に位置するように、サンプル管55の支持部が磁石内に設けられている。そして、サンプル管55の外側に送信コイル、受信コイルが設けられている。プローブ57は、高周波発振器に接続され、パルスを発信することで試料を励起し、FID信号を検出する。
(2−3.特性評価装置の構成)
図1(b)は、特性評価装置100の構成を示すブロック図である。図1(b)に示すように、特性評価装置100は、入力部110、データ格納部120、スペクトログラム算出部130、スペクトログラム抽出部140、変換部150、パラメータ管理部160、属性識別部170および出力部180を備えており、生体試料からのFID信号を解析し、生体試料の特性を評価できる。また、後述のように生体試料の属性を識別することも可能になっている。
入力部110は、NMR装置50で取得されたFID信号の入力を受け付ける。入力されるFID信号のデータは、NMR装置50から接続線または無線通信を介して特性評価装置100に直接入力されてもよいし、記憶媒体を介して入力されてもよい。
データ格納部120は、取得されたFID信号を格納する。データ格納部120は、入力されたFID信号のうち属性が分かっている既知生体試料については、FID信号と属性とを対応づけて管理する。
スペクトログラム算出部130は、解析しようとするFID信号を読み出し、読み出されたFID信号を時間周波数解析する。時間周波数解析は、生体試料のそれぞれに由来するFID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返し、各FID信号のスペクトログラムを算出する。FID信号を複素フーリエ変換することで短時間フーリエ変換を行なうことが好ましい。具体的には、FID信号の実部と虚部とを分割して複素行列を生成し、複素行列に対し、短時間フーリエ変換を実行すればよい。ウェーブレット変換などを用いてもよい。
このようにして、スペクトログラム算出部130は、FID信号を多変量データ(例えば、パワースペクトルデータまたはスペクトログラムデータ)に変換することができる。そして、生体試料についてのスペクトログラム画像も作成できる。
スペクトログラム抽出部140は、指定された周波数範囲のスペクトログラムデータを抽出する。算出されたスペクトログラムにおいて、軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内を指定し、スペクトログラムデータを抽出するのが好ましい。生体試料の重要な情報は、基準値から±1400Hz以下に含まれているため、情報を絞って効率的に特性を評価できる。
変換部150は、多変量解析部151、スコア算出部155および識別基準生成部157を備え、複数の生体試料について時間周波数解析で得られたデータ(スペクトログラムの数値列データ)を多変量解析し、属性の特徴が表れるスコアに変換する。そして、スコアへの変換に用いた合成変量を特定するとともに、属性によるデータ識別の識別基準を生成する。これにより、属性が未知の同種の試料について属性に応じたグループ分けが可能になる。
多変量解析部151は、既知生体試料の多変量データに対して多変量解析(主成分分析、PLS判別分析(PLS−DA)、SIMCA法等)を行なって、試料の多変量データを試料が有する属性毎のデータ群に分離させる合成変量を生成する。生成される合成変量の数は特に制限されないが、二つの合成変量を生成することが好ましい。
なお、多変量解析部151は、既知生体試料の多変量データを比較し、例えば属性間で差がある変量のうちのいくつかをあらかじめ合成し、その後に多変量解析を行なうことによって合成変量を生成するようにしてもよい。また、多変量解析を用いてデータの次元圧縮や集約を行なってもよい。
スコア算出部155は、各試料の多変量データおよび合成変量に基づいて多変量データのスコアを算出する。なお、スコアには、多変量データを二つの合成変量を用いて表現したデータ(例えば、ベクトルや座標)も含まれる。多変量解析部151で得られた合成変量を用いることでスコアを属性のグループ毎に分離することができる。
識別基準生成部157は、グループ分けされた既知生体試料のスコアに基づいて識別基準を生成する。例えば、識別基準生成部157は、属性毎の既知生体試料の多変量データのスコアに基づいて各属性を代表する代表値(平均、中心座標等)を求め、求めた各属性の代表値を識別基準として選択できる。その結果、未知の生体試料について生体の診断を容易に行なうことができる。
パラメータ管理部160は、所定の合成変量および識別基準を管理する。所定の合成変量および識別基準は、特定の属性(例えば乳がんの罹患)を識別するために、予め特性評価装置100で生成されたものを利用できる。例えば、特性評価装置100で血清を用いて乳がんの罹患の有無を分離するのに適した合成変量および識別基準を生成できる。特性評価装置100には、得られた合成変量および識別基準を入力しておくことで、パラメータ管理部160でデータ管理でき変換部150で使用可能になる。
属性識別部170は、パラメータ管理部160で管理される所定の識別基準を読み出し、被検生体試料のスコアと識別基準とを比較して、その比較結果に基づいて被検生体試料の属性を識別する。被検生体試料の多変量データのスコアがいずれの属性を代表する代表値に最も近いかにより被検生体試料の属性を識別してもよい。なお、識別結果には属性不明という判断も含まれる。
なお、変換部150から属性識別部170までの各部は別体で構成されてもよい。この場合、属性識別のための装置には、被検生体試料の属性を識別する際にまたは事前に、合成変量および識別基準が入力される。
出力部180は、スペクトログラムデータを用いた生体試料の特性を出力する。例えば、算出されたスペクトログラムの数値列データまたは算出されたスペクトログラムから作成されたスペクトログラム画像を出力できる。また、分離された生体試料のスコアの分布を出力することもできる。出力部180は、スコア算出に用いた合成変量、グループ分けの識別基準やグループ分けの分離の評価結果を出力してもよい。また、被検生体試料の属性の識別結果を出力することもできる。出力は、例えばディスプレイへの表示により行なうことができる。
[3.特性評価方法]
上記の特性評価システム10を用いて、生体試料の特性を評価する方法を説明する。図2は、特性評価方法を示すフローチャートである。図2のステップS101〜S105に示すように、生体試料の特性評価は、試料の準備、NMR装置の設定、NMR測定およびデータの解析(スペクトログラムデータの算出および特性の評価)の手順で行なうことができる。
(3−1.試料の準備)
まず、被検体から純粋な生体試料(純粋試料)を採取して生体試料を準備する。工数を省く観点から生体試料は、被検体から採取された純粋試料そのものであることが好ましいが、純粋試料に重水を混合して純粋試料の体積濃度が0.5%以上100%未満に調整された試料であってもよい。このように濃度を0.5%以上にするため、物質間の距離が離れすぎず、相互作用を検出できる。
(3−2.NMR装置の設定およびNMR測定)
得られた生体試料を重水素化水(重水)と混合し、サンプル管55に注入し、NMR装置50に設置する。そして、生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数を観測中心としてNMR装置50を設定する。生体試料にかける磁場を固定してパルスを発信し、生体試料に由来するFID信号(観測信号)を取得する(1H−NMR計測)。このようにして取得された生体試料に由来するFID信号は、そのままの形(すなわち、RAW形式)で保存できる。
FID信号は、連続的に静磁場強度または電磁波周波数を掃引する連続波法ではなく、シングルパルス法の応答信号として取得することが好ましい。これにより、不要な情報を省いて必要な情報を効率的に得ることができる。また、ダンテ(DANTE:delays alternating with nutation for tailored excitation)パルス法により、自由水のプロトンに由来する共鳴信号を抑制することが好ましい。一連の短いRFパルスを照射することによって、複数の狭帯域を励起することで、自由水のプロトンに由来する共鳴信号を抑制できる。
(3−3.データの解析)
上記のようにして得られたFID信号は、特性評価装置100により解析できる。FID信号は特性評価装置100に入力され、格納される。そして、特性評価装置100は、生体試料から得られた各FID信号の一つを特定し、特定されたFID信号を読み出して時間周波数解析する。
時間周波数解析は、FID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、スペクトログラムを算出する。短時間周波数解析は、時間周波数信号などの複合信号を窓関数に通して、周波数スペクトルを計算することで行なわれる。具体的には、入力されたFID信号に対し、窓関数を時間軸に沿ってシフトしながら窓関数による対象区間の切り出しおよびその波形のフーリエ変換からのパワースペクトルの算出の処理を繰り返す。短時間周波数解析によりFID信号の周波数成分の時間変化を把握できる。
スペクトログラムの算出の際には、予め88Hz以上21Hz以下の周波数分解能に設定しておくことが好ましい。周波数分解能が88Hz以上21Hz以下で十分であれば、FID信号の取得に高磁場は不要となる。その場合、例えば、NMR装置50の磁石51として永久磁石による磁場を用いることもできる。
スペクトログラムは、スペクトログラム画像や数値列データとして出力できる。例えば、スペクトログラム画像は、2次元グラフ(時間/周波数)上に、明るさまたは色で信号成分の強度(振幅)を表示したものであり、数値列データは、例えば2次元配列のデータである。
スペクトログラムにおいては、軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のデータを抽出して用いるのが好ましい。生体試料の重要な情報は、基準値から±1400Hz以下に含まれているため、情報を絞って効率的に特性を評価でき、処理能力の低いPCでも短時間で処理することが可能になる。周波数分解能の設定(88Hz以上21Hz以下)に加えて、周波数帯域の限定(−1400Hz以上1400Hz以下)により、試算によればデータ数として50%以上の削減が可能になる。このようにして試料のFID信号の解析結果である膨大なデータを半減させるとともに、診断の目的を達成できる。
特性評価装置100から出力されるスペクトログラムの数値列データやスペクトログラム画像に基づいて、例えば、周波数軸では、生体試料中に含まれる物質の種類や物質間の相互作用などに関する情報が得られる。また、時間軸では、生体試料全体の物性に加えて、物質間の相互作用に関する情報が得られる。スペクトログラム画像では、各ポイントの信号強度の相違を「色相」で表示することにより、各時間における周波数の信号強度の相違も容易に把握できる。
さらに、スペクトログラムの数値列データやスペクトログラム画像を解析することによって、生体試料の特性を評価することが可能である。スペクトログラムの数値列データやスペクトル画像は多変量解析に用いられる。
FID信号のスペクトログラム(数値列データやスペクトログラム画像)およびその解析結果の少なくとも一方は、生体試料同士の類似性を評価する基準となる。例えば、属性区分の不明な生体試料のスペクトログラムの解析により、その属性区分を設定できる。また、所定の分類基準に対して新たな属性区分の設定(再設定)も可能である。
[4.属性識別方法]
属性が不明な被検生体試料の属性の識別は、被検生体試料についてのスペクトログラムと、既知生体試料についてのスペクトログラムまたはこれに基づく指標とを比較することで行なうことができる。
まず、属性の明らかな複数の試料(既知生体試料)について各々NMR計測を行ない、得られた各FID信号を処理(例えば、パターン認識)して評価する。例えば、属性が分かっている既知生体試料L1〜Lnの特徴を抽出し、抽出された特徴を属性毎にグループ化し、グループ化された属性毎の既知生体試料の特徴に基づいて識別基準を生成する。この場合において、識別基準には、同じ属性の既知生体試料同士が有する共通の特徴が含まれる。例えば、特定の属性(例えば乳がん罹患)の人体から生体試料(例えば血清)を採取する。
そして、複数の既知生体試料についてのスペクトログラムの数値列データに対して多変量解析を行ない、複数の既知生体試料についてのスペクトログラムの数値列データを、属性毎のデータ群に分離させるための合成変量を作成する。多変量解析は、例えば、主成分分析、PLS判別分析(PLS−DA)、SIMCA法、SVM(Support Vector Machine)法などである。
次に、複数の既知生体試料のそれぞれについて、スペクトログラムの数値列データのスコアを算出する。そして、複数の既知生体試料ついての特徴量に基づいて識別基準を設定する。具体的には、算出された複数の既知生体試料のそれぞれについてのスコアを属性毎にグループ化する。
スコアのデータをグループ分けできた場合には、試料の属性をグループ分けの識別基準にできる。なお、「同種」とは、例えば血清の試料に対して血清の試料というように同じ種類の試料であることを指す。「属性」とは、例えば、乳がんに罹っているか否かというように試料の採取元が属する分類を指す。識別基準は、数値であってもよいし、図や表で示されたものであってもよい。
一方、属性の未知な被検生体試料について、既知生体試料のデータ分離をしたときと同様の特徴抽出を行なう。そして、被検生体試料の特徴を上記の識別基準と比較することによって被検生体試料の属性を識別する。例えば、被検生体試料L0から得られたFID信号を識別基準と対比させるための特徴抽出処理することによって被検生体試料L0の特徴を抽出する。そして、得られた特徴を識別基準と比較して被検生体試料L0の属性を判断する。例えば、抽出された被検生体試料L0の特徴が各属性に対応する特徴または各属性を代表する特徴のいずれに最も近いかを判断することによって被検生体試料L0の属性を識別できる。
まず、被検生体試料から得られたFID信号を特定し、読み取る。そして、得られたFID信号を時間周波数解析し、多変量データに変換する。所定の合成変量および識別基準のデータを読み出す。そして、算出された被検生体試料についての特徴量(合成変量値)と、設定された識別基準とを比較して被検生体試料の属性を識別する。具体的には、被検生体試料についての合成変量値が、属性毎に設定された識別基準のいずれに該当するか(含まれるか)を判断して被検生体試料の属性を識別する。
読み出した所定の合成変量を用いて被検生体試料の多変量データのスコアを算出する。算出された被検生体試料のスコアと所定の識別基準とを比較して被検生体試料の属性を識別する。例えば、合成変量を軸(X、Y)とする座標平面上に、既知生体試料のスコアおよび被検生体試料のスコアがプロットされたスコアプロットを生成する。そして、被検生体試料の属性の識別結果と生成したスコアプロットとを出力できる。
[5.実施例]
(実施例1(アルツハイマー型認知症))
アルツハイマー型認知症の患者および健常高齢者の属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料としてアルツハイマー型認知症の患者および健常高齢者のそれぞれから採取した血清600μLをそのまま(濃度100%)用いた。この血清を5mm径ガラス製NMRサンプル管に入れ、NMR装置(ECX300型、日本電子製)を用いて、一次元 proton(1H) NMRの測定を行なった。健常高齢者7つ、アルツハイマー型認知症患者7つで合計14のサンプルを用いた。
また、測定の際には、生体試料中の軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数を観測中心として設定し、シングルパルスで400回積算した。その他の条件は、装置搭載の標準の条件にて行なった。図3は、測定で得られたFID信号の一例を示すグラフである。
得られたFID信号を数値化(ASCIIフォーマットに変換)し、LabVIEW(登録商標)上で稼働するオリジナルのプログラムにて時間周波数解析してスペクトログラムを算出し、スペクトログラム画像と数値データとして出力した。スペクトログラムの算出は、87.2Hzおよび21.8Hzのそれぞれの周波数分解能で行なった。図4(a)、(b)は、それぞれ周波数分解能87.2Hz、21.8Hzで得られたスぺクトログラム画像を示す図である。スペクトログラム画像では、時間および周波数をそれぞれ横軸および縦軸にとったときの信号成分の強度(振幅)が明るさまたは色で表示されている。図4(a)、(b)に示すように、生体試料の特性評価に重要な情報は、軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内にあることが分かる。
スペクトログラムから得られたすべての数値データをひとつのデータシートにまとめ、アルツハイマー型認知症患者であるか否かの二つのグループに分けられるデータセットを作成した。市販の多変量解析ソフトウェア(Unscrambler X ver 10.5 、 CAMO Software AS)に搭載された属性識別用の解析アルゴリズム(PLS−DA)を用いて、スコアプロットを行ない、生体試料が採取された人体がアルツハイマー型認知症患者か健常高齢者かを識別可能か検討した。なお、スコアプロットで示される座標軸Factor−1,2は、属性分離のためにそれぞれのPLS−DAで選ばれる座標軸であり、解析毎に異なっている。
図5は、生体試料濃度100%、周波数分解能87.2Hzの場合のスコアプロットを示す図である。図5に示すように、上記の条件ではアルツハイマー型認知症患者のスコアは、座標の右上側、健常高齢者のスコアは、座標の左下側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。例えば、座標0を通る負の傾きを有する直線を識別基準としてアルツハイマー型認知症患者か健常高齢者かを識別可能であることが分かる。
図6は、生体試料濃度100%、周波数分解能21.8Hzの場合のスコアプロットを示す図である。この場合も、図6に示すように、アルツハイマー型認知症患者のスコアは、座標の右上側、健常高齢者のスコアは、座標の左下側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
次に、アルツハイマー型認知症の患者および健常高齢者のそれぞれから採取した血清に重水素化水(重水)を加え、濃度0.5%の生体試料を準備した。これを用い周波数分解能21.8Hzおよび87.2Hzでそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。図7は、生体試料濃度0.5%、周波数分解能87.2Hzの場合のスコアプロットを示す図である。図8は、生体試料濃度0.5%、周波数分解能21.8Hzの場合のスコアプロットを示す図である。いずれの周波数分解能においても、アルツハイマー型認知症患者のスコアは、座標の右側、健常高齢者のスコアは、座標の左側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
以上より、純粋試料の体積濃度が0.5%以上100%以下の生体試料に対し、周波数分解能88Hz以上21Hz以下でNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なえば、属性識別が可能であることを確認できた。
(実施例2(膵がん))
非膵がん患者と膵がん患者との属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料として非膵がん患者および膵がん患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。非膵がん患者7つ、膵がん患者7つで合計14のサンプルを用いた。図9は、非膵がんvs膵がんのスコアプロットを示す図である。非膵がん患者のスコアは、座標の右側、膵がん患者のスコアは、座標の左側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例3(乳がん))
非乳がん患者と乳がん患者との属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料として非乳がん患者および乳がん患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。それぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。非乳がん患者7つ、乳がん患者7つで合計14のサンプルを用いた。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図10は、非乳がんvs乳がんのスコアプロットを示す図である。非乳がん患者のスコアは、座標の右側、乳がん患者のスコアは、座標の左側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例4(浸潤がん))
乳がん患者のうち非浸潤がん患者と浸潤がん患者との属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料として非浸潤がん患者および浸潤がん患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。非浸潤がん患者8つ、浸潤がん患者8つで合計16のサンプルを用いた。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図11は、非浸潤がんvs浸潤がんのスコアプロットを示す図である。非浸潤がん患者のスコアは、座標の左下側、浸潤がん患者のスコアは、座標の右上側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例5(リンパ節転移))
乳がん患者のうちリンパ節転移ありの患者とリンパ節転移なしの患者の属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料としてリンパ節転移ありの患者およびリンパ節転移なしの患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。リンパ節転移あり6つ、リンパ節転移なし6つで合計12のサンプルを用いた。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図12は、リンパ節転移ありvsリンパ節転移なしのスコアプロットを示す図である。リンパ節転移ありのスコアは、座標の右側、リンパ節転移なしのスコアは、座標の左側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例6(浸潤がんのサブタイプ分類))
乳がんかつ浸潤がん患者についてがん細胞の増殖に関わるタンパク質のサブタイプ分類で属性識別が可能かの検証を行なった。サブタイプ分類は、ホルモン受容体がエストロゲン受容体[ER]が陽性か陰性か、HER2が陽性か陰性かの組み合わせで4つに分類した。まず、生体試料としてそれぞれの患者から血清を採取して重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。浸潤がん1(ER+Her2-)5つ、浸
潤がん2(ER+Her2+)4つ、浸潤がん3(ER-Her2+)5つ、浸潤がん4(ER-Her2-)5つの合計19のサンプルを用いた。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。
図13は、各浸潤がんのサブタイプ分類のスコアプロットを示す図である。浸潤がん1(ER+Her2-)のスコアは、座標の右上側、浸潤がん2(ER+Her2+)のスコアは、座標の左上側、浸潤がん3(ER-Her2+)のスコアは、座標の右下側、浸潤がん4(ER-Her2-)のスコアは、座標の左下側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例7(眼病の種類))
眼病のうち、加齢黄斑変性症(AMD:age-relatedmaculardegeneration)患者とポリープ状脈絡膜血管症(PCV:polypoidalchoroidal vasculopath)患者の属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料として患者のそれぞれから採取した前房水に重水を加え、濃度27.8%の生体試料を準備した。これを3mm径ガラス製NMRサンプル管に入れ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。加齢黄斑変性症患者6つ、ポリープ状脈絡膜血管症患者6つで合計12のサンプルを用いた。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図14は、加齢黄斑変性症(AMD)vsポリープ状脈絡膜血管症(PCV)のスコアプロットを示す図である。加齢黄斑変性症(典型AMD)のスコアは、座標の右側、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)のスコアは、座標の左側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例8(緑内障))
緑内障の患者のうち、Plateau患者とDH患者との属性識別が可能かの検証を行なった。Plateauとは、閉塞隅角機序の1つであるプラトー虹彩形状を有し、眼圧上昇が緑内障発症および進行の主なリスク因子と想定される症例(プラトー虹彩形状群)を指す。DHは、視神経乳頭出血の既往を有し眼圧も経過中常に20mmHg未満の正常眼圧であり、眼圧以外の因子も緑内障発症および進行に関与していると想定される症例(乳頭出血群)を指す。
まず、生体試料として患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図15は、実施例8でPlateau患者vsDH患者のスコアプロットを示す図である。Plateau患者のスコアは、座標の左側、DH患者のスコアは、座標の右側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例9(脳腫瘍))
脳腫瘍患者のうち、神経鞘腫1例、髄膜腫3例からなる非グリオーマ系脳腫瘍の患者と、乏突起膠腫、退形成性星細胞腫、乏突起星細胞腫、びまん性星細胞腫各1例からなるグリオーマ系脳腫瘍の患者の属性識別が可能かの検証を行なった。まず、生体試料として患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図16は、実施例9で非グリオーマ系脳腫瘍vsグリオーマ系脳腫瘍のスコアプロットを示す図である。非グリオーマ系脳腫瘍の患者のスコアは、座標の左側、グリオーマ系脳腫瘍の患者のスコアは、座標の右側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。
(実施例10(脳疾患の種類))
脳疾患の患者のうち、非腫瘍性脳疾患の患者と、グリオーマ系脳腫瘍の患者と、非グリオーマ系脳腫瘍の患者の属性識別が可能かの検証を行なった。乏突起膠腫、退形成性星細胞腫、乏突起星細胞腫、びまん性星細胞腫各1例からなるグリオーマ系脳腫瘍4例、神経鞘腫1例、髄膜腫3例からなる非グリオーマ系脳腫瘍4例、もやもや病2例、線維性異形成1例、グリオーシス1例からなる非腫瘍性脳疾患4例の患者から採取した血清を使用した。
まず、生体試料として患者のそれぞれから採取した血清に重水を加え、濃度16.7%の生体試料を準備した。これを用いそれぞれ上記の例と同様にNMR測定、スペクトログラムの算出および多変量解析によるスコアプロットを行なった。スペクトログラムの算出は、周波数分解能43.6Hzで行なった。図17は、実施例10で3種類の脳疾患のスコアプロットを示す図である。非腫瘍性脳疾患の患者のスコアは、座標の左上側、グリオーマ系脳腫瘍の患者のスコアは、座標の右側中央、非グリオーマ系脳腫瘍の患者のスコアは、座標の左下側にプロットされ、属性を識別できることが実証された。このような属性識別方法は、脳腫瘍血清診断のsurrogate marker となる可能性があり、脳腫瘍スクリーニング、再発監視に役立つと期待される。
10 特性評価システム
50 NMR装置
51 磁石
55 サンプル管
57 プローブ
100 特性評価装置
110 入力部
120 データ格納部
130 スペクトログラム算出部
140 スペクトログラム抽出部
150 変換部
151 多変量解析部
155 スコア算出部
157 識別基準生成部
160 パラメータ管理部
170 属性識別部
180 出力部

Claims (7)

  1. 生体試料の特性を評価する方法であって、
    前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数を観測中心としてNMR装置を設定するステップと、
    前記設定されたNMR装置を用いて前記生体試料に由来するFID信号を取得するステップと、
    前記FID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出するステップと、を含むことを特徴とする特性評価方法。
  2. 事前に前記生体試料を準備するステップをさらに含み、
    前記生体試料は、被検体から採取された純粋試料そのもの、または前記純粋試料に重水が混合されることで前記純粋試料の体積濃度が0.5%以上100%未満に調整されたものとして、準備されることを特徴とする請求項1に記載の特性評価方法。
  3. 前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出するステップと、
    前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を評価するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の特性評価方法。
  4. 前記FID信号は、シングルパルス法の応答信号として取得することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の特性評価方法。
  5. ダンテパルス法により、前記自由水のプロトンに由来する共鳴信号を抑制することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の特性評価方法。
  6. 生体試料の特性を評価する装置であって、
    前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数が観測中心として設定されたNMR装置を用いて取得された前記生体試料に由来するFID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出する算出部と、
    前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出する抽出部と、
    前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を出力する出力部と、を備えることを特徴とする装置。
  7. 生体試料の特性を評価するプログラムであって、
    前記生体試料内に存在する軽水のうちの自由水に由来するプロトンの共鳴周波数が観測中心として設定されたNMR装置を用いて取得された前記生体試料に由来するFID信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより、88Hz以上21Hz以下の周波数分解能でスペクトログラムを算出する処理と、
    前記スペクトログラムにおいて、前記軽水の共鳴周波数を基準として、−1400Hz以上1400Hz以下の範囲内のスペクトログラムデータを抽出する処理と、
    前記スペクトログラムデータを用いて、前記生体試料の特性を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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