JP2019156790A - α,β−不飽和カルボン酸の合成方法 - Google Patents

α,β−不飽和カルボン酸の合成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】α,β−不飽和カルボン酸の生成量を向上させることができるα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。【解決手段】α,β−不飽和カルボン酸の合成方法であって、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて、中間体として特定の構造を有する金属ラクトン化合物を形成させると共に前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることを含み、前記塩基の共役酸の酸乖離定数(pKa1)と前記α,β−不飽和カルボン酸の酸乖離定数(pKa2)との関係がpKa1<pKa2であるα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。【選択図】なし

Description

本発明は、α,β−不飽和カルボン酸の合成方法に関する。
近年、二酸化炭素(CO)等の温室効果ガスの低減等を目的として、COを化学合成の原料として使用する方法が数多く提案されている。その一つとして、COとアルケンを原料として、アクリル酸等の不飽和カルボン酸を製造することが提案されている。
例えば、ニッケル錯体を含む均一系触媒と塩基の存在下でCOとエチレンを反応させてアクリル酸塩を製造する方法が提案されている(非特許文献1)。この方法においては、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中で、オレフィン−ニッケル錯体とCOとを反応させてニッケルラクトン錯体を形成し、次いでこれにナトリウムアルコキシド等の強塩基を加えることでラクトン環を開裂しアクリレート錯体を得、得られたアクリレート錯体のアクリレート配位子をオレフィン配位子で置換して、アクリレート(アクリル酸ナトリウム)を放出させている。
また、均一系触媒として、トリホスフィン配位子を有するゼロ価モリブデン錯体を用いてCOとエチレンを反応させる方法も報告されている(非特許文献2)。
さらに、特許文献1には、溶媒中で、a)遷移金属−アルケン錯体をCOと反応させてメタララクトンを生じさせ、b)メタララクトンを、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ金属強塩基又はアルカリ土類金属強塩基から選択される塩基と反応させて、α,β−不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩と遷移金属錯体との付加体を生じさせ、c)付加体をアルケンと反応させて、α,β−不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を放出し遷移金属−アルケン錯体を再生する、α,β−不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を合成する方法が開示されている。
また、特許文献2には、溶媒中でメタララクトン中間体をハロゲン化物の存在下で反応させることにより、β−不飽和カルボン酸、又はその塩を合成する方法が開示されている。
米国特許第8697909号明細書 国際公開第2014/198469号
Lejkowski, M. L. et al., "The first catalytic synthesis of an acrylate from CO2 and an alkene-A rational approach", Chem. Eur. J. 18, 14017−14025 (2012) Hanna et al., "Ancillary Ligand Effects on Carbon Dioxide-Ethylene Coupling at Zerovalent Molybdenum", Organometallics, 2014, 33, 3425−3432
前述した通り、アクリレート(アクリル酸塩)を得るためには、メタララクトン錯体を中間体として経由する。しかし、そのあとに続く、β−水素脱離反応、還元的脱水素反応は、前述したような、塩基(具体例としては、ナトリウムtert-ブトキシド(t−BuONa)、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)、ヨウ化リチウム(LiI)とアンモニア(NH)の混合物、ナトリウムフェノキシド(PhONa)等)が存在しないと、反応そのものが進まないことが示されている。
したがって、アクリレートとして得られる目的物は、結果としてα,β−不飽和カルボン酸と前記塩基のカチオンとの塩(上述の具体例においてはアルカリ金属塩)となる。すなわちアルカリ金属塩のカチオンは反応溶液中に存在する塩基から供給されることとなる。言い換えれば、一反応から得られる目的物の理論上の最大生成量は、反応溶液に投入した塩基量によって制限されることとなる。前述の一反応から得られる生成物の量を触媒量で割った数値を、一般的にターンオーバー数(TON=生成物のモル数/触媒のモル数)といい、触媒活性の比較に用いられる。上述したように目的物の理論上の最大生成量が塩基量によって制限されるということは、例えば、触媒を0.1mmol使用し、塩基を10mmol(触媒に対して100当量)投入した場合、得られるアクリル酸塩の量は、最大でも10mmol(TON=100)であるということを意味する。
なお、上述したように、反応とともに塩基が消費され、再生されない理由は、生成物であるα,β−不飽和カルボン酸が前記塩基の共役酸よりも高いプロトン供与性を持っているためである。すなわち、α,β−不飽和カルボン酸の酸乖離定数(pKa)は、その構造にもよるが、おおよそ3〜5程度である。それに対して、塩基の共役酸の酸乖離定数は、フェノールで7以上、アルコールでおおよそ14以上にもなる。その結果、反応とともにα,β−不飽和カルボン酸塩と塩基の共役酸であるフェノールやアルコールが生成したのち、弱酸であるフェノールやアルコールがカルボン酸塩と反応し、フェノキシドやアルコキシドを再生させることは無い。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、反応とともに塩基がその共役酸となり消費されるのではなく、反応が進行したとしても共役酸から塩基へと再生される塩基を適用することによって、塩基の使用量を抑制しつつ、α,β−不飽和カルボン酸の生成量を向上させることを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、安定な反応中間体であるメタララクトン錯体をルイス酸で活性化し、さらに共役酸の酸乖離定数(pKa)がα,β−不飽和カルボン酸よりも低い(すなわち強酸性)塩基を適用することによって、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が向上し、また塩基が反応によって消費されず、再生することを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を備える。
[1] α,β−不飽和カルボン酸の合成方法であって、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて、中間体として下記式(1)で表される金属ラクトン化合物を形成させると共に前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることを含み、前記塩基の共役酸の酸乖離定数(pKa1)と前記α,β−不飽和カルボン酸の酸乖離定数(pKa2)との関係がpKa1<pKa2であるα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
Figure 2019156790
[式中、Mは、遷移金属を表し、Lはそれぞれ独立して単座配位子であるか、又はLは協働して二座配位子を形成する。]
[2] 前記塩基は窒素原子を含み、前記窒素原子が非共有電子対を有している[1]に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
[3] 前記塩基がアニリン化合物、N−ジメチルアニリン化合物、ピリジン化合物、及びピラジン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]又は[2]に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
[4] 前記塩基がハロゲン化アニリン、ハロゲン化ピリジン、及び2−メチルピラジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]〜[3]のいずれか1に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
本発明により、反応とともに塩基がその共役酸となり消費されるのではなく、反応が進行したとしても、塩基が共役酸から塩基へと再生することによって、α,β−不飽和カルボン酸塩の生成効率を向上させることが可能になる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて特定の構造を有する金属ラクトン化合物を形成させると共に前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることを含む、α,β−不飽和カルボン酸の合成方法である。また、前記塩基の共役酸の酸乖離定数(pKa1)と前記α,β−不飽和カルボン酸の酸乖離定数(pKa2)との関係がpKa1<pKa2である。
(金属ラクトン化合物の形成)
<特定の構造を有する金属ラクトン化合物>
本実施形態のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法においては、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて、中間体として下記式(1)で表される特定の構造を有する金属ラクトン化合物を得る。
Figure 2019156790
式(1)中、Mは、遷移金属を表し、周期表の6族に属する元素(好ましくはCr、Mo、W)、7族に属する元素(好ましくはRe)、8族に属する元素(好ましくはFe、Ru)、9族に属する元素(好ましくはCo、Rh)、及び10族に属する元素(好ましくはNi、Pd、Pt)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む。これらのうち、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金、レニウム及びタングステンが好ましく、ニッケル、モリブデン、パラジウム、白金、コバルト、鉄、ロジウム、及びルテニウムがより好ましく、ニッケル、白金、及びパラジウムが特に好ましい。
式(1)中、Lは、遷移金属に配位能を持つ配位子であり、それぞれ独立して単座配位子であるか、又はLは協働して二座配位子を形成する。
配位子は、遷移金属に配位する原子又は原子団として、リン原子、窒素原子、酸素原子、及びカルベン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子、又は原子団を少なくとも1つ含んでいてもよい。配位子は、例えばホスフィン、ホスファイト、アミン、及びN−複素環カルベンから選択することができる。前記配位子において、遷移金属に配位する少なくとも1つの原子又は原子団は、リン原子、アミン及びカルベン基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、リン原子及び/又はアミンであることがより好ましい。
配位子が遷移金属に配位する少なくとも1つのリン原子を含む場合、少なくとも1つの基が第二級又は第三級炭素原子を介してリン原子に結合していることが好ましい。より好ましくは、第二級又は第三級炭素原子を介して少なくとも2つの基がリン原子に結合している。第二級又は第三級炭素原子を介してリン原子に結合している適切な基は、例えば、メチル基、アダマンチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、sec−ブチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フルオレニル基、又はアントラセニル基である。これらのうち電子供与性が高い基が望ましく、具体的には、メチル基、tert−ブチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
配位子が遷移金属に配位する少なくとも1つのN−複素環カルベンを含む場合、好ましくは少なくとも1つの基が第二又は第三級炭素原子を介してカルベン基の少なくとも1つのα−窒素原子に結合している。第三級炭素原子を介して窒素原子に結合している適切な基は、例えば、アダマンチル基、tert−ブチル基、イソプロピル基、フェニル基、又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、アダマンチル基、tert−ブチル基、又は2,6−ジイソプロピルフェニル基であることが好ましい。
本発明で使用できる少なくとも1つのリン原子を含む配位子の具体例としては、単座配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)等のトリシクロアルキルホスフィン;トリフェニルホスフィン、トリ(4−フルオロメチルフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;トリ−2−フラニルホスフィン等のトリヘテロアリールホスフィン;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスホラン配位子等が挙げられ、2座配位子としては、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン(dppm)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(dppb)、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(dpppe)、1,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1、2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1、4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1、2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(シクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ビス(3、5−ジメトキシフェニル)ホスフィノ)ブタン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(2S,3S)−(−)−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、(S,S)−1、2−ビス[(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン((S,S)−DIPAMP)、(R,R)−(−)−2,3−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)キノキサリン(QuinoxP*)、(R,R)−1,2−ビス(tert−ブチルメチルホスフィノ)ベンゼン(BenzP*)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ビス(3、5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノ)メタン、トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、等が挙げられる。なかでも、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1、2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン、1、3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、及びBenzPが好ましい。
上記の配位子に加えて、遷移金属錯体は、ハロゲン化物、アミン、アミド、酸化物、リン化物、カルボキシラート、アセチルアセトナート、アリールスルホナート又はアルキルスルホナート、水素化物、一酸化炭素、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、芳香族及び複素環式芳香族、エーテル、三フッ化リン、ホスホール、ホスファベンゼン、並びに単座、2座、及び多座ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスホラミダイト、及びホスファイト配位子から選択される少なくとも1つのさらなる配位子も有していてもよい。
本実施形態において好適に使用できる金属ラクトン化合物の具体例としては、下記式(2)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
式(2)中のMに関する説明は式(1)と同様である。式(2)中のXは、それぞれ独立に窒素原子、又はリン原子である。
式(2)中、Rは、単結合又は二価の脂肪族若しくは芳香族炭化水素基、又は窒素含有基を表す。二価の脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状の飽和及び不飽和の炭化水素基が包含され、その炭素数は好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6である。このような脂肪族炭化水素基としては、鎖状及び環状のアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。二価の芳香族炭化水素基には、1つのベンゼン環を有する単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)から誘導される二価炭化水素基及び2つ以上、通常、2〜4個のベンゼン環を有する多環芳香族炭化水素(ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル等)から誘導される二価炭化水素基が包含される。また、二価の芳香族炭化水素基は、複素環式芳香族化合物の二価の残基であってもよい。前記複素環式芳香族化合物の例としては、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、イソキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾフラン、インドール、チアナフテン、ベンズイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、チノリン、キノキサリン、ジベンゾチオフェン、アクリジン、フェナントロリン等が挙げられる。
窒素含有基としては−NR−基(式中、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基)などが挙げられる。
式(2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して1価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜6の脂環式炭化水素基である。具体的な脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−ヘキシル基、ジメチルブチル基、エチルブチル基などを挙げることができる。具体的な脂環式炭化水素としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
式(2)中、Xは、窒素原子又はリン原子を表すが、Xが窒素原子の場合、nは0であり、RとRとが互いに結合して、5又は6員の複素芳香環を形成し、かつ、R及びRのうち少なくとも1つが炭素数3以上の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基あってもよい。
≪遷移金属錯体≫
前述の特定の構造を有する金属ラクトン化合物は、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素を反応させることに得ることができる。前記遷移金属錯体については、所望の化合物を得るために、COと他の原料化合物との反応を触媒できるものであれば特に制限は無く、例えば、上記非特許文献1及び2、並びに特許文献1及び2に記載されているような公知の遷移金属錯体を使用することができる。
前述の特定の構造を有する金属ラクトン化合物を得るために使用される遷移金属錯体の具体例としては、下記式(3)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
式(3)中のM及びLに関する説明は式(1)と同様である。
また、本実施形態において好適に使用できる金属ラクトン化合物の具体例としては、下記式(4)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
式(4)中のMに関する説明は式(1)と同様である。式(4)中のR、R、R、R、Rに関する説明は式(2)と同様である。
本実施形態においては、前記遷移金属錯体以外にその他の成分が配合されていてもよい。その他の成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されるものではない。
≪アルケン及びCO
本発明で使用できるアルケンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1,3−ブタジエン、ピペリレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、スチレンである。これらのうち、エチレン、プロピレン、1,3−ジエン、スチレンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらは、その種類にもよるが、気体状であっても液体であってもよい。
COは、気体状、液体、又は超臨界状態で使用できる。工業規模で利用できる、COを含むガス混合物を使用することも可能であるが、それらが一酸化炭素を実質的に含まないことが望ましい。
「一酸化炭素を実質的に含まない」とは、ガス混合物100体積%に対して、COの含有量が100ppm(0.01体積%)体積%以下である。
CO及びアルケンは、窒素又は希ガスなどの不活性ガスも含んでいてもよい。しかし、前記不活性ガスの含有量は反応器中のCO及びアルケンの総体積を基準として20体積%未満であることが好ましい。
(α,β−不飽和カルボン酸の生成)
本実施形態のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法においては、中間体として形成された前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることにより、β−水素脱離によるラクトン環の開裂、続いて還元的脱離が起こり不飽和カルボン酸錯体が生成し、前記不飽和カルボン酸錯体がアルケンと配位子交換を行うことでα,β−不飽和カルボン酸が生成する。
≪ルイス酸≫
本発明において使用されるルイス酸は、中間体である金属ラクトン化合物(M−O(C=O)−CH−CH−)のカルボニル酸素(C=OのO)と相互作用することで、ラクトン環を活性化し、それに続くラクトン環の開裂を進行させやすくする。
本明細書において「ルイス酸」とは、電子対を受け取ることができる物質である。
ルイス酸としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩、ハロゲン化ホウ素、アルキル化ホウ素、アルキルハロゲン化ホウ素等のホウ素化合物、ハロゲン化アルミニウム、アルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム等のアルミニウム化合物が例として挙げられる。
ルイス酸は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属塩としてはヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化リチウム(LiBr)が例として挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、塩化マグネシウム(MgCl)、臭化マグネシウム(MgBr)が例として挙げられる。
ホウ素化合物としては、下記式(5)で表されるものを挙げることができる。
BX 3−m (5)
[式(4)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基を示す。mは0〜3の整数を示す。Xはハロゲン基を示す]
として選択されるアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。ハロゲン基はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
ホウ素化合物としては、フッ化ホウ素が好ましい。
アルミニウム化合物としては、下記式(6)で表されるものを挙げることができる。
AlX 3−m (6)
[式(5)中のR、m、Xの説明は式(5)と同様である]
アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウムが好ましい。
≪塩基≫
本発明の塩基(B)は、上述したラクトン環の開裂によって生成したヒドリド中間体(M−H構造を持つ)の水素を引き抜き、それに続く還元的脱離による不飽和カルボン酸錯体の生成を進行させる。その際に生成した塩基の共役酸(B−H)は、同じく生成した不飽和カルボンよりも強い酸であるために、塩基の共役酸のプロトンが不飽和カルボン酸へと供与される。その結果、塩基が再生し、その塩基が反応に再度寄与するものと推測される。
本実施形態においては、塩基(B)の共役酸(B−H)の酸解離定数(pKa1)と、α,β−不飽和カルボン酸の酸解離定数(pKa2)との関係としてpKa1<pKa2が成り立つことが好ましい。
pKa1<pKa2が成り立つと、塩基(B)の共役酸(B−H)のプロトンが不飽和カルボン酸へと供与され、塩基が再生することにより、反応系の塩基の濃度を一定に保つことができる。
pKa1<pKa2である限り、pKa1の値は限定されないが、pKa1は通常−4.0〜4.0であり、−3.0〜3.5であることが好ましく、−2.0〜3.0であることがより好ましい。
pKa1が前記範囲の下限値以上であると、ラクトン環の開裂によって生成したヒドリド中間体の水素の引き抜きが効率的に進行し、不飽和カルボン酸の収率が向上する。pKa1が前記範囲の上限値以下であると、塩基の共役酸のプロトンが不飽和カルボン酸に効率的に供与されるため、反応系の塩基の濃度を一定に保つことができ、α,β−不飽和カルボン酸の収率が向上する。
pKa1<pKa2である限り、pKa2の値は限定されないが、pKa2は通常3.0〜6.0であり、3.5〜5.0であることが好ましく、4.0〜5.0であることがより好ましい。pKa2が前記範囲の下限値以上であると、塩基の共役酸のプロトンが不飽和カルボン酸に効率的に供与されるため、反応系の塩基の濃度を一定に保つことができる。
本明細書において「pKa」は、従来公知の方法で測定することができ、水に可溶な化合物の場合は水中で、水に不溶な化合物の場合は、ジメチルスルホキシド、又はアセトニトリル中で測定することができる。
また、既知の化合物のpKaは、例えば、Organic Chemistry Info(アメリカ ウィスコンシン大学Reichグループが提供しているデータベース)、Dissociation Constants of organic Acids and Bases(Prof. Liming Zhang@UC Santa Barbaraが公開しているpKa一覧表)に記載の値等を使用することができる。
本実施形態の塩基としては、窒素原子を含み、かつ窒素原子上に非共有電子対を有していることが好ましい。前記塩基は、窒素原子上の非共有電子対を介して、塩基として働き、ラクトン環の開裂によって生成したヒドリド中間体の水素を引き抜き、それに続く還元的脱離による不飽和カルボン酸錯体の生成を進行させる。
前述の塩基の具体例としては、アニリン化合物、N−ジメチルアニリン化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物が例として挙げられる。
塩基は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アニリン化合物としては、下記式(7)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
[式(7)中のXの説明は式(5)と同様であり、xは0〜5の整数を表す]
アニリン化合物としては、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−フッ化アニリン、3−フッ化アニリン、4−フッ化アニリン、2−ヨードアニリン等が例として挙げられ、2−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、2−フッ化アニリン、2−ヨードアニリンが好ましい。
N−ジメチルアニリン化合物としては、下記式(8)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
[式(8)中のXの説明は式(5)と同様であり、xの説明は式(7)と同様である。]
N−ジメチルアニリン化合物としては、3−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、3−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、4−クロロ−N,N−ジメチルアニリン等が例として挙げられる。
ピリジン化合物としては、下記式(9)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
[式(9)中のXの説明は式(5)と同様であり、xの説明は式(7)と同様である。]
ピリジン化合物としては、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2−ブロモピリジン、3−ブロモピリジン、4−ブロモピリジン、2,6−クロロピリジン、2,6−フッ化ピリジン等が例として挙げられ、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2−ブロモピリジン、3−ブロモピリジン、4−ブロモピリジン、2,6−ブロモピリジン、2,6−クロロピリジンが好ましい。
ピラジン合物としては、下記式(10)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2019156790
[式(10)中、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基を示す。yは0〜4の整数を示す。]
として選択されるアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
ピラジン化合物としては、2−メチルピラジン、2−エチルピリジン、2−イソプロピルピラジン、2−メチル−3−エチルピラジン等が例として挙げられ、2−メチルピラジン、2−エチルピリジン、2−イソプロピルピラジンが好ましい。
≪反応条件≫
本実施形態のα,β−カルボン酸の合成方法は、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて、中間体として特定の構造を有する金属ラクトン化合物を形成させると共に前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることを含む、α,β−カルボン酸の合成方法である。
本反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。すなわち、溶媒中に遷移金属錯体、塩基、及びルイス酸を存在させ、そこにアルケン及びCOを導入して、遷移金属錯体と接触させることにより反応を行うことが好ましい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。好ましい溶媒は、THF及びトルエンである。
反応方式については、回分式で行ってもよく、半回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよく、回分式、半回分式及び連続式の組み合わせで行ってもよい。回分式の場合、反応器中の溶媒に、遷移金属錯体、塩基、ルイス酸、アルケン、次いでCOを導入し、反応を行う。半回分式の場合、反応器中の溶媒に遷移金属錯体、塩基、ルイス酸、及びアルケンを予め仕込んでおき、COを連続的に反応器に導入することにより反応を行う。連続式の場合、反応器中の溶媒に遷移金属錯体を仕込んでおき、塩基、ルイス酸、アルケン、及びCOを連続的に反応器に導入することにより反応を行う。また、連続式で行う場合、固定床方式、流動床方式、移動床方式、懸濁床方式や、撹拌混合式又はループ式の反応器内に反応原料を供給しながら、反応混合物の液相を抜き出す方式等の各種の方式で実施することができる。ループ式の反応器を使用する場合、塩基、ルイス酸、アルケン、及びCOの循環を行う循環式が好ましい。撹拌混合式の反応器内で、液相条件下、気体状のアルケン及びCOを使用して回分式又は連続式で実施する場合には、アルケン及びCOを、反応器の気相部及び液相部の何れか一方に供給してもよいし、反応器の気相部及び液相部の両方に供給してもよい。
また、反応装置については、採用する反応形式に応じて、適宜公知の反応装置を使用することができる。
反応温度は、50〜250℃が好ましく、より好ましくは80〜200℃である。また、圧力は、通常、絶対圧で1〜10MPa、好ましくは2〜8MPaである。
また、反応器に供給するアルケンとCOのモル比(アルケン/CO)は、通常0.5〜8であり、好ましくは1〜4である。
反応器に供給するアルケンと遷移金属錯体のモル比(アルケン/遷移金属錯体)は通常1〜100であり、好ましくは2〜50である。
反応器に供給するCOと遷移金属錯体のモル比(CO/遷移金属錯体)は通常1〜100であり、好ましくは1〜25である。
反応を回分式、半回分式、及び上述の連続式でかつ循環式で行う場合のルイス酸の添加量は、遷移金属錯体のモル数100モル%に対して、20〜2000モル%が好ましく、50〜1500モル%がより好ましく、100〜1000モル%がさらに好ましい。ルイス酸の添加量が前記範囲の下限値以上であると、ラクトン環の開裂が効率的に進行し、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が高まる。ルイス酸の添加量が前記範囲の上限値以下であると、ルイス酸の使用量を抑制することができ、経済的である。
反応を回分式、半回分式、及び上述の連続式でかつ循環式で行う場合の塩基の添加量は、遷移金属錯体のモル数100モル%に対して、20〜2000モル%が好ましく、50〜1500モル%がより好ましく、100〜1000モル%がさらに好ましい。塩基の添加量が前記範囲の下限値以上であると、ラクトン環の開裂が効率的に進行し、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が高まる。塩基の添加量が前記範囲の上限値以下であると、塩基の使用量を抑制することができ、経済的である。
(塩基の添加モル数/ルイス酸の添加モル数)で表されるルイス酸の添加モル数に対する塩基の添加モル数は、0.2〜5が好ましく、0.5〜3がより好ましく、0.8〜2がさらに好ましい。ルイス酸の添加モル数に対する塩基の添加モル数が前記範囲の下限値以上であると、ラクトン環の開裂によって生成したヒドリド中間体の水素を引き抜き、それに続く還元的脱離が効率的に進行し、α,β−不飽和カルボン酸の生成効率が高まる。。ルイス酸の添加モル数に対する塩基の添加モル数が前記範囲の上限値以下であると、塩基の量を相対的に減らせるため経済的である。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)BenzP配位子の合成
窒素雰囲気下において、1,2−(ジクロロホスフィノ)ベンゼン(1.6g、5.92mmol)をテトラヒドロフラン(THF)30mLに溶解させ、−78℃に冷却した。t−ブチルマグネシウムクロリドのTHF溶液(1.7M、7.38mL、12.6mmol)を、これに徐々に滴下し、室温にて4時間撹拌した。これを、さらにマグネシウム粒子(40メッシュ、1.12g、46mmol)のTHF(30mL)分散溶液に徐々に滴下し、室温にて18時間撹拌した。その後、THFを真空中にて留去し、ジエチルエーテル20mLに分散後、珪藻土(Celite Corporation製「Celite」(登録商標))上にて、得られた懸濁液をろ過した。真空中にてジエチルエーテルを留去し、目的物の中間体である下式(11)で表されるオイル状のホスファサイクル(1.09g、59%)を得た。
Figure 2019156790
窒素雰囲気下において、ホスファサイクル(528mg、2.1mmol)をジクロロメタン20mLに溶解させ、これにトリフルオロメタンスルホン酸メチル(MeOTf)(360mg、2.2mmol)を加え、室温にて4時間撹拌した。その後、ジクロメタンを真空中にてジクロロメタンを留去し、ジエチルエーテル30mLに分散後、−35℃に冷却した。これにメチルマグネシウムブロミド(MeMgBr)のジエチルエーテル溶液(3.0M、740μL、2.2mmol)を徐々に滴下し、室温にて18時間撹拌した。その後、得られた懸濁液をCelite(登録商標)上にて、ろ過した。ジエチルエーテルを真空中にて留去し、析出した白色固体をペンタン30mLに分散後、再度、Celite(登録商標)上にて、懸濁液をろ過した。真空中にてペンタンを留去し、目的物である下式(12)で表される1,2ビス(t−ブチルメチルホスフィノ)ベンゼン(BenzP)(388mg、66%)を得た。
Figure 2019156790
(2)(BenzP)Ni(COD)金属錯体の合成
1,2ビス(t−ブチルメチルホスフィノ)ベンゼン(BenzP)(338mg、1.20mmol)のTHF溶液10mLを、ニッケルビス1,5−シクロオクタジエン(Ni(COD))(362.7mg、1.32mmol)のTHF溶液15mLに徐々に滴下し、室温にて18時間撹拌した。その後、THFを真空中にて留去し、−35℃に冷却したペンテン10mLを加え、すばやく溶液を分取した(ここで、未反応(過剰)のNi(COD)が沈殿物として残る)。これを、Celite(登録商標)上にて、ろ過した。真空中にてペンタンを留去し、得られた黄色固体を可能な限り少量(約3〜4mL)のジエチルエーテルに溶解させ、−35℃にて24時間静置した。析出した黄色の針状結晶と上澄みを分離し、結晶を真空中にて3時間乾燥させた。これにより、下式(13)で表される遷移金属錯体(BenzP)Ni(COD)を得た。
Figure 2019156790
(3)アクリル酸合成反応
窒素雰囲気下にて(BenzP)Ni(COD)(0.01mmol、4.5mg)、2−ブロモピリジン(0.02mmol、遷移金属錯体に対して2当量)、アルミニウムトリクロライド(AlCl、0.02mmol、遷移金属錯体に対して2当量)を耐圧NMR管に量り取り、d8−THFに懸濁させた。真空ラインに耐圧NMR管を接続し、NMR管を液体窒素で冷却後、内部のガス(おもにN)を脱気した(冷却はそのまま)。その後、真空ラインにエチレンガスが封入されたガスボンベを接続し、エチレンガスをNMR管に導入した(遷移金属錯体に対して4等量)。
一旦、耐圧NMR管を室温に戻し、10分間静置したのち、エチレンガスの導入と同様の方法で、二酸化炭素が封入されたガスボンベを用いて、耐圧NMR管に二酸化炭素(遷移金属錯体に対して4等量)を導入した。耐圧NMR管を50℃で加熱し、31P−NMRならびにH−NMRにて生成物を分析した。24時間後のアクリル酸の収率は21.0%であった。また反応後における塩基である2−ブロモピリジンの残存率(プロトン化されていない塩基の比率)は100%であった(NMRにおける検出限界以下)。
アクリル酸のpKaは4.25であり、2−ブロモピリジンの共役酸のpKaは0.79である。
[比較例1]
塩基にナトリウム2−クロロフェノキシド(2Cl−PhONa)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で実施した。24時間後のアクリル酸の収率は9.0%であった。一方でナトリウム2−クロロフェノキシドは、COと反応してしまい、残存率は0%であった。
ナトリウム2−クロロフェノキシドの共役酸のpKaは8.49である。
[比較例2]
塩基にナトリウム2−クロロフェノキシド(2Cl−PhONa)、ルイス酸にLiIを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で実施した。24時間後のアクリル酸の収率は4.9%であった。一方でナトリウム2−クロロフェノキシドは、COと反応してしまい、残存率は0%であった。
[比較例3]
塩基にナトリウム2−クロロフェノキシド(2Cl−PhONa)、ルイス酸を加えなかったこと以外は実施例1と同様の方法で実施した。24時間後のアクリル酸の収率は0%であった。また、ナトリウム2−クロロフェノキシドは、COと反応してしまい、残存率は0%であった。
[比較例4]
ルイス酸を加えなかったこと以外は実施例1と同様の方法で実施した。24時間後のアクリル酸の収率は0%であり、2−ブロモピリジンの残存率は100%であった。
実施例1、及び比較例1〜4のアクリル酸の収率、及び塩基の残存率を表1に示す。
Figure 2019156790
表1に示すように、本発明を適用した実施例1は、塩基の残存率が100%であり、それに伴い、アクリル酸を高収率で得られることが分かった。

Claims (4)

  1. α,β−不飽和カルボン酸の合成方法であって、遷移金属錯体に、ルイス酸及び塩基の存在下で、アルケンと二酸化炭素とを反応させて、中間体として下記式(1)で表される金属ラクトン化合物を形成させると共に前記金属ラクトン化合物に前記ルイス酸及び前記塩基を作用させることを含み、前記塩基の共役酸の酸乖離定数(pKa1)と前記α,β−不飽和カルボン酸の酸乖離定数(pKa2)との関係がpKa1<pKa2であるα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
    Figure 2019156790
    [式中、Mは、遷移金属を表し、Lはそれぞれ独立して単座配位子であるか、又はLは協働して二座配位子を形成する。]
  2. 前記塩基は窒素原子を含み、前記窒素原子が非共有電子対を有している請求項1に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
  3. 前記塩基がアニリン化合物、N−ジメチルアニリン化合物、ピリジン化合物、及びピラジン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
  4. 前記塩基がハロゲン化アニリン、ハロゲン化ピリジン、及び2−メチルピラジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のα,β−不飽和カルボン酸の合成方法。
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