JP2019151515A - カーボンナノチューブフォレストの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】G/D比が高いCNTを含むCNTフォレストを気相触媒法によって製造する方法を提供する。【解決手段】鉄族元素のハロゲン化物を含む気相触媒を第1のチャンバー14内に供給して、第1のチャンバー内に配置された基板28を気相触媒を含む雰囲気内に存在させる第1のステップ、および第1のチャンバー内に存在する気相触媒に基づき基板のベース面上に生成した触媒を用いて、第1のチャンバー内に供給される炭素源からカーボンナノチューブフォレストを形成する第2のステップを備え、第2のステップでは、第1のチャンバー内の全圧を1×104Pa以上とし、第1のチャンバー内の炭素源の分圧を100Pa以下とすることを特徴とするカーボンナノチューブフォレストの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブフォレストの製造方法に関する。
本明細書において、カーボンナノチューブフォレスト(本明細書において「CNTフォレスト」ともいう。)とは、複数のカーボンナノチューブ(本明細書において「CNT」ともいう。)の合成構造(以下、かかる合成構造を与えるCNTの個々の形状を「一次構造」といい、上記の合成構造を「二次構造」ともいう。)の一種であって、複数のCNTが長軸方向の少なくとも一部について一定の方向(具体的な一例として、基板が備える面の1つの法線にほぼ平行な方向が挙げられる。)に配向するように成長してなるCNTの集合体を意味する。なお、基板から成長させたCNTフォレストの、基板に付着した状態における基板の法線に平行な方向の長さ(高さ)を、「成長高さ」という。
また、本明細書において、CNTフォレストの一部のCNTをつまみ、そのCNTをCNTフォレストから離間するように引っ張ることによって、CNTフォレストから複数のCNTを連続的に引き出すこと(本明細書において、この作業を従来技術に係る繊維から糸を製造する作業に倣って「紡績」ともいう。)によって形成される、複数のCNTが互いに交絡した構造を有する構造体を「CNT交絡体」という。
CNTは、グラフェンからなる外側面を有するという特異的な構造を有するため、機能材料としても構造材料としても様々な分野での応用が期待されている。具体的には、CNTは、機械的強度が高く、軽く、電気伝導特性が良く、耐熱性、熱伝導性などの熱特性が良く、化学的耐腐食性が高く、且つ電界電子放出特性が良いといった優れた特性を有する。したがって、CNTの用途として、軽量高強度ワイヤ、走査プローブ顕微鏡(SPM)の探針、電界放出ディスプレイ(FED)の冷陰極、導電性樹脂、高強度樹脂、耐腐食性樹脂、耐摩耗性樹脂、高度潤滑性樹脂、二次電池や燃料電池の電極、LSIの層間配線材料、バイオセンサーなどが考えられている。このような電気的・熱的用途にCNTを適用する場合には、CNTが有するグラフェン構造に欠陥が少ないことが好ましい。このCNTの構造上の欠陥の程度は、ラマン分光測定を行い、得られたラマンスペクトルにおける、グラフェン構造に由来して1590cm−1付近に現れるピークの強度(Gバンド)の、欠陥由来の1350cm−1付近に現れるピークの強度(Dバンド)に対する比(G/D比)により評価することができる。測定されたCNTのG/D比が高い場合には、そのCNTは、構造上の欠陥が少ないため電気伝導特性や熱伝導性に優れると期待される。
CNTの製造方法の一つとして、特許文献1には、金属系材料の薄膜を蒸着するなどしてあらかじめ基板の表面にスパッタリングなどの手段によって固相の金属触媒層を形成し、その固相の金属触媒層を備える基板を反応炉に配置し、この金属触媒層から成長核となる触媒粒子を基板上に形成し、反応炉に炭化水素ガスを供給して基板上にCNTフォレストを形成する方法が開示されている。以下、上記のように成長核としての固相の触媒粒子を基板上に形成し、その固相の触媒粒子を備えた基板が設けられた反応炉に炭化水素系の材料を供給してCNTフォレストを製造する方法を、固相触媒法という。
固相触媒法によりCNTフォレストを高効率で製造する方法として、特許文献2には、炭素を含有しかつ酸素を含有しない原料ガスと、酸素を含有する触媒賦活物質と、雰囲気ガスを、所定の条件を満たしつつ供給して固相の触媒層に接触させる方法が開示されている。
上記の方法とは異なる方法によりCNTフォレストを製造する方法も開示されている。すなわち、特許文献3には、塩化鉄を昇華させ、これを前駆体として成長核となる触媒を基板上に形成し、その触媒を用いてCNTフォレストを形成する方法が開示されている。この方法は、ハロゲンを含有し気相の状態にある物質を触媒前駆体(気相触媒)とし、この物質を用いて触媒を形成する点で、特許文献1や2に開示される技術とは本質的に相違している。本明細書において、特許文献3に開示されるCNTフォレストの製造方法を気相触媒法ともいう。
特開2004−107196号公報 特許第4803687号公報 特開2009−196873号公報
かかる気相触媒法によるCNTフォレストの製造方法は、上記の固相触媒法によるCNTフォレストの製造方法とは触媒の形成プロセスが異なることに起因して、触媒の作用が相違する可能性がある。それゆえ、固相触媒法と気相触媒法とは本質的に異なるCNTフォレストの製造方法であると考えられる。したがって、気相触媒法によって製造されたCNTフォレストを構成するCNTの構造を制御する指針はいまだ明確でない。
本発明は、G/D比が高いCNTを含むCNTフォレストを気相触媒法によって製造する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
〔1〕カーボンナノチューブフォレストの製造方法であって、鉄族元素のハロゲン化物を含む気相触媒を第1のチャンバー内に供給して、前記第1のチャンバー内に配置された基板を前記気相触媒を含む雰囲気内に存在させる第1のステップ、および前記第1のチャンバー内に存在する前記気相触媒に基づき前記基板のベース面上に生成した触媒を用いて、前記第1のチャンバー内に供給される炭素源からカーボンナノチューブフォレストを形成する第2のステップを備え、前記第2のステップでは、前記第1のチャンバー内の全圧を1×10Pa以上とし、前記第1のチャンバー内の前記炭素源の分圧を100Pa以下とすることを特徴とする製造方法。
〔2〕前記第2のステップで形成された前記カーボンナノチューブフォレストに対して側面からラマン分光測定を行ったときに、G/D比が8以上である部分を有する、上記〔1〕に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔3〕前記第2のステップでは、前記第1のチャンバー内の全圧を2×10Pa以上とし、前記第1のチャンバー内の前記炭素源の分圧を40Pa以下とする、上記〔1〕または上記〔2〕に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔4〕前記鉄族元素のハロゲン化物は、塩化物を含む、上記〔1〕から上記〔3〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔5〕前記鉄族元素は、鉄を含む、上記〔1〕から上記〔4〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔6〕前記第2のステップでは、不活性ガスを供給して全圧の調整を行う、上記〔1〕から上記〔5〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔7〕前記第2のステップは、前記気相触媒と前記炭素源との気相反応を含む、上記〔1〕から上記〔6〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
〔8〕前記気相触媒は、前記鉄族元素のハロゲン化物が前記第1のチャンバー内で昇華したものである、上記〔1〕から上記〔7〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
本発明に係るCNTの製造方法によれば、G/D比が高い、具体的には6以上のCNTを含むCNTフォレストを安定的に製造することが可能である。
本発明の第1の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置の構成を概略的に示す図である。 図1に示される製造装置が備える気相触媒供給装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の第2の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置の一例の構成を概略的に示す図である。 実施例1から実施例4に結果に基づくアセチレン分圧とG/D比との関係を示すグラフである。 実施例4−1に係るCNTフォレストのラマンスペクトルである。 実施例4−1に係るCNTフォレストを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を示す画像である。 実施例4−1に係るCNTフォレストを構成するCNTを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した結果である。 図7の一部を拡大観察した画像である。 実施例5および実施例6の結果に基づくアセチレン分圧とG/D比との関係を示すグラフである。 実施例7に係るCNTフォレストを紡績して糸状のCNT交絡体を得た結果を示す画像である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.CNTフォレストの製造装置
本発明の第1の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るCNTフォレストの製造方法に使用される製造装置の構成を概略的に示す図である。
図1に示されるように、CNTフォレストの製造装置10は、電気炉12を備えている。この電気炉12は、所定方向A(原料ガスが流れる方向)に沿って延在する略円筒形状を呈している。電気炉12の内側には、CNTが形成される領域である成長領域を有する第1のチャンバーである反応容器管14が通されている。反応容器管14は、例えば石英といった耐熱材からなる略円筒形の部材であり、電気炉12よりも細い外径を有し、所定方向Aに沿って延在している。図1では、反応容器管14の成長領域内にCNTフォレストが成長する面であるベース面を備える基板28が配置されている。すなわち、CNTフォレストの製造装置10における成長領域は、反応容器管14内における基板28が配置された領域を含む。
電気炉12は、ヒータ16および熱電対18を備える。CNTフォレストの製造装置10において、第1の温度調整装置はヒータ16および熱電対18により構成される。ヒータ16は、反応容器管14の所定方向Aのある一定の領域(換言すれば、略円筒形状の反応容器管14の軸方向の一定の領域であり、以下「加熱領域」ともいう。)を囲むように配設され、反応容器管14の加熱領域における管内雰囲気の温度を上昇させるための熱を発生する。熱電対18は、電気炉12の内側において反応容器管14の加熱領域の近傍に配置され、反応容器管14の加熱領域における管内雰囲気の温度に関連する温度を表わす電気信号を出力可能である。ヒータ16および熱電対18は、制御装置20と電気的に接続されている。
所定方向Aにおける反応容器管14の上流側(図1では左側の一端)には、供給装置22が接続されている。供給装置22は、原料ガス供給装置30、気相触媒供給装置31、および補助ガス供給装置33を備える。供給装置22は制御装置20と電気的に接続され、供給装置22が備える各供給装置とも電気的に接続されている。
原料ガス供給装置30(第1の供給装置)は、CNTフォレストを構成するCNTの原料となる炭素化合物(例えばアセチレンなどの炭化水素)、すなわち炭素源を含む原料ガスを反応容器管14の内部(特に成長領域)へ供給することができる。原料ガス供給装置30からの原料ガスの供給流量は、マスフローなどの公知の流量調整機器を用いて調整することができる。
気相触媒供給装置31は、気相触媒を反応容器管14の内部(特に成長領域)へ供給することができる。本明細書において「気相触媒」とは、ハロゲンを含有する触媒前駆体であって反応容器管14の成長領域において気相の状態をとり得る物質およびそのハロゲンを含有する触媒前駆体に基づき形成された浮遊物質の総称として用いる。気相触媒を構成する物質のうち、少なくとも一部は基板28のベース面上に付着し、その付着した物質に基づいて、CNTフォレスト形成に資する触媒の少なくとも一部が形成される。
図2に示されるように、気相触媒供給装置31は、次に説明するユニット構造を有する。すなわち、気相触媒供給装置31は、その内部に固相の鉄族元素含有材料Mを収容可能な供給ユニット用チャンバー31Aおよび供給ユニット用チャンバー31A内の鉄族元素含有材料Mの温度を調整可能な供給ユニット用温度調整装置を備える。CNTフォレストの製造装置10において、第2の温度調整装置は供給ユニット用温度調整装置により構成される。図2では、供給ユニット用温度調整装置は、ヒータ31Bおよび図示しない熱電対などの温度計測装置により構成される。供給ユニット用温度調整装置は、供給ユニット用チャンバー31A内の鉄族元素含有材料Mの温度を調整することができる。
気相触媒供給装置31は、供給ユニット用チャンバー31A内にハロゲン含有物質を供給可能なハロゲン含有物質供給装置31C(第2の供給装置)を備える。供給ユニット用チャンバー31A内にて、供給ユニット用温度調整装置(ヒータ31Bなどを含む。)により所定の温度に調整された鉄族元素含有材料Mは、ハロゲン含有物質供給装置31Cにより供給されたハロゲン含有物質と反応して気相触媒の一種を生成可能とされる。気相触媒供給装置31は、上記の反応により形成された気相触媒を含む、供給ユニット用チャンバー31A内に存在する気相物質を、供給ユニット用チャンバー31A外に放出可能な放出装置31Dを備える。図1ではその放出先が反応容器管14の内部であり、気相触媒供給装置31から気相触媒を含む気相物質が反応容器管14内(特に成長領域)に供給される。ハロゲン含有物質供給装置31Cおよび放出装置31Dは、これらのそれぞれを通過する物質の量を調整する手段を備えていてもよい。
供給ユニット用チャンバー31A内に収容される固相の鉄族元素含有材料Mの具体的な収容方法や、供給ユニット用チャンバー31A内の鉄族元素含有材料Mの具体的な形状は限定されない。鉄族元素含有材料Mが鉄系材料である場合を例として説明すれば、鉄族元素含有材料Mは、塊状の鉄部材であってもよいし、平板状の鉄部材であってもよい。あるいは、スチールウールのような形状を有していてもよいし、メッシュ状の形状を有していてもよい。さらには、粉体の形状を有していてもよい。
気相触媒供給装置31は、供給ユニット用チャンバー31A内の圧力を調整することを可能とする排気系(圧力調整装置)を有していてもよいし、供給ユニット用チャンバー31A内の雰囲気を調整する(具体例として、内部を不活性ガスや水素にてパージすることが挙げられる。)ことを可能とするガス供給系(ガス供給装置)を有していてもよい。このような排気系やガス供給系を有することにより、鉄族元素含有材料Mとハロゲン含有物質との反応をより安定的に生じさせることができる。
補助ガス供給装置33は、上記の原料ガス、気相触媒以外のガス、たとえば窒素やアルゴンなどの不活性ガス(本明細書においてかかるガスを「補助ガス」と総称する。)を反応容器管14の内部(特に成長領域)へ供給することができる。補助ガス供給装置33からの補助ガスの供給流量は、マスフローなどの公知の流量調整機器を用いて調整することができる。
所定方向Aにおける反応容器管14の下流側(図1では右側)の他端には、圧力調整バルブ23(圧力調整装置の一部)および排気装置24(同前)が接続されている。圧力調整バルブ23は、バルブの開閉の程度を変動させることにより、反応容器管14内の圧力を調整することができる。排気装置24は、反応容器管14の内部を真空排気する。排気装置24の具体的種類は特に限定されず、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、メカニカルブースター、ターボ分子ポンプ、クライオポンプなどを単独でまたはこれらを組み合わせて用いることができる。圧力調整バルブ23および排気装置24は、制御装置20に電気的に接続される。また、反応容器管14の内部には、その内部圧力を計測するための圧力計13が設けられている。圧力計13は、制御装置20に電気的に接続され、反応容器管14の内部の圧力を表わす電気信号を制御装置20に出力することができる。
制御装置20は、上記のように、ヒータ16、熱電対18、供給装置22、圧力計13、圧力調整バルブ23および排気装置24と電気的接続され、これらの装置等から出力された電気信号を入力したり、その入力した電気信号に基づいてこれらの装置等の動作を制御したりする。以下、制御装置20の具体的な動作について例示する。
制御装置20は、熱電対18から出力された反応容器管14の内部温度に関する電気信号を入力し、その電気信号に基づいて決定されたヒータ16の動作に係る制御信号をヒータ16に対して出力することができる。制御装置20からの制御信号を入力したヒータ16は、その制御信号に基づいて、発生熱量を増減させる動作を行い、反応容器管14の加熱領域の内部温度を変化させる。
制御装置20は、圧力計13から出力された反応容器管14の加熱領域の内部圧力に関する電気信号を入力し、その電気信号に基づいて決定された圧力調整バルブ23および排気装置24の動作に係る制御信号を圧力調整バルブ23および排気装置24に対して出力することができる。制御装置20からの制御信号を入力した圧力調整バルブ23および排気装置24は、その制御信号に基づいて、圧力調整バルブ23の開き具合を変更したり、排気装置24の排気能力を変更させたりするなどの動作を行う。
制御装置20は、あらかじめ設定されたタイムテーブルに従って、各装置等の動作を制御するための制御信号を各装置に対して出力することができる。たとえば、供給装置22が備える原料ガス供給装置30、気相触媒供給装置31、および補助ガス供給装置33のそれぞれからの物質供給の開始および停止ならびに供給流量を決定する制御信号を供給装置22に出力することができる。その制御信号を入力した供給装置22は、その制御信号に従って、各供給装置を動作させて、原料ガスなど各物質の反応容器管14内への供給を開始したり停止したりする。
制御装置20は、気相触媒供給装置31を構成する各部の動作を制御することができる。すなわち、制御装置20は、気相触媒供給装置31が備える熱電対などの温度計測装置からの電気信号に基づいてヒータ31Bの動作に関する制御信号を出力することができる。その制御信号を入力したヒータ31Bは、その制御信号に従って、供給ユニット用チャンバー31A内の鉄族元素含有材料Mの温度を変化させる。制御装置20は、ハロゲン含有物質供給装置31Cの動作に関する制御信号を出力することができる。その制御信号を入力したハロゲン含有物質供給装置31Cは、その制御信号に従って、供給ユニット用チャンバー31A内へのハロゲン含有物質の供給量を変化させる。この供給量の変化によって鉄族元素含有材料Mとハロゲン含有物質との反応の程度を変動させることにより、気相触媒の生成量などを調整することができる。制御装置20は、放出装置31Dの動作に関する制御信号を出力することができる。その制御信号を入力した放出装置31Dは、その制御信号に従って、鉄族元素含有材料Mとハロゲン含有物質との反応により生成した気相触媒を、供給ユニット用チャンバー31A外、すなわち、図1では反応容器14内に供給するタイミングや量を調整することができる。気相触媒供給装置31が上記のように追加の排気系やガス供給系を備える場合には、制御装置20は、これらの動作に関する制御信号を出力することができる。
本発明の第2の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置を、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るCNTフォレストの製造方法に使用される製造装置の構成を概略的に示す図である。図3に示されるように、本発明の第2の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置50は、図1に示される本発明の第1の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置10と対比すれば、供給装置22が、気相触媒供給装置31を有しない。その代わりに、鉄族元素のハロゲン化物(本明細書において「鉄族元素ハロゲン化物MX」ともいう。)が反応容器管14内に配置される。図3に示される構成では、載置基板SB上に鉄族元素ハロゲン化物MXは載置されている。その他の構成は図1に示される本発明の第1の実施形態に係るCNTフォレストの製造装置10と共通するので、説明を省略する。
本発明の一実施形態に係るCNTフォレストの製造装置は、上記のCNTフォレストの製造装置10,50の構造上の特徴を複数備えていてもよい。すなわち、CNT装置が気相触媒供給装置31を備えて気相触媒を含む気相物質を反応容器管14内に供給可能であるとともに、反応容器管14内(例えば載置基板SB上)に鉄族元素ハロゲン化物MXが配置されていてもよい。
2.CNTフォレストの製造方法
本発明の一実施形態に係るCNTフォレストの製造方法を説明する。本実施形態に係るCNTフォレストの製造方法は、第1のステップおよび第2のステップを備える。
(1)第1のステップ
本実施形態に係るCNTフォレストの製造方法では、第1のステップとして、鉄族元素ハロゲン化物MXを含む気相触媒を、第1のチャンバー内に供給する。固相の鉄族元素含有材料Mと気相のハロゲン含有物質との反応は、CNTフォレストの製造装置10を用いた場合のように反応容器管14外で行われてもよい。あるいは、CNTフォレストの製造装置50を用いた場合のように反応容器管14内の鉄族元素ハロゲン化物MXが気相となることによって気相触媒が第1のチャンバー内に供給されてもよい。こうして、反応容器管14内に配置された基板28を、気相触媒を含む雰囲気内に存在させる。
ここで、本実施形態に係るCNTフォレストの製造方法では、基板28は、ケイ素(Si)の酸化物を含む材料からなる面であるベース面をその表面の少なくとも一部として備えることが好ましい。
基板28の具体的な構成は限定されない。その形状は任意であり、平板や円筒のような簡単な形状であってもよいし、複雑な凹凸が設けられた3次元形状を有していてもよい。また、基板28の全面がベース面であってもよいし、基板28の表面の一部だけがベース面であって他の部分はベース面ではない、いわゆるパターニングされた状態であってもよい。
ベース面は、Siの酸化物を含む材料からなる面であり、第2のステップにおいてベース面上にCNTフォレストは形成される。ベース面を構成する材料はSiの酸化物を含んでいる限りその詳細は限定されない。ベース面を構成する材料の具体的な一例として、石英(SiO)が挙げられる。ベース面を構成する材料の他の例として、SiO(x≦2)が挙げられる。SiO(x≦2)からなるベース面として、酸素を含有する雰囲気でSiを主体とするSi基板を加熱してSi基板上に形成されたSiの熱酸化膜の面が例示される。酸素を含有する雰囲気でSiターゲットをスパッタリングしてSiの酸化物を堆積させて得られる層の面もSiO(x≦2)からなるベース面の例として挙げられる。ベース面を構成する材料のさらに別の例として、Siを含む複合酸化物が挙げられる。この複合酸化物を構成するSiおよび酸素以外の元素として、Fe、Ni、Alなどが例示される。ベース面を構成する材料のさらにまた別の例として、Siの酸化物に窒素、ホウ素などの非金属元素が添加された化合物が挙げられる。
ベース面を構成する材料は基板28を構成する材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。具体例を示せば、基板28を構成する材料が石英からなりベース面を構成する材料も石英からなる場合や、基板28を構成する材料はSi基板からなりベース面を構成する材料はその酸化膜からなる場合が例示される。
前述のように、第1のステップでは、製造装置10では気相触媒供給装置31を用いて、製造装置50では基板28上の鉄族元素ハロゲン化物MXを加熱して昇華させることなどにより気相状態にして、反応容器管14内に気相触媒を供給し、気相触媒を含む雰囲気内に上記のベース面を備える基板28を存在させる。いずれのCNTフォレストの製造装置10、50を用いても、鉄族元素含有材料Mの組成およびハロゲン含有物質の種類あるいは鉄族元素ハロゲン化物MXの種類を適切に選ぶことにより、様々な種類の気相触媒を反応容器管14内に供給することができる。
鉄族元素含有材料Mは、鉄族元素(すなわち、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種)を含有する材料であり、その具体的な組成は限定されない。鉄族元素含有材料Mの具体例として鉄系合金(鋼)、Co基合金、Ni基合金が挙げられ、合金元素として、他の鉄族元素、Cr、Mn、Ti、Nb、V、Si、P、W、Moなどが例示される。鉄族元素含有材料Mは、一種類の材料から構成されていてもよいし、複数種類の材料から構成されていてもよい。入手の容易さ、CNTの形成の容易さなどの観点から、鉄族元素含有材料Mに含まれる鉄族元素は、鉄(Fe)を含むことが好ましい。
ハロゲン含有物質は、ハロゲン(すなわち、F、Cl、BrおよびIの少なくとも一種)を含有する材料であり、その具体的な組成は限定されない。ハロゲン含有物質の具体例として、フッ化水素(HF)、塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)などが挙げられる。ハロゲン含有物質は、一種類の物質から構成されていてもよいし、複数種類の物質から構成されていてもよい。
本実施形態に係る気相触媒は、鉄族元素ハロゲン化物MXを含む。鉄族元素ハロゲン化物MXの具体例として、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケル、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、臭化鉄、臭化コバルト、臭化ニッケル、ヨウ化鉄、ヨウ化コバルト、ヨウ化ニッケルなどが挙げられる。鉄族元素ハロゲン化物MXは、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)のように、鉄族元素のイオンの価数に応じて異なる化合物が存在する場合もある。鉄族元素ハロゲン化物MXは一種類の物質から構成されていてもよいし、複数種類の物質から構成されていてもよい。また、鉄族元素ハロゲン化物MXは、気相状態となる前の固相状態では水和水を含んでいてもよい。
図3に示される製造装置50を用いた場合の具体例を示せば、反応容器管14の加熱領域の内部に鉄族元素ハロゲン化物MXとして塩化鉄(II)の無水物を載置基板SB上に配置し、反応容器管14の加熱領域の内部を加熱するとともに負圧にして塩化鉄(II)の無水物を昇華させると、塩化鉄(II)の蒸気を含む気相触媒を反応容器管14内に存在させることができる。
気相触媒供給装置31を用いて気相触媒を供給する場合には、第1のステップにおける反応容器管14内雰囲気の温度は特に限定されない。常温(約25℃)であってもよいし、加熱されていてもよいし、冷却されていてもよい。後述するように第2のステップにおいて反応容器管14の成長領域は加熱されていることが好ましいことから、第1のステップにおいてもその成長領域を加熱しておいて、ステップ間の遷移時間を短縮することが好ましい場合もある。
図3に示される製造装置50を用いた場合のように、基板28上に鉄族元素ハロゲン化物MXを載置する場合には、鉄族元素ハロゲン化物MXが昇華などによって気相の状態となる程度まで反応容器管14の成長領域の温度を高めればよい。鉄族元素ハロゲン化物MXの具体例である塩化鉄(II)の昇華温度は大気圧(1.0×10Pa程度)において950K程度であるが、反応容器管14の加熱領域の内部の雰囲気を負圧とすることにより、昇華温度を低下させることができる。
(2)第2のステップ
第2のステップでは、第1のチャンバー、すなわち反応容器管14内に存在する気相触媒に基づき基板28のベース面上に生成した触媒を用いて、第1のチャンバー(反応容器管14)内に供給される原料ガスに含有される炭素源からCNTを形成する。具体的には、鉄族元素ハロゲン化物MXを含む気相触媒と炭素源との気相反応を含む反応プロセスによって、基板28上に触媒を生成させる。気相触媒と炭素源との気相反応によって、鉄族元素M、ハロゲンXおよび炭素(C)を含む物質が生成している可能性がある。このため、基板28上に生成した触媒は、固相触媒法において用いられる触媒に比べて、格子間隔が広くなっている可能性や格子間隔が変動しやすくなっている(液相としての性質をある程度有している)可能性があり、さらに、触媒内にあらかじめ炭素(C)が含まれていて、触媒からCNTが成長しやすい状態になっている可能性がある。
第2のステップでは、第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧を1×10Pa以上とし、第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の分圧を100Pa以下とする。この分圧は、第1のチャンバー(反応容器管14)内に供給する気体の供給流量の総和に対する炭素源の供給流量の割合と、第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧とから求めることができる。
このように全圧を設定することにより、反応容器管14内の気体の平均自由行程が短くなり、基板28のベース面上に位置する触媒に気体が衝突しやすくなる。その結果、触媒の温度が比較的高い状態を維持しやすくなって、格子不整合の大きい触媒から生成するCNTの構造上の欠陥が低減している可能性がある。すなわち、気体衝突の頻度が多くなって触媒の温度が高くなることにより、触媒を構成する物質は液相としての振る舞いをしやすくなる(格子長が変動しやすくなる)。このため、触媒から生成するグラフェンが、固相の触媒から生成する場合に比べて触媒の格子の影響を受けにくくなって、生成したCNTに欠陥が低減する可能性がある。反応容器管14内の気体の平均自由行程を短くする観点から、第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧は、2×10Pa以上であることが好ましい場合があり、5×10Pa以上であることがより好ましい場合がある。反応容器管14内の気体の平均自由行程を短くする観点からは第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧の上限は設定されない。製造作業の安全性の確保などの観点から、第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧は陽圧にしないこと、すなわち大気圧を上限とすることが好ましい。
上記のように第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の全圧を1×10Pa以上とすると、基板28のベース面上に位置する触媒に気体の衝突頻度が高まる。このため、炭素源の分圧が高い場合には、触媒表面において炭素源の分解する反応が進行する以上に炭素源が触媒に衝突する可能性が高くなる。そのように過度に炭素源が触媒に衝突すると、触媒表面で分解された炭素量が触媒内部に拡散する炭素量より多くなり、余剰分が触媒表面に堆積する。これにより、曝露触媒表面積が低減し、炭素源分解量が低減し触媒の失活原因となる。そこで、本実施形態に係る製造方法では、第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の分圧を100Pa以下とする。このように炭素源の分圧を低くすることにより、触媒表面において炭素源を分解する反応が律速段階となりにくく、換言すれば、炭素源が触媒表面に到達する過程が律速となる拡散律速となりやすくなる。このため、炭素源や炭素源から生じたアモルファスカーボンが触媒表面に堆積しにくく、触媒の失活が抑制される。また、炭素源の分圧が高いことは、触媒失活に至る前の成長初期過程においてCNT析出部への炭素供給量が多くなっているため、CNT成長速度が高くなり、結晶性が低下してG/D比が低下しやすくなる場合もある。
こうした触媒の失活の抑制およびCNTのG/D比の低下の抑制をより安定的に実現する観点から、第2ステップにおける炭素源の分圧は、80Pa以下であることが好ましい場合があり、60Pa以下であることがより好ましい場合があり、40Pa以下であることが特に好ましい場合がある。触媒の失活の抑制およびCNTのG/D比の低下の抑制をより安定的に実現する観点からは、第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の分圧の下限は設定されない。炭素源の分圧が過度に低い場合には触媒におけるCNTの生成が安定的に行われなくなり、CNTの成長速度の低下が懸念される。したがって、生産性の確保の観点から、第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の分圧は0.1Paを上限とすることが好ましい。
炭素源となる原料ガスの種類は特に限定されないが、通常、炭化水素系材料が用いられ、アセチレンが具体例として挙げられる。原料ガスを反応容器管14内(特に成長領域)に存在させる方法は特に限定されない。前述の製造装置10,50のように、原料ガス供給装置30から原料ガスを供給することにより存在させてもよいし、原料ガスを生成させることが可能な材料を反応容器管14の内部にあらかじめ存在させ、その材料から原料ガスを生成して反応容器管14の内部に拡散させることによって第2のステップを開始してもよい。原料ガス供給装置30から原料ガスを供給する場合には、流量調整機器を用いて、反応容器管14の内部への原料ガスの供給流量を制御することが好ましい。
第2のステップにおいて、第1のチャンバー(反応容器管14)内の炭素源の分圧を100Pa以下としつつ、その全圧を1×10Pa以上とするためには、アルゴン、窒素などの不活性ガスからなる補助ガスを、適宜、第1のチャンバー(反応容器管14)に供給すればよい。具体的には、製造装置10、50の補助ガス供給装置33から補助ガスの供給流量を制御することが例示される。
通常、供給流量はsccm単位で表され、1sccmとは、273K、1.01×10Paの環境下に換算した気体についての毎分1mlの流量を意味する。反応容器管14内に供給される気体の流量は、図1および図4に示されるような構成の製造装置10,50の場合には、反応容器管14の内径、圧力計13において測定される圧力などに基づいて設定される。圧力計13の圧力が1×10Pa以上1×10Pa(大気圧)以内の場合における、アセチレンからなる炭素源を含む原料ガスの供給流量およびアルゴンからなる補助ガスの供給流量の総和として、1000sccm以上5000sccm以下が例示される。
第2のステップにおける第1のチャンバー(反応容器管14)内の気体の流速は遅いことが、触媒への気体の衝突頻度を高める観点から好ましい。この観点から、第1のチャンバー(反応容器管14)内の全圧が500Torr(67kPa)の場合には、上記の流速は、50cm/s以下であることが好ましく、25cm/s以下であることがより好ましく、10cm/s以下であることがさらに好ましく、5cm/s以下であることが特に好ましい。触媒への気体の衝突頻度を高める観点からは第1のチャンバー(反応容器管14)内の気体の流速の下限は設定されない。上記の流速が過度に低い場合には、結果的に触媒への炭素源の衝突頻度が過度に低下して、CNTの成長が不安定になる。この観点から、第1のチャンバー(反応容器管14)内の気体の流速は0.1mm/s以上であることが好ましい。
第2のステップにおける反応容器管14の成長領域の温度は、気相触媒が成長領域に適切な量存在する条件において、原料ガスを用いて基板28のベース面上にCNTフォレストを形成することができる限り、特に限定されない。前述のように、第1のステップ中の基板28のベース面上の温度は低めに設定することが当該ベース面上の触媒形成に資する場合もあり、この場合には、第2のステップにおける反応容器管14の成長領域の温度は、第1のステップ中の成長領域の温度から高まるように変更されることもある。
第2のステップ中のベース面の温度は、反応容器管14の成長領域の温度を調整することにより制御してもよい。第2のステップ中の基板28のベース面の温度は8×10K以上に加熱されていることが好ましい。基板28のベース面の温度が8×10K以上である場合には、気相触媒と原料ガスとの相互作用がベース面上で生じやすく、基板28のベース面上にCNTフォレストが成長しやすい。この相互作用をより生じやすくさせる観点から、第2のステップ中のベース面の温度は9×10K以上に加熱されていることが好ましく、1.0×10K以上に加熱されていることがより好ましく、1.1×10K以上に加熱されていることが特に好ましい。第2のステップ中の基板28のベース面の温度の上限は特に限定されないが、過度に高い場合には、ベース面を構成する材料や基板を構成する材料(これらは同一である場合もある。)が固体としての安定性を欠く場合もあるため、これらの材料の融点や昇華温度を考慮して上限を設定することが好ましい。反応容器管14の負荷を考慮すれば、基板28の上限温度は1.5×10K程度とすることが好ましい。
3.CNTフォレスト
本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストは、その側面を観察すると、図6に示されるように、複数のCNTが一定の方向に配向するように配置された構造を有する部分を備える。本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストは、その側面からラマン分光測定を行ったときに、G/D比が6以上である部分を有する。これは、CNTフォレストを構成するCNTがG/D比が6以上の部分を有することを意味する。本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストは、好ましい一形態において、上記の測定により得られるG/D比が8以上である。かかるG/D比が8以上であるCNTは、そのCNTを構成するグラフェン構造の欠陥が少ないため、電気伝導特性や熱伝導性に特に優れると期待される。通常、G/D比が8以上の部分を有するCNTを得るためには、生成させたCNTに含まれるグラフェン構造を有しない物質がグラフェン構造を有するように、生成させたCNTを2000℃以上に加熱する熱処理工程が必要とされるが、本実施形態に係る製造方法では、前述のとおり、ベース面上にCNTフォレストが形成された状態で、CNTフォレストの側面からラマン分光測定を行ったときに、G/D比が8以上である部分を有することができる。
このように高いG/D比を有するCNTが特段の熱処理を必要とすることなく得られる理由は明確でないが、全圧が1×10Pa以上であるため、ベース面上に形成された触媒への気体の衝突頻度が高く、触媒の温度が比較的高くなっていると考えられ、それゆえ、触媒内での格子間距離が比較的変動しやすくなっている可能性がある。その結果、触媒からグラフェン構造が格子不整合の程度が少ない状態で生成しやすく、欠陥の少ないCNTが得られている可能性がある。また、炭素源の分圧が100Pa以下であるため、触媒の表面への炭素源の到達頻度が適切であって、触媒の表面に未分解の炭素源やCNT形成にとって有効とはいえない炭素源の分解物や反応物が触媒上に蓄積しにくい状態となっている可能性がある。こうした環境では、触媒内の炭素からグラフェン構造が生成する反応が優先的に進行し、格子欠陥の原因となるような副反応が生じにくくなっている可能性がある。
より好ましい一形態では、本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストは、その側面からラマン分光測定を行ったときに、G/D比が9以上である部分を有する。そのようなCNTフォレストを構成するCNTは、電気伝導特性や熱伝導性に特に優れると期待される。
本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストは紡績性を有することができる。具体的には、特許文献3に記載されるように、CNTフォレストを構成するCNTをつまんで、これをCNTフォレストから離間する向きに引き出す(紡績する)ことによって、互いに交絡した複数のCNTを備える構造体(CNT交絡体)を得ることができる。CNTフォレストを紡績することにより、CNTフォレストを構成するCNTが連続的に引き出されてCNT交絡体は形成される。本明細書において、CNTフォレストを備える部材であって、CNT交絡体を形成することが可能な部材を「紡績源部材」ともいう。
4.CNT交絡体
紡績源部材から得られるCNT交絡体は、様々な形状を有することができる。具体的な一例として線状の形状が挙げられ、他の一例としてウェブ状の形状が挙げられる。線状のCNT交絡体は、これを得るべく紡績源部材を引き出す際に撚りを加えれば、繊維と同等に取り扱うことができるうえ、電気配線としても用いることができる。また、ウェブ状のCNT交絡体は、そのままで不織布と同様に取り扱うことができる。上記のとおり、本実施形態に係る製造方法により製造されたCNTフォレストが備えるCNTはG/D比が6以上である部分を有するため、本実施形態に係る紡績源部材から製造されたCNT交絡体は、電気伝導特性や熱伝導性に優れると期待される。
CNT交絡体の紡績方向長さは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。一般的には、紡績長さが2mm以上であれば、コンタクト部、電極など部品レベルへのCNT交絡体の適用が可能となる。また、紡績長さが1cm以上、好ましくは10cm以上であって、線状のCNT交絡体は、紡績源部材からの紡績方法(具体例として撚りの程度が挙げられる。)を変更することによって、これを構成するCNTの配向の程度を任意に制御することができる。したがって、紡績源部材からの紡績方法を変更することによって、機械的特性や電気的特性が異なるCNT交絡体を製造することが可能である。
CNT交絡体は、その交絡の程度を小さくすれば、線状の場合には細くなり、ウェブ状の場合には薄くなる。その程度が進めば、CNT交絡体を目視で確認すること困難となり、このときそのCNT交絡体は透明繊維、透明配線、透明ウェブ(透明なシート状部材)として使用されうる。
CNT交絡体は、CNTのみからなっていてもよいし、他の材料との複合構造体であってもよい。前述のように、CNT交絡体は複数のCNTが互いに絡み合ってなる構造を有することから、この絡み合った複数のCNTの間には、不職布を構成する複数の繊維と同様に、空隙が存在する。この空隙部に、粉体(金属微粒子、シリカ等の無機系粒子や、エチレン系重合体等の有機系粒子が例示される。)を導入したり、液体を含浸させたりすることによって、容易に複合構造体を形成することができる。
また、CNT交絡体を構成するCNTの表面が改質されていてもよい。CNTは外側面がグラフェンから構成されるため、CNT交絡体はそのままでは疎水性であるが、CNT交絡体を構成するCNTの表面に対して親水化処理を行うことによって、CNT交絡体を親水化することができる。そのような親水化の手段の一例として、めっき処理が挙げられる。この場合には、得られたCNT交絡体は、CNTとめっき金属との複合構造体となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(実施例1から実施例4)
図3に示される製造装置50を用いてCNTフォレストを製造した。反応容器管14の加熱領域の内部に、鉄族元素ハロゲン化物MXとして塩化鉄(II)の無水物150mgを載置基板SB上に配置した。また、ベース面(20mm×5mm)がSiの熱酸化膜の面である熱酸化膜付きSi基板を反応容器管14の加熱領域の内部に配置した。なお、上記のSiの熱酸化膜は、Si基板を大気圧で1100℃に1時間加熱することにより形成した。排気装置24を用いて反応容器管内の全圧を1×10−1Pa以下に排気した。続いて、ヒータ16を用いて、反応容器管14の加熱領域を6.0×10Kに加熱した。その結果、載置基板SB上の塩化鉄(II)の無水物は昇華して、気相触媒としての塩化鉄(II)を含む雰囲気となった反応容器管14の内部に熱酸化膜付きSi基板が存在する状態となった。こうして第1のステップを完了させた。
次に、反応容器管14内の全圧を1×10−1Pa以下の状態を維持して、反応容器管14の全領域の温度を1.1×10Kとした。続いて、昇圧時間を30秒間として、炭素源としてのアセチレンおよび補助ガスとしてのアルゴンを反応容器管14内に供給して、反応容器管14内の全圧を表1に示される圧力に到達させた。こうして第2のステップを開始した。各実施例における反応容器管14内のアセチレンの分圧を表1に示した。子の分圧は、アセチレンの供給流量およびアルゴンの供給流量から算出したものである。
アセチレンの供給開始から15〜30分間経過した時点でヒータ16による加熱を停止し、加熱停止から3分間経過後、アセチレンおよびアルゴンの供給を停止した。
その結果、表1に示すように、熱酸化膜付きSi基板のベース面上に、CNTフォレストまたはCNTメッシュ(CNTフォレストのように複数のCNTがベース面の法線方向に沿うようには成長せず、複数のCNTがベース面上に広がるように成長し、結果、ベース面上に複数のCNTがメッシュ状に配置されたもの)が得られた。
ラマン分光光度計(堀場製作所製「XploRA」)を用いて、得られたCNTフォレストの側面についてのラマンスペクトルを、CNTフォレストごとに3点測定した。得られたラマンスペクトルからG/D比を算出した。CNTメッシュについては、ベース面の法線方向からラマンスペクトルをCNTメッシュごとに3点測定して、G/D比を算出した。G/D比の平均値およびエラーバーを表1に示す。また、表1に基づき作成した、各全圧におけるアセチレン分圧とG/D比との関係を図4に示す。
G/D比が9.8であった実施例4−1に係るCNTフォレストのラマンスペクトルを図5に示す。また、実施例4−1に係るCNTフォレストを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果を図6に示す。実施例4−1に係るCNTフォレストを構成するCNTを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した結果を図7および図8に示す。図7に示されるように、実施例4−1に係るCNTフォレストを構成するCNTは直径が約100nmである部分を有することが確認された。CNTの内孔近傍を拡大して観察すると、図8に示されるように複数のグラフェンが極めて欠陥が少ない状態で積層されていることが確認された。図8の拡大倍率でCNTをさらに観察したところ、実施例4−1に係るCNTフォレストを構成するCNTは約140層の多層グラフェン構造を有することが確認された。
(実施例5および実施例6)
実施例1から4と同様の製造方法であるが、第2のステップにおけるアセチレンおよびアルゴンの流量を調整して、全圧を20Torr(2660Pa)とし、反応容器管14内の気体の流速を5cm/秒(実施例5)または25cm/秒(実施例6)に設定して、熱酸化膜付きSi基板のベース面上にCNTフォレストを成長させた。その結果、表2に示されるような結果が得られた。実施例5−1および実施例6−1では、CNTフォレストの成長高さが過度に低く、CNTフォレストの側面からラマンスペクトルを測定することができなかった。このため、これらの実施例においては、ラマン測定を行わなかった。
表2および表2に基づき作成した図9に示されるように、反応容器管14内の気体の流速が遅いほどCNTフォレストのG/D比は高くなる傾向がみられた。
(実施例7)
図3に示される製造装置50を用いてCNTフォレストを製造した。反応容器管14の加熱領域の内部に、鉄族元素ハロゲン化物MXとして塩化鉄(II)の無水物150mgを載置基板SB上に配置した。また、ベース面(20mm×5mm)がSiの熱酸化膜の面である熱酸化膜付きSi基板を反応容器管14の加熱領域の内部に配置した。なお、上記のSiの熱酸化膜は、Si基板を大気圧で1100℃に1時間加熱することにより形成した。排気装置24を用いて反応容器管内の全圧を1×10−1Pa以下に排気した。続いて、ヒータ16を用いて、反応容器管14の加熱領域を6.0×10Kに加熱した。その結果、載置基板SB上の塩化鉄(II)の無水物は昇華して、気相触媒としての塩化鉄(II)を含む雰囲気となった反応容器管14の内部に、熱酸化膜付きSi基板が存在する状態となった。こうして第1のステップを完了させた。
次に、反応容器管14内の全圧を1×10−1Pa以下の状態を維持して、反応容器管14の全領域の温度を1.1×10Kとした。続いて、昇圧時間を30秒間として、炭素源としてのアセチレンを30sccmおよび補助ガスとしてのアルゴンを2160sccmで供給して、反応容器管14内の全圧を500Torr(67kPa)に到達させた。こうして第2のステップを開始し、全圧が500Torr(67kPa)である状態を8分間維持して、CNTフォレストをベース基板上に成長させた。8分間経過後、アセチレンおよびアルゴンの供給を停止し、その後、ヒータ16による加熱を停止した。
得られたCNTフォレストをベース基板から引きはがし、成長方向からみて矩形の形状を有するCNTフォレストの短辺側をピンセットでつまみ、ピンセットをCNTフォレストの成長方向からみて矩形の形状の長辺に沿った方向に引っ張ることで、糸状のCNT交絡体を得た。その結果、図10に示されるように糸状のCNT交絡体の長さ(紡績長さ)は、数十cmまたはそれ以上であり、70cm程度となる場合もあった。
本発明に係るCNTの製造方法により製造されたCNTフォレストから得られるCNT交絡体は、例えば電気配線、発熱体、歪センサ、透明電極シートなどとして好適に用いられる。また、CNTフォレストを構成するCNTは、二次電池の電極材料として好適に用いられる。
10,50…CNTフォレストの製造装置
12…電気炉
13…圧力計
14…反応容器管(第1のチャンバー)
16…ヒータ(第1の温度調整装置の一部)
18…熱電対(第1の温度調整装置の一部)
20…制御装置
22…供給装置
23…圧力調整バルブ(圧力調整装置の一部)
24…排気装置(圧力調整装置の一部)
28…基板
30…原料ガス供給装置(第1の供給装置)
31…気相触媒供給装置
33…補助ガス供給装置
31A…供給ユニット用チャンバー
31B…ヒータ(第2の温度調整装置の一部)
31C…ハロゲン含有物質供給装置(第2の供給装置)
31D…放出装置
M…鉄族元素含有材料
MX…鉄族元素ハロゲン化物
SB…載置基板

Claims (8)

  1. カーボンナノチューブフォレストの製造方法であって、
    鉄族元素のハロゲン化物を含む気相触媒を第1のチャンバー内に供給して、前記第1のチャンバー内に配置された基板を前記気相触媒を含む雰囲気内に存在させる第1のステップ、および
    前記第1のチャンバー内に存在する前記気相触媒に基づき前記基板のベース面上に生成した触媒を用いて、前記第1のチャンバー内に供給される炭素源からカーボンナノチューブフォレストを形成する第2のステップを備え、
    前記第2のステップでは、前記第1のチャンバー内の全圧を1×10Pa以上とし、前記第1のチャンバー内の前記炭素源の分圧を100Pa以下とする
    ことを特徴とする製造方法。
  2. 前記第2のステップで形成された前記カーボンナノチューブフォレストに対して側面からラマン分光測定を行ったときに、G/D比が8以上である部分を有する、請求項1に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  3. 前記第2のステップでは、前記第1のチャンバー内の全圧を2×10Pa以上とし、前記第1のチャンバー内の前記炭素源の分圧を40Pa以下とする、請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  4. 前記鉄族元素のハロゲン化物は、塩化物を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  5. 前記鉄族元素は、鉄を含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  6. 前記第2のステップでは、不活性ガスを供給して全圧の調整を行う、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  7. 前記第2のステップは、前記気相触媒と前記炭素源との気相反応を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
  8. 前記気相触媒は、前記鉄族元素のハロゲン化物が前記第1のチャンバー内で昇華したものである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブフォレストの製造方法。
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