JP2019149958A - 新規細菌及びそれを用いた植物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[2]受託番号が、NITE P−02593である、請求項1に記載の細菌。
[3]前記[1]又は[2]に記載の細菌を植物に接触させる工程を含む、ストレスに対する耐性が向上した植物の製造方法。
[4]ストレスが、塩ストレス、温度ストレス又は乾燥ストレスである、前記[3]記載の製造方法。
[5]前記[1]又は[2]に記載の細菌を植物に接触させる工程を含む、植物の発芽を促進する方法。
[6]植物が、トマト、シソ、ニンジン、イネ、コムギ、ホウレンソウ、キュウリ、ナス、トウモロコシ、コマツナ、タマネギ、イモ、タケノコ、レンコン、ゴボウ、ブロッコリー、アスパラ、オクラ、ピーマン、ゴーヤ、カボチャ、ダイズ、マメ、ゴマ、ラッカセイ、ハクサイ、ミズナ、シュンギク、キャベツ、レタス、ネギ、ショウガ、ニンニク、オオバ、ミョウガ、スプラウト、ニラ、ダイコン、キノコ、イチゴ、カキ、ナシ、ミカン、ブドウ、リンゴ、モモ、キク、チューリップ及びバラからなる群より選択される農作物である、前記[3]〜[5]のいずれか記載の方法。
新規微生物の単離
農家圃場より採取したカブの可食部を表面殺菌し、組織内部の切片を菌の分離源とした。組織切片を、イオン交換水にリン酸二水素カリウム4g、リン酸水素二ナトリウム6g、硫酸マグネシウム・7水和物0.2g、グルコース2.0g、グルコン酸2.0g、クエン酸2.0g、硫酸第一鉄・7水和物1mg、ホウ酸10μg、硫酸マンガン・1水和物11.19μg、硫酸亜鉛・7水和物124.6μg、硫酸銅・5水和物78.22μg、モリブデン酸10μg、寒天15gを溶解し1リットルとしてオートクレーブ滅菌した培地に、ACC(別滅菌)を3.0mMになるように添加して固化した寒天培地上に30分置床し、切片を取り除いた後28℃にて7日間培養した。寒天培地上に出現したコロニーを釣菌し、上記の培地で画線培養を数回行い、ACCを資化し生育する菌を純化した。
単離した菌株は、PCR法によりACCデアミナーゼ合成酵素遺伝子の有無を確認し、遺伝子断片の増幅が確認された菌株を選抜した。また、分離した菌株をリョクトウに接種し、ACC添加によるリョクトウ茎の生長阻害および肥大生長を軽減する作用を指標として、これらの能力が高い菌株を選抜した。選抜した菌株のACCデアミナーゼ活性は、Penrose and Glickの方法(Penrose DM and Glick BR, 2003, Methods for isolating and characterizing ACC deaminase-containing plant growth-promoting rhizobacteria. Physiol. Plant 118, 10-15)により確認した。これらの条件で菌を選抜した結果、ACCの分解能力に優れた菌を取得し、細菌Xとした。
新規微生物の分類
実施例1で単離した細菌Xの菌学的性質を特定するとともに遺伝子の解析により、細菌Xの分類を試みた。
先ず、細菌Xの菌学的性質を以下のように特定した。普通寒天(Nutrient agar)平板培地上において淡黄色の円形コロニーが観察され、周縁部は全縁を示した。細胞形態は桿菌であり、グラム染色性は陰性を示した。生理・生化学的性状試験の結果を表1に示す。なお、表1において、+は反応が陽性、−は反応が陰性を示す。生理・生化学的性状から、細菌XはPseudomonas属に帰属すると考えられたが、性状が完全に一致する種は見当たらなかった。
次に、細菌Xの遺伝子解析を次のように行った。すなわち、Mulet らの方法(Mulet M, Lalucat J, and Garcia-Valdes E. 2010, DNA-sequence-based analysis of the Pseudomonas species. Environ Microbiol., 12, 1513-1530; Mulet M, Gomilab M, Scottaa C, Sancheza D, Lalucat J, and Garcia-Valdes E. 2012, Concordance between whole-cell matrix-assisted laser-desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry and multilocas sequence analysis approaches in species discrimination within genus Pseudomonas. Syst. Appl. Microbiol., 35, 455-464)に従い、rRNA遺伝子、DNA gyrase beta-subunit遺伝子(gyrB)、RNA polymerase sigma 70 subunit遺伝子(rpoD)、RNA polymerase beta-subunit遺伝子(rpoB)の4遺伝子塩基配列に基づくマルチローカス遺伝子分析により、帰属分類群を推した。細菌XのrRNA遺伝子、DNA gyrase beta-subunit遺伝子(gyrB)、RNA polymerase sigma 70 subunit遺伝子(rpoD)、RNA polymerase beta-subunit遺伝子(rpoB)の塩基配列を、それぞれ配列番号1、2、3および4に示す。4遺伝子を用いた分子系統樹を図1に示す。マルチローカス遺伝子分析の結果、細菌XはPseudomonas jesseniiと最も近縁であると考えられたが、両者の間には距離があるため、異なる種であると推定された。
そこで、4遺伝子を用いたマルチローカス遺伝子分析により最も近縁と考えられたPseudomonas jesseniiの基準株(ATCC700870)を取り寄せ、基準株と細菌XとのDNA-DNAハイブリッド形成試験を行い、種の異同を決定した。3回のDNA-DNAハイブリッド形成試験の平均値を表2に示す。3回の試験による相同値の平均は、細菌の同種の定義とされる70%以下の値を示したことから、細菌XとPseudomonas jesseniiは、互いに別種であると結論づけられた。
以上の検討結果から、細菌Xは従来公知のPseudomonas属の微生物には分類されない新種の微生物として同定することができた。なお、細菌Xは2017年12月14日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P−02593として寄託した。
受託番号NITE P−02593にて受託されている細菌を使用した。この細菌は、カブの内部組織から単離され、ACCデアミナーゼ活性を有する。
トマトの栽培
トマト種子(Solanum lycopersicum;品種:桃太郎)をタキイ種苗株式会社(日本、京都)から購入し、80%エタノールで1分間、次に2%次亜塩素酸ナトリウムで5分間処理し、そして無菌水で5回洗浄して表面を無菌化した。種子をムラシゲスクーグ培地にまき、28℃で8日間おいて発芽させた。
細菌は、トリプシン大豆ブロス(TSB)にて28℃で暗室で、24時間150rpmの振動を与えて増殖させた。培地を6℃にて、100×100rpmで10分間遠心分離し、無菌水で2回洗浄して、600nmで光学密度0.4の希釈にして、約107細胞個/mlの細菌懸濁液とした。
7日齢の実生を2時間、上記細菌懸濁液又は無菌水100mlに浸した。次に、実生を園芸用培土(げんきくんシリーズ;片倉コープアグリ株式会社;日本、東京)3000gを入れた3Lプラスチックポット(直径20cm)に移植した。培土は、1kgあたりに窒素260mg、リン3900mg及びカリウム200mgを含んでいた。温度を28℃/20℃(昼/夜)に調整した温室で、自然光にて栽培した。各ポットには、2日に一回、水やりをした。ポットに移植してから1週間後に、上記細菌懸濁液1mlを植物の周囲の培養土に与えた。
NaCl処理
ポットに移植してから3週間後に、植物に水道水(0mM NaCl)又は75mM NaClを1ポットあたり500ml灌水し、21日間栽培した。
成長パラメータの測定
葉の面積を、自動葉面積計(AAM−8;林電工株式会社;日本、東京)にて測定した。また、シュートの長さを測定し、シュート及び根の新鮮重量を測定した。葉及び茎については、80℃で48時間乾燥し、乾燥重量も測定した。
結果を、表3に示す。この結果より、細菌Xの接種により塩ストレスによる生育低下が大幅に改善され、塩を添加しない植物の生育と同等になることが明らかになった。
葉の水分含量を、以下の式により算出した。
正味の光合成速度、気孔伝導度及び蒸散速度は、持ち運び可能なオープンフローガス交換システム(LI−6400;Li−Cor;米国)を用いて、温室にて午前8時半から11時半に最上部の葉で測定した。
結果を表4に示す。細菌Xは、塩ストレス下においても葉の水分含量を高く維持し、クロロフィル含量を増大させ、光合成速度を高く維持する顕著な効果が認められた。
イネの栽培
光学密度が0.3である、本願発明の細菌懸濁液を用意した。細菌を無菌的に発芽したイネ(品種:日本晴)の根に接触させ、ポットに移植後43日で、成長を確認した。対照は、根を滅菌したイオン交換水に浸した。細菌Xを接触させて栽培したイネは、対照よりも明らかに成長が促進されて丈が長かった。また、地上部及び地下部ともに、対照よりも新鮮重量が増大していた。結果を、図3に示す。
イネの高温ストレス耐性
光学密度が0.3である、本願発明の細菌懸濁液を用意し、育苗したイネ(コシヒカリ)の根に30分間接触させ、ポットに移植した。菌非接種の対照は、根を滅菌したイオン交換水に浸した。ポットに移植したイネは、ガラス温室で28日間栽培した後、一部のイネを40℃のインキュベーターに移し、2日間の高温処理を行った。常温処理のイネは、そのままガラス温室に維持した。高温処理を終えたイネは、ガラス温室に戻し13日間栽培した後生育を調査した。結果を表6に示す。なお、表に示した数値は、対照および細菌X接種の常温処理区の値を100にしたときの高温処理区の相対値を表す。細菌Xを接触させたイネでは、高温処理によるイネの茎数および根の新鮮重の低下が軽減され、高温ストレスに対する耐性が向上したことが示された。
シソ及びトマトにおける発芽率
発芽の条件は、実施例3と同様とした。本願発明の菌懸濁液をシソ種子及びトマト種子に接触させ、寒天培地に播種し発芽率を調べた。シソについては4日目から15日目までの発芽率を、トマトについては2日目から5日目までの発芽率を調べた。結果を、図4に示す。細菌Xを接触させた種子では、発芽率の上昇が観察された。
Claims (6)
- シュードモナス属に属する細菌であって、配列番号1、2、3および4で示される塩基配列と、それぞれ90%以上の同一性を有する塩基配列をゲノムDNAに含む、細菌。
- 受託番号が、NITE P−02593である、請求項1に記載の細菌。
- 請求項1又は2に記載の細菌を植物に接触させる工程を含む、ストレスに対する耐性が向上した植物の製造方法。
- ストレスが、塩ストレス、温度ストレス又は乾燥ストレスである、請求項3記載の製造方法。
- 請求項1または2に記載の細菌を植物に接触させる工程を含む、植物の生育および発芽を促進する方法。
- 植物が、トマト、シソ、ニンジン、イネ、コムギ、ホウレンソウ、キュウリ、ナス、トウモロコシ、コマツナ、タマネギ、イモ、タケノコ、レンコン、ゴボウ、ブロッコリー、アスパラ、オクラ、ピーマン、ゴーヤ、カボチャ、ダイズ、マメ、ゴマ、ラッカセイ、ハクサイ、ミズナ、シュンギク、キャベツ、レタス、ネギ、ショウガ、ニンニク、オオバ、ミョウガ、スプラウト、ニラ、ダイコン、キノコ、イチゴ、カキ、ナシ、ミカン、ブドウ、リンゴ、モモ、キク、チューリップ及びバラからなる群より選択される農作物である、請求項3〜5のいずれか一項記載の方法。
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