以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
〔第一実施例〕
図1乃至図7に基づき本発明が実施される高圧燃料供給ポンプの第1実施例を説明する。図1は細部に符号を付すことができないので、説明中の符号で図1にその符号がないものは図2乃至図7の拡大図にその符号が記載されている。
ポンプハウジング1には、一端が開放された有底の筒状空間を形成する窪み部12Aが設けられ、当該窪み部12Aには開放端側からシリンダ20が挿入されている。シリンダ20の外周とポンプハウジング1の間は圧接部20Aによってシールされている。またシリンダ20にはピストンプランジャ2が滑合しているので、シリンダ20の内周面とピストンプランジャ2の外周面との間は滑合面間に侵入する燃料でシールされる。その結果、ピストンプランジャ2の先端と窪み部12Aの内壁面およびシリンダ20の外周面の間に加圧室12が画成されている。
ポンプハウジング1の周壁から加圧室12に向けて筒状の孔200Hが形成されており、この筒状の孔200Hには電磁駆動型吸入弁機構200の吸入弁部INVおよび電磁駆動機構部EMDの一部が挿入されている。電磁駆動型吸入弁機構200の外周面と筒状の孔200Hとの接合面200Rがレーザ溶接によって接合されることで、ポンプハウジング1の内部が大気から密閉されている。電磁駆動型吸入弁機構200が取付けられることによって密封された筒状の孔200Hは低圧燃料室10Aとして機能する。
加圧室12を挟んで筒状の孔200Hと対向する位置にはポンプハウジング1の周壁から加圧室12に向けて筒状の孔60Hが設けられている。この筒状の孔60Hには吐出弁ユニット60が装着されている。吐出弁ユニット60は先端にバルブシート61が形成され、中心に吐出通路となる通孔11Aを備えたバルブシート部材61Bを備える。バルブシート部材61Bの外周にはバルブシート61側周囲を包囲するバルブホルダー62が固定されている。バルブホルダー62内にはバルブ63とこのバルブ63をバルブシート61に押し付ける方向に付勢するばね64が設けられている。筒状の孔60Hの反加圧室側開口部はポンプハウジング1に溶接で固定された吐出ジョイント11が設けられている。
電磁駆動型吸入弁機構200は電磁的に駆動されるプランジャロッド201を備える。
プランジャロッド201の先端にはバルブ203が設けられ、電磁駆動型吸入弁機構200の端部に設けられたバルブハウジング214に形成されたバルブシート214Sと対面している。
プランジャロッド201の他端には、プランジャロッド付勢ばね202が設けられており、バルブ203がバルブシート214Sから離れる方向にプランジャロッドを付勢している。バルブハウジング214の先端内周部にはバルブストッパS0が固定されている。
バルブ203はバルブシート214SとバルブストッパS0との間に往復動可能に保持されている。バルブ203はとバルブストッパS0との間にはバルブ付勢ばねS4が配置されており、バルブ203はバルブ付勢ばねS4によってバルブストッパS0から離れる方向に付勢されている。
バルブ203とプランジャロッド201の先端とは互いに反対方向にそれぞれのばねで付勢されているが、プランジャロッド付勢ばね202の方が強いばねで構成してあるので、プランジャロッド201がバルブ付勢ばねS4の力に抗してバルブ203がバルブシートから離れる方向(図面右方向)に押し、結果的にバルブ203をバルブストッパS0に押し付けている。
このため、プランジャロッド201は、電磁駆動型吸入弁機構200がOFF時(電磁コイル204に通電されていないとき)には、プランジャロッド付勢ばね202によってプランジャロッド201を介して、バルブ203を開弁する方向に付勢している。従って電磁駆動型吸入弁機構200がOFF時には、図1,図2,図3(A)のように、プランジャロッド201,バルブ203は開弁位置に維持される(詳細構成は後述する)。
燃料は、燃料タンク50から低圧ポンプ51によってポンプハウジング1の燃料導入口としての吸入ジョイント10へ導かれている。
コモンレール53には、複数のインジェクタ54,圧力センサ56が装着されている。
インジェクタ54は、エンジンの気筒数にあわせて装着されており、エンジンコントロールユニット(ECU)600の信号に応じてコモンレール53に送られてきた高圧燃料を各気筒に噴射する。また、ポンプハウジング1に内蔵されたリリーフ弁機構(図示しない)は、コモンレール53内の圧力が所定値を超えたとき開弁して余剰高圧燃料を吐出弁6の上流側に戻す。
ピストンプランジャ2の下端に設けられたリフタ3は、ばね4にてカム7に圧接されている。ピストンプランジャ2はシリンダ20に摺動可能に保持されており、エンジンカムシャフト等により回転されるカム7により、往復運動して加圧室12内の容積を変化させる。シリンダ20はその下端部外周がシリンダホルダ21で保持され、シリンダホルダ21をポンプハウジング1に固定することによってポンプハウジング1にメタルシール部20Aで圧接される。
シリンダホルダ21にはピストンプランジャ2の下端部側に形成された小径部2Aの外周をシールするプランジャシール5が装着されている。加圧室内にシリンダ20とピストンプランジャ2の組体を挿入し、シリンダホルダ21の外周に形成した雄ねじ部21Aをポンプハウジング1の窪み12Aの開放側端部内周に形成した雌ねじ部のねじ部1Aにねじ込む。シリンダホルダ21の段部21Dがシリンダ20の反加圧室側端部周縁に係止した状態でシリンダホルダ21がシリンダ20を加圧室側に押すことで、シリンダ20のシール用段部20Aをポンプハウジング1に押し付けて、メタル接触によるシール部を形成する。
Oリング21BはエンジンブロックENBに形成された取付け孔EHの内周面とシリンダホルダ21の外周面との間をシールする。Oリング21Cはポンプハウジング1の窪み12Aの反加圧室側端部内周面とシリンダホルダ21の外周面との間をねじ部21A(1A)の反加圧室側の位置でシールする。
ポンプハウジング1の反加圧室側端部外周に溶接部1Cで固定された取付けフランジ1Dはシリンダホルダ21の端部外周をエンジンブロックENBの取付け孔EHに挿入した状態で、ねじ固定補助スリーブ1Eを介してねじ1Fでエンジンブロックにねじ止めされ、これによってポンプがエンジンブロックに固定される。
吸入ジョイント10から低圧燃料室10Aまでの通路の途中にはダンパ室10Bが形成されており、この中に二枚金属ダイアフラム式の金属ダイアフラムダンパ80がダンパホルダ30(上側ダンパホルダ30A,下側ダンパホルダ30B)に挟持された状態で収納されている。ダンパ室10Bはポンプハウジング1の上面外壁部に形成された環状の窪みの外周部にダンパカバー40の筒状側壁の下端部を溶接接合することで形成される。この実施例では吸入ジョイント10はダンパカバー40の中央に溶接により固定されている。
金属ダイアフラムダンパ80は、上下一対の金属ダイアフラム80Aと80Bとを突合せその外周部を全周に亘って溶接して内部をシールしている。上側ダンパホルダ30Aの内周側下端の環状端縁部が金属ダイアフラムダンパ80の溶接部80Cより内側で金属ダイアフラムダンパ80の上側の環状縁部に当接している。下側ダンパホルダ30の内周側上端の環状端縁部が金属ダイアフラムダンパ80の溶接部80Cより内側で金属ダイアフラムダンパ80の下側の環状縁部に当接している。かくして金属ダイアフラムダンパ80は環状縁部の上下面で上側ダンパホルダ30A,下側ダンパホルダ30Bに挟み付けられている。
ダンパカバー40の外周は筒状に構成され、ポンプハウジング1の筒状部1Gに嵌合され、このときダンパカバー40の内周面が上側ダンパホルダ30Aの上端環状面に当接して金属ダイアフラムダンパ80をダンパホルダ30ごとポンプハウジング1の段部1Hに押し付けることで、金属ダイアフラムダンパ80はダンパ室内に固定される。この状態で、ダンパカバー40の周囲がレーザ溶接され、ダンパカバー40がポンプハウジング1に接合され固定される。
二枚式金属ダイアフラム80Aと80Bによって形成された中空部にはアルゴンのような不活性ガスが封入されており、外部の圧力変化に応じてこの中空部が体積変化をすることによって、脈動減衰機能を奏する。金属ダイアフラムダンパ80とダンパカバー40との間の燃料通路80Uは上ダンパホルダ30Aに形成された通路30Pと、上ダンパホルダ30Aの外周とポンプハウジング1の内周面との間に形成された通路80Pを介して燃料通路としてのダンパ室10Bと繋がっている。ダンパ室10Bはダンパ室10Bの底壁としてのポンプハウジング1に形成した連通孔10Cによって電磁駆動型の吸入弁20の低圧燃料室10Aと連通されている。
ピストンプランジャ2の小径部2Aとシリンダ20と滑合する大径部2Bとのつながり部は円錐面2Kで繋がっている。円錐面の周囲にはプランジャシールとシリンダ20の下端面との間に燃料副室250が形成されている。燃料副室250はシリンダ20とピストンプランジャ2との滑合面から漏れてくる燃料を捕獲する。
ポンプハウジング1の内周面とシリンダ20の外周面とシリンダホルダ21の上端面との間に区画形成された環状通路21Gは、ポンプハウジング1に貫通形成された縦通路250Bによって一端がダンパ室10Bに接続され、シリンダホルダ21に形成された燃料通路250Aを介して燃料副室250に繋がっている。かくして、ダンパ室10Bと燃料副室250とは縦通路250B,環状通路21G,燃料通路250Aによって連通されている。
ピストンプランジャ2が上下(往復動)するとテーパー面2Kが燃料副室の中で往復動するので燃料副室250の容積が変化する。燃料副室250の容積が増加するとき、縦通路250B,環状通路21G,燃料通路250Aを介してダンパ室10Bから燃料副室250に燃料が流れ込む。燃料副室250の容積が減少するとき、縦通路250B,環状通路21G,燃料通路250Aを介して燃料副室250からダンパ室10Bへ燃料が流れ込む。
バルブ203が開弁位置に維持された状態(コイル204が無通電状態)でピストンプランジャ2が下死点から上昇すると、加圧室内に吸入された燃料は開弁中のバルブ203から低圧燃料室10Aに溢流(スピル)し、連通孔10Cを介してダンパ室10Bに流れる。かくしてダンパ室10Bでは吸入ジョイント10からの燃料,燃料副室250からの燃料,加圧室12からの溢流燃料、さらにはリリーフ弁(図示しない)からの燃料が合流するように構成されている。その結果それぞれの燃料が有する燃料脈動がダンパ室10Bで合流し、金属ダイアフラムダンパ80によって吸収される。
図2において、破線で囲んだ部分が図1のポンプ本体部分を示す。電磁駆動型吸入弁200は環状に形成されたコイル204の内周側に、電磁駆動機構部EMDのボディを兼ねた有底のカップ状のヨーク205を備える。ヨーク205は内周部に固定コア206、とアンカー207がプランジャロッド付勢ばね202を挟んで収納されている。図3(A)に詳細に示されるように固定コア206はヨーク205の有底部に圧入によって強固に固定されている。アンカー207はプランジャロッド201の反バルブ側端部に圧入により固定され、固定コア206との間に磁気空隙GPを介して対面している。コイル204はカップ状のサイドヨーク204Yの中に収納されており、サイドヨーク204Yの開放端部の内周面をヨーク205の環状フランジ部205Fの外周部で圧入嵌合することで両者が固定されている。ヨーク205とサイドヨーク204Y,固定コア206,アンカー207によって磁気空隙GPを横切る閉磁路CMPがコイル204の周囲に形成されている。ヨーク205の磁気空隙GPの周囲に対面する部分は肉厚が薄く形成されており、磁気絞り205Sを形成している。これにより、ヨーク205を通って漏洩する磁束が少なくなり、磁気空隙GPを通る磁束を増加することができる。
図3(A),図3(B)に示すようにヨーク205の開放側端部筒状部205Gの内周部には軸受部214Bを有するバルブハウジング214が圧入により固定されており、プランジャロッド201はこの軸受209を貫通してバルブハウジング214の反軸受209側端部内周部に設けられたバルブ203のところまで延びている。
図4(A)に拡大して示すようにバルブハウジング214の反軸受214B側端部の環状段付内周面214DにはバルブストッパS0の3つの圧入面部SP1−SP3が圧入されレーザ溶接によって固定されている。内周面214Dの圧入段部の幅と3つの圧入面部SP1−SP3の圧入方向の幅は同一寸法に形成されている。
プランジャロッド201の先端部とバルブストッパS0の間にはバルブ203がバルブ付勢ばねS4を挟んで往復動可能に装着されている。バルブ203は一側の面がバルブハウジング214に形成されたバルブシート214Sに対面し、他側の面がバルブストッパS0に対面する環状面部203Rを備える。環状面部203Rの中心部にはプランジャロッド201の先端まで延びる有底の筒状部を有し、有底の筒状部は底部平面部203Fと円筒部203Hとから構成されている。円筒部203Hはバルブシート214Sの内側においてバルブハウジング214に形成される開口部214Pを通って低圧燃料室10A内まで突出している。
プランジャロッド201の先端は低圧燃料室10Aでバルブ203のプランジャロッド側端部の平面部203Fの表面に当接している。バルブハウジング214の軸受214Bと開口部214Pとの間の筒状部には周方向に4つの燃料通孔214Qが等間隔に設けられている。この4つの燃料通孔214Qはバルブハウジング214の内外の低圧燃料室10Aを連通している。円筒部203Hの外周面と開口部214Pの周面との間にはバルブシート214Sと環状面部203Rとの間の環状燃料通路10Sに繋がる筒状の燃料導入通路10Pが形成されている。
バルブストッパS0は環状面部S3の中心部にバルブ203の有底筒状部側に突出する円筒面部SGを備えた突出部STを有し、当該円筒面部SGがバルブ203の軸方向へのストロークをガイドするガイド部として機能する(以後、円筒面部SGをバルブガイドとも呼ぶ)。
バルブ付勢ばねS4はバルブストッパS0の突出部STのバルブ側端面SHとバルブ203の有底筒状部の底面との間に保持されている。
バルブ203がバルブストッパS0の円筒面部SGでガイドされて全開位置にストロークすると、バルブ203の環状面部203Rの中心部に形成された環状突起部203SがバルブストッパS0の環状面部S3(幅HS3)の受け面S2(幅HS2)に接触する。
このとき環状突起部203Sの周囲には環状空隙SGPが形成される。この環状空隙SGPはバルブ203が閉弁方向に移動を始める際に加圧室側の燃料の圧力P4をバルブ203に作用させて、バルブ203が素早くバルブストッパS0から離れるようにする早離れ機能を奏する。
図4(B)に示すようにバルブストッパS0はバルブストッパS0の外周面に特定の間隔を置いて3箇所に形成された圧入面部SP1−SP3を備える。また圧入面部SP1(SP2,SP3)相互の間には周方向に角度θで径方向の幅がH1の切り欠きSN1−SN3を備える。バルブストッパS0の複数の圧入面部SP1−SP3はバルブシート214Sの下流側でバルブハウジング214の円筒内周面に圧入嵌合されており、圧入嵌合部と圧入嵌合部の間には、バルブストッパの周面と前記バルブハウジング214の内周面との間に周方向に角度θに亘って幅H1の3個のバルブシート下流側燃料通路S6が形成されている。このバルブシート下流側燃料通路S6はバルブ203の外周面のさらに外側に面積の大きい燃料通路として形成されるので、バルブシート214Sに形成される環状燃料通路10Sより通路面積を大きくできる。その結果、加圧室への燃料の流入や、加圧室からの燃料のスピルに対して通路抵抗にならないので、燃料の流れがスムースになる。
図4(B)においてバルブ203の外周面の直径D1はバルブストッパS0の切り欠き部の直径D3よりわずかに小さく構成されている。その結果図3(B)において、燃料が燃料流R5に沿って加圧室から低圧燃料室,ダンパ室10Bに流れるスピル状態のとき、バルブ203の環状面部203Rに矢印P4で示す加圧室12側の燃料の静的および動的流体力が作用しにくい。したがってこの状態でバルブ203をバルブストッパS0に押し付ける力を付与するプランジャロッド付勢ばね202の力は流体力P4に打勝つ必要がないのでその分だけ弱いばねを用いることができる。その結果バルブ203の閉弁タイミングでプランジャロッド付勢ばね202の力に抗してアンカー207を磁気的に固定コア206に吸引して、図4(A)に示すようにプランジャロッド201をバルブ203から引き離す際の電磁力が小さくてすむ。これはコイル204の巻き数を少なくでき、その分だけ電磁駆動機構部EMDを小型にできることを意味する。
図3(A),図3(B)および図4(A),図4(B)に示すように、バルブ203の環状面部203R直径D1はその中心部に設けられたバルブストッパS0の突出部STの円筒面部SGによって形成されるバルブガイドを受け入れる内周面の直径D2の1.5〜3倍に構成した。またその外側に形成したバルブストッパS0の環状面部S3(幅HS3)の受け面S2(幅HS2)に接触する環状突起部203Sの放射方向の幅VS1はその外側に形成されている環状空隙SGPの幅VS2より小さく構成した。さらにまたバルブシート214はバルブ203の環状面部203Rの外周から内側に幅VS3の部分に形成されている。その結果バルブ203が開弁するときの低圧燃料室10A側からの燃料の作用力とバルブ203の閉弁動作時に加圧室側からバルブに作用する燃料の作用力もバルブ203の半径方向に均一にバランス良く作用するのでバルブ203の径方向のガタ付もバルブ203の中心軸に対して傾斜方向に傾倒させる力も少なくなり、バルブストッパS0の円筒面部SGによるガイドとの相乗効果でバルブ203の開閉弁動作がスムースになる。これは直径が数ミリメートルで重さが数グラムの小さなバルブを流速の速いしかも短時間の間に流れの方向が反転する場所で使用する際には重要な効果である。
図4(A)に示すようにこの実施例ではバルブ203が閉弁した瞬間にはプランジャロッド201は電磁力で図面左方に吸引されているのでその先端はバルブ203の平面部203Fから離れ両者間に隙間201Gが形成される。このとき低圧燃料室10A内の圧力はピストンプランジャ2が下死点から上昇中のため燃料副室250内の容積が増加した分だけダンパ室10Bおよび低圧燃料室10Aから燃料を補充することになるので低圧燃料室10A内の圧力はその分だけ燃料副室250の容積が減少していたときより低くなる。
この低くなった圧力はバルブ203の平面部203Fのプランジャロッド201の先端が接触していた面積部分にも作用するので加圧室側と低圧室側の圧力差が大きくなり、バルブ203の閉弁動作はより素早くなる。
また吸入弁部INVが差し込まれる直径DS1の挿入孔200Hは差込み方向の中間部にテーパー部TAを備え、このテーパー部TAよりも加圧室側の直径DS3は直径DS1より小径に構成している。吸入弁部INVの先端部に位置するバルブハウジング214の円筒状部214F,214Gの外径は先端部外周の区間SF2(円筒状部214G)で区間SF1(円筒状部214F)より小径に構成している。区間SF1の区間においては円筒状部214Fの外径が挿通孔200Hの直径DS1よりも大きくなっていて、締まり嵌めでポンプハウジング1の挿通孔200Hに嵌合される。区間SF2では円筒状部214Gの外径が挿通孔200Hの直径DS1よりも小さくなっていて、この部分では遊嵌されている。これは吸入弁部INVを挿通孔200Hに挿通する際入り口部のテーパー部TOでバルブハウジング214の先端部を自動求心して挿入しやすくし、さらに内部のテーパー部TAで自動求心して傾いた状態で挿通されないようにするための工夫である。これによって、自動組立する際の歩留まりが向上した。また円筒状部214Fの締まり嵌め部(区間SF1)において加圧室12側と低圧燃料室10A側の流体シールを圧入嵌合作業だけで達成することで、自動組立ての作業性を改善するものである。
バルブハウジング214の先端エッジ部がテーパーTAに差し込まれた直後にヨーク205の先端エッジ部205ZがテーパーTOに差し込まれるように寸法を構成すると組立て時の求心作用がスムースに行える。つまり吸入弁INVの求心が完了した後に電磁駆動機構部EMDが自動求心を行うので、吸入弁部INVの求心作用と電磁駆動機構部EMDの求心作用とが互いに干渉することがない。その結果自動組立てにおける求心作業がスムースに行え、組立て不良が低減する。
挿通孔200Hに差し込まれるヨーク205の先端部の外径は挿通孔200Hの内径DS1より小径に構成し、両者間を遊嵌状態にしている。これは吸入弁部INVが先端に取付けられたヨーク205の挿入力をできるだけ低減して電磁駆動機構部EMDの挿入時に吸入弁部INVに無理な力が作用することを防止する効果と共に、自動挿入作業の作業時間を短縮する効果がある。ヨーク205が挿入孔200Hに完全に差し込まれるとヨーク205の接合端面205Jがポンプハウジング1の取付け面に当接する。この状態で接合部W1において全周をレーザ溶接して内部を密封すると共に電磁駆動機構部EMDをポンプハウジング1に固定する。
バルブハウジング214の軸受部214Bの外径は、軸受部214Bのバルブ203側の外周の圧入部214Jの外径の方が反バルブ203側の先端部214Nの外径より大径に構成してある。これはヨーク205の先端に形成された筒状突起部205Nの内周面に軸受部214Bを圧入嵌合する際の自動求心効果を得るものである。軸受部214Bには燃料通孔214Kが複数本形成されている。アンカー207が往復動するとこの燃料通孔214Kを通して燃料が出入りすることでアンカー207の動作がスムースになる。
さらに燃料はプランジャロッド201内に形成した燃料通孔201K,プランジャロッド付勢ばね202が収容されている固定コア206とアンカー207との間の空間206Kおよびアンカー207の周囲を通って出入りする。これによりさらにアンカー207の動作がスムースになる。燃料通孔201Kがなければ、固定コア206とアンカー207が接触している時は、空間206Kが完全密閉状態になってしまう。この状態ではアンカー207およびプランジャロッド201がプランジャロッド付勢ばね202によって図中右側に開弁運動を開始する際、一瞬、空間206Kの圧力が低下してしまい開弁が遅れたり、開弁運動が不安定になってしまうといった問題があったが、上記構成によりこれを解消することができた。
図1,図2,図3(A),図3(B)、および図4(A),図4(B)に基づき第一実施例の動作を説明する。
≪燃料吸入状態≫
まず、図3(A),図3(B)により燃料吸入状態を説明する。ピストンプランジャ2が図2の破線で示す上死点位置から矢印Q2に示す方向に下降する吸入工程では、コイル204は非通電状態である。プランジャロッド付勢ばね202の付勢力SP1は矢印に示すようにバルブ203に向かってプランジャロッド201を付勢する。一方バルブ付勢ばねS4の付勢力SP2はバルブ203を矢印に示す方向へ付勢する。プランジャロッド付勢ばね202の付勢力がバルブ付勢ばねS4の付勢力SP2の付勢力より大きく設定されているので両ばねの付勢力はこのときバルブ203を開弁方向に付勢する。また低圧燃料室10A内に位置するバルブ203の平面部203Fに代表されるバルブ203の外表面に作用する燃料の静圧P1と加圧室内の燃料の圧力P12との圧力差によってバルブ203は開弁方向の力を受ける。さらに燃料導入通路10Pを通って矢印R4に沿って加圧室12に流入する燃料流とバルブ203の円筒部203Hの周面との間に発生する流体摩擦力P2はバルブ203を開弁方向に付勢する。さらに、バルブシート214Sとバルブ203の環状面部203Rとの間に形成される環状燃料通路10Sを通る燃料流の動圧P3はバルブ203の環状面部203Rに作用してバルブ203を開弁方向に付勢する。重量数ミリグラムのバルブ203はこれらの付勢力によって、ピストンプランジャ2が下降し始めると素早く開弁し、ストッパSTに衝突するまでストロークする。
バルブシート214Sは、バルブ203の円筒部203H・燃料導入通路10Pよりも直径方向で外側に形成されている。これによりP1,P2,P3が作用する面積を大きくすることが可能となり、バルブ203の開弁速度を速くすることができる。
このときプランジャロッド201およびアンカー207の周囲は滞留した燃料で満たされていること、および軸受214Bとの摩擦力が作用することによって、プランジャロッド201およびアンカー207はバルブ203の開弁速度よりわずかに図面右方向へのストロークが遅れる。その結果プランジャロッド201の先端面とバルブ203の平面部203Fとの間にわずかな隙間ができる。このためプランジャロッド201から付与される開弁力が一瞬低下する。しかし、この隙間には低圧燃料室10A内の燃料の圧力P1が遅れなく作用するので、プランジャロッド201(プランジャロッド付勢ばね201)から付与される開弁力の低下をこのバルブ203を開弁する方向の流体力が補う。かくして、バルブ203の開弁時にはバルブ203の低圧燃料室10A側の全表面に流体の静圧および動圧が作用するので、開弁速度が速くなる。
バルブ203の開弁時は、バルブ203の円筒部203Hの内周面をバルブストッパS0の突出部STの円筒面部SGによって形成されるバルブガイドでガイドされ、バルブ203は径方向に変位することなくスムースにストロークする。バルブガイドを形成する円筒面部SGはバルブシート214が配置された面を挟んでその上流側および下流側に形成されており、バルブ203のストロークを十分に支持できるだけでなく、バルブ203の内周側のデッドスペースを有効に利用できるので、吸入弁部INVの軸方向の寸法を短くできる。
また、バルブ付勢ばねS4はバルブストッパS0の端面SHとバルブ203の平面部203FのバルブストッパS0側底面部との間に設置されているので、開口部214Pとバルブの円筒部203Hとの間に形成される燃料導入通路10Pの通路面積を十分確保しながら開口部214Pの内側にバルブ203とバルブ付勢ばねS4を配置できる。また燃料導入通路10Pを形成する開口部214Pの内側に位置するバルブ203の内周側のデッドスペースを有効に利用してバルブ付勢ばねS4を配置できるので、吸入弁部INVの軸方向の寸法を短くできる。
バルブ203はその中心部にバルブガイド(SG)を有し、バルブガイド(SG)のすぐ外周でバルブストッパS0の環状面部S3の受け面S2に接触する環状突起部203Sを有する。さらにその径方向外側の位置にバルブシート214Sが形成されており、環状空隙SGPはさらにその半径方向外側まで広がっており、環状空隙SGPの外側(つまり、バルブ203,バルブストッパS0の外周側)にバルブハウジングの内周面で形成される燃料通路S6が順次形成されている。燃料通路S6がバルブシート214Sの径方向外側に形成されているので、燃料通路S6を十分に大きく取れる利点がある。燃料通路S6を十分に大きく取れることで、吸入動作時に吸入燃料の流速が極端に早くなってソニック現象を生じたり、燃料通路S6や加圧室内でキャビテーションが発生したりすることを抑制できる。その結果、燃料通路S6や加圧室内の金属のエッジ部にエロージョンが発生するのを抑制できる。
また、環状空隙SGPの内側でバルブシート214Sの内側にバルブストッパS0の受け面S2に接触する環状突起部203Sを設けたので、後述する閉弁動作時に環状空隙SGPへ加圧室側の流体圧力P4を速やかに作用させてバルブ203をバルブシート214Sに押し付ける際の閉弁速度を上げることができる。
≪燃料スピル状態≫
燃料スピル状態を図2、および図3(B)により説明する。ピストンプランジャ2が下死点位置から転じて矢印Q1方向に上昇し始めるが、コイル204は非通電状態であるので、一端加圧室12内に吸入された燃料の一部が燃料通路S6,環状燃料通路10Sおよび燃料導入通路10Pを通して低圧燃料室10Aにスピル(溢流)される。燃料通路S6における燃料の流れが矢印R4方向からR5方向へ切り替わる際、一瞬燃料の流れが止り、環状空隙SGPの圧力が上がるがこのときはプランジャ付勢ばね202がバルブ203をバルブストッパS0に押し付ける。むしろ、バルブシート214Sの環状燃料通路10Sに流れ込む燃料の動圧によってバルブ203をバルブストッパS0側に押し付ける流体力と環状空隙SGPの外周を流れる燃料流の吸出し効果でバルブ203とバルブストッパS0とを引き付けるように作用する流体力によってバルブ203はしっかりとバルブストッパS0に押し付けられる。
燃料流がR5方向に切り替わった瞬間から加圧室12内の燃料は、燃料通路S6・環状燃料通路10Sおよび燃料導入通路10Pの順で低圧燃料室10Aに流れる。ここで、環状燃料通路10Sの燃料流路断面積は燃料通路S6・および燃料導入通路10Pの燃料流路断面積よりも小さく設定されている。すなはち、環状燃料通路10Sで最も燃料流路断面積が小さく設定されている。そのため、環状燃料通路10Sで圧力損失が発生し加圧室12内の圧力が上昇し始めるが、その流体圧力P4はバルブストッパS0の加圧室側の環状面で受けて、バルブ203には作用しにくい。
環状空隙SGPにはスピル状態では低圧燃料室10Aから、4つの燃料通孔214Qを介してダンパ室10Bへ流れる。一方ピストンプランジャ2が上昇することで、副燃料室250の容積が増加するので、縦通路250B,環状通路21Gおよび燃料通路250Aを通る矢印R8の下方矢印方向への燃料流により、ダンパ室10Bから燃料副室250へ燃料の一部が導入される。かくして燃料副室に冷たい燃料が供給されるので、ピストンプランジャ2とシリンダ20との摺動部が冷却される。
≪燃料吐出状態≫
燃料吐出状態を図4を用いて説明する。前述の燃料スピル状態においてエンジン制御装置ECUからの指令に基づきコイル204に通電されると、閉磁路CMPが図3(A)に示すごとく生起される。閉磁路CMPが形成されると磁気空隙GPにおいて、固定コア206とアンカー207の対抗面間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力はプランジャロッド付勢ばね202の付勢力に打勝ってアンカー207とこれに固定されているプランジャロッド201を固定コア205に引き付ける。このとき、磁気空隙GP,プランジャロッド付勢ばね202の収納室206K内の燃料は燃料通路201Kおよびアンカー207の周囲を通して燃料通路214Kから低圧通路に排出される。これにより、アンカー207とプランジャロッド201はスムースに固定コア206側に変位する。アンカー207が固定コア206に接触すると、アンカー207とプランジャロッド201は運動を停止する。
プランジャロッド201が固定コア206に引き寄せられて、バルブ203をバルブストッパS0側に押し付けていた付勢力がなくなるので、バルブ203はバルブ付勢ばねS4の付勢力によってバルブストッパS0から離れる方向に付勢されバルブ203は閉弁運動を開始する。このとき、環状突起部203Sの外周側に位置する環状空隙SGP内の圧力は、加圧室12内の圧力上昇に伴って低圧燃料室10A側の圧力よりも高くなり、かくしてバルブ203の閉弁運動を助ける。バルブ203がシート214Sに接触し、閉弁状態となる。この状態が図4(A)に示されている。ピストンプランジャ2が引き続いて上昇するので加圧室12の容積が減少し、加圧室12内の圧力が上昇すると図1および図2に示すように、吐出バルブユニット60の吐出バルブ63が吐出バルブ付勢ばね64の力に打勝ってバルブシート61から離れ吐出通路11Aから吐出ジョイント11を通して、矢印R6,矢印R7に沿った方向に燃料が吐出する。
このように、環状空隙SGPはバルブ203の閉弁運動を助ける効果が有る。バルブ付勢ばねS4のみでは、吸入弁の閉弁力が小さすぎるので閉弁運動が安定しないと言う問題があったが、実施例ではこの問題が解消できた。
バルブ203がシート214Sに接触し完全な閉弁状態になった瞬間はプランジャロッド201が固定コア206側に完全に引き寄せられてプランジャロッド201の先端がバルブ203の低圧燃料室10A側端面から離れており、空隙201Gが形成されている。
これにより、バルブ203の閉弁動作時にバルブ203がプランジャロッド201によって開弁方向へ力を受けることがないので、閉弁動作が速くなる。また、バルブ203の閉弁動作時にバルブ203がプランジャロッド201に衝突することがなく打撃音が発生しないので静粛なバルブ機構が得られる。
バルブ203が完全に閉弁し加圧室12内の圧力が上昇して高圧吐出が開始された後、コイル204への通電は断たれる。固定コア206とアンカー207の対抗面間に発生していた磁気吸引力が消滅し、アンカー207とプランジャロッド201はプランジャロッド付勢ばね202の付勢力によってバルブ203側へ移動を開始し、プランジャロッド201がバルブ203の底部平面部203Fと接触すると運動を止める。既に加圧室12内の圧力による閉弁力がプランジャロッド付勢ばね202の作用力よりも十分大きくなっているので、プランジャロッド201がバルブ203の低圧燃料室10A側表面を押してもバルブ203は開弁することはない。この状態はピストンプランジャ2が上死点から下降方向Q2へ転じた瞬間にプランジャロッド201がバルブ203を開弁方向へ付勢する準備動作となる。空隙201Gは数十〜数百ミクロンオーダのわずかな空隙であることと、加圧室12内の圧力でバルブ203が付勢されてバルブ203が剛体となっていることにより、プランジャロッド201のバルブ203へ衝突するときの衝突音はその周波数が可聴周波数より高く、またエネルギーも小さいので騒音にはならない。
エンジン制御装置ECUからの指令に基づきコイル204に通電するタイミングを制御することにより、高圧で吐出される燃料を調節することができる。ピストンプランジャ2が下死点から上死点へと上昇運動に転じた直後にバルブ203が閉弁するよう通電タイミングを制御すれば、スピルされる燃料が少なく高圧吐出される燃料が多くなる。ピストンプランジャ2が上死点から下死点へと下降運動に転じた直前にバルブ203が閉弁するよう通電タイミングを制御すれば、スピルされる燃料が多く高圧吐出される燃料が少なくなる。
図5乃至図7を用いて吸入弁部INVの組立て手順を説明する。
図5ないし図7の部分断面斜視図は中心軸に向かって90度カットした断面を示す。有底筒状のヨーク205の中心の円筒状空間部205Hに有底筒状の固定コア206の有底部側から挿入されその外周が円筒状空間部205Hの内周面に圧入固定される。固定コア206の有底部には圧入時の空気抜きとして機能する貫通孔206Hが形成されており、内部には筒状の空間206Kが形成されている。固定コア206の開放側端部はヨーク205の外周に形成された磁気絞り205Sの内側に位置する。
アンカー207とプランジャロッド201は予め圧入嵌合して固定されている。アンカー207の内部には仕切り207Jが設けられ、この仕切り207Jの中心にはアンカー207の内部に形成されてプランジャ付勢ばね202の収容空間の一部を形成する円筒状空間部207Kとプランジャロッド201の中心に形成された燃料通路201Kとを連通する開口207Hが設けられている。プランジャロッド付勢ばね202を固定コア206の筒状の空間部206Kに収納し、プランジャロッド201が圧入嵌合されたアンカー207の反プランジャロッド201側の円筒状空間部207Kにプランジャロッド付勢ばね202の半分の部分が収納されるようにしてアンカー207の反プランジャロッド201側の外周をヨーク205の円筒状空間部205Hに遊嵌する。アンカー207の反プランジャロッド201側の端部はヨーク205の磁気絞り205Sの内側の部分で固定コア206の端面と磁気空隙GRを挟んで対面する。
ヨーク205の環状フランジ部205Fは図3(A)に示すサイドヨーク204Yの開放端側内周面が圧入嵌合される周面205Yが設けられている。サイドヨーク204Yとヨーク205の外周との間にはコイル204が装着されるので、環状フランジ部205Fの径方向の幅はコイル204の径方向の幅に見合った幅に形成されている。環状フランジ部205Fの反固定コア206側にはポンプハウジング1の取付け面に当接する接合端面205J(環状フランジ部205Fより小径)を備えた段付部205Kが設けられており、さらにこの接合端面205Jから突出する小径の筒状突起部205Nが設けられている。筒状突起部205Nはポンプハウジング1の筒状の挿通孔200Hの開放端側から、接合端面205Jがポンプハウジング1の取付け面に当接するまでポンプハウジング1の筒状の挿通孔200Hの内部に嵌挿される。
吸入弁部INVは予めバルブハウジング214,バルブ203,バルブ付勢ばねS4,バルブストッパS0が組み付けることによって形成されている。バルブハウジング214の開口部214Pにバルブ203の円筒部203Hを挿通してバルブシート214Sにバルブ203環状面部203Rが対面するように組み付ける。次にバルブ203の円筒部203Hの内部にバルブ付勢ばねS4を挿入する。最後にバルブストッパS0の円筒面部SGを備えた突出部STをバルブ203の円筒部203Hの内周に挿通してバルブストッパS0の圧入面部SP1−SP3をバルブハウジングの環状段付部214Dに圧入嵌合して吸入弁部INVを構成する。
固定コア206,プランジャロッド付勢ばね202及びアンカー207とプランジャロッド201の組体をこの順に組付けたヨーク205の円筒状突起部205Nの内周に、バルブハウジング214の軸受部214Bの外周が圧入嵌合により固定されることで、吸入弁部INVと電磁駆動機構部EMDとが一体に組み付けられる。この状態で、軸受部214Bの中心の軸受孔214Hにはプランジャロッド201の反アンカー207側端部が挿通され、往復動可能に支持される。
かくして組み立てられた電磁駆動型吸入弁機構200はポンプハウジング1の挿通穴200Hに吸入弁部INVを圧入嵌合し、電磁駆動機構部EMDの筒状突起部205Nの外周205Xを挿通し、接合面部205Jの外周をレーザ溶接することでポンプハウジングに固定される。このように、ヨーク205の片側内周部にプランジャロッド201の組体や吸入弁部INVを順次組み付け、他側の外周部にコイル204とサイドヨーク204Yを順次組み付けることで電磁駆動型吸入弁機構200を形成することができ、自動化に適した組立て構成が得られた。
〔第二実施例〕
図8乃至図10に第二の実施例を示す。第一実施例と同一符号のものは第一の実施例のものと同一物を示す。第二実施例ではバルブストッパS0の形状とバルブ付勢ばねS4の配置構成が異なる。バルブストッパS0の中心部にはバルブ203の円筒部203Hの内周面に沿って延びる中空の円筒状部STHを備える。バルブ付勢ばねS4は中空の円筒状部STHの内周部に収納されている。中空の円筒状部STHの外周面はバルブ203の円筒部203Hの内周面と摺接してバルブ203の往復動をガイドする。この実施例ではバルブ付勢ばねS4の寸法が第一実施例のものより長くできる。そのほかの構成は第一実施例と同じである。図8は燃料吸入状態および燃料スピル状態(開弁状態)を示し、第一実施例の図3(A),図3(B)に対応する。図8(B)は図8(A)のP矢視図を示すもので、第一実施例の図4(B)に対応する。図9は燃料吐出状態(閉弁状態)を示し、第一実施例の図4(A)に対応する。
第一,第二実施例ではバルブシートとバルブとが環状平面部で接触するものを説明したが、円錐面で接触するものにも適用できる。これらの実施例ではバルブ203とバルブストッパS0を含めた軸方向寸法を数ミリの寸法に納めることができる。この実施例ではポンプハウジング1の電磁駆動型吸入弁機構200の取付け面からバルブストッパ加圧室側の端面までの距離を小さくでき、電磁駆動型吸入弁機構200ポンプを含めた高圧ポンプの体格を小さくできる。
さらに本実施例によれば以下の課題も解消できる。
ピストンプランジャが下死点側に移動し始める(吸入工程に入る)と、吸入弁はばね力と吸入弁前後の圧力によって開弁運動を始めるが、この吸入弁前後の圧力を受ける面積が小さくその結果、開弁運動が遅くなり、安定しないと言う問題があった。さらに、開弁運動の応答性・安定性を改善するために吸入弁の面積を大きくすると次のような問題があった。ピストンプランジャが下死点から上死点へ向かって上昇運動を開始した時、スピルする燃料によって発生する圧力損失と流体力が大きくなってしまい、予期しないタイミングで吸入弁が閉弁してしまう可能性がある。
本実施例ではバルブストッパとバルブとの間には前記バルブが全開位置に移動したときに接触する接触面を形成する環状突起部と環状突起部の外周に位置する環状の空隙部とを形成した。環状突起部の外周側に位置する環状空隙内の圧力は、燃料加圧室内の圧力上昇に伴って低圧燃料通路側の圧力よりも高くなり、かくして環状空隙はバルブの閉弁運動を助ける効果が有る。バルブ付勢ばねのみでは、吸入弁の閉弁力が小さすぎるので閉弁運動が安定しないと言う問題があったが、実施例ではこの問題が解消できた。