JP2019143494A - 軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法 - Google Patents

軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法 Download PDF

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剛 戸谷
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Abstract

【課題】軸流送風機において、中低周波数領域の騒音を好適に低減することを目的とする。【解決手段】軸流送風機2は、筒形状をなす外筒3と、外筒3の内部に配置され、外筒3の内部にガス流れを流通させる動翼8と、動翼8と連結される回転軸11と、回転軸11に連結され、動翼8を駆動する駆動部12と、動翼8よりもガス流れにおける下流側に外筒3の内周面に沿って設けられ、複数の貫通孔23aが形成された多孔板23と、を備える。多孔板23は、外筒3の内周面から70mm以上の所定の距離で離間するように配置されている。【選択図】図1

Description

本開示は、軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法に関するものである。
回転軸および翼が回転することで、空気や排ガスなどの流体を送り出す回転送風機械(例えば、軸流ファンや過給機など)が知られている。このような回転送風機械では、回転送風機械の内部で翼が回転して流体を送り出す際に騒音が生じる。特に大型の回転送風機械では発生する音量も大きく、敷地周辺の環境対策や作業現場の労働環境の改善対策からサイレンサなど騒音を低減する対策が必要とされることがある。したがって、回転送風機械に騒音を低減する機能を付加したものがある(例えば、特許文献1から特許文献3)。
特許文献1には、ブロア部の圧縮空気出口管の一部に消音ダクトユニットを取り付けた過給機が開示されている。この消音ダクトユニットは、間に共鳴空洞部を形成した内外管からなる二重管構造とされ、共鳴空洞部と排気通路とは内管に形成した多数の小孔によって連通されている。
特許文献2には、コンプレッサの空気吐出側の騒音を低減するための騒音低減構造を備えた過給機が開示されている。騒音低減構造は、コンプレッサ吐出側配管部の内周面との間に空気層を形成するようにコンプレッサ吐出側配管部の周方向に内周面に沿って延在し、複数の貫通孔を有する第1多孔板部を有している。
特許文献3には、ケーシング形外筒及びパンチングメタル内筒との間の空室に吸音材を装填した吸音外胴を備えた軸流送風機用消音器が開示されている。
特許第4911783号公報 特開2017−150340号公報 実開昭63−113709号公報
しかしながら、回転送風機械での騒音対策は主としてサイレンサなどによる高周波数領域で発生する騒音の吸音効果に向けられている。特許文献1及び特許文献2に開示された構造は、動翼が高速回転することで高周波数領域の特定周波数での騒音が発生する過給機の騒音を低減することを目的とした構造である。このため、中低周波数領域の広い周波数領域全体の騒音が発生する軸流送風機では、好適に騒音を低減することができない可能性がある。
また、特許文献3に開示された消音器は、高周波数領域の騒音には効果的であるものの、中低周波数領域の騒音に対しては効果が小さい可能性があり、中低周波数領域の広い周波数領域全体の騒音が発生する軸流送風機では、好適に騒音を低減することができない可能性がある。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、中低周波数領域の騒音を好適に低減することができる軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る軸流送風機は、ガスの供給またはガスの排出を行う軸流送風機であって、筒形状をなすダクトと、前記ダクトの内部に配置され、前記ダクトの内部にガス流れを流通させる動翼と、前記動翼と連結される回転軸と、前記回転軸と連結され、前記動翼を駆動する駆動部と、前記動翼よりも前記ガス流れにおける下流側に、前記ダクトの内周面に沿って設けられ、複数の孔が形成された多孔板と、を備え、前記多孔板は、前記ダクトの内周面から70mm以上の所定距離離間するように配置されている。
上記構成では、ダクトの内周面に沿って多孔板を設けることで、多孔板とダクトの内周面との間にガスが存在する空間層が形成されて、音響ライナとして消音の役割を果たすので、軸流送風機から発生する騒音を低減することができる。すなわち、騒音源から発生した騒音の音響エネルギが、多孔板に形成された複数の孔を通過する際に熱エネルギに変換されるので、騒音を低減することができる。
また、騒音を低減する多孔板が、ダクトの内部に設けられている。このようにダクトの内部に設けられる構造によって、騒音を低減できるので、軸流送風機の大型化を招来しない。したがって、例えば、軸流送風機に別途消音器等を設けている場合には、多孔板の設置によって騒音を低減している分、当該消音器を小型化することができるとともに、消音器を小型化することにより、軸流送風機全体の製造コストや設置コストの低減を実現できるとともに、軸流送風機の配置スペースの縮小を実現することができる。
また、軸流送風機では、供給またはガスの排出を行う通気量が大きく、大流量のガスが流通するダクトの内径が大きいこともあり、動翼の回転によって低周波数領域の騒音が多く発生する。上記構成では、多孔板が、ダクトの内周面から所定の離間距離として70mm以上離間するように配置されている。すなわち、空間層を70mm以上と比較的厚く設けているので、低周波数領域の騒音を好適に低減することができる。さらに好ましくは、空間層は120mm以下として、ダクトの径の拡大を抑制することが出来る。ここで、低周波数領域の騒音とは、例えば、100Hz〜300Hz程度の騒音である。
なお、上記構成の軸流送風機は、ボイラへのガスの供給又はボイラからのガスの排出を行う軸流送風機であってもよい。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記多孔板は、前記ダクトの内周面から70mm以上で、かつ120mm以下の所定の離間距離で配置され、前記多孔板と前記ダクトの内周面との間に空間層を形成していてもよい。
上記構成では、多孔板をダクトの内周面から70mm以上で、かつ120mm以下の所定の離間距離で配置している。これにより、低周波数領域の騒音を好適に低減することができるとともに、ダクトの径の拡大を抑制することができる。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記ダクトに前記多孔板を支持する支持部材を備え、前記支持部材は、前記ダクトの内周面の周方向から、前記ダクトの流路断面の中心に向かって前記所定距離延びる第1板部材と、前記第1板部材の内端から前記ダクトの内周面に沿うように延びる第2板部材と、を備え、前記多孔板の外周面は、前記第2板部材により支持されていてもよい。
上記構成では、多孔板が、ダクトの内周面に沿うように延びる第2板部材によって支持されている。このように、ダクトの内周面に沿う部材によって、多孔板を支持することによって、多孔板をダクトの内周面に対して好適に固定できるとともに、ダクトの内周面と多孔板との間に、所望の空間を有した空間層を形成し易くすることができる。したがって、空間層を形成した場合には、空間層及び多孔板による音響ライナの役割を好適に果たすことができ、軸流送風機から発生する騒音を好適に低減することができる。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記第1板部材は、環状に形成されていて、前記第1板部材の外周端は前記ダクトの内周面に固定され、前記第1板部材の内周端は前記ダクトの内周面に沿うように延びる前記第2板部材と接続し、前記多孔板の外周面は、前記第2板部材の内周面に対して、面接触するように固定されていてもよい。
上記構成では、第2板部材の内周面に対して面接触するように多孔板が固定されている。これにより、ダクトの内周面に沿うように、かつ、ダクトの内周面から所望の距離離間するように、好適に多孔板をダクトに対して支持することができる。したがって、ダクトの内周面と多孔板との間に、所望の空間を有した空間層を形成することができるので、空間層及び多孔板による音響ライナの役割を好適に果たすことができる。よって、軸流送風機から発生する騒音を好適に低減することができる。
また、軸流送風機では、大流量のガスが流通するダクトの内径が大きいために、この内周面に設けられる多孔板も大口径となり、多孔板自体の強度では自立させるのは容易ではない。上記構成では、第1板部材が環状に形成されている。すなわち、第1板部材は、ダクトの内周面の周方向の全域に設けられている。このように、第1板部材が周方向の全域に設けているので、空間層を所定の離間距離として70mm以上と比較的厚く設けた場合であっても、支持部材が多孔板をダクト内周面の全周に渡り支持するため、強固に支持することができる。軸流送風機の運転時には、振動や熱の影響が大きいが、上記構成では、多孔板をダクト内周面の略全周に渡り強固に支持しているので、所望の空間層を好適に形成するとともに、その空間層の厚さを好適に維持することができる。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記ダクトの外周面から突出する環状の板状の部材であって、前記ダクトを補強する補強部を備え、前記第1板部材の少なくとも一部は、前記ダクトの内周面に対して、前記補強部が外周面に設けられた位置に対応する内周面の位置で固定されていてもよい。
上記構成では、補強部が設けられた位置に対応する位置の少なくとも一部で、第1板部材とダクト内周面とが固定されている。これにより、補強部により剛性が向上した筒部分に対して第1板部材を固定することになるので、第1板部材をダクトに固定する際に、ダクトに荷重がかかっても、ダクトが変形し難いので好ましい。したがって、第1板部材をダクトに対して固定し易くすることができる。また、第1板部材とダクトとの固定箇所が、補強部によって補強されるので、第1板部材とダクトとを強固に固定することができる。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記ダクトは、前記動翼よりも前記ガス流れにおける下流側に、流路断面積が前記下流側に向かうほど漸次大きくなる拡大部が形成され、前記拡大部の内部には、前記拡大部の内周面に沿って設けられ、前記拡大部の内周面から所定の離間距離として70mm以上離間するように前記多孔板が配置されていてもよい。
多孔板の設置により低減できる騒音の周波数は、ダクトの断面積(ダクト内の直径)によって異なる。上記構成では、拡大部に多孔板が配置されている。したがって、多孔板と拡大部の内周面との間に形成された空間層及び拡大部に設けられた多孔板によって、ダクト直径が一定なダクトに比較して、広い周波数範囲での様々な周波数の騒音を低減することができる。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記ダクトの前記拡大部の内部には、前記拡大部の内周面と前記多孔板との間に空間層が設けられ、前記流路断面積が漸次大きくなるに従い、前記空間層の厚さを減らすように前記多孔板が配置されていてもよい。
上記構成では、空間層の厚さを、ダクトの内径が拡大するに伴い厚さを減らして離間する距離を少なくしている。これにより、ダクトの拡大部においても音響ダクトの消音効果を維持することができる。したがって、軸流送風機から発生する最も卓越した騒音に対して出来るだけ消音効果を発揮するよう、音響ライナ9の設置する距離を長く設定することが出来る。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記ダクト内には、前記ガス流れ方向の位置によって、吸音効果の音響特性の少なくとも1つが異なるように前記多孔板が設けられていてもよい。
上記構成では、多孔板が、吸音効果の音響特性が異なるように設けられている。これにより、軸流送風機から発生する騒音はガス流れ方向の位置によって周波数領域が異なるため、軸流送風機が発生する低周波数領域での様々な周波数領域の騒音を効果的に低減することができる。
なお、ここでいう吸音効果の音響特性とは、多孔板に形成される孔の孔径、多孔板の開口率、空間層の厚さ、多孔板の厚さ等の少なくとも1つを変更することで変更される特性のことを意味する。
また、本開示の一態様に係る軸流送風機は、前記動翼の上流側及び/又は前記多孔板の下流側の前記ガス流の途中に設けられたスプリッタ型のサイレンサを備えていてもよい。
スプリッタ型のサイレンサは、中周波数領域及び高周波数領域の騒音を好適に低減することができる。上記構成では、スプリッタ型のサイレンサを備えているので、多孔板の設置により低周波数領域の騒音を低減するとともに、スプリッタ型のサイレンサで中周波数領域及び高周波数領域の騒音を低減することができる。したがって、広い周波数領域の騒音を効果的に低減することができる。
また、スプリッタ型のサイレンサのみによって騒音を低減する構成と比較して、多孔板及び空間層によっても騒音を低減しているので、スプリッタ型のサイレンサを小型化することができ、軸流送風機全体の製造コストや設置コストの低減、さらには軸流送風機の配置スペースの縮小を実現できる。
本開示の一態様に係るボイラシステムは、上記いずれかに記載の軸流送風機と、前記軸流送風機によってガスの供給又はガスの排出が行われるボイラと、を備えている。
本開示の一態様に係る軸流送風機の製造方法は、ガスの供給またはガスの排出を行う軸流送風機の製造方法であって、前記軸流送風機は、筒形状をなすダクトと、前記ダクトの内部に配置され、前記ダクトの内部にガス流れを流通させる動翼と、前記動翼と連結される回転軸と、前記回転軸を回転駆動することで、前記動翼を駆動する駆動部と、前記動翼よりも下流側において、前記ダクトの内周面に沿って設けられ、複数の孔が形成された多孔板と、を具備し、前記多孔板を、前記ダクトの内周面から70mm以上の所定の距離で離間するように配置する。
本開示によれば、軸流送風機で発生する中低周波数領域の騒音を好適に低減することができる。
本開示の実施形態に係る軸流送風機の概略図である。 図1の軸流送風機の多孔板の取り付け方法を示す模式的な断面図である。 図2の要部拡大図であり、(a)は図2のa部を示し、(b)は図2のb部を示し、(c)は図3のc部を示している。 図1の軸流送風機に適用されている音響ライナの模式的な斜視図である。 音響ライナにおける吸音率と吸音する騒音の周波数との関係を示すグラフである。 音響ライナにおいて所定の周波数の騒音に対する吸音率が最も高くなる背後空気層の厚さとダクト直径との関係を示すグラフである。
以下に、本開示に係る軸流送風機及びボイラシステム並びに軸流送風機の製造方法の一実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態に係る軸流送風機2は、例えばボイラ(図示省略)で生成されたボイラで発生させた蒸気を蒸気タービンによって発電を行う発電プラント(ボイラシステム)1に適用されている。したがい、軸流送風機2のガスの供給としては、発電プラントのボイラに燃焼用空気を供給していて、流通するガス流れは空気の流れである。以下の説明において、特に説明を付さない場合には、「上流」及び「下流」とは、燃料用空気の流れ(ガス流れ)における「上流」及び「下流」を意味する。
図1に示されているように、本実施形態の一例としての軸流送風機2は、内部を燃焼用空気が流通する外筒(ダクト)3と、外筒3の内部に配設される内筒4と、内筒4の上流端部に固定されるハブ5と、外筒3とハブ5との間に設けられる複数の静翼6と、ハブ5の上流端部に回転自在に支持されている翼車7と、翼車7の外周部から半径方向外側に突出する複数の動翼8と、外筒3の内周面に設けられる音響ライナ9と、を有する。外筒3と内筒4との間には、燃焼用空気が流通する通風路10が形成されている。また、外筒3、内筒4、ハブ5及び翼車7は、中心軸Cを共有する同心状に配置されている。
また、軸流送風機2は、翼車7の上流端部に固定される回転軸11と、回転軸11に連結されて回転駆動する駆動部12とを有する。すなわち、駆動部12の駆動力によって、回転軸11を介して、翼車7及び動翼8が回転し、動翼8が回転することで外筒3の内部に燃焼用空気が供給されて流通する。
また、軸流送風機2は、外筒3の上流側及び/または下流側に、スプリッタ型サイレンサ15を備えていてもよい。スプリッタ型サイレンサ15は、燃焼用空気が流通するダクト状の流路部の内周面をグラスウール等の吸音材によって覆い、吸音材の内周面に対して複数の孔が形成された多孔状の板材を被装している。スプリッタ型サイレンサ15は、中周波数領域及び高周波数領域の騒音を好適に消音する。なお、本実施形態においては、外筒3の上流側及び下流側に、スプリッタ型サイレンサ15を備える構成とし、図1においては、外筒3の下流側のスプリッタ型サイレンサは、図示の関係上、図示を省略している。また、中周波数領域及び高周波数領域の騒音とは、例えば、中周波数領域が約250Hz以上の騒音であり、高周波数領域が約1000Hz以上の騒音ある。
内筒4は、本実施形態では一例として、円筒形状をなして下流端部が例えば平坦面となっている。内筒4の長手方向の長さは、本実施形態においては、後述するディフューザ18の長手方向の長さと略同一となっている。
外筒3は、内部に動翼8が設けられる上流側ダクト17と、上流側ダクト17の下流側端部と接続するディフューザ(拡大部)18と、ディフューザ18の下流側端部と接続する下流側ダクト19と、から構成されている断面形状が円形のダクト状部材である。上流側ダクト17、ディフューザ18及び下流側ダクト19は、長手軸方向に並び、同心上となるように配置されている。外筒3の外周面には、長手方向(燃焼用空気流れ方向)に沿って所定の間隔ごとに、該外周面から半径方向外側に突出する円環状の板材であるリブ(補強部)21が設けられている(図2参照)。本実施形態では、リブ21の板厚は、例えば6mm〜10mm程度に設定されている。リブ21は、外筒3の強度を向上させるための補強材として設けられている。なお、リブ21の板厚は、外筒3を好適に補強できる厚さであればよく、6mm〜10mmに限定されない。また、外筒3の外周面には防音材(図示省略)を被装していてもよい。
上流側ダクト17は、内部にハブ5、静翼6、翼車7及び動翼8が配置されている。
ハブ5は、一例として内筒4と同径の筒体であって、内筒4の上流端部から上流方向に延在している。静翼6は、上流側ダクト17の内周面とハブ5の外周面とを接続するように、周方向に略等間隔に複数設けられている。翼車7は、一例としてハブ5及び内筒4と同径であって、長手軸方向に延在する中心軸Cを中心として回転自在にハブ5の上流端部に支持されている。翼車7の上流端部は球面状に形成されるとともに、翼車7の上流端部には、駆動部12と連結する回転軸11が固定されている。動翼8は、翼車7の外周部から半径方向外側に突出するように、周方向に略等間隔に複数設けられている。すなわち、動翼8は、静翼6よりも上流側に設けられている。
ディフューザ18は、圧力上昇した燃焼用空気の運動エネルギを圧力エネルギに変換して、燃焼用空気の流速を低減するものであり、上流端部から下流端部にかけて内径が拡大した形状となっている。すなわち、流路断面積が下流側に向かうほど漸次大きくなるように形成されている。ディフューザ18の内部には、内筒4が配置されている。また、ディフューザ18の内周面には、音響ライナ9が設けられている。
下流側ダクト19は、上流側ダクト17の直径よりも大きな円筒形状であって、内周面には、音響ライナ9が設けられている。本実施形態の軸流送風機2は、発電プラント1のボイラに大流量の燃焼用空気を流通するために、下流側ダクト19は内径が大きなものが設定される。具体的には、下流側ダクト19の長手方向の長さAは、例えば、3m〜20m程度に設定される。また、下流側ダクト19の直径であるダクト直径(D)は、発電プラント1の発電量に必要な燃焼用空気流量よって異なるが、本実施形態では、例えば、2m〜15m程度とされる。
本実施形態では、音響ライナ9は、上述のように、外筒3のうち、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に設けられている。すなわち、本実施形態では上流側ダクト17の内周面には設けられていないが、設置可能な範囲で、上流側ダクト17の内周面に音響ライナ9を適宜設けてもよい。
音響ライナ9は、図2及び図3に示されているように、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面から所定距離離間して配置されるとともに、該内周面に沿って該内周面と略平行に設けられる多孔板23と、多孔板23を該内周面に対して固定するアングル材(支持部材)24と、を有している。アングル材24は、後述する円環状の部材の第1板部材27と筒状の部材の第2板部材28で構成される。多孔板23は、後述する貫通孔23aを多数設けた筒状の部材で、多孔板23の外周面(すなわち、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面と対向する面)と、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面との間には、空間(空間層)が形成されている。以下の説明において、この空間のことを「背後空気層25」という。音響ライナ9は、多孔板23及び背後空気層25によって騒音を低減する消音効果を発揮する。
アングル材24は、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に、燃焼用空気流れ方向に所定の間隔で複数設けられている。アングル材24が固定される位置は、外筒3の外周面にリブ21が設けられる位置と対応しているものを設けている。(図2(b)、図3(b)を参照)また、アングル材24の位置は、必ずしも全てが外筒3の外周面にリブ21の位置と合致させて設けられる必要は無く、多孔板23の上流側端部(図2(a)、図3(a)を参照)や多孔板23の下流側端部(図2(c)、図3(c)を参照)は、多孔板23の支持荷重が小さくなることと、多孔板23の長手方向長さの選定の自由度を持たせるため、外筒3の外周面にリブ21がない位置に設置している。外筒3の外周面のリブ21位置とアングル材24の位置は、外筒3と多孔板23の構造とサイズなどで適宜選定される。すなわち、外筒3とアングル材24との固定位置の少なくとも一部は、外筒3とリブ21との固定位置に対して、外筒3を挟んで同位置となるように配置されるものを設けてあり、特にアングル材24をディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に固定する際に、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に荷重がかかり、変形が発生しやすい箇所に置いては、外周面にリブ21によって補強されているので、強固に固定できるので好ましい。
各アングル材24は、ディフューザ18または下流側ダクト19の内周面の周方向の全域から、ディフューザ18及び下流側ダクト19の流路断面の中心に向かって所定距離延びる円環形状の第1板部材27と、第1板部材27の内周端からディフューザ18または下流側ダクト19の内周面と略平行に延びる筒状の第2板部材28と、を有する。なお、第1板部材27は、ディフューザ18または下流側ダクト19の内周面の周方向の全域から延びておらず、周方向の一部から延びていてもよい。
第1板部材27は、例えば溶接や締結ボルト等によってディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に固定されている。また、第1板部材27の半径方向の長さは、背後空気層25の厚さ(半径方向の離間距離)と略同一となるので、背後空気層25の厚さによって決定される。背後空気層25の厚さについては、後述する。第2板部材28は、第1板部材27の内周端部の全域から略直角に曲折して、上流側方向または下流側方向に延びる筒状の部材である。第2板部材28の内周面には、多孔板23の外周面が面接触している。第2板部材28と多孔板23とは、当該面接触部分が例えば溶接や締結ボルト等されることで固定されている。なお、第1板部材27と第2板部材28とは、別々に形成して溶接等で固定して形成してもよく、また、一枚の板材を曲折成形等して一体的に形成してもよい。また、一枚の板材を曲折成形等して一体的に形成する場合は、第1板部材27には内径方向へスリットを設けて形成し易いようにしてもよい。また、第1板部材27と第2板部材28とは、周方向に複数に分割されていて、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に固定されてもよい。
多孔板23は、図4に示されているように、板厚方向に貫通した多数の貫通孔23aが形成されている長方形状の薄板を、ディフューザ18または下流側ダクト19の内周面との間に背後空気層25を厚さ(半径方向の離間距離)と略同一となるように、ディフューザ18または下流側ダクト19の内周面に沿うように湾曲成形し、筒状とされた部材である。すなわち、ディフューザ18に設けられている多孔板23は、外観が上流端部から下流端部にかけて内径が拡大した形状となっている。また、下流側ダクト19に設けられる多孔板23は、外観が上流端部から下流端部まで同径とされた形状となっている。
多孔板23は、上流端部及び下流端部の周方向の全域が第2板部材28と面接触しており、本実施形態では、当該面接触部分の全域が例えば溶接固定されている。
また、筒状の多孔板23は、ディフューザ18及び下流側ダクト19の延在方向(燃料用空気の流れ方向)に、複数に分割され他ものを並んで設けられている。複数の筒状の多孔板23は、並んで配置されることで、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面の略全域に音響ライナ9を構成している。隣接して配置される複数の多孔板23同士は、隙間なく密着されてもよいが、少しの熱膨張差などを吸収できるように例えば、所定距離B(図3参照。本実施形態では、一例として3mm)の間隔をあけて配置されてもよい。
次に、下流側ダクト19に設けられる音響ライナ9における、多孔板23の板厚、多孔板23に形成される貫通孔23aの孔径、多孔板23の開口率及び背後空気層25の厚さの設定方法について説明する。音響ライナ9の吸音効果は、多孔板23の板厚(t)、貫通孔23aの孔径(d)、多孔板23の開口率(σ)及び背後空気層25の厚さ(L)の影響を受ける。
最適な板厚(t)、孔径(d)、開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L)の値は、低減したい騒音の周波数によって異なる。本実施形態では、一例として、軸流送風機2から発生する最も卓越した騒音である、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する周波数領域の騒音を効果的に低減するように、多孔板23の板厚(t)、孔径(d)、開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L)を設定する。本実施形態では、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する騒音の周波数として、一例として低周波数領域である150Hzを想定している。
具体的な板厚(t)、孔径(d)、開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L)の値は、Guessの理論に基づいて設定する。
詳細には、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する周波数領域の騒音について、下記式(2)の実部θ及び虚部xのそれぞれが、下記式(1)の値に近づくように、音響ライナ9の各パラメータ(多孔板23の板厚(t)、多孔板23に形成される貫通孔23aの孔径(d)、多孔板23の開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L))を設定する。
Figure 2019143494
なお、上記式(1)は、円形ダクトの内貼り材の最適表面インピーダンスの理論値を示している。また、上記式(1)中のDは、多孔板23が設けられる円形ダクトの直径であり、λは、騒音の波長である。
Figure 2019143494
なお、上記式(2)は、音響ライナ9(多孔板23及び背後空気層25を設けた構成)を適用した場合の表面インピーダンスを示している。また、上記式(2)中のθは実部を示し、xは虚部を示している。
実部θ及び虚部xは、Guessの理論に基づいた下記式(3)及び下記式(4)で算出される。
Figure 2019143494
Figure 2019143494
なお、上記式(3)及び上記式(4)の出典は、A.W.Guess, “Calculation of perforated plate liner parameters from specified acoustic resistance and reactance, Journal of Sound and Vibration(1975)である。
上記式(1)の結果から求められた音響ライナ9の構造の一例として、下記表1の〈1〉〈2〉〈3〉の形状がある。
Figure 2019143494
上記表1の〈1〉の構造では、多孔板23の板厚(t)を3mmとし、多孔板23に形成された貫通孔23aの孔径(d)を13mmとし、多孔板23の開口率(σ)を1%とし、背後空気層25の厚さ(L)を100mmとしている。また、〈2〉の構造では、板厚(t)を3.2mmとし、孔径(d)を13mmとし、開口率(σ)を1%とし、背後空気層25の厚さ(L)を100mmとしている。また、〈3〉の構造では、板厚(t)を3.2mmとし、孔径(d)を16mmとし、開口率(σ)を1%とし、背後空気層25の厚さ(L)を90mmとしている。なお、〈1〉〈2〉〈3〉のいずれも、音響ライナ9を設ける外筒3の直径は、4.5mとして、消音のターゲットとする周波数(波長)に対して、上記式(1)の実部θと虚部xに近づくように、上記式(2)から上記式(4)の式を用いて音響ライナ9の吸音効果に影響する各パラメータ(多孔板23の板厚(t)、多孔板23に形成される貫通孔23aの孔径(d)、多孔板23の開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L))を設定している。
図5では、横軸が消音のターゲットとする周波数を示し、縦軸が消音効果として吸音率を示して、関係を求めたものである。
なお、吸音率は、下記式(5)で表される。
吸音率=1−Ir/Ii・・・(5)
ただし、Ii:材料に入射する音の強さ
Ir:材料からの反射音の強さ
図5のグラフからも明らかなように、上記表1の〈1〉〈2〉〈3〉のいずれの構造も、周波数150Hz近傍で吸音率が最大となっていることが分かる。すなわち、上記表1の〈1〉〈2〉〈3〉のいずれの構造においても、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する低周波数領域の騒音を効果的に低減でき、軸流送風機2から発生する低周波数領域の騒音を抑制することができることがわかる。また、周波数の減衰を考慮した理論式で求めた図5のグラフにおいても周波数による影響は同じで、〈1〉のパラメータ値に対して、〈2〉〈3〉程度で各パラメータを変更した場合であっても、吸音率の変化は略同等であり、適正なパラメータ選定範囲にあることがわかる。
上記表1の〈1〉〈2〉〈3〉の構造の共通する特徴として、背後空気層25の厚さ(L)が90mm〜100mmと比較的厚いことが挙げられる。したがって、図5のグラフから、背後空気層25の厚さ(L)を比較的厚く形成することで、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する低周波数領域の騒音を効果的に低減でき、軸流送風機2から発生する低周波数領域の騒音を抑制することがわかる。
詳細には、背後空気層25の厚さ(L)を所定の離間距離として70mm以上とすると、好適に低周波数領域の騒音を効果的に低減でき、軸流送風機2から発生する騒音を抑制することができる。
次に、ダクト直径(D)と背後空気層25の厚さ(L)との関係について説明する。
図6に示されているグラフは、多孔板23の板厚(t)、孔径(d)、開口率(σ)を一定とした場合に、ダクト直径(D)を変化させながら、低周波数領域の騒音の代表として150Hzの騒音の吸音率が最も高くなる背後空気層25の厚さ(L)を算出した結果である。図6からわかるように、ダクト直径(D)が大きくなると、吸音率が最も高くなる背後空気層25の厚さ(L)は小さくなる。また、ダクト直径(D)が1200mmのダクトに対しては、背後空気層25の厚さ(L)を70mmとした場合に、吸音効率が最大となることがわかる。
すなわち、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する低周波数領域の騒音を効果的に低減し、軸流送風機2から発生する騒音を抑制することができるように、音響ライナ9の背後空気層25の厚さ(L)を70mm以上とした場合、ダクト直径(D)が1200mm以下のダクトに対して、有効に吸音することができることがわかる。
また、ダクト直径(D)が小さい場合が音響ライナ9の背後空気層25の厚さ(L)の上限となるので、背後空気層25の厚さ(L)は、所定の離間距離として120mm以下として設定しておくことで、ダクトの径の拡大を抑制することが出来る。
このように、本実施形態では、図6をもとに、通常の発電プラント1で想定されるボイラ用燃焼空気流量の必要流量からのダクト内径(直径)は1200mm以下となることから、背後空気層25の厚さ(L)を70mm以上と比較的厚く設けているので、150MHzを主体とした低周波数領域の騒音を好適に低減することができる。さらに好ましくは、ダクト内径(直径)が小さい場合が上限となるので背後空気層25の厚さ(L)は120mm以下として、ダクトの径の拡大を抑制することが出来る。
次に、本実施形態に係る作用について説明する。
駆動部12が駆動することで、回転軸11を介して、翼車7が長手軸方向に延在する中心軸Cを中心として回転駆動する。翼車7が回転駆動することで、翼車7に固定されている複数の動翼8も回転駆動する。動翼8が回転駆動することで、図1の白抜き矢印で示すように、外筒3の内部を燃焼用空気が流通する。詳細には、燃焼用空気は、上流側ダクト17の上流に配置されたスプリッタ型サイレンサ15を通過し、次に上流側ダクト17内を流通する。上流側ダクト17内を流通する燃焼用空気は、複数の動翼8の間を通過し、次に、複数の静翼6の間を通過する。複数の静翼6の間を通過した燃焼用空気は、ディフューザ18に流入する。ディフューザ18では、燃焼用空気は、外筒3と内筒4との間に形成された通風路10を流通する。ディフューザ18を流通した燃焼用空気は、下流側ダクト19内に流入する。下流側ダクト19の下流に設けられたスプリッタ型サイレンサ(図示省略)を更に設けたものは、下流側ダクト19内を流通した燃焼用空気は、下流に設けられたスプリッタ型サイレンサ(図示省略)を通過し、その後ボイラ(図示省略)に供給される。また、燃焼用空気が動翼8を通過した際に発生する中低周波数領域の騒音は、ディフューザ18及び下流側ダクト19に設けられた音響ライナ9によって消音効果が得られる。また、軸流送風機2で発生する中周波数領域及び高周波数領域の騒音は、スプリッタ型サイレンサ15によって消音効果が得られる。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、ディフューザ18または下流側ダクト19の内周面に設けた、多孔板23及び背後空気層25が音響ライナ9の役割を果たして消音効果を得るので、軸流送風機2から発生する騒音を、多孔板23及び背後空気層25によって低減することができる。すなわち、騒音源から発生した騒音の音響エネルギが、多孔板23に形成された複数の孔を通過する際に熱エネルギに変換されるので、騒音を低減することができる。
また、ディフューザ18または下流側ダクト19の外筒3の外側に追加構造を設けることなく、外筒3の内部に設けられた、音響ライナ9によって騒音を低減している。このように外筒3の内部に設けられる構造によって、騒音を低減できるので、本実施形態の構成は、軸流送風機2の大型化を招来しない。したがって、音響ライナ9で騒音を低減している分、軸流送風機2に別途消音器として設けられている場合などは音響ライナ9の設置によって騒音を低減している分、外筒3の外周面を被装する防音材の厚さを薄くすることや、別途消音器として設けられているスプリッタ型サイレンサ15を小型化することができる。また、スプリッタ型サイレンサ15のガス流れ方向の長さを短くすることができる。このように、他の消音器を小型化することにより、軸流送風機2全体の製造コストや設置コストの低減を実現できるとともに、軸流送風機2の配置スペースの縮小を実現することができる。
また、発電プラント1のボイラに大流量の燃焼用空気を流通するために、軸流送風機2では、通気量が大きく大流量のガスが流通するディフューザ18または下流側ダクト19の内径(ダクト直径)が大きいこともあり、動翼8の回転によって中低周波数領域の騒音(100Hz〜300Hzの騒音)が多く発生する。本実施形態では、多孔板23が、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面から所定の離間距離として70mm以上離間するように配置されている。すなわち、背面空気層を70mm以上と比較的厚く設けているので、中低周波数領域の騒音を好適に低減することができる。さらに好ましくは、背面空気層は120mm以下として、ダクトの径の拡大を抑制することが出来る。
また、アングル材24の第2板部材28の内周面に対して面接触するように多孔板23が固定されている。これにより、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に沿うように、かつ、ディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面から所望の距離(本実施形態では、70mm以上)離間するように、好適に多孔板23を外筒3の内周面に対して支持することができる。したがって、外筒3の内部で、所望の厚さの背後空気層25を形成することができるので、音響ライナ9によって、好適に所望の周波数領域の騒音を低減することができる。よって、軸流送風機2から発生する騒音を好適に低減することができる。
また、第1板部材27をディフューザ18または下流側ダクト19の内周面の周方向の全域に固定しているので、背後空気層25の厚さ(L)を70mm以上と比較的厚く設けた場合であっても、アングル材24が多孔板23を全周に渡り支持するため強固に支持することができる。軸流送風機2の運転時には、振動や熱の影響が大きいが、本実施形態では、多孔板23を簡素な構造部材で強固に支持しているので、所望の背後空気層25を好適に形成することができるとともに、所望の背後空気層25の厚さを維持することができる。
また、外筒3の外周面にリブ21が設けられた位置に対応する内周面の位置の少なくとも一部では、アングル材24の第1板部材27と外筒3の内周面とが固定されている。これにより、外筒3のうち、外周面側をリブ21により剛性が向上した部分に対して、内周面側に第1板部材27を固定することになるので、第1板部材27を外筒3に固定する際に、外筒3に荷重がかっても、外筒3が変形し難いので好ましい。したがって、第1板部材27を外筒3に対して固定し易くすることができる。また、第1板部材27と外筒3との固定箇所が、リブ21によって補強されるので、第1板部材27と外筒3とを強固に固定することができる。
音響ライナ9の吸音率が最も高くなり、効果的に低減できる騒音の周波数は、音響ライナ9が設けられる外筒3の流路断面積(ダクト内の直径)によって異なる。本実施形態では、流路断面積が拡大するディフューザ18に音響ライナ9を設けている。したがって、ディフューザ18に設けられた音響ライナ9によって、ダクト直径が一定な下流側ダクト19に比較して、広い周波数範囲での様々な周波数の騒音を効果的に低減することができる。一方、音響ライナ9のダクト直径が順次変化するので、周波数の騒音を効果的に低減することができる流路長さは短くなるので、騒音を効果的に低減できる騒音の音量は限られる。
本実施形態では、軸流送風機2から発生する最も卓越した騒音である、動翼8を燃焼用空気が通過する際に発生する周波数領域の騒音は、消音効果を発揮するターゲットの周波数(例えば150Hz)に対して音響ライナ9の吸音効果に影響する各パラメータを調整して下流側ダクト19に設けられた音響ライナ9によって低減する。また、広帯域の騒音をディフューザ18に設けられた音響ライナ9によって低減している。ディフューザ18への設置では特定の周波数に対して強い減音効果を持つことは期待できないが、連続的に直径が変化しているため、非常に広い帯域に対して減音効果を持たせることができる。このように構成することで、最も卓越した騒音を好適に低減するとともに、他の広い周波数領域の騒音も低減することができる。
また、流路断面積(ダクト内の直径)が拡大するディフューザ18に音響ライナ9を設けながら、ダクト直径が一定な下流側ダクト19と同様にターゲットとする周波数での騒音を効果的に低減するようにしてもよい。すなわち、音響ライナ9のダクト直径が順次変化することに対して、背後空気層25の厚さ(L)を変化させることで、吸音率が最も高くなり効果的に低減できる騒音の周波数をターゲットの周波数(例えば150Hz)に維持するようにしてもよい。具体的には、流路断面積(ダクト内の直径)が拡大するに従い、背後空気層25の厚さ(L)を薄くし、ディフューザ18の内周面と多孔板23との半径方向の離間距離を順次小さくする。これにより、ダクト直径のディフューザ18においても音響ダクトの消音効果を維持することができる。
これにより、軸流送風機2から発生する最も卓越した騒音に対して出来るだけ消音効果を発揮するよう、ターゲットの周波数(例えば150Hz)に対して音響ライナ9の設置する距離を長く設定することが出来る。
また、スプリッタ型サイレンサ15は、中周波数及び高周波数の騒音を好適に低減することができる。本実施形態では、音響ライナ9とスプリッタ型サイレンサ15とを備えているので、音響ライナ9で中低周波数領域の騒音を低減するとともに、スプリッタ型サイレンサ15で中周波数領域及び高周波数領域の騒音を低減することができる。したがって、より広い周波数領域の騒音を低減することができる。
また、スプリッタ型サイレンサ15のみによって騒音を低減する構成と比較して、音響ライナ9によっても騒音を低減しているので、スプリッタ型サイレンサ15を小型化することができる。音響ライナ9とは他の消音器であるスプリッタ型サイレンサ15を小型化することにより、軸流送風機2全体の製造コストや設置コストの低減を実現できるとともに、軸流送風機2の配置スペースの縮小を実現することができる。
なお、一般に、発電プラント1に適用される機器においては、軸流送風機2の空気吸込口から所定の距離(例えば、1m等)において所定の音量(例えば、85dB等)以下といった騒音規制や、外筒3の内部騒音で所定の音量(例えば、110dB等)以下といった騒音規制があるため、それを満たすように、音響ライナ9とスプリッタ型サイレンサ15との特性及びコストのそれぞれを検討し、トータルのコストが最小となるように組み合わせて、音響ライナ9及びスプリッタ型サイレンサ15の構造を決定しても良い。このように、構成することで、発電プラント1に適用される機器のコストを最小としつつ、効果的に騒音を低減することができる。
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、音響ライナ9の構造のうち、音響ライナ9の吸音効果に影響する各パラメータを(多孔板23の板厚(t)、多孔板23に形成される貫通孔23aの孔径(d)、多孔板23の開口率(σ)、背後空気層25の厚さ(L))を一様に設定し、吸音効果の音響特性とする例について説明したが、本変形例では、燃焼用空気が流通する上流側から下流側へと、音響ライナ9を設置する場所毎に構造を変更したものを並べて、吸音効果の音響特性を変更する点で上記実施形態と異なる。
詳細には、燃焼用空気が流通する上流側から下流側のディフューザ18及び下流側ダクト19の内周面に対して、動翼8に近い位置では最も卓越した周波数の騒音である低周波領域(例えば150Hz付近)の騒音を消音し、その後下流側へと離れるに従い高周波領域側(例えば150〜200Hz)の騒音を消音させるように、音響ライナ9を形成する。
具体的な例としては、下記表2のように各部分の音響ライナ9を構成する。
Figure 2019143494
上記表2の構造では、動翼8に最も近い位置であるディフューザ18に設けられる音響ライナ9では、低周波数領域の騒音を低減するように、多孔板23の孔径(d)を3mm〜5mmとし、背後空気層25の厚さ(L)を100mm〜120mmとしている。また、下流側ダクト19の上流部分では、低周波数領域から中周波数領域の騒音を低減するように、多孔板23の孔径(d)を2mm〜4mmとし、背後空気層25の厚さ(L)を80mm〜110mmとしている。また、下流側ダクト19の下流部分では、中周波数領域の騒音を低減するように、多孔板23の孔径(d)を1mm〜3mmとし、背後空気層25の厚さ(L)を70mm〜100mmとしている。
また、音響ライナ9を設置する流路長さは各々長く確保できるので、騒音を効果的に低減できる騒音の音量が限られることなく、騒音を効果的に低減でき、軸流送風機2から発生する中低周波数領域の騒音を一層に抑制することができる。
本変形例のように、各周波数領域の騒音に対して多孔板23の孔径(d)、背後空気層25の厚さ(L)を適切に選定することで、軸流送風機2から発生する様々な周波数領域の騒音を効果的に低減することができる。
なお、本変形例では、音響ライナ9の多孔板23の孔径(d)及び背後空気層25の厚さ(L)を変更する例について説明したが、音響ライナ9の多孔板23の孔径(d)及び背後空気層25の厚さ(L)だけではなく、多孔板23の板厚(t)や多孔板23の開口率(σ)を変更してもよい。
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係る軸流送風機2を、ボイラに燃焼用空気を供給する軸流送風機2に適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ボイラから排出される排ガスを導く誘引用の軸流送風機に適用してもよい。なお、その場合、上記説明の「上流」及び「下流」は、排ガス流れにおける「上流」及び「下流」を意味する。
また、上記実施形態では、外筒3が円形ダクトである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。外筒は矩形ダクトであってもよい。なお、矩形ダクトである場合には、内貼り材の最適表面インピーダンスの理論値を示す式は、上記式(1)ではなく、下記式(6)となる。なお、下記式(6)中の“l”は、多孔板23が設けられる矩形ダクトの一辺の長さである。
Figure 2019143494
1 発電プラント(ボイラシステム)
2 軸流送風機
3 外筒(ダクト)
4 内筒
5 ハブ
6 静翼
7 翼車
8 動翼
9 音響ライナ
10 通風路
11 回転軸
12 駆動部
15 スプリッタ型サイレンサ
17 上流側ダクト
18 ディフューザ(拡大部)
19 下流側ダクト
21 リブ(補強部)
23 多孔板
23a 貫通孔
24 アングル材(支持部材)
25 背後空気層
27 第1板部材
28 第2板部材

Claims (11)

  1. ガスの供給またはガスの排出を行う軸流送風機であって、
    筒形状をなすダクトと、
    前記ダクトの内部に配置され、前記ダクトの内部にガス流れを流通させる動翼と、
    前記動翼と連結される回転軸と、
    前記回転軸と連結され、前記動翼を駆動する駆動部と、
    前記動翼よりも前記ガス流れにおける下流側に、前記ダクトの内周面に沿って設けられ、複数の孔が形成された多孔板と、を備え、
    前記多孔板は、前記ダクトの内周面から70mm以上の所定距離離間するように配置されている軸流送風機。
  2. 前記多孔板は、前記ダクトの内周面から70mm以上で、かつ120mm以下の所定の離間距離で配置され、
    前記多孔板と前記ダクトの内周面との間に空間層を形成している請求項1に記載の軸流送風機。
  3. 前記ダクトに前記多孔板を支持する支持部材を備え、
    前記支持部材は、前記ダクトの内周面の周方向から、前記ダクトの流路断面の中心に向かって前記所定距離延びる第1板部材と、前記第1板部材の内端から前記ダクトの内周面に沿うように延びる第2板部材と、を備え、
    前記多孔板の外周面は、前記第2板部材により支持されている請求項1または2に記載の軸流送風機。
  4. 前記第1板部材は、環状に形成されていて、
    前記第1板部材の外周端は前記ダクトの内周面に固定され、前記第1板部材の内周端は前記ダクトの内周面に沿うように延びる前記第2板部材と接続し、
    前記多孔板の外周面は、前記第2板部材の内周面に対して、面接触するように固定されている請求項3に記載の軸流送風機。
  5. 前記ダクトの外周面から突出する環状の板状の部材であって、前記ダクトを補強する補強部を備え、
    前記第1板部材の少なくとも一部は、前記ダクトの内周面に対して、前記補強部が外周面に設けられた位置に対応する内周面の位置で固定されている請求項3または請求項4に記載の軸流送風機。
  6. 前記ダクトは、前記動翼よりも前記ガス流れにおける下流側に、流路断面積が前記下流側に向かうほど漸次大きくなる拡大部が形成され、
    前記拡大部の内部には、前記拡大部の内周面に沿って設けられ、前記拡大部の内周面から所定の離間距離として70mm以上離間するように前記多孔板が配置されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の軸流送風機。
  7. 前記ダクトの前記拡大部の内部には、前記拡大部の内周面と前記多孔板との間に空間層が設けられ、
    前記流路断面積が漸次大きくなるに従い、前記空間層の厚さを減らすように前記多孔板が配置されている請求項6に記載の軸流送風機。
  8. 前記ダクト内には、前記ガス流れ方向の位置によって、吸音効果の音響特性の少なくとも1つが異なるように前記多孔板が設けられている請求項1から請求項7のいずれかに記載の軸流送風機。
  9. 前記動翼の上流側及び/又は前記多孔板の下流側の前記ガス流の途中に設けられたスプリッタ型のサイレンサを備えた請求項1から請求項8のいずれかに記載の軸流送風機。
  10. 請求項1から請求項9のいずれかに記載の軸流送風機と、
    前記軸流送風機によってガスの供給又はガスの排出が行われるボイラと、を備えたボイラシステム。
  11. ガスの供給またはガスの排出を行う軸流送風機の製造方法であって、
    前記軸流送風機は、
    筒形状をなすダクトと、
    前記ダクトの内部に配置され、前記ダクトの内部にガス流れを流通させる動翼と、
    前記動翼と連結される回転軸と、
    前記回転軸を回転駆動することで、前記動翼を駆動する駆動部と、
    前記動翼よりも下流側において、前記ダクトの内周面に沿って設けられ、複数の孔が形成された多孔板と、を具備し、
    前記多孔板を、前記ダクトの内周面から70mm以上の所定の距離で離間するように配置する軸流送風機の製造方法。
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