JP2019133966A - ペロブスカイト膜の製造方法、ペロブスカイト膜、太陽電池およびペロブスカイト膜形成用溶媒 - Google Patents

ペロブスカイト膜の製造方法、ペロブスカイト膜、太陽電池およびペロブスカイト膜形成用溶媒 Download PDF

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隆 藤原
しのぶ 寺川
Shinobu TERAKAWA
しのぶ 寺川
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千波矢 安達
正幸 八尋
Masayuki Yatsuhiro
正幸 八尋
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Abstract

【課題】良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく形成する。【解決手段】ペロブスカイト膜の製造方法において、第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることによって、第1溶媒がペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒中へ移動することによりペロブスカイト膜を製造する方法であって、第1溶媒は第2溶媒および第3溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、第2溶媒と第3溶媒は第1溶媒に対する溶解度が異なる。【選択図】なし

Description

本発明は、ペロブスカイト膜の製造方法、ペロブスカイト膜、太陽電池およびペロブスカイト膜形成用溶媒に関する。
太陽電池の光電変換材料や各種電子デバイスの半導体材料として、有機無機ペロブスカイトが注目を集めている。有機無機ペロブスカイトは、有機カチオンとSn2+やPb2+等の2価の金属イオンとハロゲンイオンからなるイオン化合物であり、各イオンがペロブスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造(ペロブスカイト型構造)を形成して3次元方向に規則的に配置する3次元ペロブスカイトと、ペロブスカイト型構造の八面体部分に相当する無機骨格が2次元配列してなる無機層と、配向した有機カチオンからなる有機層とが交互に積層した層状構造を形成する2次元ペロブスカイトが知られている。このうち3次元ペロブスカイトは、太陽電池の光電変換材料としての有用性が確認されており、実用化に向けてさらなる検討が進められている。
ここで、有機無機ペロブスカイトを、例えば太陽電池の光電変換材料に利用する場合、有機無機ペロブスカイトを支持体上に膜状に形成して光電変換層とするため、形成したペロブスカイト膜の膜質が電池性能に大きく影響することになる。このため、ペロブスカイト型太陽電池の特性および実用性を向上させるためには、良質なペロブスカイト膜が形成できるペロブスカイト膜の形成方法の開発が必須となる。
ペロブスカイト膜の形成方法として、非特許文献1には、湿式プロセスに気相プロセスを組み合わせた方法(Low-Temperature Vapor-Assisted Solution Process:LT-VASP法)が記載されている。ここで、LT-VASP法とは、スピンコート法により成膜されたSnI膜(固体)を、ヨウ化メチルアンモニウム蒸気と反応させてCHNHSnI(ペロブスカイト)膜を形成するVASP法において、SnI膜が形成された基板と、ヨウ化メチルアンモニウムが収容されたペトリ皿の間に段差を設けて反応を行うようにしたものである。同文献には、こうした段差を設けることにより、反応の間、SnI膜がメチルアンモニウムよりも低温に保持されてSnIの結晶析出が抑えられ、表面が平滑なペロブスカイト膜が形成されたことが記載されている。
J. Phys. Chem. Lett. 2016, 7, 776-782
上記のように、非特許文献1には、LT-VASP法を用いることにより、表面が平滑なペロブスカイト膜が形成されたことが記載されている。しかしながら、LT-VASP法によるペロブスカイト膜を用いた太陽電池は、特性のばらつきが大きく、同文献に掲載された測定結果においても、変換効率が0.5〜1.8%範囲で変動している。このため、LT-VASP法は、実際の生産ラインに導入するには安定性が不足しており、実用的な方法であるとは言えない。
そこで、本発明者らが、LT-VASP法とは異なるメカニズムのペロブスカイト膜の形成方法について検討を始めたところ、湿式プロセスで形成したペロブスカイト前駆体膜を溶媒に接触させると、溶媒の種類によっては、該溶媒中へペロブスカイト前駆体膜中の溶媒が拡散し、良好な膜質を有する固体状のペロブスカイト膜に変換することを見出した(以下、こうしたペロブスカイト膜の形成方法を「溶媒置換法」という)。上記の非特許文献1に記載のLT-VASP法は、固体のSnI膜とヨウ化メチルアンモニウム蒸気との反応により、ペロブスカイト膜を形成する方法であり、固体膜を得た後(膜から溶媒を除去した後)にペロブスカイトを生成する点で、本発明者らが対象にしている溶媒置換法とは大きく異なっている。
このような状況下において、本発明者らは、溶媒置換法によるペロブスカイト膜の形成方法についてさらに検討を進め、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく形成すること、さらには、優れた性能が得られる太陽電池を安定に得ることを目的として鋭意検討を進めた。
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、上記の溶媒置換法において、ペロブスカイト前駆体膜を接触させる溶媒として、少なくとも2種類の溶媒を混合した混合溶媒を用い、この混合溶媒に用いる各溶媒のペロブスカイト前駆体膜が含む溶媒に対する溶解度の関係を規定することにより、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく形成できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
[1] 第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることによって、前記第1溶媒が前記ペロブスカイト前駆体膜から前記混合溶媒中へ移動することによりペロブスカイト膜を製造する方法であって、前記第1溶媒は前記第2溶媒および前記第3溶媒よりも前記ペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、前記第2溶媒と前記第3溶媒は前記第1溶媒に対する溶解度が異なる、ペロブスカイト膜の製造方法。
[2] 前記ペロブスカイト前駆体膜が基板上に形成されている、[1]に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[3] 前記ペロブスカイト前駆体膜を前記混合溶媒中に浸漬する、[1]または[2]に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[4] 前記混合溶媒における前記第2溶媒と前記第3溶媒の混合比率を、25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させたときに前記ペロブスカイト前駆体膜中の前記第1溶媒が前記混合溶媒中へ拡散する拡散定数が1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる比率とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[5] 前記ペロブスカイト前駆体膜中の前記第1溶媒が前記混合溶媒中へ拡散する拡散定数が、1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる温度で、前記混合溶媒を前記ペロブスカイト前駆体膜に接触させる、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[6] 25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記第2溶媒を接触させたときに前記第1溶媒が前記第2溶媒中に拡散する拡散定数kと、25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記第3溶媒を接触させたときに前記第1溶媒が前記第3溶媒中に拡散する拡散定数kとの差の絶対値(|k−k|)が1x10-13/s〜1x10/sの範囲内にある、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[7] 前記第1溶媒が、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミド、γ―ブチロラクトンである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[8] 前記第2溶媒と前記第3溶媒が、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサンまたはシクロヘキサンである(ただし、第2溶媒と第3溶媒は異なる溶媒である)、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[9] 前記第2溶媒が、トルエンまたはクロロベンゼンであって、前記第3溶媒がヘキサンまたはシクロヘキサンである、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[10] 前記ペロブスカイト前駆体膜が、下記一般式(4)で表されるペロブスカイト型化合物を含む、[1]〜[9]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
3BX (4)
[一般式(4)において、A3は有機カチオンを表し、Bは2価の金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す。3つのX同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。]
[11] 前記ペロブスカイト前駆体膜がPb、Snのうちの少なくとも1種を含む、[1]〜[10]1〜10のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[12] 前記ペロブスカイト前駆体膜がヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジウム、ヨウ化セシウムのうちの少なくとも1種を含む、[1]〜[11]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[13] 前記ペロブスカイト前駆体膜がIおよびFの少なくとも1種を含む、[1]〜[12]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[14] 前記ペロブスカイト前駆体膜への前記混合溶媒の接触を0.1秒〜180分行う、[1]〜[13]1〜13のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[15] 前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させているとき、前記混合溶媒の温度を時間とともに変化させる、[1]〜[14]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[16] 前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させた後、得られたペロブスカイト膜に、0〜200℃でアニール処理を行う、[1]〜[15]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
[17] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるペロブスカイト膜。
[18] 前記第1溶媒を0超10,000ppm未満の濃度で含む、[17]に記載のペロブスカイト膜。
[19] 前記第2溶媒を0超5,000ppm未満の濃度で含む、[17]または[18]に記載のペロブスカイト膜。
[20] 前記第3溶媒を0超5,000ppm未満の濃度で含む、[17]〜[19]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜。
[21] [17]〜[20]のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜を有する太陽電池。
[22] 第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に接触させる溶媒であって、前記接触を行うことによって、接触させた溶媒中に前記第1溶媒が前記ペロブスカイト前駆体膜から移動することによりペロブスカイト膜を製造することができる、ペロブスカイト膜形成用溶媒であって、前記ペロブスカイト膜形成用溶媒は、少なくとも第2溶媒と第3溶媒を含む2種以上の溶媒の混合物であって、前記第1溶媒は前記第2溶媒および前記第3溶媒よりも前記ペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、前記第2溶媒と前記第3溶媒は前記第1溶媒に対する溶解度が異なる、ペロブスカイト膜形成用溶媒。
本発明のペロブスカイト膜の製造方法によれば、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく製造することができる。また、本発明の太陽電池は、本発明のペロブスカイト膜の製造方法により製造されたペロブスカイト膜を有することにより、電池間での特性のばらつきが小さく、優れた性能を安定に得ることができる。
本発明の太陽電池の層構成例を示す概略断面図である。 実施例3において、前駆体溶液のスピンコート時の回転数を8000rpmにした場合のペロブスカイト膜の表面状態を示すものであり、(a)は走査型電子顕微鏡写真であり、(b)は原子間力顕微鏡写真である。 実施例3において、前駆体溶液のスピンコート時の回転数を6000rpmにした場合のペロブスカイト膜の表面状態を示すものであり、(a)は走査型電子顕微鏡写真であり、(b)は原子間力顕微鏡写真である。 実施例9、10、比較例5〜8において、浸漬槽に浸漬している間のペロブスカイト前駆体膜の透過光強度の時間変化を示すグラフである。 実施例9、10、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜の走査型電子顕微鏡写真および原子間力顕微鏡写真(挿入図)であり、(a)は実施例9で製造したペロブスカイト膜の写真、(b)は比較例5で製造したペロブスカイト膜の写真、(c)は比較例6で製造したペロブスカイト膜の写真、(d)は実施例10で製造したペロブスカイト膜の写真、(e)は比較例7で製造したペロブスカイト膜の写真、(f)は比較例8で製造したペロブスカイト膜の写真である。 実施例9、10、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜の光学濃度スペクトルである。 実施例9、10、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜のX線回折スペクトルであり、(a)はペロブスカイト膜毎のX線回折スペクトルを別々に並べたものであり、(b)は、(a)のX線回折スペクトルの縦軸目盛をそれぞれ対数目盛に変換し、それらの対数スペクトルを重ねて表示したものである。 実施例9〜18で製造したペロブスカイト膜の写真である。 実施例1〜4で製造したペロブスカイト膜を有する電池1〜4について、フォトマスクで覆わずに測定した電流密度−電圧特性(光電流特性)を示すグラフである。 実施例1〜4で製造したペロブスカイト膜を有する電池1〜4について、フォトマスクを覆った状態で測定した電流密度−電圧特性(光電流特性)を示すグラフである。 実施例1〜4で製造したペロブスカイト膜を有する電池1〜4について、フォトマスクを覆った状態で測定した光電変換特性の波長依存性を示すグラフである。 25℃のトルエンを用いて製膜したペロブスカイト膜を有する電池の電流密度−電圧特性を示すグラフである。 15℃のトルエンを用いて製膜したペロブスカイト膜を有する電池の電流密度−電圧特性を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4について、フォトマスクで覆わずに測定した電流密度−電圧特性(光電流特性)を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4について、フォトマスクを覆った状態で測定した電流密度−電圧特性(光電流特性)を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4について、光を照射せずに測定した電流密度−電圧特性(暗電流特性)を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4の光電変換特性の波長依存性を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4の短絡電流JSCを示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4の開放電圧VOCを示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4のfill factor(FF)を示すグラフである。 実施例9、10で製造したペロブスカイト膜を有する電池5、6、および、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜を有する比較電池1〜4のエネルギー変換効率ηを示すグラフである。 実施例9で製造したペロブスカイト膜を有する電池5の短絡電流JSCのヒストグラムである。 実施例9で製造したペロブスカイト膜を有する電池5の開放電圧VOCのヒストグラムである。 実施例9で製造したペロブスカイト膜を有する電池5のfill factor(FF)のヒストグラムである。 実施例9で製造したペロブスカイト膜を有する電池5のエネルギー変換効率ηのヒストグラムである。 実施例9で製造したペロブスカイト膜を有する電池5を連続駆動したときの、太陽電池特性の経時変化を示すグラフである。 図26のグラフの0〜5時間の範囲を拡大して表示したグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべてHであってもよいし、一部または全部がH[重水素(デューテリウム)D]であってもよい。
<<ペロブスカイト膜の製造方法>>
本発明のペロブスカイト膜の製造方法は、第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることによって、第1溶媒がペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒中へ移動することによりペロブスカイト膜を製造する方法であって、第1溶媒は第2溶媒および第3溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、第2溶媒と第3溶媒は第1溶媒に対する溶解度が異なるように規定したものである。
本発明における「ペロブスカイト前駆体膜」とは、ペロブスカイト型化合物と第1溶媒を含み、膜状をなすものである。ここで、ペロブスカイト型化合物は、有機カチオンと2価の金属イオンとハロゲンイオンからなるイオン化合物であり、ペロブスカイト型結晶構造を形成しうるものである。ペロブスカイト型化合物を構成するイオンは、ペロブスカイト前駆体膜中において塩を形成していてもよいし、遊離イオンとして存在していてもよい。
本発明における「ペロブスカイト膜」とは、ペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒が、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒中へ移動した結果、ペロブスカイト型化合物の各イオンがペロブスカイト型結晶を形成するように規則的に配置して形成された、ペロブスカイト型結晶構造を有する膜である。ペロブスカイト型結晶構造は、3次元ペロブスカイト構造であってもよいし、2次元ペロブスカイト構造であってもよいし、両方のペロブスカイト構造が複合した複合構造であってもよい。
また、本発明における「ペロブスカイト前駆体膜の主成分」とは、そのペロブスカイト前駆体膜に含まれるペロブスカイト型化合物のことをいい、第1溶媒における「ペロブスカイト前駆体の主成分に対する溶解度」とは、そのペロブスカイト化合物を第1溶媒に溶解した溶液の25℃における飽和濃度のことをいう。
本明細書中における「拡散」は、物質が他の物質と混合して行く過程で見られる物質の動きをすべて含む概念である。このため、「拡散」には、分子拡散だけでなく、対流による拡散や乱流拡散も含まれる。また、本明細書中における「拡散定数」は、例えば、溶媒混合時の過渡屈折率変化の光学的評価により決定することができる。
ここで、一般に、湿式プロセスで形成された液状膜を固体膜に変換する場合、液状膜中の溶媒を、大気中へ拡散(揮発)させて除去する。しかしながら、こうした方法では、溶媒の拡散定数が液状膜や大気の温度でほぼ決まり、その他に、拡散定数を有意に変化させるファクターがないことから、溶媒の拡散定数を広く且つ精密に制御することが難しい。一方、本発明者らが、湿式プロセスで形成されたペロブスカイト膜の膜質について検討を行ったところ、ペロブスカイト膜の膜質には、液状膜(ペロブスカイト前駆体膜)から拡散する溶媒の拡散定数が大きく影響することが判明した。このような点から、液状膜中の溶媒を大気中へ拡散させる方法では、拡散定数を広く且つ精密に制御することが困難であるために、ペロブスカイト膜を良好な膜質で再現性よく形成することができない。
これに対して、本発明のペロブスカイト膜の製造方法は、ペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることにより、ペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒を混合溶媒中へ移動させてペロブスカイト膜を製造する方法であり、その際、第1溶媒として、第2溶媒および第3溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きいものを使用し、且つ、第2溶媒および第3溶媒として、第1溶媒に対する溶解度が互いに異なるものを使用する。ペロブスカイト前駆体膜に含まれる第1溶媒が、第2溶媒および第3溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きいと、ペロブスカイト前駆体膜と混合溶媒の間では、前駆体膜から混合溶媒中へ第1溶媒が拡散する方が、第2溶媒および第3溶媒が前駆体膜中へ拡散するよりも優位に進行する。その結果、ペロブスカイト前駆体膜における第1溶媒の含有量が減少して、固体状のペロブスカイト膜が形成される。このとき、第1溶媒の混合溶媒中への拡散定数は、各溶媒の温度の他に、第1溶媒〜第3溶媒の種類や溶解度、第2溶媒と第3溶媒の混合比率により効果的に変化するため、これらを制御することにより、その拡散定数を広く且つ精密に調整することができる。このため、本発明のペロブスカイト前駆体膜の製造方法によれば、ペロブスカイト前駆体膜から第1溶媒を適切な拡散定数で確実に拡散させることができ、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく製造することができる。
以下において、本発明のペロブスカイト膜の製造方法で用いる材料および条件について詳細に説明する。
<ペロブスカイト前駆体膜>
上記のように、本発明におけるペロブスカイト前駆体膜は、ペロブスカイト型化合物と第1溶媒を含み、膜状をなすものである。そして、ペロブスカイト型化合物は、有機カチオンと2価の金属イオンとハロゲンイオンからなるイオン化合物であり、ペロブスカイト型結晶構造を形成しうるものである。このペロブスカイト型化合物としては、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物を挙げることができる。このうち、一般式(1)〜(3)で表される化合物は2次元ペロブスカイト構造を形成しうる化合物であり、一般式(4)で表される化合物は3次元ペロブスカイト構造を形成しうる化合物である。
[一般式(1)で表される化合物]
BX (1)
一般式(1)において、Aは有機カチオンを表し、Bは2価の金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す。2つのA同士および4つのX同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。
一般式(1)で表される化合物は、ペロブスカイト型構造の八面体部分に相当する無機骨格BXが2次元配列してなる無機層と、配向した有機カチオンAが2次元配列してなる有機層とが交互に積層した層状構造を形成しうる。ここで、無機骨格BXは、ハロゲンイオンXを頂点とする八面体の中心に二価の金属イオンBが配置した構造を有し、隣り合う八面体同士で頂点共有する。有機カチオンAは、カチオン性基を無機層側に向けて配向する。そして、各八面体の上下それぞれ4つのカチオン性基を立方晶の頂点とし、各八面体の頂点を立方晶の面心としてペロブスカイト型構造が構成される。
Aで表される有機カチオンは、下記一般式(5)で表されるアンモニウムであることが好ましい。
(5)
一般式(5)において、Rは水素原子または置換基を表し、4つのRの少なくとも1つは、炭素数が2以上の置換基である。4つのRのうちの、炭素数が2以上の置換基の数は、1または2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。また、アンモニウムを構成する4つのRは、その1つが炭素数2以上の置換基であって、残りは水素原子であることが好ましい。Rのうちの2つ以上が置換基であるとき、複数の置換基同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。炭素数が2以上の置換基および他の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、これらの置換基は、さらにアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン等で置換されていてもよい。炭素数が2以上の置換基の炭素数は、アルキル基では2〜30であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜5であることがさらに好ましい。アリール基では、6〜20であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、8〜10であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基では、5〜19であることが好ましく、5〜17であることがより好ましく、7〜9であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を挙げることができる。有機層の厚さは、Rで表される置換基の長軸長(例えば、アルキル基の鎖長)に応じて制御され、これにより、この化合物により構成される機能層の特性を制御することができる。
また、Aで表される有機カチオンは、アルキレン基および芳香環の少なくとも一方を有することが好ましく、アルキレン基と芳香環の両方を有することが好ましく、アルキレン基と芳香環が連結した構造を有することがより好ましく、下記一般式(5a)で表されるアンモニウムであることがさらに好ましい。
Ar(CHn1NH (5a)
一般式(5a)において、Arは芳香環を表す。n1は1〜20の整数である。
有機カチオンが有する芳香環は、芳香族炭化水素であってもよいし、芳香族ヘテロ環であってもよいが、芳香族炭化水素であることが好ましい。芳香族ヘテロ環のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を挙げることができる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン環および複数のベンゼン環が縮合した構造を有する縮合多環系炭化水素であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、クリセン環、テトラセン環、ペリレン環であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。芳香族ヘテロ環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、カルバゾール環、トリアジン環であることが好ましく、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であることがより好ましく、ピリジン環であることがさらに好ましい。有機カチオンが有する芳香環は、例えばアルキル基、アリール基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等の置換基を有していてもよく、また、芳香環または芳香環に結合する置換基に存在する水素原子は重水素原子であってもよい。
一般式(5a)のn1は1〜20の整数であり、2〜10の整数であることが好ましい。
Aで表される有機カチオンとしては、アンモニウムの他に、ホルムアミジニウム、セシウム等も用いることができる。
Bで表される2価の金属イオンとしては、Cu2+,Ni2+,Mn2+,Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+等を挙げることができ、Sn2+、Pb2+であることが好ましく、Sn2+であることがより好ましい。
Xで表されるハロゲンイオンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各イオンを挙げることができる。3つのXが表すハロゲンイオンは、全て同じであってもよいし、2または3種類のハロゲンイオンの組み合わせであってもよい。好ましいのは、3つのXが全て同じハロゲンイオンの場合であり、3つのXが全てヨウ素イオンであることがより好ましい。
一般式(1)で表されるペロブスカイト型化合物の好ましい具体例として、[CH(CHn2NH)]SnI(n2=2〜17)、(CNHSnI、(CH(CHn3(CH)CHNHSnI[n3=5〜8]、(CNHSnI、(C10CHNHSnI及び(CNHSnBr等の錫系ペロブスカイト、[CH(CHn2NH)]PbI(n2=2〜17)、(CNHPbI、(CH(CHn3(CH)CHNHPbI[n3=5〜8]、(CNHPbI、(C10CHNHPbI及び(CNHPbBr等の鉛系ペロブスカイトを挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるペロブスカイト型化合物は、これらの化合物によって限定的に解釈されることはない。
[一般式(2)で表される化合物]
2 1 n−13n+1 (2)
一般式(2)のA2は、A1よりも炭素数が大きい有機カチオンを表す。一般式(2)のBおよびXは、一般式(1)のBおよびXとそれぞれ同義であり、一般式(2)のA2は一般式(1)のAと同義である。一般式(2)のA2、B、Xの好ましい範囲と具体例については、一般式(1)のA、B、Xの好ましい範囲と具体例をそれぞれ参照することができる。ここで、2つのA2同士および複数のX同士は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。A1およびBがそれぞれ複数存在するとき、A1同士およびB同士は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。
1で表される有機カチオンは、A2よりも炭素数が小さい有機カチオンであり、下記一般式(6)で表されるアンモニウムであることが好ましい。
一般式(6)
11
一般式(6)において、R11は水素原子または置換基を表し、4つのR11の少なくとも1つは置換基である。4つのR11のうちの置換基の数は、1または2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。すなわち、アンモニウムを構成する4つのR11は、その1つが置換基であって、残りは水素原子であることが好ましい。R11のうちの2つ以上が置換基であるとき、複数の置換基同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、アルキル基やアリール基(フェニル基、ナフチル基等)を挙げることができ、これらの置換基は、さらにアルキル基やアリール基等で置換されていてもよい。置換基の炭素数は、アルキル基では1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。アリール基では、6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。
1およびA2で表される有機カチオンとしては、アンモニウムの他に、ホルムアミジニウム、セシウム等も用いることができる。
一般式(2)で表される化合物は、八面体をなす無機骨格B3n+1により構成された無機層と有機カチオンA2により構成された有機層とが交互に積層した層状構造を形成する。nは各無機層における八面体の積層数に対応し、1〜100の整数である。nが2以上であるとき、各八面体間の立方晶の頂点に対応する位置に有機カチオンA1が配置する。
一般式(2)で表される有機無機ペロブスカイト型化合物の好ましい具体例として、下記一般式(2a)で表される化合物を挙げることができる。
(CNH(CHNHn−1Sn3n+1 (2a)
一般式(2a)において、nは1〜100の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。具体的には、(CNHSnI、(CNH(CHNH)Sn、(CNH(CHNHSn10、(CNH(CHNHSn13、(CNH(CHNHSn16を挙げることができる。また、一般式(2)で表される有機無機ペロブスカイト型化合物の好ましい具体例として、(CH(CHNHPbI(n=2〜17)、(CNHPbI、(CH(CH(CH)CHNHPbI[n=5〜8]、(CNHPbI、(C10CHNHPbI及び(CNHPbBr等も挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるペロブスカイト型化合物は、これらの化合物によって限定的に解釈されることはない。
[一般式(3)で表される化合物]
2 1 3m+2 (3)
一般式(3)のA2は、A1よりも炭素数が大きい有機カチオンを表す。一般式(3)のBおよびXは、一般式(1)のBおよびXとそれぞれ同義である。一般式(3)のB、Xの好ましい範囲と具体例については、一般式(1)のB、Xの好ましい範囲と具体例をそれぞれ参照することができる。一般式(3)のA1は一般式(2)のA1と同義である。一般式(3)のA1の好ましい範囲と具体例については、一般式(2)のA1の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
ここで、2つのA2同士および複数のX同士は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。A1およびBがそれぞれ複数存在するとき、A1同士およびB同士は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。
一般式(3)で表される化合物は、無機骨格B3m+2により構成された無機層と有機カチオンA2により構成された有機層とが交互に積層した層状構造を形成する。mは各無機層における積層数に対応し、1〜100の整数である。
2で表される有機カチオンは、A1よりも炭素数が大きい有機カチオンであり、上記一般式(6)で表されるアンモニウムであることが好ましく、下記一般式(7)で表されるアンモニウムであることがより好ましい。
一般式(7)
(R12 C=NR13
一般式(7)において、R12およびR13は、各々独立に水素原子または置換基を表し、各R12は同一であっても異なっていてもよく、また、各R13は同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アミノ基、ハロゲン原子等を挙げることができ、ここでいうアルキル基、アリール基、アミノ基は、さらにアルキル基、アリール基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。置換基の炭素数は、アルキル基では1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。アリール基では、6〜30であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。有機層の厚さは、R12で表される置換基の長軸長(例えば、アルキル基の鎖長)に応じて制御され、これにより、この混合物により構成される機能層の特性を制御することができる。R12およびR13の組み合わせとして、例えば、R12としてアミノ基やハロゲン原子を選択して、R13として水素原子やアルキル基を選択して組み合わせることができる。あるいは、R12としてアミノ基やハロゲン原子を選択して、R13として水素原子を選択して組み合わせることができる。
2で表される有機カチオンとしては、アンモニウムの他に、ホルムアミジニウム、セシウム等も用いることができる。
一般式(3)で表される有機無機ペロブスカイト型化合物の好ましい具体例として、下記一般式(3a)で表される化合物を挙げることができる。
[NHC(I)=NH(CHNHSn3m+2 (3a)
一般式(3a)において、mは2〜100の整数であり、好ましくは2〜5の整数である。具体的には、[NHC(I)=NH(CHNHSn、[NHC(I)=NH(CHNHSn11、[NHC(I)=NH(CHNHSn14を挙げることができる。ただし、本発明において用いることができるペロブスカイト型化合物は、これらの化合物によって限定的に解釈されることはない。
一般式(1)〜(3)で表される化合物が形成する無機層および有機層の合計層数は、1〜100であることが好ましく、1〜50であることがより好ましく、5〜20であることがさらに好ましい。
[一般式(4)で表される化合物]
3BX (4)
一般式(4)において、A3は有機カチオンを表す。一般式(4)のBおよびXは、一般式(1)のBおよびXとそれぞれ同義である。一般式(4)のB、Xの好ましい範囲と具体例については、一般式(1)のB、Xの好ましい範囲と具体例をそれぞれ参照することができる。さらに、一般式(4)で表される化合物のBはフッ素イオンであることも好ましく、ヨウ素イオンとフッ素イオンの組み合わせであることも好ましい。一般式(4)のA3の好ましい範囲と具体例については、一般式(2)のA1の好ましい範囲と具体例を参照することができる。3つのXは互いに同じであっても異なっていてもよい。
一般式(4)で表される化合物は、立方晶系の単位格子を有し、立方晶の各頂点に有機カチオンAが配置し、体心に金属イオンBが配置し、立方晶の各面心にハロゲンイオンXが配置した立方晶ペロブスカイト構造を形成する。ここで、金属イオンBとハロゲンイオンXの無機骨格により八面体が形成される。
一般式(4)で表されるペロブスカイト型化合物の好ましい具体例として、CHNHPbI、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CHNHSnI、CHNHSnI3−q(ただし、qは0〜2の整数である)、CHNHSnCl、CHNHSnBrを挙げることができ、CHNHPbI、CHNHSnI3−qであることが好ましい。ただし、本発明において用いることができるペロブスカイト型化合物は、これらの化合物によって限定的に解釈されることはない。
以上に挙げたペロブスカイト型化合物のうち好ましいものは、2価の金属イオンとしてSn2+、Pb2+の少なくとも1種を含むもの、有機カチオンとしてメチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、セシウムの少なくとも1種を含むもの、ハロゲンイオンとしてI、Fの少なくとも1種を含むものである。また、一般式(1)〜一般式(4)で表される化合物の中では、一般式(4)で表される化合物が好ましく、CHNHSnIが最も好ましい。
また、ペロブスカイト型化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。好ましい組み合せとして、CHNHSnI、CHNHSnI3−q(ただし、qは0〜2の整数である)のうちの2種以上の組み合わせを挙げることができる。
ペロブスカイト前駆体膜におけるペロブスカイト型化合物の単位面積当たりの量は、1.0x10−6mol/m〜1.0x10−2 mol/mであることが好ましく、2.5x10−5 mol/m〜2.5x10−3 mol/mであることがより好ましく、1.0x10−4mol/m〜3.0x10−4 mol/mであることがさらに好ましい。
[第1溶媒]
第1溶媒は、後述する第2溶媒および第3溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分(ペロブスカイト型化合物)に対する溶解度が大きい溶媒であり、第2溶媒および第3溶媒と相溶性を有する溶媒であることが好ましい。
第1溶媒のペロブスカイト型化合物に対する溶解度は、1mol/l−solvent以上であることが好ましく、10mol/l−solvent以上であることがより好ましく、100mol/l−solvent以上であることがさらに好ましい。また、第1溶媒のペロブスカイト型化合物に対する溶解度は、第2溶媒および第3溶媒のペロブスカイト型化合物に対する溶解度のうち、大きい方の溶解度との差が2mol/l−solvent以上であることが好ましく、5mol/l−solvent以上であることがより好ましく、10mol/l−solvent以上であることがさらに好ましい。さらに、第1溶媒のペロブスカイト型化合物に対する溶解度は、第2溶媒および第3溶媒のペロブスカイト型化合物に対する溶解度のうち、小さい方の溶解度との差が2mol/l−solvent以上であることが好ましく、10mol/l−solvent以上であることがより好ましく、100mol/l−solvent以上であることがさらに好ましい。
第1溶媒として用いうる溶媒は、第2溶媒および第3溶媒の種類によっても異なるが、ペロブスカイト化合物に対する溶解度が大きく、且つ、広い範囲の有機溶媒と相溶性を有することから、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ―ブチロラクトン(GBL)等の極性非プロトン性溶媒を挙げることができ、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。これらの溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
本明細書中において、極性非プロトン性溶媒とは誘電率が10以上のプロトン供与性を有しない溶媒のことをいう。誘電率は、例えば、インピーダンスアナライザーを用いた平行板法により測定することができる。
ペロブスカイト前駆体膜は、ペロブスカイト型化合物と第1溶媒のみから構成されていてもよいし、この他の成分を含んでいてもよい。この他の成分として、酸化剤、還元剤、第1〜3溶媒以外の溶媒等を挙げることができる。
上記のようなペロブスカイト前駆体膜は、基板上に形成されていることが好ましい。基板は、得られるペロブスカイト膜の用途に応じて適宜選択することができる。基板の材料として、例えば、シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、ガラス、金属、ガリウム砒素等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリイミド(PI)等の樹脂等を挙げることができる。基板は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。多層構成である場合、各層は同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。また、基板として、これらの材料からなる基板の上に、素子の機能膜となる有機層や無機層が形成されたものを用いてもよい。
[ペロブスカイト前駆体膜の形成方法]
ペロブスカイト前駆体膜は、湿式プロセスにより形成することができる。以下において、湿式プロセスによるペロブスカイト前駆体膜の形成方法について説明する。
まず、ペロブスカイト型化合物と第1溶媒を含有する溶液を調製する。例えば、一般式(4)で表され、A3が(RN)であるペロブスカイト型化合物(RNBX)は、下記反応式(8)に示すように、ハロゲン化アンモニウムRNXと金属ハロゲン化物BXを第1溶媒中で反応させることにより合成することができる。
NX+BX→RNBX (8)
反応式(8)において、Rは、上記一般式(5)におけるRと同義であり、B、Xは、一般式(1)のB、Xと同義である。溶液は、この反応の生成物であるペロブスカイト型化合物RNBXかその前駆体のいずれかを含むように調製する。通常は、反応原料であるRNXとBXを第1溶媒に溶解して反応させることにより得られた生成物を含む溶液を用いることができる。
溶液におけるペロブスカイト型化合物の含有量は、溶液全量に対して5〜88質量%であることが好ましく、23〜75質量%であることがより好ましく、31〜52質量%であることがさらに好ましい。
次に、調製した溶液を支持体表面に塗布、乾燥してペロブスカイト前駆体膜を得る。
溶液の塗布方法としては、特に制限されず、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ダイコート法等の従来公知の塗布方法を用いることができ、比較的薄い厚さの塗膜を均一に形成できることがらスピンコート法を用いることが好ましい。
<第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒>
第2溶媒および第3溶媒は、第1溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が小さく、且つ、第1溶媒に対する溶解度が互いに異なる溶媒である。
第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒は、ペロブスカイト前駆体膜に接触させたとき、そのペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒が該混合溶媒中へ移動して受容される受容媒質として機能する。これにより、ペロブスカイト前駆体膜における第1溶媒の含有量が減少して、ペロブスカイト型化合物を構成する各イオンがペロブスカイト型結晶を形成するように配置する。その結果、ペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト膜が得られる。すなわち、本発明では、この混合溶媒を、ペロブスカイト膜形成用溶媒として使用する。
第2溶媒および第3溶媒のペロブスカイト型化合物(ペロブスカイト前駆体膜の主成分)に対する溶解度は、いずれも0.1mol/l−solvent以下であることが好ましく、0.01mol/l−solvent以下であることがより好ましく、0.001mol/l−solvent以下であることがさらに好ましい。
また、第2溶媒と第3溶媒の組み合わせは、25℃においてペロブスカイト前駆体膜に第2溶媒を接触させたときに第1溶媒が第2溶媒中に拡散する拡散定数kと、25℃においてペロブスカイト前駆体膜に第3溶媒を接触させたときに第1溶媒が第3溶媒中に拡散する拡散定数kの差の絶対値(|k−k|)が1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる組合せであることが好ましく、1x10−12/s〜1x10/sの範囲内となる組合せであることがより好ましく、1x10−11/s〜1x10−2/sの範囲内となる組合せであることがさらに好ましい。
第2溶媒および第3溶媒として用いうる溶媒は、第1溶媒の種類によっても異なるが、ペロブスカイト化合物に対する溶解度が小さいことから、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサン、ベンゼン、キシレン、ヘプタン等の無極性溶媒を挙げることができ、トルエンとヘキサンの組み合わせであることが好ましい。これらの無極性溶媒を、上記の第1溶媒として例示したジメチルスルホキシドまたはN−メチル−2−ピロリドンと組み合わせて用いることにより、ペロブスカイト前駆体膜に含まれる第1溶媒を混合溶媒中へ適切な拡散定数で移動させることができ、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく得ることができる。また、混合溶媒は、第2溶媒が、トルエン、クロロベンゼンから選ばれる溶媒であり、第3溶媒がヘキサン、シクロヘキサンから選ばれる溶媒であることも好ましい。
本明細書中において、無極性溶媒とは誘電率が10以下の溶媒のことをいう。誘電率は、例えば、インピーダンスアナライザーを用いた平行板法により測定することができる。
第2溶媒と第3溶媒の混合比率は、ペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒中へ移動する第1溶媒の拡散定数を左右するファクターであり、第1溶媒〜第3溶媒に用いる溶媒の種類や所望の拡散定数に応じて適宜選択することができる。具体的には、第2溶媒と前記第3溶媒の混合比率は、25℃においてペロブスカイト前駆体膜に混合溶媒を接触させたとき、ペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒が混合溶媒中へ拡散する際の拡散定数が1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる比率とすることが好ましく、1x10−12/s〜1x10−13/sの範囲内となる比率とすることがより好ましく、1x10−11/s〜1x10−2/sの範囲内となる比率とすることがさらに好ましい。例えば、第1溶媒がジメチルスルホキシドやN−メチル−2−ピロリドンのような極性非プロトン性溶媒であり、第2溶媒および第3溶媒が、いずれもトルエンやヘキサンのような無極性溶媒である場合、第2溶媒と第3溶媒の容量での混合比率(第2溶媒:第3溶媒)は、1:0.1〜1:10であることが好ましく、1:0.5〜1:2であることがより好ましい。また、特に、ペロブスカイト前駆体膜がIとFの両方を含み、且つ、混合溶媒を5〜20℃に調整してペロブスカイト前駆体膜に接触させる場合には、第2溶媒:第3溶媒を、好ましくは1:0.6〜1:1.5、より好ましくは1:0.7〜1:1.3とすることにより、膜質が極めて良好なペロブスカイト膜を形成することができる。
また、第2溶媒と第3溶媒の混合比率は、後述するペロブスカイト前駆体膜と混合溶媒の接触工程において、時間の経過とともに徐々に変化させてもよい。これにより、ペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒中へ移動する第1溶媒の拡散定数を、より精密に制御することができる。
混合溶媒は、第2溶媒と第3溶媒の2種類の溶媒で構成してもよいし、第4溶媒や第5溶媒等の他の溶媒を追加して、3種類以上の溶媒で構成してもよい。ただし、追加する他の溶媒は、第1溶媒よりもペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が小さい溶媒であり、混合溶媒を構成する他の溶媒と第1溶媒に対する溶解度が異なる溶媒であることが好ましい。混合溶媒に、さらに他の溶媒を追加することにより、ペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒側に移動する第1溶媒の拡散定数を、より精密に制御することができる。
<ペロブスカイト前駆体膜への混合溶媒の接触工程>
本発明のペロブスカイト前駆体膜の製造方法では、上記のペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることにより、ペロブスカイト膜を製造する。ペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させると、ペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒が混合溶媒中へ移動して、ペロブスカイト前駆体膜における第1溶媒の含有量が減少する。その結果、ペロブスカイト型化合物を構成する各イオンがペロブスカイト型結晶を形成するように配置し、ペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト膜が得られる。このとき、製造されたペロブスカイト膜は、第1溶媒〜第3溶媒が完全に除去されていてもよいし、第1溶媒〜第3溶媒の少なくとも1種が膜中に残っていてもよい。ペロブスカイト膜の中に第1溶媒〜第3溶媒の少なくとも1種が残っている場合の各溶媒の含有量の好ましい範囲については、<<ペロブスカイト膜>>の対応する記載を参照することができる。
ペロブスカイト前駆体膜と混合溶媒を接触させる方法は、特に限定されず、いかなる方法であってもよいが、ペロブスカイト前駆体膜の外表面全体を混合溶媒に接触させうる方法であることが好ましく、ペロブスカイト前駆体膜を混合溶媒の中に浸漬させる浸漬法を好適に用いることができる。浸漬法を用いる場合、混合溶媒の容量は、ペロブスカイト前駆体膜の容量に対して10〜1010倍であることが好ましく、10〜10倍であることがより好ましく、10〜10倍であることがさらに好ましい。
ペロブスカイト前駆体膜に混合溶媒を接触させる時間は、0.1秒〜180分であることが好ましい。また、混合溶媒は、ペロブスカイト前駆体膜を接触させている間、攪拌することが好ましい。
ペロブスカイト前駆体膜に接触させる混合溶媒の温度は、ペロブスカイト前駆体膜から混合溶媒中に拡散する第1溶媒の拡散定数を指標に設定することが好ましい。具体的には、ペロブスカイト前駆体膜への混合溶媒の接触は、ペロブスカイト前駆体膜中の第1溶媒が混合溶媒中へ拡散する拡散定数が1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる温度で行うことが好ましく、拡散定数が1x10−12/s〜1x10/sの範囲内となる温度で行うことがより好ましく、拡散定数が1x10−11/s〜1x10−2/sの範囲内となる温度で行うことがさらに好ましい。
また、ペロブスカイト前駆体膜に接触させる混合溶媒の温度は、−50〜50℃が好ましく、0〜25℃がより好ましく、5〜20℃がさらに好ましく、10〜15℃が特に好ましい。中でも、混合溶媒の温度を5〜20℃、好ましくは10〜15℃とすることにより、表面が平滑で密度が高く、ペロブスカイト型結晶が高度に配向したペロブスカイト膜を得ることができる。例えば、第1溶媒がジメチルスルホキシドやN−メチル−2−ピロリドンのような極性非プロトン性溶媒であり、第2溶媒および第3溶媒が、いずれもトルエンやヘキサンのような無極性溶媒である場合にも、−50〜50℃で、混合溶媒をペロブスカイト前駆体膜に接触させることが好ましく、特に、上記のより好ましい温度範囲で混合溶媒をペロブスカイト前駆体膜に接触させると、膜質が良好なペロブスカイト膜を効果的に形成することができる。
ペロブスカイト前駆体膜に接触させる混合溶媒の温度は、ペロブスカイト前駆体膜に混合溶媒を接触させている間、一定に保持してもよいし、時間の経過とともに変化するように制御してもよい。温度変化のパターンは、時間の経過とともに温度が上昇するパターン、時間の経過とともに温度が下降するパターン、温度が上昇した後に下降するパターン、温度が下降した後に上昇するパターン、温度の上昇と下降を交互に繰り返すパターン等が挙げられる。
また、<第2の溶媒と第3の溶媒の混合溶媒>の欄で説明したように、ペロブスカイト前駆体膜に混合溶媒を接触させているとき、混合溶媒における第2溶媒と第3溶媒の混合比率を時間の経過とともに徐々に変化させてもよい。混合比率の変化のパターンは、時間の経過とともに第2溶媒の混合比率が徐々に大きくなるパターン、時間の経過とともに第2溶媒の混合比率が徐々に小さくなるパターン、第2溶媒の混合比率が一定値まで大きくなった後に小さくなるパターン、第2溶媒の混合比率が一定値まで小さくなった後に大きくなるパターン、第2溶媒の混合比率が大きくなる過程と小さくなる過程を交互に繰り返すパターン等が挙げられる。
以上のようにして、ペロブスカイト前駆体膜に混合溶媒を接触させることで得られたペロブスカイト膜には、その後、アニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は、0〜200℃であることが好ましく、25〜150℃であることがより好ましく、70〜100℃であることがさらに好ましい。
<<ペロブスカイト膜>>
次に、本発明のペロブスカイト膜について説明する。
本発明のペロブスカイト膜は、本発明のペロブスカイト膜の製造方法で製造されることを特徴とする。本発明のペロブスカイト膜の製造方法の説明、用いる材料および条件の好ましい範囲、具体例については、<<ペロブスカイト膜の製造方法>>の欄を参照することができる。本発明のペロブスカイト膜は、こうしたペロブスカイト膜の製造方法により製造されていることにより、良好な膜質を有し、ペロブスカイト膜毎の膜質の差が小さく抑えられている。このため、このペロブスカイト膜を太陽電池や電子デバイスの機能膜として用いることにより、優れた素子特性を安定に得ることができる。
本発明のペロブスカイト膜は、製造工程で用いた第1溶媒〜第3溶媒が完全に除去されていてもよいが、第1溶媒〜第3溶媒のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。ペロブスカイト膜が第1溶媒を含む場合、第1溶媒の含有量は、ペロブスカイト膜の全質量に対する濃度で0超10,000ppm未満であることが好ましい。ペロブスカイト膜が第2溶媒を含む場合、第2溶媒の含有量は、ペロブスカイト膜の全質量に対する濃度で0超5,000ppm未満であることが好ましい。ペロブスカイト膜が第3溶媒を含む場合、第3溶媒の含有量は、ペロブスカイト膜の全質量に対する濃度で0超5,000ppm未満であることが好ましい。
ペロブスカイト膜の厚さは、該ペロブスカイト膜の用途によっても異なるが、2次元ペロブスカイト型の結晶構造を有する場合で、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることがより好ましく、50nm〜100nmであることがさらに好ましい。また、3次元ペロブスカイト型の結晶構造を有する場合で、10nm〜1000nmであることが好ましく、50nm〜500nmであることがより好ましく、200nm〜400nmであることがさらに好ましい。
<<太陽電池>>
次に、本発明の太陽電池について説明する。
本発明の太陽電池は、本発明のペロブスカイト膜を有することを特徴とする。本発明のペロブスカイト膜の構成については、<<ペロブスカイト膜>>の欄を参照することができる。本発明の太陽電池は、こうしたペロブスカイト膜を有することにより、優れた電池特性を安定に得ることができる。本発明の太陽電池は、光電変換層が本発明のペロブスカイト膜で構成されていることが好ましく、光電変換層が本発明のペロブスカイト膜であって、一般式(4)で表される化合物を含むもので構成されていることがより好ましい。
本発明の太陽電池は、少なくとも透明電極と対向電極、および透明電極と対向電極の間に発電層を形成した構造を有することが好ましい。発電層は、少なくとも光電変換層を含むものであり、光電変換層のみからなるものであってもよいし、光電変換層の他に1層以上の機能層を有するものであってもよい。そのような他の機能層として、正孔捕獲層、電子ブロック層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。具体的な光電変換素子の構造例を図1に示す。図1において、1は透明基板、2は透明電極、3は正孔捕獲層、4は光電変換層、5は電子輸送層、6は対向電極を表わす。図1の構成では、透明電極2が正孔を回収する正極として機能し、対向電極6が電子を回収する負極として機能する。また、光電変換素子は、正孔捕獲層3と電子輸送層5が図1に示す位置関係とは逆の位置で配されたものであってもよい。すなわち、透明基板1、透明電極2、電子輸送層5、光電変換層4、正孔捕獲層3および対向電極6が、この順に積層されていてもよい。この場合、透明電極2が電子を回収する負極として機能し、対向電極6が正孔を回収する正極として機能する。
以下において、光電変換素子の各部材および各層について説明する。
(透明基板)
本発明の光電変換素子は、透明基板に支持されていることが好ましい。この透明基板については、特に制限はなく、従来から光電変換素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英などからなるものを用いることができる。透明プラスチックとしては、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリイミド、テフロン(登録商標)等を挙げることができる。
(透明電極)
光電変換素子における透明電極としては、導電性無機化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはCuI等の導電性無機化合物、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープ錫酸化物(FTO)、酸化スズ(SnO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ガリウムドープ亜鉛酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(AZO)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブドープチタン酸化物等の導電性金属酸化物、ポリアセチレン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリフェニレンビニレン系等の導電性高分子が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。透明電極は、これらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。透明導電膜の表面抵抗は15Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがさらに好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常0.01〜10.0μm、好ましくは0.3〜1.0μmの範囲から選ばれる。
(対向電極)
対向電極としては、透明電極で例示した電極材料の他、金属、合金、炭素材料およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。
電極材料として用いられる金属および合金の具体例としては、アルミニウム、金、銀、白金、銅、タングステン、モリブデン、チタン等の金属および合金が挙げられる。対向電極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。対向電極の表面抵抗は15Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがさらに好ましい。対向電極の膜厚は、通常0.01〜2.0μmの範囲から選ばれる。
(光電変換層)
光電変換層は、本発明のペロブスカイト膜により構成されている。光電変換層に透明基板側から光が照射されると、ペロブスカイト膜のペロブスカイト型化合物が光励起して空間的に分離した正孔と電子(キャリア)を生成する。これらキャリアのうち正孔は正孔捕獲層側に拡散して正極へ取り出され、電子は電子輸送層側に拡散して負極へ取り出され、電極間に電位差(起電力)が生じる。
光電変換層の厚さは、10〜1000nmであることが好ましく、100〜500nmであることがより好ましく、200〜400nmであることがさらに好ましい。これにより、光電変換素子が厚くなり過ぎるのを回避して、十分な発電特性を得ることができる。
(正孔捕獲層)
正孔捕獲層は光電変換層から注入された正孔を捕獲して正極側に輸送する機能を有する正孔捕獲材料(正孔輸送材料)からなり、単層または複数層設けることができる。また、正孔捕獲材料は、正孔を捕獲、輸送する機能の他、正孔の注入や電子の障壁性を有していてもよい。
正孔捕獲材料としては、スピロ−OMeTAD(2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)9,9’−スピロビフルオレン))、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、P3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル[4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン−2,6−diyl]])、PVK(ポリ(N−ビニルカルバゾール))、HTM−TFSI(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li−TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、tBP(tert−ブチルピリジン)等を挙げることができ、中でも、スピロ−OMeTAD、P3HT、PCPDTBT、PVKを用いることが好ましく、スピロ−OMeTADを用いることがより好ましい。また、正孔捕獲材料として、チオフェニル、フェネレニル(phenalenyl)、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル、エトキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルボゾリル、エチレンジオキシチオフェニル、ジオキシチオフェニルおよびフルオレニルから選択される1種または2種以上の基を有する有機化合物、ポリマーまたはコポリマーを用いることもでき、さらにCuI、CuBr、CuSCN、CuO、CuO、CIS等の無機正孔輸送材料も用いることができる。
正孔捕獲層の厚みは、特に制限されないが、0.01〜0.5μm程度が好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層は、光電変換層から注入された電子を負極側へ輸送する機能を有する材料からなり、単層または複数層設けることができる。電子輸送材料は、電子を輸送する機能の他、正孔を阻止する機能を有していてもよい。
電子輸送材料としては、フラーレン、ペリレン、フラーレンまたはペリレンの誘導体、ポリ{[N,N’−ビス(2−オクチルドデシル)−ナフタレン−1,4,5,8−ビス(ジカルボキシイミド)−2,6−ジイル]−alt−5,50−(2,20−ビチオフェン)}(P(NDI2OD−T2))等を挙げることができ、各種電解質も用いることができる。
また、電子輸送材料として、TiO、WO、ZnO、Nb、Ta、SrTiO等の金属酸化物や、これら金属酸化物にドナーを添加したドナー添加金属酸化物を用いてもよい。また、TiOを採用する場合には、その結晶形態はアナターゼ型であることが好ましい。電子輸送材料に用いる金属酸化物は、多孔質構造を有することが好ましく、細孔サイズがナノオーダーである多孔質構造を有することがより好ましい。これにより、電子輸送層自体の表面積が大きくなるとともに、その上に光電変換層を形成した場合には、電子輸送層との界面における光電変換層の表面積も大きくなる。その結果、光電変換層から電子輸送層への電子の注入効率が高くなり、光電変換効率を向上させることができる。多孔質構造としては、例えば粒状体、線状体(線状体:針状、チューブ状、柱状等)等が集合し、全体として多孔質状をなした構造を挙げることができる。多孔質構造は、電子輸送層の全体に亘っている必要はなく、例えば、負極側の部分を平滑構造、光電変換層側の部分を多孔質構造とすることも可能である。光電変換層の表面積の拡大を期待して電子輸送層を多孔質構造とする場合、電子輸送層を光電変換層よりも透明電極側に配することが好ましい。これにより、多孔質構造の電子輸送層を形成した後、その上に光電変換層を形成する製造手順になるため、電子輸送層の表面形状を反映した光電変換層、すなわち表面積の広い光電変換層を容易に得ることができる。
電子輸送層の厚みは、特に制限されないが、0.01〜0.5μm程度が好ましい。
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、必要に応じて電子輸送層と負極の間に設けられる。正孔ブロック層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔ブロック層は電子を負極に輸送しつつ、正孔が負極へ到達することを阻止する役割があり、これにより透明電極と対向電極の間に大きな起電力を生じさせることができる。正孔ブロック層の材料としては、上記の電子輸送層の材料の中から、HOMO準位が電子輸送層を構成する材料のHOMO準位よりも深いものを選択して用いることができる。
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、必要に応じて正孔捕獲層と正極の間に設けられる。電子ブロック層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子ブロック層は正孔を正極に輸送しつつ、電子が正極へ到達することを阻止する役割があり、これにより透明電極と対向電極の間に大きな起電力を生じさせることができる。電子ブロック層の材料としては、上記の正孔捕獲層の材料から、LUMO準位が正孔輸送層を構成する材料のLUMO準位よりも浅いものを選択して用いることができる。
以上の光電変換素子を作製する際、発電層を構成する各機能層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
この光電変換素子は、太陽光等の光を透明基板側から照射すると、光電変換層に含まれるペロブスカイト型化合物が励起されてキャリアを発生する。キャリアのうち正孔は正極側に輸送されて正極に取り出され、電子は負極側に輸送されて負極に取り出され、正極と負極の間に起電力が生じる。起電力が生じた正極と負極の間を導体で接続することにより、正極から負極に流れる電流を得ることができる。
本発明の光電変換素子は、単一の素子として用いてもよいし、複数の素子を積層したタンデム型としてもよい。タンデム型とすることにより、高い変換効率を実現することができる。また、特性が異なる素子を積層することにより、積層した素子全体での特性を緻密に制御することができ、用途にあった最適な特性を実現することができる。
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、ペロブスカイト膜の評価は、X線回折装置[λ=1.54Å(CuKα)](リガク社製:UltimaIV)、分光蛍光計(日本分光社製:FP−6500)を用いて行い、太陽電池の評価は、ソーラーシミュレータ(分光計器:OTENTO−SAN III)、測定システム(システム・エンジニア社製:OSA−11)、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)を用いて行った。
[ペロブスカイト膜の製造と評価]
(実施例1)
ヨウ化錫(SnI)とヨウ化メチルアンモニウム(CHNHI)を、それぞれ1Mの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して前駆体溶液を調製した。
一方、膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる正極が形成されたガラス基板の上に、スピンコート法により、PEDOT:PSS(ヘレウス社製、Clevious 4083)を30〜50nmの厚さで製膜し、200℃でアニール処理することにより正孔捕獲層となるPEDOT:PSS層を形成した。このPEDOT:PSS層を形成した基板を、窒素で置換されたグローブボックス内に搬入した。そして、調製した前駆体溶液を孔径0.45μmのフィルターを通してPEDOT:PSS層の上に滴下し、基板を500rpmで10秒間回転させた後、8000rpmで30秒間回転させてスピンコートすることにより、ペロブスカイト前駆体膜を製膜した。
次に、超脱水トルエン(第2溶媒)と超脱水ヘキサン(第3溶媒)を1:1の容量比で混合した混合溶媒(浸漬槽)を、クールプレート上で10〜15℃になるように温度調整した。この混合溶媒を攪拌しながら、該混合溶媒中にペロブスカイト前駆体膜を形成した基板を2分間浸漬した。その後、基板を取り出し、100℃のアニール処理を5分間行うことにより、ペロブスカイト膜を製造した。
また、これとは別に、前駆体溶液をスピンコートする際、基板を500rpmで10秒間回転させた後、6000rpmで30秒間回転させたこと以外は、上記と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(実施例2〜4)
前駆体溶液を調製する際、ジメチルスルホキシドにヨウ化錫を1Mの濃度で溶解する代わりに、ヨウ化錫とフッ化錫(SnF)を合計量で1Mとなるように溶解すること以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。前駆体溶液の具体的な組成を表1に示す。
(実施例5、6)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)において、超脱水トルエン:超脱水ヘキサン(容量比)を1:1.3または1:1.5としたこと以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(実施例7、8)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)において、超脱水トルエン:超脱水ヘキサン(容量比)を1:1.3または1:1.5としたこと以外は、実施例3と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例1)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水トルエンを単独で用いたこと以外は実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例2)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水ヘキサンを単独で用いたこと以外は実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例3)
前駆体溶液の溶媒として、ジメチルスルホキシドの代わりに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて、なおかつ、ペロブスカイト前駆体膜を形成した基板を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水トルエンを単独で用いたこと以外は実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例4)
ペロブスカイト前駆体膜を形成した基板を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水ヘキサンを単独で用いたこと以外は実施例5と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
各実施例および各比較例で用いた前駆体溶液および浸漬槽の組成を表1に示す。
実施例1、3、5〜8および各比較例で形成したペロブスカイト前駆体膜およびペロブスカイト膜を目視で観察した。ここで、ペロブスカイト前駆体膜とペロブスカイト膜は、暗色変化を指標として判別した。また、実施例3で形成されたペロブスカイト膜表面を走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡で観察し、算術平均粗さRaと十点平均粗さRzを求めた。実施例3において、前駆体溶液のスピンコート時の回転数を8000rpmにして製造したペロブスカイト膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率20000倍)を図2(a)に示し、原子間力顕微鏡写真(倍率100、000)を図2(b)に示す。実施例3において、前駆体溶液のスピンコート時の回転数を6000rpmにして製造したペロブスカイト膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率20000倍)を図3(a)に示し、原子間力顕微鏡写真(倍率100、000)を図3(b)に示す。
実施例1と比較例1、2と比較例3、4を比較すると、浸漬槽にトルエンを単独で用いた比較例1、3では、基板を浸漬槽に浸漬した後、ペロブスカイト前駆体膜が瞬時にペロブスカイト膜に変換した。また、浸漬槽にヘキサンを単独で用いた比較例2、4では、ペロブスカイト前駆体膜がペロブスカイト膜に変換するのに30秒以上を要した。これに対して、浸漬槽にトルエン:ヘキサン=1:1の混合溶媒を用いた実施例1では、基板を浸漬した後、5〜10秒程度の適切な時間でペロブスカイト前駆体膜がペロブスカイト膜に変換し、形成されたペロブスカイト膜は、各比較例で形成されたペロブスカイト膜に比べて良好な膜質を有していた。
次に、前駆体溶液の組成は同じで、浸漬槽の組成を変えた実施例1、5、6、または、実施例3、7、8を比較すると、いずれも良好な膜質を有するペロブスカイト膜が形成されたが、ハロゲン化錫としてSnIのみを用いた実施例1、5、6のうちでは、トルエン:ヘキサンを1:1.5とした実施例6において、より膜質が良好なペロブスカイト膜を得ることができた。一方、ハロゲン化錫としてSnIとSnFを用いた実施例3、7、8のうちでは、トルエン:ヘキサンを1:1とした実施例3において、より膜質が良好なペロブスカイト膜を得ることができた。なお、こうした傾向は、前駆体溶液をスピンコートする際の回転数を8000rpmまたは6000rpmのいずれとした場合にも同様であった。
また、原子間力顕微鏡による観察から、実施例3で形成されたペロブスカイト膜の算術平均粗さRaおよびRzは、前駆体溶液のスピンコート回転数を8000rpmとした場合でRaが5.52nm、Rzが76.93nmであり、前駆体溶液のスピンコート回転数を6000rpmとした場合でRaが3.02nm、Rzが48.33nmであり、平滑な表面を得ることができた。
[混合溶媒の温度および混合比による影響]
(実施例9)
前駆体溶液を調製する際、ジメチルスルホキシドにヨウ化錫を1Mの濃度で溶解する代わりに、ヨウ化錫とフッ化錫を、それらの合計量が1Mとなり、ヨウ化錫とフッ化錫の配合比(SnI:SnF)が80mol%:20mol%となるように溶解し、また、ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する混合溶媒(浸漬槽)の温度を13℃に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例5)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水トルエンを単独で用いたこと以外は実施例9と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例6)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水ヘキサンを単独で用いたこと以外は実施例9と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(実施例10)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する混合溶媒(浸漬槽)の温度を、25℃に調整したこと以外は、実施例9と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例7)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水トルエンを単独で用いたこと以外は実施例10と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(比較例8)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する溶媒(浸漬槽)として、超脱水トルエンと超脱水ヘキサンの混合溶媒を用いる代わりに、超脱水ヘキサンを単独で用いたこと以外は実施例10と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
実施例9、10および比較例5〜8で用いた前駆体溶液および浸漬槽の組成、ペロブスカイト膜を浸漬する際の浸漬槽の温度を表2に示す。
実施例9、10および比較例5〜8において、浸漬槽に浸漬している間のペロブスカイト前駆体膜にガラス基板側から可視光(532nm)を入射し、その透過光強度の時間変化を測定した結果を図4に示す。また、各実施例および各比較例で製造したペロブスカイト膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率5000倍)および原子間力顕微鏡写真(挿入図、倍率100000倍)を図5に示し、各ペロブスカイト膜の膜厚および原子間力顕微鏡観察による二乗平均平方根粗さRqを表3に示す。各実施例および各比較例で製造したペロブスカイト膜の光学濃度スペクトルを図6に示し、X線回折スペクトルを図7に示す。図7(a)はペロブスカイト膜毎のX線回折スペクトルを別々に並べたものであり、図7(b)は、図7(a)のX線回折スペクトルの縦軸目盛を対数目盛に変換し、その対数スペクトルを重ねて表示したものである。
表3に示すように、浸漬槽にトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いた実施例9、10のペロブスカイト膜は、それぞれ、浸漬槽にトルエン単独を用いること以外は同様にして製造された比較例5または7のペロブスカイト膜、浸漬槽にヘキサン単独を用いること以外は同様にして製造された比較例6または8のペロブスカイト膜と比べて表面粗さRqが小さく、良好な膜質を有していた。
ただし、実施例9と実施例10を比較すると、浸漬槽の温度を13℃に調整した実施例9のペロブスカイト膜の方が、浸漬槽の温度を25℃に調整した実施例10のペロブスカイト膜よりも表面粗さRqが小さく、基板への被覆率が高いものであった(図5の走査型電子顕微鏡写真参照)。
また、図6から、浸漬槽の温度を13℃に調整した実施例9のペロブスカイト膜の方が、浸漬槽の温度を25℃に調整した実施例10のペロブスカイト膜よりも短波長領域での光学濃度が高い傾向が認められた。実施例10のペロブスカイト膜で短波長領域の光学濃度が低くなっているのは、膜密度の揺らぎに起因する短波長光の散乱損失の影響であると考えられる。これに比べて、実施例9のペロブスカイト膜は、短波長領域の光学濃度が高く、膜厚も薄いことから、より高い密度で形成されていることが示唆された。
さらに、図7から、いずれのX線回折スペクトルからもペロブスカイト型結晶構造に由来する回折ピークが確認されたが、浸漬槽にトルエンとヘキサンの混合溶媒を用い、且つ、その浸漬槽の温度を13℃に調整した実施例9のペロブスカイト膜で観測された、(001)面、(002)面、(003)面に由来する回折ピークは、他のペロブスカイト膜で観測された回折ピークに比べて遥かに強度が大きいものであった。このことから、実施例9のペロブスカイト膜は、ペロブスカイト型結晶が高度に配向していることが示された。
また、図4は、浸漬槽に浸漬している間のペロブスカイト前駆体膜の透過光強度の変化を示すものであり、ここでの透過光強度は、ペロブスカイト前駆体膜からペロブスカイト膜への変換度合いの指標になる。具体的には、縦軸で示す透過光強度が1であるとき、ペロブスカイト前駆体膜は変換前の状態であり、透過光強度が概ね0で一定になったとき、ペロブスカイト前駆体膜が完全にペロブスカイト膜に変換したことを意味する。図4を見ると、上記の実施例1と比較例1〜4の比較から得られた結果と同じ傾向の結果が得られていることがわかる。すなわち、浸漬槽にトルエンを単独で用いた比較例5、7では、ペロブスカイト前駆体膜が比較的速い速度でペロブスカイト膜に変換し、浸漬槽にヘキサンを単独で用いた比較例6、8では、ペロブスカイト前駆体膜がペロブスカイト膜に変換するのに30秒以上を要した。これに対して、浸漬槽にトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いた実施例9では、10〜15秒の適切な時間でペロブスカイト前駆体膜がペロブスカイト膜へ変換した。一方、実施例10では、トルエンを単独で用いた比較例7に比べれば変換速度が僅かに小さいものの、実施例9に比べて、ペロブスカイト前駆体膜からペロブスカイト膜への変換が速く進行する。
以上のことから、ペロブスカイト前駆体膜から浸漬槽への第1溶媒の拡散速度を制御してペロブスカイト膜の形成速度を最適化し、より膜質に優れたペロブスカイト膜を得るためには、浸漬槽の温度制御が重要であり、浸漬槽の温度を5〜20℃に調整することが好ましく、10〜15℃に調整することがより好ましいことがわかった。
(実施例11〜14)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する混合溶媒(浸漬槽)の混合比を、表4に示すように変えたこと以外は、実施例9と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
(実施例15〜18)
ペロブスカイト前駆体膜を浸漬する混合溶媒(浸漬槽)の混合比を、表4に示すように変えたこと以外は、実施例10と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
実施例11〜18で用いた前駆体溶液および浸漬槽の組成、ペロブスカイト膜を浸漬する際の浸漬槽の温度を表4に示し、実施例9〜18で製造したペロブスカイト膜をデジタルカメラで撮影した写真を図8に示す。
図8のペロブスカイト膜の写真は、暗色が濃いもの程光散乱が少なく、膜が緻密で膜質が良好であることを示す。図8を見ると、浸漬槽にトルエンとヘキサンの混合溶媒を用いた実施例9〜18のペロブスカイト膜の写真は、いずれも濃い暗色を呈しており、膜質が良好なペロブスカイト膜が形成されていることを確認することができた。特に、浸漬槽の温度を13℃にして製造した実施例9、11〜14のペロブスカイト膜は、浸漬槽の温度を25℃にして製造した実施例10、15〜18のペロブスカイト膜よりも写真の暗色が濃く、また、トルエンとヘキサンの混合比が1:1に近づく程、写真の暗色が濃くなって膜質がより良好になる傾向が認められた。このことから、浸漬槽の温度を5〜20℃に調整してペロブスカイト膜を製造する場合には、第2溶媒:第3溶媒(容量比)を1:0.6〜1:1.5、好ましくは1:0.7〜1:1.3とすることにより、膜質が一層優れたペロブスカイト膜が得られることがわかった。
[太陽電池の製造と評価]
実施例3において、前駆体溶液のスピンコート回転数を6000rpmにして製造したペロブスカイト膜を準備した。このペロブスカイト膜の上に、真空蒸着法にて、1x10−4Paの真空度で2層の有機層と電極を形成した。まず、ペロブスカイト膜の上に、C60を30nmの厚さで蒸着し、その上に、BCPを10nmの厚さで蒸着することで2層の有機層を形成した。さらに、その上に、Agを100nmの厚さで蒸着して電極を形成した。得られた積層体(基板/ITO正極/PEDOT:PSS層/ペロブスカイト膜/C60層/BCP層/Ag負極)をガラス封止管内に収容し、UV硬化樹脂で封止することにより太陽電池とした。また、これとは別に、同様の条件で合計6素子23セル個の太陽電池を製造した。
製造した各電池にAM1.5の疑似太陽光を100mW/cm放射照度で照射し、短絡電流Jsc、開放電圧Voc、FF(fill factor)、エネルギー変換効率ηを測定した。その結果、短絡電流Jscは16.64±0.92mA/cm、開放電圧Vocは0.44±0.01V、FFは0.40±0.04、エネルギー変換効率ηは2.96±0.34%であり、非常に安定な特性を得ることができた。
また、実施例1〜4で製造したペロブスカイト膜についても、上記と同様の条件で、C60、BCP、Agを順に蒸着し、得られた積層体(基板/ITO正極/PEDOT:PSS層/ペロブスカイト膜/C60層/BCP層/Ag負極)をガラス封止管内に収容し、UV硬化樹脂で封止することにより太陽電池(電池1、2−a、2−b、3〜5)とした。なお、実施例1〜4で製造したペロブスカイト膜のうち、太陽電池の製造に供したものは、前駆体溶液のスピンコートの際、基板の回転数を8000rpmに設定したペロブスカイト膜である。
作製した各太陽電池にAM1.5の疑似太陽光を100mW/cm放射照度で照射し、太陽電池特性を評価した。また、各太陽電池の光入射面をフォトマスク(t0.2mmステンレス製マスク(黒クローム処理)、開口1.8x1.8mm)で覆った場合についても、同様の光照射条件で太陽電池特性を評価した。
各電池をフォトマスクで覆わずに電流密度−電圧特性を測定した結果を図9に示し、用いたペロブスカイト膜の実施例番号と太陽電池特性を表2に示す。電池をフォトマスクで覆った状態で電流密度−電圧特性を測定した結果を図10に示し、光電変換特性の波長依存性IPCEを測定した結果を図11に示し、太陽電池特性を表5に示す。各図および表5中、電池2−a、電池2−bは、それぞれ、実施例2で作製したペロブスカイト膜のうち、変換効率の最大のもの、最少のものを用いた太陽電池である。
図9〜11および表5から、各実施例で作製した電池は、いずれも優れた太陽電池特性を有することがわかった。
[温度制御による太陽電池特性への影響]
前駆体溶液としてヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(濃度1M)を用いて、実施例1と同じ方法にしたがってペロブスカイト前駆体膜を製膜した。次に、クールプレート上で25℃になるように温度調整したトルエンを攪拌し、その中にペロブスカイト前駆体膜を形成した基板を2分間浸漬した。その後、基板を取り出し、100℃のアニール処理を5分間行うことにより、ペロブスカイト膜を製造した。
また、これとは別に、クールプレート上で15℃になるように温度調整したトルエンを用いたこと以外は、上記と同様にしてペロブスカイト膜を製造した。
これらのペロブスカイト膜を用いて、上記の[太陽電池の製造と評価]に記載したのと同じ方法により積層体(基板/ITO正極/PEDOT:PSS層/ペロブスカイト膜/C60層/BCP層/Ag負極)を形成し、ガラス封止管内に収容し、UV硬化樹脂で封止することにより太陽電池とした。各温度のトルエンを用いて製膜したペロブスカイト膜を有する太陽電池は、それぞれ4素子ずつ製造した。
25℃のトルエンを用いて製膜したペロブスカイト膜を有する太陽電池の電流密度−電圧特性を測定した結果を図12に示し、15℃のトルエンを用いて製膜したペロブスカイト膜を有する太陽電池の電流密度−電圧特性を測定した結果を図13に示す。図12と図13の比較から明らかなように、ペロブスカイト前駆体膜に接触させる溶媒の温度を制御することによって、発電効率が高い太陽電池を再現性良く安定に製造することができることが確認された。この結果は、ペロブスカイト前駆体膜に接触させる溶媒の温度を制御することによって、拡散速度を制御し、ペロブスカイト膜の形成速度を最適化することができたためである。
また、実施例9、10、比較例5〜8で製造したペロブスカイト膜についても、上記の[太陽電池の製造と評価]に記載したのと同じ方法により積層体(基板/ITO正極/PEDOT:PSS層/ペロブスカイト膜/C60層/BCP層/Ag負極)を形成してガラス封止管内に収容し、UV硬化樹脂で封止することにより太陽電池(電池5、6、比較電池1〜4)とした。各太陽電池で用いたペロブスカイト膜の実施例番号を表6に示す。また、これとは別に、電池5、6、比較電池1〜4と同様の条件で、電池5については4セルの素子を6個、電池6、比較電池1〜4については、4セルの電池を各1個、または2個製造した。
製造した各太陽電池に、上記の[太陽電池の製造と評価]に記載したのと同じ条件で疑似太陽光を照射し、太陽電池特性を評価した。
各太陽電池をフォトマスクで覆わずに電流密度−電圧特性(光電流特性)を測定した結果を図14に示し、各太陽電池をフォトマスクで覆った状態で電流密度−電圧特性(光電流特性)を測定した結果を図15に示し、疑似太陽光を照射せずに電流密度−電圧特性(暗電流特性)を測定した結果を図16に示す。また、各太陽電池の光電変換特性(IPCE)の波長依存性を図17に示し、短絡電流JSC、開放電圧VOC、曲線因子FF、エネルギー変換効率ηを図18〜21および表6に示す。また、電池5の太陽電池特性のバラツキを表すヒストグラムを図22〜25に示し、電池5を連続駆動したときの太陽電池特性の経時変化を図26、27に示す。図27は、図26のグラフの0〜5時間の範囲を拡大して表示したグラフである。
図14〜27および表6から、実施例9、10のペロブスカイト膜を用いて製造した電池5、6は、いずれも十分な太陽電池特性を有することがわかった。特に、実施例9のペロブスカイト膜(浸漬槽の温度を13℃にして製造したペロブスカイト膜)を用いた電池5では、非常に優れた太陽電池特性が得られるとともに、特性のバラツキや連続駆動時の特性劣化が小さく抑えられ、安定な特性を得ることができた。Sn系太陽電池で、このように太陽電池特性の劣化が抑えられていることは画期的であり、本発明の製造方法により、長時間駆動が望めるSn系太陽電池の実現が可能になることも確認することができた。
本発明のペロブスカイト膜の製造方法によれば、良好な膜質を有するペロブスカイト膜を再現性よく製造することができるため、優れた素子特性を有する太陽電池や電子デバイスを安定に供給することができる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 透明基板
2 透明電極
3 正孔捕獲層
4 光電変換層
5 電子輸送層
6 対向電極

Claims (22)

  1. 第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に、第2溶媒と第3溶媒の混合溶媒を接触させることによって、前記第1溶媒が前記ペロブスカイト前駆体膜から前記混合溶媒中へ移動することによりペロブスカイト膜を製造する方法であって、
    前記第1溶媒は前記第2溶媒および前記第3溶媒よりも前記ペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、
    前記第2溶媒と前記第3溶媒は前記第1溶媒に対する溶解度が異なる、ペロブスカイト膜の製造方法。
  2. 前記ペロブスカイト前駆体膜が基板上に形成されている、請求項1に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  3. 前記ペロブスカイト前駆体膜を前記混合溶媒中に浸漬する、請求項1または2に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  4. 前記混合溶媒における前記第2溶媒と前記第3溶媒の混合比率を、25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させたときに前記ペロブスカイト前駆体膜中の前記第1溶媒が前記混合溶媒中へ拡散する拡散定数が1x10−13/s〜 1x10/s の範囲内となる比率とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  5. 前記ペロブスカイト前駆体膜中の前記第1溶媒が前記混合溶媒中へ拡散する拡散定数が、
    1x10−13/s〜1x10/sの範囲内となる温度で、前記混合溶媒を前記ペロブスカイト前駆体膜に接触させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  6. 25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記第2溶媒を接触させたときに前記第1溶媒が前記第2溶媒中に拡散する拡散定数kと、25℃において前記ペロブスカイト前駆体膜に前記第3溶媒を接触させたときに前記第1溶媒が前記第3溶媒中に拡散する拡散定数kとの差の絶対値(|k−k|)が1x10−13/s〜1x10−13/sの範囲内にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  7. 前記第1溶媒が、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルホルムアミド、γ―ブチロラクトンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  8. 前記第2溶媒と前記第3溶媒が、トルエン、クロロベンゼン、ヘキサンまたはシクロヘキサンである(ただし、第2溶媒と第3溶媒は異なる溶媒である)、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  9. 前記第2溶媒が、トルエンまたはクロロベンゼンであって、前記第3溶媒がヘキサンまたはシクロヘキサンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  10. 前記ペロブスカイト前駆体膜が、下記一般式(4)で表されるペロブスカイト型化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
    3BX (4)
    [一般式(4)において、A3は有機カチオンを表し、Bは2価の金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す。3つのX同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。]
  11. 前記ペロブスカイト前駆体膜がPb、Snのうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  12. ・前記ペロブスカイト前駆体膜がヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジン、ヨウ化セシウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  13. 前記ペロブスカイト前駆体膜がIおよびFの少なくとも1種を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  14. 前記ペロブスカイト前駆体膜への前記混合溶媒の接触を0.1秒〜180分行う、請求項1〜13のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  15. 前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させているとき、前記混合溶媒の温度を時間とともに変化させる、請求項1〜14のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  16. 前記ペロブスカイト前駆体膜に前記混合溶媒を接触させた後、得られたペロブスカイト膜に、0〜200℃でアニール処理を行う、請求項1〜15のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜の製造方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法で製造されるペロブスカイト膜。
  18. 前記第1溶媒を0超10,000ppm未満の濃度で含む、請求項17に記載のペロブスカイト膜。
  19. 前記第2溶媒を0超5,000ppm未満の濃度で含む、請求項17または18に記載のペロブスカイト膜。
  20. 前記第3溶媒を0超5,000ppm未満の濃度で含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜。
  21. 請求項17〜20のいずれか1項に記載のペロブスカイト膜を有する太陽電池。
  22. 第1溶媒を含むペロブスカイト前駆体膜に接触させる溶媒であって、前記接触を行うことによって、接触させた溶媒中に前記第1溶媒が前記ペロブスカイト前駆体膜から移動することによりペロブスカイト膜を製造することができる、ペロブスカイト膜形成用溶媒であって、
    前記ペロブスカイト膜形成用溶媒は、少なくとも第2溶媒と第3溶媒を含む2種以上の溶媒の混合物であって、
    前記第1溶媒は前記第2溶媒および前記第3溶媒よりも前記ペロブスカイト前駆体膜の主成分に対する溶解度が大きく、
    前記第2溶媒と前記第3溶媒は前記第1溶媒に対する溶解度が異なる、ペロブスカイト膜形成用溶媒。
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