JP2019131432A - 養液栽培用の液状肥料の製造方法、及び肥料成分を分離濃縮して回収するシステム - Google Patents

養液栽培用の液状肥料の製造方法、及び肥料成分を分離濃縮して回収するシステム Download PDF

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Abstract

【課題】化学肥料を添加しなくても、消化液から所望の成分バランスを有する液状肥料を製造可能な、液状肥料の製造方法を提供すること。【解決手段】有機物の消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が上記消化液よりも高い分散液と、を得る第一工程、上記膜透過液を電気透析処理して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が上記膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二工程、上記濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が上記濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が上記濃縮液より低い第2の溶液と、を得る第三工程、並びに上記分散液、上記第1の溶液及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四工程、を備える、液状肥料の製造方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、液状肥料の製造方法、及び肥料成分を分離濃縮して回収するシステムに関する。
近年、畜産廃棄物及び食品廃棄物等の有機廃棄物をメタン発酵させた際に発生する消化液を肥料又は肥料原料として活用することが検討されている。
例えば、特許文献1には、液状の有機廃棄物の処理方法であって、液状の有機廃棄物をバイオガスリアクター中で嫌気発酵させること、バイオリアクターから実質的に減菌され、粒子を含まない透過液を分離すること、透過液をアンモニアストリッパー処理し、アンモニア画分と、栄養塩画分に分離すること、及び栄養塩画分を肥料成分濃縮画分と、水画分とに分離すること、を含み、アンモニアストリッパー処理が高温下で行われることを特徴とする処理方法が開示されている。
特許文献2には、有機廃棄物のメタン発酵処理液をウルトラフィルターに通して得られるウルトラフィルター透過消化液を、濃縮、乾燥して肥効促進剤を含む肥料を得ることを特徴とする肥効促進剤入り肥料の製造方法が開示されている。
国際公開第1999/042423号 特開2003−055077号公報
一般に、消化液に含まれる肥料成分の組成、含有量比及び濃度等が、原料となる有機廃棄物によって異なる。このため、消化液を原料として得られる肥料の品質が安定せず、肥料を使用する対象である土壌及び作物等の種類が限定されることがある。これは、特許文献1又は特許文献2に開示の方法を使用した場合であっても同様である。
消化液又は消化液から得られる肥料に対して、リン成分、カリウム成分及び窒素成分等を含む化学肥料を添加して成分調整を行う対応が考えられる。しかし、化学肥料は副成分を含むため(例えば、カリウム成分が塩化カリウムとして供給された場合、植物体に吸収されない塩素が副成分として含まれる)、化学肥料の長期間の使用によって、塩類が土壌に蓄積する問題が起こりうる。さらに化学肥料の多用は土壌の団粒構造の劣化を招き、土壌の持つ通気性、保水性、透水性及び保肥性等の土壌特性が低下しうることから、化学肥料の使用量は低減することが望ましい。
消化液を膜濾過等によって濃縮する検討がなされていたものの、各肥料成分を分離しつつ濃縮して回収するといった報告はない。そこで、分離濃縮して回収された各種肥料成分を所定割合で混合することで、化学肥料を用いなくても、土壌及び植物等の種類に適した肥料成分を含む液状肥料を製造する方法があれば極めて有用であると考えられる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、化学肥料を添加しなくても、有機物の消化液から所望の成分バランスを有する液状肥料を製造し得る液状肥料の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、有機物の消化液(例えば、メタン発酵の消化液)から肥料成分を分離濃縮して回収するシステムを提供することを目的とする。
本発明の一側面は、有機物の消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が上記消化液よりも高い分散液と、を得る第一工程、上記膜透過液を電気透析処理(「イオン交換膜電気透析処理」ともいう)して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が上記膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二工程、上記濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が上記濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が上記濃縮液よりも低い第2の溶液と、を得る第三工程、並びに上記分散液、上記第1の溶液及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四工程、を備える、製造方法に関する。
上述の製造方法では有機物の消化液(例えば、有機廃棄物のメタン発酵消化液)に含まれる、肥料成分であるリン成分、カリウム成分及び窒素成分を、それぞれが個々に濃縮された分散液又は溶液として一旦分離濃縮して、回収することによって、肥料の使用対象である土壌及び植物等の種類に適した肥料成分を含む液状肥料を容易に調製することができる。また、上述の製造方法によれば、液状肥料中の肥料成分の調整を有機物由来の成分で行うことができるため、化学肥料の添加を行わなくてもよい。
上記第一工程では、限外濾過処理して得られる上記分散液に含まれる上記汚泥を微粉砕処理してもよい。分散液中の汚泥等を微粉砕することで、分散液中で汚泥等が沈殿することを抑制することができ、分散液の取扱性をより向上させることができる。汚泥等が微粉砕された分散液は養液栽培用の液状肥料の製造方法にも使用できる。養液栽培としては、液状肥料を植物に噴霧して栽培する噴霧耕及び水耕栽培等の培地を含まない栽培、並びに礫耕栽培及びロックウール栽培等の固形培地を用いる栽培が挙げられる。
上記消化液が、嫌気性発酵又は好気性発酵の消化液であってよい。
上記第四工程では、上記分散液、上記第1の溶液及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを硝化処理して、上記液状肥料を得てもよい。
本発明の一側面は、有機物の消化液から肥料成分を分離濃縮して回収するシステムであって、上記消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が上記消化液よりも高い分散液と、を得る第一処理部と、上記膜透過液を電気透析処理して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が上記膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二処理部と、上記濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が上記濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が上記濃縮液よりも低い第2の溶液とに分画する第三処理部と、を具備する、システムに関する。
上述のシステムは、上記第一処理部が、上記限外濾過処理して得られる上記分散液に含まれる上記汚泥を微粉砕する微粉砕手段を備えていてもよい。
上記消化液が、嫌気性発酵又は好気性発酵の消化液であってよい。
上述のシステムは、上記第三処理部の下流側に、上記分散液、上記第1の溶液及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを硝化処理する硝化処理部をさらに具備してもよい。
上述のシステムは、上記分散液、上記第1の溶液及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四処理部を更に具備していてもよい。
本発明によれば、化学肥料等を実質的に添加せず、有機物の消化液から所望の成分バランスを有する液状肥料を製造し得る液状肥料の製造方法を提供することができる。本発明によればまた、有機物の消化液から肥料成分を分離濃縮して回収するシステムを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る肥料成分を分離濃縮して回収するシステムの一例を示す模式図である。 図2は、実施例における消化液、限外濾過処理により得られた分散液、及び膜透過液中の各種肥料成分の濃度を示すグラフである。 図3は、実施例における電気透析処理のシミュレーション結果を示す図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素は、特に明示した場合を除き、必須ではない。
本明細書において「液状肥料」とは、溶液であってもよく、懸濁液(スラリー)であってもよい。本明細書において、「リン成分」はリン酸態リン、有機態リン、及びリン酸塩等を含み、「カリウム成分」はカリウムイオン等を含み、「窒素成分」はアンモニア態窒素、及びアンモニア等を含む。
[液状肥料の製造方法]
液状肥料の製造方法の一実施形態は、消化液を限外濾過処理する第一工程、電気透析処理する第二工程、蒸留処理する第三工程、及び各種肥料成分の少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四工程を備える。第四工程において上記各工程において得られる分散液、第1の溶液及び第2の溶液から選ばれる少なくとも一つにアンモニア態窒素が含まれる場合、アンモニア態窒素を硝酸態窒素とする硝化処理を行ってもよい。本実施形態に係る製造方法は、各工程を経ることで、有機物を含む原料の消化液に含まれる、リン成分、カリウム成分、及び窒素成分等の肥料成分を、それぞれが個々に濃縮された分散液又は溶液に一旦分離濃縮して回収したうえで、各肥料成分を任意の配合割合で混合し、所望の液状肥料を製造することができる。
消化液は、嫌気性発酵又は好気性発酵の消化液であってよく、好ましくは嫌気性発酵の消化液である。嫌気性発酵は、高温嫌気性発酵及び中温嫌気性発酵等を挙げることができる。嫌気性発酵としてはメタン発酵を挙げることができる。メタン発酵は、湿式メタン発酵又は乾式メタン発酵であってもよい。好気性発酵は、高温好気性発酵及び中温好気性発酵等を挙げることができる。好気性発酵は曝気処理等によって促進されてもよい。有機物の消化液は、一般に、汚泥及び浮遊物等の懸濁物が含まれた状態で得られる。
有機物は、少なくともリン成分、カリウム成分及び窒素成分を含むものであればよく、肥料成分の含有割合等に関わらず使用することができる。有機物としては、有機廃棄物、草木系未利用バイオマス(剪定枝、草等)、及び資源作物(トウモロコシ、ソルガム等)などが挙げられる。有機廃棄物としては、例えば、食品加工残渣及び水産残渣等の食品廃棄物、農畜産廃棄物、し尿、浄化槽汚泥、下水汚泥及び廃棄紙等の有機廃棄物が挙げられる。これらの有機物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
第一工程において、上記消化液を限外濾過処理して、限外濾過膜の膜透過液と、リン成分及び汚泥等の懸濁物を含み、リン成分の濃度が消化液よりも高い分散液と、を調製する。膜透過液は懸濁物を実質的に含まない。一方、分散液は懸濁物を実質的に含んでおり、分散液における懸濁物の濃度は、膜透過液における懸濁物の濃度よりも高い。得られた分散液を更に限外濾過膜を用いた透析処理により濃縮してもよい。カリウム成分及び窒素成分は限外濾過膜を透過することから、限外濾過処理後の分散液にも含まれ得る。そこで、得られた分散液に水を加えて希釈し再度限外濾過膜によって透析処理する操作を繰り返すことで、カリウム成分及び窒素成分の濃度を更に低下させることができ、且つ分散液中の主要な肥料成分をリン成分とすることが可能である。
汚泥等を含む分散液中におけるリン成分の濃度は、膜透過液におけるリン成分の濃度よりも高くなる。このような選択性は、リン成分が、汚泥及び浮遊物等の懸濁物に吸着されやすく、限外濾過膜を透過することができないために生じるものと推察される。
限外濾過に要する時間は、得られる分散液の性状(粘度、濃度等)、消化液の体積及び質量等に応じて適宜選択することができ、例えば、5時間以上又は10時間以上であってよい。
限外濾過膜の素材は、例えば、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、及び酢酸セルロース等の素材であってよい。限外濾過膜の分画分子量は、3,000〜1,000,000であってもよく、5,000〜500,000であってもよく、又は10,000〜100,000であってもよい。
限外濾過膜の細孔(例えば、孔径0.03μm)は、バクテリア及び細菌等を透過させないことから、上記汚泥を含む分散液内には、嫌気性発酵菌及び好気性発酵菌等の菌体が含まれ得る。分散液に菌体が含まれる場合、必要に応じて、分散液の滅菌処理又は殺菌処理を行ってもよい。液状肥料として使用する場合には、分散液の滅菌処理又は殺菌処理を行うことが好ましい。また、分散液に菌体が含まれる場合には、嫌気性発酵又は好気性発酵の発酵槽等に当該分散液を添加することで、発酵過程をより活性化させることができる。よって、当該分散液を嫌気性発酵又は好気性発酵の活性化剤として使用することができる。
第一工程において、限外濾過処理により得られた分散液に含まれる汚泥等の懸濁物は微粉砕処理してもよい。分散液中の汚泥等の懸濁物に含まれる粒子を微粉砕することによって、分散液中で汚泥等の懸濁物が沈殿することを抑制でき、分散液の取扱性をより向上できる。このような分散液は養液栽培用の液状肥料の製造に使用できる。分散液中の汚泥等の懸濁物に含まれる粒子を微粉砕することによって、さらに、肥効までの時間を短くする効果も期待できる。
微粉砕処理は、例えば、ビーズミル等を使用して行うことができる。微粉砕処理の条件(使用するビーズの粒子径、及び粉砕処理に要する時間等)は、得られる分散液の性状(粘度、粒度分布等)等に応じて適宜選択することができる。例えば、微粉砕処理は、平均粒子径0.3〜2.0mm程度のビーズを使用し、数10分〜数時間の条件で行ってよい。
分散液中に分散する分散汚泥粒子の粒径は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは100nm以下である。このように分散汚泥粒子の粒径を小さくすることで、より均一な分散液にでき、分散液の貯蔵安定性及び取扱性をより優れたものにできる。例えば、汚泥をナノレベルに微粉砕したナノ分散液は、汚泥の微粒子が均一かつ安定的に水中で存在できるため、貯蔵安定性及び取扱性により優れることに加え、水への分散性も更に向上する。
分散液のリン成分の濃度(全リン濃度)(質量%)は、原料である消化液におけるリン成分の濃度を基準として、3倍以上、10倍以上又は30倍以上とすることができる。上記分散液は消化液由来の有機系成分を含むため、化学肥料と比較して、土耕栽培において多量に使用した場合であっても土壌の劣化等を招きづらい。
第一工程で得られる分散液を水等で希釈して、再度、限外濾過処理を行ってもよい。消化液に含まれる窒素成分及びカリウム成分の大部分が限外濾過膜を透過し膜透過液に移動する。しかし、窒素成分及びカリウム成分の一部は、分散液中に含まれ得る。第一工程において得られた分散液に水を加えて希釈し再度限外濾過膜によって透析処理する操作を繰り返すことで、分散液中に含まれ得る窒素成分及びカリウム成分の濃度をより低減できる。窒素成分及びカリウム成分の濃度をより十分に低減した分散液を使用することで、後述する第四工程において得られる液状肥料中の肥料成分濃度の調整がより容易となる。養液栽培においては、土耕栽培と比べて、リン成分、カリウム成分及び窒素成分の配合割合をより高度に調整することが求められるため、養液栽培用の液状肥料を調製する場合には、第一工程において限外濾過処理を複数回行うことが好ましい。
第二工程において、限外濾過処理して得られた膜透過液を電気透析処理する。電気透析処理を行うことで、カリウム成分及び窒素成分の濃度が膜透過液よりも高い濃縮液を調製する。電気透析処理を行う際の条件(処理時間、電流量、電圧等)は、得られる濃縮液におけるカリウム成分濃度及び窒素成分濃度の設定値、膜透過液の液量等に応じて適宜選択してよい。例えば、電気透析ユニットの電流値を26.8Aに設定して、120分間で処理してもよい。
消化液を直接電気透析処理すると、消化液に含まれる汚泥等の懸濁物によって電気透析のためのイオン交換膜が目詰まりを起こし、連続運転することが困難となる。しかし、本実施形態に係る製造方法においては事前に限外濾過処理を行うことで汚泥等の懸濁物を除去しているために、電気透析を用いて膜透過液を濃縮することが可能となっている。
濃縮液中のカリウム成分の濃度(全カリウム濃度)(質量%)は、膜透過液におけるカリウム成分の濃度を基準として、1.5倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上又は13倍以上とすることができる。濃縮液中の窒素成分の濃度(全窒素濃度)(質量%)は、膜透過液における窒素成分の濃度を基準として、1.5倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上又は13倍以上とすることができる。
電気透析による溶液の濃縮は、溶媒を蒸発させて溶液を濃縮させる手法よりもエネルギーコストの点で極めて優れている。本実施形態において、電気透析を用いてカリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液を濃縮することで、後述する第三工程における蒸留処理に要するエネルギーを大幅に低減できる。また、電気透析を用いて事前に濃縮していることから、電気透析処理を行わずに蒸留処理を行う場合に比べて各種肥料成分の濃度が高い状態で第1の溶液及び第2の溶液を得ることができる。
第三工程において、第二工程で得られた濃縮液を蒸留処理する。蒸留処理を行うことで、窒素成分の濃度が濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が濃縮液よりも低い第2の溶液と、を調製する。蒸留処理は、例えば、アンモニアストリッピング処理であってよい。
第三工程は、蒸留処理を行う前に濃縮液のpH調整を行ってもよい。pHの調整は、pH調整剤を用いて行ってもよい。pH調整剤としては、強塩基性の化合物を使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシム及び水酸化カルシウム等を挙げることができる。これらのpH調整剤の中でも、安価で入手が容易であることから、水酸化ナトリウムが好ましい。
濃縮液のpHは、好ましくはpH10以上であり、より好ましくはpH11以上であり、更に好ましくはpH12以上である。濃縮液のpHがpH10以上であると、濃縮液中に含まれるアンモニウムイオンが遊離のアンモニアへの変換がより促進される。濃縮液中の遊離のアンモニアの割合を増加させることで、第1の溶液の窒素成分の濃度を濃縮液よりも一層高いものとすることができ、また第2の溶液の窒素成分の濃度を濃縮液よりも一層低いものとすることができる。
第1の溶液における窒素成分の濃度(全窒素濃度)(質量%)は、原料である消化液における窒素成分の濃度を基準として、15倍以上、30倍以上、60倍以上、又は80倍以上とすることができる。第2の溶液におけるカリウム成分の濃度(全カリウム濃度)(質量%)は、原料である消化液におけるカリウムイオンの濃度を基準として、4倍以上、8倍以上、又は13倍以上とすることができる。
第四工程において、上述の各工程で得られた、分散液、第1の溶液及び第2の溶液の少なくとも1つを含む液状肥料を調製する。第四工程において、分散液、第1の溶液及び第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを硝化処理してもよい。硝化処理により、分散液、第1の溶液又は第2の溶液中に含まれるアンモニア態窒素を硝酸態窒素に転換することができる。
植物には、馬鈴薯及び里芋等の一部の根菜類並びに稲等のようにアンモニア態窒素を取り込むことができる植物と、レタス等の葉茎菜類、とうもろこし、なす及びトマト等の果菜類などのようにアンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を吸収しやすい植物とがある。そこで、アンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を吸収しやすい植物に液状肥料を施用する場合には、硝化処理を経た上記分散液、上記第1の溶液又は上記第2の溶液を含む液状肥料は施用後に肥料効果を早期に発揮することを期待することができ、いわゆる即効性肥料とすることができる。したがって、硝酸態窒素をよく吸収する植物を対象とする液状肥料を製造する際には、上記硝化処理を行うことが好ましい。
第四工程において、土壌及び植物等の種類に適した肥料成分を含む液状肥料を調製することができる。つまり、原料である消化液中の肥料成分の含有割合に関わらず、より望ましい割合でリン成分、カリウム成分及び窒素成分を含む液状肥料を調製することができる。分散液、第1の溶液及び第2の溶液の混合割合、並びに硝化処理を行うか否か等は、肥料を使用する土壌及び植物等の種類に応じて決定される割合に沿って調整してよい。
有機物に含まれる肥料成分の組成、含有量比及び濃度等は、有機物の種類によって異なる。これに対して本実施形態に係る液状肥料の製造方法では、有機物の消化液に含まれる肥料成分をそれぞれが個々に濃縮された分散液又は溶液として一旦分離回収しており、その上で各肥料成分が所望の割合となるように配合している。そのため、有機物の種類に依存せずに、目的とする液状肥料の性状を高精度で調整することができる。さらには、混合割合を変えることによって、肥料成分の組成、含有量比及び濃度等が異なる、種々の液状肥料の提供することができる。
液状肥料の25℃における粘度は、60mPa・s以下、30mPa・s以下又は20mPa・s以下とすることができる。液状肥料の粘度を上記範囲内とすることで、液状肥料の取扱性がより向上する。
[有機物の消化液から肥料成分を分離濃縮して回収するシステム]
分離濃縮して回収するシステムの一実施形態は、有機物の消化液から肥料成分を分離濃縮して回収するシステムであって、消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が消化液よりも高い分散液と、を得る第一処理部と、膜透過液を電気透析処理して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二処理部と、濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が濃縮液よりも低い第2の溶液とを得る第三処理部と、を具備する、システムである。
本実施形態のシステムは、上述の液状肥料の製造方法を実施する手段の一つといえる。したがって、本実施形態のシステムは上述の液状肥料の製造方法についての説明内容を適用することができる。例えば、本実施形態のシステムにおける成分及び条件等は、上述の液状肥料の製造方法について説明した成分及び条件等と同じであってよい。また逆に、本実施形態のシステムについての説明内容は上述の液状肥料の製造方法に適用することができる。
図1は、肥料成分を分離濃縮して回収するシステムの一例を示す模式図である。図1に示すシステム100は、第一処理部50、第二処理部60、第三処理部70及び第四処理部80を具備する。第一処理部50は、限外濾過膜を備える限外濾過ユニット4を備え、第二処理部60は電気透析ユニット6を備え、第三処理部は蒸留塔8(例えば、アンモニアストリッピング塔)を備える。第四処理部80は第一処理部、第三処理部において分離回収された肥料成分の少なくとも一つを含む液状肥料を調製する手段を備える。また、第三処理部70の下流側に第一処理部50及び第三処理部70において分離回収された肥料成分の少なくとも一つを硝化処理する硝化処理部(図示せず)を備える。
第一処理部50において、貯蔵槽2に貯蔵された有機物の消化液が、限外濾過ユニット4に供給される。消化液は、限外濾過処理して汚泥及び浮遊物等の懸濁物を含み、リン成分の濃度が消化液よりも高い分散液と、懸濁物を実質的に含まない膜透過液とに分離される。第一処理部50は複数の限外濾過ユニット4を備えていてもよい。この際、リン成分は、汚泥及び浮遊物等に吸着されることで分散液中に濃縮される。リン成分は僅かに水溶液中にも溶解しているため、この一部が限外濾過膜を透過し、膜透過液中に含まれることがあるが、消化液由来のリン成分は大部分が分散液中に含まれる。また、カリウム成分及び窒素成分は限外濾過膜を透過するため、カリウム成分及び窒素成分は分散液よりも膜透過液中に多く含まれる。限外濾過ユニット4を経て得られる分散液は、微粉砕手段である微粉砕処理器5によって汚泥及び浮遊物等の懸濁物が粉砕され、微粉砕汚泥等を含む分散液(例えば、ナノ分散液)が得られる。当該分散液は第一の貯蔵タンク10に貯蔵される。
限外濾過ユニット4に供給される消化液は、例えば、有機物のメタン発酵を実施している施設から入手してもよく、本実施形態のシステム内にメタン発酵設備を組み込み、消化液を製造して供給してもよい。消化液に、発酵槽汚泥などの有機物由来の汚泥が多量に含まれている場合には、当該汚泥を事前に微粉砕処理してもよく、上記システムはそのための粉砕ユニットを備えてもよい。
限外濾過ユニット4としては、例えば、チューブラー型モジュール、回転平膜装置及び槽浸漬膜モジュール等が挙げられる。限外濾過ユニット4は、限外濾過における目詰まりが大幅に減少し、長期に連続運転が可能であることから、好ましくはチューブラー型モジュールである。チューブラー型モジュールとしては、具体的には、株式会社マツケン製の限外濾過膜含有排水処理ユニット等を使用することができる。
微粉砕処理器5としては、例えば、ビーズミル及びディゾルバー等が挙げられる。ビーズミルとしては、具体的には、アシザワ・ファインテック株式会社製のビーズミル装置(製品名「スターミルLME」、スターミルは登録商標)等を使用することができる。ディゾルバーとしては、具体的には、NETZSCH社製の製品名「MASTERMIX11」(Mastermixは登録商標)等を使用することができる。
第一処理部50で得られた膜透過液を第二処理部60の電気透析ユニット6へ供給する。供給された膜透過液は、電気透析ユニット6において電気透析によってカリウム成分及び窒素成分が濃縮された濃縮液と脱塩水とに分離される。脱塩水は、貯蔵タンク20に貯蔵される。濃縮液の窒素成分を高めることによって脱塩水は、環境水準を満たし得るため、放流水として放流してもよい。また、放流水に着色及び臭気等がある場合には、第二処理部60は、放流水の色味を低減するための脱色処理手段、放流水の臭気を低減する脱臭処理手段等を備えてもよい。
電気透析ユニット6としては、例えば、市販の電気透析装置等が挙げられる。電気透析装置に使用される陽イオン硬化膜としては、例えば、AGCエンジニアリング株式会社製のセレミオンCMV(製品名、セレミオンは登録商標)、及び株式会社アストム社製ネオセプタCMX(製品名、ネオセプタは登録商標)等が挙げられる。電気透析装置に使用される陰イオン硬化膜としては、例えば、AGCエンジニアリング株式会社製のセレミオンAMV(製品名、セレミオンは登録商標)、株式会社アストム社製ネオセプタAMX(製品名、ネオセプタは登録商標)等が挙げられる。
第二処理部60で得られた濃縮液を第三処理部70の蒸留塔8へ供給する。供給された濃縮液は、蒸留処理によって、アンモニア水(第1の溶液の一態様)と、カリウム成分が濃縮された第2の溶液とに分離される。第1の溶液は第二の貯蔵タンク12に、第2の溶液は第三の貯蔵タンク14にそれぞれ貯蔵される。
蒸留塔8は、例えば、内部に多孔板、及び充填物等が設置されたものである。処理対象である濃縮液が、蒸留塔8の上部から噴霧等によって蒸留塔8の内部に供給される。また蒸留塔8の下部に設けられた配管8aから蒸留塔8の内部に水蒸気が吹き込まれる。噴霧された濃縮液に水蒸気が接触することで、濃縮液中の遊離アンモニアが水蒸気側に抽出され、アンモニアを含む水蒸気が蒸留塔8の塔頂部から抜き出される。こうして濃縮液中の窒素成分の大部分が、最終的にアンモニア水(第1の溶液の一態様)として回収される。当該第1の溶液は、第二の貯蔵タンク12に貯蔵される。蒸留処理を経て、窒素成分の大部分が除去された溶液は、カリウム成分を含む第2の溶液として蒸留塔8の塔底部から抜き出される。当該第2の溶液は、第三の貯蔵タンク14に貯蔵される。
第二処理部60で生成される濃縮液中のアンモニウムイオンを遊離のアンモニアにする観点から、濃縮液のpHを調整する手段を備えてもよい。
第四処理部80では、リン成分が濃縮された分散液、窒素成分が濃縮された第1の溶液、及びカリウム成分が濃縮された第2の溶液を、それぞれが所定の割合で混合されるように、流量調整弁V1、V2及びV3で調整し、貯蔵タンク30に供給する。この際、必要に応じて、上記分散液、上記第1の溶液、及び上記第2の溶液の少なくとも一つを硝化処理部において硝化処理することで、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換した後に貯蔵タンク30に供給してもよい。供給された各肥料成分を混合することで、肥料成分を所望の混合割合で含む液状肥料を製造する。なお、上記分散液、上記第1の溶液、及び上記第2の溶液の全てを混合することが必須ではなく、上記分散液、上記第1の溶液、及び上記第2の溶液の少なくとも一つを液状肥料としてそのまま使用してもよく、また上記分散液、上記第1の溶液、及び上記第2の溶液から選ばれる少なくとも二つ以上を混合して用いてもよい。また、他の成分をさらに加えて液状肥料としてもよい。混合の割合、並びに硝化処理を行うか否か等は、液状肥料を使用する対象となる土壌及び植物等の種類に応じた適切な割合に設定することができる。
上述の液状肥料の製造方法及び肥料成分を分離濃縮して回収するシステムを利用して得られる液状肥料は、粘度の制御も容易である。したがって、当該液状肥料は、土壌散布用(土耕栽培用)の液状肥料としてだけでなく、養液栽培用の液状肥料としても有用である。本実施形態に係る液状肥料の製造方法及び分離濃縮して回収するシステムを利用して得られる液状肥料を使用することで、塩素等の副成分を含む化学肥料を使用した場合と比べて、土耕栽培における塩類等の土壌蓄積等を抑制することが期待される。また、本実施形態に係る液状肥料の製造方法及び分離濃縮して回収するシステムを利用して得られる上記分散液を含む液状肥料を使用することによって、土耕栽培であるか養液栽培であるかを問わず、収穫される作物は良質の味を呈することが期待される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[限外濾過処理:第一処理部]
大分県日田市バイオマス資源化センターで製造されたメタン発酵の消化液(原料である有機廃棄物は、豚ふん尿、生ごみ、焼酎かす、及び農業集落排水汚泥の混合物)を、チューブラー型限外膜分離装置(株式会社マツケン製、製品名「UF膜含有廃水処理ユニット」)を使用して、限外濾過処理を行った。用いた消化液、限外濾過処理により得られた分散液、及び膜透過液のそれぞれについて、外観及び肥料成分の含有量を評価した。肥料成分の含有量については、以下に示す方法によって、リン成分(五酸化二リン)、カリウム成分(酸化カリウム)、及び窒素成分(アンモニア態窒素)の含有量(質量%)を測定した。結果を表1及び図2に示す。図2は、消化液、限外濾過処理により得られた分散液、及び膜透過液中の各種肥料成分の濃度を示すグラフである。
<リン成分の定量>
五酸化二リン(P)の含有量は、バナドモリブデン酸アンモニウム法により計測した。
<カリウム成分の定量>
酸化カリウム(KO)の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により計測した。
<窒素成分の定量>
アンモニア態窒素(NH−N)の含有量は、蒸留法により中和滴定で計測した。
Figure 2019131432
表1及び図2から、1回の限外濾過処理によって、リン成分の濃度が消化液よりも高い分散液が得られることが確認された。分散液は水を添加しての希釈及び限外濾過膜による透析処理によって、更にリン成分を濃縮、カリウム成分及び窒素成分の濃度が低減された分散液とすることもできる。
[電気透析処理:第二処理部]
限外濾過処理を経た膜透過液として、下記表2の組成を有する溶液を使用し、小型電気透析装置(AGCエンジニアリング株式会社製、製品名「DW−1」:陽イオン交換膜として製品名「CMV」、陰イオン硬化膜として製品名「AMV」を備える。)を用いて、出力20A、100Vで、4時間かけて電気透析処理するシミュレーションを行った。図3は、電気透析処理のシミュレーション結果を示す図である。この結果から、膜透過液に含まれる大部分のイオン(カリウム成分及び窒素成分を含む)が濃縮液中に維持されており、約3倍に濃縮されることが確認された。
Figure 2019131432
次に以下の条件で実際に電気透析処理を行った。消化液の限外濾過処理を経た膜透過液(カリウム成分濃度:0.17質量%、窒素成分濃度:0.21質量%)を用意し、卓上小型電気透析装置(AGCエンジニアリング株式会社製、製品名「DW−Lab」:陽イオン交換膜として製品名「CMV」、陰イオン硬化膜として製品名「AMV」を備える。)を用いて電気透析処理を行った。電気透析の条件は出力20A、100Vとし、1回120分間の電気透析処理を10回繰り返して行った。処理毎の濃縮率を測定した。結果を表3に示す。表3に示すように、実際に行った電気透析処理においてもシミュレーションと同様に、膜透過液に含まれる大部分のイオンが濃縮液中に移動することが確認された。また、電気透析処理を繰り返すことにより濃縮率を向上させることができることも確認された。なお、電圧を上げ、処理時間を長くすることで、脱塩水に含まれるカリウム成分及び窒素成分を濃縮液に移動させることが可能である。
Figure 2019131432
[蒸留処理:第三処理部]
電気透析処理を経た濃縮液として下記表4の組成を有する溶液(表4中の濃縮液中の含有量の欄を参照)を使用し、蒸留処理としてアンモニアストリッピング処理して、第1の溶液及び第2の溶液を得るシミュレーションを行った。結果を表4に示す。なお、アンモニアストリッピング処理は、アンモニアストリッピング塔に供給される濃縮液が83.3kg/時間に対して、水蒸気を11.7kg/時間で加える条件で行い、第1の溶液及び第2の溶液を調製する想定とした。
Figure 2019131432
シミュレーションの結果、蒸留塔の塔頂部から排出されるアンモニア及び水蒸気の流量はそれぞれ、2.5kg/時間、及び9.8kg/時間であった。したがって、得られる第1の溶液(アンモニア水)の濃度は20重量%(=[第1の溶液に含まれるアンモニア量]/{[第1の溶液に含まれるアンモニア量]+[第1の溶液に含まれる水の量]}×100=2.5/(2.5+9.8)×100)となる。つまり、第1の溶液中の窒素成分濃度は、濃縮液における窒素成分濃度の6.67倍となる。また蒸留塔の塔底部から抜き出される第2の溶液の流量は82.7kg/時間(=[濃縮液量]−[第1の溶液に移行したアンモニア量]+[アンモニアストリッピング塔内に供給した水蒸気のうち第1の溶液に移行した分を引いた残量]=83.3−2.5+1.9)となる。カリウム成分は、蒸留処理により、第2の溶液中に残留することから、第2の溶液中のカリウム成分の濃度は、濃縮液における窒素成分の濃度の1.007倍(=83.3÷82.7)となる。
次に以下の条件で実際に蒸留処理を行った。上記表3に示す電気透析処理を経て得られた濃縮液(アンモニウムイオン濃度:0.98質量%、カリウムイオン濃度:0.80質量%)を用意し、エバポレーター(株式会社島津製作所製、製品名「SE−100M」)及びアスピレーター(アルバック機工株式会社製、製品名「MDA−050」)を使用して、蒸留処理を行った。濃縮液を400mL用意し、蒸留液(第1の溶液)の液量が79mL、中留液の液量が25mL、及び濃縮液の残留液(残留液、第2の溶液)の液量が296mL(初期量を基準として74%量)となったところで一旦蒸留を停止し、第1の溶液、中留液及び残留液のそれぞれについてアンモニウムイオン濃度を測定した。同様に濃縮液の残留量が50%及び25%となる時点で蒸留を停止し、第1の溶液、中留液及び濃縮液のそれぞれについてアンモニウムイオン濃度とカリウムイオン濃度を測定した。結果を表5に示す。
Figure 2019131432
表5から、最初の段階の蒸留液(濃縮液の残留量:74%となった時点での蒸留液)には、アンモニウムイオンが濃縮(濃縮液における窒素成分濃度を基準として3.56倍(=3.49÷0.98)に濃縮)されることが確認された。また、最後の段階の残留液(濃縮液の残留量:25%となった時点での残留液)には、アンモニウムイオンが観測されずに、カリウムイオンが濃縮(濃縮液におけるカリウム成分濃度を基準として4.96倍(=3.97÷0.80)に濃縮)されていることが確認された。このように、蒸留操作によって、濃縮液から窒素成分とカリウム成分とを分離濃縮できることが確認された。なお、中留液に関しては、窒素濃度が十分低く環境基準を満たす場合、放流水とすることができ、窒素濃度が高い場合には、上述の限外濾過処理、及び電気透析処理の原料となる消化液又は膜透過液に混合してもよい。
以上のとおり、有機物の消化液から、リン成分、カリウム成分及び窒素成分をそれぞれ個別に濃縮された分散液又は溶液として分離回収できることが確認された。したがって、上記の分散液、第1の溶液及び第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを、土壌及び植物等の種類に応じた適切な割合で用いることにより、所望の肥料成分を含む液状肥料を得ることができる。
4…限外濾過ユニット、5…微粉砕処理器、6…電気透析ユニット、8…蒸留塔、50…第一処理部、60…第二処理部、70…第三処理部、80…第四処理部、100…システム。

Claims (9)

  1. 有機物の消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が前記消化液よりも高い分散液と、を得る第一工程、
    前記膜透過液を電気透析処理して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二工程、
    前記濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が前記濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が前記濃縮液よりも低い第2の溶液と、を得る第三工程、並びに、
    前記分散液、前記第1の溶液及び前記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四工程、を備える、液状肥料の製造方法。
  2. 前記第一工程では、限外濾過処理して得られる前記分散液に含まれる前記汚泥を微粉砕処理する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記消化液が、嫌気性発酵又は好気性発酵の消化液である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第四工程では、前記分散液、前記第1の溶液及び前記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを硝化処理して、前記液状肥料を得る、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 有機物の消化液から肥料成分を分離濃縮して回収するシステムであって、
    前記消化液を限外濾過処理して、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、リン成分及び汚泥を含み、リン成分の濃度が前記消化液よりも高い分散液と、を得る第一処理部と、
    前記膜透過液を電気透析処理して、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い濃縮液を得る第二処理部と、
    前記濃縮液を蒸留処理して、窒素成分の濃度が前記濃縮液よりも高い第1の溶液と、カリウム成分を含み、窒素成分の濃度が前記濃縮液よりも低い第2の溶液と、を得る第三処理部と、を具備する、システム。
  6. 前記第一処理部が、限外濾過処理して得られる前記分散液に含まれる前記汚泥を微粉砕処理する微粉砕手段を備える、請求項5に記載のシステム。
  7. 前記消化液が、嫌気性発酵又は好気性発酵の消化液である、請求項5又は6に記載のシステム。
  8. 前記第三処理部の下流側に、前記分散液、前記第1の溶液及び前記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを硝化処理する硝化処理部をさらに具備する、請求項5〜7のいずれか一項に記載のシステム。
  9. 前記分散液、前記第1の溶液及び前記第2の溶液から選ばれる少なくとも一つを含む液状肥料を得る第四処理部を更に具備する、請求項5〜8のいずれか一項に記載のシステム。
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