JP2019130286A - 有床義歯の製造方法 - Google Patents

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佐智乃 磯部
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Abstract

【課題】技工士の作業負担を軽減しつつより容易に有床義歯を作製する。【解決手段】有床義歯10の製造方法は、造形空間48を有する被加工物成形用型40を準備すること、第1棒部材17および第2棒部材18を被加工物成形用型40に取り付けること、造形空間48に人工歯型25および人工歯15を配置すること、造形空間48に義歯床用材料8を注入すること、第1棒部材17および第2棒部材18の上方かつ被加工物成形用型40の開口46の一部を塞ぐように板状部材58を配置すること、義歯床用材料8を重合して被加工物5を成形すること、被加工物5の重合された義歯床用材料8Aの一部を切削装置60によって切削し、棒部材付き有床義歯10Aを作製すること、棒部材付き有床義歯10Aから第1棒部材17および第2棒部材18を取り除いて有床義歯10を作製すること、を包含する。【選択図】図2

Description

本発明は、有床義歯の製造方法に関する。
従来から、歯科用セラミック材料や歯科用樹脂材料等の被加工物を所望の形状に切削することによって、義歯床を作製することが行われている。義歯床の作製は、技工士によって手作業で行われたり、コンピュータ支援設計(Computer-aided design:CAD)およびコンピュータ支援製造(Computer aided manufacturing:CAM)技術の導入により、コンピュータで設計されたデータに基づいて切削装置によって行われたりしている。
ここで、有床義歯の作製を切削装置によって行う場合、従来では、歯科用樹脂材料として市販されている円板状の材料から加工された義歯床に、技工士が手作業によって接着剤を用いて各人工歯を固定している。人工歯は、一つ一つ嵌め込む必要があるため多大な時間を要する。また、人工歯を固定するときには、対合歯に対する位置合わせが非常に重要であり、技工士には高度な技術が要求される。このように、円板状の材料から加工する有床義歯の作製時には技工士への負担が大きかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、技工士の作業負担を軽減しつつ、より容易に有床義歯を作製することができる製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、切削装置を使用して、義歯床と前記義歯床に配置された人工歯とを備えた有床義歯を製造する製造方法である。前記製造方法は、義歯床に配置された人工歯の歯型を表す人工歯型の3次元データを準備する3次元データ準備工程と、前記人工歯型の3次元データに基づいて、人工歯型を造形する造形工程と、底壁と前記底壁から上方に延びた側壁とによって囲まれた造形空間を有する被加工物成形用型を準備する準備工程と、前記切削装置に直接的または間接的に取り付けられる保持部材を前記造形空間に配置する取付工程と、前記人工歯型を前記造形空間の前記底壁に配置し、前記人工歯型に、歯根の方を上側に向けて人工歯を配置する第1配置工程と、義歯床用材料を前記造形空間に注入し、前記義歯床用材料を硬化させることによって、前記人工歯型と前記人工歯と前記義歯床用材料の硬化物と前記保持部材とが一体化された被加工物を得る一体化工程と、前記被加工物を前記被加工物成形用型から取り外す取り外し工程と、前記保持部材を介して前記被加工物を前記切削装置に取り付け、前記切削装置によって前記硬化物の一部を切削するとともに、前記被加工物から前記人口歯型を取り外す第1作製工程と、前記第1作製工程の後、前記被加工物から前記保持部材を切り離す第2作製工程と、を包含する。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、義歯床と前記義歯床に配置された人工歯とを備えた有床義歯を製造する製造方法である。前記製造方法は、前記義歯床の3次元データ、前記義歯床に配置された前記人工歯の3次元データ、および、前記義歯床に配置された前記人工歯の歯型である人工歯型の3次元データを準備する3次元データ準備工程と、前記人工歯型の3次元データに基づいて、前記人工歯型を造形する造形工程と、底壁と、前記底壁から上方に延び、相互に対向する第1側壁および第2側壁と、前記底壁から上方に延び、相互に対向しかつ前記第1側壁および前記第2側壁とそれぞれ接続された第3側壁および第4側壁と、前記底壁に対向する開口と、前記底壁と前記第1側壁と前記第2側壁と前記第3側壁と前記第4側壁とによって囲まれた造形空間とを有する被加工物成形用型を準備する準備工程と、棒状に形成された第1棒部材を前記1側壁のうち前記造形空間を区画する部分にその軸線が前記第3側壁から前記第4側壁に向けて延びるように取り付けて前記開口の一部を塞ぎ、かつ、棒状に形成された第2棒部材を前記2側壁のうち前記造形空間を区画する部分にその軸線が前記第3側壁から前記第4側壁に向けて延びるように取り付けて前記開口の一部を塞ぐ取付工程と、造形された前記人工歯型を前記造形空間に配置し、前記人工歯の3次元データに基づいて作製された前記人工歯を前記人工歯型に配置する第1配置工程と、前記造形空間に義歯床用材料を注入する注入工程と、前記義歯床用材料を重合し、前記人工歯型と前記人工歯と重合された前記義歯床用材料と前記第1棒部材と前記第2棒部材とを有する被加工物を成形する成形工程と、前記被加工物を前記被加工物成形用型から取り外す取り外し工程と、前記被加工物の前記人工歯型と重合された前記義歯床用材料の一部とを切削装置によって切削し、前記第1棒部材および前記第2棒部材を有する棒部材付き有床義歯を作製する第1作製工程と、前記棒部材付き有床義歯から前記第1棒部材および前記第2棒部材を取り除いて有床義歯を作製する第2作製工程と、を包含する。
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、造形空間に配置された人工歯型に人工歯を配置し、人工歯型および人工歯が造形空間に存在する状態において、造形空間に義歯床用材料を注入する。そして、義歯床用材料を重合させることによって、義歯床用材料と人工歯とが強固に接着される。このように、義歯床と人工歯との接着を義歯床用材料の重合によって一括して行うことができるため、技工士は人工歯を一つ一つ接着剤を用いて義歯床に固定する必要がない。即ち、技工士の作業負担が軽減される。なお、人工歯を人工歯型に配置するときには、接着剤等は用いられず、例えば、人工歯型に形成された凹部(くぼみ)に人工歯を嵌め込む。また、被加工物のうち重合された義歯床用材料を切削装置によって切削するため、技工士の作業負担が軽減される。
本発明の一実施形態に係る被加工物成形用型は、切削装置によって切削される有床義歯製造用の被加工物を成形するために用いられる。前記被加工物は、前記切削装置の切削保持部に直接的または間接的に保持される保持部材と、前記切削装置の切削部によって切削され、義歯床が成形される義歯床用材料の硬化物と、義歯床に配置された人工歯の歯型を表す人工歯型と、前記人工歯型に配置された人工歯と、を備える。前記被加工物成形用型は、底壁と前記底壁から上方に延びた側壁とによって囲まれ、前記義歯床用材料が注入される造形空間を有する。前記造形空間には、前記保持部材を配置する保持空間と、前記人口歯型および前記人工歯を配置する配置空間と、が区画されている。
本発明の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、切削装置によって切削される有床義歯製造用の被加工物を成形するために用いられる。前記被加工物は、前記切削装置の切削保持部に直接的または間接的に保持される保持部材と、前記切削装置の切削部によって切削され、義歯床が成形される義歯床用材料の硬化物と、義歯床に配置された人工歯の歯型を表す人工歯型と、前記人工歯型に配置された人工歯と、を備える。前記有床義歯製造キットは、底壁と前記底壁から上方に延びた側壁とによって囲まれ、義歯床用材料が注入される造形空間を有し、かつ、前記造形空間には、前記保持部材を配置する保持空間と、前記人口歯型および前記人工歯を配置する配置空間と、が区画されている被加工物成形用型と、前記保持部材と、を備えている。また、本発明の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、前記被加工物成形用型と、前記保持部材と、前記人工歯型を作成するための切削材と、を備えている。また、本発明の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、前記被加工物成形用型と、前記保持部材と、前記切削装置の前記切削保持部に前記被加工物を取り付けるときに前記保持部材と前記切削装置との間に介在されるアダプタと、を備えている。
本発明によれば、技工士の作業負担を軽減しつつより容易に有床義歯を作製することができる製造方法を提供することができる。
一実施形態に係る有床義歯を示す斜視図である。 一実施形態に係る有床義歯を製造する手順を示したフローチャートである。 一実施形態に係る人工歯型を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物成形用型を示す平面図である。 一実施形態に係る第1棒部材を示す平面図である。 一実施形態に係る第2棒部材を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物成形用型に第1棒部材および第2棒部材が取り付けられた状態を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物成形用型に人工歯型を配置した状態を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物成形用型に配置された人工歯型に人工歯を配置した状態を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物成形用型に板状部材が配置された状態を示す平面図である。 一実施形態に係る被加工物を示す平面図である。 一実施形態に係る棒部材付き有床義歯を示す平面図である。 一実施形態に係るアダプタに被加工物が取り付けられた状態を示す平面図である。 一実施形態に係るアダプタの本体部の平面図である。 一実施形態に係る本体部に被加工物が保持された状態を示す平面図である。 一実施形態に係るアダプタの保持板の平面図である。 一実施形態に係る切削装置の斜視図である。 一実施形態に係る切削装置の正面図であり、カバーを開けた状態を示す図である。 一実施形態に係るツールマガジンの斜視図である。 一実施形態に係る回転支持部材およびクランプの斜視図である。 一実施形態に係る切削装置のブロック図である。 他の一実施形態に係る被加工物成形用型を示す平面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る有床義歯の製造方法について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係る有床義歯10を示す斜視図である。有床義歯10は、義歯床20と、義歯床20に配置された人工歯15とを備えている。人工歯15は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ジルコニア、グラスセラミックス、グラスファイバー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)およびハイブリッドレジン等の各種材料から形成されている。義歯床20は、後述する義歯床用材料から形成されている。
図2は、本実施形態に係る有床義歯10を製造する手順を示したフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る有床義歯10の製造方法(以下、有床義歯製造方法とする。)は、義歯床製造キット、人工歯型、人工歯および切削装置60(図17参照)を使用して、有床義歯10を製造する方法である。詳しくは、有床義歯製造方法は、義歯床製造キットを用いて成形された被加工物5(図11参照)を切削装置60によって所望の形状に切削することで、有床義歯10を製造する方法である。本実施形態の有床義歯製造方法は、3次元データ準備工程S10と、造形工程S20と、準備工程S30と、取付工程S40と、第1配置工程S50と、注入工程S60と、第2配置工程S70と、成形工程S80と、取り外し工程S90と、第1作製工程S100と、第2作製工程S110とを包含する。3次元データ準備工程S10から取り外し工程S90までは、被加工物5を成形する工程である。第1作製工程S100と第2作製工程S110とは、被加工物5を加工する工程である。なお、第2配置工程S70は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。以下、各工程について詳述する。
まず、3次元データ準備工程S10では、有床義歯10のSTL(Standard Triangulated Language)データを準備する。即ち、義歯床20の3次元データ、義歯床20に配置された人工歯15の3次元データおよび義歯床20に配置された人工歯15の歯型である人工歯型25(図3参照)の3次元データを準備する。これらの3次元データは、例えば、コンピュータ支援設計装置(以下、CAD装置ともいう。)によって作成され得る。なお、義歯床20の3次元データは、例えば、医者や技工士などが口腔内スキャナで患者の口腔内をスキャンして、患者の残存歯と欠損歯部分の顎堤粘膜との形状を表すスキャンデータを取得し、このスキャンデータに基づいて作成される。義歯床20の3次元データは、通常、患者ごとに作成される。ただし、有床義歯10の用途などによっては、市販されている模擬的なデータを採用することもできる。人工歯15の3次元データは、市販されている人工歯のデータを採用することができる。人工歯型25の3次元データは、義歯床20のデータと人工歯15のデータとに基づいて作成される。人工歯型25の3次元データは、例えば、義歯床20のデータと人工歯15のデータとを合成した3次元データを、人工歯15が延びる方向に垂直な任意の断面で切断することによって作成される。
次に、造形工程S20では、3次元データ準備工程S10で準備された人工歯型25の3次元データに基づいて、人工歯型25を造形する。人工歯型25は、例えば、別途用意した三次元造形装置(3Dプリンタ)等によって造形される。人工歯型25の材料は特に限定されないが、例えば、石膏や重合レジン等が挙げられる。人工歯型25は、例えば、アクリル系樹脂(アクリル系ポリマーとメタクリル系ポリマーとを包含する。以下同じ。)から形成されていてもよい。人工歯型25の材料は、例えばPMMAであってもよい。人工歯型25の材料は、例えば、後述する義歯床用材料と同種の樹脂材料であってもよい。また、人工歯型25は、例えば、上記した材料からなる板状の切削材料を、後述する切削装置60で切削することによって、作成することもできる。板状の切削材料は、義歯床製造キットに含まれ得る。図3に示すように、造形された人工歯型25には、人工歯15の先端部分(即ち、対合歯と接する部分)を嵌め込むための凹部25Aが形成されている。凹部25Aは、例えば、2mm〜5mm程度の深さを有するとよい。これにより、例えば前歯のように湾曲した形状の人工歯15であっても、安定して凹部25Aに嵌め込むことができる。
次に、準備工程S30では、被加工物成形用型40を準備する。図4は、被加工物成形用型40の平面図である。被加工物成形用型40は、後述する保持部材、例えば、第1棒部材17(図5参照)および第2棒部材18(図6参照)を取り付けた状態で造形空間48に義歯床用材料(義歯床用樹脂組成物または義歯床用レジン組成物ともいう。)を注入することで、被加工物5を成形する型枠である。被加工物成形用型40は、熱耐性および離型性を有する材料から形成されている。被加工物成形用型40は、例えば、シリコーン樹脂(シロキサン結合(−Si−O−Si−)を主骨格とする高分子化合物。以下同じ。)から形成されている。本実施形態の被加工物成形用型40は、上顎用の有床義歯10の製造に用いられる。被加工物成形用型40は、義歯床製造キットに含まれ得る。なお、図面中のF、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味する。ただし、これらの方向は、便宜上定めた方向であり、本発明および本実施形態を何ら限定するものではない。
図4に示すように、被加工物成形用型40は、底壁45と、第1側壁41と、第2側壁42と、第3側壁43と、第4側壁44とを備えている。底壁45には、底壁から上方に延びる突条部45Aが形成されている。突条部45Aの底壁45からの高さは、第1側壁41〜第4側壁44の底壁45からの高さより低い。第1側壁41は、底壁45の後部から上方に延びる。第2側壁42は、底壁45の前部から上方に延びる。第1側壁41および第2側壁42は、相互に対向している。第3側壁43は、底壁45の左部から上方に延びる。第3側壁43は、第1側壁41の左端と第2側壁42の左端とを接続する。第3側壁43は、第4側壁44から離れる方向に湾曲している。第4側壁44は、底壁45の右部から上方に延びる。第4側壁44は、第1側壁41の右端と第2側壁42の右端とを接続する。第4側壁44は、第3側壁43から離れる方向に湾曲している。第3側壁43および第4側壁44は、相互に対向している。第1側壁41の上面41Aと、第2側壁42の上面42Aと、第3側壁43の上面43Aと、第4側壁44の上面44Aとは面一に形成されている。即ち、上面41A〜44Aの底壁45からの高さは相互に同じである。第1側壁41〜第4側壁44は、底壁45から上方に延びた側壁の一例である。
図4に示すように、被加工物成形用型40は、開口46と造形空間48とを備えている。開口46は、底壁45と対向する位置に形成されている。即ち、被加工物成形用型40は、上部が開口している。造形空間48は、底壁45と、第1側壁41と、第2側壁42と、第3側壁43と、第4側壁44とによって囲まれた空間である。造形空間48は、ここでは有床義歯10に対応した形状を有している。造形空間48は、ここでは平面視で略U字形状に形成されている。造形空間48の底壁45の一部は、人工歯型25と人工歯15とを配置するための配置空間として区画されている。造形空間48には、後述する義歯床用材料が注入される。
図4に示すように、被加工物成形用型40は、第1凸部51と、第2凸部52と、第3凸部53とを備えている。第1凸部51は、第1側壁41に形成されている。第1凸部51は、第2側壁42に向けて突出している。第1凸部51は、上下方向に延びる。第1凸部51は、第1側壁41の略中央に形成されている。第1凸部51には、後述する第1棒部材17の第1凹部17Aが係合される。第2凸部52および第3凸部53は、第2側壁42に形成されている。第2凸部52および第3凸部53は、第1側壁41に向けて突出している。第2凸部52および第3凸部53は、上下方向に延びる。第2凸部52は、第3凸部53より左方に形成されている。第2凸部52は、第1凸部51より左方に位置する。第3凸部53は、第1凸部51より右方に位置する。第2凸部52および第3凸部53には、後述する第2棒部材18の第2凹部18Aおよび第3凹部18Bが係合される。なお、ここでは第1側壁41に1つの凸部(第1凸部51)が形成され、第2側壁42に2つの凸部(第2凸部52および第3凸部53)が形成され、被加工物成形用型40が合計3つの凸部を有しているが、凸部の位置や数は、例えば第1棒部材17および第2棒部材18の形状等に応じて、適宜変更することができる。
図4に示すように、被加工物成形用型40は、第1段差部54と、第2段差部55とを備えている。第1段差部54および第2段差部55は、後述する保持部材を配置するための保持空間を区画している。第1段差部54は、第1側壁41に形成されている。第1段差部54は、造形空間48を区画する。第1段差部54は、第1側壁41の上面41Aより下方に位置する。第1段差部54は、底壁45より上方に位置する。第1段差部54は、突条部45Aより上方に位置する。第1段差部54の表面は平坦である。第1段差部54には、後述する第1棒部材17が配置される。第1段差部54は、第1棒部材17を水平に支持する。第1段差部54の左右方向の長さL54は、第1棒部材17の左右方向の長さL17と同じである。第2段差部55は、第2側壁42に形成されている。第2段差部55は、造形空間48を区画する。第2段差部55は、第2側壁42の上面42Aより下方に位置する。第2段差部55は、底壁45より上方に位置する。第2段差部54は、突条部45Aより上方に位置する。第2段差部55の底壁45からの高さは、第1段差部54の底壁45からの高さと同じである。第1段差部54の表面と第2段差部55の表面とは同一平面内にある。第2段差部55の表面は平坦である。第2段差部55には、後述する第2棒部材18が配置される。第2段差部55は、第2棒部材18を水平に支持する。第2段差部55の左右方向の長さL55は、第2棒部材18の左右方向の長さL18と同じである。第1段差部54の左右方向の長さL54は、第2段差部55の左右方向の長さL55よりも長い。第2段差部55には、溝55Aが形成されている。溝55Aは造形空間48と連通している。なお、ここでは段差部が2つであるが、段差部の数は、例えば保持部材の数や形状等に応じて、適宜変更することが可能である。
次に、取付工程S40では、保持部材を被加工物成形用型40に取り付ける。ここでは、第1棒部材17および第2棒部材18を被加工物成形用型40に取り付ける。第1棒部材17および第2棒部材18は、切削装置60に間接的に取り付けられる保持部材の一例である。第1棒部材17および第2棒部材18は、切削装置60によって被加工物5が切削されている際に、被加工物5が折れたり動いたりしないような大きさおよび形状を有する。第1棒部材17と第2棒部材18とは、ここでは外形が異なっている。図5に示すように、第1棒部材17は、棒状(板状、円筒状、楕円状、直方体状、山状、半月状、波状等を包含する。以下同じ。)に形成されている。第1棒部材17および第2棒部材18は、第1作製工程S100で被加工物5の固定力を高める観点から、少なくとも一対の平坦面を有していてもよい。ここでは、第1棒部材17および第2棒部材18は、上面および下面がいずれも平坦である。第1棒部材17には、第1側壁41に形成された第1凸部51(図4参照)と係合する第1凹部17Aが形成されている。第1凹部17Aは、第1棒部材17の上下方向の全体に亘って形成されている。第1凹部17Aは、第1棒部材17の左右方向の略中央に形成されている。図6に示すように、第2棒部材18は、棒状に形成されている。第2棒部材18には、第2側壁42に形成された第2凸部52(図4参照)と係合する第2凹部18Aと、第2側壁42に形成された第3凸部53(図4参照)と係合する第3凹部18Bとが形成されている。第2凹部18Aおよび第3凹部18Bは、第2棒部材18の上下方向の全体に亘って形成されている。第2凹部18Aは、第2棒部材18の左部に形成されている。第3凹部18Bは、第2棒部材18の右部に形成されている。なお、ここでは第1棒部材17に1つの凹部(第1凹部17A)が形成され、第2棒部材18に2つの凹部(第2凹部18Aおよび第3凹部18Bが形成されているが、凹部の数や位置は適宜変更することができる。被加工物5の左右方向の区別を容易にする観点からは、第1棒部材17の凹部の数と第2棒部材18の凹部の数とが異なっているとよい。
第1棒部材17および第2棒部材18は、例えば、樹脂材料から形成されている。第1棒部材17および第2棒部材18は、例えば、アクリル系樹脂から形成されている。第1棒部材17および第2棒部材18は、ここではPMMAから形成されている。第1棒部材17および第2棒部材18には、材質を表す表示がなされている。第1棒部材17および第2棒部材18は、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等から形成されていてもよい。第1棒部材17および第2棒部材18は、金属材料から形成されていてもよい。第1作製工程S100で被加工物5の固定力を高める観点から、第1棒部材17の左右方向の長さL17と、第2棒部材18の左右方向の長さL18とは、それぞれ、概ね1cm以上、好ましくは2cm以上、例えば3cm以上、さらには4cm以上であるとよい。また、ここでは、第1棒部材17の左右方向の長さL17が第2棒部材18の左右方向の長さL18よりも長い。ただし、第1棒部材17および第2棒部材18の左右方向の長さは同じであってもよい。第1棒部材17および第2棒部材18は、義歯床製造キットに含まれ得る。
図7に示すように、第1棒部材17は、第1側壁41の第1段差部54にその軸線17Xが第3側壁43から第4側壁44に向けて延びるように取り付けられる。第1棒部材17は、第1側壁41の第1凸部51に取り付けられる。第1棒部材17は、開口46の一部を塞ぐ。第1棒部材17の上面は、例えば、被加工物成形用型40に取り付けられたとき、第1側壁41の上面41Aと面一になる。第1棒部材17の上面は、造形空間48の上面の一部を構成する。第1棒部材17は、造形空間48の一部に配置される。また、第2棒部材18は、第2側壁42の第2段差部55にその軸線18Xが第3側壁43から第4側壁44に向けて延びるように取り付けられる。第2棒部材18は、第2側壁42の第2凸部52および第3凸部53に取り付けられる。第2棒部材18は、開口46の一部を塞ぐ。第2棒部材18の上面は、例えば、被加工物成形用型40に取り付けられたとき、第2側壁42の上面42Aと面一になる。第2棒部材18の上面は、造形空間48の上面の一部を構成する。第2棒部材18は、造形空間48の一部に配置される。
次に、第1配置工程S50では、図8に示すように、造形工程S20において造形された人工歯型25を被加工物成形用型40の造形空間48に配置する。人工歯型25は、被加工物成形用型40の底壁45上の予め定められた配置空間に配置される。そして、図9に示すように、人工歯15の3次元データに基づいて作製された人工歯15を人工歯型25の凹部25Aにそれぞれ配置する。人工歯15は、歯根の方を上側に向けて凹部25Aに配置される。言い換えれば、人工歯15は、歯冠の方(対合歯と接する方)を下側に向けて凹部25Aに配置される。なお、人工歯15を凹部25Aに配置するときには、接着剤等は用いず、人工歯15を凹部25Aに嵌め込むだけでよい。
次に、注入工程S60では、被加工物成形用型40の造形空間48に義歯床用材料8(図10参照)を注入する。即ち、人工歯型25および人工歯15が配置された造形空間48に義歯床用材料8を注入する。典型的には、義歯床用材料8を開口46から造形空間48に充填する。義歯床用材料8としては、従来から義歯床を成形するのに用いられる公知の材料を適宜用いることができる。義歯床用材料8は、典型的には歯科用硬化性組成物である。義歯床用材料8としては、例えば、義歯床用レジンや歯科用ワックスが挙げられる。義歯床用レジンとしては、例えば、65℃未満の温度で重合が開始される常温重合レジン、65℃以上の加熱にて重合が開始される加熱重合レジン、光照射によって重合が開始される光重合レジン等が挙げられる。なかでも、加熱重合レジンに比べて重合時の収縮率が小さいことや、比較的安価で入手容易なこと等から、常温重合レジンが好ましい。
義歯床用レジンの一例として、アクリル系レジンが挙げられる。日本工業規格JIS T6501:2012に規定されるように、アクリル系レジンは、例えば、(1)メタクリル酸エステルの単独重合体およびメタクリル酸エステルを含む共重合体のうちの少なくとも一方を主成分(質量比で最も割合の高い成分。以下同じ。)とする粉末、(2)メタクリル酸エステルの単量体を主成分とする液体、または(1)と(2)との混合物である。アクリル系レジンは、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体を主成分とする粉末と、メタクリル酸メチル(MMA)を主成分とする液体と、の組合せであってもよい。アクリル系レジンは、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を主成分とする粉末と、メタクリル酸メチル(MMA)を主成分とする液体と、の組合せであってもよい。また、義歯床用レジンは、例えばポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリエステル系等の熱可塑性レジンであってもよい。義歯床用レジンは、上記以外の成分、例えば、反応開始剤、着色剤、安定剤、可塑剤、滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含んでいてもよい。
造形空間48に注入される義歯床用材料8の量は特に限定されない。造形空間48に注入される義歯床用材料8の量は、人工歯型25および人工歯15が完全に埋没する量である。造形空間48に注入される義歯床用材料8の量は、例えば、底壁45の表面から第1棒部材17および第2棒部材18の下面より上方に位置する量である。造形空間48に注入される義歯床用材料8の量は、例えば、底壁45の表面から第1棒部材17および第2棒部材18の上面より下方に位置する量である。造形空間48に注入される義歯床用材料8の量は、例えば、第1側壁41〜第4側壁44の上面41A〜44Aよりわずかに上方に位置する量である。なお、義歯床用材料8は、第1棒部材17および第2棒部材18の上には配置されない。
一実施形態では、被加工物成形用型40の造形空間48に義歯床用材料8が注入された後、所定の時間待機する。ここで、所定の時間とは、造形空間48内の義歯床用材料が餅状(dough)化する時間、例えば義歯床用材料の表面が部分的に硬化する時間である。所定の時間は、造形空間48に義歯床用材料8を注入し終えた後からの経過時間である。所定の時間は、義歯床用材料8の種類によって適宜設定される時間であり、例えば、10分〜60分程度である。
次に、第2配置工程S70では、被加工物成形用型40に板状部材58を配置する。より詳細には、図10に示すように、板状部材58は、第1棒部材17および第2棒部材18の上方に配置される。板状部材58は、平面視で、第1棒部材17および第2棒部材18と重なる。板状部材58は、開口46の一部を塞ぐ。即ち、被加工物成形用型40に板状部材58が配置された状態において、開口46の一部は塞がれていない。被加工物成形用型40に板状部材58が配置された状態において、義歯床用材料8の一部は外部に露出している。これにより、後述する成形工程S80において、義歯床用材料8が重合されるときに発生し得る気泡が造形空間48に留まりにくくなる。言い換えれば、気泡が被加工物成形用型40の外部に排出されやすくなる。板状部材58は、ここでは上面および下面が平坦な平板状である。板状部材58は、第1棒部材17および第2棒部材18を覆うことができる大きさに形成されている。板状部材58の前後方向の長さL1は、例えば、被加工物成形用型40の前後方向の長さL2より長い。板状部材58は、第1棒部材17および第2棒部材18を被加工物成形用型40に押し付ける機能を有する。これにより、第1棒部材17および第2棒部材18が被加工物成形用型40に対して移動することを抑制することができる。板状部材58は、例えば、第1棒部材17および第2棒部材18の全体を均一な力で被加工物成形用型40に押し付ける機能を有する。板状部材58は、例えば、被加工物成形用型40と同種の樹脂材料で形成されている。これにより、例えば加熱時にも、被加工物成形用型40との熱膨張の不整合が生じにくくなり、第1棒部材17および第2棒部材18をより安定的に被加工物成形用型40に押し付けることができる。板状部材58は、例えば、シリコーン樹脂から形成されている。なお、板状部材58上にさらに重石を載せてもよい。これにより、第1棒部材17および第2棒部材18を被加工物成形用型40により確実に押し付けることができ、第1棒部材17および第2棒部材18が移動することをよりよく抑制することができる。板状部材58は、義歯床製造キットに含まれ得る。
次に、成形工程S80では、義歯床用材料8を硬化させて、人工歯型25と人工歯15と義歯床用材料8の硬化物と保持部材とを一体化させる。ここでは、義歯床用材料8を重合し、人工歯型25と人工歯15と重合された義歯床用材料(すなわち重合体)8Aと第1棒部材17と第2棒部材18とを有する被加工物5(図11参照)を成形する。重合された義歯床用材料8Aは、切削装置60によって切削される部位であり、切削することで義歯床20となる部位である。第1棒部材17と第2棒部材18とは、切削加工時に、アダプタ30(図13参照)を介して後述するクランプ66(図20参照)に保持される部位である。
義歯床用材料8の重合は、例えば、加圧加熱式の重合器によって行われる。具体的には、造形空間48に義歯床用材料8が注入され、板状部材58が配置された被加工物成形用型40を重合器内に配置した状態で、重合器内に水を注入した後に加圧重合を行う。重合器に注入される水の量は、例えば、その水位が被加工物成形用型40の上面(即ち第1側壁41の上面41A等)より下方になるような量である。重合器に注入される水の量は、例えば、その水位が第1段差部54および第2段差部55より上方になるような量である。成形工程S80では、造形空間48に注入された義歯床用材料8に水が浸入しないようにする。また、例えば義歯床用材料8が常温重合レジンの場合、重合器内の水は、室温よりも高い温度、例えば、30℃〜60℃程度にまで加温してもよい。例えば義歯床用材料8が加熱重合レジンの場合、重合器内の水は、65℃以上、例えば、65℃〜80℃程度にまで加温してもよい。また、重合器内の加圧条件は、概ね0.01MPa〜0.5MPa、例えば0.1MPa〜0.3MPaとしてもよい。義歯床用材料8の重合は、例えば、30分〜60分程度で完了する。義歯床用材料8を重合することによって、義歯床用材料8と人工歯15とが強固に接着される。また、義歯床用材料8と第1棒部材17および第2棒部材18とが強固に接着される。これにより、人工歯型25と人工歯15と重合された義歯床用材料8Aと第1棒部材17と第2棒部材18とを有する被加工物5が成形される。なお、注入工程S60から成形工程S80までは、人工歯型25と人工歯15と重合された義歯床用材料8Aと第1棒部材17と第2棒部材18とが一体化された被加工物5を得る一体化工程S120としても把握され得る。
次に、取り外し工程S90では、被加工物成形用型40の造形空間48から被加工物5を取り外す。被加工物成形用型40は、重合された義歯床用材料8Aに対して離型性を有する。このため、例えば技工士が被加工物成形用型40を手で撓ませることによって、被加工物成形用型40から被加工物5を容易に取り外すことができる。図10に示すように、被加工物5は、人工歯型25と人工歯15と重合された義歯床用材料8Aと第1棒部材17と第2棒部材18とを有する。重合された義歯床用材料8Aには、被加工物成形用型40の第2段差部55に形成された溝55Aに対応する係合突起8Bが形成されている。係合突起8Bは、第2棒部材18の下方に位置する。
次に、第1作製工程S100では、被加工物5の重合された義歯床用材料8Aの一部を切削装置60(図17参照)によって切削し、第1棒部材17および第2棒部材18を有する棒部材付き有床義歯10A(図12参照)を作製する。
図13に示すように、本実施形態では、被加工物5は、第1棒部材17および第2棒部材18を介してアダプタ30に取り付けられた状態で、切削装置60によって切削される。アダプタ30は、本体部32と、保持板37とを備えている。図14に示すように、本体部32は、被加工物5の第1棒部材17が嵌め込まれる第1部分32Aと、被加工物5の第2棒部材18が嵌め込まれる第2部分32Bと、第1部分32Aの左端と第2部分32Bの左端とを接続する第3部分32Cと、第1部分32Aの右端と第2部分32Bの右端とを接続する第4部分32Dと、を有している。本体部32は、被加工物5を保持する。第1部分32Aの左右方向の長さL32Aは、第1棒部材17の左右方向の長さL17と同じかそれよりも長い。第2部分32Bの左右方向の長さL32Bは、第2棒部材18の左右方向の長さL18と同じかそれよりも長い。第1棒部材17の左右方向の長さL17と、第2棒部材18の左右方向の長さL18とは、それぞれ、本体部32の左右方向の長さL32の概ね1/5以上、好ましくは1/4以上、例えば1/3以上であるとよい。これにより、切削加工時に本体部32によって被加工物5がより安定的に保持される。第1部分32Aおよび第2部分32Bは、第3部分32Cおよび第4部分32Dより下方に位置する。第1部分32A〜第4部分32Dの内部には、開口32Hが形成されている。開口32H内に被加工物5が配置される。第1部分32Aの左右方向の長さは、第2部分32Bの左右方向の長さよりも長い。これにより、前後方向を間違った状態では被加工物5をアダプタ30に取り付けることができなくなり、取り付けのミスが防止される。
第1部分32Aには、第2部分32Bから離れる方向に凹む2つの凹部32AXが形成されている。第1部分32Aには、保持板37と本体部32とを締結するねじ33(図13参照)が挿入されるねじ孔34が形成されている。第2部分32Bには、第1部分32Aから離れる方向に凹む凹部32BXが形成されている。凹部32BXには、被加工物5の係合突起8B(図11参照)が嵌め込まれる。凹部32BXは、被加工物成形用型40の溝55Aに対応した形状を有する。第2部分32Aには、保持板37と本体部32とを締結するねじ33(図13参照)が挿入される2つのねじ孔34が形成されている。ねじ33を合計3箇所で締結することにより、被加工物5を高い安定性で固定することができる。アダプタ30は、義歯床製造キットに含まれ得る。
図14に示すように、本体部32に被加工物5が保持されたとき、被加工物5の第1棒部材17と本体部32の第1部分32Aのねじ孔34とは、平面視で重ならない。詳細には、平面視で、第1棒部材17の第1凹部17A内にねじ孔34が配置される。また、本体部32に被加工物5が保持されたとき、被加工物5の第2棒部材18と本体部32の第2部分32Bの2つのねじ孔34とは、平面視で重ならない。詳細には、平面視で、第2棒部材18の第2凹部18A内および第3凹部18B内にねじ孔34がそれぞれ配置される。
図15に示すように、保持板37は内部に開口37Hを有する円板状に形成されている。保持板37は、本体部32に着脱自在に取り付けられる。保持板37は、本体部32に取り付けられたとき、平面視で第1棒部材17および第2棒部材18と重なる。保持板37は、第1棒部材17および第2棒部材18を押さえる。開口37H内に被加工物5が配置される。保持板37は、第1棒部材17を押さえる第1部分37Aと、第2棒部材18を押さえる第2部分37Bと、本体部32の第3部分32Cと対向する第3部分37Cと、本体部32の第4部分32Dと対向する第4部分37Dとを有している。第1部分37Aおよび第2部分37Bには、保持板37と本体部32とを締結するねじ33(図13参照)が挿入されるねじ孔38が形成されている。
次に、第1作製工程において使用される切削装置60について説明する。図17は、切削装置60の斜視図である。図18は、切削装置60の正面図であり、カバー62を開けた状態を示す図である。図19は、ツールマガジン64の斜視図である。図20は、回転支持部材65およびクランプ66の斜視図である。以下の切削装置60に関する説明では、左方、右方とは、切削装置60の正面にいる作業者(技工士)から見た左方、右方をそれぞれ意味する。切削装置60から作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。切削装置60は、相互に直交する軸を、X軸、Y軸、Z軸としたとき、X軸とY軸とで構成される平面に配置されている。X軸は左右方向に延びた軸である。Y軸は前後方向に延びた軸である。Z軸は上下方向に延びた軸である。また、符号θx、θy、θzは、それぞれX軸回り、Y軸回り、Z軸回りの回転方向を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、切削装置60の設置態様を何ら限定するものではない。
図17に示すように、切削装置60は、ケース本体61と、カバー62と、スピンドル63(図18参照)と、ツールマガジン64(図19参照)と、回転支持部材65(図20参照)と、クランプ66(図20参照)とを備えている。ケース本体61は、箱状に形成されており、内部に空間61A(図18参照)を有している。ケース本体61の前部は開口している。図18に示すように、カバー62は、ケース本体61の前端に沿って上下方向に移動することによって開閉自在に構成されている。カバー62が上方に移動することで、ケース本体61の内部と外部とが連通される。カバー62には、窓62Aが設けられている。作業者は窓62Aから内部の空間61Aを視認することができる。
スピンドル63は、加工ツール78を使用して、加工ツール78を回転させて被加工物5を切削するものである。スピンドル63および加工ツール78は、切削部の一例である。スピンドル63は、ツール把持部71と、回転部72とを備えている。ツール把持部71は、加工ツール78の上端部を把持するものである。ツール把持部71の上端には、回転部72が設けられている。
回転部72は、ツール把持部71に把持された加工ツール78を回転させるものである。回転部72は、上下方向に延びている。ここでは、回転部72には、第1駆動モータ72a(図21参照)が接続されている。この第1駆動モータ72aが駆動することで、回転部72は、Z軸回りθzに回転可能に構成されている。回転部72の回転に伴い、ツール把持部71に把持された加工ツール78はZ軸回りθzに回転する。また、回転部72は、図示しない第1駆動機構によって左右方向および上下方向に移動するように構成されている。
図19に示すように、ツールマガジン64は、複数の加工ツール78を収容することが可能なものである。本実施形態では、ツールマガジン64は、箱状に形成されている。ツールマガジン64の上面64Aには、加工ツール78を収容する複数の孔81が形成されている。加工ツール78は、その上部が露出された状態で孔81に挿通されている。加工ツール78を交換する際には、ツール把持部71によって把持されている加工ツール78を孔81に戻す。そして、次に使用する加工ツール78の上方の位置までツール把持部71および回転部72を移動させ、ツール把持部71の下方に位置する加工ツール78の上端をツール把持部71が把持する。
図19に示すように、ツールマガジン64には、回転支持部材65を回転可能に支持する第1回転軸83が設けられている。第1回転軸83は左右方向に延びており、回転支持部材65(図20参照)に連結している。ツールマガジン64には、第2駆動部材(図示せず)が設けられている。第1回転軸83は、この第2駆動部材によって、X軸回りθxに回転可能に構成されている。第1回転軸83がX軸回りθxに回転することによって、回転支持部材65はX軸回りθxに回転する。
図20に示すように、回転支持部材65は、クランプ66を回転可能に支持している。回転支持部材65は、平面視で、略U字形状に形成されている。回転支持部材65は、第1回転軸83と連結されている。回転支持部材65は、前後方向に延びた第1部分91と、第1部分91の後端から左方に延びた第2部分92と、第1部分91の前端から左方に延びた第3部分93とを備えている。クランプ66は、第2部分92および第3部分93に回転可能に支持されている。第3部分93には、クランプ66をY軸回りθyに回転させる第2駆動モータ95が設けられている。
クランプ66は、被加工物5を切削する際に被加工物5を保持する部材である。クランプ66は、切削保持部の一例である。本実施形態では、クランプ66は、被加工物5に取り付けられたアダプタ30(図13参照)を保持し、アダプタ30を介して被加工物5を保持する。なお、図20では、アダプタ30の図示を省略している。クランプ66は、平面視において、略U字形状である。本実施形態では、クランプ66によって保持された被加工物5に対して、切削が行われる。
次に、制御装置110について説明する。図21は、切削装置60のブロック図である。図21に示すように、切削装置60は、制御装置110を備えている。制御装置110は、被加工物5の切削に関する制御をする装置である。制御装置110は、マイクロコンピュータからなっており、ケース本体61の内部に設けられている。また、制御装置110の一部は、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータによって実現されてもよい。制御装置110は、中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、被加工物5の切削に関する制御を行う。このプログラムは、例えばCD(コンパクトディスク)やDVD(デジタルバーサタイルディスク)などの記録媒体に保存されており、この記録媒体から読み込むことができる。なお、上記プログラムは、インターネットを通じてダウンロードするようにしてもよい。
本実施形態では、制御装置110は、第1駆動モータ72aおよび第2駆動モータ95に電気的に接続されている。制御装置110は、第1駆動モータ72aの駆動を制御することで、スピンドル63の回転部72の回転を制御する。制御装置110は、回転部72を左右方向および上下方向に移動するように制御することが可能である。制御装置110は、第2駆動モータ95の駆動を制御することで、クランプ66のY軸回りθyの回転を制御する。制御装置110は、第1回転軸83(図20参照)をX軸回りθxに回転するように制御することが可能である。
本実施形態では、制御装置110は、記憶部111と、切削制御部112とを備えている。記憶部111には、例えば、切削データが記憶されている。切削データは、いわゆる、NCデータである。切削データとは、切削装置60が棒部材付き有床義歯10A(図12参照)をどのような手順で作製するかを示した3次元データである。切削データとは、スピンドル63の動作、および、被加工物5を保持するクランプ66の動作を座標値によって定義した加工工程が複数記録されたものである。この切削データは、例えば、コンピュータ支援製造装置(以下、CAM装置ともいう。)によって作成されるデータである。本実施形態では、CAM装置は、準備された有床義歯10の形状の3次元データ(典型的にはSTLデータ)である切削対象物データに基づいて、切削データを作成する。本実施形態では、CAM装置およびCAD装置は、制御装置110と通信可能に接続されている。そのため、CAM装置によって作成された切削データは、制御装置110の記憶部111に保存される。
切削制御部112は、記憶部111に記憶された切削データに基づいて、切削加工の制御を行う。本実施形態では、切削制御部112は、切削データ内の座標値に基づいて、スピンドル63およびクランプ66の動作を制御する。スピンドル63によって回転する加工ツール78の刃78a(図18参照)を、被加工物5の重合された義歯床用材料8A(図11参照)に接触させることで、重合された義歯床用材料8Aを切削する。このとき、人工歯型25には人工歯15が接着剤等を用いずに嵌め込まれているだけなので、重合された義歯床用材料8Aと人工歯型25とが接続している部分を切削することにより、人工歯型25を人工歯15から容易に取り外すことができる。これにより、第1棒部材17および第2棒部材18を有する棒部材付き有床義歯10A(図12参照)が作製される。なお、棒部材付き有床義歯10Aには、義歯床20と第1棒部材17を連結するサポート19A(図12参照)と、義歯床20と第2棒部材18を連結するサポート19B(図12参照)とが存在し得る。
次に、第2作製工程S110では、棒部材付き有床義歯10Aから第1棒部材17および第2棒部材18を取り除く。例えば、技工士は、刃を有するカッターなどの道具を利用して、棒部材付き有床義歯10Aから第1棒部材17および第2棒部材18を取り除くとよい。取り除かれた第1棒部材17および第2棒部材18は、その後廃棄される。なお、棒部材付き有床義歯10Aがサポート19Aおよびサポート19Bを備えている場合には、第2作製工程S110において、これらも取り除く。このように、義歯床製造キット、人工歯型25、人工歯15および切削装置60を用いて上述した各工程を順に行うことによって、有床義歯10(図1参照)を作製することができる。
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、被加工物成形用型40の造形空間48に配置された人工歯型25に人工歯15を配置し、人工歯型25および人工歯15が造形空間48に存在する状態において、造形空間48に義歯床用材料8を注入する。そして、義歯床用材料8を重合させることによって、義歯床用材料8と人工歯15とが強固に接着される。このように、義歯床20と人工歯15との接着を義歯床用材料8の重合によって一括して行うことができるため、技工士は人工歯15を一つ一つ接着剤を用いて義歯床20に固定する必要がない。即ち、技工士の作業負担が軽減される。なお、人工歯15を人工歯型25に配置するときには、接着剤等は用いられず、人工歯型25に形成された凹部25Aに人工歯15を嵌め込む。また、被加工物5のうち重合された義歯床用材料8Aを切削装置60によって切削するため、技工士の作業負担が軽減される。
本実施形態の製造方法によれば、第1作製工程S100において、アダプタ30に被加工物5を保持させ、被加工物5が保持されたアダプタ30を切削装置60に取り付ける。被加工物5をアダプタ30に取り付けるとき、本体部32の第1部分32Aに第1棒部材17が嵌め込まれかつ第2部分32Bに第2棒部材18が嵌め込まれるため、本体部32に対する被加工物5の位置決めがされる。これにより、切削装置60に対する被加工物5の位置決めを容易に行うことができる。
本実施形態の製造方法によれば、第1棒部材17には、第1側壁41の第1凸部51と係合する第1凹部17Aが形成されている。また、第2棒部材18には、第2側壁42の第2凸部52と係合する第2凹部18Aと第3凸部53と係合する第3凹部18Bが形成されている。これにより、被加工物成形用型40に対する第1棒部材17および第2棒部材18の位置決めを容易に行うことができる。また、被加工物成形用型40に義歯床用材料を注入するときや義歯床用材料を重合するときに、第1棒部材17および第2棒部材18が被加工物成形用型40に対して移動することが抑制される。
本実施形態の製造方法によれば、第1凹部17Aは、第1棒部材17の上下方向の全体に亘って形成されている。また、第2凹部18Aおよび第3凹部18Bは、第2棒部材18の上下方向の全体に亘って形成されている。これにより、保持板37を本体部32に取り付けて第1棒部材17および第2棒部材18を押さえるとき、保持板37と本体部32とを相互に固定するねじ33を通すねじ孔34として第1凹部17A、第2凹部18Aおよび第3凹部18Bを利用することができる。
本実施形態の製造方法によれば、第1棒部材17および第2棒部材18は、樹脂材料から形成されている。これにより、義歯床用材料と第1棒部材17および第2棒部材18との接着がより強固となる。
本実施形態の製造方法によれば、被加工物成形用型40は、シリコーン樹脂から形成されている。これにより、重合された被加工物5を被加工物成形用型40から容易に取り出すことができる。
本実施形態の製造方法によれば、成形工程において、重合器内に被加工物成形用型40を配置した後、重合器内の水位が被加工物成形用型40の上面(即ち第1側壁41の上面41A等)より下方となるように水を注入する。これにより、義歯床用材料をより確実に重合させることができる。
このように製造された有床義歯10は、総義歯(フルデンチャー)や部分義歯(パーシャルデンチャー)の製造は勿論のこと、例えば、一時的に患者に装着されるもの、例えば、歯科用ベースプレート、インプラントを埋入する際に使用されるサージカルガイド、マウスピース等の歯科矯正器具、等の製造にも好適に用いることができる。また、部分義歯としては、弾力性の高い熱可塑性樹脂で構成され、金属製のクラスプを有しない、所謂、ノン・クラスプデンチャーの製造にも好適に用いることができる。また、有床義歯10は、例えば、教育用の模型などとして用いることもできる。
切削装置60を使用して有床義歯10を製造するとき、より詳しくは、被加工物5を成形するときには、上述の被加工物成形用型40を好適に用いることができる。また、被加工物成形用型40を備える有床義歯製造キットを好適に用いることができる。一実施形態に係る有床義歯製造キットは、義歯床製造キットを備えている。例えば、被加工物成形用型40と、保持部材と、を備えている。他の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、さらに人工歯型25を作成するための切削材を備えている。他の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、さらに上述したようなアダプタ30を備えている。他の一実施形態に係る有床義歯製造キットは、被加工物成形用型40と、上述したような板状部材58と、を備えている。
被加工物成形用型40は、アダプタ30(あるいはクランプ66)の形状に合った被加工物5を成形可能なように構成されている。被加工物成形用型40は、底壁45と、底壁45から上方に延びた側壁、ここでは、第1側壁41と、第2側壁42と、第3側壁43と、第4側壁44と、によって囲まれた造形空間48を有している。造形空間48は、義歯床用材料8が注入される空間である。造形空間48には、人工歯型25が配置される配置空間が区画されている。造形空間48には、保持部材が配置される保持空間が区画されている。例えば図7の実施形態では、第1棒部材17が配置される第1段差部54と、第2棒部材18が配置される第2段差部55と、が保持空間である。
被加工物成形用型40は、造形空間48に注入された義歯床用材料8が重合体8Aとなるまで安定に保持するように構成されている。被加工物成形用型40は、例えば注入工程S60から成形工程S80までの間、義歯床用材料8を流出させることがないように構成されている。被加工物成形用型40は、熱耐性を有している。被加工物成形用型40は、例えば、熱硬化性樹脂で形成されている。被加工物成形用型40は、例えば、シリコーン樹脂から形成されている。被加工物成形用型40は、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、ゴム類等で形成されていてもよい。被加工物成形用型40は、例えば、連続使用温度(UL746Bに準拠した値をいう。)が、概ね100℃以上、好ましくは150℃以上、例えば200℃以上であるとよい。被加工物成形用型40は、例えば成形工程S80で加圧および/または加熱したときにも、上面41A〜44Aが面一の状態を維持するように構成されているとよい。被加工物成形用型40は、例えば成形工程S80で加圧および/または加熱したときにも、造形空間48の体積変化率が1%以下、例えば0.5%以下となるように構成されているとよい。被加工物成形用型40は、例えば、加圧条件0.2MPa、加熱条件50℃で、30分間保持した後も、造形空間48の体積変化率が1%以下、例えば0.5%以下となるように構成されていてもよい。
被加工物成形用型40は、例えば取り外し工程S90において、技工士が被加工物5を取り出し容易なように構成されている。被加工物成形用型40は、義歯床用材料の重合体8Aおよび保持部材(例えば第1棒部材17および第2棒部材18)に対して、離型性(非粘着性)を有している。被加工物成形用型40は、撓み変形が可能なように構成されている。被加工物成形用型40は、例えば、義歯床用材料の重合体8A、および/または、保持部材よりも柔軟性に富んでいる。被加工物成形用型40は、例えば、義歯床用材料の重合体8Aよりも曲げ弾性率(日本工業規格JIS K7171:2016に準拠した値をいう。単位はMPa。以下同じ。)の値が小さい。被加工物成形用型40の曲げ弾性率は、義歯床用材料の重合体8Aの曲げ弾性率の1/2以下、例えば1/3以下であるとよい。被加工物成形用型40は、例えば、保持部材よりも曲げ弾性率が小さい。被加工物成形用型40の曲げ弾性率は、保持部材の曲げ弾性率の1/3以下、例えば1/4以下、さらには1/5以下であるとよい。被加工物成形用型40は、例えば、曲げ強さ(日本工業規格JIS K7171:2016に準拠した値をいう。単位はMPa。)が、概ね5〜20MPa、例えば10〜15MPaであってもよい。
保持部材、例えば第1棒部材17および第2棒部材18は、例えば取付工程S40において、被加工物成形用型40の保持空間に配置される。保持部材は、被加工物成形用型40の造形空間48に義歯床用材料8が注入される前に、保持空間に配置される。保持部材は、例えば成形工程S80において、義歯床用材料8が重合することにより、義歯床用材料8と強固に接着される。保持部材は、例えば切削加工時に義歯床用材料の重合体8Aと分離することがない程度に一体化される。保持部材は、義歯床用材料の重合体8Aとの相溶性や親和性を高める観点から、義歯床用材料8と同種の樹脂材料で形成されているとよい。例えば、義歯床用材料8がアクリル系レジンである場合、保持部材は、PMMA等のアクリル系樹脂で形成されているとよい。この場合、義歯床用材料8が重合するときに、メタクリル酸エステルが保持部材の分子鎖の内部にも浸透、拡散し、重合反応を生じる。そのため、保持部材が義歯床用材料の重合体8Aと化学的に結合され、被加工物5としての一体性を高めることができる。同様に、例えば、義歯床用材料8がポリカーボネート系のレジンである場合、保持部材は、ポリカーボネート等のポリカーボネート系樹脂で形成されているとよい。また、例えば、義歯床用材料8がポリアミド系のレジンである場合、保持部材は、ポリアミド等のポリアミド系樹脂で形成されているとよい。保持部材は、義歯床用材料の重合体8Aとの結合力(日本工業規格JIS T6506:2005に準拠した値をいう。)が、概ね10N以上、好ましくは30N以上、例えば50N以上であるとよい。保持部材は、例えば、人工歯15を作成するための材料(例えばアクリル系レジン歯の材料)で形成されていてもよい。
保持部材は、切削装置60に直接的または間接的に取り付け可能なように構成されている。保持部材は、例えば、アダプタ30に対応した形状部分を有している。切削装置60で被加工物5を切削する際、保持部材にはアダプタ30の一部が接触する。保持部材は、例えば第1作製工程S100において、義歯床用材料の重合体8Aを固定するための固定部材として機能するように構成されている。保持部材は、義歯床用材料の重合体8Aを安定に保持する観点から、典型的には、義歯床用材料の重合体8Aよりも固く、形状安定性に優れた材料で形成されている。保持部材は、例えば、義歯床用材料の重合体8Aよりも曲げ強さ(日本工業規格JIS T6501:2012に準拠した値をいう。単位はMPa。以下同じ。)が大きいとよい。保持部材の曲げ強さは、概ね50〜200MPa、例えば70〜150MPa程度であってもよい。保持部材は、例えば、義歯床用材料の重合体8Aよりも破壊靱性(日本工業規格JIS T6501:2012に準拠した値をいう。単位は以下同じ。)が大きいとよい。保持部材は、通常、切削装置60によって切削されることは無いが、例えば技工士が切削装置60の設定を誤った場合等に、意図せず加工ツール78と接触することがあり得る。このため、保持部材は、例えば、アダプタ30よりも破壊靱性の値が小さいとよい。
なお、保持部材は、棒状のものには限定されない。保持部材は、例えばアダプタ30の開口32Hに沿ったリング状や枠状等であってもよい。保持部材は、例えば第1棒部材17および第2棒部材18が連結されたL字型やコの字型のような形状であってもよい。また、保持部材の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、上記した実施形態と以下の変形態様とを適宜組み合わせることもできる。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜省略あるいは削除することも可能である。
上述した実施形態の被加工物成形用型40は、上顎用の有床義歯10の製造に用いられるものであったが、これに限定されない。図22は、部分床義歯の製造に用いられる被加工物成形用型140の平面図である。被加工物成形用型140は、義歯床製造キットに含まれ得る。
図22に示すように、被加工物成形用型140は、底壁145と、第1側壁141と、第2側壁142と、第3側壁143と、第4側壁144とを備えている。底壁145には、底壁から上方に延びる突条部145Aが形成されている。突条部145Aの底壁145からの高さは、第1側壁141〜第4側壁144の底壁145からの高さより低い。第1側壁141は、底壁145の後部から上方に延びる。第2側壁142は、底壁145の前部から上方に延びる。第1側壁141および第2側壁142は、相互に対向している。第3側壁143は、底壁145の左部から上方に延びる。第3側壁143は、第1側壁141の左端と第2側壁142の左端とを接続する。第3側壁143は、第4側壁144から離れる方向に湾曲している。第4側壁144は、底壁145の右部から上方に延びる。第4側壁144は、第1側壁141の右端と第2側壁142の右端とを接続する。第4側壁144は、第3側壁143から離れる方向に湾曲している。第3側壁143および第4側壁144は、相互に対向している。第1側壁141の上面141Aと、第2側壁142の上面142Aと、第3側壁143の上面143Aと、第4側壁144の上面144Aとは面一に形成されている。即ち、上面141A〜144Aの底壁145からの高さは相互に同じである。
図22に示すように、被加工物成形用型140は、開口146と造形空間148とを備えている。開口146は、底壁145と対向する位置に形成されている。即ち、被加工物成形用型140は、上部が開口している。造形空間148は、底壁145と、第1側壁141と、第2側壁142と、第3側壁143と、第4側壁144とによって囲まれた空間である。造形空間148には、上述した義歯床用材料が注入される。
図22に示すように、被加工物成形用型140は、第1凸部151と、第2凸部152と、第3凸部153とを備えている。第1凸部151は、第1側壁141に形成されている。第1凸部151は、第2側壁142に向けて突出している。第1凸部151は、上下方向に延びる。第1凸部151は、第1側壁141の略中央に形成されている。第2凸部152および第3凸部153は、第2側壁142に形成されている。第2凸部152および第3凸部153は、第1側壁141に向けて突出している。第2凸部152および第3凸部153は、上下方向に延びる。第2凸部152は、第3凸部153より左方に形成されている。第2凸部152は、第1凸部151より左方に位置する。第3凸部153は、第1凸部151より右方に位置する。第1凸部151は、第1棒部材17の第1凹部17Aと係合する。第2凸部152は、第2棒部材18の第2凹部18Aと係合する。第3凸部153は、第2棒部材18の第3凹部18Bと係合する。
図22に示すように、被加工物成形用型140は、第1段差部154と、第2段差部155とを備えている。第1段差部154は、第1側壁141に形成されている。第1段差部154は、造形空間148を区画する。第1段差部154は、第1側壁141の上面141Aより下方に位置する。第1段差部154は、底壁145より上方に位置する。第1段差部154は、突条部145Aより上方に位置する。第1段差部154には、第1棒部材17が配置される。第1段差部155には、2つの溝55Aが形成されている。溝55Aは造形空間48と連通している。溝55Aに対応した形状を有する係合突起(図示せず)を有する被加工物をアダプタ30に取り付けるとき、該係合突起は、本体部32の凹部32AX(図14参照)にそれぞれ嵌め込まれる。第2段差部155は、第2側壁142に形成されている。第2段差部155は、造形空間148を区画する。第2段差部155は、第2側壁142の上面142Aより下方に位置する。第2段差部155は、底壁145より上方に位置する。第2段差部154は、突条部145Aより上方に位置する。第2段差部155の底壁145からの高さは、第1段差部154の底壁145からの高さと同じである。第2段差部155には、第2棒部材18が配置される。
上述した被加工物成形用型40では、第1側壁41に1つの第1凸部51が形成されていたが、2つ以上の凸部が形成されていてもよい。また、上述した被加工物成形用型40では、第2側壁42に2つの凸部(第2凸部52および第3凸部53)が形成されていたが、1つまたは3つ以上の凸部が形成されていてもよい。
上述した被加工物成形用型40では、第2段差部55に溝55Aが形成されているが、これに限定されない。例えば、被加工物成形用型140のように、第1段差部54に2つの溝55Aを形成してもよい。
上述した有床義歯製造方法では、取付工程S40の後に第1配置工程S50を実施しているが、これに限定されない。取付工程S40の前に第1配置工程S50を実施してもよい。即ち、取付工程S40と第1配置工程S50との順番は逆であってもよい。
5 被加工物
8 義歯床用材料
8A 重合された義歯床用材料
10 有床義歯
10A 棒部材付き有床義歯
15 人工歯
17 第1棒部材
18 第2棒部材
25 人工歯型
30 アダプタ
32 本体部
37 保持板
40 被加工物成形用型
48 造形空間
60 切削装置

Claims (7)

  1. 義歯床と前記義歯床に配置された人工歯とを備えた有床義歯を製造する製造方法であって、
    前記義歯床の3次元データ、前記義歯床に配置された前記人工歯の3次元データ、および、前記義歯床に配置された前記人工歯の歯型である人工歯型の3次元データを準備する3次元データ準備工程と、
    前記人工歯型の3次元データに基づいて、前記人工歯型を造形する造形工程と、
    底壁と、前記底壁から上方に延び、相互に対向する第1側壁および第2側壁と、前記底壁から上方に延び、相互に対向しかつ前記第1側壁および前記第2側壁とそれぞれ接続された第3側壁および第4側壁と、前記底壁に対向する開口と、前記底壁と前記第1側壁と前記第2側壁と前記第3側壁と前記第4側壁とによって囲まれた造形空間とを有する被加工物成形用型を準備する準備工程と、
    棒状に形成された第1棒部材を前記1側壁のうち前記造形空間を区画する部分にその軸線が前記第3側壁から前記第4側壁に向けて延びるように取り付けて前記開口の一部を塞ぎ、かつ、棒状に形成された第2棒部材を前記2側壁のうち前記造形空間を区画する部分にその軸線が前記第3側壁から前記第4側壁に向けて延びるように取り付けて前記開口の一部を塞ぐ取付工程と、
    造形された前記人工歯型を前記造形空間に配置し、前記人工歯の3次元データに基づいて作製された前記人工歯を前記人工歯型に配置する第1配置工程と、
    前記造形空間に義歯床用材料を注入する注入工程と、
    前記義歯床用材料を重合し、前記人工歯型と前記人工歯と重合された前記義歯床用材料と前記第1棒部材と前記第2棒部材とを有する被加工物を成形する成形工程と、
    前記被加工物を前記被加工物成形用型から取り外す取り外し工程と、
    前記被加工物の前記人工歯型と重合された前記義歯床用材料の一部とを切削装置によって切削し、前記第1棒部材および前記第2棒部材を有する棒部材付き有床義歯を作製する第1作製工程と、
    前記棒部材付き有床義歯から前記第1棒部材および前記第2棒部材を取り除いて有床義歯を作製する第2作製工程と、を包含する、製造方法。
  2. 前記第1作製工程において、前記第1棒部材が嵌め込まれる第1部分および前記第2棒部材が嵌め込まれる第2部分を有しかつ前記被加工物を保持する本体部と、前記本体部に着脱自在に取り付けられ、前記被加工物の前記第1棒部材および前記第2棒部材を押さえかつ開口が形成された保持板と、を有するアダプタに前記被加工物を取り付け、前記被加工物が保持された前記アダプタを切削装置に取り付ける、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記第1側壁は、前記第2側壁に向けて突出する第1凸部を有し、
    前記第1棒部材には、前記第1凸部と係合する第1凹部が形成され、
    前記第2側壁は、前記第1側壁に向けて突出する第2凸部および第3凸部を有し、
    前記第2棒部材には、前記第2凸部と係合する第2凹部と前記第3凸部と係合する第3凹部が形成されている、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記第1凹部は、前記第1棒部材の上下方向の全体に亘って形成され、
    前記第2凹部および前記第3凹部は、前記第2棒部材の上下方向の全体に亘って形成されている、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記第1棒部材および前記第2棒部材は、樹脂材料から形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記被加工物成形用型は、シリコーン樹脂から形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記成形工程において、重合器内に前記被加工物成形用型を配置した後、前記重合器内の水位が前記被加工物成形用型の上面より下方となるように水を注入する、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
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