JP2019117233A - ホログラム光学素子、ホログラム光学素子の製造方法、及び光学装置 - Google Patents

ホログラム光学素子、ホログラム光学素子の製造方法、及び光学装置 Download PDF

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Abstract

【課題】簡素な構成で精度よく結像距離変位となるz情報と光軸距離変位となるxy情報とを相互に変換するホログラム光学素子を提供する。【解決手段】入射光3を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子10であって、透光性又は反射性を有する基板と、基板に設けられる干渉縞と、を備え、干渉縞は、入射光の基板からの距離となる結像距離変位を透過光4又は反射光の基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は入射光の光軸距離変位を透過光又は反射光の結像距離変位に線形変換が可能となるように基板に設けられていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子、ホログラム光学素子の製造方法、及び当該ホログラム光学素子を備える光学装置に関する。
光学顕微鏡等の光学分野において、三次元イメージングでは、いかに対象の結像距離変位となるz情報を効果的に像面の光軸距離変位となるxy情報に変換(符号化)するかが重要となる。例えば、特許文献1及び非特許文献1では、三次位相変調素子を用いたエアリービームにより、非特許文献2では、位相マスクによる二重螺旋点像分布関数により、それぞれz情報を像面のxy情報に符号化する手法が提案されている。
一方、一画素イメージングでは、いかに対象のxy情報を一画素撮影における時間情報に変換(符号化)するかが重要となる。例えば、非特許文献3には、2Dマスクと画像再構成に基づく手法が開示されている。
国際公開第2017/213171号
S. Jia, J. C. Vaughan, and X. Zhuang, "Isotropic three-dimensional super-resolution imaging with a self-bending point spread function," Nature Photonics 8, 302-306 (2014). S. R. P. Pavani, M. A. Thompson, J. S. Biteen, S. J. Lord, N. Liu, R. J. Twieg, R. Piestun, and W. E. Moerner, "Three-dimensional, single-molecule fluorescence imaging beyond the diffraction limit by using a double-helix point spread function," Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106, 2995-2999 (2009). R. G. Baraniuk, "Compressive Sensing," IEEE Signal Processing Magazine 24, 118-121 (2007).
しかしながら、エアリービームや二重螺旋点像分布関数等による符号化法では、zx変換特性が単純な像点の線形移動で無いため、距離分解能、撮像距離範囲、z情報復号精度、一意性が課題となる。一方、一画素イメージングでは、画質・計算量や撮像系の複雑化・大型化が課題となる。このような三次元イメージングや一画素イメージングの課題を解決するためには、より簡素な構成で精度よく撮像対象のイメージングを可能とする光学素子の要請がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で精度よく結像距離変位となるz情報と光軸距離変位となるxy情報とを相互に変換することの可能な、新規かつ改良されたホログラム光学素子、ホログラム光学素子の製造方法、及び光学装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子であって、透光性又は反射性を有する基板と、前記基板に設けられる干渉縞と、を備え、前記干渉縞は、前記入射光の前記基板からの距離となる結像距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は前記入射光の前記光軸距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記結像距離変位に線形変換が可能となるように前記基板に設けられていることを特徴とする。
本発明の一態様によれば、より簡素な構成で精度よく物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。
本発明の一態様では、前記基板には、前記干渉縞として複数種類の干渉縞が多重化して設けられることとしてもよい。
このようにすれば、より確実に精度よく物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。
また、本発明の一態様では、前記基板には、計算機合成ホログラムにより前記干渉縞を多重化して設けられることとしてもよい。
このようにすれば、効率的に精度よく物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。
また、本発明の他の態様は、基板に干渉縞を設けて入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子の製造方法であって、前記入射光の前記基板からの距離となる結像距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は前記入射光の前記光軸距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記結像距離変位に移す一の要素計算機合成ホログラムを生成する工程と、前記結像距離変位及び前記光軸距離変位を線形に変化させながら複数の要素計算機合成ホログラムを生成する工程と、前記複数の要素計算機合成ホログラムを空間多重して前記基板に前記干渉縞を生成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の他の態様によれば、物体光の結像距離変位となるz位置(距離)を像面の光軸距離変位となるx位置(水平面内座標)に、又は物体光のx位置を像面のz位置に線形変換することができるホログラム光学素子を効率的に作製できる。
また、本発明の更に他の態様は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する光学装置であって、前記撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する前述の何れかに記載のホログラム光学素子と、前記ホログラム光学素子で符号化された符号化像を取得する撮像素子と、前記撮像素子で取得された前記符号化像を前記撮像対象の距離又は空間位置を反映した画像に再構成する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、前記撮像対象の撮像素子からの距離と空間情報を復号する距離・空間情報復号部と、前記距離・空間情報復号部で得られた信号のノイズを処理する復号精度改善処理部と、前記復号精度改善処理部で前記ノイズを処理した信号のスペクトル情報の復号処理をするスペクトル情報復号処理部と、を備えることを特徴とする。
本発明の更に他の態様によれば、より確実に精度よく物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができるので、より精度の良い三次元イメージングを実現できる。
本発明の更に他の態様では、前記復号精度改善処理部は、前記ノイズの程度に応じて無視するか、デコンボリューションで除去するか、ベイズ推定で局在化することによって前記ノイズを処理することとしてもよい。
このようにすれば、物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換する際に、クロストーク成分等のノイズを処理するので、より精度よく三次元イメージングを実現できる。
以上説明したように本発明によれば、単一のホログラム光学素子で精度よく確実に物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。
(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の概略原理を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の概略構成の一例を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法の概略を示すフロー図である。 (A)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の空間多重化前の動作説明図であり、(B)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の空間多重化後の動作説明図である。 本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子で位相変調された伝播光のzx特性を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法の設計段階で行われる計算機合成ホログラムの算出方法の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子を備える光学装置の概略構成を示すブロック図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の概略原理及び概略構成について、図面を使用しながら説明する。図1(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の概略原理を示す説明図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の概略構成の一例を示す平面図である。なお、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子は、透過型でも反射型でも適用可能であるが、以下説明の簡略化のため、ホログラム光学素子が透過型である場合について説明を記載する。
本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子10は、入射光を回折させて透過光を偏向させるホログラム光学素子であって、回折を利用して波面再生を実現する二次元又は三次元の微細構造を持つ回折光学素子である。本実施形態では、ホログラム光学素子10は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer- Generated Hologram)を適用して、簡素な構成で精度よく結像距離変位となるz情報と光軸距離変位となるxy情報とを相互に変換することを実現したものである。
ホログラム光学素子10は、図1(A)に示すように、入射光となる物体光1の基板12(図2参照)からの距離となる結像距離変位(z情報)を透過光の空間像2の基板12と平行に展開される光軸距離変位(xy情報)に線形変換されるように、透光性を有する基板12に干渉縞14(図2参照)が設けられているか、図1(B)に示すように、入射光1´の光軸距離変位を透過光の空間像2´の結像距離変位に線形変換されるように、透光性を有する基板12に干渉縞14が設けられている。なお、本実施形態では、ホログラム光学素子10は、入射光を回折させて透過光を偏向させる態様であるので、透光性を有する基板12に干渉縞14が設けられているが、入射光を回折させて反射光を偏向させる態様に適用する場合には、反射性を有する基板に干渉縞が設けられる。
本実施形態では、ホログラム光学素子10は、入射光となる物体光1の基板12からの距離となる結像距離変位(z情報)を透過光の基板12と平行に展開される光軸距離変位(x情報)に線形変換する。このように、zx変換をすることによって、図1(A)に示すように、物体光1aが位置Aにある場合は、物体光1aは、ホログラム光学素子10の透過光による空間像2aが位置Aに到達する。また、同様にして、物体光1bが位置Bにある場合は、透過光による空間像2bが位置Bに到達し、物体光1cが位置Cにある場合は、透過光による空間像2cが位置Cに到達する。
すなわち、本実施形態のホログラム光学素子10を介することによって、物体光1が位置A、位置B、位置Cと図1(A)に示すz軸方向に移動すると、透過光による空間像2が位置A、位置B、位置Cと図1(A)に示すx軸方向に移動するようにzxの線形変換がされる。このため、本実施形態のホログラム光学素子10をレーザ走査型顕微鏡に適用して3D蛍光イメージングを行うと、結像位置xを読み取れば、蛍光分子の距離zが分かるようになる。また、本実施形態のホログラム光学素子10をカメラに適用して三次元イメージングを行うと、結像位置xを読み取れば、物体との距離zが分かるようになる。
一方、本実施形態のホログラム光学素子10は、入射光1´の基板12と平行に展開される光軸距離変位(x情報)を透過光の空間像2´の基板12からの距離となる結像距離変位(z情報)に線形変換するようにしてもよい。このように、xz変換をすることによって、図1(B)に示すように、物体光1a´が位置A´にある場合は、物体光1a´は、ホログラム光学素子10の透過光による空間像2a´が位置A´に到達する。また、同様にして、物体光1b´が位置B´にある場合は、透過光による空間像2b´が位置B´に到達し、物体光1c´が位置C´にある場合は、透過光による空間像2c´が位置C´に到達する。
すなわち、本実施形態のホログラム光学素子10を介することによって、物体光1´が位置A´、位置B´、位置C´と図1(B)に示すx軸方向に移動すると、透過光による空間像2´が位置A´、位置B´、位置C´と図1(B)に示すz軸方向に移動するようにxzの線形変換がされる。このため、本実施形態のホログラム光学素子10をテラヘルツ領域画像取得等に有用な光検出器のz軸走査のみによる一画素イメージングに適用すると、結像側に設けた不図示の光検出器(単画素)をz方向に走査し、空間像を時間信号として取得することによって、点光源位置xが分かるようになる。
このように、本実施形態では、ホログラム光学素子10は、物体光のz位置(距離)を像面のx位置(水平面内座標)に、又は物体光のx位置を像面のz位置に線形変換するxz間の線形変換素子となっている。また、本実施形態のホログラム光学素子10は、位相変調素子(位相ホログラム)により伝搬光の空間光位相を変調するために、2D位相変調量分布をするために必要な素子構造を多重計算機合成ホログラムの計算で一意に求めている。すなわち、本実施形態では、ホログラム光学素子10は、図2に示すように、計算機合成ホログラムにより複数種類の干渉縞14を多重化して基板12に設けられる。
次に、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法の概略を示すフロー図であり、図4(A)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の空間多重化前の動作説明図であり、図4(B)は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の空間多重化後の動作説明図であり、図5は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子で位相変調された伝播光のzx特性を示す説明図である。
本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法は、基板に干渉縞を設けて入射光を回折させて透過光を偏向させるホログラム光学素子の製造方法であって、計算機合成ホログラム(CGH)技術を適用して、ホログラム光学素子の特性を用いてzx変換を行って多重化ホログラムを簡便に位相変調素子として物理実装する。
本実施形態では、まず、入射光の基板からの距離となる結像距離変位を透過光の基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は入射光の光軸距離変位を透過光の結像距離変位に移す一の要素計算機合成ホログラムを生成する(工程S11)。具体的には、距離zにある点光源を像面位置xに写すようなCGHを一の要素CGHと定義する。すなわち、ホログラム光学素子のzx変換素子としての性質を利用して、物体光のz方向変位となる結像距離変位情報から透過光のx方向変位となる光軸距離変位情報を検出する。
次に、結像距離変位及び光軸距離変位を線形に変化させながら複数の要素計算機合成ホログラムを生成する(工程S12)。具体的には、図4(A)に示すように、光学素子の機能を変化させながら、物体光のz位置と像面のx位置を変化させて、複数の要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4を生成する。このとき、光軸変調量と焦点距離は、各要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4ごとに独立に設計する。すなわち、物体光のz位置と像面のx位置を共に線形に変化させながら、複数の要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4を生成する。
例えば、要素計算機合成ホログラムCGH1は、物体光を集光するレンズとしての機能のみを有するので、物体光の点像は、物体光の光軸A1上となる。また、要素計算機合成ホログラムCGH2は、要素計算機合成ホログラムCGH1より集光レンズの機能における焦点距離が長くなって集光レンズとしての機能が幾分弱まり、プリズムとしての光軸方位変調機能が強まるので、物体光の距離がz軸方向に離れて、点像が物体光の光軸A1よりx軸方向にずれる配置となる。さらに、要素計算機合成ホログラムCGH3は、要素計算機合成ホログラムCGH2より集光レンズとしての機能が更に弱まり、プリズムとしての光軸方位変調機能が更に強まるので、物体光の距離がz軸方向に更に離れて、点像が物体光の光軸A1よりx軸方向に更にずれる配置となる。また、要素計算機合成ホログラムCGH4は、要素計算機合成ホログラムCGH3より集光レンズとしての機能が更に弱まり、プリズムとしての光軸方位変調機能が更に強まるので、物体光の距離がz軸方向に更に離れて、点像が物体光の光軸A1よりx軸方向に更にずれる配置となる。
複数の要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4を設計したら、次に、これらの要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4を空間多重して基板12に干渉縞14を生成する(工程S13)。具体的には、複数の要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4からなる要素CGH群を空間多重して平均化することによって、単一の多重CGHとなる計算機合成ホログラムを生成する。
例えば、CGHを透過した透過光のノイズとなるクロストーク成分は、デフォーカス点像として重畳しており、空間的にエネルギーが分散しているため、信号値として弱い。このため、本実施形態では、図4(B)に示すように、当該クロストーク成分は、クロストーク成分の程度に応じて無視したり、デコンボリューションによる除去や最尤/ベイズ推定による局在化を行って処理される。
各要素計算機合成ホログラムCGH1、CGH2、CGH3、CGH4を空間多重して単一の多重CGHとしたら、次に、当該単一の多重CGHの干渉縞を実装する(工程S14)。本実施形態では、例えば、LCoS SLM(液晶ディスプレイ)の電子制御や、ガラス板の加工により、生成した多重CGHを本実施形態のホログラム光学素子10として物理実装する。なお、多重CGHの物理実装方法は、液晶ディスプレイによる実装やガラス加工による実装以外にも、計算機合成/アナログホログラムや2D/3Dホログラム等の他の実装方法を適用してもよい。
このように、本実施形態のホログラム光学素子の製造方法を適用することによって、伝搬光の位相変調による物体光対象のz位置情報を像面のx位置情報に、又はその逆方向に線形変換することが可能なホログラム光学素子を効率的に設計して、作製することができる。このため、図5に示すように、CGHで位相変調された伝播光のz−x特性の線形性、及び線形変換された像の近似的なz不変性を確認できた。
すなわち、x−z変換特性が放物線状の非線形変換となる三次位相変調マスクを用いた位相変調によりz情報を像面のxy情報に符号化する手法と比べて、z情報を推定する際における解の一意性を確保できるので、z分解能が向上して計測範囲の制限を緩和することができる。このため、物体光の結像距離変位となるz位置(距離)を像面の光軸距離変位となるx位置(水平面内座標)に、又は物体光のx位置を像面のz位置に精度よく線形変換することができるホログラム光学素子を効率的に作製できる。
次に、本発明の一実施形態におけるホログラム光学素子の製造方法の設計段階で行われる計算機合成ホログラムの算出方法の一例について、図面を使用しながら説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子の製造方法の設計段階で行われる計算機合成ホログラムの算出方法の一例を示す説明図である。
物体面側に有する入射光となる物体光1の位置(x0,,z)は、図6に示すように、物体光1の位置を光軸上と仮定すると、物体光1の位置のx座標が0となり、物体光1の位置のz座標が結像距離変数となる。一方、ホログラム光学素子10の透過光の像面側に有する空間像2の位置(x,y,z)は、空間像2がx方向に移動することから、空間像2の位置のx座標が光軸方位変調量変数となり、空間像2の位置のz座標が固定パラメータとなる。なお、本実施形態では、z−x変調を例に説明しているが、z−y変調する場合は、ホログラム光学素子10の透過光の像面側に有する空間像2の位置(x,y,z)は、空間像2がy方向に移動することから、空間像2の位置のy座標が光軸方位変調量変数となり、空間像2の位置のz座標が固定パラメータとなる。
このとき、物体面点光源(x,z)からホログラム光学素子10に到達する波面の複素振幅は、フレネル近似を利用して導出すると、下記の式(1)で表される。
Figure 2019117233
一方、ホログラム光学素子10から像面(x,z)に集光する波面の複素振幅は、下記の式(2)で表される。
Figure 2019117233
このため、Φ(z)をΦ(x)に変換する2D複素振幅マップ(複素数CGHパターン)は、下記の式(3)で表される。
Figure 2019117233
また、本実施形態では、ホログラム光学素子10によってz−xの線形変換が行われるので、x(光軸方位変調量)とz(結像距離)との間に下記の式(4)の関係性が持たれる。
Figure 2019117233
また、上記式(4)は、xとyを交換しても、以下の議論は、同様に成り立つ。ここでは、例としてxを変数に用いる。yとyについては、近軸近似を導入して、y=y=0とする。
このため、前述したΦEHは、zのみの関数で表されるので、zを変えながら多重化することに相当するz積分をする。そして、この積分結果から得られる多重CGHの複素数CGHパターンに相当する2D複素振幅マップは、下記の式(5)で表される。
Figure 2019117233
ここで、2D複素振幅マップは、現時点では、簡便な物理実装が困難なため、上記のΦを下記の式(6)に示すように、位相CGHに変換してもよい。位相CGHでも2D複素振幅マップとほぼ等価な光学素子として機能する。
Figure 2019117233
このとき、上述したΦMPがz−x変換のために必要な位相型多重CGHの2D構造例となり、この位相変調量マップパターンを示すΦMPがホログラム光学素子10の干渉縞14となるので、当該位相変調量マップパターンΦMPを印刷するか、液晶表示して光学素子化することによって、本実施形態のホログラム光学素子10が設計される。
このように、本実施形態では、計算機合成ホログラムにより基板12上に干渉縞14を多重化して設けられるので、効率的に精度よく結像距離変位となるz情報と光軸距離変位となるxy情報とを相互に線形変換することの可能なホログラム光学素子10を効率的に生成することができる。
次に、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子を適用した光学装置の一例について、図面を使用しながら説明する。図7は、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子を備える光学装置の概略構成を示すブロック図である。
本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子10は、単一のホログラム光学素子で精度よく確実に物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。このため、本実施形態のホログラム光学素子10によって、高分解能・長深度・高精度な三次元イメージングの実現や、シンプルなハードウェアによる一画素イメージングの実現が可能になるので、テラヘルツ分野への要素技術に、又は3D計測を行う蛍光顕微鏡等の光学顕微鏡や撮影システム等の光学装置100に適用される。
本実施形態の光学装置100は、複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する装置であって、図7に示すように、被写体となる撮像対象を撮像して得られた画素信号を画像データに変換する撮像部110と、撮像部110で変換された画像データに所定の画像処理を行う画像処理部120とを備える。
撮像部110は、発光された光を利用して撮像対象を撮像する機能を有し、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子10と撮像素子112によって構成される。ホログラム光学素子10は、入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させることによって、撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する機能を有する。撮像素子112は、ホログラム光学素子10で符号化された符号化像を取得する機能を有する。
本実施形態では、ホログラム光学素子10によって、より確実に精度よく物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換することができる。このため、撮像部110でより精度の良い三次元イメージングを実現されるようになる。
画像処理部120は、撮像素子112で取得された符号化像を撮像対象の距離又は空間位置を反映した画像に再構成する機能を有する。本実施形態では、画像処理部120は、図7に示すように、距離・空間情報復号部122と、復号精度改善処理部124、及びスペクトル情報復号処理部126とを備える。
距離・空間情報復号部122は、撮像対象の撮像素子112からの距離と空間情報を復号する機能を有する。復号精度改善処理部124は、距離・空間情報復号部122で得られた信号のノイズを処理する機能を有する。スペクトル情報復号処理部126は、復号精度改善処理部124でノイズを処理した信号のスペクトル情報の復号処理をする機能を有する。
本実施形態では、ホログラム光学素子10を用いるため、波長分散が生じる。このため、かかる波長分散の影響は、分散補償により除去するか、敢えて補償せずにスペクトル計測に用いれば良い。その際に、分散方向と像点移動方向を直交するようにする。
また、本実施形態では、ホログラム光学素子10の回折を利用するため、ノイズとして不要次数成分、クロストーク成分が像に表れる。しかしながら、0次成分を分離せずにそのまま残存させて1次成分と重畳させても、ピーク信号がはっきり視認できることもあるので、解析の上では、特に問題にならない場合が多いと考えられる。
このため、本実施形態では、復号精度改善処理部124は、ノイズとなるクロストーク成分の程度に応じて、無視するか、デコンボリューションで除去するか、ベイズ推定で局在化することによって、当該クロストーク成分を処理するようにしている。すなわち、本実施形態では、物体光の結像距離変位となるz情報を像面の光軸距離変位となるx情報に、又は物体光のx情報を像面のz情報に線形変換する際に、クロストーク成分等のノイズを処理するので、より精度よく三次元イメージングを実現できる。
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るホログラム光学素子は、ホログラムの多重記録特性を利用して、独立の入出力応答を持つ複数のホログラムを単一素子上に空間多重化して実装することによって生成される。このため、様々なパラメータの要素zx変換CGHを空間多重化により単一素子上に実装できるので、異なる結像距離変位量, 光軸変位量を持つ複数の要素ホログラムを単一素子上に空間多重させて構成される。このため、単一の多重化ホログラム素子という簡素な構成で精度よく光のz位置情報をx位置情報に、又はx位置情報をz位置情報に線形変換できるようになる。
このため、本実施形態のホログラム光学素子を三次元イメージングに適用することによって、三次元イメージングにおける分解能や対象深度範囲、距離復号処理の精度を高めることができる。また、一画素イメージングにおける画質・計算量や撮像系のハードウェアの複雑化・大型化の課題も解消できる。すなわち、本実施形態のホログラム光学素子を三次元イメージングや一画素イメージングに応用することによって、高分解能・長深度範囲を高めた上で、スペクトル計測の同時実現や、一画素イメージングの実装にも適用して装置の小型化が図れるので、極めて大きな工業的価値を有する。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ホログラム光学素子、及び光学装置の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 ホログラム光学素子、12 基板、14 干渉縞、100 光学装置、110 撮像部、112 撮像素子、120 画像処理部、122 距離・空間情報復号部、124 復号精度改善処理部、126 スペクトル情報復号処理部

Claims (6)

  1. 入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子であって、
    透光性又は反射性を有する基板と、
    前記基板に設けられる干渉縞と、を備え、
    前記干渉縞は、前記入射光の前記基板からの距離となる結像距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は前記入射光の前記光軸距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記結像距離変位に線形変換が可能となるように前記基板に設けられていることを特徴とするホログラム光学素子。
  2. 前記基板には、前記干渉縞として複数種類の干渉縞が多重化して設けられることを特徴とする請求項1に記載のホログラム光学素子。
  3. 前記基板には、計算機合成ホログラムにより前記干渉縞を多重化して設けられることを特徴とする請求項2に記載のホログラム光学素子。
  4. 基板に干渉縞を設けて入射光を回折させて透過光又は反射光を偏向させるホログラム光学素子の製造方法であって、
    前記入射光の前記基板からの距離となる結像距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記基板と平行に展開される光軸距離変位に、又は前記入射光の前記光軸距離変位を前記透過光又は前記反射光の前記結像距離変位に移す一の要素計算機合成ホログラムを生成する工程と、
    前記結像距離変位及び前記光軸距離変位を線形に変化させながら複数の要素計算機合成ホログラムを生成する工程と、
    前記複数の要素計算機合成ホログラムを空間多重して前記基板に前記干渉縞を生成する工程と、を有することを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
  5. 複数の光学情報を含む撮像対象を撮像する光学装置であって、
    前記撮像対象を光学情報ごとに分割してから符号化する請求項1乃至4の何れか1項に記載のホログラム光学素子と、
    前記ホログラム光学素子で符号化された符号化像を取得する撮像素子と、
    前記撮像素子で取得された前記符号化像を前記撮像対象の距離又は空間位置を反映した画像に再構成する画像処理部と、を備え、
    前記画像処理部は、
    前記撮像対象の撮像素子からの距離と空間情報を復号する距離・空間情報復号部と、
    前記距離・空間情報復号部で得られた信号のノイズを処理する復号精度改善処理部と、
    前記復号精度改善処理部で前記ノイズを処理した信号のスペクトル情報の復号処理をするスペクトル情報復号処理部と、を備えることを特徴とする光学装置。
  6. 前記復号精度改善処理部は、前記ノイズの程度に応じて無視するか、デコンボリューションで除去するか、ベイズ推定で局在化することによって前記ノイズを処理することを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
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JP2020514809A (ja) * 2017-08-24 2020-05-21 艶 馮 非再入型の2次的にひずめる(nrqd)回折格子及び回折格子プリズムに基づく4次元多平面広帯域結像システム

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