JP2019100929A - 膠芽腫マーカー及びその使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規膠芽腫マーカーを提供する。【解決手段】膠芽腫マーカーは、C9(complement component 9)、SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)、GSN(gelsolin)、IGHA1(Ig alpha−1 chain C region)及びAPOA4(apolipoprotein A−IV)からなる群より選ばれる1種以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、膠芽腫マーカー及びその使用に関する。具体的には、本発明は、膠芽腫マーカー、膠芽腫診断薬、被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法、被検者が膠芽腫に罹患している可能性をモニタリングする方法、血液の判定方法、組織の判定方法及び髄液の判定方法に関する。
日本国内での脳腫瘍の発生頻度は年間に約2万人と考えられ、脳腫瘍は組織学的におおよそ150に分類される。悪性神経膠腫治療の第一段階は腫瘍の可及的切除であるが、脳の機能温存と、神経膠腫による強い浸潤性の観点から、手術による根治は困難である。従って、悪性神経膠腫は外科療法に引き続いて化学療法、放射線療法を中心とした補助療法を行うことが不可欠と考えられ、治療効果改善の試みが続けられてきた。この40年間に神経膠腫を含む悪性脳腫瘍の治療成績は改善したが、膠芽腫は未だあらゆる癌の中で最も予後不良である。膠芽腫の治療成績を改善するために、無症状の状態での早期発見を可能とし、再発早期に診断するためのマーカーが求められている。
これまで、膠芽腫のバイオマーカーとしては、chitinase−3−like protein 1(例えば、非特許文献1及び2参照)、glial fibrillary acidic protein(例えば、非特許文献3参照)、matrix metalloproteinase−9(例えば、非特許文献1参照)、epidermal growth factor receptor(例えば、非特許文献4参照)、 CD14(例えば、非特許文献5参照)、a proliferation−inducing ligand(例えば、非特許文献6参照)、及び、insulin−like growth factor binding protein−2(例えば、非特許文献7参照)が報告されている。
Hormigo A et al., "YKL-40 and MatrixMetalloproteinase-9 as Potential Serum Biomarkers for Patients with High-Grade Gliomas.", Clin Cancer Res, Vol. 12, Issue 19, p5699-5704, 2006. Iwamoto F M et al., "Serum YKL-40 is a marker of prognosis and disease status in high-grade gliomas.", Neuro Oncol, Vol. 13, Issue 11, p1244-1251, 2011. Jung C S et al., "Serum GFAP is a diagnostic marker for glioblastoma multiforme.", Brain, Vol. 130, Issue 12, p3336-3341, 2007. Quaranta M et al., "Epidermal growth factor receptor serum levels and prognostic value in malignant gliomas.", Tumori, Vol. 93, Issue 3, p275-280, 2007. Zhou M et al., "Circulating levels of the innate and humoral immune regulators CD14 and CD23 are associated with adult glioma.", Cancer Res, Vol. 70, Issue 19, p7534-7542, 2010. Ilzecka J et al., "APRIL is increased in serum of patients with brain glioblastoma multiforme.", Eur Cytokine Netw, Vol. 17, Issue 4, p276-280, 2006. Lin Y et al., "Plasma IGFBP-2 levels predict clinical outcomes of patients with high-grade gliomas.", Neuro Oncol, Vol. 11, Issue 5, p468-476, 2009.
しかしながら、非特許文献1〜7に報告されている膠芽腫のバイオマーカーは、実際に膠芽腫の診断には用いられていない。そのため、臨床診断に使用可能であり、膠芽腫の早期発見や病勢を反映する新たな膠芽腫マーカーの開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新たな膠芽腫マーカーを提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る膠芽腫マーカーは、C9(complement component 9)、SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)、GSN(gelsolin)、IGHA1(Ig alpha−1 chain C region)及びAPOA4(apolipoprotein A−IV)からなる群より選ばれる1種以上からなる。
本発明の第2態様に係る膠芽腫診断薬は、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4に対する特異的結合物質又はこれらの組み合わせ、安定同位体標識されたC9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はこれらの組み合わせ、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子を増幅可能なプライマーセット又はこれらの組み合わせ、及び、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ又はこれらの組み合わせ、からなる群より選ばれる1種以上を備える。
上記第2態様に係る膠芽腫診断薬において、前記特異的結合物質がC9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4に結合する抗体又は該抗体断片であってもよい。
本発明の第3態様に係る被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法は、被検者より採取した検体中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上を測定する方法である。
上記第3態様に係る方法において、前記検体が被検者より経時的に採取した検体であってもよい。
上記第3態様に係る方法において、前記検体が血液、髄液、又は尿であってもよい。
上記第3態様に係る方法は、以下の(1A)〜(2A)の工程を含んでもよい。
(1A)被検者から採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度を測定する工程;
(2A)前記工程(1A)で測定したC9及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9及び/又はSERPINA3の濃度よりも高い場合、並びに、前記工程(1A)で測定したGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患していると判定し、健常者より採取した血液中の、対応するC9及び/又はSERPINA3の濃度と同じ若しくは低い場合、並びに、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ若しくは高い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定する工程
上記第3態様に係る方法は、以下の(1B)〜(2B)の工程を含んでもよい。
(1B)被検者から採取した髄液中の、GSN及び/又はIGHA1の濃度を測定する工程;
(2B)前記工程(1B)で測定したGSN濃度が、健常者より採取した髄液中の、GSN濃度よりも低い場合、及び、前記工程(1B)で測定したIGHA1濃度が、健常者より採取した髄液中の、IGHA1濃度よりも高い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患していると判定し、健常者より採取した髄液中の、GSN濃度と同じ若しくは高い場合、及び、健常者より採取した髄液中の、IGHA1濃度と同じ若しくは低い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定する工程
上記第3態様に係る方法において、前記工程(1A)又は前記工程(1B)が免疫学的測定法又は質量分析法によって行われてもよい。
本発明の第4態様に係る血液の判定方法は、血液中のC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量を測定する工程と、測定されたC9及び/又はSERPINA3の存在量が、健常者の血液中の、対応するC9及び/又はSERPINA3の存在量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中のGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量と比較して少ない場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、を備える方法である。
本発明の第5態様に係る組織の判定方法は、組織中のC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量を測定する工程と、測定されたC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量が、健常者の組織中の、対応するC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量が、健常者の組織中の、対応するGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量と比較して少ない場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、を備える方法である。
本発明の第6態様に係る髄液の判定方法は、髄液中のGSN及び/又はIGHA1の存在量を測定する工程と、測定されたGSNの存在量が、健常者の髄液中のGSNの存在量と比較して少ない場合、及び、測定されたIGHA1の存在量が、健常者の髄液中のIGHA1の存在量と比較して多い場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、を備える方法である。
上記態様によれば、新規の膠芽腫マーカーを提供することができる。
実施例1における14例の膠芽腫症例及び15名の健常者の血液を解析対象検体とした次世代プロテオミクスSWATH(Sequential Windowed Acquisition of all Theoretical fragment ions)法を用いた膠芽腫バイオマーカー探索の流れを示す工程図である。 実施例1における8種の膠芽腫バイオマーカーの膠芽腫症例の血漿中及び健常者の血漿中の濃度の絶対値を比較したグラフである。 実施例2における14例の膠芽腫症例及び5名の健常者の髄液を解析対象検体とした次世代プロテオミクスSWATH法を用いた膠芽腫バイオマーカー探索の流れを示す工程図である。 実施例2における14例の膠芽腫症例の手術前及び手術後の髄液中、並びに、5名の健常者の髄液中の2種の膠芽腫バイオマーカーを質量分析計のMRMモードで解析した結果(ピーク面積比)を示すグラフである。 実施例3における膠芽腫症例の血漿中及び健常者の血漿中のGSNの濃度の絶対値を比較したグラフである。 実施例3における膠芽腫症例の詳細及び症例数、並びに健常者の症例数を示した表である。
≪膠芽腫マーカー≫
本実施形態の膠芽腫マーカーは、C9(complement component 9)、SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)、GSN(gelsolin)、IGHA1(Ig alpha−1 chain C region)及びAPOA4(apolipoprotein A−IV)からなる群より選ばれる1種以上からなる。
実施例において後述するように、本発明者らは、膠芽腫患者の血液、手術前後の髄液及び腫瘍組織に含まれるタンパク質を次世代プロテオミクスSWATH(Sequential Windowed Acquisition of all Theoretical fragment ions)法により、網羅的に分析、比較し、膠芽腫患者の血液、手術前の髄液及び腫瘍組織中において、特異的に存在量が変化するタンパク質として、LRG1(leucine−rich alpha−2−glycoprotein 1)、C9、CRP(C−reactive protein)、SERPINA3、APOB(Apolipoprotein B−100)、GSN、IGHA1及びAPOA4を同定した。
一般に、「C9(complement component 9)」は、細胞溶解を引き起こす親水性の膜貫通型チャネルの構成成分の一つであり、71kDaのタンパク質である。また、C9の欠損は髄膜炎菌による反復感染と関連していることが知られている。ヒトC9のUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP02748等である。
一般に、「SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)」は、α−グロブリン糖タンパク質であり、体内で炎症反応が生じているときに誘導されることが知られている。ヒトSERPINA3のUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP01011等である。
一般に、「GSN(gelsolin)」は、アクチンフィラメントの集合及び分解の調節を担うアクチン結合タンパク質である。ヒトGSNのUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP06396、Q5T0I1等である。
一般に、「IGHA1(Ig alpha−1 chain C region)」は、Igα1鎖の定常(C)部位であり、粘膜における免疫機能に重要な役割を果たす抗体である。ヒトIGHA1のUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP01876等である。
一般に、「APOA4(apolipoprotein A−IV)」は、血漿タンパク質であり、脂質代謝、食欲及び消化管機能調節に関与することが知られている。ヒトAPOA4のUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP06727等である。
一般に、「LRG1(leucine−rich alpha−2−glycoprotein 1)」は、ロイシンリッチな繰り返し配列を有するタンパク質であり、血管新生糖タンパク質として知られている。ヒトLRG1のUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP02750等である。
一般に、「CRP(C−reactive protein)」は、体内で炎症反応、組織破壊が生じているときに血中に現れるタンパク質であり、細菌の凝集に関与している。ヒトCRPのUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP02741等である。
一般に、「APOB(Apolipoprotein B−100)」は、リポタンパク質と結合するタンパク質であって、4538アミノ酸残基よりなる大きなタンパク質である。また、LDL受容体の主要なリガンドとして働くことが知られている。ヒトAPOBのUniProtKBデータベースのアクセッション番号はP04114等である。
したがって、LRG1、C9、CRP、SERPINA3、APOB、GSN、IGHA1及びAPOA4を膠芽腫マーカーとして利用することができる。これらタンパク質のうち1種単独で膠芽腫マーカーとして用いてもよく、2種以上組み合わせて膠芽腫マーカーとして用いてもよい。
また、膠芽腫マーカーとして利用される上記タンパク質は、それらタンパク質の全アミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、それらタンパク質のペプチド断片であってもよい。
上記タンパク質のペプチド断片としては、例えば、以下の(1)〜(8)に例示する物等が挙げられる。
(1)LRG1のペプチド断片:配列番号1に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(2)C9のペプチド断片:配列番号2に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(3)CRPのペプチド断片:配列番号3に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(4)SERPINA3のペプチド断片:配列番号4に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(5)APOBのペプチド断片:配列番号5に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(6)GSNのペプチド断片:配列番号6又は9に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(7)IGHA1のペプチド断片:配列番号7又は10に示すアミノ酸配列からなるペプチド
(8)APOA4のペプチド断片:配列番号8に示すアミノ酸配列からなるペプチド
また、本実施形態は、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4の膠芽腫マーカーとしての使用を提供するものであるということもできる。
≪膠芽腫診断薬≫
本実施形態の膠芽腫診断薬は、下記(a)〜(d)からなる群より選ばれる1種以上を備える。
(a)C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4に対する特異的結合物質又はこれらの組み合わせ;
(b)安定同位体標識されたC9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はこれらの組み合わせ;
(c)C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子を増幅可能なプライマーセット又はこれらの組み合わせ;
(d)C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ又はこれらの組み合わせ
本実施形態の膠芽腫診断薬は、上記(a)〜(d)のうち1種単独で備えていてもよく、2種以上組み合わせて備えてもよい。
本実施形態の膠芽腫診断薬は、診断用キットであるということもできる。
<特異的結合物質>
特異的結合物質としては、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。
[抗体]
抗体は、例えば、マウス等の動物に、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はそれらの断片を抗原として免疫することによって作製することができる。或いは、例えば、ファージライブラリーのスクリーニングにより作製することができる。
[抗体断片]
抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。
[アプタマー]
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。
標的ペプチドに特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。
また、標的ペプチドに特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo−hybrid法等により選別することができる。
また、本実施形態の膠芽腫診断薬は、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4に対する特異的結合物質を1種単独で備えてもよく、2種以上組み合わせて備えていてもよい。さらに、LRG1、CRP、APOBに対する特異的結合物質も備えていてもよい。
本実施形態の膠芽腫診断薬は、被検者由来の血液(血清、血漿等)、髄液を含む体液、尿組織等を試料に用い、試料中のC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上を検出するものであってもよい。特に、血液(血清、血漿等)、尿は低侵襲で採取可能な生体試料であるため、患者の負担が少なく、容易に膠芽腫に罹患しているか否かを診断することができる。
特異的結合物質を用いたC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の検出方法としては、例えば、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等が挙げられる。なお、逆相タンパク質アレイを用いた検出とは、試料を固相にアレイ状に固定し、検出対象物質に特異的な抗体等を反応させることにより、試料中の検出対象物質を検出する解析方法である。
<安定同位体標識されたタンパク質>
安定同位体標識されたタンパク質としては、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はそれらの断片を、安定同位体を用いて標識したもの等が挙げられる。
また、本実施形態の膠芽腫診断薬は、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はそれらの断片を安定同位体標識したものを1種単独で備えてもよく、2種以上組み合わせて備えていてもよい。さらに、LRG1、CRP、APOB又はその断片を安定同位体標識したものも備えていてもよい。
安定同位体標識されたタンパク質は、後述の実施例に示すように、安定同位体で標識されたアミノ酸を用いて、上述のタンパク質又はそれらの断片を合成することで得られる。
安定同位体としては、例えば13C、15N、H、17O、18Oが挙げられる。
安定同位体で標識されたアミノ酸としては、20種類のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、システイン、アスパラギン、グルタミン)であって、上述のペプチドに含まれるアミノ酸であれば特に限定されない。また、アミノ酸はL体であってもD体であってもよく、必要に応じて適宜選択することができる。
安定同位体標識されたタンパク質の作製方法として具体的には、上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターを安定同位体標識アミノ酸の存在する系で発現させることにより調製することができる。安定同位体標識アミノ酸の存在する系としては、例えば安定同位体標識アミノ酸の存在する無細胞ペプチド合成系や生細胞ペプチド合成系等が挙げられる。すなわち、無細胞ペプチド合成系において安定同位体標識アミノ酸に加えて安定同位体非標識アミノ酸を材料としてペプチドを合成させることや、生細胞ペプチド合成系において、上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターで形質転換した細胞を安定同位体標識アミノ酸存在下で培養することにより、上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターから安定同位体標識されたタンパク質を調製することができる。
無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識されたタンパク質の発現は、上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターや安定同位体標識アミノ酸の他に、安定同位体標識されたタンパク質の合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸、無細胞ペプチド合成用細胞抽出液、エネルギー源(ATP、GTP、クレアチンホスフェート等の高エネルギーリン酸結合含有物)等を用いて行うことができる。温度、時間等の反応条件は、適宜最適な条件を選択して行うことができ、例えば温度は20℃以上40℃以下とすることができ、23℃以上37℃以下が好ましい。また、例えば、反応時間は1時間以上24時間以下とすることができ、10時間以上20時間以下が好ましい。
本明細書において、「無細胞ペプチド合成用細胞抽出液」とは、リボソーム、tRNA等のタンパク質合成に関与する翻訳系、又は、転写系及び翻訳系に必要な成分を含む植物細胞、動物細胞、真菌細胞、細菌細胞からの抽出液を意味する。具体的には、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網赤血球、マウスL−細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞、出芽酵母等の細胞抽出液が挙げられる。かかる細胞抽出液の調製は、例えば、上記の細胞をフレンチプレス、グラスビーズ、超音波破砕装置等を用いて破砕処理し、タンパク質成分やリボソームを可溶化するための数種類の塩を含有する緩衝液を加えてホモジナイズし、遠心分離にて不溶成分を沈殿させることによって行うことができる。
また、無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識されたタンパク質の発現は、例えば、小麦胚芽抽出液を備えたPremium Expression Kit(セルフリーサイエンス社製)、大腸菌抽出液を備えたRTS 100,E.coli HY Kit(Roche Applied Science社製)、無細胞くんQuick(大陽日酸社製)等市販のキットを適宜使用して行ってもよい。発現させた安定同位体標識されたタンパク質が不溶性の場合、グアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いて適宜可溶化させてもよい。安定同位体標識されたタンパク質は、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理により調製することもできる。
生細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識されたタンパク質の発現は、生細胞に上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターを導入し、かかる生細胞を栄養分や抗生物質等の他、安定同位体標識アミノ酸、安定同位体標識ペプチドの合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸等を含む培養液中で培養することにより行うことができる。
ここで、生細胞としては、上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターを発現させることができる生細胞であれば特に限定されず、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等の生細胞が挙げられる。中でも、生細胞としては、簡便性や費用対効果の面から考慮すると、大腸菌が好ましい。
上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターの発現は、遺伝子組換え技術により、それぞれの生細胞で発現できるように設計された発現ベクターへ組み込み、かかる発現ベクターを生細胞へ導入することにより行うことができる。また上述のタンパク質又はそれらの断片をコードする核酸を含むベクターの生細胞への導入は、使用する生細胞に適した方法で行うことができる。生細胞への導入方法として具体的には、例えば、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)等の市販のトランスフェクション試薬を用いた方法等が挙げられる。
生細胞ペプチド合成系により発現させた安定同位体標識されたタンパク質は、安定同位体標識されたタンパク質を含む生細胞を破砕処理や抽出処理することにより調製することができる。破砕処理としては、例えば凍結融解法、フレンチプレス、グラスビーズ、ホモジナイザー、超音波破砕装置等を用いた物理的破砕処理等が挙げられる。また抽出処理としては、例えばグアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いた抽出処理等が挙げられる。安定同位体標識されたタンパク質は、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理等により調製することもできる。
安定同位体標識されたタンパク質を用いたC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の検出方法としては、例えば、質量分析法等が挙げられる。
<プライマーセット>
C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子を増幅可能なプライマーセットとは、これらの遺伝子のmRNAをRT−PCR等により増幅することができるものであれば特に制限されない。
また、本実施形態の膠芽腫診断薬は、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子を増幅可能なプライマーセットを1種単独で備えていてもよく、2種以上組み合わせて備えていてもよい。さらに、LRG1遺伝子、CRP遺伝子、APOB遺伝子を増幅可能なプライマーセットも備えていてもよい。
これらの遺伝子のmRNAは、以下の(1)〜(8)に示すIDで特定されるSeqデータベースのエントリーに記載された塩基配列を有している。なお、mRNAにはスプライシングバリアント等が存在する場合があるため、これらの遺伝子のmRNAは以下の(1)〜(8)に示すSeq IDで特定されるものに限られるものではない。
(1)ヒトLRG1のmRNAのRefSeq ID:NM_052972等
(2)ヒトC9のmRNAのRefSeq ID:NM_001737等
(3)ヒトCRPのmRNAのRefSeq ID:NM_000567、NM_001329057、NM_001329058等
(4)ヒトSERPINA3のmRNAのRefSeq ID:NM_001085等
(5)ヒトAPOBのmRNAのRefSeq ID:NM_000384
(6)ヒトGSNのmRNAのRefSeq ID:NM_000177、NM_001127662、NM_001127662、NM_001127664、NM_001127665等
(7)ヒトIGHA1のmRNAのRefSeq ID:Seq ID:AF067420.1、AF283666.1、AJ294729.1、AK027379.1、AK058027.1、 AK074651.1、AK092384.1、AK092803.1、AK092819.1、AK093721.1、AK095222.1、AK096985.1、AK097017.1、AK097028.1、AK097076.1、AK097303.1、AK097305.1、AK097320.1、AK097329.1、AK097345.1、AK097348.1、AK097362.1、AK097955.1、AK123546.1、AK123783.1、AK125238.1、AK125582.1、AK126279.1、AK126543.1、AK127921.1、AK128476.1、AK128565.1、AK128652.1、AK128664.1、AK129592.1、AK129620.1、AK130433.1、AK130453.1、AK130465.1、AK130468.1、AK130476.1、AK130501.1、AK130529.1、AK130796.1、AK131065.1、AY885214.2、AY885215.2、BC005951.1、BC016369.1、BC032249.1、BC073771.1、BC087841.1、BC092449.1、BX640624.1、BX640626.1、BX640847.1
(8)ヒトAPOA4のmRNAのRefSeq ID:NM_000482等
例えば、被検者由来の組織等を試料に用い、本プライマーセットを用いたRT−PCR等を行うことにより、試料中の、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上のmRNAを検出することができる。
<プローブ>
プローブとしては、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするものであれば特に限定されない。
また、本実施形態の膠芽腫診断薬は、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを1種単独で備えていてもよく、2種以上組み合わせて備えていてもよい。さらに、LRG1遺伝子、CRP遺伝子、APOB遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブも備えていてもよい。
プローブは、担体上に固定されてDNAマイクロアレイ等を構成していてもよい。例えば、上記のDNAマイクロアレイに、被検者由来の組織から抽出したmRNAを接触させ、プローブにハイブリダイズしたC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上のmRNAを検出することにより、被検者が膠芽腫に罹患しているか否かを判定することができる。
≪被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法≫
本実施形態の被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法は、被検者より採取した検体中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上を測定する方法である。
また、本実施形態の方法において、上記5種のタンパク質に加えて、LRG1、CRP、APOBを測定してもよい。
本実施形態において用いられる検体としては、被検者から採取された生体試料であればよく、例えば、血液、髄液、尿、パフィーコート、唾液、精液、胸部滲出液、脳脊髄液(髄液)、涙液、痰、粘液、リンパ液、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、脳組織片等が挙げられる。血液としては、全血、血清、血漿が含まれる。中でも、検体としては、血液、髄液、又は尿であることが好ましい。
<第1実施形態>
本実施形態の方法は、検体が血液である場合、以下の工程(1A)〜(2A)を含む方法により行うことができる。
(1A)被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度を測定する工程;
(2A)前記工程(1A)で測定したC9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度よりも高い場合、並びに、前記工程(1A)で測定したGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患していると判定し、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ若しくは低い場合、並びに、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ若しくは高い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定する工程
[工程(1A)]
工程(1A)は、被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度を測定する工程である。採取された血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、例えば、上述した特異的結合物質を用いた、免疫学的測定法、又は、安定同位体で標識された上記のタンパク質を用いた、質量分析法によって測定することができる。
免疫学的測定法としては、例えば、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等により行うことができる。
ここで、測定したC9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、段階希釈した既知濃度の上記タンパク質を基準に用いて定量値に換算してもよい。
[工程(2A)]
工程(2A)は、被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と、健常者より採取した血液中の、対応するC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度とを対比する工程である。
被検者より採取した血液中の、C9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度よりも高い場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ又は低い場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
或いは、被検者より採取した血液中の、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ又は高い場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、該被検者が膠芽腫に罹患している可能性を判定するための基準値であり、複数の健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度を測定し、その統計から健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度を設定することができる。
被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と、健常者より採取した血液中の、対応するC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度とを対比する方法としては、特に限定はなく、公知の方法(例えば、Steel法、t検定、Wilcoxon検定等)を用いることができる。
該解析により、被検者より採取した血液中の、C9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度よりも高いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ又は低いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
或いは、該解析により、被検者より採取した血液中の、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ又は高いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
<第2実施形態>
本実施形態の方法は、検体が髄液である場合、以下の工程(1B)〜(3B)を含む方法により行うことができる。
(1B)被検者より採取した髄液中の、GSN及び/又はIGHA1の濃度を測定する工程;
(2B)前記被検者より採取した髄液中の、GSN濃度が、健常者より採取した髄液中の、GSN濃度よりも低い場合、及び、前記工程(2B)で測定したIGHA1濃度が、健常者より採取した髄液中の、IGHA1濃度よりも高い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患していると判定し、健常者より採取した髄液中の、GSN濃度と同じ若しくは高い場合、及び、健常者より採取した髄液中の、IGHA1濃度と同じ若しくは低い場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定する工程
[工程(1B)]
工程(1B)は、被検者より採取した髄液中の、GSN及び/又はIGHA1の濃度を測定する工程である。工程(1B)で採取された髄液中の、GSN又はIGHA1の各濃度は、例えば、上述した特異的結合物質を用いた、免疫学的測定法、又は、安定同位体で標識された上記のタンパク質を用いた、質量分析法によって測定することができる。
免疫学的測定法としては、例えば、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等により行うことができる。
ここで、測定したGSN又はIGHA1の各濃度は、段階希釈した既知濃度の上記タンパク質を基準に用いて定量値に換算してもよい。
[工程(2B)]
工程(2B)は、工程(1B)で得られた被検者より採取した髄液中の、GSN及び/又はIGHA1の濃度と、健常者より採取した髄液中の、対応するGSN及び/又はIGHA1の濃度とを対比する工程である。
被検者より採取した髄液中の、GSNの濃度が、健常者より採取した髄液中の、GSNの濃度よりも低い場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、GSNの濃度と同じ又は高い場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
又は、被検者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度が、健常者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度よりも高い場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度と同じ又は低い場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
健常者より採取した髄液中の、GSN又はIGHA1の各濃度は、該被検者が膠芽腫に罹患している可能性を判定するための基準値であり、複数の健常者より採取した髄液中の、GSN又はIGHA1の各濃度を測定し、その統計から健常者より採取した髄液中の、GSN又はIGHA1の各濃度を設定することができる。
被検者より採取した髄液中の、GSN及び/又はIGHA1の濃度と、健常者より採取した髄液中の、対応するGSN及び/又はIGHA1の濃度とを対比する方法としては、特に限定はなく、公知の方法(例えば、Steel法、t検定、Wilcoxon検定等)を用いることができる。
該解析により、被検者より採取した髄液中の、GSNの濃度が、健常者より採取した髄液中の、GSNの濃度よりも低いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した髄液中の、GSNの濃度と同じ又は高いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
或いは、該解析により、被検者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度が、健常者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度よりも高いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した髄液中の、IGHA1の濃度と同じ又は低いことが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
≪被検者が膠芽腫に罹患している可能性をモニタリングする方法≫
本実施形態の被検者が膠芽腫に罹患している可能性をモニタリングする方法は、被検者より経時的に採取した検体中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上を測定する方法である。
また、本実施形態の方法において、上記5種のタンパク質に加えて、LRG1、CRP、APOBを測定してもよい。
本実施形態において用いられる検体としては、上記「被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法」において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、検体としては、血液、髄液、又は尿であることが好ましい。
本実施形態の方法は、検体が血液である場合、以下の工程(1C)〜(2C)を含む方法により行うことができる。
(1C)被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度を測定する工程;
(2C)前記工程(1C)で測定したC9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINAの濃度よりも高い濃度で維持されている場合、並びに、前記工程(1C)で測定したGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い濃度で維持されている場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患していると判定し、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ若しくは低い濃度で維持されている場合、並びに、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ若しくは高い濃度で維持されている場合のうち少なくともいずれかである場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定する工程
[工程(1C)]
工程(1C)は、被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度を測定する工程である。採取された血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、例えば、上述した特異的結合物質を用いた、免疫学的測定法、又は、安定同位体で標識された上記5種のタンパク質を用いた、質量分析法によって測定することができる。
免疫学的測定法としては、例えば、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等により行うことができる。
ここで、測定したC9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、段階希釈した既知濃度の上記タンパク質を基準に用いて定量値に換算してもよい。
[工程(2C)]
工程(2C)は、工程(1C)で得られた被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と、健常者より採取した血液中の、対応するC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度とを対比する工程である。
被検者より採取した血液中の、C9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度よりも高い濃度で維持されている場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ又は低い濃度で維持されている場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
或いは、被検者より採取した血液中の、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い濃度で維持されている場合には該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ又は高い濃度で維持されている場合には、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度は、該被検者が膠芽腫に罹患している可能性を判定するための基準値であり、複数の健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度を測定し、その統計から健常者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各濃度を設定することができる。
被検者より採取した血液中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と、健常者より採取した血液中の、対応するC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度とを対比する方法としては、特に限定はなく、公知の方法(例えば、Steel法、t検定、Wilcoxon検定等)を用いることができる。
該解析により、被検者より採取した血液中の、C9、及び/又はSERPINA3の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度よりも高い濃度で維持されていることが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の濃度と同じ又は低い濃度で維持されていることが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
或いは、該解析により、被検者より採取した血液中の、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度が、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度よりも低い濃度で維持されていることが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性が高いと判定され、健常者より採取した血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の濃度と同じ又は高い濃度で維持されていることが示された場合は、該被検者は膠芽腫に罹患している可能性は低いと判定される。
また、膠芽腫患者の手術前及び手術後において、経時的に血液を採取して、本実施形態の方法を適用することで、膠芽腫に罹患している人の病勢把握、膠芽腫患者の術後の経過状態の把握、再発診断等を簡便に判定することができる。
≪血液の判定方法≫
本実施形態の血液の判定方法は、以下の工程(1E)及び工程(2E)を備える方法である。
(1E)血液中のC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量を測定する工程;
(2E)前記(1E)で測定されたC9、及び/又はSERPINA3の存在量が、健常者の血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の存在量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中のGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量と比較して少ない場合のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程
本実施形態の判定方法により、血液が膠芽腫患者由来のものであるか否かを判定することができる。すなわち、本実施形態の判定方法は、膠芽腫の診断方法であるということもできる。本実施形態の判定方法によれば、膠芽腫を特異的に検出することができる。
また、本実施形態の判定方法において、上記5種のタンパク質の存在量に加えて、LRG1、CRP、APOBの存在量を測定し、膠芽腫患者由来の血液であるか否かの判定に用いてもよい。
<工程(1E)>
本実施形態の判定方法において、血液としては、血清又は血漿であってもよい。血液中のC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量を測定する工程は、安定同位体で標識された上記のタンパク質を用いた質量分析法、又は、上述した特異的結合物質を用いた、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等により行うことができる。ここで、測定したC9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各存在量は、段階希釈した既知濃度の上記タンパク質を基準に用いて定量値に換算してもよい。
<工程(2E)>
本実施形態の判定方法では、血液中の、C9、及び/又はSERPINA3の存在量が、健常者の血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の存在量と比較して多い場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
或いは、血液中の、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量と比較して少ない場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
また、予め健常者由来の血液中に存在する、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4の各存在量に基づいて基準値を設定しておき、当該基準値と比較して、C9、及び/又はSERPINA3の存在量が多い場合、並びに、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が少ない場合、のうち少なくともいずれかの場合に、血液は膠芽腫患者由来のものであると判定してもよい。
≪組織の判定方法≫
本実施形態の組織の判定方法は、以下の工程(1F)及び工程(2F)を備える方法である。
(1F)組織中のC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量を測定する工程;
(2F)測定されたC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量が、健常者の組織中の、対応するC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量が、健常者の組織中の、対応するGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上と比較して少ない場合のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程
本実施形態の判定方法により、組織が膠芽腫患者由来のものであるか否かを判定することができる。すなわち、本実施形態の判定方法は、膠芽腫の診断方法であるということもできる。本実施形態の判定方法によれば、膠芽腫を特異的に検出することができる。
また、本実施形態の判定方法において、上記5種の遺伝子の発現量に加えて、LRG1遺伝子、CRP遺伝子、APOB遺伝子の発現量を測定し、膠芽腫患者由来の組織であるか否かの判定に用いてもよい。
<工程(1F)>
本実施形態の判定方法において、組織は、被検者由来の腫瘍組織等であってもよい。組織中の、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子の各発現量を測定する工程は、上述したプライマーセットを用いたRT−PCR、定量的RT−PCR等により行うことができる。
或いは、上述したプローブを用いたDNAマイクロアレイ解析、ノーザンブロッティング等により、C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子の各発現量を測定してもよい。ここで、測定したC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子の各発現量は、段階希釈した既知濃度の各遺伝子の断片等を基準に用いて定量値に換算してもよい。
<工程(2F)>
また、本実施形態の判定方法では、組織中の、C9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量が、健常者の組織中の、対応する上記遺伝子の発現量と比較して多い場合に、前記組織は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
或いは、組織中のGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量が、健常者の組織中の、対応する上記遺伝子の発現量と比較して少ない場合に、前記組織は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
また、予め健常者由来の組織におけるC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子又はAPOA4遺伝子の各発現量に基づいて基準値を設定しておき、当該基準値と比較してC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量が多い場合、並びに、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量が少ない場合、のうち少なくともいずれかの場合に、組織は膠芽腫患者由来のものであると判定してもよい。
≪髄液の判定方法≫
本実施形態の髄液の判定方法は、以下の工程(1G)及び工程(2G)を備える方法である。
(1G)髄液中のGSN及び/又はIGHA1の存在量を測定する工程;
(2G)測定されたGSNの存在量が、健常者の髄液中のGSNの存在量と比較して少ない場合、及び、測定されたIGHA1の存在量が、健常者の髄液中のIGHA1の存在量と比較して多い場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程
本実施形態の判定方法により、髄液が膠芽腫患者由来のものであるか否かを判定することができる。すなわち、本実施形態の判定方法は、膠芽腫の診断方法であるということもできる。本実施形態の判定方法によれば、膠芽腫を特異的に検出することができる。
また、本実施形態の判定方法において、上記5種のタンパク質の存在量に加えて、LRG1、CRP、APOBの存在量を測定し、膠芽腫患者由来の髄液であるか否かの判定に用いてもよい。
<工程(1G)>
髄液中のGSN及び/又はIGHA1の存在量を測定する工程は、安定同位体で標識された上記2種のタンパク質を用いた質量分析法、又は、上述した特異的結合物質を用いた、サンドイッチELISA、ウエスタンブロット、逆相タンパク質アレイを用いた検出、免疫組織化学染色等により行うことができる。ここで、測定したGSN又はIGHA1の各存在量は、段階希釈した既知濃度の上記タンパク質を基準に用いて定量値に換算してもよい。
<工程(2G)>
本実施形態の判定方法では、髄液中のGSNの存在量が、健常者の髄液中のGSNの存在量と比較して少ない場合に、前記髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
或いは、髄液中のIGHA1の存在量が、健常者の髄液中のIGHA1の存在量と比較して多い場合に、前記髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定する。
また、予め健常者由来の髄液中に存在する、GSN又はIGHA1の各存在量に基づいて基準値を設定しておき、当該基準値と比較してGSNの量が多い場合、及び、IGHA1の量が少ない場合、のうち少なくともいずれかの場合に、髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定してもよい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]血液中の膠芽腫バイオマーカーの探索
次世代プロテオミクスSWATH(Sequential Windowed Acquisition of all Theoretical fragment ions)法(例えば、「参考文献1:特開2015−021739号公報」、「参考文献2:国際公開第2015/008453号」等参照)を用いて、血漿中の膠芽腫バイオマーカー探索を行った(図1参照)。
1.試料の準備
本発明者らは、膠芽腫患者の血漿中のバイオマーカータンパク質は、膠芽腫組織で産生され、嚢胞液(髄液)及び血漿中に放出されると仮定した。そのため、スペクトルライブラリー構築のための試料として、腫瘍組織、嚢胞液(髄液)及び血漿を用いた。
まず、14名の膠芽腫患者の手術前血清及び腫瘍組織、並びに、15名の健常者の血清を採取した。また、14名中3名の膠芽腫患者の手術前後の嚢胞液(髄液)を採取した。
次いで、各腫瘍組織は、緩衝液Aを加えて、Potter−Elvehjemホモジナイザーを用いて、ホモジナイズした。なお、緩衝液Aの組成は、10mMのTris−HCl緩衝液(pH 7.4)、10mMのNaCl、1.5mMのMgCl、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Chemical社製)である。次いで、得られたホモジネートを緩衝液A中で窒素キャビテーション(4℃で15分間、450psi)し、一部のホモジネート溶液を腫瘍組織溶解物として−80℃で保存した。
一方、残りのホモジネート溶液を4℃、10000gで10分間遠心分離し、上清を得た。次いで、得られた上清をさらに4℃、10000gで40分間投遠心分離して、上清を得た。得られた上清を細胞質画分として−80℃で保存した。
次いで、得られたペレットを緩衝液Bに懸濁して、懸濁液を得た。なお、緩衝液Bの組成は、10mMのTris−HCl緩衝液(pH 7.4)及び250mMのスクロースである。得られた懸濁液の一部をミクロソーム画分として−80℃で保存した。
次いで、残りの懸濁液を38(w/v)%スクロース溶液上に重層し、4℃、10000gで40分間遠心分離した。遠心分離後、界面の濁った層を回収し、緩衝液Bに懸濁した。得られた懸濁液を4℃、10000gで40分間遠心分離した。次いで、得られたペレットを原形質膜画分とし、緩衝液Bに懸濁した。
次いで、得られた血漿、嚢胞液、腫瘍組織溶解物、細胞質画分及びミクロソーム画分を100mMのTris−HCl(pH8.5)(8Mの尿素含有)に可溶化し、ジチオトレイトール及びヨードアセトアミドを用いてS−カルボモイルメチル化した。
次いで、S−カルバモイルメチル化した試料を5倍希釈したプロテアーゼMAX界面活性剤(Promega社製、終濃度:0.05%)及び100mMのTris−HCl(pH8.5)を用いて洗浄した。次いで、基質に対する酵素の含有比が1/100(血漿及び嚢胞液)、1/20(腫瘍組織溶解物及びミクロソーム画分)、又は、1/10(細胞質画分)となるように、リジンエンドペプチダーゼ(和光純薬工業社製)を用いて、30℃で3時間処理した。
次いで、処理後の試料を、基質に対する酵素の含有比1/100(血漿及び嚢胞液)、1/20(腫瘍組織溶解物及びミクロソーム画分)、又は、1/10(細胞質画分)となるように、配列グレードの修飾トリプシン(Promega社製)を用いて、37℃で16時間消化した。
次いで、血漿膜画分を変性緩衝液に可溶化し、溶液中のタンパク質をジチオトレイトール及びヨードアセトアミドを用いてS−カルボモイルメチル化した。なお、変性緩衝液の組成は、7Mの塩酸グアニジン、500mMのTris−HCl(pH8.5)及び10mMのEDTAである。また、アルキル化タンパク質をメタノール、クロロホルム及び水の混合液を用いて、沈殿させた。
次いで、沈殿物を100mMのTris−HCl(pH8.5)(6Mの尿素含有)に溶解した。次いで、溶解した試料を、5倍希釈したプロテアーゼMAX界面活性剤(Promega社製、終濃度:0.05%)及び100mMのTris−HCl(pH8.5)を用いて洗浄した。次いで、基質に対する酵素の含有比が1/100となるように、リジンエンドペプチダーゼ(和光純薬工業社製)を用いて、30℃で3時間処理した。
次いで、処理後の試料を、基質に対する酵素の含有比1/100となるように、配列グレードの修飾トリプシン(Promega社製)を用いて、37℃で16時間消化した。
次いで、各トリプシン消化物をSDB−Tip及びGC−Tip(GL Science社製)を用いて、脱塩した。
次いで、スペクトルライブラリー構築のために、等電点に基づくペプチド分離を行った。
次いで、いくつかの脱塩試料(血漿試料のうち1つ及び嚢胞液試料のうち1つ)を3100 OFFGEL分画器(Agilent Technologies社製)を用いて、線形pHグラジエント範囲(pH3〜10)で、12画分に分画した。次いで、分画した試料をSDB−Tip及びGC−Tip(GL Science社製)を用いて、脱塩した。
2.質量分析
次いで、スペクトルライブラリー構築のために、「1.」で脱塩したペプチド試料をエレクトロスプレーイオン化トリプルTOF5600質量分析計(SCIEX社製)と連結したナノLCウルトラ2Dプラス(Eksigent Technologies社製)に注入した。
ナノLCを有するcHiPLCナノフレックスシステム(Eksigent Technologies社製)を使用して、注入したペプチド試料(注入量;5μL、試料中0.02μLの血漿又は0.2μgタンパク質/μL含有)はトラップカラム(200μm×6mm、ReproSil−Pur3μm、C18 (Eksigent Technologies社製))にロードされて、分析カラム(75μm×15cm、ReproSil−Pur3μm、C18‐AQ120A°(Eksigent Technologies社製))で分離された。
流速は、トラップカラムへのロードでは2μL/分(6分間の可動時間)であり、分析カラムでの分離では300nL/分であった。
また、注入されたペプチド試料の溶出条件は以下に示すとおりである。また、溶離液の組成は、A液が0.1%のギ酸含有Milli−Q、B液が0.1のギ酸含有100%アセトニトリルである。
0〜60分:0→20%のB液(上昇)
60〜75分:20%のB液→40%のB液(上昇)
75〜77分:40%のB液→100%のB液(上昇)
77〜82分:100%のB液(維持)
82〜84分:100%のB液→0%のB液(下降)
84〜115分:0%のB液(維持)
また、データを取得するために、300〜1008の質量範囲(m/z)を有する全てのMSスペクトル(全走査型)を正のイオン化モードでデータ依存的分析(data−dependent acquisition;DDA)を用いて記録した。
また、ペプチド試料を断片化するために、1サイクルあたり2+〜5+の間の電荷状態を有する最大20の強力な前駆イオンを選択した。衝突エネルギー核酸は5eVに設定した。その結果、100〜1600m/zの範囲の生成物イオン又はMS/MS断片が収集された。
最適化された断片化効率を達成するために、DDAを使用して、以下の式(I)に基づいて、衝突エネルギー(CE)を自動的に制御した。
CE=0.044×(前駆イオン[m/z])+4 ・・・(I)
また、高感度モードを使用し、断片イオン質量の正確な抽出を行った。
3.スペクトルライブラリーの構築
次いで、ProteinPilot Version 4.5(SCIEX社製)のParagonアルゴリズムを用いてDDAデータを分析し、UniProt Humanプロテオームデータベース(release2016_02、entries)を検索した。
重複したペプチド又はタンパク質を除いた結果、20066個のペプチド及び2930個のタンパク質を含むスペクトルライブラリーが構築された。
4.SWATH−MS分析
次いで、構築されたスペクトルライブラリーを使用して、膠芽腫患者由来の血漿及び健常者由来の血漿について、SWATH−MS分析を行った。なお、スペクトルアラインメント及び標的データ抽出は、PeakviewのSWATH Processing Micro App(バージョン2.0、SCIEX社製)で行った。
その結果、少なくとも1つの試料において、ペプチドの偽陽性率(false discovery rate;FDR)<1%で、7801個のペプチド(962個のタンパク質)を同定した(図1の「Step 1」参照)。
次いで、膠芽腫患者の血漿中において発現量が増加又は減少するタンパク質を選択するために、より高いピーク面積を示す上位3つの遷移を選択した。
5.Cohenのd効果量による分析
次いで、同定されたタンパク質の中から臨床的に有意な発生率であるタンパク質を選択することが重要であるため、試料の大きさに影響されない2群間の差の指標として、Cohenのd効果量(Cohen’s d effect size)を採用した。
全ての上位3つの遷移において、0.5以上の効果量を有するペプチド断片として、1813個のペプチド(158個のタンパク質)が得られた(図1の「Step 2」参照)。
6.平均ピーク面積比の算出
次いで、上位3つの遷移から、膠芽腫患者由来の血漿及び健常者由来の血漿の間のピーク面積比の平均値を得た。これにより、1289個のペプチド(124個の発現量が増加するタンパク質)は、全ての上位3つの遷移において、1.0より大きい平均ピーク面積比であった。一方、506個のペプチド(80個の発現量が減少するタンパク質)は、全ての上位3つの遷移において、1.0未満の平均ピーク面積比であった(図1の「Step 3」参照)。
次いで、これらのタンパク質の中で、同じタンパク質の異なるペプチド断片であるものを判断したところ、48個のタンパク質が、発現量が増加及び減少するタンパク質として同定された。
7.最大ピーク面積比及び最低ピーク面積比の選択
さらに、最も高いピーク面積を有する上位単一遷移から、膠芽腫患者由来の血漿及び健常者由来の血漿の間のピーク面積比を得た。これにより、165個のペプチド(50個の発現量が増加するタンパク質)は、2.0以上の最大ピーク面積比であった(図1の「Step 4a」参照)。一方、114個のペプチド(29個の発現量が減少するタンパク質)は、0.5以下の最低ピーク面積比であった(図1の「Step 4b」参照)。
8.In Silico選択基準によるペプチドの選択
次いで、信頼性の低いペプチド候補を排除するために、In Silico選択基準を用いて、全てのペプチド候補の配列を検証した(図1の「Step 5」参照)。これにより、30個のペプチド(15個の発現量が増加するタンパク質)及び19個のペプチド(13個の発現量が減少するタンパク質)が選択された。また、そのうち1つのタンパク質は、同じタンパク質の異なるペプチド断片として、発現量が増加するタンパク質及び発現量が減少するタンパク質のいずれにも含まれていた。
9.手動検査
次いで、ピーク形状に焦点を当てた上位3つの遷移のLC−MS/MSクロマトグラムについて、手動検査を実施した。これにより、5個の発現量が増加するタンパク質、及び、3個の発現量が減少するタンパク質がそれぞれ同定された(図1の「Step 6」参照)。
10.ROC解析
次いで、上記8個の候補タンパク質のROC解析を行った。各候補タンパク質の曲線下面積(AUC)の値を算出した結果、LRG1(leucine−rich alpha−2−glycoprotein 1)、C9(complement component 9)、GSN(gelsolin)及びIGHA1(Ig alpha−1 chain C region)のAUC値は、0.80より大きく、CRP(C−reactive protein)、SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)、APOB(Apolipoprotein B−100)及びAPOA4(apolipoprotein A−IV)のAUC値は0.70より大きかった(図1の「Step 7」参照)。
11.QTAP分析
次いで、MS/MS分析における試料依存性イオン抑制に起因する偽陽性の可能性を排除することができないため、QTAP分析によって、上記AUC値を確認した。
(1)安定同位体標識ペプチドの作製
各ペプチドを同定するための安定同位体標識ペプチドを準備した。まず、N末端Strepタグ、C末端HATタグ、N及びC末端標準ペプチド、及び、膠芽腫バイオマーカー候補の8個のペプチド(配列番号1〜8)をタンデムに結合したペプチドをコードするcDNAをそれぞれ合成し、pET−17bにサブクローニングした。
次いで、無細胞発現系(大陽日酸社製)を用いて、組換えタンパク質を発現させた。具体的には、まず、プラスミド及び希釈標準溶液を混合し、30℃で16時間インキュベートした。次いで、安定同位体標識のために、リジン(Lys)及びアルギニン(Arg)の13C及び15Nを含有するアミノ酸混合物を発現系と共にインキュベートした。次いで、発現の反応終了後、溶液を4℃、17800gで5分間遠心分離した。次いで、ペレットを取集し、PBS緩衝液に懸濁した。次いで、懸濁液を変性緩衝液に可溶化した。なお、変性緩衝液の組成は、7Mのグアニジン塩酸塩及び100mMのTris−HCl(pH8.0)である。次いで、溶液を4℃、17800gで10分間遠心分離した。
次いで、得られた上清を洗浄緩衝液Aで10倍に希釈した。なお、洗浄緩衝液Aの組成は、150mMのTris−HCl(pH8.0)及び100mMのNaClである。次いで、希釈溶液を4℃、10000gで10分間遠心分離した。
次いで、得られた上清をStrep−Tactin Sepharoseカラム(IBS Lifesciences社製)にロードした。なお、カラムは、上清のロード前に、2カラム容量の洗浄緩衝液Aで3回洗浄しておいた。
次いで、0.5カラム容量の溶出緩衝液Bを6回ロードして、組換えタンパク質を溶出した。なお、溶出緩衝液Bの組成は、7Mの塩酸グアニジン、150mMのTris−HCl(pH8.0)及び100mMのNaClである。次いで、組換えタンパク質を含む溶出溶液の一部を用いて、SDS−PAGEにより組換えタンパク質が含まれることを確認した。
次いで、組換えタンパク質を含む溶出溶液をHisPurコバルトスピンカラム(Thermo Fisher Scientific社製)にロードし、ミキサーを用いて、4℃で30分間転倒混和した。次いで、カラムを4℃、700gで2分間遠心分離した。
次いで、2カラム容量の洗浄緩衝液Cで洗浄した。なお、洗浄緩衝液Cの組成は、6Mの塩酸グアニジン、10mMのイミダゾール、50mMのTris−HCl(pH8.0)及び300mMのNaClである。次いで、カラムを4℃、700gで2分間遠心分離した。この洗浄及び遠心分離をさらに2回行った。
次いで、1カラム容量の溶出緩衝液Dを5回ロードして、組換えタンパク質を溶出した。なお、溶出緩衝液Dの組成は、6Mの塩酸グアニジン、150mMのイミダゾール、50mMのTris−HCl(pH8.0)及び300mMのNaClである。また、溶出緩衝液Dをロードした後、その都度4℃、700gで2分間遠心分離を行った。次いで、組換えタンパク質を含む溶出の一部を用いて、SDS−PAGEにより組換えタンパク質が含まれることを確認した。
次いで、組換えタンパク質を含む溶出溶液を透析チューブ(MWCO=10000)に入れて、50mMの重炭酸アンモニウムに対して、4℃で一晩透析した。次いで、3回の外部緩衝液交換を行い、凍結乾燥して組換えタンパク質を粉末にした。
次いで、凍結乾燥した組換えタンパク質を48mMのラウロイルサルコシン酸ナトリウムに可溶化した。次いで、可溶化した組換えタンパク質を相転移界面活性剤の取り扱い説明書に従い、リシルエンドペプチダーゼ及びトリプシンを用いて消化した。
N末端及びC末端の標準ペプチドを用いて、組換えタンパク質に由来するペプチドの濃度を推定するために、トリプシン消化物を内部標準ペプチドとして標準ペプチドと混合し、SDB−Tip及びGC−Tip(GL Science社製)で脱塩した。次いで、組換えタンパク質に由来するペプチドの濃度を、QTAP分析によるN末端及びC末端の標準ペプチドから得られた定量値の平均として計算した。
(2)QTAP分析
膠芽腫患者由来の血漿及び健常者由来の血漿を(1)で作製した各安定同位体標識ペプチドの存在下で、並列反応モニタリング(PARALLEL Reaction Monitoring;PRM)モードでnanoLC−Triple TOF 5600によって分析した。これにより、血漿中の各候補タンパク質の絶対値を測定することができた。
ナノLCを有するcHiPLCナノフレックスシステム(Eksigent Technologies社製)を使用して、注入したペプチド試料(注入量;5μL、試料中0.02μLの血漿又は0.2μgタンパク質/μL含有)はトラップカラム(200μm×6mm、ReproSil−Pur3μm、C18 (Eksigent Technologies社製))にロードされて、分析カラム(75μm×15cm、ReproSil−Pur3μm、C18‐AQ120A°(Eksigent Technologies社製))で分離された。
流速は、トラップカラムへのロードでは2μL/分(6分間の可動時間)であり、分析カラムでの分離では300nL/分であった。
また、注入されたペプチド試料の溶出条件は以下に示すとおりである。また、溶離液の組成は、A液が0.1%のギ酸含有Milli−Q、B液が0.1のギ酸含有100%アセトニトリルである。
0〜40分:0→40%のB液(上昇)
40〜41分:40%のB液→100%のB液(上昇)
41〜50分:100%のB液(維持)
50〜50.1分:100%のB液→0%のB液(下降)
50.1〜80分:0%のB液(維持)
クロマトグラム中のイオン数は、自動分析システムを用いて決定した。また、非標識ペプチドが対応する標識ペプチドと同一の保持時間を示し、ナノLC分析を用いたLC−MS/MSのピーク面積数が1000より大きいことに基づいて、ピークを同定した。
膠芽腫患者由来の血漿中及び健常者患者由来の血漿中の膠芽腫バイオマーカー候補タンパク質の濃度の絶対値を比較したグラフを図2に示す。
図2から、膠芽腫患者由来の血漿中のLRG1、C9、CRP、SERPINA3及びAPOBのタンパク質濃度は、健常者由来の血漿中のそれらタンパク質濃度よりも有意に高かった。また、膠芽腫患者由来の血漿中のGSN、IGHA1及びAPOA4のタンパク質濃度は健常者由来の血漿中のそれらタンパク質濃度のよりも有意に低かった。
また、QTAP分析により得られた膠芽腫患者由来の血漿中及び健常者由来の血漿中の8種の膠芽腫バイオマーカー候補タンパク質の濃度の絶対値を用いて、ROC分析を行った。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2019100929
表1から、LRG1、C9、CRP、GSN、IGHA1及びAPOA4のAUC値は0.80より大きかった。また、8種の候補タンパク質のオッズ比はそれぞれ5.0より大きかった。
以上のことから、膠芽腫バイオマーカーの候補タンパク質のうち、発現量が増加するタンパク質として、LRG1、C9、CRP、SERPINA3及びAPOBを選択し、発現量が減少するタンパク質として、GSN、IGHA1及びAPOA4を選択した(図1の「Step 8」参照)。
[実施例2]髄液中の膠芽腫バイオマーカーの探索
次いで、次世代プロテオミクスSWATH法を用いて、髄液中の膠芽腫バイオマーカー探索を行った(図3参照)。
1.SWATH−MS分析
実施例1の「3.」で構築されたスペクトルライブラリーを使用して、膠芽腫患者由来の手術前後の髄液並びに健常者由来の髄液について、SWATH−MS分析を行った。なお、スペクトルアラインメント及び標的データ抽出は、PeakviewのSWATH Processing Micro App(バージョン2.0、SCIEX社製)で行った。
その結果、5665個のペプチド(331個のタンパク質)を同定した(図3の「Step 1」参照)。
2.In Silico選択基準によるペプチドの選択
次いで、信頼性の低いペプチド候補を排除するために、In Silico選択基準を用いて、全てのペプチド候補の配列を検証した(図3の「Step 2」参照)。これにより、426個のペプチドが選択された(図3の「Step 2」参照)。
3.対応のあるt検定
次いで、手術前後の膠芽腫患者由来の髄液間において、対応のあるt検定を実施した。これにより、有意差(p<0.05)があるタンパク質として、82個のペプチドが選択された(図3の「Step 3」参照)。
4.倍率変化による評価
次いで、上記82個のペプチドについて、手術前後の膠芽腫患者由来の髄液間で、倍率変化が1.5以上又は0.66以下のものを選択した。その結果、7個のペプチドが選択された。このうち、6個のペプチドは発現量が増加するタンパク質であり、1個のペプチドは(1個のタンパク質)は発現量が減少するタンパク質であった(図3の「Step 4a」参照)。
5.ROC解析
次いで、上記82個のペプチドについて、ROC解析を行った。各候補タンパク質の曲線下面積(AUC)の値を算出した結果、手術前後の膠芽腫患者由来の髄液間で、AUCが0.8以上であるタンパク質として、17個のペプチドが選択された。そのうち、16個のペプチドは、発現量が増加するタンパク質であり、1個のペプチドは(1個のタンパク質)は発現量が減少するタンパク質であった(図3の「Step 4b」参照)。
なお、「4.」の倍率変化による評価で選択された候補ペプチドと、「5.」のROC解析で選択された候補ペプチドのうち、6個のペプチドが共通していた。
次いで、MRMモードにて各候補ペプチドのピーク面積比を解析した。その結果、発現量が増加するタンパク質としてIGHA1(断片ペプチドのアミノ酸配列:SAVQGPPER(配列番号10))が同定され、発現量が減少するタンパク質としてGSN(断片ペプチドのアミノ酸配列:TEALTSAK(配列番号9))が同定された(図3の「Step 5」参照)。
また、図4は、14例の膠芽腫症例の手術前及び手術後の髄液中、並びに、5名の健常者の髄液中の上記2種の膠芽腫バイオマーカーを質量分析計のMRMモードで解析した結果(ピーク面積比)を示すグラフである。
図4から、膠芽腫患者由来の手術前の髄液中のGSNのピーク面積比は、健常者由来の髄液及び膠芽腫患者由来の手術後の髄液中のGSNのピーク面積比よりも有意に高かった。また、膠芽腫患者由来の手術前の髄液中のIGHA1のピーク面積比は健常者由来の髄液及び膠芽腫患者由来の手術後の髄液中のIGHA1のピーク面積比のよりも有意に低かった。
[実施例3]膠芽腫患者の血漿中のGSNの発現レベルの評価
実施例1と同様の手法で、GradeI〜IIIの膠芽腫患者由来の血漿中のGSNの発現レベルを定量した。コントロールとして、健常者由来の血漿中のGSNの発現レベルも定量した。結果を図5Aに示す。
尚、膠芽腫患者の詳細な内訳を図5Bに示す。図5B中、MGMは、髄膜腫を示し、ODは、乏突起膠細胞系腫瘍を示し、OAは、乏突起星細胞を示し、DAは、びまん性星細胞腫を示し、AOAは、退形成性乏突起星細胞腫を示し、AAは、退形成性星細胞腫を示し、APAは、退形成性毛様細胞性星細胞腫を示す。
図5Aに示すように、健常者と比較して、膠芽腫患者において、Gradeが初期の段階で、血漿中のGSNの発現レベルが顕著に下がっていることが確認された。
これらの結果から、膠芽腫マーカーとして上記タンパク質が有用であることが明らかとなった。
本実施形態の膠芽腫マーカーは、臨床診断に使用可能であり、膠芽腫の早期発見や病勢を反映することができる。

Claims (9)

  1. C9(complement component 9)、SERPINA3(alpha−1−antichymotrypsin)、GSN(gelsolin)、IGHA1(Ig alpha−1 chain C region)及びAPOA4(apolipoprotein A−IV)からなる群より選ばれる1種以上からなる膠芽腫マーカー。
  2. C9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4に対する特異的結合物質又はこれらの組み合わせ、
    安定同位体標識されたC9、SERPINA3、GSN、IGHA1若しくはAPOA4又はこれらの組み合わせ、
    C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子を増幅可能なプライマーセット又はこれらの組み合わせ、及び、
    C9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子若しくはAPOA4遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ又はこれらの組み合わせ、
    からなる群から選ばれる1種以上を備える膠芽腫診断薬。
  3. 前記特異的結合物質がC9、SERPINA3、GSN、IGHA1又はAPOA4に結合する抗体又は該抗体断片である請求項2に記載の膠芽腫診断薬。
  4. 被検者より採取した検体中の、C9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上を測定する、被検者が膠芽腫に罹患している可能性を試験する方法。
  5. 前記検体が、被検者より経時的に採取した検体である請求項4に記載の方法。
  6. 前記検体が、血液、髄液、又は尿である請求項4又は5に記載の方法。
  7. 血液中のC9、SERPINA3、GSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量を測定する工程と、
    測定されたC9、及び/又はSERPINA3の存在量が、健常者の血液中の、対応するC9、及び/又はSERPINA3の存在量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中の、対応するGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量が、健常者の血液中のGSN、IGHA1及びAPOA4からなる群より選ばれる1種以上の存在量と比較して少ない場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、
    を備える血液の判定方法。
  8. 組織中のC9遺伝子、SERPINA3遺伝子、GSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量を測定する工程と、
    測定されたC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量が、健常者の組織中の、対応するC9遺伝子、及び/又はSERPINA3遺伝子の発現量と比較して多い場合、並びに、測定されたGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量が、健常者の組織中の、対応するGSN遺伝子、IGHA1遺伝子及びAPOA4遺伝子からなる群より選ばれる1種以上の発現量と比較して少ない場合、のうち少なくともいずれかである場合に、前記血液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、
    を備える組織の判定方法。
  9. 髄液中のGSN及び/又はIGHA1の存在量を測定する工程と、
    測定されたGSNの存在量が、健常者の髄液中のGSNの存在量と比較して少ない場合、及び、測定されたIGHA1の存在量が、健常者の髄液中のIGHA1の存在量と比較して多い場合のうち少なくともいずれかである場合に、前記髄液は膠芽腫患者由来のものであると判定する工程と、
    を備える髄液の判定方法。
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