以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。図1に示す第1実施形態の運動訓練装置1は、特に使用者Uの上肢の運動機能向上を目的として行われる運動訓練に使用される。尚、添付図面及び本明細書全体を通して、類似の構成要素は、同様の参照符号を付して表す。
運動訓練装置1は、全体として比較的高さの低い矩形箱状の装置本体2から構成され、水平な設置面に載置して使用される。図1に示すように、運動訓練装置1は、装置本体2の上面から突出する操作部3を有し、該操作部の周囲は、上面カバー4a乃至4dで略全面的に覆われている。図1において、使用者Uは運動訓練装置1の前側に位置し、例えばワイピング動作訓練を行うために、右腕ULを前方に伸ばして操作部3を右手HRで把持している。尚、本明細書中では、図1の運動訓練装置1における使用者Uの手前側を前側、奥側を後側と称することとする。
図2は、図1の運動訓練装置1から上面カバー4a乃至4d、前部カバー5、後部カバー6、及び左右側部カバー7,8を取り外した状態の装置本体2を示している。尚、図2では、図中手前側即ち正面側が装置本体2の前側であり、奥側即ち背面側が後側である。
上面カバー4a乃至4dは、それぞれ操作部3の前後方向及び左右方向に配置され、操作部3の移動に合わせて前記上面カバーの面内で伸縮可能な蛇腹構造のシートで構成されている。別の実施例において、前記上面カバーは、例えば樹脂又は布製の比較的柔軟なシートで形成し、装置本体2の前後左右各側縁部の内側に配置されたロール機構(図示せず)に、巻取方向に付勢するばね構造によって巻取・引出自在に収納することができる。この種のロール機構は、従来より車両や建物の窓を覆うスクリーン等に広く採用されている。また、前記上面カバーには、前記蛇腹構造、ロール機構以外に、従来公知の様々な構造のものを使用することができる。
装置本体2は、図2に示すように、概ね矩形枠状の外側フレーム11からなるフレーム構造を有する。外側フレーム11の左右外側面には、運動訓練装置1を手で持ち上げたり持ち運ぶために、水平な棒状のハンドル部12がそれぞれ固定されている。
外側フレーム11の内側には、図2乃至図4に示すように、前後方向に延長する3つの前後固定フレーム13a乃至13cが、左右方向に離隔して平行に配置され、それらの両端がそれぞれ外側フレーム11の内壁下端付近に固定されている。前後固定フレーム13a乃至13cの上には、それらと直交して外側フレーム11内を左右方向に延長する2つの左右固定フレーム14a,14bが前後方向に離隔して平行に配置され、それらの両端がそれぞれ外側フレーム11の内壁下端付近に固定されている。
本実施形態では、左右固定フレーム14a,14bは前後固定フレーム13a乃至13cの上に載置して、止めねじで一体に固定される。別の実施形態では、左右固定フレーム14a,14bと前後固定フレーム13a乃至13cとは、一体に結合しなくてもよく、また上下方向に離隔してもよい。また、外側フレーム11の下面、より詳細には前後固定フレーム13a乃至13cの下面及び外側フレーム11の右側部の下面には、運動訓練装置1を前記設置面に載置するために、複数の短い脚部15が突設されている。
外側フレーム11の前側及び後側内壁には、その上端から少し下がった高さ位置に、左右方向の略全長に亘って一定幅の段差面16a,16bが、それぞれ内側に向けて延設されている。更に、外側フレーム11の前側及び後側内壁は、それぞれ上端が内側へ直角に折曲されて、左右方向の略全長に亘って一定幅の折曲板部17a,17bを形成し、その下方の段差面16a,16bとの間に高さの低い隙間を画定している。この隙間は、上面カバー4a,4bの左右側辺部が前後方向の略全長に亘って挿入され、後述するように操作部3が左右方向に移動するとき、その移動に合わせて前記上面カバーの蛇腹を伸縮させるためのガイドとなる。
装置本体2は、操作部3を外側フレーム11内の所定の平面上で前後方向及び左右方向に移動させるためのアクチュエーター機構20を備える。前記所定の平面は、本実施形態において、前記設置面と平行な水平面である。アクチュエーター機構20は、図2に示すように、外側フレーム11の内側に前後固定フレーム13a〜13c及び左右固定フレーム14a,14bの上に設けられる。アクチュエーター機構20は、操作部3を前後方向に沿って直線往復運動させるための第1アクチュエーター部21と、それに直交する左右方向に沿って直線往復運動させるための第2アクチュエーター部22とを備える。第1及び第2アクチュエーター部21、22は、それぞれ駆動部の回転運動を被動部の直線運動に変換する所謂直動アクチュエーターである。
第1アクチュエーター部21は、操作部3を前後方向に直線状に案内するための第1ガイド部23と、前記操作部を第1ガイド部23に沿って駆動するための第1駆動部24とを有する。第1駆動部24は、第1ガイド部23の一方の端部(本実施形態では、図2及び図4に示すように後側の端部)に前記第1ガイド部と一体に設けられる。
本実施形態において、第1ガイド部23は、図5に示すように、上向きに開放された矩形チャネル形状の第1ガイドフレーム25と、その内部を長手方向に延長するロッド状の送りねじ26と、スライダーブロック27とからなる。第1ガイドフレーム25の長手方向の両側部上面は、その長手方向にスライダーブロック27を案内するためのスライドレールを提供する。スライダーブロック27は、複数の鋼球からなるボールを介して送りねじ26のねじ溝と螺合するナット部を有し、該送りねじと組み合わされて公知のボールねじ構造を構成している。
図4及び図5に示すように、第1駆動部24は、正逆回転可能な第1駆動モーター30と、該第1駆動モーターの回転軸と送りねじ26との間に介装された減速ギアユニット31とからなる。第1駆動モーター30には、その回転方向及び回転量を検出して制御するために、公知のロータリーエンコーダー等のセンサーが取り付けられている。減速ギアユニット31は、第1駆動モーター30の回転を減速して送りねじ26に伝達する歯車列からなる。減速ギアユニットの減速ギア比は、操作部3を介して使用者の上肢又は下肢に第1駆動モーター30の駆動力を伝達するのに十分なトルクを発生し得るように設定される。
減速ギアユニット31のギア比は、第1駆動モーター30がその電源遮断時に、送りねじ26側からの逆入力によって容易に回転しないように、比較的高く設定することが好ましい。別の実施例では、第1駆動モーター30への電源遮断時に、その回転を停止させかつ保持するように、電磁ブレーキ等のブレーキ手段を設けることができる。
第2アクチュエーター部22は、第1アクチュエーター部21を左右方向に直線状に案内するための第2ガイド部33と、前記第1アクチュエーター部を第2ガイド部33に沿って駆動するための第2駆動部34とを有する。第2駆動部34は、第2ガイド部33の一方の端部(本実施形態では、図2及び図3の右側の端部)に前記第2ガイド部と一体に設けられる。
第1ガイド部23と同様に、第2ガイド部33は、上向きに開放された矩形チャネル形状の第2ガイドフレーム35と、その内部を長手方向に延長するロッド状の送りねじ36と、スライダーブロック37とからなる。第2ガイドフレーム35の長手方向の両側部上面は、その長手方向にスライダーブロック37を案内するためのスライドレールを提供する。スライダーブロック37は、複数の鋼球からなるボールを介して送りねじ36のねじ溝と螺合するナット部を有し、該送りねじと組み合わされて公知のボールねじ構造を構成している。
図3及び図5に示すように、第2駆動部34は、正逆回転可能な第2駆動モーター38と、該第2駆動モーターの回転軸と送りねじ36との間に介装された減速ギアユニット39とからなる。第2駆動モーター38には、その回転方向及び回転量を検出して制御するために、公知のロータリーエンコーダー等のセンサーが取り付けられている。減速ギアユニット39は、第2駆動モーター38の回転を減速して送りねじ36に伝達する歯車列からなる。減速ギアユニット39のギア比は、第1アクチュエーター部21及び操作部3を介して使用者の上肢又は下肢に第2駆動モーター38の駆動力を伝達するのに十分なトルクを発生し得るように設定される。
減速ギアユニット39のギア比は、第2駆動モーター38がその電源遮断時に、送りねじ36側からの逆入力によって容易に回転しないように、比較的高く設定することが好ましい。別の実施例では、第2駆動モーター38への電源遮断時に、その回転を停止させかつ保持するように、電磁ブレーキ等のブレーキ手段を設けることができる。
第1アクチュエーター部21には、図2乃至図4に示すように、外側フレーム11の内側を前後方向に略全長に亘って延長する可動フレーム41が一体に設けられている。可動フレーム41は、第1ガイド部23の長手方向に沿って延長する、図6に示すように断面概ねL字形の1対の可動フレーム部材41a,41bからなる。可動フレーム部材41a,41bは、それぞれL字の内側を第1ガイド部23側に向けて第1ガイドフレーム25の長手方向両側部に、止めねじ等で固定されている。これにより、第1ガイド部23と可動フレーム部材41a,41bとの間には、第1ガイドフレーム25の側面から側方に延出する一定幅の水平面42a,42bと、断面矩形の溝状空間Sa,Sbとが画定される。
第1ガイドフレーム25に固定された可動フレーム部材41a,41bの上端は、長手方向の全長に亘って、内側即ち前記第1ガイドフレーム側に直角に折曲され、一定狭幅の折曲板部43a,43bを形成している。可動フレーム部材41a,41bの前記L字の垂直な内面には、その上端から少し下がった高さ位置に、前記内面から第1ガイドフレーム25側に直角に延出する一定狭幅の突板部44a,44bが、長手方向の両端部を除く略全長に亘って一体に形成されている。これにより、可動フレーム部材41a,41bの上端内側には、折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの間に高さの低い隙間が、長手方向の両端部を除く略全長に亘って画定される。この隙間は、上面カバー4c,4dの前後側辺部が左右方向の略全長に亘って挿入され、後述するように操作部3が前後方向に移動するとき、その移動に合わせて前記上面カバーの蛇腹を伸縮させるためのガイドとなる。
可動フレーム部材41a,41bの長手方向の両端部は、図2及び図4に示すように、突板部44a,44bより下側の部分が切除され、残された部分が長手方向の突出部45a,45bを形成している。各突出部45a,45bは、アクチュエーター機構20を外側フレーム11内に装着したとき、それぞれ該外側フレームの前記前側及び後側内壁の折曲板部17a,17bと段差面16a,16bとの間に画定される前記隙間内に、その内面との間に余裕をもって挿入される。
操作部3は、図5に示すように、比較的短い垂直な操作ロッド48と、その上端に設けられたハンドル部材49とからなる。本実施形態のハンドル部材49は、使用者Uの上肢ULの運動機能を訓練するために片手で掴むことができるように、比較的厚い小型の円形ディスク状に形成されている。ハンドル部材49は、使用者が掴んだ手で回すことができるように、操作ロッド48を中心に回動可能に取り付けられる。別の実施例では、ハンドル部材49を操作ロッド48に対して回動しないように固定することも可能である。
ハンドル部材49は、操作ロッド48に対して取外可能に取り付けられる。それによって、ハンドル部材49は、運動訓練装置1の使用目的、使用者の状態等に対応して、使用者の上肢又は下肢を係合させるのに適した様々な係合部材と交換することができる。例えば、使用者の手がハンドル部材49を上手く掴むことができない場合、その手(又は上肢)を固定するベルト付きの係合部材を用いることができる。これにより、使用者の手(又は上肢)から操作ロッド48に力を伝達して操作部3を移動させ、又は移動する操作部3から操作ロッド48を介して力を受けて手(又は上肢)を動かすことができる。使用者の下肢を訓練する場合、同様にハンドル部材49に代えて、使用者の足を載せる台や足を固定するベルト付きの係合部材を用いることができる。
操作部3は、操作ロッド48に一体に設けられた力センサー51を有する。力センサー51は、使用者が自力で操作部3を動かす自動動作及び操作部3の力で上肢又は下肢を動かす他動動作のいずれにおいても、ハンドル部材49から操作ロッド48に作用する使用者の力を検出する。本実施形態では、力センサー51として、歪みゲートを用いた市販の6軸力覚センサーが採用されている。
一般に、6軸力覚センサーは、直交する3軸方向x,y,zの力(Fx,Fy,Fz)とx,y,z3軸周りのモーメント(Mx,My,Mz)とを検出することができる。本実施形態では、6軸力覚センサーを、そのx軸及びy軸が、アクチュエーター機構の前後方向及び左右方向とそれぞれ一致するように配向する。
通常市販の力覚センサーは、固定側の基部と、検出すべき外力を受けるための検知部とを備えている。本実施形態では、図5に示すように、力センサー51が概ね短円柱状の基部とその上面に設けられた検知部とを備える。力センサー51の前記検知部には、その上面中央に操作ロッド48が、垂直上向きに一体に固定されている。力センサー51の前記基部は、取付プレート52を介して、第1アクチュエーター部21のスライダーブロック27上に一体に固定されている。
これにより、力センサー51は、使用者の上肢又は下肢が操作部3を動かし又は該操作部により動かされるとき、操作ロッド48が使用者の上肢又は下肢から直接受ける力を、前後方向の力成分と左右方向の力成分とそれらに直交する垂直方向の力成分とに分けて、更に前後方向、左右方向及び垂直方向の各軸周りにそれぞれ作用するモーメントとして、検出することができる。
実際の運動訓練装置1の使用において、力センサー51が検出する前後方向、左右方向及び垂直方向の力成分は、第1及び/又は第2アクチュエーター部21,22の第1及び/又は第2駆動モーター30、38の回転力と使用者が操作部3に及ぼす力との差分、即ち操作部3が使用者の上肢又は下肢から受ける抗力として検出される。例えば、他動動作の訓練において、使用者の力は、操作部3の移動に対する抵抗として、第1及び/又は第2駆動モーター30、38に作用する負荷即ち回転抗力である。自動動作の訓練では、使用者の力による操作部3の移動に対して、第1及び/又は第2駆動モーター30、38の回転力が抵抗として即ち使用者に負荷を与えるように作用する。
従来より、力覚センサーには、歪みゲートを用いたもの以外に、静電容量式や光学式のものが広く使用されている。本発明の力センサー51には、いずれのタイプの力覚センサーも採用することができる。別の実施形態では、市販の力各センサーを使用せず、操作ロッド48又は該操作ロッドと取付プレート52との連結部に歪みゲージ等のセンサーデバイスを直接取り付けて、使用者が操作部3に及ぼす力を検出することもできる。
操作部3の一部を構成する取付プレート52は、矩形のプレート部材からなり、図6に示すように、可動フレーム41の長手方向に直交する幅方向に、該可動フレームの内幅より少し小さい寸法を有する。取付プレート52の、可動フレーム41の長手方向に沿う両側部は、下面側が直角に切除されて、折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの隙間の高さより薄い側辺部53a,53bを形成している。
取付プレート52は、第1ガイド部23と可動フレーム部材41a,41bとの間に画定される溝状空間Sa,Sbを横断し、側辺部53a,53bを折曲板部43a,43bと突板部44a,44bとの前記隙間内に余裕をもって挿入させて、スライダーブロック27に取り付けられる。これにより、取付プレート52は、操作部3を前後方向に移動させたとき、第1ガイドフレーム25及び溝状空間Sa,Sbの直上をその長手方向に沿って走行する。
第1アクチュエーター部21は、図5に示すように、連結部材53を介して第2アクチュエーター部22上に取り付けられる。連結部材53は、矩形のプレート部材からなり、第1ガイドフレーム25の下面に結合されて、第1ガイド部23を第2アクチュエーター部22のスライダーブロック37上に一体に固定する。これにより、第1アクチュエーター部21は、操作部3を左右方向に移動させたとき、第2ガイドフレーム35の直上をその長手方向に沿って走行する。
第1アクチュエーター部21は、操作部3の前後方向の移動範囲を制限するために、1対のリミットセンサー55a,55bを有する。図2に示すように、リミットセンサー55a,55bは、第1ガイド部23と一方(図中右側)の可動フレーム部材41bとの間の水平面42b上に、それぞれ外側フレーム11の前部及び後部より手前の位置に配置されている。
本実施形態のリミットセンサー55a,55bは、アームレバーを水平方向に揺動可能にばね付勢した公知の構造を有する。取付プレート52の下面には、リミットセンサー55a,55bの前記アームレバーを作動させるための作動ブロック56が一体に突設されている。これにより、操作部3が前後方向に移動してその限界位置に到達すると、作動ブロック56が前記アームレバーを回転させて、リミットセンサー55a,55bをオンにする。
第1アクチュエーター部21は更に、操作部3を前後方向のホームポジションに停止/維持するためのホームポジションセンサー57を有する。ホームポジションセンサー57は、図2に示すように、可動フレーム部材41bとの間の水平面42b上に、一方(図中前側)のリミットセンサー55aより少し前方に配置されている。
本実施形態のホームポジションセンサー57は、小さな隙間をもって対向配置した投光部と受光部とを有する透過型のフォトセンサーであり、例えば前記投光部から前記受光部に光が通過するとオフ状態に、前記受光部が遮光されるとオン状態になる。取付プレート52には、垂直下向きに突出する板状のセンサーフラグ部材58が、操作部3を前後方向に移動させたとき、ホームポジションセンサー57の前記投光部と前記受光部の間隙を通過し得るように取り付けられている。
第2アクチュエーター部22は、同様に、第1アクチュエーター部21の左右方向の移動範囲を制限するために、1対のリミットセンサー61a,61bを有する。図2に示すように、リミットセンサー61a,61bは、奥側の左右固定フレーム14a上に、それぞれ外側フレーム11の左右側部より手前の位置に配置されている。
本実施形態のリミットセンサー61a,61bも、アームレバーを水平方向に揺動可能にばね付勢した公知の構造を有する。図7に示すように、一方(図2の左側)の可動フレーム部材41aの下面には、リミットセンサー61a,61bの前記アームレバーを作動させるための作動ブロック62が、取付プレート63を介して一体に突設されている。これにより、操作部3が第1アクチュエーター部21と共に左右方向に移動してその限界位置に到達すると、作動ブロック62が前記アームレバーを回転させて、リミットセンサー61a,61bをオンにする。
第2アクチュエーター部22は更に、操作部3を左右方向のホームポジションに停止/維持するためのホームポジションセンサー64を有する。ホームポジションセンサー64は、図2に示すように、奥側の左右固定フレーム14a上に、一方(図中右側)のリミットセンサー61bより少し中央寄りに配置されている。
本実施形態のホームポジションセンサー64は、同様に小さな隙間をもって対向配置した投光部と受光部とを有する透過型のフォトセンサーであり、例えば前記投光部から前記受光部に光が通過するとオフ状態に、前記受光部が遮光されるとオン状態になる。可動フレーム部材41aの下面には、垂直下向きに突出する板状のセンサーフラグ部材65が、操作部3を左右方向に移動させたとき、ホームポジションセンサー64の前記投光部と前記受光部の間隙を通過し得るように、取付プレート63によって取り付けられている。
図8は、操作部3がホームポジションに配置されている状態を示している。同図に示すように、操作部3のホームポジションは、運動訓練装置1の上面中央位置よりも前後方向に手前側かつ左右方向に右側に設定されている。これにより、使用者Uは、図1に示すように運動訓練装置1の前に位置したとき、右手を前に伸ばすと直ぐに操作部3のハンドル部材49に触れることができる。しかしながら、本発明において、操作部3のホームポジションは、図8の位置に限定されるものではない。
図9は、アクチュエーター機構20における操作部3の前後方向及び左右方向の移動可能な範囲を示している。同図に示すように、操作部3の前後方向の移動範囲は、第1ガイドフレーム25によって直接決定されている。操作部3の左右方向の移動範囲は、第1アクチュエーター部21を介して第2ガイドフレーム35によって決定されている。
更に運動訓練装置1は、第1及び第2アクチュエーター部21,22を制御するための制御部70を備える。制御部70は、図10に示すように、駆動制御部71と、信号制御部72と、表示制御部73と、メモリー74と、記憶部78と、入力部79と、それらを制御管理するための制御CPU75とを備える。
駆動制御部71は、第1及び第2駆動モーター30,38と減速ギアユニット31,39に接続され、それらの駆動を制御する。信号制御部72は、力センサー51、各リミットセンサー55a,55b,61a,61b、各ホームポジションセンサー57,64及び位置センサー80に接続され、前記各センサーから出力される信号を入力する。
位置センサー80は、操作部3のX−Y座標位置を得るための座標情報を検出するもので、例えば、各駆動モーター30,38に設けられた、モーターの回転量を検出するエンコーダーで、操作部3がホームポジションにいる状態からのモーター30,38の回転量(正逆)を検出し、その結果を制御CPU75に出力することで、制御CPU75は操作部3の座標情報を算出することができる。
表示制御部73は、モニター装置76に接続され、該モニター装置の表示を制御する。メモリー74は、運動訓練装置1を動作させるためのプログラムに加えて、例えば使用者の個人データや訓練履歴等の訓練に関するデータを保存する。
記憶部78は、制御CPU75が駆動制御部71を制御して、駆動モーター30,38を駆動させたとき、駆動モーター30と駆動モーター38の駆動又は負荷のデータと力センサー51の検知結果を含むデータとを記録する。入力部79は、制御CPU75に対する動作指令の入力等に用いられる。
本発明の運動訓練装置1において、使用者の訓練を行う際に、第1及び第2アクチュエーター部21,22の第1及び第2駆動モーター30,38の出力を制御するための基本的な概念を以下に説明する。説明を簡単にするために、第2アクチュエーター部22を停止させて、第1アクチュエーター部21のみを使用する場合を考える。
図11は、力センサー51が検出した使用者の力の変動と、前記使用者の力に応じて制御部70によって制御される第1駆動モーター30の出力の変動とを、時間軸に沿って示している。同図において、操作部3が受ける使用者の力及び第1駆動モーター30の回転力は、該第1駆動モーターの出力(kW)に置き換えて示している。尚、同図の縦軸は、上向き(+)が操作部3を前方へ押す力、下向き(−)が手前側に引く力を表している。
図11に示すように、時刻t1に力センサー51が出力値5の力を検出すると、その出力信号が制御部70の信号制御部72に入力され、制御CPU75は、時刻t2に第1駆動モーター30が同じ出力値5の回転力を発生するように駆動制御部71を制御する。時刻t3に力センサー51からの入力信号が0になると、制御CPU75は、時刻t4に第1駆動モーター30の出力が0になるように駆動制御部71を制御する。
本発明によれば、力センサー51が実質的に操作部3に設けられているので、検出した使用者の力をそのまま制御部70に出力することができる。従って、力センサー51が信号を出力する時刻t1から、それが第1駆動モーター30に反映される時刻t2までの時間遅れを、使用者が体感し得ない程度に短くすることができる。更に、力センサー51からの出力信号は、制御部70内で増幅したりして信号変換する必要が無いので、第1駆動モーター30に使用者の力に応じた回転力を出力させるように最適に駆動することができる。
運動訓練装置1は、例えばサンディング動作訓練を行うために、装置本体2を前後方向又は左右方向に傾斜させた状態で使用することができる。そのために、装置本体2は、その傾斜状態、即ち傾斜方向及び傾斜角度を検出するための傾斜センサー77を備えることができる。この場合、運動訓練装置1は、傾斜角度を調整可能な別個の支持構造上に設置される。傾斜センサー77の出力信号は制御部70に入力され、装置本体2の傾斜方向及び傾斜角度の大きさに対応して、第1及び/又は第2駆動モーター30,38の出力を制御するために使用される。
傾斜センサー77には、例えば従来公知のジャイロセンサーを用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、運動訓練装置1を別個の支持構造上に傾斜させて支持する場合、該支持構造に傾斜センサーを備えることができる。この場合、傾斜センサーとして、前記支持構造を傾動させる電動モーターのエンコーダーやモーター駆動パルスカウンターを用いたり、前記支持構造の設置面を傾斜させるヒンジ部分にその傾斜を特定するセンサーや目盛りを設けることができる。
上記構成による運動訓練装置1を利用して使用者の上肢の運動訓練を行うには、次の3通りのステップで行われる。制御CPU75は、入力部79に入力される動作指令に応じて、選択されたステップでの制御処理を行う。
ステップ1は、使用者が操作部3を持ち、その上から訓練指導者が使用者の手を持って、使用者3の上肢の状況に合わせた動作範囲で操作部3を移動させることで、使用者が操作部3を操作して上肢が辿る移動軌跡を設定する移動軌跡設定モードである。
移動軌跡設定モードにおいては、制御CPU75は、図12に示す処理手順を実行して移動軌跡設定手段としての処理を行う。この処理で、制御CPU75は、使用者が手に掛けた操作部3を訓練指導者の主導で移動させる際に、使用者に所定の負荷が掛かるように減速ギアユニット31,39のギア比を調整して、駆動モーター30,38の駆動を制御する(手順P1)。このときの負荷のデータは記憶部78に記録される。訓練指導者によって、使用者の動作範囲で操作部3が移動すると、位置センサー80は、移動に沿って駆動モーター30,38の回転量情報を制御CPU75に出力して制御CPU75は操作部3の位置を算出する(手順P2)。そして、制御CPUは、逐次入力されるX−Yの座標軸での位置情報を記憶部78に蓄積して移動軌跡を記憶する(手順P3)。表示制御部73は、位置センサー80が検出する操作部3が移動する各点での位置情報をモニター装置76にプロットして移動軌跡を表示する。
次のステップ2は、使用者のみが操作部3を持ち、操作部3を移動軌跡設定モードで設定された軌跡で移動することで、使用者による操作部3の移動軌跡と、移動させるときの使用者への負荷を検出する負荷検出モードである。
負荷検出モードにおいては、制御CPU75は、図13に示す処理手順を実行して負荷情報設定手段としての処理を行う。この処理で、制御CPU75は、操作部3が移動軌跡設定モードで設定した軌跡を再現するように、駆動モーター30,38の駆動を制御する(手順P11)。このとき力センサー51では、駆動モーター30、38に作用する負荷(回転抗力)が検出される。よって、操作部3が移動軌跡をなぞる過程での、操作部3の移動に対する使用者の抵抗としての力の変動が力センサー51によって検出される(手順P12)。そして、制御CPU75は、力センサー51で検出の負荷値を逐次記憶部78に格納する(手順P13)。
図14は、モニター装置76の負荷検出モードにおける画面を模式的に示すもので、使用者が操作部3を移動させてなぞる移動軌跡と、移動軌跡の各位置における負荷の変動とを同時に表示している。このとき、表示制御部73は、位置センサー80からの移動軌跡の各点の位置情報をモニター装置76の画面にプロットして、画面の(a)部に移動軌跡を表示する。また、表示制御部73は、画面の(b)部に力センサー51からの検出値の時間軸での負荷変動のグラフを表示する。
図14の例では、時間T1からT2の範囲で、使用者から操作部3に大きな力が加わっていることが示されている。表示制御部73は、この範囲を図示するように鎖線で囲って強調して表示する。或いは、表示の色を違えてもよい。よって、時間T1からT2の範囲での移動軌跡が、使用者にとって動かし難いことが判別でき、療法士はこのデータを基にして、使用者の運動訓練のプログラムを作成することができる。
ステップ3は、運動訓練の訓練モードである。制御CPU75は、図15に示す処理手順を実行する。訓練モードには、設定した移動軌跡通りに移動する操作部3に使用者の上肢が引っ張られる前述の他動動作を行なう受動制御モードと、使用者が自分で操作部3をこの移動軌跡通りに動かす前述の自動動作を行なう能動制御モードとがある。この受動制御モードと能動制御モードも、入力部79に入力される動作指令によって選択される。
制御CPU75は、受動制御モードが選択されると、移動軌跡設定モードで設定した軌跡を再現するように駆動モーター30,38を駆動制御して、操作部3を移動させる(手順P21)。このときの操作部3に掛る使用者の力は、操作部3の移動に対する抵抗として、駆動モーター30,38に作用する負荷即ち回転抗力となる。
同時に、表示制御部73は、図16に示すように、使用者の操作による位置センサー80からの移動軌跡の各点の位置情報をモニター装置76の画面にプロットして、画面の(a)部に移動軌跡を表示すると共に、画面の(b)部に力センサー51からの検出値を時間軸で示す負荷変動のグラフを試験データとして表示する。
そして、制御CPU75は、使用者が操作部3で移動軌跡をなぞる過程で力センサー51から逐次入力されてくる力の検出値と、負荷設定モードで記憶部78に蓄積している移動軌跡の同じ点での負荷値(設定負荷値)とを順次比較していく(手順P22)。図16は、このとき表示制御部73によって表示されているモニター装置76の画面を示している。この例では、(a)部は移動軌跡設定モードで設定された操作基本パターンの移動軌跡を実線で表示し、その上をなぞる被検者の移動軌跡を破線で表示している。この場合、線の重なる部分は実線で表示されており、操作基本パターンを外れた被検者の移動軌跡の部分のみが破線で示される。また、(b)部は、記憶部78に格納された設定負荷の変動を実線で表示し、使用者が操作部3で移動軌跡をなぞる過程で力センサー51から逐次入力されてくる検出値の変動(負荷変動)である試験データは破線で表示している。同様に線の重なる部分は実線で示されているため、試験データの設定負荷値から外れた部分のみが破線で示されている。このようにして、操作基本パターンと被検者の移動軌跡との比較結果とがモニター装置76に表示される。
このとき、力センサー51の検出値が記憶部78に記憶の設定負荷値を予定の許容範囲を超えていると、駆動モーター30,38の駆動を停止する(手順P24)。よって、この場合には、使用者に予定以上の負担が掛り過ぎているとして、運動訓練をいったん終了する。又は終了せずとも、移動範囲を狭めるよう、設定した移動軌跡よりも被検者に近い位置での移動軌跡となるよう駆動モーター30,38の駆動制御を行なう、或いは駆動モーター30,38の負荷トルクを弱めるよう駆動モーター30,39の出力を調節してもよい。
一方、移動軌跡の各点で順次比較した結果、検出値が設定負荷値を超えていても予定の許容範囲内にあるときは、繰り返し手順P22で移動軌跡の次の点での検出値と設定負荷値との比較を行う。そして、移動軌跡の終点に達すると(手順P23の「YES」)、駆動モーター30,38の駆動を停止する(手順P24)。
このような訓練の結果表示は、例えば、図17に示すレーダグラフで表示することができる。図示のレーダグラフは、十字の2軸座標と座標中心と同一の複数の半径を持つ円形が記憶部78に格納している設定負荷の変動を表わしており、試験データで設定負荷を外れた部分を破線で示すと共に、そのときの値p,qを表示している。このレーダグラフは中心からの距離が負荷値の大きさで、位置が操作部3にかかる負荷値の方向を表している。このようなレーダグラフで表すと、操作部3にかかる力の方向と強さを同時に表示することができるため、所定の移動軌跡でどの方向にどのくらいの負荷(力)がかかっているのか確認することができる。また、図14(b)に示すグラフでも、操作部3の移動方向の並進力をプラス方向に、偶力をマイナス方向に表示することもできる。
能動制御モードでは、制御CPU75は、使用者が操作部3を移動させる際に、使用者に所定の負荷が掛かるように減速ギアユニット31,39のギア比を調整して、駆動モーター30,38の駆動を制御する(手順P31)。このときの被検者の力による操作部3の移動に対して、駆動モーター30、38の回転力が抵抗として使用者に負荷を与えることになる。
そして、制御CPU75は、操作部3が移動軌跡をなぞる過程で、移動軌跡の各点で位置センサー80から逐次入力されてくる操作部3の位置情報と、記憶部78に蓄積している移動軌跡の同じ点での設定位置情報とを順次比較する(手順P32)。この場合も、表示制御部73は、図16で示したような、実線による操作基本パターンの移動軌跡及び破線による被検者の移動軌跡と、使用者が操作部3で移動軌跡をなぞる過程で力センサー51から逐次入力されてくる検出値の変動(負荷変動)である試験データとがモニター装置76で表示される。比較の結果、両方の位置情報の差が許容範囲内であれば、繰り返し手順P32で移動軌跡の次の点での位置センサー80からの位置情報と設定位置情報との比較を行う。そして、移動軌跡の終点で(手順P34の「YES」)、駆動モーター30,38の駆動を停止する(手順P35)。
しかし、手順P32の処理で、位置センサー80が検出の位置情報が記憶部78に記憶の設定位置情報から外れていると、制御CPU75は、その差分を演算し、その差が予定の許容範囲内であれば、それに応じて操作部3が設定した移動軌跡に復帰するように、駆動モーター30,38を駆動制御する(手順P33)。この場合、制御CPU75は、駆動制御部71を通して、モーター30,38の出力を調整して回転トルクを大きくする。
このように、位置センサー80が検出の位置情報が記憶部78に記憶の移動軌跡の同じ点での位置情報との差が許容範囲内であれば、その都度、操作部3を予定の移動軌跡に復帰させつつ、操作部3の移動軌跡の最終点まで移動すると(手順P35)、能動制御モードが終了する(手順P36)。
手順P33において、駆動モーター30,38を駆動して操作部3を予定の移動軌跡に復帰させる場合は、使用者の上肢は操作部3に引っ張られることになるので、受動制御モードと同様に操作部3にかかる使用者の力は、操作部3の移動に対する抵抗として、駆動モーター30,38に作用する負荷となる。制御CPU75は、現在の操作部3の位置と最も近い位置における負荷値(記憶部78に記憶されている設定負荷値)と、現在の操作部3の位置における力の検出値とを比較して、その差が許容範囲内かを判別する(手順P34)。
このとき、力センサー51の検出値が記憶部78に記憶の設定負荷値を予定の許容範囲を超えていると、駆動モーター30,38の駆動を停止する(手順P34)。よって、この場合には、使用者に予定以上の負担が掛り過ぎているとして、運動訓練をいったん終了する。又は終了せずとも、移動範囲を狭めるよう、設定した移動軌跡よりも被検者に近い位置での移動軌跡となるよう駆動モーター30,38の駆動制御を行なう、或いは駆動モーター30,38の負荷トルクを弱めるよう駆動モーター30,39の出力を調節してもよい。
本実施形態の運動訓練装置1は、運動訓練が一通り終了したら、訓練内容を再現する再現モードが備わっている。再現モードでは、制御CPU75が駆動モーター30,38を制御して、訓練中の操作部3の移動軌跡を再現するように移動させる。また、表示部76に操作部3の移動軌跡と、力センサー51で検出した力情報(受動制御モードの場合は操作部3の移動方向に対する偶力(負荷値)。能動制御モードの場合は使用者が操作部3に与える力で、操作部3の移動方向に対する並進力。)を操作部3の移動に並行して表示する。
この再現モードでは、訓練内容の一部を再現させることもでき、表示部76に表示された移動軌跡や負荷値を表すグラフの一部を選択すると、その部分だけ訓練内容を再現させることができる。これにより、使用者がどの移動範囲で上肢を動かし難かったり、力が入りにくかったりするか確認することができ、訓練指導者は使用者に合わせた最適な訓練プログラムを作成することができる。
上記した運動訓練装置1においては、移動軌跡設定モードにおいては実際に操作部3を移動させて、そのとき位置センサー80が検出する位置情報で移動軌跡を記憶部78に記憶させて、操作基本パターンの移動軌跡を設定している。しかし、予めデータ化された位置情報を入力部79から入力するようにしてもよい。また、予め基本パターンを複数通り記憶部78に記憶させておき、使用者に応じて一つの基本パターンを入力部79からするようにしてもよい。
以上、本発明を好適な実施形態に関連して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲において、様々な変更又は変形を加えて実施し得ることは言うまでもない。