以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説
明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
以下では、物理量として加速度を検出する物理量検出装置(加速度検出装置)を例にとり説明する。
1.物理量検出装置
1−1.第1実施形態
[物理量検出装置の構成]
図1は、本実施形態の物理量検出装置1の機能構成を示す図である。本実施形態の物理量検出装置1は、互いに異なり、交差(理想的には、直交)する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の物理量(ここでは加速度)を検出する。図1に示すように、物理量検出装置1は、物理量検出素子2X,2Y,2Zと物理量検出回路3とを含む。
物理量検出素子2Xは、X軸の方向に加わった物理量(X軸加速度)に応じた検出信号を出力する素子である。物理量検出素子2Yは、Y軸の方向に加わった物理量(Y軸加速度)に応じた検出信号を出力する素子である。物理量検出素子2Zは、Z軸の方向に加わった物理量(Z軸加速度)に応じた検出信号を出力する素子である。すなわち、物理量検出素子2X,2Y,2Zの各検出軸がX軸,Y軸,Z軸となる。
物理量検出回路3は、物理量検出素子2X,2Y,2Zをそれぞれ駆動するために必要な信号を生成し、物理量検出素子2X,2Y,2Zに供給する。そして、物理量検出回路3は、物理量検出素子2Xから出力される検出信号に基づいて、X軸方向に加わった物理量(X軸加速度)の大きさ及び向きに応じた物理量信号であるX軸加速度信号を生成する。また、物理量検出回路3は、物理量検出素子2Yから出力される検出信号に基づいて、Y軸方向に加わった物理量(Y軸加速度)の大きさ及び向きに応じた物理量信号であるY軸加速度信号を生成する。また、物理量検出回路3は、物理量検出素子2Zから出力される検出信号に基づいて、Z軸方向に加わった物理量(Z軸加速度)の大きさ及び向きに応じた物理量信号であるZ軸加速度信号を生成する。
本実施形態では、物理量検出素子2X,2Y,2Zは、それぞれ、第1固定電極と第2固定電極とが設けられた固定部と、可動電極(可動部)とを含む。第1固定電極と可動電極とは対向しており、これらによって第1容量形成部が構成される。同様に、第2固定電極と可動電極とは対向しており、これらによって第2容量形成部が構成される。このような物理量検出素子2X,2Y,2Zに検出軸方向の加速度aが加わると、質量mの可動部にはF=m×aの力Fが働く。この力Fにより、可動部は固定部に対して相対的に変位する。このとき、加速度aの向きに応じて、第1容量形成部の静電容量値が減少するとともに第2容量形成部の静電容量値が増大し、あるいは、第1容量形成部の静電容量値が増大するとともに第2容量形成部の静電容量値が減少する。このため、第1容量形成部と第2容量形成部の共通端に電荷を供給した状態で物理量検出素子2X,2Y,2Zに加速度aが作用すると、第1容量形成部の一端及び第2容量形成部の一端からそれぞれ出力される電荷(信号)は、絶対値がほぼ等しく符号が逆の差動信号対となる。物理量検出回路3は、物理量検出素子2X,2Y,2Zからそれぞれ出力される差動信号対を検出信号として3軸物理量信号(X軸加速度信号、Y軸加速度信号及びZ軸加速度信号)を生成する。
このような物理量検出素子2X,2Y,2Zは、いずれも差動容量型センサーであり、例えば、Si(シリコン)等の半導体材料と、半導体加工技術を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で形成される。
[物理量検出素子の構造]
次に、物理量検出素子2X、2Y,2Zのうち、X軸加速度を検出可能な物理量検出素子2Xを代表として、その構造の一例について詳細に説明する。なお、物理量検出素子2Xの構造としては、以下に説明するもの以外にも種々のものが考えられ、用途に応じて適宜設計すればよい。同様に、図示及び説明を省略するが、Y軸加速度を検出可能な物理量検出素子2Y及びZ軸加速度を検出可能な物理量検出素子2Zの構造についても種々のものが考えられ、用途に応じて適宜設計すればよい。
図2は、物理量検出素子2Xを含む物理量検出部の一例を示す平面図である。図3は、図2中のA−A線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中の紙面手前側および図3中の上側を「上」とも言い、図2中の紙面奥側および図3中の下側を「下」とも言う。また、各図に示すように、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印方向先端側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。
図2に示す物理量検出部は、基板200と、基板200上に配置された素子部210(物理量検出素子2X)と、素子部210を覆うように基板200に接合された蓋部310と、を有している。素子部210は、物理量検出素子2X(図1参照)として機能する。
基板200は、矩形の平面視形状を有する板状をなしている。また、基板200は、上面側に開放する凹部201を有している。Z軸方向からの平面視で、凹部201は、素子部210を内側に内包するように、素子部210よりも大きく形成されている。この凹部201は、素子部210と基板200との接触を防止するための逃げ部として機能する。
また、図3に示すように、基板200は、凹部201の底面に設けられた3つの突起状のマウント部202、203、204を有している。マウント部202には第1固定電極部221が接合され、マウント部203には第2固定電極部231が接合され、マウント部204には可動部支持部250が接合されている。
また、図2に示すように、基板200は、上面側に開放する溝部205、206、207を有している。溝部205、206、207の一端部は、それぞれ、蓋部310の外側に位置し、他端部は、それぞれ、凹部201に接続されている。
基板200としては、例えば、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックスガラス(登録商標)のような硼珪酸ガラス)で構成されたガラス基板を用いることができる。これにより、例えば、蓋部310の構成材料によっては、基板200と蓋部310とを陽極接合により接合することができ、これらを強固に接合することができる。また、光透過性を有する基板200が得られるため、基板200を介して素子部210の状態を視認することができる。
ただし、基板200としては、ガラス基板に限定されず、例えば、シリコン基板やセラミックス基板を用いてもよい。なお、シリコン基板を用いる場合は、短絡を防止する観点から、高抵抗のシリコン基板を用いるか、表面に熱酸化等によってシリコン酸化膜(絶縁性酸化物)を形成したシリコン基板を用いることが好ましい。
図2に示すように、溝部205、206、207には配線301、302、303が設けられている。溝部205内の配線301の一端部は、蓋部310の外側に露出しており、物理量検出回路3の端子XP(図4参照)との電気的な接続を行う端子7Xとして機能する。図3に示すように、配線301の他端部は、凹部201を介してマウント部202まで引き回されている。そして、配線301は、マウント部202上で第1固定電極部2
21と電気的に接続されている。
図2に示すように、溝部206内の配線302の一端部は、蓋部310の外側に露出しており、物理量検出回路3の端子XN(図4参照)との電気的な接続を行う端子8Xとして機能する。図3に示すように、配線302の他端部は、凹部201を介してマウント部203まで引き回されている。そして、配線302は、マウント部203上で第2固定電極部231と電気的に接続されている。
図2に示すように、溝部207内の配線303の一端部は、蓋部310の外側に露出しており、物理量検出回路3の端子COM(図4参照)との電気的な接続を行う端子9Xとして機能する。図3に示すように、配線303の他端部は、凹部201を介してマウント部204まで引き回されている。そして、配線303は、マウント部204上で可動部支持部250と電気的に接続されている。
配線301、302、303の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、Ti(チタン)、タングステン(W)等の金属材料、これら金属材料を含む合金、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO、IGZO等の酸化物系の透明導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
図2に示すように、蓋部310は、矩形の平面視形状を有する板状をなしている。図3に示すように、蓋部310は、下面側に開放する凹部311を有している。そして、蓋部310は、凹部311内に素子部210を収納するようにして、基板200に接合されている。そして、蓋部310および基板200によって、素子部210を収納する収納空間Sが形成されている。
また、図3に示すように、蓋部310は、収納空間Sの内外を連通する連通孔312を有しており、この連通孔312を介して収納空間Sを所望の雰囲気に置換することができる。連通孔312内には、封止部材313が配置され、封止部材313によって、連通孔312が封止されている。
封止部材313としては、連通孔312を封止できれば、特に限定されず、例えば、金(Au)/錫(Sn)系合金、金(Au)/ゲルマニウム(Ge)系合金、金(Au)/アルミニウム(Al)系合金等の各種合金、低融点ガラス等のガラス材料等を用いることができる。
収納空間Sは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入されて、使用温度(−40℃〜80℃程度)で、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。収納空間Sを大気圧とすることで、粘性抵抗が増してダンピング効果が発揮され、可動部260の振動を速やかに収束(停止)させることができる。そのため、物理量検出素子2XによるX軸加速度の検出精度が向上する。
蓋部310は、本実施形態では、シリコン基板で構成されている。ただし、蓋部310としては、シリコン基板に限定されず、例えば、ガラス基板やセラミックス基板を用いてもよい。また、基板200と蓋部310との接合方法としては、特に限定されず、基板200や蓋部310の材料によって適宜選択すればよいが、例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板200の上面および蓋部310の下面に成膜した金属膜同士を接合する
拡散接合等が挙げられる。
本実施形態では、図3に示すように、接合材の一例であるガラスフリット314(低融点ガラス)を介して基板200と蓋部310とが接合されている。基板200と蓋部310とを重ね合わせた状態では、溝部205、206、207を介して収納空間Sの内外が連通してしまうが、ガラスフリット314を用いることで、基板200と蓋部310とを接合すると共に、溝部205、206、207を封止することができ、より容易に、収納空間Sを気密封止することができる。なお、基板200と蓋部310とを陽極接合等(溝部205、206、207を封止できない接合方法)で接合した場合には、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたCVD法等で形成されたSiO2膜によって溝部205、206、207を塞ぐことができる。
図2に示すように、素子部210(物理量検出素子2X)は、基板200に固定されている固定電極部220と、基板200に固定されている可動部支持部250と、可動部支持部250に対してX軸方向に変位可能な可動部260と、可動部支持部250と可動部260とを連結するバネ部270、274と、可動部260に設けられている可動電極部280と、を有している。このうち、可動部支持部250、可動部260、バネ部270、274および可動電極部280は、一体的に形成されている。このような素子部210は、例えば、リン(P)、ボロン(B)等の不純物がドープされたシリコン基板をパターニングすることで形成することができる。また、素子部210は、陽極接合によって基板200(マウント部202、203、204)に接合されている。ただし、素子部210の材料や、素子部210の基板200への接合方法は、特に限定されない。
図2に示すように、可動部支持部250は、X軸方向に延在する長手形状をなしている。そして、可動部支持部250は、X軸方向のマイナス側の端部にマウント部204と接合している接合部251を有している。なお、本実施形態では、可動部支持部250は、X軸方向に延在する長手形状となっているが、可動部支持部250の形状としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。また、以下では、Z軸方向から見た平面視で、可動部支持部250をY軸方向に二等分する仮想軸を中心軸Lとする。
可動部支持部250は、第1固定電極部221および第2固定電極部231の間に位置している。これにより、可動部支持部250を、可動部260の中心部に配置することができ、可動部260をより安定して支持することができる。
図2に示すように、可動部260は、Z軸方向から見た平面視で、枠状をなしており、可動部支持部250、バネ部270、バネ部274、第1固定電極部221および第2固定電極部231を囲んでいる。すなわち、可動部260は、固定電極部220を囲む枠状をなしている。これにより、可動部260の質量をより大きくすることができる。そのため、より感度を向上させ、精度よく物理量を検出することができる。
また、可動部260は、内側に第1固定電極部221が配置された第1開口部268(第1切り欠き部)と、内側に第2固定電極部231が配置された第2開口部269(第2切り欠き部)と、を有している。また、第1開口部268および第2開口部269は、Y軸方向に並んで配置されている。このような可動部260は、中心軸Lに対して対称である。
可動部260の形状をより具体的に説明すると、可動部260は、可動部支持部250、バネ部270、バネ部274、第1固定電極部221および第2固定電極部231を囲む枠部261と、第1開口部268のX軸方向プラス側に位置し、枠部261からY軸方向マイナス側へ延出する第1Y軸延在部262と、第1Y軸延在部262の先端部からX
軸方向マイナス側へ延出する第1X軸延在部263と、第2開口部269のX軸方向プラス側に位置し、枠部261からY軸方向プラス側へ延出する第2Y軸延在部264と、第2Y軸延在部264の先端部からX軸方向マイナス側へ延出する第2X軸延在部265と、を有している。また、第1Y軸延在部262および第2Y軸延在部264は、それぞれ、バネ部270の近くに設けられ、バネ部270のY軸方向(バネ片271の延在方向)に沿うように配置されており、第1X軸延在部263および第2X軸延在部265は、それぞれ、可動部支持部250の近くに設けられ、可動部支持部250に沿って配置されている。
このような構成において、第1Y軸延在部262および第1X軸延在部263は、第1可動電極指282を支持する支持部として機能し、第2Y軸延在部264および第2X軸延在部265は、第2可動電極指292を支持する支持部として機能する。
また、可動部260は、第1開口部268の余ったスペースを埋めるように、枠部261から第1開口部268内へ突出する第1突出部266と、第2開口部269の余ったスペースを埋めるように、枠部261から第2開口部269内へ突出する第2突出部267と、を有している。このように、第1突出部266および第2突出部267を設けることで、可動部260の大型化を招くことなく、可動部260の質量をより大きくすることができる。そのため、より感度を向上させ、感度の高い物理量検出素子2Xとなる。
また、バネ部270、274は、弾性変形可能であり、バネ部270、274が弾性変形することで、可動部260が可動部支持部250に対してX軸方向に変位することができる。図2に示すように、バネ部270は、可動部260のX軸方向プラス側の端部と可動部支持部250のX軸方向プラス側の端部とを連結し、バネ部274は、可動部260のX軸方向マイナス側の端部と可動部支持部250のX軸方向マイナス側の端部とを連結している。これにより、可動部260をX軸方向の両側で支持することができるため、可動部260の姿勢および挙動が安定する。そのため、不要な振動を低減させ、より高い精度で、X軸加速度を検出することができる。
また、バネ部270は、Y軸方向に並んで配置された一対のバネ片271、272を有している。また、一対のバネ片271、272は、それぞれ、Y軸方向に蛇行した形状をなし、中心軸Lに対して対称的に形成されている。このようなバネ部270は、Y軸方向に長く延在した部分270yと、X軸方向に短く延在した部分270xと、を有している。なお、バネ部274の構成は、バネ部270の構成と同様である。
このように、バネ部270、274を、検出軸であるX軸よりも、X軸に直交するY軸方向に長い形状とすることで、X軸加速度が加わった際の、可動部260のX軸方向(検出軸方向)以外への変位(特に、Z軸まわりの回転変位)を抑制することができる。そのため、不要な振動を低減させ、より高い精度でX軸加速度を検出することができる。ただし、バネ部270、274の構成としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
また、図2に示すように、固定電極部220は、第1開口部268内に位置する第1固定電極部221と、第2開口部269に位置する第2固定電極部231と、を有している。第1固定電極部221および第2固定電極部231は、Y軸方向に並んで配置されている。
第1固定電極部221は、基板200に固定された第1幹部支持部224と、第1幹部支持部224に支持された第1幹部222と、第1幹部222からY軸方向両側に延出した複数の第1固定電極指223と、を有している。なお、第1幹部支持部224、第1幹
部222および各第1固定電極指223は、一体形成されている。
第1幹部支持部224は、マウント部202と接合された接合部224aを有している。なお、接合部224aは、第1幹部支持部224のX軸方向マイナス側に偏って配置されている。
第1幹部222は、棒状の長手形状をなし、その一端が第1幹部支持部224に接続されており、これにより、第1幹部支持部224に支持されている。また、第1幹部222は、Z軸方向から見た平面視で、X軸およびY軸のそれぞれに対して傾斜した方向に延在している。より具体的には、第1幹部222は、その先端側に向けて中心軸Lとの離間距離が大きくなるように傾斜している。このような配置とすることで、第1幹部支持部224を可動部支持部250の近くに配置し易くなる。
なお、X軸に対する第1幹部222の軸L222の傾きとしては、特に限定されないが、10°以上、45°以下であること好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第1固定電極部221のY軸方向への広がりを抑制することができ、素子部210の小型化を図ることができる。
第1固定電極指223は、第1幹部222からY軸方向両側に延出している。すなわち、第1固定電極指223は、第1幹部222のY軸方向プラス側に位置する第1固定電極指223’と、Y軸方向マイナス側に位置する第1固定電極指223”と、を有している。第1固定電極指223’、223”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。
複数の第1固定電極指223’の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第1固定電極指223’の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第1固定電極指223”の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第1固定電極指223”の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第1固定電極指223’と第1固定電極指223”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
第2固定電極部231は、基板200に固定された第2幹部支持部234と、第2幹部支持部234に支持された第2幹部232と、第2幹部232からY軸方向両側に延出した複数の第2固定電極指233と、を有している。なお、第2幹部支持部234、第2幹部232および各第2固定電極指233は、一体形成されている。
第2幹部支持部234は、マウント部203の上面と接合された接合部234aを有している。なお、接合部234aは、第2幹部支持部234のX軸方向マイナス側に偏って配置されている。
第2幹部232は、棒状の長手形状をなし、その一端が第2幹部支持部234に接続されており、これにより、第2幹部支持部234に支持されている。また、第2幹部232は、Z軸方向から見た平面視で、X軸およびY軸のそれぞれに対して傾斜した方向に延在している。より具体的には、第2幹部232は、その先端側に向けて中心軸Lとの離間距離が大きくなるように傾斜している。このような配置とすることで、第2幹部支持部234を可動部支持部250の近くに配置し易くなる。
なお、X軸に対する第2幹部232の軸L232の傾きとしては、特に限定されないが、10°以上、45°以下であること好ましく、10°以上、30°以下であることがより好ましい。これにより、第2固定電極部231のY軸方向への広がりを抑制することが
でき、素子部210の小型化を図ることができる。
第2固定電極指233は、第2幹部232からY軸方向両側に延出している。すなわち、第2固定電極指233は、第2幹部232のY軸方向プラス側に位置する第2固定電極指233’と、Y軸方向マイナス側に位置する第2固定電極指233”と、を有している。第2固定電極指233’、233”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。
複数の第2固定電極指233’の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第2固定電極指233’の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第2固定電極指233”の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第2固定電極指233”の先端は、それぞれ、X軸方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第2固定電極指233’と第2固定電極指233”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
このような第1固定電極部221および第2固定電極部231の形状および配置は、中心軸Lに対して線対称である(ただし、第1固定電極指223および第2固定電極指233がX軸方向にずれていることを除く)。特に、本実施形態では、第1幹部222および第2幹部232は、それぞれ、中心軸Lとの離間距離が先端側へ向けて漸増するようにX軸に対して傾斜した方向に延在している。このような配置とすることで、第1幹部支持部224の接合部224aおよび第2幹部支持部234の接合部234aを、可動部支持部250の接合部251のより近くに配置することができる。そのため、熱や残留応力等に起因して基板200に反りや撓みが生じた際の可動部260と固定電極部220とのZ軸方向のずれの差、具体的には、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのZ軸方向のずれの差、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのZ軸方向のずれの差をより効果的に抑制することができる。
特に、本実施形態では、第1幹部支持部224の接合部224a、第2幹部支持部234の接合部234aおよび可動部支持部250の接合部251が、Y軸方向に並んで配置されている。これにより、接合部224a、234aを、接合部251のさらに近くに配置することができ、上述した効果がより顕著となる。
図2に示すように、可動電極部280は、第1開口部268内に位置する第1可動電極部281と、第2開口部269内に位置する第2可動電極部291と、を有している。第1可動電極部281および第2可動電極部291は、Y軸方向に並んで配置されている。
第1可動電極部281は、第1幹部222のY軸方向両側に位置し、Y軸方向に延在する複数の第1可動電極指282を有している。すなわち、第1可動電極指282は、第1幹部222のY軸方向プラス側に位置する第1可動電極指282’と、Y軸方向マイナス側に位置する第1可動電極指282”と、を有している。第1可動電極指282’、282”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。第1可動電極指282’は、枠部261からY軸方向マイナス側に向けて延出し、第1可動電極指282”は、第1X軸延在部263からY軸方向プラス側に向けて延出している。
各第1可動電極指282は、対応する第1固定電極指223に対してX軸方向プラス側に位置し、この第1固定電極指223とギャップを介して対向している。
複数の第1可動電極指282’の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第1可動電極指282’の先端は、それぞれ、第1幹部222の延在方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第1可動電極指282”の長さ
(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第1可動電極指282”の先端は、それぞれ、第1幹部222の延在方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第1可動電極指282’と第1可動電極指282”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
第2可動電極部291は、第2幹部232のY軸方向両側に位置し、Y軸方向に延在する複数の第2可動電極指292を有している。すなわち、第2可動電極指292は、第2幹部232のY軸方向プラス側に位置する第2可動電極指292’と、Y軸方向マイナス側に位置する第2可動電極指292”と、を有している。第2可動電極指292’、292”は、それぞれ、X軸方向に沿って互いに離間して複数設けられている。第2可動電極指292’は、第2X軸延在部265からY軸方向マイナス側に向けて延出し、第2可動電極指292”は、枠部261からY軸方向プラス側に向けて延出している。
各第2可動電極指292は、対応する第2固定電極指233に対してX軸方向マイナス側に位置し、この第2固定電極指233とギャップを介して対向している。
複数の第2可動電極指292’の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸増している。複数の第2可動電極指292’の先端は、それぞれ、第2幹部232の延在方向に沿う同一直線上に位置している。一方、複数の第2可動電極指292”の長さ(Y軸方向の長さ)は、X軸方向プラス側に向けて漸減している。複数の第2可動電極指292”の先端は、それぞれ、第2幹部232の延在方向に沿う同一直線上に位置している。Y軸方向に並ぶ第2可動電極指292’と第2可動電極指292”の総長さは、それぞれ、ほぼ同じである。
このような第1可動電極部281および第2可動電極部291の形状および配置は、中心軸Lに対して線対称である(ただし、第1可動電極指282および第2可動電極指292がX軸方向にずれていることを除く)。
このような構成の物理量検出部にX軸加速度が加わると、そのX軸加速度の大きさに基づいて、可動部260がバネ部270、274を弾性変形させながらX軸方向に変位する。このような変位に伴って、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップおよび第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップがそれぞれ変化し、この変位に伴って、第1可動電極指282と第1固定電極指223との間の静電容量および第2可動電極指292と第2固定電極指233との間の静電容量の大きさがそれぞれ変化する。そのため、これら静電容量の変化に基づいてX軸加速度を検出することができる。なお、第1固定電極部221と第1可動電極部281とによって第1容量形成部5X(図4参照)が構成され、第2固定電極部231と第2可動電極部291とによって第2容量形成部6X(図4参照)が構成される。
ここで、上述したように、各第1可動電極指282は、対応する第1固定電極指223に対してX軸方向プラス側に位置し、逆に、各第2可動電極指292は、対応する第2固定電極指233に対してX軸方向マイナス側に位置している。すなわち、各第1可動電極指282は、対をなす第1固定電極指223に対してX軸方向の一方側に位置し、各第2可動電極指292は、対をなす第2固定電極指233に対してX軸方向の他方側に位置している。そのため、X軸加速度が加わると、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップが縮まり、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップが広がるか、逆に、第1可動電極指282と第1固定電極指223とのギャップが広がり、第2可動電極指292と第2固定電極指233とのギャップが縮まる。よって、第1固定電極指223および第1可動電極指282の間から得られる第1検出信号と、第2固定電極指233および第2可動電極指292の間から得られる第2検出信号と、を差動演算す
ることで、ノイズをキャンセルすることができ、より精度よく、X軸加速度を検出することができる。
[物理量検出回路の構成]
次に、物理量検出回路3の構成の一例について詳細に説明する。図4は、本実施形態における物理量検出回路3の構成を示す図である。図4に示すように、物理量検出素子2Xは、第1容量形成部5Xの一端及び第2容量形成部6Xの一端が、不図示の端子(図2の端子7X,8X)を介して物理量検出回路3の端子XP,XNとそれぞれ電気的に接続され、第1容量形成部5Xと第2容量形成部6Xの共通端が、不図示の端子(図2の端子9X)を介して物理量検出回路3の端子COMと電気的に接続されている。同様に、物理量検出素子2Yは、第1容量形成部5Yの一端及び第2容量形成部6Yの一端が、不図示の端子を介して物理量検出回路3の端子YP,YNとそれぞれ電気的に接続され、第1容量形成部5Yと第2容量形成部6Yの共通端が、不図示の端子を介して物理量検出回路3の端子COMと電気的に接続されている。同様に、物理量検出素子2Zは、第1容量形成部5Zの一端及び第2容量形成部6Zの一端が、不図示の端子を介して物理量検出回路3の端子ZP,ZNとそれぞれ電気的に接続され、第1容量形成部5Zと第2容量形成部6Zの共通端が、不図示の端子を介して物理量検出回路3の端子COMと電気的に接続されている。
図4に示すように、物理量検出回路3は、マルチプレクサー10、Q/Vアンプ(QVA)20、プログラマブルゲインアンプ(PGA)30、スイッチトキャパシターフィルター回路(SCF)50X,50Y,50Z、マルチプレクサー60、A/D変換回路(ADC)70、デジタルフィルター80、発振回路90、制御回路100、駆動回路110、インターフェース回路120、記憶部130、合成ベクトル生成回路140及び異常判定回路150を含んで構成されている。この物理量検出回路3は、例えば、1チップの集積回路(IC:Integrated Circuit)であってもよい。なお、本実施形態の物理量検出回路3は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
発振回路90は、クロック信号MCLKを出力する。例えば、CR発振器やリングオシレーター等であってもよい。
制御回路100は、クロック信号MCLKに基づいて、各種のクロック信号(クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z,SCFCLK_X,SCFCLK_Y,SCFCLK_Z,SMPCLK)や各種の制御信号(制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Z)を生成する。
駆動回路110は、クロック信号MCLK及び周波数(駆動周波数)fdのクロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zに基づいて、物理量検出素子2X,2Y,2Zを駆動する駆動信号DRVを生成し、駆動信号DRVを物理量検出回路3の端子COMに出力する。この駆動信号DRVは、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zと同じ周波数(駆動周波数fd)の信号であり、物理量検出回路3の端子COMを介して物理量検出素子2X,2Y,2Zに共通に印加される。
なお、物理量検出素子2X,2Y,2Zには、不図示のシールド用のグラウンドパターンが設けられており、各グラウンドパターンには、物理量検出回路3の端子SLDを介して、電源電圧VSS(例えば0V)が供給される。
マルチプレクサー10は、互いに排他的にアクティブ(本実施形態では、ハイレベル)
となるクロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zに基づいて、端子XP,XNから入力される差動信号対、端子YP,YNから入力される差動信号対及び端子ZP,ZNから入力される差動信号対のいずれかを選択して(又はいずれも選択しないで)差動信号対PIN,NINを出力する。具体的には、マルチプレクサー10は、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベル(電源電圧VDD)のときは、端子XP,XNから入力される差動信号対を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー10は、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルのときは、端子YP,YNから入力される差動信号対を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー10は、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルのときは、端子ZP,ZNから入力される差動信号対を選択し、差動信号対PIN,NINとして出力する。また、マルチプレクサー10は、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zがいずれもローレベル(電源電圧VSS(例えば0V))のときは、ともにゼロの差動信号対PIN,NINを出力する。
図5に、本実施形態における駆動信号DRV、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Z及び差動信号対PIN,NINの波形の一例を示す。例えば、期間T1〜T4は、それぞれ、クロック信号MCLKのN周期分(例えば1周期分)の期間である。期間T1,T2,T3では、それぞれ、駆動信号DRVの電圧は基準電圧VCOM(例えば、VDD/2)⇒VDD⇒VSS(=0V)⇒VCOMの順に周期的に変化し、期間T4では、駆動信号DRVの電圧はVCOMである。
期間T1〜T3では、駆動信号DRVにより物理量検出素子2X,2Y,2Zが共通に駆動され、物理量検出素子2XからX軸加速度に応じた差動信号対が出力されて端子XP,XNに入力され、物理量検出素子2YからY軸加速度に応じた差動信号対が出力されて端子YP,YNに入力され、物理量検出素子2ZからZ軸加速度に応じた差動信号対が出力されて端子ZP,ZNに入力される。そして、期間T1では、クロック信号DRVCLK_Xがハイレベルであるため、物理量検出素子2Xから出力される差動信号対が差動信号対PIN,NINとして選択される。また、期間T2では、クロック信号DRVCLK_Yがハイレベルであるため、物理量検出素子2Yから出力される差動信号対が差動信号対PIN,NINとして選択される。また、期間T3では、クロック信号DRVCLK_Zがハイレベルであるため、物理量検出素子2Zから出力される差動信号対が差動信号対PIN,NINとして選択される。また、期間T4では、クロック信号DRVCLK_X,DRVCLK_Y,DRVCLK_Zがいずれもローレベルであるため、差動信号対PIN,NINは共にゼロとなる。
図4の説明に戻り、Q/Vアンプ20は、マルチプレクサー10から出力される電荷の差動信号対PIN,NINを電圧の差動信号対に変換して出力する。従って、Q/Vアンプ20は、期間T1では、物理量検出素子2Xから出力される差動信号対(差動の電荷)(「検出信号」の一例)を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ20は、期間T2では、物理量検出素子2Yから出力される差動信号対(差動の電荷)(「検出信号」の一例)を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ20は、期間T3では、物理量検出素子2Zから出力される差動信号対(差動の電荷)(「検出信号」の一例)を差動の電圧信号に変換する。また、Q/Vアンプ20は、期間T4では、共にゼロの差動信号対を共に基準電圧VCOMの差動の電圧信号に変換する。
プログラマブルゲインアンプ30は、Q/Vアンプ20から出力される差動信号対(差動の電圧信号)が入力され、当該差動信号を増幅した差動信号対POP,PONを出力する。
スイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Zは、プログラマブルゲ
インアンプ30から出力される差動信号対POP,PONが共通に入力される。そして、スイッチトキャパシターフィルター回路50Xは、クロック信号SCFCLK_Xに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、物理量検出素子2Xから出力された差動信号対が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行い、差動信号対を出力する。また、スイッチトキャパシターフィルター回路50Yは、クロック信号SCFCLK_Yに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、物理量検出素子2Yから出力された差動信号対が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行い、差動信号対を出力する。また、スイッチトキャパシターフィルター回路50Zは、クロック信号SCFCLK_Zに基づいて、差動信号対POP,PONに含まれる信号のうち、物理量検出素子2Xから出力された差動信号対が変換された電圧信号をサンプリングしてホールドするとともにフィルタリング処理を行い、差動信号対を出力する。スイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Zは、同じ回路構成であってもよい。
マルチプレクサー60は、互いに排他的にアクティブ(本実施形態では、ハイレベル)となる制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zに基づいて、スイッチトキャパシターフィルター回路50Xが出力する差動信号対、スイッチトキャパシターフィルター回路50Yが出力する差動信号対、スイッチトキャパシターフィルター回路50Zが出力する差動信号対のいずれかを選択して出力する。具体的には、マルチプレクサー60は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路50Xが出力する差動信号対を選択して出力する。また、マルチプレクサー60は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路50Yが出力する差動信号対を選択して出力する。また、マルチプレクサー60は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルのときは、スイッチトキャパシターフィルター回路50Zが出力する差動信号対を選択して出力する。
A/D変換回路70は、クロック信号SMPCLKに基づいて、マルチプレクサー60が出力する差動信号対をサンプリングし、当該差動信号対の電位差をデジタル信号に変換する。クロック信号SMPCLKは、制御信号EN_OUT_X,EN_OUT_Y,EN_OUT_Zがそれぞれハイレベルの期間に1つずつハイパルスを含むクロック信号である。そして、A/D変換回路70は、制御信号EN_OUT_Xがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー60から出力される差動信号対(スイッチトキャパシターフィルター回路50Xが出力する差動信号対)をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路70は、制御信号EN_OUT_Yがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー60から出力される差動信号対(スイッチトキャパシターフィルター回路50Yが出力する差動信号対)をサンプリングしてデジタル信号に変換する。また、A/D変換回路70は、制御信号EN_OUT_Zがハイレベルの期間のクロック信号SMPCLKの立ち上がりで、マルチプレクサー60から出力される差動信号対(スイッチトキャパシターフィルター回路50Zが出力する差動信号対)をサンプリングしてデジタル信号に変換する。
このように、A/D変換回路70は、期間T1〜T4において、マルチプレクサー60から出力される差動信号対を3回サンプリングして時分割にA/D変換する。
なお、サンプリング定理に基づき、スイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Zの出力信号において、サンプリング周波数fs(A/D変換回路70がスイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Zの出力信号をそれぞれサンプリングする周波数)の1/2よりも高い信号成分は、A/D変換回路70におけるサンプリングにより、DC近傍の周波数帯に折り返されてノイズ成分となる。そのため、スイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Zは、A/D変換回路70のサン
プリングにより生ずるノイズ成分を低減させるためのアンチエイリアスフィルターとしても機能するように、そのカットオフ周波数はサンプリング周波数fsの1/2以下に設定される。
デジタルフィルター80は、クロック信号MCLKに基づいて、A/D変換回路70から出力されるデジタル信号に対してフィルタリング処理を行う。A/D変換回路70から出力されるデジタル信号には、A/D変換回路70のA/D変換処理により発生した高周波ノイズが重畳されているため、デジタルフィルター80は、この高周波ノイズを低減させるローパスフィルターとして機能する。このデジタルフィルター80から出力されるデジタル信号には、X軸加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するX軸加速度信号(「物理量信号」の一例)、Y軸加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するY軸加速度信号(「物理量信号」の一例)及びZ軸加速度の大きさ及び向きに応じたデジタル値を有するZ軸加速度信号(「物理量信号」の一例)が時分割に含まれている。従って、Q/Vアンプ20、プログラマブルゲインアンプ30、スイッチトキャパシターフィルター回路50X,50Y,50Z、マルチプレクサー60、A/D変換回路70及びデジタルフィルター80からなる回路は、互いに異なる3軸(「複数の軸」の一例)であるX軸、軸及びZ軸に対する加速度を検出する物理量検出素子2X,2Y,2Zから出力される3軸の差動信号対(「複数の検出信号」の一例)に基づいて、X軸、Y軸及びZ軸に対して検出された加速度の大きさ及び向きに応じた3軸加速度信号(X軸加速度信号、Y軸加速度信号及びZ軸加速度信号)(「複数の物理量信号」の一例)を生成する3軸加速度信号生成回路(「物理量信号生成回路」の一例)として機能する。
合成ベクトル生成回路140は、デジタルフィルター80から出力される3軸加速度信号を、X軸、Y軸及びZ軸に基づく座標系(XYZ座標系)における3軸の加速度ベクトルAX,AY,AZ(「複数の物理量ベクトル」の一例)として、3軸の加速度ベクトルAX,AY,AZのうちの2つの加速度ベクトルを合成した合成ベクトルを少なくも1つ生成する。例えば、nビットのX軸加速度信号は、−2n−1〜+2n−1−1の範囲の値をとり得る。従って、X軸加速度ベクトルAXとして、XYZ座標系の原点を始点とし、X軸加速度信号の値の絶対値を長さとし、X軸加速度信号の値が正の数であればX軸の正方向を向き、負の数であればX軸の負方向を向くベクトルが定義されるYX軸加速度ベクトルAY及びZ軸加速度ベクトルAZも、Y軸加速度信号及びZ軸加速度信号の各値に基づいて同様に定義される。
図6に示すように、加速度ベクトルAXと加速度ベクトルAYとの合成ベクトルAXYは、加速度ベクトルAXと加速度ベクトルAYとのベクトル和によって求められる。同様に、加速度ベクトルAYと加速度ベクトルAZとの合成ベクトルAYZは、加速度ベクトルAYと加速度ベクトルAZとのベクトル和によって求められる。同様に、加速度ベクトルAZと加速度ベクトルAXとの合成ベクトルAZXは、加速度ベクトルAZと加速度ベクトルAXとのベクトル和によって求められる。なお、本実施形態では、合成ベクトル生成回路140は、3軸の加速度ベクトルAX,AY,AZに対して、3つの合成ベクトルAXY,AYZ,AZXを生成するものとする。
異常判定回路150は、合成ベクトル生成回路140が生成した合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに基づいて、物理量検出素子2X,2Y,2Zが正常であるか、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であるかを判定する。そして、異常判定回路150は、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であると判定した場合、記憶部130(レジスター131)に記憶されている異常検知フラグFLを「1」に更新する。また、異常判定回路150は、物理量検出素子2X,2Y,2Zが正常であると判定した場合は、異常検知フラグFLを更新しない(現在の値「0」又は「1」を維持する)。
また、本実施形態では、異常判定回路150は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに基づいて、物理量検出素子2X,2Y,2Zのそれぞれが異常であるか否かを判定する。そして、異常判定回路150は、物理量検出素子2Xが異常であると判定した場合は記憶部130(レジスター131)に記憶されているX軸異常検知フラグFLXを「1」に更新する。同様に、異常判定回路150は、物理量検出素子2Yが異常であると判定した場合は記憶部130(レジスター131)に記憶されているY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する。同様に、異常判定回路150は、物理量検出素子2Zが異常であると判定した場合は記憶部130(レジスター131)に記憶されているZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する。また、異常判定回路150は、物理量検出素子2Xが正常であると判定した場合は、X軸異常検知フラグFLXを更新しない(現在の値「0」又は「1」を維持する)。同様に、異常判定回路150は、物理量検出素子2Yが正常であると判定した場合は、Y軸異常検知フラグFLYを更新しない(現在の値「0」又は「1」を維持する)。同様に、異常判定回路150は、物理量検出素子2Zが正常であると判定した場合は、Z軸異常検知フラグFLZを更新しない(現在の値「0」又は「1」を維持する)。
なお、異常判定回路150による異常判定方法の詳細については後述する。
記憶部130は、レジスター131及び不揮発性メモリー132を有している。不揮発性メモリー132には、物理量検出回路3に含まれる各回路に対する各種のデータ(例えば、プログラマブルゲインアンプ30の利得調整データ、デジタルフィルター80のフィルター係数)等の各種の情報が記憶されている。不揮発性メモリー132は、例えば、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)として構成することができる。物理量検出回路3の電源投入時(電源電圧が0VからVDDまで立ち上がる時)に、不揮発性メモリー132に記憶されている各種のデータがレジスター131に転送されて保持され、レジスター131に保持された各種のデータが各回路に供給される。
また、レジスター131には、デジタルフィルター80から出力される3軸加速度信号が、それぞれnビットの3軸分の加速度データとして記憶される。また、レジスター131には、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX、Y軸異常検知フラグFLY及びZ軸異常検知フラグFLZを含むフラグ情報が記憶される。
インターフェース回路120は、物理量検出装置1の外部装置と通信するための回路である。当該外部装置は、インターフェース回路120を介して、記憶部130に対するデータの書き込みや読み出しを行うことができる。インターフェース回路120は、例えば、3端子や4端子のSPI(Serial Peripheral Interface)インターフェース回路であってもよいし、2端子のI2C(Inter-Integrated Circuit)インターフェース回路であってもよい。例えば、外部装置は、記憶部130(レジスター131)に記憶されている3軸分の加速度データとフラグ情報とを読み出し、異常検知フラグFLが「0」であれば(物理量検出素子2X,2Y,2Zのすべてが正常であれば)、3軸分の加速度データを使用して各種の処理を行うことができる。また、外部装置は、異常検知フラグFLが「1」であれば(物理量検出素子2X,2Y,2Zのうちの少なくとも1つが異常であれば)、異常があることを示す情報を出力してもよい。さらに、外部装置は、X軸異常検知フラグFLX、Y軸異常検知フラグFLY及びZ軸異常検知フラグFLZの各値から物理量検出素子2X,2Y,2Zのいずれが異常であるかを認識し、以降は、異常である軸の加速度データを使用せず、正常である軸の加速度データを使用して可能な処理を行ってもよい。なお、外部装置は、用途に応じて、フラグ情報を読み出す毎に、各フラグを「0」にクリアしてもよいし、クリアしなくてもよい。
[異常判定方法]
次に、異常判定回路150による異常判定方法の詳細について説明する。本実施形態では、異常判定回路150は、あらかじめ設定されたT1時間(「第1の時間」の一例)以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さが所定の第1閾値LV1以上である場合、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であると判定する。
例えば、仕様上の検出可能なX軸加速度の範囲が−8G〜+8Gの範囲であり、正常な物理量検出素子2Xに−8G〜+8Gの範囲のX軸加速度が加わった場合、13ビットのX軸加速度信号の値は−3000〜+3000の範囲になるとすると、加速度ベクトルAXの長さは最大3000になる。これに対して、物理量検出素子2Xにおいて、可動電極(図2の可動部260)が第1固定電極(図2の第1固定電極部221)又は第2固定電極(図2の第2固定電極部231)に貼り付く異常が発生した場合、第1容量形成部5X又は第2容量形成部6Xの静電容量値が非常に大きくなり、その結果、加速度ベクトルAXの長さは、とり得る値の最大値又はこれに近い値になる。例えば、13ビットのX軸加速度信号の値は−4096〜+4095の範囲となるため、加速度ベクトルAXの長さは、0〜4096の範囲の値をとり得るので、最大値4096又はこれに近い値となる。すなわち、物理量検出素子2Xに可動電極(可動部260)の貼り付きが発生した場合に生成される加速度ベクトルAXは、仕様上の検出可能な範囲で最大の加速度が加わったときに生成される加速度ベクトルAXよりも長くなる。物理量検出素子2Y,2Zについても同様である。
そこで、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つにおいて可動電極(可動部)が貼り付く異常が発生したことを検出するために、例えば、第1閾値LV1は、物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々が正常である場合に、仕様上の検出可能な範囲で最大の加速度が加わったときに生成される加速度ベクトルAX,AY,AZの長さ以上であってもよい。例えば、上記の例では、X軸、Y軸及びZ軸の各々に対して最大の加速度である+8G又は−8Gが加わったときの加速度ベクトルAX,AY,AZの各々の長さが3000であるので、第1閾値LV1は3000以上に設定されてもよい。この場合、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つに可動電極(可動部)の貼り付きが生じると、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さが4096以上の値となって第1閾値LV1以上となる。これに対して、物理量検出素子2X,2Y,2Zが正常であれば、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さが第1閾値LV1以上になることはほとんどなく、あっても瞬時的であると考えられる。
そこで、本実施形態では、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さが第1閾値LV1以上である場合、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であると判定する。ここで、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXYが第1閾値LV1以上である場合、物理量検出素子2X,2Yの一方又は両方が異常であると考えられる。また、T1時間以上継続して、合成ベクトルAYZが第1閾値LV1以上である場合、物理量検出素子2Y,2Zの一方又は両方が異常であると考えられる。また、T1時間以上継続して、合成ベクトルAZXが第1閾値LV1以上である場合、物理量検出素子2Z,2Xの一方又は両方が異常であると考えられる。従って、物理量検出素子2Xのみが異常の場合は合成ベクトルAYZの長さのみ第1閾値LV1未満となり、物理量検出素子2Yのみが異常の場合は合成ベクトルAZXの長さのみ第1閾値LV1未満となり、物理量検出素子2Zのみが異常の場合は合成ベクトルAXYの長さのみ第1閾値LV1未満となる。すなわち、物理量検出素子2X,2Y,2Zのいずれか1つのみが異常の場合は、異常が生じた素子を特定することができる。しかしながら、物理量検出素子2X,2Y,2Zの2つ以上が異常の場合は、合
成ベクトルAXY,AYZ,AZXのいずれの長さも第1閾値LV1以上になり得るため、異常が生じた素子を特定することができない。
そこで、異常判定回路150による判定において、第1閾値LV1と、第1閾値よりも大きい所定の第2閾値LV2とを用いることにより、異常が生じた素子を特定することが可能となる。例えば、第2閾値LV2は、加速度ベクトルAX,AY,AZの各々の長さがとり得る最大値(上記の例では4096)よりも大きい値に設定される。さらに、第2閾値LV2は、当該最大値のルート2倍未満に設定されてもよい。この場合、物理量検出素子2X,2Yのみが異常の場合、合成ベクトルAXYの長さは第2閾値LV2以上となり、合成ベクトルAYZ,AZXの長さは第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満となる。また、物理量検出素子2Y,2Zのみが異常の場合、合成ベクトルAYZの長さは第2閾値LV2以上となり、合成ベクトルAZX,AXYの長さは第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満となる。また、物理量検出素子2Z,2Xのみが異常の場合、合成ベクトルAZXの長さは第2閾値LV2以上となり、合成ベクトルAXY,AYZの長さは第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満となる。さらに、物理量検出素子2X,2Y,2Zがすべて異常の場合は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さはすべて第2閾値LV2以上となる。
従って、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さが、第1閾値LV1以上、且つ、第2閾値LV2未満である場合、当該合成ベクトルの生成に用いられた2つの検出信号をそれぞれ出力した2つの物理量検出素子の一方が異常であると判定することができる。すなわち、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXYの長さが、第1閾値LV1以上、且つ、第2閾値LV2未満である場合、物理量検出素子2X,2Yの一方のみが異常であると判定することができる。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAYZの長さが、第1閾値LV1以上、且つ、第2閾値LV2未満である場合、物理量検出素子2Y,2Zの一方のみが異常であると判定することができる。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAZXの長さが、第1閾値LV1以上、且つ、第2閾値LV2未満である場合、物理量検出素子2Z,2Xの一方のみが異常であると判定することができる。
さらに、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さが、第2閾値LV2以上である場合、当該合成ベクトルの生成に用いられた2つの検出信号をそれぞれ出力した2つの物理量検出素子の両方が異常であると判定することができる。すなわち、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXYの長さが第2閾値LV2未満である場合、物理量検出素子2X,2Yの両方が異常であると判定することができる。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAYZの長さが第2閾値LV2以上である場合、物理量検出素子2Y,2Zの両方が異常であると判定することができる。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAZXの長さが第2閾値LV2以上である場合、物理量検出素子2Z,2Xの両方が異常であると判定することができる。
そして、異常判定回路150は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに対する判定結果に基づいて、物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々について正常か異常かを判定(特定)することができる。図7は、異常判定回路150による判定論理を示す図である。異常判定回路150は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXのいずれの長さも第1閾値LV1未満であれば、物理量検出素子2X,2Y,2Zのいずれも正常であると判定する(図7のケース(1))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXYの長さが第1閾値LV1未満であり、且つ、合成ベクトルAYZ,AZXの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であれば、物理量検出素子2X,2Yは正常
であり、物理量検出素子2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図7のケース(2))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAYZの長さが第1閾値LV1未満であり、且つ、合成ベクトルAXY,AZXの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であれば、物理量検出素子2Y,2Zは正常であり、物理量検出素子2Xは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びX軸異常検知フラグFLXを「1」に更新する(図7のケース(3))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAZXの長さが第1閾値LV1未満であり、且つ、合成ベクトルAXY,AYZの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であれば、物理量検出素子2X,2Zは正常であり、物理量検出素子2Yは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する(図7のケース(4))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAYZ,AZXの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であり、且つ、合成ベクトルAXYの長さが第2閾値LV2以上であれば、物理量検出素子2Zは正常であり、物理量検出素子2X,2Yは異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX及びY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する(図7のケース(5))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AZXの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であり、且つ、合成ベクトルAYZの長さが第2閾値LV2以上であれば、物理量検出素子2Xは正常であり、物理量検出素子2Y,2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL、Y軸異常検知フラグFLY及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図7のケース(6))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZの長さが第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であり、且つ、合成ベクトルAZXの長さが第2閾値LV2以上であれば、物理量検出素子2Yは正常であり、物理量検出素子2X,2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図7のケース(7))。また、異常判定回路150は、T1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXのいずれの長さも第2閾値LV2以上であれば、物理量検出素子2X,2Y,2Zのいずれも異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX、Y軸異常検知フラグFLY及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図7のケース(8))。
図8、図9及び図10は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さの時系列の一例を示す図である。図8の例では、時刻t0において物理量検出回路3に電源電圧VDDが供給された後、時刻t1において、物理量検出素子2Xにのみ異常が生じたため、時刻t1からT1時間以上継続して、合成ベクトルAYZの長さは第1閾値LV1未満であり、且つ、合成ベクトルAXY,AZXの長さは第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満となっている。この場合、異常判定回路150は、図7のケース(3)に従い、時刻t1からT1時間が経過した時刻t2において、物理量検出素子2Xにのみ異常が生じたことを特定することができる。
また、図9の例では、時刻t0において物理量検出回路3に電源電圧VDDが供給された後、時刻t1において、物理量検出素子2X,2Yに異常が生じたため、時刻t1からT1時間以上継続して、合成ベクトルAYZ,AZXの長さは第1閾値LV1以上第2閾値LV2未満であり、且つ、合成ベクトルAXYの長さは第2閾値以上となっている。この場合、異常判定回路150は、図7のケース(5)に従い、時刻t1からT1時間が経過した時刻t2において、物理量検出素子2X,2Yに異常が生じたことを特定することができる。
また、図10の例では、時刻t0において物理量検出回路3に電源電圧VDDが供給された後、時刻t1において、物理量検出素子2X,2Y,2Zのすべてに異常が生じたため、時刻t1からT1時間以上継続して、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さは
すべて第2閾値LV2以上となっている。この場合、異常判定回路150は、図7のケース(8)に従い、時刻t1からT1時間が経過した時刻t2において、物理量検出素子2X,2Y,2Zのすべてに異常が生じたことを特定することができる。
なお、第1閾値LV1、第2閾値LV2及びT1時間は、記憶部130に記憶され、可変であってもよい。物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々に、検出可能な範囲を超える加速度が瞬時的に加わった場合に、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であると判定されないように、第1閾値LV1、第2閾値LV2及びT1時間は、用途に応じて適切な値に設定されるのが好ましい。
[作用効果]
以上に説明したように、本実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)では、3つの物理量検出素子2X,2Y,2Zからそれぞれ出力される検出信号に基づいて3軸の加速度ベクトルAX,AY,AZを生成し、さらに、3軸の加速度ベクトルAX,AY,AZに基づいて3つの合成ベクトルAXY,AYZ,AZXを生成する。正常な物理量検出素子2X,2Y,2Zに加速度が加わった場合に生成される合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さは所望の範囲に収まりやすいのに対して、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つに可動電極(可動部)の貼り付き等の異常が生じた場合に生成される合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さは非常に大きくなるため所望の範囲を超えやすい。従って、本実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)によれば、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに基づいて、静止していないときでも物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常を判定することができる。
具体的には、本実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)では、物理量検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つに可動電極(可動部)の貼り付き等の異常が生じると、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つの長さは長時間にわたって非常に大きな値を維持することになる。これに対して、正常な物理量検出素子2X,2Y,2Zに大きな加速度が一時的に加わった場合に生成される合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの長さは、一時的に大きくなるとしても長時間にわたって大きな値を維持することにはならない。従って、本実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)によれば、T1時間、第1閾値LV1及び第2閾値LV2を適宜設定することにより、静止していないときでも、物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常の有無を判定することができる。さらに、用途に応じて、T1時間、第1閾値LV1及び第2閾値LV2が可変に設定されることにより、物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常の有無を精度良く判定することが可能となる。
1−2.第2実施形態
以下、第2実施形態の物理量検出装置1について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略し、第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。
第1実施形態の物理量検出装置1では、物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々に断線による異常が生じ、出力される検出信号(電流)がゼロとなった場合、加速度ベクトルAX,AY,AZの各々の長さがゼロとなり、異常判定回路150は、このような断線による異常の有無を判定することができない。そこで、第2実施形態の物理量検出装置1では、異常判定回路150は、第1実施形態と同様の異常判定を行い、さらに、あらかじめ設定されたT2時間(「第2の時間」の一例)以上継続して、加速度ベクトルAX,AY,AZの少なくとも1つの長さが所定の第3閾値LV3以下である場合、当該加速度ベクトルの生成に用いられた検出信号を出力した物理量検出素子が異常であると判定する。すなわち、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAXの長さが第3
閾値LV3以下である場合、物理量検出素子2Xが異常であると判定する。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAYの長さが第3閾値LV3以下である場合、物理量検出素子2Yが異常であると判定する。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAZの長さが第3閾値LV3以下である場合、物理量検出素子2Zが異常であると判定する。例えば、第3閾値LV3は、加速度ベクトルAX,AY,AZの各々の長さがとり得る最小値(ゼロ)又はこれに近い値に設定される。
そして、異常判定回路150は、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに対する判定結果(第1実施形態と同様の判定結果)及び加速度ベクトルAX,AY,AZに対する判定結果に基づいて、物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々について正常か異常かを判定(特定)することができる。図11は、第2実施形態における異常判定回路150による判定論理を示す図である。図11において、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに対する判定論理を示すケース(1)〜ケース(8)は第1実施形態(図7)と同じであるため、説明を省略する。ただし、ケース(1)〜ケース(8)において、正常と判断された物理量素子については、ケース(9)〜ケース(16)の判定論理により異常と最終判断される場合もある。すなわち、異常判定回路150は、加速度ベクトルAX,AY,AZのいずれの長さも第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2X,2Y,2Zのいずれも正常であると判定する(図11のケース(9))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAXの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAY,AZの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2Xは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びX軸異常検知フラグFLXを「1」に更新する(図11のケース(10))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAYの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAX,AZの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2Yは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する(図11のケース(11))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAZの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAX,AYの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL及びY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する(図11のケース(12))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAX,AYの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAZの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2X,2Yは異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX及びY軸異常検知フラグFLYを「1」に更新する(図11のケース(13))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAX,AZの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAYの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2X,2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図11のケース(14))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAY,AZの長さが第3閾値LV3以下であり、且つ、加速度ベクトルAXの長さが第3閾値LV3よりも大きい場合は、物理量検出素子2Y,2Zは異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図11のケース(15))。また、異常判定回路150は、T2時間以上継続して、加速度ベクトルAX,AY,AZの長さがすべて第3閾値LV3以下である場合は、物理量検出素子2X,2Y,2Zはすべて異常であると判定し、異常検知フラグFL、X軸異常検知フラグFLX、Y軸異常検知フラグFLY及びZ軸異常検知フラグFLZを「1」に更新する(図11のケース(16))。
なお、第3閾値LV3及びT2時間は、記憶部130に記憶され、可変であってもよい。物理量検出素子2X,2Y,2Zの各々にほとんど加速度が加わらない場合に、物理量
検出素子2X,2Y,2Zの少なくとも1つが異常であると判定されないように、第3閾値LV3及びT2時間は、用途に応じて適切な値に設定されるのが好ましい。
以上に説明した第2実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)によれば、第1実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態の物理量検出装置1(物理量検出回路3)では、物理量検出素子2X,2Y,2Zに断線等の異常が生じた場合にも、異常を検出することができる。
1−3.変形例
上記の実施形態では、外部装置は、物理量検出装置1(物理量検出回路3)からフラグ情報を読み出すことにより、物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常の有無を認識するが、物理量検出装置1(物理量検出回路3)に、物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常の有無を外部装置に通知するための端子が設けられていてもよい。また、物理量検出装置1(物理量検出回路3)が、外部装置から加速度データの読み出しコマンドを受け取ると、加速度データにフラグ情報を付加して外部装置に送信してもよい。
また、上記の実施形態では、外部装置は、物理量検出装置1(物理量検出回路3)からフラグ情報を読み出すことができるが、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXを読み出すことができるようにしてもよい。すなわち、物理量検出装置1(物理量検出回路3)が、外部装置から合成ベクトルの読み出しコマンドを受け取ると、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXの少なくとも1つを外部装置に送信してもよい。このようにすれば、外部装置において、合成ベクトルAXY,AYZ,AZXに基づく物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常の有無の判定を、より高精度な判定アルゴリズムで行うこともできる。
また、上記の実施形態の物理量検出装置1は、3軸分の物理量(加速度)を検出するが、2軸あるいは4軸以上の物理量(加速度)を検出してもよい。
また、上記の実施形態では、物理量として加速度を検出する物理量検出装置1(物理量検出回路3)を例に挙げたが、本発明は、角速度、角加速度、圧力等の各種の物理量を検出する物理量検出装置(物理量検出回路)にも適用可能である。
2.慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)
図12は、本実施形態の慣性計測装置の構成例を示す図である。図12に示されるように、本実施形態の慣性計測装置400は、互いに交差(理想的には、直交)する3軸(x軸、y軸、z軸)の角速度をそれぞれ検出する3つの角速度検出装置411〜413、互いに交差(理想的には、直交)する3軸(x軸、y軸、z軸)の加速度をそれぞれ検出する3つの加速度検出装置421〜423、信号処理回路430、記憶部440及び通信回路450を含んで構成されている。なお、本実施形態の慣性計測装置400は、図12に示される構成要素(各部)の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
角速度検出装置411は、x軸回りに生じる角速度を検出し、検出したx軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。角速度検出装置412は、y軸回りに生じる角速度を検出し、検出したy軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。角速度検出装置413は、z軸回りに生じる角速度を検出し、検出したz軸角速度の大きさ及び向きに応じた角速度信号を出力する。
加速度検出装置421は、x軸回りに生じる加速度を検出し、検出したx軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。加速度検出装置422は、y軸回りに生じる加速度を検出し、検出したy軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する
。加速度検出装置423は、z軸回りに生じる加速度を検出し、検出したz軸加速度の大きさ及び向きに応じた加速度信号を出力する。
なお、3つの角速度検出装置411〜413は、1つのパッケージに収容されて3軸角速度検出モジュールを構成してもよい。同様に、3つの加速度検出装置421〜423は、1つのパッケージに収容されて3軸加速度検出モジュールを構成してもよい。
信号処理回路430は、角速度検出装置411〜413から出力された3軸角速度信号を取得し、加速度検出装置421〜423から出力された3軸加速度信号を取得し、取得した3軸角速度信号及び3軸加速度信号を処理する。例えば、信号処理回路430は、取得した3軸角速度信号及び3軸加速度信号を順次A/D変換して3軸角速度データ及び3軸加速度データからなる慣性データを生成し、時刻情報を付して慣性データを記憶部440に記憶する処理を行う。また、信号処理回路430は、角速度検出装置411〜413及び加速度検出装置421〜423の各々の取り付け角誤差(各検出軸とx軸,y軸,z軸との誤差)に応じてあらかじめ算出された補正パラメーターを用いて、記憶部440に記憶した慣性データをxyz座標系のデータに変換(補正)し、記憶部440に記憶する処理を行う。また、信号処理回路430は、xyz座標系のデータに変換して記憶部440に記憶した慣性データを時刻順に読み出し、時刻情報と慣性データとを含むパケットデータを生成し、通信回路450に出力する。
また、信号処理回路430は、慣性データに対して、オフセット補正処理や温度補正処理を行ってもよいし、角速度検出装置411〜413及び加速度検出装置421〜423の各々の検出動作(例えば、検出周期等)を制御してもよい。
通信回路450は、信号処理回路430の処理によって得られたパケットデータ(時刻情報付きの慣性データ)を受け取って、当該パケットデータをあらかじめ決められた通信フォーマットに合わせたシリアルデータに変換し、外部に送信する。
なお、角速度検出装置411〜413が出力する3軸角速度信号及び加速度検出装置421〜423が出力する3軸加速度信号は、デジタル信号であってもよい。また、本実施形態の慣性計測装置400は、3つの角速度検出装置411〜413と3つの加速度検出装置421〜423とを含むが、少なくとも1つの角速度検出装置を含めばよい。
本実施形態の慣性計測装置400において、加速度検出装置421〜423の少なくとも何れか又は角速度検出装置411〜413の少なくとも何れかとして、上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1が適用される。本実施形態の慣性計測装置400によれば、加速度検出装置421〜423の少なくとも何れか又は角速度検出装置411〜413の少なくとも何れかとして、静止していないときでも物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常を判定することが可能な物理量検出装置1が適用されるので、高い信頼性を達成することができる。
3.移動体測位装置
図13は、本実施形態の移動体測位装置の構成例を示す図である。図13に示されるように、本実施形態の移動体測位装置500は、センサーモジュール510、処理部520、操作部530、記憶部540、表示部550、音出力部560及び通信部570を含んで構成されており、各種の移動体に搭載される。なお、本実施形態の移動体測位装置500は、図13に示される構成要素(各部)の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
センサーモジュール510は、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とを含む。
慣性計測装置511は、3軸(x軸、y軸、z軸)回りに生じる角速度をそれぞれ検出する不図示の3つの角速度検出装置と、3軸(x軸、y軸、z軸)回りに生じる加速度をそれぞれ検出不図示の3つの加速度検出装置と、を含む。そして、センサーモジュール510は、3つの角速度検出装置によって検出された3軸角速度信号及び3つの加速度検出装置によって検出された3軸加速度信号に対して、所定の処理(A/D変換処理、取り付け角誤差の補正処理等)を行う。さらに、センサーモジュール510は、所定の処理を行って得られた慣性データ(3軸角速度データ及び3軸加速度データ)を処理部520に出力する。慣性計測装置511として、上記の実施形態の慣性計測装置400が適用される。
衛星信号受信部512は、不図示のアンテナを介して、GPS(Global Positioning System)衛星等の測位用衛星から、当該測位用衛星の軌道情報や時刻情報等を含む航法メッセージ(「測位用情報」の一例)が重畳された電波(衛星信号)を受信する。衛星信号受信部512は、例えば3つ以上の測位用衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、例えば公知の技術により、受信した各衛星信号に重畳されている航法メッセージを復調(取得)し、各航法メッセージを処理部520に出力する。なお、衛星信号受信部512は、GPS以外の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の測位用衛星やGNSS以外の測位用衛星からの衛星信号を用いてもよいし、WAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObalNAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)等の衛星測位システムのうち1つ、あるいは2つ以上のシステムの測位用衛星からの衛星信号を利用してもよい。
図13では、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とは、センサーモジュール510に含まれているが、センサーモジュール510として一体化されていなくてもよい。すなわち、慣性計測装置511と衛星信号受信部512とは1つのパッケージに収容されていなくてもよい。
操作部530は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部520に出力する。
記憶部540は、処理部520が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するROM(Read Only Memory)や、処理部520の作業領域として用いられ、ROMから読み出されたプログラムやデータ、操作部530から入力されたデータ、処理部520が各種プログラムにしたがって実行した演算結果等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)を含む。
表示部550は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、電気泳動ディスプレイ等により構成される表示装置であり、処理部520から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
音出力部560は、スピーカー等の音を出力する装置である。
通信部570は、処理部520と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
処理部520は、記憶部540に記憶されているプログラムに従い、各種の計算処理や
制御処理を行う。具体的には、処理部520は、慣性計測装置511から慣性データを取得し、衛星信号受信部512から航法メッセージを取得し、取得したこれらのデータや操作部530からの操作信号に応じた各種の処理、外部装置とデータ通信を行うために通信部570を制御する処理、表示部550に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、音出力部560に各種の音を出力させる処理等を行う。
特に、本実施形態では、処理部520は、記憶部540に記憶されているプログラムを実行することにより、姿勢算出部521、位置算出部522及び位置補正部523の各部として機能する。
姿勢算出部521は、慣性計測装置511から出力される慣性データに基づいて、例えば公知の手法により、移動体測位装置500が搭載される移動体の姿勢を算出する。
位置算出部522は、衛星信号受信部512から出力される航法メッセージに基づいて、移動体の位置を算出する。具体的には、位置算出部522は、衛星信号受信部512から出力される3つ以上の航法メッセージに含まれる衛星信号の発信時刻や受信時の電波伝搬遅れ等の情報を用いて、移動体測位装置500が搭載される移動体と3つ以上の測位用衛星との各距離を算出する。そして、位置算出部522は、算出した距離から移動体の位置を算出する。
位置補正部523は、姿勢算出部521が算出した移動体の姿勢に基づいて、位置算出部522が算出した移動体の位置を補正する。例えば、位置補正部523は、移動体の姿勢から移動体の水平面に対する傾斜角度を算出し、算出した傾斜角度に基づいて、移動体の水平面上の位置を移動体が移動する面における位置に補正してもよい。
処理部520は、移動体の位置や姿勢等の情報を、表示部550に表示させ、あるいは音出力部560から出力させ、あるいは、通信部570を介して外部装置に送信する。
なお、衛星信号受信部512が各衛星信号を受信して航法メッセージを復調し、位置算出部522が航法メッセージを用いて移動体と各測位用衛星との距離を算出して移動体の位置を算出しているが、衛星信号受信部512が、移動体と各測位用衛星との距離を算出してもよいし、移動体の位置を算出してもよい。すなわち、衛星信号受信部512が、位置算出部522が行う処理の少なくとも一部を行ってもよい。
本実施形態の移動体測位装置500によれば、慣性計測装置511として、高い計測精度を達成することが可能な慣性計測装置400が適用されるので、例えば、移動体の位置や姿勢等をより高精度に測定することができる。
4.電子機器
図14は、本実施形態の電子機器の機能ブロック図の一例である。図14に示されるように、本実施形態の電子機器600は、物理量検出装置610、演算処理装置620、操作部630、ROM640、RAM650、通信部660、表示部670、音出力部680を含んで構成されている。なお、本実施形態の電子機器600は、図14に示される構成要素(各部)の一部を省略または変更してもよいし、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
物理量検出装置610は、1軸又は複数軸(2軸、3軸、あるいは4軸以上)に生じる物理量をそれぞれ検出し、物理量信号を演算処理装置620に出力する。物理量検出装置610として、上記の各実施形態又は各変形例の物理量検出装置1が適用される。
演算処理装置620は、ROM640等に記憶されているプログラムに従い、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、演算処理装置620は、物理量検出装置610から出力された物理量信号に基づいて演算処理(例えば、各種の計算処理や制御処理など)を行う。また、演算処理装置620は、操作部630からの操作信号に応じた各種の処理、外部とデータ通信を行うために通信部660を制御する処理、表示部670に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、音出力部680に各種の音を出力させる処理等を行う。
操作部630は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を演算処理装置620に出力する。
ROM640は、演算処理装置620が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。
RAM650は、演算処理装置620の作業領域として用いられ、ROM640から読み出されたプログラムやデータ、操作部630から入力されたデータ、演算処理装置620が各種プログラムにしたがって実行した演算結果等を一時的に記憶する。
通信部660は、演算処理装置620と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
表示部670は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、電気泳動ディスプレイ等により構成される表示装置であり、演算処理装置620から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
音出力部680は、スピーカー等の音を出力する装置である。
本実施形態の電子機器600によれば、物理量検出装置610として、静止していないときでも物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常を判定することが可能な物理量検出装置1が適用されるので、例えば、物理量の変化に基づく処理(例えば、姿勢に応じた制御など)の信頼性を高めることができる。
電子機器600としては種々の電子機器が考えられる。例えば、地震計、作業用ロボット、ヘルスモニタリング装置、無人運転装置、パーソナルコンピューター(例えば、モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター)、携帯電話機などの移動体端末、ディジタルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えば、インクジェットプリンター)、ルーターやスイッチなどのストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、移動体端末基地局用機器、テレビ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲーム用コントローラー、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(point of sale)端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(歩行者位置方位計測)等が挙げられる。
図15は、電子機器600の一例であるスマートフォンの外観の一例を示す図であり、図16は、電子機器600の一例としての腕装着型の携帯機器の外観の一例を示す図であ
る。図15に示される電子機器600であるスマートフォンは、操作部630としてボタンを、表示部670としてLCDを備えている。図16に示される電子機器600である腕装着型の携帯機器は、操作部630としてボタンおよび竜頭を、表示部670としてLCDを備えている。これらの電子機器600は、物理量検出装置610として、静止していないときでも物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常を判定することが可能な物理量検出装置1が適用されるので、物理量の変化に基づく処理(例えば、姿勢に応じた表示制御など)の信頼性を高めることができる。
更に、電子機器600の一例として携帯型電子機器の1つである腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)がある。腕時計型の活動計は、バンド等によって手首等の部位(被検体)に装着され、デジタル表示の表示部を備え無線通信が可能である。上述した本実施形態に係る物理量検出装置1は、腕時計型の活動計に組み込まれている。
表示部670を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSや地磁気センサーを用いた位置情報、移動量や加速度センサーや角速度センサーなどを用いた運動量などの運動情報、脈波センサーなどを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。
図17は、携帯型の電子機器600の実施形態に係るリスト機器800(腕時計型の活動計)の平面図である。リスト機器800は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、及び衛星測位システム、例えば、GPSを搭載したGPSウォッチ、等に広く適用できる。
リスト機器800は、ユーザー(装着者)の所与の部位(例えば、手首)に装着され、ユーザーの位置情報や運動情報などを検出することができる。リスト機器は、ユーザーに装着されて位置情報や運動情報などを検出する機器本体810と、機器本体810に取り付けられ機器本体810をユーザーに装着するための第1のバンド部821および第2のバンド部822と、を含む。なお、リスト機器800には、ユーザーの位置情報や運動情報に加えて、例えば脈波情報などの生体情報を検出する機能や時刻情報などを取得する機能を設けることができる。
機器本体810は、ユーザーへの装着側にケースとしてのボトムケース(不図示)が配置され、ユーザーへの装着側と反対側には、表側に開口する開口部を有するケースとしてのトップケース830が配置されている。ここで、ボトムケースとトップケース830とによって、ケースが構成される。機器本体810の表側(トップケース830)に位置する開口部の外側には、ベゼル840が設けられるとともに、このベゼル840の内側にベゼル840と並んで配置されて内部構造を保護する天板部分(外壁)としての風防板(例えば、ガラス板)850が設けられている。風防板850は、透光性カバーとして機能し、トップケース830の開口部を塞ぐように配置されている。機器本体810の表側(トップケース830)の側面には、複数の操作部871(操作ボタン)が設けられている。なお、ベゼル840には、表側から視認可能な表示を設けることができる。
また、機器本体810は、風防板850の直下に配置されている液晶ディスプレイ(LCD)などで構成される表示部874と、風防板850の外縁部分と表示部874との間に配置されている吸湿部材860と、を有しており、表示部874及び吸湿部材860はケースに収容されている。なお、吸湿部材860には、表側から視認可能な表示を設けることができる。機器本体810は、風防板850を介して、表示部874の表示や吸湿部材860の表示をユーザーが閲覧可能な構成としてもよい。つまり本実施形態のリスト機器800では、検出した位置情報や運動情報、或いは時刻情報等の種々の情報を表示部8
74に表示し、当該表示を機器本体810のトップ側からユーザーに提示するものであってもよい。また、ボトムケースの両側には、第1のバンド部821および第2のバンド部822との接続部である一対のバンド装着部(不図示)が設けられている。
図18は、リスト機器800の機能ブロック図の一例である。図18に示すように、リスト機器800は、処理部870、GPSセンサー880、地磁気センサー881、圧力センサー882、加速度センサー883、角速度センサー884、脈拍センサー885、温度センサー886、操作部871、計時部872、記憶部873、表示部874、音出力部875、通信部876、バッテリー877などを含んで構成されており、これらの各部はケースに収容されている。但し、リスト機器800の構成は、これらの構成要素の一部を削除又は変更し、あるいは他の構成要素を追加したものであってもよい。
通信部876は、リスト機器800と他の情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部876は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low
Energyを含む)、Wi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機や通信部876はUSB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
処理部870(プロセッサー)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部870は、記憶部873に格納されたプログラムと、操作部871から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部870による処理には、GPSセンサー880、地磁気センサー881、圧力センサー882、加速度センサー883、角速度センサー884、脈拍センサー885、温度センサー886、計時部872の各出力信号(出力データ)に対するデータ処理、表示部874に画像を表示させる表示処理、音出力部875に音を出力させる音出力処理、通信部876を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー877からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
処理部870は、高精度のGPS機能により計測開始からのユーザーが移動した合計距離を計測する。また、処理部870は、距離計測の結果から、ユーザーの現在の走行ペースを計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。また、処理部870は、GPS機能により、標高を計測し表示する。また、処理部870は、GPS電波が届かないトンネル内などでもユーザーの歩幅を計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの1分あたりの歩数(ピッチ)を計測し表示する。また、処理部870は、脈拍センサーによりユーザーの心拍数を計測し表示する。また、処理部870は、ユーザーの山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。また、処理部870は、事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計測(オートラップ)を行う。また、処理部870は、ユーザーの消費カロリーを表示する。また、処理部870は、ユーザーの運動開始からの歩数の合計を表示する。
上記実施形態に係る物理量検出装置1を含む加速度センサー883は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさ及び向きに応じた信号(加速度信号)を出力する。あるいは、上記実施形態に係る物理量検出装置1を含む角速度センサー884は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさ及び向きに応じた信号(角速度信号)を出力する。
なお、上述したリスト機器800は、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を利用しているが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObalNAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1又は2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも1つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
5.移動体
図19は、本実施形態の移動体の一例である自動車の構成を示す斜視図である。図19に示すように、自動車1500には物理量検出装置1が搭載されており、例えば、物理量検出装置1によって車体1501の姿勢を検出することができる。物理量検出装置1から出力される物理量信号は、車体の姿勢を制御する制御部(姿勢制御部)としての車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。また、物理量検出装置1は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
また、移動体に適用される物理量検出装置1は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、およびドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械(農機)、もしくは建設機械(建機)などの姿勢制御において利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、物理量検出装置1、およびそれぞれの制御部(不図示)が組み込まれる。
このような移動体は、静止していないときでも物理量検出素子2X,2Y,2Zの異常を判定することが可能な物理量検出装置1、および制御部(不図示)を含んでいるので、制御部による物理量の変化に基づく制御(姿勢制御等)の信頼性を高めることができる。
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。