本開示の実施の形態におけるシステムの主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示におけるシステムの主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC),またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されてもよいし、複数の装置に備えられてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記憶される。プログラムは、記録媒体に予め格納されてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
以下に図面を用いて、本開示の実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる照射部の数、制御部の数、照射対象個人の数等は説明のための例示であって、照明制御システム等の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、入居者管理システム10の構成を示すブロック図である。入居者管理システム10は、施設8の入居者に関する管理を行うとともに照明制御システム20を有する管理システムである。ここでは、施設8は、光施療を必要とする照射対象個人を入居者として含む生活空間である。光施療とは、通常照明の照度よりも高照度の光を日中に所定時間照射し、照射対象個人の生体リズムを調整する光療法である。光施療は、照明制御システム20を用いて行われる。照射する光の照度、照射する所定時間の内容については後述する。施設8は、生体リズムを維持する力が弱くなっている高齢者を含む高齢者施設である。これは説明のための例示であって、季節性環境障害患者や、生体リズムを維持する力が弱くなっている者、生活リズム障害の患者、うつ病患者等を含む施設8であってもよい。入居者管理システム10は、施設8に限らず、光施療を必要とする照射対象個人の自宅に設けられてもよい。例えば、介護や支援を必要とする照射対象個人の自宅であって、照明制御システム20を有し、入居者である照射対象個人に関する管理を行う自宅に入居者管理システム10を適用することができる。
入居者管理システム10は、赤外線センサ等を用いて入居者の在不在管理を行う在不在管理部12、入居者の身体状況の管理を行う身体状況管理部14、施設8内の空調等の環境状況を管理する環境状況管理部16を含む。これらは、入居者の管理に関する例示であって、これら以外で入居者の管理を行ってもよい。在不在管理部12、身体状況管理部14、環境状況管理部16等の入居者の管理に関する機能は、図1に示すように、1つの施設8内において実行されてもよく、一部または全部が施設8外の管理センタ等において実行されてもよい。
図1に、照明制御システム20のブロック図を示す。照明制御システム20は、照射部22、受光量推定部24、識別子情報部26、制御部28、及び表示部30を含む。これらは、図1に示すように、1つの入居者管理システム10内において実行されてもよく、例えば、制御部28について入居者管理システム10外に設けられてもよい。例えば、入居者管理システム10外の管理センタ等に制御部28の機能を実行させてもよい。
図2は、照明制御システム20の一例を示す構成図である。この例では、照明制御システム20は、施設8の1つの部屋80に設けられ、照明制御システム20の構成要素ではないが、入居者管理システム10に入居しているn人の照射対象個人50が図示されている。複数の照射対象個人50の個々人を区別するときは、照射対象個人50a,50b,50c,50nのように、a,b,c,nを添字として付加する。以下においても同様である。図1には、照射対象個人50a,50b,50c,50nごとのベッドを代表して、照射対象個人50a用のベッド52aが図示されている。
照射部22は、通常照明光84よりも高照度の照明光を生体活性光82として、通常照明光84または少なくとも1つ以上の生体活性光82(図4参照)を照射する照明器具である。通常照明光84とは、一般の室内照明程度の照度を有する光で、一例を挙げると、照射対象個人50の顔面照度で約300〜500lx、テーブル面の水平面照度で約700lxである。換言すれば、一般的な蛍光灯等による生活照明光である。生体活性光82とは、生体リズムを調整する光施療に用いられる照度を有する光で、照度を測定する条件を同じとすると、通常照明光84の約5〜10倍の照度を有する光である。一例を挙げると、天井面からの照明器具による照射で、照射対象個人50の顔面照度で約2500lx程度、照明器具の高照度光発生部からの距離50cmにおける照度で約2500lx程度である。この数値は説明のための例示であり、光施療の内容により適宜変更される。光の波長としては、通常照明光84と同じでよいが、場合によっては、高い色温度の光や、青色成分の多い光を用いてもよく、その場合には、上記照度値よりも低い光であっても生体活性光である。
照射部22は、図1に示す一般的な天井照明用の照明器具でもよく、卓上型の照明器具や壁面設置型の照明器具でもよい。光源種別は特に問わず、LEDでも、蛍光ランプでもよい。
図2では、照射部22は1つで、その照射範囲40Aも1つである。これは例示であって、例えば、複数の照射部22を用いて合成された1つの照射範囲40Aを形成してもよい。その場合には、合成された1つの照射範囲40Aにおける照度が生体活性光82の照度となる。あるいは、1つの部屋80に複数の照射部22を設け、それぞれ独立した照射範囲を有するものとしてよい。施設8が複数の部屋80を有する場合は、各部屋80について少なくとも1つの照射領域と、少なくとも1つの照射部22が設けられる。
図2における受光量推定部24a,24b,24c,24nは、照射対象個人50a,50b,50c,50nの個々人にそれぞれ装着される受光量推定部24である。ここでは、個々人の受光量推定部24を区別するため、照射対象個人50を区別するために用いた添字と同じ添字を付加した。以下においても同様である。受光量推定部24a,24b,24c,24nは、各照射対象個人50a,50b,50c,50nが受けた光施療の受光量を推定する小型の測定装置である。
受光量推定部24a,24b,24c,24nはすべて同じ仕様で、その装着箇所も同じであるので、照射対象個人50aの受光量推定部24aについて述べる。光施療は、照射対象個人50aの目の網膜に強い光である生体活性光82を供給して行われるものであるので、受光量推定部24aは、照射対象個人50aの目の近傍の着衣に装着される。図2の例では、照射対象個人50aの左肩に配置される。照射部22の光照射の指向性がある場合等では、受光量推定部24aにおける受光面の方向は、照射対象個人50aの顔が向く方向とすることがよい。受光量推定部24aは照射対象個人50aの専用であるので、受光量推定部24aは照射対象個人50aを示す識別子データを有する。
図2における受光量推定部24aは、受光面を有する照度検出部60、照射時間を計測する計時部62、照度と照射時間の積算累計値を算出しこれを推定された受光量とするメモリ付きの受光量算出部64を含む。さらに、照射対象個人50aを示す識別子データと共に、推定された受光量を制御部28に送信する送信部66を備える。以下では、特に断らない限り、推定された受光量を、単に、受光量と呼ぶ。かかる受光量推定部24aとしては、フォトダイオード等の照度検出部60と、メモリを有する集積回路とを含んで1つのパッケージにまとめた電子部品を用いることができる。
図2では、照射部22である照明器具の周縁部に受信部70が設けられ、受光量推定部24aと受信部70の間は無線通信で交信され、受信部70と制御部28との間は適当な信号線で接続される。受光量推定部24aと制御部28との間の交信は、制御部28からのデータ送信要求と、それに対する受光量推定部24aからのデータ送信の双方向通信としてもよく、予め定めた制御周期で受光量推定部24aから制御部28へ送信される一方向通信としてもよい。無線通信手段としては、例えば、WiFi、ZigBee、Bluetooth(登録商標) Low Energy等を用いることができる。
図3に、受光量としての照度と照射時間の積算累計値の例を示す。図3の各図において、縦軸は照度であり、横軸は時間である。四角枠で囲まれた部分は、受光量推定部24aが推定した受光量=(照度と照射時間の積算累計値)である。図3(a)は、照度=L1(lx)で照射時間T1(hour)の場合である。このときの受光量は、(L1×T1)(lx・hour)である。図3(b)は、照度=L2(lx)で照射時間T2(hour)の場合である。このときの受光量は、(L2×T2)(lx・hour)である。図3(a),(b)は、いずれも生体活性光82の照射は照射時間の期間連続して行われている。図3(c)の例は、照度はL3であるが、生体活性光82の照射は、照射時間T3で照射の後、t34の照射が行われない期間をおいて再び照射時間T4の照射が行われ、その後t45の照射が行われない期間をおいて再び照射時間T5の照射が行わる。このように生体活性光82の照射が断続的であっても、照射されない期間t34,t45がT3、T4,T5に比較して短く、光施療の効果に大きな影響を与えない程度であれば、照射時間T3,T4,T5を積算できる。したがって、図3(c)の受光量は、L3×(T3+T4+T5)とできる。
再び図2に戻り、照射対象個人50a用のベッド52aの近傍に設けられる識別子情報部26aは、照射対象個人50aの識別子情報データを検出または入力して、制御部28に送信する端末である。複数の照射対象個人50の個々人の識別子情報部26を区別するため、照射対象個人50を区別するために用いた添字として、照射対象個人50aに用いたのと同じ添字aを付加した。
識別子情報データは、照射対象個人50の識別子データの他に、照射対象個人50の身体情報データを含む。以下では、照射対象個人50aについての識別子情報データを述べる。識別子データは、受光量推定部24aが照射対象個人50aに対応することを示す識別データであり、照明制御システム20における測定データや制御データ等を照射対象個人50aに関連付けるために用いられる。身体情報データは、照射対象個人50aの事情に応じた受光量閾値の設定等のために用いられる。受光量閾値の設定については後述する。照射対象個人50aの身体情報データは、性別や年齢、睡眠の質に関する情報、起床時刻、就寝時刻、投薬状況、要介護度や認知症状度合等である。
睡眠の質に関する情報は、ベッド52aに設置された圧センサ、及び、圧センサを用いて照射対象個人50aの動きを検出し、予め定めた閾値等の判断基準に基づいて、終夜睡眠中の中途覚醒の回数や夜間徘徊の回数を計数する検出回路によって検出される。圧センサに代えて、電波センサ型のセンサや、画像センサを用いて、照射対象個人50aの睡眠状態等を予め定めた判断基準に基づいて検出してもよい。
睡眠の質に関する情報以外の身体情報データは、照射対象個人50a自身、または照明制御システム20の管理者によって用いて識別子情報部26に入力される。
図2において、制御部28は、受光量推定部24、識別子情報部26から取得した情報に基づいて、照射部22の動作を制御し、表示部30には識別子データに関連付けた受光量を出力する制御装置である。表示部30は、モニタディスプレイで、照明制御システム20の管理者や、照射対象個人50がその表示画面を自由に見ることが可能な場所に設置される。
図2の例では、制御部28には、n個の受光量推定部24a,24b,24c,24nのそれぞれから、対応するn人の照射対象個人50a,50b,50c,50nに関するn個の識別子データと共にn個の受光量とが送信されてくる。制御部28は、送信されてきたn組の(識別子データ、受光量)を、適当な表示形式に変換して表示部30に送信する。図2には、表示部30の表示画面に、横軸に識別子データ、縦軸に受光量を取り、照射対象個人50a,50b,50c,50nごとの受光量が一目で分かる受光量一覧表32が表示される。図2では、照射対象個人50a,50b,50c,50nのそれぞれの識別子データを、a,b,c,nと示した。
このように、照射対象個人50a,50b,50c,50n毎に、現在の受光量状況が一覧表示されるので、照明制御システム20の管理者は、各照射対象個人50a,50b,50c,50nに対する今後の光施療の進め方等の管理を適切に行うことが可能になる。また、照射対象個人50a,50b,50c,50nにとっても、表示部30の表示画面に表示される自分の受光量をみて、光施療の進み具合等を確認できる。図2の受光量一覧表32の例では、照射範囲40Aの内側にいる照射対象個人50b,50cの受光量が高く、照射範囲40Aの周縁や外側にいる照射対象個人50a,50nの受光量が低いことが分かる。これを見て、照射対象個人50a,50nがもっと照射範囲40Aの内側に移動するようにすることで、照射対象個人50a,50b,50c,50nの全員の受光量が適切に上がることが期待される。
受光量の目標があれば、光施療がより効果的に進められる。受光量の目標としては、予め定めた受光量閾値34を用いることができる。予め定めた受光量閾値34としては、光施療として一般的である5000lx・hourとできる。この値は、照射対象個人50a,50b,50c,50nの識別子情報部26の内容を全く考慮せず、一律に同じ値Lth0である。Lth0を標準的な受光量閾値34と呼ぶ。以下では、特に断らない限り、標準的な受光量閾値34を、受光量閾値34と呼ぶ。図2の受光量一覧表32に、受光量閾値34を示す。受光量閾値34と照射対象個人50a,50b,50c,50nのそれぞれの受光量とを比較すると、照射対象個人50b、50cは既に受光量が受光量閾値34を満たしているので、光施療を終えて、高い照度の照射範囲40Aから外れてもよいことが分かる。残りの照射対象個人50a,50nは、照射範囲40Aに留まって、光施療を継続する必要があることも分かる。
制御部28は、少なくとも1つ以上の照射部22の動作を制御する。照射部22は、図2に示すように1つの場合もあるが、1つの部屋80に複数の照射部22が設けられる場合、施設8が複数の部屋80を有しそれぞれに照射部22が設けられる場合もある。これらの場合において、施設8の複数の照射部22の全部の動作を1つの制御部28で制御してもよく、数台の制御部28に分けて制御してもよい。
制御部28における照射部22の動作の制御は、照射対象個人50a,50b,50c,50nがそれぞれ受けた受光量と、受光量閾値34との比較によって行われる。制御部28の制御下にある照射部22の照射範囲40Aにある受光量推定部24の数が1つか複数かによって、制御部28の制御が異なる。
光施療を受けるのが照射対象個人50aの1人のときは、照射範囲40Aにある受光量推定部24が1つの場合である。このときには、制御部28は、照射対象個人50aの受光量推定部24aによって推定される受光量が予め定めた受光量閾値34未満である場合には生体活性光82を照射する。一方、受光量推定部24aによって推定される受光量が受光量閾値34以上の場合には通常照明光84を照射する制御を行う。受光量閾値34の値は、Lth0である。
光施療を受ける照射対象個人50が複数の例として、4人の照射対象個人50a,50b,50c,50dが1つの光施療用の部屋80にいる状態を図4に示す。部屋80は、3つの照射部22a,22b,22cを有し、部屋80内の全体が1つの照射範囲40Aで、どの場所でもほぼ同じ照度の生体活性光82となるように、図示しない1台の制御部28によって全体の動作が制御される。部屋80内には、4人の照射対象個人50a,50b,50c,50dがいるので、これに対応し、1つの照射範囲40Aに4つの受光量推定部24a、24b、24c、24dがある。
照射部22a,22b,22cの照射範囲40A内に複数の受光量推定部24a、24b、24c、24dがある場合には、制御部28は以下のように照射部22a,22b,22cの全体の動作の制御を行う。すなわち、少なくとも1つの受光量推定部24によって推定される受光量が予め定めた受光量閾値34未満である場合には、生体活性光82を照射する。これに対し、全ての受光量推定部24によって推定される受光量が受光量閾値34以上の場合には、通常照明光84を照射する。
図5は、表示部30に表示される現時点における受光量一覧表32の2つの例である。受光量一覧表32の横軸、縦軸、受光量閾値34の内容は、図2で述べたので、詳細な説明を省略する。受光量推定部24a,24b,24c,24dの識別子データは、a,b,c,dである。
図5(a)の受光量一覧表32の状態は、受光量推定部24a,24dの2つの受光量が受光量閾値34以上であるが、受光量推定部24b,24cの2つの受光量が受光量閾値34未満である。この状態においては、制御部28は、照射部22a,22b,22cが生体活性光82を照射する制御を行う。いままで生体活性光82を照射している場合には、その生体活性光82の照射を継続する。
これに対し、図5(b)の受光量一覧表32の状態は、受光量推定部24a,24b,24c,24dの全ての受光量が受光量閾値34以上である。この状態においては、制御部28は、照射部22a,22b,22cが通常照明光84を照射する制御を行う。いままで生体活性光82を照射している場合には、その生体活性光82の照射を通常照明光84の照射に切換える。
このようにして、複数人に対して光施療を行う場合においても、個々人が必要な受光量を受けているかを管理し、全ての照射対象個人について光施療に必要な受光量を満たしながら、高照度の生体活性光82の照射を最小限として省エネルギを図ることができる。従来技術では、光施療を受ける照射対象個人が十分な受光量を受けているかを光施療の管理者等が正確に把握することは困難であるため、長時間の照射になりがちである。個別の受光量推定部24a等と、個々人の受光量をまとめて表示する受光量一覧表32と、これに基づく照射部22の制御とによって、光施療を受ける照射対象個人の全員が光施療に必要な受光量を受けることができ、かつ適切な省エネルギを図ることができる。
かかる制御部28の制御処理手順を、図6と図7を用いてさらに詳細に述べる。図6において、施設8がN個の部屋80を有し、それぞれに照射部22A,22B,・・22Nを有している。各照射部22A,22B,・・22Nは、図4で述べたと同様に3つの照射部22a,22b,22cを有する。各照射部22A,22B,・・22Nは、それぞれの照射範囲40A,40B,・・40Nにおける照度がどこでもほぼ同じになるように、それぞれ独立の制御部28A,28B,・・・28Nによって制御される。そして、照射範囲40Aには、4つの個別の受光量推定部24a,24b,24c,24dがあり、照射範囲40Bには、1つの個別の受光量推定部24eがあり、照射範囲40Nには、2つの個別の受光量推定部24f,24gがある。このように、各照射範囲40A,40B,・・40Nに対応する照射部22A,22B,・・・22Nが、それぞれ独立の制御部28A,28B,28Nによって制御される場合は、図5で述べた制御も、各照射部22A,22B・・・22Nごとに行われる。
図7は、各制御部28A、28B,・・・28Nの制御手順を示すフローチャートであるが、特に、4つの受光量推定部24a,24b,24c,24dがある照射範囲40Aについて、照射部22Aの動作を制御部28Aが制御する手順について述べる。
制御部28Aの任意の制御周期において、まず4つの受光量推定部24a,24b,24c,24dからそれぞれの受光量データが制御部28Aに対して送信される(S10)。この処理手順は、各受光量推定部24a,24b,24c,24dの送信部66等の機能によって実行される。制御部Aは、送信されてきた各受光量推定部24a,24b,24c,24dの受光量データを受信する(S12)。そして、まず1つ目の受光量推定部24aの受光量が、受光量閾値34であるLth0未満であるか否かを判断する(S14)。S14の判断が肯定されると、受光量推定部24aの受光量は、光施療の目標受光量に未達である(S16)ので、制御部28は、照射部22Aに対し、生体活性光82の照射を指令する(S32)。
S14の判断が否定されると、受光量推定部24aの受光量は、光施療の目標受光量を達成している(S18)が、直ちに通常照明光84の照射にするのでない。2つ目の受光量推定部24bの受光量が、受光量閾値34であるLth0未満であるか否かを判断する(S20)。S20の判断が肯定されると、受光量推定部24bの受光量は、光施療の目標受光量に未達である(S22)ので、制御部28は、照射部22Aに対し、生体活性光82の照射の指令を継続する(S32)。
S20の判断が否定されると、受光量推定部24bの受光量は、光施療の目標受光量を達成している(S24)が、直ちに通常照明光84の照射にするのでなく、3つ目の受光量推定部24cの受光量について、上記の手順を繰り返す。そして、3つ目の受光量推定部24cの受光量は、光施療の目標受光量に到達していると、直ちに通常照明光84の照射にするのでなく、最後の受光量推定部24dの受光量が、受光量閾値34であるLth0未満であるか否かを判断する(S26)。S26の判断が肯定されると、受光量推定部24dの受光量は、光施療の目標受光量に未達である(S28)ので、制御部28は、照射部22Aに対し、生体活性光82の照射の指令を継続する(S32)。S26の判断が否定されると、受光量推定部24dの受光量は、光施療の目標受光量を達成している(S30)。ここまで来ると、制御部28Aの制御の下にある照射部22Aの照射範囲40Aにある4つの受光量推定部24a,24b,24c,24dの全てが光施療の目標受光量に到達しているので、これ以上の生体活性光82の照射は不要である。そこで、制御部28Aは、照射部22Aに対し、通常照明光84の照射を指令する(S34)。
S32またはS34の処理手順が終了すると、次の制御周期まで待機する。次の制御周期になると、4つの受光量推定部24a,24b,24c,24dのそれぞれの受光量データを更新する。この処理手順は、各受光量推定部24a,24b,24c,24dの受光量算出部64等の機能によって実行される。そして、S10に戻り、上記の処理手順を繰り返す。制御周期は、その間に受光量が変化する程度の照射を受けている必要があるので、光施療の1日当たりの生体活性光82の照射時間の数分の1程度とすることがよい。光施療の1日当たりの生体活性光82の照射時間を4時間の場合は、4時間の8分の1である30分程度を制御周期とすることがよい。これは一例であって、光施療の計画等によって適宜変更が可能である。
上記では、制御部28の照射部22の制御において、受光量は、一律の受光量閾値34と比較している。光施療を受ける複数の照射対象個人にとって必要な受光量は同じではない。一例を挙げると、光施療は、覚醒水準についての生活リズムを整える効果があるとされるので、適切な光施療によって、日中の覚醒の質と夜中の睡眠の質が向上する。生活リズムが整って来れば、光施療に必要な受光量を低減してもよい。このように、光施療を受ける複数の照射対象個人のそれぞれに必要な受光量は異なる。そこで、照射対象個人ごとに必要な受光量を生体活性光受容量と呼ぶと、この生体活性光受容量の相対的な大きさは、照射対象個人の身体情報データである識別子情報部26に基づいて定めることができる。
例えば、識別子情報部26の内の年齢については、高齢であるほど加齢黄斑変性が進み光施療のキーとなる青色の受光量が少なくなる傾向にある。また、高齢であるほど生体リズムを調整する力、生体リズムのメリハリが弱くなる傾向にある。これらのことから、年齢が高齢となるに従い、光施療に必要な受光量である生体活性光受容量が増加する。
また、識別子情報部26aによって検出されたデータについて、夜間睡眠の中途覚醒回数や夜間徘徊の回数が多ければ多いほど、睡眠の質が低下し、覚醒水準が低下する傾向にある。このことから、睡眠の質が低下するに従い、光施療に必要な受光量である生体活性光受容量が増加し、逆に、睡眠の質が向上するに従い、生体活性光受容量が低減する。
睡眠の質の指標としては、夜間睡眠の中途覚醒回数、夜間徘徊の回数の他に、入眠するまでの時間(短いほど睡眠の質が向上する)を用いることができる。あるいは、一晩の睡眠の中で睡眠が中断されなかった最長の時間(長いほど睡眠の質が向上する)、純粋な睡眠時間(長いほど睡眠の質が向上する)等を用いてもよい。
これ以外の識別子情報部26としての性別、起床時刻、就寝時刻、投薬状況、要介護度、認知症状度合等についても、それぞれ、光施療に必要な受光量である生体活性光受容量の相対的な大きさを定めることができる。
照射対象個人の生体活性光受容量が減少するにつれて、その照射対象個人に必要な受光量が低減する。したがって、光施療の受光量閾値を、標準的な5000lx・hourから低減することができる。例えば、光施療を行うことで、睡眠の質が向上すれば、生体活性光受容量が減少し、これに従い、受光量閾値を低減させることができる。
上記では、表示部30は、照明制御システム20の管理者や、照射対象個人がその表示画面を自由に見ることが可能な場所に設置されるモニタディスプレイとした。これに代えて、表示画面付きの携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等のディスプレイを表示部30として、制御部28から表示データを送信するものとできる。また、照射対象個人の受光量推定部に発光部を設け、受光量が受光量閾値34以上か未満かについての信号を制御部28から受光量推定部に送信し、発光部を点灯させることで、表示部30としてもよい。
図8は、照射対象個人50aの受光量推定部24aに発光部78を設け、その点灯または消灯によって、受光量推定部24aによって推定された受光量が受光量閾値34以上か未満かを表示する例を示す図である。ここでは、発光部78として、青色発光部78aと赤色発光部78bを備え、受光量が受光量閾値34以上のときは青色発光部78aを点灯させ、受光量が受光量閾値34未満のときは赤色発光部78bを点灯させる。これによって、照射対象個人50aは、光施療を続けるか、通常照明光84の照明環境に移れるかが的確に判断できる。図8の例では、赤色発光部78bが点灯しているので、受光量が受光量閾値34未満であることが分かる。ここで述べた発光部78の内容は、説明のための例示であって、他の発光方法、他の色であってもよい。例えば、青色発光部78aと赤色発光部78bは、別体であってもよいが、重ね配置をして、いずれかの色が発光する構造としてもよい。あるいは、赤色発光部78bのみを設け、受光量が受光量閾値34未満のときに点灯して赤色を発光させ、受光量が受光量閾値34以上となれば、赤色発光を消灯してもよい。
上記では、受光量推定部24はフォトダイオード等の照度検出部60を用いるものとした。照度検出部60を用いなくても、照射対象個人50の受光量を推定できる。図9から図9は、照度検出部60を用いない受光量推定部24として、照射対象個人50aに装着された受光量推定部24aの構成と作用効果を示す図である。
図11は、1つの部屋80における照射対象個人50aの位置を示す図である。部屋80の天井部のほぼ中央に照射部22が設けられる。照射対象個人50aは、照度検出部60を用いない受光量推定部24aを着装している。
照度検出部60を用いない受光量推定部24aは、照射対象個人50aの現在位置を推定する位置情報推定部90と、照度と位置とを関連づけた位置・照度関連データ92とを用いて、受光量を推定する。これ以外に、受光量推定部24aは、計時部62、受光量算出部64、送信部66を有する。これらは、照度検出部60を用いる受光量推定部24aで述べたものと同様の内容であるので、詳細な説明を省略する。
位置情報推定部90は、部屋80を9つのセグメントA,B,C,D,E,F,G,Iに区分し、照射対象個人50aの現在位置がどのセグメントに属するかを常時推定する。部屋80におけるセグメント数は例示であって、これ以外の数で部屋80を区分してもよい。
位置情報推定部90は、部屋80の天井部等の適当な個所に可視光の送信部(図示せず)を設け、受光量推定部24側に可視光の受信部を設け、固定位置の送信部と、照射対象個人50aと共に移動する受信部との間で可視光通信を行う。そして、可視光通信による位置検出技術を用い、送信部から送信される固定位置の情報に基づき、受光量推定部24aの現在位置を常時推定する。推定のされる現在位置の精度は、9つのセグメントA,B,C,D,E,F,G,Iのいずれに属するか、の大まかな程度でよい。
可視光通信による位置検出技術は例示であって、これ以外の現在位置の推定方法を用いてもよい。例えば、RFIDを用いて、固定位置に設けられた無線通信手段との間の交信によって、RFIDの現在位置を推定する方法でもよい。あるいは、部屋80に設けられた画像センサを用いて、受光量推定部24aあるいは照射対象個人50aの現在位置を推定する方法でもよい。あるいは、部屋80の床面に圧電型の位置センサマットを敷設し、照射対象個人50aの脚による床面圧を検出して現在位置を推定する方法でもよい。位置センサは、圧電型以外の方式でもよい。
計時部62は、位置情報推定部90と協働して、受光量推定部24aの各セグメントA〜Iのそれぞれに留まっている時間を計時する。図9の例では、受光量推定部24aは、最初にセグメントIに時間T1の期間留まっており、その後セグメントFに移動し、そこで時間T2の期間留まっている。そして、再びセグメントIに戻り、そこで時間T3の期間留まった後、セグメントIに移動し、時間T4の期間経過している。これは、説明のための例示であって、セグメントI,F以外に留まってよく、移動せずに1つのセグメント内に留まっていてもよい。
位置・照度関連データ92は、照射部22の配置、仕様等に従い、シミュレーション等によって9つのセグメントA〜Fのそれぞれにおける照度を求め、セグメントA〜Iのそれの推定照度をまとめたデータである。図10に、位置・照度関連データ92の一例として、位置情報としてセグメントA〜Iの区分を取り、推定照度として、位置情報に対応するセグメントの推定照度を取った関連マップを示す。図10の例では、セグメントIの推定照度LI=500lx、セグメントFの推定照度LF=2500lxである。位置・照度関連データ92は、受光量推定部24aの適当なメモリに、検索キーを位置情報として記憶される。位置・照度関連データ92は、図10に示すマップ型式以外に、ルックアップテーブル型式、位置情報を入力すると対応する推定照度を出力するROM型式でもよい。
受光量算出部64は、受光量推定部24aの現在位置における推定照度Lを、位置情報推定部90と位置・照度関連データ92とに基づいて求める。例えば、位置情報推定部90によって推定された位置情報を検索キーとして位置・照度関連データ92を検索し、受光量推定部24aの現在位置における推定照度を取得することができる。受光量算出部64は、計時部62のデータに基づいて、受光量推定部24aが現在位置と同じセグメントに留まっている滞留時間Tを求める。そして、各セグメントにおける滞留時間にそのセグメントの推定照度を乗じて、そのセグメントにおける受光量を推定する。これを受光量推定部24aの現在位置の移動に合わせて累積計算し、部屋80における受光量推定部24aの推定される受光量とする。
図11は、受光量推定部24aの推定される受光量の算出を示す図である。図9に示すように、受光量推定部24aは、最初にセグメントIに時間T1の期間留まっているので、その部分の受光量は、(LI×T1)と推定される。次に、セグメントFに移動し、そこで時間T2の期間留まっているので、その部分の受光量は、(LF×T2)と推定される。そして、再びセグメントIに戻り、そこで時間T3の期間留まっているので、その部分の受光量は、(LI×T3)と推定される。その後、セグメントFに移動し、時間T4の期間経過しているので、その部分の受光量は、(LF×T4)と推定される。したがって、受光量推定部24aの推定される受光量は、{(LI×T1)+(LF×T2)+(LI×T3)+(LF×T4)}である。このようにして、照度検出部60を用いない受光量推定部24aの受光量は推定される。
上記では、受光量推定部24aの移動範囲が1つの部屋80内に留まっているが、受光量推定部24aの移動範囲が複数の部屋80に跨ってもよく、部屋80の外側の通路部を含んでもよい。また、位置・照度関連データ92を用いることに代えて、GPS及び天気情報を用いて、現在位置が屋内か屋外かを判定し、屋内照度を例えば300lx、屋外照度を5000lxとしてその積算値を受光量推定値として扱ってもよい。
上記では、照度と照射時間の積算累積値に基づいて受光量を推定したが、照度(lx)に代えて、光束(lm)を用いてもよい。例えば、40000lmの光束の下で2時間いた場合を閾値と設定し、実際に浴びた量が20000lmの下で5時間いた場合には、受光量として達成として判断してもよい。
本実施の形態に係る照明制御システム20は、通常照明光84よりも高照度の照明光を生体活性光82として、通常照明光84または少なくとも1つ以上の生体活性光82を照射する照射部22を備える。また、照度と照射時間の積算累積値を受光量として、照射対象個人50が受ける受光量を推定する受光量推定部24と、少なくとも1つ以上の照射部22を制御する制御部28を備える。制御部28は、照射部22の照射範囲内に1つの受光量推定部24がある場合には、受光量推定部24の推定受光量が予め定めた受光量閾値34未満である場合には生体活性光82を照射する。一方、受光量推定部24の推定受光量が受光量閾値34以上の場合には通常照明光84を照射する。制御部28は、照射部22の照射範囲内に複数の受光量推定部24がある場合には、少なくとも1つの受光量推定部24の推定受光量が受光量閾値34未満である場合には生体活性光82を照射する。一方、全ての受光量推定部24の推定受光量が受光量閾値34以上の場合には通常照明光84を照射する制御を行う。
上記構成によれば、複数人に対して光施療を行う場合においても、個々人が必要な受光量を受けているかを管理し、全ての照射対象個人について光施療に必要な受光量を満たしながら、高照度の生体活性光82の照射を最小限として省エネルギを図ることができる。