JP2019070097A - 赤色及び近赤外領域に蛍光特性をもつv字型キサンテン色素 - Google Patents

赤色及び近赤外領域に蛍光特性をもつv字型キサンテン色素 Download PDF

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一典 椿
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Abstract

【課題】水溶性でかつ水中で赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持つキサンテン系色素の提供。【解決手段】式(1)で示された、拡張π電子共役系を持つV字型キサンテン色素のアリール部位に官能基を導入することで光学的特性に変化を与え、さらに電子求引性官能基を導入し、赤色又は近赤外領域に蛍光発光特性を有するキサンテン系色素。(Xは電子求引性の官能基;R1〜R3は夫々独立にH、OH、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基、N−置換スクシンイミジル基又はC1〜C6の炭素鎖或いは1〜3の繰り返し構造を持つPEG基、かつ末端にOH、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基或いはN−置換スクシンイミジル基で置換したリンカー)【選択図】なし

Description

この発明は、9位にアリール基が置換したキサンテン骨格を架橋構造にすることでキサンテン部位とアリール部位に平面性を持たせると共に、共役系を広げたV字型キサンテン化合物であり、アリール部位の置換基の電子的特性を利用することで、近赤外領域まで拡張した蛍光特性をもつキサンテン系蛍光色素群を供するものである。
フルオレセインに代表されるキサンテン系化合物は、その多くが蛍光特性を有しており、バイオイメージング技術を始め、色素増感太陽電池材料の研究(非特許文献1−2)やレーザー色素の材料(非特許文献3)など幅広く利用されている。キサンテン系色素には,キサンテン骨格上の官能基の種類によりカチオン性およびアニオン性を持たせることが可能で,いずれの場合も強い蛍光を示すことが知られている。
例えばジアルキルアミノ基が置換したローダミンBはカチオン性状態において赤色を示す。一方、キサンテン系色素に広域におよぶ光学的特性を付与させたり、耐光性を持たせるなどの改良が進むに従い、より複雑で分子サイズの大きいキサンテン系化合物が開発されている。これら化合物群は特に材料科学に供する素材としては非常に有用であるが、バイオイメージングに用いるには、脂溶性や膜透過性などの面から応用が難しいのが現状である。
バイオイメージングにおけるキサンテン系化合物の利用は、フルオレセインを母骨格とし、これにイソチオシアナート基やN−置換スクシンイミジル基などを導入することで、酵素や抗体,ペプチドへ蛍光標識する方法が主流である(非特許文献4−5)。およそ極大吸収波長494nm、極大蛍光波長521nmの緑色蛍光を持つフルオレセイン系バイオイメージング色素は、細胞中に取り込まれることで細胞内タンパク質の蛍光標識に広く利用されている(非特許文献6−7)。
キサンテン系化合物の構造に起因する光学的特性が研究されており、キサンテン骨格部位と、それに直交するアリール部位における関係性が明らかにされている。すなわち、このうち吸収波長、発光波長に関与するのはキサンテン骨格部位であることが従来から示されており、アリール部位は光学的特性にほとんど寄与しない。この点に着目したのがフルオロセイン系の蛍光分子である2−Me TokyoGreen(R)であり、フルオレセインのフェニル基上のカルボキシル基をメチル基で置き換えたものである。2−Me TokyoGreen(R)は優れた蛍光発光特性を示すことが知られているが、蛍光特性はフルオレセインに準ずる(Ex 491nm/Em 510nm)もので緑色蛍光を示す(特許文献1−2、非特許文献8−9)。
キサンテン系化合物の波長を変化させるための研究が古くから検討されており、キサントン部位の左右の水酸基をアミノ基に変換してローダミン型にしたり、中央の酸素官能基をケイ素やリンなどに置き換えることで、フルオレセインに比べて蛍光特性をより長波長側にシフトさせる事に成功している。また本発明者は、キサンテン骨格に直交するアリール部位を構造的にキサンテン骨格と平行にすることで、キサンテン環に大きな電子的摂動を与えることを可能にし、キサントン部位が持つ吸収・発光波長に大きな変化を与えることに成功した(非特許文献10)。一方、蛍光波長700nm付近の赤色及び近赤外領域に蛍光特性を持つキサンテン色素はローダミン型でいくつか開発されているが、生体蛍光イメージングに必要な水中における量子収量は非常に低く、溶解性の低さや水中で蛍光分子が凝集するなど不安定要素が多く、蛍光分子単体での生体蛍光イメージングは達成されていない。
特許第4206378号 特許第4713343号
H.Tsubomura,M.Matsumura,Y.Nomura,T.Amamiya,Nature 1976,261,402. S.Rani,P.K.Shishodia,R.M.Mehra,J.Renew.Sust.Energ.2010,2,043103. J.Loerke,F.Marlow,Adv.Mater.2002,14,1745. H.Rinderknecht,Nature 1962,193,167. K.Muramoto,H.Meguro,K.Tuzimura,Agric.Biol.Chem.1977,41,2059. P.Breeuwer,J.Drocourt,F.M.Rombouts,T.Abee,Appl.Environ.Microbiol.1996,62,178. D.A.Fulcher,S.W.J.Wong,Immunol.Cell Biol.1999,77,559. Y.Urano,M.Kamiya,K.Kanda,T.Ueno,K.Hirose,T.Nagano,J.Am.Chem.Soc.2005,127,4888. S.Kamino,Y.Fujita,Bulletin of Osaka University of Pharmaceutical Sciences 2010,4,117. A.Yamagami,H.Ishimura,A.Katori,K.Kuramochia,K.Tsubaki,Org.Biomol.Chem.2016,14,10963.
本発明者はこれまでに、拡張π電子共役系を持つV字型キサンテン色素を開発し、生体内蛍光イメージングに適用している。この手法をV字型キサンテン色素の分子設計に活かし、水、生化学用緩衝溶液、エタノール、DMSO中で赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持つV字型キサンテン色素を設計・合成し、赤色または近赤外生体内蛍光イメージングを行う事にある。
課題解決のため発明者らは、拡張π電子共役系を持つV字型キサンテン色素のアリール部位に官能基を導入することで光学的特性に変化を与え、さらに電子求引性官能基を導入し、赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持たせることで上記課題を解決した。
上記(0010)で説明される拡張π電子共役系を持つV字型キサンテン色素は下記式(1)で示される構造で表される。
Figure 2019070097
(但しXは電子求引性の官能基であり、R、R、Rはそれぞれ水素、水酸基、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基、N−置換スクシンイミジル基、C1〜C6の任意の炭素鎖あるいは1〜3回の任意の繰り返し構造を持つPEG基を含み、かつ末端に水酸基、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基、N−置換スクシンイミジル基が置換したリンカーであり、R、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
上記(0011)において限定されるわけではないが、Xで示される電子求引性基は具体的にはシアノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、トリフルオロメチル基、アシル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基を用いることができる。
上記(0011)、(0012)で説明される電子求引性基において、より近赤外領域に蛍光特性を持たせる官能基は、具体的にはシアノ基が望ましい。
上記(0011)〜(0013)で説明されるV字型キサンテン色素は、水系溶媒に溶かして用いることが望ましく、限定されるものではないが、水、生化学用緩衝溶液、エタノール、DMSOを溶媒として用いることができる。
上記(0014)で説明される使用例において、用いる水系溶媒のpHは中性〜アルカリ性条件下であることが望ましい。
上記(0014)、(0015)で説明される使用例において、紫外線または可視光を照射することで赤色または近赤外領域に蛍光発光を持つ蛍光分子として用いることができる。
上記(0011)〜(0016)で説明されるV字型キサンテン色素は、上記(0011)で説明されるR、R、Rの任意の置換基から、生体内への取り込みが可能なタグを導入することで分子内蛍光イメージングに用いることができる。
上記(0017)で説明される使用例において、生体内への取り込みに用いられるタグ分子は限定されるものではないが、一例としてペプチド、DNA、抗体、ストレプトアビジンを用いることができる。
具体的な例として、シアノ基が置換したV字型キサンテン色素を合成した。その結果、水、生化学用緩衝溶液、エタノール、DMSO中、塩基性条件下において700nm付近で蛍光発光することを確認した。
以下に実施例を用いて本発明を明らかにするが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
V字型キサンテン色素の合成(第一工程)
Figure 2019070097
4−ブロモ−3−ヒドロキシベンゾニトリル(2.88mmol)をDMFに溶解し、炭酸カリウム(4.03mmol)を加え、室温、遮光下で15分間攪拌した。クロロメチルメチルエーテル(3.46mmol)を加え、室温、遮光下で、更に1時間攪拌した。反応液を酢酸エチルに注ぎ入れ、水3回、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ→酢酸エチルのみ)にて精製することで生成物を白色固体として、89%の収率で得た。
IR(KBr,cm−1
2956,2927,2854,2231,1570,1477,1421,1387,1255,1211,1157,1090,1034,987,912,870.
1H NMR
(CDCl,400MHz)δ:7.65(d,1H,J=8.4Hz),7.43(d,1H,J=2.0Hz),7.18(dd,1H,J=8.4,2.0Hz),5.28(s,2H),3.53(s,3H)
13C NMR
(CDCl,100MHz)δ:154.2,134.2,126.2,118.7,117.9,112.2,95.2,56.5(two peaks overlapped).
V字型キサンテン色素の合成(第二工程)
Figure 2019070097
窒素雰囲気下、4−ブロモ−3−(メトキシメトキシ)ベンゾニトリル(1.67mmol)を無水 THF(15mL)に溶解し、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.55mol/L ヘキサン溶液,1.45mmol)を滴下した。−78℃で1時間撹拌した後、トリ(メトキシメトキシ)キサントン(1.21mmol)の無水 THF 溶液(12mL)を滴下し5分撹拌した。反応液を酢酸エチルに注ぎ入れ、水3回、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)にて精製し、生成物を黄色油状物として、33%の収率で得た。
1H NMR
(CDCl,400MHz)δ:8.20(d,1H,J=8.0Hz),7.40(dd,1H,J=8.0,1.6Hz),7.11(d,1H,J=1.6Hz),7.10(d,1H,J=8.8Hz),6.78(d,1H,J=2.4Hz),6.67(dd,1H,J=8.8,2.4Hz),6.58(d,1H,J=2.4Hz),6.42(d,1H,J=2.4Hz),5.12−5.18(m,2H),5.14(s,2H),4.82−5.06(m,2H),4.71−4.75(m,2H),4.20(s,1H),3.46(s,3H),3.44(s,3H),3.00(s,3H),2.78(s,3H)
13C NMR
(CDCl,100MHz)δ:157.9,157.4,155.1,152.8,151.8,150.3,142.7,129.0,126.2,124.5,118.7,117.6,117.1,111.9,111.5,108.3,102.6,98.2,97.0,94.38,94.35,94.02,93.05,67.8,56.1,55.96,55.95,55.2.
V字型キサンテン色素の合成(第三工程)
Figure 2019070097
トリ(メトキシメトキシ)キサントンのアリール付加体(0.375mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、硫酸(0.5mL)を加えて2日間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、水を加えて固体を濾過し、水とヘキサンで洗浄することで生成物を茶色粉末の残渣として、定量的に得た。
IR(KBr,cm−1)3369,3068,2927,2233,1647,1603,1458,1417,1286,1225,1169,1128,1074,1018,964,910,849.
1H NMR
(MeOD,400MHz)δ:7.35(dd,1H,J=8.0,1.6Hz),7.28(d,1H,J=8.0Hz),7.22(d,1H,J=1.6Hz),7.15(d,1H,J=9.2Hz),6.93(d,1H,J=2.4Hz),6.85(dd,1H,J=9.2,2.4Hz),6.46(d,1H,J=2.4Hz),6.13(d,1H,J=2.4Hz).
V字型キサンテン色素の合成(第四工程)
Figure 2019070097
シールドチューブを用い、キサンテン誘導体(0.0623mmol)に蒸留水(3mL)を加え、密栓下、150℃で加熱し、21.5時間後に室温に戻した。反応液に1mol/L塩酸水(1mL)を加え、濾過し残渣を乾燥させることでシアノ基が置換したV字型キサンテン誘導体を黒色の固体として78%の収率で得た。
IR(KBr,cm−1
3317,3035,2235,1658,1616,1539,1493,1463,1429,1375,1325,1267,1234,1192,1167,1111,1074,912,845.
1H NMR
(DMSO−d6,400MHz)δ:8.53(d,1H,J=8.4Hz),8.22(d,1H,J=9.2Hz),8.12(d,1H,J=1.6Hz),7.83(dd,1H,J=8.4,1.6Hz),6.77−6.83(brm,1H),6.63−6.68(brm,1H),6.31(s,1H),6.27(s,1H).
V字型キサンテン色素のDMSO溶媒中における吸収・蛍光発光特性
V字型キサンテン誘導体の1×10−5mol/L DMSO溶液を調製し、25℃で紫外可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルを測定した。中性種の測定時には約30000当量の酢酸を、アニオン種の測定時には1当量のテトラブチルアンモニアニウムヒドロキシドをそれぞれ加えて行なった。相対蛍光量子収率(Φ)は、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液中のフルオレセインを標準物質(Φ=97%)として測定した。測定の結果を表(1)に示す。
Figure 2019070097
以上のように本発明は、水溶性でかつ水系溶媒中で赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持つV字型キサンテン色素に関するものである。バイオイメージングで求められる、赤色または近赤外領域に蛍光特性を持つ蛍光色素としての利用が期待される。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で示される水溶性でかつ水系溶媒中で赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持つキサンテン化合物
    Figure 2019070097
    (Xはシアノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、トリフルオロメチル基、アシル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基であり、R、R、Rはそれぞれ水素、水酸基、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基、N−置換スクシンイミジル基、C1〜C6の任意の炭素鎖あるいは1〜3回の任意の繰り返し構造を持つPEG基を含み、かつ末端に水酸基、カルボニル基、アミノ基、クロロ基、ブロモ基、ホルミル基、イソチオシアナート基、N−置換スクシンイミジル基が置換したリンカーであり、R、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
  2. 水、生化学用緩衝溶液、エタノール、DMSOあるいはこれら混合溶媒中で赤色または近赤外領域に蛍光発光特性を持つ請求項1に記載のキサンテン色素。
  3. 生細胞中への導入に用いる請求項2に記載のキサンテン色素。
  4. ペプチド、DNA、抗体、ストレプトアビジンをタグとして標識する方法で用いる請求項2に記載のキサンテン蛍光プローブ。
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