以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
<第一実施形態>
はじめに本実施形態の宇宙飛翔体100の概要について説明する。
図1に示す本実施形態の宇宙飛翔体100は、機体本体6、エアブレーキ構造体(パラシュート1)および噴射ノズル5を有している。エアブレーキ構造体(パラシュート1)は機体本体6よりも飛行方向の一方側に設けられており、機体本体6に向かって凹形状に湾曲している。本明細書においてエアブレーキ構造体(パラシュート1)が機体本体6に向かって凹形状に湾曲するとは、エアブレーキ構造体(パラシュート1)の少なくとも一部が、機体本体6から視て凹形状であること、すなわち機体本体6から遠ざかる方向に窪んだ形状であることを意味する。本実施形態では上記一方側を飛行方向の後方、すなわち着陸面200に対して上方とする。これにより宇宙飛翔体100は着陸装置として用いられる。ただし第五実施形態にて後述するように、本発明の宇宙飛翔体(宇宙飛翔体104:図10参照)はエアブレーキ構造体を前方に配置して宇宙空間を飛行する態様で用いてもよい。この場合、エアブレーキ構造体は機体本体6に対して飛行方向の前方に設けられることになり、すなわち上記の一方側は飛行方向の前方にあたる。
図1に示す第一実施形態の宇宙飛翔体100において、噴射ノズル5は機体本体6に設けられており、機体本体6の重心位置Gよりも飛行方向の一方側(第一実施形態では後方)からエアブレーキ構造体(パラシュート1)に向けて噴流Jを噴射する。
本実施形態の宇宙飛翔体100は、噴射された噴流Jの向きが凹形状のエアブレーキ構造体(パラシュート1)に沿って反転することにより、機体本体6に飛行方向の後方に向けて噴流Jの反動力Fを生じさせる。
以下、本実施形態についてより詳細に説明する。
本明細書において着陸とは地表や月面などの地面または地面に建造されたプラットフォームに下りることのほか、宇宙ステーションなどの人工天体にドッキングすることを含む。以下、着陸する対象を「着陸面」と呼称する場合があるが、かかる「着陸面」は、平坦面である場合のほか、凹凸のある凹凸面や、宇宙ステーションのドッキング装置のような構造体をも含む意味である。
宇宙飛翔体100は種々の構造をとることができ、ロケットなどのローンチャーまたは人工衛星に搭載されて打ち上げられた後に切り離されて着陸面に向けて落下するものでもよく、または自機により離陸可能な離着陸機でもよい。宇宙飛翔体100としては、月着陸船や宇宙往還機を例示することができる。
機体本体6は、バス機器およびミッション機器が搭載された主要構造部であり、宇宙飛翔体100における主たる質量部である。機体本体6の下部には脚62を任意で備えていてもよい。本明細書において下方とは宇宙飛翔体100からみて宇宙ステーションや地面などの着陸面200が存在する側であり、上方とはその反対側である。したがって本明細書でいう上下は、地球の重力方向の上下とは必ずしも一致しない。
ここで、着陸する宇宙飛翔体100の飛行方向は、着陸面200に向かう下向き成分を少なくとも含む。そして本実施形態において飛行方向の後方とは、着陸に向けて宇宙飛翔体100が飛行する方向の正反対の向きに限らず、飛行方向に対して反対向きの成分を含む方向を意味する。着陸する宇宙飛翔体100は、着陸面200に向けて真っ直ぐ下方に降下してもよく、または斜め下方に飛行してもよい。したがって本実施形態においてエアブレーキ構造体が機体本体6よりも飛行方向の後方に設けられているとは、エアブレーキ構造体の少なくとも一部が着陸面200から視て機体本体6よりも上方に配置されていることをいう。
機体本体6の形状は、直方体(立方体)状でもよく、円筒状でもよく、または他の形状でもよい。機体本体6の上部には1基または複数基の噴射ノズル5が設けられている。機体本体6の内部にはロケットエンジン(図示せず)と、このロケットエンジンに推進剤を供給する推進剤タンク(図示せず)とが設けられている。ロケットエンジンで生成された噴流Jは噴射ノズル5から上方に向けて噴射される。噴射ノズル5からの噴流Jの噴射方向はジンバル装置(図示せず)により可変としてもよい。エンジンおよび噴射ノズル5が複数基設置されている場合、複数個の噴射ノズル5からそれぞれ噴射される噴流を合流したものを噴流Jと呼称する。
宇宙飛翔体100は、噴射ノズル5から噴射される噴流Jを制御する噴射制御部30を備えている。噴射制御部30は、噴流Jの速度や流量を調整して噴流Jの反動力を制御する手段であり、例えばエンジンにおける燃焼条件を制御する公知の燃焼制御手段を用いることができる。このほか、複数基のエンジンおよび噴射ノズル5を有する宇宙飛翔体100の場合、噴射制御部30は運転させるエンジンの基数を増減設定する手段でもよい。噴射制御部30は一例として、エンジンに設けられたアクチュエータ、推進剤を供給する配管類に設けられたバルブ、およびこれらの動作を制御するコンピュータにより実現することができる。このほか宇宙飛翔体100は、後述する高度算出部20、予想演算部40、情報取得部50を備えている。
エアブレーキ構造体は、宇宙飛翔体100が仮に大気中を飛行する場合に大気から受ける空気力学的な力を利用して宇宙飛翔体100を減速させる大気制動構造である。地球大気中を宇宙飛翔体100が落下飛行する場合には、展開されたパラシュート1が空気抵抗を受けて宇宙飛翔体100を減速させる。ただし、月面着陸に用いられる場合など実質的に大気が無い環境で宇宙飛翔体100が飛行する場合は、エアブレーキ構造体には大気制動が作用しなくてよい。
エアブレーキ構造体としては、可撓性の材料で傘状に形成されたパラシュート1を代表的には例示することができる。このほかエアブレーキ構造体として翼形状などの剛直な板状部材を用いてもよい。ただし、折り畳んで機体本体6に収容可能であってかつ軽量であるという観点から、柔軟なパラシュート1を用いることが好ましい。本実施形態のエアブレーキ構造体として例示されるパラシュート1は、球皮の少なくとも一部が炭素繊維または複合耐熱材料で作成されていることが好ましい。複合耐熱材料は、一種または複数種の耐熱性材料を母材と複合した材料である。耐熱性材料としては、耐熱性の繊維材料、例えば炭素繊維やアラミド繊維などの有機繊維;炭化ケイ素繊維などの無機化合物非晶質繊維;を挙げることができる。母材としては、合成樹脂やセラミックスを挙げることができる。すなわち複合耐熱材料の例としては、炭素繊維複合材料、セラミックス基複合材料、炭素繊維強化セラミックス複合材料などを挙げることができる。複合耐熱材料は、200℃以上、好ましくは500℃以上の耐熱性を有する。耐熱性を有するとは当該温度において機械的な物性が有意に変化しないことを意味する。そしてパラシュート1を炭素繊維または複合耐熱材料で作成することで高い比強度と耐熱性を得ることができる。
図1に示すように展開されたパラシュート1は、機体本体6からみて飛行方向の後方、すなわち上方に設けられている。パラシュート1は複数本の支持ロープ3により機体本体6に取り付けられている。より具体的には、機体本体6の重心位置Gと噴射ノズル5とを結ぶ直線の延長線上に、パラシュート1の少なくとも一部(好ましくはパラシュート1の底面1aの中心)が配置されるようにパラシュート1は展開される。
ここで機体本体6の重心位置Gとは、飛行する宇宙飛翔体100における機体本体6の重心の三次元的な位置をいい、機体本体6から外部に展開されたパラシュート1や、噴流Jとなって既に消費された推進剤の質量を除いて算出される。本明細書において断りなくパラシュート1と表現した場合は、展開されたパラシュート1を意味する。
パラシュート1は傘状をなし、機体本体6から離間する上方に向かって膨出している。すなわちパラシュート1の底面1aは機体本体6に向かう凹形状に湾曲している。
本発明の宇宙飛翔体100は、機体本体6の重心位置Gよりも上方に位置するパラシュート1に対して噴射ノズル5から噴流Jを噴射し、この噴流Jをパラシュート1の湾曲した底面1aに沿って反転させる。パラシュート1に向かって噴流Jを噴射することで、月面など実質的に大気が無い環境でも、パラシュート1を傘状に開かせることができる。噴射ノズル5から上向きに噴射された噴流Jは、凹形状のパラシュート1の底面1aに沿って向きを変えて噴流J1となり、更に噴流J1はパラシュート1に沿って流れ、パラシュート1の周縁から噴流J2となって吹き出される。このことで、噴流J2の反動力Fは図1に矢印で示すように上向きの成分を有することとなる。この反動力Fにより宇宙飛翔体100は減速される。
この原理を補足説明する。初めに、噴射ノズル5から噴流Jを上向きに噴射することで機体本体6は噴流Jの逆向き(すなわち下向き)に噴射反力を受ける。そして噴射された噴流Jがパラシュート1の底面1aに当たることでパラシュート1(すなわち宇宙飛翔体100)は上向きの押し上げ力を受ける。この下向きの噴射反力と上向きの押し上げ力とは相殺され、言い換えると噴流Jが噴射ノズル5から噴射されてからパラシュート1に至って噴流J1になるまでは、噴流J,J1は宇宙飛翔体100に対して内力として作用する。そしてパラシュート1の底面1aが滑らかな凹形状に湾曲していることで、パラシュート1の底面1aに沿って噴流Jが向きを変えて噴流J1になる際に失う運動量は極めて小さい。そして向きが反転した噴流J1がパラシュート1の周縁から噴流J2となって吹き出される。噴流J2の向きは、パラシュート1の径方向外向き成分と下向き成分とを合成した斜め方向となる。すなわち噴流J2の反動力Fは上向きの成分を有し、パラシュート1の周縁から吹き出される噴流J2の反動力Fをパラシュート1の周回方向に合成すると反動力Fは上向きとなる。噴射ノズル5は機体本体6の重心位置Gよりも後方(上方)にあり、パラシュート1は更にその後方(上方)にあるため、噴射の反動力Fは機体本体6の重心位置Gよりも上方において発生し、更に重心位置Gとは反対の上向きの成分となる。このため、かかる反動力Fは機体本体6の重心まわりの回転モーメントを不安定に増大させることがない。また、機体本体6よりも後方(上方)から噴流J2が吹き出されるため、宇宙飛翔体100の高度が下がり着陸の直前であっても着陸面200までの距離を大きく確保することができる。このため地面効果の影響を抑制することもできる。以上より本発明の宇宙飛翔体100によれば、例えば月着陸などの着陸動作を安定して実現することができる。
以下、宇宙飛翔体100が着陸するまでの制御についてより具体的に説明する。本実施形態の宇宙飛翔体100は、機体本体6の高度を算出する高度算出部20を備えていてもよい。上述した噴射制御部30は、高度算出部20が算出した機体本体6の高度を示す高度情報に基づいて、噴射ノズル5から噴射される噴流Jを制御する。噴射される噴流Jの速度や流量すなわち噴射量を宇宙飛翔体100の高度に応じて制御することで、着陸するまでの宇宙飛翔体100の降下速度を所望に調整することができる。具体的には、高度算出部20が算出した高度情報が示す機体本体6の高度が所定の閾値以上である場合は宇宙飛翔体100の降下を優先するため噴射制御部30は噴流Jを停止または噴射量を所定未満に抑制するとよい。そして機体本体6の高度が所定の閾値未満になった場合は、宇宙飛翔体100の減速を優先するため噴射制御部30は噴流Jの噴射を始動させるかまたは噴流Jの噴射量を所定以上に制御するとよい。これにより、着陸時の宇宙飛翔体100の降下速度を極めて低減することが可能であり、機体本体6や脚62への負荷を抑えることができる。
高度算出部20による高度情報の取得原理は特に限定されないが、例えば着陸面200に対して光を照射して反射光を受光する光学式の測距センサ22を用いることができる。高度情報が示す機体本体6の高度とは、着陸面200から機体本体6のいずれかの部位(例えば機体本体6の底面6aまたは重心位置G)までの高度に換算可能な情報であればよく、脚62の下端やパラシュート1の上端など、機体本体6に対して既知の位置関係に配置された部位の高度を示す情報でもよい。
更に本実施形態の宇宙飛翔体100は、予想演算部40および情報取得部50を備えていてもよい。予想演算部40は機体本体6の高度および飛行速度に基づいて機体本体6の着陸予想地点LPを算出する情報処理部であり、情報取得部50は着陸予想地点LPの表面情報または可否情報を取得する情報処理部である。予想演算部40および情報取得部50は、機体本体6に搭載されたコンピュータにより実現される。
予想演算部40は、高度情報を高度算出部20から取得し、速度計や加速度計(図示せず)から宇宙飛翔体100の飛行速度および飛行方向に関する情報を取得する。予想演算部40はこれらの情報に基づいて着陸予想地点LPの位置情報(緯度および経度)を算出する。
着陸予想地点LPの表面情報とは着陸予想地点LPの表面状態を示す情報であり、可否情報とは着陸予想地点LPに対して宇宙飛翔体100が着陸可能であるか否かを示す情報である。
着陸予想地点LPの表面情報としては、例えば、機体本体6に搭載されたカメラ52が撮影した画像情報でもよく、または測距センサ22が受光した反射光の散乱度合いを示す情報でもよい。例えば表面情報が画像情報である場合、情報取得部50は当該画像情報の画像処理により着陸予想地点LPが着陸可能な平坦さを有しているか否かを判定するとよい。そして着陸予想地点LPの平坦さが所定の閾値以上であると判定された場合には、情報取得部50は着陸予想地点LPに着陸可能と判定し、かかる判定結果を可否情報として取得する。このほか、可否情報は種々の態様を採用することができる。例えば、宇宙飛翔体100が有する記憶装置(図示せず)に、着陸可能な領域を示す緯度および経度の範囲情報を予め格納しておいてもよい。情報取得部50は、この範囲情報と着陸予想地点LPとを照合して宇宙飛翔体100が着陸予想地点LPに着陸することが可能か否かを判定し、この判定結果を可否情報として取得してもよい。このほか、機体本体6に搭載されたアンテナ54で地上局または母船と交信してもよい。すなわち、情報取得部50は着陸予想地点LPを示す情報をアンテナ54から地上局または母船に送信し、着陸予想地点LPに対して着陸して良いか否かの信号を可否情報として地上局または母船からアンテナ54で受信して取得してもよい。
着陸予想地点LPに宇宙飛翔体100が着陸可能であると情報取得部50が判定した場合、噴射制御部30は噴流Jの噴射条件をそのまま維持する。一方、着陸予想地点LPに宇宙飛翔体100が着陸不可能であると情報取得部50が判定した場合、噴射制御部30は噴流Jの噴射条件を変更し、例えば噴流Jの噴射量を増大させる。これにより反動力Fが増大して機体本体6の高度低下が抑えられるため、機体本体6は水平方向により長く飛行してから着陸することになる。言い換えると着陸予想地点LPが遠方にシフトする。予想演算部40は着陸予想地点LPを経時的に更新して算出し、情報取得部50は着陸予想地点LPの表面情報または可否情報を更新して取得する。そして更新された着陸予想地点LPに宇宙飛翔体100が着陸可能であると情報取得部50が判定した場合、噴射制御部30は噴流Jの噴射量を維持または低減させて宇宙飛翔体100を当該着陸予想地点LPに着陸させる。
以上説明した本実施形態の宇宙飛翔体100によれば、着陸面200に起伏があるなど着陸が困難である場合に、その場所を避けて宇宙飛翔体100を安全に着陸させることができる。
宇宙飛翔体100は、噴射ノズル5から噴射される噴流Jの向きとは異なる少なくとも一の方向に他の噴流(補助ジェット)を噴射する制御用噴射ノズル17(図1では図示省略。図3から図5を参照。)を備えてもよい。制御用噴射ノズル17は、噴射ノズル5とは異なる位置に設けられた補助スラスターであり、機体本体6に対して直接にまたは他の取付部材(図示せず)を介して間接に取り付けられている。制御用噴射ノズル17は、少なくとも上下方向に対して交差する方向(例えば水平方向または斜め方向)に対して噴流(補助ジェット)を噴射して機体本体6の位置および向きを制御する。制御用噴射ノズル17は、上下方向に対して直交する水平面内における直交2方向の正逆両方向、すなわち上下方向に対して直交する4方向に向けて個別に噴流を噴射可能に配置されていることが好ましい。これにより宇宙飛翔体100の並進位置および重心まわりの向きを制御することが可能である。更に、制御用噴射ノズル17は上下方向を含む直交6方向に向けて個別に噴流を噴射可能に構成されてもよい。
制御用噴射ノズル17における推進原理は特に限定されず、メインスラスターである噴射ノズル5と同じでもよいし、異なってもよい。例えば制御用噴射ノズル17を噴射ノズル5と同じく化学エンジンとする場合は、制御用噴射ノズル17に供給される推進剤を噴射ノズル5に供給される推進剤と共用して推進剤タンク(図示せず)から供給してもよい。また、制御用噴射ノズル17としてイオンエンジンやホールスラスタを用いて軽量化を図ってもよい。
制御用噴射ノズル17から噴射される噴流(補助ジェット)による推力の向きおよび大きさは、噴射制御部30、または噴射制御部30と連動する他の制御部により制御される。すなわち、制御用噴射ノズル17およびこれを駆動制御する制御部は、宇宙飛翔体100の目標着陸地点を定める装置を構成する。
宇宙飛翔体100の着陸にあたり、噴射ノズル5を停止して制御用噴射ノズル17のみを駆動してもよく、または噴射ノズル5と併用して制御用噴射ノズル17を駆動してもよい。制御用噴射ノズル17から噴射される噴流(補助ジェット)の反動力の制御精度は、噴射制御部30により制御される噴射ノズル5の噴流Jの反動力の制御精度よりも高精度である。これにより、宇宙飛翔体100の着陸時に制御用噴射ノズル17を駆動することで、宇宙飛翔体100の目標着陸地点(例えば、予想演算部40が算出した着陸予想地点LP)に機体本体6を正確に着陸させることができる。また、着陸予想地点LPに宇宙飛翔体100が着陸不可能であると情報取得部50が判定した場合も、制御用噴射ノズル17から噴流(補助ジェット)を水平方向などに噴射して機体本体6を駆動することで、当該着陸不可能な着陸予想地点LPから素早く移動してこれを回避することができる。
以下、本発明の宇宙飛翔体の他の実施形態について図面を用いて説明する。第一実施形態と重複する説明は適宜省略する。
<第二実施形態>
図2は本発明の第二実施形態の宇宙飛翔体101を説明する概観図である。
第二実施形態の宇宙飛翔体101は、エアブレーキ構造体(パラシュート1)が、機体本体6に向けて突出する中央凸部2と、この中央凸部2の周囲に連続形成されていて機体本体6に向かって凹形状に湾曲する凹面部2aと、を備えている点で第一実施形態と相違する。図2に示すようにパラシュート1の中央凸部2は噴射ノズル5に向かって「とんがり帽子」状に突出している。すなわち、中央凸部2の先端(下端)およびその近傍は下に凸形状をなし、凹面部2aは上に凸形状をなしている。そして中央凸部2は、先端部の周囲に、下に凸形状から上に凸形状に遷移する変曲点を有している。噴流Jによる噴射圧力は、とんがり帽子状の中央凸部2からパラシュート1の底部7でUターンし、凹面部2aに沿って流れる噴流J1となる。中央凸部2は凸部支持ロープ4によってパラシュート1の支持ロープ3に連結されている。複数本の凸部支持ロープ4が中央凸部2の先端(下端)の近傍に周回状に接続され、各凸部支持ロープ4は放射状に延びて複数本の支持ロープ3の中間部に対してそれぞれ連結されている。すなわち凸部支持ロープ4は支持ロープ3の中間部から分岐しており、所定の張力をもって中央凸部2を支持している。このように放射状に配置された複数本の凸部支持ロープ4で中央凸部2を引っ張りながら支持することで、可撓性の材料で作成された中央凸部2の変形を抑制し、噴流Jが中央凸部2に吹き付けられても中央凸部2をパラシュート1の中央に維持することができる。
噴流Jは中央凸部2に衝突するように噴射ノズル5からパラシュート1に向けて噴射される。本実施形態の宇宙飛翔体101によれば、噴射ノズル5に向かって近づくように中央凸部2がパラシュート1から突き出ているため、噴流Jは減速する前に中央凸部2で放射状にスプリットされて底部7で反転する。このためパラシュート1の内部で噴流Jが渦流となって滞留して減衰してしまうことを回避し、噴流J2が多くの運動量を維持したままパラシュート1の周縁から吹き出されて高い反動力Fを得ることができる。
中央凸部2と凹面部2aとは底部7を介して連続形成されているため、中央凸部2でスプリットされた噴流Jが乱れることなく底部7で向きを反転させて凹面部2aに沿って流れる。そして本実施形態の宇宙飛翔体101でも、第一実施形態の宇宙飛翔体100と同様に、噴流Jの噴射の反動力Fが機体本体6の重心位置Gよりも上方で発生するため、機体本体6の重心まわりの回転モーメントを不安定に増大させることなく機体本体6の落下を減速させて安全に着陸面200に着陸させることができる。
図2では脚62を図示していない。機体本体6に脚62を設けず機体本体6の底面6aで着陸面200に着陸してもよい。ただしこれに代えて、本実施形態においても第一実施形態の宇宙飛翔体100のように機体本体6に脚62を設けてもよい。
図3は第二実施形態の宇宙飛翔体101が宇宙ステーション202にドッキングした状態を説明する概観図である。パラシュート1は、中央凸部2の中心を通る面で切断面した端面を図示している。図3は、月面などの地面ではなく宇宙ステーション202のドッキング部204に宇宙飛翔体101が着陸した状態を示す。すなわち宇宙ステーション202のドッキング部204が着陸面200にあたる。機体本体6の底面6aには連結部(図示せず)が設けられている。また機体本体6の側面6bには、上述の第一実施形態でも説明したように、機体本体6の位置および向きを微調整するための制御用噴射ノズル17が設けられている。制御用噴射ノズル17は機体本体6の位置および向きを6自由度で制御するための補助スラスターである。制御用噴射ノズル17は、対向する少なくとも1対の側面6bにそれぞれ設けられている。着陸直前の宇宙飛翔体101において、噴射ノズル5から十分な噴射量で噴流Jを噴射し、宇宙飛翔体101の自重と釣り合う反動力Fを発生させることで宇宙飛翔体101をホバリングさせることができる。この状態で制御用噴射ノズル17を作動させ、機体本体6の位置および向きを宇宙ステーション202のドッキング部204に合わせる。その状態を維持して噴流Jの噴射量を僅かに低減することで宇宙飛翔体101は自重により降下してドッキング部204に着陸する。
<第三実施形態>
図4および図5は本発明の第三実施形態の宇宙飛翔体102を模式的に示す図である。支持ロープ3や凸部支持ロープ4などのロープ類は一部本数を適宜図示省略している。
本実施形態の宇宙飛翔体102は噴射ガイド9を有する点で第二実施形態の宇宙飛翔体101(図2参照)と相違する。噴射ガイド9は、噴射ノズル5とエアブレーキ構造体(パラシュート1)との間に配置されて噴流Jが通過する耐熱性の部材である。
図2に示した第二実施形態の宇宙飛翔体101は、噴射ノズル5から「とんがり帽子」状の中央凸部2までの距離が大きいため、噴射ノズル5から噴射された噴流Jが中央凸部2に到達するまでに拡散してしまい、中央凸部2に到達するのは噴流Jの一部である。また噴流Jが拡散してしまうことで、底部7で反転した後の噴流J1が低速となり、必ずしも大きな反動力Fを得ることができない。そこで、第三実施形態の宇宙飛翔体102のように噴流Jを通過させる噴射ガイド9を設けることで噴流Jの拡散を抑制して集束させた状態でパラシュート1の中央凸部2に対して吹き付けることができる。これにより中央凸部2に対して噴流Jを集中せしめ、噴流J2の高い流速と大きな反動力Fが得られる。
噴射ガイド9は、燃焼または化学反応により生成された高温の噴流Jを通過させるため耐熱性を有することが好ましい。このため噴射ガイド9は炭素繊維や複合耐熱材料などの耐熱性材料で作成されている。
図4および図5に示す第三実施形態の宇宙飛翔体102では、第二実施形態と同様にパラシュート1が中央凸部2および凹面部2aを有する態様を図示している。これに換えて、図1に示した第一実施形態の宇宙飛翔体100のように中央凸部2を具備しないパラシュート1に対して噴射ガイド9を設けてもよい。その場合、噴射ノズル5から噴射された噴流Jが噴射ガイド9を通過することで拡散が抑制され、パラシュート1の底面1aの中央部に集中して噴流Jが吹き付けられる。これにより噴流Jを確実にUターンさせて噴流J1および噴流J2が生成され、大きな反動力Fを得ることができる。
噴射ガイド9は中空の管状をなしている。噴射ガイド9の開口形状は円形が好ましいがこれに限られない。噴射ノズル5から噴射された噴流Jの実質的に全量が噴射ガイド9でガイドされるように、噴射ガイド9の開口径は噴射ノズル5の開口径よりも大きいことが好ましい。ただし、噴射ガイド9の開口径が過大であると噴流Jが噴射ガイド9の内部で拡散するため、噴射ガイド9の開口径は噴射ノズル5の開口径と略同等、具体的には噴射ノズル5の開口径の2倍未満が好ましい。
噴射ガイド9は噴射ノズル5と同心軸上に配置されている。また、図5に示すように噴射ノズル5の上端は噴射ガイド9の内部に位置していることが好ましい。かかる配置により、噴射された噴流Jが噴射ガイド9の下端から漏出することが防止され、実質的に噴流Jの全量が噴射ガイド9を通じてその上端からパラシュート1に向けて吹き出され、そしてパラシュート1によってUターンする。
本実施形態の噴射ガイド9の開口形状は円形であり、噴射ガイド9は軸心が直線形状の円筒形である。噴射ガイド9の開口断面積は、図5に示すように長手方向に亘って均一である。噴射ガイド9の下端部は複数本の下支持ロープ13により機体本体6の上部と連結されている。噴射ガイド9の上端部は中央凸部2の先端(下端)よりも下方に位置しており、複数本の上支持ロープ14によりパラシュート1における中央凸部2と連結されている。これにより、噴射ガイド9は中央凸部2と機体本体6との間に吊り下げられた状態で、かつ中央凸部2の先端と噴射ノズル5の軸心とを結ぶ直線が噴射ガイド9の軸心と一致するようにして支持される。そして各複数本の下支持ロープ13および上支持ロープ14で噴射ガイド9を支持することで、噴射ガイド9が軸心まわりに回転することが抑制される。
噴射ガイド9の形状は図5に示すものに限られない。以下、図6および図7の断面図を参照して噴射ガイドの変形例について説明する。
図6は第三実施形態の宇宙飛翔体102にかかる第1変形例の断面図である。脚62は図示を省略している。第1変形例の噴射ガイド10は、少なくともエアブレーキ構造体(パラシュート1)に近接する側の端部(上端部)が、エアブレーキ構造体(パラシュート1)に向かって徐々に拡径している点で図5の形態と相違する。また、図6に示すように、噴射ガイド10の上端の高さ位置は中央凸部2の先端(下端)と同等である。このように噴射ガイド10の上端部を拡径することで、噴射ガイド10の上端を中央凸部2の下端に近づけて両者を同等の高さに配置しても、噴流Jの流路面積を十分に確保することができる。この結果、噴射ガイド10の上端をパラシュート1に近づけることができ、噴流Jの拡散を更に抑制することができる。また、噴射ノズル5から噴射される噴流Jが超音速流である場合は、噴射ガイド10の上端部が拡径していることで噴流Jの流速が増加し、ひいては反転後の噴流J2の速度を増加させることができる。
図6に示す第1変形例の噴射ガイド10は、下端から上端までその全長に亘って開口径が徐々に拡大している。すなわち噴射ガイド10は全長に亘ってラッパ状(スカート状)に広がる形状をなしている。これにより、噴流Jの拡散を抑制しつつも噴射ガイド10の上端に向かって噴流Jを徐々に拡幅することができる。ただし、噴射ガイド10の下端から中間部までは開口径を一定とし、中間部から上端に亘る一部長さのみで開口径が拡大する形状としてもよい。図6に示す第1変形例の場合、噴射ガイド10を吊り下げる上支持ロープ14の上端は、パラシュート1のうち中央凸部2の下端近傍より高い位置に取り付けるとよい。
図7は第三実施形態の宇宙飛翔体102にかかる第2変形例の断面図である。第2変形例の噴射ガイド11は、少なくともエアブレーキ構造体(パラシュート1)に近接する側の端部(上端部)が、エアブレーキ構造体(パラシュート1)に向かって徐々に縮径している。このように噴射ガイド11が中央凸部2に向かう上端部で窄んでいることで、噴射ガイド11から吹き出す噴流Jを中央凸部2に向けてより集中させることができる。
<第四実施形態>
図8は本発明の第四実施形態の宇宙飛翔体103を説明する断面図である。
エアブレーキ構造体は第一から第三実施形態と同様にパラシュート1である。そして本実施形態の噴射ガイド12は、下側筒部12aと、この下側筒部12aの上方に配置されてパラシュート1の内側に並んで配置される第2パラシュート12bと、を有している点で上述した実施形態および変形例と相違する。そして噴射ノズル5より噴射されて下側筒部12aを通過した噴流Jは、パラシュート1と第2パラシュート12bとの間隙部Vを流れることによりその流れの向きが反転する。本実施形態のように噴射ガイド12が第2パラシュート12bを備えることで、噴射ガイド12に導入された噴流Jがパラシュート1の内部で拡散することを抑制し、高い流速で噴流J2をパラシュート1の周囲から吹き出させることができる。これにより大きな反動力Fを得ることができる。
第2パラシュート12b(インナーパラシュート)は炭素繊維や複合耐熱材料などの耐熱性材料で作成されている。パラシュート1と第2パラシュート12bとの間の間隙部Vの幅寸法は、図8に示す例ではパラシュート1の全体において均一である。第2パラシュート12bは支持ロープ13aにより機体本体6に取り付けられている。
第2パラシュート12b(インナーパラシュート)と下側筒部12aの上端部とは隙間なく連続形成されている。これにより、下側筒部12aを通過した噴流Jが実質的に減速されずに間隙部Vに導入され、高い流速の噴流J2を得ることができる。
<第五実施形態>
図9は本発明の第五実施形態の宇宙飛翔体104が宇宙空間を飛行して宇宙ゴミ(スペースデブリD)を回収する状態を説明する概観図である。同図において、飛行する宇宙飛翔体104の進行方向DRは同図の上方である。図10は第五実施形態の宇宙飛翔体104から宇宙ゴミ(スペースデブリD)を打ち出す状態を説明する概観図である。
第五実施形態の宇宙飛翔体104は、上述した第一から第四実施形態の宇宙飛翔体100〜103のように着陸面200への着陸装置として用いることができるほか、図9に示すように宇宙空間を飛行してスペースデブリDを捕集する宇宙ゴミ回収装置、および図10に示すように地球表面(着陸面200)に向けてスペースデブリDを打ち出して投下する宇宙ゴミ廃棄装置として用いられる。
図9に示すように、本実施形態の宇宙飛翔体104におけるエアブレーキ構造体(パラシュート1)は、第二実施形態(図2参照)と同様に、機体本体6に向けて突出する中央凸部2と、この中央凸部2の周囲に連続形成されていて機体本体6に向かって凹形状に湾曲する凹面部2aと、を備えている。宇宙飛翔体104は噴射ノズル5から上向きに噴流Jを噴射し、第二および第三実施形態(図2〜図7)で説明したとおり、この噴流Jを中央凸部2で放射状にスプリットする。そして凹面部2aの下面に沿って流れる噴流J1を底部7で反転させて噴流J2としてパラシュート1の周縁から後方に吹き出すことで反動力Fを得る。この反動力Fにより、宇宙飛翔体104は宇宙空間において進行方向DRへの推進力を得ることができる。
パラシュート1の周縁部は複数本の支持ロープ3によって機体本体6と連結されている。反動力Fはパラシュート1を前方に付勢し、支持ロープ3を引っ張り方向に牽引するため、支持ロープ3には実質的に張力のみが負荷される。このため、柔軟で可撓性を有する支持ロープ3であっても座屈等のおそれがなく、機体本体6を牽引して前進させることができる。
本実施形態のエアブレーキ構造体(パラシュート1)は、中央凸部2を底部として一方側(上方)の遠方に向かって開口する擂り鉢状をなしている。エアブレーキ構造体が擂り鉢状であるとは、噴流Jの噴射方向の前方(図9における上方)から宇宙飛翔体104を見たときにエアブレーキ構造体が凹形状をなし、かかる凹形状の少なくとも一部における幅寸法が噴流Jの噴射方向(前方)に向かって連続的または段階的に幅広に拡大している形状をいう。本実施形態では、中央凸部2は噴流Jの噴射方向を軸心方向とする直筒状かつ均一径の円筒状をなし、中央凸部2の上端に連続形成された凹面部2aは機体本体6から遠ざかるに従って拡径する円錐台形状をなしている。
反動力Fによって前進する宇宙飛翔体104は、パラシュート1の前方の空間に漂うスペースデブリDを中央凸部2に取り込むことができる。特に、パラシュート1が飛行方向の前方に向かって拡径する擂り鉢状であることで、凹面部2aの広い開口面積で掃引される空間内のスペースデブリDを凹面部2aに沿って集めて中央凸部2の内部に取り込むことができる。
中央凸部2は、凹面部2aに沿って一方側(上方)から取り込まれるスペースデブリDを収容するデブリ収容部70を備えている。デブリ収容部70は、中央凸部2に取り込まれたスペースデブリDを捕集する領域であり、中央凸部2のうちスペースデブリDの流入側(上方)とは反対側(下方:すなわち下端)が閉塞されて構成されている。パラシュート1の中央凸部2は、擂り鉢状の凹面部2aの最も深い中央部に連なる窪み状に連続形成されており、中央凸部2の最奥部(図9における下端)が閉塞されている。このため、パラシュート1の前方から宇宙飛翔体104に向かって相対的に近づくスペースデブリDは擂り鉢状の凹面部2aに沿ってパラシュート1の内側に移動し、そして中央凸部2を通じてデブリ収容部70の内部に捕集される。取付部72は、放射状に配置された複数本の凸部支持ロープ4によって支持ロープ3または機体本体6に連結されている。このため、スペースデブリDがデブリ収容部70に取り込まれて開閉蓋71に衝突しても、中央凸部2やデブリ収容部70のぐらつくことが抑制される。
デブリ収容部70は開閉可能な開閉蓋71を有している。開閉蓋71は、噴射ノズル5に対向し、かつ噴射ノズル5からみて噴流Jの噴射方向の前方に配置されている。開閉蓋71の少なくとも一部は、デブリ収容部70の深さ方向に膨出する球面状をなしている。本実施形態においてデブリ収容部70の深さ方向とはスペースデブリDの取り込み方向であり、換言するとパラシュート1から機体本体6に向かう方向である。具体的には、本実施形態の開閉蓋71は一対の部分球面状の曲面形状をなしている。より具体的には、開閉蓋71は一対の四分の一球面を組み合わせたものである。中央凸部2の先端(下端)には補強用の環状の取付部72が装着されている。取付部72は中央凸部2よりも高剛性の材料で作成されており、中央凸部2の下端の周囲に取付部72が装着されている。開閉蓋71はヒンジ機構73を介してこの取付部72に回転可能に取り付けられている。図9に示すように、一対の開閉蓋71が互いに合わさることで半球のドーム状をなし、筒状の中央凸部2の下端を閉塞する。ドーム状の開閉蓋71の内部がデブリの収容空間となる。一対の開閉蓋71はフランジ状の突き当て部74をそれぞれ有している。突き当て部74は、一対の開閉蓋71が合わさって半球のドーム状を形成した際の子午線上に形成されたフランジ面である。
図9に示すように一対の開閉蓋71が閉じることで、開閉蓋71は噴射ノズル5に向かって正対して膨出する半球状をなす。これにより開閉蓋71には噴流Jが正面から噴射されてこれをスプリットする。図10に示すように、一対の開閉蓋71は、ヒンジ機構73を中心にそれぞれ外向きに回動することで開き、中央凸部2の先端(図10では上端)は開放される。開閉蓋71を開放する機構は特に限定されない。例えばヒンジ機構73は開閉蓋71に対して、当該開閉蓋71が開く方向にバネなどにより弾性力を付勢しておくとよい。また図9に示すように一対の開閉蓋71が閉じた状態で突き当て部74同士をロック機構(図示せず)により解除可能にロックしておく。そして開閉蓋71を開く場合は、ロック機構を火工品または電磁石などで作動させてロックを解除することにより、図10に示すように開閉蓋71同士を外向きに開くことができる。開いた開閉蓋71はヒンジ機構73の弾性力により開放状態を維持することができる。なお、開閉蓋71の開閉動作は本実施形態のようにヒンジ機構73によって行われることに限られない。例えばシャッター機構(図示せず)により開閉蓋71を開閉可能としてもよい。
スペースデブリDをデブリ収容部70に捕集した宇宙飛翔体104は、開閉蓋71を閉じた状態で噴流Jを噴射ノズル5から噴射して得られる反動力Fを推進力として地球に向けて飛行する。宇宙飛翔体104は、図10に示すようにパラシュート1を地表面(着陸面200)に向けて地球の上空(重力圏)の所定高さまで飛行する。この状態で開閉蓋71を開き、そして噴射ノズル5から噴流Jを噴射することで、噴流Jは開いた一対の開閉蓋71同士の間を通じて中央凸部2の内部に吹き込まれ、デブリ収容部70に捕集されていたスペースデブリDを地表面に向けて直接に押し出す。噴流Jがデブリ収容部70でスプリットされず中央凸部2に吹き込まれることで反動力F(図9参照)は発生せず、噴流Jの噴射反力は機体本体6に対して図10の上向きに作用する。これにより、宇宙飛翔体104に作用する地球の重力の一部または全部がキャンセルされ、宇宙飛翔体104は所定の高度を維持する。一方、スペースデブリDは噴流Jに押し出された勢いで中央凸部2から地球方向に打ち出され、その後、大気圏に突入(再突入)し、燃焼して除去される。
本実施形態の宇宙飛翔体104によれば、ロボットアームなどで捕獲することが困難な比較的小型のスペースデブリDであってもデブリ収容部70に回収することができる。そしてデブリ収容部70にスペースデブリDを回収した後に宇宙飛翔体104が反動力Fを推進力として更に地球に向かって所定の方向に飛行することで、宇宙空間を飛行するスペースデブリDは自身の周回軌道から離脱して減速する。このため、上述したようにスペースデブリDを大気圏再突入させて燃焼させることができる。
第五実施形態では宇宙飛翔体104でスペースデブリDを捕集した後、このスペースデブリDを地球に向かって打ち出す態様を例示したが、宇宙飛翔体104の動作はこれに限られない。すなわち、宇宙飛翔体104はデブリ収容部70にスペースデブリDを捕集した状態で自ら大気圏再突入して宇宙飛翔体104ごとスペースデブリDを燃焼させてもよい。または、第一から第四実施形態で説明したように、機体本体6の脚62を着陸面200の側に向けた状態で噴射ノズル5から噴流Jを噴射して反動力Fを下向きに得ることで、宇宙飛翔体104を減速させる着陸装置として用い、スペースデブリDごと宇宙飛翔体104を地上に回収してもよい。
なお、開閉蓋71の具体的な構造は本実施形態に限られず、デブリ収容部70である中央凸部2の少なくとも後方側を開放可能に閉塞する可動の蓋体を広く用いることができる。開閉蓋71の形状は、ドーム状に代えて平板状でもよい。また、本実施形態では中央凸部2(デブリ収容部70)の下端側(後方側)のみを閉鎖する開閉蓋71を例示したが、これに限られない。例えば、開閉蓋をデブリ収容部70の前方側および後方側にそれぞれ開閉可能に設けてもよい。この場合、図9に示すようにスペースデブリDを捕集する際はデブリ収容部70の前方側の開閉蓋を開放し、後方側の開閉蓋を閉鎖しておくとよい。スペースデブリDを捕集した後は、前方側および後方側の開閉蓋の双方を閉鎖した状態で宇宙飛翔体104は地球表面に向かって必要により向きを変え、そして飛行してもよい。そして図10に示すようにスペースデブリDを地球に向けて打ち出す際は、前方側および後方側の開閉蓋の双方を開放した状態で噴射ノズル5から噴流Jを噴射するとよい。
以上説明したように本発明の宇宙飛翔体は、地球表面や月面等の地面や宇宙ステーション等の人工天体に対して着陸する着陸装置として用いられるほか、スペースデブリDを回収して周回軌道から除去する宇宙ゴミの回収および廃棄装置として用いることができる。
図11(a)は第五実施形態の宇宙飛翔体104の変形例を説明する概観図である。図11(b)は当該変形例の宇宙飛翔体104における開閉蓋71を噴射ノズル5の側から視た模式図である。
図12は、第五実施形態の変形例にかかる宇宙飛翔体104からスペースデブリDを打ち出す状態を説明する概観図である。
第五実施形態(図9参照)と同様に、本変形例における開閉蓋71の少なくとも一部は、図11(a)に示すようにデブリ収容部70の深さ方向に膨出する球面状をなしている。デブリ収容部70の深さ方向はスペースデブリDの取り込み方向であり、図11(a)における下向きである。
一方、本変形例は、開閉蓋71の形状および開閉蓋71の内表面に緩衝体75を有する点で、図9および図10に示した第五実施形態と相違する。すなわち、第五実施形態の宇宙飛翔体104における開閉蓋71は、一対の四分の一球面を組み合わせたものであり、図9に示すように閉じた状態で全体として半球状を為し、そして当該半球の直径は中央凸部2の直径と同等である。これに対し、本変形例の宇宙飛翔体104における開閉蓋71は、図11(a)および図11(b)に示すように、同一形状の3個の蓋部材を組み合わせて構成されており、開閉蓋71が閉じた状態において、中央凸部2の外径よりも大径に膨出している点で第五実施形態と相違する。
すなわち、開閉蓋71の少なくとも一部は、デブリ収容部70の深さ方向に加えて更にデブリ収容部70の径方向の外向きにも膨出する球面状である。ここでいう球面状とは部分球面や略球面を含む。そして開閉蓋71が閉じた状態で、開閉蓋71の球面状の外表面の一部が中央凸部2よりも径方向の外側まで突き出ている。それのみならず、開閉蓋71の球面状の内表面の一部も、中央凸部2の外形線を超えて径方向の外側に位置している。図11(b)に示すように、破線でしめされる中央凸部2の外形線よりも径方向の外側まで、開閉蓋71の外表面および内表面の一部が膨出して突き出ている。
図11(a)に示すように、デブリ収容部70には凹面部2aに沿って一方側(上方)からスペースデブリDが取り込まれる。本変形例の開閉蓋71は、取り込まれたスペースデブリDを開閉蓋71の内表面に沿って転動させ、そして他の取り込まれたスペースデブリDとの衝突やデブリ収容部70との摩擦力によりスペースデブリDを減速させて捕集することができる。すなわち、第五実施形態のように半球状の開閉蓋71の場合はデブリ収容部70に取り込まれたスペースデブリDが開閉蓋71でUターンして再びデブリ収容部70から前方に離脱するおそれもある。これに対し、本変形例のように開閉蓋71の球面状の内表面が中央凸部2の外形線を超えて径方向の外側まで膨出していることで、デブリ収容部70に取り込まれたスペースデブリDは、開閉蓋71の内表面に沿ってデブリ収容部70の内部でくるくると転動して減速される。このためスペースデブリDがデブリ収容部70から再び離脱するおそれが低減される。
デブリ収容部70は、炭素繊維または複合耐熱材料などの耐熱性材料で作成された耐熱性デブリ収容部であることが好ましい。デブリ収容部70のうち、特に噴流Jが噴射される開閉蓋71は、噴流Jにより加熱される加熱温度よりも高い耐熱性を有していることが好ましい。開閉蓋71の材料としては、金属材料、炭素繊維または複合耐熱材料を例示することができる。
開閉蓋71の内表面には、当該開閉蓋71よりも軟質の材料で作成された緩衝体75が設けられている。緩衝体75や開閉蓋71の具体的な材料は特に限定されないが、例えば緩衝体75の材料としてはゴム材料、多孔質樹脂材料、ゲルを例示することができる。開閉蓋71の内表面に軟質の緩衝体75を設けることで、デブリ収容部70に取り込まれたスペースデブリDが開閉蓋71に衝突する際の弾性的な反発が抑制され、スペースデブリDが開閉蓋71の内表面(言い換えると緩衝体75の内表面)に沿ってくるくると転動することを促進する。また、スペースデブリDが開閉蓋71に衝突した際の反発力を低減することで開閉蓋71やヒンジ機構73の機械的な損傷を防止することができる。
緩衝体75の厚み寸法は、開閉蓋71の肉厚よりも大きくてもよい。これによりスペースデブリDが開閉蓋71に衝突する際の反発力を十分に低減することができる。なお、本明細書において緩衝体75とは、スペースデブリDの衝突衝撃を十分に低減できるだけの厚みを有する部材であり、断熱コーティングや絶縁コーティングなど開閉蓋71の肉厚よりも十分に薄く塗布形成される塗布層を除くものである。
図11(a)および図11(b)では、リング状の取付部72の周囲に配置されてヒンジ機構73でそれぞれ連結された3個の蓋部材で開閉蓋71を構成する態様を例示しているが、これに限られない。開閉蓋71を構成する蓋部材は4個以上でもよく2個以下でもよい。ヒンジ機構73の配置、個数、形状も任意であり、ヒンジ機構73以外の機構によって開閉蓋71を開閉可能としてもよい。
図12に示すように、開閉蓋71が開いた状態で噴流Jを噴射ノズル5から噴射してスペースデブリDを地表面に向けて押し出すことは第五実施形態と共通である。開閉蓋71が展開した状態で、開閉蓋71が十分に広く展開していることが好ましく、具体的には取付部72および中央凸部2の開口の全体が、噴射ノズル5から視て開閉蓋71から完全に露出していることが好ましい。言い換えると、取付部72および中央凸部2の円形の開口を、当該開口の中心から噴射ノズル5に向けて延びるベクトル(すなわち噴射ノズル5からの噴流Jの噴射方向と逆向きのベクトル)に沿って投影した円柱形の仮想空間の外部に、開放状態の開閉蓋71の全体が配置されているとよい。これにより、噴射ノズル5から噴射された噴流Jがリング状の取付部72および中央凸部2の内部に吹き込まれてスペースデブリDを押し出すにあたり、噴流Jが開閉蓋71と干渉して減速してしまうことを防止できる。
<第六実施形態>
図13は本発明の第五実施形態またはその変形例として上述したデブリ収容部70を備える宇宙飛翔体104を有するデブリ除去システム300の平面模式図である。同図はデブリ除去システム300を宇宙飛翔体104の進行方向DR(図14参照)の前方から視た図である。図14は本実施形態のデブリ除去システム300を宇宙飛翔体104の進行方向DRの側方から視た側面図である。
デブリ除去システム300は、宇宙飛翔体104と隊列飛行する旋回飛翔体320を用いてスペースデブリDの飛来軌道を変化させることにより、宇宙飛翔体104単体でスペースデブリDを捕集する場合よりも効率的にスペースデブリDを除去するものである。デブリ除去システム300は、宇宙空間を飛翔する宇宙飛翔体104および旋回飛翔体320のみで構成されてもよく、または地球上の地上システムを含めて構成されてもよい。
本実施形態のデブリ除去システム300は、宇宙飛翔体104と、当該宇宙飛翔体104の進行方向DRの前方を宇宙飛翔体104と隊列飛行する一機または複数機の旋回飛翔体320(320a,320b)と、を有して構成される。旋回飛翔体320は、宇宙飛翔体104の進行方向DRを中心軸として当該中心軸まわりに旋回飛行しながら宇宙飛翔体104の進行方向DRに沿って飛行する。そして旋回飛翔体320は、飛来するスペースデブリDに向けて噴流J3を噴射してスペースデブリDの飛来軌道を変化させるデブリ軌道修正用ノズル330を備えている。スペースデブリDが旋回飛翔体320に飛来するとは、スペースデブリDが旋回飛翔体320に対して相対的に接近することをいう。
旋回飛翔体320は、筐体321と、宇宙飛翔体104の進行方向DRに沿って飛行するための加速度を得る前進ノズル332(図13参照)と、中心軸AXまわりに旋回するための角速度を得る旋回ノズル334と、を更に備えている。前進ノズル332からは進行方向DRと逆向き(図14における下方)に噴流J4が噴射され、旋回飛翔体320は進行方向DRと平行な速度成分を得る。また旋回ノズル334からは中心軸AXを中心とする円弧の接線方向に噴流J5が噴射され、旋回飛翔体320は中心軸AXまわりに旋回する速度成分を得る。図13では中心軸AXを中心に反時計回りに旋回飛翔体320が旋回することを例示している。このため旋回飛翔体320から中心軸AX(図13では宇宙飛翔体104のデブリ収容部70の位置)を中心とする円(図示せず)に対して時計回りの成分を有する接線方向に噴流J5は噴射される。ただし、旋回飛翔体320の旋回方向は上記と逆向きでもよい。また、後述するように本実施形態のデブリ除去システム300は複数機の旋回飛翔体320が複数段の環状に配置されて隊列飛行する。各段を構成する複数機の旋回飛翔体320は互いに同じ向きに旋回する。そして、異なる段を構成する旋回飛翔体320は、中心軸AXまわりに同じ向きに旋回してもよく、または逆向きに旋回してもよい。
前進ノズル332、旋回ノズル334およびデブリ軌道修正用ノズル330における推進原理は特に限定されず、互いに共通でもよく、または異なるものでもよい。前進ノズル332から噴射される噴流J4、旋回ノズル334から噴射される噴流J5およびデブリ軌道修正用ノズル330から噴射される噴流J3にそれぞれ用いられる推進剤は共用してもよい。デブリ軌道修正用ノズル330、キャンセル用ノズル331、前進ノズル332、後退ノズル333、旋回ノズル334および減速ノズル335は筐体321に搭載されている。筐体321には、上記各ノズルから噴射される噴流の噴射時期や噴射量を制御する噴射制御部や姿勢制御用の各種制御機器(図示せず)が搭載されている。
旋回飛翔体320は、筐体321に関して前進ノズル332の反対側に設置された後退ノズル333を有する。図13においては、筐体321の上面に現れる後退ノズル333の図示を省略している。後退ノズル333は、前進ノズル332から噴射される噴流J4と逆向きに噴流を噴射する。これにより宇宙飛翔体104の進行方向DRと同方向に前進飛行する旋回飛翔体320の速度を微調整することができる。また旋回飛翔体320は、筐体321に関して旋回ノズル334の反対側に設置された減速ノズル335を有する。減速ノズル335は、旋回ノズル334から噴射される噴流J5と逆向きに噴流を噴射する。旋回ノズル334から噴射される噴流J5により得られる中心軸AXまわりの角速度が過大となる場合に、減速ノズル335から噴流(図示せず)を噴射して角速度を減少させて微調整することができる。
デブリ軌道修正用ノズル330はスペースデブリDに向けて噴流J3を噴射してスペースデブリDの飛来軌道を変化させる。旋回飛翔体320は、筐体321に関してデブリ軌道修正用ノズル330の反対側に設置されたキャンセル用ノズル331を有する。キャンセル用ノズル331は、デブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射するのと同じタイミングで、噴流J3と反対向きに、噴流J3と同速度かつ同流量で噴流(図示せず)を噴射する。これにより、デブリ軌道修正用ノズル330から噴射される噴流J3の運動量の反作用により旋回飛翔体320が飛行軌道から外れることをキャンセルすることができる。
本実施形態のデブリ除去システム300においては、デブリ軌道修正用ノズル330からスペースデブリDに向けて噴流J3を噴射してスペースデブリDの飛来軌道を変化させることにより宇宙飛翔体104のデブリ収容部70でスペースデブリDを捕集する。すなわち本実施形態の旋回飛翔体320は、宇宙飛翔体104の進行方向DRである中心軸AXに向けてデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射する。これにより、宇宙飛翔体104の掃引体積の外部に位置するスペースデブリDを、掃引体積の内部に移動させることができる。
ただし、デブリ軌道修正用ノズル330からスペースデブリDに向けて噴射される噴流J3の向きは上記に限定されない。例えば本実施形態に代えて、旋回飛翔体320と地球との間に位置するスペースデブリDに向けてデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射してもよい。これにより、スペースデブリDを地球に向けて落下させ、大気圏で燃焼させて当該スペースデブリDを除去することができる。このほか、静止軌道などの周回軌道上を飛行するスペースデブリDに対して飛行方向の逆向きの加速度を噴流J3によって付与することでスペースデブリDは減速され、徐々に周回軌道から地球に向かって落下していく。これによりスペースデブリDを大気圏で燃焼させて除去することもできる。
デブリ除去システム300は軌道修正用演算部340を更に備えている。軌道修正用演算部340は、飛来するスペースデブリDのデブリ条件に基づいて、デブリ軌道修正用ノズル330から噴射する噴流J3の噴射時期または噴射量の少なくとも一方を決定する。より詳細には、デブリ条件は、飛来するスペースデブリDの位置、飛来方向および飛来速度を少なくとも含む。そして軌道修正用演算部340は、噴流J3の噴射により飛来軌道が変化した後のスペースデブリDの飛来位置および飛来時刻が、当該飛来時刻における宇宙飛翔体104のエアブレーキ構造体(パラシュート1)の通過位置と一致するように、噴流J3の噴射時期または噴射量を決定する。ここで、噴流J3の噴射量とは、噴流J3の流速または単位時間あたりの噴流J3の流量である。すなわち旋回飛翔体320は、その後方を飛行する宇宙飛翔体104のエアブレーキ構造体(パラシュート1)が通過する空間領域および時間帯にスペースデブリDがちょうど到達するように、当該スペースデブリDに噴流J3を噴射する。
軌道修正用演算部340はコンピュータにより実現される。軌道修正用演算部340は宇宙飛翔体104に設けられてもよく、旋回飛翔体320に設けられてもよく、もしくは地球上の地上システムに設けられてもよく、またはこれらに分散して設けられてもよい。図14では宇宙飛翔体104の機体本体6の内部に軌道修正用演算部340が搭載されている場合を図示している。
デブリ除去システム300は、旋回飛翔体320の前方に飛来するスペースデブリDの位置、飛来方向および飛来速度を、観測機器(図示せず)を用いて光学的または電磁的に計測する。かかる観測機器は地上システムに設けられてもよく、または宇宙飛翔体104もしくは旋回飛翔体320に設けられてもよい。観測機器は、更にスペースデブリDの大きさを計測するとよい。スペースデブリDの大きさおよびスペースデブリDの平均的な密度値からスペースデブリDの質量を推算し、あわせてスペースデブリDに対してデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射した際にスペースデブリDが付勢力を受ける平均的な投影面積を推算する。軌道修正用演算部340は、スペースデブリDと旋回飛翔体320との距離および位置関係に基づき、当該旋回飛翔体320のデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を単位出力で噴射した場合に当該スペースデブリDが受ける力積を推算する。軌道修正用演算部340は、スペースデブリDの質量を推算値、位置、飛来方向および飛来速度に基づき、かかる力積を受けて飛来軌道が変化した後の当該スペースデブリDの軌道を算出する。軌道修正用演算部340は、噴流J3の噴射時期または噴射量の少なくとも一方を変数として、スペースデブリDの軌道が宇宙飛翔体104のパラシュート1が通過する空間領域と重なり、かつスペースデブリDが宇宙飛翔体104の僅かに前方を通過してデブリ収容部70で捕集されるように(かかる軌道を「捕集軌道」と呼称する)、当該変数の解を求める。デブリ軌道修正用ノズル330から噴射される噴流J3の噴射量が常に一定である場合には、軌道修正用演算部340はデブリ軌道修正用ノズル330から連続的または間欠的に噴射すべき噴流J3の噴射時期(タイミング)が変数となる。
軌道修正用演算部340によりスペースデブリDの変化後の飛来軌道(捕集軌道)が決定されると、当該捕集軌道を実現するための噴流J3の噴射時期および噴射量が決定される。軌道修正用演算部340は、旋回飛翔体320の噴射制御部と無線接続されている。軌道修正用演算部340は、決定された噴射時期および噴射量でデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3が噴射されるように、デブリ軌道修正用ノズル330の噴射制御部にコマンド信号を送信する。かかるコマンド信号に基づいて、決定された旋回飛翔体320におけるデブリ軌道修正用ノズル330から所定のタイミングおよび噴射量にて噴流J3が噴射される。これにより、旋回飛翔体320の円形の旋回軌道の内部に飛来するスペースデブリDの飛来軌道を捕集軌道に変更し、当該スペースデブリDを宇宙飛翔体104のデブリ収容部70で捕集することが可能になる。
デブリ除去システム300は、一機または複数機の旋回飛翔体320を有している。一機の旋回飛翔体320を宇宙飛翔体104の前方で旋回飛行させてスペースデブリDに噴流J3を噴射してもよいが、複数機の旋回飛翔体320を旋回飛行させることが好ましい。これにより、スペースデブリDの飛来速度が速い場合でも、旋回飛翔体320の旋回周期との関係で旋回飛翔体320の近傍を通過せずにスペースデブリDがデブリ除去システム300を空過してしまう確率が低減できる。
すなわち本実施形態のデブリ除去システム300は、中心軸AXまわりにそれぞれ旋回飛行する複数機の旋回飛翔体320を有している。軌道修正用演算部340は、上記種々のデブリ条件に基づいて、複数機のうち、デブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射する旋回飛翔体320を決定する。すなわち軌道修正用演算部340は、飛来するスペースデブリDが旋回飛翔体320の円形の旋回軌道により描かれる円領域を通過する瞬間に当該スペースデブリDに最も近接する旋回飛翔体320を、噴流J3を噴射すべき旋回飛翔体320として決定する。軌道修正用演算部340は、1個のスペースデブリDに対して、複数機(例えば互いに隣接する複数機)の旋回飛翔体320から噴流J3を噴射するように決定してもよい。
図13および図14では合計12機の旋回飛翔体320を有するデブリ除去システム300を例示している。ただし旋回飛翔体320の機数はこれに限られるものではない。
本実施形態のデブリ除去システム300において、複数機の旋回飛翔体320は宇宙飛翔体104の進行方向DRの前方に複数段の環状に配置されて隊列飛行する。本実施形態の例では、宇宙飛翔体104に近い一段目の環状の旋回軌道上に6機の旋回飛翔体320aが互いに等間隔に分散配置されている。そして一段目よりも更に進行方向DRの前方に位置する二段目の環状の旋回軌道上に6機の旋回飛翔体320bが互いに等間隔に分散配置されている。このように旋回飛翔体320の旋回軌道を複数段に構成することで、宇宙飛翔体104の通過領域にスペースデブリDの飛来軌道をより確実に変化させることができる。すなわち、宇宙飛翔体104よりも遠方の二段目の旋回飛翔体320bがスペースデブリDに噴射する噴流J3によっては当該スペースデブリDの飛来軌道を宇宙飛翔体104の通過領域上に変化させることができない場合でも、旋回飛翔体320bの後方に続く旋回飛翔体320aが更に噴流J3を噴射することで、より確実に当該スペースデブリDの飛来軌道を宇宙飛翔体104の通過領域上に変化させることができる。各段を構成する旋回飛翔体320の機数は互いに等しくてもよく、または異なってもよい。
本実施形態では複数機の旋回飛翔体320が複数段の環状に配置されて隊列飛行することを例示したが、これに代えて、複数機の旋回飛翔体320が宇宙飛翔体104の進行方向DRの前方において螺旋状に配置されて隊列飛行してもよい。旋回飛翔体320が配置される螺旋軸は中心軸AXと一致させ、旋回飛翔体320の各機は三次元螺旋上に配置されて中心軸AXまわりに同方向に旋回飛行する。これにより、複数機の旋回飛翔体320と宇宙飛翔体104との間の中心軸AXに沿う方向の距離が互いに異なることになり、飛来するスペースデブリDに対していずれかの旋回飛翔体320が接近して噴流J3を噴射し、宇宙飛翔体104に向けてスペースデブリDの飛来軌道を変更できる可能性が高められる。
複数機の旋回飛翔体320同士はケーブル350で互いに連結されている。具体的には、一段目の旋回軌道を描く6機の旋回飛翔体320aは、互いに隣接する機体の筐体321同士がケーブル350で連結されている。そして二段目の旋回軌道を描く6機の旋回飛翔体320bも、互いに隣接する機体の筐体321同士が他のケーブル350で連結されている。このように各段の旋回軌道を描く旋回飛翔体320同士がケーブル350で連結されていることで、噴流J5の噴射反力で同方向に回転する複数機の旋回飛翔体320は円形の旋回軌道を描く。また、複数機の旋回飛翔体320が中心軸AXまわりの旋回軌道上に等間隔で配置されていることで、旋回飛翔体320の各機に個別に発生する遠心力同士が相殺される。一方、旋回飛翔体320の各機は、前進ノズル332から噴流J4を同速で噴射するなどして進行方向DRに関しては等しい速度成分を有している。宇宙飛翔体104は、第五実施形態にて上述したように噴射ノズル5から噴射された噴流J1をパラシュート1で反転させ、噴流J2としてパラシュート1の周縁から後方に吹き出すことで進行方向DRの速度成分をもって飛行する。以上により、各段の旋回飛翔体320および宇宙飛翔体104は、戦隊を崩すことなく進行方向DR(中心軸AX)に沿って同速度で並進移動することができる。
ケーブル350で連結される各段の旋回飛翔体320の機数は限定されないが、3機以上であることで、3本以上のケーブル350が多角形を描く。具体的には図13に示すように6機でもよく、5機でも4機でもよく、3機または7機以上でもよい。これにより、ケーブル350は当該多角形の辺上に張られることになり、当該多角形の中心にはケーブル350が配置されない。このため、旋回飛翔体320の旋回軌道の中心を宇宙飛翔体104に向かって遠方から飛来するスペースデブリDがケーブル350と干渉することがなく、当該スペースデブリDを宇宙飛翔体104のデブリ収容部70が捕集することを妨げない。
ケーブル350の長さは特に限定されないが、例えば数キロメートルから数十キロメートルとすることができる。図13に示すように正六角形の頂点上に6機の旋回飛翔体320が配置されて円形の旋回軌道を描く場合、当該旋回軌道の直径はケーブル350の2倍の長さ、すなわち数十キロメートルのオーダーとすることができる。一方、宇宙飛翔体104のパラシュート1の直径は数十メートルから100メートル程度とすることができる。したがって、宇宙飛翔体104単独で飛行してパラシュート1でスペースデブリDを捕集する場合に比べて、本実施形態のデブリ除去システム300によってスペースデブリDを宇宙飛翔体104に向けて移動させてこれを捕集する場合、スペースデブリDを除去可能な領域は、直径比で1000倍、面積比で100万倍もの大きさとすることができる。
一段目を構成する第一の旋回飛翔体320aの旋回半径は、当該第一の旋回飛翔体320aよりも宇宙飛翔体104のより前方を旋回飛行する二段目を構成する第二の旋回飛翔体320bの旋回半径よりも小さい。これにより、デブリ除去システム300が配置される空間は、図14に示すように二段目の旋回飛翔体320bの旋回軌道から一段目の旋回飛翔体320aの旋回軌道に向かって縮径し、更に宇宙飛翔体104のパラシュート1に向かって縮径する。言い換えると、デブリ除去システム300が配置される空間は、進行方向DRの前方から後方に向かって縮径する擂り鉢形状をなしている。これにより、デブリ除去システム300に向かって飛来するスペースデブリDの飛来軌道を、大きな旋回軌道を描く第二の旋回飛翔体320bによって中心軸AXに向かう方向に変更(第一段変更)させて、第一の旋回飛翔体320aの小さな旋回軌道の内側まで、まずは移動させる。次に、小さな旋回軌道を描く後続の第一の旋回飛翔体320aによって、当該スペースデブリDの飛来軌道を、更に宇宙飛翔体104のパラシュート1の通過領域上まで、高い精度で更に変更(第二段変更)させることができる。
以上説明したように、本実施形態のデブリ除去システム300によれば、飛行する宇宙飛翔体104が単独で掃引する体積よりも遙かに広い空間内に任意の向きで飛来するスペースデブリDを、宇宙飛翔体104のデブリ収容部70で効率的に捕集することができる。
本実施形態では宇宙飛翔体104と組み合わせて用いることを説明したがこれに限られない。すなわち本実施形態のデブリ除去システムは、宇宙飛翔体と組み合わせずに旋回飛翔体のみで構成してもよい。かかるデブリ除去システムは、複数機の隊列飛行する旋回飛翔体を有し、前記旋回飛翔体が、所定の中心軸まわりに旋回飛行しながら前記中心軸に沿って飛行し、かつ飛来するスペースデブリに向けて噴流を噴射して前記スペースデブリの飛来軌道を変化させるデブリ軌道修正用ノズルを備えるデブリ除去システムとして構成することができる。
そしてデブリ軌道修正用ノズルから噴射される噴流により、スペースデブリを地表に向けて落下させてもよい。これにより、宇宙飛翔体によってスペースデブリを捕集しなくても、スペースデブリを大気圏再突入させて燃焼させることによりこれを除去することができる。
図15は、変形例にかかるデブリ除去システム310の平面模式図である。同図はデブリ除去システム310を宇宙飛翔体104の進行方向の前方から視た図である。図16はデブリ除去システム310を宇宙飛翔体104の進行方向DRの側方から視た側面図である。
デブリ除去システム310は、宇宙飛翔体104と、当該宇宙飛翔体104の進行方向DRの前方を宇宙飛翔体104と隊列飛行する複数機の旋回飛翔体320と、を有して構成されている点で第六実施形態と共通する。複数機の旋回飛翔体320は、宇宙飛翔体104を通り進行方向DRに沿って延在する中心軸AXまわりにそれぞれ旋回飛行する。
そして本実施形態のデブリ除去システム310は、複数機の旋回飛翔体320が、それぞれ宇宙飛翔体104とケーブル352で連結されている点で第六実施形態のデブリ除去システム300と相違する。
ケーブル352は、旋回飛翔体320の筐体321と、例えば宇宙飛翔体104のパラシュート1の外周縁部とを連結している。複数機の旋回飛翔体320は、旋回ノズル334から噴流J5を噴射することにより、宇宙飛翔体104の中心軸AXまわりに旋回軌道を描く。旋回飛翔体320が旋回飛行することで、ケーブル352に牽引されて宇宙飛翔体104は中心軸AXまわりに軸回転しながら進行方向DRに前進飛行する。旋回飛翔体320は中心軸AXまわりに均等に分散配置されているため、各機の旋回飛翔体320がケーブル352を介して宇宙飛翔体104を牽引する力は互いに相殺される。
デブリ除去システム310によるスペースデブリDの捕集動作は第六実施形態と同様である。ケーブル352の長さは、例えば数キロメートルから数十キロメートルとすることができる。旋回飛翔体320の各機は前進ノズル332から進行方向DRと反対向きに噴流J4を噴射することにより、進行方向DRに沿って前進する等しい速度成分を得る。これにより、旋回飛翔体320と宇宙飛翔体104とは進行方向DRに所定の距離を保ったまま隊列飛行する。そしてデブリ除去システム310に対して相対的に飛来するスペースデブリDに対して、最も近接する旋回飛翔体320を軌道修正用演算部340で特定し、デブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射することでスペースデブリDの飛来軌道を捕集軌道に変化させる。これによりスペースデブリDを宇宙飛翔体104のデブリ収容部70で捕集することが可能となる。
第六実施形態のデブリ除去システム300およびその変形例のデブリ除去システム310においては、筐体321に固定的に設置されたデブリ軌道修正用ノズル330からスペースデブリDに対して中心軸AXに向けて噴流Jを噴射することを説明したが、これに限られない。デブリ軌道修正用ノズル330は筐体321に対して可動に取り付けられ、噴流J3の噴射方向を変更可能としてもよい。特に、旋回軌道の内向きの方向成分のみならず、進行方向DRと逆向き(すなわち宇宙飛翔体104に向かう方向)の方向成分を持つようにデブリ軌道修正用ノズル330から噴流J3を噴射してもよい。これにより、様々な軌道で飛来するスペースデブリDを、より確実に捕集軌道に変化させることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
たとえば上記実施形態においては直方体または円柱状の機体本体6の上部にパラシュート1が取り付けられる態様を例示したが、本発明はこれに限られない。航空機のように両翼を有する宇宙往還機の後部に、折り畳み可能なパラシュート1を搭載し、宇宙往還機のロケットエンジンから後方に噴射される噴流Jの延長線上にパラシュート1を展開可能としてもよい。
また、上記実施形態では支持ロープ3および13a、凸部支持ロープ4、下支持ロープ13、上支持ロープ14など各種のロープ類を説明したが、これらが連結される部位は上記実施形態に限られず変更が可能である。またこれらのロープ類は、各1本のロープで実現されてもよく、または連結具を介して互いに連結された複数本のロープによりそれぞれ実現されてもよい。
本発明の宇宙飛翔体100〜104の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)機体本体と、前記機体本体よりも飛行方向の後方に設けられ前記機体本体に向かって凹形状に湾曲するエアブレーキ構造体と、前記機体本体に設けられ前記機体本体の重心位置よりも前記飛行方向の後方から前記エアブレーキ構造体に向けて噴流を噴射する噴射ノズルと、を有し、噴射された前記噴流の向きが凹形状の前記エアブレーキ構造体に沿って反転することにより前記機体本体に前記飛行方向の後方に向けて前記噴流の反動力を生じさせることを特徴とする着陸装置。
(2)前記エアブレーキ構造体が、少なくとも一部が炭素繊維で作成されたパラシュートである上記(1)に記載の着陸装置。
(3)前記エアブレーキ構造体が、前記機体本体に向けて突出する中央凸部と、前記中央凸部の周囲に連続形成されていて前記機体本体に向かって凹形状に湾曲する凹面部と、を備える上記(1)または(2)に記載の着陸装置。
(4)前記噴射ノズルと前記エアブレーキ構造体との間に配置されて前記噴流が通過する耐熱性の噴射ガイドを有する上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の着陸装置。
(5)前記噴射ガイドの開口断面積が長手方向に亘って均一である上記(4)に記載の着陸装置。
(6)前記噴射ガイドのうち少なくとも前記エアブレーキ構造体に近接する側の端部が、前記エアブレーキ構造体に向かって徐々に拡径している上記(4)に記載の着陸装置。
(7)前記噴射ガイドのうち少なくとも前記エアブレーキ構造体に近接する側の端部が、前記エアブレーキ構造体に向かって徐々に縮径している上記(4)に記載の着陸装置。
(8)前記エアブレーキ構造体がパラシュートであり、前記噴射ガイドが、下側筒部と、前記下側筒部の上方に配置されて前記パラシュートの内側に並んで配置される第2パラシュートと、を有し、前記下側筒部を通過した前記噴流が前記パラシュートと前記第2パラシュートとの間隙部を流れることにより該噴流の向きが反転する上記(4)から(7)のいずれか一つに記載の着陸装置。
(9)前記第2パラシュートと下側筒部とが隙間なく連続形成されている上記(8)に記載の着陸装置。
(10)前記機体本体の高度を算出する高度算出部と、前記高度算出部が算出した前記高度を示す高度情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流を制御する噴射制御部と、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流の向きとは異なる少なくとも一の方向に他の噴流を噴射する制御用噴射ノズルと、を備える上記(1)から(9)のいずれか一つに記載の着陸装置。
(11)前記機体本体の高度および飛行速度に基づいて前記機体本体の着陸予想地点を算出する予想演算部と、前記着陸予想地点の表面状態を示す表面情報または前記着陸予想地点に着陸可能であるか否かを示す可否情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記表面情報または前記可否情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流を制御する噴射制御部と、を備える上記(1)から(10)のいずれか一つに記載の着陸装置。
(21)機体本体と、前記機体本体よりも飛行方向の一方側に設けられ前記機体本体に向かって凹形状に湾曲するエアブレーキ構造体と、前記機体本体に設けられ前記機体本体の重心位置よりも前記飛行方向の前記一方側から前記エアブレーキ構造体に向けて噴流を噴射する噴射ノズルと、を有し、噴射された前記噴流の向きが凹形状の前記エアブレーキ構造体に沿って反転することにより前記機体本体に前記飛行方向の前記一方側に向けて前記噴流の反動力を生じさせることを特徴とする宇宙飛翔体。
(22)前記エアブレーキ構造体が、少なくとも一部が炭素繊維または複合耐熱材料で作成されたパラシュートである上記(21)に記載の宇宙飛翔体。
(23)前記エアブレーキ構造体が、前記機体本体に向けて突出する中央凸部と、前記中央凸部の周囲に連続形成されていて前記機体本体に向かって凹形状に湾曲する凹面部と、を備える上記(21)または(22)に記載の宇宙飛翔体。
(24)前記凹面部が、前記一方側の遠方に向かって開口する擂り鉢状をなしている上記(23)に記載の宇宙飛翔体。
(25)前記中央凸部が、前記凹面部に沿って前記一方側から取り込まれるスペースデブリを収容するデブリ収容部を備える上記(23)または(24)に記載の宇宙飛翔体。
(26)前記デブリ収容部は開閉可能な開閉蓋を有し、前記開閉蓋は前記噴射ノズルに対向し、かつ前記噴射ノズルからみて前記噴流の噴射方向の前方に配置されている上記(25)に記載の宇宙飛翔体。
(27)前記開閉蓋の少なくとも一部が、前記デブリ収容部の深さ方向に膨出する球面状をなしている上記(26)に記載の宇宙飛翔体。
(28)前記開閉蓋の少なくとも一部が、更に前記デブリ収容部の径方向の外向きにも膨出する球面状であり、前記開閉蓋が閉じた状態で、前記開閉蓋の球面状の内表面の一部が、前記中央凸部の外形線を超えて径方向の外側に位置している上記(27)に記載の宇宙飛翔体。
(29)前記開閉蓋の内表面に、前記開閉蓋よりも軟質の材料で作成された緩衝体が設けられている上記(26)から(28)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体。
(30)前記噴射ノズルと前記エアブレーキ構造体との間に配置されて前記噴流が通過する耐熱性の噴射ガイドを有する上記(21)から(29)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体。
(31)前記噴射ガイドの開口断面積が長手方向に亘って均一である上記(30)に記載の宇宙飛翔体。
(32)前記噴射ガイドのうち少なくとも前記エアブレーキ構造体に近接する側の端部が、前記エアブレーキ構造体に向かって徐々に拡径している上記(30)に記載の宇宙飛翔体。
(33)前記噴射ガイドのうち少なくとも前記エアブレーキ構造体に近接する側の端部が、前記エアブレーキ構造体に向かって徐々に縮径している上記(30)に記載の宇宙飛翔体。
(34)前記エアブレーキ構造体がパラシュートであり、前記噴射ガイドが、下側筒部と、前記下側筒部の上方に配置されて前記パラシュートの内側に並んで配置される第2パラシュートと、を有し、前記下側筒部を通過した前記噴流が前記パラシュートと前記第2パラシュートとの間隙部を流れることにより該噴流の向きが反転する上記(30)から(33)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体。
(35)前記第2パラシュートと下側筒部とが隙間なく連続形成されている上記(34)に記載の宇宙飛翔体。
(36)前記機体本体の高度を算出する高度算出部と、前記高度算出部が算出した前記高度を示す高度情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流を制御する噴射制御部と、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流の向きとは異なる少なくとも一の方向に他の噴流を噴射する制御用噴射ノズルと、を備える上記(21)から(35)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体。
(37)前記機体本体の高度および飛行速度に基づいて前記機体本体の着陸予想地点を算出する予想演算部と、前記着陸予想地点の表面状態を示す表面情報または前記着陸予想地点に着陸可能であるか否かを示す可否情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記表面情報または前記可否情報に基づいて、前記噴射ノズルから噴射される前記噴流を制御する噴射制御部と、を備える上記(21)から(36)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体。
(38)上記(25)から(29)のいずれか一つに記載の宇宙飛翔体と、前記宇宙飛翔体の進行方向の前方を前記宇宙飛翔体と隊列飛行する一機または複数機の旋回飛翔体と、を有し、前記旋回飛翔体が、前記宇宙飛翔体の前記進行方向を中心軸として前記中心軸まわりに旋回飛行しながら前記進行方向に飛行し、かつ飛来するスペースデブリに向けて噴流を噴射して前記スペースデブリの飛来軌道を変化させるデブリ軌道修正用ノズルを備えるデブリ除去システム。
(39)前記旋回飛翔体が、前記中心軸に向けてデブリ軌道修正用ノズルから前記噴流を噴射する上記(38)に記載のデブリ除去システム。
(40)軌道修正用演算部を更に備え、前記軌道修正用演算部は、飛来する前記スペースデブリの位置、飛来方向および飛来速度を含むデブリ条件に基づいて、前記飛来軌道の変化後の前記スペースデブリの飛来位置および飛来時刻が、当該飛来時刻における前記宇宙飛翔体の前記エアブレーキ構造体の通過位置と一致するように、前記デブリ軌道修正用ノズルから噴射する前記噴流の噴射時期または噴射量の少なくとも一方を決定する上記(39)に記載のデブリ除去システム。
(41)前記中心軸まわりにそれぞれ旋回飛行する複数機の前記旋回飛翔体を有するデブリ除去システムであって、前記軌道修正用演算部は、前記デブリ条件に基づいて、前記複数機のうち、前記デブリ軌道修正用ノズルから前記噴流を噴射する前記旋回飛翔体を決定する上記(40)に記載のデブリ除去システム。
(42)前記中心軸まわりにそれぞれ旋回飛行する複数機の前記旋回飛翔体を有するデブリ除去システムであって、複数機の前記旋回飛翔体同士がケーブルで互いに連結されている上記(38)から(41)のいずれか一つに記載のデブリ除去システム。
(43)前記中心軸まわりにそれぞれ旋回飛行する複数機の前記旋回飛翔体を有するデブリ除去システムであって、複数機の前記旋回飛翔体がそれぞれ前記宇宙飛翔体とケーブルで連結されている上記(38)から(41)のいずれか一つに記載のデブリ除去システム。
(44)前記中心軸まわりにそれぞれ旋回飛行する複数機の前記旋回飛翔体を有するデブリ除去システムであって、複数機の前記旋回飛翔体が、前記宇宙飛翔体の前記進行方向の前方に螺旋状または複数段の環状に配置されて隊列飛行する上記(38)から(43)のいずれか一つに記載のデブリ除去システム。
(45)第一の前記旋回飛翔体の旋回半径が、第一の前記旋回飛翔体よりも前記宇宙飛翔体のより前方を旋回飛行する第二の前記旋回飛翔体の旋回半径よりも小さいことを特徴とする上記(44)に記載のデブリ除去システム。
(46)複数機の隊列飛行する旋回飛翔体を有し、前記旋回飛翔体が、所定の中心軸まわりに旋回飛行しながら前記中心軸に沿って飛行し、かつ飛来するスペースデブリに向けて噴流を噴射して前記スペースデブリの飛来軌道を変化させるデブリ軌道修正用ノズルを備えるデブリ除去システム。
(47)前記デブリ軌道修正用ノズルが、地球と当該デブリ軌道修正用ノズルとの間に位置する前記スペースデブリに対して、地球に向けて前記噴流を噴射する上記(46)に記載のデブリ除去システム。