JP2019069546A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い撥水性と耐摩耗性を両立する。【解決手段】基材表面に規則的に配列された複数の突起部3の長手方向に垂直な断面における突起部断面において、突起部間距離をP、突起部高さをH、底部からの1μm上部での溝幅をM、及び突起部の頂点4から3μm底辺側に離れ、かつ底辺と平行な仮想線が、突起部断面の輪郭線によって切り取られる長さをTとするとき、14μm≦M≦90μm、0.2H/P≦1.2あり、かつ1μm≦T≦11mであるものである。これにより、凹凸形状に付着した汚れを容易に拭取ることが可能となり、高い撥水性を維持することができる。【選択図】図3
Description
本発明は、基材表面に備えた微細な凹凸形状によって撥液性を発現する成形体に関するものであり、特に、付着した汚れの拭取り性低下を抑制するための凹凸形状に関するものである。
従来、成形体の表面に撥液性の機能を発現させるために、表面に微細な凹凸形状を形成させる方法が知られている。
ここで撥液性とは、基材表面上に接した液滴が基材表面から反発する特性であり、反発する力が大きいほど、基材表面と液滴との接触角が大きくなり、撥液性が高いとされている。
接触角とは、図1に示す通り、基材表面に液滴が付着した状態において、基材の接触面と液滴との界面によってつくられる角度である。液滴の接触角が90度を超えていくほど撥液性が高くなり、液滴が付着しにくい表面となる。
基材表面を微細な凹凸形状とすることによる撥液性発現の基本原理は、凹形状内に空気が捕捉されて空気層が形成されることによる。
液滴と凹凸部とのマクロな界面は、液面と凹部上の空気との界面、液面と凸部上の固体との界面から構成される。カッシーとバクスターの理論では、液滴の接触角の大きさは、固体との界面の面積と、空気との界面の面積との割合に相関があり、空気との界面の面積比が大きくなれば接触角も大きくなる。この現象は、空気は完全に疎水性の物質であって、空気中に浮かんだ液滴は、球形になることからも確からしさが推察できる。
従来技術では、表面を凹凸形状とすることで、接触角を120度から150度程度まで高めることが可能であった。
特許文献1には、表面の撥水性が150度を超える凹凸形状が開示されている。表面に平均粒径10nm〜5000nmの粒状シリカ化合物を敷き詰めることによって、凹凸形状を形成させるものである。
また、撥液性表面に付着した汚れを容易に取り除くという実使用上の観点から、凹凸形状の基材表面の樹脂にフッ素系成分を含有させて形成するものも提案されている(特許文献2)。この技術では、包装容器の最内層に適用することによって、内容物を残留させることなく、きれいに取り出すことができるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、凹凸形状の間隔が数十ナノメートルと狭く、かつ凸部の配置がランダムに形成されているため、凹部に入り込んだ汚れを物理的
に掻き取ることはできない。仮に、布巾等の拭取り用具を用いて強制的に拭取りを行ったとしても、表面の微粒子が摩擦によって簡単に剥離し、撥水性が著しく低下することになる。
に掻き取ることはできない。仮に、布巾等の拭取り用具を用いて強制的に拭取りを行ったとしても、表面の微粒子が摩擦によって簡単に剥離し、撥水性が著しく低下することになる。
また、特許文献2に記載された技術では、凹凸形状の寸法がマイクロメートルであるものの、想定用途が使い切りの消耗品を目的とするものであり、繰り返し使用される物品や耐久消費財として使用することは意図されていない。したがって、繰り返し使用や耐久消費財として使用した場合の課題、例えば、成形体の表面に汚れが付着した場合の清浄性の復旧や、拭取り清掃、あるいは耐久性等に対する記載はない。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高い撥液性、特に水の接触角で110度以上の撥水性を付与して汚れの付着を抑え、かつ、付着した汚れの拭取り性を向上し得る成形体を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明の成形体は、隣接する突起部間の距離をP、隣接する前記突起部間の溝の底部から頂点までの突起部高さをH、前記底部から所定寸法上方位置における溝幅をM、及び前記突起部の頂点から所定寸法下方位置における底部と平行な仮想線が、突起部断面の輪郭線によって切り取る先端幅をTとするとき、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μmとしたものである。
溝幅Mの寸法を規定することによって、溝に入り込んだ付着汚れを物理的に掻き取ることができ、突起部高さHと突起部間距離Pとの比であるH/Pの値(以下アスペクト比)と、先端幅Tの寸法を適正値に規定することによって、高い撥液性を確保することができる。
本発明の成形体は、凹凸形状に付着した汚れを容易に拭取りことが可能となり、高い撥液性を維持することができる。
本開示の一態様は、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記配列された突起部の長手方向に垂直な断面における突起部において、隣接する突起部間の距離をP、隣接する前記突起部間の溝の底部から頂点までの突起部高さをH、前記底部から所定寸法上方位置における溝幅をM、及び前記突起部の頂点から所定寸法下方位置における底部と平行な仮想線が、突起部断面の輪郭線によって切り取る先端幅をTと
するとき、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μmとするものである。
するとき、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μmとするものである。
本態様によれば、溝幅を一定範囲内で大きくすることで拭取り性を改善し、アスペクト比を一定範囲内で大きく、かつ先端幅を一定範囲内で小さくすることで、高い撥液性を得ることができる。
上記態様において、突起部の頂点部は円弧形状であり、円弧の半径をRとするとき、円弧の半径Rが0μm<R≦6μmとしてもよい。
本態様によれば、溝の拭取り性を向上させることができ、さらに高い撥液性を得ることができる。
上記態様において、突起部表面における液体の接触角が、120度以上かつ130度未満であってもよい。
本態様によれば、平面では付与できない撥液性を得ることができ、製品表面に凹凸形状を形成させたときに、防汚性の効果を得ることができ、かつ、製品に付着した汚れを容易に拭取ることができるため、長期間、製品性能を維持することができる。
上記態様において、溝幅Mが30μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦8μmとしてもよい。
本態様によれば、溝幅を一定範囲内で大きくすることで拭取り性を改善し、アスペクト比を一定範囲内で大きく、かつ先端幅を一定範囲内で小さくすることで、さらに高い撥水性を得ることができる。
本態様によれば、溝の拭取り性を向上させることができ、さらに高い撥液性を得ることができる。
上記態様において、円弧の半径Rが、0μm<R≦4μmとしてもよい。
本態様によれば、溝の拭取り性を向上させることができ、さらに高い撥液性を得ることができる。
上記態様において、突起部表面における液体の接触角が、130度以上かつ140度未満としてもよい。
本態様によれば、平面では付与できない高い撥液性を得ることができ、製品表面に凹凸形状を形成させたときに、高い防汚性の効果を得ることができ、かつ、製品に付着した汚れを容易に拭取ることができるため、長期間、製品性能を維持させることができる。
上記態様において、溝幅Mが30μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦6μmとしてもよい。
本態様によれば、溝幅を一定範囲内で大きくすることで拭取り性を改善し、アスペクト比を一定範囲内で大きく、かつ先端幅を一定範囲内でさらに小さくすることで、著しく高い撥水性を得ることができる。
上記態様において、円弧の半径Rが0μm<R≦2μmとしてもよい。
本態様によれば、溝の拭取り性を向上させることができ、著しく撥液性を得ることができる。
上記態様において、成形体の突起部表面における液体の接触角が、140度以上としてもよい。
本態様によれば、平面では付与できない高い撥液性を得ることができ、製品表面に形成した凹凸形状により液体の水切れ性の効果を得ることができる。また、製品に付着した汚れを容易に拭取ることができるため、長期間、高い製品性能を維持させることができる。
上記態様において、突起部高さHが12μm≦H≦35μmとしてもよい。
本態様によれば、突起部高さが一定以上となるため、空気層の保持が可能となって撥水性を確保でき、一方で突起部高さが一定以下となるため、物理的な拭取り性の確保を達成することができる。
上記態様において、溝幅Mを計測する底部からの上方位置が1μmとしてもよい。
本態様によれば、堆積した汚れが目視で容易に判別できる基準を定めることで、目視による拭取り性を確保するための溝幅寸法を決定することが可能となる。
上記態様において、先端幅Tを計測する突起部の頂点からの下方位置が3μmとしてもよい。
本態様によれば、液滴の凹部への沈み込みを考慮することができ、撥水性を確保するための面積比の設計寸法を適切に決定することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
実施の形態1における成形体について、図2〜図6を用いて説明する。
実施の形態1における成形体について、図2〜図6を用いて説明する。
図2は成形体の断面模式図、図3は成形体の突起部の断面模式図である。
図2において、成形体1の基材表面2に、規則的に平行に配列された複数個の突起部3が配置されている。隣接する突起部3間(凹部)には、溝が形成されている。
成形体1は、撥液性が求められる外装部品やフィルムを想定しているが、これに限定されるものではない。
成形体1の基材の材質としては、耐久的に形状を維持できるものであれば良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、環状オレフィンなどの樹脂類、ガラス類、又は銅やステンレスなどの金属類等、特に指定するものではない。成形体1の基材の材質は、求められる外観品位、透明性、機械物性、及びコスト等を考慮して自由に選択できる。
また、求められる機械特性、熱特性、及び撥液性を付与するための無機や有機の添加剤
を含んでいてもよい。例えば、撥水剤、摺動性向上剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、フィラー、補強材、繊維、又は顔料などであり、それらを複数種含有していてもよい。
を含んでいてもよい。例えば、撥水剤、摺動性向上剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、フィラー、補強材、繊維、又は顔料などであり、それらを複数種含有していてもよい。
成形体1は、凹凸表面と基材表面2が一体構造であっても良いが、製造方法や求められる撥液性に合わせて選定されるものであり、別の素材を組み合わせてもよい。
凹凸形状の溝に対して垂直に切断した断面寸法について、図3、図4を用いて説明する。
隣接する突起部3の頂点4間の距離をP、溝の底部から頂点4までの突起部高さをH、溝の底部から所定寸法上方位置、本実施の形態では、1μm上方位置における溝幅をM、突起部3の頂点4から所定寸法下方位置、本実施の形態では、3μm下方位置における底部側に下がった位置で、かつ底部と平行な仮想線によって切り取る先端幅をTとする。
また、図4に示すように、突起部3の頂点4の形状を円弧で近似した場合、円弧の半径をRとする。
図6(a)、(b)に示すように、底部が曲面に形成された形状の場合、溝幅を正確に特定できないため、便宜上の措置として、溝幅Mを底部から1μm上方位置における幅寸法に設定している。
一方、先端幅Tを突起部3の頂点4から3μm下方位置における長さに設定しているのは、液滴が自重によって突起部3に沈み込み、液滴と固体平面と空気との三相界面の位置が頂点4から所定寸法下方位置、本実施の形態では、液体として、水を用いるため、約3μm下方位置になることに由来する。
突起部3の頂点4から約3μmの先端は、液滴中に入り込むため、頂点4先端の形状(先端が尖っているか、或いは、平坦であるか等)は、撥液性に大きな影響を与えず、撥液性は、頂点4の先端幅、すなわち液滴と固体との界面面積に大きく影響する。したがって、頂点4から3μm下部を基準とし、先端幅(界面面積と正の相関)を規定した。
これらの寸法規定は、精度の高い理想的な形状を前提としているが、微視的において平滑面や曲面でなくてもよく、性能に影響を与えない程度の表面粗さや表面のうねり等は許容内とされるものとする。
また、突起部間距離P、突起部高さH、溝幅M、先端幅Tの寸法規定は、成形体1のどの断面部であっても一定であることが望ましいが、製造上避けられないヒケ、ソリ等による寸法のばらつきは許容内とされるものとする。
突起部3は、成形体1の一端から対向する他端までに渡って設けられていることが望ましい。しかし、突起部3は、成形体1の基材表面2の平面において、長手方向が短手方向に対して十分に長い長方形であればよい。例えば、図3(b)に示すように、突起部3の仮想線を通る仮想平面における断面形状(平面形状)が、長方形であればよい。
ここで、突起部3の平面形状は、全て同一形状であっても、なくても良く、特に、長手方向においては、撥液性能が求められる基材表面の領域面の形状に応じて自由に設計できる。
また、突起部3の平面形状は、長手方向がほぼ直線からなっていることが望ましいが、製造上避けられない程度のばらつきは、許容されるものとする。短手方向の直線度については、性能には影響するものではなく、特に限定するものではない。
突起部3は、成形体1の基材表面2の全域に配置されている必要はなく、撥液性を求められる箇所にのみ限定的に配置されていてもよい。
基材表面2に微細な突起部3を形成する製造方法としては、後述するように、目的とする凹凸形状の反転構造を備えた金型(モールド)を用いて、基材表面2に凹凸形状を転写させる方法がある。このような方法では、突起部3の形成後に、密着したモールドと成形体1とを分離する(離型する)際の分離しやすさ(離型姓)が課題となる。しかし、突起部3の平面形状が長方形であれば、突起部3の高さHが高い場合であっても、突起部3の側面に沿って、モールドが容易に外れる。つまり、溝構造とすることで離型性が向上することになる。
次に、成形体1の製造方法について説明する。
成形体1の基材表面2に凹凸形状を設ける製造方法は、特に限定されないが、規定した寸法で規則的に凹凸を配列させる方法として、転写方式が挙げられる。転写方式には、射出成形、熱プレス成形、ナノインプリント技術を利用した熱インプリント加工、光インプリント加工などがある。
射出成形や熱プレス成形等により成形体1の表面に凹凸を一体化して付与する方法や、インプリントにより基材とは別部材からなるフィルムに凹凸を付与しておき、凹凸フィルムを基材に貼付することにより成形体1とすることも可能である。
射出成形による製造方法とは、予め内表面に凹凸形状が施された型(モールド)に溶融樹脂を流し込んで、冷却し、モールド表面の凹凸形状を反転転写するものである。
熱プレス成形による製造方法では、モールドと樹脂とを加熱し、モールドを樹脂に押し当てることによって表面の凹凸形状を樹脂に転写するものである。特に、モールドが円柱形状のもので、円柱が回転しながら転写するものをエンボスロール加工という。
熱インプリント加工とは、基材にポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂を塗布し、ガラス転移温度以上に昇温してモールドを押し付けて形状を転写させるものである。光インプリント加工とは、基材に光硬化性樹脂を塗布し、モールドを押し付けてUV照射することによって樹脂を硬化させ、形状を転写させるものである。
熱インプリント加工は、熱可塑性樹脂の選択性が広いという特長があるが、昇温および降温に時間を要するため、スループットが上がらないという問題がある。一方、光インプリント加工は、光硬化性樹脂の選択性の問題があるものの、一般に粘度が低いために転写性が良く、また紫外線を照射して硬化するためにスループットが高いという特長がある。
ここで、モールドは、ダイヤモンド切削などの機械加工や、レーザー加工、エッチング法、リソグラフィ法等の特殊加工によっても作製することができる。
以上のように構成された本実施の形態の成形体1について、以下その作用を説明する。
撥液性について、表面に突起部3を施すことで、基材表面と液滴との界面に多くの空気を含ませることができる。空気は、完全に疎水性の物質であることから、液滴は撥液性を
示すことになる。突起部3間の溝(凹部)に多くの空気を含ませるためには、溝幅Mを拡げる方法がある。
示すことになる。突起部3間の溝(凹部)に多くの空気を含ませるためには、溝幅Mを拡げる方法がある。
しかしながら、溝幅Mを一定以上に大きくすると、液滴が溝に落ち込み、固体との接触面積が増加することになって撥液性は低下する。
一方、溝幅Mを狭くすると、凹部に空気を保持することができ、また、接触面積の増加も抑えられるため、撥液性は高く維持することができる。
しかしながら、溝幅Mを狭くすると、溝に入り込んだ付着汚れを物理的に掻き出すことが困難となる。ここで、物理的な掻き出す手段としては、一般家庭で使われるお掃除用具を想定している。例えば、雑巾、布巾、ハンカチ、タオル、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、トイレットペーパー等の繊維を原料とした拭き掃除製品である。
本出願人は、種々実験を繰り返し、鋭意検討を重ねた結果、溝幅Mを比較的大きな所定の範囲内で規定し、かつ、先端幅Tを比較的小さな所定の範囲内で規定することで、拭取りのし易さと撥液性性能とを両立可能であることを見出した。すなわち、溝幅Mを大きくすることで、溝に入り込んだ汚れを掻き出すことができ、一方、先端幅Tを小さくすることで、液滴との接触面積を小さくして撥液性を高めることができる。
以上のように、溝幅と突起部3の先端幅Tの寸法を規定することによって、高い撥液性を付与し、かつ拭取り性を向上させることが可能となる。
また、突起部3の先端部にさらに高い滑り性を付与するために、突起部3がコート層に覆われていてもよい(図示せず)。
コート層に用いられるコーティング剤は、表面自由エネルギーを制御するために塗布される。コーティング剤の材料については、特に限定されるものではなく、フッ素系、シリコーン系、ポリシラン系、アルキル系、アクリル系、又はシリカ系等を用いることができる。特に、摺動性を向上させるコーティング剤成分の官能基としてフッ化炭素基、シリコーン基、又は炭化水素基等を有するものを用いることができる。
フッ素系コーティング剤として、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基等を含むもの、また、フッ素系シラン化合物や、膜強度を向上させるためにシロキサン結合を有していてもよい。フルオロエーテル基を含むことにより、さらに摩擦抵抗を低減することが可能である。
シリコーン系コーティング剤として、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖にメチル基やフェニル基を有するものを用いてもよい。変性基を含んでいてもよい。
また、アルキルポリシラン、フッ化アルキルポリシラン等のポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系、その他汎用的なコーティング剤を用いることができる。
コーティング剤を塗布する際、基材との密着性を向上させるため、例えばシリカ層や有機層等を形成するようなプライマーを用いてもよく、また前処理として基材にコロナ処理やプラズマ処理等の放電処理を行ってもよい。
コーティング剤の塗布方法は、ドライ、ウェット等、一般的に知られている方法で塗布可能である。
以上のように、汚れの原因となる液滴、求められる撥液性や耐久性、外観に合わせて、自由に選択することができる。
なお、本実施の形態に記載の寸法は、測定方法として、形状測定用のレーザー顕微鏡、及び走査型電子顕微鏡を用いて実測を行っている。測定による誤差は±0.1μm以内である。
以下、本実施の形態に係る突起部3間の距離P、突起部3の高さH、溝幅M、先端幅Tの寸法範囲の適正値について、実験によって導き出された結果について説明する。
(実験方法)
成形体1は、種々の寸法の凹凸形状を有する形状に形成し、射出成形によって作製した。
成形体1は、種々の寸法の凹凸形状を有する形状に形成し、射出成形によって作製した。
初めに、所望の寸法の凹凸形状を転写させるための金型を作製した。所望の寸法のダイヤモンドバイトを作製し、公知の切削加工によって真鍮製の平板に溝を形成させ、その上にニッケルメッキを施して金型とした。
次に、上記の金型を射出成形機のキャビティー側に設置した。樹脂は、ポリプロピレンを使用するが、これに限らない。ただし、同等の表面張力(または表面自由エネルギー)を有していることが望ましい。磨耗特性に影響する樹脂の硬さについては、ポリプロピレン程度の硬さが好ましく、デュロメーター硬さ(Dタイプ)では、60から80程度である。
適正な金型温度、成形条件の下、射出成形を実施し、70×70mm、厚み2mmのプロピレン製の平板を得て、図5(a)、(b)、(c)、図6(a)、(b)の実験サンプルとした。なお、成形条件(特に金型温度)を調整することによって、金型に対する転写性を変化させ、凹凸形状の寸法の種類を増やす操作を行った。
以上のように得られた凹凸形状の表面や断面をレーザー顕微鏡、又は走査型電子顕微鏡によって観察し、形状寸法を実測した結果を表1〜3に示す。
次に、作製した成形体1を用いた評価方法について説明する。
(評価方法)
撥液性は、水滴に対する接触角を測定し、その値により判定した。
撥液性は、水滴に対する接触角を測定し、その値により判定した。
接触角の測定には、協和界面科学株式会社の接触角計DM−501型を用い、液体として5μlの蒸留水を使用した。
撥液性の評価は、接触角について、120度以上130度未満、130度以上140度未満、140度以上150度程度、のそれぞれについて満たしていれば、該当欄に「○」を記入した。
拭取り性は、凹凸表面に模擬汚れを付着させて、拭取り用具で物理的に拭取ることができるか否かにより判定した。模擬汚れとしては、目視判定しやすいよう、カーボンブラックと油を混合したものを用いた。拭取り用具は、繊維径が数μm〜数十μmの市販のティッシュペー(例えば、商品名エリエール)を使用した。
拭取り性の評価手順としては、表面上に100mgの模擬汚れをのせて、凹部に入り込
ませるように全面に伸ばし、次に、四つ折りにしたティッシュペーパーによって、溝方向に拭取る。ティッシュペーパーが汚れた場合は、都度交換する。汚れの状態がこれ以上変化しないところまで継続する。
ませるように全面に伸ばし、次に、四つ折りにしたティッシュペーパーによって、溝方向に拭取る。ティッシュペーパーが汚れた場合は、都度交換する。汚れの状態がこれ以上変化しないところまで継続する。
拭取り性の評価は、目視評価によって、拭取れる、もしくは残る場合でも、ごく薄く残る程度であれば「○」、汚れは残るが、拭取り前よりも明らかに汚れが薄くなっている場合は「△」、拭取れない、もしくは拭取れても、汚れ残りが目立つ場合は「×」とした。
以下、実験結果について説明する。
(結果1)
図5(a)、(b)に示すような凹凸形状であって、突起部3の先端が尖っている場合の実験結果を表1に示す。
図5(a)、(b)に示すような凹凸形状であって、突起部3の先端が尖っている場合の実験結果を表1に示す。
実験結果が示すように、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rが1μm未満と小さいときは、溝幅Mが12〜90μm、アスペクト比H/Pが0.2〜1.2の範囲内で、120度以上130度未満の撥液性を得ることができる。これは、先端幅Tが1.0〜3.8μmと狭く、水滴との接触面積が小さいためと考えられる。
しかしながら、溝幅Mが100μmのとき(No.1−5)は、先端幅Tが1.2μmと狭くても、120度の撥液性を得ることができない。溝幅Mが広がっているために、水滴が突起部3間の溝に落ち込んで空気層が減少し、突起部3側面との接触面積が増加するためと推測される。
一方、溝幅Mが12μmのとき(No.1−1)は、拭取り性が「×」であった。溝幅Mが狭すぎたために、入り込んだ汚れを掻き出すことができなかったためと推測される。また、溝幅Mが14μmで、突起部高さHが12μm(No.1−2)、35μm(No.1−3)のときは、拭取り性は「△」であった。突起部3の高さが障壁となって掻き出し難くなったためと推測される。
しかしながら、溝幅Mが14〜100μmであれば、程度の差はあるものの模擬汚れを拭取ることが可能であった。汚れを掻き出すための十分な幅が確保されていたためと推測される。
以上より、溝幅Mは、14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pは、0.2≦H/P≦1.2であり、かつ、突起部3の先端幅Tは、1.0μm≦T≦3.8μmのとき、
120度以上130度未満の撥液性と、汚れの拭取り性を両立することができる。
120度以上130度未満の撥液性と、汚れの拭取り性を両立することができる。
(結果2)
図5(b)、(c)、図6(b)に示すような凹凸形状であって、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rの寸法が、1μmより大きい場合の実験結果を表2に示す。
図5(b)、(c)、図6(b)に示すような凹凸形状であって、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rの寸法が、1μmより大きい場合の実験結果を表2に示す。
実験結果が示すように、溝幅Mが14〜90μm、アスペクト比H/Pが0.2〜1.2、先端幅Tが4.4〜11.0μmの範囲内で、120度以上130度未満の撥水性を得ることができる。先端幅を狭く規定することによって、水滴との接触面積を小さくしたためと推測される。
しかしながら、先端幅Tが11.7μm(No.2−17)、11.9μm(No.2−18)のときは、120度以上の撥水性を得ることはできない。これは、先端が太くなりすぎてしまい、表面との接触面積が増加するためと推測される。
一方、溝幅Mが14〜90μmの範囲内では、「△」はあるももの、汚れを拭取ることは可能であった。突起部3の先端が尖っていないため、拭取り抵抗が小さくなって、拭取り操作を容易にし、汚れを掻き出すための溝幅が確保されていたためと推測される。
以上より、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが4.4μm≦T≦11.0μmのときは、120度以上130度未満の撥液性と、拭取り性とを両立することができる。
上記の結果1及び2より、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0
.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μm(または、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rが0μm<R≦6μm)のとき、120度以上130度未満の撥液性と、汚れの拭取り性を両立することが可能となる。
.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μm(または、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rが0μm<R≦6μm)のとき、120度以上130度未満の撥液性と、汚れの拭取り性を両立することが可能となる。
次に、表1及び表2に示す結果によって導かれた撥液性が130度以上140度未満である場合の寸法範囲について考察する。
溝幅Mが14μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1.0μm≦T≦8.0μm(または、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rが0μm<R≦4μm)のとき、130度以上140度未満の撥液性と、拭取り性とを両立することができる。溝幅Mが58μmのとき(No.2−10、2−13)は、撥液性として130度を得ることができない。先端幅Tは、8.0μm、7.7μmと狭いものの、先端の半径Rが大きくなっているため、頂点4における水滴との接触面積が増加したためと推測される。
最後に、表1及び表2に示す結果によって導かれた撥液性が140度以上150度未満である場合の寸法範囲について考察する。
溝幅Mが14μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1.0μm≦T≦6.0μm(または、突起部3の頂点4に近似する円弧の半径Rが0μm<R≦2μm)のときは、140度以上の高い撥液性と、汚れの拭取り性を両立することができる。溝幅Mが58μmのとき(No.2−3、2−6)は、撥液性として140度を得ることができない。先端幅Tは、それぞれ6.0μm、4.5μmと狭いものの、溝幅Mが大きくなっているため、水滴の落ち込みが発生し、突起部3の側面での水滴との接触面積が増加したためと推測される。
以上のように、本発明にかかる成形体は、凹凸平面に付着した汚れの拭取り性を向上させることができるので、包装材の内面や、液切り性が求められる注ぎ口やキャップ部品、掃除機、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、温水洗浄便座、電子レンジ、炊飯器などの家電製品を含む耐久消費財、または、自動車や内装および外装の建材に適用できる。
1 成形体
2 基材表面
3 突起部
4 頂点
2 基材表面
3 突起部
4 頂点
Claims (12)
- 基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記配列された突起部の長手方向に垂直な断面における突起部において、隣接する突起部間の距離をP、隣接する前記突起部間の溝の底部から頂点までの突起部高さをH、前記底部から所定寸法上方位置における溝幅をM、及び前記突起部の頂点から所定寸法下方位置における底部と平行な仮想線が、突起部断面の輪郭線によって切り取る先端幅をTとするとき、溝幅Mが14μm≦M≦90μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦11μmであることを特徴とする成形体。
- 前記突起部の頂点部は円弧形状であり、前記円弧の半径をRとするとき、前記円弧の半径Rが0μm<R≦6μmである請求項1に記載の成形体。
- 前記突起部表面における液体の接触角が、120度以上かつ130度未満である請求項1または2に記載の成形体。
- 溝幅Mが30μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦8μmとした請求項1に記載の成形体。
- 前記円弧の半径Rが、0μm<R≦4μmである請求項4に記載の成形体。
- 前記突起部表面における液体の接触角が、130度以上かつ140度未満である請求項4または5に記載の成形体。
- 溝幅Mが30μm≦M≦55μm、アスペクト比H/Pが0.2≦H/P≦1.2であり、かつ先端幅Tが1μm≦T≦6μmとした請求項1に記載の成形体。
- 前記円弧の半径Rが0μm<R≦2μmである請求項7に記載の成形体。
- 前記突起部表面における液体の接触角が、140度以上である請求項7または8に記載の成形体。
- 前記突起部高さHが、12μm≦H≦35μmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の成形体。
- 溝幅Mを計測する前記底部からの上方位置が1μmである請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形体。
- 先端幅Tを計測する前記突起部の頂部からの下方位置が3μmである請求項1〜11のいずれか1項に記載の成形体。
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JP2017196511A Pending JP2019069546A (ja) | 2017-01-05 | 2017-10-10 | 成形体 |
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- 2017-10-10 JP JP2017196511A patent/JP2019069546A/ja active Pending
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