JP2017047626A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】量産性や耐久性を維持した上で、転落除去性を向上させることができる成形体の提供。【解決手段】基材表面に複数の溝2を有する成形体であって、溝2は、長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲し、基材表面に付着した液滴の転落角は、少なくとも、液滴が転落する方向を長手方向と平行とするより、液滴が転落する方向を前記長手方向に対して垂直としたほうが、大きい成形体とすることで、基材表面に付着した液滴が、表面に付与された複数の溝の湾曲部において、毛細管力によって液滴が溝の形状に沿って集約され、液滴が速やかに転落することから、防汚性を求められる部材表面や各種包装容器の内面への適用が可能となる。【選択図】図2
Description
本発明は、基材表面に備えた溝構造の形状と配置によって、付着した液滴に対して高い転落性を与える成形体に関するものである。
従来、部品の基材表面に付着した水滴や油滴を速やかに転落除去させる表面処理を施すことにより、防汚をはじめ、耐指紋、防曇、着氷防止といった効果が生まれることが知られている。
また、近年では、シャンプーやリンス、液体洗剤、ソースやマヨネーズといった調味料、歯磨き粉、レトルト食品の容器や包装体の内面や注ぎ口に同様の表面処理を施すことで、液切れ性を向上させることにより、充填物の使いきりを容易にする効果や注ぎ口を衛生的に保つ効果が着目され、研究が進められている。
付着液滴の転落除去の容易さの指標として、転落角が挙げられる。転落角とは、図1に記す通り、液滴が載った基材表面を、水平な位置から除々に傾斜させていき、液滴が滑り始める角度のことである。転落角が0度に近づくほど、液滴は基材から除去されやすいことを表し、転落角が90度に近づく程、液滴は基材表面上に付着し易く除去されにくいことを表す。
転落角を小さくする技術として、表面エネルギーの小さい材料と微細な凹凸構造の組合せにより、高い撥液性を備えたコート剤が提案されている(例えば、特許文献1または2)。
特許文献1には、アルコール、アルコキシシラン、パーフルオロアルキルシラン、シリカ微粒子、アルコキシシランの加水分解反応を促進する触媒、および水を含むコーティング組成物をコーティングして得られる撥水・撥油性コーティング物品が記載されている。その物品の表面における二乗平均粗さ値は150nm以上であり、水に対する接触角は150度以上、油に対する接触角が150度以上、水滴に対する転落角は10度以下である。
高い撥水・撥油性をもつ材料にシリカ微粒子を配合して特定値以上の表面粗さを持たせることで、特に水に対する転落性を向上させることができるとされている。
特許文献2には、金属酸化物粒子と、その表面に形成されたポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層からなる、金属酸化物複合粒子を含有した撥水・撥油性塗膜が記載されている。金属酸化物複合粒子のフッ素含有量(重量%)を金属酸化物複合粒子の表面積で除した値は0.025〜0.180である。
金属酸化物複合粒子の被覆層に高い撥水・撥油性を持たせるとともに、前記金属酸化物粒子を積層させて塗膜表面に微細な凹凸を構成することで、より高い性能を発揮できるとされている。
しかしながら、前記従来の特許文献1および特許文献2に記載の撥液技術は、コート剤に含まれる微粒子の積層もしくはコート層をもつ微粒子の積層によって凹凸構造を形成しているため、触手や充填物の接触によって簡単に磨耗し、微粒子が剥離してしまうことが知られている。これにより性能が著しく劣化してしまうという課題や、容器や包装体の内容物に微粒子が付着してしまうという課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、コート剤を塗布しない、もしくは耐熱性や耐久性に優れた汎用な防汚コート剤とを併用するだけで、高い転落除去性を有する成形体を提供するものである。
前記従来の課題を解決するために、本発明の成形体は、基材表面に複数の溝を有する成形体であって、溝は、長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲し、基材表面に付着した液滴の転落角は、少なくとも、液滴が転落する方向を長手方向と平行とするより、液滴が転落する方向を前記長手方向に対して垂直としたほうが、大きい成形体である。
これによれば、比較的磨耗等の外力に対する耐久性が比較的高いμmオーダーの凹凸構造を基材に付与するだけよく、基材表面に液滴が到達した際に、表面に付与された複数の溝の湾曲部において、毛細管力によって液滴が溝の形状に沿って集約され、溝の長手方向に垂直な方向へ液滴の速やかな転落を促進される。
本発明の成形体は、基材表面に付着した液滴が、基材表面に付与した溝の湾曲部において速やかに転落除去され、従来の転落性の高いコート剤等の性能を著しく向上させることができるだけでなく、μmオーダーの凹凸構造を有しているため、成形性や耐久性に優れており、防汚性と耐久性とを求められる部材表面や各種包装容器の内面への適用が可能となる。
第1の発明の成形体は、基材表面に複数の溝を有する成形体であって、溝は、長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲し、基材表面に付着した液滴の転落角は少なくとも、液滴が転落する方向を長手方向と平行とするより、液滴が転落する方向を長手方向に対して垂直としたほうが、大きい成形体である。
基材表面に液滴が到達した際に、表面に付与された複数の溝の湾曲部において、毛細管力によって液滴が溝の形状に沿って集約され、溝の長手方向に垂直な方向へ液滴の速やかな転落が促進される。
第2の発明は、特に第1の発明の成形体において、溝は、長手方向に、所定幅かつ所定周期で複数回、湾曲しているものである。
これにより、基材表面上のいずれの箇所に液滴が付着しても、液滴の転落性を高めることができる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明の成形体において、溝の深さが、1μm以上50μm以下であるものである。
これにより、複数の溝を含む基材表面の凹凸構造の表面粗さが大きくなり過ぎて転落を阻害することを防ぐことができる。さらに、溝に隣接する凸部の破損の心配が少なく、耐久性が優れた成形体を提供できる。
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか1つの発明の成形体において、基材表面に、防汚コート層を備えるものである。
防汚コート層によって成形体の表面張力を制御することにより、基材の材質によらず安定して高い転落除去性を発揮することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における成形体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3は、成形体表面の拡大平面図、図4は成形体表面における溝の拡大断面図、図5は成形体表面に付着した液滴の模式図である。
本発明の実施の形態1における成形体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3は、成形体表面の拡大平面図、図4は成形体表面における溝の拡大断面図、図5は成形体表面に付着した液滴の模式図である。
図2において、成形体1の基材表面に、溝2を備えた凹凸表面3が形成されている。
成形体1は、液滴除去性を求められる箇所に用いられる部品構造体もしくはフィルムを想定しているが、これに限定されるものではない。
成形体1の基材の材質としては、耐久的に形状を維持できるものであれば良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、環状オレフィンなどの樹脂類やガラス類、銅・ステンレスなどの金属類等、特に指定するものではなく、求められる外観品位、透明性、機械物性、コスト等を考慮して自由に選択できる。
また、求められる機械特性や撥液性を付与するための添加剤を含んでいてもよい。
成形体1と凹凸表面3は一体構造であっても良いが、製造方法や求められる液滴除去性に合わせて選定されるものであり、別の素材であってもよい。成形体1と凹凸表面3とが、別の素材である場合には、両者が密着性良く接着されていることが望ましい。
凹凸表面3に垂直な方向から見た、溝2の形状について説明する。
図3に示すように、成形体1は、凹凸表面3に複数の溝2を有し、溝2は長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲している。
具体的には、図3(a)に示すように、成形体1は、複数の溝2のそれぞれに、1つの湾曲部5aを備えている。湾曲部5aは、複数の溝2のそれぞれは、溝2の長手方向において、隣接する溝2が備える湾曲部5aに対応する位置に設けられている。図3(a)に示すように、湾曲部5aは、所定幅と所定長さを備えている。所定幅は、溝2のうち長手方向に直線状となる部分から湾曲部5aの頂点までの距離である。また、所定長さは、溝2の長手方向における湾曲部5aの長さである。
または、図3(b)に示すように、成形体1は、複数の溝2のそれぞれに、所定の周期で湾曲する複数の湾曲部5bを備えている。複数の湾曲部5bのそれぞれは、溝2の長手方向に垂直な方向に交互に突出している。また、複数の湾曲部5bのそれぞれは、溝2の長手方向において、隣接する溝2が備える湾曲部5bに対応する位置に設けられている。
図3(b)に示すように、湾曲部5bは、所定幅および所定周期で湾曲している。所定幅および所定周期は、溝2の湾曲の度合を示すものである。所定幅は、溝2の長手方向に垂直な方向の一方に突出する湾曲部5bの頂点から、他方に突出する湾曲部5bの頂点までの、溝2の長手方向に垂直な方向における距離である。所定周期は、長手方向に垂直な方向の一方に突出する湾曲部5bの頂点と、当該湾曲部5bと同じ方向に突出する湾曲部5bのうち隣接する湾曲部5bの頂点までの、溝2の長手方向における距離である。
なお、複数の湾曲部5bは全て同一形状であることが望ましいが、全て同一形状でなくてもよい。また、所定幅は、略同一であることが望ましいが、全て同一でなくてもよい。所定周期も、略同一であることが望ましいが、全て同一でなくてもよい。
次に、溝2の長手方向に垂直な断面における形状について説明する。
図4に示すように、1つの溝2は、隣接する2つの凸部6によって形成される。溝2を含む凹凸表面3の断面(溝2の長手方向に垂直な断面)は、凸部6は先端面が基材に水平な平坦面である台形体であり、溝2の底面は基材に水平な平坦面であるもの(図4(a)参照)、凸部6は先端が尖った三角形体であり、溝2の底部も尖ったもの(図4(b)参照)、凸部6は先端が尖った略三角形体であり、溝2は底面が下方に凸な円弧状であるもの(図4(c)参照)、凸部6は先端面の端部が丸みを帯びた台形体であり、溝2の底面は基材に水平な平坦面であるもの(図4(d)参照)などがあり、特に限定するものではない。
また、凹凸表面3は、微視的に平滑面でなくてもよく、性能に影響を与えない程度の表面粗さやキズは許容されるものとする。
溝2の深さ、つまり、凸部6の高さHは、溝2の底面または底部のから、凸部6の先端面または先端までの距離である。凸部6の高さHは、全ての凸部6で一定値であることが望ましい。ただし、製造上避けられない程度のバラつきは許容されるものとする。
凹凸表面3は、成形体1の基材表面全域に配置されている必要はなく、転落性を求められる箇所にのみ限定的に配置されていてよい。
次に、成形体1の製造方法について説明する。
成形体1の表面に凹凸表面3を設ける製造方法は、特に限定されないが、規定した寸法で規則的に凹凸を配列させる方法として、転写方式が挙げられる。転写方式には、射出成形、熱プレス成形、ナノインプリント技術を利用した熱インプリント加工、光インプリント加工などがある。
射出成形とは、予め内表面に凹凸形状が施された型(モールド)の容器(コア、キャビティ)の中に、溶融樹脂を流し込んで、冷却し、モールド表面の凹凸形状を転写するものである。
熱プレス成形とは、モールドと樹脂とを加熱し、モールドを樹脂に押し当てることによって表面の凹凸形状を樹脂に転写するものである。特に、モールドが円柱形状のもで、円柱が回転しながら転写するものをエンボスロール加工という。
熱インプリント加工とは、基材にポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂を塗布し、ガラス転移温度以上に昇温してモールドを押し付けて形状を転写させるものであり、光インプリント加工とは、基材に光硬化性樹脂を塗布し、モールドを押し付けてUV照射することによって樹脂を硬化させ、形状を転写させるものである。
熱インプリント加工は、熱可塑性樹脂の選択性が広いという特長があるが、昇温および降温に時間を要するためスループットが上がらないという問題がある。一方、光インプリント加工は、光硬化性樹脂の選択性の問題があるものの、一般に粘度が低いために転写性が良く、また紫外線を照射して硬化するためにスループットが高いという特長がある。
ここでモールドは、ダイヤモンド切削などの機械加工や、レーザー加工、エッチング法、リソグラフィ法の特殊加工などにより作製することもできる。
上述の成形体1について、その作用、効果を説明する。 成形体1は、基材表面に複数の溝2を有する成形体であって、溝2は、長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲しており、少なくとも、基材表面に付着する液滴が転落する方向を、溝2の長手方向と平行とするより、溝2の長手方向に対して垂直としたほうが、液滴の転落角が大きいものである。
また、望ましくは、成形体1は、基材表面に複数の溝2を有する成形体であって、溝2は、長手方向に垂直な方向に所定幅かつ所定周期で複数回、湾曲しており、少なくとも、基材表面に付着する液滴が転落する方向を、溝2の長手方向と平行とするより、溝2の長手方向に対して垂直としたほうが、液滴の転落角が大きいものである。
つまり、成形体1は、液滴を転落させたい方向を、溝2の長手方向に垂直な方向と略一致するように設置することが、液滴の転落角を大きくする上で望ましい。
ただし、検討の結果、長手方向に対して傾斜させる角度は、正確に90度でなくてもよく、湾曲の所定幅と所定周期によるものの、およそ80〜100度の範囲内であっても、長手方向と平行に設置した場合よりも、高い転落効果を得ることが可能となる。
図5に示すように、基材表面に付着した液滴は、表面に付与された複数の溝2の湾曲部5aにおいて、毛細管力によって液滴が溝2の形状に沿って集約される。これにより、溝2の長手方向と垂直な方向、つまり、湾曲部5aの突出する方向に、液滴幅に対する液量が多くなることによって、重力により転落が促進され、液滴除去性を高めることが可能となる。
通常、基材表面に複数の溝2が刻まれている場合、基材に付着した液滴は溝2の長手方向に沿って転落する傾向にある。これは、溝2の長手方向であれば、液滴の転落線上における凹凸が少なく、液滴の転落を阻害する因子が少ないためである。
しかし、溝2の長手方向に垂直な方向に湾曲していることにより、湾曲部5aによって促される転落促進の効果の方が溝の長手方向への転落効果より高くなる。これにより、溝2の長手方向に対して垂直に液滴を転落させることにより、より高い効果が得られる。
なお、図5においては、複数の溝2のそれぞれに、1つの湾曲部5aを備えている成形体について説明したが、複数の溝2のそれぞれに、所定の周期で湾曲する複数の湾曲部5bを備えている成形体であっても、同様な作用、効果が得られる。さらに、複数の溝2のそれぞれに、所定の周期で湾曲する複数の湾曲部5bを備えている成形体では、基材表面上の溝2の長手方向における、いずれの箇所に液滴が付着しても、液滴の転落性を高めることができる。
図4における凸部の高さHは、1μm以上50μm以下である。
凹凸構造により、液滴の転落を促進することができるものの、凹凸構造の表面粗さ、特に高さが大きくなるに従い、液滴の転落を阻害する力も大きくなる。溝2に隣接する凸部の高さが50μm以下であれば、凹凸構造による液滴の転落を阻害する効果よりも凹凸構造による転落促進の効果が上回ることが確認されている。
また、前記凸部の高さが1μm未満であれば、液滴に対して凹凸構造が小さくなりすぎて、転落促進の効果がなくなる。
なお、本発明に記載の寸法は、測定装置として、形状測定用のレーザー顕微鏡もしくは走査型顕微鏡を用い、誤差範囲として±20%の寸法のずれは許容することとした。
(変形例)
図6は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
(変形例)
図6は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
この変形例が実施の形態1と異なる点は、防汚コート層4の有無である。このため、実施の形態1と同一部品については同一符号を付して説明を省略する。
図6に記すように、凹凸表面3が防汚コート層4に覆われている。
防汚コート層4に用いられるコーティング剤は、凹凸表面3の表面自由エネルギーを制御するために塗布され、その材料については特に限定されるものではなく、フッ素系、シリコーン系、ポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系等を用いることができる。
特に、表面自由エネルギーを低減させる為、コーティング剤成分の官能基としてフッ化炭素基、シリコーン基、炭化水素基等を有するものが用いることができる。
フッ素系コーティング剤として、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基等を含むもの、また、フッ素系シラン化合物や、膜強度を向上させるためにシロキサン結合を有していてもよい。フルオロエーテル基を含むことにより、さらに摩擦抵抗を低減することが可能である。
シリコーン系コーティング剤として、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖にメチル基やフェニル基を有するものを用いてもよい。変性基を含んでいてもよい。
また、アルキルポリシラン、フッ化アルキルポリシラン等のポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系、その他汎用的なコーティング剤を用いることができる。
コーティング剤を塗布する際、基材との密着性を向上させるため、例えばシリカ層を形成するようなプライマーを用いてもよく、また前処理として基材にコロナ処理やプラズマ処理等の放電処理を行ってもよい。
また、コーティング層の膜厚は、好ましくは凸部6の高さHの30%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下がよい。
コーティング剤の膜厚が大きければ基材の凹凸構造の特性が発揮できないためである。
また、膜厚評価が困難な場合、例えば基材には非含有で、コーティング剤に含まれている元素の分析を行うことにより、コーティング剤の有無を確認することも可能である。
さらに、成形体1の性能を阻害しないのであれば、シリカ等の無機微粒子を成形体1表面に付着させ、防汚コート層4の一部とすることも可能である。このとき、無機バインダー・有機バインダーに関わらず、バインダー成分を用いることも可能である。
コーティング剤の塗布方法は、ドライ、ウェット等、一般的に知られている方法で塗布可能である。
また、防汚コート層4は、成形前の基材にあらかじめ表面自由エネルギーを変更可能な添加剤、例えばフッ素系、シリコーン系等の添加剤を混合しておき、成形後に表面に防汚コート層を形成するものでもよい。
以上のように、汚れの原因となる液滴、求められる耐久性や外観に合わせて、自由に選択することが出来る。
本発明に係る実施例を以下に述べて、より具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
各実施例および比較例において、図2〜4に示した凹凸表面を有する成形体の製造を試みた。
まず、公知のリソグラフィ法により、ニッケル基板の表面に各例の目的とする凹凸表面の反転構造を備えたモールドを作製した。
次に、厚み100μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、前記モールドとニッケル平板とで、モールド表面の凹凸構造がフィルム側となるように挟み、熱プレス機の下側ステージ上に配置した。
続いて、下側ステージをフィルムのガラス転移温度以下の温度に維持しつつ、上側ステージをフィルムのガラス転移温度以上の温度に保ちながらステージを稼動させ、一定時間加圧して転写させる。
最後に、自然放冷後、モールドからフィルムを引き剥がし、各例の成形体であるフィルムを得た。
以上のようにして、凹凸表面を有する成形体を得た。表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、フィルムの熱収縮による寸法のずれを考慮しても、誤差範囲内にてマスターモールドのパターン形状を再現していることが確認された。
次に、全ての実施例および比較例において、凹凸表面に防汚コート層となるコーティングを施した。
コーティング剤は、全ての実施例と比較例において、同じフルオロエーテル基を含むフッ素系コート剤を選定し、また密着性を上げるプレコート剤を併せて用いた。
次に、成形体の凹凸表面における撥液性の評価方法を以下に記す。
評価に先立って、成形体の各計測サンプルには、各計測サンプル間で、帯電性と清浄性を略同一にするための前処理を行った。
この前処理の目的は、転落性に影響する帯電性と清浄性の影響を除去し、凹凸表面による効果を正しく評価するためである。
評価において代表的な指標として、5μLの蒸留水の転落角を選定した。転落角の計測には、協和界面科学株式会社の接触角計CA−DT型を用いた。
転落角については、凹凸表面を垂直にしても液滴が転落しない場合は、90度以上(>90度と表記)とした。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造の溝2の長手方向に垂直な断面において、凸部6は、高さHは12.5μmである、頂角が110度の三角形体である(図4(b)参照)。また、凸部6から溝2を介して隣接する凸部6までの距離(凸部6のピッチ)は、36μmである。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造の溝2の長手方向に垂直な断面において、凸部6は、高さHは12.5μmである、頂角が110度の三角形体である(図4(b)参照)。また、凸部6から溝2を介して隣接する凸部6までの距離(凸部6のピッチ)は、36μmである。
溝2は図3(b)に示すとおり配列した。つまり、溝2を、所定幅が40μm、所定周期が600μmである湾曲部5bを備えるものとして設計し、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝2の長手方向に水滴を転落させたときの転落角は48度であった。
(実施例2)
実施例1にて得た成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝の長手方向と垂直の方向に水滴を転落させたときの転落角は30度であった。
(比較例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造のうち、溝2の長手方向に垂直な断面の形状は、実施例1もしくは実施例2と同一である。一方、本比較例の溝は、湾曲部を備えることなく、直線状である。
(実施例2)
実施例1にて得た成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝の長手方向と垂直の方向に水滴を転落させたときの転落角は30度であった。
(比較例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造のうち、溝2の長手方向に垂直な断面の形状は、実施例1もしくは実施例2と同一である。一方、本比較例の溝は、湾曲部を備えることなく、直線状である。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝の長手方向に水滴を転落させたときの転落角は>90度であった。
(比較例2)
比較例1にて得た成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝の長手方向と垂直の方向に水滴を転落させたときの転落角は>90度であった。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体、つまり、凹凸構造を備えることのない成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
(比較例2)
比較例1にて得た成形体の基材表面に位置する凹凸表面において、溝の長手方向と垂直の方向に水滴を転落させたときの転落角は>90度であった。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体、つまり、凹凸構造を備えることのない成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面における水滴の転落角は>90度であった。
以上のように、基材表面に位置する溝が、溝の長手方向に湾曲する成形体において、表面が平滑面、もしくは溝が湾曲部を持たない場合と比較して、転落角が小さくなり、高い転落効果を発揮することができる。特に、溝の長手方向に液滴を転落させる場合と比較して、溝の長手方向と垂直な方向に液滴を転落させた方が、湾曲部において液滴の転落効果が更に高まる。
以上のように、本発明にかかる表面に施された溝構造によって液滴の転落性を有する成形体は、製造性および耐久性に優れ、転落コート剤を塗布した場合においても、コート剤の効果を著しく高められることから、包装材の内面や、液切り性が求められる注ぎ口やキャップ部品、掃除機や冷蔵庫、エアコン、洗濯機、温水洗浄便座、電子レンジ、炊飯器などの家電製品を含む耐久消費財、または、自動車や内装および外装の建材に適用可能である。
1 成形体
2 溝
3 凹凸表面
4 防汚コート層
5a、5b 湾曲部
6 凸部
2 溝
3 凹凸表面
4 防汚コート層
5a、5b 湾曲部
6 凸部
Claims (4)
- 基材表面に複数の溝を有する成形体であって、前記溝は、長手方向に垂直な方向に所定幅で少なくとも1回は湾曲し、前記基材表面に付着した液滴の転落角は、少なくとも、前記液滴が転落する方向を前記長手方向と平行とするより、前記液滴が転落する方向を前記長手方向に対して垂直としたほうが、大きい成形体。
- 前記溝は、前記長手方向に、所定幅かつ所定周期で複数回、湾曲する請求項1に記載の成形体。
- 前記溝の深さは、1μm以上50μm以下である請求項1または2に記載の成形体。
- 前記基材表面に、防汚コート層を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
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JP2015173367A Pending JP2017047626A (ja) | 2015-09-03 | 2015-09-03 | 成形体 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2017047626A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017149822A (ja) * | 2016-02-23 | 2017-08-31 | 大日本印刷株式会社 | 樹脂フィルム、積層体および包装材料 |
WO2018128092A1 (ja) * | 2017-01-05 | 2018-07-12 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 成形体 |
JP2018168331A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-01 | 大日本印刷株式会社 | 樹脂フィルム、積層体および包装材料 |
CN110911171A (zh) * | 2019-11-26 | 2020-03-24 | 东华大学 | 一种非对称微芯片超级电容器及其制备方法 |
-
2015
- 2015-09-03 JP JP2015173367A patent/JP2017047626A/ja active Pending
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JP2017149822A (ja) * | 2016-02-23 | 2017-08-31 | 大日本印刷株式会社 | 樹脂フィルム、積層体および包装材料 |
WO2018128092A1 (ja) * | 2017-01-05 | 2018-07-12 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 成形体 |
JP2018168331A (ja) * | 2017-03-30 | 2018-11-01 | 大日本印刷株式会社 | 樹脂フィルム、積層体および包装材料 |
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