JP2019065848A - 燃料噴射弁および燃料噴射弁の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コアブースト構造を採用しつつ燃料噴射量のばらつき抑制を図った燃料噴射弁を提供する。【解決手段】燃料噴射弁は、燃料を噴射する噴孔を開閉するニードル20(弁体)、固定コア、可動コア30、第1バネ部材、スリーブ40(固定部材)および第2バネ部材SP2を備える。可動コア30は、固定コアに吸引されて反噴孔側へ所定量移動した時点でニードル20に当接して、ニードル20を開弁作動させる。第1バネ部材は、ニードル20の開弁作動に伴い弾性変形して、ニードル20を閉弁作動させる第1弾性力を発揮する。第2バネ部材SP2は、ニードル20に固定されているスリーブ40と可動コア30の間に挟まれて弾性変形し、可動コア30を反噴孔側へ付勢する第2弾性力を発揮する。そして、ニードル20は、スリーブ40が圧入される圧入部23を有し、スリーブ40は、圧入部23に圧入されることでニードル20に固定されている。【選択図】図9

Description

この明細書における開示は、燃料を噴射する燃料噴射弁、およびその製造方法に関する。
従来の燃料噴射弁は、コイルへの通電に伴い磁気吸引力を生じさせる固定コアと、固定コアに吸引されて移動する可動コアと、移動する可動コアにより開弁作動して噴孔から燃料を噴射させる弁体と、を備える。そして近年では、燃料の高圧化に伴い弁体へ付勢する閉弁力が大きくなる傾向にあり、そうすると、大きい閉弁力に対抗して開弁させるには、大きい開弁力が必要となってくる。
この対策として、特許文献1には、以下に説明するコアブースト構造が開示されている。すなわち、弁体を開弁作動させるにあたり、先ずは弁体に係合していない状態で可動コアの移動を開始させ、その後、可動コアが所定量移動した時点で、可動コアを弁体に当接させて開弁作動を開始させる構造である。
このようなコアブースト構造によれば、通電開始直後には、可動コアは未だ弁体に係合していないので、燃圧の力を受けていない可動コアは、初期の小さな起磁力で可動コアの移動速度を迅速に立ち上げることができる。そして、移動速度が十分に速くなった時点、つまり可動コアが所定量移動した時点で、可動コアが弁体に当接して開弁作動を開始させるので、磁気吸引力に加えて、可動コアの衝突力を利用して開弁させることができる。よって、開弁に必要な磁気吸引力の増大を抑制しつつ、高圧の燃料であっても弁体を開弁作動させることができる。
特開2013−104340号公報
しかしながら、上記コアブースト構造では、可動コアは、通電を開始してから弁体に当接するまでの移動と、その後の弁体に当接しながらの移動との2段階で移動することになる。そのため、通電開始から開弁開始までの時間バラツキが、1回の開弁で噴射される燃料の量のバラツキに直結する、といった課題が新たに生じる。さらに通電開始から開弁するまでの時間バラツキを抑制した上で、通電終了から閉弁するまでの時間バラツキを抑制することが重要である。
開示される1つの目的は、コアブースト構造を採用しつつ燃料噴射量のばらつき抑制を図った燃料噴射弁を提供することである。
開示される他の1つの目的は、コアブースト構造を採用しつつ燃料噴射量のばらつき抑制を図った、燃料噴射弁の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するため、開示された第1態様は、
燃料を噴射する噴孔(11a)を開閉する弁体(20)と、
コイル(17)への通電に伴い磁気吸引力を生じさせる固定コア(13)と、
固定コアに吸引されて反噴孔側へ所定量移動した時点で弁体に当接して、弁体を開弁作動させる可動コア(30)と、
弁体の開弁作動に伴い弾性変形して、弁体を閉弁作動させる第1弾性力を発揮する第1バネ部材(SP1)と、
弁体に固定された固定部材(40)と、
固定部材と可動コアの間に挟まれて弾性変形し、可動コアを反噴孔側へ付勢する第2弾性力を発揮する第2バネ部材(SP2)と、
を備え、
弁体は、固定部材が反噴孔側へ圧入される圧入部(23)を有し、
固定部材は、圧入部に圧入されることで弁体に固定されている燃料噴射弁とされる。
要するに、この第1態様に係る燃料噴射弁は、可動コアが反噴孔側へ所定量移動した時点で弁体に当接して開弁作動させるコアブースト構造であり、可動コアを反噴孔側へ付勢する第2バネ部材を支持する固定部材を備える。そして、その固定部材を弁体に圧入して固定する構造であり、その圧入方向は第2バネ部材の付勢方向である。そのため、圧入の進行に伴い増大していく第2弾性力を計測しながら圧入量を調節して固定することが可能になる。よって、圧入固定完了時の第2弾性力を、第2バネ部材の目標セット荷重にすることを高精度で実現できる。
上記セット荷重とは、第2バネ部材が燃料噴射弁に組み付けられた状態において、第2バネ部材の弾性変形により発揮される第2弾性力のことである。セット荷重の大きさは弁体の開閉弁時期に影響するので、セット荷重を精度良く目標値に設定することは、燃料噴射量のばらつき抑制に寄与する。そして、固定部材を弁体に圧入固定する上記第1態様に反して、固定部材を弁体に溶接して固定する構造を採用した場合、第2弾性力を計測しながら溶接箇所を調節することができなくなる。そのため、第2バネ部材の機差ばらつきや弁体長さばらつき等の個体間ばらつきに起因して、さらには溶接による熱ひずみに起因して、セット荷重がばらついてしまう。
これに対し上記第1態様では、固定部材を弁体に圧入固定する構造のため、先述したようにセット荷重を精度良く目標値に設定できる。よって、コアブースト構造を採用しつつ、燃料噴射量のばらつき抑制を図ることができる。
開示された第2態様は、
燃料を噴射する噴孔(11a)を開閉する弁体(20)を、弾性変形して発揮される第1バネ部材(SP1)による第1弾性力で閉弁作動させ、磁気吸引力により移動する可動コア(30)で開弁作動させる構造、かつ、
弁体に固定された固定部材(40)と可動コアの間に挟まれて弾性変形する第2バネ部材(SP2)による第2弾性力で、可動コアを反噴孔側へ付勢させる構造の燃料噴射弁(1)の製造方法であって、
磁気吸引力により所定量移動した時点での可動コアに当接して開弁作動を開始する弁体に形成される圧入部(23)に、固定部材(40)を圧入させる圧入工程(S12、S15)と、
圧入の途中で、可動コアを移動不可にした状態で第2弾性力を計測する荷重計測工程(S13)と、
を含み、
圧入工程では、計測の結果に基づき圧入の量を調整して圧入を完了させる、燃料噴射弁の製造方法とされる。
要するに、この第2態様に係る製造方法は、可動コアを反噴孔側へ付勢する第2バネ部材を支持する固定部材を備えた、コアブースト構造の燃料噴射弁を製造対象とする。そして、弁体の圧入部へ固定部材を圧入させる途中で、可動コアの移動を規制した状態で第2弾性力を計測し、その計測の結果に基づき圧入の量を調整して圧入を完了させる。よって、圧入固定完了時の第2弾性力を、第2バネ部材の目標セット荷重にすることを高精度で実現できる。
上述した通り、セット荷重の大きさは弁体の開閉弁時期に影響するので、セット荷重を精度良く目標値に設定することは、燃料噴射量のばらつき抑制に寄与する。そのため、上述したようにセット荷重を精度良く目標値に設定できる第2態様によれば、コアブースト構造を採用しつつ、燃料噴射量のばらつき抑制を図ることができる。
尚、上記括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の
一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
第1実施形態に係る燃料噴射弁の断面図。 図1の噴孔部分における拡大図。 図1の可動コア部分における拡大図。 第1実施形態に係る燃料噴射弁の作動を示す模式図であり、図中の(a)は閉弁状態を示し、(b)は磁気吸引力で移動する可動コアが弁体に衝突した状態を示し、(c)は磁気吸引力でさらに移動する可動コアがガイド部材に衝突した状態を示す。 第1実施形態に係る燃料噴射弁の作動を示すタイムチャートであり、図中の(a)は駆動パルスの変化を示し、(b)は駆動電流の変化を示し、(c)は磁気吸引力の変化を示し、(d)は可動部の挙動を示す。 第1実施形態に係る可動部の組付作業手順を示すフローチャート。 第1実施形態に係る可動部の分解図。 図6の組付作業において、カップをニードルへ押し付ける作業の状態を示す可動部の断面図。 図6の1回目の圧入が完了した状態を示す可動部の断面図。 図9の斜視図。 第1実施形態に係るニードルおよびスリーブの応力−ひずみ線図。 第1実施形態において、可動コアに形成された連通溝の形状を示す断面図。 図12に示す可動コアを反噴孔側から見た上面図。 図13のXIV−XIV線に沿う断面図。 図12に対する変形例B1を示す断面図。 図15に示す可動コアを反噴孔側から見た上面図。 図12に対する変形例B2を示す断面図。 図17に示す可動コアを反噴孔側から見た上面図。 図12に対する変形例B3を示す断面図。 図19に示す可動コアを反噴孔側から見た上面図。 図12に対する変形例B4を示す断面図。 図12に対する変形例B5を示す断面図。 図12に対する変形例B6を示す断面図。 第1実施形態において、ニードルに形成された供給流路の形状を示す断面図。 図24に示すニードルを反噴孔側から見た上面図。 図25のXXVI−XXVI線に沿う断面図。 図26に対する変形例C1を示す断面図。 図26に対する変形例C2を示す断面図。 図26に対する変形例C3を示す断面図。 図25に対する変形例C4を示す、ニードルを反噴孔側から見た上面図。 図25に対する変形例C5を示す、ニードルを反噴孔側から見た上面図。 図31の断面図であり、(a)はXXXIIa−XXXIIa線に沿う断面図、(b)はXXXIIb−XXXIIb線に沿う断面図。 図24に対する変形例C6を示す断面図。 図24に対する変形例C7を示す断面図。 図34に示すプレートを噴孔側から見た上面図。 第1実施形態において、ガイド部材に形成された窪み面の形状を示す、フルリフト時での断面図。 第1実施形態において、ガイド部材に形成された窪み面の形状を示す、閉弁時での断面図。 第1実施形態において、可動コアとホルダとの隙間を示す、閉弁時での断面図。 図38に示すニードルを反噴孔側から見た上面図。 図38に対する変形例E1を示す断面図。 図38に対する変形例E2を示す断面図。 図38に対する変形例E3を示す断面図。 第2実施形態を示す燃料噴射弁の断面図。 第3実施形態を示す燃料噴射弁の断面図。
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第1実施形態)
図1に示す燃料噴射弁1は、車両に搭載された点火着火式内燃機関のシリンダヘッドまたはシリンダブロックに取り付けられている。車載燃料タンクに貯留されているガソリン燃料は、図示しない燃料ポンプにより加圧されて燃料噴射弁1へ供給され、供給された高圧燃料は、燃料噴射弁1に形成された噴孔11aから内燃機関の燃焼室へ直接噴射される。
燃料噴射弁1は、噴孔ボデー11、本体ボデー12、固定コア13、非磁性部材14、コイル17、支持部材18、第1バネ部材SP1、第2バネ部材SP2、ニードル20、可動コア30、スリーブ40、カップ50およびガイド部材60等を備える。噴孔ボデー11、本体ボデー12、固定コア13、支持部材18、ニードル20、可動コア30、スリーブ40、カップ50およびガイド部材60は金属製である。
図2に示すように、噴孔ボデー11は、燃料を噴射する複数の噴孔11aを有する。噴孔ボデー11の内部にはニードル20が位置しており、ニードル20の外周面と噴孔ボデー11の内周面との間で、高圧燃料を噴孔11aへ流通させる流路11bが形成されている。噴孔ボデー11の内周面には、ニードル20に形成された弁体側シート20sが離着座するボデー側シート11sが形成されている。弁体側シート20sおよびボデー側シート11sは、ニードル20の軸線C周りに環状に延びる形状である。ニードル20がボデー側シート11sに離着座することで、流路11bが開閉されて噴孔11aが開閉されることとなる。
本体ボデー12および非磁性部材14は円筒形状である。本体ボデー12のうち、本体ボデー12に対して噴孔11aへ近づく方向の側(噴孔側)の円筒端部は、噴孔ボデー11に溶接して固定されている。本体ボデー12のうち、本体ボデー12に対して噴孔11aから離れる方向の側(反噴孔側)の円筒端部は、非磁性部材14の円筒端部に溶接して固定されている。非磁性部材14のうち反噴孔側の円筒端部は、固定コア13に溶接して固定されている。
ナット部材15は、本体ボデー12の係止部12cに係止された状態で、固定コア13のネジ部13Nに締結されている。この締結により生じる軸力は、ナット部材15、本体ボデー12、非磁性部材14および固定コア13に対し、軸線C方向(図1の上下方向)に互いに押し付け合う面圧を生じさせている。なお、このような面圧をネジ締結で生じさせることに替えて、圧入で生じさせてもよい。
本体ボデー12は、ステンレス等の磁性材で形成され、燃料を噴孔11aへ流通させる流路12bを内部に有する。流路12bには、ニードル20が軸線C方向に移動可能な状態で収容されている。本体ボデー12および非磁性部材14は、燃料が充填される可動室12aを内部に有する「ホルダ」に相当する。可動室12aには、ニードル20、可動コア30、第2バネ部材SP2、スリーブ40およびカップ50を組み付けた組付体である可動部M(図9および図10参照)が、移動可能な状態で収容されている。なお、図9に示す隙間L1aは、閉弁時弁体当接面21bと閉弁力伝達当接面52cとの軸線C方向における隙間の大きさを示す。この隙間L1aの大きさは、図4(a)欄に示すギャップ量L1と同一である。
流路12bは、可動室12aの下流側に連通し、軸線C方向に延びる形状である。流路12bおよび可動室12aの中心線は、本体ボデー12の円筒中心線(軸線C)と一致する。ニードル20のうちの噴孔側部分は、噴孔ボデー11の内壁面11cに摺動支持され、ニードル20のうちの反噴孔側部分は、カップ50の内壁面51b(図8および図12参照)に摺動支持されている。このようにニードル20の上流端部と下流端部の2箇所が摺動支持されることにより、ニードル20の径方向への移動が制限され、本体ボデー12の軸線Cに対するニードル20の傾倒が制限される。
ニードル20は、噴孔11aを開閉する「弁体」に相当し、ステンレス等の磁性材で形成され、軸線C方向に延びる形状である。ニードル20の下流側端面には、先述した弁体側シート20sが形成されている。ニードル20が軸線C方向の下流側へ移動(閉弁作動)すると、弁体側シート20sがボデー側シート11sに着座して、流路11bおよび噴孔11aが閉弁される。ニードル20が軸線C方向の上流側へ移動(開弁作動)すると、弁体側シート20sがボデー側シート11sから離座して、流路11bおよび噴孔11aが開弁される。
ニードル20は、燃料を噴孔11aへ流通させる内部通路20aおよび横穴20bを有する(図3参照)。横穴20bは、周方向に複数形成されている。そして、複数の横穴20bはそれぞれ、周方向に等間隔となるように形成されている。内部通路20aは、ニードル20の軸線C方向に延びる形状である。内部通路20aの上流端には流入口が形成され、内部通路20aの下流端には横穴20bが接続されている。横穴20bは、軸線C方向に対して交差する方向に延び、可動室12aと連通する。
図7に示す如く、ニードル20は、弁体側シート20sの反対側(上端側)から下端側へ向けて順に、当接部21、コア摺動部22、圧入部23、流出部24、第1大径部25、第1小径部26、第2大径部27、第2小径部28および噴孔側支持部29を有する。当接部21は、カップ50の閉弁力伝達当接面52cに当接する閉弁時弁体当接面21bを有する。
当接部21にはカップ50が摺動可能な状態で組み付けられ、当接部21の外周面はカップ50の内周面と摺動する。コア摺動部22には可動コア30が摺動可能な状態で組み付けられ、コア摺動部22の外周面は可動コア30の内周面と摺動する。圧入部23にはスリーブ40が圧入固定されている。流出部24には横穴20bが形成されている。
当接部21の外径D1はコア摺動部22の外径D2より大きく設定され、コア摺動部22の外径D2は圧入部23の外径D3より大きく設定され、圧入部23の外径D3は流出部24の外径より大きく設定されている。また、コア摺動部22と圧入部23との連結部分22a、および圧入部23と流出部24との連結部23aは、テーパ形状に形成されている。なお、圧入前の状態でのスリーブ40の内周面41aの直径は、圧入部23の外径D3より小さく設定されており、圧入固定が可能となっている。
第1大径部25および第2大径部27の外径は、第1小径部26および第2小径部28の外径より大きい。第1小径部26および第2小径部28を有することで軽量化が図られている。第1大径部25および第2大径部27は、ニードル20を切削加工する際の支持部として機能する。第2小径部28は、噴孔側支持部29を切削加工する際に切削工具が干渉しないように逃げ部として機能する。また、噴孔側支持部29は、噴孔ボデー11の内壁面11cに摺動支持される。
カップ50は、円板形状の円板部52および円筒形状の円筒部51を有する。円板部52は、軸線C方向に貫通する貫通穴52aを有する。円板部52の反噴孔側の面は、第1バネ部材SP1と当接するバネ当接面52bとして機能する。円板部52の噴孔側の面は、ニードル20と当接して第1弾性力(閉弁弾性力)を伝達する閉弁力伝達当接面52cとして機能する。円板部52は、第1バネ部材SP1とニードル20に当接して第1弾性力をニードル20へ伝達する「弁体伝達部」に相当する。円筒部51は、円板部52の外周端から噴孔側へ延びる円筒形状である。円筒部51の噴孔側端面は、可動コア30と当接するコア当接端面51aとして機能する。円筒部51の内壁面51bは、ニードル20の当接部21の外周面と摺動する。
固定コア13は、ステンレス等の磁性材で形成され、燃料を噴孔11aへ流通させる流路13aを内部に有する。流路13aは、ニードル20の内部に形成されている内部通路20a(図3参照)および可動室12aの上流側に連通し、軸線C方向に延びる形状である。流路13aには、ガイド部材60、第1バネ部材SP1および支持部材18が収容されている。
支持部材18は円筒形状であり、固定コア13の内壁面に圧入固定されている。第1バネ部材SP1は、支持部材18の下流側に配置されたコイルスプリングであり、軸線C方向に弾性変形する。第1バネ部材SP1の上流側端面は支持部材18に支持され、第1バネ部材SP1の下流側端面はカップ50に支持されている。第1バネ部材SP1の弾性変形により生じた力(第1弾性力)により、カップ50は下流側に付勢される。支持部材18の軸線C方向における圧入量を調整することで、カップ50を付勢する弾性力の大きさ(第1セット荷重)が調整されている。
図3に示すように、ガイド部材60は、ステンレス等の磁性材で形成された円筒形状であり、固定コア13に形成された拡径部13cに圧入固定されている。拡径部13cは、流路13aを径方向に拡大した形状である。ガイド部材60は、円板形状の円板部62および円筒形状の円筒部61を有する。円板部62は、軸線C方向に貫通する貫通穴62aを有する。円板部62の反噴孔側の面は、拡径部13cの内壁面に当接する。円筒部61は、円板部62の外周端から噴孔側へ延びる円筒形状である。円筒部61の噴孔側端面は、可動コア30と当接するストッパ当接端面61aとして機能する。円筒部51の内壁面は、カップ50に係る円筒部51の外周面51dと摺動する摺動面61bを形成する(図12参照)。
要するに、ガイド部材60は、軸線C方向に移動するカップ50の外周面を摺動させるガイド機能と、軸線C方向に移動する可動コア30に当接して可動コア30の反噴孔側への移動を規制するストッパ機能と、を有する。つまりガイド部材60は、可動コア30に当接して、可動コア30の噴孔11aから離れる方向への移動を規制する「ストッパ部材」に相当する。
固定コア13の外周面には樹脂部材16が設けられている。樹脂部材16はコネクタハウジング16aを有し、コネクタハウジング16aの内部には端子16bが収容されている。端子16bはコイル17と電気接続されている。コネクタハウジング16aには、図示しない外部コネクタが接続され、端子16bを通じてコイル17へ電力が供給される。コイル17は、電気絶縁性を有するボビン17aに巻き回されて円筒形状をなし、固定コア13、非磁性部材14および可動コア30の径方向外側に配置されている。固定コア13、ナット部材15、本体ボデー12および可動コア30は、コイル17への電力供給(通電)に伴い生じる磁束を流す磁気回路を形成する(図3中の点線矢印参照)。
図3に示すように、可動コア30は、固定コア13に対して噴孔側に配置され、軸線C方向に移動可能な状態で可動室12aに収容されている。可動コア30はアウタコア31およびインナコア32を有する。アウタコア31は、ステンレス等の磁性材で形成された円筒形状であり、インナコア32は、磁性を有するステンレス等の非磁性材で形成された円筒形状である。アウタコア31は、インナコア32の外周面に圧入固定されている。
インナコア32の円筒内部にはニードル20が挿入配置されている。インナコア32は、ニードル20に対して軸線Cに摺動可能な状態でニードル20に組み付けられている。インナコア32の内周面とニードル20の外周面との隙間(インナ隙間)は、アウタコア31の外周面と本体ボデー12の内周面との隙間(アウタ隙間)より小さく設定されている。これらの隙間は、インナコア32がニードル20に接触することを許容しつつ、アウタコア31が本体ボデー12に接触しないように設定されている。
インナコア32は、ストッパ部材としてのガイド部材60、カップ50およびニードル20に当接する。そのため、インナコア32には、アウタコア31に比べて高硬度の材質が用いられている。アウタコア31は、固定コア13に対向する可動側コア対向面31cを有し、可動側コア対向面31cと固定コア13との間にはギャップが形成されている。したがって、上述の如くコイル17へ通電して磁束が流れた状態では、上記ギャップが形成されていることにより、固定コア13に吸引される磁気吸引力がアウタコア31に作用する。
スリーブ40は、ニードル20に圧入固定された「固定部材」に相当する。スリーブ40は、貫通穴40a(図7参照)を有する円筒の金属製であり、挿入円筒部41、連結部42および支持部43を有する。挿入円筒部41は円筒形状であり、ニードル20の圧入部23に圧入固定されている。連結部42は、挿入円筒部41を径方向に拡大した円筒形状であり、挿入円筒部41および支持部43を連結する。また、連結部42は、第2バネ部材SP2をガイドして、第2バネ部材SP2の径方向への位置ずれを抑制させる。支持部43は、連結部42の噴孔側端部から径方向外側に延びる環状の鍔形状である。換言すると、支持部43は、連結部42の噴孔側端部から径方向外側に延びる板状であり、かつ、軸線C周りに延びる環状である。支持部43の反噴孔側の面は、第2バネ部材SP2の噴孔側端面を支持する支持面43aとして機能する。
第2バネ部材SP2は、支持部43の反噴孔側に配置されたコイルスプリングであり、軸線C方向に弾性変形する。第2バネ部材SP2の反噴孔側端面は、可動コア30に支持されており、具体的には、アウタコア31に支持されている。第2バネ部材SP2の噴孔側端面は支持部43に支持されている。第2バネ部材SP2の弾性変形により生じた力(第2弾性力)により、アウタコア31は反噴孔側に付勢される。挿入円筒部41の軸線C方向における圧入量を調整することで、閉弁時に可動コア30を付勢する第2弾性力の大きさ(第2セット荷重)が調整されている。なお、第2バネ部材SP2に係る第2セット荷重は、第1バネ部材SP1に係る第1セット荷重より小さい。また、閉弁時に限らず、他の状況で可動コア30を付勢している時の第2弾性力の大きさを、上記圧入量により調整される第2セット荷重としてもよい。
<作動の説明>
次に、燃料噴射弁1の作動について、図4および図5を用いて説明する。
図4中の(a)欄に示すように、コイル17への通電をオフにした状態では、磁気吸引力が生じないので、可動コア30には、開弁側へ付勢される磁気吸引力は作用しない。そして、第1バネ部材SP1による第1弾性力で閉弁側に付勢されたカップ50は、ニードル20の閉弁時弁体当接面21b(図3参照)およびインナコア32に当接して第1弾性力を伝達している。
可動コア30は、カップ50から伝達された第1バネ部材SP1の第1弾性力により閉弁側へ付勢されるとともに、第2バネ部材SP2の第2弾性力により開弁側へ付勢されている。第2弾性力より第1弾性力の方が大きいため、可動コア30はカップ50に押されて噴孔側へ移動(リフトダウン)した状態になる。ニードル20は、カップ50から伝達された第1弾性力により閉弁側へ付勢され、カップ50に押されて噴孔側へ移動(リフトダウン)した状態、つまりボデー側シート11sに着座して閉弁した状態となる。この閉弁状態では、ニードル20の開弁時弁体当接面21a(図3参照)と可動コア30(インナコア32)との間には隙間が形成されており、閉弁状態での隙間の軸線C方向長さをギャップ量L1と呼ぶ。
図4中の(b)欄に示すように、コイル17への通電をオフからオンに切り替えた直後の状態では、開弁側へ付勢される磁気吸引力が可動コア30に作用して、可動コア30が開弁側への移動を開始する。そして、可動コア30がカップ50を押し上げながら移動し、その移動量がギャップ量L1に達すると、ニードル20の開弁時弁体当接面21aにインナコア32が衝突する。この衝突時点では、ガイド部材60とインナコア32との間には隙間が形成されており、この隙間の軸線C方向長さをリフト量L2と呼ぶ。
この衝突時点までの期間には、ニードル20に印加された燃圧による閉弁力が可動コア30にかかっていないので、その分、可動コア30の衝突速度を増大できる。そして、このような衝突力を磁気吸引力に加算して、ニードル20の開弁力として利用するので、開弁に必要な磁気吸引力の増大を抑制しつつ、高圧の燃料であってもニードル20を開弁作動させることができる。
上記衝突の後、可動コア30は磁気吸引力によりさらに移動を続け、衝突後の移動量がリフト量L2に達すると、図4中の(c)欄に示すように、ガイド部材60にインナコア32が衝突して移動停止する。この移動停止時点での、ボデー側シート11sと弁体側シート20sとの軸線C方向における離間距離は、ニードル20のフルリフト量に相当し、先述したリフト量L2と一致する。
図5を用いて上述した作動を詳述すると、先ず、図5の(a)欄に示すようにt1時点で通電オンに切り替えると、コイル17に流れる駆動電流が上昇を開始し((b)欄参照)、その上昇に伴い磁気吸引力も上昇を開始する((c)欄参照)。そして、第1弾性力(閉弁弾性力)から第2弾性力を差し引いた値を実閉弁弾性力F0とした場合、磁気吸引力が実閉弁弾性力F0にまで上昇したt2時点で、可動コア30が開弁側への移動を開始する。なお、駆動電流がピーク値に達する前に、可動コア30は移動を開始する。駆動電流がピーク値に達するまでは、バッテリ電圧を昇圧したブースト電圧がコイル17に印加され、ピーク値に達した以降では、バッテリ電圧がコイル17に印加される。
その後、可動コア30の移動量がギャップ量L1に達したt3時点で、可動コア30がニードル20に衝突してニードル20が開弁作動を開始する((d)欄参照)。これにより、噴孔11aから燃料が噴射される。その後、可動コア30が閉弁弾性力に抗してニードル20をリフトアップさせ、可動コア30がガイド部材60に衝突したt4時点で、ニードル20のリフト量はフルリフト量(リフト量L2)に達する。なお、(d)欄の縦軸に示すゼロ点は、可動コア30とニードル20とのt3時点における衝突位置を示す。
その後、磁気吸引力によりニードル20のフルリフト状態が維持され、燃料噴射が継続される。その後、t5時点で通電オフに切り替えると、駆動電流の低下とともに磁気吸引力も低下する。そして、磁気吸引力が実閉弁弾性力F0に達したt6時点で、可動コア30がカップ50とともに閉弁側へ移動を開始する。ニードル20は、カップ50との間に充填された燃料の圧力に押されて、可動コア30の移動開始と同時にリフトダウン(閉弁作動)を開始する。
その後、ニードル20がリフト量L2の分だけリフトダウンしたt7時点で、弁体側シート20sがボデー側シート11sに着座して、流路11bおよび噴孔11aが閉弁される。その後、可動コア30はカップ50とともに閉弁側への移動を継続し、カップ50がニードル20に当接したt8時点で、カップ50の閉弁側への移動が停止する。その後、可動コア30は、慣性力で閉弁側への移動(慣性移動)をさらに継続した後、第2バネ部材SP2の弾性力により開弁側へ移動(リバウンド)する。その後、可動コア30は、t9時点でカップ50に衝突してカップ50とともに開弁側へ移動(リバウンド)するが、閉弁弾性力により迅速に押し戻されて、図4の(a)欄に示す初期状態に収束する。
したがって、このようなリバウンドが小さく、収束に要する時間が短いほど、噴射終了から初期状態に復帰するまでの時間が短くなる。そのため、内燃機関の1燃焼サイクルあたりに燃料を複数回噴射する多段噴射を実行するにあたり、噴射間のインターバルを短くでき、多段噴射に含まれる噴射回数を多くできる。また、上述の如く収束時間を短くすることで、以下に説明するパーシャルリフト噴射を実行した場合の噴射量を高精度に制御できるようになる。パーシャルリフト噴射とは、開弁作動するニードル20がフルリフト位置に達する前に、コイル17への通電を停止させて閉弁作動を開始させることで、短い開弁時間による微小量の噴射のことである。
<製造方法の説明>
次に、燃料噴射弁1の製造方法について説明する。
この製造方法は、以下に説明する第1セット荷重調整工程、可動部組付工程、溶接工程、締結工程および樹脂モールド工程を含む。
可動部製造工程では、可動コア30、第2バネ部材SP2、スリーブ40およびカップ50をニードル20に組み付けて可動部Mを製造する。後に詳述するように、可動コア30に付勢される第2バネ部材SP2による弾性力が、第2セット荷重の目標値となるように可動部Mは製造される。
次に実行される溶接工程では、先ず、本体ボデー12に噴孔ボデー11を溶接して結合する。次に、本体ボデー12の可動室12aに可動部Mを配置し、その後、支持部材18および第1バネ部材SP1が組み付けられた固定コア13と、可動部Mが配置された本体ボデー12と、非磁性部材14とを溶接して結合する。
次に実行される締結工程では、コイル17が巻回された状態のボビン17aを、ナット部材15と固定コア13の間に配置する。その後、ナット部材15を固定コア13に締結することで、本体ボデー12、非磁性部材14および固定コア13に面圧を生じさせて組み付ける。
次に実行される樹脂モールド工程では、固定コア13の外周面に溶融樹脂を流し込んで固化させることで、コネクタハウジング16aを有する樹脂部材16を樹脂モールド成形する。
その後行われる第1セット荷重調整工程では、先ず、第1バネ部材SP1を固定コア13の流路13aに組み付ける。その後、固定コア13の流路13aに支持部材18を所定位置まで圧入する。圧入に係る所定位置は、第1バネ部材SP1の弾性係数および軸線C方向長さのばらつきや、固定コア13の各部位の寸法ばらつきに応じて決定してもよい。いずれにしても、ニードル20に付勢される第1弾性力が第1セット荷重の目標値となるように、上記所定位置(圧入位置)を設定する。以上の各工程を含む製造方法により、燃料噴射弁1は製造される。
<構成群Aの詳細説明>
次に、本実施形態に係る燃料噴射弁1が備える構成のうち、ニードル20に形成された圧入部23、およびその圧入部23に関連する構成を少なくとも含む構成群Aについて、詳細に説明する。
先述した可動部組付工程は、詳細には図6に示す各工程S10〜S15を含む。先ず工程S10では、図7に示すように、可動コア30、第2バネ部材SP2およびスリーブ40を、弁体側シート20sの側(下端側)からニードル20に挿入する。この工程S10では、図8に示すように、スリーブ40の挿入を、圧入部23の手前の流出部24の位置で停止させておく。
続く工程S11では、ニードル20の当接部21にカップ50を組み付けた状態でニードル20をカップ50へ押し付けて、閉弁力伝達当接面52cを閉弁時弁体当接面21bに当接させる(図8参照)。これにより、ギャップ量L1の分だけ、コア当接端面51aは開弁時弁体当接面21aよりも噴孔側に位置することとなる。
続く工程S12では、スリーブ40を圧入部23へ所定の圧入量だけ仮圧入する。例えば、支持装置J1を用いてカップ50を軸線C方向に支持させつつ、荷重付与装置J2を用いて、スリーブ40の荷重付与面43bへ圧入荷重F2を軸線C方向に付与する。また、仮圧入では、カップ50に可動コア30が当接した状態、かつ、第2バネ部材SP2がスリーブ40および可動コア30に当接した状態になり、第2バネ部材SP2が弾性変形した状態になるまで圧入する。したがって、支持装置J1は、第2バネ部材SP2による第2弾性力に対する反力F1を発揮して支持することとなる。
仮圧入は1回目の圧入であり、その後、後述する工程S15にて2回目の圧入(本圧入)をする。仮圧入での圧入量は、機差ばらつきとは無関係に予め決められた量であり、例えば圧入部23の噴孔側端部から、軸線C方向に所定長さだけ反噴孔側に離れた位置まで仮圧入する。
続く工程S13では、第2バネ部材SP2による第2弾性力、つまり第2セット荷重を計測する。例えば、支持装置J1が第2弾性力で押される力(反力F1)を、図示しない計測装置を用いて計測する。この工程S13では、カップ50をニードル20の上側に位置させた状態、つまり図8の上下方向を示す矢印の向きに可動部Mの向きを設定した状態で計測する。
続く工程S14では、計測された第2セット荷重の目標第2セット荷重に対する不足分を算出し、その不足分に相当する追加圧入量を算出する。例えば、第2バネ部材SP2の弾性係数を予め計測しておき、計測された荷重不足分および弾性係数に基づき追加圧入量を算出すればよい。或いは、第2バネ部材SP2の弾性係数を標準値であるとみなし、計測された荷重不足分および標準値に基づき追加圧入量を算出すればよい。
続く工程S15では、工程S14で算出された追加圧入量の分だけ、スリーブ40を圧入部23へさらに圧入(本圧入)していく。以上により、可動部Mの組み付けが完了する。要するに、圧入の途中で第2セット荷重を計測し、その計測値に応じて本圧入を実行する。そして、以上に説明した各工程が、先述した構成群Aの一例である。
・以上により、本実施形態に係る燃料噴射弁1は、ニードル20(弁体)と、固定コア13と、可動コア30と、第1バネ部材SP1と、スリーブ40(固定部材)と、第2バネ部材SP2と、を備える。可動コア30は、固定コア13に吸引されて反噴孔側へ所定量移動した時点でニードル20に当接してニードル20を開弁作動させる。第1バネ部材SP1は、ニードル20の開弁作動に伴い弾性変形して、ニードル20を閉弁作動させる第1弾性力を発揮する。スリーブ40はニードル20に固定されている。第2バネ部材SP2は、スリーブ40と可動コア30の間に挟まれて弾性変形し、可動コア30を反噴孔側へ付勢する第2弾性力を発揮する。そして、ニードル20は、スリーブ40が反噴孔側へ圧入される圧入部23を有し、スリーブ40は、圧入部23に圧入されることでニードル20に固定されている。
要するに、本実施形態に係る燃料噴射弁1は、可動コア30が反噴孔側へ所定量移動した時点でニードル20に当接して開弁作動させるコアブースト構造であり、可動コア30を反噴孔側へ付勢する第2バネ部材SP2を支持するスリーブ40を備える。そして、そのスリーブ40をニードル20に圧入して固定する構造であり、その圧入方向は第2バネ部材SP2の付勢方向である。そのため、圧入の進行に伴い増大していく第2弾性力を計測しながら圧入量を調節して固定することが可能になる。よって、圧入固定完了時の第2弾性力を、第2バネ部材SP2の目標セット荷重にすることを高精度で実現できる。
上記セット荷重とは、第2バネ部材が燃料噴射弁に組み付けられた状態において、第2バネ部材の弾性変形により発揮される第2弾性力のことである。セット荷重の大きさは弁体の開閉弁時期に影響するので、セット荷重を精度良く目標値に設定することは、燃料噴射量のばらつき抑制に寄与する。そして、固定部材を弁体に圧入固定する本実施形態に反して、固定部材を弁体に溶接して固定する構造を採用した場合、第2弾性力を計測しながら溶接箇所を調節することができなくなる。そのため、第2バネ部材の機差ばらつきや弁体長さばらつき等の個体間ばらつきに起因して、さらには溶接による熱ひずみに起因して、セット荷重がばらついてしまう。
これに対し本実施形態では、固定部材を弁体に圧入固定する構造のため、先述したようにセット荷重を精度良く目標値に設定できる。よって、コアブースト構造を採用しつつ、燃料噴射量のばらつき抑制を図ることができる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、スリーブ40のうち少なくとも圧入部23と接触する部分は、圧入部23と異なる硬度である。例えば、スリーブ40とニードル20とで異なる硬度の金属母材を用いてもよいし、スリーブ40の金属母材に対して熱処理等の表面処理を施して、スリーブ40のうち圧入部23と接触する部分を局部的にスリーブ40より高硬度にしてもよい。
さて、本実施形態に反してスリーブ40と圧入部23が同じ硬度である場合には、計測しながら圧入量を調節するにあたり、圧入を一旦停止させた時に、スリーブ40と圧入部23が凝着することが懸念される。凝着が生じると、圧入を再開する時に要する荷重が大きくなり、圧入の作業性が悪くなる。したがって、異なる硬度である本実施形態によれば、上記凝着の懸念を低減でき、圧入の作業性を向上できる。ニードル20はスリーブ40より高硬度であることが望ましい。スリーブ40は可動コア30より高硬度であることが望ましい。ニードル20の材質の具体例としては、マルテンサイト系のステンレスが挙げられる。スリーブ40の材質の具体例としては、フェライト系のステンレスが挙げられる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、スリーブ40のうち少なくとも圧入部23と接触する部分は、圧入部23よりも低硬度である。
さて、圧入では、圧入対象となる2つの部材のうち少なくとも一方の部材が塑性変形することを要する。低硬度であるほど塑性変形しやすくなり、圧入に要する圧入荷重を軽減できる。この点を鑑みると、ニードル20はボデー側シート11s(弁座)への衝突に耐える硬度を要するので、その硬度よりもスリーブ40を高硬度にして硬度差を出そうとすると、圧入に要する圧入荷重が大きくなることが懸念される。したがって、スリーブ40を圧入部23より低硬度にした本実施形態によれば、上記懸念を抑制して圧入の作業性を向上できる。さらに本実施形態のスリーブ40は、可動コア30と接触しないので、接触を要するインナコア32等に比べて柔らかい材質を採用することができる。
例えば、図11中の実線A1、A2の各々は、引張試験により得られたニードル20およびスリーブ40の応力σひずみL線図を示す。この試験結果に現れているように、スリーブ40が塑性変形を開始する降伏点の応力(降伏応力σ1)はニードル20に比べて低い。ニードル20の場合、降伏応力に達したと同時に試験サンプルが破断している。この試験結果は、スリーブ40を低硬度にすることで降伏応力σ1を低くでき、圧入に要する圧入荷重を低くできることを表している。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、可動コア30がニードル20に対して噴孔側へ最大限に相対移動した場合であっても、スリーブ40および可動コア30は互いに接触することなく離間している。例えば、閉弁後にさらに噴孔側へ可動コア30が移動して、リバウンドが生じることは先述した通りである。そして、このような閉弁後のさらなる可動コア30の移動が生じて、第2バネ部材SP2の線間がゼロになり第2バネ部材SP2の弾性変形量が最大になった状態が、「最大限に相対移動した場合」の具体例として挙げられる。
さて、本実施形態に反してスリーブ40および可動コア30が互いに接触する構造の場合、スリーブ40の圧入固定を強固にする必要が生じるので、圧入代を大きく設定して圧入に伴い生じる塑性変形量を大きくする必要が生じる。したがって、互いに接触しない構造の本実施形態によれば、圧入固定を強固にする必要性を軽減できるので、圧入に要する圧入荷重を低くでき、圧入の作業性を向上できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、スリーブ40は、圧入部23に挿入される円筒形状の挿入円筒部41を有し、挿入円筒部41の内周面41aが全周に亘って、圧入部23の外周面に圧入されている。これによれば、挿入円筒部41に生じる内部応力を全周に亘って分散できるので、内部応力が集中することによるスリーブ40の損傷を抑制できる。
・また、本実施形態に係る燃料噴射弁1の製造方法は、以下の構造の燃料噴射弁1を製造対象とする。すなわち、燃料を噴射する噴孔11aを開閉するニードル20(弁体)を、弾性変形して発揮される第1バネ部材SP1による第1弾性力で閉弁作動させ、磁気吸引力により移動する可動コア30で開弁作動させる構造である。また、ニードル20に固定されたスリーブ40(固定部材)と可動コア30の間に挟まれて弾性変形する第2バネ部材SP2による第2弾性力で、可動コア30を反噴孔側へ付勢させる構造である。上記製造方法は、磁気吸引力により所定量移動した時点での可動コア30に当接して開弁作動を開始するニードル20に形成される圧入部23に、スリーブ40を圧入させるニードル20の圧入部23へスリーブ40(固定部材)を圧入させる工程S12、S15(圧入工程)を含む。加えて、圧入の途中で、可動コア30を移動不能にした状態で第2弾性力を計測する工程S13(荷重計測工程)を含む。圧入工程では、計測の結果に基づき圧入量を調整して圧入を完了させる。
要するに、本実施形態に係る製造方法は、可動コア30を反噴孔側へ付勢する第2バネ部材SP2を支持するスリーブ40を備えた、コアブースト構造の燃料噴射弁1を製造対象とする。そして、ニードル20の圧入部23へスリーブ40を圧入させる途中で、可動コア30を移動不可にした状態で第2弾性力を計測し、その計測の結果に基づき圧入の量を調整して圧入を完了させる。よって、圧入固定完了時の第2弾性力を、第2バネ部材SP2の目標セット荷重にすることを高精度で実現できる。
上述した通り、セット荷重の大きさはニードル20の開閉弁時期に影響するので、セット荷重を精度良く目標値に設定することは、燃料噴射量のばらつき抑制に寄与する。そのため、上述したようにセット荷重を精度良く目標値に設定できる本実施形態によれば、コアブースト構造を採用しつつ、燃料噴射量のばらつき抑制を図ることができる。
・さらに、本実施形態に係る製造方法では次の燃料噴射弁1を製造対象としている。その燃料噴射弁1は、ニードル20に対して相対移動可能に配置され、噴孔側へ相対移動することでニードル20に当接して、第1弾性力を第1バネ部材SP1からニードル20へ伝達するカップ50を備える。そして上記製造方法では、工程S13(荷重計測工程)では、カップ50を相対移動させてニードル20に当接させ、その当接した状態のカップ50を可動コア30に当接させることで、可動コア30の移動を規制させる。
さて、第2バネ部材SP2による第2セット荷重の大きさは、閉弁後に可動コア30が噴孔側へ移動することを抑制する上で重要であり、つまりはリバウンドを迅速に収束させる上で重要である。したがって、閉弁状態での第2弾性力を第2セット荷重として設定することは、リバウンド収束性を管理する上で有利である。したがって、ニードル20に当接した状態のカップ50を可動コア30に当接させることで、可動コア30の移動を規制させて第2弾性力を計測するので、閉弁状態での第2弾性力を計測することとなる。よって、リバウンド収束性を管理しやすくできる。
<構成群Bの詳細説明>
次に、本実施形態に係る燃料噴射弁1が備える構成のうち、以下に説明する燃料溜室B1、およびその燃料溜室B1に関連する構成を少なくとも含む構成群Bについて、図12〜図14を用いて詳細に説明する。加えて、構成群Bの変形例について図15〜図23を用いて後述する。
図12に示すように、燃料溜室B1とは、可動コア30、カップ50およびニードル20に囲まれて燃料が溜まる部分である。以下の説明では、インナコア32の反噴孔側の面のうち、ニードル20に当接する面を第1コア当接面32cと呼び、カップ50と当接する面を第2コア当接面32bと呼び、ガイド部材60に当接する面を第3コア当接面32dと呼ぶ。
可動コア30は第2弾性力によりカップ50へ付勢されているので、閉弁後に可動コア30が慣性移動してカップ50から離れている時を除き、可動コア30はカップ50に常時当接している。詳細には、インナコア32の第2コア当接面32bはカップ50のコア当接端面51aに常時当接している。カップ50のうちコア当接端面51aを形成する部分である円筒部51は、燃料溜室B1の内部と外部を仕切る。外部とは、カップ50の外周面51dよりも径方向外側に燃料が存在する領域であり、第1コア当接面32cは燃料溜室B1の内部に位置し、第3コア当接面32dは燃料溜室B1の外部に位置する。
燃料溜室B1は、ニードル20に係るコア摺動部22の外周面および開弁時弁体当接面21aと、インナコア32に係る貫通穴32aの内壁面および第1コア当接面32cと、カップ50に係る円筒部51の内周面と、で囲まれた領域である。燃料溜室B1は、可動コア30とカップ50とが当接した状態において、上述の如く囲まれた領域である。燃料溜室B1は、弁体側シート20sがボデー側シート11sに当接してニードル20が閉弁した状態において、上述の如く囲まれた領域である。
インナコア32のうち第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bには、連通溝32eが形成されている。連通溝32eは、第2コア当接面32bがコア当接端面51aに当接した状態で、燃料溜室B1の内部と外部を連通させる。外部とは、カップ50と可動コア30とが当接している際の燃料溜室B1とは別の空間のことである。
ここで言う燃料溜室B1の外部とは以下に例示する領域に相当する。すなわち、ガイド部材60のストッパ当接端面61aと第3コア当接面32dとの間の第1領域が、外部に相当する。第1領域は、カップ50と可動コア30とが当接していて、可動コア30とガイド部材60とが当接していない状態で形成される領域である。固定コア13のうち可動コア30に対向する面を固定側コア対向面13bと呼ぶ。アウタコア31のうち固定コア13に対向する面を可動側コア対向面31cと呼ぶ。そして、第1領域と連通する領域であって、固定側コア対向面13bと可動側コア対向面31cとの間の第2領域が、外部に相当する。第2領域と連通する領域であって、本体ボデー12(ホルダ)および非磁性部材14(ホルダ)の内周面とアウタコア31の外周面との間の第3領域が、外部に相当する。
図13に示すように、連通溝32eは複数(例えば4つ)形成され、複数の連通溝32eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。連通溝32eは径方向に直線状に延びる形状である。複数の連通溝32eはそれぞれ同一の形状である。連通溝32eの周方向位置は、貫通穴31aの周方向位置とは異なる。
インナコア32は、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bが形成された「当接部」に相当する。アウタコア31は、固定コア13に対向する可動側コア対向面31cが形成された、インナコア32とは異なる材質の「コア本体部」に相当する。コア本体部は、連通溝32eの形成範囲から除外されている。つまり連通溝32eは、インナコア32に形成されているもののアウタコア31には形成されていない。
連通溝32eは、インナコア32の径方向の全域に亘って形成されており、インナコア32の内周面から外周面に亘って形成されている。つまり、連通溝32eは、第1コア当接面32c、第2コア当接面32bおよび第3コア当接面32dの径方向の全域に亘って形成されている。
図14に示すように、連通溝32eは、底壁面32e1、立壁面32e2およびテーパ面32e3を有する。底壁面32e1は、可動コア30の移動方向に対して垂直に拡がる形状であり、立壁面32e2は、底壁面32e1から可動コア30の移動方向に延びる形状であり、テーパ面32e3は、立壁面32e2から溝開口32e4に向けて流通面積を拡大させながら延びる形状である。図14に示す例では、テーパ面32e3は、立壁面32e2の上端から直線的に拡がる形状である。
連通溝32eの加工方法としては、レーザ加工、放電加工、エンドミルによる切削加工等が挙げられる。先ず、立壁面32e2および底壁面32e1を含む、断面形状が長方形の溝を加工する。この時点では、立壁面32e2のうち溝開口32e4周縁部分に、加工の際に生じるバリが残る場合がある。しかしその後、断面形状が台形のテーパ面32e3を加工することで、上記バリが除去される。
・さて、可動コア30が反噴孔側へ移動することに伴い、燃料溜室B1に存在する燃料が圧縮されると、可動コア30の移動が妨げられるので、可動コア30が所定量移動してニードル20に当接する時の移動速度(衝突速度)が遅くなる。その結果、コアブースト構造による先述の効果、つまり「開弁に必要な磁気吸引力の増大を抑制しつつ、高圧の燃料であっても弁体を開弁作動させることができる」といった効果が低減する。また、可動コア30の移動が妨げられることにより、ニードル20の開弁時期ばらつきが大きくなり、燃料噴射量のばらつきが大きくなる。
これらの問題に対し本実施形態に係る燃料噴射弁1は、ニードル20(弁体)と、固定コア13と、可動コア30と、第1バネ部材SP1(バネ部材)と、カップ50(閉弁力伝達部材)と、を備える。可動コア30は、固定コア13に吸引されて反噴孔側へ所定量移動した時点でニードル20に当接してニードル20を開弁作動させる。第1バネ部材SP1は、ニードル20の開弁作動に伴い弾性変形して、ニードル20を閉弁作動させる閉弁弾性力を発揮する。カップ50は、ニードル20に対して相対移動可能に配置され、噴孔側へ相対移動することでニードル20に当接して、閉弁弾性力をニードル20へ伝達する。そして、可動コア30は第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bを有し、これら第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bには、燃料溜室B1の内部と外部を連通させる連通溝32eが形成されている。
そのため、可動コア30が反噴孔側へ移動する際に、燃料溜室B1に溜まっている燃料が連通溝32eを通じて外部に流出する。よって、燃料溜室B1に溜まっている燃料の圧縮が抑制されるので、可動コア30が移動しやすくなる。そのため、可動コア30の衝突速度低下を抑制できるので、コアブースト構造による磁気吸引力低減の効果を促進できる。また、可動コア30が移動しやすくなるのでニードル20の開弁時期ばらつきを抑制でき、ひいては燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、連通溝32eは複数形成され、複数の連通溝32eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。
これによれば、燃料溜室B1から外部へ流出しやすくなる箇所が、軸線方向周りに等間隔で存在することとなる。そのため、可動コア30が軸線方向に移動する際に、軸線方向に対する可動コア30の傾く向きが変化することを抑制できる。よって、可動コア30の挙動が不安定になることを抑制できるので、開弁応答性がばらつくことをより一層抑制できる。なお、周方向において3つ以上等間隔に連通溝32eが形成されていれば、挙動不安定抑制の効果が促進される。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、可動コア30は、インナコア32(当接部)と、インナコア32とは異なる材質のアウタコア31(コア本体部)を備える。インナコア32には、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bが形成され、アウタコア31には、固定コア13に対向する可動側コア対向面31cが形成されている。そしてアウタコア31は、連通溝32eの形成範囲から除外されている。
これによれば、アウタコア31の可動側コア対向面31cを、溝を有していない平坦な形状にできるので、固定コア13に吸引される磁気吸引力が連通溝により低減することを抑制できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、可動コア30のうちガイド部材60に当接する第3コア当接面32dは、燃料溜室B1の外部に位置する。そして連通溝32eは、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bに加えて第3コア当接面32dにも形成されている。
さて、ニードル20がフルリフト位置にある状態ではインナコア32がガイド部材60に当接している。この当接状態において、ガイド部材60に係るストッパ当接端面61aとインナコア32に係る第3コア当接面32dとが密着していると、第3コア当接面32dがストッパ当接端面61aから離れにくくなる現象(リンキング現象)の発生が懸念される。この懸念に対し、本実施形態では、連通溝32eが第3コア当接面32dにも形成されているので、通電オフに伴い可動コア30が噴孔側への移動を開始するにあたり、ストッパ当接端面61aと当接している状態の第3コア当接面32dへ燃料が供給される。そのため、可動コア30がガイド部材60に密着して離れにくくなることを抑制できるので、上記密着の力が原因で可動コア30の噴孔側への移動の開始が遅れるおそれを低減できる。よって、通電オフからニードル20が閉弁するまでの閉弁応答時間を短くでき、閉弁応答性を向上できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、連通溝32eは、可動コア30の移動方向に対して垂直に拡がる底壁面32e1と、底壁面32e1から移動方向に延びる立壁面32e2と、を有する。
さて、連通溝32eの溝開口32e4に生じるバリを除去するべく、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bを研磨することが望ましい。例えば、図14中の二点鎖線に示す位置から実線に示す位置まで研磨する。なお、本実施形態では、アウタコア31にインナコア32を組み付けた後に、連通溝32eおよびアウタ連通溝31eを切削加工等により形成し、その後、上記研磨を、アウタコア31およびインナコア32の両方について同時に実施する。
そして、本実施形態に反して立壁面32e2を有しておらず一点鎖線に示す形状の場合、連通溝32eの断面積が小さくなり、研磨される断面積の、連通溝32eの断面積に対する割合が大きくなる。その結果、研磨深さのばらつきが連通溝32eの断面積に及ぼす影響が大きくなるので、連通溝32eの断面積のばらつきが大きくなる。そのため、連通溝32eを通じて燃料溜室B1から外部へ燃料が流出する度合のばらつきが大きくなり、可動コア30の移動しやすさのばらつきが大きくなるので、ニードル20の開弁時期ばらつき抑制の妨げとなる。これに対し本実施形態では、立壁面32e2を有するので、研磨される断面積の割合が小さくなり、研磨深さのばらつきが連通溝32eの断面積に及ぼす影響が小さくなる。そのため、連通溝32eを通じて燃料溜室B1から外部へ燃料が流出する度合のばらつきが低減され、ニードル20の開弁時期ばらつき抑制を促進できる。
[変形例B1]
図12に示す連通溝32eはアウタコア31には形成されていないが、図15に示すように、インナコア32に連通溝32eが形成されることに加えて、アウタコア31に連通溝(アウタ連通溝31e)が形成されていてもよい。図15に示す例では、アウタ連通溝31eの内径側端部は、連通溝32eの外径側端部と直接連通している。
図16に示すように、アウタ連通溝31eは複数(例えば4つ)形成され、複数のアウタ連通溝31eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。アウタ連通溝31eは径方向に直線状に延びる形状である。複数のアウタ連通溝31eはそれぞれ同一の形状である。アウタ連通溝31eの周方向位置は、貫通穴31aの周方向位置とは異なる。
アウタ連通溝31eと連通溝32eは、周方向位置を同じくする。図16の例では、4つのアウタ連通溝31eが周方向に等間隔配置されているが、6つのアウタ連通溝31eが周方向に等間隔配置されていてもよい。この場合、貫通穴31aの周方向位置を、隣り合うアウタ連通溝31eまでの周方向距離が同じになるように設定することが望ましい。
アウタ連通溝31eは、アウタコア31の径方向の全域に亘って形成されており、アウタコア31の内周面から外周面に亘って形成されている。つまり、アウタ連通溝31eは、可動側コア対向面31cの径方向の全域に亘って形成されている。アウタ連通溝31eの断面形状は、図14に示す連通溝32eの断面形状と同一であり、アウタ連通溝31eは連通溝32eと同様の底壁面、立壁面およびテーパ面を有する。先述した通り、図14は、図13のXIV−XIV線に沿う断面図であり、可動コア30の径方向に延出する連通溝32eの、延出方向に対して垂直に切った断面の形状を示す。アウタ連通溝31eの断面形状もについても連通溝32eと同様であり、アウタ連通溝31eの延出方向に対して垂直に切った断面において、底壁面、立壁面およびテーパ面を有する断面形状である。
以上により、アウタ連通溝31eを有する本変形例によれば、連通溝32eの外径側端部から流出した燃料が、アウタ連通溝31eを通じて拡散されるので、連通溝32eの外径側端部での燃料圧力上昇を抑制でき、連通溝32eを通じた燃料流出を促進できる。つまり、ガイド部材60とインナコア32との間の燃料圧力上昇を抑制できる。
さらに本変形例では、アウタ連通溝31eの内径側端部は、連通溝32eの外径側端部と直接連通しているので、外径側端部からの燃料流出をより一層促進できる。
さらに本変形例では、アウタ連通溝31eは、可動側コア対向面31cの径方向の全域に亘って形成されているので、アウタ連通溝31e外径側端部から流出した燃料が、ホルダの内周面とアウタコア31の外周面との隙間に直接流入する。そのため、アウタ連通溝31eの外径側端部での燃料圧力上昇を抑制でき、連通溝32eおよびアウタ連通溝31eを通じた燃料流出を促進できる。
さらに本変形例では、アウタ連通溝31eの寸法に関し、アウタ連通溝31eのうち、固定コア13に向けて開口する部分の幅寸法(周方向寸法)が、アウタ連通溝31eの深さ寸法(軸線C方向寸法)よりも小さく設定されている。これによれば、アウタ連通溝31eを形成することに起因した可動側コア対向面31cの面積減少を抑制しつつ、アウタ連通溝31eの流路断面積を大きくできる。この「流路断面積」とは、燃料溜室B1の燃料がアウタ連通溝31eを通じて径方向外側に流れるにあたり、その流れ方向に対して垂直な断面の面積のことである。つまり、上述の如く幅寸法が深さ寸法より小さいことにより、磁気吸引力の低減を抑制しつつ、開弁作動時の燃料溜室B1からの燃料排出を実現できる。
[変形例B2]
図17および図18に示す本変形例では、複数の連通溝31eを連結する連結溝32fが形成されている。連結溝32fは貫通穴32aの周りに環状に延びる形状であり、全て(図18の例では4つ)の連通溝31eを連結させている。連結溝32fは、連通溝31eの外径側端部を連結する。連結溝32fは、インナコア32の外径側角部を切削加工することで形成されている。また、アウタコア31の内径側角部を切削加工することで、アウタコア31およびインナコア32の両方に跨って連結溝32fは形成されている。
なお、図15および図16に示す実施形態においても、図17および図18に示す連結溝32fを形成して、複数の連通溝32eと複数のアウタ連通溝31eの各々を、連結溝32fで連結させてもよい。
以上により、連結溝32fを有する本変形例によれば、連通溝32eの外径側端部から流出した燃料が、連結溝32fを通じて拡散されるので、連通溝32eの外径側端部での燃料圧力上昇を抑制でき、連通溝32eを通じた燃料流出を促進できる。
また、複数の連通溝31eを連結することで、複数の連通溝31eから均等に燃料が流出することを促進できるので、可動コア30が軸線方向に移動する際に、軸線方向に対する可動コア30の傾く向きが変化することを抑制できる。よって、可動コア30の挙動が不安定になることを抑制できるので、開弁応答性がばらつくことをより一層抑制できる。
[変形例B3]
図12に示す連通溝32eは、インナコア32の端面の全域に亘って形成されている。これに対し、図19および図20に示す本変形例の連通溝32gは、第1コア当接面32cの一部、第2コア当接面32bの全域、および第3コア当接面32dの一部に跨って形成されている。詳細に説明すると、連通溝32gは、第1コア当接面32cの径方向の全域に亘っては形成されておらず、第1コア当接面32cのうち第2コア当接面32bに隣接する部分に部分的に形成されている。連通溝32gは、第2コア当接面32bの径方向の全域に亘って形成されている。連通溝32gは、第3コア当接面32dの径方向の全域に亘っては形成されておらず、第3コア当接面32dのうち第2コア当接面32bに隣接する部分に部分的に形成されている。
また、図12に示す連通溝32eは径方向に直線状に延びる形状であるのに対し、本変形例に係る連通溝32gは円錐形状である。つまり、図20に示すように軸線C方向から見て円形であり、図19に示すように断面視において三角形である。
以上により、円錐形状の連通溝32gを有する本変形例によれば、ドリル刃の先端を可動コア30に押し付けるだけで連通溝32gを形成することができるので、連通溝32gを容易に加工できる。
[変形例B4]
図12に示す実施形態では、可動コア30の当接面に連通溝32eを形成することで、燃料溜室B1の内部と外部を連通させている。これに対し、図21に示す本変形例では、ニードル20に連通穴20cを形成することで、燃料溜室B1の内部とニードル20の内部通路20aとを連通させている。
閉弁時弁体当接面21bにカップ50が当接した状態、かつ、第2コア当接面32bにカップ50が当接した状態において、連通穴20cは、軸線C方向のうち第1コア当接面32cを含む位置に配置されている。或いは、連通穴20cの全体が、第1コア当接面32cの反噴孔側に配置されている。連通穴20cは複数形成され、複数の連通穴20cは、ニードル20の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。連通穴20cは、ニードル20の径方向に直線状に延びる形状である。
以上により、ニードル20に連通穴20cを形成した本変形例によれば、可動コア30が反噴孔側へ移動する際に、燃料溜室B1に溜まっている燃料が連通穴20cを通じてニードル20の内部通路20a(外部)に流出する。よって、燃料溜室B1に溜まっている燃料の圧縮が抑制されるので、可動コア30が移動しやすくなる。そのため、可動コア30の衝突速度低下を抑制できるので、コアブースト構造による磁気吸引力低減の効果を促進できる。また、可動コア30が移動しやすくなるのでニードル20の開弁時期ばらつきを抑制でき、ひいては燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
[変形例B5]
図22に示す本変形例では、ニードル20に摺動面連通溝20dを形成することで、燃料溜室B1の内部とニードル20の内部通路20aとを連通させている。摺動面連通溝20dは、ニードル20のうちカップ50が摺動する弁体側摺動面21c(図7参照)に形成されている。
摺動面連通溝20dは複数形成され、複数の摺動面連通溝20dは、ニードル20の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。摺動面連通溝20dは、ニードル20の軸線C方向に直線状に延びる形状である。
以上により、ニードル20とカップ50との摺動面である弁体側摺動面21cに摺動面連通溝20dを形成した本変形例によれば、可動コア30が反噴孔側へ移動する際に、燃料溜室B1に溜まっている燃料が摺動面連通溝20dを通じて外部に流出する。ここで言う外部とは、閉弁時弁体当接面21bと閉弁力伝達当接面52cとの隙間、および内部通路20aである。よって、燃料溜室B1に溜まっている燃料の圧縮が抑制されるので、可動コア30が移動しやすくなる。そのため、可動コア30の衝突速度低下を抑制できるので、コアブースト構造による磁気吸引力低減の効果を促進できる。また、可動コア30が移動しやすくなるのでニードル20の開弁時期ばらつきを抑制でき、ひいては燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
[変形例B6]
図23に示す本変形例では、インナコア32に第2摺動面連通溝32hを形成することで、燃料溜室B1の内部と可動室12aとを連通させている。第2摺動面連通溝32hは、インナコア32のうちニードル20が摺動する面、つまりインナコア32の内周面に形成されている。
第2摺動面連通溝32hは複数形成され、複数の第2摺動面連通溝32hは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。第2摺動面連通溝32hは、可動コア30の軸線C方向に直線状に延びる形状である。
以上により、ニードル20とインナコア32との摺動面に第2摺動面連通溝32hを形成した本変形例によれば、可動コア30が反噴孔側へ移動する際に、燃料溜室B1に溜まっている燃料が第2摺動面連通溝32hを通じて可動室12a(外部)に流出する。よって、燃料溜室B1に溜まっている燃料の圧縮が抑制されるので、可動コア30が移動しやすくなる。そのため、可動コア30の衝突速度低下を抑制できるので、コアブースト構造による磁気吸引力低減の効果を促進できる。また、可動コア30が移動しやすくなるのでニードル20の開弁時期ばらつきを抑制でき、ひいては燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
<構成群Cの詳細説明>
次に、本実施形態に係る燃料噴射弁1が備える構成のうち、以下に説明する供給流路、およびその供給流路に関連する構成を少なくとも含む構成群Cについて、図24〜図26および図12を用いて詳細に説明する。加えて、構成群Cの変形例について図27〜図35を用いて後述する。
図24に示すように、ニードル20のうち閉弁時弁体当接面21bに、溝形成の供給流路(メイン流路20e)が形成されている。この供給流路は、カップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ燃料を供給する流路であり、以下の説明ではメイン流路20eと記載する。図25に示すように、閉弁時弁体当接面21bは、可動コア30の移動方向から見て環状に延びる領域に形成されており、メイン流路20eは、閉弁時弁体当接面21bが形成された環状の領域を横切って、環状内側と環状外側とを繋ぐように延びる形状である。メイン流路20eは、可動コアの移動方向から見て直線状に延びるストレート部201を有する。本実施形態の場合、メイン流路20eの全体がストレート部201の全体と一致する。
環状内側はニードル20の内部通路20aに相当する。環状外側は、閉弁時弁体当接面21bがカップ50と当接している状態で形成される、カップ50の内面とニードル20の外面との隙間B2(図12参照)に相当する。したがって、メイン流路20eは、閉弁時弁体当接面21bがカップ50と当接している状態において、ニードル20の内部通路20aと隙間B2とを連通させる。
メイン流路20e(供給流路)は、ニードル20のうち内部通路20aを形成する内周面と、ニードル20の外周面とを繋ぐように延びる形状である。ニードル20の外周面は、噴孔11aへ燃料を流通させる通路の壁面として機能する。なお、ニードル20の外周面と円筒部51の内周面との隙間により形成される通路を流通した燃料は、燃料溜室B1へ流入する。その後、可動コア30の内周面とニードル20の外周面との隙間や、可動コア30の外周面と本体ボデー12の内周面との隙間を流通して可動室12aへ流入し、流路12bを通じて噴孔11aへと流入する。
図25に示すように、ニードル20のうち閉弁時弁体当接面21bの内周エッジ部分201a、および外周エッジ部分201bには、面取り加工が施されている。メイン流路20e(供給流路)は、これら内周エッジ部分201aと外周エッジ部分201bとを結ぶ形状である。
図25に示すように、メイン流路20eは複数(例えば4つ)形成され、複数のメイン流路20eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。つまり、ニードル20の閉弁時弁体当接面21bには、複数のメイン流路20eが周方向に等間隔で配置されている。メイン流路20eは径方向に直線状に延びる形状である。複数のメイン流路20eはそれぞれ同一の形状である。図26に示すように、メイン流路20eのストレート部201の断面は、噴孔側に凸となる円弧状の底面を有する形状である。なお、ニードル20の当接部21の外周縁部と内周縁部の角部には、面取り加工が施されており、当接部21の外周縁部と内周縁部はテーパ形状に形成されている。
メイン流路20eの深さ寸法201hを、メイン流路20eの軸線C方向の寸法と定義し、メイン流路20eの幅寸法201wを、ニードル20の軸線C方向周りの寸法と定義する(図24参照)。そして、メイン流路20eの深さ寸法201hは、メイン流路20eの幅寸法201wより大きく設定されている。
・さて、コイルへの通電開始により可動コア30がカップ50とともに所定量移動を開始する時点で、カップ50がニードル20に当接しているコアブースト構造の場合、以下の懸念が生じる。すなわち、カップ50とニードル20とが密着して当接していると、カップ50がニードル20から離れにくくなる現象(リンキング現象)が生じ、その結果、可動コア30の所定量移動の開始が遅れてしまい、開弁応答性が悪くなることが懸念される。
この懸念に対し、本実施形態では、ニードル20(弁体)と、固定コア13と、可動コア30と、第1バネ部材SP1(バネ部材)と、カップ50(閉弁力伝達部材)と、を備える。可動コア30は、固定コア13に吸引されて所定量移動した時点で、ニードル20に形成された開弁時弁体当接面21aに当接して、ニードル20を開弁作動させる。第1バネ部材SP1は、ニードル20の開弁作動に伴い弾性変形して、ニードル20を閉弁作動させる閉弁弾性力を発揮する。カップ50は、ニードル20に形成された閉弁時弁体当接面21bに当接して閉弁弾性力をニードル20へ伝達する。そして、可動コア30がカップ50とともに所定量移動を開始する時点では、カップ50は閉弁時弁体当接面21bに当接している。そしてニードル20は、カップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ燃料を供給するメイン流路20e(供給流路)を有する。
よって、可動コア30が所定量移動を開始するにあたり、カップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ燃料が供給される。そのため、カップ50がニードル20に密着して離れにくくなることを抑制できるので、上記密着の力が原因で可動コア30の所定量移動の開始が遅れるおそれを低減できる。よって、コイル17への通電を開始してからニードル20が開弁を開始するまでの開弁応答時間を短くでき、開弁応答性を向上できる。また、可動コア30の移動が妨げられることによる開弁時期ばらつきを抑制でき、燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、メイン流路20e(供給流路)は、ニードル20のうち閉弁時弁体当接面21bに形成された溝により提供されている。そのため、ニードル20やカップ50に供給流路としての貫通穴を形成する場合に比べて、供給流路の加工を簡素にでき、供給流路を容易に提供できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、閉弁時弁体当接面21bは、可動コア30の移動方向から見て環状に延びる領域に形成されており、供給流路は、その領域を横切って環状内側と環状外側とを繋ぐように延びるメイン流路20eを有する。そのため、環状内側と環状外側の両側から閉弁時弁体当接面21bへ燃料が供給されるので、上記密着によるリンキング現象の抑制を促進できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、メイン流路20eは複数形成され、複数のメイン流路20eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。これによれば、カップ50がニードル20に密着する力が緩和される箇所が、軸線方向周りに等間隔で存在することとなる。そのため、可動コア30が軸線方向に所定量移動を開始する際に、軸線方向に対する可動コア30の傾く向きが変化することを抑制できる。よって、可動コア30の挙動が不安定になることを抑制できるので、開弁応答性がばらつくことをより一層抑制できる。なお、周方向において3つ以上等間隔にメイン流路20eが形成されていれば、挙動不安定抑制の効果が促進される。
・ここで、メイン流路20eの深さ寸法201hが過小である場合には、閉弁時弁体当接面21bの摩耗が進行するにつれメイン流路20eの流路断面積が小さくなると、メイン流路20eを流通する燃料の流量を十分に確保できなくなる。また、メイン流路20eの幅寸法201wが過大である場合には、閉弁弾性力によりカップ50がニードル20に押し付けられる際の面圧が過大になり、閉弁時弁体当接面21bの受圧面積を十分に確保できなくなる。そうすると、閉弁時弁体当接面21bの摩耗進行が早くなる。
これらの点を鑑み、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、メイン流路20eの深さ寸法201hは、メイン流路20eの幅寸法201wより大きく設定されている。そのため、メイン流路20eを流通する燃料流量を十分に確保でき、かつ、過大な面圧により閉弁時弁体当接面21bの摩耗進行が早くなることを抑制できる。
[変形例C1]
本変形例ではメイン流路20eの断面形状を変形させている。すなわち、図26に示すメイン流路20eのストレート部201は、円弧状の底面を有する断面形状であるが、図27に示すように三角形の断面形状であってもよいし、図28に示すように長方形の断面形状であってもよい。
また、図29に示すように長方形と台形を組み合わせた断面形状であってもよい。具体的には、メイン流路20eは、底壁面20e1、立壁面20e2およびテーパ面20e3を有する。底壁面20e1は、可動コア30の移動方向に対して垂直に拡がる形状であり、立壁面20e2は、底壁面20e1から移動方向に延びる形状であり、テーパ面20e3は、立壁面20e2から溝開口20e4に向けて流通面積を拡大させながら延びる形状である。図29に示す例では、テーパ面20e3は、立壁面20e2の上端から直線的に拡がる形状である。
図29に示すメイン流路20eの加工方法としては、レーザ加工、放電加工、エンドミルによる切削加工等が挙げられる。先ず、立壁面20e2および底壁面20e1を含む、断面形状が長方形の溝を加工する。この時点では、立壁面20e2のうち溝開口20e4周縁部分に、加工の際に生じるバリが残る場合がある。しかしその後、断面形状が台形のテーパ面20e3を加工することで、上記バリが除去される。
[変形例C2]
図30に示す本変形例では、供給流路は、メイン流路20eであるストレート部201に加えて、メイン流路20eから分岐してメイン流路20e同士を接続する分岐流路205を有する。分岐流路205は、可動コア30の移動方向から見て環状に延びる形状である。具体的には、分岐流路205は、内部通路20aを取り囲む円環形状である。分岐流路205は、ストレート部201と同じ深さの溝形状である。分岐流路205は、全てのメイン流路20eを結ぶよう、全周に亘って延びる形状である。
図25の例ではメイン流路20eを4本設けているが、本変形例ではメイン流路20eを8本設けており、これら複数のメイン流路20eは可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。円環形状の分岐流路205は1つである。
図25の例では、閉弁時弁体当接面21bがストレート部201により周方向に分割されている。これに対し、図30に示す本変形例では、ストレート部201に加えて分岐流路205を有するので、閉弁時弁体当接面21bは、周方向への分割に加えて径方向にも分割されている。
ニードル20がカップ50と当接している状態において、環状内側と環状外側の両側からメイン流路20eへ流入した燃料の一部は、閉弁時弁体当接面21bへ周方向から供給される。また、メイン流路20eへ流入した後に分岐流路205へ流入した燃料は、閉弁時弁体当接面21bへ径方向から供給される。
・以上により、本変形例によれば、供給流路は、環状内側と環状外側とを繋ぐメイン流路20eに加え、メイン流路20eから分岐する分岐流路205を有する。そのため、メイン流路20eと分岐流路205の両方から閉弁時弁体当接面21bへ燃料が供給される。よって、上記密着によるリンキング現象の抑制を促進できる。
・さらに、本変形例に係る燃料噴射弁では、分岐流路205は、ニードル20の移動方向から見て環状に延びる形状である。そのため、分岐流路205の両端がメイン流路20eと連通することになるので、メイン流路20eから分岐流路205への燃料流入を促進でき、ひいては閉弁時弁体当接面21bへの燃料供給を促進できる。
[変形例C3]
図31に示す本変形例では、メイン流路20eは、ストレート部201および流入部202を有する。ストレート部201は、可動コア30の移動方向から見て直線状に延びる形状である。流入部202は、ストレート部201に連通して、メイン流路20eへの燃料の流入口203を形成する。流入部202の流路断面は、ストレート部201の流路断面に比べて面積を拡大した形状である。具体的には、図32(b)に示す断面視において、流入部202は、噴孔側へ近づくほど溝幅が拡大する形状である。図31に示す上面視において、流入部202は、径方向外側へ近づくほど溝幅が拡大する形状である。
メイン流路20eの両端に形成される燃料の流入口203、204のうち、先述した環状に延びる領域の外側に位置する流入口203には、面積を拡大した形状の流入部202が設けられている。これに対し、環状に延びる領域の内側に位置する流入口204には、面積を拡大した形状の流入部は設けられていない。なお、ニードル20の当接部21の外周縁部と内周縁部の角部には、面取り加工が施されており、当接部21の外周縁部と内周縁部はテーパ形状に形成されている。
メイン流路20eはレーザ加工により形成されている。図32中の一点鎖線はレーザ光の中心を示す。先ず、図32の(a)欄に示すように、ストレート部201に相当する部分の溝をレーザで形成する。詳細には、径方向の内側からレーザ加工を開始し、内側から外側へ向けてレーザ光を移動させていく。ストレート部201の加工では、レーザ光の焦点を溝の底面に一致させておく。
レーザ光をストレート部201の外側端部まで移動させてストレート部201の加工を完了させた後、さらにレーザ光を径方向外側へ移動させて、図32の(b)欄に示すように流入部202に相当する部分の溝をレーザで加工する。流入部202を加工する時のレーザ光の焦点は、ストレート部201を加工する時のレーザ光の焦点と同じに設定されている。そして、当接部21の外周縁部はテーパ形状に形成されているので、レーザ光の焦点からずれた位置で流入部202の底面は切削されることになる。これにより、流入部202底面での切削幅が、ストレート部201底面での切削幅より拡大するので、噴孔側へ近づくほど溝幅が拡大する形状に流入部202は形成される。
・以上により、本変形例によれば、メイン流路20eは、可動コア30の移動方向から見て直線状に延びるストレート部201と、ストレート部201に連通して燃料の流入口203を形成する流入部202と、を有する。そして、流入部202の流路断面は、ストレート部201の流路断面に比べて面積を拡大した形状である。そのため、流入部202を有していない場合に比べて、流入口203からストレート部201へ燃料が流入しやすくなり、ひいては、閉弁時弁体当接面21bへの燃料供給を促進できる。
[変形例C4]
図24に示す供給流路は、ニードル20に形成された溝形状のメイン流路20eにより提供されている。これに対し、図33に示す本変形例では、カップ50に貫通穴52dを形成し、その貫通穴52dが、閉弁時弁体当接面21bへ燃料を供給する供給流路を提供する。
これによれば、可動コア30が所定量移動を開始するにあたり、カップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ、貫通穴52dを通じて流路13aの燃料が供給される。そのため、図24の実施形態と同様にして、カップ50がニードル20に密着して離れにくくなることを抑制できるので、開弁応答性を向上できるとともに、開弁時期ばらつきによる燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
[変形例C5]
図24に示す供給流路は、溝形状のメイン流路20eがニードル20に形成されている。これに対し、図34および図35に示す本変形例では、以下に説明するプレート210に、溝形状のメイン流路210eが形成されている。
プレート210は、ニードル20とカップ50の間に配置され、円板形状であり、金属製である。図示される例では、プレート210の噴孔側の面にメイン流路210eが形成されているが、プレート210の反噴孔側の面に形成されていてもよい。メイン流路210eは複数(例えば4つ)形成され、複数のメイン流路210eは、可動コア30の移動方向から見て周方向に等間隔で配置されている。メイン流路210eは径方向に直線状に延びる形状である。複数のメイン流路210eはそれぞれ同一の形状である。
メイン流路210eは、図25に示すメイン流路20eと同様にして、閉弁時弁体当接面21bが形成された環状の領域を横切って、環状内側と環状外側とを繋ぐように延びる形状である。したがって、メイン流路210eは、閉弁時弁体当接面21bがプレート210を介してカップ50と当接している状態において、ニードル20の内部通路20aと隙間B2とを連通させる。
プレート210は、ニードル20およびカップ50に結合されていないものの、本明細書では、ニードル20またはカップ50の一部と定義される。プレート210には、カップ50の貫通穴52aおよびニードル20の内部通路20aと連通する貫通穴210aが形成されている。
以上により、本変形例によれば、可動コア30が所定量移動を開始するにあたり、プレート210を介してカップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ、メイン流路210eを通じて流路13aの燃料が供給される。そのため、図24の実施形態と同様にして、ニードル20がプレート210に密着して離れにくくなることを抑制できるので、開弁応答性を向上できるとともに、開弁時期ばらつきによる燃料噴射量のばらつきを抑制できる。
[変形例C6]
図24に示す供給流路は、ニードル20の閉弁時弁体当接面21bに形成された溝形状のメイン流路20eにより提供されている。これに対し、本変形例では、メイン流路20eを廃止して、以下に説明する凹凸により供給流路が提供されている。すなわち、閉弁時弁体当接面21bに研磨材を衝突させるショットブラストを施し、閉弁時弁体当接面21bの表面粗さを大きくすることで、閉弁時弁体当接面21bに凹凸を設ける。この凹凸を、供給流路を提供するメイン流路20eの代わりとする。換言すれば、ニードル20の表面のうち内部通路20aを形成する部分の内周面に比べ、閉弁時弁体当接面21bの表面粗さを粗くする。或いは、ニードル20の外周面に比べ、閉弁時弁体当接面21bの表面粗さを粗くする。
上記凹凸による供給流路によれば、ショットブラストにより閉弁時弁体当接面21bの硬度が増大する。そのため、ニードル20にカップ50が繰り返し衝突することによる閉弁時弁体当接面21bの耐摩耗性を向上できる。
なお、上述の如くニードル20にショットブラストを施して凹凸を形成することに替えて、カップ50の閉弁力伝達当接面52cにショットブラストを施して凹凸を形成してもよい。この場合、閉弁力伝達当接面52cに形成された凹凸により、供給流路が提供されることとなる。
<構成群Dの詳細説明>
次に、本実施形態に係る燃料噴射弁1が備える構成のうち、以下に説明する窪み面60a、およびその窪み面60aに関連する構成を少なくとも含む構成群Dについて、図36および図37を用いて詳細に説明する。
先述した通り、ガイド部材60の円筒部61の内周面は、カップ50に係る円筒部51の外周面51dと摺動する摺動面61bを形成する。摺動面61bは、カップ50の径方向への移動を規制しつつ軸線C方向への移動を案内するよう、カップ50の外周面51dを摺動させる。摺動面61bは、軸線C方向に対して平行に拡がる形状の面である。
ガイド部材60の内面のうち摺動面61bの反噴孔側に繋がる面には、窪み面60aが形成されている。窪み面60aは、カップ50との隙間を径方向に拡大させる向きに窪む形状である。窪み面60aは、軸線C周りに環状に延びる形状であり、周方向のいずれの断面においても同一の形状である。
窪み面60aのうち摺動面61bと隣接する隣接面60a1は、摺動面61bの反噴孔側に繋がる面であり、摺動面61bから遠ざかるにつれてカップ50との隙間CL1を径方向に徐々に拡大させる形状である。隣接面60a1には、軸線Cを含む断面で見て直線的に延びるテーパ形状面60a2が含まれている。また、ガイド部材60のうち隣接面60a1と摺動面61bとの境界を含む境界部60bは、径方向内側に突出する向きに湾曲した形状、つまりR形状である。これによって、ガイド部材60による、カップ50の摩耗を抑制できる。
ストッパ当接端面61aと摺動面61bとを繋ぐ部分には、面取り加工によりテーパ形状に形成された面取り部61cが設けられている。面取り部61cと摺動面61bとの境界を含む境界部は、径方向内側に突出する向きに湾曲した形状であり、ガイド部材60によるカップ50の摩耗を抑制させている。
なお、カップ50のうち外周面51dとコア当接端面51aとを繋ぐ角部51gや、伝達部材側摺動面51cとコア当接端面51aとを繋ぐ角部51hには、テーパ形状またはR形状となるように面取り加工が施されている。ニードル20のうち弁体側摺動面21cと開弁時弁体当接面21aとを繋ぐ角部21dにも、テーパ形状またはR形状となるように面取り加工が施されている。弁体側摺動面21cの反噴孔側に形成された面取り部と、弁体側摺動面21cとの境界を含む境界部21eは、径方向外側に突出する向きに湾曲した形状であり、カップ50とニードル20との摩耗を抑制させている。
以下の説明では、カップ50の表面のうち、カップ50の円筒部51の外周面51dを含み軸線C方向に対して平行に拡がる面を平行面と呼ぶ。図36の例では、外周面51dの全体が平行面に相当し、カップ50の表面のうち、図37の符号M1に示す範囲が平行面である。
また、平行面の反噴孔側に繋がる面であって、平行面よりも径方向内側に位置する面を連結面51eと呼ぶ。連結面51eはカップ50の径方向外側に突出する向きに湾曲した形状である。カップ50の表面のうち、図37の符号M2に示す範囲が連結面51eである。なお、連結面51eのうち平行面と反対側に繋がる面は、第1バネ部材SP1と当接して第1弾性力が付与されるバネ当接面である。バネ当接面は、軸線C方向に対して垂直に拡がる形状である。
そして、平行面と連結面51eとの境界線を連結境界線51f(図37中の丸印参照)と呼ぶ。可動コア30が軸線C方向に移動することに伴って、カップ50も軸線C方向に移動する。この移動により連結境界線51fが軸線C方向に移動する範囲M3の全体が、軸線C方向のうち窪み面60aが形成されている範囲N1に含まれている。
ガイド部材60の外周面は固定コア13の拡径部13cに圧入されている。このように、ガイド部材60は固定コア13に圧入固定されているので、ガイド部材60が固定コア13に対して傾くことはない。但し、ガイド部材60の外周面や拡径部13cの内周面の寸法公差分は傾く。これに対しカップ50は、ガイド部材60に対して摺動可能に配置されているので、カップ50とガイド部材60との間には、摺動のための隙間CL1が形成されている。したがって、固定コア13およびガイド部材60に対してカップ50は傾倒し得る。つまり、固定コア13の軸線Cに対してカップ50の軸線Cは傾き得る。
また、ニードル20は、カップ50に対して摺動可能に配置されているので、ニードル20とカップ50との間には、摺動のための隙間CL2が形成されている。したがって、傾倒し得るカップ50に対して、ニードル20はさらに傾倒し得る。つまり、傾き得るカップ50の軸線Cに対して、ニードル20の軸線Cはさらに傾き得る。したがって、ニードル20が最大に傾倒し、かつ、ニードル20と同じ向きにカップ50が最大に傾倒したときの角度(最大傾倒角度)が、カップ50が傾倒する角度のうち想定される最大の傾倒角度θ2(図36参照)に相当する。そして、ガイド部材60の摺動面61bに対してテーパ形状面60a2が傾く傾斜角度θ1(図36参照)が、カップ50の最大傾倒角度θ2よりも大きくなるように、テーパ形状面60a2は形成されている。
なお、カップ50の平行面とガイド部材60の摺動面61bとの隙間CL1は、カップ50とニードル20との隙間CL2より大きく設定されている。したがって、仮に隙間CL2がゼロである場合におけるカップ50の傾倒角度は、仮に隙間CL1がゼロである場合におけるニードル20の傾倒角度に比べて大きい。
隙間CL1におけるカップ50とガイド部材60との摺動距離は、隙間CL2におけるカップ50とニードル20との摺動距離よりも長く設定されている。ここで、摺動距離が長いほど、隙間に起因した傾きは小さくなる。例えば、隙間CL1における摺動距離が長いほど、ガイド部材60に対するカップ50の傾きは小さくなる。隙間CL2における摺動距離が長いほど、カップ50に対するニードル20の傾きは小さくなる。これら両方の傾きが最大であっても、連結面51eがガイド部材60に当たらないように設定されている。
ガイド部材60は磁性材で形成され、カップ50は非磁性材で形成されている。一般的に非磁性材は磁性材に比べて低硬度である。それにも拘らず本実施形態では、カップ50とガイド部材60とは同じ硬度である。換言すれば、カップ50には、一般的な非磁性材ではなく高硬度の非磁性材が用いられている。カップ50の硬度(カップ硬度)とガイド部材60の硬度(ガイド部材硬度)は、例えば、ビッカース硬さHV600からHV700の範囲の値である。そして、カップ硬度に対するガイド部材硬度の偏差が、カップ硬度の−10%から+10%の範囲に収まっていれば、両硬度は同じ硬度であるとみなす。
・さて、カップ50とガイド部材60との摺動により摩耗が進行すると、カップ50がガイド部材60に対して大きく傾倒するようになり、ひいては、カップ50とともにニードル20が大きく傾倒することになる。そして、ニードル20の傾倒が大きくなると、ニードル20の開閉弁時期がばらつくことになり、燃料噴射量ばらつきが大きくなる。
この懸念に対し、本実施形態では、ニードル20(弁体)と、固定コア13と、可動コア30と、第1バネ部材SP1(バネ部材)と、カップ50(閉弁力伝達部材)と、ガイド部材60と、を備える。
可動コア30は、固定コア13に吸引されて所定量移動した時点でニードル20に当接して、ニードル20を開弁作動させる。第1バネ部材SP1は、ニードル20の開弁作動に伴い弾性変形して、ニードル20を閉弁作動させる閉弁弾性力を発揮する。カップ50は、第1バネ部材SP1とニードル20に当接して閉弁弾性力をニードル20へ伝達する弁体伝達部(円板部52)、および、可動コア30を噴孔側へ付勢する円筒形状の円筒部51を有する。ガイド部材60は、円筒部51の径方向への移動を規制しつつ軸線C方向への移動を案内するよう、円筒部51の外周面51dを摺動させる摺動面61bを有する。ガイド部材60には、摺動面61bの反噴孔側に繋がる面であって、カップ50との隙間を径方向に拡大させる向きに窪む形状の窪み面60aが形成されている。なお、弁体伝達部は円板形状の円板部52であり、円筒部51は、円板部52の円板外周端から噴孔側に延びる形状である。
カップ50の表面のうち、円筒部51の外周面を含み軸線C方向に対して平行に拡がる面を平行面とし、平行面の反噴孔側に繋がる面であって平行面よりも径方向内側に位置する面を連結面51eとし、平行面と連結面51eとの境界線を連結境界線51fとする。そして、連結境界線51fが軸線方向に移動する範囲M3の全体が、軸線方向のうち窪み面60aが形成されている範囲N1に含まれている。つまり、連結境界線51fの軸線方向位置は、ニードル20のフルリフト時および閉弁時のいずれであっても、窪み面60aが形成されている範囲N1にある。
そのため、カップ50がガイド部材60に摺動しながら軸方向に移動する際に、連結境界線51fは窪み面60aに対向して摺動面61bには接触しなくなる。よって、軸方向への面圧成分が大きい状態でカップ50がガイド部材60に押し当たることを抑制でき、カップ50の摩耗を抑制できる。そのため、カップ50の傾倒を抑制でき、ひいてはニードル20の傾倒を抑制できるので、ニードル20の開閉弁時期がばらつくことによる燃料噴射量ばらつきを抑制できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、窪み面60aのうち摺動面61bと隣接する隣接面60a1は、摺動面61bから遠ざかるにつれてカップ50との隙間CL1を径方向に徐々に拡大させる形状である。ここで、本実施形態に反して隣接面60a1が段差状に径方向を拡大させる形状である場合、段差の角部分が、噴孔側へ移動するカップ50に押し当たる際の面圧を高くすることとなり、摩耗促進が懸念される。この点を鑑み、本実施形態に係る隣接面60a1は、径方向に徐々に拡大させる形状であるため、上記面圧を緩和でき、カップ50とガイド部材60との摩耗促進の懸念を低減できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、隣接面60a1には、断面視において直線的に延びるテーパ形状面60a2が含まれている。そして、摺動面61bに対してテーパ形状面60a2が傾く傾斜角度θ1は、カップ50が傾倒する角度のうち想定される最大の傾倒角度θ2よりも大きい。そのため、傾倒したカップ50がテーパ形状面60a2に接触するおそれを低減でき、カップ50とガイド部材60との摩耗促進の懸念を低減できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、隣接面60a1と摺動面61bとの境界を含む境界部60bは、径方向内側に突出する向きに湾曲した形状である。ここで、本実施形態に反して上記境界部が尖った形状である場合には、その境界部が、噴孔側へ移動するカップ50に押し当たる際の面圧を高くすることとなり、摩耗促進が懸念される。この点を鑑みた本実施形態では、境界部60bが、径方向内側に突出する向きに湾曲した形状であるため、上記面圧を緩和でき、摩耗促進の懸念を低減できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、ガイド部材60は磁性材で形成され、カップ50は非磁性材で形成されている。これによれば、カップ50に電磁吸引力が径方向に作用して、カップ50の平行面がガイド部材60の摺動面61bに押し付けられることを回避できる。よって、カップ50とガイド部材60との摩耗を抑制できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、カップ50とガイド部材60とは同じ硬度である。一般的に非磁性材は磁性材に比べて低硬度である。それにも拘らず本実施形態では、先述した通り、カップ50には、一般的な非磁性材ではなく高硬度の非磁性材が用いられている。そのため、カップ50に電磁吸引力が作用することを回避しつつも、硬度差がある場合に低硬度側の部材が摩耗促進される、といった懸念を回避できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、カップ50の平行面とガイド部材60の摺動面61bとの隙間CL1は、カップ50とニードル20との隙間CL2より大きい。
ここで、ニードル20は、軸線C方向に対して傾いた状態で開閉作動することがある。ニードル20が傾くと、その傾倒力でカップ50も傾倒し、カップ50が傾倒するとカップ50がガイド部材60に押し当たる力が大きくなり、摩耗が懸念される。よって、このように摩耗が懸念される構成に窪み面60aを適用する本実施形態によれば、窪み面60aによる摩耗抑制効果がより一層有効に発揮されると言える。
<構成群Eの詳細説明>
次に、本実施形態に係る燃料噴射弁1が備える構成のうち、アウタコア31とインナコア32との圧入構造、およびその圧入構造に関連する構成を少なくとも含む構成群Eについて、図38および図39を用いて詳細に説明する。加えて、構成群Eの変形例について図40〜図42を用いて後述する。
図38に示すように、アウタコア31の内周面に形成された圧入面31pとインナコア32の外周面に形成された圧入面32pとが、互いに圧入固定されている。これらの圧入面31p、32pは、軸線C方向の全域に亘って形成されているわけではなく、軸線C方向の一部に形成されている。
本実施形態では、可動コア30の反噴孔側の一部に圧入面31p、32pが形成されており、以下の説明では、アウタコア31のうち圧入面31pが形成されている部分であって、圧入面31pを含む軸線C方向全体の部分を圧入領域311と呼ぶ。また、アウタコア31のうち圧入面31pが形成されていない部分であって、圧入面31pを含まない径方向全体の部分を非圧入領域312と呼ぶ。つまり、アウタコア31は、軸線C方向において、反噴孔側の圧入領域311と、圧入領域に対して軸線C方向に隣接する噴孔側の非圧入領域312とに区分される。
非圧入領域312には、インナコア32の係止部32iと軸線C方向に当接する係止部31bが形成されている。係止部32iは、インナコア32のガイド部材60等への衝突によりインナコア32がアウタコア31に対して噴孔側にずれてしまうことを防止する。なお、非圧入領域312の内周面のうち、係止部31bから圧入領域311との境界にかけての部分には、インナコア32との隙間B3が形成されている。換言すれば、圧入領域311と非圧入領域312との境界に隙間B3は位置する。
隙間B3は、インナコア32をアウタコア31へ圧入することに伴い生じるバリを閉じ込める領域として機能する。なお、アウタコア31の材質はインナコア32よりも軟らかいので、上記バリは、アウタコア31の圧入面31pに生じる。詳細には、インナコア32の圧入面32pの噴孔側端部が、アウタコア31の圧入面31pの一部を削り取ることで、上記バリは発生する。
なお、本実施形態では、アウタコア31にインナコア32を組み付けた後に、先述した連通溝32eおよびアウタ連通溝31eを切削加工等により形成し、その後、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bを研削している。これにより、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bの軸線Cにおける位置を揃えている。
図39の実線に示すアウタコア31の外周面は、インナコア32との圧入前の状態を示しており、上面視にて円形(真円)である。これに対し、インナコア32との圧入後の状態では、アウタコア31のうち圧入領域311の外周面は、図39の点線に示すように径方向外側に膨らむ。但し、貫通穴31aが存在する部分(小膨張部311a)は、貫通穴31aが存在していない部分(大膨張部311b)に比べて膨らみにくくなる。よって、圧入変形後の圧入領域311の外周面は真円にはならず、大膨張部311bが小膨張部311aより大きい直径の形状になる。また、圧入前の状態では、圧入領域311と非圧入領域312とで外周面の直径が同一である。したがって、圧入後の状態では、圧入領域311の外周面は非圧入領域312の外周面より大きい直径になる(図38参照)。
可動コア30を移動可能な状態で収容するホルダは、磁性を有する磁性部材である本体ボデー12、および本体ボデー12に対して移動方向に隣接する非磁性部材14を有し、本体ボデー12の端面と非磁性部材14の端面とは互いに溶接されている。ホルダのうち、圧入領域311の外周面に対向する部分を圧入対向部H1とし、非圧入領域312の外周面に対向する部分を非圧入対向部H2とする。また、圧入対向部H1の内周面と圧入領域311の外周面との径方向の隙間のうち、最小の隙間を圧入部隙間CL3とし、非圧入対向部H2の内周面と非圧入領域312の外周面との径方向の隙間のうち、最小の隙間を非圧入部隙間CL4とする。そして、圧入部隙間CL3が非圧入部隙間CL4より大きくなるように、圧入対向部H1の最小内径が非圧入対向部H2の最小内径より大きく形成されている。
圧入対向部H1の内周面は、可動コア30の移動方向(軸線C方向)に対して平行に拡がる形状である。非圧入対向部H2の内周面は、移動方向に対して平行に拡がる平行面H2a、および圧入対向部H1の内周面と平行面H2aとを繋ぐ連結面H2bを有する。連結面H2bは、平行面H2aに近づくにつれて徐々に内径が小さくなる形状である。非圧入対向部H2には、本体ボデー12の一部が含まれているものの、非磁性部材14は含まれておらず、平行面H2aおよび連結面H2bは本体ボデー12により形成される。換言すれば、本体ボデー12は、内径寸法が互いに異なる平行面H2aおよび連結面H2bを有する形状である。非圧入対向部H2と非圧入領域312との最小隙間である非圧入部隙間CL4は、本体ボデー12が形成する平行面H2aでの隙間に相当する。
より具体的には、圧入部隙間CL3によって形成される流路断面積は、非圧入部隙間CL4より形成される流路断面積より大きい。これらの流路断面積は、圧入部隙間CL3、CL4により形成される流路のうち、軸線C方向に対して垂直な断面の面積のことである。
圧入対向部H1の内周面H1aは、移動方向に対して平行に拡がる形状である。圧入対向部H1には、非磁性部材14の一部および本体ボデー12の一部が含まれている。非磁性部材14は、軸線C方向の全体に亘って均一の内径寸法に形成される。圧入対向部H1と圧入領域311との最小隙間である圧入部隙間CL3は、本体ボデー12のうち連結面H2bの反噴孔側の部分、または非磁性部材14での隙間に相当する。
・さて、固定コア13に吸引される可動コア30を、ガイド部材60等への衝突用のインナコア32と、磁気回路用のアウタコア31とを圧入固定して構成した場合、圧入によりアウタコア31の外径が僅かに膨らむ。その結果、可動コア30を収容するホルダの内周面とアウタコア31の外周面との隙間が小さくなり、隙間に存在する燃料から可動コア30が受ける流動抵抗が大きくなる。そして、圧入により外径が膨らむ量を管理することは困難なため、流動抵抗の大きさに機差ばらつきが生じ、可動コア30の移動速度にばらつきが生じることになる。その結果、開弁応答性に機差ばらつきが生じ、噴射量ばらつきが大きくなる。
この問題に対し本実施形態に係る燃料噴射弁1は、ニードル20(弁体)と、固定コア13と、可動コア30と、本体ボデー12(ホルダ)および非磁性部材14(ホルダ)と、ガイド部材60(ストッパ部材)と、を備える。可動コア30は、円筒形状であり、磁気吸引力によりニードル20とともに移動することで噴孔11aを開ける。ホルダは、燃料が充填される可動室12aを有し、可動室12aに可動コア30を移動可能な状態で収容する。ガイド部材60は、可動コア30に当接して、可動コア30の噴孔11aから離れる方向への移動を規制する。可動コア30は、ガイド部材60に当接するインナコア32、およびインナコア32の外周面に圧入固定されるアウタコア31を有する。アウタコア31は、可動コア30の移動方向のうちインナコア32の外周面に圧入固定される圧入領域311、およびインナコア32の外周面に圧入されていない、圧入領域311に対して移動方向に隣接する非圧入領域312を有する。そして、ホルダの内周面と可動コア30の外周面との隙間のうち、圧入領域311における最小の隙間CL3が、非圧入領域312における最小の隙間CL4より大きい。
ここで、アウタコア外周面とホルダ内周面との隙間に存在する燃料から可動コア30が受ける流動抵抗は、上記隙間の大きさが軸方向位置に応じて変化する形状の場合、最も小さくなっている隙間の影響を大きく受ける。そして、ホルダ内周面と可動コア外周面との隙間のうち圧入領域311における隙間CL3は、非圧入領域312における隙間CL4に比べて機差ばらつきが大きく生じる。よって、本実施形態に反して圧入領域311における最小の隙間CL3が非圧入領域312における最小の隙間CL4より小さくなっている場合、流動抵抗が圧入領域311の隙間CL3の影響を大きく受けることとなる。そのため、流動抵抗の機差ばらつきが大きく生じてしまう。これに対し、本実施形態によれば、圧入領域311における最小の隙間CL3が非圧入領域312における最小の隙間CL4より大きい。そのため、流動抵抗が圧入領域311における隙間CL3の影響を受けることを抑制でき、可動コア30の移動速度にばらつきが生じることを抑制できる。その結果、開弁応答性の機差ばらつきを抑制でき、ひいては噴射量ばらつきを小さくできる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、圧入対向部H1の内周面H1aは、移動方向に対して平行に拡がる形状である。また、非圧入対向部H2の内周面は、移動方向に対して平行に拡がる平行面H2a、および圧入対向部H1の内周面と平行面H2aとを繋ぐ連結面H2bを有する。そして連結面H2bは、平行面H2aに近づくにつれて徐々に内径が小さくなる形状である。
圧入により膨らみが大きく生じている部分(大膨張部311b)と殆ど膨らんでいない部分(小膨張部311a)との境界は、徐々に膨らむ形状になっている。この点を鑑み、徐々に内径が小さくなる連結面H2bを有する本実施形態によれば、連結面H2bの部分が形成する磁気回路のギャップをできるだけ小さくできる。なお、連結面H2bは、図38に示す如く、内径が直線的に徐々に変化するテーパ形状であってもよいし、湾曲して内径変化する湾曲形状であってもよいし、階段状に変化する段差形状であってもよい。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、ホルダは、磁性を有する本体ボデー12(磁性部材)、および本体ボデー12に対して移動方向に隣接する非磁性部材14を有し、本体ボデー12の端面と非磁性部材14の端面とが互いに溶接されている。これによれば、ホルダ内径に大小をつける加工と、ホルダ内周面のうち溶接痕を除去する加工とを一連の作業で実施できるので、ホルダ内径に大小をつける加工の手間を軽減できる。
・さらに、本実施形態に係る燃料噴射弁1では、アウタコア31には、移動方向に貫通する貫通穴31aが、周方向において3つ以上等間隔に形成されている。これによれば、可動室12aの燃料から可動コア30が受ける流動抵抗の低くなる箇所が、軸線方向周りに等間隔で3箇所以上存在することとなる。そのため、可動コア30が軸線C方向に移動する際に、軸線C方向に対する可動コア30の傾く向きが変化することを抑制できる。よって、可動コア30の挙動が不安定になることを抑制できるので、開弁応答性がばらつくことをより一層抑制できる。
[変形例E1]
図40に示す本変形例では、圧入領域311におけるアウタコア31の最大外径が、非圧入領域312におけるアウタコア31の最大外径より小さい。
具体的には、圧入前の状態で圧入領域311の外径を非圧入領域312の外径よりも十分に小さく形成しておき、圧入により圧入領域311が膨らんだ状態であってもなお、圧入領域311の外径が非圧入領域312の外径よりも小さくなるように形成する。要するに、圧入前の状態で、圧入領域311の外周面を切削加工して凹部311cを形成しておき、圧入して膨らんでもなお凹部311cが残るように、凹部311cの切削深さを十分に大きくしておく。また、非圧入対向部H2の内径寸法は、圧入対向部H1と同様にして、軸線C方向に亘って同一である。
以上により、圧入領域311の外周面が非圧入領域312より小さく形成され、かつ、非圧入対向部H2の内周面は圧入対向部H1と同一に形成されているので、圧入部隙間CL3が非圧入部隙間CL4より大きい。そのため、本変形例においても図39に示す燃料噴射弁1と同様の効果が発揮される。
[変形例E2]
図41に示す本変形例では、ホルダの圧入対向部H1の全てが非磁性部材14で形成されており、圧入対向部H1には本体ボデー12が含まれていない。例えば、図39の構造と比較して圧入面31p、32pの軸線C方向長さを短くすることで、圧入対向部H1の全てが非磁性部材14で形成される構造となっている。或いは、図39の構造と比較して非磁性部材14の軸線C方向長さを長くすることで、圧入対向部H1の全てが非磁性部材14で形成される構造となっている。本変形例によっても、圧入部隙間CL3が非圧入部隙間CL4より大きく形成されるので、図39に示す燃料噴射弁1と同様の効果が発揮される。
[変形例E3]
図42に示す本変形例では、圧入領域311のうち圧入により径方向に膨らんだ部分が除去されて、圧入領域311におけるアウタコア31の最大外径が、非圧入領域312におけるアウタコア31の最大外径と同一となるように形成されている。
具体的には、インナコア32との圧入前の状態において、上面視にて外周面が円形(真円)のアウタコア31を準備し(準備工程)、インナコア32と圧入させる(圧入工程)。その後、圧入により膨らんだ大膨張部311b(図39参照)を、圧入後に切削加工する(切削工程)ことで、上面視にて外周面が円形(真円)となるようにアウタコア31を形成している。また、圧入対向部H1および非圧入対向部H2の内径寸法は、軸線C方向に亘って同一である。したがって、圧入部隙間CL3と非圧入部隙間CL4とは同一となる。よって、本変形例によっても図39と同様の効果が発揮される。
(第2実施形態)
上記第1実施形態に係る閉弁力伝達部材はカップ50により提供されているのに対し、本実施形態に係る閉弁力伝達部材は、以下に説明する第1カップ501、第2カップ502および第3バネ部材SP3(図43参照)により提供されている。なお、以下に説明する構成以外については、本実施形態に係る燃料噴射弁の構成は、上記第1実施形態に係る燃料噴射弁の構成と同じである。
第1カップ501は、第1バネ部材SP1とニードル20に当接して、第1バネ部材SP1による閉弁弾性力をニードル20へ伝達する。要するに、第1カップ501は、上記第1実施形態に係るカップ50の円板部52と同じ機能を発揮する。第1カップ501には、第1実施形態と同様の貫通穴52aが形成されている。
第3バネ部材SP3は、軸線方向に弾性変形して弾性力を発揮する弾性部材である。第3バネ部材SP3の一端は、第1カップ501の当接面501aに当接し、第3バネ部材SP3の他端は、第2カップ502の当接面502aに当接する。これにより、第3バネ部材SP3は、第1カップ501と第2カップ502の間に挟まれて軸方向に弾性変形し、その弾性変形による弾性力を発揮する。
第2カップ502は、閉弁作動時に可動コア30に当接して、可動コア30を噴孔側へ付勢する。要するに、第2カップ502は、上記第1実施形態に係るカップ50の円筒部51と同じ機能を発揮する。そして、第3バネ部材SP3が、第1カップ501と第2カップ502の相互において軸方向に力を伝達する機能を発揮する。
ニードル20は、本体部2001および拡径部2002を有する。本体部2001の反噴孔側端部には、閉弁時弁体当接面21bが形成されている。この閉弁時弁体当接面21bは、上記第1実施形態と同様にして、閉弁力伝達部材(第1カップ501)の閉弁力伝達当接面52cに当接する。
拡径部2002は、閉弁時弁体当接面21bよりも噴孔側に位置し、本体部2001の直径を拡大させた円板形状である。拡径部2002の噴孔側の面には、開弁時弁体当接面21aが形成されている。この開弁時弁体当接面21aは、上記第1実施形態と同様にして、可動コア30の第1コア当接面32cに当接する。閉弁状態での開弁時弁体当接面21aと第1コア当接面32cとの隙間の軸線C方向長さが、上記第1実施形態に係るギャップ量L1に相当する。
コイル17への通電をオフからオンに切り替えた直後の状態では、磁気吸引力が可動コア30に作用して可動コア30が開弁側への移動を開始する。そして、可動コア30が第2カップ502を押し上げながら移動し、その移動量がギャップ量L1に達すると、ニードル20の開弁時弁体当接面21aに可動コア30の第1コア当接面32cが衝突する。
本実施形態では、ガイド部材60が廃止されており、固定コア13に可動コア30が当接することでニードル20の開弁作動量が規制される。そして、上述の如くニードル20に可動コア30が衝突した時点では、固定コア13と可動コア30との間には隙間が形成されており、この隙間の軸線C方向長さは、上記第1実施形態のリフト量L2に対応する。
この衝突時点までの期間においても、ニードル20には第1バネ部材SP1の弾性力が作用する。上記衝突の後、可動コア30は磁気吸引力によりさらに移動を続け、衝突後の移動量がリフト量L2に達すると、固定コア13に可動コア30が衝突して移動停止する。この移動停止時点での、ボデー側シート11sと弁体側シート20sとの軸線C方向における離間距離は、ニードル20のフルリフト量に相当し、先述したリフト量L2と一致する。
(第3実施形態)
上記第1実施形態に係る閉弁力伝達部材(カップ50)は、円筒部51および円板部52を有するカップ形状である。これに対し、本実施形態に係る閉弁力伝達部材は、円筒部51が廃止された、円板部52により構成される円板形状である(図44参照)。なお、以下に説明する構成以外については、本実施形態に係る燃料噴射弁の構成は、上記第1実施形態に係る燃料噴射弁の構成と同じである。
また、上記第1実施形態では、閉弁力伝達部材のうち可動コア30の当接面(第2コア当接面32b)が当接する面(コア当接端面51a)は、円筒部51に形成されている。これに対し、本実施形態では、円板部52の噴孔側の面が、可動コア30に当接するコア当接端面52e(図44参照)として機能する。
(他の実施形態)
この明細書における開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。例えば、上記第1実施形態に係る燃料噴射弁1は、構成群A、B、C、D、Eの全てを備えているが、任意に組み合わせた構成群を備えた燃料噴射弁であってもよい。
上記第1実施形態では、図6に示すように仮圧入を1回実施しているが、仮圧入を2回以上実施して、仮圧入毎に荷重計測を実施してもよい。これによれば、第2セット荷重を目標値にすることを高精度で実現できる。しかも、複数回の仮圧入毎に荷重を計測するので、第2バネ部材SP2の弾性係数を計測することが可能になり、本圧入での圧入量を高精度で算出できる。
また、図6に示す圧入作業では、圧入の進行を止めて中断した状態で第2セット荷重を計測しているが、圧入しながら第2セット荷重を計測してもよい。換言すると、第2セット荷重を計測しながら圧入していき、計測している第2セット荷重が目標値になった時点で圧入を停止して完了させればよい。
また、図6に示す圧入作業では、ニードルに当接した状態のカップ50で可動コア30の移動を規制しつつ、第2セット荷重を計測しているが、ニードル20の当接部21で可動コア30の移動を規制しつつ計測してもよい。
図12に示す連通溝32eは、第1コア当接面32cおよび第2コア当接面32bに加えて第3コア当接面32dにも形成されているが、第3コア当接面32dには形成されていなくてもよい。また、図12に示す連通溝32eは、第1コア当接面32cの径方向の全域に亘って形成されているが、第1コア当接面32cのうち少なくとも第2コア当接面32bに隣接する部分に形成されていればよい。
図16に示すアウタ連通溝31eは、貫通穴31aに連通させないように配置されているが、アウタ連通溝31eが貫通穴31aに連通するように配置してもよい。図19に示す連通溝32gは、第1コア当接面32c、第2コア当接面32bおよび第3コア当接面32dに跨って形成されているが、第3コア当接面32dには形成されていなくてもよい。
図21、図22および図23の例では、連通溝32eを廃止して連通溝32eの替わりに連通穴20c、摺動面連通溝20dおよび第2摺動面連通溝32hを備えている。これに対し、連通溝32e、連通穴20c、摺動面連通溝20dおよび第2摺動面連通溝32hのうちの任意の2つ以上を燃料噴射弁1が備えていてもよい。
図22の例では、ニードル20に摺動面連通溝20dを形成しているが、カップ50のうちニードル20が摺動する伝達部材側摺動面51c(図22参照)に摺動面連通溝を形成してもよい。図23の例では、インナコア32に第2摺動面連通溝32hを形成しているが、ニードル20のうちインナコア32と摺動する面に第2摺動面連通溝を形成してもよい。
図24の例では、カップ50と当接している状態の閉弁時弁体当接面21bへ燃料を供給するメイン流路20eが、ニードル20に形成された溝により提供されているが、カップ50に形成された溝により提供されてもよい。具体的には、円筒部51のコア当接端面51aに溝を形成することで供給流路を提供してもよい。
上記第1実施形態では、ニードル20のうち噴孔ボデー11の内壁面11cに対向する部分(ニードル先端部)と、カップ50の外周面51dとの2箇所で、可動部Mは径方向に支持されている。これに対し、可動コア30の外周面とニードル先端部との2箇所で、可動部Mは径方向から支持されていてもよい。
上記第1実施形態では、インナコア32が非磁性材で形成されているが、磁性材で形成されていてもよい。また、インナコア32が磁性材で形成される場合、アウタコア31に比べて磁性の弱い弱磁性材で形成されてもよい。同様にして、ニードル20およびガイド部材60が、アウタコア31に比べて磁性の弱い弱磁性材で形成されてもよい。
上記第1実施形態では、可動コア30が所定量移動した時点で、可動コア30をニードル20に当接させて開弁作動を開始させるコアブースト構造を実現するにあたり、第1バネ部材SP1と可動コア30との間にカップ50を介在させている。これに対し、カップ50を廃止して、第1バネ部材SP1とは別の第3バネ部材を設け、第3バネ部材により可動コア30を噴孔側へ付勢させるコアブースト構造であってもよい。
上記第1実施形態では、固定コア13と本体ボデー12との磁気短絡を回避させるべく、固定コア13と本体ボデー12との間に非磁性部材14を配置している。この非磁性部材14に替えて、上記磁気短絡を抑制する磁気絞り部を有した形状の磁性部材を、固定コア13と本体ボデー12との間に配置してもよい。或いは、非磁性部材14を廃止して、上記磁気短絡を抑制する磁気絞り部を固定コア13または本体ボデー12に形成してもよい。
上記第1実施形態に係るスリーブ40は、支持部43の上側(反噴孔側)に連結部42が延び、さらにその連結部42の上側に挿入円筒部41が延びる形状である。これに対し、スリーブ40は、支持部43の下側(噴孔側)に連結部42が延び、さらにその連結部42の下側に挿入円筒部41が延びる形状であってもよい。また、スリーブ40は、ニードル20の周りに環状に延びる中空形状のリングであってもよい。この場合、リングの上面が第2バネ部材SP2を支持し、リングの内周面が圧入部23に圧入されることとなる。
上記第1実施形態に係るカップ50は、円板部52および円筒部51を有するカップ形状である。これに対し、カップ50は平板形状であってもよい。この場合、平板の上側の面(上面)が第1バネ部材SP1に当接し、平板の下側の面(下面)が可動コア30に当接することとなる。
上記第1実施形態に係る支持部材18は円筒形状であるが、軸線C方向に延びるスリットが円筒に形成された断面C型形状であってもよい。
上記第1実施形態に係る可動コア30は、アウタコア31とインナコア32の2部品を有する構造である。そして、インナコア32は、アウタコア31より高硬度の材質であり、カップ50およびガイド部材60と当接する面と、ニードル20と摺動する面とを有する。これに対し、可動コア30は、インナコア32を廃止した構造であってもよい。
上述の如く可動コア30がインナコア32を廃止した構造である場合、可動コア30のうちカップ50およびガイド部材60と当接する当接面と、ニードル20と摺動する摺動面に、メッキが施されていることが望ましい。当接面に施されるメッキの具体例の1つにクロムが挙げられる。摺動面に施されるメッキの具体例の1つにニッケルリンが挙げられる。
上記第1実施形態に係る燃料噴射弁1は、固定コア13取り付けられたガイド部材60に可動コア30が当接する構造である。これに対し、ガイド部材60を廃止した固定コア13に可動コア30が当接する構造であってもよい。要するに、ガイド部材60にインナコア32が当接する構造であってもよいし、ガイド部材60を廃止した固定コア13にインナコア32が当接する構造であってもよい。また、ガイド部材60に、インナコア32を廃止した可動コア30が当接する構造であってもよいし、ガイド部材60を廃止した固定コア13に、インナコア32を廃止した可動コア30が当接する構造であってもよい。
上述の如く可動コア30がインナコア32を廃止した構造である場合、可動コア30の反噴孔側の面のうち、ニードル20に当接する面が第1コア当接面32cに相当する。また、上述の如くガイド部材60を廃止した構造である場合、可動コア30のうち、固定コア13に当接する面が第3コア当接面32dに相当する。
上記第1実施形態では、インナコア32のうちガイド部材60に当接する部分に連通溝32eが形成されている。これに対し、上述の如くガイド部材60を廃止した構造である場合、インナコア32のうち固定コア13に当接する部分に連通溝32eが形成される。また、上述の如く可動コア30がインナコア32を廃止した構造である場合、可動コア30のうち固定コア13に当接する部分に連通溝32eが形成される。
上記第1実施形態に係るカップ50は、ガイド部材60の内周面に接触しながら軸線C方向に摺動する。これに対し、カップ50は、ガイド部材60の内周面との間に所定の隙間を形成しつつ軸線C方向に移動する構造であってもよい。
上記第1実施形態では、第2バネ部材SP2の内周面が、スリーブ40の連結部42によりガイドされている。これに対し、第2バネ部材SP2の外周面が、アウタコア31によりガイドされていてもよい。
上記第1実施形態では、第2バネ部材SP2の一端は可動コア30に支持され、第2バネ部材SP2の他端は、ニードル20に取り付けられたスリーブ40に支持されている。これに対し、上記スリーブ40が廃止された構成であり、第2バネ部材SP2の他端が本体ボデー12に支持されていてもよい。
11a 噴孔、 13 固定コア、 17 コイル、 20 弁体、 23 圧入部、 30 可動コア、 40 固定部材、 41 挿入円筒部、 50 閉弁力伝達部材、 S12 圧入工程、 S13 荷重計測工程、 S15 圧入工程、 SP1 第1バネ部材、 SP2 第2バネ部材。

Claims (7)

  1. 燃料を噴射する噴孔(11a)を開閉する弁体(20)と、
    コイル(17)への通電に伴い磁気吸引力を生じさせる固定コア(13)と、
    前記固定コアに吸引されて反噴孔側へ所定量移動した時点で前記弁体に当接して、前記弁体を開弁作動させる可動コア(30)と、
    前記弁体の開弁作動に伴い弾性変形して、前記弁体を閉弁作動させる第1弾性力を発揮する第1バネ部材(SP1)と、
    前記弁体に固定された固定部材(40)と、
    前記固定部材と前記可動コアの間に挟まれて弾性変形し、前記可動コアを反噴孔側へ付勢する第2弾性力を発揮する第2バネ部材(SP2)と、
    を備え、
    前記弁体は、前記固定部材が反噴孔側へ圧入される圧入部(23)を有し、
    前記固定部材は、前記圧入部に圧入されることで前記弁体に固定されている燃料噴射弁。
    を抑制できる。
  2. 前記固定部材のうち少なくとも前記圧入部と接触する部分は、前記圧入部と異なる硬度である請求項1に記載の燃料噴射弁。
  3. 前記固定部材のうち少なくとも前記圧入部と接触する部分は、前記圧入部よりも低硬度である請求項2に記載の燃料噴射弁。
  4. 前記可動コアが前記弁体に対して噴孔側へ最大限に相対移動した場合であっても、前記固定部材および前記可動コアは互いに接触することなく離間している請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
  5. 前記固定部材は、前記圧入部に挿入される円筒形状の挿入円筒部(41)を有し、
    前記挿入円筒部の内周面が全周に亘って、前記圧入部の外周面に圧入されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料噴射弁。
  6. 燃料を噴射する噴孔(11a)を開閉する弁体(20)を、弾性変形して発揮される第1バネ部材(SP1)による第1弾性力で閉弁作動させ、磁気吸引力により移動する可動コア(30)で開弁作動させる構造、かつ、
    前記弁体に固定された固定部材(40)と前記可動コアの間に挟まれて弾性変形する第2バネ部材(SP2)による第2弾性力で、前記可動コアを反噴孔側へ付勢させる構造の燃料噴射弁(1)の製造方法であって、
    前記磁気吸引力により所定量移動した時点での前記可動コアに当接して前記開弁作動を開始する前記弁体に形成される圧入部(23)に、固定部材(40)を圧入させる圧入工程(S12、S15)と、
    前記圧入の途中で、前記可動コアを移動不可にした状態で前記第2弾性力を計測する荷重計測工程(S13)と、
    を含み、
    前記圧入工程では、前記計測の結果に基づき前記圧入の量を調整して前記圧入を完了させる、燃料噴射弁の製造方法。
  7. 前記燃料噴射弁は、前記弁体に対して相対移動可能に配置され、噴孔側へ相対移動することで前記弁体に当接して、前記第1弾性力を前記第1バネ部材から前記弁体へ伝達する閉弁力伝達部材(50)を備えており、
    前記荷重計測工程では、前記閉弁力伝達部材を相対移動させて前記弁体に当接させ、その当接した状態の前記閉弁力伝達部材を前記可動コアに当接させることで、前記可動コアの移動を規制させる請求項6に記載の燃料噴射弁の製造方法。
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