JP2019053268A - 可視光を透過し、且つ近赤外線及び赤外線をカットするガラス積層体 - Google Patents

可視光を透過し、且つ近赤外線及び赤外線をカットするガラス積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、可視光を透過し、且つ近赤外光及び赤外光を吸収するフィルター(ガラス)を提供することを目的とする。
【解決手段】可視光を透過し、且つ700nm以上の波長に対する透過率が6%未満のガラス積層体であって、
(1)ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、ガラス層B-1とガラス層B-2との間に挟持されており、
(2)該ガラス層B-1を構成する組成と該ガラス層B-2を構成する組成とが同一であり、
(3)該ガラス層A、該ガラス層B-1及び該ガラス層B-2は全て可視光を透過するガラス層であり、
(4)該ガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラス又は紫外線カットガラスから構成され、且つ該ガラス層B-1及び該ガラス層B-2が共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成される、
ことを特徴とするガラス積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、可視光を透過し、且つ近赤外線及び赤外線をカットするガラス積層体、およびその製造方法に関する。
赤色領域(760nm程度〜830nm程度)から900nm程度の波長をカットする近赤外線カットフィルターが存在する(特許文献1)。しかし、このような近赤外線カットフィルターは、おおよそ1150nm程度以上の波長の光の吸収が十分でないことが知られている。
一方で、おおよそ1150nm以上の波長を吸収する赤外線カットフィルターが存在する(非特許文献1)。しかし、このような赤外線カットフィルターは、おおよそ600nm程度〜900nm程度の波長を十分に吸収できないことが知られている。
特許第3835718号
「ガラス光学」成瀬省 著[共立出版株式会社]昭和35年5月5日初版3刷発行p.313〜316
近年の光学素子の高感度化に伴い、赤外領域の光までも赤色と感知されることによって、得られる画像が赤みを帯びてしまうという問題が生じている。そこで、このような問題を解決するための手段として、上記する近赤外線カットフィルターを採用し、得られる画像の赤みを除去する方法が考えられたが、このフィルターではカットが十分でない1000nm程度以上の波長も、赤色として光学素子が認識するため、有効な解決方法ではなかった。
一方で、上記する赤外線カットフィルターを用いると、近赤外線カットフィルターの守備範囲外の波長はカットできるものの、可視光の赤色部分に相当する領域から近赤外領域の波長のカットが不十分のため、得られる画像が帯びる赤みの除去には至らなかった。
そこで、近赤外線カットフィルターと赤外線カットフィルターとを貼り合わせることによって、これらの二種類の材料の特性を兼ね備えたカットフィルターを作製することが、上記する課題の解決手段として考えられた。
しかし、光学センサーに入射される光線をカットするためのフィルターとして、二種類の異なるフィルターを単に貼り合わせて用いると、画像センサー表面に結像する像が乱れてしまうため、貼り合わせ後にフィルターの透過波面を調節しながら研磨する必要があるところ、調節をしながら均一に研磨することは容易ではなく、更に組み合わせたフィルターの透過後の分光特性も精度よく制御できないため、上記する課題の現実的な解決手段とはいえなかった。特に、この問題は、異種の基板を貼り合わせて、フィルターの両面から一対の研磨手段で研磨する際に顕著である。
そこで、本発明は、上記課題を解決した、可視光を透過し、且つ近赤外光及び赤外光を吸収するフィルター(ガラス)を提供することを目的とする。
上記の課題を解決すべく、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、近赤外線カットガラス及び/又はIRカットフィルターと赤外線カットガラスとを、特定の方法によって組み合わせることにより、ガラス積層体の両面から一対の研磨手段で研磨する場合でも、フィルター透過後の分光特性に影響を与えることなく、可視光を透過しつつ、赤色領域の波長及びそれよりも大きい赤外領域の波長に対する透過率をシャープにカットするガラス積層体を得ることに成功した。また、IRカットフィルター及び紫外線カットガラスと、赤外線カットガラス又は近赤外線カットガラスとの組み合わせも上記する効果を発揮することも見出した。
本発明は以上に示す知見に基づいて完成されたものであり、下記に示す態様の発明を包含するものである。
項1 可視光を透過し、且つ700nm以上の波長に対する透過率が6%未満のガラス積層体であって、
(1)ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、ガラス層B-1とガラス層B-2との間に挟持されており、
(2)該ガラス層B-1を構成する組成と該ガラス層B-2を構成する組成とが同一であり、
(3)該ガラス層A、該ガラス層B-1及び該ガラス層B-2は、全て可視光を透過するガラス層であり、
(4)該ガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラス又は紫外線カットガラスから構成され、且つB-1及び該ガラス層B-2が共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成される、
ことを特徴とするガラス積層体。
項2 前記ガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラスから構成され、且つ前記ガラス層B-1及びB-2が共に赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする、上記項1に記載するガラス積層体。
項3 前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記ガラス層Aが挟持されておらず、該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする、上記項1に記載するガラス積層体。
項4 前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記IRカットコート膜層及び紫外線カットガラスから構成されるガラス層Aが挟持されており、該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする、上記項1に記載するガラス積層体。
項5 前記ガラス層B-1、前記ガラス層A並びに/若しくはIRカットコート膜層及び前記ガラス層B-2の厚さが、それぞれ0.2〜10:1:0.2〜10の比率を満たす、上記項1〜項4の何れか一項に記載するガラス積層体。
項6 550nm〜750nmにおける透過率が60%を示す波長と、透過率が6%を示す波長との差が、100nm以内である、上記項1〜項5の何れか一項に記載するガラス積層体。
項7 上記項1〜項6の何れか一項に記載するガラス積層体の片面又は両面に、更に反射防止膜が設けられる構造を有するガラス積層体。
項8 光学素子に入射される光線に対するフィルターとして用いられる、上記項1〜項7の何れか一項に記載するガラス積層体。
項9 上記項1〜項8の何れか一項に記載するガラス積層体の製造方法であって、
(1)前記ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に挟持され、且つ前記ガラス層B-1及び前記ガラス層B-2が最表面である挟持体を得る工程1、
(2)前記挟持体を、一対の研磨手段によって両面研磨する工程2を有することを特徴とする、製造方法。
本発明のガラス積層体は、可視光を透過し、且つ近赤外光及び赤外光を吸収することができる。
本発明のガラス積層体は、耐候性に優れるので、主に熱や湿度によるヤケから保護される効果を発揮する。
本発明のガラス積層体をデジタルカメラ、デジタルビデオ等の光学機器に含まれる光学素子が配置される光路に設けることによって、前記する光学素子を介して得られる画像及び/又は映像の赤みを除去することが期待される。
本発明のガラス積層体をデジタルカメラ、デジタルビデオ等の光学機器に含まれる光学素子が配置される光路に設けることによって、本発明のガラス積層体への入射光の反射を減衰することができ、その結果として前記する光学素子を介して得られる画像及び/又は映像のゴーストを軽減する効果を発揮する。
本発明のガラス積層体は、可視光領域の赤色部分および近赤外領域のある波長において、透過率が急激に低下する性質を発揮することができる。本発明のガラス積層体は、本発明のガラス積層体によって吸収を所望しない可視光領域の波長に対する透過率を高めることができる。
実験例1の結果を示す図。図中の破線は本発明のガラス積層体の一態様である、AR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層の構成の透過率を示す。図中の実線は、本発明のガラス積層体の一態様であるISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成の透過率を示す。図中の点線は、本発明のガラス積層体に含まれるISK157の透過率を示す。図中の二点鎖線は、本発明のガラス積層体に含まれるIEC700の透過率を示す。なお、図の縦軸は透過率(%)を示し、横軸は波長(nm)を示す。 実験例2の結果を示す図。図の縦軸は透過率(%)を示し、横軸は波長(nm)を示す。図中の実線は、製造例2にて作製したISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体のISK157(B-1)側から入射したときの結果を示し、図中の点線は同じ積層体のISK157(B-2)側から入射したときの結果を示す。 実験例3の結果を示す図。図中の破線はAR層/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体のISK157(B-1)側から入射した際の結果を示し、図中の実線は同じ積層体のISK157(B-2)側から入射した際の結果を示す。そして、図中の一点鎖点は、比較製造例にて作製したIRカットコート膜層/ISK157/IEC510/ISK157/ARの構成のガラス積層体のIRカットコート膜層から入射した時の透過率を示す。 実験例4の結果を示す図。図中の実線はAR層/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体のISK157(B-1)側から入射した際の結果を示し、図中の破線は同じ積層体のISK157(B-2)側から入射した際の結果を示す。そして、図中の一点鎖点は、比較製造例にて作製したIRカットコート膜層/ISK157/IEC510/ISK157/ARの構成のガラス積層体のIRカットコート膜層から入射した時の反射率を示す。 本発明の実施例にて使用するAR層(反射防止層)の分光特性(片面反射率)を表すグラフ。 実験例4の結果の考察に使用する、本発明のガラス積層体を画像センサー及び撮像レンズ群と共に使用した場合の模式図を示す図。AはIRカットコート層を本発明のガラス積層体の表面に設けた場合の態様を示し、そしてBはIRカットコート層を本発明のガラス積層体の内部に設けた場合の態様を示す。 実験例5の結果を示す図。製造例4で作製したAR層/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の透過率を示す。 実験例6の結果を示す図。製造例4で作製したAR層/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の反射率を示す。図中の実線はB-1側から照射した際の反射率を示し、点線はB-2側から照射した際の反射率を示す。 実験例5の結果を示す図。製造例5で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の透過率を示す。 実験例6の結果を示す図。製造例5で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の反射率を示す。図中の実線はB-1側から照射した際の反射率を示し、点線はB-2側から照射した際の反射率を示す。 実験例5の結果を示す図。製造例6で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の透過率を示す。 実験例6の結果を示す図。製造例6で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の反射率を示す。図中の実線はB-1側から照射した際の反射率を示し、点線はB-2側から照射した際の反射率を示す。 実験例5の結果を示す図。製造例7で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の透過率を示す。 実験例6の結果を示す図。製造例7で作製したAR層/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/IEC509(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の反射率を示す。図中の実線はB-1側から照射した際の反射率を示し、点線はB-2側から照射した際の反射率を示す。
ガラス積層体
本発明のガラス積層体は、可視光を透過し、700nm以上の波長に対する透過率が6%未満である。好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1%以下であり、0.5%以下とすることが最も好ましい。
本発明のガラス積層体は、少なくとも3層の構造を有する。具体的にはガラス層A及び/又はIRカットコート層が、ガラス層B-1とガラス層B-2との間に挟持された構造を有する。上記するガラス層B-1を構成する組成とガラス層B-2を構成する組成は同一である。
上記するガラス層Aガラス層B-1及びガラス層B-2は、全て可視光を透過するガラスである。上記するガラス層Aは、赤〜近赤外線カットガラス又は紫外線カットガラスから構成される。
上記する赤〜近赤外線カットガラスがカットする(吸収する)波長は、可視光(より好ましくは、赤以外の可視光を透過)を透過し、且つ近赤外線をカットする限りにおいて、特に限定されない。赤以外の可視光とは、例えば400〜650nmの波長の光を例示することができる。具体的には、ガラス層の厚さが0.5〜1mmである時の吸収波長が、650nm〜1300nm程度の透過率50%以下である近赤外線吸収カットガラスを挙げることができる。なお、上記する透過率50%以下の吸収とは、上記する具体的な吸収波長の主要な吸収体とすることもできる。
赤〜近赤外線カットガラスによる上記する波長に対する吸収の程度(透過率の低さの程度)は、本発明の課題を解決する限りにおいて、特に限定されない。例えば、10%未満の透過率を挙げることができ、好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下、更に好ましくは6%以下、更に好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下の透過率を挙げることができる。
上記する赤〜近赤外線カットガラスの組成は、可視光を透過し、且つ近赤外線を吸収する限りにおいて、特に限定されない。具体的には、銅化合物を含有するリン酸塩系ガラスを挙げることができる。このようなガラスに溶解するための原料として用いられる銅化合物の態様は特に限定されない。例えば、2価の銅化合物である酸化銅等を挙げることができる。
上記する本発明のガラス組成物に用いることができる赤〜近赤外線カットガラスは、本発明の課題を解決する限りにおいて、自由に選択して入手することができる。例えば、株式会社五鈴精工硝子製の、IEC509、IEC510、IEC700等に代表されるIEC-シリーズ製品、HOYA株式会社製のC-シリーズ製品群、ショットAG製のBG-シリーズ製品群、AGC株式会社製のNF-シリーズ製品群、成都光明光電株式有限会社製のQB-シリーズ製品群等を挙げることができる。
上記する紫外線カットガラスがカットする(吸収する波長)は、可視光(より好ましくは、紫以外の可視光を透過)を透過し、且つ紫外線をカットする限りにおいて、特に限定されない。紫以外の可視光とは、例えば430〜700nmの波長の光を例示することができる。具体的には、ガラス層の厚さが0.5〜1mmである時の吸収波長が、200nm〜400nm程度の透過率が50%以下である紫外線吸収カットガラスを挙げることができる。なお、上記する透過率50%以下の吸収とは、上記する具体的な吸収波長の主要な吸収体とすることもできる。
紫外線カットガラスによる上記する波長に対する吸収の程度(透過率の低さの程度)は、本発明の課題を解決する限りにおいて、特に限定されない。例えば、10%未満の透過率を挙げることができ、好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下、更に好ましくは6%以下、更に好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下の透過率を挙げることができる。
上記する紫外線カットガラスの組成は、可視光を透過し、且つ紫外線を吸収する限りにおいて、特に限定されない。具体的には、銅化合物を含有するホウ珪酸塩系ガラスを挙げることができる。このようなガラスに溶解するための原料として用いられる銅化合物の態様は特に限定されないが、例えば一価の銅化合物である酸化第一銅等を挙げることができる。
上記する本発明のガラス組成物に用いることができる紫外線カットガラスは、本発明の課題を解決する限りにおいて、自由に選択して入手することができる。例えば、株式会社五鈴精工硝子製の、ITY400、ITY418、ITY430等に代表されるITY-シリーズ製品を挙げることができる。
上記する赤外線カットガラスが吸収する波長は、可視光を透過し、且つ赤外線をカットする限りにおいて、特に限定されない。具体的には、ガラス層の厚さが0.5〜1mmである時の吸収波長が、800nm〜2000nm程度の透過率50%以下である赤外線カットガラスを挙げることができる。なお、上記する透過率50%以下の吸収とは、上記する具体的な吸収波長の主要な吸収体とすることもできる。
赤外線カットガラスによる上記する波長に対する吸収の程度は、本発明の課題を解決する限りにおいて、特に限定されない。例えば、10%未満の透過率を挙げることができ、好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下、更に好ましくは6%以下、更に好ましくは5%以下、更に好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下の透過率を挙げることができる。
上記する本発明の各種ガラスの透過率の測定は、公知の機器を用い、公知の方法を採用して測定することができる。公知の機器として、例えば、日立製作所製のU4100自記分光光度計を挙げることができる。また、公知の方法とは、例えば上記する日立製作所製のU4100自記分光光度計を用いる際には、SCAN SPEED300nm/min及びSLIT幅4nmの測定条件で、200〜2000nmの測定範囲の透過率を測定することができる。
上記する赤外線カットガラスの組成は、可視光を透過し、且つ赤外線を吸収する限りにおいて、特に限定されない。具体的には、鉄化合物を含有するリン酸塩系ガラスを挙げることができる。このようなガラスに溶解するための原料として用いられる鉄化合物の態様は特に限定されないが、例えば2価の鉄化合物である酸化鉄を挙げることができる。
上記する本発明のガラス組成物に用いることができる赤外線カットガラスは、本発明の課題を解決する限りにおいて、自由に選択して入手することができる。例えば、株式会社五鈴精工硝子製の、ISK157、ISK167、ISK171等に代表されるISK-シリーズ、HOYA株式会社製のHA-シリーズ、ショットAG製のKG-シリーズ等を挙げることができる。
なお、上記するカットガラスの具体的な波長及びその波長に対する透過率は、その厚さによって変更し得る。例えば、カットガラスの厚さが薄くなるほど、透過率50%の吸収波長が長波長へシフトする傾向を示す。
本発明のガラス積層体に含有されるIRカットコート膜層とは、一般的にはエッジフィルターと呼ばれる透過帯と不透過帯とが急激に変化する反射膜でIR帯域の光を反射させ、可視帯域の光を透過させる効果を発揮する層である。
この様なIRカットコート膜層とは、本発明の課題を解決できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、TiO2又はSiO2等に代表される可視領域において透明な高屈折率又は低屈折率材料の組み合わせによる多層膜の層を挙げることができる。前記する多層膜として、例えば、真空蒸着して得られる多層膜等を挙げることができる。また、「光学薄膜フィルターデザイン」小檜山光信著第5章エッジフィルターP203-P210に記載される方法を参照して、本発明のガラス積層体にIRカットコート膜層を設けることもできる。
上記するIRカットコート層が上記するガラス層B-1及びガラス層B-2にガラス層Aと共に挟持される時、本発明のガラス積層体が発揮する赤色領域及び近赤外領域のある波長における透過率の低下の度合いをより急激にすることが可能となる。
本発明のガラス積層体の一態様として、上記するガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラスから構成されるとき、上記するガラス層B-1及びB-2は共に赤外線カットガラスから構成される態様を挙げることができる。
本発明のガラス積層体の一態様として、上記する前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記ガラス層Aが挟持されていない態様、例えば、上記する前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記IRカットコート膜層のみが挟持される態様では、該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成される態様を挙げることができる。これらの態様の中でも、400〜700nmの透過率を極力高くしてノイズの影響を少なくするという面から、ガラス層B-1及びB-2が共に赤外カットガラスであることが好ましい。他方、近赤外領域の波長の迷光を抑えるという面から、ガラス層B-1及びB-2が共に赤〜近赤外線カットガラスであることが好ましい。
本発明のガラス積層体の一態様として、上記するガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記IRカットコート膜層及び紫外線カットガラスから構成されるガラス層Aが挟持されており、且つ該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成される態様を挙げることができる。本発明のガラス積層体に紫外線カットガラスが含有されることによって、光源からの紫外線によるフレア、又は画像に青味かかることを低減する作用を発揮することが期待される。これらの態様の中でも、400〜700nmの透過率を極力高くしてノイズの影響を少なくするというの面からガラス層B-1及びB-2が共に赤外カットガラスであることが好ましい。他方、近赤外領域の波長の迷光を抑えるという面から、ガラス層B-1及びB-2が共に赤〜近赤外線カットガラスであることが好ましい。
本発明のガラス積層体に含有されるガラス層A及び/又はIRカットコート膜層、ガラス層B-1及びガラス層B-2の厚さは、本発明の課題を解決できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、上記するガラス層B-1、ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層及びガラス層B-2の厚さをそれぞれ0.2〜10:1:0.2〜10程度の比率とすることができる。好ましくは、0.5〜5:1:0.5〜5程度の比率、更に好ましくは1〜5:1:1〜5程度の比率とすることができ、1.5〜2.5:1:1.5〜2.5程度の比率とすることが、最も好ましい。
本発明のガラス積層体の厚さも、本発明の課題を解決できる限りにおいて特に限定されない。具体的には、0.5〜3.0mm程度とすることができる。好ましくは1.0〜2.0mm程度、とすることが最も好ましい。
本発明のガラス積層体は、可視光領域の赤色領域および近赤外領域のある波長において、透過率が急激に低下する分光特性を有するものとすることができる。このような分光特性は、画像センサーの感度特性を視感度特性に合わせ込むことに効果を発揮することが期待される。上記する分光特性を特定するための数値範囲は、本発明の課題を解決できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、550nm〜750nmにおける透過率が60%を示す波長と、透過率が6%を示す波長の差が、通常は100nm程度以内とすることができる。好ましくは、80nm程度以内、より好ましくは60nm程度以内であり、30nm程度以内とすることが、最も好ましい。
単層膜の反射防止膜であれば、屈折率が1〜1.5程度と比較的低いMgF2等からなる材質を挙げることができる。多層膜であれば、屈折率が高い膜と低い膜を交互に設けて、多層膜への入射光を上記に設けた各膜の界面反射を積極的に生じさせることによる反射光同士での干渉作用に基づき、反射防止作用を発揮させることができる。
本発明のガラス積層体に設ける反射防止膜の典型例として、例えば、図5のグラフにて表される分光特性(片面反射率)を示す反射防止膜を挙げることができる。
上記する本発明のガラス積層体は、700nm以上の波長の透過率を5%未満にすることができるので、例えば、これを光学素子が配置される光路に設けることによって、光学素子を介して得られる画像の赤みを低減させる効果が期待される。
よって、本発明のガラス積層体は、光学素子に入射される光線に対するフィルターとして好適に用いることができる。
光学素子とは、特に限定されない。例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオ、監視用、検査用の撮像素子等の光学機器に含まれる光学素子を例示することができる。中でも、CCDやCMOS系の光学素子等を挙げることができる。この様なCCDやCMOSセンサーの撮像素子は赤外部に感度を持っているため、人間の目では感知できない赤外線も「色」として感知してしまい、特に、赤のセンサーに強く見られるので画像及び/又は映像が赤みを帯びてしまう現象が起こる。
上記するIRカットコート膜層を有する本発明のガラス積層体を、光学素子が配置される光路に設けることによって、より可視光の光を画像センサーに伝達してノイズの少ない画像を得ることが可能となる。またIRカットコート膜層をガラス層B-1及びB-2で挟持することで、本発明のガラス積層体への入射光の反射が減衰され、その結果として光学素子を介して得られる画像及び/又は映像のゴーストを軽減する効果を発揮する。
ガラス積層体の製造方法
上記する本発明のガラス積層体の製造方法は、
(1)ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に挟持され、且つ前記ガラス層B-1及び前記ガラス層B-2が最表面である挟持体を得る工程1、
(2)前記挟持体を、一対の研磨手段によって両面研磨する工程2
を有することを特徴とする、製造方法である。
工程1について
本発明のガラス積層体の製造方法における工程1は、ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、ガラス層B-1とガラス層B-2との間に挟持され、且つ前記ガラス層B-1及び前記ガラス層B-2が最表面である挟持体を得る工程である。ガラス層A、ガラス層B-1及びガラス層B-2とは、上記するガラス積層体で特定したものと同じものとすることができる。
前記ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層とガラス層B-1及び前記ガラス層Aとガラス層B-2の間は、接着剤等を用いて、硬化させることができる。上記する接着剤は、本発明の課題を解決できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、アクリル系・エポキシ系のUV硬化樹脂又は熱硬化樹脂等を挙げることができる。
なお、上記する接着剤の屈折率は、本願発明の効果を発揮する範囲に限って、特に限定されない。例えば、界面反射を極力防止するために、基板ガラスの屈折率である、nD=1.52〜1.54程度の屈折率を挙げることができる。
上記する接着剤を接着面に塗布した後、各種接着剤を用いた硬化作用に適宜必要な処理を経て、上記する挟持体を製造することができる。上記する工程にて得られる挟持体の厚さは、上記する本発明のガラス積層体の厚さから1〜10μm程度より厚くすることができる。なお、前記ガラス層Aとガラス層B-1及び前記ガラス層Aとガラス層B-2の間の接着工程の前に、各ガラス層の接着させる表面のゴミや汚れを除去する工程が含まれていてもよい。
本発明のガラス積層体に、上記するIRカットコート膜層が設けられる場合には、所望する位置にIRカットコート膜層を設け、上記する前記ガラス層Aとガラス層B-1又は前記ガラス層Aとガラス層B-2の間と同様に、接着剤等を用いて硬化することができる。
また、反射防止膜作製手順としては、例えば反射防止膜に設ける膜材を、真空中で電子ビームやヒーター加熱により蒸気にしてガラス層の表面と接触させることにより、膜材が所定の厚みでガラス層に積層され、密着させる真空蒸着法を挙げることができる。
工程2について
本発明のガラス積層体の製造方法における工程2は、工程1によって得られる挟持体を、一対の研磨手段によって両面研磨する工程である。
上記する工程2における一対の研磨手段とは、両面から挟みながら研磨できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いる手段、両面ラップ機を用いる手段、両面研磨機を用いる手段又は研磨剤を用いるを用いる手段等を挙げることができる。
上記する研磨剤を用いる手段とは、本発明の課題を解決できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、CeO2、Al2O3、ZrO2又はSiO2等の研磨剤を挙げることができる。
上記する工程2における両面研磨とは、特定の条件下にて実施することができる。例えば、貼り合わせる各基板の厚みが、ガラス積層体の分光特性に大きく影響するのでガラス層Aは元々単独で所定の厚みになるように両面研磨したものを準備するので問題なく、ガラス層Bはガラス層B-1とガラス層B-2の合算の厚みが所定の厚みとなるように削り代を制御する条件にて実施することができる。
以下に、本発明をより詳細に説明するための実施例を示す。なお、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
(製造例1)
ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)
赤〜近赤外線カットガラスであるIEC700フィルター及び赤外線カットガラスであるISK157フィルター(共に、株式会社五鈴硝子社製)をそれぞれ所定の厚みになるまで両面研磨したものを準備した。以下に、これらのフィルターの化学組成を示す。
上記するIEC700フィルターの両側を、アクリル系UV硬化接着剤である接着剤グルーラボ製GL-1002を介してIEC157フィルターで挟み込んだ積層体を作製した。ここで、両フィルターの貼り付け面の洗浄を行って、ゴミ及び汚れ等を除去した。
適量の接着剤を各面に塗布した後に、空気を外に逃がしながら圧力をかけて20μm程度以下の均等な厚さになるように治具にて仮止めした後、UV光を照射して接着剤を硬化させた。なお、積層体からはみ出た接着剤は、必要に応じて溶剤を用いて洗浄又は拭きあげ処理に供して除去した。
上記の方法にて作製した積層体を一対の研磨剤を用いて挟みながら両面研磨工程に供した。使用した研磨剤はミレーク(三井金属)である。また、表面研磨工程は、両面ラップ盤(SPEEDFAM製)を用いて行い、2時間をかけてラップ及び研磨を行った。このようにしてISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体を得た。
(製造例2)
AR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層
また、ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の両面に、反射防止層(これを、AR層と呼ぶことがある。)も積層した。このAR層は、多層膜用イオンアシスト機能を有するコート機としてHOC-1300(株式会社オプトラン)を用いて、Ta2O5(株式会社ソルテック)及びSiO2(DON CO., LTD)を蒸着させることによって製造した。このようにして、AR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体を得た。なお、ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の両面に積層したAR層は、図5のグラフで表される反射率を有する。
(実験例1)
上記の製造例1及び2にて得られた各積層体の透過率を、日立製作所製のU4100自記分光光度計を用いて測定した。測定条件としてSCAN SPEEDは300nm/min、SLIT幅4nm、測定範囲200〜2000nmとした。結果を図1に示す。
図1の実線は、上記するISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体の透過率を示す。ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体は、可視光領域であるおおよそ350nm〜650nm付近の透過率が高く、700nm以降の波長の光に対する透過率がおおよそ6%未満と、近赤外線及び中赤外線領域に相当する光を、殆んど透過しない事が明らかとなった。そして、550nm〜750nmにおける透過率が急激に減少する傾向も見受けられた。このような分光特性は、画像センサーの感度波長領域である近赤外〜赤外領域の不要な光をカットし、可視域をできるだけ光量を落とさずにセンサーまで届けるといった効果を発揮することが期待できる。この効果は赤外光領域に感度を持つ撮像素子において画像が赤みを帯びることを抑える効果に繋がる。
また、このような分光特性は、550nm〜750nmにおける透過率が60%を示す波長と、透過率が6%を示す波長との差が、おおよそ100nm以内であると表現することもできる。
図1の破線は上記するAR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体の透過率を示す。AR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体はISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体と同様に、可視光領域の光に対する透過率が高く、700nm以降の波長に対する透過率がおおよそ6%未満とほぼ同等の性質を示した。
さらに、AR層/ISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体は、可視光領域に対する透過率を、AR層を設けないISK157(B-1)/IEC700/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体と比較して、おおよそ8%程度に上昇させることも明らかとなった。このことから、AR層を設けることによって、可視光領域の透過率を上昇させつつ、700nm以上の近赤外線及び中赤外線領域に相当する光を吸収することが明らかとなった。
(製造例3)
AR/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)/AR
先ず、2枚の赤外線カットガラスであるISK157フィルター及び1枚の赤〜近赤外線カットガラスであるIEC510フィルター(株式会社五鈴硝子社製)を準備し、それぞれ所定の厚みになるまで両面研磨した。具体的なIEC510フィルターの化学組成は以下のとおりである。
次いで、片方のISK157(これを、ISK157(B-1)とする)の片面にIRカットコート膜層を作製した。ここで、IRカットコート膜層は、真空蒸着もしくはイオンアシスト法によって作製した。
このようにして作製したISK157(B-1)のIRカットコート膜層の作製面に、上記に準備したIEC510を、上記するGL-1002を介して接着させた。そして、IEC510の非接着面に対してもう一枚準備したISK157(非IRカットコート膜;これを、ISK157(B-2)とする)を、上記するGL-1002を介して接着させた。
接着させたガラス積層体を、製造例1と同様に所定の厚みになるまで両面研磨工程に供した。このようにして、ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体を作成した。
また、製造例2と同様にして、ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体の両面に対してAR層を積層し、AR/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510(B-1)/ISK157/ARの構成のガラス積層体を得た。
(実験例2)
製造例3にて得られたAR層/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/IEC510/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体を、実験例1と同様にして透過率を測定した。なお、入射方向をISK157(B-1)側とISK157(B-2)側とに分けて実験を行った。結果を図2に示す。
図2で分かるように、IRカットコート膜層を内包した上記するガラス積層体において、どちらのISK157面側から入射しても透過率が変わらないことがわかる。すなわち、これら積層体において透過率に関しては基板の積層の順番には影響がないといえる。
(比較製造例)
IRカットコート膜層/ISK157(B-1)/IEC510/ISK157(B-2)/AR層
先ず、2枚のISK157フィルター及び1枚のIEC510フィルター(株式会社五鈴硝子社製)を準備し、それぞれ所定の厚みになるまで両面研磨した。次いで、準備したIEC510を2枚のISK157に挟み込む形で上記するGL-1002を介して接着させた。
接着させたガラス積層体を、製造例1と同様に所定の厚みになるまで両面研磨工程に供した。次に、得られた積層体の片面にIRカットコート膜層をコートした。ここで、IRカットコート膜層は、真空蒸着もしくはイオンアシスト法によって、作製した。
最後に、製造例2と同様にして、得られたガラス積層体の非IRカットコート面に対してAR層を積層して、IRカットコート膜層/ISK157(B-1)/IEC510/ISK157(B-2)/AR層の構成のガラス積層体を得た。
(実験例3)
製造例3にて得られたガラス積層体と共に、比較製造例にて得られたガラス積層体の透過率を、実施例1と同様にして測定した。なお、製造例3にて得られたガラス積層体については、実験例2と同様に、入射方向をISK157(B-1)側とISK157(B-2)側とに分けて実験を行った。また、比較製造例にて得られたガラス積層体については、IRカットコート膜層から入射した。これらの結果を図3に示す。
図3から分かるように、比較製造例にて得られた構成のガラス積層体のIRカットコート膜層から入射したときの透過率は、上記の実験例2にて確認した透過率とほぼ同じであることが分かった。
(実験例4)
製造例3にて得られたガラス積層体と共に、比較製造例にて得られたガラス積層体の反射率を測定した。具体的には、日立製作所製のU4100自記分光光度計に反射率測定用治具を装着して、定法に従って上記構成のガラス積層体の反射率の測定を行った。なお、製造例3にて得られたガラス積層体については、実験例2と同様に入射方向をISK157(B-1)側とISK157(B-2)側とに分けて実験を行った。また、比較製造例にて得られたガラス積層体については、IRカットコート膜層から入射した。結果を図4に示す。
図4から分かるように、比較製造例にて得られる構成のガラス積層体のIRカットコート膜層から入射したときの反射率は、かなりの程度の光線が反射されてしまうことが明らかとなった。これと比較して、製造例3にて作製したガラス積層体の反射率は大きく減衰している傾向、すなわち光線の反射を抑えて迷光を抑制する傾向であることが判明した。
図5Aは、ガラス積層体の最表面にIRカットコート膜層を設けた、比較製造例にて作製したガラス積層体を画像センサー及び撮像レンズ群と共に使用した場合の模式図を示す。
この場合、図4に示すようにガラス積層体の最表面に設けたIRカットコート膜層にて強く反射するので、この反射光が入射側に配置したレンズ群の表面で再反射され、迷光となって戻ってくることが容易に想像される。この迷光はガラス積層体を通り抜けると赤の撮像素子に感応されるため画像が赤みを帯びたものになってしまう。このようにIRカットコート層をガラス積層体の最表面に設けるた場合が好ましくない事が容易に想起できる。
一方で、図5Bは、ガラス積層体の内部にIRカットコート膜層を設けた、製造例3にて作製したガラス積層体を画像センサー及び撮像レンズ群と共に使用した場合の模式図を示す。
この場合、図4に示すように比較製造例にて作製したガラス積層体よりも反射率が低いので、迷光が少なくなり、結果としてより赤みのあるゴーストやフレアが除去されることが示唆される。
(製造例4)
AR/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)/AR
上記する製造例1〜3にて使用したISK157(B-1)の片面に、上記する製造例3と同様にIRカットコート膜層をコートした。そして、このようにして作製したISK157(B-1)のIRカットコート膜層の作製面に、上記する製造例3と同様にGL-1002を介してもう一枚のISK157(B-2)を接着させた。その後、製造例2と同様にISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体の両面に対してAR層を積層した。
上記する方法にて接着させたガラス積層体を、製造例1と同様に所定の厚みになるまで両面研磨工程に供した。このようにして、ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体を作成した。その後、製造例2と同様にISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体の両面に対してAR層を積層した。
(製造例5)
AR/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/AR
下記の表3に示す組成の赤〜近赤外線カットガラス体であるIEC509(株式会社五鈴硝子社製)の片面に、上記する製造例4と同様にIRカットコート膜層をコートした。そして、このようにして作製したIEC509(B-1)のIRカットコート膜層の作製面に、上記する製造例4と同様にGL-1002を介してもう一枚のIEC509(B-2)を接着させた。
上記する方法にて接着させたガラス積層体を、製造例1と同様に所定の厚みになるまで両面研磨工程に供した。その後、製造例2と同様にこのIEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)の構成のガラス積層体の両面に対してAR層を積層した。このようにしてAR/IEC509(B-1)/IRカットコート膜層/IEC509(B-2)/ARの構成のガラス積層体を作成した。
(製造例6)
AR/ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/ISK157(B-2)/AR
先ず、2枚のISK157フィルター及び1枚の紫外線カットガラスであるITY400フィルター(株式会社五鈴硝子社製)を準備し、それぞれ所定の厚みになるまで両面研磨した。具体的なITY400フィルターの化学組成は以下のとおりである。
次いで、片方のISK157(これを、ISK157(B-1)とする)の片面に、上記する製造例3と同様にIRカットコート膜層を作製した。このようにして作製したISK157(B-1)のIRカットコート膜層の作製面に、上記に準備したITY400を、上記するGL-1002を介して接着させた。そして、ITY400の非接着面に対してもう一枚準備したISK157(非IRカットコート膜;これを、ISK157(B-2)とする)を、上記するGL-1002を介して接着させた。上記する方法にて接着させたガラス積層体を、製造例1と同様に所定の厚みになるまで両面研磨工程に供した。このようにして、ISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体を作成した。
その後、製造例2と同様にISK157(B-1)/IRカットコート膜層/ISK157(B-2)の構成のガラス積層体の両面に対してAR層を積層した。
(製造例7)
AR/ISK509(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/ISK509(B-2)/AR
ISK157に代えてIEC509を用いた以外は上記する製造例5と同様にして、AR/ISK509(B-1)/IRカットコート膜層/ITY400/ISK509(B-2)/ARを製造した。
(実験例5)
製造例4〜7にて得られた各ガラス積層体の透過率を実験例1と同様に測定した。結果を図6、8、10及び12に示す。
この結果、製造例4〜7の何れのガラス積層体も、製造例1〜3に示す各ガラス積層体と同様に可視光領域であるおおよそ350nm〜650nm付近の透過率が高く、700nm以降の波長の光に対する透過率がおおよそ6%未満と、近赤外線及び中赤外線領域に相当する光を、殆んど透過しない事が明らかとなった。
また、紫外線吸収ガラスを含む製造例6及び7の構成のガラス積層体は、共に400nm前後において紫外線をシャープにカットしていることから青いフレアやゴーストを低減する効果を発揮することが見て取れた。
(実験例6)
製造例4〜7にて得られた各ガラス積層体の反射率を実験例4と同様に測定した。結果を図7、9、11及び13に示す。各ガラス積層体のB-1面から又はB-2面からの入射によって、可視光領域の範囲に限り特にその反射率に変化がなかった。
上記する実験例5及び6の考察を以下に示す。製造例4と5又は製造例6と7との比較から分かるように、B-1面及びB-2面として赤外線カットガラスを使用した場合には、近赤外の反射光は多いものの、400〜700nmの可視光を減衰せずに透過していることから、製造例4及び6の態様のガラス積層体は、赤色のノイズが問題となるような用途(例えば、高精細高感度カメラなど)での使用には最適な組み合わせといえる。
また、B-1面及びB-2面として赤〜近赤外線カットガラスを使用した場合には、近赤外光を効果的に吸収しているため、製造例5及び7の態様のガラス積層体は、この領域の迷光を抑える用途(例えば、一般的なデジタルカメラなど)での使用には最適な組み合わせといえる。一方で、600〜700nmの光も吸収され光量が減り、それに伴ってノイズが入りやすくなるため、斯かるノイズが問題となるような用途(例えば、高精細高感度カメラなど)の使用には好ましくない組み合わせになることが想定される。
1 ガラス積層体
2 撮像レンズ群
3 画像センサー
4 IRカットコート層

Claims (9)

  1. 可視光を透過し、且つ700nm以上の波長に対する透過率が6%未満のガラス積層体であって、
    (1)ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、ガラス層B-1とガラス層B-2との間に挟持されており、
    (2)該ガラス層B-1を構成する組成と該ガラス層B-2を構成する組成とが同一であり、
    (3)該ガラス層A、該ガラス層B-1及び該ガラス層B-2は、全て可視光を透過するガラス層であり、
    (4)該ガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラス又は紫外線カットガラスから構成され、且つガラス層B-1及び該ガラス層B-2が赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成される、
    ことを特徴とするガラス積層体。
  2. 前記ガラス層Aが赤〜近赤外線カットガラスから構成され、且つ前記ガラス層B-1及びB-2が共に赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする、請求項1に記載するガラス積層体。
  3. 前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記ガラス層Aが挟持されておらず、該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする請求項1に記載するガラス積層体。
  4. 前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に前記IRカットコート膜層及び紫外線カットガラスから構成されるガラス層Aが挟持されており、該ガラス層B-1及びB-2は共に赤〜近赤外線カットガラス又は赤外線カットガラスから構成されることを特徴とする請求項1に記載するガラス積層体。
  5. 前記ガラス層B-1、前記ガラス層A並びに/若しくはIRカットコート膜層及び前記ガラス層B-2の厚さが、それぞれ0.2〜10:1:0.2〜10の比率を満たす、請求項1〜4の何れか1項に記載するガラス積層体。
  6. 550nm〜750nmにおける透過率が60%を示す波長と、透過率が6%を示す波長との差が、100nm以内である、請求項1〜5の何れか一項に記載するガラス積層体。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載するガラス積層体の片面又は両面に、更に反射防止膜が設けられる構造を有する、ガラス積層体。
  8. 光学素子に入射される光線に対するフィルターとして用いられる、請求項1〜7の何れか一項に記載する、ガラス積層体。
  9. 請求項1〜8の何れか一項に記載するガラス積層体の製造方法であって、
    (1)前記ガラス層A及び/又はIRカットコート膜層が、前記ガラス層B-1と前記ガラス層B-2との間に挟持され、且つ前記ガラス層B-1及び前記ガラス層B-2が最表面である挟持体を得る工程1、
    (2)前記挟持体を、一対の研磨手段によって両面研磨する工程2
    を有することを特徴とする、製造方法。
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