JP2019052125A - パーキンソン病の処置用医薬、およびパーキンソン病の処置用医薬のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の一態様は、新規のパーキンソン病の治療薬、および新規のパーキンソン病の治療薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】PERK活性化剤を含むパーキンソン病の処置用医薬、およびPERKの活性化状態を指標としたパーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法を提供する。
【選択図】図4
【解決手段】PERK活性化剤を含むパーキンソン病の処置用医薬、およびPERKの活性化状態を指標としたパーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法を提供する。
【選択図】図4
Description
本発明は、パーキンソン病の処置用医薬、およびパーキンソン病の処置用医薬のスクリーニング方法に関する。
パーキンソン病(以下、「PD」と称することもある。)は、個体の運動制御を困難にする不可逆的かつ進行性の神経変性疾患である。
パーキンソン病の原因の90%以上が孤発性ではあるが、いくつかの遺伝子における突然変異が家族性パーキンソン症候群の発症を引き起こすことが報告されている。これらの遺伝性の突然変異の中で、leucine-rich repeat serine/threonine kinase 2(以下、「LRRK2」と称する。)遺伝子の突然変異は、すべてのPDの1〜2%で生じ、この疾患の最も共通した遺伝学的要因を示す。
パーキンソン病の臨床症状を基礎づける病理学的な指標は、レビ小体(以下、「LB」と称することもある。)と呼ばれる細胞内封入体の存在により特徴づけられる黒質におけるドーパミン神経細胞の欠損である(非特許文献1)。LBは、適切に折りたたまれなかったα−シヌクレインが豊富であり、パーキンソン病の病原種であることが提案されている。しかし、孤発性PDおよび家族性(遺伝学的)PDの基礎となる共通の分子イベントについては、十分に解明されていない。
C. elegansでの研究では、野生型LRRK2の発現が、6−OHDAまたはα−シヌクレインにより誘導される神経毒性に対してドーパミン神経細胞を保護することが報告されている(非特許文献2)。また、LRRK2相同体を欠損したC. elegansは、ERストレスに対して、自発性の神経変性を生じたり、過剰な感受性を示すことが報告されている(非特許文献3)。しかし、哺乳動物では、LRRK2の突然変異による病態におけるERストレスの関与は、十分に解明されていない。
現在までに、パーキンソン病の治療法としては、例えば、ドーパミン補充療法が行われている。この方法は、ドーパミン神経細胞の変性に伴う脳内ドーパミンの減少を抑制することを目的として、ドーパミンを体外から投与することにより行われる。また、別の治療方法としては、変性したドーパミン神経細胞を代替するために、iPS細胞由来のドーパミン神経細胞の移植が計画されている。
Dauer, W. and Przedborski, S., Neuron 39, 889-909, 2003
Yuan, Y. et al., PloS one 6, e22354, 2011
Samann, J. et al., The Journal of biological chemistry 284, 16482-16491, 2009
しかし、ドーパミン補充療法には、パーキンソン病の進行に伴い耐性ができるという問題がある。また、iPS細胞由来のドーパミン神経細胞の移植については、その有効性が未だ十分に立証されていない。したがって、パーキンソン病の治療に有効な新たな治療方法の開発が望まれている。
上記のような事情に鑑み、本発明の一態様は、新規のパーキンソン病の治療薬、および新規のパーキンソン病の治療薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、パーキンソン病に関与する変異型LRRK2が発現している細胞(以下、「変異型LRRK2発現細胞」と称することもある。)において観察されるER−ミトコンドリア異常が、RNA依存性タンパク質キナーゼ様ERキナーゼ(以下、「PERK」と称する。)活性化剤の導入により回復することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は以下の構成を包含する。
〔1〕PERK活性化剤を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬。
〔2〕上記PERK活性化剤が、PERKの立体構造を変化させて、その二量体化を誘導し、二量体化したPERKを自己リン酸化させる薬剤であることを特徴とする、〔1〕に記載のパーキンソン病の処置用医薬。
〔3〕上記パーキンソン病が、LRRK2の遺伝子変異に起因するパーキンソン病であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のパーキンソン病の処置用医薬。
〔4〕上記LRRK2の遺伝子変異が、配列番号3で示されるアミノ酸配列においてN末端側から2019番目のグリシンがセリンに置換されていることを特徴とする、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のパーキンソン病の処置用医薬。
〔5〕以下の工程:
(a)試験物質と、細胞またはPERKとを接触させる接触工程、および
(b)PERKの活性化状態を評価する評価工程
を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法。
(a)試験物質と、細胞またはPERKとを接触させる接触工程、および
(b)PERKの活性化状態を評価する評価工程
を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法。
〔6〕上記(b)の評価工程が、上記(a)において試験物質と細胞とを接触させる場合には、PERKのリン酸化、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化、ミトフシン2の発現量、LC3−IIの発現量およびp62の発現量からなる群より選択される少なくとも一つを評価することを含み、上記(a)において試験物質とPERKとを接触させる場合には、PERKの基質のリン酸化を評価することを含むことを特徴とする、〔5〕に記載の方法。
〔7〕上記(a)の細胞が、変異型LRRK2が発現している細胞であることを特徴とする、〔5〕または〔6〕に記載の方法。
〔8〕上記変異型LRRK2が、配列番号3で示されるアミノ酸配列においてN末端側から2019番目のグリシンがセリンに置換されているアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする、〔7〕に記載の方法。
〔9〕上記(a)の試験物質とPERKとを接触させる接触工程が、ATPの存在下、試験物質と、PERKと、PERKの基質とを接触させることを含むことを特徴とする、〔5〕または〔6〕に記載の方法。
本発明の一態様における医薬は、細胞内におけるER−ミトコンドリア異常を回復させることによりパーキンソン病を処置するという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
本明細書において「遺伝子」とは、ヌクレオチドの重合体を意図し、「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」と同義で使用される。遺伝子は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)でも存在しうるし、RNA(例えば、mRNA)の形態でも存在しうる。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。遺伝子は化学的に合成してもよい。また、本明細書において「ポリヌクレオチド」と記載した場合、DNAであってもよいし、RNAであってもよい。
本明細書において「タンパク質」は、「ペプチド」または「ポリペプチド」と同義で使用される。
本明細書中、塩基およびアミノ酸の表記は、IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を適宜使用する。
〔1.パーキンソン病の処置用医薬〕
本発明の一実施形態において、PERK活性化剤を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬を提供する(本明細書において、適宜「本発明の医薬」と呼ぶ。)。
本発明の一実施形態において、PERK活性化剤を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬を提供する(本明細書において、適宜「本発明の医薬」と呼ぶ。)。
本願の発明者は、以前に、パーキンソン病に関与する変異型LRRK2が発現している細胞が、ER−ミトコンドリア間のCa2+輸送の減少により誘導されるミトコンドリア異常を示すとの知見を得ていた(本願の出願時において未公表)。この知見を基に、変異型LRRK2発現細胞を用いてさらに検討を進めた結果、変異型LRRK2発現細胞において観察されるER−ミトコンドリア異常がPERK活性化剤の導入により回復すること、およびそのメカニズムを初めて見出すことに成功した。
本願の発明者が見出したPERK活性化剤の導入(PERK活性化)によるER−ミトコンドリア異常の回復メカニズムの概要は、以下の通りである(図4Aを参照)。
・通常の状態の細胞では、ER内でGrp78/Bip(BiP)がPERKに結合して、PERKを不活性な状態としている。
・ERストレスを感知すると、BiPがPERKから解離し、PERKが活性化(二量体化および自己リン酸化)される。
・活性化したPERKは、E3ユビキチンリガーゼ(MARCH5/MULAN)をリン酸化し、活性化させる。
・活性化したE3ユビキチンリガーゼは、ミトフシン2をユビキチン化/分解し、ミトフシン2を減少させる。
・ミトフシン2は、PERKの活性を抑制する方向に働くため、ミトフシン2の減少により、PERK活性化がさらに促進される。
・このような、PERKからのBiPの解離→PERKの活性化→E3ユビキチンリガーゼの活性化→ミトフシン2のユビキチン化/分解→さらなるPERKの活性化を含むメカニズム、すなわち、ポジティブフィードバックメカニズムにより、PERKの活性化が促進される。
・一方、変異型LRRK2は、E3ユビキチンリガーゼの抑制を介して、PERKの活性を阻害する。この結果、変異型LRRK2発現細胞では、ER−ミトコンドリア異常が生じる。
・変異型LRRK2発現細胞にPERK活性化剤を導入することにより、ER−ミトコンドリア異常が回復する。
・通常の状態の細胞では、ER内でGrp78/Bip(BiP)がPERKに結合して、PERKを不活性な状態としている。
・ERストレスを感知すると、BiPがPERKから解離し、PERKが活性化(二量体化および自己リン酸化)される。
・活性化したPERKは、E3ユビキチンリガーゼ(MARCH5/MULAN)をリン酸化し、活性化させる。
・活性化したE3ユビキチンリガーゼは、ミトフシン2をユビキチン化/分解し、ミトフシン2を減少させる。
・ミトフシン2は、PERKの活性を抑制する方向に働くため、ミトフシン2の減少により、PERK活性化がさらに促進される。
・このような、PERKからのBiPの解離→PERKの活性化→E3ユビキチンリガーゼの活性化→ミトフシン2のユビキチン化/分解→さらなるPERKの活性化を含むメカニズム、すなわち、ポジティブフィードバックメカニズムにより、PERKの活性化が促進される。
・一方、変異型LRRK2は、E3ユビキチンリガーゼの抑制を介して、PERKの活性を阻害する。この結果、変異型LRRK2発現細胞では、ER−ミトコンドリア異常が生じる。
・変異型LRRK2発現細胞にPERK活性化剤を導入することにより、ER−ミトコンドリア異常が回復する。
したがって、PERK活性化剤を含むことを特徴とする本発明の医薬は、従来の治療方法では、例えば、耐性が生じる等の理由により治療が困難であったパーキンソン病の患者に対して、新規の有効な治療方法を提供することができる。
本明細書において「PERK」は、配列番号1で示されるペプチドであり、全長1114アミノ酸残基から構成される(塩基配列は、配列番号2で示される)。PERKは、ER膜上に存在し、ミスフォールドタンパク質により引き起こされるERストレスのセンサーとして機能する。
本明細書において「LRRK2」は、配列番号3で示されるペプチドであり、全長2527アミノ酸残基から構成される(塩基配列は、配列番号4で示される)。LRRK2は、ロイシンリッチリピートキナーゼファミリーのメンバーであり、細胞質中や、ミトコンドリア外膜に結合して存在する。
本明細書において「E3ユビキチンリガーゼ」は、ユビキチンシステムにおいて機能するユビキチン転移酵素を意味する。ユビキチンシステムでは、3つの酵素、すなわち、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、およびユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ)(E3)により、標的タンパク質のユビキチン化が行われる。
本明細書において「MARCH5」は、全長278アミノ酸残基から構成されるペプチドであり、NCBIの受託番号NM027314で示される。MARCH5は、ミトコンドリア外膜上に存在するE3ユビキチンリガーゼであり、ミトコンドリアの形態の制御等に関与する。
本明細書において「MULAN」は、全長352アミノ酸残基から構成されるペプチドであり、NCBIの受託番号NM026689で示される。MULANは、NF−κBの制御において中心的な役割を果たすE3ユビキチンリガーゼであり、ミトコンドリアダイナミクスやアポトーシス過程に関与する。
本明細書において「ミトフシン2」(別名、「Mfn2」、「mitofusin2」とも称される。)は、全長757ミノ酸残基から構成されるペプチドであり、NCBIの受託番号NM001285920で示される。ミトフシン2は、ER膜上およびミトコンドリア膜上に存在する膜タンパク質であり、ERおよびミトコンドリアの結合や、ミトコンドリアネットワークの維持等に関与する。
本明細書において「PERK活性化剤」は、上記のポジティブフィードバックメカニズム、すなわち、PERKからのBiPの解離→PERKの活性化→E3ユビキチンリガーゼの活性化→ミトフシン2のユビキチン化/分解→さらなるPERKの活性化を含むメカニズムを正に制御する薬剤を意味する。本明細書において「PERK活性化剤」は、上記のポジティブフィードバックメカニズムを正に制御する薬剤であって、PERKを不活性状態から活性化状態へ移行させ得る薬剤であれば、特に限定されない。
本発明の一実施形態において、PERK活性化剤は、例えば、上記のポジティブフィードバックメカニズムに関与する、PERKからのBiPの解離を促進する薬剤、PERKを直接活性化する薬剤、E3ユビキチンリガーゼ(例えば、MARCH5および/またはMULAN)を活性化する薬剤、ミトフシン2のユビキチン化/分解を促進する薬剤等であり得る。
本発明の一実施形態において、PERKからのBiPの解離を促進する薬剤、E3ユビキチンリガーゼ(例えば、MARCH5および/またはMULAN)を活性化する薬剤、ミトフシン2のユビキチン化/分解を促進する薬剤は、特に限定されることなく、当該技術分野において使用され得る任意の薬剤であり得る。
なお、PERKを直接活性化する薬剤については、後述する。
PERKが不活性状態から活性化状態へ移行するメカニズムは、例えば、David Ron & Peter Walter, Signal integration in the endoplasmic reticulum unfolded protein response, 2007, Nature Revew Molecular Cell Biology, 8: 519-529に記載されている。簡潔には、ERストレスによりPERKからBiPが解離した後、PERKが2量体を形成し自己リン酸化することにより、PERK自身のキナーゼ活性を亢進する。
したがって、本発明の一実施形態において、PERK活性化剤は、PERKの立体構造を変化させて、その二量体化を誘導し、二量体化したPERKを自己リン酸化させる薬剤であり得る。
後述する実施例においては、PERK活性化剤の一例として、複数の低分子化合物を用いた実験を行っている。実施例で使用されている化合物は、各々構造や作用機序が異なっているが、いずれの化合物を用いた場合でも、PERKの立体構造の変化、二量体の形成、自己リン酸化を経てPERKが活性化され、その結果として、変異型LRRK2発現細胞のER−ミトコンドリア異常が回復している。したがって、PERKの立体構造を変化させて、その二量体化を誘導し、二量体化したPERKを自己リン酸化させる薬剤は、本発明の一実施形態におけるPERK活性化剤の範囲に包含される。
本発明の一実施形態において、PERK活性化剤としては、例えば、DHBDC(Calbiochem製)、EIF2AK3 Activator(CCT020312(324879)、Calbiochem製)、Salubrinal(CAS 405060−95−9、Cayman Chemical製)等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、処置の対象となるパーキンソン病は、パーキンソン病の全般にわたり、孤発性のパーキンソン病および家族性のパーキンソン病を含む。
本明細書において「孤発性のパーキンソン病」は、主に40歳から50歳以降に発症の多い、遺伝的要因によらないパーキンソン病を意味する。孤発性のパーキンソン病では、加齢とともに、ドーパミン神経細胞内のミトコンドリアの遺伝子変異(欠失)が蓄積し、ドーパミン神経細胞の機能障害が生じる。そのため、ミトコンドリアの機能は、孤発性のパーキンソン病の発症に重要な役割を担うと考えられる。
本明細書において「家族性のパーキンソン病」は、1つまたは複数の遺伝的要因により生じるパーキンソン病を意味する。家族性のパーキンソン病における遺伝的要因は、例えば、α−シヌクレイン、DJ−1、LRRK2、PINK1、Parkin等における遺伝子変異が挙げられる。
本発明の一実施形態において、処置の対象となるパーキンソン病は、好ましくは、LRRK2に遺伝子変異を有している。後述する実施例に示すように、変異型LRRK2発現細胞において観察されるER−ミトコンドリア異常は、PERK活性化剤の導入により回復するため、本発明の医薬は、LRRK2に遺伝子変異を有しているパーキンソン病の処置においてより有利である。
本発明の一実施形態において、パーキンソン病におけるLRRK2の遺伝子変異は、例えば、G2019S(N末端側から2019番目のグリシンがセリンに置換)、R1441G(N末端側から1441番目のアルギニンがグリシンに置換)、R1441C(N末端側から1441番目のアルギニンがシステインに置換)、R1441H(N末端側から1441番目のアルギニンがヒスチジンに置換)、Y1699C(N末端側から1699番目のチロシンがシステインに置換)、I2020T(N末端側から2020番目のイソロイシンがスレオニンに置換)等が挙げられる。なお、G2019Sの遺伝子変異を有するLRRK2を、以下において、「LRRK2(G2019S)」とも称する。その他の遺伝子変異についても同様の表記が可能である。
本明細書において「処置」とは、処置を必要とする対象に対して処置効果をもたらす行為を意味する。処置効果とは、予防効果および治療効果を包含する概念であり、例えば、以下の類型の効果であり得る。
(1)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、またはリスクを低減する。
(2)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、またはリスクを低減する。
(3)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の兆候が生じることを防止する、またはリスクを低減する。
(4)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減する。
(5)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加、または進行を防止する。
(6)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加速度、または進行速度を低減する。
(1)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症を防止する、またはリスクを低減する。
(2)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の再発を防止する、またはリスクを低減する。
(3)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の兆候が生じることを防止する、またはリスクを低減する。
(4)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減する。
(5)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加、または進行を防止する。
(6)医薬を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度の増加速度、または進行速度を低減する。
本発明の医薬は、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤等を含むことができる。予防または治療的使用のための薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤は、薬学分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤の選択は、意図された投与経路および標準的薬学的慣行に従って、当業者によって容易に選択され得る。また、本発明の医薬は、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、被覆剤または可溶化剤をさらに含み得る。
本発明の医薬は、任意の投与経路により投与される。本発明の医薬は、特に限定されないが、例えば、処置対象に対して、経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮的に投与され得る。本発明の医薬は、また、目的に応じて任意の剤型をとることもできる。さらに、本発明の医薬の処方は、疾患の重症度、有効成分、投与経路等に応じて、当業者により適宜設定され得る。
〔2.パーキンソン病の処置用医薬のスクリーニング方法〕
本発明の一実施形態において、PERKの活性化状態を指標とすることを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法を提供する。
本発明の一実施形態において、PERKの活性化状態を指標とすることを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法を提供する。
上述の通り、本願の発明者は、変異型LRRK2発現細胞において観察されるER−ミトコンドリア異常がPERK活性化剤の導入により回復することを見出した。したがって、PERKの活性化状態を指標とすることにより、有効なパーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングすることができる。
本発明の一実施形態において、以下の工程を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法を提供する:
(a)試験物質と、細胞またはPERKとを接触させる接触工程、および
(b)PERKの活性化状態を評価する評価工程。
(a)試験物質と、細胞またはPERKとを接触させる接触工程、および
(b)PERKの活性化状態を評価する評価工程。
本発明の一実施形態において、試験物質としては、任意の物質が使用され得る。試験物質の種類は特に限定されず、例えば、天然物の抽出物中に存在する化合物、低分子合成化合物、合成ペプチド等が用いられる。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される試験物質は、化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリー等に含まれる化合物であってよい。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される試験物質は、好ましくは、低分子化合物であり、より好ましくは、低分子化合物の化合物ライブラリーであり得る。化合物ライブラリーは、市販の化合物ライブラリーを用いてもよく、当該技術分野における通常の方法により構築された化合物ライブラリーを用いてもよい。
本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される細胞は、PERKの活性化状態を評価できる細胞であれば特に限定されない。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される細胞としては、例えば、MEF細胞、N27ラットドーパミン作動性神経細胞株、SCC048細胞、SH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される細胞は、変異型LRRK2がパーキンソン病、特に家族性パーキンソン病の主要な病因の一つと考えられているために、変異型LRRK2が発現している細胞であることが好ましい。
本発明の一実施形態において、変異型LRRK2が発現している細胞は、変異型LRRK2を元々細胞内に有している細胞であってもよく、正常な(野生型の)LRRK2を有している細胞において、変異型LRRK2を誘導した細胞であってもよい。前者の細胞は、例えば、パーキンソン病を患う患者から医学的な手段により入手することができる。また、後者の細胞は、例えば、ゲノム編集技術により、例えば、CRISPR−Cas9ノックインシステムにより得ることができる。
本発明の一実施形態において、変異型LRRK2は、例えば、LRRK2(G2019S)、LRRK2(R1441G)、LRRK2(R1441C)、LRRK2(R1441H)、LRRK2(Y1699C)、LRRK2(I2020T)等が挙げられる。本発明の一実施形態において、変異型LRRK2は、好ましくは、LRRK2(G2019S)であり得る。
本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用されるPERKは、特に限定されない。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用されるPERKは、細胞内で発現している内因性のPERKを単離したものであってもよいし、細胞内で発現している外因性のPERKを単離したものであってもよい。また、本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用されるPERKは、インビトロで構築されたものであってもよいし、化学合成されたものであってもよい。PERKの細胞からの単離、インビトロでの構築、化学合成等は、当該技術分野における任意の方法に基づいて行うことができる。
本明細書において「接触」とは、2以上の物質が物理的に触れる程度まで近接することを意味する。
本発明の一実施形態において、試験物質と細胞との接触は、細胞が培養されている容器に試験物質を添加することにより行われてもよく、試験物質を含む溶液中に細胞を添加することにより行われてもよい。試験物質と細胞との接触は、好ましくは、細胞が培養されている容器に試験物質を添加することにより行われる。
本発明の一実施形態において、試験物質と細胞との接触時間は、試験物質がPERKを活性化する物質である場合に、PERKを活性化させるのに十分な時間であれば特に限定されないが、例えば、30分であり得る。
本発明の一実施形態において、試験物質と細胞とを接触させる際の温度も特に限定されることなく、例えば、30℃であり得る。
本発明の一実施形態において、試験物質とPERKとの接触は、ATPの存在下、試験物質と、PERKと、PERKの基質とを接触させることであることが好ましい。この場合における試験物質とPERKとの接触は、ATP、試験物質、PERKおよびPERKの基質が一つの溶液中に同時に存在するような方法で行われればよく、その方法は特に限定されない。
本発明の一実施形態において、PERKの基質は、特に限定されないが、例えば、E3ユビキチンリガーゼであり、好ましくは、MARCH5および/またはMULANであり得る。MARCH5およびMULANは、図4Aに示すように、パーキンソン病に関与する小胞体ストレスに関係した分子であると考えるため、PERKの基質としてMARCH5および/またはMULANを用いる場合、より有効にパーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングすることができる。
本発明の一実施形態において、試験物質とPERKとの接触時間は、試験物質がPERKを活性化する物質である場合に、PERKを活性化させるのに十分な時間であれば特に限定されないが、例えば、30分であり得る。
本発明の一実施形態において、試験物質とPERKとを接触させる際の温度も特に限定されることなく、例えば、30℃であり得る。
本発明の一実施形態において、PERKの活性化状態を評価することは、PERKの活性化状態を直接的または間接的に評価できる指標に基づく評価であれば特に限定されない。
本発明の一実施形態において、(a)の接触工程において試験物質と細胞とを接触させる場合には、PERKの活性化状態を評価することは、PERKのリン酸化、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化、ミトフシン2の発現量、LC3−IIの発現量およびp62の発現量からなる群より選択される少なくとも一つを評価することであり得る。
本発明の一実施形態において、(a)の接触工程において試験物質とPERKとを接触させる場合には、PERKの活性化状態を評価することは、PERKの基質のリン酸化を評価することであり得る。
本発明の一実施形態において、PERKの活性化状態を評価することは、PERKのリン酸化、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化、ミトフシン2の発現量、LC3−IIの発現量およびp62の発現量からなる群より選択される少なくとも一つを検出すること、またはPERKの基質のリン酸化を検出することを含み得る。
本発明の一実施形態において、上記リン酸化または発現量の検出の方法としては、当該技術分野で使用される任意の方法が使用され得る。リン酸化の検出方法としては、例えば、インビトロキナーゼアッセイ、抗リン酸化セリン抗体および/または抗リン酸化スレオニン抗体を用いた免疫沈降物のウェスタンブロット等が挙げられる。また、発現量の検出方法としては、例えば、イムノブロット、RT−PCR、高速液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、PERKは、〔1.パーキンソン病の処置用医薬〕の項において記載した通りである。本発明の一実施形態において、検出の対象となるPERKのリン酸化部位は、リン酸化によりPERKが活性化される部位であれば特に限定されないが、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列のN末端側から980番目のスレオニンであり得る。
本発明の一実施形態において、E3ユビキチンリガーゼは、好ましくは、MARCH5および/またはMULANであり得る。本発明の一実施形態において、E3ユビキチンリガーゼ、MARCH5およびMULANは、〔1.パーキンソン病の処置用医薬〕の項において記載した通りである。
本発明の一実施形態において、検出の対象となるMARCH5のリン酸化部位は、リン酸化によりMARCH5が活性化される部位であれば特に限定されない。
また、本発明の一実施形態において、検出の対象となるMULANのリン酸化部位は、リン酸化によりMULANが活性化される部位であれば特に限定されない。
本発明の一実施形態において、上記リン酸化部位の検出は、特定のリン酸化部位の検出であってもよいし、不特定のリン酸化部位の検出であってもよい。また、上記リン酸化部位の検出は、1つのリン酸化部位の検出であってもよいし、複数のリン酸化部位の検出であってもよい。
本明細書において「LC3−II」は、全長121アミノ酸残基から構成されるペプチドであり、NCBIの受託番号NM025735で示される。LC3−IIは、オートファジーフラックスに関与するタンパク質であり、PERKが活性化されると、その下流に位置するLC3−IIの発現量が低下することから、LC3−IIの発現量を評価することにより、PERKの活性化状態を評価することができる。
本明細書において「p62」は、全長442アミノ酸残基から構成されるペプチドであり、NCBIの受託番号NM011018で示される。p62は、オートファジーフラックスに関与するタンパク質であり、PERKが活性化されると、その下流に位置するp62の発現量が低下することから、p62の発現量を評価することにより、PERKの活性化状態を評価することができる。
本発明の一実施形態において、ミトフシン2は、〔1.パーキンソン病の処置用医薬〕の項において記載した通りである。PERKが活性化されると、その下流に位置するミトフシン2の発現量が低下することから、ミトフシン2の発現量を評価することにより、PERKの活性化状態を評価することができる。
本発明の一実施形態において、PERKの活性化状態の評価は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法により行われ得る。
(1)試験物質と細胞とを接触させた場合に、試験物質と細胞とを接触させていないときと比較して、PERKのリン酸化の上昇、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化の上昇、ミトフシン2の発現量の低下、LC3−IIの発現量の低下およびp62の発現量の低下のうちの少なくとも一つが検出された場合に、上記試験物質がパーキンソン病の処置用医薬であると評価する。
(2)試験物質とPERKとを接触させた場合に、試験物質とPERKとを接触させていないときと比較して、PERKの基質のリン酸化の上昇が検出された場合に、上記試験物質がパーキンソン病の処置用医薬であると評価する。
本明細書中の記載に基づけば、当業者は、本発明の医薬の別の形態(例えば、キット)や、本発明の医薬を用いて疾患を処置(予防および/または治療)する方法、本発明のスクリーニング方法により同定された物質(医薬)を用いて疾患を処置(予防および/または治療)する方法等もまた本発明の範囲内であることを、容易に理解する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例においては、パーキンソン病の代表例として、LRRK2の遺伝子変異に起因するパーキンソン病について記載する。
また、本実施例において、単に「MEF細胞」と記載した場合は、「野生型のMEF細胞」を意味する。
〔実施例1〕
<LRRK2(G2019S)発現MEF細胞における促進されたUPR>
(1−1)
本願の発明者および他のグループは、以前に、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞がERストレスの影響をより受けやすいことを示すデータを得ていた(Mercado et al., 2013、Samann et al., 2009、Yuan et al., 2011)。そこで、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、UPRによりERのホメオスタシスが変化しているか否かを調べるために実験を行った。
<LRRK2(G2019S)発現MEF細胞における促進されたUPR>
(1−1)
本願の発明者および他のグループは、以前に、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞がERストレスの影響をより受けやすいことを示すデータを得ていた(Mercado et al., 2013、Samann et al., 2009、Yuan et al., 2011)。そこで、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、UPRによりERのホメオスタシスが変化しているか否かを調べるために実験を行った。
簡潔には、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞およびMEF細胞を、コントロールまたはツニカマイシン(1μg/ml)で3時間処理した。その後、PBSで2回洗浄し、イムノブロットにかけた。
イムノブロットは、簡潔には以下の通り行った。すなわち、細胞融解液をSDS−PAGEで電気泳動して、分子量にしたがってタンパク質を分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。このタンパク質を転写したニトロセルロース膜を、各種一次抗体と共に約16時間インキュベートした。TBSTで洗浄後、二次抗体(抗マウスIgG−HRP)と共に1時間インキュベートした。TBSTで洗浄後、ECLで標的分子を蛍光発色させて、検出した。
また、ルシフェラーゼレポーターアッセイを以下の通り行った。すなわち、エレクトロポレーション法により、ATFのためのルシフェラーゼコンストラクトをコードする0.5mgの5 X ATF−GL3(p5XATF6−GL3プラスミド、Promega製)および0.5mgのTKレニラ(レニラプラスミド、Promega製)を、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞およびMEF細胞にトランスフェクトした。次いで、トランスフェクトしたMEF細胞を、1Mのツニカマイシンでさらに24時間インキュベートした。Dual−GL0 Luciferase Assay system(Promega製)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定および決定した。
その結果を図1A〜1Cに示す。なお、図1Aおよび1Bにおいて、コントロールのレベルに対して標準化した値を、一番下のレーンで示す。
[結果]
LRRK2(G2019S)発現MEF細胞は、MEF細胞と比較して、ERストレスに応答して、パーキンソン病患者の黒質で観察されるPERKおよびeIF2のより多くのリン酸化を示すことが報告されている(Hoozemans et al., 2007、Mercado et al., 2013)。また、MEF細胞において、PERKおよびeIF2αのリン酸化を誘導するERストレスの処理を行うと、下流のシグナル伝達タンパク質ATF4、GADD34、およびCHOPの発現が減少することが報告されている(Munoz et al., 2013)。本実施例では、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞が、MEF細胞と比較して、ATF4、GADD34、およびCHOPのリン酸化を増加させることが示された(図1A)。
LRRK2(G2019S)発現MEF細胞は、MEF細胞と比較して、ERストレスに応答して、パーキンソン病患者の黒質で観察されるPERKおよびeIF2のより多くのリン酸化を示すことが報告されている(Hoozemans et al., 2007、Mercado et al., 2013)。また、MEF細胞において、PERKおよびeIF2αのリン酸化を誘導するERストレスの処理を行うと、下流のシグナル伝達タンパク質ATF4、GADD34、およびCHOPの発現が減少することが報告されている(Munoz et al., 2013)。本実施例では、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞が、MEF細胞と比較して、ATF4、GADD34、およびCHOPのリン酸化を増加させることが示された(図1A)。
一方、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、XBP1の発現により想定されるIRE1aブランチの活性は、MEF細胞におけるものと同様であった(図1B)。さらに、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、ルシフェラーゼアッセイにより想定されるATF6の転写活性はまた、MEF細胞におけるものと同様であった(図1C)。
したがって、LRRK2(G2019S)は、PERK/CHOPブランチの基底活性を増加させ、ERストレスに応答して、さらにPERK/CHOPブランチの活性を促進することが示された。この結果は、促進されたUPRブランチの活性がLRRK2(G2019S)発現MEF細胞における過剰なERストレスを反映することを示唆した。
(1−2)
UPR活性は、ミトコンドリア機能およびオートファジーの変化を誘導することが報告されている(Bernales et al., 2006、Sano and Reed, 2013)。そこで、PERKにより仲介されるUPRがオートファジーフラックスを誘導するか否かを検討するために、ERストレスで処理したMEF細胞について、LC3−IIおよびp62の変化を調べた。
UPR活性は、ミトコンドリア機能およびオートファジーの変化を誘導することが報告されている(Bernales et al., 2006、Sano and Reed, 2013)。そこで、PERKにより仲介されるUPRがオートファジーフラックスを誘導するか否かを検討するために、ERストレスで処理したMEF細胞について、LC3−IIおよびp62の変化を調べた。
簡潔には、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞およびMEF細胞に、5μgのキナーゼ活性型PERK−ΔN(Cullinan et al., 2003)またはPERK shRNAを導入し、約24時間インキュベートした。その後、PBSで2回洗浄し、イムノブロットにかけた。イムノブロットは、上述の通り行った。
その結果を図1Dに示す。なお、図1Dにおいて、コントロールのレベルに対して標準化した値を、一番下のグラフで示す。
[結果]
LRRK2(G2019S)発現MEF細胞のLC3−IIおよびp62は、ERストレスに応答して、MEF細胞のLC3−IIおよびp62よりも増加した。これは、キナーゼ活性型LRRK2(G2019S)がオートファジーフラックスを誘導したことを示す。LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において増加したLC3−IIおよびp62は、キナーゼ活性型PERK−ΔNの導入により一部回復した(減少した)。PERK活性がLRRK2(G2019S)発現MEF細胞で生じるという結果とあわせると、オートファジーフラックスにおける下流のシグナル伝達経路は、LRRK2(G2019S)により促進され、キナーゼ活性型PERKの過剰発現により回復する(減少する)ことが示唆された。
LRRK2(G2019S)発現MEF細胞のLC3−IIおよびp62は、ERストレスに応答して、MEF細胞のLC3−IIおよびp62よりも増加した。これは、キナーゼ活性型LRRK2(G2019S)がオートファジーフラックスを誘導したことを示す。LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において増加したLC3−IIおよびp62は、キナーゼ活性型PERK−ΔNの導入により一部回復した(減少した)。PERK活性がLRRK2(G2019S)発現MEF細胞で生じるという結果とあわせると、オートファジーフラックスにおける下流のシグナル伝達経路は、LRRK2(G2019S)により促進され、キナーゼ活性型PERKの過剰発現により回復する(減少する)ことが示唆された。
〔実施例2〕
<PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化>
(2−1)
本願の発明者は、以前に、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞が、減少したER−ミトコンドリアCa2+輸送により引き起こされるミトコンドリア異常を示すことを見出した。そこでは、MAM形成のために必要とされるMARCH5およびMULANを含むミトコンドリアE3ユビキチンリガーゼの活性が、キナーゼ活性型LRRK2(G2019S)により抑制されていた。ParkinのようなE3ユビキチンリガーゼは、PINK1により仲介されるリン酸化により活性化されるが、MARCH5およびMULANをリン酸化するキナーゼは、不明であった。MAMにおけるPERKおよびE3ユビキチンリガーゼ間の近接性を考慮すると、MARCH5およびMULANは、PERKの基質であるとの仮説が立てられる。そこで、この仮説を実証するために、以下に示すインビトロキナーゼアッセイを行った。
<PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化>
(2−1)
本願の発明者は、以前に、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞が、減少したER−ミトコンドリアCa2+輸送により引き起こされるミトコンドリア異常を示すことを見出した。そこでは、MAM形成のために必要とされるMARCH5およびMULANを含むミトコンドリアE3ユビキチンリガーゼの活性が、キナーゼ活性型LRRK2(G2019S)により抑制されていた。ParkinのようなE3ユビキチンリガーゼは、PINK1により仲介されるリン酸化により活性化されるが、MARCH5およびMULANをリン酸化するキナーゼは、不明であった。MAMにおけるPERKおよびE3ユビキチンリガーゼ間の近接性を考慮すると、MARCH5およびMULANは、PERKの基質であるとの仮説が立てられる。そこで、この仮説を実証するために、以下に示すインビトロキナーゼアッセイを行った。
簡潔には、2μgの単離E3ユビキチンリガーゼ、6μCiの[γ−32P]ATP(1Ci=37GBq)、および4μgの単離PERKを含む、40μlのキナーゼバッファー(20mM Hepes、pH7.5、50mM KCl、1.5mM DTT、2mM MgCl2、0.1mM ATP)を用いて、30℃で30分間反応を行った。反応混合物を12% SDS/PAGEにかけて、フォトイメイザーを用いたオートラジオグラフィーにより視覚化した。
その結果を図2Aに示す。
[結果]
単離PERK、単離E3ユビキチンリガーゼおよび[γ−32P]ATPを用いたインビトロキナーゼアッセイにより、PERKがE3ユビキチンリガーゼを直接リン酸化することが明らかとなった。
単離PERK、単離E3ユビキチンリガーゼおよび[γ−32P]ATPを用いたインビトロキナーゼアッセイにより、PERKがE3ユビキチンリガーゼを直接リン酸化することが明らかとなった。
(2−2)
MARCH5およびMULANは、ミトコンドリアRING E3ユビキチンリガーゼに属する。RINGE3ユビキチンリガーゼの他のメンバーであるParkinは、PINK1により、RINGドメインの上流に位置するN末端ユビキチン様ドメインであるセリン65でリン酸化されることが報告されている(Shiba-Fukushima et al., 2012、Kondapalli et al., 2012)。以前に証明されたリン酸化部位に基づいて(Shiba-Fukushima et al., 2012、Kondapalli et al., 2012)、MARCH5およびMULANのリン酸化部位は、RINGドメインの外側に位置することが明らかとなった。リン酸化される候補のアミノ酸残基は、2つのタンパク質のトポロジカルマッピングにより選択された(MARCH5は、4つの膜ドメインからなり、MULANは、2つの膜ドメインからなる。)。ここで、RINGドメインと同様に細胞質領域に位置するセリンまたはスレオニン残基をアラニンに突然変異させ、キナーゼアッセイにより解析した結果、1つの保存されたアミノ酸が、PERKによりリン酸化されることが検出された(図2B)。なお、RINGドメインを特徴づけるシステイン残基を四角の枠囲みで示し、リン酸化のための候補セリン残基を太字で示す。
MARCH5およびMULANは、ミトコンドリアRING E3ユビキチンリガーゼに属する。RINGE3ユビキチンリガーゼの他のメンバーであるParkinは、PINK1により、RINGドメインの上流に位置するN末端ユビキチン様ドメインであるセリン65でリン酸化されることが報告されている(Shiba-Fukushima et al., 2012、Kondapalli et al., 2012)。以前に証明されたリン酸化部位に基づいて(Shiba-Fukushima et al., 2012、Kondapalli et al., 2012)、MARCH5およびMULANのリン酸化部位は、RINGドメインの外側に位置することが明らかとなった。リン酸化される候補のアミノ酸残基は、2つのタンパク質のトポロジカルマッピングにより選択された(MARCH5は、4つの膜ドメインからなり、MULANは、2つの膜ドメインからなる。)。ここで、RINGドメインと同様に細胞質領域に位置するセリンまたはスレオニン残基をアラニンに突然変異させ、キナーゼアッセイにより解析した結果、1つの保存されたアミノ酸が、PERKによりリン酸化されることが検出された(図2B)。なお、RINGドメインを特徴づけるシステイン残基を四角の枠囲みで示し、リン酸化のための候補セリン残基を太字で示す。
この知見を確認するために、MARCH5のセリン13およびMULANのセリン300を、部位特異的変異誘発によりアラニンに突然変異させたものを用いて、インビトロキナーゼアッセイを行った。
インビトロキナーゼアッセイは、簡潔には、4μgのPERK−ΔN、6μCiの[γ−32P]ATP、および2μgの野生型MARCH5もしくはMULANまたは突然変異型MARCH5もしくはMULANを含む、40μlのキナーゼバッファー(20mM Hepes、pH7.5、50mM KCl、1.5mM DTT、2mM MgCl2、0.1mM ATP)を用いて、30℃で30分間反応を行った。反応混合物を12% SDS/PAGEにかけて、フォトイメイザーを用いたオートラジオグラフィーにより視覚化した。
その結果を図2Cに示す。
[結果]
単離PERK−ΔN、突然変異型MARCH5もしくはMULANおよび[γ−32P]ATPを用いたインビトロキナーゼアッセイの結果、オートラジオグラフィーで視覚化した際に両方のアッセイにおいて弱いリン酸化バンドのみが見られたため、突然変異させたセリンがPERKによるリン酸化部位の1つであることを示した。
単離PERK−ΔN、突然変異型MARCH5もしくはMULANおよび[γ−32P]ATPを用いたインビトロキナーゼアッセイの結果、オートラジオグラフィーで視覚化した際に両方のアッセイにおいて弱いリン酸化バンドのみが見られたため、突然変異させたセリンがPERKによるリン酸化部位の1つであることを示した。
(2−3)
一般に、酵素活性の翻訳後制御は、リン酸化、スモ化およびユビキチン化を含むタンパク質修飾により行われる(Deshaies and Joazeiro, 2009)。PERKにより仲介されるリン酸化がE3ユビキチンリガーゼの活性に影響を与えるか否かを調べるために、ATPの存在下、組み換えHAタグ化Ub、E1およびE2(UbcH7)酵素、His6タグ化ミトフシン2、ならびにMycタグ化E3ユビキチンリガーゼを用いたインビトロユビキチンアッセイを行った。
一般に、酵素活性の翻訳後制御は、リン酸化、スモ化およびユビキチン化を含むタンパク質修飾により行われる(Deshaies and Joazeiro, 2009)。PERKにより仲介されるリン酸化がE3ユビキチンリガーゼの活性に影響を与えるか否かを調べるために、ATPの存在下、組み換えHAタグ化Ub、E1およびE2(UbcH7)酵素、His6タグ化ミトフシン2、ならびにMycタグ化E3ユビキチンリガーゼを用いたインビトロユビキチンアッセイを行った。
簡潔には、90nM E1酵素、4mM ATP、0.4mM HAタグ化Ub、0.04μg/μl UbcH7、0.04μg/μlのHisタグ化ミトフシン2、および0.04μg/μlの野生型MARCH5もしくはMULANまたは突然変異型MARCH5もしくはMULANを含む、全量100mlのユビキチンバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.5、5mM MgCl2、1mM DTT、100mM NaCl)で反応を行った。37℃で2時間のインキュベーションを行った後、3000Xgで遠心分離にかけた。Hisタグ化ミトフシン2を含むペレットをユビキチンバッファーで洗浄し、SDS/PAGEにかけた。20mlのNi−NTAビーズを含むNi−NTA結合バッファー(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、10mM イミダゾール、pH8.0)で、上清をインキュベートした。Ni−NTAビーズをNi−NTA結合バッファーで洗浄し、SDS/PAGEにかけた。
その結果を図2Dに示す。
[結果]
ユビキチン化ミトフシン2の量は、リン酸化欠損MARCH5(S13A)またはMULAN(S300A)を用いたアッセイで減少し、リン酸化模倣MARCH5(S13D)およびMULAN(S300D)を用いたアッセイで増加した。したがって、PERKのリン酸化は、ミトフシン2に対するE3ユビキチンリガーゼの活性を増加させることが示された。ツニカマイシンのようなERストレスが、自己リン酸化を介してPERKを活性化するという結果と合わせると、ERストレスにより仲介されたPERKの活性化がE3ユビキチンリガーゼをリン酸化し、次いで、リン酸化E3ユビキチンリガーゼのミトフシン2に対するリガーゼ活性を促進するとの仮説が有望であることが示唆された。
ユビキチン化ミトフシン2の量は、リン酸化欠損MARCH5(S13A)またはMULAN(S300A)を用いたアッセイで減少し、リン酸化模倣MARCH5(S13D)およびMULAN(S300D)を用いたアッセイで増加した。したがって、PERKのリン酸化は、ミトフシン2に対するE3ユビキチンリガーゼの活性を増加させることが示された。ツニカマイシンのようなERストレスが、自己リン酸化を介してPERKを活性化するという結果と合わせると、ERストレスにより仲介されたPERKの活性化がE3ユビキチンリガーゼをリン酸化し、次いで、リン酸化E3ユビキチンリガーゼのミトフシン2に対するリガーゼ活性を促進するとの仮説が有望であることが示唆された。
〔実施例3〕
<LRRK2による、E3ユビキチンリガーゼを介したPERK活性の抑制>
(3−1)
本願の発明者は、以前に、LRRK2(G2019S)がキナーゼ依存的な方法でE3ユビキチンリガーゼを抑制することを見出した。そこで、上記の実施例の結果と合わせると、E3ユビキチンリガーゼを制御するために、PERKは、LRRK2と拮抗的に作用するとの仮説が立てられる。この仮説を立証するために、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化を、ツニカマイシンで処理したMEF細胞で解析した。
<LRRK2による、E3ユビキチンリガーゼを介したPERK活性の抑制>
(3−1)
本願の発明者は、以前に、LRRK2(G2019S)がキナーゼ依存的な方法でE3ユビキチンリガーゼを抑制することを見出した。そこで、上記の実施例の結果と合わせると、E3ユビキチンリガーゼを制御するために、PERKは、LRRK2と拮抗的に作用するとの仮説が立てられる。この仮説を立証するために、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化を、ツニカマイシンで処理したMEF細胞で解析した。
簡潔には、MEF細胞、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞、およびLRRK2−IN−1(CAS 1234480−84−2、Calbiochem製)で処理したLRRK2(G2019S)発現MEF細胞を、コントロールまたはツニカマイシン(1μg/ml)で4時間処理した。次いで、PBSで2回洗浄した。その後、PERKについては、イムノブロットにかけ、MARCH5およびMULANについては、免疫沈降後、イムノブロットにかけた。免疫沈降は、簡潔には以下の通り行った。すなわち、NP40含有融解液を用いて、処理後のMEF細胞のタンパク質を可溶化し、プロテインGセファロースに結合した一次抗体と4時間混和した。混合物から、ビーズを遠心(10,000回転、1分)にて分離し、3回洗浄した。抗体に結合したタンパク質をSDSバッファーに融解し、SDS−PAGEで電気泳動して、分子量にしたがってタンパク質を分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。イムノブロットは、上述の通り行った。
その結果を図3Aに示す。なお、図3Aにおいて、全タンパク質レベルに対するリン酸化タンパク質の比率を、一番下のグラフで示す。
[結果]
より多くのE3ユビキチンリガーゼのリン酸化は、ツニカマイシンで処理したMEF細胞で検出された。しかし、ツニカマイシンで処理したLRRK2(G2019S)発現MEF細胞では、より低いE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を示した。また、キナーゼ阻害LRRK2−IN−1で処理したLRRK2(G2019S)発現MEF細胞では、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化を回復した。
より多くのE3ユビキチンリガーゼのリン酸化は、ツニカマイシンで処理したMEF細胞で検出された。しかし、ツニカマイシンで処理したLRRK2(G2019S)発現MEF細胞では、より低いE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を示した。また、キナーゼ阻害LRRK2−IN−1で処理したLRRK2(G2019S)発現MEF細胞では、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化を回復した。
これらのことから、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化は、キナーゼ活性型LRRK2(G2019S)により抑制されることが明らかとなった。注目すべきは、ミトフシン2のレベルは、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化レベルと相関するということである。これは、図2で示されたように、リン酸化E3ユビキチンリガーゼが、ミトフシン2をユビキチン化し、分解する活性を促進するという知見を支持している。
E3ユビキチンリガーゼのリン酸化は、LRRK2およびPERKのキナーゼ活性の共通の標的であると考えられる。ここで、LRRK2(G2019S)とPERKとが相互作用する方法として、2つの方法が考えられる。1つ目は、LRRK2(G2019S)がPERK活性を直接抑制することであり、2つ目は、LRRK2(G2019S)が活性型PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を抑制することである(さらに、その両方の場合も考えられる)。
ツニカマイシンにより誘導されるリン酸化PERKのレベルを比較すると、リン酸化PERKは、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において減少を示さなかった(図3A)。この結果は、LRRK2(G2019S)が、PERK活性を直接抑制するのではなく、PERK活性とE3ユビキチンリガーゼのリン酸化との間の工程を抑制することを示唆する。この見解は、本願の発明者により以前に示された、自己リン酸化型LRRK2がE3ユビキチンリガーゼに直接結合するという報告とも一致する。
まとめると、PERKは、損傷したミトコンドリア構成成分の除去に加えて、ミトフシン2のような基質のユビキチン化および分解を増加させるために、E3ユビキチンリガーゼをリン酸化することを介してMAMの形成に関与していると考えられる。
(3−2)
次いで、PERK活性におけるLRRK2(G2019S)の影響を解析した。PERK活性は、ER内腔中のBiPと結合することにより妨害されることが報告されている(Hetz, 2012)。ERストレスに応答して、BiPがPERKから解離し、PERKのダイマー化および自己リン酸化が開始する。その結果、活性化されたPERKは、eIF2αのような基質をリン酸化する。
次いで、PERK活性におけるLRRK2(G2019S)の影響を解析した。PERK活性は、ER内腔中のBiPと結合することにより妨害されることが報告されている(Hetz, 2012)。ERストレスに応答して、BiPがPERKから解離し、PERKのダイマー化および自己リン酸化が開始する。その結果、活性化されたPERKは、eIF2αのような基質をリン酸化する。
このようなこの制御システムに加えて、ミトフシン2は、MAMのER側で、PERK活性を直接制御することが報告されている(Munoz et al., 2013、Celardo et al., 2016)。ここで、ミトフシン2の欠損は、過剰にPERKを活性化し、その後のUPRで、あまりにも多くのUPRが細胞アポトーシスを誘導する。本願の発明者は、以前に、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、ミトフシン2に対するE3ユビキチンリガーゼが不活化されて、生じたミトフシン2の蓄積がミトコンドリア異常を引き起こすことを見出した。
したがって、蓄積したミトフシン2がPERK活性を減少させ、それにより、ERストレスに応答して、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞におけるUPRを減少させるという仮説が立てられる。この場合において、減少したUPRにより引き起こされるより多くの損傷したミトコンドリアがER機能を悪化させる可能性が考えられる。この可能性を検証するために、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞にミトフシン2 shRNAを導入する実験を行った。
簡潔には、MEF細胞に、5μgのミトフシン2(Mfn2)またはミトフシン2 shRNA(Mfn2 shRNA)を導入し、約16時間インキュベートした。次いで、PBSで2回洗浄した。その後、該MEF細胞を、コントロールまたはツニカマイシン(1μg/ml)で4時間処理した。次いで、PBSで2回洗浄した。その後、PERKについては、イムノブロットにかけ、MARCH5およびMULANについては、免疫沈降後、イムノブロットにかけた。なお、ミトフシン2 shRNAは、内因性のミトフシン2をコントロールのほぼ10%まで減少させた。免疫沈降およびイムノブロットは、上述の通り行った。
その結果を図3Bに示す。なお、図3Bにおいて、全タンパク質レベルに対するリン酸化タンパク質の比率を、一番下のグラフで示す。
[結果]
ミトフシン2 shRNAは、ERストレスに応答して、部分的にPERKキナーゼ活性を回復した。この結果と一致して、ミトフシン2 shRNAは、MARCH5およびMULANのリン酸化を増加させた。したがって、ミトフシン2は、PERKの不活化を介してE3ユビキチンリガーゼを抑制することが示された。PERK欠損MEF細胞がERストレスへの感受性を減少させるという以前の報告(Verfaillie et al., 2012)と合わせると、PERKおよびLRRK2は、異なる細胞機能に関与するが、機能の欠損(PERK)または機能の獲得(LRRK2)を生じる両遺伝子の突然変異は、同様の表現型、すなわち、ERストレスに応答して減少したUPRを生じると考えられる。
ミトフシン2 shRNAは、ERストレスに応答して、部分的にPERKキナーゼ活性を回復した。この結果と一致して、ミトフシン2 shRNAは、MARCH5およびMULANのリン酸化を増加させた。したがって、ミトフシン2は、PERKの不活化を介してE3ユビキチンリガーゼを抑制することが示された。PERK欠損MEF細胞がERストレスへの感受性を減少させるという以前の報告(Verfaillie et al., 2012)と合わせると、PERKおよびLRRK2は、異なる細胞機能に関与するが、機能の欠損(PERK)または機能の獲得(LRRK2)を生じる両遺伝子の突然変異は、同様の表現型、すなわち、ERストレスに応答して減少したUPRを生じると考えられる。
〔実施例4〕
<ERストレスに応答したPERK活性のポジティブフィードバック>
上記実施例におけるインビトロでの実験は、ミトフシン2のレベルを介したLRRK2およびPERKの機能的なつながりを示した。本願の発明者は、以前に、ミトフシン2のレベルは、E3ユビキチンリガーゼにより制御されており、E3ユビキチンリガーゼの活性は、そのリン酸化状態に依存することを見出している。このことより、PERKがE3ユビキチンリガーゼの活性化およびミトフシン2の分解を介して自身を活性化していることが考えられる。
<ERストレスに応答したPERK活性のポジティブフィードバック>
上記実施例におけるインビトロでの実験は、ミトフシン2のレベルを介したLRRK2およびPERKの機能的なつながりを示した。本願の発明者は、以前に、ミトフシン2のレベルは、E3ユビキチンリガーゼにより制御されており、E3ユビキチンリガーゼの活性は、そのリン酸化状態に依存することを見出している。このことより、PERKがE3ユビキチンリガーゼの活性化およびミトフシン2の分解を介して自身を活性化していることが考えられる。
このようなPERKに関するポジティブフィードバック機構が、ERストレスに応答して生じるか否かを調べるために、MARCH5およびMULAN、またはリガーゼ欠損MARCH5(H43W)およびMULAN(C339A)をトランスフェクトしたMEF細胞を用いて、免疫沈降−イムノブロットを行った。
簡潔には、MEF細胞に、5μgのMARCH5およびMULANの混合物、または5μgのリガーゼ欠損MARCH5(H43W)および MULAN(C339A)の混合物を導入し、約16時間インキュベートした。次いで、PBSで2回洗浄した。その後、該MEF細胞を、コントロールまたはツニカマイシン(1μg/ml)で4時間処理した。次いで、PBSで2回洗浄し、イムノブロットにかけた。イムノブロットは、上述の通り行った。
その結果を図3Cに示す。なお、図3Cにおいて、全PERKレベルに対するリン酸化PERKレベルの比率、およびアクチンに対するミトフシン2の比率を、一番下のグラフで示す。
[結果]
内因性のリン酸化PERKは、MARCH5およびMULANの導入により増加したが、リガーゼ欠損MARCH5(H43W)およびMULAN(C339A)の導入により増加しなかった。同時に、ミトフシン2のレベルは、MARCH5およびMULANの導入により減少したが、リガーゼ欠損MARCH5(H43W)およびMULAN(C339A)の導入により減少しなかった。したがって、E3ユビキチンリガーゼは、ミトフシン2のユビキチン仲介分解を介して、PERKキナーゼ活性を活性化することが示された。
内因性のリン酸化PERKは、MARCH5およびMULANの導入により増加したが、リガーゼ欠損MARCH5(H43W)およびMULAN(C339A)の導入により増加しなかった。同時に、ミトフシン2のレベルは、MARCH5およびMULANの導入により減少したが、リガーゼ欠損MARCH5(H43W)およびMULAN(C339A)の導入により減少しなかった。したがって、E3ユビキチンリガーゼは、ミトフシン2のユビキチン仲介分解を介して、PERKキナーゼ活性を活性化することが示された。
まとめると、PERKからのBiP解離による最初のPERKキナーゼ活性が、PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を含むポジティブフィードバックループにスイッチを入れ、E3ユビキチンリガーゼによりミトフシン2を減少させ、ミトフシン2の減少によりPERK活性化を促進することが示唆された(図4A)。
〔実施例5〕
<PERK活性化によるLRRK2(G2019S)仲介ミトコンドリア異常の回復>
図4Aで示したモデルでは、LRRK2(G2019S)は、PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を妨害する可能性が考えられる。そこで、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞におけるミトフシン2とPERK活性との相互関係を調べるために、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、PERK活性を促進する実験を行った。
<PERK活性化によるLRRK2(G2019S)仲介ミトコンドリア異常の回復>
図4Aで示したモデルでは、LRRK2(G2019S)は、PERKによるE3ユビキチンリガーゼのリン酸化を妨害する可能性が考えられる。そこで、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞におけるミトフシン2とPERK活性との相互関係を調べるために、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞において、PERK活性を促進する実験を行った。
簡潔には、MEF細胞およびLRRK2(G2019S)発現MEF細胞を、PERKアクチベーターまたはPERKインヒビターの存在下、コントロールまたはツニカマイシン(1μg/ml)で4時間処理した。PERKアクチベーターとしては、3μMのEIF2AK3 Activator(CCT020312(324879)、Calbiochem製)、または10μM のSalubrinal(CAS 405060−95−9、Cayman Chemical製)を用いた。また、PERKインヒビターとしては、0.3μM GSK2606414(CAS 1337531−89−1、TOCRIS製)を用いた。なお、EIF2AK3 Activator(CCT020312(324879))は、6−ブロモ−3−[5−(4−ブロモ−フェニル)−1−(3−ジエチルアミノ−プロピオニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−3−イル]−4−フェニル−1H−キノリン−2−オンで示される化合物である。また、Salubrinal(CAS 405060−95−9)は、3−フェニル−N−[2,2,2−トリクロロ−1−[[(8−キノリニルアミノ)チオキソメチル]アミノ]エチル]−2−プロペンアミドで示される化合物である。
次いで、PBSで2回洗浄し、イムノブロットにかけた。イムノブロットは、上述の通り行った。
カルシウムイメージングは、簡潔には以下の通り行った。すなわち、ミトコンドリアカメレオン発現プラスミド(pcDNA3.0−2mt−cameleon)は、Dr. Roger Tsien(カリフォルニア大学)から提供を受けた(Palmer et al., 2006)。Lipofectamine 2000(Invitrogen製)を用いて、3.5cmのコンフォーカルディッシュに播種したMEF細胞に、5μgのpcDNA3.0−2mt−cameleonをトランスフェクトした。2日後、細胞を2回洗浄し、Hanks’ balanced salt solution(HBSS、142mM NaCl、5.6mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、0.34mM Na2HPO4、0.44mM KH2PO4、4.2mM NaHCO3、10mM HEPES、および5.6mM グルコース、pH7.4)で維持した。カルシウムイメージング実験は、蛍光レーザー顕微鏡を用いて行った。カメレオンのDual−emission ratio imagingは、BP420/10 励起フィルター、440/520 ダイクロイックミラー、およびフィルターチェンジャーを用いて切り替えられる2つの発光フィルター(シアン蛍光タンパク質のためにBP472/30、およびYFPのためにBP542/27)を用いて行った。暴露時間は100msであり、イメージは3秒毎に集めた。ベースライン(50秒)の測定値をブラジキニン(BK)の最初のパルスの前に得た。BKをHBSSに溶解し、2.5μMの濃度とした。いくつかの実験では、BKで刺激する前に、MEF細胞を2−アミノ−エトキシジフェニルボレート(2−APB、20μM)で、室温で30分間プレインキュベートした。以前に示された方法(Palmer-AE, Chem Biol, 2006, 13: 521)により、ミトコンドリア内の自由Ca2+濃度を決定した。
ミトコンドリアのCa2+吸収は、透過型MEF細胞で行った。細胞質のイオン組成を模倣するバッファー(130mM KCl、10mM NaCl、2mM K2HPO4、5mM コハク酸、5mM リンゴ酸、1mM MgCl2、20mM HEPES、1mM ピルビン酸、0.5mM ATPおよび0.1mM ADP(pH7.0))で、MEF細胞を維持した。バッファーに、100μM EGTAまたは2mM EGTAのいずれか、および2mM HEEDTA−バッファーCa2+を補充した(1または2μM)。FRETイメージングの間、50mMのジギトニンを用いた1分間の潅流により、MEF細胞に孔をあけた。ミトコンドリアのCa2+吸収速度を、SLOPEエクセル関数を用いた一次導関数として計算し、3つの時間点について平滑化した。Ca2+添加の間に到達したより高い値が最大のCa2+吸収スピードを示す。
その結果を図4B〜4Eに示す。なお、図4Bにおいて、コントロールのレベルに対して標準化した値を、一番下のグラフで示す。図4Cおよび4Dにおいて、絶対ミトコンドリアCa2+濃度([Ca2+]m)は、MEF細胞において、ブラジキニン(2.5μM)に応答して変化する。図4Dおよび4Eにおいて、エラーバーは、6回の独立した実験からの±SDを示す。Tukey’s post hoc testを用いたOne−way ANOVA。*は、コントロールMEF細胞と比較して、P<0.05を示す。
[結果]
いずれのPERKアクチベーターも、LRRK2(G2019S)により増加したオートファジーフラックスを回復させる(減少させる)ことに成功した。PERKアクチベーターは、さらに、LRRK2(G2019S)により減少したER−ミトコンドリアCa2+輸送を回復させた(図4C、4Dおよび4E)。対照的に、PERKインヒビターは、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞における、オートファジーフラックスの増加およびER−ミトコンドリアCa2+輸送に影響を与えなかった。したがって、UPRのために必要とされるPERKキナーゼ活性は、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞におけるER−ミトコンドリア異常を回復させることに成功した。
いずれのPERKアクチベーターも、LRRK2(G2019S)により増加したオートファジーフラックスを回復させる(減少させる)ことに成功した。PERKアクチベーターは、さらに、LRRK2(G2019S)により減少したER−ミトコンドリアCa2+輸送を回復させた(図4C、4Dおよび4E)。対照的に、PERKインヒビターは、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞における、オートファジーフラックスの増加およびER−ミトコンドリアCa2+輸送に影響を与えなかった。したがって、UPRのために必要とされるPERKキナーゼ活性は、LRRK2(G2019S)発現MEF細胞におけるER−ミトコンドリア異常を回復させることに成功した。
本発明を用いれば、これまでにはなかった新たなパーキンソン病の処置用医薬、およびそのような医薬を探索するためのスクリーニング方法を提供できるので、医薬分野のさらなる発展に貢献し得る。
Claims (9)
- RNA依存性タンパク質キナーゼ様ERキナーゼ(PERK)活性化剤を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬。
- 上記PERK活性化剤が、PERKの立体構造を変化させて、その二量体化を誘導し、二量体化したPERKを自己リン酸化させる薬剤であることを特徴とする、請求項1に記載のパーキンソン病の処置用医薬。
- 上記パーキンソン病が、LRRK2の遺伝子変異に起因するパーキンソン病であることを特徴とする、請求項1または2に記載のパーキンソン病の処置用医薬。
- 上記LRRK2の遺伝子変異が、配列番号3で示されるアミノ酸配列においてN末端側から2019番目のグリシンがセリンに置換されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のパーキンソン病の処置用医薬。
- 以下の工程:
(a)試験物質と、細胞またはPERKとを接触させる接触工程、および
(b)PERKの活性化状態を評価する評価工程
を含むことを特徴とする、パーキンソン病の処置用医薬をスクリーニングするための方法。 - 上記(b)の評価工程が、上記(a)において試験物質と細胞とを接触させる場合には、PERKのリン酸化、E3ユビキチンリガーゼのリン酸化、ミトフシン2の発現量、LC3−IIの発現量およびp62の発現量からなる群より選択される少なくとも一つを評価することを含み、上記(a)において試験物質とPERKとを接触させる場合には、PERKの基質のリン酸化を評価することを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
- 上記(a)の細胞が、変異型LRRK2が発現している細胞であることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
- 上記変異型LRRK2が、配列番号3で示されるアミノ酸配列においてN末端側から2019番目のグリシンがセリンに置換されているアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
- 上記(a)の試験物質とPERKとを接触させる接触工程が、ATPの存在下、試験物質と、PERKと、PERKの基質とを接触させることを含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
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JP2017179130A JP2019052125A (ja) | 2017-09-19 | 2017-09-19 | パーキンソン病の処置用医薬、およびパーキンソン病の処置用医薬のスクリーニング方法 |
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Cited By (3)
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CN111419844A (zh) * | 2020-05-09 | 2020-07-17 | 重庆医科大学 | cct020312作为治疗乳腺癌或者前列腺癌的药物应用 |
WO2020188883A1 (ja) | 2019-03-20 | 2020-09-24 | 株式会社Screenホールディングス | 同義語判定方法、同義語判定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、および、同義語判定装置 |
WO2023171806A1 (ja) * | 2022-03-11 | 2023-09-14 | 株式会社幹細胞&デバイス研究所 | ミトコンドリア機能障害を伴う疾患の治療又は予防剤 |
-
2017
- 2017-09-19 JP JP2017179130A patent/JP2019052125A/ja active Pending
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