JP2019045587A - 識別媒体、識別媒体の使用方法、及び識別媒体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来品よりさらに複製の困難性が高く、挙動の特異性が高い、識別媒体、その使用方法、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コレステリック規則性を有する樹脂層を備える、識別媒体であって、前記識別媒体は、その表面において、回折格子構造を有し、前記回折格子構造は、前記識別媒体を透過する単色光又は前記識別媒体において反射する単色光に、真正性識別のための模様を付与する構造である、識別媒体;その使用方法;並びに、液晶性組成物の層を半硬化させ、半硬化層とする工程と、前記半硬化層の表面に回折格子構造を付与する工程と、前記半硬化層を本硬化させ、コレステリック規則性を有する樹脂層を得る工程とを含む製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、真正性識別用の識別媒体、当該識別媒体の使用方法、及び当該識別媒体の製造方法に関する。
従来から、真正であることが求められるクレジットカード等のカード類、商品券、身分証明書、証券、金券類などの物品の表面に、物品の偽造防止のために、容易に複製できない識別媒体を付することが一般的に行われている。かかる識別媒体は、複製の困難性(容易に複製できないこと)、及び挙動の特異性(真正なもののみに見られる特異的な挙動を示すこと)等の特性が求められる。そのような識別媒体の例として、特定の偏光のみを反射しそれ以外の偏光を透過する偏光層を用いた識別媒体が知られている(特許文献1〜2参照)。また、ホログラムを応用したもの(特許文献3〜4)、複屈折パターンを用いたもの(特許文献5〜6)、ホログラムと複屈折パターンを組合わせたもの(特許文献7)なども知られている。
特開2014−174471号公報 特開2014−174472号公報 特開平11−151877号公報 再公表WO2000/13065公報 特開2012−18347号公報 特開2011−203636号公報 特開2009−298075号公報
しかしながら、目視で容易に真贋判定が可能で、さらに複製の困難性が高く、挙動の特異性が高い識別媒体が求められている。
従って、本発明の目的は、従来品よりさらに複製の困難性が高く、挙動の特異性が高い、識別媒体、その使用方法、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した結果、識別媒体を構成する材料を特定のものとし、且つ識別媒体の表面構造を特定のものとすることにより、かかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によれば、下記のものが提供される。
〔1〕 コレステリック規則性を有する樹脂層を備える、識別媒体であって、
前記識別媒体は、その表面において、回折格子構造を有し、
前記回折格子構造は、前記識別媒体を透過する単色光又は前記識別媒体において反射する単色光に、真正性識別のための模様を付与する構造である、識別媒体。
〔2〕 前記コレステリック規則性を有する樹脂層の可視領域内の選択反射帯域の半値幅Wxが、100nm以下である、〔1〕に記載の識別媒体。
〔3〕 前記模様が、前記識別媒体を透過する単色光又は前記識別媒体において反射する単色光を、前記識別媒体から離隔したスクリーンに投影した際に観察しうる模様である、〔1〕又は〔2〕に記載の識別媒体。
〔4〕 前記コレステリック規則性を有する樹脂層の表面の一部の領域に設けられた、紫外インク層又は赤外インク層をさらに備える、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の識別媒体。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の識別媒体の使用方法であって、
前記識別媒体の前記コレステリック規則性を有する樹脂層を、円偏光板を介して観察する工程、及び
前記識別媒体に、単色光の光線を照射し、前記識別媒体を透過するか又は前記識別媒体において反射する前記光線の像を観察する工程
を含む、使用方法。
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の識別媒体の製造方法であって、
コレステリック液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を含む液晶性組成物の層を形成する工程と、
前記液晶性組成物の層を半硬化させ、半硬化層とする工程と、
前記半硬化層の表面に回折格子構造を付与する工程と、
前記半硬化層を本硬化させ、コレステリック規則性を有する樹脂層を得る工程と、
を含む製造方法。
本発明によれば、従来品よりさらに複製の困難性が高く、挙動の特異性が高い、識別媒体、その使用方法、及びその製造方法が提供される。
図1は、本発明の識別媒体の一例を概略的に示す斜視図である。 図2は、図1に示す識別媒体10を、線1aに沿って切断した断面を示す縦断面図である。 図3は、本発明の識別装置の別の一例を概略的に示す縦断面図である。 図4は、本発明の識別装置のさらに別の一例を概略的に示す縦断面図である。
以下、例示物及び実施形態を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
〔1.識別媒体:概要〕
本発明の識別媒体は、コレステリック規則性を有する樹脂層を備える。以下においては、コレステリック規則性を有する樹脂層を、単に「コレステリック樹脂層」という場合がある。本発明の識別媒体はさらに、その表面において、特定の回折格子構造を有する。
図1は、本発明の識別媒体の一例を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1に示す識別媒体10を、線1aに沿って切断した断面を示す縦断面図である。図1及び図2において、識別媒体10は、コレステリック樹脂層110、及びコレステリック樹脂層110の下側の面110Dに接して設けられる下地層120を備える。下地層120は、本発明の識別媒体の任意の構成要素である。
この例において、下地層120は、非透光性の層である。識別媒体10が非透光性の下地層120を備えることにより、コレステリック樹脂層110による光の反射を容易に視認することができる。
また、下地層120は、コレステリック樹脂層110を支持する。それにより、コレステリック樹脂層110が、機械的強度が低いものであっても、識別媒体10は使用に必要な機械的強度を有しうる。
この例では、コレステリック樹脂層110の上側の面110Uの中央部の領域110Cに、回折格子構造111が設けられる。回折格子構造111は、面110Uに設けられた凹凸構造である。
〔2.識別媒体:コレステリック樹脂層〕
樹脂層がコレステリック規則性を有するとは、樹脂層を構成する物質の分子又は分子の部分が、コレステリック規則性を有する状態に整列していることをいう。
コレステリック樹脂層は、ネマチック構造やスメクチック構造を有する重合性液晶化合物、カイラル剤、溶媒、及び重合開始剤を混合した液晶組成物溶液を支持体となる基材フィルム上に塗布し、その塗布膜に紫外線を照射し重合させることで形成することができる。なお、前記重合性液晶化合物とカイラル剤の代わりに分子中に不整炭素原子を持つ光学異性体の重合性液晶化合物を使用して、この光学異性体の重合性液晶化合物、溶媒及び重合開始剤を混合した液晶組成物溶液を基材フィルム上に塗布し、紫外線を照射し重合させることでコレステリック樹脂層を形成することも可能である。
重合性液晶化合物としては、重合性基を有する液晶化合物、側鎖型液晶ポリマーを形成しうる化合物、円盤状液晶化合物などの化合物が挙げられ、中でも、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光を照射することによって重合しうる光重合性の化合物が好ましい。重合性基を有する液晶化合物としては、例えば、特開平11−513360号公報、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物などが挙げられる。また、側鎖型液晶ポリマー化合物としては、例えば、特開2003−177242号公報などに記載の側鎖型液晶ポリマー化合物などが挙げられる。また、好ましい液晶化合物の例を製品名で挙げると、BASF社製「LC242」等が挙げられる。円盤状液晶化合物の具体例としては、特開平8−50206号公報、文献(C. Destrade et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994));J. Lehn et al., J.Chem.Soc.,Chem.Commun., page 1794 (1985)に記載されている。液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
支持体となる基材フィルムは全波長領域において透明であれば特に限定されず、公知の材料を使用しうる。透明とは、光線透過率が70%以上のものをいう。例えば、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン等が使用できる。その厚みは、操作性、加工性を考慮し20〜300μm程度のものが好ましい。
層内の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、樹脂層内において、多数の分子の層をなす態様で整列する。かかる多数の分子の層の中のある層Aにおいては、分子の軸がある一定の方向となるよう分子が整列し、それに隣接する層Bでは、層Aにおける方向と角度を成してずれた方向に分子が整列し、それにさらに隣接する層Cでは層Bにおける方向と角度を成してさらにずれた方向に分子が整列する。このように、多数の分子の層において、分子の軸の角度が連続的にずれて、分子がねじれる構造が形成される。即ち、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、更に次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向が連続的にねじれてゆく構造は、通常は螺旋構造であり、光学的にカイラルな構造となる。かかるねじれの方向(螺旋軸)は、コレステリック樹脂層の厚み方向に略平行(平行、又は±5°程度の角度をなす方向)になっていることが好ましい。カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでのカイラル軸方向の距離を1ピッチという。
コレステリック樹脂層は、通常、選択反射機能、即ち非偏光のうちある円偏光成分を反射し、その他の偏光成分を透過する機能を有しうる。したがって、自然光における観察(即ち、太陽光等の、白色に近い非偏光による照明下における観察)では、コレステリック樹脂層は、その選択反射帯域に応じた外観を呈する。例えば、自然光における裸眼観察において、選択反射帯域が十分に広いコレステリック樹脂層は鏡面に近い銀色の外観を呈し、選択反射帯域が狭いコレステリック樹脂層は反射帯域に対応した色彩を有する外観を呈する。例えば、選択反射帯域の中心波長が波長650nm付近である場合赤色の外観を呈する。
コレステリック樹脂層を円偏光板を介して観察した場合、反射光が円偏光であることを認識することができる。具体的には、コレステリック樹脂層を、自然光において右円偏光板を介して観察した場合又は左円偏光板を介して観察した場合の一方において、反射光が遮られ、他方に比べて大きく異なる外観を呈する。このような外観の相違を示す層は、通常のインクによる印刷物等に比べて形成が困難であり、入手が困難である。したがって、このような性質を有するコレステリック樹脂層を備えることにより、本発明の識別媒体は、真正性を識別する媒体として機能することができる。
図1及び図2に示す例では、反射光の観察は、識別媒体10の上面110Uを、円偏光板を介して観察することにより行いうる。具体的には、自然光において、識別媒体10の上面110Uを、右円偏光板及び左円偏光板の一方を介して観察し、続いて他方を介して観察し、観察される外観を対比することにより、反射光の観察を行いうる。
螺旋構造において分子軸が捩れる時の回転軸を表す螺旋軸と、コレステリック樹脂層の法線とが並行である場合、選択反射帯域の中心波長λ(nm)は、螺旋構造のピッチ長P(nm)に依存し、λ=n×P・・・式(1)の関係を有する。ここで式中、nはコレステリック樹脂層の平均屈折率を表す。螺旋構造の見かけのピッチ長は、コレステリック樹脂層の観察角度によって変化するので、この場合の選択反射帯域の中心波長λc(nm)は、コレステリック樹脂層を観察する角度によって変化し、λc=n×P×cosθ・・・式(2)の関係を有する。ここで式中、θは入射角を表す。したがって、自然光裸眼観察において、コレステリック樹脂層は、観察角度によりその色彩が変化するので、意匠性の向上も図ることができる。具体的には、観察角度が法線方向から傾斜した角度である場合、螺旋構造の見かけのピッチ長は短くなるので、色彩は短波長側にシフトする。本発明の識別媒体は、このようなシフトを示す性質によっても、真正性を識別する媒体として機能しうる。
さらに、式(1)は、λ=n×(1/(HTP×0.01C))・・・式(3)(ここで式中、HTP(ヘリカルツイスティングパワー)はカイラル剤の種類で決まる螺旋構造を形成する捩り力、Cは液晶組成物中のカイラル剤の含有量(%)を表す)となるので、選択反射帯域の中心波長は、用いるカイラル剤の種類、濃度に依存する。カイラル剤としては、従来公知の剤を適宜使用することができる。
カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものが挙げられる。カイラル剤として、市販品を使用することもでき、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、選択反射帯域幅Δλは、Δλ=Δn×Pで表されるため、屈折率異方性Δnの大きな液晶化合物を用いれば、選択反射帯域幅を広げることができるし、HTPが高いカイラル剤を用いることにより、液晶化合物の液晶性を損なうことなく螺旋構造のピッチを縮め、捩れを高めることができる。HTPの大きな化合物の代表例が、英国特許2298202号公報で開示されている。カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、液晶組成物中で、通常1重量%〜60重量%である。
コレステリック樹脂層の屈折率異方性Δnは、0.05以上、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.20以上である。ここで、Δnは、セナルモン法により測定しうる。屈折率異方性Δnの上限は、例えば0.30以下としうる。Δnが0.20以上であれば、可視領域における選択反射波長帯域を広くすることができ、Δnが0.05以上であれば、可視領域における選択反射波長帯域を適宜調整することができ、所望の色彩の反射光を得ることができる。
意匠性を有し、このようなシフトを容易に視認しうる観点からは、コレステリック樹脂層の選択反射帯域は、ある程度以上狭いことが好ましい。具体的には、選択反射帯域の半値幅Wxが、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下であることが好ましい。半値幅Wxは、選択反射帯域において、最大の反射率の50%の反射率を示す帯域のうちの最も長い波長と最も短い波長との差である。半値幅Wxの下限は特に限定されないが、ある程度以上の容易に視認しうる色彩の発現を確保する観点から、例えば30nm以上としうる。短波長側へのシフトを容易に視認しうる観点から、選択反射帯域の中心波長は、赤色又はそれに近い色に対応する波長であることが好ましい。具体的には、選択反射帯域の中心波長は、波長600nm〜750nmの範囲内であることが好ましい。
図1及び図2に示す例では、色彩のシフトの観察は、識別媒体10の上面110Uを、異なる複数の角度から観察することにより行いうる。具体的には、自然光において、識別媒体10の上面110Uを、裸眼にて、上面110Uの法線方向A21及び斜め方向A22の一方から観察し、続いて他方から観察し、観察される外観を対比することにより、シフトの観察を行いうる。
半値幅Wxが広い場合、シフトの観察は困難になる一方、銀色の外観を得ることができ、それにより所望のメタリック調を付与したり、鏡面としての機能を発現させたりすることができる。銀色のメタリック調の外観を得る場合、半値幅Wxは、好ましくは250nm以上、より好ましくは300nm以上であり、理想的には最大の反射率の50%の反射率を示す帯域が可視領域(波長400nm以上800nm以下)全体に亘ることが好ましい。このような選択反射帯域が広帯域のコレステリック樹脂層の製造方法は、特許5391692号公報に開示されている。
コレステリック樹脂層の厚さは、特に限定されず、樹脂層の製造が容易で、且つ選択反射機能及び回折の発現が容易な、適切な厚さとしうる。具体的には、コレステリック樹脂層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上、さらにより好ましくは3.0μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、さらにより好ましくは8μm以下である。
〔3.識別媒体:回折格子構造〕
本発明の識別媒体の回折格子構造は、識別媒体を透過する単色光又は識別媒体において反射する単色光に、真正性識別のための模様を付与する構造である。以下において、かかる特定の回折格子構造を、単に回折格子構造という場合がある。
回折格子構造は、一般的なホログラムの表示のための回折格子構造としうる。特に、単色光に模様を付与するホログラムとすることにより、自然光における通常の観察では容易に模様を認識できず、単色光を照射した場合のみに模様を認識しうるものとすることができる。このように、識別媒体が、通常の観察では容易に認識できない特異性を有することにより、偽造者が、かかる特異性を看過して偽造物を製造する可能性が高まり、そのため真正性識別において特に有利である。
回折格子構造を構成する凹凸構造は、その高さが小さいものが好ましい。例えば凹凸構造の算術平均粗さRaは、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。このような高さが小さい回折格子構造とすることにより、回折格子構造を、裸眼による観察で認識することが困難なものとすることができる。裸眼による観察で認識することが困難なことにより、偽造者が、回折格子構造の存在を看過して偽造物を製造する可能性が高まり、そのため真正性識別において特に有利である。凹凸構造の算術平均粗さRaの下限は、特に限定されないが例えば10nm以上としうる。算術平均粗さRaはJIS B0601に準じて、表面粗さ測定機(ミツトヨ社製「サーフテストエクストリーム V−3000 CNC」)を用いて、測定することができる。
回折格子構造を構成する凹凸構造を形成する方法としては、フォトリソグラフィ法や、レーザー彫刻等の各種彫刻方法及びエンボスによる直接加工する方法や、射出成型、ナノインプリント、熱エンボス法、ホットコールドプレス法などにより微細な凹凸構造を転写する方法があるが凹凸構造を形成できるものであれば、形成方法は限定されない。薄膜のコレステリック樹脂層に高い精度で凹凸構造を形成する観点から、ナノインプリント法により形成されることが好ましい。転写用の原版型の作成は、例えば、レーザーや電子線などの描画機によって、凹凸構造を表面に有したレジスト膜を原版として作成してもよい。得られた原版に対して導通膜をドライコーティングした後に、電鋳によって実用版を形成してもよい。
コレステリック樹脂層に微細な凹凸構造を形成する具体的な方法は、光重合性液晶化合物を含有するコレステリック液晶組成物溶液を基材に塗布してコレステリック樹脂層を形成する工程、コレステリック樹脂層を半硬化する工程、その半硬化したコレステリック樹脂層に凹凸構造を有する型を押圧する工程、半硬化のコレステリック樹脂層を本硬化する工程、および型を離型する工程、により形成されることが好ましい。
単色光に付与される模様は、識別媒体から離隔したスクリーンに単色光を投影した際に観察しうる模様であることが好ましい。例えば、回折格子構造は、識別媒体を透過する単色光又は識別媒体において反射する単色光を、複数の異なる角度に分岐させる構造としうる。
図1及び図2に示す例では、回折格子構造111は、特定の波長の単色光を、3つの複数の異なる角度に分岐させる構造を有する。かかる回折格子構造111を有する領域110Cに、単色光の光線A23を照射すると、光線A23のうち、右円偏光成分又は左円偏光成分が、コレステリック樹脂層110において反射する。領域110Cにおいて反射する光線は、3つの異なる角度に分岐し、出射光A24a、A24b及びA24cとして出射する。出射光A24a、A24b及びA24cは、その光路中に置いたスクリーン20に投影することにより、模様として視認しうる。例えば、光線A23が細長いビームである場合、出射光A24a、A24b及びA24cは、スクリーン20上において、3つのドットとして視認される。
回折格子構造及びその使用の別の例を、図3を参照して説明する。図3は、本発明の識別装置の別の一例を概略的に示す縦断面図である。図3において、識別媒体30は、コレステリック樹脂層310、及びコレステリック樹脂層310の下側の面310Dに接して設けられる下地層320を備える。下地層320は、コレステリック樹脂層310を支持する。それにより、コレステリック樹脂層310が、機械的強度が低いものであっても、識別媒体30は使用に必要な機械的強度を有しうる。この例において、下地層320は、透光性の層である点において、先に示した下地層120と異なる。
この例では、コレステリック樹脂層310の上側の面310Uの中央部の領域310Cに、回折格子構造311が設けられる。回折格子構造311は、面310Uに設けられた凹凸構造である。
この例では、回折格子構造311は、コレステリック樹脂層310を透過する特定の波長の単色光の光路を、3つの複数の異なる角度に分岐させる構造を有する。かかる回折格子構造311を有する領域310Cに、単色光の光線A33を照射すると、光線A33のうち、右円偏光成分又は左円偏光成分が、コレステリック樹脂層310を透過する。領域310Cにおいて透過する光線は、3つの異なる角度に分岐し、出射光A34a、A34b及びA34cとして出射する。出射光A34a、A34b及びA34cは、その光路中に置いたスクリーン30に投影することにより、模様として視認しうる。例えば、光線A33が細長いビームである場合、出射光A34a、A34b及びA34cは、スクリーン30上において、3つのドットとして視認される。
単色光に付与される模様は、識別媒体10及び識別媒体30により付与される模様のように、識別媒体から離隔したスクリーンに単色光を投影した際に観察しうる模様であることにより、種々の利益を得ることができる。例えば、一般的なホログラムにより呈される模様は、裸眼による観察でも観察されうるものがあるが、そのような裸眼で観察されうる模様は、偽造者によっても容易にその存在が認識されるので、偽造者は、かかる模様を再現しようと試みる。それに対して、識別媒体から離隔したスクリーンに単色光を投影した際に模様が観察されるという特異性は、識別媒体を裸眼で観察しただけでは看過する可能性が高い。したがって、偽造者が、回折格子構造の存在を看過して偽造物を製造する可能性が高まり、そのため真正性識別において特に有利である。
また、円偏光分離機能を有するコレステリック樹脂層に付与された模様は、円偏光フィルターを介して観察することで、見えたり、見えなかったりするので、本発明の識別媒体は、真正性識別においてさらに有利である。
〔4.識別媒体:任意の構成要素〕
識別媒体が下地層を含む場合、下地層を構成する材料としては、既知の樹脂等から、適切なものを適宜選択しうる。この樹脂は、重合体と、必要に応じて任意の成分を含む。樹脂が含む重合体の例としては、鎖状オレフィン重合体、シクロオレフィン重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート、及びポリエチレングリコールが挙げられる。また、前記の重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明の識別媒体は、上に述べた構成要素に加えて、さらに任意の構成要素を備えうる。例えば、識別媒体は、コレステリック樹脂層の表面の一部の領域に設けられた、紫外インク層又は赤外インク層をさらに備えうる。
本願において、紫外インク層とは、紫外光の作用により、当該層の存在が検出しうる層をいう。その具体的な例としては:通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、紫外波長領域を多く含む光を照射すると、当該層の存在が裸眼で視認しうる層;及び、通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、紫外波長領域の感度が高い撮像装置で撮像すると、当該層の存在が検出しうる層が挙げられる。
本願において、赤外インク層とは、赤外光の作用により、当該層の存在が検出しうる層をいう。その具体的な例としては:通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、赤外波長領域を多く含む光を照射すると、当該層の存在が裸眼で視認しうる層;及び、通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、赤外波長領域の感度が高い撮像装置で撮像すると、当該層の存在が検出しうる層が挙げられる。
紫外インク層は、コレステリック樹脂層の表面に、紫外インクを適用することにより形成しうる。赤外インク層は、コレステリック樹脂層の表面に、赤外インクを適用することにより形成しうる。紫外インク及び赤外インクの例としては、特許4376380号公報に記載のインクや、帝国インキ製造(株)等により市販されている不可視インクが挙げられる。
紫外インク層又は赤外インク層を備える識別装置の例を、図4を参照して説明する。図4は、本発明の識別装置のさらに別の一例を概略的に示す縦断面図である。図4において、識別媒体40は、コレステリック樹脂層410、及びコレステリック樹脂層410の下側の面410Dに接して設けられる下地層420を備える。下地層420は、コレステリック樹脂層410を支持する。この例において、下地層420は、図1及び図2の例における下地層120と同様の非透光性の層であり下地層120と同様に機能するものであってもよく、図3の例における下地層320と同様の透光性の層であり下地層320と同様に機能するものであってもよい。
この例では、コレステリック樹脂層410の上側の面410Uの中央部の領域410Cに、回折格子構造411が設けられる。回折格子構造411は、面410Uに設けられた凹凸構造である。識別装置40はさらに、コレステリック樹脂層410の上側の面410U上に、紫外インク層又は赤外インク層430を備える。層430は、通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、紫外波長領域を多く含む光若しくは赤外波長領域を多く含む光を照射すると、当該層の存在が裸眼で視認しうる層であるか、又は、通常の光の照明下で裸眼で観察してもその存在が視認できないが、紫外波長領域の感度が高い撮像装置若しくは紫外波長領域の感度が高い撮像装置で撮像すると、当該層の存在が検出しうる層としうる。かかる層の存在を、層の性質に応じた検出方法にて検出することにより、識別媒体の真正性を判定しうる。
〔5.識別媒体の使用方法〕
上に述べた本発明の識別媒体は、下記工程(i)及び(ii)を含む使用方法により使用しうる。以下において、この方法を、本発明の識別媒体の使用方法として説明する。
識別媒体が、コレステリック樹脂層として選択反射帯域の半値幅Wxが100nm以下のものを備える場合、本発明の識別媒体の使用方法はさらに、下記工程(iii)を含みうる。識別媒体が、紫外インク層又は赤外インク層を備える場合、本発明の識別媒体の使用方法はさらに、下記工程(iv)を含みうる。
(i)識別媒体のコレステリック樹脂層を、円偏光板を介して観察する工程。
(ii)識別媒体に、単色光の光線を照射し、識別媒体を透過するか又は識別媒体において反射する光線の像を観察する工程。
(iii)識別媒体の上面を、異なる複数の角度から観察する工程。
(iv)紫外インク層又は赤外インク層を、層の性質に応じた検出方法にて検出する工程。
工程(i)〜(iv)のそれぞれの具体的操作は、既に説明した通りである。工程(i)、及び適用されうる場合には工程(iii)を行うことにより、識別媒体が、特定のコレステリック樹脂層を備えることを確認することができる。工程(ii)を行うことにより、識別媒体が、特定の回折格子構造を備えることを確認することができる。工程(iv)を行うことにより、識別媒体が紫外インク層又は赤外インク層を備えることを確認することができる。したがって、工程(i)及び(ii)、又は工程(i)及び(ii)とその他の工程との組み合わせにより、識別媒体が真正なものであることを識別することができる。
工程(i)〜(iv)を行う際の順序は、特に限定されず、操作の利便性が高い等の観点から、順序を適宜決定しうる。工程(i)を実施するための円偏光板としては、直線偏光子と1/4λ波長板とを組み合わせたもの等の既知のものを用いうる。工程(ii)を実施するための、光線を照射する装置としては、特に限定されず既知のものを用いうる。例えば、回折格子構造を、赤色の単色光に模様を付する構造とし、光線を照射する装置として、レーザーポインタとして市販されている装置を利用し、これらにより工程(ii)を実施しうる。または、光線を照射する装置として、通常市販されている光線照射装置とは異なる波長の単色光を出射しうる装置を用い、回折格子構造を特にそのような単色光に対応したものとすることにより、より信頼性の高い識別を行うことができる。
〔6.識別媒体の製造方法〕
本発明の識別媒体は、下記工程(a)〜(d)を含む製造方法により製造しうる。以下において、この方法を、本発明の識別媒体の製造方法として説明する。
工程(a):コレステリック液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を含む液晶性組成物の層を形成する工程。
工程(b):前記液晶性組成物の層を半硬化させ、半硬化層とする工程。
工程(c):前記半硬化層の表面に回折格子構造を付与する工程。
工程(d):前記半硬化層を本硬化させ、コレステリック樹脂層を得る工程。
〔6.1.工程(a)〕
工程(a)は、適切な支持体に、液晶性組成物を塗布することにより行いうる。支持体としては、任意の材料を適宜選択しうる。識別媒体が下地層を含む場合、支持体として、当該下地層を構成する材料を採用することにより、容易な製造を行うことができる。
液晶化合物を良好に配向させるため、支持体は、その表面に配向膜を有しうる。配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の重合体を含む樹脂により形成しうる。また、これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。配向膜は、前記の重合体を含む溶液を塗布し、乾燥させることにより製造しうる。配向膜の厚みは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
支持体は、その片面又は両面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理を施すことにより、支持体の表面に直接形成される他の層との密着性を向上させることができる。通常、液晶性組成物の層を形成される側の支持体の面に、表面処理が施される。表面処理としては、例えば、エネルギー線照射処理及び薬品処理などが挙げられる。
さらに、液晶性組成物の層を形成される側の支持体の面には、液晶化合物の配向を促進するために、ラビング処理を施してもよい。
液晶性組成物としては、コレステリック液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を含み、且つ必要であればさらに任意成分を含む組成物を用いうる。以下の説明において、コレステリック液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を、単にコレステリック液晶化合物という場合がある。
コレステリック液晶化合物及びそれを含む液晶性組成物としては、既知のものを適宜選択して用いうる。既知のコレステリック液晶化合物及びそれを含む液晶性組成物の例としては、国際公開第2017/033929号に開示されるもの、国際公開第2016/171169号に開示されるもの、及び国際公開第2017/057005号に開示されるものが挙げられる。
液晶組成物の塗布の具体的な操作の例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延製膜法、バーコート法、ダイコート法、及びグラビア印刷法が挙げられる。液晶性組成物の塗布厚みは、所望の厚みのコレステリック樹脂層が得られるよう適宜調整しうる。
工程(a)の終了後、工程(d)の終了までの任意の段階において、必要に応じて、液晶組成物の乾燥工程、配向工程、又はこれらの両方を行いうる。乾燥方法は、任意である。また、乾燥時の温度条件は、例えば、40℃〜150℃の範囲としうる。配向処理は、例えば、液晶組成物の層を、50℃〜150℃で0.5分〜10分間加温することにより行いうる。配向処理を施すことにより、液晶性組成物の層に含まれる液晶化合物の配向を促進することができる。それにより、液晶化合物を、コレステリック規則性を有する液晶相の状態にすることができる。
〔6.2.工程(b)〕
工程(b)における半硬化とは、最終的な製品における重合性液晶化合物の重合転化率の一部までの段階まで重合を進行させることをいう。半硬化を行うことにより、例えば、指先で軽く圧力をかけて押えても、指紋の跡が残らず、粘着性を示さない状態の層を形成することができる。
半硬化による重合で達成される重合転化率は、好ましくは、本硬化で達成される重合転化率の50〜80%としうる。例えば、本硬化で達成される重合転化率が90%である場合、半硬化による重合で達成される重合転化率は、45〜72%としうる。
半硬化の具体的な方法は任意である。具体的には、液晶性組成物の層に光を照射することで、液晶組成物中の重合性の化合物を重合させ、これにより半硬化を達成しうる。照射する光には、可視光のみならず、紫外線及びその他の電磁波をも含む。通常は、紫外線を照射する。照射エネルギー量を、通常の液晶性組成物の硬化における量より少ない値とすることにより、半硬化を達成しうる。
半硬化における光の照射エネルギー(積算光量)は、100〜1000mJ/cmが好ましく、200〜800mJ/cmがより好ましい。光の照度は、10〜1000mW/cmが好ましく、20〜800mW/cmがより好ましい。光の照射時間は、1秒〜60秒が好ましい。
工程(b)により得られる半硬化層は、特定の範囲の硬さを有することが好ましい。具体的には、半硬化層の表面のマルテンス硬さは、30N/mm以上150N/mm以下であることが好ましい。かかる範囲の硬さを有することにより、この後の工程における凹凸構造の変形を抑制することができる。具体的には、半硬化層に圧接した型を外す際における層の変形を抑制したり、型に追随して層が支持体から剥離したりする現象の発生を抑制することができる。加えて、形成された凹凸構造が経時的に変形することを抑制することができる。
〔6.3.工程(c)〕
工程(c)は、半硬化層に、所望の凹凸構造が反転した形状を有する金型等の型を圧接し、凹凸構造を転写することにより行いうる。半硬化層は、本硬化した層よりも軟らかいため、半硬化層には容易に凹凸構造を転写することができる。
型は既知の方法等で製造し得、また、型の材質等は既知の材料を使用することができ特に限定されず、型の具体例としてはエンボスロールが挙げられる。
半硬化層に型を圧接する圧力は、0.5〜50MPaが好ましく、1〜30MPaがより好ましい。
より効率的に凹凸構造を転写するために、半硬化層を加熱しながら型で転写することが好ましい。転写温度は、50〜200℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。転写温度を上記範囲内に収めることで、重合性液晶化合物が液晶相から等方性相へ相転移することを抑制することができる。
半硬化層の表面への凹凸構造の形成を、エンボスロールを使用して行う場合、エンボスロールで液晶性組成物の層に凹凸構造を転写させながら液晶性組成物の層を移動させる。
液晶性組成物の層の移動速度は、1〜50m/minが好ましく、3〜20m/minがより好ましい。
〔6.4.工程(d)〕
工程(c)を行った後、工程(d)を行うことにより、重合性液晶化合物はコレステリック規則性を維持したままで重合するので、表面に凹凸構造を備えるコレステリック樹脂層が得られる。
工程(d)における本硬化とは、最終的な製品における重合性液晶化合物の重合転化率まで重合を進行させることをいう。工程(d)における重合転化率は、85%〜100%としうる。
本硬化の具体的な方法は任意である。具体的には、上に述べた半硬化における光の照射を、照射エネルギーを変更して行うことにより、本硬化を達成しうる。本硬化における光の照射エネルギー(積算光量)は、50〜10000mJ/cmが好ましく、100〜5000mJ/cmがより好ましい。光の照度は、5〜10000mW/cmが好ましく、10〜5000mW/cmがより好ましい。光の照射時間は、1秒〜60秒が好ましい。
工程(c)及び工程(d)は、この順に行ってもよいが、同時に行っても良い。同時に行う場合、型で凹凸構造を転写すると同時に、紫外線を照射することにより本硬化を行う。または、半硬化層に型を圧接して凹凸構造を転写し、型を半硬化層から外す前に、型を半硬化層に接触させた状態を維持したまま、半硬化層に紫外線を照射することもできる。
工程(a)〜(d)を含む方法により、支持体上に、凹凸構造を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。この後、必要に応じて、支持体の剥離、紫外インク層及び赤外インク層等のインク層の形成、及び任意の層との貼合等の任意の操作の一以上を行うことにより、本発明の識別媒体を得ることができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り重量基準である。また、以下の説明においては、特に断らない限り、操作は常温常圧大気中の環境において行った。
〔製造例1〕(コレステリック液晶組成物1の調製)
以下の成分を混合し、コレステリック液晶組成物1を調製した。
化合物1(下記式(1)で表される化合物):16.1重量部
化合物2(下記式(2)で表される化合物):4.0重量部
カイラル剤(LC756、BASF社製):1.25重量部
重合開始剤(イルガキュア379EG、チバスペシャルティケミカル社製):0.6重量部
界面活性剤(FTX−209F、ネオス社製):0.025重量部
シクロペンタノン:78.0重量部
〔製造例2〕(コレステリック液晶組成物2の調製)
以下の成分を混合し、コレステリック液晶組成物2を調製した。
化合物3(下記式(3)で表される化合物):15.6重量部
化合物2:1.25重量部
カイラル剤(LC756、BASF社製):1.3重量部
重合開始剤(イルガキュア379EG、チバスペシャルティケミカル社製):0.5重量部
界面活性剤(FTX−209F、ネオス社製):0.03重量部
シクロペンタノン:81.3重量部
Figure 2019045587
〔製造例3〕(ホログラム型の樹脂版作成)
紙に、「ZEON」の文字列の形状を有する孔を開け、撮像対象物を調製した。
ホログラム作製キット(Integrf LLC社製、商品名「HL01」)を用いて、乾板上に、当該撮像対象物のホログラムを撮像した。乾板には、AGFA−GEVAERT社製 SCIENTIA 10E75AHを用いた。この、乾板の凹凸構造を、ニッケル電鋳板に転写し、マスターモールドとした。
得られたマスターモールドに、脂環式構造含有重合体樹脂のフィルム(商品名「ZF14−100」、日本ゼオン株式会社製、厚さ100μm)を重ね、圧着させた。圧着の際の温度は180℃とし、圧力は10MPaとした。2分間圧着を行うことにより、フィルムに、マスターモールドの凹凸構造を転写し、樹脂版を得た。
〔実施例1〕
(1−1.コレステリック樹脂層1の製造)
A4サイズの基材フィルム(東洋紡社製のPETフィルム「コスモシャインA4100」;厚み100μm)を用意し、その基材フィルムの片面にラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した面に、製造例1で調整したコレステリック液晶組成物1を、ダイコーターを用いて塗布し、未硬化状態のコレステリック液晶組成物1の層を形成した。形成された層の湿潤膜厚は、約6μmであった。
得られたコレステリック液晶組成物の層に、100℃で5分間、配向処理を施した。これにより、液晶組成物の層において、光重合性液晶化合物が配向し、コレステリック液晶相を呈した。また、前記の配向処理時の乾燥により、液晶組成物の層から溶媒が除去された。
その後、未硬化の液晶組成物の層に対して、23℃の空気雰囲気下、基材フィルムの裏面側から紫外線を照射量として10mW/cmで1秒間照射した後、100℃、1分間保持した。再度、23℃の空気雰囲気下、基材フィルムの裏面側から紫外線を照射量として50mW/cmで1秒間照射した後、100℃、1分間保持し、半硬化層を得た。半硬化層のマルテンス硬さは、80N/mmであった。得られた半硬化層の選択反射帯域幅は455nmから775nmまでの320nmであった。照度の測定には、紫外線照度計(オーク製作所製、UV−M03)を用いた。
次いで、半硬化層に製造例3で作成した樹脂版を重ねて、5MPa、温度80℃で1分間圧着した。圧着と同時に、窒素雰囲気下で3500mJ/cmの紫外線(メタルハライドランプ:GS YUASA社製)を照射した。圧着及び紫外線照射終了後、樹脂版を外し、厚さ4.5μmのコレステリック樹脂層1及び基材フィルムからなる識別媒体を得た。コレステリック樹脂層1の凹凸構造は、目視観察では認識できなかった。コレステリック樹脂層1の凹凸構造の算術平均粗さRaは300nmであった。
(1−2.識別媒体の評価)
(1−1)で作製した識別媒体の、凹凸構造を有する部分から10cm×10cmのサンプルを切り出し、識別媒体サンプルとした。スクリーン、識別媒体サンプル、及びレーザー光源(コクヨ社製、レーザーポインターELA−R40D)をこの順に配置し、レーザー光線を、レーザー光源から識別媒体サンプルに向けて照射した。光源側から観察したところ、スクリーンには識別媒体に転写された凹凸構造により生じた「ZEON」の文字列の模様が明確に映し出された。さらに、右円偏光フィルターを介して転写された模様自体を観察したところ、模様は消失した。
〔実施例2〕
(2−1.コレステリック樹脂層2の製造)
下記の変更点の他は、実施例1の(1−1)と同じ操作により、コレステリック樹脂層2からなる識別媒体を得た。
・コレステリック液晶組成物1に代えてコレステリック液晶組成物2を用いた。
・コレステリック液晶組成物2の塗布の条件を変更して、コレステリック液晶組成物2の層の湿潤膜厚を変更した。
・半硬化層を形成するための紫外線の照射量を150mW/cmに変更した。
半硬化層のマルテンス硬さは、95N/mmであった。半硬化層の選択反射帯域幅は520nmから600nmまでの80nmであった。コレステリック樹脂層の厚さは1.8μmであった。コレステリック樹脂層2の凹凸形状は、目視観察では認識できなかった。コレステリック樹脂層2の凹凸構造の算術平均粗さRaは300nmであった。
(2−2.識別媒体の評価)
(2−1)で作製した識別媒体の、凹凸構造を有する部分から10cm×10cmのサンプルを切り出し、識別媒体サンプルとした。スクリーン、識別媒体サンプル、及びレーザー光源(製造例3で用いたものと同じ)をこの順に配置し、レーザー光線を、レーザー光源から識別媒体サンプルに向けて照射した。光源側から観察したところ、スクリーンには識別媒体に転写された凹凸構造により生じた「ZEON」の文字列の模様が明確に映し出された。さらに、右円偏光フィルターを介して転写された模様自体を観察したところ、模様は消失した。
10:識別媒体
20:スクリーン
30:識別媒体
40:識別媒体
110:コレステリック樹脂層
110C:中央部の領域
110D:コレステリック樹脂層の下側の面
110U:コレステリック樹脂層の上側の面
111:回折格子構造
120:下地層
310:コレステリック樹脂層
310C:中央部の領域
310D:コレステリック樹脂層の下側の面
310U:コレステリック樹脂層の上側の面
311:回折格子構造
320:下地層
410:コレステリック樹脂層
410C:中央部の領域
410D:コレステリック樹脂層の下側の面
410U:コレステリック樹脂層の上側の面
411:回折格子構造
420:下地層
430:紫外インク層又は赤外インク層
A21:上面の法線方向
A22:斜め方向
A23:単色光の光線
A24a:出射光
A24b:出射光
A24c:出射光
A33:単色光の光線
A34a:出射光
A34b:出射光
A34c:出射光

Claims (6)

  1. コレステリック規則性を有する樹脂層を備える、識別媒体であって、
    前記識別媒体は、その表面において、回折格子構造を有し、
    前記回折格子構造は、前記識別媒体を透過する単色光又は前記識別媒体において反射する単色光に、真正性識別のための模様を付与する構造である、識別媒体。
  2. 前記コレステリック規則性を有する樹脂層の可視領域内の選択反射帯域の半値幅Wxが、100nm以下である、請求項1に記載の識別媒体。
  3. 前記模様が、前記識別媒体を透過する単色光又は前記識別媒体において反射する単色光を、前記識別媒体から離隔したスクリーンに投影した際に観察しうる模様である、請求項1又は2に記載の識別媒体。
  4. 前記コレステリック規則性を有する樹脂層の表面の一部の領域に設けられた、紫外インク層又は赤外インク層をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の識別媒体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の識別媒体の使用方法であって、
    前記識別媒体の前記コレステリック規則性を有する樹脂層を、円偏光板を介して観察する工程、及び
    前記識別媒体に、単色光の光線を照射し、前記識別媒体を透過するか又は前記識別媒体において反射する前記光線の像を観察する工程
    を含む、使用方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の識別媒体の製造方法であって、
    コレステリック液晶相を呈しうる重合性液晶化合物を含む液晶性組成物の層を形成する工程と、
    前記液晶性組成物の層を半硬化させ、半硬化層とする工程と、
    前記半硬化層の表面に回折格子構造を付与する工程と、
    前記半硬化層を本硬化させ、コレステリック規則性を有する樹脂層を得る工程と、
    を含む製造方法。
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