JP2019036503A - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】外からは全体を見ることのできない被加熱物であっても、被加熱物の全体の温度を測定し、加熱することができるマイクロ波加熱装置を提供する。
【解決手段】内部に被加熱物100を設置する筐体部10と、筐体部の周囲に巻かれたコイル11と、被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナ50と、アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器20と、コイルに入力される交流信号を発生させる第2の発振器30と、コイルにおけるインダクタンスの変化に基づき被加熱物の温度を算出する制御部70と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ波加熱装置に関するものである。
マイクロ波加熱装置は、加熱対象となる被加熱物をマイクロ波加熱装置の加熱室内に設置し、マイクロ波発生源において発生させたマイクロ波を被加熱物に照射し、吸収させることにより、被加熱物を加熱する装置である(例えば、特許文献1)。このようなマイクロ波加熱装置においては、加熱室内に放射されたマイクロ波は、加熱室の壁面等において反射を繰り返し、被加熱物に照射される。
一般的には、マイクロ波加熱装置には、マイクロ波発生源として真空管の一種であるマグネトロンが用いられているが、マグネトロンに代わり半導体素子を用いることにより、マイクロ波加熱装置を小型軽量化することができ、出力制御性を向上させることができる。このような半導体素子としては、例えば、高周波領域においても高耐圧で大電流を流すことが可能な窒化ガリウム等を用いた半導体素子が挙げられる。
特開2009−16149号公報 特開昭58−214825号公報 特開昭60−23740号公報 特開昭61−246637号公報
このようなマイクロ波加熱装置では、被加熱物の温度をモニタしながら、被加熱物を加熱する場合があり、温度を測定するための方法としては、熱電対や放射温度計を用いた方法が考えられる。熱電対は被加熱物の一点の温度を測定することはできるものの、全体の温度を測定することはできない。また、放射温度計は被加熱物に接触することなく全体の温度を測定することは可能であるが、被加熱物が陶器等の入れ物の中に入れられている場合、陶器等の入れ物の入口から見える一部の被加熱物の温度しか測定することができない。
このため、陶器等の光を透過しない入れ物の中に入れられており、外からは全体を見ることのできない被加熱物であっても、被加熱物の全体の温度を測定し、被加熱物を加熱することのできるマイクロ波加熱装置が求められている。
本実施の形態の一観点によれば、内部に被加熱物を設置する筐体部と、前記筐体部の周囲に巻かれたコイルと、前記被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナと、前記アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器と、前記コイルに入力される交流信号を発生させる第2の発振器と、前記コイルにおけるインダクタンスの変化に基づき前記被加熱物の温度を算出する制御部と、を有することを特徴とする。
開示のマイクロ波加熱装置によれば、外からは全体を見ることのできない被加熱物であっても、被加熱物の全体の温度を測定し、加熱することができる。
第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の構造図 第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の説明図 ローパスフィルタの特性の説明図 電流位相差φと検出される電圧値との相関図 位相差変化量dφと温度との関係のテーブルの説明図 第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の加熱方法のフローチャート 被加熱物を加熱する際の昇温プロファイルの説明図 第2の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の加熱方法のフローチャート 第3の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の構造図 第3の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の説明図
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
(マイクロ波加熱装置)
第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置について、図1に基づき説明する。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、筐体部10、第1の発振器20、第2の発振器30、増幅器40、アンテナ50、ミキサ61、ローパスフィルタ(LPF:Low-pass filter)62、電圧測定部63、信号処理部64、制御部70等を有している。制御部70は、演算処理を行う演算部71や様々な情報を記憶する記憶部72等を有している。
筐体部10は加熱室となるものであり、筐体部10の内部には、被加熱物100が入れられており、筐体部10の外側の周囲には、コイル11が巻かれている。尚、筐体部10はガラス、セラミックス、樹脂材料、非磁性の金属材料等により形成されている。ミキサ61は、掛け算回路やアナログ乗算器と呼ばれるものであり、2つの入力を掛け合わせて出力するものである。増幅器40は、半導体材料としてGaN等の窒化物半導体を用いた半導体素子により形成されている。
第1の発振器20は、被加熱物100を加熱するためのマイクロ波を発生させるための信号源であり、具体的には、周波数が2.45GHzの信号を発生させる。本願においては、第1の発振器20において発生させる電気信号の周波数は、マイクロ波の周波数に対応する300MHz以上、3THz以下である。
第1の発振器20には増幅器40が接続されており、増幅器40には筐体部10の内部に設置されているアンテナ50が接続されている。第1の発振器20において周波数が2.45GHzの電気信号を発生させ、この電気信号を増幅器40において増幅し、アンテナ50より周波数が2.45GHzのマイクロ波として筐体部10内に放射する。被加熱物100は、アンテナ50より放射されたマイクロ波を吸収することにより加熱される。この際、アンテナ50より放射されるマイクロ波のパワーは、10W〜100W程度であるものとする。
第2の発振器30は、第1の発振器20とは異なる周波数であって、例えば、1.0GHzの電気信号を発生させるための信号源である。尚、第2の発振器30において発生させる電気信号の周波数は、1.0GHz以下であることが好ましい。第2の発振器30において発生させた1.0GHzの電気信号は、分岐部60において2つに分岐され、一方は筐体部10の周囲に巻かれたコイル11の一方の端子11aに入力しており、他方はミキサ61に入力している。コイル11の一方の端子11aに入力した1.0GHzの信号は、コイル11を通り、他方の端子11bより出力され、ミキサ61に入力している。
従って、ミキサ61には、第2の発振器30において発生した1.0GHzの信号のコイル11を通った信号と、コイル11を通らない信号との双方が入力しており、ミキサ61では、これらの信号の掛け算がなされ出力される。ミキサ61の出力はローパスフィルタ62に入力しており、ローパスフィルタ62の出力は電圧測定部63に入力しており、電圧測定部63の出力は信号処理部64に入力しており、信号処理部64の出力は制御部70に入力している。制御部70は、信号処理部64における出力に基づき、第1の発振器20を制御する。尚、制御部70では、信号処理部64における出力に基づき、増幅器40を制御するものであってもよい。
(被加熱物の温度測定)
本実施の形態においては、図2(a)に示されるように、筐体部10内には被加熱物100が設置されており、アンテナ50より被加熱物100に向けてマイクロ波が照射されると、被加熱物100が加熱される。ここで、被加熱物100は、例えば、徳利に入れられている日本酒であるものとする。この場合、被加熱物100である日本酒は、水分を多く含んでいるため、被加熱物100が加熱されると、図2(b)に示されるように、被加熱物100に含まれている水が気化し水蒸気となり、被加熱物100の周囲の筐体部10内の空間に拡散する。
ところで、空気の比誘電率は約1であり、水の比誘電率は約48である。ここで、図2(a)に示される加熱される前、即ち、昇温前の状態における筐体部10内における全体の比誘電率は、仮に水と空気の中間の値の24.5であるものとする。この後、被加熱物100が加熱され筐体部10内の空間に水蒸気が拡散すると、水蒸気の比誘電率は約60であるため、筐体部10における全体の比誘電率は徐々に上昇する。ここで、図2(b)に示されるように、被加熱物100が十分に加熱されて昇温し、筐体部10内の空間が水蒸気で満たされたとすると、筐体部10内における全体の比誘電率は、水と水蒸気の中間の値の54になるものと推察される。尚、上記における数値は、説明の便宜上用いた数値であり、必ずしも正確な数値ではない。
即ち、被加熱物100を加熱すると、被加熱物100より水蒸気が発生し、発生した水蒸気が筐体部10内の空間に拡散することにより、筐体部10内の全体の比誘電率が変化する。本実施の形態は、このように、筐体部10内の比誘電率の変化をコイル11を用いて測定することにより、被加熱物100の温度を推定するものである。即ち、被加熱物100が加熱されると被加熱物100より水蒸気が発生するが、被加熱物100の温度と、発生する水蒸気の量には相関関係があり、筐体部10内の空間に水蒸気が拡散すると、筐体部10内における比誘電率が変化する。従って、予め、筐体部10内の比誘電率と被加熱物100の温度との相関関係を調べておけば、筐体部10内における比誘電率を測定し、測定された比誘電率に基づき、被加熱物100の温度を推定することができる。尚、本実施の形態においては、筐体部10内における比誘電率の変化は、筐体部10に巻かれているコイル11を用いて測定されたインダクタンスの変化として検出される。
より詳細に、被加熱物100の温度の測定方法について説明する。この説明では、第2の発振器30における高周波の信号を数1で表すことができる。
Figure 2019036503
尚、tは時間、V(t)は時間tにおける電圧、Vは、この高周波信号の最大電圧、ωは角周波数である。
第2の発振器30より筐体部10の周囲に巻かれているコイル11を通った後の信号は、数2に示す式により表される。尚、φはコイル11のインダクタンスが変化することにより変化した電流位相差である。
Figure 2019036503
ミキサ61では、この2つの信号、即ち、数1に示される信号と数2に示される信号とが掛け合わされ数3に示される信号となり、ミキサ61より出力される。
Figure 2019036503
数3に示される式の2行目の第1項は2倍波の交流成分であり、第2項は直流成分である。ミキサ61より出力された信号は、ローパスフィルタ62において、交流成分が取り除かれ直流成分のみの信号となる。具体的には、図3に示されるように、ローパスフィルタ62は、第2の発振器30より出力される1.0GHzの周波数と、この周波数の2倍波となる2.0GHzの周波数との間に、カットオフ周波数を有するローパスフィルタである。即ち、ローパスフィルタ62のカットオフ周波数は、第2の発振器30より出力される周波数よりも高く、第2の発振器30より出力される周波数の2倍の周波数よりも低い。これにより、ローパスフィルタ62により、数3に示される式の2行目の第1項の交流成分は除去され、数4に示されるように直流成分のみが出力される。尚、被加熱物100を加熱する際には、第1の発振器20よりマイクロ波が放射されるが、このマイクロ波の周波数は、ローパスフィルタ62のカットオフ周波数よりも高いため、ローパスフィルタ62によりカットされる。
Figure 2019036503
このローパスフィルタ62より出力された直流成分は、電圧測定部63においてアナログの電圧値として測定され、この電圧値は、信号処理部64においてA/D変換された後、電圧値のデジタル信号が制御部70に入力される。制御部70では、入力された電圧値のデジタル信号に基づき第1の発振器20や増幅器40等の制御を行う。
具体的には、数4に示される式より明らかなように、ローパスフィルタ62より出力される電圧V(t)は、電流位相差φに依存した値であり、電流位相差φは、コイル11のインダクタンスが変化することにより変化する。従って、ローパスフィルタ62より出力される電圧V(t)と電流位相差φとの関係は図4に示される関係にあるため、電圧V(t)を電圧測定部63により測定することにより、電流位相差φを得ることができる。
ここで、電流位相差φは被加熱物100の温度により変化する値である。従って、加熱前の状態で測定した電流位相差をφとし、加熱開始後の電流位相差をφとした場合、加熱開始後の電流位相差φと加熱前の電流位相差φとの差である位相差変化量dφ=φ−φは、被加熱物100の温度との間に相関関係がある。尚、本実施の形態においては、φ=0°となるように、予め調整しておいてもよい。この場合には、位相差変化量dφ=φとなる。
よって、図5に示されるような、位相差変化量dφと被加熱物100の温度との相関関係のテーブルを予め準備しており、加熱後に得られた電流位相差φより、位相差変化量dφを算出し、位相差変化量dφの値に基づき被加熱物100の温度を算出する。このような位相差変化量dφと被加熱物100の温度との相関関係のテーブルは、制御部70における記憶部72に記憶されている。また、このようなテーブルに代えて、位相差変化量dφと被加熱物100の温度との相関関係の式が得られれば、そのような式を制御部70の記憶部72に記憶しておき、その式に基づき温度を算出してもよい。
本実施の形態においては、コイル11におけるインダクタンスをL、抵抗成分をRとした場合に、電流位相差φは、数5に示す式により表される。この場合における抵抗成分Rは、100Ωである。
Figure 2019036503
本実施の形態においては、加熱される前の温度となる常温の温度を測定するための温度測定部12が設けられていてもよい。このような温度測定部12により、被加熱物100が加熱される前の周囲の温度を測定しておくことにより、加熱された被加熱物100の温度をより正確に推定することができる。この温度測定部12は、筐体部10の外に設けられていてもよい。
(加熱方法の制御1)
次に、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置による加熱方法の制御について、図6に基づき説明する。
最初に、ステップ102(S102)において、本実施の形態における加熱装置において、加熱スイッチをオンにする。
次に、ステップ104(S104)において、加熱前の初期の電流位相差φを測定する。具体的には、被加熱物100を加熱する前、即ち、アンテナ50より被加熱物100にマイクロ波を照射する前に、第2の発振器30より周波数が1.0GHzの信号を出力する。第2の発振器30より出力された信号は、分岐部60において分岐され、一方はコイル11を流れた後にミキサ61に入力し、他方はそのままミキサ61に直接入力しており、2つの入力の掛け算がなされた後に出力される。ミキサ61より出力された信号は、ローパスフィルタ62を介し、電圧測定部63においてアナログの電圧値として測定される。この電圧値は、初期の電流位相差φに対応した値であり、信号処理部64においてデジタル信号に変化された後、制御部70に入力する。制御部70の演算部71では、デジタル信号に変換された電圧値に基づき、初期の電流位相差φを算出し、この初期の電流位相差φは、記憶部72に記憶される。
次に、ステップ106(S106)において、被加熱物100にマイクロ波を照射し加熱する。具体的には、第1の発振器20において、周波数が2.45GHzの信号を発生させ、この信号を増幅器40において増幅し、アンテナ50より被加熱物100に照射する。これにより、被加熱物100が加熱され、被加熱物100より水蒸気が発生し、筐体部10内の被加熱物100の周囲の空間に拡散するため、筐体部10内の比誘電率が変化する。
本実施の形態においては、アンテナ50より被加熱物100にマイクロ波を照射することにより、被加熱物100に含まれている水分子を振動させて加熱するが、水分子は比較的早く加熱され、水蒸気となり空間内を拡散する。マイクロ波を用いた加熱方法以外の方法、例えば、ヒーター等を用いて被加熱物100を外から加熱する場合は、水分子を直接振動させる方法ではないため、加熱開始から水蒸気が発生するまでに時間を要する。本実施の形態は、マイクロ波により被加熱物100に含まれる水分子を直接振動させることにより加熱し、これにより生じた水蒸気の量に依存して変化する筐体部10内の比誘電率を測定するものである。従って、ヒーター等を用いて被加熱物100を外から加熱する場合と比べて、被加熱物100の温度を正確に測定することができる。
次に、ステップ108(S108)において、加熱開始後の電流位相差φを測定する。具体的には、被加熱物100を加熱開始後、即ち、アンテナ50より被加熱物100へのマイクロ波の照射を開始した後、第2の発振器30より周波数が1.0GHzの信号を出力し、ステップ104と同様の方法により、加熱開始後の電流位相差φを算出する。尚、本実施の形態は、電流位相差φの算出をステップ104の工程以降、連続して行うものであってもよい。
次に、ステップ110(S110)において、ステップ108において算出された電流位相差φと記憶部72に記憶されている初期の電流位相差φより位相差変化量dφを算出し、得られた位相差変化量dφに基づき被加熱物100の温度を算出する。具体的には、記憶部72に予め記憶されている位相差変化量dφと被加熱物100の温度との相関関係のテーブルや相関関係の式に基づき被加熱物100の温度を算出する。
次に、ステップ112(S112)において、ステップ110において算出された被加熱物100の温度が、所望の到達温度以上になっているか否かを判断する。ステップ110において算出された被加熱物100の温度が、所望の到達温度以上になっている場合には、ステップ114に移行する。ステップ110において算出された被加熱物100の温度が、所望の到達温度以上になっていない場合には、ステップ108に移行し、マイクロ波による被加熱物100の加熱を継続した状態のまま、被加熱物100が到達温度となるまで、温度の算出を繰り返す。
ステップ114(S114)においては、被加熱物100が所望の到達温度に達したため、マイクロ波による被加熱物100の加熱を停止、即ち、第1の発振器20における信号の発生を停止し、終了する。
尚、本実施の形態において、φ=0°となるように設定されている場合には、ステップ104及びステップ110における工程は省略される。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置による加熱方法の制御について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態におけるマイクロ波加熱装置を用いて、被加熱物を昇温プロファイルに沿って加熱する加熱方法である。被加熱物によっては、加熱する際の昇温プロファイルによって、被加熱物の味や食感等に違いが生じる場合がある。具体的には、被加熱物が生鮮食料品や薬品等の場合、被加熱物を加熱する際に、被加熱物の温度上昇プロファイルが異なると、味や成分が異なる場合がある。例えば、被加熱物が日本酒であって、熱燗にしたい場合には、日本酒の温度上昇のさせ方によって、美味しさに違いが生じる場合がある。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、このような場合に対応するものである。
具体的には、図7に示すように、被加熱物100を所定の温度まで加熱する場合には、加熱の昇温プロファイル、即ち、加熱開始からの時間と被加熱物100の温度との関係は、様々なパターンが考えられる。例えば、図7の7Aのパターンは、加熱開始から短時間で急速に被加熱物100を加熱し、ある程度の温度になった後は、加熱の速度を落として加熱するパターンである。また、7Bのパターンは、加熱開始後、最初のうちは徐々に加熱し、途中から加熱の速度を高くして加熱するパターンである。
ところで、被加熱物100が日本酒であって熱燗にする場合、図7の7Aのパターンにより被加熱物100を加熱する場合と、7Bのパターンにより被加熱物100を加熱する場合とでは、日本酒の熱燗の味が異なることが知見として得られている。このため、より美味しく日本酒を熱燗にするためには、日本酒を熱燗にする際の加熱の昇温プロファイルが重要となる。
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の加熱方法の制御について、図8に基づき説明する。本実施の形態においては、被加熱物100を加熱する際に、最も適した昇温プロファイル、即ち、加熱開始からの時間と被加熱物100の温度との関係は既知であり、このような昇温プロファイルが記憶部72等に記憶されているものとする。また、本実施の形態においては、制御部70は増幅器40にも接続されており、アンテナ50より放射されるマイクロ波の強度を制御することができる。
最初に、ステップ202(S202)において、本実施の形態における加熱装置において、加熱スイッチをオンにする。
次に、ステップ204(S204)において、加熱前の初期の電流位相差φを測定する。
次に、ステップ206(S206)において、マイクロ波により被加熱物100を加熱する。この際、被加熱物100の加熱開始と同時に、不図示のタイマ等により加熱開始からの時間のカウントを開始する。
次に、ステップ208(S208)において、加熱開始後の電流位相差φを測定する。
次に、ステップ210(S210)において、ステップ208において算出された電流位相差φと記憶部72に記憶されている初期の電流位相差φより位相差変化量dφを算出し、得られた位相差変化量dφに基づき被加熱物100の温度を算出する。
次に、ステップ212(S212)において、ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度になっているか否かを判断する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度と等しい場合には、ステップ208に移行する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度と等しくない場合には、ステップ214に移行する。
次に、ステップ214(S214)において、ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度未満であるか否かを判断する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度未満である場合には、ステップ216に移行する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度未満ではない場合には、ステップ218に移行する。
ステップ216(S216)において、アンテナ50より放射させるマイクロ波の強度を強くする。即ち、ステップ210において算出された被加熱物100の温度は、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度未満であるため、第1の発振器20または増幅器40を制御することにより、アンテナ50より放射されるマイクロ波の強度を強くする。これにより、被加熱物100の加熱を促進し、被加熱物100の加熱が、所望の昇温プロファイルに沿うように制御する。この後、ステップ208に移行する。
次に、ステップ218(S218)において、ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、所望の到達温度以上になっているか否かを判断する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が到達温度以上になっている場合には、ステップ220に移行する。ステップ210において算出された被加熱物100の温度が、所望の到達温度以上になっていない場合には、ステップ222に移行する。
ステップ220(S220)においては、被加熱物100が所望の到達温度に達しているため、マイクロ波による被加熱物100の加熱を停止、即ち、第1の発振器20における信号の発生を停止し、終了する。
ステップ222(S222)において、アンテナ50より放射させるマイクロ波の強度を弱くする。即ち、この場合には、ステップ210において算出された被加熱物100の温度は、加熱開始からの時間に対応する昇温プロファイルの温度は超えているが、所望の到達温度には達してはいない。このため、第1の発振器20または増幅器40を制御することにより、アンテナ50より放射されるマイクロ波の強度を弱くする。これにより、被加熱物100の加熱の速度を緩やかにし、被加熱物100の加熱が、所望の昇温プロファイルに沿うように制御する。この後、ステップ208に移行する。
以上の工程により、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の加熱方法により、被加熱物100は加熱される。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、筐体部の周囲に電極を設け、キャパシタを形成した構造のものである。第1の実施の形態において説明したように、被加熱物100が加熱され、筐体部に水蒸気が拡散すると、筐体部内全体の比誘電率が変化し、静電容量も変化する。このような静電容量の変化は、コンデンサの容量の変化として検出することができる。よって、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、筐体部の周囲に2つの電極を設け、静電容量の変化を検出することにより、被加熱物100の温度を算出するものである。
本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置について、図9に基づき説明する。本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置は、筐体部110の周囲において対向している。第1の電極111と第2の電極112が設けられており、第1の電極111、第2の電極112、筐体部110によりキャパシタが形成されている構造のものである。また、分岐部60と第1の電極111との間には、抵抗120が設けられている。第2の発振器30の出力は、分岐部60において分岐され、一方は、抵抗120を介して、第1の電極111に接続されており、他方は、ミキサ61に入力している。また、第2の電極112はミキサ61に接続されている。
図10は、本実施の形態におけるマイクロ波加熱装置の温度の測定を説明するために、要部をモデル化した図である。位相φは、数6に示す式により示される。一例として、抵抗120の抵抗値Rを10Ω、第1の電極111及び第2の電極112の面積Sを50cm(10cm×5cm)、第1の電極111と第2の電極112との距離dを10cmとする。
Figure 2019036503
ここで、筐体部110内に空気しか入っていない場合を考えると、空気の比誘電率は約1であることから、筐体部110により形成されるキャパシタの容量は、約0.443pFとなり、この際の位相差φ10は、86.1°である。これに対し、筐体部110内に被加熱物100を設置し加熱することにより、水蒸気が拡散し、筐体部110内の比誘電率が60になった場合を考えると、筐体部110により形成されるキャパシタの容量は、約26.55pFとなり、この際の位相差φ11は、13.7°である。従って、位相差φ10と位相差φ11とでは、70°以上の位相差変化量があり、検出される電圧の出力変動は、約70%であると考えられる。このため、筐体部110内に被加熱物100を設置し加熱した場合であっても、筐体部110内に拡散する水蒸気の量に依存して、筐体部110により形成されるキャパシタの容量も変化する。よって、筐体部110に第1の電極111及び第2の電極112を設けた場合であっても、筐体部110内に設置された加熱されている被加熱物100の温度を測定することが可能である。
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態等と同様である。
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
内部に被加熱物を設置する筐体部と、
前記筐体部の周囲に巻かれたコイルと、
前記被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナと、
前記アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器と、
前記コイルに入力される交流信号を発生させる第2の発振器と、
前記コイルにおけるインダクタンスの変化に基づき前記被加熱物の温度を算出する制御部と、
を有することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
(付記2)
前記第2の発振器において発生させた交流信号を分岐する分岐部と、
2つの信号を掛け合わせて出力する乗算器と、
ローパスフィルタと、
電圧測定部と、
を有し、
前記乗算器には、前記分岐部において分岐された交流信号のうちの一方が前記コイルを通り入力し、他方が直接入力しており、
前記乗算器は、前記コイルを通り入力されている電気信号と、前記直接入力されている電気信号とを掛け合わせて出力するものであって、
前記乗算器からの出力は、前記ローパスフィルタを介し、前記電圧測定部において測定され、
前記制御部は、前記電圧測定部において測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする付記1に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記3)
前記インダクタンスは、前記筐体部内の比誘電率が変化することにより変化するものであって、
前記電圧測定部は、前記インダクタンスに対応する電流位相差を直流成分の電圧値として検出するものであることを特徴とする付記1または2に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記4)
前記制御部には、前記電流位相差の位相差変化量と温度との関係を示す情報が記憶されていることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
(付記5)
内部に被加熱物を設置する筐体部と、
前記筐体部の周囲において、対向して設けられた第1の電極及び第2の電極と、
前記被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナと、
前記アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器と、
前記第1の電極に供給される交流信号を発生させる第2の発振器と、
前記第1の電極、前記筐体部、前記第2の電極により形成されるキャパシタの静電容量の変化に基づき前記被加熱物の温度を算出する制御部と、
を有することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
(付記6)
前記第2の発振器において発生させた交流信号を分岐する分岐部と、
2つの信号を掛け合わせて出力する乗算器と、
ローパスフィルタと、
電圧測定部と、
を有し、
前記分岐部は、入力された交流信号を分岐するものであって、一方が前記第1の電極に入力しており、他方が前記乗算器に直接入力しており、
前記乗算器は、前記第1の電極より入力され、前記第2の電極より出力される電気信号と、前記直接入力されている電気信号とを掛け合わせて出力するものであって、
前記乗算器からの出力は、前記ローパスフィルタを介し、前記電圧測定部において測定され、
前記制御部は、前記電圧測定部において測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする付記5に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記7)
前記筐体部には、温度測定部が設けられており、
前記制御部には、前記温度測定部における温度と、前記電圧測定部において測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする付記2または6に記載のマイクロ波加熱装置。
(付記8)
ローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記第2の発振器より出力される周波数よりも高く、前記第2の発振器より出力される周波数の2倍の周波数よりも低いことを特徴とする付記1から7のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
10 筐体部
11 コイル
11a 一方の端子
11b 他方の端子
20 第1の発振器
30 第2の発振器
40 増幅器
50 アンテナ
60 分岐部
61 ミキサ
62 ローパスフィルタ
63 電圧測定部
64 信号処理部
70 制御部
71 演算部
72 記憶部
100 被加熱物

Claims (6)

  1. 内部に被加熱物を設置する筐体部と、
    前記筐体部の周囲に巻かれたコイルと、
    前記被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナと、
    前記アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器と、
    前記コイルに入力される交流信号を発生させる第2の発振器と、
    前記コイルにおけるインダクタンスの変化に基づき前記被加熱物の温度を算出する制御部と、
    を有することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  2. 前記第2の発振器において発生させた交流信号を分岐する分岐部と、
    2つの信号を掛け合わせて出力する乗算器と、
    ローパスフィルタと、
    電圧測定部と、
    を有し、
    前記乗算器には、前記分岐部において分岐された交流信号のうちの一方が前記コイルを通り入力し、他方が直接入力しており、
    前記乗算器は、前記コイルを通り入力されている電気信号と、前記直接入力されている電気信号とを掛け合わせて出力するものであって、
    前記乗算器からの出力は、前記ローパスフィルタを介し、前記電圧測定部において測定され、
    前記制御部は、前記電圧測定部において測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 内部に被加熱物を設置する筐体部と、
    前記筐体部の周囲において、対向して設けられた第1の電極及び第2の電極と、
    前記被加熱物にマイクロ波を照射するアンテナと、
    前記アンテナより放射されるマイクロ波となる交流信号を発生させる第1の発振器と、
    前記第1の電極に供給される交流信号を発生させる第2の発振器と、
    前記第1の電極、前記筐体部、前記第2の電極により形成されるキャパシタの静電容量の変化に基づき前記被加熱物の温度を算出する制御部と、
    を有することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  4. 前記第2の発振器において発生させた交流信号を分岐する分岐部と、
    2つの信号を掛け合わせて出力する乗算器と、
    ローパスフィルタと、
    電圧測定部と、
    を有し、
    前記分岐部は、入力された交流信号を分岐するものであって、一方が前記第1の電極に入力しており、他方が前記乗算器に直接入力しており、
    前記乗算器は、前記第1の電極より入力され、前記第2の電極より出力される電気信号と、前記直接入力されている電気信号とを掛け合わせて出力するものであって、
    前記乗算器からの出力は、前記ローパスフィルタを介し、前記電圧測定部において測定され、
    前記制御部は、前記電圧測定部において測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする請求項3に記載のマイクロ波加熱装置。
  5. 前記筐体部には、温度測定部が設けられており、
    前記制御部には、前記温度測定部における温度と、前記電圧測定部おいて測定された電圧値に基づき前記被加熱物の温度を算出することを特徴とする請求項2または4に記載のマイクロ波加熱装置。
  6. ローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記第2の発振器より出力される周波数よりも高く、前記第2の発振器より出力される周波数の2倍の周波数よりも低いことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマイクロ波加熱装置。
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