JP2019035142A - 鋼材の成形性増加方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼材の成形性増加方法を提供する。【解決手段】本発明は、鋼材の成形性増加方法に関するものであって、オーステナイト相を含む鋼材の少なくとも一部の領域に応力を印加する段階と、応力によって、オーステナイト相がマルテンサイトに変態誘起塑性が起こる時点に、鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、を含むことを特徴とする。【選択図】図10

Description

本発明は、鋼材の成形性増加方法に係り、より詳細には、オーステナイト相(Austenite phase)を含む鋼材の一部に、応力(stress)を印加している最中に変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity)が起こる時点でパルス電流を印加して、成形性を増加させる鋼材の成形性増加方法に関する。
自動車産業において、乗客の安全性の向上、車体重量の減少、生産性の向上のために、高強度、高成形性の鉄鋼材料に対する要求が高くなった。フェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの3種の混合相で構成されているトリップ鋼(Transformation Induced Plasticity steel)は、残留オーステナイトが変形を受ければ、硬いマルテンサイトに変態しながら、強度と延伸率とが増加する変態誘起塑性の特性を有している。トリップ鋼は、残留オーステナイトの性質によって、その機械的特性、特に、高速変形特性の変化が大きい。類似している強度を有した一般の高張力鋼と比較すれば、トリップ鋼は、低い降伏強度/引張強度比と高い変形硬化能の性質を示す。高い変形硬化能は、自動車部品の製造過程で局部的なネッキング(necking)発生に対する抵抗性を高めて、成形性を向上させ、製造された部品での高い引張強度は、衝突吸収エネルギーと疲労性質とを改善させる。自動車用鋼としてのトリップ鋼の重要性は、成形性と衝突特性との向上にある。したがって、自動車業界及び鉄鋼業界のトリップ鋼に対する関心は高くなって、相当なレベルの製品研究開発と現場適用とが行われている。
このような状況で、既存のトリップ鋼の成形性増加のための方法として、温間成形、漸進成形(incremental forming)またはレーザビーム成形(laser beam forming)技術が成形性増加方法として使われているが、高温成形及び誘導加熱工程は、高コスト、材料の熱勾配、ダイ接着及び表面酸化の問題が発生する。特に、レーザビーム成形は、製造工程で過度な時間とコストとを必要とする限界を有している。また、高強度鋼の場合、高いスプリングバッグ(springback)を有するために、実工程の適用に多くの困難がある実情である。
本発明は、前記問題点を含んで多様な問題点を解決するためのものであって、オーステナイト相を含む鋼材の一部に、応力を印加している最中に変態誘起塑性が起こる時点でパルス電流を印加して、成形性を増加させる鋼材の成形性増加方法を提供することを目的とする。
しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
前記課題を解決するための本発明の一観点によれば、(a)オーステナイト相を含む鋼材の少なくとも一部の領域に応力を印加する段階と、(b)前記応力によって、前記オーステナイト相がマルテンサイト(Martensite)に変態誘起塑性が起こる時点に、前記鋼材に少なくとも1回のパルス電流(pulsed electric current)を印加する段階と、を含む鋼材の成形性増加方法が提供される。
また、本発明の一実施形態によれば、前記パルス電流を印加するほど、前記鋼材の変態誘起塑性挙動が遅延される。
また、本発明の一実施形態によれば、前記オーステナイト相を含む鋼材は、トリップ鋼であり得る。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流の最初のパルス電流を前記鋼材の真ひずみ(True strain)が0%〜11.7%である時に印加することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流を3回印加することができる。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流は、一定の電流密度(ρ)で印加される。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流の電流密度は、85A/mm〜105A/mmであり得る。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流の電流印加周期(t)は、27秒〜33秒であり、電流印加時間(t)は、0.08秒〜0.12秒であり得る。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流を印加する時、少なくとも28%の延伸率が向上する。
そして、前記課題を解決するための本発明の一観点によれば、(c)オーステナイト相を含む鋼材の少なくとも一部の領域に曲げ応力(bending stress)を印加して曲げ変形する段階と、(d)前記曲げ変形された前記鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、をさらに含む鋼材の成形性増加方法が提供される。
また、本発明の一実施形態によれば、前記(d)段階で、前記パルス電流の印加時間(t)は、0.3秒〜1秒であり、印加時間が増加するほど、前記鋼材のスプリングバッグが低減しうる。
そして、前記課題を解決するための本発明の一観点によれば、(e)応力が印加されれば、オーステナイト相の少なくとも一部が変態誘起塑性によってマルテンサイトに変態されるトリップ鋼を準備する段階と、(f)前記トリップ鋼に応力を印加して変形させる段階のうち何れか一時点に少なくとも1回のパルス電流を、前記トリップ鋼に印加して、前記変態誘起塑性の開始時点を遅延させる段階と、を含む鋼材の成形性増加方法が提供される。
前記のようになされた本発明の一実施形態によれば、オーステナイト相を含む鋼材の一部に、応力を印加している最中に変態誘起塑性が起こる時点でパルス電流を印加して、成形性を増加させることができる。
もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の一実施形態によるパルス電流印加成形用装置を示す概略図である。 本発明の一実施形態によるパルス電流の印加条件を示すグラフである。 本発明の一実施形態によるパルス電流印加成形用鋼材試片を示す概略図である。 本発明の一実施形態による鋼材の成形前試片の微細組織及び集合組織を示すEBSD(Electron backscatter diffraction)分析写真である。 本発明の比較例による鋼材の一般成形時の応力−ひずみ線図(stress−strain curve)及びXRD(X−ray diffraction)分析による残留オーステナイトの分率(Austenite Phase Fraction)を示すグラフである。 本発明の一実施形態によるオーステナイト相を含む鋼材試片の成形後、破断形状を示す写真である。 本発明の一比較例によるオーステナイト相を含む鋼材のパルス電流を印加して、成形時と高温で成形時との応力−ひずみ線図及び温度変化を示すグラフである。 本発明の一比較例による鋼材の成形後の試片の微細組織及び集合組織を示すEBSD分析写真である。 本発明の一比較例による鋼材の成形前試片及び変形率が23%である時、試片の残留オーステナイト分率を示すグラフである。 本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の応力−ひずみ線図と温度変化とを示すグラフである。 本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の加工硬化指数(strain hardening exponent、n−value)値の変化を示すグラフである。 本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の真ひずみによる残留オーステナイト分率を示すグラフである。 本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験用装置を示す概略図である。 本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験用試片を示す概略図である。 本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験時に、試片に加えられる負荷(load)を示すグラフである。 本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験用試片のパルス電流印加曲げ成形後の写真及びスプリングバッグ角度(spring back angle)を示すグラフである。 本発明の一実施形態による試片の曲げ成形時に、試片に印加されるスプリングバッグ方向を示す概略図、及びパルス電流印加曲げ成形時に、試片のビッカース硬度(Vickers hardness)を示すグラフである。
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明が実施される特定の実施形態を例示として図示する添付図面を参照する。これら実施形態は、当業者が本発明を十分に実施可能なように詳しく説明される。本発明の多様な実施形態は、互いに異なるが、互いに排他的である必要はないということを理解しなければならない。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造及び特性は、一実施形態に関連して、本発明の精神及び範囲を外れずに、他の実施形態として具現可能である。また、それぞれの開示された実施形態内の個別構成要素の位置または配置は、本発明の精神及び範囲を外れずに、変更可能であるということを理解しなければならない。したがって、後述する詳細な説明は、限定的な意味として取ろうとするものではなく、本発明の範囲は、適切に説明されるならば、その請求項が主張するものと、均等なあらゆる範囲と共に、添付の請求項によってのみ限定される。図面で類似した参照符号は、多様な側面にわたって同一または類似の機能を称し、長さ及び面積、厚さなどとその形態は、便宜上、誇張されて表現されることもある。
以下、当業者が本発明を容易に実施させるために、本発明の望ましい実施形態に関して添付図面を参照して詳しく説明する。
<パルス電流印加成形性増加方法>
図1及び図2を参照して、パルス電流印加成形について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるパルス電流印加成形用装置を示す概略図である。
鋼材の成形時に、パルス電流印加の影響分析のための装置であって、パルス電流を印加しながら、成形可能な実験装置を構成する。図1に示したように、成形のための試片10をローディング(loading)し、矢印方向に応力を印加することができる。
パルス電流は、抵抗溶接機に基づいて製作された直流電源発生装置を利用し、試片10に電流を周期的に印加させる。この際、試片10に流れる電流と引張機との間の絶縁のために、引張機の試片10が挟まれるジグにベークライト(bakelite)を用いて絶縁システム(Insulator)Iを構築する。また、電源装置で発生した直流電流が、試片10にのみ流れるようにする。
図2は、本発明の一実施形態によるパルス電流の印加条件を示すグラフである。パルス電流印加成形時に、パルス電流は、電流密度(ρ、単位:A/mm)、電流印加時間(duration、t、単位:秒)及び電流印加周期(period、t、単位:秒)を一定に設定して試片に印加することができる。図2のtは、電流印加時間を意味し、tは、電流印加周期を意味する。この際、電流密度(ρ)は、試片の初期断面積を基準にした値であり、これは、実験が進行する間に、一定値の電流値(A)が印加されたことを意味する。これとは異なって、電流密度(ρ)は、成形進行時に、減少する試片の断面積を考慮して電流を変化させながら印加して、電流密度を一定に保持することができる。
パルス電流印加成形性増加方法で、試片の物性変化を測定するためのデータ測定システムについて説明する。試片の変形率を測定する時、一般的に使われる接触式ストレインゲージは、絶縁の問題で使用が不可能である。したがって、非接触式で試片の変形率を測定することができるイメージ基盤のデジタル画像相関法(digital image correlation system、DIC system)を用いて試片の長手方向の変形率を測定した。また、パルス電流印加によって発生する抵抗熱の発生を分析するために、k型熱電対(k−type thermos−couple)と、熱画像カメラ(IR camera)と、を用いて試片の温度を測定する。
次いで、本発明の一実施形態による鋼材の成形性増加方法について説明する。
本発明による鋼材の成形性増加方法は、(a)オーステナイト相を含む鋼材に応力を印加する段階と、(b)応力によって、オーステナイト相がマルテンサイトに変態誘起塑性が起こる時点に、鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、を含むことを特徴とする。
図3は、本発明の一実施形態によるパルス電流印加成形用試片を示す概略図である。本明細書において、図3のaは、試片の全長を、bは、試片の標点距離を、cは、試片の縦長を、dは、試片の断片長を意味する。但し、図3によって、本発明の実施形態が限定されるものではない。本発明による実施形態は、図3の試片10の形状と厚さ及び長さが異なってもよい。
(a)段階で、図3に示された成形用試片10を図1の成形用装置にローディングして応力を印加する。前記オーステナイト相を含む鋼材は、降伏強度(YS)が780Mpa級である軽量鋼材であり得る。軽量鋼材の成形性増加方法を用いて高強度低比重鋼を必要とする産業に活用されうる。
本発明の一実施形態によれば、オーステナイト相を含む鋼材は、トリップ鋼であり得る。
(b)段階で、前記(a)段階の応力を印加して鋼材が変態誘起塑性(以下、TRIP)挙動する時点に、鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加することができる。図1に示したように、成形用装置の外部電力装置を通じて成形用試片10にパルス電流を印加することができる。パルス電流は、図2に示したように、一定の電流印加周期(t)、電流印加時間(t)で印加する。電流密度の場合、一定の電流密度(ρ)で印加されるが、これは、成形用試片に応力が印加されることによって、断面積が変化する時、印加されるパルス電流の強度を調節して、電流密度を一定に保持することができる。
一方、本発明の一実施形態によれば、パルス電流の電流密度は、85A/mm〜105A/mmであり得る。
一方、本発明の一実施形態によれば、パルス電流の電流印加周期(t)は、27秒〜33秒であり、電流印加時間(t)は、0.08秒〜0.12秒であり得る。
一方、変形率(strain)とは、部品や試片の線形寸法の単位長さ当たりの変化率を意味し、公称ひずみ(Engineering strain)と真ひずみとの2種がある。公称ひずみが普遍的に使われる変形率であり、初期表点距離に対する長さの変化として下記の式で表現される。
σ=(L−L)/L
(σ:変形率、L:成形後の標点距離、L:初期標点距離)
降伏強度(Yield strength、以下、YS)とは、塑性変形を発生させず、材料に加えられる最大応力の程度であって、材料が特定の永久変形を示す時の応力を意味する。
塑性区間(Plastic region、以下、PR)とは、弾性限界を超えて降伏強度を過ぎた試片が塑性変形を帯びる区間であり、荷重の原因を除去した後にも、永久的な変形が残っている区間である。
最大引張強度(Ultimate tensile strength、以下、UTS)とは、試片の強度を示す力で試片が破断されるまで引張力を印加した時、耐える最大応力を意味する。応力−ひずみ線図で最大応力地点を意味する。
変態誘起塑性(以下、TRIP)とは、オーステナイト相が外力によってマルテンサイトに変態されることを言う。この際、鋼材は、高強度と高軟性とを確保することができる。
以下、多様な実験例によって、パルス電流印加によるオーステナイト相を含む鋼材の成形性増加方法について説明する。
<オーステナイト相を含む鋼材の微細組織及び一般引張成形>
図4及び図5を参照して、オーステナイト相を含む鋼材の成形特性について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による鋼材の成形前試片の微細組織及び集合組織を示すEBSD分析写真である。鋼材の成形後、変わる特性を測定するために、成形前の初期状態の微細組織及び集合組織を分析する。
図4の(a)は、EBSD分析のND map(法線方向の微細組織map)であり、図4の(b)は、EBSD分析の相マップ(Phase map)である。EBSD分析結果、鋼材は、フェライト相とオーステナイト相とが共に存在していることを確認することができる。
また、オーステナイト相の定量的な分率を測定するために、XRD分析を実施して、残留オーステナイト相分率が23%存在することを確認することができる。
図5は、本発明の一実施形態による鋼材の一般成形時の応力−ひずみ線図及びXRD分析による残留オーステナイトの分率を示すグラフである。鋼材に1.5mm/minの引張変形速度で一般引張成形(non−pulsed tension)を行って、鋼材の破断時に、破断変形率と残留オーステナイト相の分率とを測定する。
一方、本発明の一実施形態によれば、鋼材の引張変形速度は、1.4mm/min〜1.6mm/minであり得る。
図5の(a)は、鋼材の一般成形時の応力−ひずみ線図を示すグラフである。一般引張成形の結果、40%の破断変形率と850Mpaの最大引張強度(UTS)とを示したことを確認することができる。
破断後、鋼材試片の破断態様を観察した結果、延性破壊(ductile fracture)が起こることを確認することができる。この際、一般引張成形時に、鋼材の変形メカニズムを調べるために、鋼材の成形前初期試片と変形率が、それぞれ7.5%、12.5%、23%、及び鋼材の破断後、試片のXRD分析を実施する。
図5の(b)は、鋼材の一般成形時のXRD分析による残留オーステナイトの分率を示すグラフである。一般引張成形時に、成形が進行することによって、オーステナイト相の分率が減少することを確認することができる。すなわち、鋼材は、応力が印加されれば、オーステナイト相がマルテンサイトに変態誘起塑性(TRIP)挙動が起こることを確認することができる。
一方、鋼材の一般引張成形で、変形率と残留オーステナイト分率との間に下記の式1を用いてプロット(plot)を行うことができる。
[式1] f=fexp(−kε)
(f:残留オーステナイト相の分率、f:成形前の初期鋼材のオーステナイト相の分率、ε:真ひずみ、k:定数)
この際、k値は定数であるが、物理的に低いk値を有するほど、オーステナイト相が高い安定性を有することを意味する。鋼材は、式1のプロット結果、k値が、0.03767であることを確認することができる。
<オーステナイト相を含む鋼材の成形性増加方法>
図6ないし図12を参照して、オーステナイト相を含む鋼材の成形性増加方法について説明する。
まず、図6ないし図9を参照して、本発明の比較例について説明する。
[比較例1]
比較例1は、図3に示したオーステナイト相を含む鋼材の成形用試片を、オーステナイト相を含む鋼材の一般引張成形のような方法で応力を印加し、変態誘起塑性が起こる時点にパルス電流を印加して引張成形を実行する。
この際、前記パルス電流は、電流密度(ρ)が50A/mmであり、電流印加時間(t)は、0.1秒、電流印加周期(t)は、30秒であり得る。
[比較例2]
比較例2は、図3に示したオーステナイト相を含む鋼材の成形用試片を、オーステナイト相を含む鋼材の一般引張成形のような方法で応力を印加し、温度を85℃〜100℃を保持しながら、高温引張成形を実行する。
図6は、オーステナイト相を含む鋼材の成形後、破断形状を示す写真である。図6の(a)は、オーステナイト相を含む鋼材の一般引張成形時(Non−pulsed tension)、図6の(b)は、パルス電流を印加して成形時(Pulsed tension)、図6の(c)は、高温で引張成形時(High temperature tension)、試片の破断形状を示す。
図7は、オーステナイト相を含む鋼材のパルス電流を印加して、成形時と高温で成形時との応力−ひずみ線図及び温度変化を示すグラフである。
比較例1、比較例2によれば、オーステナイト相を含む鋼材のパルス電流を印加して引張成形する時と、高温で引張成形を行う場合、破断変形率は、約23.9%に測定された。これは、オーステナイト相を含む鋼材が、温度増加によるTRIP挙動が妨害されて、TRIP効果による変形を収容することができなかったことを確認することができる。すなわち、パルス電流を印加して引張成形を行うか、高温で引張成形を行う時、破断変形率が低くなる。
図8は、本発明の一比較例による鋼材の成形後の試片の微細組織及び集合組織を示すEBSD分析写真である。図8の(a)及び図8の(b)は、オーステナイト相を含む鋼材の一般性型後、変形率が23%である時の微細組織、図8の(c)及び図8の(d)は、パルス電流を印加して引張成形時に、変形率が23%である時の微細組織、図8の(e)及び図8の(f)は、高温で引張成形時に、変形率が23%である時の微細組織のEBSD分析写真である。
図9は、本発明の一比較例による鋼材の成形前試片及び変形率が23%である時、試片の残留オーステナイト分率を示すグラフである。
比較例の実験の結果、パルス電流を印加し続けるか、高温で引張成形を行う場合、残留オーステナイト相の分率が一般引張成形時よりも高い。すなわち、TRIP挙動を示す素材の場合、継続的なパルス電流を印加することは、TRIP挙動を妨害するだけではなく、局部的な収縮(locally necking)発生によって、破断変形率が一般引張よりもさらに減少することを確認することができる。
<変形前半部にパルス電流を3回印加した場合>
図10ないし図12を参照して、オーステナイト相を含む鋼材に変形前半部に3回のパルス電流を印加した成形性増加方法について説明する。
本発明による一実施形態によれば、(e)応力が印加されれば、オーステナイト相の少なくとも一部が変態誘起塑性によってマルテンサイトに変態されるトリップ鋼を準備する段階と、(f)トリップ鋼に応力を印加して変形させる段階のうち何れか一時点に少なくとも1回のパルス電流を、トリップ鋼に印加して、変態誘起塑性の開始時点を遅延させる段階と、を含むことを特徴とする。
図10は、本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の応力−ひずみ線図及び温度変化を示すグラフである。
前記比較例1と同じ引張成形速度、電流印加時間、電流印加周期条件下に、変態誘起塑性が起こる時点に3回のパルスのみを印加して引張成形を実行した。電流密度の場合、互いに異なる電流密度にして、それぞれ75A/mm、95A/mm、115A/mmにして3回の引張成形を実行した。
本発明による一実施形態によれば、前記(b)段階で、前記パルス電流の最初のパルス電流を前記オーステナイト系鋼の真ひずみが0%〜11.7%である時に印加することができる。
図10の(a)は、鋼材に3回のパルス電流を印加して引張成形時に、応力−ひずみ線図を示す。実験の結果、電流密度が95A/mmである時、破断変形率が最大50%に測定される。一般引張成形時の破断変形率である39%で、約28%の破断変形率が増加する。この際、電流密度が増加するほど、破断変形率が増加し続けるものではなく、電流密度が95A/mmである時、最大破断変形率を示す。すなわち、最大破断変形率が得られる最適の電流密度条件を確認することができる。
図10の(b)は、鋼材に3回のパルス電流を印加して引張成形時に、温度変化を示すグラフである。電流密度75A/mmの電流を印加した場合、試片の平均温度は、最大150℃まで増加し、電流密度95A/mmの電流を印加した場合は、約210℃まで増加した。そして、電流密度115A/mmの電流を印加した場合は、約350℃まで増加した。
図11は、本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の加工硬化指数(n−value)値の変化を示すグラフである。
3回のパルス電流印加成形時に、鋼材の真応力−真ひずみ線図の傾きが一般引張成形する時とは異なって測定された。それを確認するために、加工硬化指数であるn−value値の変化を測定する。
加工硬化指数は、外力によって加工された材料の剛性が増加する程度を示す指数である。これは、真応力−真ひずみ線図の傾きとして表わし、変形の増加によって材料の強度が増加する現象である加工硬化の程度を意味する。材料の物性を決定する重要な因子である。
σ=Kε
logσ=nlogε+logK
(σ:真応力、ε:真ひずみ、n:加工硬化指数、K:強度係数)
前記成形実験の真ひずみによるn−value値をプロットした結果、パルス電流印加によってn−value曲線が変化されたことを確認することができる。特に、n−valueの最大値(max n−value)が一般引張に比べて、変形が進行した変形後半部で表われる。これは、変形前半部に3回のパルス電流印加時に、TRIP挙動の遅延効果によって変形後半からTRIP効果が発揮されることを示す。したがって、本発明の鋼材の成形性増加方法は、変形前半部にパルス電流印加によってTRIP挙動が遅延され、高い破断変形率を有させるという利点がある。
図12は、本発明の一実施形態による鋼材の3回のパルス電流印加成形時の真ひずみによる残留オーステナイト分率を示すグラフである。
本発明による一実施形態によれば、パルス電流を印加するほど、前記オーステナイト系鋼のTRIP(Transformation Induced Plasticity)挙動が遅延される。
TRIP挙動の遅延が行ったかを調べるために、各変形率地点でのパルス電流密度が95A/mmである時、引っ張った鋼材試片と一般引張成形した試片とでXRD分析を実施して、残留オーステナイト相分率を測定した。
真ひずみが11.7%までは、鋼材の残留オーステナイト相分率が成形前初期試片と類似している数値を示す。真ひずみが11.7%以後から残留オーステナイト相分率が持続的に減少し始める。区間を真ひずみが0%から11.7%まで(Region 1)、真ひずみが11.7%から試片の破断時まで(Region 2)に分けて、式1のk値をプロットする。プロット結果、一般引張成形に比べて、真ひずみが0%から11.7%まで(Region 1、 Fitting curve 1)は、k値が0.004934であり、真ひずみが11.7%以後(Region 2、Fitting curve 2)では、k値が0.03688である。これは、真ひずみが11.7%までは、一般引張成形時に、k値よりも著しく低い値を有し、真ひずみが11.7%以後からは、類似している値を示す。表1は、引張成形条件による式1のプロット結果を示す表である。
実験の結果、真ひずみが11.7%である時まで、3回のパルス電流印加成形時に、一般引張成形よりもオーステナイト相の機械的安定性(mechanical stability)が高くて、TRIP効果が遅延される。したがって、鋼材の変形後半からTRIP挙動が表われ、変形後半部にTRIP挙動が表われて、成形性の向上に寄与することができる。
すなわち、オーステナイト相を含む鋼材にパルス電流を印加して成形時に、TRIP挙動を遅延させ、変形率が向上して成形性を増加させることができる。
<スプリングバッグ低減の実験>
図13ないし図17を参照して、オーステナイト相を含む鋼材にパルス電流を印加してスプリングバッグ低減効果について説明する。
スプリングバッグは、成形が必要な鋼材に曲げ応力を印加して曲げ変形を行い、曲げ応力を除去した時、試片に加えられた曲げ変形が戻ってくることを意味する。一般的に、高強度鋼は、成形時に、スプリングバッグ効果によって成形性が減少して、実工程の適用に問題がある。
図13は、本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験用装置を示す概略図であり、図14は、本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験用試片20を示す概略図である。
前記スプリングバッグ低減効果実験用装置で、Gは、曲げ応力印加用チップ(tip)の曲げ角度を、Rは、チップの曲げ半径であり、Wは、スプリングバッグ低減効果実験用試片の曲げ後、幅を意味し、試片20で、Lは、横長、Hは、縦長を意味する。
本発明の一実施形態によれば、(c)オーステナイト相を含む鋼材に曲げ応力を印加して曲げ変形する段階と、(d)曲げ変形されたオーステナイト相を含む鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、をさらに含むことを特徴とする。
図15は、本発明の一実施形態によるスプリングバッグ低減効果実験時に、試片に加えられる負荷を示すグラフである。
(c)段階で、スプリングバッグ低減効果実験用試片を実験用装置にローディングし、曲げ応力を印加することができる。図15の負荷は、スプリングバッグ低減効果実験用試片に印加される曲げ応力を意味し、試片の変形長さ(Displacement)は、17mmまで曲げ変形を加える。曲げ変形速度(Cross head speed)は、0.1mm/sであり得る。
(d)段階で、スプリングバッグ低減効果実験用試片に1回のパルス電流を印加して曲げ変形することができる。電流密度は、60A/mmであり、電流印加時間(Duration time)を0.3秒〜1秒で印加することができる。曲げ変形後、スプリングバッグ角度を測定し、熱画像カメラを用いて試片の最大温度を測定する。
図16の(a)は、スプリングバッグ低減効果実験用試片のパルス電流印加曲げ成形後の写真であり、図16の(b)は、スプリングバッグ角度とパルス電流印加時に、最大温度を示すグラフである。
本発明の一実施形態によれば、パルス電流の印加時間(t)は、0.3秒〜1秒であり、印加時間が増加するほど、オーステナイト系鋼のスプリングバッグが低減しうる。
実験の結果、スプリングバッグ低減角度は、一般スプリングバッグ変形時に、45°であり、電流印加時間が、それぞれ0.3秒、0.5秒、0.7秒、0.9秒、1秒である時、スプリングバッグ変形は、それぞれ42°、38°、37°、31°、29°で測定された。各実験時に、最大温度は、それぞれ228℃、378℃、497℃、631℃、706℃で測定された。すなわち、パルス電流印加時間が1秒である時、最大35%のスプリングバッグ低減効果を確認することができる。表2は、前記スプリングバッグ実験の結果を示す表である。
図17の(a)は、試片の曲げ成形時に、試片に印加されるスプリングバッグ方向(S)を示す概略図であり、図17の(b)は、パルス電流印加曲げ成形時に、試片のビッカース硬度を示すグラフである。
前記実験で、パルス電流印加時間が1秒である時と、パルス電流を印加していない(Non pulsed)一般スプリングバッグ実験で引張力を受けた部分(図17の(a)のT)のビッカース硬度を測定した。
ビッカース硬度は、硬い表面物質の硬度を測定した値を示す。ダイヤモンド四角錐を有するピラミッド型圧子を使用して、試験片を押して試験片に生じたピラミッド状の部分の対角線を測定して、硬度を測定する。ビッカース硬度の値を計算する式は、次の通りである。
Hv=0.1891F/d
(Hv:ビッカース硬度(N/mm)、F:荷重、d:ダイヤモンド圧入痕の対角線長)
ビッカース硬度が一般スプリングバッグ実験では、約275Hvであり、パルス電流印加時間が1秒である時、約250Hvである。パルス電流を印加してスプリングバッグ実験を行った時、残留応力の減少でビッカース硬度の低下が発生したことを確認することができる。すなわち、鋼材のスプリングバッグが低減することを確認することができる。
したがって、本発明によれば、オーステナイト相を含む鋼材にパルス電流を印加して、印加時間が増加するほど、オーステナイト系鋼のスプリングバッグを低減させる効果がある。
本発明は、前述したように望ましい実施形態を挙げて図示して説明したが、前記実施形態に限定されず、本発明の精神を外れない範囲内で当業者によって多様な変形と変更とが可能である。そのような変形例及び変更例は、本発明と添付の特許請求の範囲の範囲内に属するものと認めなければならない。

Claims (12)

  1. (a)オーステナイト相を含む鋼材に応力を印加する段階と、
    (b)前記応力によって、前記オーステナイト相がマルテンサイトに変態誘起塑性が起こる時点に、前記鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、
    を含む鋼材の成形性増加方法。
  2. 前記パルス電流を印加するほど、前記鋼材の変態誘起塑性挙動が遅延される請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  3. 前記オーステナイト相を含む鋼材は、トリップ鋼である請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  4. 前記(b)段階で、前記パルス電流の最初のパルス電流を前記鋼材の真ひずみが0%〜11.7%である時に印加する請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  5. 前記(b)段階で、前記パルス電流を3回印加する請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  6. 前記(b)段階で、前記パルス電流は、一定の電流密度(ρ)で印加される請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  7. 前記(b)段階で、前記パルス電流の電流密度は、85A/mm〜105A/mmである請求項6に記載の鋼材の成形性増加方法。
  8. 前記(b)段階で、前記パルス電流の電流印加周期(t)は、27秒〜33秒であり、電流印加時間(t)は、0.08秒〜0.12秒である請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  9. 前記(b)段階で、前記パルス電流を印加する時、少なくとも28%の延伸率が向上する請求項1に記載の鋼材の成形性増加方法。
  10. (c)オーステナイト相を含む鋼材の少なくとも一部の領域に曲げ応力を印加して曲げ変形する段階と、
    (d)前記曲げ変形された前記鋼材に少なくとも1回のパルス電流を印加する段階と、
    をさらに含む鋼材の成形性増加方法。
  11. 前記(d)段階で、前記パルス電流の印加時間(t)は、0.3秒〜1秒であり、印加時間が増加するほど、前記鋼材のスプリングバッグが低減する請求項10に記載の鋼材の成形性増加方法。
  12. (e)応力が印加されれば、オーステナイト相の少なくとも一部が変態誘起塑性によってマルテンサイトに変態されるトリップ鋼を準備する段階と、
    (f)前記トリップ鋼に応力を印加して変形させる段階のうち何れか一時点に少なくとも1回のパルス電流を、前記トリップ鋼に印加して、前記変態誘起塑性の開始時点を遅延させる段階と、
    を含む鋼材の成形性増加方法。
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