以下、本発明が適用されたヒューズエレメント、ヒューズ素子、保護素子、短絡素子及び切替素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[ヒューズエレメント]
先ず、本発明が適用されたヒューズエレメントについて説明する。本発明が適用されたヒューズエレメント1は、後述するヒューズ素子、保護素子、短絡素子及び切替素子の可溶導体として用いられ、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体の発熱により溶断されるものである。ヒューズエレメント1は、互いに融点の異なる3層以上の金属層が積層されたものであり、例えば、図1に示すように、高融点金属層2と、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3と、第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4とを有し、例えば略矩形板状に形成されている。
高融点金属層2は、例えば、Ag、Cu又はAg若しくはCuを主成分とする合金が好適に用いられ、ヒューズエレメント1をリフロー炉によって絶縁基板上に実装を行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
第1の低融点金属層3は、例えばSn又はSnを主成分とする合金で「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料が好適に用いられる。第1の低融点金属層3の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。
第2の低融点金属層4は、例えばBi、In又はBi若しくはInを含む合金が好適に用いられる。第2の低融点金属層4の融点は、第1の低融点金属層3よりもさらに低く、例えば120℃〜140℃で溶融を開始する。
ヒューズエレメント1は、互いに融点の異なる3層以上の金属層が積層されて形成されることにより、ヒューズ素子、保護素子、短絡素子及び切替素子の絶縁基板への実装性に優れ、また、ヒューズエレメント1が用いられた各素子の外部回路基板への実装性を向上させることができる。また、ヒューズエレメント1は、各素子において、定格の向上と速溶断性とを実現できる。
すなわち、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2を備えることにより、リフロー炉等の外部熱源によって第1、第2の低融点金属層3,4の融点以上の高熱環境に短時間曝された場合にも、溶断や変形が防止され、初期遮断や初期短絡又は定格の変動に伴う溶断特性の低下を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント1は、ヒューズ素子等の各素子の絶縁基板への実装や、ヒューズ素子等の各素子の外部回路基板への実装をリフロー実装により効率よく実現することができ、実装性を向上させることができる。
また、ヒューズエレメント1は、低抵抗の高融点金属層2が積層されて構成されているため、従来の鉛系高融点ハンダを用いた可溶導体に比べ、導体抵抗を大幅に低減することができ、同一サイズの従来のチップヒューズ等に比して、電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
さらに、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3及び第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4が積層されているため、過電流による自己発熱や発熱体の発熱により、第2の低融点金属層4の融点から溶融を開始し、速溶断特性を向上させることができる。例えば、第2の低融点金属層4をSn‐Bi系合金やIn‐Sn系合金などで構成した場合、ヒューズエレメント1は、140℃や120℃前後という低温度から溶融を開始する。そして、溶融した第1、第2の低融点金属層3,4が高融点金属層2を浸食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層2が融点よりも低い温度で溶融する。したがって、ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4による高融点金属層2の浸食作用を利用して速溶断性を向上することができる。
[ヒューズエレメントの積層構造]
ここで、ヒューズエレメント1は、図1に示すように、高融点金属層2は、第1の低融点金属層3と第2の低融点金属層4との間に積層されていることが好ましい。ヒューズエレメント1は、高融点金属層2を融点の異なる2種類の第1、第2の低融点金属層3,4で挟むことにより、第2の低融点金属層4のより低い温度から高融点金属層2の一方の面の浸食を開始し、次いで、第1の低融点金属層3の温度で両面から高融点金属層2を浸食する。
これにより、ヒューズエレメント1は、リフロー温度等の高温環境に対する耐性を備えつつ、速溶断特性を向上させることができる。すなわち、融点が220℃前後の一般的なPbフリーハンダからなる低融点金属層とAg等の高融点金属層とを積層させたヒューズエレメントにおいては、リフロー温度等の高温環境に対する耐性を備えようとすると、高融点金属層の厚さを厚くする必要があり、そのため溶断時間が延びてしまう。
また、ヒューズエレメントの溶断時間を短縮するために、低融点金属層を比較的安価なSn/Bi系の合金で形成すると、抵抗値が高くなってしまい、定格を向上させることができない。
この点、ヒューズエレメント1は、Sn又はSnを主成分とする合金が好適に用いられる第1の低融点金属層3と、Bi、In又はBi若しくはInを含む合金が好適に用いられ第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4との間に高融点金属層2を積層する。これにより、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2がリフロー温度等の高温環境に対する耐性を備える厚さを有していても、第1及び/又は第2の低融点金属層3,4が高融点金属層2を両面から浸食することで速やかに溶断することができる。
また、ヒューズエレメント1は、Sn又はSnを主成分とする合金が好適に用いられる第1の低融点金属層3を備えることにより低抵抗を維持しつつ、Bi、In又はBi若しくはInを含む合金が好適に用いられ第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4とを備えることにより、低温から溶融を開始させ速溶断性を向上させることができる。
さらに、ヒューズエレメント1は、第1の低融点金属層3と、第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4との間に高融点金属層2を積層することにより、溶融過程において高融点金属層2の一部が溶解し第1の低融点金属層3と第2の低融点金属層4とが混じると、第1の低融点金属層3の融点が下がり、溶融速度が加速し、速溶断性をさらに向上させることができる。
また、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2、第1の低融点金属層3及び第2の低融点金属層4によって、4層以上積層されていることが好ましい。このとき、ヒューズエレメント1は、図1に示すように、下層から、第1の低融点金属層3、高融点金属層2、第2の低融点金属層4、高融点金属層2の順序で4層積層してもよい。図1に示すヒューズエレメント1は、一方の高融点金属層2が第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層されることで、速やかに溶断することができる。
また、ヒューズエレメント1は、最下層の第1の低融点金属層3を、後述するヒューズ素子、保護素子、短絡素子、切替素子の各素子の電極上に接続する接続材料として用いてもよい。すなわち、ヒューズエレメント1は、第1の低融点金属層3によって各素子の電極に接続されるようにしてもよい。
また、ヒューズエレメント1は、一対の高融点金属層2の間に設けられる内層を第2の低融点金属層4とし、外層を高融点金属層2とすることにより、ヒューズ素子等の各素子が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、ヒューズエレメント1は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、ヒューズエレメント1は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層2が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント1は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
[製造方法]
ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4の表面に高融点金属2をメッキ技術を用いて成膜することにより製造できる。ヒューズエレメント1は、例えば、長尺状のハンダ箔の表面にAgメッキを施すことにより効率よく製造でき、使用時には、サイズに応じて切断することで、容易に用いることができる。
また、ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4を構成する低融点金属箔と高融点金属層2を構成する高融点金属箔とを貼りあわせることにより製造してもよい。ヒューズエレメント1は、例えば、圧延した2枚のCu箔、或いはAg箔の間に、同じく圧延した第2の低融点金属層4を構成するハンダ箔を挟み、さらに一方の高融点金属層2に第1の低融点金属層3を構成するハンダ箔を積層してプレスすることにより製造できる。この場合、低融点金属箔は、高融点金属箔よりも柔らかい材料を選択することが好ましい。これにより、厚みのばらつきを吸収して低融点金属箔と高融点金属箔とを隙間なく密着させることができる。また、低融点金属箔はプレスによって膜厚が薄くなるため、予め厚めにしておくとよい。プレスにより低融点金属箔がヒューズエレメント端面よりはみ出した場合は、切り落として形を整えることが好ましい。
その他、ヒューズエレメント1は、蒸着等の薄膜形成技術や、他の周知の積層技術を用いることによっても、第1、第2の低融点金属層3,4と高融点金属層2とが積層されたヒューズエレメント1を形成することができる。
なお、ヒューズエレメント1は、一方の高融点金属層2を最外層としたときに、さらに当該最外層の高融点金属層2の表面に図示しない酸化防止膜を形成してもよい。ヒューズエレメント1は、最外層の高融点金属層2がさらに酸化防止膜によって被覆されることにより、例えば高融点金属層2としてCuメッキやCu箔を形成した場合にも、Cuの酸化を防止することができる。したがって、ヒューズエレメント1は、Cuの酸化によって溶断時間が長くなる事態を防止することができ、短時間で溶断することができる。
また、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2としてCu等の安価だが酸化しやすい金属を用いることができ、Ag等の高価な材料を用いることなく形成することができる。
高融点金属の酸化防止膜は、第1、第2の低融点金属層3,4と同じ材料を用いることができ、例えばSnを主成分とするPbフリーハンダを用いることができる。また、酸化防止膜は、高融点金属層2の表面に錫メッキを施すことにより形成することができる。その他、酸化防止膜は、Auメッキやプリフラックスによって形成することもできる。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図2に示すように、第1の低融点金属層3、高融点金属層2、第2の低融点金属層4、高融点金属層2の順序で積層するとともに、最外層として第1の低融点金属層3を積層させてもよい。図2に示すヒューズエレメント10は、一対の高融点金属層2の間に設けられる内層を第2の低融点金属層4とし、外層を高融点金属層2とし、最外層を第1の低融点金属層3としたものであり、一対の高融点金属層2がいずれも第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層される。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図3に示すように、第1の低融点金属層3、高融点金属層2、第2の低融点金属層4、高融点金属層2の積層パターンを繰り返すことにより形成してもよい。図3に示すヒューズエレメント20は、当該積層パターンを繰り返すことにより、速溶断性を維持しつつ、ヒューズエレメントの厚み増加による低抵抗化と、リフロー時の変形抑制を図ることができる。
すなわち、ヒューズエレメントは、低抵抗化し定格電流を上げるためには、高融点金属層を厚くするか、低融点金属を厚くすることが必要となる。高融点金属層を厚くすると、低抵抗化に加え、リフロー時の変形や溶断を防止でき、リフロー温度等の高温環境に対する耐性を向上させることができるが、一方で速溶断性を損なう。また、低融点金属層を厚くすると溶食が速まり、高温環境に対する耐性を損なってしまう。そこで、ヒューズエレメント20は、当該積層パターンを繰り返すことで、速溶断性を維持しつつ、所望の厚さを確保して低抵抗化による定格の向上を図り、かつ高温環境に対する耐性の向上を実現することができる。なお、ヒューズエレメント20は、当該積層パターンを繰り返すことにより8層積層したものであるが、本発明が適用されたヒューズエレメントは、当該積層パターンを繰り返すことにより8層以上に積層させてもよい。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図4に示すように、第1の低融点金属層3、高融点金属層2、第2の低融点金属層4、高融点金属層2の積層パターンを繰り返すとともに、最外層として第1の低融点金属層3を積層させてもよい。図4に示すヒューズエレメント30は、当該積層パターンを繰り返すことにより8層積層した後、最外層として第1の低融点金属層3を積層したものであり、すべての高融点金属層2が第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層される。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図5に示すように、下層から、第2の低融点金属層4、高融点金属層2、第1の低融点金属層3、高融点金属層2の順序で4層積層してもよい。図5に示すヒューズエレメント40も、上述したヒューズエレメント1と同様に一方の高融点金属層2が第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層されることで、速やかに溶断することができる。
また、ヒューズエレメント40は、最下層の第2の低融点金属層4を、後述するヒューズ素子、保護素子、短絡素子、切替素子の各素子の電極上に接続する接続材料として用いてもよい。すなわち、ヒューズエレメント40は、第2の低融点金属層4によって各素子の電極に接続されるようにしてもよい。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図6に示すように、第2の低融点金属層4、高融点金属層2、第1の低融点金属層3、高融点金属層2の順序で積層するとともに、最外層として第2の低融点金属層4を積層させてもよい。図6に示すヒューズエレメント50は、一対の高融点金属層2の間に設けられる内層を第1の低融点金属層3とし、外層を高融点金属層2とし、最外層を第2の低融点金属層4としたものであり、一対の高融点金属層2がいずれも第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層される。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図7に示すように、第2の低融点金属層4、高融点金属層2、第1の低融点金属層3、高融点金属層2の積層パターンを繰り返すことにより形成してもよい。図7に示すヒューズエレメント60は、当該積層パターンを繰り返すことにより、上述したヒューズエレメント20,30と同様に、速溶断性を維持しつつ、ヒューズエレメントの厚み増加による低抵抗化と、剛性増加によるリフロー時の変形抑制を図ることができる。なお、ヒューズエレメント60は、当該積層パターンを繰り返すことにより8層積層したものであるが、本発明が適用されたヒューズエレメントは、当該積層パターンを繰り返すことにより8層以上に積層させてもよい。
また、本発明が適用されたヒューズエレメントは、図8に示すように、第2の低融点金属層4、高融点金属層2、第1の低融点金属層3、高融点金属層2の積層パターンを繰り返すとともに、最外層として第2の低融点金属層4を積層させてもよい。図8に示すヒューズエレメント70は、当該積層パターンを繰り返すことにより8層積層した後、最外層として第2の低融点金属層4を積層したものであり、すべての高融点金属層2が第1、第2の低融点金属層3,4の間に積層される。
なお、上述したように、ヒューズエレメント1,10,20,30,40,50,60,70は、第2の低融点金属層を構成する金属としてBi、In又はBi若しくはInを含む合金が好適に用いられるが、InはSnより抵抗率が低い反面、レアメタルであり高価な材料であることから、製造コスト、材料の入手の容易性等を含め総合的に判断すると、図1〜4に示すヒューズエレメント1,10,20,30よりも、図5〜8に示すヒューズエレメント40,50,60,70の構成が好ましいといえる。
また、上述したヒューズエレメント1,10,20,30,40,50,60,70は、第1の低融点金属層3の体積を高融点金属層2の体積よりも大きくすることが好ましい。ヒューズエレメント1,10,20,30,40,50,60,70は、第1の低融点金属層3の体積を多くすることにより、効果的に高融点金属層2の浸食による短時間での溶断を行うことができる。同様に、ヒューズエレメント1,10,20,30,40,50,60,70は、第2の低融点金属層4の体積を高融点金属層2の体積よりも大きくすることが好ましい。
次いで、上述したヒューズエレメント1,10,20,30,40,50,60,70を用いたヒューズ素子、保護素子、短絡素子、切替素子について説明する。なお、以下の説明では、ヒューズエレメント1を用いた各素子について説明するが、ヒューズエレメント10,20,30,40,50,60,70を用いてもよいのは勿論である。
[ヒューズ素子]
本発明が適用されたヒューズ素子80は、図9に示すように、絶縁基板81と、絶縁基板81に設けられた第1の電極82及び第2の電極83と、第1及び第2の電極82,83間にわたって実装され、定格を超える電流が通電することによって自己発熱により溶断し、第1の電極82と第2の電極83との間の電流経路を遮断するヒューズエレメント1とを備える。
絶縁基板81は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板81は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
絶縁基板81の相対向する両端部には、第1、第2の電極82,83が形成されている。第1、第2の電極82,83は、それぞれ、AgやCu配線等の導電パターンによって形成され、表面に適宜、酸化防止対策としてSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層86が設けられている。また、第1、第2の電極82,83は、絶縁基板81の表面81aより、キャスタレーションを介して裏面81bに形成された第1、第2の外部接続電極82a,83aと連続されている。ヒューズ素子80は、裏面81bに形成された第1、第2の外部接続電極82a,83aを介して、回路基板の電流経路上に実装される。
第1及び第2の電極82,83は、ハンダ等の接続材料88を介してヒューズエレメント1が接続されている。
上述したように、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2を備えることにより高温環境に対する耐性が向上されているため実装性に優れ、接続材料88を介して第1及び第2の電極82,83間に搭載された後、リフローはんだ付け等により容易に接続することができる。なお、ヒューズエレメント1は、最下層に設けられた第1の低融点金属層3又は第2の低融点金属層4を接続材料として用いて、第1、第2の電極82,83に接続してもよい。
[実装状態]
次いで、ヒューズエレメント1の実装状態について説明する。ヒューズ素子80は、図9に示すように、ヒューズエレメント1が、絶縁基板81の表面81aから離間して実装されている。
一方、ヒューズエレメントを絶縁基板の表面へ印刷により形成するなど、ヒューズエレメントが絶縁基板の表面と接するヒューズ素子においては、第1、第2の電極間においてヒューズエレメントの溶融金属が絶縁基板上に付着しリークが発生する。例えばAgペーストをセラミック基板へ印刷することによりヒューズエレメントを形成したヒューズ素子においては、セラミックと銀が焼結されて食い込んでしまい、第1、第2の電極間に残留してしまう。そのため、当該ヒューズエレメントの溶融残渣によって第1、第2の電極間にリーク電流が流れ、電流経路を完全には遮断することができない。
この点、ヒューズ素子80においては、絶縁基板81とは別に単体でヒューズエレメント1を形成し、かつ絶縁基板81の表面81aから離間して実装させている。したがって、ヒューズ素子80は、ヒューズエレメント1の溶融時にも溶融金属が絶縁基板81へ食い込むこともなく第1、第2の電極82,83上に引き込まれ、確実に第1、第2の電極82,83間を絶縁することができる。
[フラックスシート]
また、ヒューズ素子80は、高融点金属層2又は第1、第2の低融点金属層3,4の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント1の表面や裏面にフラックスをコーティングしてもよい。また、図9に示すように、ヒューズエレメント1上の最外層の全面にフラックスシート87を配置してもよい。フラックスシート87は、流動体又は半流動体のフラックスをシート状の支持体に含浸、保持させたものであり、例えば不織布やメッシュ状の生地にフラックスを含浸させたものである。
図10に示すように、フラックスシート87は、ヒューズエレメント1の表面積よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、ヒューズエレメント1は、フラックスシート87によって完全に被覆され、溶融により体積が膨張した場合にも、確実にフラックスによる酸化物除去、及び濡れ性の向上による速溶断を実現することができる。
フラックスシート87を配置することにより、ヒューズエレメント1の実装時やヒューズ素子80の実装時における熱処理工程においてもフラックスをヒューズエレメント1の全面にわたって保持することができ、ヒューズ素子80の実使用時において、第1、第2の低融点金属層3,4(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、第1、第2の低融点金属が溶解している間の酸化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて速溶断性を向上させることができる。
また、フラックスシート87を配置することにより、最外層の高融点金属層2の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層2の酸化を効果的に防止し、速溶断性を維持、向上することができる。
なお、ヒューズ素子80は、フラックスシート87に替えて、図11に示すように、ヒューズエレメント1の最外層にフラックス85aを塗布した後、フラックス85aの上に不織布やメッシュ状の生地を配置し、フラックスを含浸させてもよい。また、ヒューズ素子80は、図12に示すように、フラックスシートに替えて、ヒューズエレメント1の最外層の全面に、繊維状物が混合されたフラックス85bを塗布してもよい。フラックス85bは繊維状物が混合されることにより粘性が高められ、高温環境下においても流動しにくく、ヒューズエレメント1の全面にわたって溶断時の酸化物除去及び濡れ性の向上を図ることができる。なお、フラックス85bに混合させる繊維状物としては、例えば不織布繊維、ガラス繊維等、絶縁性、耐熱性を備えた繊維が好適に用いられる。
なおヒューズエレメント1は、上述したように第1、第2の電極82,83上にリフローハンダ付けによって接続することができるが、その他にも、ヒューズエレメント1は、超音波溶接によって第1、第2の電極82,83上に接続してもよい。
[カバー部材]
また、ヒューズ素子80は、ヒューズエレメント1が設けられた絶縁基板81の表面81a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント1の飛散を防止するカバー部材89が取り付けられている。カバー部材89は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができ、絶縁性の接着剤84を介して接続されている。ヒューズ素子80は、ヒューズエレメント1がカバー部材89によって覆われるため、過電流によるアーク放電の発生を伴う自己発熱遮断時においても、溶融金属がカバー部材89によって捕捉され、周囲への飛散を防止できる。
また、カバー部材89は、天面89aから絶縁基板81に向かって、少なくともフラックスシート87の側面まで延在する突起部89bを有している。カバー部材89は、突起部89bにより、フラックスシート87の側面が移動規制を受けるため、フラックスシート87の位置ずれを防ぐことが可能となる。すなわち、突起部89bは、フラックスシート87の大きさよりも所定のクリアランスを保持した大きさで、フラックスシート87を保持すべき位置に対応して設けられる。なお、突起部89bは、フラックスシート87の側面を周回して覆う壁面としてもよいし、部分的に突起するものであってもよい。
また、カバー部材89は、フラックスシート87と天面89aの間に所定の間隔をあけた構成とされている。これは、ヒューズエレメント1が溶融した際に、溶融したヒューズエレメント1がフラックスシート87を押し上げるためのクリアランスが必要だからである。
従って、カバー部材89は、カバー部材89の内部空間の高さ(天面89aまでの高さ)は、絶縁基板81の表面81a上の溶融したヒューズエレメント1の高さと、フラックスシート87の厚さの和よりも大きくなるように構成されている。
[回路構成]
このようなヒューズ素子80は、図13(A)に示す回路構成を有する。ヒューズ素子80は、第1、第2の外部接続電極82a,83aを介して外部回路に実装されることにより、当該外部回路の電流経路上に組み込まれる。ヒューズ素子80は、ヒューズエレメント1に所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、ヒューズ素子80は、定格を超える過電流が通電するとヒューズエレメント1が自己発熱によって溶断し、第1、第2の電極82,83間を遮断することにより、当該外部回路の電流経路を遮断する(図13(B))。
このとき、ヒューズエレメント1は、上述したように、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3及び第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4が積層されているため、過電流による自己発熱により、第2の低融点金属層4の融点から溶融を開始し、高融点金属層2を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4による高融点金属層2の浸食作用を利用することにより、高融点金属層2が自身の融点よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
加えて、図14に示すように、ヒューズエレメント1の溶融金属は、第1及び第2の電極82,83の物理的な引き込み作用により左右に分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1及び第2の電極82,83間の電流経路を遮断することができる。
[保護素子]
次いで、ヒューズエレメント1を用いた保護素子について説明する。本発明が適用された保護素子90は、図15(A)(B)に示すように、絶縁基板91と、絶縁基板91に積層され、絶縁部材92に覆われた発熱体93と、絶縁基板91の両端に形成された第1の電極94及び第2の電極95と、絶縁部材91上に発熱体93と重畳するように積層され、発熱体93に電気的に接続された発熱体引出電極96と、両端が第1、第2の電極94,95にそれぞれ接続され、中央部が発熱体引出電極96に接続されたヒューズエレメント1とを備える。そして、保護素子90は、絶縁基板91上に内部を保護するカバー部材97が取り付けられている。
絶縁基板91は、上記絶縁基板81と同様に、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板91は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
絶縁基板91の相対向する両端部には、第1、第2の電極94,95が形成されている。第1、第2の電極94,95は、それぞれ、AgやCu配線等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極94,95は、絶縁基板91の表面91aより、キャスタレーションを介して裏面91bに形成された第1、第2の外部接続電極94a,95aと連続されている。保護素子90は、裏面91bに形成された第1、第2の外部接続電極94a,95aが保護素子90が実装される回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
発熱体93は、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体93は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合してペースト状にしたものを、絶縁基板91上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
また、保護素子90は、発熱体93が絶縁部材92によって被覆され、絶縁部材92を介して発熱体93と対向するように発熱体引出電極96が形成される。発熱体引出電極96はヒューズエレメント1が接続され、これにより発熱体93は、絶縁部材92及び発熱体引出電極96を介してヒューズエレメント1と重畳される。絶縁部材92は、発熱体93の保護及び絶縁を図るとともに、発熱体93の熱を効率よくヒューズエレメント1へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。
なお、発熱体93は、絶縁基板91に積層された絶縁部材92の内部に形成してもよい。また、発熱体93は、第1、第2の電極94,95が形成された絶縁基板91の表面91aと反対側の裏面91bに形成してもよく、あるいは、絶縁基板91の表面91aに第1、第2の電極94,95と隣接して形成してもよい。また、発熱体93は、絶縁基板91の内部に形成してもよい。
また、発熱体93は、一端が発熱体引出電極96と接続され、他端が発熱体電極99と接続されている。発熱体引出電極96は、絶縁基板91の表面91a上に形成されるとともに発熱体93と接続された下層部96aと、発熱体93と対向して絶縁部材92上に積層されるとともにヒューズエレメント1と接続される上層部96bとを有する。これにより、発熱体93は、発熱体引出電極96を介してヒューズエレメント1と電気的に接続されている。なお、発熱体引出電極96は、絶縁部材92を介して発熱体93に対向配置されることにより、ヒューズエレメント1を溶融させるとともに、溶融導体を凝集しやすくすることができる。
また、発熱体電極99は、絶縁基板91の表面91a上に形成され、キャスタレーションを介して絶縁基板91の裏面91bに形成された発熱体給電電極99aと連続されている。
保護素子90は、第1の電極94から発熱体引出電極96を介して第2の電極95に跨ってヒューズエレメント1が接続されている。ヒューズエレメント1は、ハンダ等の接続材料100を介して第1、第2の電極94,95及び発熱体引出電極96上に接続される。
上述したように、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2を備えることにより高温環境に対する耐性が向上されているため実装性に優れ、接続材料100を介して第1、第2の電極94,95及び発熱体引出電極96上に搭載された後、リフローはんだ付け等により容易に接続することができる。なお、ヒューズエレメント1は、最下層に設けられた第1の低融点金属層3又は第2の低融点金属層4を接続材料として用いて、第1、第2の電極94,95及び発熱体引出電極96に接続してもよい。
[フラックスシート]
また、保護素子90は、高融点金属層2又は第1、第2の低融点金属層3,4の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント1の表面や裏面にフラックスをコーティングしてもよい。また、図15に示すように、ヒューズエレメント1上の最外層の全面にフラックスシート101を配置してもよい。フラックスシート101は、上記フラックスシート87と同様に、流動体又は半流動体のフラックスをシート状の支持体に含浸、保持させたものであり、例えば不織布やメッシュ状の生地にフラックスを含浸させたものである。
フラックスシート101は、ヒューズエレメント1の表面積よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、ヒューズエレメント1は、フラックスシート101によって完全に被覆され、溶融により体積が膨張した場合にも、確実にフラックスによる酸化物除去、及び濡れ性の向上による速溶断を実現することができる。
フラックスシート101を配置することにより、ヒューズエレメント1の実装時や保護素子90の実装時における熱処理工程においてもフラックスをヒューズエレメント1の全面にわたって保持することができ、保護素子90の実使用時において、第1、第2の低融点金属層3,4(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、第1、第2の低融点金属が溶解している間の酸化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて速溶断性を向上させることができる。
また、フラックスシート101を配置することにより、最外層の高融点金属層2の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層2の酸化を効果的に防止し、速溶断性を維持、向上することができる。
なお、保護素子90は、フラックスシート101に替えて、図16に示すように、ヒューズエレメント1の最外層にフラックス104aを塗布した後、フラックス104aの上に不織布やメッシュ状の生地を配置し、フラックス104aを含浸させてもよい。また、保護素子90は、図17に示すように、フラックスシートに替えて、ヒューズエレメント1の最外層の全面に、繊維状物が混合されたフラックス104bを塗布してもよい。フラックス104bは繊維状物が混合されることにより粘性が高められ、高温環境下においても流動しにくく、ヒューズエレメント1の全面にわたって溶断時の酸化物除去及び濡れ性の向上を図ることができる。なお、フラックス104bに混合させる繊維状物としては、例えば不織布繊維、ガラス繊維等、絶縁性、耐熱性を備えた繊維が好適に用いられる。
なお、第1、第2の電極94,95、発熱体引出電極96及び発熱体電極99は、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成され、適宜、表面にSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層98が形成されている。これにより、表面の酸化を防止するとともに、ヒューズエレメント1の第1、第2の低融点金属層3,4やヒューズエレメント1の接続用ハンダ等の接続材料100による第1、第2の電極94,95及び発熱体引出電極96の浸食を抑制することができる。
また、第1、第2の電極94,95には、上述したヒューズエレメント1の溶融導体やヒューズエレメント1の接続材料100の流出を防止するガラス等の絶縁材料からなる流出防止部102が形成されている。
[カバー部材]
また、保護素子90は、ヒューズエレメント1が設けられた絶縁基板91の表面91a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント1の飛散を防止するカバー部材97が取り付けられている。カバー部材97は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。保護素子90は、ヒューズエレメント1がカバー部材97によって覆われるため、溶融金属がカバー部材97によって捕捉され、周囲への飛散を防止できる。
また、カバー部材97は、天面97aから絶縁基板81に向かって、少なくともフラックスシート101の側面まで延在する突起部97bを有している。カバー部材97は、突起部97bにより、フラックスシート101の側面が移動規制を受けるため、フラックスシート101の位置ずれを防ぐことが可能となる。すなわち、突起部97bは、フラックスシート101の大きさよりも所定のクリアランスを保持した大きさで、フラックスシート101を保持すべき位置に対応して設けられる。なお、突起部97bは、フラックスシート101の側面を周回して覆う壁面としてもよいし、部分的に突起するものであってもよい。
また、カバー部材97は、フラックスシート101と天面97aの間に所定の間隔をあけた構成とされている。これは、ヒューズエレメント1が溶融した際に、溶融したヒューズエレメント1がフラックスシート101を押し上げるためのクリアランスが必要だからである。
従って、カバー部材97は、カバー部材97の内部空間の高さ(天面97aまでの高さ)は、絶縁基板91の表面91a上の溶融したヒューズエレメント1の高さと、フラックスシート101の厚さの和よりも大きくなるように構成されている。
このような保護素子90は、発熱体給電電極99a、発熱体電極99、発熱体93、発熱体引出電極96及びヒューズエレメント1に至る発熱体93への通電経路が形成される。また、保護素子90は、発熱体電極99が発熱体給電電極99aを介して発熱体93に通電させる外部回路と接続され、当該外部回路によって発熱体電極99とヒューズエレメント1にわたる通電が制御される。
また、保護素子90は、ヒューズエレメント1が発熱体引出電極96と接続されることにより、発熱体93への通電経路の一部を構成する。したがって、保護素子90は、ヒューズエレメント1が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱体93への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
[回路図]
本発明が適用された保護素子90は、図18に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子90は、発熱体引出電極96を介して第1、第2の外部接続電極94a,95a間にわたって直列接続されたヒューズエレメント1と、ヒューズエレメント1の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント1を溶融する発熱体93とからなる回路構成である。そして、保護素子90は、第1、第2の電極94,95及び発熱体電極99が、それぞれ第1、第2の外部接続電極94a,95a及び発熱体給電電極99aが外部回路基板に接続される。これにより、保護素子90は、ヒューズエレメント1が第1、第2の電極94,95を介して外部回路の電流経路上に直列接続され、発熱体93が発熱体電極99を介して外部回路に設けられた電流制御素子と接続される。
[溶断工程]
このような回路構成からなる保護素子90は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱体93が通電される。これにより、保護素子90は、発熱体93の発熱により、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント1が溶融され、図19(A)に示すように、ヒューズエレメント1の溶融導体が、濡れ性の高い発熱体引出電極96及び第1、第2の電極94,95に引き寄せられることによりヒューズエレメント1が溶断される。これにより、ヒューズエレメント1は、確実に第1の電極94〜発熱体引出電極96〜第2の電極95の間を溶断させ(図19(B))、外部回路の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント1が溶断することにより、発熱体93への給電も停止される。
このとき、ヒューズエレメント1は、上述したように、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3及び第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4が積層されているため、過電流による自己発熱により、第2の低融点金属層4の融点から溶融を開始し、高融点金属層2を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4による高融点金属層2の浸食作用を利用することにより、高融点金属層2が溶融温度よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
[短絡素子]
次いで、ヒューズエレメント1を用いた短絡素子について説明する。図20(A)に、短絡素子110の平面図を示し、図20(B)に、短絡素子110の断面図を示す。短絡素子110は、絶縁基板111と、絶縁基板111に設けられた発熱体112と、絶縁基板111に、互いに隣接して設けられた第1の電極113及び第2の電極114と、第1の電極113と隣接して設けられるとともに、発熱体112に電気的に接続された第3の電極115と、第1、第3の電極113,115間に亘って設けられることにより電流経路を構成し、発熱体112からの加熱により、第1、第3の電極113,115間の電流経路を溶断するとともに、溶融導体を介して第1、第2の電極113,114を短絡させるヒューズエレメント1とを備える。そして、短絡素子110は、絶縁基板111上に内部を保護するカバー部材116が取り付けられている。
絶縁基板111は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板111は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
発熱体112は、絶縁基板111上において絶縁部材118に被覆されている。また、絶縁部材118上には、第1〜第3の電極113〜115が形成されている。絶縁部材118は、発熱体112の熱を効率よく第1〜第3の電極113〜115へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。発熱体112は、第1〜第3の電極113〜115を加熱することにより、溶融導体を凝集しやすくさせることができる。
第1〜第3の電極113〜115は、AgやCu配線等の導電パターンによって形成されている。第1の電極113は、一方側において第2の電極114と隣接して形成されるとともに、絶縁されている。第1の電極113の他方側には第3の電極115が形成されている。第1の電極113と第3の電極115とは、ヒューズエレメント1が接続されることにより導通され、短絡素子110の電流経路を構成する。また、第1の電極113は、絶縁基板111の側面に臨むキャスタレーションを介して絶縁基板111の裏面111bに設けられた第1の外部接続電極113aと接続されている。また、第2の電極114は、絶縁基板111の側面に臨むキャスタレーションを介して絶縁基板111の裏面111bに設けられた第2の外部接続電極114aと接続されている。
また、第3の電極115は、絶縁基板111あるいは絶縁部材118に設けられた発熱体引出電極120を介して発熱体112と接続されている。また、発熱体112は、発熱体電極121及び絶縁基板111の側縁に臨むキャスタレーションを介して、絶縁基板111の裏面111bに設けられた発熱体給電電極121aと接続されている。
第1及び第3の電極113,115は、ハンダ等の接続材料117を介してヒューズエレメント1が接続されている。上述したように、ヒューズエレメント1は、高融点金属層2を備えることにより高温環境に対する耐性が向上されているため実装性に優れ、接続材料117を介して第1及び第3の電極113,115間に搭載された後、リフローはんだ付け等により容易に接続することができる。なお、ヒューズエレメント1は、最下層に設けられた第1の低融点金属層3又は第2の低融点金属層4を接続材料として用いて、第1、第3の電極113,115に接続してもよい。
[フラックスシート]
また、短絡素子110は、高融点金属層2又は第1、第2の低融点金属層3,4の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント1の表面や裏面にフラックスをコーティングしてもよい。また、図20に示すように、ヒューズエレメント1上の最外層の全面にフラックスシート122を配置してもよい。フラックスシート122は、上述したフラックスシート87と同様に、流動体又は半流動体のフラックスをシート状の支持体に含浸、保持させたものであり、例えば不織布やメッシュ状の生地にフラックスを含浸させたものである。
フラックスシート122は、ヒューズエレメント1の表面積よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、ヒューズエレメント1は、フラックスシート122によって完全に被覆され、溶融により体積が膨張した場合にも、確実にフラックスによる酸化物除去、及び濡れ性の向上による速溶断を実現することができる。
フラックスシート122を配置することにより、ヒューズエレメント1の実装時や短絡素子110の実装時における熱処理工程においてもフラックスをヒューズエレメント1の全面にわたって保持することができ、短絡素子110の実使用時において、第1、第2の低融点金属層3,4(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、第1、第2の低融点金属が溶解している間の酸化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて速溶断性を向上させることができる。
また、フラックスシート122を配置することにより、最外層の高融点金属層2の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層2の酸化を効果的に防止し、速溶断性を維持、向上することができる。
なお、短絡素子110は、フラックスシート122に替えて、図21に示すように、ヒューズエレメント1の最外層にフラックス119aを塗布した後、フラックス119aの上に不織布やメッシュ状の生地を配置し、フラックス119aを含浸させてもよい。また、短絡素子110は、図22に示すように、フラックスシートに替えて、ヒューズエレメント1の最外層の全面に、繊維状物が混合されたフラックス119bを塗布してもよい。フラックス119bは繊維状物が混合されることにより粘性が高められ、高温環境下においても流動しにくく、ヒューズエレメント1の全面にわたって溶断時の酸化物除去及び濡れ性の向上を図ることができる。なお、フラックス119bに混合させる繊維状物としては、例えば不織布繊維、ガラス繊維等、絶縁性、耐熱性を備えた繊維が好適に用いられる。
なお、短絡素子110は、第1の電極113が、第3の電極115よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、短絡素子110は、より多くの溶融導体を第1、第2の電極113,114上に凝集させることができ、第1、第2の電極113,114間を確実に短絡させることができる(図24参照)。
また、第1〜第3の電極113,114,115は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができるが、少なくとも第1、第2の電極113,114の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜129が、公知のメッキ処理により形成されていることが好ましい。これにより、第1、第2の電極113,114の酸化を防止し、溶融導体を確実に保持させることができる。また、短絡素子110をリフロー実装する場合に、ヒューズエレメント1を接続するハンダあるいはヒューズエレメント1の外層を形成する第1又は第2の低融点金属層3,4が溶融することにより第1の電極113を溶食(ハンダ食われ)することを防ぐことができる。
また、第1〜第3の電極113〜115には、上述したヒューズエレメント1の溶融導体やヒューズエレメント1の接続材料117の流出を防止するガラス等の絶縁材料からなる流出防止部126が形成されている。
[カバー部材]
また、短絡素子110は、ヒューズエレメント1が設けられた絶縁基板111の表面111a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント1の飛散を防止するカバー部材116が取り付けられている。カバー部材116は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。短絡素子110は、ヒューズエレメント1がカバー部材116によって覆われるため、溶融金属がカバー部材116によって捕捉され、周囲への飛散を防止できる。
また、カバー部材116は、天面116aから絶縁基板111に向かって、少なくともフラックスシート122の側面まで延在する突起部116bを有している。カバー部材116は、突起部116bにより、フラックスシート122の側面が移動規制を受けるため、フラックスシート122の位置ずれを防ぐことが可能となる。すなわち、突起部116bは、フラックスシート122の大きさよりも所定のクリアランスを保持した大きさで、フラックスシート122を保持すべき位置に対応して設けられる。なお、突起部116bは、フラックスシート122の側面を周回して覆う壁面としてもよいし、部分的に突起するものであってもよい。
また、カバー部材116は、フラックスシート122と天面116aの間に所定の間隔をあけた構成とされている。これは、ヒューズエレメント1が溶融した際に、溶融したヒューズエレメント1がフラックスシート122を押し上げるためのクリアランスが必要だからである。
従って、カバー部材116は、カバー部材116の内部空間の高さ(天面116aまでの高さ)は、絶縁基板111の表面111a上の溶融したヒューズエレメント1の高さと、フラックスシート122の厚さの和よりも大きくなるように構成されている。
[短絡素子回路]
以上のような短絡素子110は、図23(A)(B)に示すような回路構成を有する。すなわち、短絡素子110は、第1の電極113と第2の電極114とが、正常時には絶縁され(図23(A))、発熱体112の発熱によりヒューズエレメント1が溶融すると、当該溶融導体を介して短絡するスイッチ123を構成する(図23(B))。そして、第1の外部接続電極113aと第2の外部接続電極114aは、スイッチ123の両端子を構成する。また、ヒューズエレメント1は、第3の電極115及び発熱体引出電極120を介して発熱体112と接続されている。
そして、短絡素子110は、電子機器等に組み込まれることにより、スイッチ123の両端子113a、114aが、当該電子機器の電流経路と接続され、当該電流経路を導通させる場合に、スイッチ123を短絡させ、当該電子部品の電流経路を形成する。
例えば、短絡素子110は、電子部品の電流経路上に設けられた電子部品とスイッチ123の両端子113a,114aとが並列に接続され、並列接続されている電子部品に異常が生じると、発熱体給電電極121aと第1の外部接続電極113a間に電力が供給され、発熱体112が通電することにより発熱する。この熱によりヒューズエレメント1が溶融すると、溶融導体は、図24に示すように、第1、第2の電極113,114上に凝集する。第1、第2の電極113,114は隣接して形成されているため、第1、第2の電極113,114上に凝集した溶融導体が結合し、これにより第1、第2の電極113,114が短絡する。すなわち、短絡素子110は、スイッチ123の両端子間が短絡され(図23(B))、異常を起こした電子部品をバイパスするバイパス電流経路を形成する。なお、ヒューズエレメント1が溶断することにより第1、第3の電極113,115間が溶断されるため、発熱体112への給電も停止される。
このとき、ヒューズエレメント1は、上述したように、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3及び第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4が積層されているため、過電流による自己発熱により、第2の低融点金属層4の融点から溶融を開始し、高融点金属層2を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント1は、第1、第2の低融点金属層3,4による高融点金属層2の浸食作用を利用することにより、高融点金属層2が溶融温度よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
[短絡素子の変形例]
なお、短絡素子110は、必ずしも、発熱体112を絶縁部材118によって被覆する必要はなく、発熱体112が絶縁基板111の内部に設置されてもよい。絶縁基板111の材料として熱伝導性に優れたものを用いることにより、発熱体112をガラス層等の絶縁部材118を介した場合と同等に加熱することができる。
また、短絡素子110は、上述したように発熱体112を絶縁基板111上の第1〜第3の電極113〜115の形成面側に形成する他にも、発熱体112が絶縁基板111の第1〜第3の電極113〜115の形成面と反対の面に設置されてもよい。発熱体112を絶縁基板111の裏面111bに形成することにより、絶縁基板111内に形成するよりも簡易な工程で形成することができる。なお、この場合、発熱体112上には、絶縁部材118が形成されると抵抗体の保護や実装時の絶縁性確保と言う意味で好ましい。
さらに、短絡素子110は、発熱体112が絶縁基板111の第1〜第3の電極113〜115の形成面上に設置されるとともに、第1〜第3の電極113〜115に併設されてもよい。発熱体112を絶縁基板111の表面に形成することにより、絶縁基板111内に形成するよりも簡易な工程で形成することができる。なお、この場合も、発熱体112上には、絶縁部材118が形成される事が好ましい。
[第4の電極、第2のヒューズエレメント]
また、本発明に係る短絡素子は、図25(A)(B)に示すように、第2の電極114と隣接する第4の電極124及び第2、第4の電極114,124間にわたって搭載される第2のヒューズエレメント125を形成してもよい。第2のヒューズエレメント125は、ヒューズエレメント1と同じ構成を有する。
また、短絡素子110は、図25(B)に示すように、フラックスシート122を、ヒューズエレメント1及び第2のヒューズエレメント125上にわたって搭載してもよく、図25(C)に示すように、ヒューズエレメント1と第2のヒューズエレメント125のそれぞれに搭載してもよい。あるいは、短絡素子110は、図25(D)に示すように、ヒューズエレメント1と第2のヒューズエレメント125のそれぞれにフラックス119aが塗布された後、不織布やメッシュ状の生地をヒューズエレメント1及び第2のヒューズエレメント125上にわたって搭載してもよく、あるいは図25(E)に示すように、不織布やメッシュ状の生地をヒューズエレメント1と第2のヒューズエレメント125のそれぞれに搭載してもよい。さらに、短絡素子110は、図25(F)に示すように、ヒューズエレメント1及び第2のヒューズエレメント125のそれぞれに、繊維状物が混合され粘性が高められたフラックス119bを塗布してもよい。
この短絡素子110では、ヒューズエレメント1及び第2のヒューズエレメント125が溶融することにより、当該溶融導体が第1、第2の電極113,114間に濡れ拡がり、第1、第2の電極113,114を短絡させる。図25に示す短絡素子110は、第4の電極124及び第2のヒューズエレメント125が設けられている他は、上述した構成と同じであるため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図25に示す短絡素子110においても、第1、第2の電極113,114は、第3、第4の電極115,124よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、短絡素子110は、より多くの溶融導体を第1、第2の電極113,114上に凝集させることができ、第1、第2の電極113,114間を確実に短絡させることができる。
[切替素子]
次いで、ヒューズエレメント1を用いた切替素子について説明する。図26(A)に切替素子130の平面図、及び図26(B)に切替素子130の断面図を示す。切替素子130は、絶縁基板131と、絶縁基板131に設けられた第1の発熱体132及び第2の発熱体133と、絶縁基板131に、互いに隣接して設けられた第1の電極134及び第2の電極135と、第1の電極134と隣接して設けられるとともに、第1の発熱体132に電気的に接続された第3の電極136と、第2の電極135と隣接して設けられるとともに、第2の発熱体133に電気的に接続された第4の電極137と、第4の電極137に隣接して設けられた第5の電極138と、第1、第3の電極134,136間に亘って設けられることにより電流経路を構成し、第1の発熱体132からの加熱により、第1、第3の電極134,136間の電流経路を溶断する第1のヒューズエレメント1Aと、第2の電極135から第4の電極137を経て第5の電極138に亘って設けられ、第2の発熱体133からの加熱により、第2、第4、第5の電極135,137,138間の電流経路を溶断する第2のヒューズエレメント1Bとを備える。そして、切替素子130は、絶縁基板131上に内部を保護するカバー部材139が取り付けられている。
絶縁基板131は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって方形状に形成される。その他、絶縁基板131は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
第1、第2の発熱体132,133は、上述した発熱体93と同様に、通電すると発熱する導電性を有する部材であって、発熱体93と同様に形成することができる。また、第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bは、上述したヒューズエレメント1と同じ構成を有する。
また、第1、第2の発熱体132,133は、絶縁基板131上において絶縁部材140に被覆されている。第1の発熱体132を被覆する絶縁部材140上には、第1、第3の電極134,136が形成され、第2の発熱体133を被覆する絶縁部材140上には、第2、第4、第5の電極135,137,138が形成されている。第1の電極134は、一方側において第2の電極135と隣接して形成されるとともに、絶縁されている。第1の電極134の他方側には第3の電極136が形成されている。第1の電極134と第3の電極135とは、第1のヒューズエレメント1Aが接続されることにより導通され、切替素子130の電流経路を構成する。また、第1の電極134は、絶縁基板131の側面に臨むキャスタレーションを介して絶縁基板131の裏面131bに設けられた第1の外部接続電極134aに接続されている。
また、第3の電極136は、絶縁基板131あるいは絶縁部材140に設けられた第1の発熱体引出電極141を介して第1の発熱体132と接続されている。また、第1の発熱体132は、第1の発熱体電極142及び絶縁基板131の側縁に臨むキャスタレーションを介して、絶縁基板131の裏面131bに設けられた第1の発熱体給電電極142aと接続されている。
第2の電極135の第1の電極134と隣接する一方側と反対の他方側には、第4の電極137が形成されている。また、第4の電極137の第2の電極135と隣接する一方側と反対の他方側には、第5の電極138が形成されている。第2の電極135、第4の電極137及び第5の電極138は、第2のヒューズエレメント1Bと接続されている。また、第2の電極135は、絶縁基板131の側面に臨むキャスタレーションを介して絶縁基板131の裏面131bに設けられた第2の外部接続電極135aと接続されている。
また、第4の電極137は、絶縁基板131あるいは絶縁部材140に設けられた第2の発熱体引出電極143を介して第2の発熱体133と接続されている。また、第2の発熱体133は、第2の発熱体電極144及び絶縁基板131の側縁に臨むキャスタレーションを介して、絶縁基板131の裏面131bに設けられた第2の発熱体給電電極144aと接続されている。
さらに、第5の電極138は、絶縁基板131の側面に臨むキャスタレーションを介して絶縁基板131の裏面に設けられた第5の外部接続電極138aと接続されている。
切替素子130は、第1の電極134から第3の電極136に跨って第1のヒューズエレメント1Aが接続され、第2の電極135から第4の電極137を介して第5の電極138に跨って第2のヒューズエレメント1Bが接続されている。第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bは、上述したヒューズエレメント1と同様に、高融点金属層2を備えることにより高温環境に対する耐性が向上されているため実装性に優れ、ハンダ等の接続材料145を介して第1〜第5の電極134〜138上に搭載された後、リフローはんだ付け等により容易に接続することができる。なお、ヒューズエレメント1A,1Bは、最下層に設けられた第1の低融点金属層3又は第2の低融点金属層4を接続材料として用いて、第1〜第5の電極134〜138上に接続してもよい。
[フラックスシート]
また、切替素子130は、高融点金属層2又は第1、第2の低融点金属層3,4の酸化防止と、溶断時の酸化物除去及びハンダの流動性向上のために、ヒューズエレメント1の表面や裏面にフラックスをコーティングしてもよい。また、図26に示すように、ヒューズエレメント1A,1B上の最外層の全面にフラックスシート146を配置してもよい。フラックスシート146は、上記フラックスシート87と同様に、流動体又は半流動体のフラックスをシート状の支持体に含浸、保持させたものであり、例えば不織布やメッシュ状の生地にフラックスを含浸させたものである。
フラックスシート146は、ヒューズエレメント1A,1Bの表面積よりも広い面積を有することが好ましい。これにより、ヒューズエレメント1A,1Bは、フラックスシート146によって完全に被覆され、溶融により体積が膨張した場合にも、確実にフラックスによる酸化物除去、及び濡れ性の向上による速溶断を実現することができる。
フラックスシート146を配置することにより、ヒューズエレメント1の実装時や切替素子130の実装時における熱処理工程においてもフラックスをヒューズエレメント1A,1Bの全面にわたって保持することができ、切替素子130の実使用時において、第1、第2の低融点金属層3,4(例えばハンダ)の濡れ性を高めるとともに、第1、第2の低融点金属が溶解している間の酸化物を除去し、高融点金属(例えばAg)への浸食作用を用いて速溶断性を向上させることができる。
また、フラックスシート146を配置することにより、最外層の高融点金属層2の表面に、Snを主成分とするPbフリーハンダ等の酸化防止膜を形成した場合にも、当該酸化防止膜の酸化物を除去することができ、高融点金属層2の酸化を効果的に防止し、速溶断性を維持、向上することができる。
なお、切替素子130は、フラックスシート146に替えて、図27に示すように、ヒューズエレメント1の最外層にフラックス148aを塗布した後、フラックス148aの上に不織布やメッシュ状の生地を配置し、フラックス148aを含浸させてもよい。また、切替素子130は、図28に示すように、フラックスシートに替えて、ヒューズエレメント1A,1Bの最外層の全面に、繊維状物が混合されたフラックス148bを塗布してもよい。フラックス148bは繊維状物が混合されることにより粘性が高められ、高温環境下においても流動しにくく、ヒューズエレメント1の全面にわたって溶断時の酸化物除去及び濡れ性の向上を図ることができる。なお、フラックス148bに混合させる繊維状物としては、例えば不織布繊維、ガラス繊維等、絶縁性、耐熱性を備えた繊維が好適に用いられる。
このとき、切替素子130は、フラックスシート146を、ヒューズエレメント1A及びヒューズエレメント1B上にわたって搭載してもよく、ヒューズエレメント1Aとヒューズエレメント1Bのそれぞれに搭載してもよい。あるいは、切替素子130は、ヒューズエレメント1Aとヒューズエレメント1Bのそれぞれにフラックス148aが塗布された後、不織布やメッシュ状の生地をヒューズエレメント1A及びヒューズエレメント1B上にわたって搭載してもよく、あるいは不織布やメッシュ状の生地をヒューズエレメント1Aとヒューズエレメント1Bのそれぞれに搭載してもよい。さらに、切替素子130は、ヒューズエレメント1A及びヒューズエレメント1Bのそれぞれに、繊維状物が混合され粘性が高められたフラックス148bを塗布してもよい。
なお、第1〜第5の電極134,135,136,137,138は、CuやAg等の一般的な電極材料を用いて形成することができるが、少なくとも第1、第2の電極134,135の表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜149が、公知のメッキ処理により形成されていることが好ましい。これにより、第1、第2の電極134,135の酸化を防止し、溶融導体を確実に保持させることができる。また、切替素子130をリフロー実装する場合に、第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bを接続するハンダあるいは第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bの外層を形成する低融点金属が溶融することにより第1、第2の電極134,135を溶食(ハンダ食われ)することを防ぐことができる。
また、第1〜第5の電極134〜138には、上述したヒューズエレメント1A,1Bの溶融導体やヒューズエレメント1A,1Bの接続材料145の流出を防止するガラス等の絶縁材料からなる流出防止部147が形成されている。
[カバー部材]
また、切替素子130は、ヒューズエレメント1A,1Bが設けられた絶縁基板131の表面131a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント1A,1Bの飛散を防止するカバー部材139が取り付けられている。カバー部材139は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。切替素子130は、ヒューズエレメント1A,1Bがカバー部材139によって覆われるため、溶融金属がカバー部材139によって捕捉され、周囲への飛散を防止できる。
また、カバー部材139は、天面139aから絶縁基板131に向かって、少なくともフラックスシート146の側面まで延在する突起部139bを有している。カバー部材139は、突起部139bにより、フラックスシート146の側面が移動規制を受けるため、フラックスシート146の位置ずれを防ぐことが可能となる。すなわち、突起部139bは、フラックスシート146の大きさよりも所定のクリアランスを保持した大きさで、フラックスシート146を保持すべき位置に対応して設けられる。なお、突起部139bは、フラックスシート146の側面を周回して覆う壁面としてもよいし、部分的に突起するものであってもよい。
また、カバー部材139は、フラックスシート146と天面139aの間に所定の間隔をあけた構成とされている。これは、ヒューズエレメント1A,1Bが溶融した際に、溶融したヒューズエレメント1A,1Bがフラックスシート146を押し上げるためのクリアランスが必要だからである。
従って、カバー部材139は、カバー部材139の内部空間の高さ(天面139aまでの高さ)は、絶縁基板131の表面131a上の溶融したヒューズエレメント1A,1Bの高さと、フラックスシート146の厚さの和よりも大きくなるように構成されている。
[切替素子回路]
以上のような切替素子130は、図29に示すような回路構成を有する。すなわち、切替素子130は、第1の電極134と第2の電極135とが、正常時には絶縁され、第1、第2の発熱体132,133の発熱により第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bが溶融すると、当該溶融導体を介して短絡するスイッチ150を構成する。そして、第1の外部接続電極134aと第2の外部接続電極135aは、スイッチ150の両端子を構成する。
また、第1のヒューズエレメント1Aは、第3の電極136及び第1の発熱体引出電極141を介して第1の発熱体132と接続されている。第2のヒューズエレメント1Bは、第4の電極137及び第2の発熱体引出電極143を介して第2の発熱体133と接続され、さらに第2の発熱体電極144を介して第2の発熱体給電電極144aと接続されている。すなわち、第2のヒューズエレメント1B及び第2のヒューズエレメント1Bが接続される第2の電極135、第4の電極137及び第5の電極138は、切替素子130の作動前においては第2のヒューズエレメント1Bを介して第2の電極135と第5の電極138との間を導通させ、第2のヒューズエレメント1Bが溶断されることにより第2の電極135と第5の電極138との間を遮断する保護素子として機能する。
そして、切替素子130は、第2の発熱体給電電極144aより第2の発熱体133に通電されると、図30に示すように、第2の発熱体133の発熱により第2のヒューズエレメント1Bが溶融し、第2、第4、第5の電極135,137,138にそれぞれ凝集する。これにより第2のヒューズエレメント1Bを介して接続されていた第2の電極135と第5の電極138とに亘る電流経路が遮断される。また、切替素子130は、第1の発熱体給電電極142aより第1の発熱体132に通電されると、第1の発熱体132の発熱により第1のヒューズエレメント1Aが溶融し、第1、第3の電極134,136にそれぞれ凝集する。これにより、切替素子130は、図31(A)(B)に示すように、第1の電極134と第2の電極135とに凝集した第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bの溶融導体が結合することにより、絶縁されていた第1の電極134と第2の電極135とを短絡させる。すなわち切替素子130は、スイッチ150を短絡させ、第2、第5の電極135,138間にわたる電流経路を、第1、第2の電極134,135間にわたる電流経路に切り替えることができる(図32)。
このとき、ヒューズエレメント1A,1Bは、上述したように、高融点金属層2よりも融点の低い第1の低融点金属層3及び第1の低融点金属層3よりも融点の低い第2の低融点金属層4が積層されているため、第1、第2の発熱体132,133の発熱により、第2の低融点金属層4の融点から溶融を開始し、高融点金属層2を浸食し始める。したがって、ヒューズエレメント1A,1Bは、第1、第2の低融点金属層3,4による高融点金属層2の浸食作用を利用することにより、高融点金属層2が溶融温度よりも低い温度で溶融され、速やかに溶断することができる。
なお、第1の発熱体132への通電は、第1のヒューズエレメント1Aが溶断することにより第1、第3の電極134,136間が遮断されるため、停止され、第2の発熱体133への通電は、第2のヒューズエレメント1Bが溶断することにより、第2、第4の電極135,137間及び第4、第5の電極137,138間が遮断されるため、停止される。
[第2の可溶導体の先溶融]
ここで、切替素子130は、第2のヒューズエレメント1Bが第1のヒューズエレメント1Aよりも先行して溶融することが好ましい。切替素子130は、第1の発熱体132と第2の発熱体133とが、別々に発熱されることから、通電のタイミングとして第2の発熱体133を先に発熱させ、その後に第1の発熱体132を発熱させることで、図30に示すように、第2のヒューズエレメント1Bを第1のヒューズエレメント1Aよりも先行して溶融させ、図31に示すように、確実に第1、第2の電極134,135上に、第1、第2のヒューズエレメント1A,1Bの溶融導体を凝集、結合させ、第1、第2の電極134,135を短絡させることができる。
また、切替素子130は、第2のヒューズエレメント1Bを、第1のヒューズエレメント1Aよりも幅狭に形成することにより、第2のヒューズエレメント1Bを第1のヒューズエレメント1Aよりも先に溶断するようにしてもよい。第2のヒューズエレメント1Bを幅狭に形成することにより、溶断時間を短くすることができるため、第2のヒューズエレメント1Bが第1のヒューズエレメント1Aよりも先行して溶融させることができる。
[電極面積]
また、切替素子130は、第1の電極134の面積を第3の電極136よりも広くし、第2の電極135の面積を第4、第5の電極137,138よりも広くすることが好ましい。溶融導体の保持量は、電極面積に比例して多くなるため、第1、第2の電極134,135の面積を第3、第4、第5の電極136,137,138よりも広く形成することにより、より多くの溶融導体を第1、第2の電極134,135上に凝集させることができ、第1、第2の電極134,135間を確実に短絡させることができる。
[切替素子の変形例]
なお、切替素子130は、必ずしも、第1、第2の発熱体132,133を絶縁部材140によって被覆する必要はなく、第1、第2の発熱体132,133が絶縁基板131の内部に設置されてもよい。絶縁基板131の材料として熱伝導性に優れたものを用いることにより、第1、第2の発熱体132,133は、ガラス層等の絶縁部材140を介した場合と同等に加熱することができる。
また、切替素子130は、第1、第2の発熱体132,133が絶縁基板131の第1〜第5の電極134,135,136,137,138の形成面と反対の裏面に設置されてもよい。第1、第2の発熱体132,133を絶縁基板131の裏面131bに形成することにより、絶縁基板131内に形成するよりも簡易な工程で形成することができる。なお、この場合、第1、第2の発熱体132,133上には、絶縁部材140が形成されると抵抗体の保護や実装時の絶縁性確保と言う意味で好ましい。
さらに、切替素子130は、第1、第2の発熱体132,133が絶縁基板131の第1〜第5の電極134,135,136,137,138の形成面上に設置されるとともに、第1〜第5の電極134〜138に併設されてもよい。第1、第2の発熱体132,133を絶縁基板131の表面131aに形成することにより、絶縁基板131内に形成するよりも簡易な工程で形成することができる。なお、この場合も、第1、第2の発熱体132,133上には、絶縁部材140が形成される事が望ましい。