JP2019026661A - リン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体およびその合成方法ならびに骨標的薬物輸送担体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体は、(a1)リン酸ジエステルまたはその塩の単位と、(b)エチニレン基(−C≡C−)を含むペンダント基を有するリン酸トリエステルの単位とを含有する。このようなリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体は、骨標的薬物輸送担体として利用することができる。
【選択図】図5
Description
ところで、本発明の第1局面に係るリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体の化学構造式は、下式(1)の通りである。
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されることはない。
(1)2−ブチノキシ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランの合成
先ず、300mL容量の三ツ口フラスコにシリンジで200mLの超脱水テトラヒドロフラン(THF)を加えた後に、その三ツ口フラスコの底部分を、−5℃〜−10℃の不凍液入りの容器に浸け、さらに三ツ口フラスコ中の超脱水テトラヒドロフランを羽根つき攪拌機で攪拌して超脱水テトラヒドロフランを十分に冷却した。
上述の精製物を重水に溶解させて重水溶液を調製した。その重水溶液を日本電子株式会社製の400MHz核磁気共鳴(NMR)装置にセットして測定を行ったところ、図1に示される1H−NMRスペクトルが得られた。この1H−NMRスペクトルからその精製物が2−ブチノキシ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランであることが同定された。
先ず、重合管に強力攪拌子を入れた後、その重合管に三方コックを取り付けた。なお、この三方コックの2つの口にはそれぞれダイアフラムポンプ、アルゴンガスタンクを接続した。残った一つの口をモノマー等の化合物の注入用の口として利用した。
上述の通りして得られたリン酸トリエステル共重合体を重水に溶解させて重水溶液を調製した。その重水溶液を日本電子株式会社製の400MHz核磁気共鳴(NMR)装置にセットして測定を行ったところ、図3に示される1H−NMRスペクトルが得られた。この1H−NMRスペクトルのピーク面積比からリン酸トリエステル共重合体中の2−メトキシ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン由来単位と2−ブチノキシ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン由来単位とのモル比率が94:6であることが判明した。また、ゲルクロマトグラフィー(GPC)法により同リン酸トリエステル共重合体の分子量および分散度(Mw/Mn)を測定したところ、その数平均分子量は0.87×104であり、その分散度は1.21であった。なお、このときの測定条件等は以下の通りであった。
・移動相流速:0.75mL/分
・カラム:PLgel 5μm MIXED−C(ポリマーラボラトリーズ社製)
・検出器:RI−2031(日本分光株式会社製)
・展開溶媒:クロロホルム(CHCl3)
上述の通りにして得られたリン酸トリエステル共重合体3.65gを水に溶解させた。そして、そのリン酸トリエステル共重合体水溶液をナスフラスコに移し、そのナスフラスコに30%テトラメチルアミン(TMA)水溶液8g加えた。そして、そのナスフラスコに攪拌子を入れた後にそのナスフラスコをセプタムで密栓した。それから攪拌子入りのナスフラスコをマグネティックスターラーの上に配設して、ナスフラスコの内容物を室温で24時間攪拌した。
上述の通りにして得られたリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体を少量の純水に溶かした後、そのリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えてそのリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体水溶液のpHを7.0に調整した。次に、そのpH調整済みのリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体水溶液を純水で6時間透析した。なお、このとき、透析膜としてSpectra/Por(登録商標)MWCO=3500を用いた。透析終了後にその濾液を凍結乾燥して目的のリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体を得た。なお、このときの化学反応は、以下の化学反応式(E)に示される通りである。
上述の通りして得られたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体を重水に溶解させて重水溶液を調製した。その重水溶液を日本電子株式会社製の400MHz核磁気共鳴(NMR)装置にセットして測定を行ったところ、図4に示される1H−NMRスペクトルが得られた。この1H−NMRスペクトルのピーク面積比からリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体中のリン酸ジエステル塩単位とリン酸トリエステル単位とのモル比率が94:6であることが判明した。また、ゲルクロマトグラフィー(GPC)法により同リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体の分子量および分散度(Mw/Mn)を測定したところ、その数平均分子量は1.09×104であり、その分散度は1.37であった。なお、このときの測定条件等は以下の通りであった。
・移動相流速:0.75mL/分
・カラム:Shodex SB803+SB806M(昭和電工株式会社製)
・検出器:RI−2031(日本分光株式会社製)
・展開溶媒:酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびエチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩の水溶液。なお、ここで、酢酸ナトリウムの濃度は0.1mol/Lであり、塩化ナトリウムの濃度は0.3mol/Lであり、エチレンジアミン四酢酸・二ナトリウム塩(EDTA・2Na)の濃度は1.0mmol/Lである。
(1)リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体の薬物輸送機能の検証
(1−1)蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体の合成
先ず、上述の通りにして得られたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体550mgを20体積%のt−ブタノール水溶液2.43mLに溶解させた。次に、その溶液に10mg/mLのCy5 Azide/ジメチルスルホキシド溶液(フナコシ株式会社製)220μLを加えた。次いで、その混合液にさらに2.6mol/Lのアルコルビン酸ナトリウム58.6μLおよび1.6mol/Lの硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)9.5μLを加えた。その後、その混合液を室温暗所で24時間攪拌した。そして、その混合液を純水で3日間透析した。なお、このとき、透析膜としてSpectra/Por(登録商標)MWCO=3500を用いた。透析終了後にその混合液を凍結乾燥して目的の蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体を得た。なお、このときの化学反応は、以下の化学反応式(F)に示される通りである。
(i)マウス頭部・背部の除毛
マウスの頭部および背部にEpilat除毛クリーム(クラシエホールディングス株式会社製)を塗布した後、同除毛クリームをマウスの頭部および背部の皮膚になじませながらぬるま湯をかけて同部位の除毛を行った。
先ず、KN−392 SPチューブ(株式会社夏目製作所製,ポリエチレン製,内径/外径=0.28/0.61mm)を1.2mの長さに切断した。次に、同SPチューブの先端に瞬間接着剤(東亜合成化学株式会社製アロンアルファ(登録商標))で26G,30G針を接着した。次いで、30G 1mLシリンジを用いて同SPチューブにリン酸緩衝生理食塩水を満たした。続いてマウスの尾静脈に、その針を刺して静脈ラインを作製した。なお、針が尾静脈に正常に刺さっているかは、リン酸緩衝生理食塩水を抵抗感なく尾静脈に注入することができるか否かで確認することができる。そして、その針を瞬間接着剤(東亜合成化学株式会社製アロンアルファ(登録商標))でマウスの皮膚に接着した。マウスの尾が動いて針が血管を突き破らないように針挿入口を医療用紙テープで固定した。
0.1mg/mLのCy5 Azide/ジメチルスルホキシド溶液(フナコシ株式会社製)をリン酸緩衝生理食塩水で1/100に希釈した。同希釈液の発色を、0.1mg/mLの蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体のリン酸緩衝生理食塩水溶液の発色と比較したところ、ほぼ同等であった。また、それらの溶液のIVIS像を比較したところ、両溶液の発色はほぼ同等であった。
励起/吸光フィルタEx/Emとして620/670nmを採用した。
上述のようにして準備した尾静脈ラインを通じて2匹のマウスに0.1mg/mLの蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体/リン酸緩衝生理食塩水溶液200μLおよび0.1mg/mLのCy5 Azide/ジメチルスルホキシド溶液150μLをそれぞれ投与した後、しばらくしてからマウスの尾骨のIVIS像を得た(in vivo観察)。それらのIVIS像を図5に示す。図5の上側のIVIS像は、0.1mg/mLの蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体/リン酸緩衝生理食塩水溶液を投与したマウスの尾骨のIVIS像であり、図5の下側のIVIS像は、0.1mg/mLのCy5 Azide/ジメチルスルホキシド溶液を投与したマウスの尾骨のIVIS像である。両図から明らかなように、0.1mg/mLの蛍光化リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体/リン酸緩衝生理食塩水溶液を投与したマウスの尾骨には蛍光の発光が認められるが、0.1mg/mLのCy5 Azide/ジメチルスルホキシド溶液を投与したマウスの尾骨には蛍光の発光が認められなかった。すなわち、リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体は骨に特異的に吸着する能力を有することが立証された。
(2−1)ヒト血小板貧血漿の調製
真空採血管(ニプロ株式会社製ネオチューブNP−HE0909)を用いてヒト新鮮血を9mL採取した。そして、このヒト新鮮血を遠沈管に加えた後にさらに3.8質量%のクエン酸三ナトリウムを体積比で1/10加えた。そして、この遠沈管を遠心分離機にセットして遠心分離機を12,000rpmで15分間運転させた。遠沈管内の内容物の上澄みだけを回収し、ヒト血小板貧血漿を得た。
測定用キュベットに攪拌子を投入した後、その測定用キュベットに、上述の通りにして得られたヒト血小板貧血漿480μL、0.315mol/Lの塩化カルシウム(CaCl2)水溶液9.51μL、10U/mLのThrombin溶液50.5μLを加えた。そして、この測定用キュベットをマグネティックスターラーの上に配設して、測定用キュベットの内容物を37℃で15分間攪拌した。なお、この試験では、このようにして2つの測定用キュベットが用意された。次に、一方の測定用キュベットに50mmol/Lのリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体(上述の通りにして得られたもの)を60μL加え、もう一方の測定用キュベットに50mmol/Lのポリリン酸(バイオエネックス株式会社製,平均鎖長60−70)を60μL加えた。なお、両液共に終濃度は5mmol/Lであった。なお、この液の写真を図7に示した。そして、それらの測定用キュベットをマグネティックスターラーの上に配設して、測定用キュベットの内容物を室温で10分間攪拌した後にその様子を観察したところ、ポリリン酸の添加系ではその液が懸濁したが(図8参照)、リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体の添加系では液の懸濁は観察されなかった(図9参照)。すなわち、ポリリン酸の添加系ではその液中で血栓が形成されたが、リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体の添加系では血栓が形成されることはなかった。
「Yasuhiko Iwasaki et al.、”Comparative physicochemical properties and cytotoxicity of polyphosphoester ionomers with bisphosphonates”、Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition、[online]、英国、Taylor & Francis、2012年8月8日発行、第24巻、第7号、p.882−895、インターネット(URL: http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/09205063.2012.710823)」では、「化学構造式(4)に示されるリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体のxとyとの比すなわちリン酸ジエステル塩単位とリン酸トリエステル単位とのモル比」と、「骨吸着性および生体適合性」との関係性が報告されている。この文献では、xが大きくなるほど、すなわちリン酸ジエステル塩単位が増えるほど、骨吸着性が良好になると報告されていると共に、リン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体はxとyとの比に寄らず良好な生体適合性を示すことが報告されている。上述の通りにして合成されたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体は、同文献に示されるリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体と構造的に類似しており、同様の物性を示すものと思われる。したがって、上述の通りにして合成されたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体も、良好な骨吸着性および生体適合性を示すものと推察される。
「Sujit Kootala et al.、Anti-Resorptive Functions of Poly(ethylene sodium phosphate) on Human Osteoclasts、Macromolecular Bioscience、[online]、アメリカ合衆国、John Wiley & Sons, Inc.、2015年7月29日発行、第15巻、第12号、p.1634−1640、インターネット(URL: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mabi.201500166/abstract)」では、ポリリン酸ジエステル塩が破骨細胞の活性を抑制することが報告されている。上述の通りにして合成されたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体は、同文献に示されるポリリン酸ジエステル塩と構造的に類似しており、同様の物性を示すものと思われる。したがって、上述の通りにして合成されたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体も、良好な破骨細胞活性抑制効果を示すものと推察される。よって、上述の通りにして合成されたリン酸ジエステル塩−リン酸トリエステル共重合体は、骨の改質効果も有するものと推察される。
Claims (3)
- (a1)リン酸ジエステルまたはその塩の単位と、(b0)エチニレン基(−C≡C−)を含むペンダント基を有するリン酸トリエステルの単位とを含有するリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体。
- (a0)アルコキシ基を有するリン酸トリエステル単位と、(b0)エチニレン基(−C≡C−)を含むペンダント基を有するリン酸トリエステル単位とを含有するリン酸トリエステル共重合体の水溶液にトリメチルアミンを加えた後、その混合液にプロトンを接触させることによって、(a2)リン酸ジエステル単位と、(b0)エチニレン基(−C≡C−)を含むペンダント基を有するリン酸トリエステル単位を含有するリン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体を合成する、リン酸ジエステル−リン酸トリエステル共重合体の合成方法。
- (a3)リン酸ジエステル塩単位と、(b0)エチニレン基(−C≡C−)を含むペンダント基を有するリン酸トリエステル単位とを含有するリン酸エステル共重合体を備える、骨標的薬物輸送担体。
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