以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
〔ジルコニア成形体の製造方法〕
歯科材料形成用のジルコニア成形体を製造するための本発明の方法は、ジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物を用いて光造形する工程を有し、ジルコニア粒子の平均一次粒子径が30nm以下であり、ジルコニア粒子の単分散度が50%以上である。
・ジルコニア粒子
使用されるジルコニア粒子の平均一次粒子径は、高い透光性を有するジルコニア焼結体を製造することができると共に、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、30nm以下であり、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であってもよく、また、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。なお、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、例えば、ジルコニア粒子(一次粒子)を透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影し、得られた画像上の任意の粒子100個について各粒子の粒子径(最大径)を測定し、それらの平均値として求めることができる。
また、使用されるジルコニア粒子は、透光性により優れたジルコニア焼結体が得られることなどから、50nm以上の一次粒子の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。当該含有量は、例えばゼータ電位測定装置などによって測定することができる。
本発明では、光造形に供される上記組成物において、ジルコニア粒子の単分散度(凝集せずに一次粒子として単分散しているジルコニア粒子の個数の割合)が50%以上であることが必要である。これにより、所望の形状を有すると共に、緻密なジルコニア焼結体を与えることができて透光性が高く審美性に優れた歯科材料とすることのできるジルコニア成形体を簡便に得ることができる。このような観点から、当該単分散度は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
光造形に供される上記組成物において、ジルコニア粒子の単分散度が上記範囲内にあることにより、緻密なジルコニア焼結体を与えることができて透光性が高く審美性に優れた歯科材料とすることのできるジルコニア成形体が得られる理由は必ずしも定かではないが、以下のように考えることができる。
すなわち、一般に、光造形によって得られたジルコニア成形体では、ジルコニア粒子が光重合した重合体中に分散しており、当該ジルコニア成形体を仮焼ないし焼結する過程で重合体が焼却され消失するにしたがって、重合体中に分散していたジルコニア粒子同士が接近していき、最終的には接触して密な凝集状態をとると考えられる。上記光造形において、本発明のように、ジルコニア粒子の単分散度の高い組成物を用いると、ジルコニア粒子の単分散度の高いジルコニア成形体が得られ、そしてこのようなジルコニア成形体を仮焼ないし焼結すると、ジルコニア粒子のより均一な凝集状態を達成することができ、残りの焼結過程においてより均一な結晶成長が進行し、結果として、緻密で透光性の高いジルコニア焼結体、ひいては審美性に優れた人工歯等の歯科材料が得られるものと考えられる。一方、上記光造形において、ジルコニア粒子の単分散度の低い組成物を用いると、ジルコニア粒子の単分散度の低いジルコニア成形体、言い換えれば、光重合した重合体中により多くのジルコニア粒子が既に凝集した状態で存在するジルコニア成形体となり、このようなジルコニア成形体を仮焼ないし焼結すると不均一な凝集状態が生じ、これが結晶の均一な成長を妨げ、結果として、得られるジルコニア焼結体の緻密性や透光性が低下するものと考えられる。
光造形に供される組成物におけるジルコニア粒子の単分散度は、例えば、当該組成物を重合硬化させた硬化物から、厚さ200nmの薄片を切り出し、当該薄片を透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影し、得られた画像から求めることができる。透過型電子顕微鏡(TEM)の倍率は、ジルコニア粒子の含有量や一次粒子径などにもよるが、通常は、5万倍以上、好ましくは10万倍以上とすればよい。撮影された視野中の規定された領域に存在する全てのジルコニア粒子について、全てのジルコニア粒子の一次粒子の個数をX個とし、このうち、粒子同士が接触して凝集することなく、一次粒子として単分散しているジルコニア粒子の個数をY個とし、以下の式によって単分散度を求めることができる。
単分散度(%) = 100 × Y/X
なお、Xが200個以上となるように撮影された上記視野中の領域を規定することが望ましい。当該単分散度は、より具体的には後述する実施例に記載された方法によって求めることができる。
使用されるジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量は、目的とするジルコニア焼結体におけるイットリアの含有量と同じものとすることができる。透光性および強度により優れたジルコニア焼結体が得られることなどから、ジルコニア粒子におけるイットリアの含有量は、例えば2モル%以上とすることができ、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることがより好ましく、4.5モル%以上であることがさらに好ましく、5モル%以上、さらには5.5モル%以上であってもよく、また、9モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることがさらに好ましい。なお、ジルコニア粒子におけるイットリアの含有量は、ジルコニアとイットリアの合計モル数に対するイットリアのモル数の割合(モル%)を意味する。
ジルコニア粒子の調製方法に特に制限はなく、例えば、粗粒子を粉砕して微粉化するブレークダウンプロセス、原子ないしイオンから核形成・成長過程により合成するビルディングアッププロセスなどを採用することができる。このうち、高純度の微細なジルコニア粒子を得るためには、ビルディングアッププロセスが好ましい。
ブレークダウンプロセスは、例えば、ボールミルやビーズミルなどで粉砕することにより行うことができる。この際、微小サイズの粉砕メディアを使用することが好ましく、例えば、100μm以下の粉砕メディアを使用することが好ましい。また粉砕後に分級することが好ましい。
一方、ビルディングアッププロセスとしては、例えば、蒸気圧の高い金属イオンの酸素酸塩または有機金属化合物を気化させながら熱分解して酸化物を析出させる気相熱分解法;蒸気圧の高い金属化合物の気体と反応ガスとの気相化学反応により合成を行う気相反応法;原料を加熱し気化させ、所定圧力の不活性ガス中で急冷することにより蒸気を微粒子状に凝縮させる蒸発濃縮法;融液を小液滴として冷却固化して粉末とする融液法;溶媒を蒸発させ液中濃度を高め過飽和状態にして析出させる溶媒蒸発法;沈殿剤との反応や加水分解により溶質濃度を過飽和状態とし、核生成−成長過程を経て酸化物や水酸化物等の難溶性化合物を析出させる沈殿法などが挙げられる。
沈殿法はさらに、化学反応により沈殿剤を溶液内で生成させ、沈殿剤濃度の局所的不均一をなくす均一沈殿法;液中に共存する複数の金属イオンを沈殿剤の添加によって同時に沈殿させる共沈法;金属塩溶液、金属アルコキシド等のアルコール溶液から加水分解によって酸化物または水酸化物を得る加水分解法;高温高圧の流体から酸化物または水酸化物を得るソルボサーマル合成法などに細別され、ソルボサーマル合成法は、水を溶媒として用いる水熱合成法、水や二酸化炭素等の超臨界流体を溶媒として用いる超臨界合成法などにさらに細別される。
いずれのビルディングアッププロセスについても、より微細なジルコニア粒子を得るために析出速度を速めることが好ましい。また得られたジルコニア粒子は分級することが好ましい。
ビルディングアッププロセスにおけるジルコニウム源としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、アルコキシドなどを用いることができ、具体的には、オキシ塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニルなどを用いることができる。
また、ジルコニア粒子に含まれるイットリアの含有量を上記範囲とするためにジルコニア粒子の製造過程でイットリアを配合することができ、例えばジルコニア粒子にイットリアを固溶させてもよい。イットリウム源としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、アルコキシドなどを用いることができ、具体的には、塩化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウムなどを用いることができる。
ジルコニア粒子は、必要に応じて、酸性基を有する有機化合物;飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等の脂肪酸アミド;シランカップリング剤(有機ケイ素化合物)、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物などの公知の表面処理剤で予め表面処理されていてもよい。ジルコニア粒子を表面処理すると、光造形に供される組成物の過度の粘度上昇を抑制することができ、また、後述するようなジルコニア粒子を含むスラリーにおけるジルコニア粒子と分散媒との混和性やジルコニア粒子と重合性単量体との混和性を調整することができて、ジルコニア粒子の単分散度を向上させることができる場合がある。上記の表面処理剤の中でも、粘度上昇をより効果的に抑制することができ、分散媒や重合性単量体との混和性にも優れ、また、ジルコニア粒子と重合性単量体との化学結合性を高めて得られるジルコニア成形体の強度を向上させることができることなどから、酸性基を有する有機化合物が好ましい。
酸性基を有する有機化合物としては、例えば、リン酸基、カルボン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する有機化合物が挙げられ、これらの中でも、リン酸基を少なくとも1個有するリン酸基含有有機化合物、カルボン酸基を少なくとも1個有するカルボン酸基含有有機化合物が好ましく、リン酸基含有有機化合物がより好ましい。ジルコニア粒子は1種の表面処理剤で表面処理されていてもよいし、2種以上の表面処理剤で表面処理されていてもよい。ジルコニア粒子を2種以上の表面処理剤で表面処理する場合には、それによる表面処理層は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理層であってもよいし、表面処理層が複数積層した複層構造の表面処理層であってもよい。
リン酸基含有有機化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、およびこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
カルボン酸基含有有機化合物としては、例えば、コハク酸、シュウ酸、オクタン酸、デカン酸、ステアリン酸、ポリアクリル酸、4−メチルオクタン酸、ネオデカン酸、ピバリン酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,2−ジメチル吉草酸、2,2−ジエチル酪酸、3,3−ジエチル酪酸、ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸(通称「MEEAA」)、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(通称「MEAA」)、コハク酸モノ[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エステル、マレイン酸モノ[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エステル、グルタル酸モノ[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エステル、マロン酸、グルタル酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の、上記以外の酸性基を少なくとも1個有する有機化合物としては、例えば、国際公開第2012/042911号などに記載のものを用いることができる。
飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。
シランカップリング剤(有機ケイ素化合物)としては、例えば、R1 nSiX4-nで表される化合物などが挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換または無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子または水素原子であり、nは0〜3の整数であり、ただし、R1およびXが複数存在する場合は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい)。
シランカップリング剤(有機ケイ素化合物)の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等〕などが挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」との表記は、メタクリロイルとアクリロイルの両者を包含する意味で用いられる。
これらの中でも、官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどが挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物などが挙げられる。
表面処理の具体的な方法に特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、例えば、ジルコニア粒子を激しく撹拌しながら上記の表面処理剤をスプレー添加する方法や、適当な溶剤にジルコニア粒子と上記の表面処理剤とを分散または溶解させた後、溶剤を除去する方法などを採用することができる。溶剤は後述するような有機溶剤であってもよい。また、ジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物に上記の表面処理剤を添加して撹拌・分散する方法を採用してもよい。また、ジルコニア粒子と上記の表面処理剤とを分散または溶解させた後、還流や高温高圧処理(オートクレーブ処理等)をしてもよい。
光造形に供される組成物におけるジルコニア粒子の含有量は、後の焼結性の観点や、また本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、可及的に多いほうが望ましく、具体的には、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。一方で、光造形法では、その積層成形の原理から、当該組成物の粘度がある一定の範囲内にあることが望ましく、そのため、上記組成物におけるジルコニア粒子の含有量は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。当該組成物の粘度の調整は、容器の下側から該容器の底面を通して光を照射することにより層を硬化させてジルコニア成形体を一層ずつ順次形成していく規制液面法を実施する場合に、硬化した層を一層分だけ上昇させて、当該硬化した層の下面と容器の底面との間に次の層を形成するための組成物を円滑に流入させるために特に重要になることがある。
上記組成物の具体的な粘度としては、25℃での粘度として、20,000mPa・s以下であることが好ましく、10,000mPa・s以下であることがより好ましく、5,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、また、100mPa・s以上であることが好ましい。当該組成物において、ジルコニア粒子の含有量が高いほど粘度が上昇する傾向があるため、用いる光造形装置の性能などに合わせて、光造形する際の速度と得られるジルコニア成形物の精度とのバランスなども勘案しながら、上記組成物におけるジルコニア粒子の含有量と粘度とのバランスを適宜調整することが好ましい。なお、当該粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
・重合性単量体
使用される重合性単量体の種類に特に制限はなく、単官能性の(メタ)アクリレート、単官能性の(メタ)アクリルアミド等の単官能性の重合性単量体、および、二官能性の芳香族化合物、二官能性の脂肪族化合物、三官能性以上の化合物等の多官能性の重合性単量体のうちのいずれであってもよい。重合性単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体が好ましく、(メタ)アクリル系単量体がより好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。また光造形法を効率よく実施するなどの観点から、重合性単量体は多官能性の重合性単量体であることが好ましい。
単官能性の(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン等の官能基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
単官能性の(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
これらの単官能性の重合性単量体の中でも、重合性が優れる点で、(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
二官能性の芳香族化合物としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。これらの中でも、重合性や得られるジルコニア成形体の強度が優れる点で、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンの中でも、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6である化合物(通称「D−2.6E」))が好ましい。
二官能性の脂肪族化合物としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)などが挙げられる。これらの中でも、重合性や得られるジルコニア成形体の強度が優れる点で、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「TEGDMA」)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。
三官能性以上の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。これらの中でも、重合性や得られるジルコニア成形体の強度が優れる点で、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンが好ましい。
光造形に供される組成物における重合性単量体の含有量は、光造形をより効率的に行うことができるなどの観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
・光重合開始剤
ジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物を用いて光造形する過程で、当該組成物中の重合性単量体が重合して組成物が局所的に硬化することにより、目的とするジルコニア成形体が得られる。当該組成物の硬化は光重合開始剤を用いて行うことが好ましく、当該組成物は光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。光重合開始剤の種類に特に制限はなく、一般工業界で使用されている光重合開始剤から適宜選択して使用することができ、中でも歯科用途に用いられている光重合開始剤が好ましい。
具体的な光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、チオキサントン類(第4級アンモニウム塩等の塩を含む)、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類およびα−ジケトン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、紫外領域(近紫外領域を含む)および可視光領域の双方での光硬化性に優れ、光造形法によって所望の形状を有するジルコニア成形体をより効率的に製造することができ、特に、Arレーザー、He−Cdレーザー等のレーザー;ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード(LED)、水銀灯、蛍光灯等の照明等のいずれの光源を用いても十分に光造形を行うことができる。
上記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(通称「TPO」)、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩などが挙げられる。
上記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物などを用いることもできる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩が好ましい。
α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、特に可視光領域の光源を使用する場合などにおいて、カンファーキノンが好ましい。
光造形に供される組成物における光重合開始剤の含有量は、使用される光重合開始剤の種類などにもよるが、光造形の効率などの観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
・蛍光剤
蛍光剤を含む組成物(ジルコニア粒子、重合性単量体および蛍光剤を含む組成物)を用いると、蛍光性を有するジルコニア焼結体を容易に得ることができる。このような観点から、光造形に供される組成物は蛍光剤を含むことが好ましい。
使用される蛍光剤の種類に特に制限はなく、いずれかの波長の光で蛍光を発することのできるもののうちの1種または2種以上を用いることができる。このような蛍光剤としては金属元素を含むものが挙げられる。当該金属元素としては、例えば、Ga、Bi、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tmなどが挙げられる。蛍光剤はこれらの金属元素のうちの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。これらの金属元素の中でも、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、Ga、Bi、Eu、Gd、Tmが好ましく、Bi、Euがより好ましい。使用される蛍光剤としては、例えば、上記金属元素の酸化物、水酸化物、酢酸塩、硝酸塩などが挙げられる。また蛍光剤は、Y2SiO5:Ce、Y2SiO5:Tb、(Y,Gd,Eu)BO3、Y2O3:Eu、YAG:Ce、ZnGa2O4:Zn、BaMgAl10O17:Euなどであってもよい。
蛍光剤の使用量に特に制限はなく、蛍光剤の種類や最終的に得られるジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、最終的に得られるジルコニア焼結体を歯科材料として使用するなどの観点から、組成物における蛍光剤の含有量として、ジルコニアの質量に対して蛍光剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。当該含有量が上記下限以上であることにより、ヒトの天然歯と比較しても蛍光性に劣ることのないジルコニア焼結体が得られ、また、当該含有量が上記上限以下であることにより、ジルコニア焼結体における透光性や強度の低下を抑制することができる。
光造形に供される組成物は、着色剤および/または透光性調整剤をさらに含んでいてもよい。当該組成物が着色剤および/または透光性調整剤をさらに含むことにより、これらの成分を含むジルコニア成形体、ひいてはこれらの成分を含むジルコニア仮焼体やジルコニア焼結体が得られる。
ジルコニア焼結体が着色剤を含むことにより着色されたジルコニア焼結体となる。上記組成物が含むことのできる着色剤の種類に特に制限はなく、セラミックスを着色するために一般的に使用される公知の顔料や、公知の歯科用の液体着色剤などを用いることができる。着色剤としては金属元素を含むものなどが挙げられ、具体的には、鉄、バナジウム、プラセオジウム、エルビウム、クロム、ニッケル、マンガン等の金属元素を含む酸化物、複合酸化物、塩などが挙げられる。また市販されている着色剤を用いることもでき、例えば、Zirkonzahn社製のPrettau Colour Liquidなどを用いることもできる。上記組成物は1種の着色剤を含んでいてもよいし、2種以上の着色剤を含んでいてもよい。
着色剤の使用量に特に制限はなく、着色剤の種類や最終的に得られるジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、最終的に得られるジルコニア焼結体を歯科材料として使用するなどの観点から、組成物における着色剤の含有量として、ジルコニアの質量に対して着色剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下、さらには0.05質量%以下であってもよい。
上記組成物が含むことのできる透光性調整剤としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、ジルコン、リチウムシリケート、リチウムジシリケートなどが挙げられる。上記組成物は1種の透光性調整剤を含んでいてもよいし、2種以上の透光性調整剤を含んでいてもよい。
透光性調整剤の使用量に特に制限はなく、透光性調整剤の種類や最終的に得られるジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、最終的に得られるジルコニア焼結体を歯科材料として使用するなどの観点から、組成物における透光性調整剤の含有量として、ジルコニアの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。
・有機溶剤
光造形に供される組成物は有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤を含むことにより当該組成物の粘度を調整することができる。使用される有機溶剤の種類に特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(通称「PGMEA」)等の変性エーテル類(好ましくはエーテル変性エーテル類および/またはエステル変性エーテル類、より好ましくはエーテル変性アルキレングリコール類および/またはエステル変性アルキレングリコール類)を含む);酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ヘキサン、トルエン等の炭化水素;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、生体に対する安全性と、除去の容易さの双方を勘案すると、有機溶剤は水溶性有機溶剤であることが好ましく、具体的には、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、テトラヒドロフランがより好ましい。なお、光造形に供される組成物が有機溶剤を含む場合、光造形後に溶剤を除去するための乾燥を行うことが好ましい。
光造形に供される組成物における有機溶剤の含有量は、粘度を適切な範囲にするなどの観点から、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
・他の成分
光造形に供される組成物は、上記したジルコニア粒子、重合性単量体、光重合開始剤、蛍光剤、着色剤、透光性調整剤および有機溶剤以外の他の成分のうちの1種または2種以上をさらに含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、バインダー、可塑剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、pH調整剤、潤滑剤などが挙げられる。また、酸化防止剤、増粘剤、レべリング剤などであってもよい。このような他の成分を含むことにより、ジルコニア粒子の単分散度を向上させることができる場合がある。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル系バインダー、ワックス系バインダー、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、エチルセルロースなどが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジブチルフタル酸などが挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム(クエン酸三アンモニウム等)、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル共重合体樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸、ベントナイト、カルボキシメチルセルロース、アニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等など)、非イオン系界面活性剤、オレイングリセリド、アミン系界面活性剤、オリゴ糖アルコールなどが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、アルキルエーテル、フェニルエーテル、ソルビタン誘導体、アンモニウム塩などが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、アルコール、ポリエーテル、ポリエチレングルコール、シリコーン、ワックスなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩(水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化アンモニウムを含む)、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
潤滑剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキレートエーテル、ワックスなどが挙げられる。
・ジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物の調製
光造形に供されるジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば、ジルコニア粒子を含む粉末と重合性単量体とを混合することにより得ることができるが、ジルコニア粒子の単分散度を向上させることができることなどから、ジルコニア粒子を含むスラリーと重合性単量体とを混合する工程を有する方法により調製することが好ましい。
重合性単量体と混合される上記ジルコニア粒子を含むスラリーは、上記したブレークダウンプロセスやビルディングアッププロセスを経て得られるものであってもよいし、市販のものであってもよい。
重合性単量体と混合される上記ジルコニア粒子を含むスラリーは、分散媒が水であるスラリーであってもよいが、ジルコニア粒子の単分散度を向上させることができることなどから、有機溶剤など、水以外の分散媒のスラリーであることが好ましい。当該有機溶剤としては、光造形に供される組成物が含むことのできる有機溶剤として上記したものを用いることができる。
分散媒における上記有機溶剤の含有量は、ジルコニア粒子の単分散度を向上させることができることなどから、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
水以外の分散媒のスラリーは、分散媒が水であるスラリーに対して、分散媒を置換することにより得ることができる。分散媒の置換方法に特に制限はなく、例えば、分散媒が水であるスラリーに水以外の分散媒(有機溶剤等)を添加した後、水を留去する方法を採用することができる。水の留去においては、水以外の分散媒の一部または全部が共に留去されてもよい。当該水以外の分散媒の添加および水の留去は複数回繰り返してもよい。また、分散媒が水であるスラリーに水以外の分散媒を添加した後、分散質を沈殿させる方法を採用することもできる。さらに、分散媒が水であるスラリーに対して、分散媒を特定の有機溶剤で置換した後、さらに別の有機溶剤で置換してもよい。
なお、光造形に供される組成物に蛍光剤を含ませる場合には、当該蛍光剤は、水以外の分散媒のスラリーに対して添加してもよいし、分散媒を置換する前の分散媒が水であるスラリーに対して添加してもよい。同様に、光造形に供される組成物に着色剤および/または透光性調整剤を含ませる場合には、水以外の分散媒のスラリーに対して添加してもよいし、分散媒を置換する前の分散媒が水であるスラリーに対して添加してもよい。
蛍光剤の添加方法に特に制限はなく、粉末状の蛍光剤を添加してもよいが、ジルコニア粒子を含むスラリー(分散媒は水であっても上記有機溶剤であってもよい)と液体状態の蛍光剤とを混合することにより行うことが好ましい。これにより、粗大な粒子の混入が防止されるなどして、蛍光剤を含むにもかかわらず、透光性および強度により優れたジルコニア焼結体を得ることができる。液体状態の蛍光剤としては、例えば、上記蛍光剤の溶液や分散体などを用いることができ、蛍光剤の溶液が好ましい。当該溶液の種類に特に制限はなく、例えば、水溶液が挙げられる。当該水溶液は、希硝酸溶液、希塩酸溶液などであってもよく、使用される蛍光剤の種類などに応じて適宜選択することができる。着色剤および/または透光性調整剤についても、それぞれ、粉末状のものを添加してもよいが、溶液や分散体などの液体状態でジルコニア粒子を含むスラリーと混合することが好ましい。
重合性単量体と混合される上記ジルコニア粒子を含むスラリーは、還流処理、水熱処理等の熱や圧力による分散処理が施されたものであってもよい。また、重合性単量体と混合される上記ジルコニア粒子を含むスラリーは、ロールミル、コロイドミル、高圧噴射式分散機、超音波分散機、振動ミル、遊星ミル、ビーズミル等による機械的分散処理が施されたものであってもよい。上記各処理は、1つのみ採用してもよいし、2種以上採用してもよい。
ジルコニア粒子を含むスラリーと重合性単量体とを混合する際の混合方法に特に制限はなく、公知の方法を適宜採用することができる。また混合後には、必要に応じて、混合に供された上記スラリーが含む分散媒の一部または全部を留去等により除去してもよい。
・光造形工程
本発明のジルコニア成形体の製造方法では、上記したジルコニア粒子および重合性単量体を含む組成物を用いて光造形をする工程を有する。光造形の具体的な方法に特に制限はなく、公知の方法を適宜採用して光造形することができる。例えば、光造形装置を用い、液状の組成物を紫外線、レーザー等で光重合することで所望の形状を有する各層を順次形成していくことによって目的とするジルコニア成形体を得る方法などを採用することができる。
光造形法のより具体的な例としては、例えば、自由液面法、規制液面法などが挙げられ、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、規制液面法が好ましい。
自由液面法では、光造形に供される組成物を収容した容器の上側から組成物に光を照射することにより局所的に層を硬化させてジルコニア成形体を一層ずつ順次形成していく。この過程において、容器に収容した組成物の液面近傍に形成された硬化した層を一層分だけ組成物中に沈降させて、当該硬化した層の上に次の層を形成するための組成物を、必要に応じてリコーターなども使用して配置し、配置した当該組成物に光を照射する操作を繰り返す。
一方、規制液面法では、光造形に供される組成物を収容した容器の下側から該容器の底面を通して、組成物に光を照射することにより局所的に層を硬化させてジルコニア成形体を一層ずつ順次形成していく。この過程において、硬化した層を一層分だけ上昇させて、当該硬化した層の下面と容器の底面との間に次の層を形成するための組成物を流入させ、流入した当該組成物に光を照射する操作を繰り返す。
自由液面法および規制液面法のいずれにおいても、目的とする人工歯等の歯科材料の3次元形状に対応した3次元CADデータに基づく一層毎のスライスデータに従って光を照射することで、所望の形状を有するジルコニア成形体を製造することができる。なお、ジルコニア成形体の形状(サイズを含む)は、その後の仮焼や焼結の際の収縮も考慮して決定することが好ましい。
規制液面法に使用される容器としては、底面の少なくとも一部が光学的に透明であるものを用いることができる。当該容器は、底面の全体が光透過性材料から形成されていてもよいし、底面の周縁部分が光を透さない材料から形成されると共に当該周縁部分に包囲された中央部分が光透過性材料から形成されていてもよく、目的とする歯科材料のサイズなどに応じて、容器の底面における光学的に透明な部分の面積を決めることができる。上記光透過性材料としては、例えば、透明なガラス、透明なプラスチックなどが挙げられる。
自由液面法および規制液面法のいずれにおいても、光造形に使用される光の種類に特に制限はなく、光造形に供される組成物中の各成分の種類などに応じて適宜選択することができるが、所望の形状を有するジルコニア成形体をより精度よく製造することができることなどから、当該光は、波長が300〜450nmの紫外線ないし可視光線が好ましい。その際の光源としては、例えば、各種レーザー(例えば、紫外線を発生する半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザー、紫外線LEDレーザー(発光ダイオード)、波長が380〜450nmの光を発射するLEDレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ、紫外線蛍光灯などが挙げられる。これらのうち、400nm前後(一般には380〜410nm程度)の波長の光を発射するLEDレーザーまたはLEDランプが、装置の簡便性、経済性、保守性などの観点から特に好ましい。
自由液面法および規制液面法のいずれにおいても、組成物に光を照射して局所的に層を硬化させるにあたっては、レーザー光などのように点状に絞られた光を組成物に照射して線描方式で硬化させる方式を採用してもよいし、液晶シャッター、デジタルマイクロミラーシャッター(DMD)等のような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通った光を組成物に面状に照射して硬化させる方式を採用してもよい。
本発明の製造方法により製造されるジルコニア成形体は、歯科材料を形成するためのものである。具体的には、当該ジルコニア成形体を仮焼してジルコニア仮焼体(歯科材料形成用のジルコニア仮焼体)とした後に、これを焼結してジルコニア焼結体としたり、あるいは、当該ジルコニア成形体を直接焼結してジルコニア焼結体としたりして、ジルコニア焼結体を製造し、このジルコニア焼結体を人工歯等の歯科材料として使用することができる。仮焼や焼結の前には、ジルコニア成形体に付属したサポート部を切り離したり、形態修正を施したりしてもよい。また、焼結後に得られるジルコニア焼結体は、必要に応じて形態修正や表面研磨などを施した後に歯科材料として使用してもよい。歯科材料として使用される際には患者の口腔内において、歯科用セメントを用いて装着することができる。
〔ジルコニア成形体〕
本発明は、上記したジルコニア成形体の製造方法により得られる歯科材料形成用のジルコニア成形体を包含する。
ジルコニア成形体に含まれるイットリアの含有量は、目的とするジルコニア焼結体におけるイットリアの含有量と同じものとすればよく、ジルコニア成形体におけるイットリアの具体的な含有量は、例えば2モル%以上とすることができ、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることがより好ましく、4.5モル%以上であることがさらに好ましく、5モル%以上、さらには5.5モル%以上であってもよく、また、9モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることがさらに好ましい。なお、ジルコニア成形体におけるイットリアの含有量は、ジルコニアとイットリアの合計モル数に対するイットリアのモル数の割合(モル%)を意味する。
ジルコニア焼結体に蛍光剤を含ませる場合には、ジルコニア成形体においてこのような蛍光剤を含むことが好ましい。ジルコニア成形体における蛍光剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における蛍光剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア成形体に含まれる蛍光剤の具体的な含有量は、ジルコニア成形体に含まれるジルコニアの質量に対して、蛍光剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
ジルコニア焼結体に着色剤を含ませる場合には、ジルコニア成形体においてこのような着色剤を含むことが好ましい。ジルコニア成形体における着色剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における着色剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア成形体に含まれる着色剤の具体的な含有量は、ジルコニア成形体に含まれるジルコニアの質量に対して、着色剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下、さらには0.05質量%以下であってもよい。
ジルコニア焼結体に透光性調整剤を含ませる場合には、ジルコニア成形体においてこのような透光性調整剤を含むことが好ましい。ジルコニア成形体における透光性調整剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における透光性調整剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア成形体に含まれる透光性調整剤の具体的な含有量は、ジルコニア成形体に含まれるジルコニアの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。
ジルコニア成形体の密度に特に制限はなく、ジルコニア成形体の製造方法などによっても異なるが、より緻密なジルコニア焼結体を得ることができることなどから、当該密度は、3.0g/cm3以上であることが好ましく、3.2g/cm3以上であることがより好ましく、3.4g/cm3以上であることがさらに好ましい。当該密度の上限に特に制限はないが、例えば、6.0g/cm3以下、さらには5.8g/cm3以下とすることができる。
ジルコニア成形体は、取り扱い性の観点などから、その2軸曲げ強さが、2〜10MPaの範囲内であることが好ましく、5〜8MPaの範囲内であることがより好ましい。なお、ジルコニア成形体の2軸曲げ強さは、JIS T 6526:2012に準拠して測定することができる。
〔ジルコニア仮焼体の製造方法〕
上記した歯科材料形成用のジルコニア成形体を仮焼することにより歯科材料形成用のジルコニア仮焼体を得ることができる。当該仮焼によって、光造形で生成した樹脂成分を除去することができる。仮焼は後の焼結とは別の操作として行ってもよいし、焼結を行う際の加熱操作の一部として包含されていてもよい。
仮焼温度は、目的とするジルコニア仮焼体が容易に得られるなどの観点から、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることがさらに好ましく、400℃以上、さらには500℃以上であってもよく、また、900℃未満であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることがさらに好ましい。仮焼温度が上記下限以上であることにより、有機物の残渣の発生を効果的に抑制することができる。
仮焼の際の昇温速度に特に制限はないが、クラックの発生を抑制するなどの観点から、100℃から400℃までの加熱をゆっくり行うことが望ましい。具体的な昇温速度としては、10℃/分以下であることが好ましく、5℃/分以下であることがより好ましい。また、クラックや変形を抑制するなどの観点から、樹脂成分の変性と焼却が実質的に始まる200℃から250℃の範囲はさらにゆっくりとした昇温速度が望ましく、具体的には2℃/分以下であることが好ましく、1℃/分以下であることがより好ましい。
仮焼は仮焼炉を用いて行うことができる。仮焼炉の種類に特に制限はなく、例えば、一般工業界で用いられる電気炉および脱脂炉などを用いることができる。
〔ジルコニア仮焼体〕
本発明は、上記したジルコニア仮焼体の製造方法により得られる歯科材料形成用のジルコニア仮焼体を包含する。
ジルコニア仮焼体に含まれるイットリアの含有量は、目的とするジルコニア焼結体におけるイットリアの含有量と同じものとすればよく、ジルコニア仮焼体におけるイットリアの具体的な含有量は、例えば2モル%以上とすることができ、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることがより好ましく、4.5モル%以上であることがさらに好ましく、5モル%以上、さらには5.5モル%以上であってもよく、また、9モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることがさらに好ましい。なお、ジルコニア仮焼体におけるイットリアの含有量は、ジルコニアとイットリアの合計モル数に対するイットリアのモル数の割合(モル%)を意味する。
ジルコニア焼結体に蛍光剤を含ませる場合には、ジルコニア仮焼体においてこのような蛍光剤を含むことが好ましい。ジルコニア仮焼体における蛍光剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における蛍光剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア仮焼体に含まれる蛍光剤の具体的な含有量は、ジルコニア仮焼体に含まれるジルコニアの質量に対して、蛍光剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
ジルコニア焼結体に着色剤を含ませる場合には、ジルコニア仮焼体においてこのような着色剤を含むことが好ましい。ジルコニア仮焼体における着色剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における着色剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア仮焼体に含まれる着色剤の具体的な含有量は、ジルコニア仮焼体に含まれるジルコニアの質量に対して、着色剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下、さらには0.05質量%以下であってもよい。
ジルコニア焼結体に透光性調整剤を含ませる場合には、ジルコニア仮焼体においてこのような透光性調整剤を含むことが好ましい。ジルコニア仮焼体における透光性調整剤の含有量は、得られるジルコニア焼結体における透光性調整剤の含有量などに応じて適宜調整することができる。ジルコニア仮焼体に含まれる透光性調整剤の具体的な含有量は、ジルコニア仮焼体に含まれるジルコニアの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。
ジルコニア仮焼体の密度に特に制限はなく、その製造に使用されるジルコニア成形体の製造方法などによっても異なるが、3.0〜6.0g/m3の範囲内であることが好ましく、3.2〜5.8g/m3の範囲内であることがより好ましい。
ジルコニア仮焼体の3点曲げ強さに特に制限はなく、例えば、10〜70MPaの範囲内、さらには、20〜60MPaの範囲内とすることができる。なお、ジルコニア仮焼体の3点曲げ強さは、5mm×40mm×10mmの試験片について、万能試験機を用いてスパン長30mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分の条件で測定することができる。
〔ジルコニア焼結体の製造方法〕
上記した歯科材料形成用のジルコニア成形体またはジルコニア仮焼体を常圧下で焼結することにより歯科材料用のジルコニア焼結体を得ることができる。ジルコニア成形体を焼結する場合およびジルコニア仮焼体を焼結する場合のいずれにおいても、焼結温度は、目的とするジルコニア焼結体が容易に得られるなどの観点から、900℃以上であることが好ましく、1000℃以上であることがより好ましく、1050℃以上であることがさらに好ましく、また、1200℃以下であることが好ましく、1150℃以下であることがより好ましく、1120℃以下であることがさらに好ましい。焼結温度が上記下限以上であることにより、焼結を十分に進行させることができ、より緻密な焼結体を容易に得ることができる。また、焼結温度が上記上限以下であることにより、結晶粒径が過大になるのを抑制することができて得られるジルコニア焼結体の透光性が向上し、また蛍光剤を含む場合にその失活を抑制することができる。
ジルコニア成形体を焼結する場合およびジルコニア仮焼体を焼結する場合のいずれにおいても、焼結時間に特に制限はないが、目的とするジルコニア焼結体を生産性よく効率的に安定して得ることができることなどから、焼結時間は、5分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましく、また、6時間以下であることが好ましく、4時間以下であることがより好ましく、2時間以下であることがさらに好ましい。
焼結は焼結炉を用いて行うことができる。焼結炉の種類に特に制限はなく、例えば、一般工業界で用いられる電気炉および脱脂炉などを用いることができる。また、従来の歯科用ジルコニア用焼結炉以外にも、焼結温度が比較的低い歯科用ポーセレンファーネスを用いることもできる。
ジルコニア焼結体は、熱間等方圧加圧(HIP)処理なしでも容易に製造することができるが、上記常圧下での焼結後に熱間等方圧加圧(HIP)処理を行うことでさらなる透光性および強度の向上が可能である。
〔ジルコニア焼結体〕
本発明は、上記したジルコニア焼結体の製造方法により得られる歯科材料用のジルコニア焼結体を包含する。
ジルコニア焼結体に含まれるイットリアの含有量は、透光性および強度により優れたジルコニア焼結体となることなどから、例えば2モル%以上とすることができ、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることがより好ましく、4.5モル%以上であることがさらに好ましく、5モル%以上、さらには5.5モル%以上であってもよく、また、9モル%以下であることが好ましく、8モル%以下であることがより好ましく、7モル%以下であることがさらに好ましい。なお、ジルコニア焼結体におけるイットリアの含有量は、ジルコニアとイットリアの合計モル数に対するイットリアのモル数の割合(モル%)を意味する。
ジルコニア焼結体は蛍光剤を含んでいてもよい。ジルコニア焼結体が蛍光剤を含むことにより蛍光性を有する。ジルコニア焼結体における蛍光剤の含有量に特に制限はなく、蛍光剤の種類やジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、歯科材料として使用するなどの観点から、ジルコニア焼結体に含まれるジルコニアの質量に対して、蛍光剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。当該含有量が上記下限以上であることにより、ヒトの天然歯と比較しても蛍光性に劣ることがなく、また、当該含有量が上記上限以下であることにより、透光性や強度の低下を抑制することができる。
ジルコニア焼結体は着色剤を含んでいてもよい。ジルコニア焼結体が着色剤を含むことにより着色されたジルコニア焼結体となる。ジルコニア焼結体における着色剤の含有量に特に制限はなく、着色剤の種類やジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、歯科材料として使用するなどの観点から、ジルコニア焼結体に含まれるジルコニアの質量に対して、着色剤に含まれる金属元素の酸化物換算で、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下、さらには0.05質量%以下であってもよい。
ジルコニア焼結体における透光性の調整のため、ジルコニア焼結体は透光性調整剤を含んでいてもよい。ジルコニア焼結体における透光性調整剤の含有量に特に制限はなく、透光性調整剤の種類やジルコニア焼結体の用途などに応じて適宜調整することができるが、歯科材料として使用するなどの観点から、ジルコニア焼結体に含まれるジルコニアの質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。
上記の製造方法により得られるジルコニア焼結体の厚さ0.5mmにおける波長700nmの光の透過率は、透光性により優れるなどの観点から、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、45%以上であることが特に好ましく、46%以上、48%以上、50%以上、さらには52%以上であってもよい。このような透過率を有することで、審美性により優れた歯科材料とすることができる。当該透過率の上限に特に制限はないが、当該透過率は、例えば、60%以下、さらには50%以下とすることができる。なお、ジルコニア焼結体の厚さ0.5mmにおける波長700nmの光の透過率は、分光光度計を用いて測定すればよく、例えば、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「日立分光光度計 U−3900H形」)を用い、光源より発生した光を試料に透過および散乱させ、積分球を利用して測定することができる。当該測定においては、一旦、300〜750nmの波長領域で透過率を測定した上で、波長700nmの光についての透過率を求めてもよい。測定に使用される試料としては、両面を鏡面研磨加工した厚さ0.5mmのジルコニア焼結体を用いることができる。
上記の製造方法により得られるジルコニア焼結体の結晶相は、正方晶であってもよいし、立方晶であってもよいし、両者が混在していてもよい。
上記の製造方法により得られるジルコニア焼結体は人工歯等の歯科材料として使用される。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等によって限定されるものではない。なお、各物性の測定方法は以下のとおりである。
(1)ジルコニア粒子の平均一次粒子径
ジルコニア粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影し、得られた画像上で任意の粒子100個について各粒子の粒子径(最大径)を測定し、それらの平均値をジルコニア粒子の平均一次粒子径とした。
(2)ジルコニア粒子の単分散度
光造形に使用した組成物における、ジルコニア粒子の単分散度は、当該組成物を歯科用光照射器で光重合させて得た硬化物から、厚さ200nmの薄片を、ミクロトーム(ライカ社製、「Reichert ULTRACUT−UCT」)を用いて切り出し、当該薄片を透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM2100F型)にて倍率10万倍で写真撮影し、撮影された視野中の規定された領域に存在する全てのジルコニア粒子について、全てのジルコニア粒子の一次粒子の個数をX個とし、このうち、粒子同士が接触して凝集することなく、一次粒子として単分散しているジルコニア粒子の個数をY個とし、以下の式によって単分散度を求めた。
単分散度(%) = 100 × Y/X
なお、Xが300個程度となるように撮影された上記視野中の領域を規定した。
(3)光造形に供される組成物の粘度
E型粘度計を用いて、25℃で測定した。
(4)光の透過率(波長700nm、0.5mm厚)
ジルコニア焼結体の厚さ0.5mmにおける波長700nmの光の透過率は、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、「日立分光光度計 U−3900H形」)を用い、光源より発生した光を試料に透過および散乱させ、積分球を利用して測定した。当該測定においては、一旦、300〜750nmの波長領域で透過率を測定した上で、波長700nmの光についての透過率を求めた。なお測定には、以下の実施例ないし比較例で使用した組成物を以下の実施例ないし比較例に記載の方法にしたがって作製した25mm×25mm×2mmの板状のジルコニア焼結体について、その両面を鏡面研磨加工して厚さ0.5mmとした透過率測定用試験片を用いた。
[実施例1]
(1)イットリアを5モル%含む水系のジルコニアスラリー「MELox Nanosize 5Y」(MEL Chemicals社製、ジルコニア粒子の平均一次粒子径13nm、ジルコニア濃度23質量%)200質量部に対して、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(通称「PGMEA」)80質量部、および、表面処理剤として2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸(通称「MEEAA」)2質量部を加えて混合物とし、これを丸底フラスコに移してロータリーエバポレーターを用いて減圧留去を行い、水およびPGMEAを約60質量部留出させた。残渣にトルエンを加えて、引き続き、上記と同様に減圧留去を行って、水とPGMEAとトルエンを共沸混合物として留出させた。残渣にトルエンを加えて共沸混合物を留出させる操作を数回繰り返すことで水を十分に取り除き、ジルコニア粒子を50質量%含む流動性のある透明なスラリーを得た。このスラリーにおける分散媒の主成分はPGMEAである。
(2)得られたスラリー50質量部に対して、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「TEGDMA」)8質量部、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルに対して2−ヒドロキシエチルメタクリレート2モルの割合で付加した物;通称「UDMA」]12質量部、および、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(通称「TPO」)0.1質量部を加えて均一に混合溶解した。ここにさらに蛍光剤として酢酸酸化ビスマスの希塩酸溶液を、ジルコニアの質量に対するビスマスの酸化物(Bi2O3)換算の含有量が0.01質量%となるように加えて混合した。これをロータリーエバポレーターを用いて総量48質量部になるように濃縮して、ジルコニア粒子、重合性単量体、光重合開始剤および蛍光剤を含む組成物を得た。この組成物におけるジルコニア粒子の含有量は52質量%であり、25℃での粘度は4,800mPa・sであり、ジルコニア粒子の単分散度は75%であった。
(3)上記の組成物を用いて規制液面法により光造形して人工歯の形状を有するジルコニア成形体を得た。具体的には、市販の光造形装置(DWS社製、「DigitalWax」 020D型)を用いて、レーザー出力30mW、波長405nm、ビーム径0.02mm、レーザー走査速度4,600mm/秒で、一層の厚みを0.05mmに設定して、上顎第一大臼歯の3次元CADデータを用いて光造形を行い、第一大臼歯クラウンに対応する積層硬化物を得た。これを室温・空気中に5日間放置して乾燥させてジルコニア成形体とした。
(4)得られたジルコニア成形体を、電気炉(クラレノリタケデンタル株式会社製、「カタナF−1N」)を用いて常圧下で仮焼してジルコニア仮焼体を得た。当該仮焼は、0.3℃/分の速度で室温から200℃まで昇温し、次いで、0.1℃/分の速度で200℃から260℃まで昇温し、さらに、0.3℃/分の速度で260℃から400℃まで昇温することにより行った。このジルコニア仮焼体を再び電気炉に入れ、常圧下、60℃/時間の速度で1050℃まで昇温させて焼結を行って、緻密な大臼歯形状のジルコニア焼結体を得た。なお、上記と同じ条件で作製した25mm×25mm×2mmの板状のジルコニア焼結体より得られた透過率測定用試験片について、上記の方法にしたがってその厚さ0.5mmにおける波長700nmの光の透過率を測定したところ41%であった。上記大臼歯形状のジルコニア焼結体に対して表面研磨と形態修正を行うことで半透明で審美性に優れた大臼歯形状の人工歯を得た。
[比較例1]
(1)実施例1で用いた水系のジルコニアスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥して、ジルコニア粒子を含む粉末を得た。
(2)一方、表面処理剤として2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)酢酸(通称「MEEAA」)8質量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(通称「TEGDMA」)32質量部、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)48質量部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(通称「TPO」)0.3質量部、および、蛍光剤として酢酸酸化ビスマスの希塩酸溶液を、最終的に得られる組成物におけるジルコニアの質量に対するビスマスの酸化物(Bi2O3)換算の含有量が0.01質量部となるように加えて混合した。ここに上記のジルコニア粒子を含む粉末100質量部を添加し、三本ローラーを用いて均一に混合して、ジルコニア粒子、重合性単量体、光重合開始剤および蛍光剤を含む組成物を得た。この組成物におけるジルコニア粒子の含有量は52質量%であり、25℃での粘度は4,300mPa・sであり、ジルコニア粒子の単分散度は46%であった。
(3)上記の組成物を用いて、実施例1と同じ方法で人工歯の形状を有するジルコニア成形体を得て、さらに、実施例1と同じ方法でジルコニア仮焼体およびジルコニア焼結体を得た。比較例1において、上記と同じ条件で作製した25mm×25mm×2mmの板状のジルコニア焼結体より得られた透過率測定用試験片について、上記の方法にしたがってその厚さ0.5mmにおける波長700nmの光の透過率を測定したところ22%であり、実施例1と比較して著しく低かった。