JP2019024421A - 種皮の処理方法 - Google Patents

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尚哉 笠井
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Abstract

【課題】小麦やトウモロコシなどの種皮中のリグニンを簡単な方法で除去する方法を提供する。【解決手段】小麦やトウモロコシなどの穀物などの種皮をそのままあるいは破砕した後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩の、望ましくはpH12以上の水溶液中で、常温下、攪拌、バブリング、超音波振動などによって種皮を構成する層に対して層剥離する力、例えば剪断力を生じさせて、種皮中のリグニンを除去する。【選択図】図6

Description

本発明は種皮の処理方法、具体的には種皮中のリグニンを溶解させる方法に関する。
リグニンは多くの植物に存在する高分子のフェノール性化合物である。リグニンは、セルロースやヘミセルロースなどと共存し、これらの高分子化合物とフェルラ酸やタンパク質などと結合して植物の主要な組織を構成している。リグニンの存在形態や存在割合は植物の種類で異なることは分かっているが、リグニンの化学的構造は複雑であり、未だに不明な点が多く、個々の植物における存在形態は詳細には明らかにはされていない。
リグニン含有植物は数多くの分野で利用されているが、リグニンが存在するために十分な活用が図られておらず、植物からリグニンを除去する脱リグニン化方法が種々検討されている。特に、植物から有用産物を得た後に残る廃棄物の処理が困難となっており、それらの活用の途が種々模索されている。
例えば、木材系植物はパルプ原料として利用されるが、リグニンが多く存在する樹皮を除いた心材部分が主として利用される。心材部分は、塩素ガスや亜硫酸ガス、次亜塩素酸のような強力な酸化性薬品により脱リグニン化が行われる。また、木材系バイオマスを圧力容器中で真空下においた後に、二酸化硫黄や過酸化水素と共に水蒸気を導入して加熱処理して、脱リグニン化して家畜用の飼料として利用すること(特許文献1)や、木材のチップ又は粉を塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化亜鉛など水溶液に含浸させた後水蒸気蒸煮によって前処理を行うことで家畜用飼料とすること(特許文献2)も試みられているが、木材系植物では脱リグニン化には厳しい条件が必要とされている。
稲わらはイネから米が採取された後の産物、サトウキビバガスは糖液が採取された後の産物であって、これらはもっぱら廃棄物として取り扱われている。また、スイッチグラスはバイオエタノールの原料として注目されている草本系の植物である。こうした草本系の植物におけるリグニンは組織に緩やかに膠着しているので、希アルカリ水に短時間浸漬し、振盪するだけで可溶化される(例えば、非特許文献1)。
小麦ふすま(小麦種皮)はムギから小麦粉が採取された後の産物、コーンハル(トウモロコシ種皮)はトウモロコシからコーンスターチやコーン油が採取された後の産物である。それらの一部はそのまま小麦ブランなどとして食品素材に利用されたり、アラビノキシランの抽出に利用される。また、それらの一部は、脱リグニン処理が施されてバイオエタノールの原料や家畜の飼料などに利用されているが、そのほとんどは利用されずに廃棄物として処理されている。
種皮は、木材系植物や草本系植物とは異なり、それぞれ性質が異なる細胞層が5〜6層積層された構造を有し、各層の間はリグニンやセルロース、ヘミセルロース、フェルラ酸エステル、タンパク質などが強く膠着した構造を有すると言われている(例えば、非特許文献2、非特許文献3)。従って、草本系の植物におけるリグニン処理のような緩和な条件では達成できないと考えられており、1Mの水酸化ナトリウムの共存下で121℃20分の加熱処理を行うことや水酸化ナトリウムの共存下約5MPaの加熱処理(非特許文献3参照)を行うことではじめて、その後のセルラーゼによる酵素分解率を向上させることができると言われている。
また、小麦ふすまからのアラビノキシランの抽出では、例えば、40℃、水酸化ナトリウムと40%の塩化ナトリウムの共存下での抽出(非特許文献4)や0.3M水酸化ナトリウムと3%過酸化水素を用いた抽出(非特許文献5)なども試みられている。
以上のようにリグニン含有植物から種々の方法により脱リグニン化することが試みられているが、小麦やトウモロコシなどの穀類はその生産量が極めて多く、また、小麦ふすまなどのようにアラビノキシランの抽出原料としての利用価値も高い種皮も多く、穀類の種皮からの簡便で効率的な脱リグニン化は非常に重要であると考えられる。
しかしながら、これまでのところ水酸化ナトリウムなどのアルカリを使った場合でも、草本系植物におけるリグニン処理とは異なり、種皮からの脱リグニン化では加熱や必要に応じて加圧することが要求されていた。また、前記アラビノキシランの抽出条件では、40℃とは言え緩やかな加熱と過酸化物などのアルカリ以外の薬品を用いる必要があった。
特開2013−539959号公報 特開昭60−207553号公報
Long Wu et al., Bioresource Technology 102 (2011) 4793-4799 Lucian Dascalescu et al., IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS, VOL. 46, NO. 2, MARCH/APRIL 2010 Silvia Apprich et al., LWT-Food Science and Technology 56(201)222-231 Francis Duchiron et al., Industrial Crops and Products 8(1998) 37-43 Gould JM, Journal of Cereal Science 34 (2001) 29-35
本願に係る発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであって、できるだけ緩和な条件で種皮を処理し、種皮中のリグニンを除去する手段を提供する。
本願発明に係る方法は、アルカリ金属塩の水溶液などのアルカリ性の溶液中で、好ましくは常温下で、種皮の層構造を破壊する工程を有する。
本発明によると、極めて緩和な条件で種皮中のリグニンを除去できる。
図1はオルトトルイジンブルー染色したリグニン処理前の小麦ふすまの位相差顕微鏡画像である。 図2は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理前後の位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡画像(未染色)であって、AとBは未処理の画像、CとDは処理後の画像である。 図3は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理前後の蛍光顕微鏡画像(カルコホワイト染色)であって、AとBは未処理の画像、CとDは処理後の画像である。 はアルカリ攪拌処理後の小麦ふすまの位相差顕微鏡画像である。Aは、オルトトルイジンブルー染色した拡大像、Bはオルトトルイジンブルー染色における非染色断片の低倍率像である。 図5は小麦ふすまの破砕前後の位相差顕微鏡像(オルトトルイジンブルー染色)であって、Aは破砕前の画像、Bは破砕後の画像である。 図6は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理における水酸化ナトリウム濃度の影響を示すグラフである。 図7は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理における攪拌速度の影響を示すグラフである。 図8は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理における攪拌速度の影響を示す画像である。 図9は小麦ふすまのアルカリ攪拌処理における処理温度の影響を示すグラフである。 図10はバブリングによって処理された小麦ふすまの位相差顕微鏡像である。 図11は超音波によって処理された小麦ふすまの位相差顕微鏡像である。
本願発明に係る方法は、種皮をアルカリ性の溶液中で種皮を構成する層を剥離する工程を有し、この工程によって種皮中のリグニンが除去または可溶化される。
当該方法の対象となる種皮は、各種植物の種子の皮であり、裸子植物、被子植物のいずれであるかを問わない。種皮は層構造をなしていればよく、具体的には、例えばいわゆる穀類の種皮であり得る。穀類は、主食となり得るイネ、ムギ、トウモロコシなどの主穀、マメやソバ、ヒエ、アワなどのその他の雑穀を問わない。また、種子は、綿実油やゴマ油など各種食用油の原料となる綿やゴマ、ヒマワリ等、イチョウやアーモンド、コーヒーなど飲食用に使用される植物の種子はもちろんのこと、飲食には用いられない観賞用の植物の種子などであっても差し支えない。
当該方法で用いられるアルカリ性の溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物の溶液である。溶液は水溶液であればよく、水以外の有機溶媒、例えばアルコールを含み得るが、有機溶媒は必須ではなく、本発明においては、アルカリ金属の水酸化物の水溶液で足りる。
アルカリ金属塩の濃度は当業者が適宜決められるが、好ましくはpHが10以上、好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、望ましくは12.5以上である。また、その上限は限定されないが、概ね1〜3M程度の濃度である。
当該方法で用いられるアルカリ性の溶液の温度は好ましくは常温である。ここにおいて常温とは、特別な加熱や冷却を必要としない温度帯域である。温度環境によって加熱を必要とする場合もあるが、概ね5℃〜40℃、好ましくは10〜35℃であって、これよりも高い、例えば45℃近くの自然環境下であってもよく、これよりも低い、例えば1℃近くの自然環境であれば20〜30℃の温度にまで加熱しても差し支えない。もちろん、100℃以下に加熱しても差し支えないが、本発明では加熱することなく常温で種皮からリグニンを除去できる点に優位性がある。
当該方法では、前記のアルカリ性の溶液中で種皮を構成する層を剥離することが必要である。図1は小麦ふすまをオルトトルイジンブルー染色した後の位相差顕微鏡観察による画像である。オルトトルイジンブルー染色では、リグニンのような疎水性を示す部分は青色に、ペクチンなどの酸性多糖が多い部分はピンク色に染色される。図1に示す小麦ふすまでは少なくとも5層構造を有していることが確認できる。第1層から第3層(図に示す1から3の各層)まではリグニンを比較的多く含む疎水性の層であり、第1層と第2層は特に疎水性となっている。第4層(図に示す4の層)はTesta/Seed coat層であり、リグニン量は第1〜第3層に比して少ない。第5層(図に示す5の層)はアリューロン層(Aleurone)と言われる最も内側に存在する層で、リグニン量は少なく疎水性ではなくセルラーゼによって分解され得ると考えられる。これらの各層の間は、リグニンやセルロース、ヘミセルロース、フェルラ酸エステル、タンパク質などによって強固に膠着しているために、特に第1〜第3層では、各層に存在するリグニンやセルロース等、あるいは層間を膠着しているリグニンやセルロース等に対して、セルラーゼなどの酵素やリグニンの可溶化剤が接触することが困難であり、過酸化水素水を用いた処理(非特許文献5)や加圧高温処理(非特許文献3)が必要であるとされていた。本願発明に係る方法は、このような種皮の層構造をアルカリ性の溶液中で層を剥離することでリグニンとアルカリ溶液を接触させて可溶化、特に層間に存在するリグニンを可溶化するために、種皮を構成する層を剥離させるための力を必要とする。この力は、例えば、種皮をアルカリ性の溶液中で攪拌する、溶液中に、空気や窒素などの気体を送ることで泡を生じさせる(バブリング)、溶液に超音波振動を与えるなどの方法により生じる剪断力であり得る。もちろんこの他の方法により種皮に剥離力を加えることができればよい。また、少量のアルカリ性の溶液中で種皮を摩砕する、つまり種皮をアルカリ性の溶液中で引き摺ることで種皮に層剥離を生じさせることもできる。剪断力のように層剥離を生じさせる力の大きさはアルカリ性の溶液量と溶液中の種皮の量、溶液の温度に応じて適宜定められる。
層剥離させるための力を加える際、種子から剥がされた種皮をそのままアルカリ性の溶液に投入してもよいが、投入する前に種皮を破砕又は切断しておくことが好ましい。種皮の断面積が増えることで、層を剥離する力が種皮に加わりやすくなったり、層間にアルカリ性の溶液が浸入しやすくなるからである。また、アルカリ性の溶液に投入する前に、熱水に浸漬することやアミラーゼを作用させることなどで種皮に残った澱粉などの不純物を除去しても差し支えない。
本願発明に係る方法によると、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液に種皮を混合し、攪拌やバブリングなどの極めて簡単な方法によって力を加えることで、種皮中、特に種皮の層間のリグニンを十分に除去できる。
上記方法で処理された種皮の処理物は残留物と処理液とに分離して利用することもできるし、分離することなく利用することもできる。例えば、上記方法で得られた残留物中のリグニン含有量は処理前の種皮に比べて非常に少なくなっている。このため、残留物に対するセルラーゼによる分解が効率的に行われ、飼料やバイオエタノール原料としての利用価値が高まる。また、種皮中に含まれるアラビノキシランなどの有用成分が処理液中に溶出されやすくなるなど、より一層種皮の有効利用が図られる。
次に本願発明について下記の実施例に基づき具体的に説明する。なお、本願発明は下記の実施例に限定されないのは言うまでもない。
小麦製造時に生じた小麦ふすまを水で洗浄後、熱水に浸漬して脱でんぷんを行った。脱でんぷんした小麦ふすまを湿質量で約2gを20mL容蓋付きサンプル管瓶(底面直径27mm、高さ55mm)に移し、濃度が異なる数種類の水酸化ナトリウムの水溶液10mLを加えて蓋をした後、マグネティックスターラー(25mm長の攪拌子)で全体が回転するように攪拌を行った。スターラーの攪拌速度は960rpmとし、室温(約25℃)で攪拌を開始した。攪拌開始6日後に、適量の攪拌液を遠心分離(13,200rpm)して得られた上清について405nmにおける吸光度を測定し、下記の式から湿小麦ふすま1gから抽出されたリグニン量(図には無次元量として表した)を求めた。測定は10倍〜50倍に希釈した上清についてマイクロプレート上で行われた。なお、赤褐色を呈するリグニンは405nm及び280nmに吸収ピークを示し、高速液体クロマトグラフィーによるサイズ排除クロマトグラフィーを用いて測定したところ280nmにおける低分子量〜高分子量のピーク強度と405nmにおけるOD値が一次関係にあることが確認されたので、本明細書中におけるリグニン量の測定では、測定されたOD値から次式により換算された値を溶出されたリグニン量(無名数)として示した。また、上記処理前後の小麦ふすまについてカルコ染色を行い、蛍光顕微鏡観察を行った。蛍光顕微鏡観察による画像を図2及び図3に、抽出量の変化を図5に示す。
リグニン量=(測定されたOD値?希釈倍率)/サンプルグラム数(湿重量)
図1は未処理の小麦ふすまの画像である。未処理の小麦ふすまでは、図1(a)ではオルトトルイジンブルーにより染色されたところ(画像では周囲が濃い線で現れているところ)が層の破断面や疎水性面の存在を示している。また、図2、図3はそれぞれ処理前後の顕微鏡画像である。図2B、Dはリグニンの自己発光による蛍光顕微鏡画像、図3B、Dはカルコホワイト染色した際の蛍光顕微鏡画像である。各図A、Bは未処理の画像、各図C、Dは処理後の画像である。図4は処理後の位相差顕微鏡画像であって、Aはオルトトルイジンブルー染色した拡大像、Bは未染色の低倍率像である。
図2、図3の画像から、上記のアルカリ攪拌処理を行うことで小麦ふすまの組織は剥離されて、更に破壊され(各図A、C参照)、自己発光によるリグニンの蛍光は大きく消失する(図2B、D参照)とともに、カルコ染色では断片全体が発光していることが観察された(図3B、D参照)。これにより、小麦ふすまからリグニンが除去されたことが確認された。また、図1の画像からは表皮において5層が確認されたが、上記のアルカリ攪拌処理によって、処理後にはオルトトルイジンブルーに染色された平面状の断片と、非染色の平面状の断片が確認された(図4A参照)。そして、非染色の断片を低倍率の位相差顕微鏡により観察したところ、多数の平面状の断片が観察され(同図B参照)、図1で観察された層構造から層剥離が行われていることが確認できた。なお、種皮を破砕するだけでは種皮の層構造は破壊されなかったことは確認されている(図5参照)。
小麦ふすまからの脱リグニン化は、図6に示すように0.01M(pH9.4),0.025M(pH9.9),0.05M(pH11.3),0.1M(pH11.9),0.25M(pH12.2)程度まで、上清のOD値は次第に増加し、それ以後0.5M(pH12.4)、1.0M(pH12.4)とほぼプラトーとなり、沈殿が少なく均質の溶液が得られた。これによると、pH10以上、好ましくはpH11以上、さらに好ましくはpH12、望ましくはpH12.5以上のアルカリ溶液でリグニンを溶出できると考えられる。
次に、80%ジオキサン水溶液、フェルラ酸エステラーゼ(4Unit/mL)、0.3M炭酸水素ナトリウム(pH9.3)、アンモニア水(pH10)、0.3M炭酸水素ナトリウム−炭酸ナトリウム水溶液(pH10)、0.5M水酸化カルシウム(pH12.6)を用いて同様の実験を行ったところ、OD値は攪拌開始後6日経過時点で抽出されたリグニン量は0.25M水酸化ナトリウムの場合の1/10〜1/4程度の増加が見られた。(図示せず)。
種皮に加えられる力の大きさによる効果を調べた。1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いて図7に示す回転数で攪拌を行った。実施例1と同様にして室温(約25℃)で攪拌を開始し、攪拌開始3日後に遠心分離して上清の吸光度を測定した。吸光度から抽出量を求めた結果を図7に、遠心分離後の状態を撮影した画像を図8に示した。図7に示すように回転数を上げるにつれて抽出量の増加が見られ、図8に示すようにリグニンが残っている濃褐色の残渣が少なく、淡黄褐色で透明度の増えた均質な褐色の残渣が得られることが目視でも確認された。攪拌しない状態(BL)でも抽出量の増加が見られるが、目視ではリグニンが残っている濃褐色の残渣が多くあり、種子を構成する層が剥離されず、セルロースが十分に露出されているとは言えなかった。
処理温度による影響を調べた。1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃及び80℃の恒温下、実施例1と同様にして回転数960rpmで攪拌を開始した。室温で攪拌を開始し、所定時間ごとに遠心分離して上清の吸光度を測定した。その結果を図9に示した。加熱することでリグニンの除去は加速されるが、室温で好ましくは少なくとも1日以上、2〜3日間の攪拌で種皮を構成する層間のリグニンを除去できるものと考えられた。
本発明による方法で処理した種皮残渣についてセルラーゼによる酵素分解を行い、当該処理による効果を確認した。小麦ふすま、コーンハル(トウモロコシ種皮)、大豆種皮、ススキの葉、桧、杉についてリグニン除去を行った。大豆種皮は、種皮全体のものだけでなく種皮から分けた外皮と内皮についても行った。ススキの葉は約3cm程度の長さにカットしたもの、桧、杉は市販の板材をかんなで削ったものをそれぞれ用いた。それぞれを水で洗浄後、熱水に浸漬して脱でんぷんした。その後、湿質量でそれぞれの約2gを1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLに入れ、実施例1と同様に回転数960rpmで3日間攪拌した。その後、遠心分離して上清と残渣に分けた。残渣は脱イオン水で洗浄後、1%セルラーゼ(GODO-TCF)を用いて酵素反応を行い、酵素反応で分解されなかった反応残存率を測定した。酵素反応は、45℃、50mM酢酸バッファー中で3日間行った。アルカリ攪拌処理で残った残渣の乾燥質量から未処理物に対するアルカリ処理残存率及び酵素反応残存率を求め、その結果を表1に示す。酵素反応残存率は次式により求めた。
反応残存率(%)=乾燥反応残渣質量(mg)/乾燥ブランク質量(mg)×100
なお乾燥ブランク質量は、酵素反応開始前の乾燥残渣質量である。
また、表1において酵素反応残存率における未処理は、アルカリ攪拌処理を行わずに酵素反応を行った際の残存率を示す。
表1に示すように、小麦ふすまでは、アルカリ攪拌処理によってアラビノキシランやタンパク質やリグニンが可溶化された結果、残渣として48.8%が残った。そして、その残渣をセルラーゼ処理すると酵素分解がよく起こり、残渣の11.3%が分解されずに残った。その結果、未処理の小麦ふすまの88.7%が可溶化された。それに対して、アルカリ攪拌処理を行わずに酵素処理した場合には82.3%が残渣として残り、酵素処理による分解はほとんど見られなかった。また、アルカリ攪拌処理後においてコーンハルでは26.3%、大豆薄皮では38.8%の残存率であったのに対し、杉では93.6%、桧では97.0%の残存率となった。この結果からわかるように、桧や杉のような木質系植物ではほとんど脱リグニン化が行えなかったのに対し、小麦ふすま、コーンハルや大豆種皮(特に薄皮)のように種皮では本方法による顕著な効果が認められた。
実施例1における熱水処理後の小麦ふすま湿重量約2gに対して1.0M水酸化ナトリウム水溶液10mLを加えて均一に混合した。下方開口が活栓により閉じられた内径2cmのガラス管に混合液を入れ、室温(約25℃)で3日間、ゴム栓側から空気を毎分5mLで送り続けた。なお、消泡剤として少量のオクタノールを加えた。その結果、実施例2における30rpmないし60rpmの力を加えたのと同程度の上清液が得られた。また、図10に示すように処理後の位相差顕微鏡画像(オルトトルイジンブルー未染色)から、一部の種皮層が剥離していることが認められた。
実施例1における熱水処理後の小麦ふすま湿重量約1gに対して1.0M水酸化ナトリウム水溶液5mLを15mL容のプラスチック試験管に入れ、超音波(超音波発生器:TOMY精工 UD-201型、使用チップは直径3.2mm、出力80W、インターバル50%、処理時間10分)を照射した。図11に処理後の位相差顕微鏡画像(オルトトルイジンブルー未染色)に示した。処理中には小麦ふすまが徐々に細かくされていくのが観察された。また、その顕微鏡画像から、種子側の細胞は分断され、表皮側の種皮の層は剥離されて丸まっているのが観察された。
本発明によると極めて簡便な方法で種皮からリグニンを除去することができ、バイオマスや飼料などとしてさらなる有効活用が図られる。

Claims (7)

  1. 種皮をアルカリ性の溶液中で種皮を構成する層を剥離する工程を有する種皮の処理方法。
  2. 常温の溶液を用いる請求項1記載の処理方法
  3. アルカリ金属の水酸化物の溶液を用いる請求項1又は2に記載の処理方法。
  4. 剪断力によって層剥離する請求項1〜3の何れか1項に記載の処理方法。
  5. 攪拌、超音波振動、バブリングの何れか1種又は2種以上の方法により層剥離させる請求項4に記載の処理方法。
  6. 前記種皮は、穀物の種皮である請求項1〜5の何れか1項に記載の処理方法。
  7. 前記種皮は、イネ科植物、マメ科植物、タデ科植物(ソバ)、アオイ科植物(ワタ)の種皮である請求項1〜5の何れか1項に記載の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023191030A1 (ja) * 2022-03-31 2023-10-05 三菱マテリアル株式会社 電極材料の浸出方法、コバルトおよびニッケルの分離方法

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