[被着体の接合・分離方法]
本発明の被着体の接合・分離方法(「本発明」と称する場合がある)は、電解質を含有する粘着剤層(以下、「電解質含有粘着剤層」と称する場合がある)を少なくとも1層含む粘着シートを被着体と接合した後、該粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように20V未満の電圧を印加し、被着体を分離する方法である。
本発明において、「接合(接合方法)」とは、粘着シートの電解質含有粘着剤層と被着体を接合すること意味し、「分離(分離方法)」とは、粘着シートの電解質含有粘着剤層から被着体を分離することを意味する。本発明において、「接合・分離方法」とは、「接合(接合方法)」のみであっても、「分離(分離方法)」のみであってもよく、これらの総称(接合方法と分離方法の両方)を意味する。本発明において、「接合」と「分離」は、1回限りではなく、何回も繰り返し行うこともできる。また、本発明では、上記粘着シートと少なくとも1つの被着体が、粘着シートの電解質含有粘着剤層を介して接合されたものを、「粘着シート接合体」と称するものとする。
本発明において、上記粘着シートは、粘着剤層として電解質含有粘着剤層を少なくとも1層含めば良く、これ以外に電解質を含有しない粘着剤層(以下、「電解質非含有粘着剤層」と称する)を有してもよい。本発明において、上記粘着シートは、両面に粘着面を有する両面粘着シートであってもよく、片面のみに粘着面を有する片面粘着シートであってもよい。また、粘着シートは、電解質含有粘着剤層、電解質非含有粘着剤層以外に、基材、導電層、通電用基材等を有していてもよい。本発明において、粘着シート接合体における上記被着体は、電気を通す導電性被着体であっても、電気を通さない非導電性被着体であってもよい。上記粘着シートおよび粘着シート接合体の詳細については、後述する。本発明には主に以下の第1の側面、第2の側面、第3の側面があり、それぞれの側面について、以下に詳細に説明する。
本発明の第1の側面は、電解質含有粘着剤層を少なくとも含む粘着シートにおける、該電解質含有粘着剤層の一方の面と第1導電性被着体とを接合し、且つ、該電解質含有粘着剤層の他方の面と第2導電性被着体とを接合した後、該第1導電性被着体と該第2導電性被着体とを介して、該電解質含有粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、電解質含有粘着剤層から、該第1導電性被着体と該第2導電性被着体とを分離する方法である。なお、第1導電性被着体および第2導電性被着体は、同一でも異なっていてもよく、後述の導電性被着体のことである。
第1の側面の場合の分離方法としては、例えば、第1導電性被着体と第2導電性被着体に通電し、該第1導電性被着体と該第2導電性被着体を介して電圧を印加することにより、上記電解質含有粘着剤層の厚さ方向に電位差を生じさせ、電解質含有粘着剤層から第1導電性被着体と第2導電性被着体とを分離する方法が挙げられる。また、第1の側面の場合の接合方法としては、例えば、上記電解質含有粘着剤層と第1導電性被着体とを接合する方法、および/または、上記電解質含有粘着剤層と第2の被着体とを接合する方法が挙げられる。上記分離方法により分離した第1導電性被着体と第2導電性被着体とを、上記接合方法により接合し、再度上記分離方法により分離することもできる。本発明の第1の側面は、特に2つの導電性被着体どうしを接合・分離する際に好ましく用いられる。
図1は、本発明の第1の側面に係る粘着シート接合体の例を示す断面構成図である。図1に示す粘着シートX1は、電解質含有粘着剤層11のみからなる両面粘着シートであり、粘着シート接合体は、第1導電性被着体Y1/電解質含有粘着剤層11/第2導電性被着体Y2の積層構造を有する。この場合の分離方法は、図1中の第1導電性被着体Y1のα箇所と第2導電性被着体Y2のβ箇所に通電し、第1導電性被着体Y1と第2導電性被着体Y2とを介して電圧を印加することにより、電解質含有粘着剤層11の厚さ方向に電位差を生じさせ、粘着シートX1(電解質含有粘着剤層11)から第1導電性被着体Y1と第2導電性被着体Y2とを分離する方法である。また、この場合の接合方法は、電解質含有粘着剤層11の一方の面と第1導電性被着体Y1とを接合する方法、および/または、電解質含有粘着剤層11の他方の面と第2導電性被着体Y2とを接合する方法である。
本発明の第2の側面は、電解質含有粘着剤層、電解質非含有粘着剤層、並びに、該電解質含有粘着剤層と該電解質非含有粘着剤層との間に位置して、該電解質含有粘着剤層と接合する導電層を含む積層構造を有する粘着シートにおける、該電解質含有粘着剤層と導電性被着体とを接合し、且つ、該電解質非含有粘着剤層と他の被着体とを貼着した後、該導電層と該導電性被着体とを介して、該電解質含有粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、該電解質含有粘着剤層から該導電性被着体と該他の被着体とを分離する方法である。
第2の側面の場合の分離方法としては、例えば、上記導電性被着体と上記導電層に通電し、該導電性被着体と該導電層に電圧を印加することにより、上記電解質含有粘着剤層の厚さ方向に電位差を生じさせ、電解質含有粘着剤層から上記導電性被着体と導電層を含む他の被着体とを分離する方法が挙げられる。第2の側面の場合の接合方法としては、例えば、上記電解質含有粘着剤層と導電性被着体とを接合する方法、および/または、電解質含有粘着剤層と導電層を含む他の被着体の導電層とを接合する方法が挙げられる。なお、導電層を含む他の被着体と電解質含有粘着剤層との分離が生じる場合は、電解質含有粘着剤層と該電解質含有粘着剤層に接した導電層界面で分離が生じる。これにより、導電層を含む他の被着体を電解質含有粘着剤層から分離することができる。上記分離方法により分離した導電性被着体と導電層を含む他の被着体を、上記接合方法により接合し、再度上記分離方法により分離することもできる。本発明の第2の側面では、上記他の被着体は、導電性を有さない被着体(非導電性被着体)であることが好ましい。本発明の第2の側面は、導電性被着体と導電性を有さない被着体(非導電性被着体)を接合・分離する際に好ましく用いられる。
図2は、本発明の第2の側面に係る粘着シート接合体の例を示す断面構成図である。図2に示す粘着シートX2は、電解質非含有粘着剤層21/基材31/導電層32/電解質含有粘着剤層12の層構成を有する両面粘着シートであり、粘着シート接合体は、該粘着シートの電解質非含有粘着剤層21の一方の面に非導電性被着体Y3を有し、電解質含有粘着剤層12の一方の面に導電性被着体Y4を有する、非導電性被着体Y3/電解質非含有粘着剤層21/基材31/導電層32/電解質含有粘着剤層12/導電性被着体Y4の積層構造を有する。この場合の分離方法は、図2中の導電層32のα箇所と導電性被着体Y4のβ箇所に通電し、導電層32と導電性被着体Y4とを介して電圧を印加することにより、電解質含有粘着剤層12の厚さ方向に電位差を生じさせ、電解質含有粘着剤層12から非導電性被着体Y4と導電性被着体Y3とを分離する方法である。また、この場合の接合方法は、電解質含有粘着剤層12と第1導電性被着体Y4とを接合する方法、および/または、電解質含有粘着剤層12と導電性被着体Y3側(非導電性被着体Y3/電解質非含有粘着剤層21/基材31/導電層32)における導電層32とを接合する方法である。なお、導電性被着体Y3側で分離が生じる場合は、導電層32と電解質含有粘着剤層12の界面で分離が生じる。これにより、電解質含有粘着剤層12と導電性被着体Y3側とを分離することができる。なお、図2において、基材31と導電層32は、一体となった通電用基材30である。
本発明の第3の側面は、第1の電解質非含有粘着剤層、電解質含有粘着剤層、第2の電解質非含有粘着剤層、並びに、該第1の電解質非含有粘着剤層と該電解質含有粘着剤層との間に位置して、該電解質含有粘着剤層と接合する第1導電層、且つ、該第2の電解質非含有粘着剤層と該電解質含有粘着剤層との間に位置して、該電解質含有粘着剤層と接合する第2導電層を含む積層構造を有する粘着シートにおける、該第1の電解質非含有粘着剤層と第1被着体とを貼着し、且つ、該第2の電解質非含有粘着剤層と第2被着体とを貼着した後、該第1導電層と該第2導電層とを介して、該電解質含有粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、該電解質含有粘着剤層から該第1被着体と該第2被着体とを分離する方法である。なお、第1の電解質非含有粘着剤層および第2の電解質非含有粘着剤層は、同一でも異なっていてもよく、電解質非含有粘着剤層のことである。また、第1導電層および第2導電層は、同一でも異なっていてもよく、後述の導電層のことである。また、第1被着体および第2被着体は、同一でも異なっていてもよく、後述の被着体のことである。
第3の側面の分離方法としては、例えば、上記第1導電層と上記第2導電層に通電し、該第1導電層と該第2導電層に電圧を印加することにより、上記電解質含有粘着剤層の厚さ方向に電位差を生じさせ、該電解質含有粘着剤層から該第1導電層を含む第1被着体と該第2導電層を含む第2被着体とを分離させる方法が挙げられる。第3の側面の接合方法としては、例えば、電解質含有粘着剤層と第1導電層を含む第1被着体の第1導電層面とを接合する方法、および/または、電解質含有粘着剤層と第2導電層を含む第2被着体の第2導電層面とを接合する方法が挙げられる。第1被着体と電解質含有粘着剤層との間で分離が生じる場合は、電解質含有粘着剤層と該電解質含有粘着剤層に接した第1導電層界面で分離が生じる。また、第2被着体と電解質含有粘着剤層との間に分離が生じる場合は、電解質含有粘着剤層と該電解質含有粘着剤層に接した第2導電層界面で分離が生じる。これにより、電解質含有粘着剤層から第1導電層を含む第1被着体と第2導電層を含む第2被着体とを分離することができる。上記分離方法により分離した第1導電層を含む第1被着体と第2導電層を含む第2被着体とを、上記接合方法により接合し、再度上記分離方法により分離することもできる。本発明の第3の側面では、第1被着体および第2被着体は、いずれも導電性を有さない被着体(非導電性被着体)であることが好ましく、本発明の第3の側面は、非導電性被着体どうしを接合・分離する際に好ましく用いられる。
図3は、本発明の第3の側面に係る粘着シート接合体の例を示す断面構成図である。図3に示す粘着シートX3は、電解質非含有粘着剤層23/基材51/導電層52/電解質含有粘着剤層13/導電層42/基材41/電解質非含有粘着剤層22の層構成を有する両面粘着シートである。粘着シート接合体は、該粘着シートの電解質非含有粘着剤層23の一方の面に非導電性被着体Y5を有し、電解質非含有粘着剤層22の一方の面に非導電性被着体Y6を有する、非導電性被着体Y5/電解質非含有粘着剤層23/基材51/導電層52/電解質含有粘着剤層13/導電層42/基材41/電解質非含有粘着剤層22/非導電性被着体Y6の積層構造を有する。この場合の分離方法は、図3中の導電層52のα箇所と導電層42のβ箇所に通電し、導電層52と導電層42を介して電圧を印加することにより、電解質含有粘着剤層13の厚さ方向に電位差を生じさせ、電解質含有粘着剤層13から非導電性被着体Y5と非導電性被着体Y6とを分離する方法である。また、この場合の接合方法は、電解質含有粘着剤層13と導電性被着体Y5側(非導電性被着体Y5/電解質非含有粘着剤層23/基材51/導電層52)の導電層52とを接合する方法、および/または、電解質含有粘着剤層13と導電性被着体Y6側(非導電性被着体Y6/電解質非含有粘着剤層41/基材41/導電層42)の導電層42とを接合する方法である。導電性被着体Y5側で分離が生じる場合は、導電層52と電解質含有粘着剤層13の界面で分離が生じ、導電性被着体Y6側で分離が生じる場合は、導電層42と電解質含有粘着剤層13の界面で分離が生じる。これにより、電解質含有粘着剤層13から導電性被着体Y5側と導電性被着体Y4側とを分離することができる。なお、図3において、基材51と導電層52は、一体となった通電用基材50であり、基材41と導電層42は、一体となった通電用基材40である。
上記第1の側面、第2の側面、第3の側面を含む本発明においては、上述のとおり粘着シート(両面粘着シート)の電解質含有粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように電圧が印加される。この電圧印加に起因して、電解質含有粘着剤層内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への電解質物質の移動が生じて電解質含有粘着剤層の表面の組成が変化し、これによって、被着体に対する接着力が低下する。したがって、電圧印加の時間が長いほど、電解質含有粘着剤層の接着力がより低下し、電解質含有粘着剤層の剥離性は高くなる傾向となり、接合していた被着体が、電解質含有粘着剤層から分離される。また、電圧印加停止後、一定時間(例えば、30秒後)経過すると電解質含有粘着剤層における表面の組成が元に戻るため、分離した被着体を再度接合することもできる。本発明では、低い電圧(20V未満)の電圧印加により、容易に被着体を分離でき、乾電池を用いたような簡易な装置でも接合・分離作業を行うことができ、作業性がよい。
本発明において、電解質含有粘着剤層に対する印加電圧は、20V未満であるが、電圧の上限は、好ましくは16V、より好ましくは13V、さらに好ましくは10Vであり、下限は、好ましくは2V、より好ましくは4Vであり、さらに好ましくは6Vである。電圧が20V未満であるため、電圧印加装置の電源として乾電池など入手しやすいものを用いた装置で分離作業が可能である。また、電解質含有粘着剤層に対する電圧の印加時間は、用いる電解質により異なるが、好ましくは60秒以内、より好ましくは40秒以内、さらに好ましくは20秒以内である。電圧の印加時間が60秒以内であると、分離作業を効率良く行うことができる。
(粘着シート接合体)
上記粘着シート接合体は、粘着シートと少なくとも1つの被着体が粘着シートの電解質含有粘着剤層を介して接合されたものである。上記粘着シート接合体としては、第1導電性被着体/電解質含有粘着剤層/第2導電性被着体(例えば、図1に示す粘着シート接合体)、非導電性被着体/電解質非含有粘着剤層/基材/導電層/電解質含有粘着剤層/導電性被着体(例えば、図2に示す粘着シート接合体)、非導電性被着体/電解質非含有粘着剤層/基材/導電層/電解質含有粘着剤層/導電層/基材/電解質非含有粘着剤層/非導電性被着体(例えば、図3に示す粘着シート接合体)の積層構造を有する接合体が好ましく挙げられる。
上記被着体は、例えば、電気を通す導電性被着体、電気を通さない非導電性被着体が挙げられる。上記導電性被着体としては、導電性を有するものである限り特に限定されないが、シート状の金属(例えば、アルミ、銅、鉄、スズ、金、銀、鉛等を主成分とする)部品、板等が挙げられる。また、上記非導電性被着体としては、導電性を有さないものである限り特に限定されないが、紙、布、不織布等の繊維シート、各種プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂等)のフィルムやシート、これらの積層体等が挙げられる。上記被着体の厚さは、特に制限されないが、0.1mm以上100mm以下が好ましく、厚さの上限は、より好ましくは50mm、さらに好ましくは30mmであり、厚さの下限は、より好ましくは0.3mm、さらに好ましくは1mmである。
本発明における上記粘着シート接合体の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上300mm以下が好ましく、厚さの上限は、より好ましくは200mmであり、さらに好ましくは100mmであり、特に好ましくは50mmであり、下限は、より好ましくは0.2mm、さらに好ましくは0.3mmであり、特に好ましくは0.5mmである。
(粘着シート)
上記粘着シートは、後述する粘着剤組成物から形成される電解質含有粘着剤層を少なくとも1層有する限り特に制限されず、これ以外に基材、導電層、通電用基材、電解質非含有粘着剤層等を有していてもよい。上記電解質非含有粘着剤層は、1層のみ設けられていても、2層以上設けられていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、中間層、下塗り層等を有していてもよい。本発明の粘着シートは、例えば、ロール状に巻回された形態や、シート状の形態であってもよい。なお、「粘着シート」には、「粘着テープ」の意味も含むものとする。即ち、本発明の粘着シートは、テープ状の形態を有する粘着テープであってもよい。
上記粘着シートは、基材を含まない(基材レス)両面粘着シートであってもよく、基材を有し、該シートの両面が粘着剤層(電解質含有粘着剤層、又は電解質非含有粘着剤層)
である両面粘着シートであってもよく、基材を有し、該シートの片面のみが粘着剤層(電解質含有粘着剤層、又は電解質非含有粘着剤層)である片面粘着シートであってもよい。
上記粘着シートとしては、特に限定されないが、電解質含有粘着剤層のみからなる粘着シート、電解質非含有粘着剤層/基材/導電層/電解質含有粘着剤層の層構成を有する粘着シート、電解質非含有粘着剤層/基材/導電層/電解質含有粘着剤層/導電層/基材/電解質非含有粘着剤層の層構成を有する粘着シート等が挙げられる。
上記電解質含有粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、非電圧印加(通常)時の粘着性の点から、1μm以上1000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは500μmであり、さらに好ましくは100μmであり、特に好ましくは30μmであり、下限は、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは5μmであり、特に好ましくは8μmである。なお、粘着シートが、1つの電解質含有粘着剤層のみからなる基材レス両面粘着シートである場合、上記電解質含有粘着剤層の厚さは、粘着シートの厚さとなる。
上記電解質非含有粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、粘着性の点から、1μm以上2000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは1000μmであり、さらに好ましくは500μmであり、特に好ましくは100μmであり、下限は、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは5μmであり、特に好ましくは8μmである。
上記基材としては、特に限定されないが、紙等の紙系基材、布、不織布等の繊維系基材、上記各種プラスチックによるフィルムやシート等のプラスチック系基材、これらの積層体等が挙げられる。上記基材は単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。なお、基材には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、下塗り処理等の各種処理が施されていてもよい。
上記基材の厚さは、特に限定されないが、50μm以上1000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは500μmであり、さらに好ましくは300μmであり、下限は、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは100μmである。
上記導電層としては、導電性を有する層である限り特に限定されないが、上記金属からなるシート、フィルム、板等の金属系基材、導電性ポリマー、上記各種プラスチックと上記金属系基材の積層体等が挙げられる。
上記導電層の厚さは、特に限定されないが、10μm以上1000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは500μmであり、さらに好ましくは300μmであり、下限は、より好ましくは30μmであり、さらに好ましくは50μmである。
上記通電用基材としては、導電層を有する(通電する)基材である限り特に限定されないが、上記基材の表面に金属層を形成させたもの等が挙げられ、例えば、上記基材3で挙げた基材の表面に、メッキ法、化学蒸着法、スパッタリング等の方法により金属層を形成させたものが挙げられる。金属層としては、上記導電層で挙げた金属、金属板、導電性ポリマー等が挙げられる。
上記通電用基材の厚さは、特に限定されないが、50μm以上1000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは500μmであり、さらに好ましくは300μmであり、下限は、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは100μmである。
上記粘着シートの厚さは、特に限定されないが、20μm以上3000μm以下が好ましい。厚さの上限は、より好ましくは1000μmであり、さらに好ましくは300μmであり、特に好ましくは200μmであり、下限は、より好ましくは30μm、さらに好ましくは50μmであり、特に好ましくは70μmである。
(電解質含有粘着剤層)
上記電解質含有粘着剤層は、電解質含有粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として少なくともポリマーおよび電解質を含有する。該粘着剤組成物に含有されるポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマーが挙げられる。上記ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記粘着剤組成物に含有されるポリマーとしては、コストの抑制や高い生産性の点より、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして含む重合体である。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
上記アクリル系ポリマーは、特に制限されないが、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを含むことが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートが好ましい。上記アクリル系ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記アクリル系ポリマーにおける、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットの割合は、電解質含有粘着剤層について高い接着力を実現するという点より、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
上記アクリル系ポリマーは、電解質含有粘着剤層において高い接着力を実現するという点より、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含むことが好ましい。極性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ビニル基含有モノマー等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。上記カルボキシル基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。中でも2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。上記水酸基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記ビニル基含有モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。これらのうち、酢酸ビニルが好ましい。上記ビニル基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記アクリル系ポリマーにおける、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合は、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましい。極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合が0.1質量%以上であると、凝集力を確保して電解質含有粘着剤層の分離後の被着体表面での糊残りを抑えることができる。また、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合が30質量%以下であると、上記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットの特性をアクリル系ポリマーにおいて適切に発現させることができる。
また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、アクリル系ポリマーに架橋構造を導入して、必要な凝集力を得やすくするという点より、多官能モノマーが含まれていてもよい。
上記多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N´−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。上記多官能モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記多官能モノマーの含有量は、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100質量部)に対して、0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。上記多官能モノマーの含有量の上限は、より好ましくは10質量部であり、下限は、より好ましくは3質量部である。多官能モノマーの含有量が、0.1質量部以上であると、粘着剤層の柔軟性、接着性が向上しやすくなり好ましい。多官能モノマーの含有量が、15質量部以下であると、凝集力が高くなりすぎず、適度な接着性が得やすくなる。
上記粘着剤組成物におけるポリマーの含有量は、電解質含有粘着剤層において充分な接着力を実現するという点より、粘着剤組成物全体に対して、70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。
上記ポリマーは、上記モノマー成分を(共)重合することにより得ることができる。重合方法としては、特に限定されないが、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、光重合(活性エネルギー線重合)法等が挙げられる。特に、コストや生産性の点より、溶液重合法が好ましい。上記ポリマーは、共重合させた場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
上記溶液重合法としては、特に限定されないが、モノマー成分、重合開始剤等を、溶剤に溶解し、加熱して重合し、ポリマーを含むポリマー溶液を得る方法等が挙げられる。
溶液重合法に用いられる上記溶剤としては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤(重合溶剤)としては、特に限定されないが、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤等が挙げられる。上記溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記溶剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリマーを構成する全モノマー成分全量(100質量部)に対して、10質量部以上1000質量部以下が好ましい。上記溶剤の含有量の上限は、より好ましくは500質量部であり、下限は、より好ましくは50質量部である。
溶液重合法に用いられる上記重合開始剤としては、特に限定されないが、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。上記過酸化物系重合開始剤としては、特に限定されないが、パーオキシカーボネート、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等が挙げられ、より具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等が挙げられる。上記アゾ系重合開始剤としては、特に限定されないが、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等が挙げられる。上記重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリマーを構成する全モノマー成分全量(100質量部)に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。上記重合開始剤の含有量の上限は、より好ましくは3質量部である。また、上記重合開始剤の含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部である。
上記溶液重合法で、加熱して重合する際の加熱温度としては、特に限定されないが、50℃以上80℃以下が好ましい。加熱時間としては、特に限定されないが、1時間以上24時間以下が好ましい。
上記ポリマー(特に、上記アクリル系ポリマー)の重量平均分子量は、特に限定されないが、10万以上500万以下が好ましい。上記重量平均分子量の上限は、より好ましくは400万であり、さらに好ましくは300万であり、下限は、より好ましくは20万であり、さらに好ましくは30万である。重量平均分子量が10万より大きいと、凝集力が小さくなり、粘着剤層を分離した後の被着体表面に糊残りが生じ、分離した後の被着体表面の濡れ性、接着性の効果が得られないという不具合を効果的に抑制できる。また、重量平均分子量が500万より小さいと、粘着剤層を分離した後の被着体表面の濡れ性が不十分となるという不具合を効果的に抑制できる。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定して得られたものであり、より具体的には、例えば、GPC測定装置として、商品名「HLC−8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件にて測定し、標準ポリスチレン換算値により算出することができる。
(分子量測定条件)
・サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:10μL
・サンプルカラム:TSKguardcolumn SuperHZ−H(1本)+TSKgel SuperHZM−H(2本)
・リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC(1本)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
上記ポリマー(特にアクリル系ポリマー)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下、特に好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。ガラス転移温度が0℃以下であると、初期接着力の低下を抑制できる。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、下記式(X)(Fox式)に基づいて計算することができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (X)
[式(X)中、Tgはポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はモノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す]
上記式(X)は、ポリマーが、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
なお、上記ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度とは、当該モノマーの単独重合体のガラス転移温度を意味し、あるモノマー(「モノマーX」と称する場合がある)のみをモノマー成分として形成される重合体のガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc,1989年)に数値が挙げられている。なお、前記文献に記載されていない単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、以下の測定方法により得られる値をいう。すなわち、温度計、撹拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマーX100質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルをアルミニウム製のオープンセルに約1〜2mg秤量し、温度変調DSC(商品名「Q−2000」 ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50ml/minの窒素雰囲気下で昇温速度5℃/minにて、ホモポリマーのReversing Heat Flow(比熱成分)挙動を得る。JIS−K−7121を参考にして、得られたReversing Heat Flowの低温側のベースラインと高温側のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をホモポリマーとした時のガラス転移温度(Tg)とする。
電解質含有粘着剤層に含有される電解質は、アニオンとカチオンに電離可能な物質であり、そのような電解質としては、イオン液体や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。電解質含有粘着剤層において良好な電気剥離性を実現するという点より、電解質含有粘着剤層に含有される電解質としては、イオン液体が好ましい。イオン液体は、室温(約25℃)で液体の塩であってアニオンとカチオンとを含む。
上記イオン液体のアニオンとしては、例えば、(FSO2)2N-,(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)3C-,Br-,AlCl4 -,Al2Cl7 -,NO3 -,BF4 -,PF6 -,CH3COO-,CF3COO-,CF3CF2CF2COO-,CF3SO3 -,CF3(CF2)3SO3 -,AsF6 -,SbF6 -,F(HF)n - (nは1以上の整数を表す)等が挙げられる。上記アニオンは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記イオン液体のカチオンは、例えば、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、アンモニウム系カチオン等が挙げられる。上記カチオンは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へプチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ノニル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ウンデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−トリデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ペンタデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプタデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ウンデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ビス(ドデシル)イミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
上記ピリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。
上記ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
上記アンモニウム系カチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、テトラデシトリヘキシルアンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルアミノエチルアクリレートカチオン等が挙げられる。
上記イオン液体の市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「エレクセルAS−110」、「エレクセルMP−442」、「エレクセルIL−210」、「エレクセルMP−471」、「エレクセルMP−456」、「エレクセルAS−804」等を用いることができる。
電解質としてイオン液体を用いた場合、電解質含有粘着剤層の厚さ方向において、電圧印加時に主にカチオンが陰極(マイナス極)側に移動して粘着剤層と被着体の界面付近に偏ることで剥離性が生じると考えられる。イオン液体のカチオンとして、分子量が200以下のカチオンを用いることが好ましく、より好ましくは分子量が180以下、さらに好ましくは分子量が160以下である。分子量が200以下のカチオンを用いると、電解質含有粘着剤層中の陰極(マイナス極)側へのカチオンの移動が容易になり、結果として低い電圧を短時間印加した場合であっても、剥離性がより良くなると考えられる。
上記イオン液体のイオン導電率は、特に制限されないが、0.1mS/cm以上10mS/cm以下が好ましい。イオン導電率の上限は、より好ましくは5mS/cm、さらに好ましくは3mS/cmであり、下限は、より好ましくは0.3mS/cm、さらに好ましくは0.5mS/cmである。イオン液体がこの範囲のイオン導電率を有する場合、低い電圧であっても十分な剥離性が得られる。なお、上記イオン導電率は、例えば、Solartron社製1260周波数応答アナライザを用い、ACインピーダンス法により測定することができる。
上記イオン液体の含有量は、特に制限されないが、上記ポリマー100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、上記イオン液体の上限は、より好ましくは20質量部、さらに好ましくは15質量部、特に好ましくは10質量部、最も好ましくは5質量部であり、下限は、より好ましくは0.6質量部、さらに好ましくは0.8質量部、特に好ましくは1.0質量部、最も好ましくは1.5質量部である。0.5質量部未満であると、通電しても剥離性が得られにくくなる。30質量部を超えると、これ以上の剥離性が得られず、非電圧印加(通常)時の粘着性が低下するおそれがある。
上記アルカリ金属塩としては、例えば、LiCl,Li2SO4,LiBF4,LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiCF3SO3,LiN(SO2CF3)2,LiN(SO2C2F5)2,LiC(SO2CF3)3,NaCl,Na2SO4,NaBF4,NaPF6,NaClO4,NaAsF6,NaCF3SO3,NaN(SO2CF3)2,NaN(SO2C2F5)2,NaC(SO2CF3)3,KCl,K2SO4,KBF4,KPF6,KClO4,KAsF6,KCF3SO3,KN(SO2CF3)2,KN(SO2C2F5)2,KC(SO2CF3)3等が挙げられる。
上記電解質の含有量は、電解質含有粘着剤層において良好な接着力と電気剥離性とをバランス良く実現するという点より、電解質含有粘着剤層を形成する粘着剤組成物全体に対して、0.1質量%以上30質量部以下が好ましい。上記電解質の含有量の上限は、より好ましくは20質量%、さらに好ましくは10質量%、特に好ましくは8質量%であり、上記電解質の含有量の下限は、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%、特に好ましくは1.5質量%である。
また、上記電解質の含有量は、上記ポリマー100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下が好ましい。上記電解質の含有量の上限は、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、上記電解質の含有量の下限は、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、特に好ましくは1.5質量部以上である。
上記ポリマーを架橋させることによりクリープ性やせん断性を改良する目的で必要に応じて、上記粘着剤組成物に架橋剤を含有してもよい。上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤としては、トルエンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート等が挙げられる。上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N´,N´−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記架橋剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましい。なお、上記架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、電圧印加時のイオン液体の移動を助ける目的で必要に応じて、ポリエチレングリコールを含有してもよい。上記ポリエチレングリコールとしては、200〜6000の数平均分子量を有するものを使用できる。上記ポリエチレングリコールの含有量は、ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましい。
本発明では、電解質含有粘着剤層に導電性を付与する目的で必要に応じて、粘着剤組成物に導電性フィラーを含有させてもよい。導電性フィラーとしては、特に限定されず、一般的な公知乃至慣用の導電性フィラーを用いることができ、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、銀や銅等の金属粉等を用いることができる。上記導電性フィラーの含有量は、ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下が好ましい。
上記粘着剤組成物では、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記架橋剤、ポリエチレングリコール、導電性フィラー以外の充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤)、防錆剤、接着付与樹脂、帯電防止剤等の各種添加剤を含有することができる。なお、上記添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記充填剤としては、例えば、シリカ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられる。
上記可塑剤は、一般的な樹脂組成物等に用いられる公知乃至慣用の可塑剤を用いることができ、例えば、パラフィンオイル、プロセスオイル等のオイル、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状エチレン−プロピレンゴム等の液状ゴム、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、コハク酸イソデシル等が挙げられる。
上記老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物が挙げられる。上記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。上記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。上記防錆剤としては、例えば、ジンクホスフェート、タンニン酸誘導体、リン酸エステル、塩基性スルホン酸塩、各種防錆顔料等が挙げられる。上記接着付与剤としては、例えば、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。上記帯電防止剤としては、一般的に、第4級アンモニウム塩、あるいはポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
上記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂の他、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等が挙げられる。なお、上記粘着付与樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記添加剤の含有量(配合量)は、特に制限されないが、上記ポリマー100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下が好ましく、上記添加剤の上限は、より好ましくは10質量部、さらに好ましくは5質量部である。
電解質含有粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、特に制限されないが、上記ポリマー、電解質、必要に応じて配合する、上記架橋剤、ポリエチレングリコール、導電性フィラー、添加剤等を適宜撹拌して混合することで製造することができる。なお、上記粘着剤組成物として、ポリマーを重合する際に用いた上記溶剤を含んでもよい。
上記電解質含有粘着剤層の製造方法は、公知乃至慣用の製造方法を用いることができる。例えば、電解質含有粘着剤層は、上記粘着剤組成物を必要に応じて溶剤に溶した溶液を、セパレータ上に塗布し、乾燥および/または硬化する方法等が挙げられる。また、上記電解質非含有粘着剤層は、電解質を含まない粘着剤組成物を必要に応じて溶剤に溶した溶液を、セパレータ上に塗布し、乾燥および/または硬化する方法等が挙げられる。なお、溶剤は、上記で挙げたものを使用することができる。
上記塗布に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーロールコーター等)を用いることができる。
上記方法により、電解質含有粘着剤層を製造することができ、適宜、上記基材、導電層、通電用基材に電解質含有粘着剤層および電解質非含有粘着剤層を積層させることで、上記粘着シートを製造することができる。なお、上記セパレータの代わりに、上記基材、導電層、通電用基材を用いて、これらに粘着剤組成物を塗布して粘着シートを製造してもよい。なお、電解質を含まない電解質非含有粘着剤層は、粘着剤組成物に電解質を使用しない以外は、上記電解質含有粘着剤層の製造方法と同様に製造することができる。
電解質含有粘着剤層の非電圧印加(通常)時の接着力(初期接着力)は、特に制限されないが、180°ピール試験(引張速度:300mm/min)における接着力として、0.1以上40以下が好ましい。接着力の上限は、より好ましくは20であり、さらに好ましくは10であり、特に好ましくは5であり、下限は、より好ましくは0.3であり、さらに好ましくは0.5、特に好ましくは0.8である。接着力が0.1未満であると、接着力が十分でなく剥がれてしまうことがあり、40を超えると電圧印加しても剥がせなくなることがある。上記接着力の単位は、N/cmである。なお、上記初期接着力は、粘着シートを被着体(SUS304)に貼り付け、2kgのローラーで1往復押圧し、30分間放置後、剥離試験機にて、180°ピールした場合における接着力である。
電解質含有粘着剤層の電圧印加後(電圧を停止してから10秒後)の接着力(剥離力)
は、特に制限されないが、180°ピール試験(引張速度:300mm/min)における接着力として、1.0以下が好ましく、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.1以下である。接着力が1.0を超えると、被着体から剥がせなくなることがある。上記接着力の単位は、N/cmである。なお、上記接着力は、粘着シートを被着体(SUS304)に貼り付け、2kgのローラーで1往復押圧し、30分間放置後、10Vの電圧を30秒間印加した後、電圧を停止してから10秒後、剥離試験機にて、180°ピールした場合における接着力である。
電解質含有粘着剤層の電圧印加後の接着力回復率[(上記粘着シートの電圧印加後(電圧を停止してから10秒後)の接着力/上記初期接着力)×100]は、特に制限されないが、30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。上記接着力回復率は、電圧を停止してから10秒後の回復率であり、接着力回復率が30%を超えると、電圧印加時若しくは直後における剥離性が良くても、電圧を停止してから短時間(例えば、3秒)で接着力が回復してしまい、分離作業ができなくなってしまう。したがって、極力、電圧を停止してから10秒後の接着力回復率が小さいことが好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。合成例1〜4における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により上記記載の方法で測定されたものである。また、下記合成例1〜4におけるガラス転移温度(Tg)は、上記明細書記載のFox式より計算した温度である。
[合成例1]
(アクリル系ポリマー1溶液の作製)
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート(BA):95質量部、アクリル酸(AA):5質量部、および重合溶媒として酢酸エチル:150質量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2質量部を加え、63℃に昇温して6時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、固形分濃度40重量%のアクリル系ポリマー1溶液を得た。なお、上記アクリル系ポリマー1溶液におけるアクリル系ポリマー1の重量平均分子量は、50万であり、これを硬化させたときのガラス転移温度(Tg)は、−50℃であった。
[合成例2]
(アクリル系ポリマー2溶液の作製)
モノマー成分として、イソノニルアクリレート(iNA):80質量部、メトキシエチルアクリレート(MEA):15質量部、アクリル酸(AA):5質量部、および重合溶媒として酢酸エチル:150質量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル:0.2質量部を加え、63℃に昇温して10時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、固形分濃度40重量%のアクリル系ポリマー2溶液を得た。なお、上記アクリル系ポリマー2溶液におけるアクリル系ポリマー2の重量平均分子量は、60万であり、これを硬化させたときのガラス転移温度(Tg)は、−55℃であった。
[合成例3]
(アクリル系ポリマー3溶液の作製)
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート(BA):80質量部、酢酸ビニル(VAc):15質量部、アクリル酸(AA):5質量部、および重合溶媒として酢酸エチル:150質量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2質量部を加え、63℃に昇温して10時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、固形分濃度40重量%のアクリル系ポリマー3溶液を得た。なお、上記アクリル系ポリマー3溶液におけるアクリル系ポリマー3の重量平均分子量は、70万であり、これを硬化させたときのガラス転移温度(Tg)は、−40℃であった。
[合成例4]
(アクリル系ポリマー4溶液の作製)
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート(BA):70質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):25質量部、アクリル酸(AA):5質量部、および重合溶媒として酢酸エチル:150質量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN):0.2質量部を加え、63℃に昇温して10時間反応させた。その後、酢酸エチルを加え、固形分濃度40重量%のアクリル系ポリマー4溶液を得た。なお、上記アクリル系ポリマー4溶液におけるアクリル系ポリマー4の重量平均分子量は、70万であり、これを硬化させたときのガラス転移温度(Tg)は、−54℃であった。
[実施例1〜15]
下記表1に記載の割合で、上記合成例1〜4で得られたアクリル系ポリマー1〜4、および各電解質(イオン液体)を加えて撹拌、混合し、各電解質含有粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、表面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレートセパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)社製)の剥離処理面上に、アプリケータを用いて厚さが30μmとなるように塗布して、粘着剤組成物層を得た。次に、130℃で3分間の加熱乾燥を行い、粘着剤層を形成させ、各電解質含有粘着剤層(粘着シート;S1〜15)を得た。得られた各電解質含有粘着剤層(粘着シート)について、以下の評価を行った。この結果を表1に示す。表1中の−については、評価を実施していない。なお、ポリマーおよびイオン液体の配合量の単位は、質量部である。
[評価]
(初期接着力)
電解質含有粘着剤層(粘着シート;S1〜15)を10mm×80mmのサイズのシートとし、セパレータのない面に、基材として金属層付きフィルム(商品名「BR1075」、東レフィルム加工(株)社製、厚さ25μm、サイズ10mm×100mm)の金属層面を貼り合わせ、基材付き片面粘着シートとした。基材付き片面粘着シートのセパレータを剥がし、剥がした面に被着体としてステンレス板(SUS304、サイズ:30mm×120mm)を該粘着シートの一端が2mm程度被着体からはみ出すように貼り付け、2kgのローラーで1往復押圧し、30分間放置し、図4に概要を示す、ステンレス板6/粘着剤層(粘着シート)1’/金属層付きフィルム(通電用基材)5’、からなる粘着シート接合体を得た。その後、剥離試験機(商品名「変角度ピール試験機YSP」、旭精工(株)社製)にて、図4中の矢印方法にピールし、180°ピール試験(引張速度:300mm/min、剥離温度23℃)における接着力を測定した。
(電気剥離性:電圧停止10秒後の剥離力、10s後の接着力回復率)
上記初期接着力と同様に図4に概要を示す、ステンレス板6/粘着剤層(粘着シート)1’/金属層付きフィルム(通電用基材)5’、からなる粘着シート接合体を作製した。
この接合体の図4におけるαとβの箇所に直流電流機のプラス極とマイナス極の電極をそれぞれ取り付け、電圧10Vにて30秒間電圧印加を行った。その後、電極を取り外し、10秒経過後、上記剥離試験機にて、図4中の矢印方法にピールし、180°ピール試験(引張速度:300mm/min、剥離温度23℃)における接着力を測定した。この測定結果を電圧停止10s後の剥離力[N/cm]とし、
[(電圧停止10s後の剥離力/上記初期接着力)×100]としたものを10s後の接着力回復率[%]とした。
(電気剥離性:電圧印加30s後の剥離力)
上記(電気剥離性:電圧停止10秒後の剥離力、10s後の接着力回復率)と同様の接合体を作製し、この接合体の図4におけるαとβの箇所に直流電流機のプラス極とマイナス極の電極をそれぞれ取り付け、電圧10Vにて30秒間電圧印加を行った。この電圧印加30秒後(電圧印加をしながら)、上記剥離試験機にて、図4中の矢印方法にピールし、180°ピール試験(引張速度:300mm/min、剥離温度23℃)における接着力を測定し、電圧印加30s後の剥離力[N/cm]とした。
[実施例16〜20]
上記粘着シートS1を用い、表2に示すように印加電圧のみを変更し、上記(電気剥離性:電圧印加30s後の剥離力)と同様の試験を行った。この結果を表2に示す。
上記表1におけるイオン液体の略称については、以下の通りである。
AS−110 … カチオン;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、アニオン;(FSO2)2N-、商品名「エレクセルAS−110」(第一工業製薬(株)社製)
MP−442 … カチオン;グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、アニオン;(FSO2)2N-、商品名「エレクセルMP−442」(第一工業製薬(株)社製)
IL−210 … カチオン;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、アニオン;(CF3SO2)2N-、商品名「エレクセルIL−210」(第一工業製薬(株)社製)
イオン液体BMP … カチオン;1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、アニオン;(CF3SO2)2N-、商品名「N−ブチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」(関東化学(株)社製)
MP−471 …カチオン;トリメチルアミノエチルアクリレートカチオン、アニオン;(FSO2)2N-、商品名「エレクセルMP−471」(第一工業製薬(株)社製)
CIL−312 … カチオン;1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、アニオン;(CF3SO2)2N-、商品名「CIL−312」(日本カーリット(株)社製)
イオン液体EMI … カチオン;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-、商品名「1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート」(関東化学(株)社製)
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
(付記1)
電解質を含有する粘着剤層を少なくとも含む粘着シートを、被着体と接合した後、前記粘着剤層の厚さ方向に電位差を生じるように前記粘着剤層に20V未満の電圧を印加し、被着体を分離する、被着体の接合・分離方法。
(付記2)
電解質を含有する粘着剤層を少なくとも含む粘着シートにおける、
前記粘着剤層の一方の面と第1導電性被着体とを接合し、且つ、前記粘着剤層の他方の面と第2導電性被着体とを接合した後、
該第1導電性被着体と該第2導電性被着体とを介して、前記粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、
前記粘着剤層から該第1導電性被着体と該第2導電性被着体とを分離する、被着体の接合・分離方法。
(付記3)
電解質を含有する粘着剤層、電解質を含有しない粘着剤層、並びに、該電解質を含有する粘着剤層と該電解質を含有しない粘着剤層との間に位置して、該電解質を含有する粘着剤層と接合する導電層を含む積層構造を有する粘着シートにおける、
該電解質を含有する粘着剤層と導電性被着体とを接合し、且つ、該電解質を含有しない粘着剤層と他の被着体とを貼着した後、
該導電層と該導電性被着体とを介して、該電解質を含有する粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、
該電解質を含有する粘着剤層から該導電性被着体と該他の被着体とを分離する、被着体の接合・分離方法。
(付記4)
電解質を含有しない第1の粘着剤層、電解質を含有する粘着剤層、電解質を含有しない第2の粘着剤層、並びに、該電解質を含有しない第1の粘着剤層と該電解質を含有する粘着剤層との間に位置して、該電解質を含有する粘着剤層と接合する第1導電層、且つ、該電解質を含有しない第2の粘着剤層と該電解質を含有する粘着剤層との間に位置して、該電解質を含有する粘着剤層と接合する第2導電層を含む積層構造を有する粘着シートにおける、
該電解質を含有しない第1の粘着剤層と第1被着体とを貼着し、且つ、電解質を含有しない第2の粘着剤層と第2被着体とを貼着した後、 該第1導電層および該第2導電層を介して、該電解質を含有する粘着剤層に20V未満の電圧を印加することにより、
該電解質を含有する粘着剤層から該第1被着体と該第2被着体とを分離する、被着体の接合・分離方法。
(付記5)
前記電解質を含有する粘着剤層は、1μm以上1000μm以下の厚さを有する、付記1から4のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記6)
前記電圧の印加時間は60秒以内である、付記1から5のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記7)
前記電解質はイオン液体である、付記1から6のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記8)
前記イオン液体のアニオンとして、(FSO2)2N-,(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)3C-,CH3COO-,CF3COO-,CF3CF2CF2COO- ,CF3SO3 -,CF3(CF2)3SO3 -,Br-,AlCl4 -,Al2Cl7 -,NO3 -,BF4 -,PF6 -,AsF6 -,SbF6 -,およびF(HF)n - (nは1以上の整数を表す)からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、付記7に記載の被着体の接合・分離方法。
(付記9)
前記イオン液体のカチオンは、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種のカチオンである、付記7または8に記載の被着体の接合・分離方法。
(付記10)
前記イオン液体のカチオンの分子量は、200以下である、付記7から9のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記11)
前記電解質を含有する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として、ポリマーを含み、前記イオン液体の含有量は、前記ポリマー100重量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下である、付記7から10のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記12)
前記イオン液体のアニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンである、付記7から11のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。
(付記13)
前記ポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である、付記11または12に記載の被着体の接合・分離方法。
(付記14)
前記ポリマーはアクリル系ポリマーである、付記13に記載の被着体の接合・分離方法。
(付記15)
前記アクリル系ポリマーは、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを含む、付記14に記載の被着体の接合・分離方法。
(付記16)
前記粘着シートの厚さは、20μm以上3000μmである、付記1から14のいずれか一つに記載の被着体の接合・分離方法。