JP2019006876A - 抗氷核活性剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】生物に対する安全性がより高い抗氷核活性物質(過冷却促進物質)、及びこれを利用した抗氷核活性剤を提供すること。【解決手段】バナナ皮の抽出物を含有する、抗氷核活性剤。【選択図】なし
Description
本発明は、抗氷核活性剤等に関する。
水の中に異物が入っている場合、その異物が氷の核となり、その水は約0℃で凝固する。このような異物は、氷核活性物質といわれており、代表的な氷核活性物質としては、シュードモナス属の細菌、ヨウ化銀等が知られている。一方、純水は、異物を含まないので、氷の核の生成が遅れ、凝固点(0℃)よりも低い温度、例えば−39℃の温度まで冷却しても、凝固(固体化)しないことがある。このような現象は、一般に「過冷却現象」といわれている。
過冷却現象を促進する抗氷核活性物質(過冷却促進物質)が、これまでに幾つか報告されている。抗氷核活性物質を用いることにより、氷点下であっても凍らない水を作ることができる。また、抗氷核活性物質を用いることにより、植物又は動物の細胞の凍結による破壊を防ぐことができ、また一旦凍った場合でも、氷核の発生温度が低くなるので、冷凍瞬間の氷結晶の大きさをより小さくできるので、食品、生体材料(臓器保存)等の分野での応用が期待されている。
例えば、香辛料の成分であるオイゲノール(非特許文献1参照)等の低分子化合物;バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の多糖(非特許文献2参照)等の高分子化合物が抗氷核活性を示すことが報告されている。
しかしながら、これらの抗氷核活性物質は、安全性の問題から、食品、生体材料分野等での利用が困難となっていた。
また、氷核及び氷結晶の形成は、過冷却状態の液体を振動させることによっても誘発されることがある。しかしながら、従来の抗氷核活性物質は、振動に対する効果については検討されていなかった。
H.Kawahara et al, J. Antibact. Antifung. Agents, 2006, Vol. 24, pp.95-100.
Y.Yamashita et al, Biosci., Biotech. Biochem., 2002, Vol. 66, pp.948-954.
本発明は、生物に対する安全性がより高い抗氷核活性物質(過冷却促進物質)、及びこれを利用した抗氷核活性剤を提供することを課題とする。好ましくは、該課題に加えて、本発明は、振動によって誘発される氷核及び氷結晶の形成を抑制できる抗氷核活性物質(過冷却促進物質)、及びこれを利用した抗氷核活性剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、バナナ皮の抽出物が抗氷核活性能を有することを見出した。また、バナナ皮の抽出物中に含まれる、抗氷核活性能を有する物質の一部を同定した。さらに、バナナ皮の抽出物が、振動によって誘発される氷核及び氷結晶の形成を抑制できることをも見出した。本発明者はこれらの知見に基づいてさらに研究を行うことにより、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. バナナ皮の抽出物を含有する、抗氷核活性剤。
項2. 前記抽出物の抽出溶媒がアルコール及び酢酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の抗氷核活性剤。
項3. 前記抽出物が、
(工程1)バナナ皮をアルコールを用いて固液抽出する工程、
(工程2)工程1で得られた溶液を濃縮した後、水と混合する工程、及び
(工程3)工程2で得られた混合物を、酢酸アルキルエステルを用いて液液抽出する工程
を含む方法により得られた抽出物である、項2に記載の抗氷核活性剤。
(工程1)バナナ皮をアルコールを用いて固液抽出する工程、
(工程2)工程1で得られた溶液を濃縮した後、水と混合する工程、及び
(工程3)工程2で得られた混合物を、酢酸アルキルエステルを用いて液液抽出する工程
を含む方法により得られた抽出物である、項2に記載の抗氷核活性剤。
項4. 前記抽出物が、塩化第二鉄呈色反応陰性の抽出物である、項1〜3のいずれかに記載の抗氷核活性剤。
項5. 前記抽出物が、一般式(1):
[式中、R1はウロン酸からヒドロキシ基を除いてなる基を示す。R2、R3、R4及びR5は同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。R6及びR7は同一又は異なって、炭素原子数1〜4のアルキレン基を示す。]
で表される化合物を含有する抽出物である、項1〜4のいずれかに記載の抗氷核活性剤。
で表される化合物を含有する抽出物である、項1〜4のいずれかに記載の抗氷核活性剤。
項6. 一般式(1):
[式中、R1はウロン酸からヒドロキシ基を除いてなる基を示す。R2、R3、R4及びR5は同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。R6及びR7は同一又は異なって、炭素原子数1〜4のアルキレン基を示す。]
で表される化合物、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、抗氷核活性剤。
で表される化合物、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、抗氷核活性剤。
項7. 一般式(1):
[式中、R1はウロン酸からヒドロキシ基を除いてなる基を示す。R2、R3、R4及びR5は同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。R6及びR7は同一又は異なって、炭素原子数1〜4のアルキレン基を示す。]
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。
項8. 項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、抗氷核活性処理物。
項9. 項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、不凍性溶液。
項10. 項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、コーティング用組成物。
項11. 項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を表面に有する、物品。
本発明によれば、生物に対する安全性がより高い抗氷核活性剤を提供することができる。本発明の抗氷核活性剤によれば、振動によって誘発される氷核及び氷結晶の形成を抑制することもできる。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
1.抗氷核活性剤
本発明は、その一態様として、バナナ皮の抽出物を含有する、抗氷核活性剤(本明細書において、「本発明の抗氷核活性剤1」と示すこともある。)に関する。以下にこれについて説明する。
本発明は、その一態様として、バナナ皮の抽出物を含有する、抗氷核活性剤(本明細書において、「本発明の抗氷核活性剤1」と示すこともある。)に関する。以下にこれについて説明する。
バナナ皮は、バナナを食する際に、可食部を露出させるために剥いて得られる皮であり、この限りにおいて特に制限されない。バナナ皮は、通常、表面を構成している外皮と、外側の内側の内皮に分けることができる。通常、外皮は黄色又は緑色を呈しており、内皮は白色を呈している。なお、バナナの皮を手で剥いた際に、バナナ可食部の表面に白い筋状のものが付着していることがあるが、これも内皮に包含される。バナナ皮としては、内皮、外皮、及び内皮と外皮の両方のいずれを用いることもできるが、好ましくは内皮又は内皮と外皮の両方が用いられ、より好ましくは内皮が用いられる。
バナナの品種は特に制限されず、原種及び栽培種のいずれからもバナナ皮を得ることができる。バナナの品種としては、例えばキャベンディッシュ、ラカタン、レディ・フィンガー、シマバナナ、プランテン、グロスミッチェル、ハイランド、楽園の実(Musa. paradisiaca)、知恵の実(Musa. sapientum)等が挙げられる。
バナナ皮の抽出物は、バナナ皮を溶媒を用いて抽出して得られる抽出物又はその精製物である限り、特に制限されない。
抽出に供されるバナナ皮は、必要に応じて裁断しておくことが好ましい。
抽出溶媒は、特に制限されない。抽出溶媒としては、例えば水; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等アルコール; 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸アルキルエステル; 超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルコール(中でもエタノール)、酢酸アルキルエステル(中でも酢酸エチル)等が挙げられる。
抽出溶媒は1種単独でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
抽出方法としては、特に制限されず、例えば固液抽出、液液抽出等を単独で、或いは適宜組み合わせて採用することができる。典型的には、バナナ皮を固液抽出する方法や、バナナ皮を固液抽出した後、必要に応じて溶媒置換をしてから、液液抽出する方法が挙げられる。後者の場合、固液抽出の溶媒としてはアルコールが好ましく、液液抽出の際に加える溶媒としては酢酸アルキルエステルが好ましい。また、この液液抽出する場合、固液抽出後に水への溶媒置換を行うことが好ましい。溶媒置換の方法としては、特に制限されず、例えば固液抽出により得られた溶液を濃縮(例えば、減圧、加熱等によって濃縮)した後、水と混合する方法が挙げられる。なお、この場合の水のpHは、特に制限されないが、液液抽出の際に加える溶媒が酢酸アルキルエステルである場合であれば酸性であることが好ましく、より具体的には1〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2.5〜3.5であることがさらに好ましい。
抽出溶媒の量は、抽出方法によって異なり、特に制限されない。バナナ皮の固液抽出の場合の抽出溶媒の量は、例えばバナナ皮100質量部に対して、例えば30〜1000質量部、好ましくは70〜600質量部、より好ましくは100〜400質量部、さらに好ましくは120〜300質量部、よりさらに好ましくは140〜250質量部である。バナナ皮を固液抽出した後に液液抽出の際に加える抽出溶媒の量は、例えばバナナ皮の固液抽出により得られた抽出液又は溶媒置換後の溶液100容量に対して、例えば30〜1000容量、好ましくは70〜600容量、より好ましくは100〜400容量、さらに好ましくは120〜300容量、よりさらに好ましくは150〜250容量である。
抽出時の溶媒の温度は、特に制限されず、通常は常温でよい。固液抽出の際に用いる溶媒が水である場合であれば、比較的高温の水を用いることが好ましい。この場合の水の温度としては、例えば60〜100℃、好ましくは80〜100℃、より好ましくは95℃〜100℃である。
抽出時間は、抽出方法、溶媒、温度等によって異なり、特に制限されない。例えばバナナ皮を固液抽出する場合であれば、例えば4時間〜48時間、好ましくは8〜24時間、より好ましくは12〜20時間である。
抽出後は、精製を行うことが好ましい。精製方法としては、特に制限されず、公知の精製方法を採用することができる。精製方法としては、好ましくはクロマトグラフィーが挙げられる。
クロマトグラフィーとしては、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ケイ酸カラムクロマトグラフィー、逆相分配カラムクロマトグラフィー、順相分配カラムクロマトグラフィー、シリカゲルを化学修飾した-RP、-CN、若しくは-Diol等を用いたクロマトグラフィー等が挙げられる、好ましくはゲルろ過クロマトグラフィーが挙げられる。
精製の際の指標としては、284nm前後(例えば270nm〜300nm、好ましくは280〜290nm)の波長の吸光度や、332nm前後(例えば310〜345nm、好ましくは317〜337nm)の波長の吸光度がより高いことを採用することが好ましい。これらを指標として精製することにより、抗氷核活性能がより高い精製物を得ることができる。
バナナ皮の抽出物の好ましい呈色反応は以下のとおりである。下記各種呈色反応の陽性又は陰性は、公知の方法に従って又は準じて、判定することができる:
・バナナ皮の抽出物は、好ましくは塩化第二鉄呈色反応が陰性である。
・バナナ皮の抽出物は、好ましくはBCG呈色反応及び2,4-ジニトロフェニルヒドラジン呈色反応が陽性である。
・バナナ皮の抽出物は、好ましくはニンヒドリン呈色反応が陽性である。
・バナナ皮の抽出物は、好ましくは塩化第二鉄呈色反応が陰性である。
・バナナ皮の抽出物は、好ましくはBCG呈色反応及び2,4-ジニトロフェニルヒドラジン呈色反応が陽性である。
・バナナ皮の抽出物は、好ましくはニンヒドリン呈色反応が陽性である。
バナナ皮の抽出物は、好ましくは、一般式(1):
[式中、R1はウロン酸からヒドロキシ基を除いてなる基を示す。R2、R3、R4及びR5は同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。R6及びR7は同一又は異なって、炭素原子数1〜4のアルキレン基を示す。]
で表される化合物を含有する。
で表される化合物を含有する。
ウロン酸は、特に制限されず、例えばグルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等の炭素数6つのウロン酸が挙げられる。ウロン酸としては、下記式:
で表されるウロン酸が好ましい。
ウロン酸から除かれているヒドロキシ基は、特に制限されないが、カルボキシル基を構成していないヒドロキシ基が好ましく、炭素数6つのウロン酸であれば4番炭素に結合しているヒドロキシ基がより好ましい。
R2、R3、R4又はR5で示されるアルキル基は、特に制限されず、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含する。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、さらに好ましくは1である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。
R6又はR7で示されるアルキレン基は、特に制限されず、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含する。該アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2であり、さらに好ましくは、R6で示されるアルキレン基については2であり、R7で示されるアルキレン基については1である。該アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば300〜600、好ましくは350〜550、より好ましくは400〜500、さらに好ましくは420〜480、よりさらに好ましくは440〜460である。
一般式(1)で表される化合物は、塩の形態も包含する。該塩としては、特に制限されず、塩基性塩、酸性塩が挙げられる。塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物は、溶媒和物の形態も包含する。溶媒としては、例えば、水や、有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。
本発明は、その一態様として、上記一般式(1)で表される化合物、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、抗氷核活性剤(本明細書において、「本発明の抗氷核活性剤2」と示すこともある。)にも関する。また、本発明は、その一態様として、上記一般式(1)で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物(本明細書において、「本発明の化合物」と示すこともある。)に関する。なお、本発明の抗氷核活性剤1と本発明の抗氷核活性剤2とを合わせて、「本発明の抗氷核活性剤」と示すこともある。
本発明の抗氷核活性剤は、バナナ皮の抽出物や本発明の化合物(以下、これらをまとめて「有効成分」と示すこともある。)以外にも、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
本発明の抗氷核活性剤の剤形としては、特に限定はなく、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、クリーム、軟膏等の剤形が挙げられる。
本発明の抗氷核活性剤の有効成分の含有量(固形分換算)は、特に限定はされないが、例えば例えば0.0001〜100質量%、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜20%とすることができる。
本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物の用途は例えば以下のとおりである。
本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物は、食品、飲料等の品質保持剤(又は液)(食品保存剤(又は液)、飲料保存剤(又は液))等の食品分野;細胞保存剤(又は液)、血液保存剤(又は液)、臓器保存剤(又は液)等の医療分野等の医療分野;化粧品分野;霜害防除剤(又は液)、塗料等の環境分野等に広く適用することができる。また、本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物を用いることにより、生物材料や食品の抗氷核活性を向上させる方法、生物材料や食品の保存方法を提供することもできる。
食品保存の対象としては、例えば野菜、魚、肉(鶏肉、豚肉、牛肉等)等の生鮮食品;ジュース、豆腐、高野豆腐等の加工食品等が挙げられる。本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物を使用することで保存(鮮度保持)が可能であり、これら食品を輸入、輸送等する際、凍結保存から過冷却保存へと変換することが可能であることから、電力エネルギー等の削減が可能となる。
細胞保存の対象としては、植物、動物等の細胞であれば特に限定はなく、例えば、ヒト細胞、精子、卵子等が挙げられる。本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物を使用することで細胞が破壊されずに保存することが可能となる。
血液保存の対象としては、ヒト、動物(ヒトを除く)の血液であれば特に限定はなく、例えば、全血、血漿、血清等が挙げられ、さらに、本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物は、血液成分である白血球、赤血球、血漿、血小板等にも使用できる。
臓器保存の対象としては、ヒト、動物(ヒトを除く)の臓器又はその一部であれば特に限定はない。本発明の抗氷核活性剤や本発明の化合物を、臓器移植時に取り出した臓器の保存液;臓器の長期保管する際の保存液等に利用することができる。
霜害防除の対象としては、コンピューター、車のエンジン等の冷却液;冷凍庫等の着霜防止剤、車窓ガラスの曇り防止剤、トンネル結露防止剤等が挙げられる。
本発明の抗氷核活性剤は、液体及び固体のいずれの形態も含む。例えば、本発明の抗氷核活性剤が固体である場合、生物材料[例えば、食品(例えば、食用、観賞用等の魚介類;野菜等の植物;牛肉、豚肉、鶏肉等の食用肉;豆腐、ヨーグルト等のタンパク質変性した加工品;飲料)、生体材料(例えば、植物又は動物の細胞(組織);人間又は動物の血液;人間又は動物の臓器又はその一部)]や液体[例えば水、冷媒等]に対して固体である本発明の抗氷核活性剤を接触させることで、該生物材料の水分や液体に有効成分が溶解し、抗氷核活性能を発揮させることができる。また、本発明の抗氷核活性剤が液体である場合、上記生物材料や液体に対して液体である本発明の抗氷核活性剤を接触(例えば、噴霧、滴下、浸漬等)させることで、該生物材料や液体の抗氷核活性剤として利用することができる。
2.抗氷核活性処理物
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、抗氷核活性処理物(本明細書において、「本発明の抗氷核活性処理物」と示すこともある。)に関する。
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、抗氷核活性処理物(本明細書において、「本発明の抗氷核活性処理物」と示すこともある。)に関する。
本発明の抗氷核活性処理物は、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を用いて、対象物(例えば、上述の生物材料)を処理することによって得ることができる。本発明の抗氷核活性処理物は、より低温下でもより凍結し難く、仮に凍結しても、冷凍瞬間の氷結晶の大きさをより小さくでき、また振動により誘発され得る氷核及び氷結晶の形成がより抑制されている。
本発明の抗氷核活性処理物中の有効成分の含有量(固形分換算)は、例えば0.1〜100mg/mL、好ましくは0.5〜50mg/mL、より好ましくは2〜20mg/mLである。
3.不凍性溶液
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、不凍性溶液(本明細書において、「本発明の不凍性溶液」と示すこともある。)に関する。
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、不凍性溶液(本明細書において、「本発明の不凍性溶液」と示すこともある。)に関する。
本発明の不凍性溶液は、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を用いて、溶媒又は溶液(例えば、水や冷媒)を処理することによって得ることができる。本発明の不凍性溶液は、より低温下でもより凍結し難く、仮に凍結しても、冷凍瞬間の氷結晶の大きさをより小さくでき、また振動により誘発され得る氷核及び氷結晶の形成がより抑制されている。
本発明の不凍性溶液中の有効成分の含有量(固形分換算)は、例えば0.1〜100mg/mL、好ましくは0.5〜50mg/mL、より好ましくは2〜20mg/mLである。
4.コーティング用組成物
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、コーティング用組成物(本明細書において、「本発明のコーティング用組成物」と示すこともある。)に関する。また、本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を表面に有する、物品(本明細書において、「本発明のコーティング物品」と示すこともある。)に関する。
本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を含有する、コーティング用組成物(本明細書において、「本発明のコーティング用組成物」と示すこともある。)に関する。また、本発明は、その一態様として、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を表面に有する、物品(本明細書において、「本発明のコーティング物品」と示すこともある。)に関する。
本発明のコーティング用組成物は、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物を用いてコーディング用組成物を調製することによって得ることができる。本発明のコーディング用組成物で処理された表面は、着雪や着氷が抑制される。
本発明のコーティング用組成物中の有効成分の含有量(固形分換算)は、例えば0.1〜100mg/mL、好ましくは0.5〜50mg/mL、より好ましくは2〜20mg/mLである。
本発明のコーディング用組成物は、本発明の抗氷核活性剤又は本発明の化合物以外に、コーティングに用いるために必要な他の成分を含むことが好ましい。他の成分としては、例えばバインダー、溶媒等が挙げられる。
本発明のコーティング用組成物の対象となる物品は、特に制限されない。該物品としては、好ましくは、氷が付着し得る環境下で使用される物が挙げられる。このような物の具体例としては、航空機、船舶、電車、自動車等の乗り物、建造物の屋根や外壁、アンテナ、電線、防寒具、信号機、熱交換器、これらの部品(特に、外気と接触し得る表面を構成する部品)等が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
調製例1.バナナ皮の調製
市販のバナナから皮を手で剥いた。皮の裏側(実と接触している側)に付着している白い部分(内皮)を削ぎ取り、これを「バナナ皮」として、以下の参考例で使用した。
市販のバナナから皮を手で剥いた。皮の裏側(実と接触している側)に付着している白い部分(内皮)を削ぎ取り、これを「バナナ皮」として、以下の参考例で使用した。
調製例2.バナナ皮抽出物の調製1
バナナ皮800gを、エタノール又はメタノール1.6Lに浸漬して16時間放置した。ガーゼでろ過し、得られたろ液を遠心分離(12100g、15分間)した。上清を減圧濃縮してから、水に再懸濁して(固形分濃度:10mg/mL)、バナナ皮エタノール抽出物又はバナナ皮メタノール抽出物を得た。
バナナ皮800gを、エタノール又はメタノール1.6Lに浸漬して16時間放置した。ガーゼでろ過し、得られたろ液を遠心分離(12100g、15分間)した。上清を減圧濃縮してから、水に再懸濁して(固形分濃度:10mg/mL)、バナナ皮エタノール抽出物又はバナナ皮メタノール抽出物を得た。
調製例3.バナナ皮抽出物の調製2
バナナ皮800gを、沸騰水0.8Lを用いて30分間、熱水抽出した。ガーゼでろ過し、得られたろ液を遠心分離(12100g、15分間)した。上清を減圧濃縮してから、水に再懸濁して(固形分濃度:10mg/mL)、バナナ皮熱水抽出物を得た。
バナナ皮800gを、沸騰水0.8Lを用いて30分間、熱水抽出した。ガーゼでろ過し、得られたろ液を遠心分離(12100g、15分間)した。上清を減圧濃縮してから、水に再懸濁して(固形分濃度:10mg/mL)、バナナ皮熱水抽出物を得た。
調製例4.バナナ皮抽出物の調製3
調製例2で得られたバナナ皮エタノール抽出物及びバナナ皮メタノール抽出物それぞれを水で希釈して、固形分濃度を10mg/mLとした。得られた希釈液をpH3.0に調整した後、2倍量の酢酸エチルで分液した。酢酸エチル層及び水層それぞれを濃縮してから、水に再懸濁(固形分濃度:10mg/mL)して、バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)、バナナ皮エタノール抽出物(水層)、バナナ皮メタノール抽出物(酢酸エチル層)、及びバナナ皮メタノール抽出物(水層)を得た。
調製例2で得られたバナナ皮エタノール抽出物及びバナナ皮メタノール抽出物それぞれを水で希釈して、固形分濃度を10mg/mLとした。得られた希釈液をpH3.0に調整した後、2倍量の酢酸エチルで分液した。酢酸エチル層及び水層それぞれを濃縮してから、水に再懸濁(固形分濃度:10mg/mL)して、バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)、バナナ皮エタノール抽出物(水層)、バナナ皮メタノール抽出物(酢酸エチル層)、及びバナナ皮メタノール抽出物(水層)を得た。
調製例5.バナナ皮抽出物の精製
調製例4で得られたバナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)を、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。精製条件は次のとおりである。インジェクトサンプル:
バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)(固形分濃度50 mg/ml)2mL、担体:Sephadex LH-20、カラム:15mm ×1000 mm、流速:1.5ml/min、フラクション容量:3 mL、溶出溶媒:エタノール。結果を図3に示す。
調製例4で得られたバナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)を、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。精製条件は次のとおりである。インジェクトサンプル:
バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)(固形分濃度50 mg/ml)2mL、担体:Sephadex LH-20、カラム:15mm ×1000 mm、流速:1.5ml/min、フラクション容量:3 mL、溶出溶媒:エタノール。結果を図3に示す。
図3に示されるように、4つの主なピーク(ピーク1、ピーク2、ピーク3、及びピーク4)が確認された。特に、1で示されるピークが高かった。
試験例1.バナナ皮抽出物の抗氷核活性(過冷却促進活性)の評価1
調製例2〜3で得られたバナナ皮抽出物(バナナ皮エタノール抽出物、バナナ皮メタノール抽出物、及びバナナ皮熱水抽出物)それぞれについて、下記の方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。
調製例2〜3で得られたバナナ皮抽出物(バナナ皮エタノール抽出物、バナナ皮メタノール抽出物、及びバナナ皮熱水抽出物)それぞれについて、下記の方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。
バナナ皮抽出物それぞれを、150mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して、溶液1を得た。一方で、ヨウ化銀を150mMのリン酸緩衝液(pH7.0 KPB)に溶解させて、溶液2を得た。100μLの溶液1と900μLの溶液2とを混合して、ヨウ化銀濃度が1mg/mLであり且つバナナ皮抽出物由来の固形分の濃度が各種濃度である評価用サンプル液を得た。また、バナナ皮抽出物を含まない以外は評価用サンプル液と同様にして、ブランクサンプル液を得た。
抗氷核活性能(過冷却促進能)は、Valiの小滴凍結法によって測定した。具体的には、次のとおりである(図1に概要を示す。)。コールドプレート冷却装置(COOLACE CCA-1000 EYELA社製)の銅版の上にアルミニウムのフィルムを置き、アセトン及びクロロホルム(アセトン:クロロホルム=1:2の溶液)で希釈したシリコンオイル懸濁液をコーティングした。各評価用サンプル液及びブランクサンプル液を10μLずつ、得られたコーティング表面上の30箇所に滴下した。毎分1.0℃の速度で温度を低下させて、30個の小滴の50%が凍結する温度をT50とした。
各評価用サンプル液のT50をSampleT50とし、ブランクサンプル液のT50をBlankT50とした。そして、抗氷核活性値ΔT50(℃)は、式:ΔT50(℃)=BlankT50−SampleT50によって算出した。上記試験を3回行い、抗氷核活性値の平均値を算出した。結果を図2に示す。
図2に示されるように、いずれのバナナ皮抽出物も抗氷核活性能を示すことが分かった。中でも、アルコール抽出物が、特にエタノール抽出物がより高い抗氷核活性能を示すことが分かった。
試験例2.バナナ皮抽出物の抗氷核活性(過冷却促進活性)の評価2
調製例4で得られたバナナ皮抽出物(バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)、バナナ皮エタノール抽出物(水層)、バナナ皮メタノール抽出物(酢酸エチル層)、及びバナナ皮メタノール抽出物(水層))それぞれについて、試験例1と同じ方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。結果を表1に示す。表1中、「固形分濃度」は、溶液1中の、バナナ皮抽出物由来の固形分の濃度を示し、右側の2つのカラム中の数値は抗氷核活性値ΔT50(℃)をに示す。
調製例4で得られたバナナ皮抽出物(バナナ皮エタノール抽出物(酢酸エチル層)、バナナ皮エタノール抽出物(水層)、バナナ皮メタノール抽出物(酢酸エチル層)、及びバナナ皮メタノール抽出物(水層))それぞれについて、試験例1と同じ方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。結果を表1に示す。表1中、「固形分濃度」は、溶液1中の、バナナ皮抽出物由来の固形分の濃度を示し、右側の2つのカラム中の数値は抗氷核活性値ΔT50(℃)をに示す。
表1に示されるように、アルコール抽出物のいずれの層も抗氷核活性能を示すことが分かった。中でも、酢酸エチル層が比較的高い抗氷核活性能を示すことが分かった。
試験例3.バナナ皮抽出物の抗氷核活性(過冷却促進活性)の評価3
調製例5で得られた4つの主なピーク(ピーク1、ピーク2、ピーク3、及びピーク4)それぞれのフラクションについて、試験例1と同じ方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。ピーク1のフラクションを用いた場合の結果を図4に示す。
調製例5で得られた4つの主なピーク(ピーク1、ピーク2、ピーク3、及びピーク4)それぞれのフラクションについて、試験例1と同じ方法によって抗氷核活性能(過冷却促進能)を評価した。ピーク1のフラクションを用いた場合の結果を図4に示す。
図4に示されるように、ピーク1のフラクションは抗氷核活性を示した。また、ピーク2〜4それぞれのフラクションについても、ピーク1のフラクション程ではないが、抗氷核活性を示した。
試験例4.TLC呈色試験
調製例5で得られた4つの主なピーク(ピーク1、ピーク2、ピーク3、及びピーク4)それぞれのフラクションについて、TLC呈色試験を行った。具体的には以下の様にして行った。
調製例5で得られた4つの主なピーク(ピーク1、ピーク2、ピーク3、及びピーク4)それぞれのフラクションについて、TLC呈色試験を行った。具体的には以下の様にして行った。
<4-1.ニンヒドリン呈色反応>
呈色試薬には、ニンヒドリン30 mg、酢酸0.3 mL、1-ブタノール10 mLを混合したニンヒドリン試薬を用いた。また、ポジティブコントロールにはグルタミン酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、ニンヒドリン試薬を噴霧し、100℃で10分間加熱した。その結果、ニンヒドリン呈色反応は、ピーク1のみ陽性であり、ピーク2〜4は陰性であった。
呈色試薬には、ニンヒドリン30 mg、酢酸0.3 mL、1-ブタノール10 mLを混合したニンヒドリン試薬を用いた。また、ポジティブコントロールにはグルタミン酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、ニンヒドリン試薬を噴霧し、100℃で10分間加熱した。その結果、ニンヒドリン呈色反応は、ピーク1のみ陽性であり、ピーク2〜4は陰性であった。
<4-2.BCG呈色反応>
呈色試薬には、ブロモクレゾールグリーン4 mgとエタノール10 mLを混合したものに、0.1 M NaOHを青色になるまで滴下して作製するBCG試薬を用いた。また、ポジティブコントロールには酢酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、BCG試薬を噴霧した。その結果、BCG呈色反応は、ピーク1〜4全て陽性であった。
呈色試薬には、ブロモクレゾールグリーン4 mgとエタノール10 mLを混合したものに、0.1 M NaOHを青色になるまで滴下して作製するBCG試薬を用いた。また、ポジティブコントロールには酢酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、BCG試薬を噴霧した。その結果、BCG呈色反応は、ピーク1〜4全て陽性であった。
<4-3.塩化第二鉄呈色反応>
呈色試薬には、5%塩化第二鉄水溶液を用いた。また、ポジティブコントロールには没食子酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、塩化第二鉄試薬を噴霧した。その結果、塩化第二鉄呈色反応は、ピーク1〜4全て陰性であった。
呈色試薬には、5%塩化第二鉄水溶液を用いた。また、ポジティブコントロールには没食子酸を用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、塩化第二鉄試薬を噴霧した。その結果、塩化第二鉄呈色反応は、ピーク1〜4全て陰性であった。
<4-4.2,4-ジニトロフェニルヒドラジン呈色反応>
呈色試薬には、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン0.6 g、濃硫酸3 mL、水4 mLを混合した2,4-ジニトロフェニルヒドラジン試薬を用いた。また、ポジティブコントロールにはホルムアルデヒドを用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン試薬を噴霧した。その結果、塩化第二鉄呈色反応は、ピーク1〜4全て陽性であった。
呈色試薬には、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン0.6 g、濃硫酸3 mL、水4 mLを混合した2,4-ジニトロフェニルヒドラジン試薬を用いた。また、ポジティブコントロールにはホルムアルデヒドを用いた。各ピークのフラクションをろ紙(FILTER PAPER,2,90 mm)に20μLずつ滴下し、ドライヤーで乾燥させた後、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン試薬を噴霧した。その結果、塩化第二鉄呈色反応は、ピーク1〜4全て陽性であった。
<考察>
以上の結果より、ピーク1の成分においては、アミノ基、カルボニル基、ケトン、及びアルデヒド基が存在する一方、フェノール性水酸基は存在しない(又は極微量しか存在しない)ことが示唆された。また、ピーク2〜4の成分においては、カルボニル基、ケトン、及びアルデヒド基が存在する一方、アミノ基及びフェノール性水酸基は存在しない(又は極微量しか存在しない)ことが示唆された。
以上の結果より、ピーク1の成分においては、アミノ基、カルボニル基、ケトン、及びアルデヒド基が存在する一方、フェノール性水酸基は存在しない(又は極微量しか存在しない)ことが示唆された。また、ピーク2〜4の成分においては、カルボニル基、ケトン、及びアルデヒド基が存在する一方、アミノ基及びフェノール性水酸基は存在しない(又は極微量しか存在しない)ことが示唆された。
試験例5.化合物の同定
調製例5で得られたピーク1の成分を、LC-MS分析、LC-MSMS分析、及びH1-NMR分析によって調べた。なお、LC-MS分析及びLC-MSMS分析の測定条件は次のとおりである。LC(液体クロマトグラフ):Agilent 1100 series(カラム:Inertsil ODS-3 3 μm)、MS:Applied Biosystem MDS SCIEX、移動相:Milli-Q溶液(1%ギ酸)と蒸留アセトニトリル(1%ギ酸)を50%ずつ、流速:0.200 ml/min、波長284nm。LC-MS分析の結果を図5に、LC-MSMS分析の結果を図6に、H1-NMR分析の結果を図7に示す。
調製例5で得られたピーク1の成分を、LC-MS分析、LC-MSMS分析、及びH1-NMR分析によって調べた。なお、LC-MS分析及びLC-MSMS分析の測定条件は次のとおりである。LC(液体クロマトグラフ):Agilent 1100 series(カラム:Inertsil ODS-3 3 μm)、MS:Applied Biosystem MDS SCIEX、移動相:Milli-Q溶液(1%ギ酸)と蒸留アセトニトリル(1%ギ酸)を50%ずつ、流速:0.200 ml/min、波長284nm。LC-MS分析の結果を図5に、LC-MSMS分析の結果を図6に、H1-NMR分析の結果を図7に示す。
解析の結果、ピーク1の成分は、以下の式で表される化合物(分子量450)であることが分かった。
この構造式から、該化合物は、バナナ皮に含まれるポルフィリン分解物(S. Moser, T. Muller, A.Holzinger, C. Lutz, S. Jockusch, N. J.Turro,and B. Krautler(2009), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 15538-15543)がさらに分解した化合物であることが示唆された。
試験例6.飲料の凍結曲線に対する影響の解析
調製例5で得られたピーク1のフラクションを、固形分濃度が1mg/mLになるように調整した。得られた溶液100μLを、緑茶(生茶、キリン社製)又は清涼飲料水(アセロラドリンク、サントリー社製)10mLに添加して、試験液を得た。試験液を−20℃の環境下で、15秒毎に温度センサーで液温を測定しながら、一定時間放置した。緑茶を用いた場合の液温の測定結果を図8に、清涼飲料水を用いた場合の液温の測定結果を図9に示す。
調製例5で得られたピーク1のフラクションを、固形分濃度が1mg/mLになるように調整した。得られた溶液100μLを、緑茶(生茶、キリン社製)又は清涼飲料水(アセロラドリンク、サントリー社製)10mLに添加して、試験液を得た。試験液を−20℃の環境下で、15秒毎に温度センサーで液温を測定しながら、一定時間放置した。緑茶を用いた場合の液温の測定結果を図8に、清涼飲料水を用いた場合の液温の測定結果を図9に示す。
凍結曲線の最初のボトムが氷核形成開始を示す。図8及び9に示されるように、調製例5で得られたピーク1のフラクションを添加することにより、氷核形成開始が遅れることが示された。
試験例7.振動に対する影響の解析
調製例5で得られたピーク1のフラクションについて、冷凍時の振動に対する効果を解析した。具体的には以下の様にして行った。
調製例5で得られたピーク1のフラクションについて、冷凍時の振動に対する効果を解析した。具体的には以下の様にして行った。
ピーク1のフラクションを、150mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈して、溶液Aを得た。一方で、ヨウ化銀を150mMのリン酸緩衝液(pH7.0 KPB)に溶解させて、溶液Bを得た。100μLの溶液Aと900μLの溶液Bとを混合して、ヨウ化銀濃度が1mg/mLであり且つ固形分濃度が各種濃度である評価用サンプル液を得た。また、ピーク1のフラクションを含まない以外は評価用サンプル液と同様にして、ブランクサンプル液を得た。評価用サンプル液及びブランクサンプル液それぞれを1.5 mL容サンプリングチューブに入れ、−7℃にセッティングした装置(ポータブルフリーザー クーラー25L SC-C925 ツインバード社製)内で、1.5 mL容サンプリングチューブ専用ボルテックス装置(TM タイテック社製)を使用して振動させた。振動開始から一定時間経過後にチューブ内のサンプル液の凍結状態(○未凍結、△半凍結、×全凍結)を評価した。結果を表2に示す。表2中、固形分濃度は、溶液A中の固形分濃度を示す。
表2に示されるように、ピーク1のフラクションの添加により、量依存的に、振動下での凍結が抑制されることが分かった。
Claims (11)
- バナナ皮の抽出物を含有する、抗氷核活性剤。
- 前記抽出物の抽出溶媒がアルコール及び酢酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の抗氷核活性剤。
- 前記抽出物が、
(工程1)バナナ皮をアルコールを用いて固液抽出する工程、
(工程2)工程1で得られた溶液を濃縮した後、水と混合する工程、及び
(工程3)工程2で得られた混合物を、酢酸アルキルエステルを用いて液液抽出する工程
を含む方法により得られた抽出物である、請求項2に記載の抗氷核活性剤。 - 前記抽出物が、塩化第二鉄呈色反応陰性の抽出物である、請求項1〜3のいずれかに記載の抗氷核活性剤。
- 前記抽出物が、一般式(1):
で表される化合物を含有する抽出物である、請求項1〜4のいずれかに記載の抗氷核活性剤。 - 一般式(1):
で表される化合物、その塩、及びそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、抗氷核活性剤。 - 一般式(1):
で表される化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は請求項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、抗氷核活性処理物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は請求項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、不凍性溶液。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は請求項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を含有する、コーティング用組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の抗氷核活性剤、又は請求項7に記載の化合物、その塩、若しくはそれらの溶媒和物を表面に有する、物品。
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Cited By (1)
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JP7479652B1 (ja) | 2023-09-26 | 2024-05-09 | 長瀬産業株式会社 | 氷核活性剤 |
-
2017
- 2017-06-22 JP JP2017122355A patent/JP2019006876A/ja active Pending
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