JP2019005344A - 筋骨格モデルによる関節負荷推定方法およびシステム - Google Patents
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Abstract
Description
また装着型のデバイスを用いたリアルタイム負荷警告システム等の開発も行われている(非特許文献2)。
そのような推定手法は計算コストや直感的な理解のしやすさ等のメリットから労働現場への導入が進められているが、一方で筋の共収縮の効果を考慮していないため関節圧迫力を過小評価する可能性がある。
したがって、リスク推定のためにはこの過小評価の問題を解決するような推定方法の開発が必要であると考えられる。
筋骨格モデルを用いたシミュレーションでは計測した動作や外力を入力とし、逆動力学解析によりその運動を実現するような関節トルクやワイヤの張力を求める。
そのため筋張力の2乗和あるいは3乗和を目的関数とした最適化問題により筋張力を求めるなど筋負担を平均化・最小化することが一般的である。
(1)
ワイヤと剛体リンクからなる筋骨格モデルを利用して関節の負荷を推定する方法であって、
前記筋骨格モデルと前記関節がその負荷を受ける運動の情報から前記運動を実現するための前記関節に係る一般化力と、前記運動により生じる前記関節に係る関節間力を逆動力学解析により推定し、
前記一般化力を生じさせるワイヤ張力を求める一般目的関数に、前記関節に係る関節間力の評価項を追加した特殊目的関数に係る最適化問題を解いてワイヤ張力を計算し、
そのワイヤ張力による関節間力を取得することを特徴とする方法。
(2)
(1)において、前記逆動力学解析により推定された当該関節間力と前記取得されたワイヤ張力による関節間力の合力を計算し、
前記合力を前記関節に係る負荷とすることを特徴とする方法。
(3)
前記関節がその負荷を受ける運動の情報は一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報であって、実際に運動を計測し、または、前記運動のシミュレーションにより得た情報であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載の方法。
前記一般目的関数は、所定の等式拘束条件、不等式拘束条件下で数式(5)によることを特徴とする(3)に記載の方法。ただし、τjは一般化力、その一般化力を生じさせるワイヤ張力をf、Wf、Wτは重み行列、Jj Tはワイヤ張力を一般化力へ変換するための一般化座標qに関するヤコビ行列とする。
(5)
前記最適化問題は非線形計画問題であって前記一般目的関数は、所定の等式拘束条件、不等式拘束条件下で数式(9)によることを特徴とする(3)に記載の方法。ここで、次数nとmは3乗または4乗とする。
(6)
前記最適化問題は非線形計画問題であって前記一般目的関数は、所定の等式拘束条件、不等式拘束条件下で数式(10)によることを特徴とする(3)に記載の方法。ここで、次数nは2乗、3乗または4乗とする。
(7)
前記関節間力の評価項を加えた特殊目的関数は数式(6)によることを特徴とする(4)乃至(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
(9)
(1)乃至(8)のいずれか1項において、前記特殊目的関数の各項に係る重みを所望の制約条件下で定めることにより、前記関節に係る負荷の上限を求めることを特徴とする方法。
(10)
(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とするプログラムおよびプログラムを記録した記憶媒体。
動体計測装置と演算装置と表示装置を備えワイヤと剛体リンクからなる筋骨格モデルを利用して関節の負荷を推定するシステムであって、
前記動体計測装置において、実際に前記関節がその負荷を受ける運動を計測して、前記関節に係る一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報を取得し、
前記演算装置において、
前記筋骨格モデルと前記関節がその負荷を受ける運動の前記情報から前記運動を実現するための前記関節に係る一般化力と、前記運動により生じる前記関節に係る関節間力を逆動力学解析により推定し、
前記一般化力を生じさせるワイヤ張力を求める一般目的関数に、前記関節に係る関節間力の評価項を追加した特殊目的関数に係る最適化問題を解いてワイヤ張力を計算し、そのワイヤ張力による関節間力を取得し、
前記逆動力学解析により推定された当該関節間力と前記取得されたワイヤ張力による関節間力の合力を計算し、
前記表示装置において、前記合力を前記関節に係る負荷として表示することを特徴とするシステム。
(12)
(11)に記載のシステムにおいて、前記動体計測装置に代わって、前記演算装置で前記関節に係る一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報を前記運動のシミュレーション解析により求めたことを特徴とするシステム。
(13)
(11)乃至(12)のいずれかにおいて、前記特殊目的関数の各項に係る前記重みを所望の制約条件下で定めることにより、前記関節に係る負荷の上限を求めることを特徴とするシステム。
重量物持ち上げ作業時の椎間板圧縮力の負荷評価に有効であることがわかった。
最初に関節間力を考慮しない一般的なワイヤ張力推定手法について述べ、 それを関節間力評価に拡張した本発明について述べる。
以下は椎間板圧縮力の解析を例にとり説明するが本発明はそれに限定されるものではない。
まず本発明で扱う筋骨格モデルは、人の骨格は適当な細かさで分割して剛体リンクとし、剛体リンク間を回転・球面関節により結合することにより骨格系をモデル化する。
関節駆動力を発揮するための筋・腱・靭帯などは骨格上に付着点を持つワイヤとして表現する(S10)。
骨格上に付着点を持つワイヤとして近似された筋・腱・靭帯は、収縮方向に力を発揮する。
人体リンクモデルの運動方程式は式(1)のように表される。
また、qは一般化座標、q(上に1点)はその1次微分、q(上に2点)はその2次微分とし、Mは慣性行列、bはコリオリ力・遠心力・重力項、fはワイヤ張力、fEiは接触点Eiに働く外力とする。
この運動を実現するための一般化力τjを次式のように逆動力学解析により計算する(S30)。
本研究では中村らによる筋骨格モデルの動力学計算ライブラリを用いた(非特許文献4)。
特にfj が筋による張力を表すときは次式(4)が条件となる。
本手法では式(5)のような一般目的関数を定め、式(4)を不等式拘束条件とした二次計画問題を解くことによりワイヤ張力を求める。
第1項はワイヤ張力の二乗和を最小化するための項、第2項は式(3)の誤差の評価項である。
第2項は理想的には等式制約条件とすることができるが、実際には運動や外力の計測誤差やモデル化誤差を含んでいるため評価関数に組み込むことにより条件を緩和させた。
本発明では、式(5)の目的関数に代わって関節間力評価を行う項を追加した次式(6)の特殊目的関数により解析を行う(S40)。
最終的な関節間力は自重や外力による関節間力τcとワイヤ張力の影響による関節間力の合力、
ステップS40の式(6)における目的関数の重みWcが正である場合は対応する関節間力を減少させ、負にした場合は関節間力を増加させる。
この重みが負のときを関節への負荷が大きくなる高リスク解析、正のときを低リスク解析と定義すればよい。
すなわち、式(6)の2次計画問題の重みの設計により、高リスク・低リスクなど必要な解析を行う。
必ずしも高リスク解析・低リスク解析を常にどちらも行う必要はない。
図1に解析対象とした荷物の持ち上げ動作を示す。
動作は光学式モーションキャプチャシステムを用いて計測した。
体幹のリンクは腰仙椎境界(第5腰椎L5と第1仙骨S1間)と、胸腰椎境界(第12胸椎T12と第1腰椎L1の間)で分割し、骨盤、腰椎、胸椎の3つのリンクとした。
Wτの対角要素はwτ=1。
Wfの対角要素は、
ここではwf=1とした。
高リスク解析(圧縮力最大化)のときwc=-3×10-5、低リスク解析(圧縮力最小化)のときwc=3×10-5とした。
各項目の重みはwτ=1,wf =20とした。
図3の下段のグラフは、各時系列におけるL5/S1間の椎間板圧縮力の推移を表す曲線であり、上から順に高リスク推定結果、通常の筋張力解析の結果、低リスク推定結果を表す曲線を表している。
これによって、より自然な共収縮の状況を再現できていると考えられる。
実際の椎間板への圧縮力はこの低リスク推定結果と高リスク推定結果の間に存在すると考えられる。
また、式(9)の第2項を等式制約条件とし、次の一般目的関数によりワイヤ張力を推定してもよい。
一般目的関数は式(5)、式(9)、式(10)以外の、ワイヤ張力を導き出せるどのような目的関数であってもよい。
例えば、衝撃を予測して身体を強張らせているときとリラックスしているときでは、見かけ上は同じ姿勢・運動をしているとしても内力は異なっている。
また、プロスポーツ選手とアマチュア選手や、作業の熟練者や初心者など個人差による力の入れ方の違い等も存在する。
それらの解析を本手法により扱うことが出来る。
2 腰腸肋筋
3 腰方形筋
4 腹直筋
5 外腹斜筋
6 内腹斜筋
7 T12/L1関節
8 L5/S1関節
Claims (13)
- ワイヤと剛体リンクからなる筋骨格モデルを利用して関節の負荷を推定する方法であって、
前記筋骨格モデルと前記関節がその負荷を受ける運動の情報から前記運動を実現するための前記関節に係る一般化力と、前記運動により生じる前記関節に係る関節間力を逆動力学解析により推定し、
前記一般化力を生じさせるワイヤ張力を求める一般目的関数に、前記関節に係る関節間力の評価項を追加した特殊目的関数に係る最適化問題を解いてワイヤ張力を計算し、
そのワイヤ張力による関節間力を取得することを特徴とする方法。 - 請求項1において、前記逆動力学解析により推定された当該関節間力と前記取得されたワイヤ張力による関節間力の合力を計算し、
前記合力を前記関節に係る負荷とすることを特徴とする方法。 - 前記関節がその負荷を受ける運動の情報は一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報であって、実際に運動を計測し、または、前記運動のシミュレーションにより得た情報であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか1項において、前記特殊目的関数の各項に係る重みを所望の制約条件下で定めることにより、前記関節に係る負荷の上限を求めることを特徴とする方法。
- 請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とするプログラムおよびプログラムを記録した記憶媒体。
- 動体計測装置と演算装置と表示装置を備えワイヤと剛体リンクからなる筋骨格モデルを利用して関節の負荷を推定するシステムであって、
前記動体計測装置において、実際に前記関節がその負荷を受ける運動を計測して、前記関節に係る一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報を取得し、
前記演算装置において、
前記筋骨格モデルと前記関節がその負荷を受ける運動の前記情報から前記運動を実現するための前記関節に係る一般化力と、前記運動により生じる前記関節に係る関節間力を逆動力学解析により推定し、
前記一般化力を生じさせるワイヤ張力を求める一般目的関数に、前記関節に係る関節間力の評価項を追加した特殊目的関数に係る最適化問題を解いてワイヤ張力を計算し、そのワイヤ張力による関節間力を取得し、
前記逆動力学解析により推定された当該関節間力と前記取得されたワイヤ張力による関節間力の合力を計算し、
前記表示装置において、前記合力を前記関節に係る負荷として表示することを特徴とするシステム。 - 請求項11に記載のシステムにおいて、前記動体計測装置に代わって、前記演算装置で前記関節に係る一般化座標、または一般化座標と速度、加速度、接触力のいずれかまたは全ての情報を前記運動のシミュレーション解析により求めたことを特徴とするシステム。
- 請求項11乃至請求項12のいずれかにおいて、前記特殊目的関数の各項に係る前記重みを所望の制約条件下で定めることにより、前記関節に係る負荷の上限を求めることを特徴とするシステム。
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YOSHIO TSUCHIYA ET AL.: "Estimation of Lumbar Load by 2D Reconstruction of Spine Line Using Wearable Sensor System", 2014 IEEE INTERNATIONAL CONFERENCE ON SYSTEMS, MAN, AND CYBERNETICS, JPN6021005505, 4 December 2014 (2014-12-04), JP, pages 3669 - 3674, ISSN: 0004447652 * |
工藤 直紀 ほか: "弾性梁理論に基づく腰部負荷評価の基礎検討 A basic examination of lumbar burden evaluation bas", ロボティクスメカトロニクス講演会2016講演会論文集, JPN6021005506, 11 June 2016 (2016-06-11), ISSN: 0004447653 * |
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