JP2018523435A - 反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法 - Google Patents

反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、特にリスニングルームにおいて、各環境の固有の空間音響の代わりに、第3空間の空間音響が、聴取者の知覚において、包み込まれるような感覚の効果をもたらすことができる方法を開示するものである。リスニングルーム空間音響の代わりに知覚される第3空間の空間音響は、聴覚心理学的に自然空間の空間音響と同じように、すなわち、(直接音響とは区別して)空間音響に関連させる趣旨で包含されるような感覚で作用する。この空間的に包含されるような感覚の効果の方式は、情感的にも聴取者を聴覚型イベントに取り込むことを可能にする。この方式はスウィートスポット問題を知らず(つまり、好ましい聴取場所の代わりに広大な好ましい聴取領域が存在する)、さらにそれは、低い周波数を、本格的なサブウーファースピーカーの使用が不要になるように働かせることができる。

Description

本発明は、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法に関する。従来技術からは、リスニングルームにおける音響再生、特に1つのスピーカーを介した再生(モノラル)、2つのスピーカーを介した再生(ステレオ)又はさらに4つ若しくはそれ以上のスピーカーを介した再生のための多くの方法が公知である。この場合、市場においては、2つのフロントスピーカー及び2つのリアスピーカーがセンタースピーカー及び任意のサブウーファーとともにサラウンド再生において確立されている(いわゆる5.1チャネルのサラウンド再生構成)。特にホームオーディオ分野においては、空間的な音体験を強化する目標とともに、近年では、一部はリスニングルーム上方にも配置されかつその際には聴取位置に配向される付加的スピーカーを用いる方法もますます提供され、さらに技術的に進歩した映画館においては、数多くの付加的スピーカーが使用されている。
この場合、様々な方向からの音源の局在化に基づく(直接音響に関する)空間知覚の領域においては、特に大きな進歩が遂げられ、ここでは、多くの場合、聴取者の周りに配置されるスピーカーの数の単なる増加によって、著しい改善を達成することができている。それに対して、特に拡散された空間音響の知覚は、局在化のメカニズムの影響下に置かれるものは非常に少なく、それどころか理論的には、理想的に拡散された音響は完全な無指向性として説明される。特にホームオーディオ領域において、現在の技術水準に相応する方法を用いて拡散された空間音響の知覚に対しては、後方及び側方の音響イベント(Fluchtreflex;逃避反射)の局在化に基づく人の聴覚の純粋な特殊性が、次の点で問題になることが判明した。すなわち、当該方向に配置されたスピーカーからのわずかだけインパルス状の音響イベントも直接音響のように知覚され、ひいては拡散音響との関係でノイズとして知覚される点で問題になることが判明した。多くのサラウンド録音及びサラウンド伝送に対して生じ得る高頻度な結果は、総じて貧弱な空間効果だけであり、他のケースにおいては、空間効果は、最終的には不自然に作用する心理的音響手段によって高められるか、又は音像の誇張された拡張に基づいて高められるか、あるいは直接音響効果の使用も立体的効果の増強のために用いられている。現在の方法は、特別な空間環境における緩慢で持続的なインパルス特性の少ない音楽から一度目を転じれば、特にその効果が多くの場合立体性へのその埋め込みと密接に関連する音楽を再生するものとしては限定的にしか適していないことがわかった。
さらに、従来技術に対応する現在のサラウンド再生方法は、好ましい聴取位置(いわゆる「スイートスポット」)が非常に小さいという基本的な欠点を有する。それに対し、映画館における再生状況においては、この問題は適切な遅延によって駆動制御される付加的なスピーカーを使用することによって著しく低減することができるが、そのような手段はホームオーディオ分野においては通常は存在せず、そのため、聴取者は、既に理想的な聴取位置がすぐ側にあっても良好な空間効果の著しく乏しい状況を甘受せざるを得ない。その上さらに、この空間効果は、特に拡散音響に関しては、基本的に再生システムのない良好な自然空間環境(例えば良好なコンサートホール)よりも、包み込まれるような感覚が非常に乏しく、それに伴い情感的に魅了されるような感覚も、より希薄にしか感じられない。
ここで人によっては、拡散音響に伴う聴取者にとって包み込まれるような感覚が不十分である問題と、それに伴う現在のサラウンド再生におけるその不十分なサウンドへの埋め込みの問題とが、例えば既存のスピーカーを聴取者にあまり直接的ではなく、より間接的に配向すること、あるいは付加的なスピーカーをこの目的のために使用することでリスニングルームの拡散音響をより強く励起することによって、少しは改善されると考えるかもしれない。確かにそのような手段は、より強い立体的効果に関して所望の効果を有してはいるが、しかしながら、そのような方法で得られる立体性は、かなりの非特異的なものとしても知覚される。なぜなら、そこに含まれる空間音響情報は、大抵が小さなリスニングルーム(例えばリビングルーム)の仕様に対応しているからであり、より強い尺度でさらに使用される場合には、再生オーディオに含まれる録音空間(例えばコンサートホール)の空間音響情報の本来望まれている知覚を悪化させるだけでなく、所定の時点からは不可能にもさせるからである。特にそのような形式で再生される音像は歪んでいるように知覚される(文献;アンドレアス・ロッター(Andreas Rotter)著、“Wahrnehmbarkeit klanglicher Unterschiede von Hochtonlautsprechern unterschiedlicher Wirkprinzipien”、MATU ベルリン、2010年、22頁参照)。市場の特定のスピーカーメーカーは、意識的に比肩し得る手法を取り扱っており、そこではこの目的のために例えば無指向性スピーカーが使用されている。その他の本来使用されるスピーカータイプは、バイポールスピーカー及びダイポールスピーカーであり、これらのスピーカーでは、フォアグラウンドにおいて、聴取者方向への直接音響の出力の回避が、リスニングルームにおける拡散音響の励起よりも強く行われている。そのような装置は、上述した問題を越えて再生されるオーディオ素材を提供し、特に直接音響と空間音響との間の関係は、制作者によって意図されたものとも明らかに異なっている。そのため、それらの使用は、特に多くの録音や伝送の調性スタイルが一般的に過度にくどく感じられる聴取者に限られる。
それゆえ、特に自然でかつ包み込まれるような(3次元的)聴覚印象に関しては、上述したような従来技術から公知の音響再生構成は、良好な又は少なくとも満足のいく結果が得られる状況に至っていない。
このことは、上述したような問題の克服、特により良好な拡散音響再生を提供することを試みている、国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)及び国際公開第2013/111034号(WO2013/111034A2)に開示された方法にも当てはまる。
国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)においては、マルチチャネルオーディオを再生するための方法が開示されており、ここでは、オーディオ信号の再生の際に拡散の所望の度合いを制御する時変メタデータを有する「ドライ」オーディオトラック又は「ステム」が符号化される。オーディオトラックは、拡散性を表し好ましくはミックスパラメータ及び遅延パラメータも表す同期化されたメタデータと関連して圧縮され伝送される。拡散メタデータからのオーディオステムの分離は、(伝送の関係で鳴り止まないオーディオデータは除いて)立体的効果の後からの適応化を可能にし、また聴取者によって個人的に設定される再生方法(カスタマイズ)も容易にさせる。しかしながら、この場合、この方法は、実質的には公知のサラウンド再生方法を使用しており、現在のサラウンド再生システムの上述した基本的な問題を克服しようとするものでもない。
米国特許第7706543号明細書(US7706543B2)には、オーディオファイルを処理するための方法が開示されており、ここでは、a)3次元空間で伝播し基準点から第1の距離に位置する音源から生じる少なくとも1つの音を表す信号が、この基準点に対応する原点の球面調和関数の基数で表される成分による音の表現を得るように符号化され、b)近接音場効果の補償が、再生装置による音の再生の場合、再生点と聴覚点との間の距離を実質的に定義する第2の距離の関数であるフィルタリングによって前記成分に適用される。このような方法で、オーディオソースによる空間補償と、当該ソースの3次元オーディオ表現の仕様が実現される。これは、1つ以上の3次元マイクロホンネットワークによる音声記録の場合、仮想オーディオソースの符号化にも、自然音場の音響符号化にも関係する。
国際公開第2013/111034号(WO2013/111034A2)は、特に、聴取位置まで主として直接経路を取るオーディオ信号を聴取位置まで供給する第1のスピーカー配列と、オーディオ信号を主として反射音響経路上で聴取位置まで供給する第2のスピーカー配列とを含むオーディオ再生システムを開示している。オーディオ素材供給部(オーディオ・レンダラー)は、マルチチャンネル・オーディオ信号のチャネル信号を第1の音声信号及び該第1の音声信号より拡散した音に対応する第2のオーディオ信号にアップミキシングするアップミキサを有している。このアップミキシングは、マルチチャネル信号の2つのチャネルに対する相関尺度の結果である。この相関尺度は、相関推定器(推定)を用いて生成される。それにより、このシステムにおいては、いつでも良好な包み込みのような性質の印象とともにより満足のいく空間効果を得るために、本来のオーディオ信号の他に、オーディオ信号自体から算出された付加的拡散音響が、聴取位置に対して間接的に放射される。つまり、この方法においては、間接的に配向されたスピーカーを専ら付加的に使用しかつそれらの駆動制御のために拡散オーディオ素材を使用する無指向性スピーカー又はバイポールスピーカー又はダイポールスピーカーの使用に対して変更された手法が用いられている。しかしながら、この方法でも、リスニングルームの励起された拡散音響が多くの場合、特に音楽を再生する場合において、再生されるオーディオにフィットせず、この理由から、直接音響と空間音響との間の関係のバランスが損なわれる傾向にある上述した問題は生じる。
国際公開第2012/033950号 国際公開第2013/111034号 米国特許第7706543号明細書
アンドレアス・ロッター(Andreas Rotter)著、"Wahrnehmbarkeit klanglicher Unterschiede von Hochtonlautsprechern unterschiedlicher Wirkprinzipien"、MATU ベルリン、2010年、22頁 Ben Kok著"Acoustic Enhancement Systems, Production Partner 4/2011"108−117頁 J.Herre, J. Hilpert, A. Kuntz, J. Plogsties著"MPEG-H Audio-The Upcoming Standard for Universal Spatial/3D Audio Coding, Proceedings of ICSA 2014 Erlangen-ISBN 978-3-98 12830-4-4"54頁
それゆえ、本発明の課題は、上述した欠点を大幅に低減するか又は可及的に排除することである。特に本発明が基礎とする課題は、情感的に魅了されるように感じられる、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法を提供することである。
少なくとも第1のスピーカー配列のスピーカーによって囲まれた領域においては、すべての聴取位置に対して、均等に良好な空間効果が達成されることが同時に当てはまる。その際、これまではリスニングルームでの拡散音響のより強い励起のもとで聴取者の知覚感覚に現れていた欠点、詳細には、特にリスニングルーム立体性がオーディオ信号に不都合に重なることによる音像の不明瞭さ、曖昧さ及び歪みは必然的に回避され得る。
ライブ音響の領域においては、オーディオ信号は、通常は、反射環境、すなわち、リスニングルーム自体の中の自然音源から生じており、この場合は多くの様々なシナリオ及び問題提起が考えられる。いくつかのコンサートホール又はコンサートホールとして使用されるいくつかの多機能ホール(そのようなケースにおいては、例えばオーケストラが音源として機能する)においては、音響は、問題があるか不満足なものと感じられる。そのようなホールの空間音響においては、音響が良好なホールの空間音響に対応させることが望まれるであろう。増幅を伴う状況、例えばミュージカルの上演においては、特に指向性の強い放射特性のラインアレイスピーカーの使用に基づいて、響きはしばしば過度に非空間的に感じられる。放射された信号は次第に消えていく(鳴り止む)が、ただし、この響きは正面から来るものとしてだけ知覚され、包含されるようなものとして知覚されることはない。
いわゆる残響時間延長システム又は音響増強システム(AES)の使用は、多くの場合、不満足なものとして知覚される。そのようなシステムは、空間内の多数のスピーカー、通常は100個乃至300個のスピーカーで動作し、まれな場合においては、約50個のスピーカーだけが使用されることもある。これらのシステムの多くは、関連する空間内の既存の残響を増幅する再生原理(例えば、MCR、VRAS)に基づいている。インライン原理によって動作する(残響が合成的に生成される)システムも、そのスピーカーは実質的には聴衆に方向付けられて配向される(例えば、Vivace)。測定可能な残響時間の延長目的は高い信頼性のもとで達成されるのに対して、そのような装置によって引き起こされる空間音響は、平坦でしばしば過度にうるさく知覚される。そのようなシステムは、包含されるように立体的に感じられる響き効果を達成するために、拡声装置の補助としてますます使用される。ここでも立体性は、しばしば不自然で平坦なものとして知覚される。
会議室においては、スピーチの明瞭度を向上させるために、吸音材の使用を含んだ建築音響学的な手段が頻繁に実施される。多くの場合、この目的は達成されているが、結果的に生じた音響は窮屈に感じられる。空間内で音響強化が用いられるか否かにかかわらず、よく通る音響は望まれるのであろうが、しかしながら、これまでに公知の手段(例えば鳴り止ませなど)を用いて、スピーチの明瞭度も損なうことなく達成することはできていない。また談話室や販売室、リビングルームでも、多くの場合は、前述したような意味で音響は不満足なものと言われているが、慣習に甘んじている。音響状況の改善は、記載したすべての場合において望まれるであろう。
前述した課題は、本発明により、請求項1に係る方法、請求項15に係るコンピュータプログラム製品、請求項16に係るデータ担体、請求項17に係る装置、請求項18に係るシステム、及び、請求項19に係る使用によって解決される。
本発明に係る、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法においては、再生状況において、第1のスピーカー配列からオーディオ信号が、聴取位置に対して実質上直接的に放射され、第2のスピーカー配列を介して、オーディオ信号と、リスニングルーム(H)に本来依存しない空間音響信号とが、聴取位置に対して実質上間接的に放射され、この場合、空間音響信号の空間音響情報は、オーディオ信号に依存しない原点を有している。ライブ状況においては、第2のスピーカー配列を介して、
−リスニングルームに依存しない空間音響信号か、又は、
−リスニングルームに依存しない空間音響信号と、ライブ信号に対応するオーディオ信号とが、聴取位置に対して実質上間接的に放射され、この場合、空間音響信号の空間音響情報は、ライブ信号に対応するオーディオ信号に依存しない原点を有している。
「空間音響信号の空間音響情報は、オーディオ信号に依存しない原点を有している。」とは、本発明の趣旨においては、次のように理解されたい。すなわち、空間音響信号の立体性情報(つまり、反射及び拡散音響に対応する信号成分)は、オーディオ信号から採取されるか又はそれらから計算されるのではなく、空間音響信号の立体性情報はそれに代わって例えば当該空間音響情報をまさしく含んでいるインパルス応答との畳み込みの過程において、空間音響信号に供給されるか、又は、他の例として、空間音響信号として使用される相応に構成されたHOA音場ビームに含まれることを意味するものと理解されたい。リスニングルームにおける適切なスピーカーから放射されることによって、空間音響内に含まれる空間音響情報は、聴取者側に、包含されるような感覚の立体性知覚と、その際の好ましくは所定の立体性の、つまり、所定の空間の立体性の知覚とを、引き起こすことができる。本発明に係る方法は、人の知覚感覚が適切に感じられる空間音響情報は知覚に綴じ込めるが、その他の空間音響情報は隠せるという事実を利用している。
本発明の趣旨においては、聴取位置とは、次のような位置である。すなわち、再生状況においては、5.1チャネルサラウンドシステムのスピーカーの中心における典型的な聴取位置に相当し、ライブ状況においては、いわゆる「良好なリスニングポイント」の(どちらかと言えば、むしろ、空間内の中央にある)位置に相当する位置である。
それに対して様々なサラウンド再生方法、特にホームオーディオ領域においては、当該聴取位置は、最良の聴取場所とまさしく同義ではあるが、当該聴取位置とはまさしく異なる聴取場所は、はるかに落ちる聴取結果を提供するだけであり、概念の説明においては次の点を指摘しておく。すなわち、本発明に係る方法においては、本発明の趣旨における聴取位置と、音響的に好ましい聴取場所との間のそのような関係は、むしろ、存在せず、当該聴取位置から空間的に著しく離れた聴取場所でも、そのような当該聴取位置におけるものと類似の良好な聴覚体験を提供する。
直接的な放射とは、本発明による趣旨においては、優勢な音響成分が、聴取位置に対して、直接的にそのような位置に放射されること、又は、実質上直接的に(典型的には直接的な配向ないし指向方向から30までの逸脱を伴う)そのような位置に放射されることを意味するものと理解されたい。
第1のスピーカー配列は、本発明による趣旨においては、通常は付加的スピーカーを使用しないいわゆるサラウンドオーディオミックスの再生に適したものであってもよく、通常はその目的のためにも使用される。少なくとも第1のスピーカー配列においては、1つのスピーカーは前方に、そして、2つのスピーカーは後方又は後方/側方に使用される。それに対して第1のスピーカー配列に使用されるスピーカーの最大数は無制限である。当業者に公知の多数のスピーカーを伴う配列は、NHKの22.2構成がある。特に映画館においては、ますます付加的なスピーカーが側壁と天井に、特に複数の効果の再生のために使用されており、これらの効果においては、聴取者による当該効果の位置特定を局在化の意味で狙った効果が求められている。前述の位置特定及び局在化が、天井又は壁面におけるスピーカーの信号の反射によって部分的に実現されるスピーカー配列も、本発明による趣旨においては、第1のスピーカー配列とみなされるべきである。
オーディオ信号とは、本発明の趣旨においては、通常は、伝送される音響信号又は録音から再生される音響信号であり、それらは前述の第1のスピーカー配列を介して再生するのに適した信号の形態、及び/又は、元のマイクロフォン録音の所定の処理若しくはミキシングで若しくは人工的に生成された信号の形態である。
この場合、これらのオーディオ信号又は比肩し得るオーディオ信号は、リスニングルームに依存しない空間音響信号に加えて必要な場合には適切なミキシングにおいて、第2のスピーカー配列を介して聴取位置の方向に実質上間接的に放射される。
本発明の趣旨においては、空間音響信号とは、通常、好ましくは直接音響成分を含まず、それらによって示されるその立体性が本来のリスニングルームに割り当てられているのではなく、他の空間から生じたもの、例えば好ましくは特にそれぞれの音楽素材に適したコンサートホールから生じたものである。この場合、これらはオーディオ信号が録音された録音ルームと同一であってもよい。空間音響信号は、本発明によれば、好ましくは、特に立体的効果に関連するパラメータのそれぞれのリスニングルーム音響への適合化を可能にさせるような形態で存在し、又は、そのような方法で生成される。
確かにオーディオ信号は、通常は既に空間音響成分(これは空間音響信号を生成するための畳み込みにおいてインパルス応答の空間音響情報によって書き換えられる)も含んではいるが、しかしながら、それは、以下でもより詳細に説明する本発明による空間効果を第2のスピーカー配列を介した再生によって実現できるような形態では存在していない。それらの空間音響成分は、(例えばオーケストラ録音のもとでは)複数の異なる位置に配置された支持マイクロフォンによって録音されることで、しばしば統一性に欠けるだけでなく、録音の大きな多様性のもとでアルゴリズム的に動作する反射器を用いて実行される鳴り止みは、本発明に係る方法の第2のスピーカー配列への使用に十分に適したものではないことが判明している。
特に、オーディオ信号に含まれる空間音響成分は、当該オーディオ信号に同様に含まれる直接音響信号からは分離することができず、本発明による、リスニングルームの条件への適合化に必要とされるような方法でそれらを変更することはできない。第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の放射は、空間音響信号の放射に依存することなく行われ、そのことに依存することなく制御もされる過程である。すなわち、この過程は、実質上リスニングルームにおける拡散音響の十分な励起に用いられ、この励起は、実際において判明したように、包み込まれるような感覚で拡散する立体的効果の知覚のために必要とされるものである。
図面からは、第2のスピーカー配列を介して放射される空間音響信号、及び同様にこれを介して放射されるオーディオ信号が相補的なもの、すなわち、相互に補足的なだけでなく、誘発的な成分でもあることがわかる。つまり、この強調関係においては、一方では、オーディオ信号が、十分な拡散音響レベルを介して、包み込まれるような感覚自体の知覚を可能にし、この知覚は、空間音響信号に含まれる、包み込まれるような感覚自体の特性(例えば特定のコンサートホールの空間印象)に関する情報によって必然的に特定することができる。他方では、空間音響信号が、リスニングルームの空間音響の知覚の代わりに、所望の空間音響の知覚を可能にするが、この知覚もオーディオ信号によって生成される、包み込まれるような感覚自体なしでは無効なままである。
しかしながら、空間音響信号は、通常は、第3空間のインパルス応答のコンボルーション又は畳み込みによって限定されるものではないが(この第3空間は、例えば特に美学的方面から所望されるコンサートホールであり(上記参照)、すなわち、第3空間は、実際のモデルに対応する、又は、例えば適切なシミュレーションソフトウェアの使用によって、任意に設計され得る)、それぞれのリスニングルームの条件への前述の適合化も実施することができる機会があるオーディオ信号によって生成される。
この関係においては、記載した本発明に係る方法手順と、上述の国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)において開示された方法との基本的な相違点を明示的に指摘しておく。詳細には、一方では、タイプの異なる空間音響信号の生成であり(本発明に係る方法での畳み込み及びインパルス応答の好ましい使用とは対照的な当該国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)でのアルゴリズムによる残響生成)、他方では、(特に重要性の高い)オーディオレンダラーの入力側におけるオーディオ信号の基本的に異なる特性であり、この場合、詳細には当該国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)において専ら「乾いた」オーディオトラック又は「ステム」として使われている、つまり、次のような信号、すなわち、当業者が言うように、鳴り止みがなく、聴取者にとって、むしろ、この鳴り止み(次第に消えてゆくこと)がなければ、不自然に乾いた感じで再生されかねない信号である。その限りでは、この国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)に相当する装置を介した再生は、これまでの通常のサラウンド再生装置を介した再生とは異なる、詳細には実質的に「乾いた」ミキシングを基礎としており、それに対して、本発明に係る方法は、これまでの通常のサラウンド再生装置を介した再生に対して想定される既存のミキシングを扱うことが可能で、かつ、それにも用いられる。そのため、ここでは当業者になじみのある表現の中で、互換性について述べることができる。それに基づき、様々な再生装置のために、例えば、国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)に相当する方法の場合のように、響きの異なる基礎的ミキシングの作成及び別個の伝送は多くのケースにおいて不要である。
間接的な放射とは、本発明の趣旨においては、直接的な放射とは対照的に、優勢な音響成分が直接的に聴取位置の方向に放射されるのではなく、むしろ、間接的に放射されることを意味するものと理解されたい。そのため、これらの音響成分は、それらが最終的に聴取位置に達し、それに伴うマルチ反射によって全体として拡散音響を表わすまで、壁面及び天井及び一部は床も介してシングル反射又はマルチ反射する。本発明に係る方法の趣旨において間接的な放射のために重要なことは、この場合、むしろ、次のような拡散音響が生成されることである。すなわち、前述した(反射による)方法で生成された拡散音響に対応する拡散音響である。
ここでは、第2のスピーカー配列を介した空間音響信号の放射に関して、既に拡散性を表わす信号の拡散的分散の結果になることを明示的に指摘しておく。この場合、上記の拡散的分散の拡散性は、リスニングルーム自体の特徴をもたらすが(リスニングルーム誘発性)、それに対して空間音響信号によって表される拡散性は、上述したように他の空間の拡散性であり(第3空間誘発性)、その限りでは、むしろ、この最後に挙げた拡散性は、本発明によれば、リスニングルームにおける分散によってリスニングルーム誘発性の拡散性に重畳される。
本発明の関係において、つまり、本発明により第2のスピーカー配列を介して放射されるすべての信号や空間音響信号と同じようなオーディオ信号に関連する、むしろ、当該リスニングルーム誘発性の拡散性の特別な特徴は、それらの実際の拡散性、すなわち、リスニングルームにおけるそれらの実際の分布であり、これは、オーディオ信号の一部として、図示されただけ及びシミュレートされただけの空間音響信号の拡散性とは根本的に異なり、そのため、それは例えば第1のスピーカー配列を介して放射されたように聴取者によって知覚される。国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)による方法の文脈においては、拡散性とは、以下の引用文、
“a diffuse signal or a perceptually diffuse signal in the context of the invention refers to a (usually multichannel) audio signal that has been processed electronically or digitally to create the effect of a diffuse sound when reproduced to a listener”
「本発明の関係における拡散信号又は知覚的に拡散した信号は、リスナに再生されたときに拡散音響の効果を生み出すために電子的又はデジタル的に処理された(通常マルチチャンネルの)オーディオ信号を指す。」
から明らかなように、むしろ、この最後に挙げた空間効果の間接的な形態を意味するものと理解されたい。
そのようなシミュレートされた拡散性は、聴取者に対するスピーカーの指向方向によって引き起こされる、音響拡散性の性質になじまない局在化効果のために、及び、同じ様にスピーカーの指向方向に起因するリスニングルームにおいて関連する音響信号の比較的少ない拡散的分布のために、はるかに弱く、かつ、包含されるような感覚のない、ほぼ間接的な空間効果の形態をもたらす。しかしながら、本発明に係る方法においてリスニングルームにおける実際の分散は、(オーディオ信号に依存しない、空間音響信号の空間音響情報の原点と結び付けられて)聴取者の知覚において、第3空間誘発性の拡散性に、実際の(非常に異なる方向から来る)拡散性の本質的特徴を与える。実際において明らかになったように、第2のスピーカー配列を介した空間音響信号の排他的な放射は、多くの場合、弱すぎるか、又はより高いレベルで響きすぎる空間印象を生じさせるかもしれない。第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の付加的放射によれば、(空間音響信号に依存することなく制御可能な)リスニングルームにおける拡散性を、前述した聴覚印象を形成するのに必要な尺度に適合化させることが可能である。
本発明に係る方法の第1の変化例は、リスニングルーム内での純粋なオーディオ再生である。この場合、リスニングルームにおけるライブ信号に関連する本発明に係る方法の第2の変化例においては、リスニングルームに依存しない空間音響信号が、聴取位置の方向に実質上間接的に放射される。この第2の変化例に対しても実質的に第1の変化例の文脈でなされた説明が同様に当てはまる。本発明による文脈においては、ライブ信号とは、リスニングルームからの、例えば特にオペラハウス又はホール又はその他の空間からのライブ上演中に生じた信号を意味するものと理解されたい。そのため、これは第1の変化例のように、空間性の観点における聴覚体験の音響的改善であるが、ただし、ここでの第2の変化例においては、リスニングルームとは、元の音響イベントがライブで生じている空間でもある。第2の変化例の場合、一方では、次のようなことを想定してもよい。すなわち、1つのスピーカー配列だけを使用し、その後本発明の趣旨で第1の変化例の第2のスピーカー配列を使用することである。これに関しては、第1の変化例の1つに比肩し得る方法で、マイクロフォンによって録音されたライブ信号と、第3空間のインパルス応答とから形成された空間音響信号が、直接音響成分なしで聴取者に対して間接的に放射される。この場合、ライブ信号から形成されたオーディオ信号の放射は、第1の変化例のように可能であるが、しかしながら、多くのコンサートホールにおいては、特に必要ではない。なぜなら、これらのケースにおいては、既に十分な程度に拡散音響が空間内で形成されるからである。他方では、次のようなことも考えられる。すなわち、第2の変化例において、第1のスピーカー配列からライブ信号が聴取位置の方向に実質上直接的に放射されることである。この場合、それはここでは、例えばミュージカル上演を響き渡らせることである。ここでは、この第2の変化例は、より小さな空間への適用にも適していること、及び、ここでは、例えば会議室などのように声を響き渡らせる目的との組み合わせも可能であることを指摘しておく。いくつかのケースにおいては、その他にも、第1の変化例の目的で設置した装置に、マイクロフォンを補足して、第2の変化例の目的のために使用することも可能である。
本発明に係る、リスニングルームにおける音響再生のための方法の2つの変化例の特徴のそれぞれの特定の組み合わせにより、驚くべきことに、音響心理学的観点及び聴覚心理学的観点において、自然空間内の聴覚体験に比肩し得る、包含されるような感覚の第3空間の空間音響体験を、次のことによってリスニングルームに届けることが初めて可能となった。すなわち、オーディオ又はライブ信号の実質上直接的な放射の他に、リスニングルーム自体に、所望の空間の空間音響信号、例えば特にコンサートホールの空間音響信号を、オーディオ又はライブ信号と組み合わせて、聴取位置に対して実現させる間接的な放射の趣旨で印加することである。それぞれのリスニングルームの空間音響を同時に著しく増幅し(十分な拡散音響レベルの形成のために必要な場合)、聴取者の知覚におけるマスキングをうまくいかせることによって、従来の、第1のスピーカー配列を介して放射されていたオーディオ又はライブ信号を、審美的観点において、所望の第3空間の空間音響で豊かにすることが可能になる。この所望の第3空間の空間音響は、むしろ、リスニングルームにおいて新たに分散された拡散音響として特別な準備及び放射方法により、前述したリスニングルームの空間音響のマスキングを可能にする。そのため、審美的観点において望ましい空間印象が生じる。この空間印象は、本来のオーディオ又はライブ信号には含まれていないか、少なくとも所望の(包含されるような感覚の)効果を発揮するようには含まれておらず、さらに本来のオーディオ又はライブ信号に含まれている直接音源の知覚及び局在化を決して損なうものではない。この全く予想外の発見からの結果として本発明に係る方法が得られる。このようにして、聴取者を包み込むような感覚で情感的に魅了するオーディオデータの再生を実現することが可能になる。同時に聴覚体験は、もはや前述した聴取位置においてのみ、特に音響空間的に満足のいくように感じられるのではなく、第1のスピーカー配列のスピーカー間のすべての領域に亘って広がりを見せ(いわゆるスイートスポット問題の解決)、その上さらにこの場合は優れた低音再生がサブウーファーなしでも同様に驚くほどにほぼ単独で生じている。
本発明との関係において、このことが実際において実証されているため、好ましくは、第2のスピーカー配列は、空間音響信号の音響レベルと比較して、オーディオ信号の音響レベルに関連し、前述の2つの信号の音響レベルは、オーディオ信号の音響レベルと比較して、第1のスピーカー配列に関連し、及び/又は、ライブ信号が、一方では、拡散音響によるリスニングルームの十分な励起がそのようなものとして聴覚心理学的に行われ、他方では、第3空間の空間音響信号がその効果において適合的に感じられるように設定される。様々な状況において、ここでは、特に各プログラム材料に依存して、非常に異なるレベル比の設定が必要になる可能性がある。例えば、小さなリビングルームにおいて、大きなコンサートホールの包み込まれるような感覚の空間音響描写は、第2のスピーカー配列においてオーディオ信号の高い音響レベルを要求する。オーディオ信号のレベルに関して著しく低い、第3空間の空間音響信号のレベルによっても、本発明に係る方法の実施からもたらされるように、聴取者に対する所望の前述した効果を確立することができる。第1のスピーカー配列として大抵が直接的に聴取者に対して配向されるオーディオサラウンド再生システムとは異なり、音響的に問題のあるコンサートホールにおけるライブ状況では、オーケストラはその音響のかなりの成分をコンサートホールの天井や壁面に放射する。そのため、コンサートホールに応じて、拡散音響生成のための第2のスピーカー配列における、ライブ信号に対応するオーディオ信号には、ホームオーディオリビングルームの場合よりも大幅に少ない量が求められる、あるいは十分な拡散音響が既にホール内に存在している場合でも、それによって、専ら空間音響信号のみが、第2のスピーカー配列を介して放射される。
さらにこの関係において、このことが実際において実証されているため、好ましくは、これに限定されるものではないが、空間音響信号は第3空間インパルス応答であり、それを、当業者は、市販の装置を用いて録音室若しくは他の好適なホール自体においてさえも生成することができ、又は、市販のシミュレーションソフトウェアを用いて実空間に対応させて若しくは仮想空間から生成することができ、それらは、いくつかのケースにおいては、適切な方法及び品質で、それぞれ所望の空間や環境あるいは世界中のコンサートホールやオペラハウスからも得られる(例えばAudioease社が提供している)。
将来的な、特に音場ベースのオーディオ録音及び伝送方法は、他の及び/又はさらなる空間音響信号の作成手段を可能にさせる。その録音の例として、例えば“mh acoustics”社の“Mikrofonarray Eigen-mike”を用いて“Higher Order Ambisonic (HOA)”法で作成されたものが挙げられる。そのようなオーディオ素材は、本発明に係る方法の要件に応じて、完成されたミキシングオーディオチャネルの代わりに、録音室の所定の箇所において録音された1つ以上の音場を提供し、いわゆるビームと呼ばれるものから方向性及び指向特性を考慮して可変の断片を選択することができる。つまり、例えば十分なレベルの直接的音響成分なしの空間音響信号である。オーディオ信号もこの音場から取り出すこともでき、このことは、本発明に係る方法の枠内において、より一層差別化されたさらなる動作モードを可能にする。
本発明に係る方法の趣旨において「音場」とは、この場合、空間内の所定の箇所において知覚される(順次連続的な時間間隔/時間遅延:直接音響、反射音及び拡散音響を伴う)すべての音響情報である。つまり、音場とは、当該箇所に関連する、空間内のライブ及び/又はスピーカー信号によって生成される音場の抜粋である。音響情報の重要なパラメータは、それらの各レベル(拡散音響の場合、時間的なレベル経過を表すホール特性曲線)及びそれらが(直接音響から拡散音響へ減少する精度とともに)知覚される方向性である。多くの場合、音場の知覚は、直接音響と一緒に、関連する立体性(例えば、個別のエコーではない)が知覚されることによって総体的に行われる。
さらに満足のいく聴覚印象(拡張された音像幅やさらに包含されるような感覚の空間印象)を達成するために、実際において示されているように好ましくは、第2又は第3のスピーカー配列を介して、ただし、この第3のスピーカー配列は、例えば特に、側方音響信号のための少なくとも2つのスピーカー及び/又は上方から来る早期反射信号のための1つのスピーカーを有し、リスニングルーム壁面及び/又はリスニングルーム天井の方向へ、早期反射信号(特別に選択され設定された空間音響信号)が次のように放射される。すなわち、リスニングルーム壁面(聴取位置に対して一応耳の高さかそれ以上の高さにおける前方側方部)及び/又は前記リスニングルーム天井(前方の上方中央部)において反射された早期反射信号が実質上所望の聴取領域の方向に反射されるように放射される。
さらに個別の適用において好ましくは、第2のスピーカー配列は、オーディオ信号及び/又はライブ信号と、空間音響信号とが別個のスピーカーシャーシを介して放射されるように構成されている。
その上さらに好ましくは、第2のスピーカー配列は少なくとも有利には以下のスピーカーを有している。すなわち、聴取位置に対する前方左上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する前方右上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する後方左上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する後方右上からの間接的な放射のためのスピーカーとを有している。それに応じてこれらのスピーカーは、必ずしも前述した位置の領域に配置する必要はなく、前述した方向からの拡散音響の知覚が保証されるような位置に配置されるだけでよい。拡散音響は確かに(音響理論のように)無指向性のものではないが、ただし、直接音響よりもはるかに少ない指向性を伴って知覚される(この理由から、HOA−Ambientコンポーネントも将来的なMPEG−H 3Dオーディオ規格において典型的には主要なコンポーネントよりも低いAmbisonic−Orderで伝送される)。聴取者の頭上の4つの領域、詳細には左/右及び前方/後方からの知覚は、本発明に係る方法の観点から見れば有利とみなされるべきであり、同様に有利には、間接的な放射において可及的に大きな規模でマルチ反射が例えば天井及び壁面において生じる。
第2のスピーカー配列の枠内で著しく多数のスピーカーを使用することは、本発明に係る方法との関連においては、むしろ、有利ではない。この場合は、聴覚心理的にもはや区別することができない拡散性の重畳が結果として生じ、そのため、確かに残響特性を伴う拡散音響は知覚できるが、しかしながら、それ以外の空間音響特性は知覚できない。いわゆる残響延長システム又は音響増強システムの残響の「平滑的」とも称される上述の特性は、(過度に)多数のスピーカーの使用によって説明することができる。
本発明の関係においては、第2のスピーカー配列に対して好ましくは4つのスピーカーの使用だけでなく、特別に処理されまた異なってもいる空間音響信号を伴うこれらのスピーカーの駆動制御も無意味ではない。通常は、それぞれのスピーカーのために使用されるインパルス応答の作成の際に、その構造形態がリスニングルームのものとは大きく異なり得る第3空間の次のような測定位置又は測定配向が選択される。すなわち、バランスがとれてかつ第3空間の音響をリスニングルームの再生状況で可及的に有利に音響的に表す再生をリスニングルームに導くような測定位置又は測定配向である。実際において示されているように、通常は、好ましくは、第3空間の測定位置又は測定方向の領域(例えばコンサートホールにおける良好な聴取場所又は映画シーンにおける実際の聴取場所に関して)は、原理的に(特に前後に関して)リスニングルームにおける第2のスピーカー配列を介して(聴取位置に対して)対応付けすべき畳み込み積の放射の領域に相当する。実際において実証されている変化例として、(例えばコンサートホールのように)広くて高い空間においては、いくつかのケースにおいて、例えば4つのスピーカー用に設定された空間音響信号を、左側と右側に統合し、2つのスピーカーだけを介して放射することも可能である。
その上さらに好ましくは、第2のスピーカー配列のスピーカーが、第1のスピーカー配列のオーディオ信号又はライブ信号と比較して、時間的に遅延されて、又はより早期に駆動制御され、それによって音響形成のさらなる可能性が提供される。
それゆえ、また好ましくは、第3のスピーカー配列のスピーカーが、第1のスピーカー配列のオーディオ信号又はライブ信号と比較して、時間的に遅延されて、又はより早期に駆動制御される。
実際において、そのような遅延の設定は、芸術的ないわゆるアップミックスの一部であり、ここでは、空間音響信号によって表されるリスニングルーム内の空間音響が、新たな環境への微調整によって適合化される。
第1のスピーカー配列を介した再生のために、オーディオ信号は通常はチャネルベースの形態で存在する。芸術的なアップミックスにおいては、これらは、上述のように、第2のスピーカー配列を介した再生の目的で、一方では、ミキシングされ(オーディオ信号成分)、他方では、第3空間インパルス応答と畳み込みされる(空間音響信号成分)。既に述べたように、コンボリューションでは、空間音響信号の適合化は、リスニングルームのそれぞれの音響状況に対して行われる。本発明に係る方法に対応する装置の信号パスに関係する空間音響信号は、チャネルベースのオーディオ形態で存在し又は伝送されるのではなく、むしろ、それぞれ装置内で好ましくは畳み込みによって生成されることにより、同じオーディオ信号の場合、適切な畳み込みパラメータ(例えば、残響の長さ、空間の大きさ、空間の幅、遅延)の適合化された変更によって、様々なリスニングルーム毎にそれぞれ適合化された空間音響信号が生成され、第2のスピーカー配列の駆動制御のための適合化されたミキシングを行うことができる。
つまり、実際において、本発明に係る方法の好ましい形態に従ってオーディオを再生するためには、オーディオ信号とインパルス応答とが必要となる。ただし、オーディオ信号としては、上述したように、特に第1のスピーカー配列を介した再生のために(第2のスピーカー配列の使用なしでも)既に提供されているサラウンドミキシングが好ましくは適している。この場合、インパルス応答を扱うために好ましくは、インパルス応答は、各リスニングルームがその空間音響特性に関して基準空間に相当する限り、それらを即座に(すなわち、パラメータの適合化なしで)使用できるようにする形態に交換されディストリビュートされる。前述の基準空間の仕様とは、これらのオーディオ信号を、本発明に係る方法を介した再生のために前述のインパルス応答と結び付けて利用するのに適した仕様である。
リスニングルームの空間音響特性は、好ましくは較正過程において求められる。この較正過程は、特に高品質のサラウンド再生システムで使用可能な公知の較正過程に基づいており、装置の運転開始前に実施される。空間寸法及びスピーカー配置に関するユーザーの手動入力の他に、測定マイクロフォンと、スピーカーを介して放射された音及び信号とを用いて、適切なレベル、遅延、及び周波数応答曲線の歪みが求められるだけでなく、特に残響時間のような空間音響パラメータも求められる。
使用されるリスニングルームがその空間音響特性に関して前述の基準空間から逸脱する限り、畳み込み及びミキシングパラメータの適合化はそれぞれの逸脱に応じて行われる。これらのパラメータは、聴取者の好みに応じた立体的効果(いわゆるカスタマイズ)を達成するためにも使用することができる。
さらに、全体の響きにとって好ましくは、空間音響信号内に直接音響成分は含まれていない。なぜなら、特にこの直接音響成分は、注意深く適合化していないと、音響信号との干渉によってノイズ状になる可能性があるからである。
付加的に好ましい響き形成手段は、以下の可能性、すなわち、
−第2のスピーカー配列の聴取位置に対して前方側のスピーカーの駆動制御時点を、当該スピーカーをより早期に又は遅延させて駆動制御することで、第2のスピーカー配列の聴取位置に対して後方側のスピーカーに対して変更すること、
−異なる時点で第2のスピーカー配列内部のオーディオ信号をマルチ放射させること、及び、
−第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の少なくとも一部の放射を、第1のスピーカー配列を介して放射されたオーディオ信号の少なくとも一部に対して、遅延させるようにも、遅延させないようにもすること、
の可能性を開く。
本発明による関係において好ましくは、第2のスピーカー配列のスピーカーは、通常は、(リスニング位置に対して横方向で見て)対毎又はグループ毎に、第1のスピーカー配列の対応する対又はグループによって駆動制御される。
さらに好ましくは、第1のスピーカー配列のスピーカーの対及び/又はグループのオーディオ信号は、通常は、第2のスピーカー配列のスピーカーの通常はすぐ近くの対又はすぐ近くのグループを介して、遅延することなく、又はわずかな遅延を伴って再生される。
その上さらに好ましくは、実際に示されているように、聴取者の知覚におけるリスニングルーム誘発性の空間音響情報のマスキングは、第2のスピーカー配列のスピーカーの対又はグループを介して放射されたオーディオ信号が、付加的に、第2のスピーカー配列のスピーカーのさらなる対又はグループを介して再生される場合に、著しく改善される。すなわち、通常は、付加的にわずかな遅延を伴い、これは、スピーカーのそれぞれの対及び/又はグループの間の距離と正比例の関係にあり、それと同時に、距離の増加とともに幾分より小さくなるレベルが伴う。
さらに本発明によれば、本発明に係る方法を実施するために構成されたコンピュータプログラム、本発明に係る方法を実施するために構成されたコンピュータプログラム製品、本発明に係るコンピュータプログラム又は本発明に係るコンピュータプログラム製品を含むデータ担体、本発明に係る方法を実施するために構成された装置、本発明に係る方法を実施するために構成されたシステムが特許請求される。
さらに、本発明によれば、本発明に係る方法の使用、及び/又は、本発明に係るコンピュータプログラムの使用、及び/又は、本発明に係るコンピュータプログラム製品の使用、及び/又は、本発明に係るデータ担体の使用、及び/又は、本発明に係る装置の使用、及び/又は、本発明に係るシステムの使用、及び/又は、聴取位置に対して間接的に放射されるオーディオ信号、及び/又は、間接的に放射されるライブ信号及びそれと同時にリスニングルームに依存せず聴取位置に対して間接的に放射される空間音響信号が特許請求され、この空間音響信号の空間音響情報は、リスニングルームの拡散環境の同時的でかつ少なくとも十分な音響的マスキングのもとで、空間音響信号によって引き起こされる立体性の知覚を聴覚心理学的に惹起するために、オーディオ信号に依存しない原点を有している。
以下においては、本発明を、限定的にではなく例示的に、より詳細に説明する。
本発明に係る方法の可能な一実施形態の概略的透視図。
図1には、リスニングルームH内での可能なスピーカー構成が概略的かつ透視的に示されており、ここでは、聴取位置自体が符号Xで表されており、聴取者は、壁W1を見ている。
リスニングルームH内での音響再生においては、例えば、複数のスピーカーSLV1,SCV1,SRV1,SLH1及びSRH1から成る第1のスピーカー配列のハイファイコンポーネントから供給されるオーディオ信号が、聴取位置Xの方向に実質上直接的に放射される。この場合、のこの構成は、サブウーファーなしの典型的な5.1チャネルサラウンドスピーカー構成に相当する。それによりこれらのオーディオ信号は、聴取位置Xにおける聴取者に実質上直接的に伝送される。これらは、従来の録音技術に由来する、すなわち、チャネルベースであって音場ベースではないサウンド情報に相当する。
同時に、オーディオ信号と、リスニングルームHに依存しない空間音響信号(この空間音響情報はオーディオ信号に依存しない原点を有している)とが、複数のスピーカーSLVO2,SRVO2,SLHO2及びSRHO2から成る第2のスピーカー配列を介して、聴取位置Xに関して、実質上間接的に、すなわち、実質上、リスニングルーム天井D方向に放射される。この場合、の空間音響信号及びオーディオ信号は、立体性知覚への相補的な効果を与える。
空間音響信号に対するオーディオ信号の相応のレベル調整により、第2のスピーカー配列との関係においても、第1のスピーカー配列のオーディオ信号の音響レベルとの関係においても、自然でかつ信頼性の高いものとして感じられる音楽的な音像が生成され、この場合は、第2のスピーカー配列を介して放射されるオーディオ信号が、リスニングルームにおける拡散性を、本発明による包み込まれるような感覚の立体性知覚が初めて可能になるように高め、さらにこの場合は第2のスピーカー配列を介して放射されるオーディオ信号が、リスニングルームHの拡散音響のリスニングルーム誘発性の立体性情報を聴取者の知覚感覚においてマスキングするだけでなく、特に空間音響信号の空間音響情報に相応する立体性の知覚を包み込まれるような感覚に保証している。
音像の幅を主観的に拡張し、空間音響包み込み効果を高めるために、リスニングルームH内には、スピーカーSL3及びSR3から成る第3のスピーカー配列が設置される。これらのスピーカーSL3及びSR3を介して、早期反射信号(特別に選択され設定された空間音響信号)が次のように放射される。すなわち、それらがリスニングルーム壁面W2及びW3において、実質的に聴取位置X方向に反射されるように放射される。この手段により、現実空間の音響印象がさらに強められる。
リスニングルームH内での音響再生に代えて、オーディオ信号ではなく、例えばオペラハウスやコンサートでのライブ上演の際のライブ信号が使用される、さらなる変化例においては、リスニングルームHに依存しない音響信号か、又はリスニングルームに依存しない音響信号及びライブ信号に対応するオーディオ信号が、第2のスピーカー配列を介して聴取位置Xの方向に実質上間接的に放射される。この場合、一方の側においては、空間音響信号が立体性知覚に対する相補的効果を与え、他方の側においては、ライブ信号の拡散音響を引き起こす成分か、又はライブ信号及び該ライブ信号に対応するオーディオ信号の拡散音響を引き起こす成分が立体性知覚に対する相補的効果を与える。この構成においては、通常は、スピーカーSLV1,SCV1,SRV1,SLH1及びSRH1はアクティブに動作されないが、しかしながら、いくつかの状況の場合、例えばミュージカル上演の場合やリアスピーカーの使用を省いた場合でも、特に拡声目的のためにアクティブに動作させることができる。
しかしながら、ライブ上演の場合のリスニングルームHにおけるリスニングルーム誘発性の空間音響信号の音響的マスキングにおいては、いずれにせよスピーカーSLVO2,SRVO2,SLHO2及びSRHO2が駆動制御される。また、必要に応じて、第3のスピーカー配列、詳細にはSL3及びSR3のスピーカーも駆動制御される。
このようにして、ライブイベントが行われるリスニングルームHの不都合な空間音響特性を、リスニングルーム音響特性のマスキングによって最適化することが可能となる。その際には、聴取者の知覚感覚において、当該リスニングルーム音響特性が前述の空間音響信号に含まれる第3空間の所望の空間音響特性によって置き換えられる。
参考文献:
国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)
国際公開第2013/111034号(WO2013/111034A2)
Ben Kok著“Acoustic Enhancement Systems, Production Partner 4/2011”108−117頁
J.Herre, J. Hilpert, A. Kuntz, J. Plogsties著“MPEG-H Audio-The Upcoming Standard for Universal Spatial/3D Audio Coding, Proceedings of ICSA 2014 Erlangen-ISBN 978-3-98 12830-4-4”54頁
Andreas Rotter著“Wahrnehmbarkeit klanglicher Unterschiede von Hochtonlautsprechern unterschiedlicher Wirkprinzipien, MATU Berlin 2010”22頁ff。
本発明は、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法に関する。従来技術からは、リスニングルームにおける音響再生、特に1つのスピーカーを介した再生(モノラル)、2つのスピーカーを介した再生(ステレオ)又はさらに4つ若しくはそれ以上のスピーカーを介した再生のための多くの方法が公知である。この場合、市場においては、2つのフロントスピーカー及び2つのリアスピーカーがセンタースピーカー及び任意のサブウーファーとともにサラウンド再生において確立されている(いわゆる5.1チャネルのサラウンド再生構成)。特にホームオーディオ分野においては、空間的な音体験を強化する目標とともに、近年では、一部はリスニングルーム上方にも配置されかつその際には聴取位置に配向される付加的スピーカーを用いる方法もますます提供され、さらに技術的に進歩した映画館においては、数多くの付加的スピーカーが使用されている。
この場合、様々な方向からの音源の局在化に基づく(直接音響に関する)空間知覚の領域においては、特に大きな進歩が遂げられ、ここでは、多くの場合、聴取者の周りに配置されるスピーカーの数の単なる増加によって、著しい改善を達成することができている。それに対して、特に拡散された空間音響の知覚は、局在化のメカニズムの影響下に置かれるものは非常に少なく、それどころか理論的には、理想的に拡散された音響は完全な無指向性として説明される。特にホームオーディオ領域において、現在の技術水準に相応する方法を用いて拡散された空間音響の知覚に対しては、後方及び側方の音響イベント(Fluchtreflex;逃避反射)の局在化に基づく人の聴覚の純粋な特殊性が、次の点で問題になることが判明した。すなわち、当該方向に配置されたスピーカーからのわずかだけインパルス状の音響イベントも直接音響のように知覚され、ひいては拡散音響との関係でノイズとして知覚される点で問題になることが判明した。多くのサラウンド録音及びサラウンド伝送に対して生じ得る高頻度な結果は、総じて貧弱な空間効果だけであり、他のケースにおいては、空間効果は、最終的には不自然に作用する心理的音響手段によって高められるか、又は音像の誇張された拡張に基づいて高められるか、あるいは直接音響効果の使用も立体的効果の増強のために用いられている。現在の方法は、特別な空間環境における緩慢で持続的なインパルス特性の少ない音楽から一度目を転じれば、特にその効果が多くの場合立体性へのその埋め込みと密接に関連する音楽を再生するものとしては限定的にしか適していないことがわかった。
さらに、従来技術に対応する現在のサラウンド再生方法は、好ましい聴取位置(いわゆる「スイートスポット」)が非常に小さいという基本的な欠点を有する。それに対し、映画館における再生状況においては、この問題は適切な遅延によって駆動制御される付加的なスピーカーを使用することによって著しく低減することができるが、そのような手段はホームオーディオ分野においては通常は存在せず、そのため、聴取者は、既に理想的な聴取位置がすぐ側にあっても良好な空間効果の著しく乏しい状況を甘受せざるを得ない。その上さらに、この空間効果は、特に拡散音響に関しては、基本的に再生システムのない良好な自然空間環境(例えば良好なコンサートホール)よりも、包み込まれるような感覚が非常に乏しく、それに伴い情感的に魅了されるような感覚も、より希薄にしか感じられない。
ここで人によっては、拡散音響に伴う聴取者にとって包み込まれるような感覚が不十分である問題と、それに伴う現在のサラウンド再生におけるその不十分なサウンドへの埋め込みの問題とが、例えば既存のスピーカーを聴取者にあまり直接的ではなく、より間接的に配向すること、あるいは付加的なスピーカーをこの目的のために使用することでリスニングルームの拡散音響をより強く励起することによって、少しは改善されると考えるかもしれない。確かにそのような手段は、より強い立体的効果に関して所望の効果を有してはいるが、しかしながら、そのような方法で得られる立体性は、かなりの非特異的なものとしても知覚される。なぜなら、そこに含まれる空間音響情報は、大抵が小さなリスニングルーム(例えばリビングルーム)の仕様に対応しているからであり、より強い尺度でさらに使用される場合には、再生オーディオに含まれる録音空間(例えばコンサートホール)の空間音響情報の本来望まれている知覚を悪化させるだけでなく、所定の時点からは不可能にさえさせるからである。特にそのような形式で再生される音像は歪んでいるように知覚される(文献;アンドレアス・ロッター(Andreas Rotter)著、“Wahrnehmbarkeit klanglicher Unterschiede von Hochtonlautsprechern unterschiedlicher Wirkprinzipien”、MATU ベルリン、2010年、22頁参照)。市場の特定のスピーカーメーカーは、意識的に比肩し得る手法を取り扱っており、そこではこの目的のために例えば無指向性スピーカーが使用されている。その他の本来使用されるスピーカータイプは、バイポールスピーカー及びダイポールスピーカーであり、これらのスピーカーでは、フォアグラウンドにおいて、聴取者方向への直接音響の出力の回避が、リスニングルームにおける拡散音響の励起よりも強く行われている。そのような装置は、上述した問題を越えて再生されるオーディオ素材を提供し、特に直接音響と空間音響との間の関係は、制作者によって意図されたものとも明らかに異なっている。そのため、それらの使用は、特に多くの録音や伝送の調性スタイルが一般的に過度にくどく感じられる聴取者に限られる。
それゆえ、特に自然でかつ包み込まれるような(3次元的)聴覚印象に関しては、上述したような従来技術から公知の音響再生構成は、良好な又は少なくとも満足のいく結果が得られる状況に至っていない。
このことは、上述したような問題の克服、特により良好な拡散音響再生を提供することを試みている、国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)及び国際公開第2013/111034号(WO2013/111034A2)に開示された方法にも当てはまる。
国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)においては、マルチチャネルオーディオを再生するための方法が開示されており、ここでは、オーディオ信号の再生の際に拡散の所望の度合いを制御する時変メタデータを有する「ドライ」オーディオトラック又は「ステム」が符号化される。オーディオトラックは、拡散性を表し好ましくはミックスパラメータ及び遅延パラメータも表す同期化されたメタデータと関連して圧縮され伝送される。拡散メタデータからのオーディオステムの分離は、(伝送の関係で鳴り止まないオーディオデータは除いて)立体的効果の後からの適応化を可能にし、また聴取者によって個人的に設定される再生方法(カスタマイズ)も容易にさせる。しかしながら、この場合、この方法は、実質的には公知のサラウンド再生方法を使用しており、現在のサラウンド再生システムの上述した基本的な問題を克服しようとするものでもない。
米国特許第7706543号明細書(US7706543B2)には、オーディオファイルを処理するための方法が開示されており、ここでは、a)3次元空間で伝播し基準点から第1の距離に位置する音源から生じる少なくとも1つの音を表す信号が、この基準点に対応する原点の球面調和関数の基数で表される成分による音の表現を得るように符号化され、b)近接音場効果の補償が、再生装置による音の再生の場合、再生点と聴覚点との間の距離を実質的に定義する第2の距離の関数であるフィルタリングによって前記成分に適用される。このような方法で、オーディオソースによる空間補償と、当該ソースの3次元オーディオ表現の仕様が実現される。これは、1つ以上の3次元マイクロホンネットワークによる音声記録の場合、仮想オーディオソースの符号化にも、自然音場の音響符号化にも関係する。
国際公開第2013/111034号(WO2013/111034A2)は、特に、聴取位置まで主として直接経路を取るオーディオ信号を聴取位置まで供給する第1のスピーカー配列と、オーディオ信号を主として反射音響経路上で聴取位置まで供給する第2のスピーカー配列とを含むオーディオ再生システムを開示している。オーディオ素材供給部(オーディオ・レンダラー)は、マルチチャンネル・オーディオ信号のチャネル信号を第1の音声信号及び該第1の音声信号より拡散した音に対応する第2のオーディオ信号にアップミキシングするアップミキサを有している。このアップミキシングは、マルチチャネル信号の2つのチャネルに対する相関尺度の結果である。この相関尺度は、相関推定器(推定)を用いて生成される。それにより、このシステムにおいては、いつでも良好な包み込みのような性質の印象とともにより満足のいく空間効果を得るために、本来のオーディオ信号の他に、オーディオ信号自体から算出された付加的拡散音響が、聴取位置に対して間接的に放射される。つまり、この方法においては、間接的に配向されたスピーカーを専ら付加的に使用しかつそれらの駆動制御のために拡散オーディオ素材を使用する無指向性スピーカー又はバイポールスピーカー又はダイポールスピーカーの使用に対して変更された手法が用いられている。しかしながら、この方法でも、リスニングルームの励起された拡散音響が多くの場合、特に音楽を再生する場合において、再生されるオーディオにフィットせず、この理由から、直接音響と空間音響との間の関係のバランスが損なわれる傾向にある上述した問題は生じる。
国際公開第2012/033950号 国際公開第2013/111034号 米国特許第7706543号明細書
アンドレアス・ロッター(Andreas Rotter)著、"Wahrnehmbarkeit klanglicher Unterschiede von Hochtonlautsprechern unterschiedlicher Wirkprinzipien"、MATU ベルリン、2010年、22頁 Ben Kok著"Acoustic Enhancement Systems, Production Partner 4/2011"108−117頁 J.Herre, J. Hilpert, A. Kuntz, J. Plogsties著"MPEG-H Audio-The Upcoming Standard for Universal Spatial/3D Audio Coding, Proceedings of ICSA 2014 Erlangen-ISBN 978-3-98 12830-4-4"54頁
それゆえ、本発明の課題は、上述した欠点を大幅に低減するか又は可及的に排除することである。特に本発明が基礎とする課題は、情感的に魅了されるように感じられる、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法を提供することである。
少なくとも第1のスピーカー配列のスピーカーによって囲まれた領域においては、すべての聴取位置に対して、均等に良好な空間効果が達成されることが同時に当てはまる。その際、これまではリスニングルームでの拡散音響のより強い励起のもとで聴取者の知覚感覚に現れていた欠点、詳細には、特にリスニングルーム立体性がオーディオ信号に不都合に重なることによる音像の不明瞭さ、曖昧さ及び歪みは必然的に回避され得る。
ライブ音響の領域においては、オーディオ信号は、通常は、反射環境、すなわち、リスニングルーム自体の中の自然音源から生じており、この場合は多くの様々なシナリオ及び問題提起が考えられる。いくつかのコンサートホール又はコンサートホールとして使用されるいくつかの多機能ホール(そのようなケースにおいては、例えばオーケストラが音源として機能する)においては、音響は、問題があるか不満足なものと感じられる。そのようなホールの空間音響においては、音響が良好なホールの空間音響に対応させることが望まれるであろう。増幅を伴う状況、例えばミュージカルの上演においては、特に指向性の強い放射特性のラインアレイスピーカーの使用に基づいて、響きはしばしば過度に非空間的に感じられる。放射された信号は次第に消えていく(鳴り止む)が、ただし、この響きは正面から来るものとしてだけ知覚され、包含されるようなものとして知覚されることはない。
いわゆる残響時間延長システム又は音響増強システム(AES)の使用は、多くの場合、不満足なものとして知覚される。そのようなシステムは、空間内の多数のスピーカー、通常は100個乃至300個のスピーカーで動作し、まれな場合においては、約50個のスピーカーだけが使用されることもある。これらのシステムの多くは、関連する空間内の既存の残響を増幅する再生原理(例えば、MCR、VRAS)に基づいている。インライン原理によって動作する(残響が合成的に生成される)システムも、そのスピーカーは実質的には聴衆に方向付けられて配向される(例えば、Vivace)。測定可能な残響時間の延長目的は高い信頼性のもとで達成されるのに対して、そのような装置によって引き起こされる空間音響は、平坦でしばしば過度にうるさく知覚される。そのようなシステムは、包含されるように立体的に感じられる響き効果を達成するために、拡声装置の補助としてますます使用される。ここでも立体性は、しばしば不自然で平坦なものとして知覚される。
会議室においては、スピーチの明瞭度を向上させるために、吸音材の使用を含んだ建築音響学的な手段が頻繁に実施される。多くの場合、この目的は達成されているが、結果的に生じた音響は窮屈に感じられる。空間内で音響強化が用いられるか否かにかかわらず、よく通る音響は望まれるのであろうが、しかしながら、これまでに公知の手段(例えば鳴り止ませなど)を用いて、スピーチの明瞭度も損なうことなく達成することはできていない。また談話室や販売室、リビングルームでも、多くの場合は、前述したような意味で音響は不満足なものと言われているが、慣習に甘んじている。音響状況の改善は、記載したすべての場合において望まれるであろう。
前述した課題は、本発明により、請求項1に係る方法、請求項15に係るコンピュータプログラム製品、請求項16に係るデータ担体、請求項17に係る装置、請求項18に係るシステム、及び、請求項19に係る使用によって解決される。
本発明に係る、反射環境、特にリスニングルームにおける音響再生のための方法においては、再生状況において、第1のスピーカー配列からオーディオ信号が、聴取位置に対して実質上直接的に放射され、第2のスピーカー配列を介して、オーディオ信号と、リスニングルーム(H)に本来依存しない空間音響信号とが、聴取位置に対して実質上間接的に放射され、この場合、空間音響信号の空間音響情報は、オーディオ信号に依存しない原点を有している。ライブ状況においては、第2のスピーカー配列を介して、
−リスニングルームに依存しない空間音響信号か、又は、
−リスニングルームに依存しない空間音響信号と、ライブ信号に対応するオーディオ信号とが、聴取位置に対して実質上間接的に放射され、この場合、空間音響信号の空間音響情報は、ライブ信号に対応するオーディオ信号に依存しない原点を有している。
「空間音響信号の空間音響情報は、オーディオ信号に依存しない原点を有している。」とは、本発明の趣旨においては、次のように理解されたい。すなわち、空間音響信号の立体性情報(つまり、反射及び拡散音響に対応する信号成分)は、オーディオ信号から採取されるか又はそれらから計算されるのではなく、空間音響信号の立体性情報はそれに代わって例えば当該空間音響情報をまさしく含んでいるインパルス応答との畳み込みの過程において、空間音響信号に供給されるか、又は、他の例として、空間音響信号として使用される相応に構成されたHOA音場ビームに含まれることを意味するものと理解されたい。リスニングルームにおける適切なスピーカーから放射されることによって、空間音響内に含まれる空間音響情報は、聴取者側に、包含されるような感覚の立体性知覚と、その際の好ましくは所定の立体性の、つまり、所定の空間の立体性の知覚とを、引き起こすことができる。本発明に係る方法は、人の知覚感覚が適切に感じられる空間音響情報は知覚に綴じ込めるが、その他の空間音響情報は隠せるという事実を利用している。
本発明の趣旨においては、聴取位置とは、次のような位置である。すなわち、再生状況においては、5.1チャネルサラウンドシステムのスピーカーの中心における典型的な聴取位置に相当し、ライブ状況においては、いわゆる「良好なリスニングポイント」の(どちらかと言えば、むしろ、空間内の中央にある)位置に相当する位置である。
それに対して様々なサラウンド再生方法、特にホームオーディオ領域においては、当該聴取位置は、最良の聴取場所とまさしく同義ではあるが、当該聴取位置とはまさしく異なる聴取場所は、はるかに落ちる聴取結果を提供するだけであり、概念の説明においては次の点を指摘しておく。すなわち、本発明に係る方法においては、本発明の趣旨における聴取位置と、音響的に好ましい聴取場所との間のそのような関係は、むしろ、存在せず、当該聴取位置から空間的に著しく離れた聴取場所でも、そのような当該聴取位置におけるものと類似の良好な聴覚体験を提供する。
直接的な放射とは、本発明による趣旨においては、優勢な音響成分が、聴取位置に対して、直接的にそのような位置に放射されること、又は、実質上直接的に(典型的には直接的な配向ないし指向方向から30までの逸脱を伴う)そのような位置に放射されることを意味するものと理解されたい。
第1のスピーカー配列は、本発明による趣旨においては、通常は付加的スピーカーを使用しないいわゆるサラウンドオーディオミックスの再生に適したものであってもよく、通常はその目的のためにも使用される。少なくとも第1のスピーカー配列においては、1つのスピーカーは前方に、そして、2つのスピーカーは後方又は後方/側方に使用される。それに対して第1のスピーカー配列に使用されるスピーカーの最大数は無制限である。当業者に公知の多数のスピーカーを伴う配列は、NHKの22.2構成がある。特に映画館においては、ますます付加的なスピーカーが側壁と天井に、特に複数の効果の再生のために使用されており、これらの効果においては、聴取者による当該効果の位置特定を局在化の意味で狙った効果が求められている。前述の位置特定及び局在化が、天井又は壁面におけるスピーカーの信号の反射によって部分的に実現されるスピーカー配列も、本発明による趣旨においては、第1のスピーカー配列とみなされるべきである。
オーディオ信号とは、本発明の趣旨においては、通常は、伝送される音響信号又は録音から再生される音響信号であり、それらは前述の第1のスピーカー配列を介して再生するのに適した信号の形態、及び/又は、元のマイクロフォン録音の所定の処理若しくはミキシングで若しくは人工的に生成された信号の形態である。
この場合、これらのオーディオ信号又は比肩し得るオーディオ信号は、リスニングルームに依存しない空間音響信号に加えて必要な場合には適切なミキシングにおいて、第2のスピーカー配列を介して聴取位置の方向に実質上間接的に無指向性に放射される。
本発明の趣旨においては、空間音響信号とは、通常、好ましくは直接音響成分を含まず、それらによって示されるその立体性が本来のリスニングルームに割り当てられているのではなく、他の空間から生じたもの、例えば好ましくは特にそれぞれの音楽素材に適したコンサートホールから生じたものである。この場合、これらはオーディオ信号が録音された録音ルームと同一であってもよい。空間音響信号は、本発明によれば、好ましくは、特に立体的効果に関連するパラメータのそれぞれのリスニングルーム音響への適合化を可能にさせるような形態で存在し、又は、そのような方法で生成される。
確かにオーディオ信号は、通常は既に空間音響成分(これは空間音響信号を生成するための畳み込みにおいてインパルス応答の空間音響情報によって書き換えられる)も含んではいるが、しかしながら、それは、以下でもより詳細に説明する本発明による空間効果を第2のスピーカー配列を介した再生によって実現できるような形態では存在していない。それらの空間音響成分は、(例えばオーケストラ録音のもとでは)複数の異なる位置に配置された支持マイクロフォンによって録音されることで、しばしば統一性に欠けるだけでなく、録音の大きな多様性のもとでアルゴリズム的に動作する反射器を用いて実行される鳴り止みは、本発明に係る方法の第2のスピーカー配列への使用に十分に適したものではないことが判明している。
特に、オーディオ信号に含まれる空間音響成分は、当該オーディオ信号に同様に含まれる直接音響信号からは分離することができず、本発明による、リスニングルームの条件への適合化に必要とされるような方法でそれらを変更することはできない。第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の放射は、空間音響信号の放射に依存することなく行われ、そのことに依存することなく制御もされる過程である。すなわち、この過程は、実質上リスニングルームにおける拡散音響の十分な励起に用いられ、この励起は、実際において判明したように、包み込まれるような感覚で拡散する立体的効果の知覚のために必要とされるものである。
図面からは、第2のスピーカー配列を介して放射される空間音響信号、及び同様にこれを介して放射されるオーディオ信号が相補的なもの、すなわち、相互に補足的なだけでなく、誘発的な成分でもあることがわかる。つまり、この強調関係においては、一方では、オーディオ信号が、十分な拡散音響レベルを介して、包み込まれるような感覚自体の知覚を可能にし、この知覚は、空間音響信号に含まれる、包み込まれるような感覚自体の特性(例えば特定のコンサートホールの空間印象)に関する情報によって必然的に特定することができる。他方では、空間音響信号が、リスニングルームの空間音響の知覚の代わりに、所望の空間音響の知覚を可能にするが、この知覚もオーディオ信号によって生成される、包み込まれるような感覚自体なしでは無効なままである。
しかしながら、空間音響信号は、通常は、第3空間のインパルス応答のコンボルーション又は畳み込みによって限定されるものではないが(この第3空間は、例えば特に美学的方面から所望されるコンサートホールであり(上記参照)、すなわち、第3空間は、実際のモデルに対応する、又は、例えば適切なシミュレーションソフトウェアの使用によって、任意に設計され得る)、それぞれのリスニングルームの条件への前述の適合化も実施することができる機会があるオーディオ信号によって生成される。
この関係においては、記載した本発明に係る方法手順と、上述の国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)において開示された方法との基本的な相違点を明示的に指摘しておく。詳細には、一方では、タイプの異なる空間音響信号の生成であり(本発明に係る方法での畳み込み及びインパルス応答の好ましい使用とは対照的な当該国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)でのアルゴリズムによる残響生成)、他方では、(特に重要性の高い)オーディオレンダラーの入力側におけるオーディオ信号の基本的に異なる特性であり、この場合、詳細には当該国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)において専ら「乾いた」オーディオトラック又は「ステム」として使われている、つまり、次のような信号、すなわち、当業者が言うように、鳴り止みがなく、聴取者にとって、むしろ、この鳴り止み(次第に消えてゆくこと)がなければ、不自然に乾いた感じで再生されかねない信号である。その限りでは、この国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)に相当する装置を介した再生は、これまでの通常のサラウンド再生装置を介した再生とは異なる、詳細には実質的に「乾いた」ミキシングを基礎としており、それに対して、本発明に係る方法は、これまでの通常のサラウンド再生装置を介した再生に対して想定される既存のミキシングを扱うことが可能で、かつ、それにも用いられる。そのため、ここでは当業者になじみのある表現の中で、互換性について述べることができる。それに基づき、様々な再生装置のために、例えば、国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)に相当する方法の場合のように、響きの異なる基礎的ミキシングの作成及び別個の伝送は多くのケースにおいて不要である。
間接的な放射とは、本発明の趣旨においては、直接的な放射とは対照的に、優勢な音響成分が直接的に聴取位置の方向に放射されるのではなく、むしろ、間接的に放射されることを意味するものと理解されたい。そのため、これらの音響成分は、それらが最終的に聴取位置に達し、それに伴うマルチ反射によって全体として拡散音響を表わすまで、壁面及び天井及び一部は床も介してシングル反射又はマルチ反射する。本発明に係る方法の趣旨において間接的な放射のために重要なことは、この場合、むしろ、次のような拡散音響が生成されることである。すなわち、前述した(反射による)方法で生成された拡散音響に対応する拡散音響である。
ここでは、第2のスピーカー配列を介した空間音響信号の放射に関して、既に拡散性を表わす信号の拡散的分散の結果になることを明示的に指摘しておく。この場合、上記の拡散的分散の拡散性は、リスニングルーム自体の特徴をもたらすが(リスニングルーム誘発性)、それに対して空間音響信号によって表される拡散性は、上述したように他の空間の拡散性であり(第3空間誘発性)、その限りでは、むしろ、この最後に挙げた拡散性は、本発明によれば、リスニングルームにおけリスニングルーム誘発性の拡散性に重畳される。
本発明の関係において、つまり、本発明により第2のスピーカー配列を介して放射されるすべての信号や空間音響信号と同じようなオーディオ信号に関連する、むしろ、当該リスニングルーム誘発性の拡散性の特別な特徴は、それらの実際の拡散性、すなわち、リスニングルームにおけるそれらの実際の分布であり、これは、オーディオ信号の一部として、図示されただけ及びシミュレートされただけの空間音響信号の拡散性とは根本的に異なり、そのため、それは例えば第1のスピーカー配列を介して放射されたように聴取者によって知覚される。国際公開第2012/033950号(WO2012/033950A1)による方法の文脈においては、拡散性とは、以下の引用文、
“a diffuse signal or a perceptually diffuse signal in the context of the invention refers to a (usually multichannel) audio signal that has been processed electronically or digitally to create the effect of a diffuse sound when reproduced to a listener”
「本発明の関係における拡散信号又は知覚的に拡散した信号は、リスナに再生されたときに拡散音響の効果を生み出すために電子的又はデジタル的に処理された(通常マルチチャンネルの)オーディオ信号を指す。」
から明らかなように、むしろ、この最後に挙げた空間効果の間接的な形態を意味するものと理解されたい。
そのようなシミュレートされた拡散性は、聴取者に対するスピーカーの指向方向によって引き起こされる、音響拡散性の性質になじまない局在化効果のために、及び、同じ様にスピーカーの指向方向に起因するリスニングルームにおいて関連する音響信号の比較的少ない拡散的分布のために、はるかに弱く、かつ、包含されるような感覚のない、ほぼ間接的な空間効果の形態をもたらす。しかしながら、本発明に係る方法においてリスニングルームにおける実際の分散は、(オーディオ信号に依存しない、空間音響信号の空間音響情報の原点と結び付けられて)聴取者の知覚において、第3空間誘発性の拡散性に、実際の(非常に異なる方向から来る)拡散性の本質的特徴を与える。実際において明らかになったように、第2のスピーカー配列を介した空間音響信号の排他的な放射は、多くの場合、弱すぎるか、又はより高いレベルで響きすぎる空間印象を生じさせるかもしれない。第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の付加的放射によれば、(空間音響信号に依存することなく制御可能な)リスニングルームにおける拡散性を、前述した聴覚印象を形成するのに必要な尺度に適合化させることが可能である。
本発明に係る方法の第1の変化例は、リスニングルーム内での純粋なオーディオ再生である。この場合、リスニングルームにおけるライブ信号に関連する本発明に係る方法の第2の変化例においては、リスニングルームに依存しない空間音響信号が、聴取位置の方向に実質上間接的に放射される。この第2の変化例に対しても実質的に第1の変化例の文脈でなされた説明が同様に当てはまる。本発明による文脈においては、ライブ信号とは、リスニングルームからの、例えば特にオペラハウス又はホール又はその他の空間からのライブ上演中に生じた信号を意味するものと理解されたい。そのため、これは第1の変化例のように、空間性の観点における聴覚体験の音響的改善であるが、ただし、ここでの第2の変化例においては、リスニングルームとは、元の音響イベントがライブで生じている空間でもある。第2の変化例の場合、一方では、次のようなことを想定してもよい。すなわち、1つのスピーカー配列だけを使用し、その後本発明の趣旨で第1の変化例の第2のスピーカー配列を使用することである。これに関しては、第1の変化例の1つに比肩し得る方法で、マイクロフォンによって録音することによるライブ信号と、第3空間のインパルス応答とから形成された空間音響信号が、直接音響成分なしで聴取者に対して間接的に放射される。この場合、ライブ信号から形成されたオーディオ信号の放射は、第1の変化例のように可能であるが、しかしながら、多くのコンサートホールにおいては、特に必要ではない。なぜなら、これらのケースにおいては、既に十分な程度に拡散音響が空間内で形成されるからである。他方では、次のようなことも考えられる。すなわち、第2の変化例において、第1のスピーカー配列からライブ信号が聴取位置の方向に実質上直接的に放射されることである。この場合、それはここでは、例えばミュージカル上演を響き渡らせることである。ここでは、この第2の変化例は、より小さな空間への適用にも適していること、及び、ここでは、例えば会議室などのように声を響き渡らせる目的との組み合わせも可能であることを指摘しておく。いくつかのケースにおいては、その他にも、第1の変化例の目的で設置した装置に、マイクロフォンを補足して、第2の変化例の目的のために使用することも可能である。
本発明に係る、リスニングルームにおける音響再生のための方法の2つの変化例の特徴のそれぞれの特定の組み合わせにより、驚くべきことに、音響心理学的観点及び聴覚心理学的観点において、自然空間内の聴覚体験に比肩し得る、包含されるような感覚の第3空間の空間音響体験を、次のことによってリスニングルームに届けることが初めて可能となった。すなわち、オーディオ又はライブ信号の実質上直接的な放射の他に、リスニングルーム自体に、所望の空間の空間音響信号、例えば特にコンサートホールの空間音響信号を、オーディオ又はライブ信号と組み合わせて、聴取位置に対して実現させる間接的な放射の趣旨で印加することである。それぞれのリスニングルームの空間音響を同時に著しく増幅し(十分な拡散音響レベルの形成のために必要な場合)、聴取者の知覚におけるマスキングをうまくいかせることによって、従来の、第1のスピーカー配列を介して放射されていたオーディオ又はライブ信号を、審美的観点において、所望の第3空間の空間音響で豊かにすることが可能になる。この所望の第3空間の空間音響は、むしろ、リスニングルームにおいて新たに分散された拡散音響として特別な準備及び放射方法により、前述したリスニングルームの空間音響のマスキングを可能にする。そのため、審美的観点において望ましい空間印象が生じる。この空間印象は、本来のオーディオ又はライブ信号には含まれていないか、少なくとも所望の(包含されるような感覚の)効果を発揮するようには含まれておらず、さらに本来のオーディオ又はライブ信号に含まれている直接音源の知覚及び局在化を決して損なうものではない。この全く予想外の発見からの結果として本発明に係る方法が得られる。このようにして、聴取者を包み込むような感覚で情感的に魅了するオーディオデータの再生を実現することが可能になる。同時に聴覚体験は、もはや前述した聴取位置においてのみ、特に音響空間的に満足のいくように感じられるのではなく、第1のスピーカー配列のスピーカー間のすべての領域に亘って広がりを見せ(いわゆるスイートスポット問題の解決)、その上さらにこの場合は優れた低音再生がサブウーファーなしでも同様に驚くほどにほぼ単独で生じている。
本発明との関係において、このことが実際において実証されているため、好ましくは、第2のスピーカー配列に関して、空間音響信号の音響レベルと比較して、オーディオ信号の音響レベルは設定されるべきであり、前述の2つの信号の音響レベルは、オーディオ信号の音響レベルと比較して、第1のスピーカー配列に関連し、及び/又は、ライブ信号が、一方では、拡散音響によるリスニングルームの十分な励起がそのようなものとして聴覚心理学的に行われ、他方では、第3空間の空間音響信号がその効果において適合的に感じられるように設定されるべきである。様々な状況において、ここでは、特に各プログラム材料に依存して、非常に異なるレベル比の設定が必要になる可能性がある。例えば、小さなリビングルームにおいて、大きなコンサートホールの包み込まれるような感覚の空間音響描写は、第2のスピーカー配列においてオーディオ信号の高い音響レベルを要求する。オーディオ信号のレベルに関して著しく低い、第3空間の空間音響信号のレベルによっても、本発明に係る方法の実施からもたらされるように、聴取者に対する所望の前述した効果を確立することができる。第1のスピーカー配列として大抵が直接的に聴取者に対して配向されるオーディオサラウンド再生システムとは異なり、音響的に問題のあるコンサートホールにおけるライブ状況では、オーケストラはその音響のかなりの成分をコンサートホールの天井や壁面に放射する。そのため、コンサートホールに応じて、拡散音響生成のための第2のスピーカー配列における、ライブ信号に対応するオーディオ信号には、ホームオーディオリビングルームの場合よりも大幅に少ない量が求められる、あるいは十分な拡散音響が既にホール内に存在している場合でも、それによって、専ら空間音響信号のみが、第2のスピーカー配列を介して放射される。
さらにこの関係において、このことが実際において実証されているため、好ましくは、これに限定されるものではないが、空間音響信号は第3空間インパルス応答であり、それを、当業者は、市販の装置を用いて録音室若しくは他の好適なホール自体におい生成することができ、又は、市販のシミュレーションソフトウェアを用いて実空間に対応させて若しくは仮想空間から生成することができ、それらは、いくつかのケースにおいては、適切な方法及び品質で、それぞれ所望の空間や環境あるいは世界中のコンサートホールやオペラハウスからも得られる(例えばAudioease社が提供している)。
将来的な、特に音場ベースのオーディオ録音及び伝送方法は、他の及び/又はさらなる空間音響信号の作成手段を可能にさせる。その録音の例として、例えば“mh acoustics”社の“Mikrofonarray Eigen-mike”を用いて“Higher Order Ambisonic (HOA)”法で作成されたものが挙げられる。そのようなオーディオ素材は、本発明に係る方法の要件に応じて、完成されたミキシングオーディオチャネルの代わりに、録音室の所定の箇所において録音された1つ以上の音場を提供し、いわゆるビームと呼ばれるものから方向性及び指向特性を考慮して可変の断片を選択することができる。つまり、例えば十分なレベルの直接的音響成分なしの空間音響信号である。オーディオ信号もこの音場から取り出すこともでき、このことは、本発明に係る方法の枠内において、より一層差別化されたさらなる動作モードを可能にする。
本発明に係る方法の趣旨において「音場」とは、この場合、空間内の所定の箇所において知覚される(順次連続的な時間間隔/時間遅延:直接音響、反射音及び拡散音響を伴う)すべての音響情報である。つまり、音場とは、当該箇所に関連する、空間内のライブ及び/又はスピーカー信号によって生成される、空間内のすべての音響の抜粋である。音響情報の重要なパラメータは、それらの各レベル(拡散音響の場合、時間的なレベル経過を表すホール特性曲線)及びそれらが(直接音響から拡散音響へ減少する精度とともに)知覚される方向性である。多くの場合、音場の知覚は、直接音響と一緒に、関連する立体性(例えば、個別のエコーではない)が知覚されることによって総体的に行われる。
さらに満足のいく聴覚印象(拡張された音像幅やさらに包含されるような感覚の空間印象)を達成するために、実際において示されているように好ましくは、第2又は第3のスピーカー配列を介して、ただし、この第3のスピーカー配列は、例えば特に、側方音響信号のための少なくとも2つのスピーカー及び/又は上方から来る早期反射信号のための1つのスピーカーを有し、リスニングルーム壁面及び/又はリスニングルーム天井の方向へ、早期反射信号(特別に選択され設定された空間音響信号)が次のように放射される。すなわち、リスニングルーム壁面(聴取位置に対して一応耳の高さかそれ以上の高さにおける前方側方部)及び/又は前記リスニングルーム天井(前方の上方中央部)において反射された早期反射信号が実質上所望の聴取領域の方向に反射されるように放射される。
さらに個別の適用において好ましくは、第2のスピーカー配列は、オーディオ信号及び/又はライブ信号と、空間音響信号とが別個のスピーカーシャーシを介して放射されるように構成されている。
その上さらに好ましくは、第2のスピーカー配列は少なくとも有利には以下のスピーカーを有している。すなわち、聴取位置に対する前方左上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する前方右上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する後方左上からの間接的な放射のためのスピーカーと、聴取位置に対する後方右上からの間接的な放射のためのスピーカーとを有している。それに応じてこれらのスピーカーは、必ずしも前述した位置の領域に配置する必要はなく、前述した方向からの拡散音響の知覚が保証されるような位置に配置されるだけでよい。拡散音響は確かに(音響理論のように)無指向性のものではないが、ただし、直接音響よりもはるかに少ない指向性を伴った音響として知覚される(この理由から、HOA−Ambientコンポーネントも将来的なMPEG−H 3Dオーディオ規格において典型的には主要なコンポーネントよりも低いAmbisonic−Orderで伝送される)。聴取者の頭上の4つの領域、詳細には左/右及び前方/後方からの知覚は、本発明に係る方法の観点から見れば有利とみなされるべきであり、同様に有利には、間接的な放射において可及的に大きな規模でマルチ反射が例えば天井及び壁面において生じる。
第2のスピーカー配列の枠内で著しく多数のスピーカーを使用することは、本発明に係る方法との関連においては、むしろ、有利ではない。この場合は、聴覚心理的にもはや区別することができない拡散性の重畳が結果として生じ、そのため、確かに残響特性を伴う拡散音響は知覚できるが、しかしながら、それ以外の空間音響特性は知覚できない。いわゆる残響延長システム又は音響増強システムの残響の「平滑的」とも称される上述の特性は、(過度に)多数のスピーカーの使用によって説明することができる。
本発明の関係においては、第2のスピーカー配列に対して好ましくは4つのスピーカーの使用だけでなく、特別に処理されまた異なってもいる空間音響信号を伴うこれらのスピーカーの駆動制御も無意味ではない。通常は、それぞれのスピーカーのために使用されるインパルス応答の作成の際に、その構造形態がリスニングルームのものとは大きく異なり得る第3空間の次のような測定位置又は測定配向が選択される。すなわち、バランスがとれてかつ第3空間の音響をリスニングルームの再生状況で可及的に有利に音響的に表す再生をリスニングルームに導くような測定位置又は測定配向である。実際において示されているように、通常は、好ましくは、第3空間の測定位置又は測定方向の領域(例えばコンサートホールにおける良好な聴取場所又は映画シーンにおける実際の聴取場所に関して)は、原理的に(特に前後に関して)リスニングルームにおける第2のスピーカー配列を介して(聴取位置に対して)対応付けすべき畳み込み積の放射の領域に相当する。実際において実証されている変化例として、(例えばコンサートホールのように)広くて高い空間においては、いくつかのケースにおいて、例えば4つのスピーカー用に設定された空間音響信号を、左側と右側に統合し、2つのスピーカーだけを介して放射することも可能である。
その上さらに好ましくは、第2のスピーカー配列のスピーカーが、第1のスピーカー配列のオーディオ信号又はライブ信号と比較して、時間的に遅延されて、又はより早期に駆動制御され、それによって音響形成のさらなる可能性が提供される。
それゆえ、また好ましくは、第3のスピーカー配列のスピーカーが、第1のスピーカー配列のオーディオ信号又はライブ信号と比較して、時間的に遅延されて、又はより早期に駆動制御される。
実際において、そのような遅延の設定は、芸術的ないわゆるアップミックスの一部であり、ここでは、空間音響信号によって表され空間音響が、新たな環境への微調整によって適合化される。
第1のスピーカー配列を介した再生のために、オーディオ信号は通常はチャネルベースの形態で存在する。芸術的なアップミックスにおいては、これらは、上述のように、第2のスピーカー配列を介した再生の目的で、一方では、ミキシングされ(オーディオ信号成分)、他方では、第3空間インパルス応答と畳み込みされる(空間音響信号成分)。既に述べたように、コンボリューションでは、空間音響信号の適合化は、リスニングルームのそれぞれの音響状況に対して行われる。本発明に係る方法に対応する装置の信号パスに関係する空間音響信号は、チャネルベースのオーディオ形態で存在し又は伝送されるのではなく、むしろ、それぞれ装置内で好ましくは畳み込みによって生成されることにより、同じオーディオ信号の場合、適切な畳み込みパラメータ(例えば、残響の長さ、空間の大きさ、空間の幅、遅延)の適合化された変更によって、様々なリスニングルーム毎にそれぞれ適合化された空間音響信号が生成され、第2のスピーカー配列の駆動制御のための適合化されたミキシングを行うことができる。
つまり、実際において、本発明に係る方法の好ましい形態に従ってオーディオを再生するためには、オーディオ信号とインパルス応答とが必要となる。ただし、オーディオ信号としては、上述したように、特に第1のスピーカー配列を介した再生のために(第2のスピーカー配列の使用なしでも)既に提供されているサラウンドミキシングが好ましくは適している。この場合、インパルス応答を扱うために好ましくは、インパルス応答は、各リスニングルームがその空間音響特性に関して基準空間に相当する限り、それらを即座に(すなわち、パラメータの適合化なしで)使用できるようにする形態に交換されディストリビュートされる。前述の基準空間の仕様とは本発明に係る方法を介した再生のために前述のインパルス応答と結び付けてこれらのオーディオ信号を利用する者が承認した仕様である。
リスニングルームの空間音響特性は、好ましくは較正過程において求められる。この較正過程は、特に高品質のサラウンド再生システムで使用可能な公知の較正過程に基づいており、装置の運転開始前に実施される。空間寸法及びスピーカー配置に関するユーザーの手動入力の他に、測定マイクロフォンと、スピーカーを介して放射された音及び信号とを用いて、適切なレベル、遅延、及び周波数応答曲線の歪みが求められるだけでなく、特に残響時間のような空間音響パラメータも求められる。
使用されるリスニングルームがその空間音響特性に関して前述の基準空間から逸脱する限り、畳み込み及びミキシングパラメータの適合化はそれぞれの逸脱に応じて行われる。これらのパラメータは、聴取者の好みに応じた立体的効果(いわゆるカスタマイズ)を達成するためにも使用することができる。
さらに、全体の響きにとって好ましくは、空間音響信号内に直接音響成分は含まれていない。なぜなら、特にこの直接音響成分は、注意深く適合化していないと、音響信号との干渉によってノイズ状になる可能性があるからである。
付加的に好ましい響き形成手段は、以下の可能性、すなわち、
−第2のスピーカー配列の聴取位置に対して前方側のスピーカーの駆動制御時点を、当該スピーカーをより早期に又は遅延させて駆動制御することで、第2のスピーカー配列の聴取位置に対して後方側のスピーカーに対して変更すること、
−異なる時点で第2のスピーカー配列内部のオーディオ信号をマルチ放射させること、及び、
−第2のスピーカー配列を介したオーディオ信号の少なくとも一部の放射を、第1のスピーカー配列を介して放射されたオーディオ信号の少なくとも一部に対して、遅延させるようにも、遅延させないようにもすること、
の可能性を開く。
本発明による関係において好ましくは、第2のスピーカー配列のスピーカーは、通常は、(リスニング位置に対して横方向で見て)対毎又はグループ毎に、第1のスピーカー配列の対応する対又はグループによって駆動制御される。
さらに好ましくは、第1のスピーカー配列のスピーカーの対及び/又はグループのオーディオ信号は、通常は、第2のスピーカー配列のスピーカーの通常はすぐ近くの対又はすぐ近くのグループを介して、遅延することなく、又はわずかな遅延を伴って再生される。
その上さらに好ましくは、実際に示されているように、聴取者の知覚におけるリスニングルーム誘発性の空間音響情報のマスキングは、第2のスピーカー配列のスピーカーの対又はグループを介して放射されたオーディオ信号が、付加的に、第2のスピーカー配列のスピーカーのさらなる対又はグループを介して再生される場合に、著しく改善される。すなわち、通常は、付加的にわずかな遅延を伴い、これは、スピーカーのそれぞれの対及び/又はグループの間の距離と正比例の関係にあり、それと同時に、距離の増加とともに幾分より小さくなるレベルが伴う。
さらに本発明によれば、本発明に係る方法を実施するために構成されたコンピュータプログラム、本発明に係る方法を実施するために構成されたコンピュータプログラム製品、本発明に係るコンピュータプログラム又は本発明に係るコンピュータプログラム製品を含むデータ担体、本発明に係る方法を実施するために構成された装置、本発明に係る方法を実施するために構成されたシステムが特許請求される。
さらに、本発明によれば、本発明に係る方法の使用、及び/又は、本発明に係るコンピュータプログラムの使用、及び/又は、本発明に係るコンピュータプログラム製品の使用、及び/又は、本発明に係るデータ担体の使用、及び/又は、本発明に係る装置の使用、及び/又は、本発明に係るシステムの使用、及び/又は、聴取位置に対して間接的に放射されるオーディオ信号、及び/又は、間接的に放射されるライブ信号及びそれと同時聴取位置に対して間接的に放射される本来的にリスニングルームに依存しない空間音響信号が特許請求され、この空間音響信号の空間音響情報は、リスニングルームの拡散環境の同時的でかつ少なくとも十分な音響的マスキングのもとで、空間音響信号によって引き起こされる立体性の知覚を聴覚心理学的に惹起するために、オーディオ信号に依存しない原点を有している。
以下においては、本発明を、限定的にではなく例示的に、より詳細に説明する。
本発明に係る方法の可能な一実施形態の概略的透視図。
図1には、リスニングルームH内での可能なスピーカー構成が概略的かつ透視的に示されており、ここでは、聴取位置自体が符号Xで表されており、聴取者は、壁W1を見ている。
リスニングルームH内での音響再生においては、例えば、複数のスピーカーSLV1,SCV1,SRV1,SLH1及びSRH1から成る第1のスピーカー配列のハイファイコンポーネントから供給されるオーディオ信号が、聴取位置Xの方向に実質上直接的に放射される。この場合、のこの構成は、サブウーファーなしの典型的な5.1チャネルサラウンドスピーカー構成に相当する。それによりこれらのオーディオ信号は、聴取位置Xにおける聴取者に実質上直接的に伝送される。これらは、従来の録音技術に由来する、すなわち、チャネルベースであって音場ベースではないサウンド情報に相当する。
同時に、オーディオ信号と、リスニングルームHに依存しない空間音響信号(この空間音響情報はオーディオ信号に依存しない原点を有している)とが、複数のスピーカーSLVO2,SRVO2,SLHO2及びSRHO2から成る第2のスピーカー配列を介して、聴取位置Xに関して、実質上間接的に、すなわち、実質上、リスニングルーム天井D方向に放射される。この場合、の空間音響信号及びオーディオ信号は、立体性知覚への相補的な効果を与える。
第2のスピーカー配列内における空間音響信号に対するオーディオ信号の相応のレベル調整により、及び、第1のスピーカー配列のオーディオ信号の音響レベルとの関係においても、自然でかつ信頼性の高いものとして感じられる音楽的な音像が生成され、この場合は、第2のスピーカー配列を介して放射されるオーディオ信号が、リスニングルームにおける拡散性を、本発明による包み込まれるような感覚の立体性知覚が初めて可能になるように高め、さらにこの場合は第2のスピーカー配列を介して放射されるオーディオ信号が、リスニングルームHの拡散音響のリスニングルーム誘発性の立体性情報を聴取者の知覚感覚においてマスキングするだけでなく、特に空間音響信号の空間音響情報に相応する立体性の知覚を包み込まれるような感覚に保証している。
音像の幅を主観的に拡張し、空間音響包み込み効果を高めるために、リスニングルームH内には、スピーカーSL3及びSR3から成る第3のスピーカー配列が設置される。これらのスピーカーSL3及びSR3を介して、早期反射信号(特別に選択され設定された空間音響信号)が次のように放射される。すなわち、それらがリスニングルーム壁面W2及びW3において、実質的に聴取位置X方向に反射されるように放射される。この手段により、現実空間の音響印象がさらに強められる。
リスニングルームH内での音響再生に代えて、オーディオ信号ではなく、例えばオペラハウスやコンサートでのライブ上演の際のライブ信号が使用される、さらなる変化例においては、リスニングルームHに依存しない音響信号か、又はリスニングルームに依存しない音響信号及びライブ信号に対応するオーディオ信号が、第2のスピーカー配列を介して聴取位置Xの方向に実質上間接的に放射される。この場合、一方の側においては、空間音響信号が立体性知覚に対する相補的効果を与え、他方の側においては、ライブ信号の拡散音響を引き起こす成分か、又はライブ信号及び該ライブ信号に対応するオーディオ信号の拡散音響を引き起こす成分が立体性知覚に対する相補的効果を与える。この構成においては、通常は、スピーカーSLV1,SCV1,SRV1,SLH1及びSRH1はアクティブに動作されないが、しかしながら、いくつかの状況の場合、例えばミュージカル上演の場合やリアスピーカーの使用を省いた場合でも、特に拡声目的のためにアクティブに動作させることができる。
しかしながら、ライブ上演の場合のリスニングルームHにおけるリスニングルーム誘発性の空間音響信号の音響的マスキングにおいては、いずれにせよスピーカーSLVO2,SRVO2,SLHO2及びSRHO2が駆動制御される。また、必要に応じて、第3のスピーカー配列、詳細にはSL3及びSR3のスピーカーも駆動制御される。
このようにして、ライブイベントが行われるリスニングルームHの不都合な空間音響特性を、リスニングルーム音響特性のマスキングによって最適化することが可能となる。その際には、聴取者の知覚感覚において、当該リスニングルーム音響特性が前述の空間音響信号に含まれる第3空間の所望の空間音響特性によって置き換えられる。
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Claims (19)

  1. 第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)及び第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)からなるグループからの少なくとも1つのスピーカー配列を有するリスニングルーム(H)における音響再生のための方法であって、
    a)再生状況において、
    aa)オーディオ信号が、前記第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)から聴取位置(X)に対して実質上直接的に放射され、
    ab)前記オーディオ信号と、前記リスニングルーム(H)に本来依存せずかつ1つ以上の実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む空間音響信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して前記聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の前記空間音響情報が、前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    又は、
    b)ライブ状況において、
    ba)ライブ信号が、空間に放射され、
    bb)さらに
    bba)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ1つ以上の実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む前記空間音響信号、又は
    bbb)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ1つ以上の実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む前記空間音響信号と、前記ライブ信号に対応する前記オーディオ信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の前記空間音響情報が、前記ライブ信号に対応する前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    又は、
    c)ライブ状況において、
    ca)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ複数の実空間若しくは仮想空間のうちの1つの実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む空間音響信号、又は
    cb)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ複数の実空間若しくは仮想空間のうちの1つの実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む空間音響信号と、ライブ信号に対応するオーディオ信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の前記空間音響情報が、前記ライブ信号に対応する前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    又は、
    d)再生状況において、
    da)オーディオ信号が、前記第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)から聴取位置(X)に対して実質上直接的に放射され、
    db)前記オーディオ信号と、前記リスニングルーム(H)に本来依存しない空間音響信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して前記聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の前記空間音響情報が、前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    又は、
    e)ライブ状況において、
    ea)前記ライブ信号が、空間に放射され、
    eb)さらに
    eea)前記リスニングルーム(H)に依存しない空間音響信号、又は
    eeb)前記リスニングルーム(H)に依存しない空間音響信号と、ライブ信号に対応するオーディオ信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の空間音響情報が、前記ライブ信号に対応する前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    又は、
    f)ライブ状況において、
    fa)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ複数の実空間若しくは仮想空間のうちの1つの実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む空間音響信号、又は
    fb)前記リスニングルーム(H)に依存せずかつ複数の実空間若しくは仮想空間のうちの1つの実空間若しくは仮想空間の空間音響情報を含む空間音響信号と、ライブ信号に対応するオーディオ信号とが、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して聴取位置(X)に対して実質上間接的に放射される方法において、
    前記空間音響信号の前記空間音響情報が、前記ライブ信号に対応する前記オーディオ信号に依存しない原点を有していることを特徴とする、
    方法。
  2. 前記空間音響信号は、第3空間インパルス応答の畳み込み積である、
    請求項1記載の方法。
  3. a)前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介して、リスニングルーム壁面(W2,W3)及び/又はリスニングルーム天井(D)の方向へ、前記空間音響信号から生じる早期反射信号又は平均的早期反射信号が、次のように放射される、すなわち、前記リスニングルーム壁面(W2,W3)及び/又は前記リスニングルーム天井(D)において反射された前記早期反射信号又は前記平均的早期反射信号が実質上前記聴取位置(X)の方向に反射されるように放射される、
    又は、
    b)第3のスピーカー配列(SL3,SR3)を介して、リスニングルーム壁面(W2,W3)及び/又はリスニングルーム天井(D)の方向へ、前記空間音響信号から生じる早期反射信号又は平均的早期反射信号が、次のように放射される、すなわち、前記リスニングルーム壁面(W2,W3)及び/又は前記リスニングルーム天井(D)において反射された前記早期反射信号又は前記平均的早期反射信号が実質上前記聴取位置(X)の方向に反射されるように放射される、
    請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)は、次のように構成されている、すなわち、
    a)前記オーディオ信号と、前記空間音響信号とが別個のスピーカーシャーシを介して放射されるように、又は、
    b)前記オーディオ信号に対応する前記ライブ信号と、前記空間音響信号とが別個のスピーカーシャーシを介して放射されるように、又は、
    c)前記オーディオ信号に対する前記空間音響信号と、前記オーディオ信号に対応する前記ライブ信号に対する前記空間音響信号とが、別個のスピーカーシャーシを介して放射されるように、
    構成されている、
    請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)は、少なくとも以下のスピーカーを有している、すなわち、
    a)−前記聴取位置に対する左上からの間接的な放射のためのスピーカーと、
    −前記聴取位置に対する右上からの間接的な放射のためのスピーカーと、
    を有している、
    又は、
    b)−前記聴取位置に対する前方左上からの間接的な放射のためのスピーカー(SLVO2)と、
    −前記聴取位置に対する前方右上からの間接的な放射のためのスピーカー(SRVO2)と、
    −前記聴取位置に対する後方左上からの間接的な放射のためのスピーカー(SLHO2)と、
    −前記聴取位置に対する後方右上からの間接的な放射のためのスピーカー(SRHO2)と、
    を有している、
    請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記第3のスピーカー配列(SL3,SR3)は、少なくとも以下のスピーカーを有している、すなわち、
    −聴取位置に対する前方左からの耳の高さ又はそれ以上の高さまでの反射的な放射のためのスピーカー(SL3)と、聴取位置に対する前方右からの耳の高さ又はそれ以上の高さまでの反射的な放射のためのスピーカー(SR3)とを有している、
    及び/又は、
    −聴取位置に対する前方中央上方からの反射的な放射のためのスピーカーを有している、請求項5記載の方法。
  7. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)のスピーカーと、前記第3のスピーカー配列(SL3,SR3)のスピーカーとは、特別に処理されかつそれに応じて異なっている空間音響信号によって駆動制御される、
    請求項1及び2を引用しない、請求項5又は6記載の方法。
  8. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)のスピーカーは、前記第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)の前記ライブ信号又は前記オーディオ信号と比較して、時間的に遅延されて又はより早期に駆動制御される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  9. 前記第3のスピーカー配列(SL3,SR3)のスピーカーは、前記第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)の前記ライブ信号又は前記オーディオ信号と比較して、時間的に遅延されて又はより早期に駆動制御される、請求項1及び2を引用しない、請求項3から8までのいずれか1項記載の方法。
  10. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)のうちの前記聴取位置(X)に対して前方側のスピーカー(SLVO2,SRVO2)は、前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)のうちの前記聴取位置(X)に対して後方側のスピーカー(SLHO2,SRHO2)と比較して、時間的により早期に又は遅延されて駆動制御される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
  11. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)の内部で、前記オーディオ信号は、異なる時点で多重に放射される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
  12. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)を介した前記オーディオ信号の少なくとも一部は、前記第1のスピーカー配列(SLV1,SCV1,SRV1,SLH1,SRH1)の前記オーディオ信号の少なくとも一部に対して、時間的に遅延させるようにも、時間的に遅延させないようにも放射される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)のうちの前記聴取位置(X)に対して前方側の前記スピーカー(SLVO2,SRVO2)を介した前記オーディオ信号の一部は、前記聴取位置(X)に対して後方側の前記スピーカー(SLHO2,SRHO2)を介した前記オーディオ信号の同じ部分よりも時間的により早期に放射され又はその逆も成り立つ、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. 前記第2のスピーカー配列(SLVO2,SRVO2,SLHO2,SRHO2)の内部の前記オーディオ信号と、前記空間音響信号とは、それらの音響レベルに関して相互に依存することなく制御可能である、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
  15. 請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されている、コンピュータプログラム製品。
  16. 請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されている、コンピュータプログラムを含んでいる、データ担体。
  17. 請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されている、装置。
  18. 請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するために構成されている、システム。
  19. リスニングルーム(H)の立体的効果の同時的でかつ少なくとも十分な音響的マスキングのもとで、空間音響信号によって表される立体性の包み込まれるような感覚の知覚を聴覚心理学的に惹起するための、
    −請求項1から14までのいずれか1項記載の方法、
    及び/又は
    −請求項15記載のコンピュータプログラム製品、
    及び/又は
    −請求項16記載のデータ担体、
    及び/又は
    請求項17記載の装置、
    及び/又は
    −請求項18記載のシステム
    の使用。
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