JP2018515507A - アルツハイマー病の処置のための神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化方法 - Google Patents

アルツハイマー病の処置のための神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018515507A
JP2018515507A JP2017558374A JP2017558374A JP2018515507A JP 2018515507 A JP2018515507 A JP 2018515507A JP 2017558374 A JP2017558374 A JP 2017558374A JP 2017558374 A JP2017558374 A JP 2017558374A JP 2018515507 A JP2018515507 A JP 2018515507A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
trpc6
orai2
compound
stim2
mice
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017558374A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018515507A5 (ja
Inventor
イリヤ ベズプロズバニー
イリヤ ベズプロズバニー
フア チャン
フア チャン
Original Assignee
ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム, ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム filed Critical ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
Publication of JP2018515507A publication Critical patent/JP2018515507A/ja
Publication of JP2018515507A5 publication Critical patent/JP2018515507A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/495Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with two or more nitrogen atoms as the only ring heteroatoms, e.g. piperazine or tetrazines
    • A61K31/505Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim
    • A61K31/517Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim ortho- or peri-condensed with carbocyclic ring systems, e.g. quinazoline, perimidine
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K45/00Medicinal preparations containing active ingredients not provided for in groups A61K31/00 - A61K41/00
    • A61K45/06Mixtures of active ingredients without chemical characterisation, e.g. antiphlogistics and cardiaca
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/20Pills, tablets, discs, rods
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/48Preparations in capsules, e.g. of gelatin, of chocolate
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)

Abstract

本開示はアルツハイマー病の新しい処置法を提供する。特に、本開示はアルツハイマー病患者における神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化に関する。

Description

優先権の主張
本出願は、2015年5月8日出願の米国特許仮出願第62/159,083号に対する優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
連邦政府による資金提供の陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成番号1R01NS080152-01A1の下での政府支援によって行った。政府は本発明において一定の権利を有する。
I. 分野
本開示は一般には神経生物学、神経生理学、薬理学および生化学の分野に関する。特に、本開示はアルツハイマー病患者における神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化に関する。
II. 関連技術の説明
アルツハイマー病(AD)は、ヒトの寿命が延びたことにより引き起こされる現代の人類の脅威である。100年を超えるADの病理の大規模な研究にもかかわらず、ADに対する疾患修飾療法はない。ADにおける記憶喪失は「シナプス機能不全」に起因する(Koffie et al., 2011;Selkoe et al., 2002およびTu et al., 2014)。シナプス後樹状突起スパインは学習および記憶において重要な役割を果たす(Bourne et al., 2008およびKasai et al., 2003)。シナプス後スパインは通常はそれらの形態学的構造によって、マッシュルーム型スパイン(mushroom spine)、細いスパイン(thin spine)、および切り株型スパイン(stubby spine)の3つの群に分類される(Bourne et al., 2008およびKasai et al., 2003)。マッシュルーム型スパインは、記憶の保持を担う機能的により強いシナプスを作る、安定な「記憶スパイン」であると提唱されている(Bourne et al., 2007)。本発明者らおよび他の研究者らは以前に、マッシュルーム型スパインはADにおいて強力に除去され、マッシュルーム型スパインの減少が疾患進行中の認知低下の根底にあるであろうと提唱した(Popugaeva et al., 2013;Popugaeva et al., 2012;Tackenberg et al., 2009およびBezprozvanny et al., 2013)。しかし、ADにおけるマッシュルーム型スパイン減少の原因である細胞生物学的メカニズムはあまり理解されていない。
最近、本発明者らは、シナプス後スパインにおける神経細胞ストア作動性カルシウム流入(nSOC)が、シナプスCaMKIIを構成的に活性化することにより、マッシュルーム型スパインの安定性において重要な役割を果たすことを示した(Sun et al., 2014)。本発明者らはさらに、シナプスnSOCは間質相互作用分子2(STIM2)によって制御され、STIM2-nSOC-CaMKII経路がPS1M146Vノックイン(PS1KI)ニューロン、加齢ニューロン、および散発性AD脳ではSTIM2タンパク質のダウンレギュレーションにより損なわれていることを示した(Sun et al., 2014)。さらに、本発明者らは、STIM2タンパク質の発現がPS1KI海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパイン減少を救済することを示している(Sun et al., 2014)。追跡調査において、本発明者らは、STIM2-nSOC経路はアミロイド毒性の条件下でダウンレギュレートされ、STIM2の過剰発現が、海馬マッシュルーム型スパインを、アミロイドにより誘導される減少から保護することを示した(Popugaeva et al., 2015およびZhang et al., 2015)。これらの試験により、STIM2-nSOC経路は重要なAD治療標的の可能性があることが示唆されたが、シナプススパインにおけるSTIM2調節性nSOCチャネルの分子アイデンティティは不明である。
概要
したがって、本開示に従い、アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象に以下の式によってさらに定義される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する段階を含む、方法が提供される:
Figure 2018515507
式中、
各R1はアミノ、シアノ、カルボキシル、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、シクロアルキルアミノ(C≦8)、ジシクロアルキルアミノ(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;
xは1、2、3、4、または5であり;
R2は水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)であり;
nは1、2、3、4、または5であり;
各R3はアミノ、カルボキシル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキル(C≦8)、シクロアルキル(C≦8)、アルケニル(C≦8)、アルキニル(C≦8)、アシル(C≦8)、アミド(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;かつ
yは1、2、3、4、または5である。いくつかの態様において、化合物は、以下:
Figure 2018515507
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、式中、R1、x、R2、n、およびR3は上で定義したとおりである。いくつかの態様において、化合物は、以下:
Figure 2018515507
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、式中、R1、x、n、およびR3は上で定義したとおりである。いくつかの態様において、化合物は、以下:
Figure 2018515507
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、式中、R1、n、およびR3は上で定義したとおりである。いくつかの態様において、R1はニトロである。他の態様において、R1はアミノ、アルキルアミノ(C≦8)、置換アルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、または置換ジアルキルアミノ(C≦8)である。いくつかの態様において、nは2または3である。いくつかの態様において、nは2である。いくつかの態様において、R3はクロロなどのハロである。他の態様において、R3はアミド(C≦8)または置換アミド(C≦8)、例えば-NHC(O)CH3である。いくつかの態様において、化合物は、以下:
Figure 2018515507
またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される。
アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にアゴニストまたはTRPC6もしくはOrai2を投与する段階を含み、該アゴニストはハイパーフォリンでもハイパーフォリン誘導体でもない、方法もまた提供される。さらに、アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にnSOC経路のアゴニストを投与する段階を含み、該アゴニストはハイパーフォリンでもハイパーフォリン誘導体でもハイパーフォリン類縁体でもない、方法が提供される。なおさらに、アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にジアシルグリセロール(DAG)誘導性TRPC6活性化の増強剤を投与する段階を含む、方法が提供される。
対象を、コリンエステラーゼ阻害剤、ムスカリンアゴニスト、抗酸化剤、抗炎症剤、ガランタミン(レミニール)、タクリン(コグネックス(Cognex))、セレギリン、フィゾスチグミン、レビスチグミン(revistigmin)、ドネペジル、(アリセプト)、リバスチグミン(イクセロン)、メトリホナート、ミラメリン、キサノメリン、サエルゾール(saeluzole)、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、ENA-713、メムリック(memric)、クエチアピン、ニューレストロール(neurestrol)またはニューロミダール(neuromidal)などの、少なくとも1つの第二のアルツハイマー病療法でさらに処置してもよい。処置は、記憶、認知もしくは学習の改善、症状もしくは病態生理の進行の遅延、生活の質の改善、または寿命の延長のうちの1つまたは複数を含んでもよい。化合物またはアゴニストは、経口で、または静脈内、皮内、 動脈内、腹腔内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、筋肉内、もしくは皮下を含む注射により、投与してもよい。化合物またはアゴニストは、1日に1、2、3または4回投与してもよい。化合物またはアゴニストは、慢性的に投与してもよい。前記方法は、前記化合物またはアゴニストの投与の前および/または後に前記対象の認知または記憶を測定する段階をさらに含んでもよい。哺乳動物対象は、早発性アルツハイマー病または晩発性アルツハイマー病を患っている者などの、ヒトであってもよい。哺乳動物対象は非ヒト動物対象であってもよい。
なおさらにもう1つの態様において、薬学的緩衝液、希釈剤または賦形剤中で製剤化された、以下の式:
Figure 2018515507
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物が提供される:
式中、
各R1はアミノ、シアノ、カルボキシル、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、シクロアルキルアミノ(C≦8)、ジシクロアルキルアミノ(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;
xは1、2、3、4、または5であり;
R2は水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)であり;
nは1、2、3、4、または5であり;
各R3はアミノ、カルボキシル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキル(C≦8)、シクロアルキル(C≦8)、アルケニル(C≦8)、アルキニル(C≦8)、アシル(C≦8)、アミド(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;かつ
yは1、2、3、4、または5である。いくつかの態様において、組成物は、以下の式:
Figure 2018515507
によってさらに定義される化合物またはその薬学的に許容される塩をさらに含む。組成物は、錠剤、カプセル剤、または散剤などの、固体剤形であってもよい。組成物は、経口液体剤形、または注射用液体剤形であってもよい。組成物は、1〜100mg/kgの前記化合物、5〜50mg/kgまたは約10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kgもしくは30mg/kgを含んでもよい。
本明細書に記載の任意の方法または組成物は本明細書に記載の任意の他の方法または組成物と共に実施しうることが企図される。
「a」または「an」なる単語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」なる用語と共に用いられる場合、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多く」の意味とも一致する。
本明細書において論じる任意の態様は本開示の任意の方法または組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本開示の組成物およびキットは、本開示の方法を達成するために用いることができる。
本出願の全体を通して、「約」なる用語は、値が、その値をもとめるために用いている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
添付の図面は本明細書の一部を形成し、本開示の一定の局面をさらに示すために含まれる。本開示は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において提示する特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することで、より良く理解されるであろう。
特許または特許出願ファイルは、カラーで制作された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を添付した本特許または特許出願公報のコピーは、必要な料金の要求および支払い後に、事務所により提供される。
TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2調節性複合体を形成する。TRPC6およびOrai2ウサギポリクローナル抗体を用いて、海馬シナプトソーム溶解物からSTIM2を免疫共沈降した。インプットは免疫沈降に用いた溶解物の1/10である。 TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2調節性複合体を形成する。GST、GST-S2-SOARおよびGST-S2-LASS組換えタンパク質を、HA-Orai2またはYFP-TRPC6発現構築物を形質移入したHEK293細胞からの溶解物によるプルダウン実験で用いた。インプットはプルダウン実験に用いた溶解物の1/50である。 TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2調節性複合体を形成する。抗HAマウスモノクローナル抗体または抗TRPC6ウサギポリクローナル抗体を、YFP-TRPC6およびHA-Orai2発現プラスミドを同時形質移入したHEK293細胞からの溶解物による免疫沈降実験で用いた。インプットレーンは免疫沈降に用いた溶解物の1/20である。 TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2調節性複合体を形成する。抗TRPC6ウサギポリクローナル抗体を、HA-Orai2、HA-TRPC6およびYFP-STIM2またはYFP-STIM2-LASS構築物を同時形質移入したHEK293細胞からの溶解物による免疫沈降実験で用いた。実験1および3は、溶解前に通常のACSF(2mM Ca2+)中で10分間インキュベートした細胞から調製した溶解物で実施した。実験2および4は、溶解前に無Ca2+ ACSF(400μM EGTAを追加)中で10分間インキュベートした細胞から調製した溶解物で実施した。実験1〜4のインプットレーンは免疫沈降に用いた全溶解物の1/50である。 TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2調節性複合体を形成する。図1Dに示した結果を説明するモデル(実験1〜4)。STIM2は、Orai2にSOARドメインを介して直接および強力に結合し、かつTRPC6に異なる領域を介して弱く結合する(実験1)。Ca2+ストアの枯渇は機能的TRPC6/Orai2-STIM2複合体の構築を促進する(実験2)。STIM2-LASS変異体はOrai2に結合せず、代わりにTRPC6との非生産的複合体に動員される(実験3)。STIM2-LASS変異体とOrai2およびTRPC6との結合はERストア枯渇によって影響を受けない(実験4)。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。対照RNAi(siCtrl)またはTRPC6に対するRNAi(siT6)をコードするレンチウイルスに感染した野生型海馬ニューロン培養物からの溶解物の分析のウェスタンブロット。溶解物を、表示のとおり、TRPC6、Orai2、PSD95、pCaMKII、およびCAMIIに対する抗体を用いてブロットした。GAPDHをローディング対照として用いた。3つの独立の培養物からの代表的結果を示す。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。対照RNAi(siCtrl)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染した野生型海馬ニューロン培養物からの溶解物の分析のウェスタンブロット。溶解物を、表示のとおり、TRPC6、Orai2、PSD95、pCaMKII、およびCAMIIに対する抗体を用いてブロットした。GAPDHをローディング対照として用いた。3つの独立の培養物からの代表的結果を示す。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。野生型海馬ニューロンのスパインにおけるGCaMP5.3蛍光シグナル変化の時間経過。細胞外Ca2+再添加の時間をトレースの上の黒色バーで示す。100μM DHPGをCa2+再添加の50秒前に加えた。ニューロンを対照RNAi(siCtrl)、TRPC6に対するRNAi(siT6)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染させた。対照ニューロン(Con)およびSTIM2発現プラスミドを同時形質移入したニューロン(+STIM2)の結果を示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。平均nSOCスパインピーク振幅を、図2Cに示す各細胞群について示す。各群の平均ΔF/F0シグナルを平均±SE(n≧45スパイン)で示す。***、p<0.001。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。DIV7でTD-Tomatoを形質移入し、DIV15〜16で固定した、野生型海馬ニューロンの共焦点画像。ニューロンを対照RNAi(siCtrl)、TRPC6に対するRNAi(siT6)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染させた。対照ニューロン(Con)およびSTIM2発現プラスミドを同時形質移入したニューロン(+STIM2)の結果を示す。スケールバーは10μmである。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。図2Eに示す各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧20スパイン)で示す。***、p<0.001、*、p<0.05。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。PS1KI海馬ニューロンのスパインにおけるGCaMP5.3蛍光シグナル変化の時間経過。細胞外Ca2+再添加の時間をトレースの上の黒色バーで示す。100μM DHPGをCa2+再添加の50秒前に加えた。ニューロンを対照RNAi(siCtrl)、TRPC6に対するRNAi(siT6)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染させた。対照ニューロン(Con)およびSTIM2発現プラスミドを同時形質移入したニューロン(+STIM2)の結果を示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。平均nSOCスパインピーク振幅を、図2Gに示す各細胞群について示す。各群の平均ΔF/F0シグナルを平均±SE(n≧45スパイン)で示す。***、p<0.001。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。DIV7でTD-Tomatoを形質移入し、DIV15〜16で固定した、PS1KI海馬ニューロンの共焦点画像。ニューロンを対照RNAi(siCtrl)、TRPC6に対するRNAi(siT6)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染させた。対照ニューロン(Con)およびSTIM2発現プラスミドを同時形質移入したニューロン(+STIM2)の結果を示す。スケールバーは10μmである。 TRPC6およびOrai2はスパインnSOCおよびマッシュルーム型スパインの維持にとって必要である。図2Iに示す各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧20スパイン)で示す。***、p<0.001、*、p<0.05。 シナプスnSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2の機能的役割。野生型、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンのスパインにおけるGCaMP5.3蛍光シグナル変化の時間経過。細胞外Ca2+再添加の時間をトレースの上の黒色バーで示す。100μM DHPGをCa2+再添加の50秒前に加えた。対照(CON)ニューロンおよび表示のとおりTRPC6、Orai2、STIM2、またはSTIM2-LASSプラスミドを同時形質移入したニューロンについての結果を示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 シナプスnSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2の機能的役割。野生型、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンのスパインにおけるGCaMP5.3蛍光シグナル変化の時間経過。細胞外Ca2+再添加の時間をトレースの上の黒色バーで示す。100μM DHPGをCa2+再添加の50秒前に加えた。対照(CON)ニューロンおよび表示のとおりTRPC6、Orai2、STIM2、またはSTIM2-LASSプラスミドを同時形質移入したニューロンについての結果を示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 シナプスnSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2の機能的役割。平均nSOCスパインピーク振幅を、図3Aに示す各細胞群について示す。各群の平均ΔF/F0シグナルを平均±SE(n≧73スパイン)で示す。***、p<0.001。 シナプスnSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2の機能的役割。DIV7でTD-Tomatoを形質移入し、DIV15〜16で固定した、野生型、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンの共焦点画像。対照ニューロン(CON)およびTRPC6、STIM2、またはSTIM2-LASSプラスミドを同時形質移入したニューロンについての画像を示す。スケールバーは10μmである。 シナプスnSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2の機能的役割。図3Cに示す各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧19スパイン)で示す。***、p<0.001。 NSN21778およびハイパーフォリンはAD海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの減少を救済する。NSN21778およびハイパーフォリンの化学構造。 NSN21778およびハイパーフォリンはAD海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの減少を救済する。野生型、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンのスパインにおけるGCaMP5.3蛍光シグナル変化の時間経過。細胞外Ca2+再添加の時間をトレースの上の黒色バーで示す。100μM DHPGをCa2+再添加の50秒前に加えた。対照(CON)ニューロンおよび表示のとおり300nM NSN21778(+NSN)または300nMハイパーフォリン(+Hyp)で30分間前処理したニューロンについての結果を示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 NSN21778およびハイパーフォリンはAD海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの減少を救済する。平均nSOCスパインピーク振幅を、パネルBに示す各細胞群について示す。各群の平均ΔF/F0シグナルを平均±SE(n≧45スパイン)で示す。***、p<0.001。 NSN21778およびハイパーフォリンはAD海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの減少を救済する。TD-Tomatoを形質移入し、DIV15〜16で固定した、野生型、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンの共焦点画像。対照ニューロン(CON)および固定前に30nM NSN21778(+NSN)または30nMハイパーフォリン(+Hyp)で16時間処理したニューロンについての画像を示す。スケールバーは10μmである。 NSN21778およびハイパーフォリンはAD海馬ニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの減少を救済する。図4Dに示す各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧18スパイン)で示す。***、p<0.001。 TRPC6はNSN21778およびハイパーフォリンの分子標的である。(図5A〜B)EGFPプラスミド(GFP)またはEGFPおよびTRPC6プラスミドの組み合わせ(TRPC6)を形質移入したHEK293細胞のFura-2 Ca2+シグナルの時間経過を示す。細胞を、2mM Ca2+を含むACSF培地中でインキュベートした。図5Bに示す実験において、細胞を0.1mM Ca2+含有改変ACSF培地に2分間移し、次いで100μM OAGを加えた2mM Ca2+含有培地に戻した。1μMハイパーフォリン(Hyp)またはNSN21778(NSN)の添加の時間をFura-2トレースの上の赤色バーで示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 TRPC6はNSN21778およびハイパーフォリンの分子標的である。(図5A〜B)EGFPプラスミド(GFP)またはEGFPおよびTRPC6プラスミドの組み合わせ(TRPC6)を形質移入したHEK293細胞のFura-2 Ca2+シグナルの時間経過を示す。細胞を、2mM Ca2+を含むACSF培地中でインキュベートした。図5Bに示す実験において、細胞を0.1mM Ca2+含有改変ACSF培地に2分間移し、次いで100μM OAGを加えた2mM Ca2+含有培地に戻した。1μMハイパーフォリン(Hyp)またはNSN21778(NSN)の添加の時間をFura-2トレースの上の赤色バーで示す。各実験群について、個々のスパイン(灰色)および平均(赤)蛍光トレースを示す。 TRPC6はNSN21778およびハイパーフォリンの分子標的である。平均Ca2+流入ピークを、図5A〜Bに示す実験について平均±SE(n≧81)で示す。 TRPC6はNSN21778およびハイパーフォリンの分子標的である。TD-Tomatoを形質移入し、DIV15〜16で固定した、野生型およびPS1KI海馬ニューロンの共焦点画像。ニューロンを対照RNAi(siCtrl)、TRPC6に対するRNAi(siT6)またはOrai2に対するRNAi(siO2)をコードするレンチウイルスに感染させた。薬物処理なしのニューロン(CON)および固定前に30nM NSN21778(+NSN)または30nMハイパーフォリン(+Hyp)で16時間処理したニューロンについての画像を示す。スケールバーは10μmである。野生型およびPS1KIニューロンの薬物処理なしの群は図2A〜Jに示すのと同じ実験からのものである。 TRPC6はNSN21778およびハイパーフォリンの分子標的である。パネルAに示す各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧19ニューロン)で示す。***、p<0.001。 NSN21778はAD海馬切片におけるマッシュルーム型スパインおよびシナプス可塑性の欠損を救済する。月齢6ヶ月のWTGFP、PS1KIGFP、およびAPPKIGFPマウスからのCA1海馬切片の共焦点画像。未処理切片(CON)および固定前に300nM NSN21778で3.5時間処理した切片(+NSN)についての画像を示す。スケールバーは10μmである。 NSN21778はAD海馬切片におけるマッシュルーム型スパインおよびシナプス可塑性の欠損を救済する。月齢6ヶ月のWTGFP、PS1KIGFP、およびAPPKIGFPマウスからの海馬CA1ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの割合。未処理切片(CON)および300nM NSN21778で処理した切片(+NSN)についての結果を示す。各細胞群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧31ニューロン)で示す。***、p<0.001。 NSN21778はAD海馬切片におけるマッシュルーム型スパインおよびシナプス可塑性の欠損を救済する。刺激前(基本)、テタヌス刺激の直後(誘導)およびテタヌス刺激の1時間後(1時間後)の月齢6ヶ月のWTおよびAPPKI海馬切片についての試料fEPSPトレースを示す。未処理切片およびテタヌス刺激の2〜3時間前に300nM NSN21778で前処理した切片(+NSN)についての結果を示す。 NSN21778はAD海馬切片におけるマッシュルーム型スパインおよびシナプス可塑性の欠損を救済する。300nM NSN21778前処理あり(+NSN)またはなしの月齢6ヶ月の野生型およびAPPKI切片での実験における、正規化および平均fEPSPスロープを時間の関数として示す。各時点で、平均正規化fEPSPスロープを、平均±S.E(n≧6マウス)で示す。 NSN21778はAD海馬切片におけるマッシュルーム型スパインおよびシナプス可塑性の欠損を救済する。月齢6ヶ月の野生型およびAPPKI切片についてのテタヌス刺激の1時間後の平均正規化fEPSPスロープを示す。未処理切片(CON)および300nM NSN21778で前処理した切片(+NSN)についての結果を、平均±S.E.(各群でn≧6マウス)で示す。*p<0.05。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。月齢6.5ヶ月のWTGFP、PS1KIGFP、およびAPPKIGFPマウスからのCA1海馬切片の共焦点画像。媒体溶液を10週間i.p.注射したマウス(CON)および10mg/kg NSN21778を10週間注射したマウス(+NSN)についての画像を示す。スケールバーは10μmである。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。月齢6.5ヶ月のWTGFP、PS1KIGFP、およびAPPKIGFPマウスからの海馬CA1ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの割合。媒体溶液を10週間i.p.注射したマウス(CON)および10mg/kg NSN21778を10週間注射したマウス(+NSN)についての結果を示す。各群のマッシュルーム型スパインの平均割合を、平均±SE(n≧25ニューロン)で示す。***、p<0.001。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。6E10抗Aβ抗体で染色した月齢13ヶ月のAPPKIマウスからの冠状切片の画像。媒体溶液を8週間i.p.注射したマウス(CON)および10mg/kg NSN21778を8週間注射したマウス(+NSN)についての画像を示す。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。媒体溶液を8週間i.p.注射した月齢13ヶ月のAPPKIマウス(CON)および10mg/kg NSN21778を8週間注射したマウス(+NSN)からの切片について、平均斑面積を示す。データを平均±SE(NSN群ではn=5マウス、CON群ではn=4マウス)で示す。*、p<0.05。媒体溶液を10週間i.p.注射した月齢6.5ヶ月のWTGFPおよびAPPKIGFPマウス(CON)ならびに10mg/kg NSN21778を10週間注射したマウス(+NSN)について、文脈的恐怖条件づけパラダイム後にすくみ状態にあった時間の平均割合を示す。データを平均±SE(n=5マウス)で示す。*、p<0.05。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。媒体溶液を8週間i.p.注射した月齢13ヶ月のAPPKIマウス(CON)および10mg/kg NSN21778を8週間注射したマウス(+NSN)からの切片について、斑強度を示す。データを平均±SE(NSN群ではn=5マウス、CON群ではn=4マウス)で示す。*、p<0.05。媒体溶液を10週間i.p.注射した月齢6.5ヶ月のWTGFPおよびAPPKIGFPマウス(CON)ならびに10mg/kg NSN21778を10週間注射したマウス(+NSN)について、文脈的恐怖条件づけパラダイム後にすくみ状態にあった時間の平均割合を示す。データを平均±SE(n=5マウス)で示す。*、p<0.05。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。媒体溶液を10週間i.p.注射した月齢6.5ヶ月のWTGFPおよびAPPKIGFPマウス(CON)ならびに10mg/kg NSN21778を10週間注射したマウス(+NSN)について、文脈的恐怖条件づけパラダイム後にすくみ状態にあった時間の平均割合を示す。データを平均±SE(n=5マウス)で示す。*、p<0.05。 NSN21778はインビボでADマウスの表現型を救済する。STIM2依存性TRPC6/Orai2 nSOCチャネルは、マッシュルーム型シナプススパインの維持において重要な役割を果たす。細胞外グルタミン酸はスパインにおけるmGluR受容体を活性化して、PLCの活性化、PIP2の加水分解ならびにInsP3およびDAGの生成につながる。InsP3はスパインにおけるER Ca2+ストア中のInsP3R1の活性化を引き起こして、Ca2+の放出およびストアの枯渇につながる。ストアの枯渇はSTIM2のオリゴマー化およびTRPC6/Orai2 Ca2+流入チャネルの活性化を引き起こす。PIP2加水分解後に生成されたDAGはTRPC6/Orai2チャネルの活性化における補助因子として作用する。結果として起こるCa2+流入は、長期のマッシュルーム型スパイン維持に必要な、スパインにおけるCaMKIIの活性化を支持する。NSN21778化合物(NSN)はTRPC6/Orai2チャネル活性の正のモジュレーターとして作用して、ADマウスモデルにおいてスパインにおけるCa2+流入を促進し、マッシュルーム型スパイン、LTPおよび記憶障害の救済につながる。 マウス脳におけるTRPCおよびOraiチャネル発現(図1A〜Eに関連)。Allen Brain Atlasからのインサイチューハイブリダイゼーション画像は、マウス脳におけるSTIM、TRPCおよびOraiチャネルの発現を示す。 マウス脳におけるTRPCおよびOraiチャネル発現(図1A〜Eに関連)。Allen Brain Atlasからのインサイチューハイブリダイゼーション画像は、マウス脳におけるSTIM、TRPCおよびOraiチャネルの発現を示す。 マウス脳におけるTRPCおよびOraiチャネル発現(図1A〜Eに関連)。Allen Brain Atlasからのインサイチューハイブリダイゼーション画像は、マウス脳におけるSTIM、TRPCおよびOraiチャネルの発現を示す。 マウス脳におけるTRPCおよびOraiチャネル発現(図1A〜Eに関連)。Allen Brain Atlasからのインサイチューハイブリダイゼーション画像は、マウス脳におけるSTIM、TRPCおよびOraiチャネルの発現を示す。 異なるマウス脳領域におけるTRPCおよびOraiチャネルの遺伝子発現プロファイル(図1A〜Eに関連)。表示の各遺伝子転写物および脳領域についてのqRT-PCR結果を、三つ組測定の平均+SDで示す。 異なるマウス脳領域におけるTRPCおよびOraiチャネルの遺伝子発現プロファイル(図1A〜Eに関連)。表示の各遺伝子転写物および脳領域についてのqRT-PCR結果を、三つ組測定の平均+SDで示す。 異なるマウス脳領域におけるTRPCおよびOraiチャネルの遺伝子発現プロファイル(図1A〜Eに関連)。表示の各遺伝子転写物および脳領域についてのqRT-PCR結果を、三つ組測定の平均+SDで示す。 異なるマウス脳領域におけるTRPCおよびOraiチャネルの遺伝子発現プロファイル(図1A〜Eに関連)。表示の各遺伝子転写物および脳領域についてのqRT-PCR結果を、三つ組測定の平均+SDで示す。 TRPC6およびOrai2ノックダウン海馬ニューロンにおけるTRPC6、Orai2、PSD95、pCAMKIIおよびCAMKIIタンパク質レベルの定量(図2A〜Jに関連)。データの解析をQuantity Oneソフトウェアを用いて実施した。各バンドの平均濃度を同じ試料中のGAPDHシグナルに対して正規化し、平均した。n=3つの異なるバッチ培養物。 TRPC6およびOrai2ノックダウン海馬ニューロンにおけるTRPC6、Orai2、PSD95、pCAMKIIおよびCAMKIIタンパク質レベルの定量(図2A〜Jに関連)。データの解析をQuantity Oneソフトウェアを用いて実施した。各バンドの平均濃度を同じ試料中のGAPDHシグナルに対して正規化し、平均した。n=3つの異なるバッチ培養物。 TRPC6およびOrai2ノックダウン海馬ニューロン培養物における細胞体nSOC測定(図2A〜Jに関連)。対照レンチウイルスおよびTRPC6(siTR6)またはOrai2(O2)に対するsiRNAをコードするレンチウイルスに感染したWT海馬培養物についてのFura-2 Ca2+シグナル(F340/F380)の時間経過を示す。30分間のストア枯渇プロトコルの後、2mM Ca2+ aCSFを加え、細胞体におけるFura-2シグナルを記録した。 TRPC6およびOrai2ノックダウン海馬ニューロン培養物における細胞体nSOC測定(図2A〜Jに関連)。Lenti-siCon、Lenti-siT6、またはLenti-siO2ウイルスに感染したWT海馬ニューロンの細胞体における平均SOCピーク応答を、平均±SE(n≧59ニューロン)で示す。 NSN21778のインビトロ代謝安定性、インビボ血漿薬物動態、および体重に対する副作用(図7A〜Gに関連)。NSN21778の代謝安定性を、第I相(NADPH再生系)補助因子の存在下で、市販の肝S9画分とのインキュベーション後に、インビトロで評価した。化合物レベルをLC-MS/MSで定量した。加えて、市販のCD-1マウス血漿存在下でのNSN21778の安定性を測定した。 NSN21778のインビトロ代謝安定性、インビボ血漿薬物動態、および体重に対する副作用(図7A〜Gに関連)。NSN21778を雌CD-1マウスに10mg/kgでi.p.投与した。血漿および脳中のNSN21778のレベルをLC-MS/MSで評価した。 NSN21778のインビトロ代謝安定性、インビボ血漿薬物動態、および体重に対する副作用(図7A〜Gに関連)。対照溶液または10mg/kg NSN21778を10週間i.p.投与した後のWTGFP、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスの体重。データを平均±SE(n=5マウス)で表す。 NSN21778のインビトロ代謝安定性、インビボ血漿薬物動態、および体重に対する副作用(図7A〜Gに関連)。様々な処置での体重増加。
例示的態様の説明
本試験において、本発明者らは、スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルがTRPC6およびOrai2の複合体によって形成されることを示すために、候補アプローチを用いた。本発明者らはさらに、公知のTRPC6活性化剤ハイパーフォリン(Leuner et al., 2007)および新規のnSOC活性化剤NSN21778がスパインにおけるSTIM2-nSOC経路を活性化し、PS1KIマウス(Guo et al., 1999)およびAPPKIマウス(Saito et al. 2014)海馬ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの減少を救済し得ることを示した。さらに、本発明者らは、NSN21778がAPPKIマウスにおいて海馬の長期増強(LTP)の減弱を救済し、アミロイド負荷を低減し、かつ海馬の記憶欠損を救済することも示した。本発明者らは、樹状突起マッシュルーム型スパインにおけるSTIM2調節性TRPC6/Orai2 nSOCチャネル複合体は、加齢およびADにおける記憶喪失の処置のための新しい治療標的であり、NSN21778は脳の加齢およびADにおける治療的介入のための候補分子として可能性があると結論付けた。本開示のこれらのおよび他の局面を、以下により詳細に記載する。
I. アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、1907年にAlios Alzheimerによって、認知能力の急激な低下を示しかつ全般性認知症を有する患者のうちの1名を検査した後に初めて記載された、脳の変性障害である。これは高齢者における認知症の第一の原因である。AD患者は記憶喪失および知的機能に伴う増大する問題を有し、これらは正常な個人として機能することができない点まで進行する。知的技能を失うことにより、患者は人格の変化、社会的に不適切な行為、および統合失調症を示す。ADは、不可避の神経変性に対する有効な緩和処置または予防処置がないことを考えると、患者およびその家族の両方にとって甚大な被害をもたらす。
ADは、皮質、海馬、海馬台、海馬回、および扁桃体において直径最大200μmの老人斑を伴う。老人斑の主な成分の1つはアミロイドで、これはコンゴーレッドで染色される(Kelly et al., 1984)。コンゴーレッドで染色されたアミロイド斑は細胞外にあり、明視野ではピンクまたは赤さび色で、偏光中では複屈折を示す。斑はポリペプチド細線維からなり、しばしば血管の周りに存在して、脳内の様々なニューロンへの血液供給を低減させる。
遺伝的素因、感染因子、毒素、金属、および頭部外傷などの様々な因子すべてが、AD神経障害のメカニズムの可能性として示唆されている。入手可能な証拠は、ADの遺伝的素因には異なるタイプがあることを強く示している。まず、分子分析により、ADに罹患したある特定の家族でアミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子における変異の証拠が示されている(Goate et al., 1991;Murrell et al., 1991;Chartier-Harlin et al., 1991およびMullan et al., 1992)。早発性ADの優性型のさらなる遺伝子は、14番染色体および1番染色体上にある(Rogaev et al., 1995;Levy-Lahad et al., 1995およびSherrington et al., 1995)。ADに関連する別の遺伝子座は19番染色体上にあり、アポリポタンパク質Eの変種型をコードする(Corder, 1993)。
アミロイド斑はAD患者および40歳まで生存しているダウン症候群の個人に多量に存在する。ダウン症候群におけるAPPの過剰発現は、30歳を超えるダウン患者におけるAD発症の原因の可能性があると認識されている(Rumble et al., 1989およびMann et al., 1989)。斑は正常な老齢脳にも存在するが、数は少ない。これらの斑は主にアミロイドβペプチド(Aβ;時に文献中でβ-アミロイドペプチドまたはβペプチドとも呼ばれる)で構成され(Glenner and Wong, 1984)、これは脳血管アミロイド沈着物の主なタンパク質構成物でもある。アミロイドは、βシートに配列された線維状物質である。Aβは最大43アミノ酸を含む疎水性ペプチドである。
そのアミノ酸配列の決定はAPP cDNA(Kang et al., 1987;Goldgaber et al., 1987;Robakis et al., 1987およびTanzi et al., 1988)およびゲノムAPP DNA(Lemaire et al., 1989およびYoshikai et al., 1990)のクローニングにつながった。3つの最も豊富な型であるAPP695、APP751、およびAPP770を含む、APP cDNAのいくつかの型が特定されている。これらの型は単一の前駆体RNAから選択的スプライシングにより生じる。遺伝子は18のエクソンを有し、175kb超におよぶ(Yoshikai et al., 1990)。APPは細胞外ドメイン、膜貫通領域および細胞質ドメインを含む。Aβは疎水性膜貫通ドメインのすぐ外側の最大28アミノ酸およびこの膜貫通ドメインの最大15残基からなる。Aβは通常は脳ならびに心臓、腎臓および脾臓などの他の組織で見られる。しかし、Aβ沈着物は通常は脳でのみ大量に見られる。
Van Broeckhaven et al. (1990)は、APP遺伝子がオランダの二家族におけるアミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)に緊密に関連していることを示した。これは、2名のオランダ人患者のAPPコード領域における点変異の発見によって確認された(Levy et al., 1990)。この変異はAβの22番目(APP695の618番目、またはAPP770の693番目)のグルタミン酸をグルタミンに置換した。加えて、ある特定の家族は、全長タンパク質の717番目のアミノ酸置換をもたらす変異を通じて、遺伝的に、家族性アルツハイマー病(FAD)と呼ばれる状態のアルツハイマー病の素因を有する(Goate et al., 1991;Murrell et al., 1991およびChartier-Harlin et al., 1991)。これらの変異は家族内の疾患と同時分離し、晩発性ADを有する家族では見られない。717番目のアミノ酸におけるこの変異は、APPからのAβのAβ1-42型の産生を増加させる(Suzuki et al., 1994)。別の変異型は全長タンパク質の670および671番目のアミノ酸の変化を含む(Mullan et al., 1992)。670および671番目のアミノ酸に対するこの変異は、APPからの全Aβの産生を増加させる(Citron et al., 1992)。
APPはインビボで3つの部位で処理される。証拠は、βセクレターゼ部位での膜関連メタロプロテアーゼによる切断が生理的事象であることを示唆している。この部位はAPP中、細胞膜の内腔面から12残基離れたところに位置する。βセクレターゼ部位(細胞膜の内腔面から28残基)およびβセクレターゼ部位(膜貫通領域中)の切断は、40/42残基のβアミロイドペプチド(Aβ)を生じ、脳内のその産生および蓄積の増大はアルツハイマー病の病因の中心事象である(総説については、Selkoe, 1999を参照されたい)。プレセニリン1はヒト脳において見出された別の膜タンパク質であり、APP(βセクレターゼ部位)での加水分解を制御し、それ自体がその役割を担うプロテアーゼであると推論されている(Wolfe et al., 1999)。プレセニリン1は単鎖分子として発現され、その急速な分解を防止するには、プロテアーゼであるプレセニリナーゼによるその処理が必要である(Thinakaran et al., 1996およびPodlisny et al., 1997)。プレセニリナーゼのアイデンティティは不明である。βセクレターゼ部位のインビボでの処理は、Aβ産生における律速段階であると考えられ(Sinha & Lieberburg, 1999)、したがって強力な治療標的である。
アミロイド斑形成の低減において有効な阻害剤の設計は、APPを切断して42アミノ酸ペプチドである、AβのAβ1-42型を生成する際に重要な酵素の特定に依存する。いくつかの酵素が特定されているが、活性酵素を生成することはできていない。活性酵素なしでは、基質特異性を確認することも、サブサイト特異性を決定することも、動力学または重要な活性部位残基を決定することもできず、これらはすべて阻害剤の設計にとって必須である。
II. 定義
「a」または「an」なる単語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」なる用語と共に用いられる場合、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つよりも多く」の意味とも一致する。
本出願の全体を通して、「約」なる用語は、値が、その値をもとめるために用いている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
化学基の文脈において用いられる場合:「水素」は-Hを意味し;「ヒドロキシ」は-OHを意味し;「オキソ」は=Oを意味し;「カルボニル」は-C(=O)-を意味し;「カルボキシ」は-C(=O)OH(-COOHまたは-CO2Hとも書く)を意味し;「ハロ」は独立に-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;「アミノ」は-NH2を意味し;「ヒドロキシアミノ」は-NHOHを意味し;「ニトロ」は-NO2を意味し;イミノは=NHを意味し;「シアノ」は-CNを意味し;「イソシアネート」は-N=C=Oを意味し;「アジド」は-N3を意味し;一価の文脈において「ホスフェート」は-OP(O)(OH)2またはその脱プロトン型を意味し;二価の文脈において「ホスフェート」は-OP(O)(OH)O-またはその脱プロトン型を意味し;「メルカプト」は-SHを意味し;かつ「チオ」は=Sを意味し;「スルホニル」は-S(O)2-を意味し;「ヒドロキシスルホニル」は-SO2OHを意味し;「アミノスルホニル」は-SO2NH2を意味し;かつ「スルフィニル」は-S(O)-を意味する。
化学式の文脈において、記号「-」は一重結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、かつ「≡」は三重結合を意味する。記号
Figure 2018515507
は、存在する場合には、一重または二重のいずれかである、任意の結合を意味する。記号
Figure 2018515507
は、一重結合または二重結合を意味する。したがって、例えば、式
Figure 2018515507
には
Figure 2018515507
が含まれる。また、そのような環原子で複数の二重結合の一部を形成するものはないことが理解される。さらに、共有結合の記号「-」は、1つまたは2つの不斉原子を連結する場合、いかなる好ましい立体化学も示さない。代わりに、これはすべての立体異性体ならびにその混合物を対象とする。記号
Figure 2018515507
は、結合を横切って垂直に描かれる場合(例えば、メチルについて
Figure 2018515507
)、基の結合点を示す。結合点は、典型的には、結合点を明白に特定する際に、読み手を補助するために、大きい基についてはこの様式でのみ特定する。記号
Figure 2018515507
は、くさびの太い端に結合している基が「ページから外に出て」いる、一重結合を意味する。記号
Figure 2018515507
は、くさびの太い端に結合している基が「ページの中に入って」いる、一重結合を意味する。記号
Figure 2018515507
は、二重結合の周りの幾何学的配置が未定義(例えば、EまたはZのいずれか)である、一重結合を意味する。したがって、両方の選択肢、ならびにその組み合わせが意図される。本明細書において示す構造の原子における任意の未定義の原子価は、その原子に結合された水素原子を暗に表す。炭素原子上の太い点は、その炭素に連結された水素が紙の平面から外に向いていることを示す。
基「R」が、例えば、式:
Figure 2018515507
において環系の「浮遊基(floating group)」として示される場合、Rは、安定な構造が形成される限り、描写された、暗示された、または明確に定義された水素を含む、環原子のいずれかに連結された任意の水素原子に置き換わってもよい。基「R」が、例えば、式:
Figure 2018515507
のように縮合環系の「浮遊基」として示される場合、Rは、特に記載がないかぎり、縮合環のいずれかの環原子のいずれかに連結された任意の水素に置き換わってもよい。置き換え可能な水素には、安定な構造が形成される限り、描写された水素(例えば、上記の式で窒素に連結された水素)、暗示された水素(例えば、図示されていないが、存在が理解される、上記の式の水素)、明確に定義された水素、およびその存在が環原子のアイデンティティに依存する任意の水素(例えば、Xが-CH-に等しい場合、基Xに連結された水素)が含まれる。描写された例において、Rは縮合環系の5員環または6員環のいずれにあってもよい。上記の式において、括弧で囲まれた基「R」のすぐ後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。特に記載がないかぎり、この変数は、0、1、2、または3以上の任意の整数であり得、環または環系の置き換え可能な水素原子の最大数によってのみ限定される。
以下の基および化合物クラスについて、基中の炭素原子の数は以下のように示すとおりである:「Cn」は、基/クラス中の炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は、基/クラス中にありうる炭素原子の最大数(n)を定義し、最小数は問題の基にとって可能なかぎり小さく、例えば、基「アルケニル(C≦8)」またはクラス「アルケン(C≦8)」中の炭素原子の最小数は2であることが理解される。1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基を示す「アルコキシ(C≦10)」と比較されたい。同様に、0〜10個の炭素原子を有するホスフィン基を示す「ホスフィン(C≦10)」とも比較されたい。「Cn-n'」は、基中の炭素原子の最小(n)および最大数(n')の両方を定義する。したがって、「アルキル(C2-10)」は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を示す。典型的には、炭素数を示す数字は、それが修飾する基の後で、括弧内にあり、全体に下付き文字で書かれるが;数字は基の前であっても、または括弧なしで書かれてもよく、意味のいかなる変更も意味しない。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン(C5)」、および「オレフィンC5」なる用語はすべて同義語である。以下の任意の基または化合物クラスが「置換」なる用語と共に用いられる場合、水素原子に置き代わる化学基のいかなる炭素原子も、その基または化合物クラスに対する合計炭素原子の限度に計数されない。
「飽和」なる用語は、化合物または原子を修飾するために用いられる場合、化合物または原子が、以下に示す場合を除いて、炭素-炭素二重結合および炭素-炭素三重結合を有しないことを意味する。飽和基の置換型の場合、1つまたは複数の炭素酸素二重結合または炭素窒素二重結合は存在してもよい。さらに、そのような結合が存在する場合、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として起こりうる炭素-炭素二重結合を除外するものではない。「飽和」なる用語が物質の溶液を修飾するために用いられる場合、その溶液中にその物質がそれ以上溶解しえないことを意味する。
「脂肪族」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、そのように修飾された化合物/基は非環式または環式であるが、非芳香族の炭化水素化合物または基であることを示す。脂肪族化合物/基において、炭素原子は直鎖、分枝鎖、または非芳香環(脂環式)中で一緒に連結されうる。脂肪族化合物/基は、一重炭素-炭素結合によって連結された飽和(アルカン/アルキル)、あるいは1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合(アルケン/アルケニル)または1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合(アルキン/アルキニル)による不飽和でありうる。
「アルキル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖もしくは分枝鎖非環式構造を有し、炭素および水素以外の原子を有しない、一価飽和脂肪族基を意味する。基-CH3(Me)、-CH2CH3(Et)、-CH2CH2CH3(n-Prまたはプロピル)、-CH(CH3)2(i-Pr、iPrまたはイソプロピル)、-CH2CH2CH2CH3(n-Bu)、-CH(CH3)CH2CH3(sec-ブチル)、-CH2CH(CH3)2(イソブチル)、-C(CH3)3(tert-ブチル、t-ブチル、t-BuまたはtBu)、および-CH2C(CH3)3(neo-ペンチル)はアルキル基の非限定例である。「アルカンジイル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての1つまたは2つの飽和炭素原子、直鎖または分枝鎖非環式構造を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、二価飽和脂肪族基を意味する。基-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、および-CH2CH2CH2-はアルカンジイル基の非限定例である。「アルキリデン」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、RおよびR'が独立に水素またはアルキルである二価の基=CRR'を意味する。アルキリデン基の非限定例には:=CH2、=CH(CH2CH3)、および=C(CH3)2が含まれる。「アルカン」は、Rがこの用語が上で定義されるとおりのアルキルである、化合物H-Rを意味する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。以下の基は置換アルキル基の非限定例である:-CH2OH、-CH2Cl、-CF3、-CH2CN、-CH2C(O)OH、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)NH2、-CH2C(O)CH3、-CH2OCH3、-CH2OC(O)CH3、-CH2NH2、-CH2N(CH3)2、および-CH2CH2Cl。「ハロアルキル」なる用語は、置換アルキルの一部であり、炭素、水素およびハロゲン以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがハロ(すなわち、-F、-Cl、-Br、または-I)に限定されている。基-CH2Clは、ハロアルキルの非限定例である。「フルオロアルキル」なる用語は、置換アルキルの一部であり、炭素、水素およびフッ素以外の他の原子が存在しないように、水素原子の置き換えがフルオロに限定されている。基-CH2F、-CF3、および-CH2CF3はフルオロアルキル基の非限定例である。
「シクロアルキル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の非芳香環構造の一部を形成し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、一価飽和脂肪族基を意味する。非限定例には:-CH(CH2)2(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル(Cy)が含まれる。「シクロアルカンジイル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての2つの炭素原子を有し、炭素-炭素二重または三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、二価飽和脂肪族基を意味する。基
Figure 2018515507
は、シクロアルカンジイル基の非限定例である。「シクロアルカン」は、Rがこの用語が上で定義されるとおりのシクロアルキルである、化合物H-Rを意味する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。
「アルケニル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖もしくは分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、一価不飽和脂肪族基を意味する。非限定例には:-CH=CH2(ビニル)、-CH=CHCH3、-CH=CHCH2CH3、-CH2CH=CH2(アリル)、-CH2CH=CHCH3、および-CH=CHCH=CH2が含まれる。「アルケンジイル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての2つの炭素原子、直鎖または分枝鎖、直鎖または分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの非芳香族炭素-炭素二重結合を有し、炭素-炭素三重結合を有せず、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、二価不飽和脂肪族基を意味する。基-CH=CH-、-CH=C(CH3)CH2-、-CH=CHCH2-、および-CH2CH=CHCH2-はアルケンジイル基の非限定例である。アルケンジイル基は脂肪族であるが、両端で連結されると、この基は芳香族構造の一部を形成することから除外されない。「アルケン」または「オレフィン」なる用語は同義であり、Rがこの用語が上で定義されるとおりのアルケニルである、式H-Rを有する化合物を意味する。「末端アルケン」は、1つだけの炭素-炭素二重結合を有し、その結合は分子の一端でビニル基を形成する、アルケンをを意味する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。基-CH=CHF、-CH=CHClおよび-CH=CHBrは置換アルケニル基の非限定例である。
「アルキニル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての炭素原子、直鎖もしくは分枝鎖非環式構造、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し、かつ炭素および水素以外の原子を有しない、一価不飽和脂肪族基を意味する。本明細書において用いられるアルキニルなる用語は、1つまたは複数の非芳香族炭素-炭素二重結合の存在を除外しない。基-C≡CH、-C≡CCH3、および-CH2C≡CCH3はアルキニル基の非限定例である。「アルキン」は、Rがアルキニルである、化合物H-Rを意味する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。
「アリール」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香環構造の一部を形成し、環原子はすべて炭素であり、かつ基は炭素および水素だけからなる、一価不飽和芳香族基を意味する。複数の環が存在する場合、環は縮合であっても、非縮合でもよい。本明細書において用いられるこの用語は、第1の芳香環または存在する任意の追加の芳香環に連結された、1つまたは複数のアルキルまたはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。アリール基の非限定例には、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C6H4CH2CH3(エチルフェニル)、ナフチル、およびビフェニルから誘導される一価の基が含まれる。「アレンジイル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、結合点としての2つの芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香環構造の一部を形成し、環原子はすべて炭素であり、かつ一価の基は炭素および水素だけからなる、二価芳香族基を意味する。本明細書において用いられるこの用語は、第1の芳香環または存在する任意の追加の芳香環に連結された、1つまたは複数のアルキル、アリールまたはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。複数の環が存在する場合、環は縮合であっても、非縮合でもよい。非縮合環は下記の1つまたは複数を介して連結されてもよい:共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数の制限が許容する)。アレンジイル基の非限定例には:
Figure 2018515507
が含まれる。「アレン」は、Rがその用語が上で定義されるとおりのアリールである、化合物H-Rを意味する。ベンゼンおよびトルエンはアレンの非限定例である。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。
「アラルキル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、アルカンジイルおよびアリールなる用語がそれぞれ前述の定義に一致した様式で用いられる、一価の基-アルカンジイル-アリールを意味する。非限定例は:フェニルメチル(ベンジル、Bn)および2-フェニル-エチルである。アラルキルなる用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、アルカンジイルおよび/またはアリール基からの1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。置換アラルキルの非限定例は:(3-クロロフェニル)-メチル、および2-クロロ-2-フェニル-エタ-1-イルである。
「ヘテロアリール」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしで用いられる場合、結合点としての芳香族炭素原子または窒素原子を有し、該炭素原子または窒素原子は1つまたは複数の芳香環構造の一部を形成し、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつヘテロアリール基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄だけからなる、一価芳香族基を意味する。複数の環が存在する場合、環は縮合であっても、非縮合でもよい。本明細書において用いられるこの用語は、芳香環または芳香環系に結合された1つまたは複数のアルキル、アリール、および/またはアラルキル基(炭素数の制限が許容する)の存在を除外しない。ヘテロアリール基の非限定例には、フラニル、イミダゾリル、インドリル、インダゾリル(Im)、イソキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル(ピリジル)、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、およびトリアゾリルが含まれる。「N-ヘテロアリール」なる用語は、結合点としての窒素原子を有するヘテロアリール基を意味する。「ヘテロアレン」は、Rがヘテロアリールである、化合物H-Rを意味する。ピリジンおよびキノリンはヘテロアレンの非限定例である。これらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。
「アシル」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがそれらの用語が上で定義されるとおりの水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールである、基-C(O)Rを意味する。基-CHO、-C(O)CH3(アセチル、Ac)、-C(O)CH2CH3、-C(O)CH2CH2CH3、-C(O)CH(CH3)2、-C(O)CH(CH2)2、-C(O)C6H5、-C(O)C6H4CH3、-C(O)CH2C6H5、-C(O)(イミダゾリル)はアシル基の非限定例である。「チオアシル」は、基-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子で置き換えられていること以外は、同様の様式で定義され、-C(S)Rである。「アルデヒド」なる用語は、水素原子の少なくとも1つが-CHO基で置き換えられている、上で定義されるアルカンに対応する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、1つまたは複数の水素原子(カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素原子に直接連結された水素原子があれば、それを含む)は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。基-C(O)CH2CF3、-CO2H(カルボキシル)、-CO2CH3(メチルカルボキシル)、-CO2CH2CH3、-C(O)NH2(カルバモイル)、および-CON(CH3)2は置換アシル基の非限定例である。
「アルキルアミノ」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしで用いられる場合、Rがその用語が上で定義されるとおりのアルキルである、基-NHRを意味する。非限定例には:-NHCH3および-NHCH2CH3が含まれる。「ジアルキルアミノ」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしで用いられる場合、RおよびR'が同じもしくは異なるアルキル基でありうるか、またはRおよびR'が一緒になってアルカンジイルでありうる、基-NRR'を意味する。ジアルキルアミノ基の非限定例には:-N(CH3)2および-N(CH3)(CH2CH3)が含まれる。「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、「アルコキシアミノ」、および「アルキルスルホニルアミノ」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、およびアルキルスルホニルである、-NHRと定義される基を意味する。アリールアミノ基の非限定例は-NHC6H5である。「アミド」(アシルアミノ)なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがその用語が上で定義されるとおりのアシルである、基-NHRを意味する。アミド基の非限定例は-NHC(O)CH3である。「アルキルイミノ」なる用語は、「置換」なる修飾語句なしに用いられる場合、Rがその用語が上で定義されるとおりのアルキルである、二価の基=NRを意味する。任意のこれらの用語が「置換」なる修飾語句と共に用いられる場合、炭素原子に連結された1つまたは複数の水素原子は独立に-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-C(O)N(CH3)2、-OC(O)CH3、-NHC(O)CH3、-S(O)2OH、または-S(O)2NH2で置き換えられている。基-NHC(O)OCH3および-NHC(O)NHCH3は置換アミド基の非限定例である。
「含む(comprise)」、「有する(have)」および「含む(include)」なる用語は、制限のない連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」および「含む(including)」などの、これらの動詞の1つまたは複数の任意の形式または時制も制限がない。例えば、1つまたは複数の段階を「含む(comprises)」、「有する」または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つまたは複数の段階だけを有することに限定されることはなく、同様に他の列挙していない段階も対象とする。
本明細書および/または特許請求の範囲において用いられる「有効な」なる用語は、所望の、予想される、または所期の結果を達成するのに十分であることを意味する。「有効量」、「治療的有効量」または「薬学的有効量」は、患者または対象を化合物で処置する文脈において用いられる場合、疾患を処置するために対象または患者に投与したときに、疾患に対するそのような処置を行うのに十分な化合物の量を意味する。
「水和物」なる用語は、化合物に対する修飾語句として用いられる場合、化合物が、化合物の固体形態などの、各化合物分子に結合した、1つ未満(例えば、半水和物)、1つ(例えば、1水和物)、または複数(例えば、2水和物)の水分子を有することを意味する。
本明細書において用いられる「IC50」なる用語は、得られる最大の反応の50%である阻害用量を意味する。この定量的尺度は、所与の生物学的、生化学的または化学的工程(または工程の構成要素、すなわち、酵素、細胞、細胞受容体または微生物)を半分だけ阻害するために、どのくらいの量の特定の薬物または他の物質(阻害剤)が必要かを示す。
第一の化合物の「異性体」は、各分子が第一の化合物と同じ構成原子を含むが、それらの原子の三次元の配置が異なる、別の化合物である。
本明細書において用いられる「患者」または「対象」なる用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種などの、生きている哺乳生物を意味する。一定の態様において、患者または対象は霊長類である。ヒト対象の非限定例は、成人、少年、乳児および胎児である。
本明細書において一般に用いられる「薬学的に許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に相応の、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織、器官、および/または体液と接触して用いるのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を意味する。
「薬学的に許容される塩」は、上で定義されるとおり、薬学的に許容され、かつ所望の薬理活性を有する、本開示の化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と;または1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル-置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、tert-ブチル酢酸、トリメチル酢酸などの有機酸と形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応可能な場合に形成されうる、塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。本開示の任意の塩の一部を形成している特定のアニオンまたはカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、重要ではないことが理解されるべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製法および使用法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に提示されている。
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」なる用語は、化学物質を担持または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物または媒体を意味する。
「予防」または「予防すること」には:(1)疾患のリスクが高いおよび/もしくは疾患の素因を有しうるが、疾患の任意のもしくはすべての病態もしくは総体症状をまだ経験もしくは提示していない、対象もしくは患者における、疾患の発症を阻害すること、ならびに/または(2)疾患のリスクが高いおよび/もしくは疾患の素因を有しうるが、疾患の任意のもしくはすべての病態もしくは総体症状をまだ経験もしくは提示していない、対象もしくは患者における、疾患の病態もしくは総体症状の発症を遅延させることが含まれる。
「プロドラッグ」は、インビボで本開示の阻害剤へと代謝的に変換可能な化合物を意味する。プロドラッグ自体も所与の標的タンパク質に関して活性を有しても、有しなくてもよい。例えば、ヒドロキシ基を含む化合物を、インビボでヒドロキシ化合物へと加水分解によって変換されるエステルとして投与してもよい。インビボでヒドロキシ化合物へと変換されうる適切なエステルには、酢酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、リン酸エステル、酒石酸エステル、マロン酸エステル、シュウ酸エステル、サリチル酸エステル、プロピオン酸エステル、コハク酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、メチレン-ビス-β-ヒドロキシナフトエ酸エステル、ゲンチジン酸エステル、イセチオン酸エステル、ジ-p-トルオイル酒石酸エステル、メタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、シクロヘキシルスルファミン酸エステル、キナ酸エステル、アミノ酸のエステルなどが含まれる。同様に、アミン基を含む化合物を、インビボでアミン化合物へと加水分解によって変換されるアミドとして投与してもよい。
「立体異性体」または「光学異性体」は、同じ原子が同じ他の原子に結合しているが、それらの原子の三次元の配置が異なる、所与の化合物の異性体である。「鏡像異性体」は、左右の手のような、互いに鏡像である、所与の化合物の立体異性体である。「ジアステレオマー」は、鏡像異性体ではない、所与の化合物の立体異性体である。キラル分子は、立体中心またはステレオジェン中心とも呼ぶキラル中心を含み、これは任意の2つの基の交換が立体異性体につながるような基を有する分子における任意の点であるが、必ずしも原子ではない。有機化合物において、キラル中心は典型的には炭素、リンまたは硫黄原子であるが、有機および無機化合物において他の原子が立体中心であることも可能である。分子は複数の立体中心を有して、多くの立体異性体を生じることもできる。その立体異性が四面体ステレオジェン中心(例えば、四面体炭素)による化合物において、仮説上可能な立体異性体の総数は2nを越えず、ここでnは四面体立体中心の数である。対称性を有する分子は多くの場合、可能な最大数よりも少ない立体異性体を有する。鏡像異性体の50:50混合物はラセミ混合物と呼ぶ。または、鏡像異性体の混合物は、1つの鏡像異性体が50%よりも多い量で存在するように、鏡像異性的に濃縮されうる。典型的には、鏡像異性体および/またはジアステレオマーは、当技術分野において公知の技術を用いて分割または分離することができる。立体化学が定義されていないキラリティーの任意の立体中心または軸について、キラリティーのその立体中心または軸はそのR型、S型、またはラセミおよび非ラセミ混合物を含むRおよびS型の混合物として存在しうることが企図される。本明細書において用いられる「実質的に他の立体異性体を含まない」なる語句は、組成物が≦15%、より好ましくは≦10%、さらにより好ましくは≦5%、または最も好ましくは≦1%の別の立体異性体を含むことを意味する。
「処置」または「処置すること」には、(1)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を阻害する(例えば、病態および/または総体症状のさらなる発生を停止する)こと、(2)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を改善する(例えば、病態および/または総体症状を反転する)こと、および/または(3)疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患の任意の測定可能な低減を行うことが含まれる。
前述の定義は、参照により本明細書に組み入れられる任意の参照文献における任意の相反する定義に取って代わる。しかし、一定の用語が定義されているという事実は、定義されていない任意の用語が明確ではないことを示すと考えられるべきではない。むしろ、用いられるすべての用語は、当業者であれば本開示の範囲を理解し、本開示を実施しうるような用語で本開示を記載すると考えられる。
本開示により提供する化合物を、例えば、前記発明の概要の項および添付の特許請求の範囲に示す。それらは実施例の項に概要を示す方法を用いて作製してもよい。これらの方法は、当業者によって適用される有機化学の原理および技術を用いて、さらに改変および最適化することができる。そのような原理および技術は、例えば、March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (2007)に教示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
本発明の化合物は、1つまたは複数の非対称に置換された炭素または窒素原子を含んでもよく、光学活性体またはラセミ体で単離してもよい。したがって、具体的な立体化学または異性体が具体的に示されないかぎり、化学式のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体、エピマー体、およびすべての幾何異性体が意図される。化合物は、ラセミ体およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして出現してもよい。いくつかの態様において、単一のジアステレオマーを得る。本発明の化合物のキラル中心はSまたはR立体配置を有することができる。
本発明の化合物を表すために用いる化学式は、典型的には、おそらくはいくつかの異なる互変異性体の1つを示すにすぎない。例えば、多くの型のケトン基は対応するエノール基と平衡で存在することが知られている。同様に、多くの型のイミン基はエナミン基と平衡で存在する。所与の化合物についてどの互変異性体を示すかにかかわらず、またどの互変異性体が最も多いかにかかわらず、所与の化学式のすべての互変異性体が意図される。
本発明の化合物は、本明細書に記載の適応症において用いるため、またはそれ以外に用いるためであるかどうかにかかわらず、先行技術において公知の化合物よりも、有効であり、毒性が低く、作用時間が長く、強力であり、副作用が少なく、容易に吸収され、かつ/もしくは良好な薬物動力学的特性(例えば、高い経口バイオアベイラビリティおよび/または低いクリアランス)を有し、かつ/または他の有用な薬理学的、物理的、もしくは化学的特性を有するという利点を有してもよい。
加えて、本発明の化合物を構成している原子は、そのような原子のすべての同位体を含むことが意図される。本明細書において用いられる同位体には、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子が含まれる。一般例としてであるが、限定ではなく、水素の同位体にはトリチウムおよび重水素が含まれ、炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれる。
本発明の化合物は、プロドラッグ型で存在してもよい。プロドラッグは薬剤の多くの望ましい品質(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、製造など)を増強することが公知であるため、本発明のいくつかの方法において用いる化合物は、望まれる場合には、プロドラッグ型で送達してもよい。したがって、本発明は、本発明の化合物のプロドラッグならびにプロドラッグを送達する方法を企図する。本発明において用いる化合物のプロドラッグは、化合物に存在する官能基を、修飾が日常的操作またはインビボのいずれかで切断されて親化合物となるようなやり方で修飾することにより、調製してもよい。したがって、プロドラッグには、例えば、ヒドロキシ、アミノ、またはカルボキシ基が任意の基に結合され、これは、プロドラッグが対象に投与されると開裂して、それぞれヒドロキシ、アミノ、またはカルボン酸を生成する、本明細書に記載の化合物が含まれる。
本明細書において提供する化合物の任意の塩型の一部を形成する特定のアニオンまたはカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容されるかぎり、重要ではないことが理解されるべきである。薬学的に許容される塩のさらなる例ならびにそれらの調製法および使用法は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (2002)に示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
多くの有機化合物は、それらの反応溶媒またはそれらが沈澱もしくは結晶化する溶媒と複合体を形成しうることが理解されるであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として公知である。溶媒が水の場合、複合体は「水和物」として公知である。多くの有機化合物は、結晶および非晶形を含む、複数の固体形態で存在し得ることも理解されるであろう。その任意の溶媒和物を含む、本明細書において提供する化合物のすべての固体形態は、本発明の範囲内である。
III. 神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路
A. SOCE経路
ストア作動性Ca2+流入(SOCE)または容量性Ca2+流入の存在は、最初、アゴニストにより生成されるCa2+シグナルによってではなく、細胞内プールのCa2+含有量によって調節されるCa2+流入のメカニズムとして提唱された。Ca2+ストアを再充填して、細胞をその後の刺激のために準備させる際のSOCEの関与に加えて、SOCEはエキソサイトーシス、血小板機能、筋収縮、アデニリルシクラーゼ活性化、5-リポキシゲナーゼ活性化、内皮透過性、遺伝子転写ならびに排卵および妊性などの、いくつかの細胞機能のために重要であると報告されている。
ラット皮質星状細胞において、SOCEは代謝型グルタミン酸受容体の刺激により誘導される細胞内Ca2+振動を維持する。[Ca2+]cにおける反復振動は、生理的プロセスとして認識され、様々な細胞機能を調節する、Ca2+の時空間パターンである。Ca2+振動におけるSOCEの役割はラット肝細胞で観察され、ジフェニルホウ酸2-アミノエチル(2-APB)、Gd3+またはSK&F 96365で処理することにより、バソプレシンおよびアドレナリン誘導性Ca2+振動が阻害された。高濃度のGd3+は、Ca2+振動の出現を可能にする状態の、Ca2+流入および排出を妨げる。Ca2+振動を開始および再生するメカニズムは細胞内媒質に固有であるため、SOCEはCa2+振動を持続させるが、Ca2+振動に必須ではない。
SOCEは、ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞および副腎クロム親和性細胞を含む、異なる細胞型におけるエキソサイトーシスのために重要であることも明らかにされている。SOCEは、血小板機能のために重要であることも示唆されており、また、タプシガルジン(TG)などの筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ阻害剤の使用に基づき、SOCEは筋収縮に関与することが明らかにされているが、TGはCa2+依存性Cl-チャネルの開口を誘導して、電位活性化型Ca2+チャネルの脱分極およびその後のゲーティングを引き起こすと考えられるため、これはSOCEについての明白な証拠を提供するものではない。
SOCEは、ある種の酵素の活性化にも必要である。ストア作動性Ca2+チャネルを通じてのCa2+流入は、C6-2B神経膠腫細胞におけるI型アデニリルシクラーゼまたはRBL-1細胞における5-リポキシゲナーゼなどの、酵素の活性を変えることができる。加えて、ストア作動性チャネルを通じてのCa2+流入は、内皮細胞透過性を調節する。SOCEは、遺伝子転写調節を含む、いくつかの長期応答のためにも重要である。SOCEの生理的重要性は、Tリンパ球におけるSOCEの減少に関連する重症複合免疫不全症(SCID)、または不完全な肥満細胞の脱顆粒およびサイトカイン分泌を含む、このメカニズムの不良または機能不全に起因するある一定の病理の特定によっても支持される。
神経膠細胞は恒常性神経系細胞である。一般に、これらは電気的に非興奮性で、それらの活性化は膠細胞の「Ca2+興奮性」を規定する、複雑な細胞内Ca2+シグナルの生成に関連する。哺乳動物の膠細胞において、この興奮性のためのCa2+の主な供給源は小胞体(ER)の内腔であり、これは最終的に細胞外の空間から(再)充填される。これは、ERを原形質膜Ca2+流入と関連付ける特定のシグナル伝達系によって支持される、ストア作動性Ca2+流入(SOCE)を介して起こる。ここで、SOCEの活性化のためにERのCa2+ストアの内容物排出が必要かつ十分で、SOCEを介してのCa2+流入なしではERストアは再充填できない。SOCEの基礎となる分子機構は比較的複雑で、原形質膜チャネル、間質相互作用分子などのER Ca2+センサー、およびおそらくはER Ca2+ポンプ(SERCA型のもの)を含む。
SOCEを媒介する少なくとも2組の原形質膜チャネル、すなわちCa2+放出活性化チャネルOrai、および一過性受容器電位(TRP)チャネルがある。神経膠SOCEの分子アイデンティティはまだ明白に特定されていない。しかし、Oraiは小膠細胞において主に発現されるようであるが、星状細胞および乏突起膠細胞はSOCEを生成するためにTRPチャネルにより多く依存している。生理的条件では、SOCE経路は、膠細胞における代謝型受容体の刺激後に観察されるCa2+シグナルの持続相のために役立つ。これらのチャネルのうちの2つ、TRPC6およびOrai2を以下に論じる。
B. TRPC6
TRPC6としても公知の、一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー6(transient receptor potential cation channel, subfamily C, member 6)は、同じ名前のタンパク質をコードするヒト遺伝子である。TRPC6は一過性受容器電位イオンチャネルである。これはうつおよび不安(下記参照)、ならびに巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と関連付けられている。
セントジョーンズワートとしても公知の、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)の抗うつおよび抗不安の有益性を担う主な活性構成成分の2つは、ハイパーフォリンおよびアドハイパーフォリンである。これらの化合物は、セロトニン、ノルエピネフリンおよびエピネフリン、ドーパミン、γ-アミノ酪酸、ならびにグルタミン酸の再取り込み阻害剤であり、TRPC6に結合し、これを活性化することによりこれらの効果を発揮する。TRPC6の活性化はCa2+およびNa+の細胞中への流入を誘導し、これは再取り込みの阻害をもたらす。TRPC6はいくつかの試験でSOCに結びつけられているが、このチャネルは主に受容体作動性チャネル(ROC)であると考えられ、これはジアシルグリセロール(DAG)によって直接活性化されうる(Estacion et al. 2004)。
TRPC6はFYN、TRPC2およびTRPC3と相互作用することが明らかにされている。アクセッション番号はNM_004621(mRNA)およびNP_004612(タンパク質)である。
C. Orai2
Oria2は、ヒトにおいてORAI2遺伝子によってコードされるタンパク質である。Oraiタンパク質である、Orai1、Orai2およびOrai3は、チャネルのポアを形成するSTIM結合相手である。Oraiタンパク質は細胞膜に均一に分布し、静止状態では二量体として存在する。STIM活性化はOraiタンパク質の四量体化と、続くSTIM-Orai共局在を誘導し、これは活性なストア作動性カルシウムチャネルを形成する。Orai2はCa2+放出活性化Ca2+様チャネル(CRAC様チャネル)サブユニットの一部として機能し、これはCa2+流入、およびCa2+センサー、STIM1との相乗作用によるCa2+選択的流の増大を媒介する。
Orai2はCOPS6、GDF9、MED31、SETDB1およびUNC119と相互作用する。アクセッション番号はNM_001126340(mRNA)およびNP_001119812(タンパク質)である。
IV. アルツハイマー病の処置
A. 製剤化および投与経路
本開示に従い、アルツハイマー病の患者を本明細書に記載の化合物で処置する。対象への投与に適した形態の薬学的組成物を調製することが必要であろう。組成物は一般には発熱性物質、ならびにヒトまたは動物に対して有害であり得る他の不純物を本質的に含まずに調製する。一般には、安定細胞を患者に導入するのに適したものにするために、適切な塩および緩衝液を用いることが望まれるであろう。本開示の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒質中に分散され、好ましくはカプセル化された、安定細胞の有効量を含む。
「薬学的または薬理学的に許容される」なる語句は、動物またはヒトに投与したときに、有害反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を生じない組成物を意味する。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」には、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などが含まれる。本明細書において用いられるこの用語は、生体適合性植え込み式装置およびカプセル化細胞集団を含むことが特に意図される。薬学的活性物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は当技術分野において周知である。任意の通常の媒質または作用物質が本開示の組成物と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。補助的活性成分も組成物に組み込みことができる。
通常の保存および使用の条件下で、細胞調製物は微生物の成長を防止するための保存剤をさらに含んでもよい。静脈内媒体には流動性の栄養補充物が含まれる。保存剤には抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスが含まれる。薬剤中の様々な構成要素のpHおよび正確な濃度を、周知のパラメーターに従って調節する。
組成物は、経口で、もしくは静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、筋肉内、皮下を含む注射により、または他の方法により、あるいは当業者には公知の前記の任意の組み合わせにより、有利に投与する。
当業者には理解されるであろうとおり、「治療的有効量」は、開示するおよび特許請求する方法に従って対象に提供するとき、以下の生物活性の1つをもたらすような量を意味する:アルツハイマー病と診断されたかまたはアルツハイマー病を有する対象における、記憶、認知もしくは学習の改善、症状もしくは病態生理の進行の遅延、生活の質の改善、または寿命の延長を含む、アルツハイマー病の任意の局面または症状の処置。
当技術分野において理解されるとおり、そのような治療的有効量は、患者の年齢および体重、患者の身体状態、処置する状態、ならびに他の因子を含む、多くの因子により変動する。開示する化合物の有効量は、投与する特定の組み合わせによっても変動する。しかし、典型的用量は、1日あたり約1μg、5μg、10μg、50μgから100μgの下限から、約100μg、500μg、1mg、5mg、10mg、50mgまたは100mgの上限までの薬学的化合物を含んでもよい。同様に企図されるのは、用量あたり0.1μg〜1mgの化合物などの他の用量範囲である。1日あたりの用量を、24時間の間または24時間の任意の部分で持続的に提供する、別個の単位用量で送達してもよい。1日あたりの投与の回数は、1日あたり1〜約4であってもよいが、それ以上でもよい。持続送達は持続注入の形態であり得る。「QID」、「TID」、「BID」および「QD」なる用語は、それぞれ1日に4、3、2および1回の投与を意味する。例示的用量および注入速度には、別個の用量あたり0.005nmol/kg〜約20nmol/kgまたは持続注入における約0.01pmol/kg/分〜約10pmol/kg/分が含まれる。これらの用量および注入液は静脈内投与(i.v.)または皮下投与(s.c.)により送達することができる。i.v.で投与する薬学的組成物の例示的な合計用量/送達は、1日あたり約2μg〜約8mgであり得るが、s.c.で投与する薬学的組成物の合計用量/送達は1日あたり約6μg〜約6mgであり得る。
開示する化合物は、例えば、約0.01mg/kg〜約100mg/kg;約0.01mg/kg〜約80mg/kg;約0.01mg/kg〜約70mg/kg;約0.01mg/kg〜約60mg/kg;約0.01mg/kg〜約50mg/kg;約0.01mg/kg〜約40mg/kg;約0.01mg/kg〜約30mg/kg;約0.01mg/kg〜約25mg/kg;約0.01mg/kg〜約20mg/kg;約0.01mg/kg〜約15mg/kg;約0.01mg/kg〜約10mg/kg;約0.01mg/kg〜約5mg/kg;約0.01mg/kg〜約3mg/kg;約0.01mg/kg〜約1mg/kg;約0.01mg/kg〜約0.3mg/kg 約100mg/kg〜約90mg/kg;約100mg/kg〜約80mg/kg;約100mg/kg〜約70mg/kg;約100mg/kg〜約60mg/kg;約100mg/kg〜約50mg/kg;約100mg/kg〜約40mg/kg;約85mg/kg〜約10mg/kg;約75mg/kg〜約20mg/kg;約65mg/kg〜約30mg/kg;約55mg/kg〜約35mg/kg;または約55mg/kg〜約45mg/kgの、例えば1日用量で、投与してもよい。投与は1回用量または分割用量の注射によるものであってもよい。
「単位用量」なる用語は、対象において用いるのに適した物理的に別個の単位であって、各単位はその投与、すなわち、適切な経路および処置法に関連して所望の反応を生じるように計算した、組成物の所定の量を含むことを意味する。処置の数および単位用量の両方に従って、投与する量は、処置する対象、対象の状態、および所望の保護に依存する。治療組成物の正確な量は、医師の判断にも依存し、各個人に固有である。
B. 併用療法
もう1つの態様において、本開示の阻害剤を、いずれかの治療効果を改善または増強するために、他の作用物質との組み合わせで用いてもよい。この方法は両方の作用物質を患者に、単一の組成物として、もしくは両方の作用物質を含む薬理学的製剤として同時に投与すること、または一方の組成物は本開示の阻害剤を含み、他方は第二の作用物質を含む、2つの異なる組成物もしくは製剤を投与することを含んでもよい。
本開示の治療は、数分から数週間の範囲の間隔で、第二の作用物質による処置の前であっても、または後であってもよい。他の作用物質および本開示の阻害剤を別々に投与する態様において、作用物質および本発明の阻害剤がいっそう有利に併用効果を発揮することができるように、各送達時の間であまり時間が経過しないことが好ましいであろう。そのような場合、両方のモダリティを互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に投与し得ることが企図される。しかし、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過するいくつかの場合において、処置の期間をかなり延長することが望ましいこともある。他の態様において、対象が寛容化されないように、組成物を交互にすることが望ましいこともある。
様々なさらなる組み合わせを用いてもよく、ここで本開示の化合物/アゴニストは「A」であり、第二の作用物質は「B」である:
Figure 2018515507
。処置周期を必要に応じて繰り返すことが予期される。
ADの処置のための様々な薬物が現在利用可能であり、ならびに試験中および規制上の検討中である。薬物は一般に、コリンエステラーゼ阻害剤、ムスカリンアゴニスト、抗酸化剤または抗炎症剤の広い範疇に入る。ガランタミン(レミニール)、タクリン(コグネックス)、セレギリン、フィゾスチグミン、レビスチグミン(revistigmin)、ドネペジル、(アリセプト)、リバスチグミン(イクセロン)、メトリホナート、ミラメリン、キサノメリン、サエルゾール(saeluzole)、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、ENA-713、メムリック、クエチアピン、ニューレストロールおよびニューロミダールは、ADの治療剤として提唱される薬物のほんの一部である。
V. 実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい態様を示すために含まれる。当業者であれば、以下の実施例において開示する技術は、本開示の実施において良好に機能するように本発明者らが見出した技術であり、したがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えうることを理解すべきである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示する特定の態様において多くの変更を行いうることを理解すべきであり、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得るべきである。
実施例1−材料と方法
化学物質。NSN21778(N-{4-[2-(6-アミノ-キナゾリン-4-イルアミノ)-エチル]-フェニル}-アセトアミド)はNanosyn Inc.(Santa Clara、CA)が合成し、精製した。
動物。PS1-M146Vノックインマウス(PS1KI)[Guo, 1999 #3782]はHui Zheng(Baylor University)から御供与いただいた。APPNL-Fノックインマウス(APPKI)はTakaomi Saido(Riken、Japan)[Saito, 2014 #6473]から御供与いただいた。同じ系統のWTマウス(C57BL/6)を対照実験で用いた。PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスはPS1KIまたはAPPKIマウスをM系統GFPマウス(C57BL/6系統)[Feng, 2000 #6019]と交配させることにより作製した。すべてのマウスコロニーを樹立し、UT Southwestern Medical Centerバリア施設で12時間の明暗周期のビバリウム内(ケージ毎に4匹)に収容した。マウスに関わるすべての手順は、National Institutes of Health Guidelines for the Care and Use of Experimental Animalsに従い、Institutional Animal Care and Use Committee of the University of Texas Southwestern Medical Center at Dallasによって承認された。
初代海馬神経培養物における樹状突起スパイン分析。PS1KI、APPKIおよびWTマウスの海馬培養物を、生後0〜1日の仔から樹立し、本発明者らが以前に記載したとおりに培養下で維持した[Zhang, 2010 #5733]。シナプスの形態の評価のために、海馬培養物にDIV7でTD-Tomatoプラスミドをリン酸カルシウム法を用いて形質移入し、DIV15〜16で固定した(PBS中4%ホルムアルデヒド、4%スクロース、pH7.4)。光学的断面のZスタックを共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Axiovert 100M with LSM510)により100×対物レンズを用いて取得した。遺伝子型ごとに3つの培養バッチからの18〜20個の培養ニューロンを定量分析のために用いた。樹状突起スパインの定量分析を、NeuronStudioソフトウェアパッケージを用いて実施した[Rodriguez,2008 #6276]。培養下のニューロンスパインの形状を分類するために、本発明者らは発表された方法からのアルゴリズムを採用した[Rodriguez, 2008 #6276]。スパインの形状の分類において、本発明者らは、以下のカットオフ値を用いた:細いスパインのアスペクト比(AR_thin(crit))=2.5、頭部対頚部の比(HNR(crit))=1.4、および頭部直径(HD(crit))=0.5μm。これらの値を[Rodriguez, 2008 #6276]の記載のとおりに規定し、正確に計算した。
GCamp5.3 Ca2+イメージング実験。GCamp5.3イメージング実験を、本発明者らが以前に報告したとおりに実施した[Sun, 2014 #6478]。簡単に言うと、培養した海馬ニューロンにDIV7でGCamp5.3発現プラスミドをリン酸カルシウム形質移入法を用いて形質移入した。GCamp5.3蛍光画像を、60×レンズ、Cascade 650デジタルカメラ(Roper Scientific)およびPrior Lumen 200照明器を備えたOlympus IX70倒立落射蛍光顕微鏡を用いて収集した。実験はMetaFluor画像獲得ソフトウェアパッケージ(Universal Imaging)により制御した。シナプスnSOCを測定するために、ニューロンを人工CSF(aCSF)から0.4mM EGTAおよび1μM TG(タプシガルジン)を含む無カルシウム培地に30分間移し、基本で30秒間記録した後、無カルシウムaCSF中100μM DHPGを加え、50秒後にCa2+チャンネル阻害剤カクテル(1μM TTX、50μM AP5、10μM CNQXおよび50μMニフェジピン)を加えたaCSFに戻した。データの解析をNIH Image Jソフトウェアを用いて実施した。画像解析に用いた関心領域(ROI)は、スパインに対応するように選択した。すべてのCa2+イメージング実験は室温で行った。
海馬切片フィールド記録。海馬切片フィールド記録を、最近記載されたとおりに実施した[Zhang, 2015 #6714]。簡単に言うと、海馬切片(400μm)をいずれかの性別の月齢6ヶ月の動物から調製した。マウスを麻酔し、解剖緩衝液で経心的に灌流した後、断頭した。脳を摘出し、切開し、2.6mM KCl、1.25mM NaH2PO4、26mM NaHCO3、0.5mM CaCl2、5mM MgCl2、212mMスクロース、および10mMデキストロースを含む氷冷解剖緩衝液中、ビブラトーム(Leica VT 1000S)を用いてスライスした。CA3を切断して、てんかん誘発性活動を回避した。切片を、124mM NaCl、5mM KCl、1.25mM NaH2PO4、26mM NaHCO3、2mM CaCl2、1mM MgCl2、および10mMデキストロースを含むACSFを満たしたレザバーチャンバーに移した。切片を30℃で2〜5時間回復させた。ACSFおよび解剖緩衝液を95%O2-5%CO2で平衡化した。記録のために、切片を30℃で維持した液中記録チャンバーに移し、2〜3ml/分の速度でACSFにより持続灌流した。ACSFを満たし、領域CA1の放線状層に設置した、細胞外記録電極(1MΩ)を用いてフィールド電位(FP)を記録した。FPを、同心双極タングステン刺激電極(FHC、Bowdoinham、ME)でのシェファー側枝/交連求心性神経の単相刺激(長さ100μs)により誘起した。安定なベースライン応答を30秒ごとに最大応答の50%を生じる刺激強度(15〜30μA)を用いて収集した。FPの最初のスロープを用いて、シナプス応答の安定性を測定し、LTPの大きさを定量した。LTPを、1秒間の周波数100Hzの刺激を、それぞれ20秒間隔で2回行うことにより誘導した。14812処置の実験については、海馬切片を、ACSF中での記録開始の前に、300nMの14812で2〜3時間プレインキュベートした。
海馬切片における樹状突起スパイン分析。海馬切片におけるスパインの形状を分析するために、本発明者らはWTGFP、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスを用いた。海馬切片を前述のとおりに調製し、切片を30℃で1時間回復させ、半分の切片を300nMの14812により30℃で3.5時間処理し、他の半分の切片は対照としてACSF中に放置し、切片をPBS中、4%ホルムアルデヒド、0.125%グルタルアルデヒドで固定した。GFP画像を、40×レンズおよび5×ズームによる二光子画像法(Zeiss LSM780)で獲得した。Z間隔は0.5μmであった。海馬CA1錐体ニューロンの二次尖端樹状突起を、画像取得のために選択した。マウス5匹からの約25個のニューロンを各遺伝子型について分析した。切片におけるニューロンスパインの形状を分類するために、本発明者らはここでも、NeuronStudioソフトウェアパッケージおよび[Rodriguez, 2008 #6276]からのアルゴリズムを、以下のカットオフ値と共に用いた:AR_thin(crit)=2.5、HNR(crit)=1.4、HD(crit)=0.5μm。
NSN21778インビボ試験。マッシュルーム型スパイン救済および行動試験のために、各群5匹の雌マウス(WTGFP、PS1KIGFPおよびAPPKIGFP)に、月齢4ヶ月で開始して、10mg/kgのNSN21778を3回/週でi.p.注射した。対照群のマウスには同じ溶媒溶液を注射した。6週間後、注射ルーチンを2回/週に変更した。9週間後、マウスを恐怖条件づけ実験で試験した。10週間後、すべてのマウスをインビボスパイン分析のために屠殺した。アミロイド斑試験のために、APPKIマウスに、月齢11ヶ月で開始して、10mg/kgのNSN21778を3回/週でi.p.注射した。対照群のマウスには同じ溶媒溶液を注射した。8週間の注射後、マウスをAβ免疫組織化学染色のために屠殺した。
統計解析。結果を平均±SEMで示す。実験で得た結果の統計学的比較を、2群比較についてはスチューデンツt検定により、3群以上の多重比較については一元配置または二元配置分散分析と、続くチューキー検定により実施した。p値は適宜、本文および図の説明に示す。
プラスミドとウイルス。YFP-STIM2はDr. Jen Liouから御供与いただき、ヒトTRPC6 cDNAおよびマウスOrai2 cDNAクローンはOpen Biosystemsから購入して、PCRによりTRPC6およびOrai2レンチウイルス発現構築物を作製するために用い、HAタグはPCRにより5'末端に誘導し、YFP-TRPC6はDr. Craig Montellから御供与いただき、FLAG-TRPC6/pCMVはDr. Joseph Yuanから御供与いただき、GST-S2-SOAR(aa 348-450)およびGST-S2-CT(aa248-C末端)はPCRにより作製して、PGEX-KGベクター中にクローニングした。STIM2-LASS(L377S、A380S)変異はQ5変異誘発キット(Sigma)により作製し、対照-低分子ヘアピン型RNA干渉(Ctrl-shRNAi)(SHC002)、マウスTRPC6-shRNAi(SHCLNG-NM_013838、TRCN0000068394)、およびマウスOrai2-shRNAi(SHCLNG-NM_178751、TRCN0000126314)レンチウイルスシャトル構築物はSigmaから入手した。レンチウイルスは、本発明者らが以前に記載したとおり(Zhang et al., 2010)、2つのヘルパープラスミド(pVSVgおよびpCMVΔ8.9)のパッケージング細胞株HEK293Tへの同時形質移入により作製した。
抗体。抗TRPC6 pAb(1:500、Sigma、SAB4300572)、抗Orai2 pAb(1:200 Santa Cruz、sc-292103)、抗GFP mAb(1:2000、Pierce、MA5-15256)、抗FLAG(1:1000、Sigma、F3165)、抗HA(1:3000、Covance、MMS-101R)、抗STIM2 pAb(1:500、Cell Signaling、4917s)、抗Phospho-CaMKII(1:1000、Cell Signaling、3361s)、抗CaMKII(1:1000、Chemicon、MAB8699)、抗PSD95(1:1000、Cell Signaling、3450s)、抗GAPDH(1:1000、Millipore、MAB374) 、および抗Aβ 6E10 mAb(1:1000、Covance、SIG-39300)を用いた。HRP結合抗ウサギおよび抗マウス二次抗体(115-035-146および111-035-144)はJackson ImmunoReseachから入手した。
定量的逆転写PCR分析(qRT-PCR)。マウス遺伝子発現プロファイリングのために、異なる脳領域組織を7〜8週齢雄C57BL/6マウス(n=6)から得た。RNAを、RNAStat60(TelTest、Friendswood、TX)を製造者の指示に従い用いて抽出した。全RNAを各組織(n=6)について等量プールした。ゲノムDNAの混入をDNアーゼI(Roche)により除去した。qPCRアッセイのためのcDNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(Life Technologies)を用いて調製した。遺伝子発現レベルをApplied Biosystems 7900HTおよびSYBR Green chemistryでプライマー(以下の表参照)を用いて測定した。正規化mRNAレベルを任意単位で表し、mRNA発現の平均した効率補正値を、18s rRNA(マウス18s rRNAフォワード:accgcagctaggaataatgga;SEQ ID NO: 1、およびマウス18s rRNAリバース:gcctcagttccgaaaacca;SEQ ID NO: 2)のもので割ることにより得た。グラフ表示のために、得られた値に105をかけた。誤差バーは実験誤差を表し、三つ組の試料ウェルからの平均値の標準偏差に基づいて計算した。
Figure 2018515507
海馬シナプトソーム画分(P2)および免疫共沈降。海馬領域を月齢1ヶ月のマウスから抽出し、0.32Mスクロースおよび25mM HEPES、pH7.2中でホモジナイズし、800gで10分間遠心分離して核を除去した。次いで、低速上清を12,000gで20分間遠心分離して、シナプトソーム上清とシナプトソーム膜画分(P2ペレット)とを分離した。P2ペレットを、1%CHAPS、137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM Na2HPO4、1.4mM KH2PO4、pH7.2、5mM EDTA、5mM EGTA、およびプロテアーゼ阻害剤を含む溶解緩衝液中、4℃で2時間可溶化した。試料を16300gで20分間遠心分離することにより、不溶性材料を除去した。シナプトソーム画分中のタンパク質濃度を、Nanodrop OD280により測定した。各免疫共沈降反応のために、500μgの総タンパク質溶解物をまず正常ウサギIgGおよびプロテインA/Gビーズにより4℃で1時間あらかじめ清浄化し、次いで2μgの一次抗体と共に4℃で1時間インキュベートし、次いで20μlのプロテインA/Gアガロースビーズと共に揺動プラットフォーム上、4℃で終夜インキュベートし、次いで沈降した試料を溶解緩衝液で3回洗浄し、最終ビーズペレットを1×SDSローディング緩衝液中に再度懸濁し、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットにより分析した。
GSTプルダウンアッセイ。GST融合タンパク質をBL21大腸菌(E. coli)株中で発現させ、以前に記載したとおりに精製し(Zhang et al., 2005)、YFP-TRPC6またはHA-Orai2タンパク質をHEK293細胞中で発現させ、1%CHAPS、137mM NaCl、2.7mM KCl、4.3mM Na2HPO4、1.4mM KH2PO4、pH7.2、5mM EDTA、5mM EGTA、およびプロテアーゼ阻害剤を含む溶解緩衝液中、4℃で1時間抽出した。抽出物を遠心分離により澄明化し、対応するGST融合タンパク質と共に4℃で1時間インキュベートした。ビーズを抽出緩衝液で4回洗浄し、結合タンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、抗GFPまたは抗HA抗体をプローブに用いて試験した。
Fura-2 Ca2+イメージング実験。培養したDIV15〜16の海馬ニューロンによるFura-2 Ca2+イメージング実験を、以前に記載したとおりに実施した(Zhang et al., 2010)。Fura-2 340/380比画像をDeltaRAM-X照明器、Evolveカメラ、およびIMAGEMASTER PRO(登録商標)ソフトウェア(すべてPhoton Technology International, Inc.から)を用いて収集した。全細胞体を画像解析のための関心領域(ROI)としてセットした。神経細胞ストア作動性Ca2+流入(nSOC)実験において、ニューロンを人工CSF(aCSF、140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2、2mM CaCl2、および10mM HEPES、pH7.3)から0.4mM EGTAおよび1μM Tg(タプシガルジン)を加えた無カルシウムaCSFに30分間移し、次いで1μM TTX、50μM AP5、10μM CNQXおよび50μMニフェジピンを含むaCSFに戻した。nSOC媒介性Ca2+増加の最大振幅(ピーク)を、Fura-2 340nm/380nm比からもとめた。すべてのCa2+イメージング実験は室温で行った。
インビトロ代謝アッセイ。雌ICR/CD-1マウスS9画分をCelsis/In Vitro Technologies(Baltimore、MD)から購入した。25μl(0.5mg)のS9タンパク質を15mlのガラスネジ蓋チューブに加えた。対象化合物を含む50mM Tris、pH7.5溶液350μlを氷上で加えた。すべての試薬を加えた後のNSN21778化合物の最終濃度は2μMであった。125μlのNADPH再生系(2% w/v NaHCO3/10mm MgCl2中1.7mg/ml NADP、7.8mg/mlグルコース-6-リン酸、6U/mlグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)を第I相代謝の分析のために加えた。次いで、チューブを37℃の振盪水浴に入れた。第I相補助因子の添加後、様々な時点で、ギ酸およびn-ベンジルベンズアミド内部標準(IS)を含むメタノール0.5mlを加えることにより、反応を停止した。試料を室温で10分間インキュベートし、次いで16,100×gで5分間遠心分離した。上清をLC-MS/MSで分析した。市販のマウスCD-1血漿(Bioreclamation、Westbury、NY)の安定性を同様の様式で測定した。NSN21778(2μM)をマウス血漿と共に0〜1440分間インキュベートした。反応を前述のとおりメタノールで停止し、上清をLC-MS/MSで評価した。化合物の半減期を、記載のとおり、基質枯渇の方法によりもとめた(McNaney et al., 2008)。
インビボ薬物動態。6週齢雌CD-1マウスに、10%エタノール/10%cremophor EL/80%50mMクエン酸緩衝液、pH5.0中で製剤化した10mg/kg NSN21778をIP(0.2ml)投与した。全血および脳を回収した。酸性クエン酸デキストロース(ACD)を抗凝固剤として用いた。血漿を全血から標準遠心分離機中、10,000rpmで10分間遠心分離することにより処理した。脳を秤量し、液体窒素中で急速凍結した。脳ホモジネートを、脳組織を3倍量のPBS中でホモジナイズすることにより調製した(ホモジネートの全量(ml)=4×重量(g))。脳ホモジネートの全量は加えたPBSの量+脳の量(ml)として推定した。100μlの血漿または脳を200μlのギ酸含有アセトニトリルと混合して、血漿または組織タンパク質を沈降させ、結合した薬物を放出した。試料を15秒間ボルテックスにかけ、室温で10分間インキュベートし、2×16,100gで遠心分離した。次いで、上清をLC-MS/MSで分析した。NSN21778を血漿または脳ホモジネートに加えることにより、検量線を調製した。ブランク血漿または脳ホモジネートで得たシグナルよりも3倍高い値を検出限界(LOD)とした。定量限界(LOQ)は、逆算すると理論値の20%以内の濃度となり、LODシグナルよりも高い、最低濃度と定義した。血漿および脳についてのNSN21778のLOQは5ng/mlであった。値がLODよりも高いが、LOQよりも低い場合、1/2 LOQまたは実際の測定値のいずれか高い方に設定した。動物を組織単離前に灌流しなかったため、NSN21778の最終脳濃度をもとめるために、NSN21778の血漿濃度計算値および脳組織1gあたりの血液30μlの値を用いて、脳血管による脳内の化合物の量をまず差し引いた(Kwon, 2001)。
恐怖条件づけ試験。恐怖条件づけを、スクランブル式ショック発生器(Med Associates Inc.、St. Albans)に接続した金属格子床を備えた箱の中で測定した。訓練のために、マウスを個々にチャンバーに入れた。2分後、マウスに3回の音-ショックの組み合わせ(30秒間の白色雑音、80dBの音を2秒間の0.5mAの足ショックと同時停止、試験の間に1分の間隔)を与えた。翌日、マウスを同じチャンバーに入れることにより文脈の記憶を測定し、すくみをMed Associatesソフトウェアで自動的に測定した。訓練の48時間後、マウスを床と壁を変え、異なる照明とバニラの匂いの箱に入れることにより、白色雑音合図の記憶を測定した。すくみを3分間測定し、次いで雑音合図をさらに3分間オンにして、すくみを測定した。
マウス海馬における樹状突起スパイン分析。インビボで海馬におけるスパインの形状を分析するために、本発明者らはGFP-M系統のマウス(Feng et al., 2000)(WTGFP)を用いた。分析を単純にするために、本発明者らは、M系統GFPマウスをPS1KIおよびAPPKIマウスと交配させてPS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスを得た。マウスを氷冷したリン酸緩衝液(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液30mlで3分間心臓内灌流した。脳を抽出し、4%PFA溶液中で16時間後固定した後、切断した。固定した脳から50μm海馬切片をビブラトーム(Leica 1200S)を用いて得た。光学的断面のZスタックを共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Axiovert 100M with LSM510)により100×対物レンズを用いて取得した。Z間隔は0.5μmであった。海馬CA1錐体ニューロンの尖端樹状突起を、画像取得のために選択した。マウス5匹からの約25個のニューロンをマウスの各群について分析した。切片におけるニューロンスパインの形状を分類するために、本発明者らはここでも、NeuronStudioソフトウェアパッケージおよび(Rodriguez et el., 2008)からのアルゴリズムを、以下のカットオフ値と共に用いた:AR_thin(crit)=2.5、HNR(crit)=1.4、HD(crit)=0.5μm。
Aβ免疫組織化学染色。βアミロイド斑分析のために、マウスを終末麻酔し、30mlの氷冷PBSと、続いて50mlの固定液(0.1M PBS中4%パラホルムアルデヒド、pH7.4)で経心的に灌流した。すべての脳を頭蓋から摘出し、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で終夜後固定し、PBS中20〜30%(w/v)スクロース中で平衡化した。脳をSM2000R滑走式ミクロトーム(Leica)を用いて厚さ30μmの冠状切片にスライスした。全脳の全体に一定間隔で配置したAPPPS1マウスからの30μm冠状切片を、6E10抗AβmAb(1:1000希釈)と、続いてAlexa Flour-488二次抗マウスIgG(1:1000希釈)で染色した。アミロイド斑の平均面積および斑における蛍光シグナルの強度を、以前に記載したとおり(Zhang et al., 2010)、Isocyteレーザースキャナおよび画像分析ソフトウェアを用いて、各切片について自動的に計算した。各マウスから20の冠状切片を分析のために定量し、データをNSN21778処置群(n=5)および対照群(n=4)内で平均した。
実施例2−結果
TRPC6およびOrai2は海馬シナプスにおいてSTIM2との複合体を形成する。スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルの分子構成要素を特定するために、本発明者らは候補アプローチを取った。以前の試験は、タンパク質の2つの主要なファミリーである一過性受容器電位基準(TRPC)チャネルおよびOraiチャネルが、様々な細胞でのSOCの支持において重要な役割を果たすことを示唆した[Majewski, 2015 #6717;Sun, 2014 #6718]。ヒトでは6つのTRPCタンパク質(TRPC1、TRPC3〜TRPC7)があり、これらは生化学的および機能的類似性に基づいて、2つのサブファミリー、TRPC1/TRPC4/TRPC5およびTRPC3/TRPC6/TRPC7に分けられている。残りのメンバーのTRPC2はヒトでは偽遺伝子であるが、他の種では制限された発現パターンで発現される[Cheng, 2013 #6719]。Oraiチャネルは3つ(Orai1〜Orai3)あるが、これまでほとんどの試験はOrai1に焦点を合わせてきた。本発明者らは、TRPCおよび/またはOraiチャネルファミリーのメンバーは、おそらくはスパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルをコードする候補であると推論した。STIM2の発現は海馬で非常に多い[Sun, 2014 #6478](図8)。本発明者らは、STIM2依存性nSOCチャネルの他の構成要素が類似の発現パターンを有するであろうと推論した。Allen Brain Atlasからのデータの解析により、TRPC6およびOrai2タンパク質は類似の発現パターンを有することが判明した(図8)。STIM1ならびにTRPCおよびOraiファミリーの他のメンバーは、脳の海馬領域において有意な濃縮を示さない(図8)。これらの結果を確認するために、本発明者らは、異なる脳領域から調製したcDNA試料で、一連のq-RTPCR実験を実施した。Allen Brain Atlasデータと一致して、本発明者らは海馬に多い遺伝子としてSTIM2、TRPC6およびOrai2を特定した(図9)。遺伝子発現データ(図8〜9)に基づき、本発明者らは、海馬スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルをコードする候補分子として、TRPC6およびOrai2に焦点を合わせた。
STIM2依存性チャネル複合体の構成要素を特定するために、本発明者らは、海馬シナプトソームを調製し、一連の免疫沈降実験を実施した。本発明者らは、TRPC6またはOrai2に対する抗体は、実際に、シナプトソーム溶解物からSTIM2を回収し得ることを見出した(図1A)。免疫沈降したSTIM2の見かけの分子量は、インプットレーンのSTIM2の分子量よりも高かった(図1A)。おそらくは、TRPC6およびOrai2は、リン酸化などの翻訳後修飾を受けたSTIM2との複合体を形成すると考えられる[Smyth, 2012 #6763]。この知見と一致して、皮質溶解物からのOrai1と免疫共沈降したSTIM2もゲル上でより高い分子量を示す[Gruszczynska-Biegala, 2013 #6722]。
STIM2はTRPC6および/またはOrai2に直接結合するか?STIM1およびSTIM2タンパク質は、類似のドメイン構造および76%の配列類似性を有する[Stathopulos, 2013 #6729]。STIM2タンパク質は詳細に試験されていないが、STIM1タンパク質の構造-機能分析がこれまでにいくつかの研究室によって実施されている。STIM1タンパク質はOrai1と、サイトゾルのSOARドメインを介して相互作用し、これを開口することが確かめられている[Park, 2009 #6730;Yuan, 2009 #6731]。STIM1 SOARドメイン配列における二重変異(L373S、A376S)は、STIM1とOraiとの間の結合を破壊した[Frischauf, 2009 #6716]。STIM1とSTIM2との間の配列相同性により導かれて、本発明者らは、野生型STIM2-SOARドメイン(S2-SOAR)およびSTIM2-SOAR配列における対応する変異体(L377S、A380S)(S2-LASS)のGST融合構築物を作製した。本発明者らはこれらの構築物を、YFPタグTRPC6またはHAタグOrai2を形質移入したHEK293細胞からの溶解物によるプルダウン実験で用いた。本発明者らは、STIM2-SOARドメインはOrai2タンパク質と強力に結合し、この結合はLASS変異によって破壊されることを見出した(図1B)。これに対して、STIM2-SOARドメインのTRPC6との結合は弱く、LASS変異によって影響されなかった(図1B)。SOARドメインの代わりにSTIM2の全サイトゾルテールをプルダウン実験で用いた場合に、同様の結果が観察された(データは示していない)。これらの結果から、STIM2はSOARドメインを介してOrai2と強力かつ直接に結合するが、TRPC6とは非常に弱く結合することが示唆された。これは、SOARを介してOrai1と相互作用し、かつERMドメインを介してTRPC1/2/4と相互作用するが、TRPC3/6/7とは相互作用しないことが示された、STIM1の以前の分析と一致している[Huang, 2006 #6732]。TRPC6抗体のSTIM2を沈降させる能力(図1A)を説明するために、本発明者らは、Orai2およびTRPC6が膜において複合体を形成すると推論した。類似の複合体が非興奮性細胞におけるTRPC6/3およびOrai1について以前に提唱されている[Liao, 2007 #6733;Jardin, 2009 #6738]。この仮説を試験するために、本発明者らは、FLAGタグTRPC6およびHAタグOrai2をHEK293細胞に同時形質移入し、免疫共沈降実験でTRPC6/Orai2複合体の形成を確認した(図1C)。
STIM2-Orai2-TRPC6複合体の機能をさらに調べるために、本発明者らは、HEK293細胞にHAタグTRPC6およびHAタグOrai2構築物ならびにYFPタグSTIM2構築物またはYFPタグSTIM2-LASS変異体構築物を同時形質移入した。文献における結果は、STIM1、OraiおよびTRPCチャネルの間の結合はER Ca2+ストアの枯渇状態により調節されうることを示唆している[Cheng, 2013 #6719;Liao, 2007 #6733;Liao, 2008 #6734;Liao, 2009 #6735;Cheng, 2008 #6736;Cheng, 2011 #6737;Jardin, 2009 #6738;Ong, 2007 #6739;Zeng, 2008 #6740]。この可能性を説明するために、本発明者らは、ストア枯渇を引き起こすための無Ca2+培地中でのインキュベーションの後に、標準培養条件下(2mM細胞外Ca2+)で形質移入HEK239細胞から溶解物を調製した。溶解物を抗TRPC6抗体で沈降させ、YFP-STIM2の存在を抗EGFP抗体によるウェスタンブロッティングにより分析した。これらの実験において、本発明者らは、正常なCa2+条件下(2mM Ca2+)で、STIM2はTRPC6と弱く結合し(図1D、レーン1)、この結合はストア枯渇によって促進される(図1D、レーン2)ことを見出した。興味深いことに、STIM2-SOARドメイン配列におけるLASS変異は、STIM2のTRPC6との結合を破壊しなかったが、この相互作用はもはやER Ca2+レベルによって調節されなかった(図1D、レーン3および4)。これらの結果を説明するために、本発明者らは、図1Eに示すモデルを提唱した。本発明者らは、正常なER Ca2+ストアの状態で、SOARドメインを介してOrai2と強く相互作用するいくつかのSTIM2タンパク質および異なる領域を介してTRPC6と弱く相互作用するいくつかのSTIM2タンパク質があることを提唱する(図1E、パネル1)。ERストア枯渇およびSTIM2のオリゴマー化の後、より多くのOrai2およびTRPC6タンパク質が動員され、TRPC6、Orai2およびSTIM2の機能的複合体が構築される(図1E、パネル2)。この複合体において、TRPC6はCa2+伝導チャネルとして働き、Orai2はSTIM2との結合によりER Ca2+レベル検知に関与している。STIM1-TRPC3/6-Orai1複合体の機能を説明するために、同様の考えが提唱されている[Liao, 2007 #6733;Jardin, 2009 #6738]。本発明者らは、STIM2-SOARドメインにおけるLASS変異はそのOrai2との結合を破壊し、Orai2との競合がなくなったことにより、TRPC6との非生産的結合の増強をもたらすことをさらに主張する(図1E、パネル3)。Orai2と結合できないため、STIM2-LASSのTRPC6との結合はもはやER Ca2+ストア枯渇によって調節されない(図1E、パネル4)。これ以降の議論は、海馬シナプススパインにおけるTRPC6/Orai2-STIM2複合体の機能を評価するためのこのモデル(図1E)によって誘導される。
TRPC6およびOrai2は海馬マッシュルーム型スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルの構成要素である。TRPC6およびOrai2が実際にスパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルの構成要素として作用するかどうかを調べるために、本発明者らは、レンチウイルス媒介性shRNAi送達を用いて、マウス海馬ニューロン培養物でTRPC6およびOrai2のノックダウンを実施した。以前の試験で、本発明者らは、シナプスCaMKIIの活性がnSOC経路によって調節され、自己リン酸化pCaMKIIのレベルをスパインにおける定常状態のCaMKII活性の生化学的測定値として用い得ることを示した(Sun et al., 2014)。本発明者らは以前、nSOCの阻害がスパインにおけるPSD95発現の減少を引き起こすことも示した(Sun et al., 2014)。これらの実験において、本発明者らは、TRPC6またはOrai2のRNAi媒介性ノックダウンがPSD95発現の低減およびpCaMKIIのレベル低減をもたらすことを見出した(図2A〜Bおよび10)。CaMKIIの全レベルは影響されないままであった(図2A〜Bおよび10)。TRPC6またはOrai2ノックダウン後のpCaMKIIおよびPSD95レベルの低減は、以前の試験(Sun et al., 2014)におけるSTIM2低減またはnSOC阻害剤の適用によって誘導された変化と一致している。
nSOC活性をより直接的に評価するために、本発明者らは、一連のCa2+イメージング実験を実施した。Fura-2イメージング実験において、本発明者らは、TRPC6またはOrai2のノックダウンが細胞体におけるnSOCピークを低減させることを見出した(図11A〜B)。スパインにおけるCa2+イメージングを実施するために、本発明者らは、樹状突起スパインを同時に可視化して局所Ca2+シグナルを測定することを可能にするために、海馬ニューロンにGCamp5.3プラスミドを形質移入した(Sun et al., 2014)。これらの実験において、本発明者らは、TRPC6またはOrai2のノックダウンがシナプスnSOCの急激な低減をもたらすことを見出した(図2C〜D)。重要なことに、STIM2の過剰発現は、TRPC6またはOrai2のノックダウン後のシナプスnSOCを救済することはできなかった(図2C〜D)。これらのデータは、スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルの機能はTRPC6およびOrai2タンパク質両方の存在を必要とするという仮説を支持するものであった(図1E、パネル2)。
以前の試験で、本発明者らは、海馬マッシュルーム型スパインの維持はシナプスnSOC活性を必要とすることを示した(Sun et al., 2014)。TRPC6およびOrai2のノックダウン後のシナプススパインの形態を評価するために、本発明者らは海馬培養物にTD-Tomatoプラスミドを形質移入し、細胞を固定し、各実験群について共焦点イメージング実験を実施した(図2E)。スパイン形状の自動分析により、マッシュルーム型スパインの割合はTRPC6またはOrai2タンパク質のノックダウン後に有意に低下することが判明した(図2E〜F)。nSOCのCa2+イメージング実験と同様、STIM2の過剰発現は、TRPC6またはOrai2ノックダウン後のマッシュルーム型スパインを安定化することはできなかった(図2E〜F)。これらのデータは、STIM2-TRPC6/Orai2チャネル複合体は海馬マッシュルーム型シナプススパインの維持に必要であるとの仮説を支持している。
以前の発表(Sun et al., 2014)において、本発明者らは、家族性ADのPS1KIマウスモデルからの海馬ニューロンにおいて、STIM2の過剰発現がシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインの欠損を救済し得ることを示した。本発明者らは、今回の実験において、これらの結果を再現することができた(図2G〜J)。しかし、STIM2の発現は、TRPC6またはOrai2のノックダウン後に、PS1-KIニューロンにおいてシナプスnSOCまたはマッシュルーム型スパインを救済することはできなかった(図2G〜J)。これらの結果は、海馬マッシュルーム型スパインにおけるSTIM2依存性nSOCを媒介する際の、TRPC6およびOrai2チャネルの重要な役割をさらに支持するものであった。
海馬スパインnSOCの構成要素としてのTRPC6およびOrai2の異なる機能的役割。以前の試験で、本発明者らは、家族性ADのPS1KIおよびAPPKIマウスモデルにおいて、STIM2の過剰発現がnSOCおよびマッシュルーム型スパインの欠損を救済することを示した(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)。本発明者らは、TRPC6およびOrai2の過剰発現の効果を評価するために、類似のアプローチを用いた。本発明者らは、TRPC6の過剰発現もPS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるスパインnSOC(図3A〜B)およびマッシュルーム型スパインの減少(図3C〜D)を救済すると確認した。これに対して、Orai2の過剰発現はPS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるスパインnSOCを救済することはできなかった(図3A〜B)。実際、Orai2の過剰発現は、野生型ニューロンにおいてさえスパインnSOC応答を有意に弱めた(図3A〜B)。Orai2形質移入ニューロンにおけるスパインの形態の分析は、この群のニューロンの約30%が異常な樹状突起形態を示し、シナプススパインはこれらの細胞で明らかに特定することができなかった(データは示していない)ため、行わなかった。これらの結果から、本発明者らは、過剰発現したOrai2はSTIM2に高い親和性で結合するが、化学量論量のTRPC6および/またはSTIM2の非存在下で機能的Ca2+流入チャネルを生成しないと結論付けた。これらの知見と一致して、HEK293細胞において、Orai1またはOrai2の過剰発現はSTIM1を捕捉することによりSOCEを阻害すると報告されている(Mercer et al., 2006およびHoover et al., 2011)。これに対して、TRPC6の過剰発現はSTIM2の過剰発現と同様の結果をもたらし、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるnSOCおよびマッシュルーム型スパインの救済につながる(図3A〜D)。これらの結果は、TRPC6はnSOC経路の主要なCa2+流入源であることを示唆している。これらの結果はすべて、スパインの適切に調節されたnSOCチャネルは正しい化学量論で構築されたSTIM2-Orai2/TRPC6複合体によって形成されるというモデルと一致している(図1E、パネル2)。
この仮説をさらに試験するために、本発明者らは、STIM2およびSTIM2-LASS変異体の過剰発現の効果を比較した。以前の試験(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)と一致して、STIM2の発現はPS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるスパインnSOC(図3A〜B)およびマッシュルーム型スパインの減少(図3C〜D)を救済した。これに対して、STIM2-LASS変異体の発現はPS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるスパインnSOC(図3A〜B)およびマッシュルーム型スパインの減少(図3C〜D)を救済することはできなかった。実際に、STIM2-LASS変異体の発現は、野生型ニューロンのスパインnSOCに対してドミナントネガティブ効果を発揮し(図3A〜B)、これらのニューロンでマッシュルーム型スパインの減少を引き起こした(図3C〜D)。これらの結果を説明するために、本発明者らは、STIM2-LASS変異体はOrai2に結合せず、代わりにTRPC6を非機能的複合体に捕捉すると推論した(図1E、パネル4)。これらの結果から、本発明者らは、TRPC6はシナプススパインにおける主要なCa2+流入チャネルであり、Orai2はストア枯渇依存的様式でSTIM2によって開口される複合体の調節サブユニットであると結論付けた。同様のモデルが非興奮性細胞におけるSTIM1-TRPC3/6-Orai1複合体について以前に提唱されている(Liao et al., 2007およびJardin et al., 2009)。
NSN21778およびハイパーフォリンはスパインnSOCチャネルを活性化する。遺伝的救済実験(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)(図3A〜B)は、スパインにおけるTRPC6/Orai2 nSOCチャネルの薬理学的活性化剤は、マッシュルーム型スパインの減少の防止を助け、ADに対する治療能力を有しうることを示唆している。ハイパーフォリン(Hyp)はTRPC6の公知の活性化剤である(Leuner et al., 2007)(図4A)。本発明者らの研究室は最近、新規のnSOC活性化剤NSN21778(NSN、分子量321)を同定した(図4A)。この化合物は、以前の試験(Wu et al., 2011)において新規nSOC阻害剤を分析する過程で思いがけなく発見された。Ca2+イメージング実験において、本発明者らは、Ca2+の再添加前に300nMのHypまたはNSNを適用することで、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるスパインnSOCが救済されることを見いだした(図4B〜C)。興味深いことに、両方の化合物は野生型のスパインにおけるnSOCに対して有意な効果は有さなかった(図4A〜B)。これは、スパインnSOC経路は正常な状態ではすでに最大に活性化されていることを示唆している。さらなる実験において、本発明者らは、TD Tomatoを形質移入した海馬ニューロン培養物を30nM濃度のHypまたはNSNと共に16時間インキュベートし、共焦点イメージングによりスパインの形状の分析を実施した(図4D)。本発明者らは、HypまたはNSNとのインキュベーションはPS1KIおよびAPPKIニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの完全な救済をもたらすことを見出した(図4D〜E)。両方の化合物は野生型ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの割合に対して有意な効果は有しなかった(図4D〜E)。さらなる実験において、本発明者らは、300nMのHypまたはNSNによる4時間の処理は、PS1KIおよびAPPKI海馬ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインに対して類似の救済効果を発揮することを示した(データは示していない)。
HypおよびNSN化合物の標的を確認するために、本発明者らはHEK293細胞においてTRPC6を過剰発現させ、一連のFura-2 Ca2+イメージング実験を実施した。発表された報告(Leuner et al., 2007)と一致して、1μM Hypの適用はTRPC6を形質移入したHEK293細胞においてCa2+流入を活性化したが、EGFPプラスミドを形質移入した対照細胞では活性化しなかった(図5Aおよび5C)。Hypとは対照的に、1μM NSNの適用はTRPC6形質移入細胞においてCa2+流入を誘発しなかった(図5Aおよび5C)。さらなる実験において、本発明者らは、他のTRPC(TRPC1〜7)、Orai(Orai1〜3)、またはTRPC6およびOrai2の組み合わせを形質移入したHEK293細胞での実験において、1μM NSN化合物の効果を評価した。しかし、NSN化合物は、これらの実験のいずれにおいてもCa2+流入を誘導することはできなかった(データは示していない)。これらの実験から、本発明者らは、HypはTRPC6チャネルの直接活性化剤として作用するが、NSN化合物の作用はより複雑であると結論付けた。さらなる実験において、本発明者らは、ストア枯渇の条件下でSOCを測定した。これを達成するために、HEK239細胞を1μM Tgを含む無Ca2+培地中でプレインキュベートした。これらの実験において、本発明者らは、EGFP形質移入細胞で内因性SOC応答を観察し、これはTRPC6形質移入細胞でさらに増強された。しかし、NSN化合物の適用は、これらの条件下でGFPまたはTRPC6細胞におけるSOCに対してさらなる効果を示さなかった(データは示していない)。TRPC6チャネルはDAGによって活性化されることが公知である(Estacion et al., 2004)。スパインnSOC測定において、強いCa2+応答を生成するために、100μM DHPGの添加が必要であった。したがって、次の一連の実験において、本発明者らは、DAGの安定な合成類縁体であるOAGの効果を評価した。標準の記録条件下で、100μM OAGをTRPC6形質移入細胞に適用すると、変動性の高い応答を引き起こし、強いCa2+流入を示すバッチの細胞もあれば、非応答性のバッチもあった(データは示していない)。しかし、本発明者らは、0.1mM Ca2+を含む細胞外培地中での細胞のプレインキュベーションによりストアを部分的に枯渇させると、100μM OAGはより一貫した応答を生成し得ることを見出した(図5B〜C)。OAGの効果はTRPC6形質移入細胞で観察されたが、対照のEGFP形質移入細胞では見られなかった(図5B〜C)。興味深いことに、同様の部分的ストア枯渇プロトコルがSTIM2のクローニングを報告する論文で用いられ(Brandman et al., 2007)、そのような条件下でSTIM2依存性Ca2+流入経路が重要であることが示唆された。1μM NSNとのプレインキュベーションは、TRPC6形質移入細胞においてこれらの条件下でのOAG誘導性応答の有意な増強をもたらしたが、対照GFP細胞では増強は見られなかった(図5B〜C)。これらの結果から、本発明者らは、NSN化合物はおそらくはニューロンのTRPC6チャネルに対する内因性DAGの効果を増強することによって作用すると結論付けた。
スパインにおけるHypおよびNSN化合物の標的を確認するために、本発明者らは、TRPC6またはOrai2に対するLenti-RNAiを感染させた野生型およびPS1KI海馬ニューロンによる実験を実施した。これらの培養物にTD Tomatoを形質移入し、30nMのHypまたはNSNと共に16時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で分析した(図5A〜B)。これらの実験において、TRPC6またはOrai2のノックダウンは、野生型ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの減少を引き起こした(図2E〜Fおよび5A〜B)。30nMのHypまたはNSNとのインキュベーションはこの表現型を救済することはできなかった(図5A〜B)。30nMのHypまたはNSNとのインキュベーションは、対照RNAiレンチウイルスに感染したPS1KI培養物でマッシュルーム型スパインの減少を救済したが、TRPC6またはOrai2のノックダウン後のPS1KI海馬ニューロンでマッシュルーム型スパインの減少を救済することはできなかった(図5A〜B)。得られた結果は、ハイパーフォリンおよびNSNは、スパインにおけるTRPC6/Orai2チャネル複合体を活性化することによって、ADニューロンにおけるシナプスnSOCおよびマッシュルーム型スパインを救済するとの仮説と一致する。ADマウスモデルにおけるハイパーフォリンおよびその誘導体の効果は以前に記載されており(考察の項を参照)、本発明者らは残りの試験についてNSN化合物の分析に焦点を合わせた。
NSN21778はADマウスモデルからの海馬切片におけるシナプススパインおよび可塑性の欠損を救済する。NSN化合物のシナプスへの効果をさらに評価するために、本発明者らは、海馬切片による一連の実験を実施した。分析を単純化するために、本発明者らは、M系統GFPマウス(Feng et al., 2000)をPS1KIおよびAPPKIマウスと交配させて、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスを得た。海馬切片を月齢6ヶ月のM系統GFPマウス(WTGFP)、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスから調製した。切片を300nM NSNで3.5時間処理し、固定し、二光子画像法で分析した(図6A)。以前の試験(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)と一致して、スパインの形状の分析により、月齢6ヶ月のPS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスでは、WTGFPマウスと比べると、マッシュルーム型スパインの有意な減少が明らかとなった(図6A〜B)。300nM NSNでの処理はWTGFPマウスのマッシュルーム型スパインに対して効果がなかったが、PS1KIGFPおよびAPPKIGFP海馬切片におけるマッシュルーム型スパインの完全な救済をもたらした(図6A〜B)。PS1KIマウスはE-LTPの欠損を示さず(Chakroborty et al., 2009およびOddo et al., 2003)、これらのマウスではL-LTPの表現型のみが報告された(Auffret et al., 2010およびZhang et al., 2015)。APPKIマウスは最近作製され(Saito et al., 2014)、これまでにこれらのマウスでLTP試験は実施されていない。これらの試験において、本発明者らは、二連続の高頻度刺激(HFS)は月齢6ヶ月の野生型およびAPPKI海馬切片で類似のシナプス増強を誘導しうることを見いだした(図6C〜D)。しかし、この増強はAPPKI海馬切片では持続しなかった(図6C〜D)。平均で、APPKI切片では、fEPSPのスロープは60分以内に刺激前のレベルに低下した(図6C〜6E)。これに対して、野生型切片では、fEPSPのスロープは高いままで、60分の時点で175%の平均増加であった(図6C〜E)。これらの結果は、APPKIマウスは月齢6ヶ月で強いLTP欠損を示すことを示唆し、これは以前に記載された海馬LTPに対するAβ42の作用から予想することができた(Chapman et al., 1999;Shankar et al., 2007;Shankar et al., 2008およびWalsh et al., 2002)。海馬切片を300nM NSN化合物で2〜3時間前処理しても、野生型切片のLTPに対して有意な効果はなかったが、APPKI切片ではLTP欠損を完全に救済した(図6C〜6E)。これらの実験から、本発明者らは、スパインnSOC経路のNSN化合物による活性化は、APPKI海馬ニューロンにおけるシナプス可塑性欠損を救済し得ると結論付けた。
NSN21778はインビボでADマウスモデルのマッシュルーム型スパインおよび記憶の欠損を救済する。NSN化合物がインビボで有益な効果を発揮しうるかどうかを判定するために、本発明者らは、この化合物の予備代謝安定性試験を実施した。本発明者らは、NSN化合物は、市販の肝S9画分中、NADPH再生系を含む第I相補助因子存在下で一般に安定であり、市販のCD-1マウス血漿中で安定であることを見いだした(図12A〜B)。10mg/kgのNSN21778のi.p.注射後、化合物は血漿中で適度なレベルに達したが、脳への浸透は不良であった(図12C)。NSN化合物はスパイン救済実験においてナノモル濃度で有効であった(図4A〜Dおよび5A〜B)ため、本発明者らは、それでも、全身の動物試験を開始した。これらの実験において、NSN化合物をWTGFP、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスで、月齢4ヶ月で開始して、10mg/kgの濃度で1週間に3回i.p.注射した。本発明者らは、注射したマウスでいかなる毒性も明白に観察しなかったが、10週間の処置後にNSN注射マウスでいくらかの体重減少が見られた(データは示していない)。体重減少は、腸運動を加速させうる、腸平滑筋におけるTRPC6チャネルの活性化が原因と考えられる(Tsvilovskyy et al., 2009)。マウスを月齢6.5ヶ月で屠殺し、スパイン形状の分析を海馬切片の共焦点イメージングによって実施した(図7A)。以前の試験(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)と一致して、本発明者らは、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスの対照群で、WTGFPマウスと比べると、マッシュルーム型スパインの有意な減少を観察した(図7A〜B)。NSN化合物の注射は、WTGFPマウスではマッシュルーム型スパインに対して効果がなかったが、PS1KIGFPおよびAPPKIGFPマウスではマッシュルーム型スパインの欠損の救済をもたらした(図7A〜B)。これらの結果は、PS1KIおよびAPPKIマウスにおいてAAV1-STIM2ウイルスの海馬への注射後に見られた、マッシュルーム型スパインのインビボ救済と同等である(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)。したがって、本発明者らは、i.p.注射後、これらのマウスの脳に、シナプスnSOCを活性化し、マッシュルーム型スパインを安定化するのに十分なNSNの浸透があると結論付けた。または、LC-MS/MSアッセイでは検出されないが、わずかに改変されたがまだ活性なNSNの代謝物がより高い濃度で脳に浸透し、活性を担っている可能性がある。
アミロイド斑の蓄積はADの病態の特徴である。APPKIマウスは月齢12ヶ月頃にアミロイド斑を蓄積し始める(Saito et al., 2014)。アミロイド蓄積に対するNSN化合物の効果を試験するために、本発明者らは月齢11ヶ月のAPPKIマウスに10mg/kgのNSN化合物を注射した。i.p.注射を1週間に3回、8週間実施し、マウスを月齢13ヶ月で屠殺した。発表された知見(Saito et al., 2014)と一致して、免疫染色によりAPPKIマウスの皮質におけるアミロイド斑の蓄積が明らかとなった(図7C)。斑はNSN化合物を注射したマウス群では低減した(図7C)。斑負荷の定量により、NSN処置マウスで全体の斑面積および斑強度の有意な低減が明らかとなった(図7D〜E)。
PS1KIマウスの行動表現型は非常に微細である(Wang et al., 2004およびSun et al., 2005)。APPKIマウスは月齢18ヶ月でのY迷路アッセイでわずかな減弱しか示さないと報告されている(Saito et al., 2014]。しかし、注射のためにマウスを取り扱っている間に、本発明者らは、4週間の注射の後、APPKIGFPマウスの対照群を除いて、すべてのマウスが痛い注射の前に恐怖記憶関連の不安行動を示し始めることに気づいた。このマウス群の記憶機能を正式に試験するために、本発明者らは一連の文脈的恐怖条件づけ実験を実施した。本発明者らは実際に、月齢6.5ヶ月のAPPKIGFPマウスは、月齢をマッチさせたWTGFPマウスと比べると、文脈的恐怖条件づけ反応において有意な減弱を有することを見出した(図7F)。APPKIGFPマウスの恐怖条件づけ表現型は、NSN化合物のi.p.注射によって完全に救済された(図7F)。WTGFPマウスでは、NSN化合物の注射はいくらか弱められた反応をもたらしたが、対照群との差は統計学的有意には達していない(図7F)。文脈的恐怖条件づけに加えて、本発明者らは手がかり試験実験も実施した。文脈的恐怖条件づけ試験と類似の行動パターンが、4つのマウス群すべてで観察されたが、各群内のデータの変動性が大きかったため、群間の差は有意レベルに達しなかった(データは示していない)。
実施例3−考察
TRPC6およびOrai2は海馬マッシュルーム型スパインにおいてSTIM2調節性nSOCチャネルを形成する。以前の試験で、本発明者らは、マッシュルーム型スパインにおけるSTIM2媒介性nSOCがこれらのスパインの安定性に重要であることを示した(Sun et al., 2014)。本発明者らは、nSOC媒介性Ca2+流入がシナプスCaMKIIの構成的活性化を引き起こし、これはマッシュルーム型スパインの安定性に必須であるとさらに結論付けた(Sun et al., 2014)。重要なことに、本発明者らは、STIM2-nSOC-CaMKII経路がPS1KIニューロン、APPKIニューロン、加齢ニューロン、および散発性AD脳では、STIM2タンパク質のダウンレギュレーションにより損なわれることを示した(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)。本試験において、本発明者らは、海馬スパインにおけるSTIM2依存性nSOCチャネルの分子アイデンティティを決定した。候補アプローチで開始して、本発明者らは、STIM2依存性nSOCの重要な構成要素としてTRPC6チャネルおよびOrai2チャネルを特定した。本発明者らは、TRPC6およびOrai2が海馬に多く存在し(図8〜9)、STIM2と、および互いに生化学的に関連している(図1A〜E)ことを示した。さらに、TRPC6またはOrai2のRNAi媒介性ノックダウンはシナプスnSOCを抑制し、海馬ニューロンにおけるマッシュルーム型スパインの減少を引き起こした(図2A〜J)。これらの結果は、TRPC6/Orai2がマッシュルーム型シナプススパインにおいて機能的複合体を形成するとの仮説と一致している(図7G)。以前に発表された報告は、nSOCの支持におけるTRPC6およびOrai2チャネルの役割の可能性を支持している。ニューロン発現パターンに基づき、Orai2はnSOCの支持において重要な役割を果たし得ることが以前に推論されている(Hoth et al., 2013およびMajewski et al., 2015)が、この主張を支持する直接の実験的証拠は、これらの結果までは得られていなかった。TRPC6は以前、スパインの形態および神経突起成長にとって重大であると示唆されている(Zhou et al., 2008およびHeiser et al., 2013)。TRPC6トランスジェニックマウスはスパインの形成の増強、ならびにモリス水迷路における空間学習および記憶の増強を示した(Zhou et al., 2008)。いくつかの試験でTRPC6はSOCに関係があるとされているが、このチャネルは主に、ジアシルグリセロール(DAG)によって直接活性化されうる、受容体作動性チャネル(ROC)であると考えられている(Sun et al., 2014およびCheng et al., 2013)。これらの実験において、本発明者らは、強力なスパインnSOCの測定はCa2+の再添加前に100μM DHPGの適用を必要とすることを見出した。興味深いことに、DHPGの効果は合成DAG類縁体のOAGによって模倣されず、OAGの海馬ニューロン培養物への直接適用はほんの少数のスパインでCa2+応答を誘導した(データは示していない)。これらの結果から、本発明者らは、スパインにおけるTRPC6チャネルの活性化は局所Ca2+ストアの枯渇を必要とし、DAGだけでは達成できないと結論付けた。STIM2-LASS変異体による実験に基づいて、同様の結論が得られる。Orai2と相互作用することができない、この変異体の発現は、野生型ニューロンのスパインnSOCに対してドミナントネガティブ効果を発揮した(図3A〜B)。ニューロンシナプスの活性中、スパインにおけるmGluR受容体の活性化は、PLCの活性化、PIP2の分解、DAGおよびInsP3の生成ならびにスパインのERストアからのInsP3R1媒介性Ca2+放出に結びついている。これらの結果は、スパインにおけるTRPC6/Orai2チャネル複合体の活性化は、主に局所ER Ca2+ストア枯渇の結果として起こり、STIM2によって媒介されることを示唆している(図7G)。DAGの局所生成も、スパインにおけるTRPC6/Orai2チャネルの活性化に寄与し得るが、これらの結果に基づき、ストア枯渇なしでは、それらを活性化するのに十分ではない。得られた結果に基づき、本発明者らは、TRPC6チャネルはスパインにおけるCa2+流入を媒介し、Orai2はSTIM2との直接相互作用によってER Ca2+感受性を与えると結論付けた(図7G)。したがって、TRPC6およびOrai2はいずれも、シナプススパインにおけるnSOCのストア枯渇媒介性活性化に必須である。以前に、非興奮性細胞におけるSTIM1-TRPC3/6-Orai1複合体について、類似のモデルが提唱されている(Liao et al., 2007およびJardin et al., 2009)。
TRPC6/Orai2 nSOCチャネル複合体はADの新規治療標的である。これらの結果は、スパインにおけるSTIM2依存性TRPC6/Orai2 nSOCチャネルがADおよび加齢性記憶喪失の有望な治療標的であることをさらに示す。以前の試験で、本発明者らは、STIM2過剰発現が家族性ADのPS1KIおよびAPPKIマウスモデルにおいてnSOCおよびマッシュルーム型スパイン欠損を救済することを示した(Sun et al., 2014およびZhang et al., 2015)。本明細書において、本発明者らは、TRPC6の過剰発現もPS1KIおよびAPPKIマウスモデルにおいてnSOCおよびマッシュルーム型スパイン欠損を救済することを示した(図3A〜B)。さらに、本発明者らは、公知のTRPC6活性化剤であるハイパーフォリンおよび新規のnSOC活性化剤であるNSN21778もPS1KIおよびAPPKIマウスモデルにおいてnSOCおよびマッシュルーム型スパイン欠損を救済することを示した(図4A〜D)。以前の試験で、ハイパーフォリンおよびその誘導体は、AβPPSwe/PSEN1ΔE9(AβPP/PS1)トランスジェニックマウスにおいてベータアミロイド神経毒性および空間記憶障害を防止しうることが明らかにされている(Inestrosa et al., 2011;Cerpa et al., 2010およびDinamarca et al., 2006)。これらの実験におけるハイパーフォリンの作用のメカニズムは明らかにされなかった。ハイパーフォリンはこれらの実験におけるその有益な効果を、アセチルコリンエステラーゼ活性に影響をおよぼし、Aβ沈着物を低減し、ミトコンドリア機能および神経形成を促進することにより発揮すると示唆されている(Zolezzi et al., 2013;Carvajal et al., 2013;Abbott et al., 2013;Inestrosa et al., 2011;Cerpa et al., 2010およびDinamarca et al., 2006)。しかし、最近の試験において、ハイパーフォリン誘導体のテトラヒドロハイパーフォリン(IDN5706)はニューロンのTRPC3/6/7チャネルを活性化することによりAβ誘導性シナプス可塑性欠損を救済することが示唆されている(Montecinos-Oliva et al., 2014)。同様に、ハイパーフォリンは、TRPC6チャネルの活性化を通じて、海馬切片培養物における樹状突起スパインの形態を調節しうることも最近報告された(Leuner et al., 2013)。本発明者らのハイパーフォリンによる結果(図4A〜D)は、ハイパーフォリンおよびその誘導体が、マッシュルーム型シナプススパインにおけるTRPC6媒介性nSOCを刺激することにより、ADモデルにおいて有益な効果を発揮するとの結論と一致している。
本発明者らは、スパイン救済アッセイにおいてTRPC6またはOrai2いずれかのノックダウンがハイパーフォリンおよびNSN化合物を無効にするため、これらの化合物はいずれも、Trpc6/Orai2チャネル複合体に作用することを確かめた(図5A〜E)。しかし、これら2つの化合物の作用機序は異なる。ハイパーフォリンは標準の記録条件下でHEK293細胞において発現されるTRPC6チャネルを直接活性化することができた(図5A〜E)。これに対して、NSN化合物はこれらの実験では効果がなかったが、部分的に枯渇した細胞内ストアの条件下で、TRPC6チャネルを通じてOAG誘導性Ca2+流入を促進することができた(図5A〜E)。これらの結果は、ハイパーフォリンはTRPC6の直接活性化剤として作用するが、NSN化合物はTRPC6の正のモジュレーターとして作用すると示唆した(図5A〜Eおよび図7G)。NSN化合物の正確な作用機序はさらなる調査を必要とするであろうが、この化合物が生理的条件下で内因性のスパインnSOCチャネルの正のモジュレーターとして作用する能力は、ADにおける治療的適用のためのさらなる利益を提供するであろう。実際に、初代海馬培養物実験において、本発明者らは、10μMハイパーフォリンによる処理後に、非常に大きいCa2+上昇および毒性を観察し、nSOC経路の過度の活性化が示唆された。本発明者らはまた、300nMハイパーフォリンで終夜処理した海馬培養物のいくつかのバッチで、神経毒性も観察した(データは示していない)。これに対して、本発明者らは、10μMのNSN化合物による短期間実験、または300nMのNSN化合物との終夜インキュベーション後に、いかなる毒性も観察しなかった。これらの結果は、NSN化合物は、ハイパーフォリンおよびその誘導体などのTRPC6の直接活性化剤よりも、広い治療域を有し得ることを示唆している。本発明者らは、その実験において、NSN化合物がPS1KIおよびAPPKIマウスモデルからの海馬培養物および切片においてマッシュルーム型スパインの減少を救済し得(図4D〜Eおよび6A〜B)、APPKIマウスにおいて海馬LTP欠損を救済し得る(図6C〜E)ことを示した。さらに、NSN化合物は、PS1KIおよびAPPKIマウスで、i.p.注射により送達すると、マッシュルーム型スパインの減少を救済した(図7A〜B)。NSN化合物はまた、老化APPKIマウスにおいて、i.p.注射により送達すると、アミロイド負荷も低減した(図7C〜E)。nSOCはAβ産生の負の調節因子として作用することが報告されており(Zeiger et al., 2013)、これはNSN化合物がAPPKIマウスでアミロイド負荷を低減する能力を説明するものであろう。重要なことに、本発明者らは、NSN化合物のi.p.注射が、文脈的恐怖条件づけ試験においてAPPKIマウスの記憶欠損を救済し得ることを示した(図7F)。得られた結果(図4A〜7G)に基づき、本発明者らは、NSN21778は脳の老化およびADにおける治療的介入のための有望な候補分子であると結論付けた。
本明細書において開示し、特許請求する組成物および方法はすべて、本開示に照らせば、過度の実験を行うことなく作製し、実施することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様に関して記載してきたが、当業者には、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法ならびに方法の段階または段階の順序に変化を適用しうることは明らかであろう。より具体的には、化学的および生理的の両方で関連する特定の物質を本明細書に記載の物質の代わりに用い、同時に同じまたは類似の結果を達成し得ることは明らかであろう。当業者には明らかなすべてのそのような類似の代替物および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される、本開示の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
VI. 参照文献
以下の参照文献は、それらが本明細書に示すものを補う例示的手順または他の詳細を提供する程度に、具体的に参照により本明細書に組み入れられる。
Figure 2018515507
Figure 2018515507
Figure 2018515507
Figure 2018515507

Claims (33)

  1. アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象に以下の式によってさらに定義される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与する段階を含む、方法:
    Figure 2018515507
    式中、
    各R1はアミノ、シアノ、カルボキシル、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、シクロアルキルアミノ(C≦8)、ジシクロアルキルアミノ(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;
    xは1、2、3、4、または5であり;
    R2は水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)であり;
    nは1、2、3、4、または5であり;
    各R3はアミノ、カルボキシル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキル(C≦8)、シクロアルキル(C≦8)、アルケニル(C≦8)、アルキニル(C≦8)、アシル(C≦8)、アミド(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;かつ
    yは1、2、3、4、または5である。
  2. 化合物が、以下:
    Figure 2018515507
    またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
    式中、R1、x、R2、n、およびR3は上で定義したとおりである、請求項1記載の方法。
  3. 化合物が、以下:
    Figure 2018515507
    またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
    式中、R1、x、n、およびR3は上で定義したとおりである、請求項1または請求項2記載の方法。
  4. 化合物が、以下:
    Figure 2018515507
    またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義され、
    式中、R1、n、およびR3は上で定義したとおりである、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. R1がニトロである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
  6. R1がアミノ、アルキルアミノ(C≦8)、置換アルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、または置換ジアルキルアミノ(C≦8)である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
  7. nが2または3である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
  8. nが2である、請求項7記載の方法。
  9. R3がハロである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  10. R3がクロロである、請求項9記載の方法。
  11. R3がアミド(C≦8)または置換アミド(C≦8)である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  12. R3が-NHC(O)CH3である、請求項11記載の方法。
  13. 化合物が、以下:
    Figure 2018515507
    またはその薬学的に許容される塩としてさらに定義される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  14. アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にアゴニストまたはTRPC6もしくはOrai2を投与する段階を含み、該アゴニストがハイパーフォリンでもハイパーフォリン誘導体でもない、方法。
  15. アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にnSOC経路のアゴニストを投与する段階を含み、該アゴニストがハイパーフォリンでもハイパーフォリン誘導体でもハイパーフォリン類縁体でもない、方法。
  16. アルツハイマー病を有する哺乳動物対象を処置する方法であって、該対象にジアシルグリセロール(DAG)誘導性TRPC6活性化の増強剤を投与する段階を含む、方法。
  17. 前記対象を、少なくとも1つの第二のアルツハイマー病療法でさらに処置する、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  18. 第二のアルツハイマー病療法が、コリンエステラーゼ阻害剤、ムスカリンアゴニスト、抗酸化剤、抗炎症剤、ガランタミン(レミニール)、タクリン(コグネックス(Cognex))、セレギリン、フィゾスチグミン、レビスチグミン(revistigmin)、ドネペジル、(アリセプト)、リバスチグミン(イクセロン)、メトリホナート、ミラメリン、キサノメリン、サエルゾール(saeluzole)、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、ENA-713、メムリック(memric)、クエチアピン、ニューレストロール(neurestrol)またはニューロミダール(neuromidal)である、請求項17記載の方法。
  19. 処置が、記憶、認知もしくは学習の改善、症状もしくは病態生理の進行の遅延、生活の質の改善、または寿命の延長のうちの1つまたは複数を含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  20. 前記化合物またはアゴニストを、経口で、または静脈内、皮内、 動脈内、腹腔内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、筋肉内、もしくは皮下を含む注射により投与する、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  21. 前記化合物またはアゴニストを、1日に1、2、3または4回投与する、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  22. 前記化合物またはアゴニストを、慢性的に投与する、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  23. 前記化合物またはアゴニストの投与の前および/または後に前記対象の認知または記憶を測定する段階をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  24. 前記哺乳動物対象がヒトである、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  25. 前記ヒトが早発性アルツハイマー病を患っている、請求項24記載の方法。
  26. 前記ヒトが晩発性アルツハイマー病を患っている、請求項24記載の方法。
  27. 前記哺乳動物対象が非ヒト動物対象である、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
  28. 薬学的緩衝液、希釈剤または賦形剤中で製剤化された、以下の式:
    Figure 2018515507
    の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物:
    式中、
    各R1はアミノ、シアノ、カルボキシル、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキルアミノ(C≦8)、ジアルキルアミノ(C≦8)、シクロアルキルアミノ(C≦8)、ジシクロアルキルアミノ(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;
    xは1、2、3、4、または5であり;
    R2は水素、アルキル(C≦8)、または置換アルキル(C≦8)であり;
    nは1、2、3、4、または5であり;
    各R3はアミノ、カルボキシル、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、もしくはニトロ;またはアルキル(C≦8)、シクロアルキル(C≦8)、アルケニル(C≦8)、アルキニル(C≦8)、アシル(C≦8)、アミド(C≦8)、もしくは任意のこれらの基の置換型から独立に選択され;かつ
    yは1、2、3、4、または5である。
  29. 以下の式:
    Figure 2018515507
    によってさらに定義される化合物またはその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項28記載の薬学的組成物。
  30. 錠剤、カプセル剤、または散剤などの、固体剤形である、請求項28記載の薬学的組成物。
  31. 経口液体剤形である、請求項28記載の薬学的組成物。
  32. 注射用液体剤形である、請求項28記載の薬学的組成物。
  33. 1〜100mg/kgの前記化合物を含む、請求項28記載の薬学的組成物。
JP2017558374A 2015-05-08 2016-05-04 アルツハイマー病の処置のための神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化方法 Pending JP2018515507A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201562159083P 2015-05-08 2015-05-08
US62/159,083 2015-05-08
PCT/US2016/030704 WO2016182812A1 (en) 2015-05-08 2016-05-04 Activation of neuronal store-operated calcium entry pathway for the treatment of alzheimer's disease

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018515507A true JP2018515507A (ja) 2018-06-14
JP2018515507A5 JP2018515507A5 (ja) 2019-06-13

Family

ID=57248333

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017558374A Pending JP2018515507A (ja) 2015-05-08 2016-05-04 アルツハイマー病の処置のための神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20180147206A1 (ja)
JP (1) JP2018515507A (ja)
KR (1) KR20180004242A (ja)
CN (1) CN107835688A (ja)
HK (1) HK1250658A1 (ja)
WO (1) WO2016182812A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110759985B (zh) * 2018-07-27 2021-11-09 中国人民解放军军事科学院军事医学研究院 一种用于微波辐射致神经元钙信号调节的生物标志物Orai2蛋白
RU2676100C1 (ru) * 2018-10-05 2018-12-26 федеральное государственное автономное образовательное учреждение высшего образования "Санкт-Петербургский политехнический университет Петра Великого" (ФГАОУ ВО "СПбПУ") Применение производных пиперазина для лечения болезни Альцгеймера и деменций альцгеймеровского типа с нарушенной внутриклеточной кальциевой сигнализацией

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20120071477A1 (en) * 2009-11-30 2012-03-22 Senex Biotechnology, Inc. Cdki pathway inhibitors and uses thereof
JP2013500255A (ja) * 2009-07-21 2013-01-07 プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ 自食作用の強力な小分子阻害剤、およびそれの使用方法
US20140271668A1 (en) * 2013-03-15 2014-09-18 Georgetown University Increasing parkin activity by administering a deubiquitinating enzyme inhibitor

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2369967A1 (en) * 2001-02-12 2002-08-12 Joseph Anthony Cornicelli Methods of treating nuclear factor-kappa b mediated diseases and disorders

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013500255A (ja) * 2009-07-21 2013-01-07 プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ 自食作用の強力な小分子阻害剤、およびそれの使用方法
US20120071477A1 (en) * 2009-11-30 2012-03-22 Senex Biotechnology, Inc. Cdki pathway inhibitors and uses thereof
US20140271668A1 (en) * 2013-03-15 2014-09-18 Georgetown University Increasing parkin activity by administering a deubiquitinating enzyme inhibitor

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
旭硝子財団 助成研究成果報告, JPN6020008554, 2014, pages 79 - 1, ISSN: 0004227259 *

Also Published As

Publication number Publication date
CN107835688A (zh) 2018-03-23
WO2016182812A8 (en) 2017-03-09
US20180147206A1 (en) 2018-05-31
HK1250658A1 (zh) 2019-01-11
WO2016182812A1 (en) 2016-11-17
KR20180004242A (ko) 2018-01-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhang et al. Store-operated calcium channel complex in postsynaptic spines: a new therapeutic target for Alzheimer's disease treatment
Zhu et al. Loss of ARHGEF6 causes hair cell stereocilia deficits and hearing loss in mice
JP2003510023A (ja) アミロイドβタンパク質(球状アセンブリー及びその使用)
US20200375948A1 (en) (3ar)-1,3a,8-trimethyl-1 ,2,3,3a,8,8a-hexahydropyrrolo[2,3-b]indol-5-yl phenylcarbamate and methods of treating or preventing neurodegeneration
JP6267160B2 (ja) アルツハイマー病等を含む神経疾患の1,25d3−marrsが関与する治療薬及び治療法
Kar et al. Cellular distribution of insulin-like growth factor-II/mannose-6-phosphate receptor in normal human brain and its alteration in Alzheimer's disease pathology
JP2018515507A (ja) アルツハイマー病の処置のための神経細胞ストア作動性カルシウム流入経路の活性化方法
US10149836B2 (en) Isoxazole treatments for frontotemporal dementia
AU2017353446B2 (en) Inhibitors of gangliosides metabolism for the treatment of motor neuron diseases
Egorova et al. Chronic suppression of STIM1-mediated calcium signaling in Purkinje cells rescues the cerebellar pathology in spinocerebellar ataxia type 2
CA3113497A1 (en) Combination of acetylcholinesterase inhibitor and 5-ht4 receptor agonist as neuroprotective agent in the treatment of neurodegenerative diseases
US20210330744A1 (en) Methods and Compositions for Treating Neurodegeneration and Fibrosis
WO2013098588A1 (en) Use of calcilytic drugs as a pharmacological approach to the treatment and prevention of alzheimer's disease, alzheimer's disease-related disorders, and down's syndrome neuropathies
Lorke et al. α7-nicotinic acetylcholine receptors and β-amyloid peptides in Alzheimer’s disease
JP2000511901A (ja) 被験動物において長期記憶を増強するための方法、およびその使用
US20090221610A1 (en) Compositions and Methods for Treating Cognitive Disorders
Scapagnini et al. Regulation of Ca2+ stores in glial cells
Pradhan Activation of translocator protein by XBD173 ameliorates cognitive deficits and neuropathology in an Alzheimer’s mouse model
Gulisano A renewed vision for Amyloid beta and tau in Alzheimer s disease pathophysiology
Lawrence N-terminal beta amyloid fragments regulate nicotinic acetylcholine receptors
Uras Evaluation of AChE inhibitors and dual AChE/GSK3-β inhibitor as Alzheimer’s disease treatment
Erdengiz Investigation of Alpha-Synuclein Induced Disruption of Calcium Homeostasis in Synucleinopathies
Wang Selective neurodegeneration in Alzheimer's disease and Parkinson's disease
Stutzbach et al. P3‐016: ER stress in Alzheimer’s disease and PSP: Common disease mechanism?
Wülfert 2 Treatment Development Strategies for Alzheimer’s Disease

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190426

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200305

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20201012