JP2018505222A - 難聴の予防又は治療方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、対象における難聴を予防又は治療する方法と、有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法とに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、難聴を予防又は治療する方法と、対象の有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法に関する。
難聴は有毛細胞の損傷、例えばストレスが続く状況もしくは例えば炎症経路の活性化につながる外傷性事象の結果としての有毛細胞のアポトーシスに関連している。難聴は、例えば、騒音外傷、医療介入、虚血傷害、突発性難聴につながる不特定のストレス、又は年齢によって引き起こされ得、又は化学的に誘発され得、化学的誘発は例えば抗生物質又は化学療法剤によって引き起こされる。小児難聴は、神経細胞のエネルギー恒常性における出生前又は出生後欠陥によって引き起こされるかもしれない。難聴はまたミトコンドリア機能不全によって引き起こされうる。(C. M. Sue PhD, FRACP1, Cochlear origin of hearing loss in MELAS syndrome, Annals of Neurology. Volume 43, Issue 3, pages 350-359, March 1998)。また、メタボリックシンドロームと難聴との関連が示されている(Barrenas ML, Jonsson B, Tuvemo T, Hellstrom PA, Lundgren M, J Clin Endocrinol Metab. 2005 Aug;90(8):4452-6. Epub 2005 May 31)。難聴は、初期の脳の発達における細胞の栄養不良につながる損傷によって引き起こされる感音神経由来のものでありうる。
有毛細胞は完全に分化しており、細胞死後には交換されない(生後、数千細胞のみ)。有毛細胞のストレス及び損傷の後、細胞は、聴覚プロセスに関連する機能を伴わない休止状態になりうるが、休止状態で生存したままであることが文献に十分に記載されている。疾患修飾を達成するために例えば増殖因子の投与又は幹細胞に基づく治療による新しい有毛細胞の発生又は再生を刺激するアプローチには、腫瘍形成を促進する副作用のリスクがある。
聴覚障害は、世界中で2億7500万人を超える人々に及ぼす深刻な社会的及び経済的影響を伴う重大な世界的な健康問題である。難聴の発症は、例えば増加する騒音曝露及び老齢人口のため、急速に上昇している。今日利用可能な承認された薬学的治療法はないので、満たされていない医療ニーズは非常に高い。特に、予防及び/又は治療効果の即時かつ長期間の維持を可能にする難聴の予防とその後の治療のための効果的な方法を提供する必要性がある。
本発明は、一般に、PPARアゴニストを使用して、難聴を予防又は治療する方法及び有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法に関する。本発明は、ストレス、例えば騒音によって誘発されたストレス、又は抗生物質や化学療法剤によって誘発されたストレスのような化学的に誘発されたストレス、又は難聴を引き起こす可能性のある不特定のストレスから有毛細胞を保護することを可能にする方法を提供する。ここに記載の方法を使用して、予防及び/又は治療効果の即時及びその後の長期間の維持を達成することができる。難聴研究において確立された標準モデルでは、PPARアゴニストによる治療が、抗生物質への曝露時に通常は48時間以内に破壊される有毛細胞を保護することが示されうる。抗生物質暴露の前にPPARアゴニストを添加すると、有毛細胞のアポトーシス及び細胞死を用量依存的に防止することができた。理論に限定されないが、難聴の予防又は治療及び/又は有毛細胞変性又は有毛細胞死の予防又は抑制は、次の経路の相互作用の一又は複数あるいは組み合わせによって達成されると思われる:酸化的ストレスの低減及び/又はJNKリン酸化の防止を介したMAPK経路の下方制御及び/又はIRS1経路、AKT経路、GLUT4経路もしくはGSK3経路を介したインスリン感受性の回復、及び/又はリボソーム機能性の回復、及び/又はミトコンドリア量又は機能性の改善。
第一の態様では、本発明は、対象の難聴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストに関する。
更なる態様では、本発明は、対象の有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するためのPPARアゴニストに関する。
更に別の態様では、本発明は、対象の難聴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む薬学的組成物に関する。
更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストを含む、対象の難聴を予防又は治療するか、又は有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するためのキットに関する。
図1A〜Cは、コルチ器(OC)の頂回転、基底回転及び中回転に残っている有毛細胞の平均数の定量化を示す。ゲンタマイシン(200μM)処置は各セグメントにおいておよそ50〜70%の一貫した有毛細胞数減少をもたらしたが、ピオグリタゾンは、両濃度(2μM及び10μM)において全回転においてゲンタマイシン依存性の有毛細胞減少を有意に防止することができた。各回転に対する値を、各条件に対して使用した10のOCに対して平均した。OHCとIHC(OHC=外有毛細胞;IHC=内有毛細胞)における処置群間の有意差を、分散分析(ANOVA)とそれに続く最小有意差(LSD)事後検定(Stat View5.0)を使用して決定した。0.05未満のP値を伴う差を、統計的に有意であると考えた。全てのデータは、平均値±SDとして示される。 図2は、騒音暴露の1週間後又は2週間後の聴性脳幹反応(ABR)によって決定されたモルモットにおける平均聴力閾値の処置前値に対する変化を示す。騒音暴露前の値から騒音暴露後の値を差し引くことによって、個々の周波数における閾値変動を各動物について計算した。各周波数での群平均を決定した。個々の周波数変動を8〜20KHzにわたって平均することによって、各処置群及び時点について全閾値変動を計算した。データは平均値±SDである。p<0.05。 図3A〜Cは、コルチ器(OC)の内側基底回転における定まったセグメントに残っている有毛細胞の平均数の定量化を示す。ゲンタマイシン(50μM)処置はおよそ50%の一貫した有毛細胞数減少をもたらしたが、テサグリタザル、ムラグリタザル及びフェノフィブリン酸は全てゲンタマイシン依存性の有毛細胞消失を有意に防止することができた。値は各条件で使用した5〜7のOCに対して平均した。有毛細胞数における処置群間の有意差は、分散分析(ANOVA)とそれに続く最小有意差(LSD)事後検定(Stat View5.0)を使用して決定した。0.05未満のP値を伴う差を、統計的に有意であると考えた。全てのデータは、平均値±SDとして示される。****=p≦0.001。
本発明は、難聴を予防又は治療する方法と、有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法とを提供する。
この明細書の解釈を目的として、次の定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、その逆もしかりである。ここで使用される用語は、特定の実施態様だけを説明する目的のものであり、限定を意図していないことが理解されなければならない。「含む(comprising)」、「有する(having)」及び「含む(including)」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)とみなされるべきである。
ここで使用される「PPARアゴニスト」という用語は、PPARガンマ受容体、PPARアルファ受容体、PPARデルタ受容体又はそれらの組み合わせなどのペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)を活性化する薬剤を指し、PPARガンマアゴニスト、例えばピオグリタゾン、トログリタゾン又はロシグリタゾン、PPARアルファアゴニスト、例えばフェノフィブラート(フェノフィブリン酸)、クロフィブラート又はゲムフィブロジルなどのフィブラート、PPARデュアルアゴニスト(PPARアルファ/ガンマ又はPPARアルファ/デルタアゴニスト)、例えばアレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505又はナベグリタザル、PPARデルタアゴニスト、例えばGW501516、PPARパンアゴニスト(PPARアルファ/デルタ/ガンマアゴニスト)又は選択的PPAR修飾薬、例えばINT131及びこれらの化合物の塩を含む。通常、PPARガンマアゴニスト、PPAR修飾薬、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニストが本発明の方法において使用され、特にPPARガンマアゴニスト、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニストが本発明の方法において使用され、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、好ましくはピオグリタゾンからなる群から選択されるより特定のPPARガンマアゴニスト、フェノフィブラート(フェノフィブリン酸)、クロフィブラート及びゲムフィブロジル、好ましくはフェノフィブラート(フェノフィブリン酸)からなる群より選択されるPPARアルファアゴニスト及び/又はアレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505及びナベグリタザル、好ましくはムラグリタザル又はテサグリタザルから選択されるPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニストである。好ましくは、PPARガンマアゴニストが本発明の方法において使用され、より好ましくはピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、INT131からなる群から選択されるPPARガンマアゴニスト又は修飾薬、更により好ましくは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾンからなる群から選択されるPPARガンマアゴニストが使用される。最も好ましくは、ピオグリタゾン又はその塩、例えば塩酸ピオグリタゾンが使用される。ピオグリタゾンは、例えば米国特許第4687777号又はDormandy JA, Charbonnel B, Eckland DJ, Erdmann E, Massi-Benedetti M, Moules IK, Skene AM, Tan MH, Lefebvre PJ, Murray GD, Standl E, Wilcox RG, Wilhelmsen L, Betteridge J, Birkeland K, Golay A, Heine RJ, Koranyi L, Laakso M, Mokan M, Norkus A, Pirags V, Podar T, Scheen A, Scherbaum W, Schernthaner G, Schmitz O, Skrha J, Smith U, Taton J; PROactive investigators. Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89に記載されており、以下に示され構造式によって表される:
Figure 2018505222
トログリタゾンは、例えばFlorez JC, Jablonski KA, Sun MW, Bayley N, Kahn SE, Shamoon H, Hamman RF, Knowler WC, Nathan DM, Altshuler D; Diabetes Prevention Program Research Group. J Clin Endocrinol Metab. 2007 Apr;92(4):1502-9に記載され、以下に示す構造式によって表される:
Figure 2018505222
ロシグリタゾンは、例えばNissen SE, Wolski K. N Engl J Med. 2007 Jun 14;356(24):2457-71. Erratum: N Engl J Med. 2007 Jul 5;357(1):100に記載されている。フェノフィブラートは、例えばBonds DE, Craven TE, Buse J, Crouse JR, Cuddihy R, Elam M, Ginsberg HN, Kirchner K, Marcovina S, Mychaleckyj JC, O'Connor PJ, Sperl-Hillen JA. Diabetologia. 2012 Jun;55(6):1641-50に記載され、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
クロフィブラートは、例えばRabkin SW, Hayden M, Frohlich J. Atherosclerosis. 1988 Oct;73(2-3):233-40に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
フェノフィブラート(フェノフィブリン酸)は、例えばSchima SM, Maciejewski SR, Hilleman DE, Williams MA, Mohiuddin SM. Expert Opin Pharmacother. 2010 Apr;11(5):731-8に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
ゲムフィブロジルは、例えばAdabag AS, Mithani S, Al Aloul B, Collins D, Bertog S, Bloomfield HE; Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial Study Group. Am Heart J. 2009 May;157(5):913-8に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
アレグリタザルは、例えばLincoff AM, Tardif JC, Schwartz GG, Nicholls SJ, Ryden L, Neal B, Malmberg K, Wedel H, Buse JB, Henry RR, Weichert A, Cannata R, Svensson A, Volz D, Grobbee DE; AleCardio Investigators. JAMA. 2014 Apr 16;311(15):1515-25に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
ムラグリタザルは、例えばFernandez M, Gastaldelli A, Triplitt C, Hardies J, Casolaro A, Petz R, Tantiwong P, Musi N, Cersosimo E, Ferrannini E, DeFronzo RA. Diabetes Obes Metab. 2011 Oct;13(10):893-902に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
テサグリタザルは、例えばBays H, McElhattan J, Bryzinski BS; GALLANT 6 Study Group. Diab Vasc Dis Res. 2007 Sep;4(3):181-93に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
ラガグリタザルは、例えばSaad MF, Greco S, Osei K, Lewin AJ, Edwards C, Nunez M, Reinhardt RR; Ragaglitazar Dose-Ranging Study Group. Diabetes Care. 2004 Jun;27(6):1324-9に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
サログリタザルは、例えばAgrawal R. Curr Drug Targets. 2014 Feb;15(2):151-5に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
ナベグリタザルは、例えばAhlawat P, Srinivas NR. Eur J Drug Metab Pharmacokinet. 2008 Jul-Sep;33(3):187-90に記載されている。GW501516は、例えばWang X, Sng MK, Foo S, Chong HC, Lee WL, Tang MB, Ng KW, Luo B, Choong C, Wong MT, Tong BM, Chiba S, Loo SC, Zhu P, Tan NS. J Control Release. 2015 Jan 10;197:138-47に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
GFT505は、例えばCariou B, Staels B. Expert Opin Investig Drugs. 2014 Oct;23(10):1441-8に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
INT131は、例えばTaygerly JP, McGee LR, Rubenstein SM, Houze JB, Cushing TD, Li Y, Motani A, Chen JL, Frankmoelle W, Ye G, Learned MR, Jaen J, Miao S, Timmermans PB, Thoolen M, Kearney P, Flygare J, Beckmann H, Weiszmann J, Lindstrom M, Walker N, Liu J, Biermann D, Wang Z, Hagiwara A, Iida T, Aramaki H, Kitao Y, Shinkai H, Furukawa N, Nishiu J, Nakamura M. Bioorg Med Chem. 2013 Feb 15;21(4):979-92に記載されており、以下に示される構造式によって表される:
Figure 2018505222
PPARアゴニストによるPPAR活性化は、通常、低ナノモル範囲から低マイクロモル範囲、例えば0.1nM〜100μMの範囲において強い。幾つかの実施態様では、PPAR活性化は弱いか又は部分的である。すなわち、最大のPPAR活性化を引き起こすことが知られている参照PPARアゴニストと比較して10%〜100%のレポーターアッセイ系におけるPPAR受容体の最大活性化を生じるPPARアゴニストが本発明の方法において使用される。PPARアゴニストの相互作用の好ましい標的は、有毛細胞(これが最も好ましい)、神経細胞、及び内皮細胞であり、更に脂肪細胞、肝細胞、免疫細胞、例えばマクロファージ又は樹状細胞、又は骨格筋細胞を含む。
「聴覚障害(hearing impairment)」という用語とここで互換的に使用される「難聴(hearing loss)」という用語は、対象による通常聞こえる音に対する感度の低下を意味する。難聴の重症度は、聴取者がそれに気付くことができる前に必要な通常のレベルを超える音量の増加に応じて分類される。ここで使用される「難聴」という用語は、「突発性感音性難聴(SSHL)」としても文献に示されている突発性難聴(SHL)を含む。SHLは、明らかな原因がなく、通常はめまいを伴い、前庭症候がない、殆どは一方の耳における突然の急速な感音性難聴を特徴とする病気を指す。SHLは、少なくとも3つの隣接周波数にわたり、72時間以下の期間にわたって生じる30dB超の聴力低下として定義される。SHLは、例えば不特定のストレスによって引き起こされうる。
ここでいう難聴とは、他の人々が聞くような音を聞く能力の低下として定義される。これは、伝音性難聴、感音性難聴又は双方の組み合わせによって引き起こされうる。
伝音性難聴は、振動が外耳から内耳、特に蝸牛を通過しないことを意味する。これは、耳垢の過剰な蓄積、中耳炎、炎症及び水分蓄積を伴う耳感染、鼓膜の破れ、又は耳小骨(中耳の骨)の機能障害に起因しうる。また、鼓膜に欠陥がある場合がある。感音性難聴は、内耳、蝸牛、聴神経の機能障害、又は脳損傷によって引き起こされる。通常、この種の難聴は、蝸牛における有毛細胞の損傷によるものである。
ここで言及される難聴は、通常、感音性難聴又は伝音性難聴と感音性難聴の組み合わせである。感音性難聴は、年齢、騒音又は化学物質への急性の又は絶えず続く暴露、突発性難聴を招く可能性のある頭部外傷又は不特定のストレスに関連している場合がある。
ここで使用される「有毛細胞変性」という用語は、有毛細胞機能及び完全性の徐々の喪失及び/又は最終的に有毛細胞死に至ることを意味する。
ここで使用される「有毛細胞死」という用語は、内耳における有毛細胞のアポトーシスを意味する。
ここで交換可能に使用される「有毛細胞損傷の同定」又は「有毛細胞損傷の検出」という用語は、内耳における有毛細胞損傷の程度を判定することができる方法を指す。このような方法は、当該技術分野で知られており、例えば、実施例に記載したような、有毛細胞の蛍光イメージングを含む。中程度の周波数から高周波数までの聴覚感度の喪失を示すオージオグラムもまた有毛細胞損傷を示す。その後の回復のない聴覚電位の低下もまた有毛細胞損傷の診断に役立つ。
ここで言う「化学的に誘発された難聴」又は「化学物質によって誘発された難聴」という用語は、耳毒性である溶媒、ガス、塗料、重金属及び/又は医薬などの化学物質によって誘発され、及び/又は引き起こされる難聴を意味する。
ここで言う音圧(sound pressure)レベル(SPL)又は音圧(acoustic pressure)レベルという用語は、参照値に対する音の実効音圧の対数尺度である。
標準参照レベルを上回る、Lと示されdBで測定される音圧レベルは、
Figure 2018505222
によって与えられ、ここで、prmsはPaで測定された二乗平均平方根音圧であり、pはPaで測定された参照音圧である。空気中での一般的に使用される参照音圧は、p0=20μPa(二乗平均平方根)又は0.0002ダイン/cmであり、これは、通常、ヒトの聴力閾値と考えられている。
ここで使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、妥当なリスク対効果比に見合った過度の有害な副作用(例えば毒性、刺激、及びアレルギー反応)がない、ヒト及び/又は動物での使用に適した担体又は賦形剤又は希釈剤を指す。それは、本化合物を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤又はビヒクルでありうる。
「個体」、「対象」又は「患者」という用語はここでは交換可能に使用される。所定の実施態様では、対象は哺乳動物である。哺乳動物には、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)が含まれるが、これに限定されない。好ましい実施態様では、対象はヒトである。
ここで使用される「約」という用語は、与えられた測定値の+/−5%を意味する。
一態様では、本発明は、対象における難聴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。本発明の更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストを対象に投与することを含む、対象における難聴を予防又は治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象における難聴を予防又は治療するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、対象における難聴を予防又は治療するための医薬の製造のためのPPARアゴニストの使用を提供する。
幾つかの好ましい実施態様では、本発明の方法によって防止又は治療される難聴は、騒音外傷、医療介入、虚血傷害、年齢によって引き起こされ又は化学的に誘発される。よって、難聴は、医療介入、例えば蝸牛移植の結果でありうる。化学的誘発は、通常、化学物質、例えば抗生物質又は化学療法剤によって引き起こされる。幾つかの好ましい実施態様では、難聴は突発性難聴である。年齢によって引き起こされる難聴は、例えば、老人性難聴を含む。好ましくは、騒音外傷、蝸牛移植によって引き起こされ、又は化学的に、好ましくは抗生物質によって誘発される難聴が、本発明の方法によって予防又は治療される。より好ましくは、騒音外傷によって引き起こされ、又は化学的に、好ましくは抗生物質によって誘発される難聴が、本発明の方法によって予防又は治療される。幾つかの実施態様では、難聴は、初期の脳の発達における細胞の栄養失調に至る損傷によって引き起こされる感音性由来のものである。この場合、PPARアゴニストによる早期治療は、更なる損傷を防止する疾患修飾でありうる。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が難聴、有毛細胞変性、有毛細胞死及び/又は有毛細胞損傷によって特徴付けられる状態を発症する前、又はこれらを発症する危険性がある前に投与される。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が難聴、有毛細胞変性、有毛細胞死及び/又は有毛細胞損傷によって特徴付けられる状態を獲得した後に投与される。
有毛細胞変性及び/又は有毛細胞死に関連し、これらによって引き起こされ又は特徴付けられ、本発明の方法によって予防又は治療されうる更なる疾患、障害又は状態は、例えばメニエール病、急性末梢性前庭神経症及び耳鳴である。
従って、幾つかの実施態様では、本発明は、有毛細胞変性又は有毛細胞死がメニエール病、急性末梢性前庭神経症及び/又は耳鳴に関連し及び/又はそれらによって引き起こされる、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。
幾つかの実施態様では、本発明は、対象におけるメニエール病を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。
幾つかの実施態様では、本発明は、対象における急性末梢性前庭神経症を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。
幾つかの実施態様では、本発明は、対象における耳鳴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。
[騒音外傷又は医療介入によって引き起こされる難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死]
大きな音への暴露は、コルチ器に損傷を与えて騒音性難聴(NIHL)を引き起こす。NIHLによる損傷は、騒音レベルと曝露期間の双方に依存する。修復機構がコルチ器を回復させることができる場合、難聴は一時的(一過性閾値変動,TTS)でありうる。しかし、有毛細胞又は神経細胞が死ぬと、永久的(永久閾値変動,PTS)となる。騒音外傷と相関する構造的修飾には、(1)細胞修復機構によって修復することができ、TTS及び回復を説明するシナプス及び又は有毛細胞不動毛の軽度の損傷と、(2)細胞修復機構によって修復することができず、PTSを説明する有毛細胞及び神経細胞アポトーシスを誘導する重篤な損傷の二つのタイプがある。
ここで言及される騒音外傷とは、コルチ器に損傷を生じさせるのに十分な騒音、特に一過性又は永久的難聴を引き起こす騒音外傷である。騒音外傷は、例えば少なくとも70dB(SPL)、少なくとも90dB(SPL)、少なくとも100dB(SPL)、少なくとも120dB(SPL)、又は少なくとも130dB(SPL)の音圧レベルへの暴露によって引き起こされうる。難聴は医療介入、通常は、例えば、蝸牛移植のような蝸牛手術による、耳への医療介入によってもまた引き起こされうる。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が騒音外傷又は医療介入に暴露される前に投与される。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が騒音外傷又は医療介入に暴露された後に投与される。特定の実施態様では、PPARアゴニストは、蝸牛手術前、すなわち対象が蝸牛手術を受ける前に、投与される。
[年齢により引き起こされる難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死]
文献において「加齢性難聴」とも称される年齢による難聴は、加齢が聴力に及ぼす累積的影響である。これは、通常、進行性で両側対称な加齢性感音性難聴である。難聴は、より高い周波数で最も顕著である。年齢によって引き起こされる難聴の病理学的タイプは4種である:1)感覚性:コルチ器の変性を特徴とする。2)神経性:らせん神経節の細胞の変性を特徴とする。3)線条/代謝性:蝸牛の全回転における血管条の萎縮を特徴とする。4)蝸牛伝音性:鼓膜基底板の硬化がその運動に影響を及ぼすため。
本発明の方法によって予防又は治療される年齢によって引き起こされる難聴は、通常、第1の病理学的タイプ、すなわち、コルチ器の変性を特徴とする難聴に関連する。従って、幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、コルチ器の変性前、例えば、有毛細胞の損傷又はアポトーシスの前及び/又は有毛細胞変性又は有毛細胞死の前に、対象に投与される。
[化学的に誘発される難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死]
難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死は、化学的に、すなわち化学物質、例えば抗生物質、薬物、化学療法剤、重金属又は有機薬剤によって誘発されうる。難聴を引き起こす可能性のある抗生物質には、例えば、セファロスポリン、例えばセファレキシン(Keflex)、セファクロール(Ceclor)、及びセフィキシム(Suprax);アミノグリコシド、例えばゲンタマイシン、トブラマイシン及びストレプトマイシン;マクロライド、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン(Zithromax)及びクラリスロマイシン;スルホンアミド、例えばトリメトプリム・スルファメトキサゾール又はテトラシリン(tetracylines)、例えばテトラサイクリン、又はドキシサイクリンが含まれる。特に、難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死は、ゲンタマイシンに暴露された対象において本発明の方法によって効果的に予防又は治療される。
難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を引き起こしうる化学療法剤、例えば抗がん剤には、例えば白金含有薬剤、例えばシスプラチン、及びカルボプラチン、好ましくはシスプラチンが含まれる。難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を引き起こしうる薬物には、例えば、フロセミド、キニーネ、アスピリン及び他のサリチル酸塩が含まれる。難聴を引き起こしうる重金属には、例えば、水銀、鉛が含まれる。難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を引き起こしうる有機薬剤には、例えばトルエン、キシレン、又はスチレンが含まれる。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が化学物質に暴露される前に対象に投与され、それにより対象の化学的に誘発される難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防する。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象が化学物質に曝露された後に対象に投与され、それにより、化学的に誘発される難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死に罹患した対象を治療する。
好ましい実施態様では、難聴が騒音外傷によって引き起こされるか又は化学的に誘発される場合、PPARアゴニストは、対象の騒音外傷又は化学物質への暴露前に対象に投与され、騒音外傷又は化学物質によって引き起こされる有毛細胞の細胞損傷の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%が防止される。
本発明の一態様では、本発明は、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。本発明の更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストを対象に投与することを含む、対象の有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法を提供する。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するための医薬の製造のためのPPARアゴニストの使用を提供する。
幾つかの実施態様では、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死は、騒音外傷、年齢、医療介入、突発性難聴、又は虚血傷害のような虚血性イベントによって引き起こされるか、又は化学的に誘発され、化学的誘発は、例えば抗生物質又は化学療法剤によって引き起こされる。騒音外傷、年齢、医療介入、突発性難聴、又は虚血性イベント、又は化学的誘発が、難聴を予防又は治療するための方法に対して上に記載したように対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を引き起こしうる。
幾つかの実施態様では、難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死は、有毛細胞損傷によって引き起こされる。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、前記有毛細胞損傷の同定前、すなわち有毛細胞損傷の発生前に対象に投与される。好ましい実施態様では、有毛細胞損傷が騒音外傷によって引き起こされるか、又は化学的に誘発される場合、PPARアゴニストは、対象の騒音外傷又は化学物質への暴露前に対象に投与され、騒音外傷又は化学物質によって引き起こされる有毛細胞の細胞損傷の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%が防止される。有毛細胞損傷の同定/発生は、通常、有毛細胞の状態の評価によって決定され、それは、上記のように又は実施例に開示したように容易に達成できる。
[本発明の方法において使用するための薬学的組成物]
ここに提供されるのはまた、ここに記載された方法において使用するためのPPARアゴニストと、例えば薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含む薬学的組成物である。従って、更なる態様では、本発明は、対象における難聴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供し、PPARアゴニストは、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物として対象に投与される。本発明によってまた提供されるのは、対象における難聴を予防又は治療する方法において使用するための、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物である。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、対象における難聴を予防又は治療するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含有する薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象における難聴を予防又は治療する方法を提供する。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、対象における難聴を予防又は治療するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物の、対象における難聴を予防又は治療するための医薬の製造のための使用を提供する。
更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストがPPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物として対象に投与される、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するためのPPARアゴニストを提供する。本発明によってまた提供されるのは、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するための、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含有する薬学的組成物である。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含有する薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法を提供する。幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、対象における難聴を予防又は治療するのに十分な量で対象に投与される。更なる態様では、本発明は、対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するための医薬の製造のための、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物の使用を提供する。
幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、他の医薬又は薬学的薬剤、希釈剤、賦形剤、担体、アジュバント、例えば保存料、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、及び/又は緩衝剤を含む。希釈剤は、例えば、水、グリコール、油又はアルコールである。担体は、例えば、スターチ又は糖である。賦形剤は、例えば、界面活性物質、乳化剤、安定剤、保存料、香味料、又はフィラーである。
他の実施態様では、薬学的組成物は他の治療用物質もまた含む。場合によっては、特定の治療剤又は賦形剤、希釈剤又は担体の使用から生じうる潜在的な耳毒性作用を打ち消すための抗酸化剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン又は鉄キレート剤などの耳保護薬が薬学的組成物に含まれる。
幾つかの実施態様では、薬学的組成物は、適用時に薬学的組成物の視覚化を促進するのを助ける色素を含む。他の実施態様では、薬学的組成物は、内リンパ又は外リンパに適したpHを提供するための一又は複数のpH調節剤又は緩衝剤をまた含む。適切なpH調整剤又は緩衝剤には、酢酸塩、重炭酸塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、それらの薬学的に許容される塩、又はそれらの組み合わせ又は混合物が含まれるが、これらに限定されない。そのようなpH調節剤及び緩衝剤は、組成物のpHを約5から約9のpH、好ましい実施態様では約6.5から約7.5のpHに維持するのに必要な量で含まれる。
[投与及び治療の態様]
内耳及び/又は中耳に送達される薬物は、経口、静脈内又は筋肉内経路を介して全身投与されている。ここに記載の方法において使用されるPPARアゴニスト又は薬学的組成物は、通常、経口的、耳に局所的、又は内耳内及び/又は中耳内への注入、好ましくは中耳内への注入によって、投与される。幾つかの投与経路について、例えば、内耳内及び/又は中耳内への注入では、徐放システムを使用することができる。幾つかの投与経路では、活性成分の浸透が、例えば、ヒアルロン酸、DMSOのような輸送エンハンサーによって促進される。幾つかの投与経路では、特に、PPARアゴニスト又は薬学的組成物が内耳内及び/又は中耳内への注入によって投与される場合、チクソトロピック又はサーモゲル製剤を使用して、無痛投与を可能にし、活性成分の内耳内及び/又は中耳内への延長された連続的な放出を確実にするゲル又は高粘性組成物を形成する。幾つかの投与経路では、特にPPARアゴニスト又は薬学的組成物が点耳薬として投与される場合、耳領域における局所的PPAR活性化をもたらす皮膚を通しての浸透を増強する製剤を使用することができる。
PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳又は外耳に接触して位置させられうる。更なる又は代替の実施態様では、PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、鼓室内注入によって正円窓膜上又はその近くに投与されうる。他の実施態様では、PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、耳介切開後の外科的処置を経て正円窓又は蝸牛窓稜領域内又はその近くに入れて正円窓又は蝸牛窓稜上又はその近くに投与される。あるいは、PPARアゴニスト又は薬学的組成物はシリンジと針を介して適用され、針が鼓膜を通して挿入され、正円窓又は蝸牛窓稜の領域に誘導される。ついで、PPARアゴニスト又は薬学的組成物が、局部的治療のために、正円窓又は蝸牛窓稜上又はその近くに沈着される。
好ましくは、ここに記載のPPARアゴニスト又は薬学的組成物は、内耳内及び/又は中耳内、好ましくは中耳内への鼓室内注入によって投与される。治療薬の鼓室内注入は、鼓膜の後ろの中耳内及び/又は内耳内、好ましくは中耳内に薬剤を注入する技術である。
一実施態様では、ここに記載の組成物は、経鼓室注入によって正円窓膜上に直接投与される。別の実施態様では、ここに記載の耳に許容可能な組成物は、内耳に対する非経鼓室アプローチによって正円窓膜上に投与される。更なる実施態様では、ここに記載の組成物は、蝸牛窓稜の改変を含む正円窓膜への外科的アプローチを介して正円窓膜上に投与される。
一実施態様では、送達システムは、鼓膜を突き刺し、内耳の正円窓膜又は蝸牛窓稜に直接アクセスすることができるシリンジ及び針器具である。
幾つかの実施態様では、送達装置は、中耳及び/又は内耳へ治療薬を投与するために設計された装置である。ほんの一例として、GYRUS Medical社は、正円窓ニッチの可視化とそこへの薬剤送達のためのマイクロ耳鏡を提供している;Arenbergは、米国特許第5421818号;第5474529号;及び第5476446号において内耳構造に流体を送達するための医学的処置装置を記載している。米国特許出願第08/874208号には、治療薬を内耳に送達するために流体移送導管を移植するための外科的方法が記載されている。米国特許出願公開第2007/0167918号には、鼓室内流体採取と医薬投与のための耳吸引・医薬分注統合器が更に記載されている。
ここに記載のPPARアゴニスト又は薬学的組成物は、非限定的な例として、蝸牛外科手術、迷路切開術(labyrinthotomy)、乳突削開術、アブミ骨切除術、内リンパ球嚢切開術(sacculotomy)等を含む外科的処置において有用である。好ましい実施態様では、ここに記載のPPARアゴニスト又は薬学的組成物は、外科的処置の前、特に蝸牛外科手術の前に投与される。
ここに記載のPPARアゴニスト又は薬学的組成物は、予防的(preventive)及び/又は治療的処置のために投与される。予防的(preventive)処置には、予防的(prophylactic)処置が含まれる。予防的適用では、PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、ここに記載の疾患、障害又は状態を有する疑いがあるか、又はそれを発症する危険性がある対象に投与される。治療的適用では、PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、ここに記載の疾患、障害又は状態の症状を治癒し又は少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で、ここに記載の障害に既に罹患している患者などの対象に投与される。この使用に対して有効な量は、疾患、障害又は状態の重症度及び経過、以前の治療法、対象の健康状態及び薬物に対する応答、並びに処置する医師の判断に依存する。
対象の状態が改善しない場合、PPARアゴニスト又は薬学的組成物の投与は慢性的に投与され得、これは対象の疾患又は状態の症状を寛解させ又はさもなければ制御又は制限するために対象の生涯期間を含む長期の期間である。
対象の状態が改善する場合、PPARアゴニスト又は薬学的組成物の投与は連続的に与えられうる;あるいは、投与される薬物の用量が、一時的に減少されてもよく、又は所定の期間にわたって一時的に停止されてもよい(すなわち、「休薬期間」)。
患者の耳の状態がひとたび改善すると、必要に応じて、PPARアゴニスト又は薬学的組成物の維持用量が投与される。続いて、投薬量もしくは投与頻度又はその両方が、症状に応じて、改善した疾患、障害又は状態が保持されるレベルまで、場合によっては低減される。
幾つかの好ましい実施態様では、PPARアゴニスト又は薬学的組成物は、内耳及び/又は中耳に単回の注入によって、好ましくは内耳への単回の鼓室内注入によって投与され、その後、経口投与か又は中耳内へ単回の鼓室内注入が続き、その後、経口投与(これが好ましい)か又は内耳内への浸透を伴う点耳薬としての投与が続く。経口投与は、慢性的に提供され得、これは、対象の生涯期間中を含む長期の期間である。幾つかの実施態様では、長期治療後、例えば、経口投与を使用する長期治療後に、有毛細胞の休止状態からの再活性化に基づいて聴力が増大する。幾つかの実施態様では、長期治療後、例えば、経口投与を使用する長期治療後に、PPAR活性化後の有毛細胞数又は有毛細胞機能の増大に基づいて、聴力が増大する。
投与されるPPARアゴニストの量は、例えば、投与される特定のPPARアゴニスト、投与経路、処置されている状態、処置されている標的領域、及び処置されている対象又は宿主を含む、症例を取り巻く特定の状況に応じて、特定の化合物、疾患状態及びその重症度などの要因に依存して変化する。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、PPARアゴニストを使用する糖尿病の治療に必要な用量よりも少ない用量で対象に投与される。幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、糖尿病の治療について評価され、試験された最高用量よりも8〜20倍低く、特に、ヒトにおける糖尿病の治療について評価され、試験された最高用量よりも8〜20倍低い用量で対象に投与される。例えば、ピオグリタゾン等のPPARガンマアゴニストに対しての、ヒトにおける糖尿病の治療について評価され、試験された最高用量は、通常、約30〜45mg/日の範囲である。幾つかの実施態様において、使用されるPPAR用量では、糖尿病の治療において見られる副作用は存在しない。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニストは、PPARアゴニストの抗糖尿病又は抗脂質異常症効果のための有効用量より少ない用量で、特にヒトにおけるPPARアゴニストの抗糖尿病又は抗脂質異常症効果のための有効用量より少ない用量で対象に投与される。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニスト、通常はPPARガンマアゴニスト、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、好ましくはPPARガンマアゴニスト、より好ましくはピオグリタゾンは、0.05〜30mg/日、好ましくは0.1〜10mg/日、より好ましくは0.5〜5mg/日の用量でヒトに経口的に投与される。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニスト、通常はPPARガンマアゴニスト、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、好ましくはPPARガンマアゴニスト、より好ましくはピオグリタゾンは、通常、0.001%w/v〜10%w/vの濃度、好ましくは0.005%w/v〜5%w/vの濃度、より好ましくは0.01%w/v〜2%w/vの濃度でヒトにおいて耳に局所的に投与される。通常、50μl〜1ml、好ましくは1mlのPPARアゴニスト含有溶液が投与される。
幾つかの実施態様では、PPARアゴニスト、通常はPPARガンマアゴニスト、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、好ましくはPPARガンマアゴニスト、より好ましくはピオグリタゾンは、一回の注入につき、0.005%w/v〜10%w/v、好ましくは0.01%w/v〜5%w/vの濃度で内耳内及び/又は中耳内への注入によってヒトに投与される。通常、50μl〜1ml、好ましくは1mlのPPARアゴニスト含有溶液が単回注入によって注入される。
難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を有する疑いがあるか、又はそれらを発症する危険性がある患者を同定する方法もまた本発明に含まれる。幾つかの実施態様では、難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を有する疑いがあるか、又はそれらを発症する危険性がある患者は、血清及び/又は血漿アディポネクチンレベルの測定、特に高分子量アディポネクチンレベルの測定によって同定される。幾つかの実施態様では、治療の成功のモニタリング及び/又は対象の同定、例えば、難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を有する疑いがあるか、又はそれらを発症する危険性がある対象の同定は、血清及び/又は血漿アディポネクチンレベルの測定によって達成される。
[キット/製造品]
本開示はまた、難聴を予防又は治療するため、及び/又は対象、好ましくはヒトにおける有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制するためのキットを提供する。そのようなキットは、一般に、ここに開示された一又は複数のPPARアゴニスト又は薬学的組成物と、キットを使用するための説明書を含む。本開示はまた、難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死を有する疑いがあるか、又はそれらを発症する危険性がある哺乳動物、例えば、ヒトにおける疾患、機能障害、又は障害の症状を治療し、軽減し、減少させ、又は寛解させるための医薬の製造における、ここに開示された一又は複数のPPARアゴニスト又は薬学的組成物の使用を考える。
幾つかの実施態様では、キットは、バイアル、チューブ等のような一又は複数の容器を収容するように区画化されたキャリア、パッケージ、又は容器を含み、その容器の各々がここに記載の方法において使用される別々の要素の一つを含む。適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。他の実施態様では、容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成される。
ここで提供される製造品は、一般に、ここに開示される一又は複数のPPARアゴニスト又は薬学的組成物と包装材料とを含む。 医薬包装材料の例は、限定されないが、ブリスターパック、ビン、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ビン、及び選択された組成物及び意図される投与及び治療様式に適した任意の包装材料を含む。
実施例1:抗生物質により誘発される有毛細胞損傷に対する保護
出生後5日目のスプラーグドーリーラットからコルチ器を得て、器官培養に配した。ゲンタマイシン処置の結果、培養48時間後に50〜70%の有毛細胞が喪失した。ピオグリタゾンの併用処置は保護的であり、ゲンタマイシン依存性の有毛細胞の喪失をほぼ完全に予防し、臓器形態を大部分保存していた。
[方法]
(動物処置)
全ての動物処置は、Kantonales Veterinaramt(Basel, Switzerland)によって承認されたプロトコルに従って実施した。生後5日目(p5)のスプラーグドーリーラットを研究に使用した。研究は、p5動物由来のコルチ器(OC)外植体を使用してインビトロで実施した。動物を屠殺し、蝸牛を慎重に解剖して、らせん神経節、血管条及びライスナー膜からコルチ器を分離した[Sobkowicz HM, Loftus JM, Slapnick SM. Acta Otolaryngol Suppl. 1993;502:3-36]。
(組織培養)
OCを収集した後、培養培地[10%FCS、25mMのHEPES及び30U/mlのペニシリンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)]に入れ、95%O2/5%CO2の雰囲気中、37℃で24時間、インキュベートした。その期間後、化合物を含まないか又は200μMのゲンタマイシン単独又は2もしくは10μMのピオグリタゾンと共に200μMのゲンタマイシンを含む新鮮培地で培養培地を置き換え、37℃で更に48時間インキュベートした。各処理条件に対して10個のOC外植体を使用した。
(有毛細胞の計数)
化合物とのインキュベーション後、OCを4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、洗浄し、ついでフルオレセイン(FITC)結合ファロイジンで染色して、内有毛細胞及び外有毛細胞を検出した。染色後、OCを可視化し、蛍光顕微鏡(Olympus FSX100)を使用して撮影した。外有毛細胞及び内有毛細胞を、各コルチ器の頂回転、基底回転及び中回転について別々に定量した。各回転に対する値を、各条件に使用した10個のOCについて平均した。OHCとIHCの数における処置群間の有意差を、分散分析(ANOVA)とそれに続く最小有意差(LSD)事後検定(Stat View 5.0)を使用して決定した。0.05未満のP値に関連する差は、統計的に有意であると考えた。全てのデータは、平均値±SDとして示される。
[結果]
未処置のコルチ器は、48時間の培養後によく保存されており、外有毛細胞(OHC)及び内有毛細胞(IHC)の無傷の整列された列を提示していた。2又は10μMの何れかでのピオグリタゾン単独処置は、有毛細胞数又は形態に影響を及ぼさず、ピオグリタゾンの直接的有害作用がないことが示された(図1A〜C)。対照的に、200μMのゲンタマイシン処置は、ほぼ完全な有毛細胞の破壊と喪失をもたらした(図1A〜C)。ピオグリタゾンは、2及び10μMの両方で、ゲンタマイシンの作用に拮抗し、有毛細胞数及び形態を保存することができた(図1A〜C)。各コルチ器の頂回転、基底回転、及び中回転において、IHC及びOHCを別々に計数するために、定量的画像解析を実施した。ゲンタマイシン処置は、各セグメントにおいておよそ50〜70%の有毛細胞数の一貫した減少をもたらしたが、両方の濃度でのピオグリタゾンは、全回転においてゲンタマイシン依存性の有毛細胞喪失を完全に防止することができた。
実施例2:騒音性難聴に対する保護
ピオグリタゾン製剤又はビヒクル単独を、モルモットの中耳に適用した。ついで、動物を騒音外傷(広帯域ノイズ4〜20kHz、115dB(SPL))に暴露し、7〜14日後に標準的周波数範囲にわたる聴覚感度の記録を実施した。聴力検査で得られた結果を、傷害前のベースライン値と比較した。ピオグリタゾンは聴覚を保護し、ビヒクル対照に対するピオグリタゾン処置動物における閾値変動を>50%減少させた。
[方法]
(動物処置)
モルモットモデルは聴覚研究において好ましい動物種である。薬剤投与並びに騒音外傷を全身麻酔下で適用した。到着した動物は、実験の少なくとも1週間前に馴化期間を経た。動物は、12時間/12時間の明/暗サイクルで、温度と湿度が制御された環境下で食物と水に自由に接近できる状態で対で収容された。プロトコルはドイツのベルリンの政府の動物使用委員会によって承認された。
モルモットを最初に麻酔し、聴力を標準的なABR法によって評価し、その後、処置群に分けた。各動物は、両方の耳に対して試験物質の単回の正円窓投与を受けた。翌日、動物を115dBの広帯域ノイズに麻酔下で2時間暴露した。騒音暴露の1週間後及び2週間後に、動物は二回目の聴力評価を受けた。
騒音暴露の前日に両耳の蝸牛正円窓にピオグリタゾン製剤又はそれに合ったビヒクルを一回40μlの適用で動物に投与した。このアプローチでは、視覚制御下で正円窓への薬物適用を可能にする骨胞(Bulla)に直接アクセスするために、頭蓋骨の吻側部分に穴を開けた。
動物を防音チャンバー(0.8×0.8×0.8m、最小減衰60dB)内において麻酔(60mg/kgのケタミンと6mg/kgのキシラジン)下で115dBの音圧レベル(SPL)の広帯域の白色雑音(5〜20kHz)に2時間、騒音暴露した。動物の頭上に配されたラウドスピーカー(HTC 11.19; Visaton, Haan, Germany)によって、騒音をバイノーラルで送った。スピーカーをオーディオアンプ(Tangent AMP-50; Aulum, Denmark)とDVDプレーヤーに接続した。
(聴覚評価)
騒音暴露前のベースラインと、騒音後7日目及び14日目に、周波数特異的(2;4;8;12;16;20;24;28;32;36;40kHz)聴性脳幹反応を、全ての処置動物及び対照において記録した。聴覚刺激を、正弦波発生器(Model SSU2; Werk Fernmeldewesen, Berlin, Germany)を用いて、異なるSPLでバイノーラルに送った。周波数出力を、デジタルカウンター(1941A Digital Counter; Fluke, Scarborough, Ontario, Canada)を用いて制御し調節した。皮下針電極を頭頂(探査)、乳様突起(基準)及び一本の足(接地)に配した。ABR記録は、Viking IV測定システム(Viasys Healthcare, Conshohocken, Pennsylvania)を用いて実施した。脳幹反応を増幅させ(100000×)、フィルターにかけ(バンドパス0.15〜3kHz)、Viking IVシステムによって平均(300×)した。ABR波の振幅を、信号増幅の減衰を変化させることによって異なる音響強度で測定した。振幅成長関数を各試験周波数について計算し、線形回帰をデータの線形部分に適合させた。聴力閾値は、回帰直線の線形振幅成長関数をゼロに外挿することによって、各周波数について計算することができた。これらのデータから、平均値を使用して対照と騒音曝露動物との間の閾値差(平均閾値変動)を計算した。結果は、対照と比較した実験群の平均相対聴力損失(±SD)をデシベル(dB)で表している。
[結果]
ビヒクル処置動物は、1週間で騒音暴露(5〜20kHz)の周波数範囲にわたって31.9±2.2dB(平均値±SD)の有意な平均聴力損失を示した。ピオグリタゾンは騒音性難聴に対しておよそ60%の有意な保護を与え、12.7±1.3dB(平均値±SD)の僅かな閾値変動であった(図2)。
2週間で、両群において僅かな回復が認められた。ビヒクル処置動物は、2週間で27.3±12.6dB(平均値±SD)の有意な平均聴力損失を示した。ピオグリタゾン処置動物は、2週間で6.3±3.9dB(平均値±SD)の中程度の閾値変動しか示さなかった。(図2)。これらのデータは、ピオグリタゾンの聴覚保護効果を実証している。
実施例3:デュアルPPARα/γアゴニスト及びPPARα選択的アゴニストによる抗生物質誘発性有毛細胞損傷に対する保護
実験は実施例1の実験と同様にして実施した。ゲンタマイシン処置の結果、培養のマウスOCへの24時間の暴露後に有毛細胞が50%消失した。デュアルPPARα/γアゴニストであるムラグリタザル及びテサグリタザル並びにPPARα選択的アゴニストのフェノフィブリン酸での処置は、ゲンタマイシン依存性の有毛細胞喪失から保護した。
[方法]
方法は実施例1のものと同様であった。主な相違点は、ラットOCよりむしろマウスOCを使用したことであった。更に、処置を50μMのゲンタマイシンで24時間実施した。各実験条件に使用したOCの数は3〜5個であった。試験物質の濃度は、テサグリタザルとムラグリタザルでは2μMと10μM、フェノフィブリン酸では25μMと150μMであった。
[結果]
未処置のコルチ器は、24時間の培養後によく保存されており、外有毛細胞(OHC)及び内有毛細胞(IHC)の無傷の整列された列を提示していた。試験物質単独及び如何なる濃度も、有毛細胞数又は形態に影響を及ぼさず、直接的な副作用がないことを示した(図3A〜C)。対照的に、50μMのゲンタマイシン処置は有毛細胞のおよそ50%の喪失をもたらした(図3A〜C)。テサグリタザルは2及び10μMの両方でゲンタマイシンの作用に拮抗し、有毛細胞数及び形態を保つことができた(図3A)。ムラグリタザルは2μMでは効果的ではなかったが、10μMでは部分的に保護的であった(図3B)。フェノフィブリン酸は25μMでは効果的ではなかったが、150μMでは完全に保護的であった(図3C)。

Claims (18)

  1. 対象における難聴を予防又は治療する方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  2. 対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  3. PPARアゴニストが、PPARアルファ、PPARガンマ若しくはPPARデルタ又はそれらの組み合わせを活性化している、請求項1又は2に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  4. PPARアゴニストがPPARガンマを活性化している、請求項1又は2に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  5. PPARアゴニストがピオグリタゾンである、請求項1又は2に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  6. 難聴、有毛細胞変性又は有毛細胞死が有毛細胞損傷によって引き起こされる、請求項1から5の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  7. 難聴が突発性難聴である、請求項1に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  8. 難聴が騒音外傷、医療介入、虚血傷害、年齢によって引き起こされるか又は化学的に誘発される、請求項1に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  9. 難聴が騒音外傷によって引き起こされるか又は化学的に誘発され、PPARアゴニストが騒音外傷又は化学物質への対象の暴露の前に対象に投与され、騒音外傷又は化学物質によって引き起こされた有毛細胞の細胞損傷の少なくとも50%が防止される、請求項1に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  10. 蝸牛手術の前にPPARアゴニストが投与される、請求項1から9の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  11. PPARアゴニストが経口的に、耳内に局所的に、内耳内への注入及び/又は中耳内への注入によって投与される、請求項1から10の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  12. PPARアゴニストが中耳内への鼓室内注入によって投与される、請求項1から10の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  13. PPARアゴニストが内耳内及び/又は中耳内への単回注入によって投与され、それに経口投与が続くか又は内耳内に浸透する点耳薬としての投与が続く、請求項1から10の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  14. PPARアゴニストが前記PPARアゴニストを使用する糖尿病の治療に必要な用量より少ない用量で対象に投与される、請求項1から13の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  15. 対象がヒトであり、PPARアゴニストが0.5〜5mg/日の用量で経口的に、0.01%〜2%の用量で耳内に局所的に、又は一回の注入につき0.01%〜5%の濃度での内耳内及び/又は中耳内への注入によって投与される、請求項1から13の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  16. PPARアゴニストがPPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを含有する薬学的組成物として対象に投与される、請求項1から15の何れか一項に記載の方法において使用するためのPPARアゴニスト。
  17. 対象における難聴を予防又は治療する方法において使用するための、あるいは対象における有毛細胞変性又は有毛細胞死を予防又は抑制する方法において使用するための、PPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、又は担体とを含有する薬学的組成物。
  18. 対象における難聴を予防若しくは治療及び/又は有毛細胞変性若しくは有毛細胞死を予防若しくは抑制するためのキットであって、PPARアゴニスト又はPPARアゴニストと薬学的に許容される希釈剤、賦形剤もしくは担体とを含有する薬学的組成物と、該キットの使用説明書とを含むキット。
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