患者の安全に関する医者の懸念の意識の高まりにより、使い捨てシリンジをベースとした医療用インジェクターシステムの使用が、標準的な医療活動になっている。概して、患者、医者、および医療システムの問題は、一般的な独占権のあるシリンジおよび医療用インジェクターシステムが高価なことである。著しいコストは、そのシステムの消耗品部分において、適合した、独占権のあるシリンジとプランジャーのみが、独占権のあるシステムとともに働くために生じる。固定されたシステムの構成部品との適合性をもたらすことができる消耗品用アダプターが、患者の安全性を依然として付与するとともに、コストに関するより効果的な解決策をもたらすことができる。さらに、このシステムに接続されている間、シリンジ本体内に捕捉されている空気の著しい健康リスクがある。アダプターの構成部品に接続されている間捕捉されている空気を安全に解放することができるシリンジは、より高い安全性をもたらし、患者に対してより良い選択肢を提供し続ける。
現在、多くの病院で、メドラッド・ステラント・システム(Medrad's Stellant System)またはポリテン・プラスティックス・シリンジ・アダプター・システム(PolyTen Plastics syringe adapter system)などのCTインジェクションシステムが用いられている。従来技術の様々なシステムは、制御された医療用の電気機械インジェクションのための、解放可能で使い捨てのフロントローディング式医療用シリンジシステムである。
トゥルル(Trull)等の米国特許第6,080,136号は、取り外し可能かつ係合可能なアダプターが前面に取り付けられているフロントロード・インジェクターを含むフロントロード・シリンジ・インジェクターシステムを示している。駆動ヘッドがインジェクターの駆動機構に係合し、駆動ヘッドは、アダプターに取り付けられているシリンジ内に取り付けられているプランジャーに、離脱可能に係合している。プランジャーと駆動ヘッドとシリンジ部材のうちの少なくとも1つがアダプターと相互に作用して、プランジャーと駆動ヘッドとシリンジを互いに係合させたり離脱させたりする。インジェクター上のフランジは、アダプター内に収まる。
D・レイリー(D. Reilly)等の米国特許第5,383,858号は、インジェクターハウジングの前壁に回転可能に取り付けられた、液体注入用の移動可能なプランジャーを有する、フロントローディング・シリンジを開示している。プランジャーは、第1の迅速解放機構によってシリンジに対してシールされた関係で締まりばめしている。同時に、プランジャーは、第2の解放可能な機構によってインジェクター駆動機構に接続されている。シリンジの注入端部は、直径が大きくねじが切られている装着体の内部の、直径が小さいインジェクター部を含み、ループ形状の補強ハンドル部を含んでいてもよい。
P・シュターツ(P. Staats)等の米国特許第6,764,466号は、シリンジの後端部を受ける流路を含むシリンジアダプターを開示している。アダプターの第1および第2の取り付けフランジは流路の一部を覆い、シリンジの後端部の取り付けフランジと協働する。それによって、シリンジ取り付けフランジはアダプター取り付けフランジ同士の間に挿入でき、それから、アダプター取り付けフランジの陰の流路内で回転させられ、それによってシリンジをアダプターにロックする。アダプターは、ロック位置で流路を横切って延びてシリンジが流路内で回転するのを阻止し、それによってシリンジがアダプターから外れることを防ぐ1つ以上のロッキングピンをさらに含む。インジェクターの駆動ラムが最後方の位置よりも前方にある時にはいつでも、アダプター内に組み入れられたカラーがインジェクターの駆動ラムと相互に作用し、ロッキングピンをロック位置に移動させる。アダプターのラムの先端は、プランジャーの背面に係合するコネクターを有する可動部材を含む。
ファーゴ(Fago)等の米国特許第8,597,246号は、こぼれた流体がシリンジの外面から駆動ラムの近くに漏れることを防ぐフロントローディング・インジェクターを開示している。シリンジの円筒体の円形状の後縁部と結合するように、シーリングガスケットがインジェクターハウジングの前面に組み込まれていてもよい。あるいは、シリンジの後端の単一の構造によってシールおよびロックの機能が発揮されてもよい。ロッキング構造の前方のシリンジに位置している、シリンジの非平面的なシーリングフランジを含むことによって、または、シリンジと、シリンジを囲んでシリンジの外側に沿う流体の流れを停止させる、分離した漏れ止めワッシャーとを含むツーピース構造によって、漏れを防止してもよい。シリンジは、シリンジのインジェクターに対する機械的な支持をもたらす、ロッキング構造の前方の非連続的な環状のフランジを含んでいてもよい。
本発明の目的は、簡単で低コストでさらに安全な、CT/MRIのシリンジ用のシリンジアダプターとプランジャーアダプターの組み合わせを提供することにある。
前述した目的は、シリンジピストンハウジングと針の間の、CTまたはMRIのシリンジ取付具のための、1回使用のカートリッジによって達成される。カートリッジは、2つの主要部材と、ピストンエクステンダー部材とからなる。2つの主要部材は、単一の管状アダプターと、管状アダプターと同軸的なシリンジ本体である。
管状アダプターの第1の端部は、同軸的なピストンハウジング内で把持されている。管状アダプターの第2の端部は、交互に位置するレリーフセグメントおよび張り出しセグメントである溝セグメントを有する溝マウントの上面を備えた、セグメント化された受け溝バヨネットマウントを有している。張り出しセグメントは、張り出しセグメントの端部の近くで支持されている軸方向に延びる片持ち梁状の歯を有している。フロントローディング式のシリンジ本体は管状アダプターと同軸的に結合可能である。シリンジ本体は、管状アダプターの溝マウントの上側のレリーフセグメント内にぴったりはまるフランジ基部セグメントを備えたセグメント化されたフランジ基部を有している。
溝マウントの張り出しセグメントは、基部フランジセグメントよりも周方向長さが長く、それによって、基部フランジセグメントが回転して歯を通過するまで、溝マウント内の基部フランジセグメントの回転は、片持ち梁状の歯を軸方向に上昇させ、溝マウントを曲げる。片持ち梁状の歯は、曲がることにより誘導された張力から解放され、基部セグメントの逆回転を阻止するように移動し、基部フランジセグメントの上にはまり、フランジセグメントを所定の位置にしっかりと保持し、流体のシールを形成する。
恒久的に結合された単一の管状アダプターとシリンジ本体は、自動化されたCTまたはMRIの機械とともに用いられる使い捨てのカートリッジを形成する。同軸的な複数の一方向弁が、シリンジ本体のノーズ部に取り付けられている。このような一方向弁の1つは、流体の流出のために軸方向に取り付けられている。他の一方向弁の少なくとも1つは、流体の流入のために非軸方向に取り付けられている。
同軸的な内側部材および外側部材は、例えば管のための取付具である。流体の流入および流出のための内側取付具と外側取付具の役割は反対であり、それによって、流入容器は流出部材に接続できない。一方向弁の取付具はルール継手であってよいが、例えば一方向バヨネット結合によって一方向弁部材として構成されていてもよい。
ピストン運動は、流体をシリンジ本体内に引き込む真空圧力、または、シリンジ本体のノーズにおいて一方向弁を通して流体を押し出す正圧を供給する。
図1を参照すると、バイエル・ヘルスケアのメドラッド・ステラント・インジェクション・システム(商標)など、従来技術の自動式のCTまたはMRIシリンジシステムが、医療設備内の床に取り付けられたポール19からシリンジ15および17を支持するシリンジホルダー13を有している状態が示されている。シリンジホルダー13は、シリンジ15および17の各々の内部のピストンを駆動する電子装置を含んでいる。臨床医に操作されるワークステーション21が、同様な複数のワークステーションに接続されていてもよいローカルサーバー23と連絡している。サーバーは、インジェクションシステムに送るデータとインジェクションシステムから受け取るデータを記憶し、ネットワーク25を介してインジェクションシステム用のコントローラー27と連絡している。本発明は、シリンジ15および17の各々に関連する使い捨てカートリッジ31に関する。
図2を参照すると、単一の管状アダプター31が、軸33と、シリンジ本体40のフランジ37および39を受けるバヨネットマウント35とを備えた、環状の断面形状を有している。管状アダプターは、第1の外径を有する第1の端部41と、第1の外径よりも大きい第2の外径を有する第2の端部43とを有している。第2の外径が大きいため、第2の端部43が同軸のシリンジ本体41の内径と一致する内径を有することが可能であり、それによって、流体が、制限されることなく、接合された管状アダプターおよびシリンジ本体を通って流れることができる。管状アダプターは、シリンジ本体の容積に匹敵し、場合によってはシリンジ本体の容積を超える、端部から端部までの容積を有している。アダプターの第1の流体容積がシリンジ本体の第2の流体容積よりも大きいこともあるが、通常は、第1の流体容積と第2の流体容積は、互いの50%の容積範囲内に入っている。組み合わせ容積を50ml以下にすることができるが、用いられる流体と、患者の要求と、医療機器の考慮とに応じて、一般的な組み合わせ容積は125mlより大きいのが通常であり、160mlより大きい場合もある。流体容積は、管状アダプターとシリンジ本体とが接合されるまで、両部材において選択可能である。接合後は、組み合わせ容積を変更できない。
管状アダプターは、一般的には高分子材料から作られ、単一部材として成形される。管状アダプターはシリンジの長さだけ延びており、それにより、シリンジのピストンが、シリンジ本体40を長さ方向に通り抜けて流体を押すために延びていなければならない。環状の断面を有する中空のピストンエクステンダー45が、管状アダプター31と同軸である。平坦な上面47はカップ形状をもたらし、それによって、ピストンエクステンダーは、シリンジシステムのピストンのための固いカップを形成でき、所定の位置に接着または摩擦係合しており、ピストンエクステンダーの上面47がシリンジ本体40内でそれ以上前進できなくなるまで、単一の管状アダプターおよびシリンジ本体の内部で摺動可能である。シリンジ本体内への一方向弁73および75と、シリンジ本体外への一方向弁77については、後で説明する。
管状アダプター31のバヨネットマウント35は、交互に位置する張り出しセグメント51およびレリーフセグメント52を備えた上側と、間隔をおいて離れて位置する下側53とによって形成されている、セグメント化された受け溝を有している。言い換えると、上側の一部は切り欠かれるかまたは開放されており、張り出しセグメント51は、切り欠かれても開放されてもおらず、フランジ37および39が、フランジよりも長い張り出しセグメント同士の間の溝に入り込むことが可能になっている。張り出しセグメントは下向きに延びる歯61を有しており、歯61は、フランジが歯の下方の溝内を回転する時に、対応するフランジを所定の位置にロックするように働き、それから、通過した歯が、下降してフランジにパチンとはまる(snap down on the flange)ような力を歯に加え、それを所定の位置にロックする。
図3を参照すると、単一の管状アダプター31が、単一の管状アダプターの溝に入り込みそれから時計回りに回転するシリンジ本体40をロックしている状態が示されている。フランジ37は、前述したように上側と下側とによって形成された溝内にロックされた、シリンジ本体40の半径方向外側に延びている部分であり、下向きに延びる歯61によって捕捉され、反時計回りの回転が防止されている。管状アダプターの第1の端部41は、図1に示す電子装置の一部であるシリンジホルダーによって把持される環状リブ71を有している。電子装置は、管状アダプターの挿入の程度を測定するセンサーを有していてもよく、または、電気機械的あるいは光学的なセンサーを備えていてもよい。図3に示されている結合された構成では、単一の管状アダプター31とシリンジ本体が、自動化されたCTまたはMRIのシリンジシステム用のカートリッジを形成しており、ピストンエクステンダーの上面によって許容される範囲で管状アダプター31とシリンジ本体40の容積を満たす、一方向弁73および75の一方または両方を通る薬剤の流体を受けるようになっている。それから、ピストンエクステンダーは、流体が一方向流出弁から放出され始めるまで、一方向流出弁77を通して空気を前方へ放出する。空気の放出の前に流出弁に皮下注射針を付け加えて、カートリッジとともに空気の針を清浄にすることができる。シリンジ本体40の円錐状ノーズ79が、ピストンエクステンダーの前進を止める。流出弁と流入弁の外部は、外部ホースまたは追加の弁または針の取り付けのための常時ロックの取付具を有している。
図4を参照すると、単一の管状アダプター31が、第2の外径81と第2の段状の内径83とを備えた第2の端部43を有している状態を示している。第2の内径が段状になっている理由は、シリンジ本体の内径と一致する管状体の第1の端部に関連する第1の内径85が存在することである。この段部は、シリンジ本体を通る通路に比べて管状アダプターを通る通路が損傷しないようにして、管状アダプターの溝がシリンジ本体のフランジを受け入れるのを可能にする。これは、管状アダプターとシリンジ本体の両方を通る滑らかなトンネルを形成するために、シリンジ本体の内径が管状アダプター本体の第1の内径と一致することが可能になるように、アダプターの最も下の段の上にシリンジ本体の内側リムが置かれるからである。外径81も段状であり、それにより、カートリッジが設けられていることとその寸法とが、機械によって段部の寸法または外径から検知される。カートリッジの容積寸法が、外径81の段部の寸法によって機械に示されてもよい。管状アダプターは、材料からなる単一の部品であることに注意すべきである。溝55は、張り出しセグメント51に関連する上側と、下側とを有している。レリーフセグメント52は張り出しセグメントに隣接し、シリンジ本体のフランジが入り込むのを可能にするのに十分な長さを有している。フランジの時計回りの回転の際に、フランジは張り出しセグメント51の下に入り、フランジが歯を通過するまで片持ち梁状の歯61が上に向かってカム運動するので、フランジが張り出しセグメント51を上向きに曲げる。この現象が生じた時に、歯61は下向きに動き、張り出しセグメントを下向きにフランジの上部の上に移動させ、フランジを所定の位置にロックする。尾部片(Tail piece)87および89が溝内にあり、張り出しセグメントと隣接する部分を備え、歯に隣接し、フランジが完全に置かれた時に流体が溝を通って漏れるのを阻止する。尾部片の張り出しセグメントに隣接する部分同士の間には、歯の移動を可能にする非常に小さい隙間のみが存在するが、流体の漏れを阻止するために近接して隣接することが必要である。
図5を参照すると、ピストンエクステンダー45が、軸33に沿って管状アダプター31およびシリンジ本体40と同軸であることが示されている。ピストンの上面47の下に、シリンジ本体の円錐状ノーズ79の内側と接触してそれによってピストンの動きを止める環状の尾根部を形成するように傾斜している、環状の外側部分49がある。
従来技術においてシリンジ本体を造影剤で満たすことは、しばしばシリンジの端部においてルール(leur)を用いることを伴い、瓶の外側に造影剤を吸引するためにピストンを引き戻す。造影剤が上を流れる部分同士が接触することによって汚染が生じることがある。シリンジ本体は時々、スパイクに取り付けられてスパイクに貫通される瓶を用いて、シリンジの端部においてスパイクの先端を通して満たされる。この方法は、小さな瓶と、スパイクまたは瓶の貫通された部分の接触時の汚染に限定される。別の瓶とともにスパイクを再使用するリスクもある。
本発明では、汚染を無くすための2つの方法をとる。第1に、流入液体と流出液体とを分離する。第2に、図5Aに示すピストンの下降ストロークにおいてシリンジ本体40内への一方向弁77が閉じ、ピストンエクステンダー45が矢印A方向に下降する時に真空圧力の下でシリンジ本体内へ液体が流れるのを可能にするように一方向弁73が開く。図5Bに示すようにピストン圧力が逆転すると、一方向弁77が開き、ピストンエクステンダー45が矢印B方向に上昇して流体が患者に向かって矢印C方向に流れる時に、液体供給を導く一方向弁73が閉じる。
図5に示す一方向弁73,75,77は、一緒に結合されている内側部材及び外側部材と同軸の取付具を有していることが示されている。弁77は、患者に向かう管と関連する外側弁部材を有していてもよく、内側部材はシリンジ本体40に固定される。弁73と75は反対である。外側弁部材はシリンジ本体に固定され、内側部材は、供給瓶からの管と関連している。全ての弁部材は、同じ寸法を有している。従って、流入用と流出用の管は、間違った弁には接続できないように異なる寸法を有している。同軸の一方向取付具は、バヨネットロッキング型の取付具であってよい。
操作時に、CTまたはMRIの機械アクチュエーター101は、カートリッジ10の管状アダプター31を把持するピストン駆動ユニット103を有している。この機械のピストン105は、それに取り付けられたピストンエクステンダー45をシリンジ本体40の中に、指令された範囲だけ、またはピストンエクステンダーが円錐状ノーズ79に接触するまで移動させる。ピストンが前進すると、流体は一方向弁77を通って放出される。ピストンが逆方向に移動する時には、流体は一方向弁73および75を通ってシリンジ本体の中に引き込まれ得る。ピストンが一旦前進して流体を放出させると、カートリッジ10が取り外されて新しいカートリッジが装着されるまで、ピストンは引き抜かれず再セットされない。カートリッジ10が取り外された後に、再使用のために分解されることはないが、ピストンが所定の位置に管状アダプターとともに再セットされることが機械において必要とされるため、カートリッジは廃棄されなければならない。ピストンが一旦再セットされると、シリンジ本体は管状アダプターの上にロックされてもよい。ピストンは所定の位置にシリンジ本体とともに再セットされることはできない。
管状アダプターの単一の構造が、低い製造コストと使用の簡単さをもたらし、カートリッジにおける1回限定の使用により患者の安全が同時に付与される。