JP2018203684A - 金属錯体、キラルネマチック液晶組成物及び液晶素子 - Google Patents

金属錯体、キラルネマチック液晶組成物及び液晶素子 Download PDF

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吉田 純
Jun Yoshida
純 吉田
渡辺 豪
Takeshi Watanabe
豪 渡辺
秀平 田村
Shuhei Tamura
秀平 田村
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Abstract

【課題】らせんねじり力(βM)が大きく、かつ、ネマチック液晶との相溶性の大きな金属錯体、それを用いるキラルネマチック液晶組成物、及び液晶素子の提供。
【解決手段】式(1)又は式(2)で示される金属錯体。キラリティーを有する式(1)又は式(2)で示される金属錯体と、ネマチック液晶化合物とを含有するキラルネマチック液晶組成物。キラルネマチック液晶組成物が一対の基板に充填されてなる液晶素子。

(RはC1〜20の直鎖状のアルキル基又はC1〜20の直鎖状のアルコキシ基)
【選択図】なし

Description

本発明は、金属錯体、キラルネマチック液晶組成物及び液晶素子に関する。
液体(等方相)と固体(結晶相)の間に現れる液晶相は、液体のように流動性を持ちながらも光学的異方性を併せ持っており、分子は液晶中で三次元の位置の秩序を失いながらも配向秩序は保った状態で存在する。液晶はネマチック相、スメクチック相など秩序度や分子配列の違いにより多くの相が存在するが、中でもネマチック液晶は、ディスプレイの表示材料や調光フィルムなど応用は多岐に渡る。ネマチック液晶に光学活性な分子(キラルドーパント)を添加すると、らせん状の分子配列を有するキラルネマチック相が発現する。
数多くの有機化合物からなるキラルドーパントが知られているが、有機物は様々なコンフォメーションをとりうるため、キラルドーパントのミクロな分子構造と誘起されるキラルネマチック相のマクロならせん構造の相関関係は経験的なものであった。本発明者らは、プロペラ型にねじれた異性体(Δ,Λキラリティー)を有する八面体型金属錯体をキラルドーパントとして用いることで、キラルネマチック相のらせん形成機構の解明を目指した(非特許文献1)。
分子配列のねじれのピッチの逆数(1/p)は、キラルドーパントの一分子あたりのらせんねじり力(βM)、及びキラルドーパントの濃度(x)に比例する。そこで、液晶の分子配列のねじれを誘起する力(HTP : Helical Twisting Power)は、らせんねじり力(βM)によって評価される。
Jun Yoshida, et al., Tris(β-diketonato) Ru(III) Complexes as Chiral Dopants for Nematic Liquid Crystals: the Effect of the Molecular Structure on the Helical Twisting Power, Inorg. Chem. 2013, 52, 11042 - 11050.
しかしながら、八面体型金属錯体からなるキラルドーパントの多くは、らせんねじり力の絶対値|βM|は大きいが、液晶相との相溶性が小さいため、キラルドーパントの濃度(x)を大きくすることができなかった。
キラルネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子では、液晶の分子配列のらせん構造に対応して円偏光を透過または反射する選択反射現象(SR)が観察される。また、円二色性(CD)スペクトルにおいては、液晶の分子配列のらせん構造に対応して誘起CD(Induced CD, ICD)が観察される。ネマチック液晶組成物中で、らせんねじり力の絶対値|βM|の大きいキラルドーパントを従来のものよりも高濃度に調整できれば、選択反射現象(SR)や誘起CD(ICD)現象を比較的広い光波長範囲で制御することが可能となり、情報通信素子や、セキュリティ素子への応用の可能性が広がると考えられる。
そこで、本発明は、らせんねじり力の絶対値|βM|が大きく、かつ、ネマチック液晶との相溶性の大きな金属錯体、それを用いるキラルネマチック液晶組成物、及び液晶素子を提供することを目的とする。
本発明は、以下の金属錯体、キラルネマチック液晶組成物、及び液晶素子を提供する。
[1]下記式(1)又は式(2)で示される金属錯体。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。)
[2]下記式(1−1)又は式(2−1)で示される金属錯体と、ネマチック液晶化合物とを含有するキラルネマチック液晶組成物。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。*はキラリティーを有することを示す。)
[3]前記[2]に記載のキラルネマチック液晶組成物が一対の基板に充填されてなる液晶素子。
本発明により、らせんねじり力の絶対値|βM|が大きく、かつ、ネマチック液晶との相溶性が優れる金属錯体それを用いるキラルネマチック液晶組成物、及び液晶素子を提供することができる。
本発明の金属錯体Ru−C8を光学分割した際のクロマトグラムである。 光学分割後の金属錯体Ru−C8のCDスペクトルである。 金属錯体Ru−C8の、Λ体及びΔ体の誘起CDスペクトルである。 本発明のキラルネマチック液晶組成物の偏光顕微鏡観察結果である。 キラルネマチック液晶組成物の透過スペクトルである。 キラルネマチック液晶組成物のCDシグナルと選択反射を観測した結果である。 キラルネマチック液晶組成物の円偏光の透過光パターンを示すスペクトルである。 本発明の金属錯体Ru−C8の吸収スペクトルである。
[金属錯体]
本発明の金属錯体は、下記式(1)又は式(2)で示される。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。)
Rは、炭素数2〜18の直鎖状のアルキル基であってもよく、炭素数4〜14の直鎖状のアルキル基であってもよく、炭素数6〜12の直鎖状のアルキル基であってもよい。
式(1)で示される金属錯体は、八面体型金属錯体であり、錯体分子のC2軸方向に平面性の高い官能基が導入されたことで、排除体積効果が強く働くため、液晶中において、液晶の分子配列のねじれを誘起する力(HTP)が大きく、らせんねじり力の絶対値|βM|の絶対値を大きくできる。また、Rの直鎖状のアルキル基とともに比較的直線状の官能基を形成するので、ネマチック液晶との相溶性も比較的大きい。式(2)示される金属錯体も同様である。
式(1)で示される金属錯体は、下記式(Ru−1)で表される金属錯体Ru−1と、下記式(3)で表される化合物3とから、下記化学反応式により合成することができる。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。)
例えば、金属錯体Ru−1をテトラヒドロフラン(THF)の溶媒中で、CuI、PdCl(PPh、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下、窒素雰囲気下で60℃になるまで加熱し、THFに溶かした化合物3をゆっくり加え、撹拌することで、式(1)で示される金属錯体を合成することができる。溶媒を除去した後、例えば、CHCl:CHCN=20:1の展開溶媒で、SiOカラムを用いた分取クロマトグラフィーで精製することができる。
式(1)で示される金属錯体としては、次の化合物を例示することができる。
式(2)で示される金属錯体は、下記式(Ru-tropBr)で表される金属錯体Ru-tropBrと、下記式(3)で表される化合物3とから、下記化学反応式により合成することができる。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。)
例えば、金属錯体Ru-tropBrをテトラヒドロフラン(THF)の溶媒中で、CuI、PdCl(PPh、トリエチルアミン(TEA)の存在下、窒素雰囲気下で60℃になるまで加熱し、THFに溶かした化合物3をゆっくり加え、撹拌することで、式(2)で示される金属錯体を合成することができる。溶媒を除去した後、例えば、CHCl:CHCN=20:1の展開溶媒で、SiOカラムを用いた分取クロマトグラフィーで精製することができる。
式(2)で示される金属錯体としては、次の化合物を例示することができる。
本発明の金属錯体は、可視光波長領域における強い吸収を有するという点でも特徴的である。本発明の金属錯体は、クロロホルム溶液中の吸収スペクトルで評価されるモル吸光係数が、350〜500nmの範囲で10000M−1cm−1以上であることが好ましく、15000M−1cm−1以上であることがより好ましく、20000M−1cm−1以上であることが特に好ましい。
[キラルネマチック液晶組成物]
本発明のキラルネマチック液晶組成物は、下記式(1−1)又は式(2−1)で示される金属錯体と、ネマチック液晶化合物とを含有する。
(Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。*はキラリティーを有することを示す。)
式(1−1)で示される金属錯体は、式(1)で示される金属錯体を、例えば、光学分割カラムを用いたリサイクル分取高速液体クロマトグラフィーにより、Λ体及びΔ体に光学分割を行うことで得られる。
式(2−1)で示される金属錯体も、同様に、式(2)で示される金属錯体を、例えば、光学分割カラムを用いたリサイクル分取高速液体クロマトグラフィーにより、Λ体及びΔ体に光学分割を行うことで得られる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、次の化合物群から選択される少なくとも一つを用いることができるが、これらに限られない。
式(1−1)で示される金属錯体及び式(2−1)で示される金属錯体はキラリティーを有するので、ネマチック液晶化合物の中でキラルドーパントとしての機能を発現する。キラルネマチック液晶組成物はらせん状の分子配列を有するキラルネマチック相を発現し、らせんねじり力の絶対値|βM|が大きい。らせんねじり力の絶対値|βM|を、100μm−1以上とすることができ、115μm−1以上とすることができ、130μm−1以上とすることができる。
式(1−1)で示される金属錯体及び式(2−1)で示される金属錯体はネマチック液晶との相溶性に優れる。ネマチック液晶中の式(1−1)で示される金属錯体の溶解性は、1.0mol%以上とすることができ、1.8mol%以上とすることができ、3.6mol%以上とすることができ、4.0mol%以上とすることができる。
[液晶素子]
本発明の液晶素子は、前記キラルネマチック液晶組成物が一対の基板に充填されてなる。
本発明の液晶素子は、らせんねじり力の絶対値|βM|が大きく、かつ、ネマチック液晶との相溶性の大きな金属錯体を用いている。
例えば、キラルドーパントは、通常無色であり、ICD現象は可視光波長領域に観測されない。アキラルな色素をキラルネマチック液晶組成物に添加することで、ICD現象を可視光波長領域に出現させることも可能であるが、この場合、らせん構造が乱れるため、選択反射波長が可視光領域からより長波長側の赤外光領域にずれてしまう。すなわち、ICD現象とSR現象の両方を、ともに可視光波長領域で発現させることはできなかった。
本発明の液晶素子は、らせんねじり力の絶対値|βM|が大きく、かつ、ネマチック液晶との相溶性の大きな金属錯体を用いているので、選択反射(SR)現象や誘起CD(ICD)現象を任意の波長で制御することが可能となり、特に、選択反射(SR)現象及び誘起CD(ICD)現象の両方を、可視光の範囲内に調整することも可能である。
さらに、本発明の液晶素子は、圧力応答性を示し、手で押すなどの刺激を与えることで、円二色性(サンプルを透過する円偏光)シグナルの発現を制御できることも見出した。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[合成例1]
1,4-シクロヘキサジエン(化合物5, 15 ml, 159 mmol)、tert-ブトキシカリウム(31.5 g, 281 mmol)をヘキサン(200ml)に加えた。0℃、窒素雰囲気下で撹拌しながら、シリンジを用いてブロモホルム(13.8 ml, 159 mmol)をゆっくり加えた。1 時間撹拌した後、室温に戻し、さらに30 分撹拌をした。蒸留水で洗い、得られた粗生成物を減圧蒸留で精製した。得られた黄色液体をゆっくり冷やすと固化した。さらに冷エタノールで洗うことで白色固体として化合物6(14.2g, 56.3mmol, 35% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ= 1.92 (m, 2H), 2.09 (m, 2H), 2.47 (m, 2H), 5.51 (s, 2H).
[合成例2]
化合物6(14.2 g, 56.3 mmol)、酢酸銀(18.9 g, 113 mmol)、酢酸(250 ml)の懸濁液にヨウ素(16.6 g, 65.5mmol)をゆっくり加えた後、蒸留水(1.10 ml, 61.1 mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で48 時間撹拌した。褐色になった懸濁液を濾過した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。続いてジクロロメタンで抽出し、溶媒を除去することで黄色固体の化合物7(14.6g, 44.5mmol, 79% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ= 1.99 (s, 3H), 1.72-2.45 (complex m, 7H), 3.80 (m, 1H), 4.81 (m, 1H).
[合成例3]
化合物7(15.7 g, 48.2 mmol)をジクロロメタン(290 ml)に溶かした。そこに、乳鉢ですりつぶしたクロロクロム酸ピリジウム(25.3 g, 117 mmol)と二酸化ケイ素の蒸留ジクロロメタン(290 ml)を加え、窒素雰囲気下、室温で24 時間撹拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(SiO2, EtOH : 100%)で精製し、化合物8(9.71g, 30.0mmol, 62% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ= 2.15 (s, 3H), 2.00-2.90 (complex m, 6H), 5.14 (m, 1H).
[合成例4]
メタノール(570 ml)中に化合物8(3.03 g, 9.35 mmol)と炭酸カリウム水溶液(K2CO3 : 3.93 g, 28.4 mmol, H2O : 30 ml)を加え、一晩撹拌した。その後、氷冷下で2M aq. HCl(500 ml)を2 時間かけて加え、1 時間撹拌した。沈殿を濾過で回収した。濾液はジクロロメタンで抽出した後、溶媒を除去した。濾過で回収した沈殿とあわせて、エタノールより再結晶を行うことで黄色結晶の化合物9(1.23g, 6.12mmol, 65% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = 7.10 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.12 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 1.2Hz, 1H), 7.68(d, J = 1.2 Hz, 1H).
[合成例5]
アセトニトリル(200 ml)中に化合物14(14.3 mg, 117 mmol)、炭酸カリウム(19.3g, 140 mmol)を加え、窒素雰囲気下で加熱還流を行った。還流が始まったときに1-ブロモオクタン(20 ml, 116mmol)を30 分かけて加え、さらに2 時間加熱還流をした。その後、ヘキサン/水で分液をし、有機層を水酸化ナトリウム水溶液(10%)で洗った。硫酸ナトリウムを加えて一晩乾燥させた後、溶媒を除去することで黄色液体の化合物15(25.3g, 108mmol, 93% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = 0.89(t, J= 7.0 Hz, 3H), 1.29 - 1.38 (m, 8H), 1.47 (quin, J = 7.6 Hz,2H), 1.80 (quin, J = 5.4 Hz, 2H), 4.02 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 9.0 Hz, 2H) , 7.81 (d, J= 9.0 Hz, 2H), 9.86 (s, 1H).
[合成例6]
ジクロロメタン(180 ml)中に四臭化炭素(37.3 g, 112 mmol)とトリフェニルホスフィン(57.8 g,220 mmol)を加え、0℃、窒素雰囲気下で撹拌を行った。そこに、ジクロロメタン(50 ml)に溶かした化合物15(13.0 g, 55.6 mmol)を滴下し、室温で一晩撹拌をした。セライト濾過した後、溶媒を除去した。最後にカラムクロマトグラフィー(SiO2, Hexane : CH2Cl2 = 4 :1)で精製し、黄色液体の化合物16(19.96g, 51.2mmol, 92% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = 0.89(t, J= 6.4 Hz, 3H) , 1.27 - 1.36 (m, 8H), 1.41 - 1.48 (m, 2H), 1.78(quin, J= 7.1 Hz, 2H),3.96 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 6.87 (d, J= 9.2 Hz, 2H) ,7.40 (s, 1H), 7.50 (d, J= 8.8 Hz,2H).
[合成例7]
蒸留THF(250 ml)に化合物16(19.96 g, 51.2 mmol)を加え、窒素下−78℃に保った。そこにn-ブチルリチウム(40 ml, 498mmol)を30 分かけてゆっくり滴下した後、3 時間撹拌を行った。室温に戻し、飽和アンモニウム水溶液(100 ml)を加えた後、酢酸エチル/水で抽出した。溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(SiO2, Hexane : CH2Cl2 = 4 :1)で精製し、黄色液体の化合物17(10.53g, 47.8mmol, 93% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = 0.89(t, J= 6.4 Hz, 3H) , 1.25 - 1.36 (m, 8H), 1.42 - 1.47 (m, 2H), 1.75(quin, J= 7.1 Hz, 2H), 2.98 (s, 1H), 3.95 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 6.83 (d, J= 9.2 Hz, 2H), 7.41 (d, J= 8.8Hz, 2H).
[合成例8]
三塩化ルテニウム水和物(5.06 g, 19 mmol)をエタノール(133 ml)と蒸留水(19 ml)の混合溶媒に加え、窒素雰囲気下で3 時間加熱還流した。そこにアセチルアセトン(14 ml)を加え、30 分間加熱還流した。その後、炭酸ナトリウム飽和水溶液(198 ml)を加え、さらに30 分間加熱還流した。室温まで放冷した後、蒸留水で洗った。溶媒を除去し、得られた固体をベンゼン/へキサンで再結晶することで、深紫色の結晶の金属錯体[Ru(acac)3] (5.06g, 12.7mmol, 65% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = -30.27 (s, 3H), -5.56 (s, 18H).
[合成例9]
金属錯体[Ru(acac)3](0.200 g, 0.502 mmol)と亜鉛(4.85 g, 74.2 mmol) をエタノール(70 ml)、アセトニトリル(7.0 ml)、蒸留水(7.0 ml)の混合溶媒中に加え、窒素雰囲気下3時間加熱還流すると緑色の懸濁液となった。この懸濁液をセライト濾過すると明るい橙色の溶液となった。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、橙色の粉末固体の金属錯体18 (172mg, 0.451mmol, 90% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = 2.00 (s, 6H), 2.05 (s, 6H), 2.52 (s, 6H), 5.36 (s, 2H).
[合成例10]
金属錯体18(565 mg, 1.48 mmol)と化合物9(358 mg, 1.78 mmol)をエタノール(290 ml)に加え、1 時間加熱還流した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(SiO2, CHCl3 : acetone = 10 :1)で精製し、茶色の固体として金属錯体Ru-1 (431mg, 0.863mmol, 58% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ = -38.57 (s, 2H), -14.17 (s, 6H), -8.62 (s, 6H), -5.88 (s, 2H), 11.03 (s,2H).
Elemental analysis: Anal. Calc. for C17H18BrO6Ru : C, 40.89; H, 3.63; Found: C, 40.94; H, 3.78.
HRMS(ESI+): calculated for C17H18BrO6Ru ([M+H]+) m/z = 501.94, found 501.94.
[実施例1]
<金属錯体Ru−C8の合成>
金属錯体Ru-1(300 mg, 0.601 mmol)、CuI(29.4 mg, 0.154 mmol)、[PdCl2(PPh3)2](43.8 mg, 0.0624 mmol)、THF(140 ml)、DIPEA(1.00 ml, 5.88 mmol)を加え、窒素雰囲気下で60℃になるまで加熱した。
60℃になったところでTHF(5 ml)に溶かした化合物17(415 mg, 1.80 mmol)をゆっくり加え、さらに4時間撹拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(SiO2, CH2Cl2 : CH3CN = 20 :1)で精製し、茶色の固体として金属錯体Ru-C8(104 mg, 0.164mmol, 27% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3): δ= -37.13 (s, 2H), -13.70 (s, 6H), -8.04 (s, 6H), -6.44 (s, 2H), 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1,27-1.38 (m, 8H), 1.47 (quint, J = 7.7 Hz, 2H), 1.78 (quint, J = 7.2 Hz, 2H), 4.27 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 5.28 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 11.68 (s, 2H).
Elemental analysis: Anal. Calc. for C33H39O7Ru: C, 61.10; H, 6.06; Found: C, 61.32; H, 6.45.
HRMS (APCl+): calculated for C33H39O7Ru ([M+H]+) m/z = 650.1821, found 650.1826.
(吸光スペクトル測定)
金属錯体Ru−C8の、クロロホルム溶液中の吸収スペクトルを測定した結果を図8に示す。金属錯体Ru−C8のモル吸光係数は、350〜500nmの範囲で24000M−1cm−1を超えており、可視光領域の特徴的な吸収スペクトルを示した。
[実施例2]
<金属錯体Ru−tropC5の合成>
Ru-tropBr (100 mg, 0.215 mmol)、CuI(8.2 mg, 0.043 mmol)、[PdCl2(PPh3)2](15.2 mg, 0.0216 mmol)、THF(100 ml)、TEA(0.30 ml, 2.15 mmol)を加え、窒素雰囲気下で50℃になるまで加熱した。50℃になったところでTHF(5 ml)に溶かしたp-エチニルペンチルベンゼン(112 mg, 0.646mmol)をゆっくり加え、5時間加熱攪拌し、さらに一晩室温で撹拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(SiO2, ベンゼン:酢酸エチル= 20:1)で精製し、茶色の固体としてRu-tropC5(36.1 mg, 0.0596 mmol, 26% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3) : δ = -30.75 (s, 2H), -17.57 (d, 2H), -17.23 (d, 2H), -12.61 (d, 2H), 0.89 (t, 3H), 1,26-1.37 (m, 6H), 4.51 (t, 2H), 5.12 (d, 2H), 8.16 (d, 2H), 18.76 (d, 2H), 19.13(s, 2H), 19.45(s, 2H).
[実施例3]
<金属錯体Ru−tropC8の合成>
Ru-tropBr (300 mg, 0.645 mmol)、CuI(32.0 mg, 0.164 mmol)、[PdCl2(PPh3)2](45.6 mg, 0.0645 mmol)、THF(150 ml)、TEA(0.90 ml, 6.45 mmol)を加え、窒素雰囲気下で60℃になるまで加熱した。60℃になったところでTHF(5 ml)に溶かしたp-エチニルオクチルベンゼン(416 mg, 1.94 mmol)をゆっくり加え、さらに1時間半撹拌した。溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(SiO2, クロロホルム:アセトニトリル= 10:1)で精製し、茶色の固体としてRu-tropC8(106 mg, 0.157 mmol, 24% yield)を得た。
1H NMR(600MHz, CDCl3) : δ = -30.75 (s, 2H), -17.56 (s, 2H), -17.22 (s, 2H), -12.53 (s, 2H), 0.88 (t, 3H), 1,27-1.57 (m, 12H), 4.50 (t, 2H), 5.12 (d, 2H), 8.15 (d, 2H), 18.73 (s, 2H), 19.09(s, 2H), 19.41(s, 2H).
HRMS(ESI+): calculated for C37H35O6Ru ([M+H+]) m/z = 677.1472, found 677.1492.
<金属錯体Ru−C8の光学分割>
光学分割カラム(株式会社ダイセル, CHIRALPAK IA)を用いたリサイクル分取高速液体クロマトグラフィー(リサイクル分取HPLC : 日本分析工業株式会社製, JAL, LC-9204)により、金属錯体Ru−C8の光学分割を行った。展開溶媒はクロロホルム/ヘキサン = 1/2 の混合溶媒を用いて行った。
カラムの劣化を防ぐために展開前の溶液は濾過(pore size 0.45μm)によって不純物を完全に除去した。光学分割した際のクロマトグラムを図1に示す。金属錯体は、光学分割カラムにおいて保持時間が短いものがΛ体、長いものがΔ体であった。
光学分割後の金属錯体Ru−C8のCDスペクトルを図2に示す。Δεは次式(4)を用いて求めた。
ここでθは観測値(deg)、[θ]は分子楕円率(deg・mol-1・dm3・m-1)、c は溶液濃度(mol・dm-3)、l はセルの長さ(cm)、Δε はモル円二色性(mol-1・dm3・cm-1)である。光学分割された金属錯体のキラリティーがΔ体、Λ体のどちらかであるかは、既に報告例のあるΔ、Λ−[Ru(acac)]のCD スペクトルとの比較より決定した。また、Δεの比較から全ての錯体では、ほぼ100%の光学純度が達成されている。
[実施例4]
<キラルネマチック液晶組成物>
キラルドーパントとして、Δ体の金属錯体Ru−C8を用いて、ネマチック液晶化合物として下記式(5CB)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。ドーパント濃度としては、低い順から0.043、0.075、0.11、0.16 mol%の4つの濃度で調製した。後述するカノ法によるらせんピッチ測定により、らせんねじり力の絶対値|βM|を求め、後述するICD測定によるキラルネマチック相の掌性判定により、らせんねじり力(βM)の正負を定めた。
Δ体の金属錯体Ru−C8のらせんねじり力(βM)は134μm−1と非常に大きい値を示した。
Λ体の金属錯体Ru−C8と、下記式(5CB)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。ドーパント濃度としては、低い順から0.041、0.072、0.11、0.16 mol%の4つの濃度で調製した。Λ体の金属錯体Ru−C8のらせんねじり力(βM)は−131μm−1と、らせんねじり力の絶対値|βM|は非常に大きい値を示した。
(カノ法によるらせんピッチ測定)
液晶の分子配列のねじれを誘起する力(HTP : Helical Twisting Power)を評価するに当たり、らせんねじり力(βM)をカノ法により求めた。βM 値とは、キラルドーパント1 分子がホスト液晶中においてらせんを巻く力を意味しており、ドーパントの濃度が低いときには次式(5)により表される。
ここで、p はらせんのピッチ長、x はドーパント濃度を示す。カノ法は上下のガラス面に対して平行方向にラビング処理が施されたくさび型セルを利用するものである。(1/2p)の整数倍の長さのところでは歪みを生じることなくラセンがセルの間に収まるが、その丁度中間点ではラセン構造が形成されず、光学的に等方な欠陥線が形成する。従って、キラルネマチック液晶を封入したくさび型セルを顕微鏡で観察すると、欠陥線を見てとれる。
さらに欠陥線と欠陥線の幅d と(1/2p) からなる三角形はくさび型セルの形状と相似の関係にあるため、以下の式(6)が導かれる。
X 及びY はくさび型セルの長さ及び厚さである。すなわち、欠陥線の観察より、キラルネマチック液晶のピッチ長p が算出される。さらに式(5)に適用し、モル分率x とp の逆数をプロット、最小2乗法により近似直線を引くことでβM 値を算出した。測定温度はホットステージを用いることで、30±0.1℃の一定温度で行った。またくさび型セルはx : y =38.2 : 0.3、38.2 : 0.5、38.2 : 1.1 を用いた。
(ICD測定によるキラルネマチック相の掌性判定)
5CB中の、Λ体及びΔ体の金属錯体Ru−C8(ドーパント濃度0.05 mol%)の誘起CDスペクトル(ICDスペクトル)を図3に示す。
HTPには正負の符号が存在する。これは生じたらせんの掌性を示すものであり、正のHTPは右巻きらせん(P-helix)を、負の値は左巻き(M-helix)のらせんであることを示している。このらせんの掌性より生じる誘起CD(Induced CD, ICD)を測定することで決定できる。CDスペクトルにおいて、波長が減少するにつれて旋光度が増加する場合、そのキラルネマチック相は右巻きのらせんを示す。また、波長が減少するにつれて旋光度が減少する場合、そのキラルネマチック相は左巻きのらせんを示す。ICD 測定は厚さが25μmの評価セルに資料を注入し、半日から1日程度の時間をおいて配向したサンプルを用いた。測定時にはサンプルを90度回転させた状態で再測定することで、観測されたICD が評価セルの直線二色性、複屈折により生じたものではないことを確かめた。
(キラルネマチック液晶組成物の選択反射)
Δ体の金属錯体Ru−C8のHTP は5CB中において最も大きかったので、可視光領域程度のらせんピッチによる選択反射の発現を期待し、ドーパントの濃度を高くしたキラルネマチック液晶組成物サンプルを調製した。錯体ドーパントを限界まで添加したところ、4.0 mol%まで溶けることが分かった。キラルドーパントとして、Δ体の金属錯体Ru−C8を用いたキラルネマチック液晶組成物は、ドーパント濃度が低い順から1.0、1.4、1.8、2.4、3.1、3.6、4.0 mol%の7 つの濃度で調製した。1.4 mol%の濃度において橙色の反射光が観測でき、1.8 mol%の濃度において黄色の反射光が観測でき、2.4mol%の濃度において青色の反射光が観測でき、3.1 mol%の濃度において紫色の反射光が観測でき、1.4 〜3.1mol%の濃度においてらせん構造に由来する可視光領域の選択反射がみられた。これはΛ体の金属錯体Ru−C8を多量に添加したことによって、誘起されるらせん構造のピッチが可視光領域程度の長さになったためである。
また、これらのサンプルはスライドガラスの上で等方相まで加熱した後、冷却させることで現れたキラルネマチック相では選択反射がみられなくなった。さらに選択反射がみられなくなったサンプルを加圧してやると、再び選択反射がみられるようになった。これは、選択反射が発現している場合とそうでない場合で、キラルネマチック液晶のらせん構造の配向方向が異なるためだと考えた。すなわち、加圧することでらせん軸がスライドガラスに対して水平もしくは垂直方向に変わるためだと考えた。次節では、選択反射が発現している場合とそうでない場合で、組織がどうなっているか確認するため偏光顕微鏡観察を行った。
(キラルネマチック液晶組成物の偏光顕微鏡観察)
5CB中に、キラルドーパントとしてΔ体の金属錯体Ru−C8を用いたドーパント濃度1.8 mol%のキラルネマチック液晶組成物の、偏光顕微鏡観察を行った。偏光顕微鏡はオリンパス株式会社製 CX31を用いた。キラルネマチック液晶組成物サンプルをスライドガラスとカバーガラスに挟んだ状態で観察した結果を図4に示す。
図4(a)は、加圧前に観察されたフォーカルコニック組織 (透過光, 400×)であり、図4(b)は、加圧後に観察されたプレーナー組織 (透過光, 400×) であり、図4(c)は、加圧前に観察されたフォーカルコニック組織(反射光, 400×) であり、図4(d)は、加圧後に観察されたプレーナー組織 (反射光, 400×) である。
加圧前のサンプルではフォーカルコニックと呼ばれる組織が観察された。また、加圧後のサンプルではプレーナーと呼ばれる組織が観察された。加圧する前と後のサンプルでは異なるテクスチャーを示すことを確認した。
フォーカルコニック状態では、らせん軸はガラス面に対して平行に配向しており、外光を散乱させる。プレーナー状態では、らせん軸がガラス面に対して垂直に配向しており、外光を反射する。加圧により、フォーカルコニック状態からプレーナー状態へと、ガラス面に対してらせん軸の配向方向が変わるため、選択反射がみられるようになった。
(キラルネマチック液晶組成物のブルー相の観察)
5CB中に、キラルドーパントとしてΔ体の金属錯体Ru−C8を用いたドーパント濃度3.6 mol%、4.0 mol%の高濃度のキラルネマチック液晶組成物ではブルー相が観察された。これらのサンプルは、室温でキラルネマチック相を示し、偏光顕微鏡の照射による熱でブルー相に転移した。
また、ホットステージを用いた偏光顕微鏡観察により、各濃度のブルー相の温度範囲を測定した。
ドーパント濃度3.6 mol%では、加熱していくと24.0℃でキラルネマチック相からブルー相に転移し、25.6℃で等方相に転移した。また冷却時は25.1℃で等方相からブルー相に転移した。さらに室温(23.2℃)まで冷却してもブルー相から変化しなかったが、数日間室温で放置することでキラルネマチック相に転移することを確認した。
ドーパント濃度4.0 mol%では、加熱していくと23.3℃でキラルネマチック相からブルー相に転移し、24.5℃で等方相に転移した。また冷却時では24.0℃で等方相からブルー相に相転移し、室温(23.2℃)まで温度を下げてもブルー相から変化がみられなかったが、数日間室温で放置することでキラルネマチック相に転移することを確認した。
(キラルネマチック液晶組成物の透過スペクトル測定)
5CB中に、キラルドーパントとしてΔ体の金属錯体Ru−C8を用いたドーパント濃度0、1.0、1.4、1.8、2.4、3.1 mol%の各キラルネマチック液晶組成物について、透過スペクトルを測定した。透過スペクトル測定は日本分光株式会社製JASCO V-570 を用いて行った。また、各サンプルはスライドガラスとカバーガラスで挟んだものを用いた。このうち、ドーパント濃度0、1.0、1.4 mol%の透過スペクトルを図5(a)、(b)、(c)に示す。点線で示したスペクトルは加圧前(フォーカルコニック状態)、実線で示したスペクトルは加圧後(プレーナー状態)のサンプルである。
これらの測定結果から、加圧後(実線, プレーナー状態)における1.0 mol%のサンプルでは1200 nm、1.4 mol%のサンプルでは800nm の近辺領域の波長の透過率が約50%になっていることがわかる。このことから、1.0 mol%と1.4 mol%のサンプルは、それぞれ1200 nm、800nm 程度のらせんピッチを有しており、ピッチ長と掌性に対応した円偏光を反射していることがわかる。加圧後のサンプルは、一定の領域以外で約100%の透過率を示す。また加圧前(点線)と加圧後(実線)のスペクトルを比較すると、加圧前のサンプルの透過率は低くなっている。このことから、加圧前はガラス面に対してランダムな方向に、加圧後は一定方向に配向していると考えられる。
<液晶素子>
(キラルネマチック液晶組成物のCDシグナルと選択反射)
実施例4で調製したドーパント濃度1.4mol%のキラルネマチック液晶組成物を、膜厚10μmの一対のガラスプレートに充填した液晶素子を作製した。この液晶素子に、200〜800nmの光波長範囲で円偏光を照射して、透過光強度を測定することにより、約300〜550nmの光波長範囲で強い誘起CDシグナル(ICDシグナル)が観測され、550〜750nmの光波長範囲で、円偏光を透過または反射する選択反射現象(SR)が観測された(図6)。
(キラルネマチック液晶組成物の円偏光の透過光パターン)
実施例4で調製したドーパント濃度1.0、1.4、2.4、3.0 mol%の各キラルネマチック液晶組成物を、膜厚10μmの一対のガラスプレートに充填した液晶素子の円偏光の透過光パターンを測定し、加圧前(点線)と加圧後(実線)のスペクトルを図7(a)〜図7(d)に示した。手で押すなどの刺激を与えることで、図7(a)〜図7(d)の矢印に示すように、これらの液晶素子は圧力応答性を示し、円二色性(サンプルを透過する円偏光)シグナルの発現をコントロールできることが分かる。
[実施例5]
<キラルネマチック液晶組成物>
Δ体の金属錯体Ru−C8と、ネマチック液晶化合物として下記式(MBBA)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。Δ体の金属錯体Ru−C8らせんねじり力(βM)は117μm−1と非常に大きく、かつ、3.8mol%の高い溶解性を示した。
Λ体の金属錯体Ru−C8と、下記式(MBBA)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。Λ体の金属錯体Ru−C8のらせんねじり力(βM)は−115μm−1と非常に大きい値を示した。
[実施例6]
<キラルネマチック液晶組成物>
Δ体の金属錯体Ru−C8と、ネマチック液晶化合物として下記式(PPMB)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。Δ体の金属錯体Ru−C8のらせんねじり力(βM)は119μm−1と非常に大きい値を示した。
Λ体の金属錯体Ru−C8と、下記式(PPMB)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。Λ体の金属錯体Ru−C8のらせんねじり力(βM)は−96μm−1と非常に大きい値を示した。
カノ法によるHTP 評価及びICD 測定による掌性判定の結果のまとめを表1に示す。なお、βM 値の単位は(μm-1)である。
[比較例1]
<キラルネマチック液晶組成物>
下記式(Ru−2(C8))で示される金属錯体(非特許文献1)と、式(MBBA)の液晶物質を含有するキラルネマチック液晶組成物を調製した。らせんねじり力(βM)は109μm−1と非常に大きい値を示したが、溶解性は0.2mol%未満と低いものであった。
金属錯体Ru−C8は各液晶中において、らせんねじり力(βM)の絶対値、すなわち液晶の分子配列のねじれを誘起する力が大きいことを示した。これは、金属錯体Ru−C8のC2軸方向に平面性の高い官能基を導入したことで、排除体積効果が強く働いたためであると考えられる。

Claims (3)

  1. 下記式(1)又は式(2)で示される金属錯体。
    (Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。)
  2. 下記式(1−1)又は式(2−1)で示される金属錯体と、ネマチック液晶化合物とを含有するキラルネマチック液晶組成物。
    (Rは、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数1〜20の直鎖状のアルコキシ基を示す。*はキラリティーを有することを示す。)
  3. 請求項2に記載のキラルネマチック液晶組成物が一対の基板に充填されてなる液晶素子。
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