JP2018201402A - 新規ユビキチンリガーゼ及びその利用方法 - Google Patents

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繁樹 東山
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倫久 坂上
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大志 前川
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Tatsuya Sawazaki
達也 澤崎
宏隆 高橋
Hirotaka Takahashi
宏隆 高橋
卓志 城
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卓志 城
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Abstract

【課題】新規ユビキチンリガーゼ及びその利用方法を提供すること。【解決手段】KCTD10からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント、KCTD10及びCUL3からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント、当該コンポーネントを含むユビキチンリガーゼ、KCTD10を制御する物質を含むことを特徴とするユビキチンリガーゼ制御剤、又は、これらや、Rnd2の制御物質のいずれかを含むことを特徴とする、各種の制御剤、及びこれら制御剤を含む疾患の予防又は治療剤、或いは各種制御剤や疾患予防・治療剤のスクリーニング方法。【選択図】なし

Description

本発明は、新規ユビキチンリガーゼ及びその利用方法等に関するものである。
[ユビキチンシステム]
近年、ユビキチンという76個のアミノ酸からなる蛋白質が、他の蛋白質の修飾に用いられることで、蛋白質の分解、シグナル伝達制御、DNA修復等の様々な生命現象に関与していることが分かってきている。
他の蛋白質の修飾とは、ユビキチンシステムと呼ばれる、標的蛋白質へのユビキチンの付加(モノユビキチン化、ジユビキチン化、ポリユビキチン化(以下、「ポリUb化」と記載する。)等のユビキチン化)を意味している。
ユビキチン化は、標的蛋白質の持つリジン(K)の側鎖のアミノ基と、ユビキチンのC末端のグリシン(G)のカルボキシル基との間のアミド結合によって起こり、ポリUb化の場合には、ユビキチン内のリジンに、更に次のユビキチンが結合する。
ユビキチン内には、K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63等の複数のリジン残基が存在するが、例えばK48へのポリUb化は、蛋白質分解に関わっている。
そしてこのユビキチンシステムには、下記の3種類の酵素が用いられている。
E1:ユビキチン活性化酵素
E2:ユビキチン結合酵素
E3:ユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ)
E3によってポリUb化された標的蛋白質は、真核生物細胞内に広く存在するプロテアソーム内で、ポリUbの分離と蛋白質の分解を受ける。
従って、これらの酵素は、上記の生命現象に関連する疾患の予防や治療その他に有用である点でも注目されており、種々のユビキチン関連酵素が探索されている。
[ユビキチンリガーゼ(E3)]
ところで、これらの酵素のうち、ユビキチン化の最終段階で作用するE3は、下記の各種の役割を有する複数のコンポーネントからなる複合体であることが知られている。
{1}リガーゼ活性を有するとともに他のコンポーネントをつなぐプラットフォームの役割をも担っている本体部位([Cullin1(CUL1)、Cullin2(CUL2)、Cullin3(CUL3)]等のCullin(CUL)蛋白質)
{2}基質(分解の対象となる蛋白質)を認識するアダプター部位
{3}その他の部位(Rbx1、Nedd8 (N8, Neural Precursor Cell Expressed, Developmentally Down-Regulated 8) 等)
そして、{2}の、基質特異性のあるアダプター部位を変更することで、種々の蛋白質に対するユビキチン化を実現し得るのである。
[E3アダプター]
このアダプター部位に相当する蛋白質には、{1}との結合部位の異なる、F-box含有蛋白質、BC-box含有蛋白質、BTBドメイン含有蛋白質等の種類があることが分かっている(非特許文献1、2等)。
一方、BTBドメインを有するヒト蛋白質としては、既に遺伝子レベルから、183種類が知られている。
しかしながら、BTBドメインを有する蛋白質(以下、「BTB蛋白質」と記載することがある。)であれば、全てがE3のアダプター部位として働くとは限らず、また仮に、ある特定のBTB蛋白質が、E3アダプター部位として機能する可能性を掴んだとしても、それを証明するのは容易では無い。
なぜならば、BTB蛋白質がE3アダプターであることの確認のためには、当該E3がユビキチン化しようとする標的蛋白質(基質)を特定しなければならないからである。
[E3基質の同定]
基質の同定は、決して容易な作業では無い。
というのも、「ある蛋白質(A)が、蛋白質(B)と相互作用するか否か」は、(A)と(B)が共に明確に分かっている場合には、常法で容易に確認することができるが、蛋白質(A)と「相互作用する蛋白質(B)」を自ら探し出すことは、未だ容易では無いからである。
「容易に探し出す」ためには、少なくとも、“常識的な数”の“候補蛋白質グループ(B’)”の存在が必要であるが、蛋白質は、ヒトの生体内だけをとって考えても何十万個も存在し、また、E3によってポリUb化される基質蛋白質(B)は、アダプター蛋白質(A)ごとに特異的なものである上、公知のユビキチンリガーゼの基質蛋白質(B)には、必ずしも共通する構造や性質が見出されていないため、候補を絞り込むこと自体が困難だからである。
更に、一つのアダプターに対して相互作用する基質蛋白質(B)は、必ずしも1つではないこと等が分かってきており、その相互作用の親和力も、基質によって大小様々であるだけでなく、当該基質が生体内において果たす機能もそれぞれ異なることから、産業上利用可能な基質蛋白質(B)を選択することは、決して容易ではないのである。
その逆に、特定のBTB蛋白質(A)と、相互作用する蛋白質(B)の組み合わせが既に知られていたとしても、蛋白質の相互作用には、ユビキチン化以外にも種々のものがあり、当該対象蛋白質が、必ずしもE3の基質と言うことは出来ない。
また、この相互作用が、E3によるユビキチン化に関するものであることの裏づけ手段の一つとして、アダプターである「BTB蛋白質(A)」と、プラットフォームである「CUL3」等との相互作用の確認が挙げられるが、この相互作用の確認も、決して容易では無い。
というのも、「BTB蛋白質(A)」と「CUL3」との相互作用には、生体内に存在する何らかの未知の補助因子が必要とされる場合も多々あり、実際に相互作用するものが、in vitroの実験では、確認できないケースもあるからである。
従って、BTB蛋白質(A)が公知であっても、相互作用する(基質)蛋白質(B)を見出すとともに、(A)がCUL3と相互作用するE3のアダプターコンポーネントであることを確認することは、必ずしも容易では無いのである。
[KCTD蛋白質]
本発明者等は、種々のBTB蛋白質のスクリーニングの結果、アダプター候補として、20種類以上確認されている、KCTD蛋白質ファミリーに目星を付けたものの、KCTD蛋白質各々の機能自体まだ十分に解明されていない上、KCTD蛋白質各々に対する基質の特定は、上述の通り容易では無かった。
[Rnd2蛋白質]
尚、本発明者等が見出した今回の基質蛋白質であるRnd2は、Rho蛋白質ファミリーというGTP結合蛋白質の一種であるが、その役割については、これまであまり知られていなかった。
Natural Cell Biology vol.5 No.11, P.950-951, November 2003 Current Biology, vol.14, R59-R61, January 20, 2004
本発明者等は、BTBドメインを有するKCTD10という蛋白質について種々の研究を進める中で、このKCTD10が、CUL3だけでは無く、Rnd2とも相互作用することを確認した。
更に、本発明者等は、KCTD10がCUL3とともに複合体(E3)を構成しRnd2をポリUb化するためのアダプターとして機能していること、更にはこのRnd2が、他のRho蛋白質の一種であるRhoAのシグナル伝達系を制御し、血管内皮細胞(HUVEC)において、アクチンフィラメント(F-actin)の伸縮と細胞形態変化(丸くなるか否か)、引いては血管新生の制御にまで関与していることを見いだし、本発明に到達したものであって、その目的とするところは、新規E3、あるいは、当該E3の利用方法を提供するにある。
上述の目的は、下記第一の発明から第七の発明によって、達成される。
<第一の発明>
KCTD10からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント。
<第二の発明>
KCTD10及びCUL3からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント。
<第三の発明>
リガーゼ活性本体としてCUL3を含むユビキチンリガーゼであって、アダプター部位がKCTD10であることを特徴とする、ユビキチンリガーゼ。
<第四の発明>
KCTD10を制御する物質を含むことを特徴とするユビキチンリガーゼ制御剤。
<第五の発明>
下記1)乃至4)の少なくとも1つを含むことを特徴とする、下記a)乃至c)のいずれかの制御剤。
1)第一又は第二の発明に記載のユビキチンリガーゼコンポーネント
2)第三の発明に記載のユビキチンリガーゼ
3)第四の発明に記載のユビキチンリガーゼ制御剤
4)Rnd2の制御物質
a)RhoAシグナル伝達
b)アクチンフィラメントの伸縮
c)血管新生
<第六の発明>
第五の発明に記載の制御剤を含むことを特徴とする、下記a)乃至c)のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤。
a)RhoAシグナル伝達
b)アクチンフィラメントの伸縮
c)血管新生
<第七の発明>
下記(I)乃至(III)のいずれかの制御能を指標とする、下記(A)乃至(E)のいずれかのスクリーニング方法。
(I)CUL3とKCTD10との間の相互作用
(II)KCTD10とRnd2との間の相互作用
(III)Rnd2とRhoAとの間の相互作用
(A)E3制御剤
(B)RhoAシグナル制御剤
(C)アクチンフィラメントの伸縮制御剤
(D)血管新生制御剤
(E)RhoAシグナル伝達、アクチンフィラメントの伸縮、あるいは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤
本発明の新規ユビキチンリガーゼコンポーネント、ユビキチンリガーゼ、ユビキチンリガーゼ制御剤、又はRnd2の制御物質は、RhoAシグナルを制御することによって、種々の疾患等の予防又は治療に用いることができる。
Rnd2とKCTD10との相互作用を、Biotin-KCTD10をプローブとしたAlphaScreenTMの結果により確認した図である。 MG132処理による内在のプロテアソームによる蛋白質分解抑制下で、CUL3やKCTD10遺伝子のノックダウンにより、Rnd2蛋白質量が増大することを示す図である。 HUVEC内においてRnd2のUb化が確認されたことを示す図である。 Rnd2の過剰発現後、siKCTD10によってE3活性を阻害すれば、Rnd2が安定化する(ポリUb化が抑制される)ことを示す図である。 Rnd2の過剰発現による活性型RhoAの増大を示す図である。 Rnd2の過剰発現で、HUVECのF-actinが過重合されて細胞形態が丸くなり、血管新生が抑制されることを示す図である。 HUVEC内で強制発現された各Rnd蛋白質の発現量を示す図である。 siKCTD10又はsiCUL3による活性型RhoAの増大を示す図である。 siKCTD10処理単独、又はKCTD10過剰発現とsiKCTD10処理の併用の場合の、血管ネットワーク長の変化やF-actinの増減を観察した図である。 siKCTD10処理単独、又はKCTD10過剰発現とsiKCTD10処理の併用の場合の、F-actinの蛍光強度及び細胞形態の変化を示す図である。 CUL3と各種BTB蛋白質のノックダウンによるF-actinの発現量及び血管長の変化を示す図である。 siCUL3やsiKCTD10の添加によってE3活性を阻害すれば、“F-actinの過重合”が起こり、細胞形態が丸くなることを示す図である。 本発明で用いた各種siRNAの配列を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[本発明のユビキチンリガーゼコンポーネント]
本発明のユビキチンリガーゼコンポーネントとしては、KCTD10(potassium(K) channel tetramerization domain 10)及びCullin3蛋白質(CUL3)等が挙げられる。
KCTD10は、CUL3をリガーゼ活性本体とし、基質としてRnd2を認識する、ユビキチンリガーゼの、アダプターコンポーネントとして機能する蛋白質であることが判明した。
本発明のユビキチンリガーゼコンポーネントは単独で(KCTD10単独又はKCTD10とCUL3で)、あるいは、他のコンポーネント(Rbx1、Nedd8等)と共にユビキチンリガーゼとして用いることで、下記の本発明の制御剤や、疾患の予防又は治療剤として用いることができる。
[本発明のユビキチンリガーゼ]
本発明のユビキチンリガーゼは、上記本発明のユビキチンリガーゼコンポーネントを含むことを特徴とするものである。
つまり、アダプター部位としてKCTD10を、リガーゼ活性本体として、CUL3を含むものである。
本発明のユビキチンリガーゼには、この他、
E2と相互作用し、ユビキチン蛋白質を基質に接近させることによってユビキチン化に寄与する部位(Rbx1等)や、
ユビキチンリガーゼ活性のスイッチの役割を果たす物質(Nedd8等)
等を含むことができる。
[本発明のユビキチンリガーゼ制御剤]
本発明のユビキチンリガーゼ制御剤は、KCTD10を制御する物質を含むことを特徴とするものである。
本発明において、「制御」には、“蛋白質(又は遺伝子)の「量や機能」の「阻害(抑制)」又は「促進(増加)」”が含まれる。
すなわち本発明において、「蛋白質(又は遺伝子)の制御」とは、
「投与対象(生体や細胞や実験試料等)における、当該蛋白質(又は遺伝子)の、量の抑制(減少)又は促進(増加)」
又は
「投与対象における、当該蛋白質(又は遺伝子)の、機能の阻害又は促進」
を意味している。
従って、「KCTD10を制御する物質」としては、投与対象における「KCTD10の量や機能」を、「阻害(抑制)又は促進(増加)する物質」が挙げられる。
(KCTD10の量や機能を、阻害(抑制)する物質)
「KCTD10の量や機能を、阻害(抑制)する物質」としては、
「KCTD10蛋白質の発現量を、抑制する物質」や「KCTD10蛋白質を分解する物質」、
「KCTD10のRNAや蛋白質の機能を阻害する物質」
等が挙げられる。
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるものでは無い。
(i)KCTD10遺伝子に対するsiRNA遺伝子やアンチセンスRNA
(ii)KCTD10に対する抗体
(i)のKCTD10遺伝子に対するsiRNA遺伝子やアンチセンスRNAは、公知の知見に基づいて適宜設計することが可能であるが、siRNA遺伝子としては、例えば下記のようなものを、Sigma社から購入することも可能である。
siKCTD10#1
sense:5'gugugaaguguaugugagaTT3'(配列番号1)
antisense:5' ucucacauacacuucacacTT3'(配列番号2)
siKCTD10#2
sense:5' gaaugagcgucuaaaucguTT3'(配列番号3)
antisense:5' acgauuuagacgcucauucTT3'(配列番号4)
siKCTD10#3
sense:5' guaacaacaaauacucauaTT'3'(配列番号5)
antisense:5' uaugaguauuuguuguuacTT3'(配列番号6)
(上記配列中、小文字はRNA、大文字はDNAを表す。
尚、上記の「#1」〜「#3」の3種の中では、「#3」が、阻害効率が良く、かつオフターゲット効果(非特異的発現抑制)が少ないという点で好ましい。
(ii)のKCTD10に対する抗体は、公知の方法に従い、KCTD10を抗原として、適当な宿主に免疫することや、常法に従った人工的な合成等によって作製することができるが、公知の抗体として下記のようなものを購入することもできる。
尚、本発明において抗体とは、モノクローナル抗体(mAb)、ポリクローナル抗体(pAb)、もしくはキメラ抗体やヒト化抗体のいずれであっても良く、ファージ抗体であっても良い。
尚、本発明において、抗体を各種の「制御剤」や「予防又は治療剤」に用いる場合には、制御ターゲットが明確なため、モノクローナル抗体が好ましい。
但し、後述するスクリーニング方法に使用する際には、ポリクローナル抗体でも良い。
(ポリクローナル抗体)
ラビット抗KCTD10 pAb(HPA014273、Sigma社製)
(KCTD10の量や機能を、促進(増加)する物質)
「KCTD10の量や機能を、促進する物質」としては、
「KCTD10蛋白質の発現量を増加させる物質」又は「KCTD10蛋白質」そのもの、
「KCTD10のRNAや蛋白質の機能を促進する物質」
等が挙げられる。
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるものでは無い。
(i)KCTD10遺伝子
(ii)KCTD10蛋白質
本発明において「遺伝子」とは、アデニン(A)、グアニン(G)等のプリン塩基や、チミン(T)、ウラシル(U)、シトシン(C)等のピリミジン塩基やそれらの修飾塩基を構成要素として含むポリヌクレオチドであり、一本鎖又は二本鎖のDNA、cDNA、一本鎖又は二本鎖のRNA、一本鎖DNAと一本鎖RNAからなるハイブリッド体、RNAとDNAが結合して一本鎖となったキメラ体をも含むものである。
尚、ヒトKCTD10は公知の蛋白質であるが、遺伝子及びアミノ酸の配列は、「Acta Biochim Biophys Sin (Shanghai). 2014 May;46(5):377-86.」等に記載されており、また遺伝子配列情報は、「NCBI GENE accession number; NM_001317395.1」(メリーランド州、米国)等から入手可能である。
本発明において、遺伝子は、プラスミド、ウイルスベクター等の形態で用いることができ、その際には、一本鎖であっても二本鎖であっても構わない。
これらの遺伝子は、常法に従い、DNA合成装置や形質転換細胞等を用いて人工的に合成する、天然に存在するポリヌクレオチドを抽出する、天然からの抽出ポリヌクレオチドの塩基の一部を欠失、置換、付加、挿入する、目的とする配列と相補的な配列を用い、逆転写酵素やDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ等によって目的の配列のものを合成させる、これらの方法で得られたポリヌクレオチドの塩基を修飾する等の方法によって製造することができる。
[本発明の制御剤]
本発明の制御剤は、下記1)乃至4)の少なくとも1つを含み、下記a)乃至c)のいずれかの段階の制御を行いうることを特徴とするものである。
1)本発明のユビキチンリガーゼコンポーネント
2)本発明のユビキチンリガーゼ
3)本発明のユビキチンリガーゼ制御剤
4)Rnd2の制御物質
a)RhoAシグナル伝達
b)アクチンフィラメントの伸縮
c)血管新生
本発明者等は、本発明のE3活性を阻害することによってE3基質であるRnd2の量が増加するとともに(試験例2)、活性型RhoA(GTP結合型RhoA)が劇的に増加し(試験例7)、HUVECにおいて、F-actinの縦方向への伸長を促進し、更には細胞の形態を丸くすることで、血管新生に必要な細胞の伸縮性を阻害し、血管ネットワーク量をも減らすことを見出した(試験例8)。
ここで、a)の「RhoAシグナル伝達」とは、Rho蛋白質の一種であるRhoA蛋白質が、グアノシン三リン酸(GTP)と結合することで活性化、またはGTPの加水分解産物であるGDPと結合することで不活性化することを利用し、その両者の、GDP-GTP交換反応により、下流へとシグナルを伝達することを意味する。
従って、「RhoAシグナル伝達の制御」とは、RhoAが活性型と不活性型の間で互いに変換されることや活性型RhoAが機能を発揮するのを、促進又は阻害することを意味する。
b)の「アクチンフィラメントの伸縮」とは、アクチンモノマーが重合してフィラメントを形成する際に起こる、いわゆる(+)端側への重合と(−)端側からの脱重合を意味するが、このバランスが、重合側に過度に傾いた場合、縦方向にアクチン線維(アクチンフィラメント、F-actin)が伸び続けることになる(「F-actinの伸長の促進」、「F-actinの過重合」、「F-actinの過形成」等と記載する場合もある。)。
尚、本発明において、「F-actinの伸縮」、「F-actinの伸長」、「F-actinの過重合」、「F-actinの過形成」と言う場合には、枝分かれを除く、縦方向の伸縮、伸長を意味している。
尚、「細胞が丸くなる」とは、アクチンモノマーの重合によるフィラメント形成において、F-actinの過形成その他によって、細胞膜の内側に沿ってコルティカルアクチンが形成されること等による形態変化を意味している。
c)の「血管新生」とは、既存の血管から新たな血管が形成され、枝分かれする(血管ネットワークの拡大)ことを意味している。
尚、血管新生には、血管内皮細胞の伸び縮みと分裂が必要であるが、F-actinが、分岐せずに縦にばかり伸び続けることで、この伸縮性が損なわれ、結果として細胞が丸くなり、血管新生が阻害されることに繋がると考えられている。
後述の試験例7では、KCTD10やCUL3のノックダウンによって、アクチンポリマーの分岐に必要な「Rac1」や「Cdc42」の量にはあまり変化が無いのに対して、縦方向の重合に用いられる「活性型RhoA」だけがかなり増加していることが確認されている。
つまり、本発明のE3は、RhoAシグナルの制御を介して、血管新生にも関与していることが確認された。
本発明において「Rnd2の制御物質」とは、投与対象における「Rnd2の量や機能」を、「阻害(抑制)又は促進(増加)する物質」を意味する。
(Rnd2の量や機能を、阻害(抑制)する物質)
「Rnd2の量や機能を、阻害(抑制)する物質」としては、
「Rnd2蛋白質の発現量を抑制する物質」や「Rnd2蛋白質を分解する物質」、
「Rnd2のRNAや蛋白質の機能を阻害する物質」
等が挙げられる。
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるものでは無い。
(i)Rnd2遺伝子に対するsiRNA遺伝子やアンチセンスRNA
(ii)Rnd2に対する抗体
(i)のRnd2遺伝子に対するsiRNA遺伝子やアンチセンスRNAは、公知の知見に基づいて、適宜設計することが可能であるが、例えばSigma社等に設計依頼も可能である。
(ii)の抗体は、公知の方法に従い、Rnd2を抗原として、適当な宿主に免疫することや、常法に従った人工的な合成等によって作製することができるが、公知の抗体として下記のようなものを購入することもできる。
(ポリクローナル抗体)
ラビット抗Rnd2 pAb(Proteintech社、13844-1-AP)
(モノクローナル抗体)
ア)Anti-RND2(M01), Mouse-Mono(2D12):
商品コード:LS-C198531-100(フナコシ株式会社販売、LifeSpan Biosciences, Inc.製)
(抗原:GSTタグ結合Rnd2)
イ)Anti-RND2,Human,Mouse-Mono(M01),clone 2D12:
商品コード:H00008153-M01(フナコシ株式会社販売、Abnova corporation製)
(抗原:GSTタグ結合Rnd2)
ウ)Anti-RND2(M01), Mouse-Mono(2D12):
商品コード:AT3655a(フナコシ株式会社販売、Abgent社製)
(抗原:GSTタグ結合Rnd2)
(Rnd2の量や機能を、促進(増加)する物質)
「Rnd2の量や機能を、促進する物質」としては、
「Rnd2蛋白質の発現量を増加させる物質」又は「Rnd2蛋白質」そのもの、
「Rnd2のRNAや蛋白質の機能を促進する物質」
等が挙げられる。
具体的には、下記のようなものが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるものでは無い。
(i)Rnd2遺伝子
(ii)Rnd2蛋白質
尚、ヒトRnd2はRhoファミリーに属する公知の蛋白質であるが、遺伝子及びアミノ酸の配列は、「Mol Cancer Res. 2016 Nov;14(11):1033-1044. Epub 2016 Aug 23.」等に記載されており、また遺伝子配列情報は、「NCBI GENE accession number; NP_005431.1」(メリーランド州、米国)等から入手可能である。
つまり、本発明の制御剤が、上記1)乃至4)のいずれかを含むことによって、上記a)乃至c)のいずれかの段階の制御を行いうる制御剤として機能し得るのである。
従って、本発明の各種の制御剤は、上記a)乃至c)のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤としても用いることができる他、実験室内における、実験・研究試薬として、例えば本発明のスクリーニング方法等に用いる試薬の一部としても、非常に利用価値の高いものである。
尚、実験・研究試薬としては、上記の成分の他、一般に実験・研究試薬に用いられている溶媒その他の各種添加剤等を含有させることができる。
[本発明の疾患予防又は治療剤]
本発明の疾患の予防又は治療剤は、上記本発明の制御剤を含み、下記a)乃至c)のいずれかの異常に起因する疾患を予防又は治療し得ることを特徴とするものである。
a)RhoAシグナル伝達
b)アクチンフィラメントの伸縮
c)血管新生
(その他の成分)
本発明の予防又は治療剤には、上記本発明の「制御剤」の他、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の成分を含有させることができ、例えば、以下のようなものが挙げられる。
賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤等。
賦形剤としては、有機系賦形剤及び無機系賦形剤等が挙げられる。
(剤形)
本発明の予防又は治療剤の剤形は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ、もしくはシロップ剤、注射やカテーテル用の液剤等の形態が挙げられる。
(有効成分の含有量)
本発明の予防又は治療剤中の、有効成分(本発明の各種制御剤)の含有量は、剤形によって様々であり、一概に限定できず、各種剤形化が可能な範囲で、投与量との関係で適宜選択すれば良いが、例えば液剤の場合、好ましくは0.0001〜10(w/v%)、より好ましくは0.001〜5(w/v%)、特に注射剤の場合、好ましくは0.0002〜0.2(w/v%)、より好ましくは0.001〜0.1(w/v%)、固形剤の場合、好ましくは0.01〜50(w/w%)、より好ましくは0.02〜20(w/w%)等として調製できるが、必ずしもこの範囲に限定されるものでは無い。
(製造方法)
本発明の予防又は治療剤は、上記の成分を用いて、周知の方法で製剤化することができる。
《その他の合剤》
本発明の予防又は治療剤は、他の公知のRhoAシグナル制御剤、アクチンフィラメントの縦伸縮の制御剤、或いは血管新生制御剤等との合剤として用いることができる。
例えば、RhoAシグナル制御剤としては、製品名・Exoenzyme C3 transferase protein (Cytoskeleton社製、ボツリヌス毒素C3酵素(Rho蛋白質を、ADPリボシル化によって、非特異的に不活性化する蛋白質)等が挙げられる。
(投与経路)
本発明の予防又は治療剤の投与経路としては、全身投与と局所投与があり、いずれでも良く、具体的には、経口投与、静注等の静脈投与、筋注等の筋肉内投与、カテーテル投与、経皮投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、直腸内投与、粘膜投与、吸入、関節腔内投与等が挙げられ、治療目的の疾患、症状等に応じて、適宜選択することができる。
(投与方法)
本発明の予防又は治療剤が、siRNA等を含む遺伝子治療剤の形態を取っている場合には、例えば、プラスミドを用いる場合、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
ウイルスベクターを用いる場合、公知の方法に従って、ウイルスに、目的とする遺伝子を組み込むことによって行うことができる。
ウイルスベクターに用いるウイルスとしては、例えば、無毒化した、レトロウイルス(レンチウイルス等)、アデノウイルス、アデノ関連(随伴)ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等の、各種DNAウイルス又はRNAウイルスが挙げられる。
ウイルスの中では、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等が好ましく、特に感染効率が高いアデノウイルスが好ましい。
遺伝子を実際に医薬として作用させるには、当該遺伝子を直接体内に導入する「in vivo法」の他、ヒトから採集した細胞に当該遺伝子を導入し、その後、遺伝子導入細胞を体内に戻すという、「ex vivo法」等がある。
「in vivo法」は費用や手間が少なく、簡便である点で好ましく、「ex vivo法」は、遺伝子の細胞内への導入効率が良いという点で好ましい。
「in vivo法」により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択することができる。投与経路としては、例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内、胃(カテーテル経由)等が挙げられる。
「in vivo法」によって投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとることができる。一般的には遺伝子を含有する注射剤等の形態が好ましく、必要に応じて、注射剤等に常用されている各種の成分等を加えることもできる。
また、遺伝子を含有するリポソーム又は膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態として用いることができる。
(投与量)
本発明の予防又は治療剤の投与量は、投与経路、症状、患者の年齢、体重、予防又は治療剤の形態等によって異なるが、例えば、予防又は治療剤中の有効成分の量が、処置を必要としている対象体重1kg当たり好ましくは0.005〜500mg、より好ましくは、0.1〜100mg、但し、成人に対して1日あたり、下限として好ましくは0.01mg(より好ましくは0.1mg)、上限として、好ましくは20g(より好ましくは2000mg、更に好ましくは500mg、特に好ましくは100mg)となるように、1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが望ましい。
尚、本発明の予防又は治療剤中の有効成分が、遺伝子の場合、例えば、遺伝子として0.0001〜100mg、好ましくは、0.001〜10mg等を、数日乃至数ヶ月に1回程度等投与するのが好ましい。
《対象疾患》
本発明の予防又は治療剤の、予防又は治療の対象となる疾患は、下記a)乃至c)のいずれかの異常に起因する疾患である。
a)RhoAシグナル伝達
b)アクチンフィラメントの伸縮
c)血管新生
a)の異常に起因する疾患としては、例えば、「血管免疫芽球性T細胞リンパ腫」等を含む「癌」、「高血圧」、「心疾患」等が挙げられる。
b)の異常に起因する疾患としては、例えば、「癌」、「心疾患」の他、「神経疾患」等が挙げられる。
c)の異常に起因する疾患としては、例えば、「癌」、「糖尿病」、「動脈硬化」、「心筋梗塞」、「眼内血管新生病(糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、水晶体後線維増殖症、角膜血管新生、血管新生緑内障)」、「関節リュウマチ」、「尋常性乾癬」、「粥状動脈硬化症」、「虚血性心疾患」、「アルツハイマー病」等が挙げられる。
[本発明のスクリーニング方法]
本発明のスクリーニング方法は、下記(I)乃至(III)のいずれかの制御能を指標とし、下記(A)乃至(E)のいずれかをスクリーニングすることを特徴とするものである。
(I)CUL3とKCTD10との間の相互作用
(II)KCTD10とRnd2との間の相互作用
(III)Rnd2とRhoAとの間の相互作用
(A)E3制御剤
(B)RhoAシグナル制御剤
(C)アクチンフィラメントの伸縮制御剤
(D)血管新生制御剤
(E)RhoAシグナル伝達、アクチンフィラメントの伸縮、あるいは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤
「(I)乃至(III)のいずれかの制御能を指標とする」とは、候補物質の添加で、「(I)乃至(III)」のいずれかの相互作用が、阻害または促進されるか否かを調べることによって、候補物質の選択の可否を決定することを意味している。
蛋白質の相互作用の阻害又は促進は、蛋白質相互作用を確認できる常法によって確認することができるが、例えば、酵母ツーハイブリッド法や、共免疫沈降法、プルダウンアッセイ法のほか、下記試験例等でも用いているAlphaScreenTMシステム等が挙げられる。
AlphaScreenTMシステムとは、PerkinElmer社の公知のシステムであって、主に次のような原理・手法を用いるものである。
(詳細は、"http://www.perkinelmer.com/category/alpha-kits"等参照)
(原理)
相互作用を確認したい2つの蛋白質を、それぞれ下記(1)、(2)のビーズに結合させる。
2つの蛋白質が相互作用(結合)し、(1)、(2)のビーズが200nm以内の範囲内に近接した時に初めて、(2)内部のチオキシン誘導体の発光が生じる。
この発光シグナルを検出することによって、蛋白質の相互作用を確認することができる。
(使用ビーズ)
(1)Donor Beads(PerkinElmer社製):フタロシアニン(680nmの光を受けることで周囲の酸素を励起させ、一重項酸素に変換する、フォトセンシタイザー)を内部に含むビーズ。
(2)Acceptor Beads(PerkinElmer社製):チオキシン誘導体(一重項酸素から受け取ったエネルギーによって520〜620nmの光を発する)を内部に含むビーズ。
(各被験蛋白質とビーズの結合)
例えば、下記の関係を利用することができる。
「ストレプトアビジン」−「ビオチン」
「抗原」−「抗体」(例:(「FLAGタグ」及び「抗FLAG抗体」)
(発光シグナルの検出)
EnVision Reader (PerkinElmer社製)等を用いて検出できる。
[実施例1〜2:E3コンポーネント]
上述した、KCTD10遺伝子(実施例1)、又はKCTD10蛋白質(実施例2)からなる、E3リガーゼコンポーネントを製造する。
これらのE3リガーゼコンポーネントを投与することによって、生体内でE3複合体の生成が促進され、Rnd2のポリUb化及び分解を通じて、活性型RhoAの量を減少させ、RhoAシグナル伝達、F-actinの伸縮、或いは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療が可能と考えられる。
[実施例3〜6:E3阻害剤]
KCTD10遺伝子に対するsiRNA分子(実施例3〜5:配列番号1〜6)、又は公知の免疫方法等によって得られる抗KCTD10抗体(実施例6)を含む、E3阻害剤を製造する。
このE3阻害剤によって、生体内で有効に機能するRnd2量、ひいては活性型RhoAの量が増加し、RhoAシグナル伝達、F-actinの伸縮、或いは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療が可能と考えられる。
[実施例7、8:その他の制御剤、又は予防・治療剤]
Rnd2遺伝子に対するsiRNA分子(実施例7)、又は抗Rnd2抗体(実施例8)を用いた、制御剤を製造する。
この制御剤によって、生体内で有効に機能するRnd2量、ひいては活性型RhoAの量が減少し、RhoAシグナル伝達、F-actinの伸縮、或いは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療が可能と考えられる。
[試験例]
以下の試験例によって、本発明のE3や各種の制御剤等の効果を確認した。
尚、各試験例において用いたsiRNAや、蛋白質の分離・検出方法は下記の通りである。
《材料及び方法:Material and method》
(siRNA試薬)
siCONT(コントロールsiRNA):
MISSION siRNA Universal Negative Control #1(型番:SIC-001)
siKCTD10(Sigma社製):
siKCTD10(#1):上述の配列番号1及び2
siKCTD10(#2):上述の配列番号3及び4
siKCTD10(#3):上述の配列番号5及び6
尚、試験例7(#1〜#3の比較試験)等が示す通り、「siKCTD10(#3)」が最もKCTD10ノックダウン効率が良かったため、他の試験例では、「#3」を用いた。
siCUL3(Sigma社製):
sense:5’gaguguaugaguuccuauuTT(配列番号7)
antisense:5’aauaggaacucauacacucTT(配列番号8)
(蛋白質の分離)
10−20%グラジエントゲルによる、SDS-PAGE電気泳動によって、被験試料中の蛋白質を分離し、下記方法による蛋白質の検出に用いた。
(蛋白質の検出:Western Blotting)
SDS-PAGE電気泳動で用いたゲルから、PVDF膜(Bio-Rad社製)に蛋白質を転写した後、下記の試薬・機器等を用いて、Western Blottingによる蛋白質検出を行った。
(一次抗体、二次抗体、二次抗体の標識)
表1記載のものを使用した。
(二次抗体標識の発光基質)
ECL Prime Western Blotting Detection Reagent (GEヘルスケアバイオサイエンス社製)
(検出機器)
CCDカメラタイプ画像解析装置:
Image Quant LAS-4000(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)
[試験例1:E3基質のスクリーニング]
E3の基質を見つけるために、KCTD10と相互作用する蛋白質をスクリーニングした。
《AlphaScreenTM
AlphaScreenTMシステムを用いて、KCTD10と相互作用する蛋白質を広く探索した。
尚、AlphaScreenTMシステムには、下記の2種のビーズを用いた。
(ビオチンタグ結合KCTD10の捕獲用ビーズ)
上述のDonor Beads(PerkinElmer社製)に、ストレプトアビジンを結合したもの。
(FLAGタグ結合蛋白質の捕獲用ビーズ)
上述のAcceptor Beads(PerkinElmer社製)に、ProteinAを介して抗FLAG抗体(抗DYKDDDDK抗体、Wako社製)を結合させたもの。
(被験蛋白質)
被験蛋白質群としては、下記のものを用いた。
20000 protein array(FLAG及びGSTタグを付加した20000個の蛋白質)
尚、被験蛋白質のGSTタグは、当該蛋白質の精製や検出等が必要な場合に備えて付加したものである。
(コントロール)
positive control:「FLAG-CUL3」
384-AlphaScreen plateの各wellに、上記の被験蛋白質群、又はコントロールを、それぞれ分注した。
各wellに、ビオチンタグを付加したKCTD10を分注し、更に、上記のAcceptor Beads及びDonor Beadsを添加後(Total volume :25 μL. Buffer組成: 100 mM Tris-HCl、pH 7.5、 1 mg/mL bovine serum albumin、0.1% Tween 20、100 mM NaCl)、1時間室温でインキュベートした。
分注にはFlexDrop dispenser (PerkinElmer社製)を用いた。
発光シグナルは、EnVision Reader (PerkinElmer社製)を用いて検出した。
《Rhoファミリーの結果の抽出》
20000蛋白質の結果(図示せず)を詳細に分析した上で、Rhoファミリーに標的を絞り、Rhoファミリーに属する蛋白質の結果のみを抽出し、図示した。
《結果》
結果を図1に示す。
上記の図は、Rhoファミリーの中でも、Rnd蛋白質(Rnd2、3等)が、KCTD10との相互作用が強いことを示している、つまりRnd蛋白質が、“本発明のE3(アダプター:KCTD10)”の基質候補であることを示している。
尚、図1によれば、Rnd2よりもRnd3の方が、KCTD10との親和性がはるかに強かったが、後述する試験例6(図6−1)において、F-actinの伸縮や血管新生の制御に関与しているのは、Rnd1〜3の中でもRnd2のみであることを確認している。
《考察》
そのため、本発明者等は、「本発明のE3」の基質として、産業上の高い利用性が見込めるRnd2を選択した。
以下の試験例では、“本発明のE3(アダプター:KCTD10)”の基質として、Rnd2を使用した。
[試験例2:E3のノックダウン(siCUL3やsiKCTD10)によるRnd2分解抑制の確認]
《E3ノックダウン》
HUVEC(EGM-2培地、Lonza株式会社製)に、上述のsiCUL3やsiKCTD10(#3)、又はsiCONTをそれぞれリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いてトランスフェクションした。
《細胞培養》
6-wells plateにて64時間培養後、10μM MG132 (Sigma社製) 添加群、及びDMSO添加群に分け、8時間引き続き培養した。
尚、2群に分けた理由は、下記の通りである。
細胞に内在するプロテアソームの活性を抑制しない状況下では、ポリUb化Rnd2のプロテアソームによる分解の結果、残ったRnd2の一部までもが、引き続きポリUb化・分解され、本来検出されるべきRnd2の量が減ってしまうリスクがある。
そのため、プロテアソーム阻害剤であるMG132を添加した群も用意した。
《細胞溶解液の回収》
その後細胞をSDS-sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2%ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、0.005% ブロモフェノールブルー)にて処理し、細胞溶解液を回収した。
《蛋白質の回収》
回収した細胞溶解液について、上述のSDS-PAGE及びWestern Blottingを行い、表1に示した抗Rnd2抗体、抗CUL3抗体、抗KCTD10抗体、抗β-actin抗体を用いてそれぞれの蛋白質を検出した。
《結果》
結果を図2に示す。
E3のコンポーネントであるCUL3又はKCTD10のいずれかをノックダウンすることによって、Rnd2の発現量が増加していることが分かった。
尚、予想通り、MG132添加群の方が、DMSO添加群よりも、(E3ノックダウンによる)Rnd2の増加の様子が、より明確に確認できた。
《考察》
上記の図は、上記試験例1の、KCTD10とRnd2との相互作用の結果と共に、Rnd2が“本発明のE3(アダプター:KCTD10)”の基質である可能性を示している。
[試験例3:Rnd2のポリUb化の確認]
《Rnd2の過剰発現》
HUVEC(EGM-2培地、 Lonza株式会社製)に、レンチウィルスを用いて、Hisタグを付加したユビキチン(His−Ub)及びGFPタグを付加したRnd2を過剰発現させた(但し、今回の検出ではGFPタグは未利用)。
コントロールとして、His−Ubのみを過剰発現させたものを用いた。
《プロテアソームの阻害》
レンチウィルス感染48時間後、細胞に内在するプロテアソームの活性阻害によってRnd2のポリUb化をより正確に把握するため、10μMのMG132を添加し、8時間インキュベーションを行った。
《細胞溶解液の回収》
HUVECを8M Urea、20mM Tris-HCl pH 7.6、0.5M NaCl、5mM imidazoleを含むbufferで処理し、細胞溶解液を回収し、一部を「Input」試料として回収した。
《プルダウン(Pull-down)処理》
Inputを回収した残りの細胞溶解液から、TALON(登録商標)Metal Affinity Resins(Cobalt結合アガロースビーズ)にて、Hisタグが付加された蛋白質を回収し、8M Urea、20mM Tris-HCl pH 7.6、0.5M NaCl、5mM imidazoleを含むbufferによって3回洗浄後、SDS-sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2 %ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、0.005% ブロモフェノールブルー)処理によって細胞溶解液を回収し、「Pull-down」試料とした。
《蛋白質の検出》
「Input」試料、及び「Pull-down」試料の各々について、SDS-PAGE後、Rnd2蛋白質を、表1に示す一次抗体(抗Rnd2抗体)や二次抗体等を用いてWestern Blottingにて検出した。
ちなみに、ビーズによって濃縮された「Pull-down」試料であっても、ポリUb化した(GFP−)Rnd2のバンドは、あまり濃くないことが予想された。
従って、「Pull-down」試料の検出時には、二次抗体の標識(HRP)の発光蓄積量を多くするため、露光時間を「Input」試料よりも長めにとった。
《結果》
結果を図3に示す。
「Pull-down」試料によって、抗Rnd2抗体に反応するスメアなバンドが、よりはっきりと確認できた。
つまり、HUVEC細胞内で、Rnd2がポリUb化されていることが確認できた。
尚、「Input」試料だけでなく、Hisタグが回収要件である筈の「Pull-down」試料においても、ポリUb化(GFP−)Rnd2のスメアなバンドの先端(下側)付近に、フリーの(GFP−)Rnd2と思われる濃いバンドが見られた。
これは、ポリUb化蛋白質の検出実験において時折見られる現象で、ポリUb化されずに残った多量の「フリーのRnd2」が、Hisタグの結合した「モノUb化Rnd2」との二量体形成等を介して、検出されたものと考えられる。
《考察》
上記の図は、Rnd2が、E3の基質であることを裏付けるものである。
[試験例4:KCTD10のノックダウンによるRnd2蛋白質の分解抑制]
《E3のノックダウンと細胞培養》
レンチウィルスを用いてGFP-Rnd2を過剰発現させたHUVEC(EGM-2培地、Lonza株式会社製)に対して、上述のsiCONTおよびsiKCTD10(#3)を、リポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてトランスフェクションし、72時間培養した。
その後、培養細胞中の蛋白質の代謝(分解)の様子を、より正確に把握するために、CHX(サイクロヘキシミド、Sigma社製、25 μg/mL)を添加し、培養細胞内での蛋白質の新たな生合成を停止させた。
《細胞培養液の回収》
CHX添加後0、1、2、3、4、5時間後に、生理食塩水で細胞を三回洗浄し、その後、SDS-sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2 %ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、0.005% ブロモフェノールブルー)処理によって細胞溶解液を回収した。
《蛋白質の検出》
細胞溶解液をSDS-PAGEで処理することによって蛋白質を分離し、細胞内に残存するGFP-Rnd2を、表1に示す一次抗体(抗GFP抗体)や二次抗体等を用いたWestern Blottingにより検出した。
また同時に、細胞内に残存するKCTD10についても表1の抗体等を用いて検出した。
《結果》
結果を図4に示す。
(siCONTの結果)
E3を阻害しない状況下では、Rnd2は徐々に代謝(分解)されていくのが確認された。
尚、KCTD10も蛋白質であるため、Rnd2と同様に徐々に代謝(自然分解)されて減少している。
(siKCTD10の結果)
E3を阻害することで、コントロールに比べてRnd2の分解スピードが、かなり抑制されていた。
《考察》
上記の図は、CUL3−KCTD10からなるE3によるユビキチン化システムが、Rnd2の分解の主な原因であること、つまり、Rnd2が「本発明のE3」の基質であることを示している。
[試験例5:Rnd2の過剰発現による活性型RhoAの増加]
《Rnd2の強制発現と細胞溶解液の回収》
レンチウィルスによりRnd1、Rnd2、Rnd3蛋白質を、単独あるいは図5に示したような組み合わせで強制発現させた8グループのHUVEC(EGM-2培地、 Lonza株式会社製)を、0.1% NP40(Nonidet p-40)、150 mM NaCl、20 mM Tris-HCl buffer pH 7.5にて処理し、細胞溶解液を回収した。
(Input試料)
15000 rpmで遠心分離し、上清を回収後、一部を「Input」試料とした。
(Pull-down試料)
「Input」試料を回収した後の残った上清に、Cytoskeleton社製のRhotekin-beadsを添加し、4℃にて30分間インキュベートすることによって、Rhotekinが特異的に結合する「活性型」のRhoAを沈降させた。
その後、Rhotekin-beadsを上述のNP40入りbufferで4回洗浄し、40 μLのSDS sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2 %ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、 0.005% ブロモフェノールブルー)にて活性型RhoAを溶解させ、「Pull-down」試料とした。
《蛋白質の分離・検出》
「Input」試料及び「Pull-down」試料について、表1の一次抗体、二次抗体等を用いて、上述のSDS-PAGE、Western Blottingによって、蛋白質の検出を行った。
《結果》
結果を図5に示す。
最上段のパネル(PD)は、Rhotekin-beads結合産物から溶出した、「Pull-down」試料中の活性型RhoAを検出したものである。
二段、三段、四段目のパネルは、「Input」試料について、RhoA、Rnd2、β-actinを、それぞれの抗体(表1)を用いて検出したものである。
また最下段のパネルは、「Pull-down」試料において、各グループでのRhotekin-beadsの使用量が同じであることを確認するため、結合産物中のRhotekin蛋白質をCBB染色にて検出したものである。
その結果、Rnd1〜Rnd3の中で、少なくともRnd2を過剰発現させなければ、活性型RhoAの顕著な増加は見られないことが分かった。
《考察》
上記の図は、本発明のE3制御剤、及びRnd2制御剤が、活性型RhoAの発現の制御剤となることを示すとともに、F-actinの伸縮や血管新生の制御剤ともなり得る可能性をも示唆している。
そこで、次の試験例において、これらの可能性について更に検証した。
[試験例6:各種Rnd蛋白質過剰発現による、F-actinの伸縮、細胞形態、或いは血管新生への影響]
《Rnd蛋白質の過剰発現》
レンチウィルスによりGFP、GFP-Rnd1、GFP-Rnd2又はGFP-Rnd3蛍光蛋白質のいずれかを強制発現させたHUVEC(EGM-2培地、 Lonza株式会社製)を、それぞれ以下の《1》〜《3》の3群に分けた。
尚、以下で用いたコラーゲンサンドイッチ法とは、「in vitro」において「in vivo」に近い三次元構造での細胞増殖を可能とする、公知の方法である(http://www.nitta-gelatin.co.jp/labo/cellmatrixman.pdf等参照)。
《1》F-actinの伸縮、細胞形態の確認
「6-wells dish」の各well中に「カバースリップ」を置き、コラーゲンサンドイッチ法を用いて、上記のHUVECを培養した。
具体的には、コラーゲンゲル(Cellmatrix Type I-A (新田ゼラチン株式会社製)を、カバースリップ上に薄く塗布し、各HUVECを播種し、更にコラーゲンゲルを滴下して固めた。
次に、培地中の濃度が50 ng/ mlとなるように、VEGF-A(R&D社製)を添加することで、血管新生を誘導した。
VEGF-A刺激72時間後、4%パラホルムアルデヒド(Wako社製)にて細胞を30分固定し、Rhodamine phalloidin (Thermo Fisher Scientific社製)1000倍希釈にてF-actinを染色した。
正立型蛍光顕微鏡(Olympus社製)にて蛍光写真を撮影した(図6−1、左から2列目の写真)。
また、同時に表1に示した抗GFP抗体等によって、GFPを指標とする検出も行った(図6−1、一番左の列の写真)。
《2》血管新生の確認
コラーゲンサンドイッチ法を用いて、以下の様にして、上記のHUVECを培養した。
具体的には、6-wells dishの各wellの底に、コラーゲンゲル(Cellmatrix Type I-A (新田ゼラチン株式会社製)500μLを敷いて固め、その上に各HUVECを播種し、再び500μLのコラーゲンゲルでサンドして固めた。
次に、培地中の濃度が50 ng/ mlとなるように、VEGF-A(R&D社製)を添加することで、血管新生を誘導した。
VEGF-A刺激72時間後、培地中にCalcein AM(同仁化学製品)を1000倍希釈にて添加し、30分後、正立型蛍光顕微鏡(Olympus社製)にて蛍光写真を撮影した(図6−1、一番右の写真:倍率×40)。
《3》GFPタグによるRnd蛋白質の検出
6-wells dishの各wellに播種した上記のHUVECを、生理食塩水によって3回洗浄後、SDS-sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2 %ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、 0.005% ブロモフェノールブルー)処理によって細胞溶解液を回収した。
この回収液を用いて、GFP、GFP-Rnd1、GFP-Rnd2又はGFP-Rnd3蛍光蛋白質各々の発現量について、上述のSDS-PAGE、Western Blottingにて確認した(図6−2)。
《結果》
結果を図6−1、図6−2に示す。
図6−1によれば、Rnd2を過剰発現させたもののみが、F-actinの伸長を促進し、細胞が丸くなり、血管新生も阻害していた。
尚、図6−2によって、トランスフェクションされた各Rnd蛋白質の発現量は、ほぼ同じであることが確認できた。
《考察》
上記の図は、試験例5の結果(図5)と共に、「Rnd2の制御物質」、及び「Rnd2を基質とする本発明のE3」が、F-actinの伸縮や血管新生の制御剤となることを示している。
[試験例7:各種KCTD10のノックダウンによる活性型RhoAの増加]
《E3のノックダウン》
HUVEC(EGM-2培地、Lonza株式会社製)に、上述のsiCUL3及び3種のsiKCTD10(#1、#2、#3)(Sigma社製)を、それぞれリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いてトランスフェクションした。
《細胞溶解液の回収》
6-wells plateにて72時間培養後、0.5% NP40、150 mM NaCl、20 mM Tris-HCl buffer pH 7.5にて処理し、細胞溶解液を回収した。
(Input試料)
15000 rpmで遠心分離し、上清を回収後、一部を「Input」試料とした。
(Pull-down試料)
「Input」試料を回収した後の残った上清に、Cytoskeleton社製のRhotekin-beadsを添加し、4℃にて30分間インキュベートすることによって、Rhotekinが特異的に結合する「活性型」のRhoAを沈降させた。
その後、Rhotekin-beadsを上述のNP40入りbufferで4回洗浄し、40 μLのSDS sample buffer(62.5 mM Tris-HCl、2 %ドデシル硫酸ナトリウム、5% glycerol、0.005% ブロモフェノールブルー)にて活性型RhoAを溶解させ、「Pull-down」試料とした。
《蛋白質の分離・検出》
「Input」試料とともに、「Pull-down」試料について、表1の一次抗体、二次抗体等を用いて、上述のSDS-PAGE、Western Blottingによって、蛋白質の検出を行った。
《結果》
結果を図7に示す。
「本発明のE3」のコンポーネントである、CUL3又はKCTD10のノックダウンによって、活性型RhoAが増加していたが、Rac1及びCdc42については、増加が見られなかった。
ここで活性型RhoAは、アクチンポリマーの縦方向の重合(F-actinの伸長)促進に必要な因子である。
一方、Rac1及びCdc42は、アクチンポリマーの枝分かれに必要な因子である。
《考察》
つまり上記の図は、本発明のE3制御剤が、RhoAシグナルの制御剤となることを示している。
[試験例8:KCTD10発現制御によるF-actin過重合と細胞形態、血管新生の制御]
《E3のノックダウン》
レンチウィルスによりmCherry蛍光蛋白質又はKCTD10を過剰発現させたHUVEC(EGM-2培地、 Lonza株式会社製)に、siKCTD10をそれぞれリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いてトランスフェクションした。
尚、コントロールとして、mCherry蛍光蛋白質を過剰発現させ、上述のsiCONTをトランスフェクションしたものを用いた。
《血管新生誘導》
5時間後にCellmatrix Type I-A (新田ゼラチン株式会社製)を用いて、コラーゲンサンドイッチ法によりHUVECを「カバースリップ」及び「6-wells dish」上でそれぞれ培養し、50 ng/ml濃度になるようにVEGF-A(R&D社製)を培地中に添加することで血管新生を誘導した。
《血管新生の確認(1):6-wells dish培養群》
VEGF-A刺激72時間後、培地中にCalcein AM(同仁化学製品)を1000倍希釈にて添加し、30分後、正立型蛍光顕微鏡(Olympus社製)にて蛍光写真を撮影した(図示せず)。
Calcein AM染色による血管長について、Image-pro-plus(日本ローパー社製)にて定量化した(図8−1(左))。
《血管新生の確認(2):カバースリップ培養群》
VEGF-A刺激72時間後、4%パラホルムアルデヒド(Wako社製)にて細胞を30分固定し、Alexa488 phalloidin (Thermo Fisher Scientific社製)1000倍希釈にてF-actinを染色した。
正立型蛍光顕微鏡(Olympus社製)にて蛍光写真を撮影した(図8−2、倍率×200)。
F-actin蛍光強度について、Image-pro-plus(日本ローパー社製)にて定量化した(図8−1(右))。
《結果》
結果を図8−1、8−2に示す。
KCTD10の発現阻害(siKCTD10)によって、F-actinが過重合となり、血管長が短くなる(血管新生が阻害される)が、siKCTD10に先立って、KCTD10を過剰に発現させた場合には、当該過重合が起こらず、血管長の短縮化も生じなかった(図8−1)。
また、KCTD10の発現阻害により、アクチンの蛍光強度が増加し、細胞形態も丸くなったが、阻害に先立って予めKCTD10を過剰発現させておいた場合には、アクチン発光強度も増加しておらず、細胞形態も丸くなっていなかった(図8−2)。
《考察》
上記の図は、本発明のE3の制御剤(siKCTD10及びKCTD10)が、F-actinの伸縮や血管新生の制御剤となることを示している。
[試験例9:各種BTB蛋白質阻害による、F-actinの伸縮、細胞形態、及び血管新生への影響]
《試験例9−1:各種BTB蛋白質のノックダウン》
(BTB蛋白質のノックダウン)
AlphaScreenTMにより検出した、CUL3結合パートナーとなり得るBTB蛋白質(118種)に対する、siRNA(Thermo Fisher Scientific社製)、又はsiCONTを、それぞれHUVEC(EGM-2培地、Lonza株式会社製)にリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いてトランスフェクションした。
(血管新生の誘導)
5時間後にCellmatrix Type I-A (新田ゼラチン株式会社製)を用いて、コラーゲンサンドイッチ法によりHUVECを「96-wells plate」中で培養し、50 ng/ ml濃度になるようにVEGF-A(R&D社製)を培地中に添加することで血管新生を誘導した。
(F-actinの伸長の程度と血管長の確認)
VEGF-A刺激72時間後、培地中にCalcein AM(同仁化学製品)を1000倍希釈にて添加した。
30分後、正立型蛍光顕微鏡(Olympus社製)にて蛍光写真を撮影した(図示せず)。
その後、4%パラホルムアルデヒド(Wako社製)にて細胞を2時間固定し、Rhodamine phalloidin (Thermo Fisher Scientific社製)1000倍希釈にてF-actinを染色した。Rhodamine phalloidinの染色によるF-actinの蛍光強度(縦軸)及び、Calcein AM染色による血管長(横軸)について、Image-pro-plus(日本ローパー社製)にて定量化し、グラフ化した(図9−1)。
《試験例9−2:KCTD10のノックダウン》
(KCTD10のノックダウン)
siCONT、又はsiCUL3或いはsiKCTD10(#3)を、それぞれHUVEC(EGM-2培地、 Lonza株式会社製)にリポフェクタミンRNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)を用いてトランスフェクションした。
(血管新生の誘導)
5時間後にCellmatrix Type I-A (新田ゼラチン株式会社製)を用いて、コラーゲンサンドイッチ法によりHUVECを「カバースリップ」上で培養し、50 ng/ ml濃度になるようにVEGF-A(R&D社製)を培地中に添加することで血管新生を誘導した。
(F-actinの伸縮と細胞形態の観察)
VEGF-A刺激72時間後、4%パラホルムアルデヒド(Wako社製)にて細胞を30分固定し、Alexa488 phalloidin (Thermo Fisher Scientific社製)1000倍希釈にてF-actinを染色した。Alexa488の蛍光シグナルを共焦点レーザー顕微鏡(Nikon社製)にて撮影し、F-actinの重合の程度と細胞形態を観察した(図9−2)。
《結果》
上記試験例の結果を図9−1、9−2に示す。
図9−1では、CUL3と相互作用をする他のBTB蛋白質の中でも特にKCTD10が、ノックダウンによる「F-actinの発現強度増加」や「血管長の短縮化」が顕著であることが分かった。
図9−2では、CUL3又はKCTD10のノックダウンによって、共に蛍光強度が強くなり、F-actinの過重合が見られ、また細胞が丸くなり、細胞伸展に異常が見られることが分かった。
《考察》
上記の図は、産業上利用性の高い本発明のE3のアダプターとして、KCTD10が該当すること、及び本発明のE3制御剤が、F-actinの伸縮又は血管新生の制御剤となることを示している。
[まとめ]
試験例1〜9の結果を総合することによって、本発明のE3コンポーネント、E3、E3制御剤、Rnd2の制御物質等が、それぞれRhoAシグナル伝達、F-actinの伸縮、及び血管新生の、制御剤となることが判明した。
本発明の新規ユビキチンリガーゼコンポーネント及びユビキチンリガーゼ及びその制御剤は、RhoAシグナルその他を制御することによって、種々の疾患等の予防又は治療に用いることができる。

Claims (7)

  1. KCTD10からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント。
  2. KCTD10及びCUL3からなる、ユビキチンリガーゼコンポーネント。
  3. リガーゼ活性本体としてCUL3を含むユビキチンリガーゼであって、アダプター部位がKCTD10であることを特徴とする、ユビキチンリガーゼ。
  4. KCTD10を制御する物質を含むことを特徴とするユビキチンリガーゼ制御剤。
  5. 下記1)乃至4)の少なくとも1つを含むことを特徴とする、下記a)乃至c)のいずれかの制御剤。
    1)請求項1又は2に記載のユビキチンリガーゼコンポーネント
    2)請求項3に記載のユビキチンリガーゼ
    3)請求項4に記載のユビキチンリガーゼ制御剤
    4)Rnd2の制御物質
    a)RhoAシグナル伝達
    b)アクチンフィラメントの伸縮
    c)血管新生
  6. 請求項5に記載の制御剤を含むことを特徴とする、下記a)乃至c)のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤。
    a)RhoAシグナル伝達
    b)アクチンフィラメントの伸縮
    c)血管新生
  7. 下記(I)乃至(III)のいずれかの制御能を指標とする、下記(A)乃至(E)のいずれかのスクリーニング方法。
    (I)CUL3とKCTD10との間の相互作用
    (II)KCTD10とRnd2との間の相互作用
    (III)Rnd2とRhoAとの間の相互作用
    (A)E3制御剤
    (B)RhoAシグナル制御剤
    (C)アクチンフィラメントの伸縮制御剤
    (D)血管新生制御剤
    (E)RhoAシグナル伝達、アクチンフィラメントの伸縮、あるいは血管新生のいずれかの異常に起因する疾患の予防又は治療剤
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