<第1実施形態>
(概略)
近年、スマートフォンやタブレットなどの高機能な移動通信端末が爆発的に普及している。これらの移動通信端末によって用いられる移動体通信網は、第3世代(3G:3rd Generation)から第4世代(4G:4th Generation)に移行し、現在では次世代の第5世代(5G:5th Generation)の移動通信網の研究開発が進められている。この5Gの研究開発において、マクロセル及びスモールセルの利用が検討されている。従来の移動体通信では、1つの基地局装置が半径数キロメートル程度のサービスエリア(以下「マクロセル」という。)をカバーしている。しかしながら、このようなマクロセル内には、膨大な数のユーザが存在するため、システムリソースは多くのユーザ端末で共有されることになる。その結果、ユーザごとのスループットが低下する。
このようなスループットの低下を回避するために、トラヒックが集中する人口密集地に半径数十メートル程度の非常に小さなサービスエリア(以下「スモールセル」という。)を設け、マクロセルのトラヒックをスモールセルにオフロードする技術が研究されている。このような技術により、ユーザ端末はスモールセルとマクロセルとを同時並行的に使用して通信することが可能となる。例えば、スモールセルを使用可能な状況では、マクロセルを基地局装置との間の制御通信に用い、スモールセルをユーザのデータ通信に用いることで、マクロセルのメリットとスモールセルのメリットとを最大限に有効利用することが可能になる。
このようなトラヒックのオフロードを効率的に行うためにスモールセルには大容量の通信が可能であることが求められる。一方でマクロセルにおいては、長距離伝搬を許容するために周波数の低いマイクロ波帯を利用することが前提となる。これに対して比較的近距離での通信が想定されるスモールセルにおいては、既に周波数資源が枯渇しつつあるマイクロ波帯の現状を踏まえ、周波数の高い準ミリ波帯又はミリ波帯の利用が想定される。無線電波の伝搬減衰は、周波数の二乗に比例して大きくなるため、高周波数帯の利用が想定されるスモールセルの基地局装置は、ユーザ端末に近い場所に設置されることが望ましい。例えば、ビルの屋上は基地局装置の設置が容易な場所ではあるが、ユーザ端末と基地局装置との間の距離が大き過ぎ、設計面では好ましくない。その一方で、スモールセルはトラヒックが集中する場所に設定されることが想定されるため、光ファイバの敷設が困難な場所であっても、基地局装置の設置が強く望まれる場合もある。
例えば、スモールセルの基地局装置を非常に多くの人が密集する場所(例えば、都心におけるターミナル駅の駅前など)に設置することを想定した場合、隣接するビルの屋上に基地局装置を設置すると伝搬減衰が大きくなるため、ビルの屋上よりも低い場所として例えばビルの壁面などに基地局装置を設置することを求められる場合がある。しかしながら、既設のビル壁面に光ファイバを敷設することは困難な場合がある。そのため、このような場合には、基地局装置までのバックホール回線を無線回線で構築する必要に迫られる可能性がある。
一方で、1つの基地局装置で広範囲のサービスエリアをカバーするマクロセルと異なり、比較的狭いエリアに多数の基地局装置が設置されるスモールセルを実現する技術として「無線フロントホール」がある。無線フロントホールは、変復調を含むデジタル信号処理の大部分を担う信号処理部と、デジタル信号と無線周波数のアナログ信号との間の変換処理を担うRF(Radio Frequency)部とに分離して基地局装置を構成する技術である。一般に、前者の信号処理部はBBU(Base Band Unit)と呼ばれ、後者のRF部はRRH(Remote Radio Head)と呼ばれる。無線フロントホールは、1つのBBUが多数のRRHを集中制御することで、保守性及び監視性を高めるとともに、複数の基地局装置(実質的にはRRH)が連携して無線信号を送受信することを可能にしている。この場合、BBUは局舎などの1か所に集約して設置され、RRHはビル壁面などに多数設置される。BBUとRRHとは光ファイバで接続され、この光ファイバを介して両者の間でデジタルサンプリングデータが伝送される。
ここで、光ファイバ上での伝送に求められる符号誤り率は10−12程度である。一般に光回線よりも遥かに符号誤り率が高い無線回線をバックホール回線に用いながら、光回線と同等の品質を満たすことは困難である。この符号誤り率を1回の送信で実現する場合、例えば、非常に指向性利得の高い開口面積の大きなパラボラアンテナを送受信局で対向させ、反射波成分をほぼ無視可能な状態で固定的な通信を行うなど、周波数選択性歪のない非常に静的かつ安定した通信環境が必要となる。しかしながら、例えばビル屋上に設置されたパラボラアンテナ同士を対向させる場合と異なり、ビル間の反射波などが無視できない環境ではパラボラアンテナを用いても周波数選択性歪を完全に除去することはできない。さらに、大型のパラボラアンテナはアンテナ面積が大きいため受ける風圧も大きく、そのような風圧に耐えうる頑丈な土台を設けるなど構造面での対応が求められる。しかしながら、バックホール回線を無線回線で構築するために、例えばビルの壁面などに無線局を設置する場合、そのような場所に大きなパラボラアンテナを安全に設置することは困難である。そのため、このような設置環境では必然的に開口面積が小さいアンテナが選択されることとなり、その結果、アンテナの指向性は弱まり反射波の影響を受けやすくなる。すなわち、ビルの壁面などに無線局を設置する場合、周波数選択性歪が少なからず生じることなり、ビル内に通信エラーの発生しやすいフロアが生じてしまう。これは、SNR(Signal-to-Noise Ratio:信号対雑音電力比)を大きく改善できたとしても、一定のレベルまでしかPDU(Protocol Data Unit:プロトコルデータユニット)の誤り率を改善できないことを意味する。その結果、無線通信区間におけるPDUの誤り率は10−12より大幅に劣化することになる。
しかしながら、仮に無線通信区間における1回の伝送当たりのPDUの誤り率が高い場合であっても、PDUを複数回送信することにより光回線と同レベルの符号誤り率を実現することは可能である。そのため、同じPDUの送信を再送も含めて複数回送信することができるように制御すること(以下「再送制御」という。)が無線フロントホールの品質を向上させる現実的な解となる。例えば、無線通信区間を所定サイズで伝送されるPDUの符号誤りが再送によっても補償されなかったとき、そのPDUの全ビットで符号誤りが発生したとみなして要求性能が定められる場合、無線通信区間におけるPDUの目標誤り率は最も厳しい10−12に設定される必要がある。ただし、実際には、PDUの符号誤りはごく一部のビットに発生する程度であり、PDUの符号誤りがある程度許容される場合もあるため、上記の目標誤り率はもう少し高い値に設定できる可能性もある。この辺の考え方はシステムの設計方針により異なるが、いずれにしても無線通信区間におけるPDUの伝送には非常に低い目標誤り率が求められる。このような無線通信システムに再送制御を適用することが可能になれば、不安定な無線回線上においても低い誤り率を実現することは可能である。
一方、世界の主要通信事業者のアライアンスであるNGMN(Next Generation Mobile Networks)などにおいて5Gに対する要求条件が検討されている。例えば、10Gbit/s以上の伝送速度の実現や、時速100km/h以上で高速移動する通信端末への追従性や、現在の無線ネットワークと比べて同時接続端末数を100倍以上に増やすなど、非常に厳しい要求条件が設定されている。この5Gに向けた無線アクセスにおける最も厳しい要求条件の1つとして、無線通信区間における伝送遅延時間を1ミリ秒以内に抑えることが議論されている。
ここで、基地局装置へのバックホール回線の一部を無線化する場合、伝送遅延時間を1ミリ秒以下に抑えるためには、許容される伝送遅延時間の大半をより条件の厳しいラスト1ホップの無線通信に割り当てることになると考えられる。この点に関して明確な指標があるわけではないが、バックホール回線で許容される伝送遅延時間は概ね要求条件である1ミリ秒の10〜20%程度、すなわち100〜200マイクロ秒程度と見積もることができる。したがって、上述の再送制御もこの時間内で完了することが求められる。
図1は、第1実施形態の無線通信システムの具体例を示す概略図である。無線通信システム100(無線通信装置の一例)は、1つのBBU201(Base Band Unit)(信号処理部の一例)と、そのBBUに接続する複数のRRH202(Remote Radio Head)(無線通信部の一例)と、を備える。BBU201及び複数のRRH202は、光ファイバ等のフロントホール(図示せず)によって接続されることで無線基地局装置として機能する。ここで、各RRH202は複数のアンテナ素子を有し、任意のユーザ端末203に対して指向性ビームを形成して通信することが可能である。指向性ビームの形成は、既存のどのような技術を用いて実現されてもよい。また、BBU201は、これらの各RRH202とユーザ端末203との間の通信を管理する。各ユーザ端末203は複数のRRH202との間での空間多重伝送により、複数のRRH202と同時並行的に通信することができる。
図1は、BBU201が局舎等に収容され、複数のRRH202−1〜202−12がビル壁面に設置された例を示している。この場合、ビル付近に位置するユーザ端末203(例えば図中の203−1〜203−3)は、いずれかのRRH202を介してBBU201に接続する。BBU201に接続したユーザ端末203は、例えばインターネット等の上位ネットワークUNに接続することができる。図1は、ユーザ端末203−1がRRH202−1〜202−3、202−7及び202−8を介してBBU201に接続し、ユーザ端末203−2がRRH202−4及び202−9〜202−12を介してBBU201に接続し、ユーザ端末203−3がRRH202−5及び202−6を介してBBU201に接続する場合の例を示す。
このような無線通信システム100において、1つのユーザ端末203は1つのRRH202と通信するのが一般的である。しかしながら本来、無線フロントホール技術は複数のRRH202による協調伝送を包含する技術である。そのため、1つのユーザ端末203に対して、複数のRRH202を介した通信を行わせることも可能である。ただし、この場合、経由するRRH202ごとに無線回線の伝送品質が異なってくる。これは、例えば、ユーザ端末203との間の距離や見通しの状況などがRRH202ごとに異なるためである。
例えば図1において、ユーザ端末203−1がRRH202−1〜202−3及びRRH202−7〜202−8と通信すると仮定する。そして、ユーザ端末203−1と各RRH202との間でのPDU(Protocol Data Unit)の誤り率(PER:PDU Error Rate)が、RRH202−1で10−1、RRH202−2で10−2、RRH202−3で10−3、RRH202−7で10−4、RRH202−8で10−5であったと仮定する。
ここで、あるPERが値Pで与えられる場合、再送を含めたn回の送信によるPERはPnに改善される。この場合、仮に目標のPERが10−12であるとすると、RRH202−1では12回の送信によって目標品質が達成されることになる。しかしながら、これは同じRRH202−1を経由する通信経路でPDUを再送することを前提とした考えであり、RRH202−1を経由する通信経路において生じた伝送誤りの再送を別のRRHを経由する通信経路で行った場合、再送後の誤り率は同じ通信経路で再送した場合とは異なるものとなる。
例えば、RRH202−1を経由する通信経路で生じた伝送誤りの再送を、RRH202−8を経由する通信経路で行った場合、1回目の再送(合計で2回目の送信)によってPERは10−1×10−5=10−6となる。同様に、2回目の再送(合計で3回目の送信)によってPERは10−1×10−5×10−5=10−11となり、3回目の再送(合計で4回目の送信)によってPERは10−1×10−5×10−5×10−5=10−16となる。すなわち、複数の通信経路で並列して伝送を行う場合、再送時の通信経路を適切に選択することで、より少ない送信回数で誤り率を大幅に改善することが可能になる。
なお、本発明は1つのRRHのみと通信を行うユーザ端末を伝送品質の劣化に応じて別のRRHにハンドオーバさせる技術とは異なる。具体的には、本発明は唯一の通信経路を適切に切り替えるための技術ではなく、複数の通信経路を並列的に使用して通信する技術において、PDUを再送する際の通信経路を初回の送信に使用した通信経路を識別した上で選択する技術である。このため、本発明は、単なるルーティングやハンドオーバに関わる従来技術とは異なる技術である。以下、実施形態の詳細について説明する。
(詳細)
図2は、第1実施形態における無線通信システム100の機能構成の具体例を示す図である。図2に示す無線通信システム100は1台のBBU201とN(Nは1以上の整数)台のRRH202を備える。BBU201は、MAC層処理部301と、RRH202の数に応じたN個のベースバンド信号処理部302及び光インターフェース部303(以下「光I/F部」という。)と、伝送特性算出部304と、経路選択部305(再送経路選択部の一例)とを備える。
MAC層処理部301は、自装置が送受信する信号に対してMAC層の信号処理(以下「MAC層処理」という。)を行う。具体的には、MAC層処理部301は、無線通信区間での送受信に用いられるフレームフォーマットと、上位ネットワーク側での送受信に用いられるフレームフォーマットとの間の変換処理又は終端処理を行う。MAC層処理部301は、ダウンリンク(上位ネットワーク側からユーザ端末203に向かう通信)の受信フレームを無線通信区間のフレームフォーマットに変換してベースバンド信号処理部302に出力し、アップリンク(ユーザ端末203から上位ネットワーク側に向かう通信)の受信フレームを上位ネットワーク側のフレームフォーマットに変換して上位ネットワーク側に出力する。
また、MAC層処理部301は、送信信号の種別に応じて、信号の送信に使用する通信経路を決定する。具体的には、MAC層処理部301は、新規に発生した送信信号についてはBBU201に接続しているRRH202の中から順番に通信経路を決定する。その一方で、MAC層処理部301は、既に送信された信号の再送のために発生した送信信号についてはBBU201に接続しているRRH202の中から優れた伝送特性を持つRRH202を通信経路として決定する。
ベースバンド信号処理部302は、自装置が送受信する信号に対して変復調を含む信号処理(以下「ベースバンド信号処理」)を行う。具体的には、ベースバンド信号処理部302は、ダウンリンクの送信信号に対して変調を含むベースバンド信号処理を行って光I/F部303に出力し、アップリンクの受信信号に対して復調を含むベースバンド信号処理を行ってMAC層処理部301及び伝送特性算出部304に出力する。
光I/F部303は、自装置が送受信する信号に対して電気信号と光信号との間の変換処理を行う。具体的には、光I/F部303は、ダウンリンクの送信信号を電気信号から光信号に変換して光ファイバ伝送路に出力し、アップリンクの受信信号を光信号から電気信号に変換してベースバンド信号処理部302に出力する。
伝送特性算出部304は、ベースバンド信号処理部302から出力されるアップリンクの受信信号に基づいて、各RRH202を通信経路として選択した場合の伝送特性を算出する。例えば、伝送特性算出部304は、各RRH202が受信したアップリンクの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio:信号対干渉雑音電力費)を伝送特性として算出する。伝送特性算出部304は、算出した伝送特性を示す情報(以下「伝送特性情報」という。)を経路選択部305に出力する。
経路選択部305は、伝送特性算出部304が算出した通信経路ごとの伝送特性に基づいて、再送発生時に通信経路として使用するRRH202を選択する。なお、経路選択部305は、通信経路の選択の都度、伝送特性算出部304から伝送特性情報を取得してもよいし、取得した伝送特性情報を内部の記憶領域等に保持してもよい。伝送特性算出部304は、新たな伝送特性情報が出力された場合、その時点で保持している伝送特性情報を新たな伝送特性情報で更新してもよい。
続いてRRH202の構成について説明する。N個のRRH202は、それぞれ光I/F部401と、無線周波数信号処理部402とを備える。光I/F部401は、BBU201が備える光I/F部303と同様であり、自装置が送受信する信号に対して電気信号と光信号との間の変換処理を行う。具体的には、光I/F部401は、ダウンリンクの送信信号を光信号から電気信号に変換して無線周波数信号処理部402に出力し、アップリンクの受信信号を電気信号から光信号に変換して光ファイバ伝送路に出力する。
無線周波数信号処理部402は、自装置が送受信する信号に対して電気信号と無線信号との間の変換処理を行う。具体的には、無線周波数信号処理部402は、ダウンリンクの送信信号を電気信号から無線周波数帯域のアナログ信号に変換して出力する。出力されたアナログ信号はアンテナ(図示せず)を介して無線送出される。また、無線周波数信号処理部402は、アップリンクの受信信号を無線周波数帯域のアナログ信号から電気信号に変換して光I/F部401に出力する。
なお、ここでは簡単のため説明を省略するが、ユーザ端末203も、BBU201と同様に、通信経路として使用するRRH202を選択する機能を備える。具体的には、ユーザ端末203は、MAC層処理部301、ベースバンド信号処理部302、伝送特性算出部304及び経路選択部305と同様の各機能部を備える。
図3は、第1実施形態の無線通信システム100における再送発生時の処理の流れを示すシーケンス図である。図3は、再送発生時における送信局側(例えばBBU201)の処理と、受信局側(例えばユーザ端末203)の処理との具体例を示す。まず、送信局側において送信すべきユーザデータが入力される。MAC層処理部301は、入力されたユーザデータに対してMAC層処理を行うことにより、当該ユーザデータを無線送信するための送信データを生成する(ステップS101)。このMAC層処理により、MAC層処理部301はシーケンス番号が付与されたPDUを構成する(ステップS102)。このシーケンス番号は、当該送信データの再送制御に必要となる情報である。
一方、経路選択部305はBBU201に接続されているRRH202の中から順番に選択することにより、当該送信データの送信の通信経路として用いるRRH202を選択する(ステップS103)。経路選択部305は、通信経路として選択したRRH202をMAC層処理部301に通知する。MAC層処理部301は、経路選択部305によって選択されたRRH202を当該送信データの通信経路に設定し、ベースバンド信号処理部302に送信データを出力する。ベースバンド信号処理部302に出力された送信データは、ベースバンド信号処理部302によってベースバンド信号処理が施された後、光I/F部303を介して光ファイバ伝送路に送出される。光ファイバ伝送路に送出された送信データはRRH202によって受信局側に無線送信される(ステップS104)。
受信局側は、送信局側で選択されたRRH202から無線送信された送信データを受信する(ステップS201)。受信局側は、受信された送信データの誤り検出を行い(ステップS202)、送信データの符号誤りが検出された否かを判定する(ステップS203)。送信データの符号誤りが検出されなかった場合(ステップS203−NO)、受信局側は送信データが正常に受信されたことを示すACK信号を送信局側に送信する(ステップS204)。一方、送信データの符号誤りが検出された場合(ステップS203−YES)、受信局側はACK信号を送信せず、当該送信データの再送を待機する。
一方、送信局は、ステップS104において送信した送信データに対するACK信号が所定時間内に受信されたか否かを判定する(ステップS105)。上記送信データに対するACK信号が所定時間内に受信された場合(ステップS105−YES)、送信局は当該送信データが正常に送信されたと判断して処理を終了する。一方、ACK信号が所定時間内に受信されなかった場合(ステップS105−NO)、経路選択部305は、BBU201に接続されているRRH202のうち優れた伝搬特性を持つRRH202を選択する(ステップS106)。MAC処理部302は、選択されたRRH202を、当該送信データの再送に用いる通信経路(以下「再送経路」という。)として設定する。再送経路が設定された送信データは、前回の送信と同様の流れで受信局側に無線送信される。
なお、以上の説明は、複数のRRH202を介する物理的に複数の通信路のそれぞれを介して構成されるそれぞれの通信路を1つの論理的な通信路とみなした場合の動作例を説明したものである。ただし、厳密には、受信局は論理的にはひとつの通信路でありながら物理的には複数の通信路を利用して通信する。そのため、受信局側でのステップS202〜S204の各処理は複数のRRH202を介して送信された送信データに対して実施されることになる。
図4は、第1実施形態の無線通信システム100における再送処理の動作例を示す図である。図4において横軸は時間軸を表す。図4に示した4つの時間軸のうち上側3つの時間軸は3つのRRH202(図中のRRH#1〜#3)によるデータ送信を表し、一番下の時間軸はユーザ端末203によるデータ送信を表す。すなわち図4は、ユーザ端末203が3台のRRH202との間でダウンリンクの通信を空間多重伝送で行っている状況を示している。
図中の送信データD1〜D9は、それぞれユーザデータを格納したPDUを表し、S1〜S3は各送信データに対して送信されたACK信号を格納したPDUを表す。また、各送信データ及びACK信号に付された矢印は、各送信データ又はACK信号の伝送方向を示し、図中の「×」は各伝送路上で符号誤りが発生したことを表している。また、各送信データ及びACK信号内に記載されたSNは、各PDUの識別のために付与されたシーケンス番号を表す。
ここで図4に示す状況は、ユーザ端末203が、送信データD1(SN=1)及びD3(SN=3)を符号誤りなく正常に受信し、送信データD2(SN=2)に符号誤りが検出された状況である。この場合、ユーザ端末203は、正常に受信した送信データD1(SN=1)及びD3(SN=3)について、各送信データと同じシーケンス番号を付与したACK信号S1(SN=1,3)を送信する。
なお、図4には、SN=1及びSN=3のACK信号を同じPDU(ACK信号S1)で送信する例を示しているが、各シーケンス番号のACK信号は異なるPDUで送信されてもよい。また、複数のACK信号を同じPDUで送信する場合、PDUは全てのRRH202に送信されてもよいし、いずれか1つのRRH202のみに送信されてもよい。また、複数のACK信号を個々のPDUで送信する場合、各PDUは空間多重によって同じタイミングで送信されてもよいし、空間多重を行わずに異なるタイミングで送信されてもよい。
一方、ユーザ端末203は、符号誤りが検出された送信データD2(SN=2)についてはACK信号を送信しない。そのため、BBU201は送信データD2についてのACK信号を所定の時間内に受信せず、送信データD2について再送が必要であると判断する。この場合BBU201は送信データD2を送信したときと同じRRH#2を再送経路とするのではなく、優れた伝送特性を持つRRH202(結果的にRRH#2が選択される可能性もある)を再送経路として選択する。ここで例えば、図4における各RRH202の伝送特性がRRH#1>RRH#2>RRH#3の順に優れていると仮定すると、BBU201は、最も優れた伝送特性を持つRRH#1を送信データD2の再送経路として選択する。BBU201は、送信データD2と同じ内容の送信データD4(SN=2)を再送経路として選択したRRH#1を介して送信するとともに、再送経路として選択しなかったRRH#2及びRRH#3を介して、新たなシーケンス番号の送信データD5(SN=4)及びD6(SN=5)を送信する。
図4は、送信された送信データD4〜D6のうち、新たに送信された送信データD5のみがユーザ端末203に正常に受信された状況を表している。この状況において、BBU201は、送信データD5(SN=4)に対するACK信号S2のみをユーザ端末203から受信する。この場合、送信データD2の再送時と同様に、BBU201は各RRH202の伝送特性に基づいて、ACK信号が受信されなかった送信データD4及びD6の再送経路を選択する。ここで、図4における各RRH202の伝送特性が上記同様の順に優れていると仮定すると、BBU201は送信データD4の再送経路として前回の再送経路と同じRRH#1を選択し、送信データD6の再送経路としてRRH#2を選択する。BBU201は、送信データD4と同じ内容の送信データD7(SN=2)を再送経路として選択したRRH#1を介して送信し、送信データD6と同じ内容の送信データD8(SN=5)を再送経路として選択したRRH#2を介して送信する。また、BBU201は、再送経路として選択しなかったRRH#3を介して、新たなシーケンス番号の送信データD9(SN=6)を送信する。
図4は、送信された送信データD7〜D9の全てがユーザ端末203に正常に受信された状況を表している。この状況において、BBU201は、送信データD7〜D9(SN=2,5,6)に対するACK信号S3をユーザ端末203から受信する。以上、ダウンリンクの通信における送信データの再送の流れを説明したが、アップリンクの通信においてもユーザ端末203はBBU201と同様の方法で通信経路(再送経路を含む)を決定することが可能である。
なお、図4の説明では、再送経路を決定する方法の具体例として、元の通信経路の伝送特性が優れている順に再送経路を選択する方法を示したが、再送経路の選択の順序はこのような順序に限定されるものではない。例えば、再送経路は、元の通信経路の伝送特性が優れていない順に選択されてもよいし、再送経路には元の通信経路と異なる通信経路が選択されてもよい。
このように、第1実施形態の無線通信システム100では、BBU201又はユーザ端末203が、ACK信号が受信されなかった送信データの再送経路を各RRH202の伝送特性に基づいて選択する。このような構成を備える第1実施形態の無線通信システム100によれば、個々のPDUに対する再送回数などの管理を必要とせず、より簡易な構成でPDUの再送を制御することが可能になる。
一般に、空間多重伝送のように複数の経路で並列伝送を行う場合、経路ごとに符号誤り率が異なることが知られている。また、再送制御においては、各PDUに何らかの識別情報(例えば、シーケンス番号)などが付与されるため、各PDUの到着順序が前後したり、各PDUの受信経路が異なったりした場合であっても、付与された識別情報に基づいてPDUを正しい順序で受信することが可能である。そのため、再送すべきPDUが発生した場合においてPDUをどのような経路で再送したとしても、伝送効率(例えば、送信したPDU(再送を含む)の総数に対して正常に受信されたPDUの比率)に変わりはない。しかしながら、再送されたPDUを最も符号誤り率の低い経路で送信することで、より少ない送信回数で再送を完了させることが可能になる。これにより、伝送効率を一定に保ちつつ、再送に起因する遅延特性を改善することが可能になる。
また、複数のRRHを介して1つのユーザ端末にPDUが伝送される場合においても同様に、経由するRRHごとに符号誤り率が異なると考えられる。そのため、複数のRRHのうち最も誤り率の低いRRHを経由する通信経路を再送経路として選択することで、再送に起因する遅延特性を改善することが可能になる。
例えば、4つのRRH#1〜#4を介して通信を行うユーザ端末を想定し、RRH#1を経由する通信経路における誤り率が10%、RRH#2を経由する通信経路における誤り率が1%、RRH#3を経由する通信経路における誤り率が0.1%、RRH#4を経由する通信経路における誤り率が0.01%であったと仮定する。この場合、再送経路をRRH#1を経由する通信経路に固定して再送を行うと、再送を含め合計4回の送信を行ったとしても誤り率は10−4程度にしかならない。これに対して、初回の送信にRRH#1を経由する通信経路を用い、2回目以降の送信(すなわち再送)にRRH#4を経由する通信経路を用いれば誤り率を10−13程度にまで改善することができる。そのため、第1実施形態の無線通信システム100によれば、より少ない再送回数で誤り率を速やかに改善することが可能になる。
以下、第1実施形態の無線通信システム100の変形例について説明する。
上記の実施形態では、伝送特性算出部304が各RRH202の受信信号に基づいて各RRH202の伝送特性を算出する構成について説明したが、各RRH202の伝送特性は他の方法で取得されてもよい。例えば、各RRH202の伝送特性は、無線通信システム100の運用が開始される前の段階で、BBU201に既知パターンの試験信号を送受信させた際の信号強度を測定することによって取得されてもよい。また、例えば、各RRH202の伝送特性は、BBU201が無線通信システム100の運用中に送受信されるACK信号又はNACK(Negative ACK:否定応答)信号の信号強度を測定することによって取得されてもよい。
ユーザ端末203が使用する通信経路(RRH202の組み合わせ)は、ユーザ端末203の移動に伴って変更される場合がある。また、ユーザ端末203は必ずしも常に通信しているわけではないため、各RRH202にはPDUを送受信していない時間帯がある程度存在する。すなわち、ユーザ端末203が移動する無線通信システム100では、ある時点で取得された各RRH202の伝送特性が、移動するユーザ端末203に対して常に正しい伝送特性を示すとは限らない。そのため、このような場合、各RRH202について取得される伝送特性に有効期間を設けるとともに、逐次伝送特性を更新して最新化することが望ましい。例えば、伝送特性算出部304が100ミリ秒程度の時間ごとに各RRH202の伝送特性を算出し、更新することで、経路選択部305はユーザ端末203の移動に応じた最新の伝送特性に基づいて適切な通信経路を選択することができる。
例えば、図1の例において、RRH202−1〜202−3及び202−7〜202−8を介して通信するユーザ端末203−1が、移動後によってRRH202−2〜202−4及び202−8〜202−9を介して通信する状態に変化したと仮定する。また、RRH202−2、202−3及び202−8は、この状態変化の100ミリ秒以上前からユーザ端末203−1との間で通信を継続しており、この間、RRH202−4及び202−9は、ユーザ端末203−1との間で通信を行っていないと仮定する。すなわち、RRH202−4及び202−9については、ユーザ端末203−1の状態変化時において伝送特性が取得されていない。この場合、経路選択部305は、その時点で取得されている伝送特性に基づいて再送経路を決定してもよい。具体的には、この場合、経路選択部305は、RRH202−2、202−3及び202−8の中から再送経路となるRRH202を選択してもよい。
一方で、ユーザ端末203−1に送信データが存在せず、状態変化の100ミリ秒以上前から伝送特性が取得されていない場合には、再送経路として選択することのできるRRH202が存在しない状況となる。この場合、経路選択部305は、伝送特性によらない所定のルールに基づいて再送経路となるRRH202を選択してもよい。例えば、この場合、経路選択部305は、予め定められた所定の選択順序に基づいて再送経路となるRRH202を選択してもよい。例えば、RRH202−1→RRH202−2→RRH202−3→RRH202−4→RRH202−5→RRH202−1→・・・、といった選択順序が予め定められている場合、経路選択部305は、RRH202−1を介して送信したPDUの再送経路としてRRH202−2を選択し、そのRRH202−2を介して送信したPDUの再送経路としてRRH202−3を選択することができる。このような方法で再送経路を選択することにより、誤りの相関を低減し、使用するRRH202に発生する符号誤りを抑制することができる。
図5は、変形例の無線通信システム100における再送発生時の処理の流れを示すシーケンス図である。まず、送信局側のBBU201において、伝送特性算出部304が前回の伝送特性の取得から所定の規定時間が経過したか否かを判定する(ステップS301)。前回の伝送特性の取得から所定の規定時間が経過してない場合(ステップS301−NO)、伝送特性算出部304は、規定時間が経過するまでステップS301の判定を繰り返し実行する。一方、前回の伝送特性の取得から所定の規定時間が経過した場合(ステップS301−YES)、伝送特性算出部304は、各RRH202の伝送特性を再取得する(ステップS302)。伝送特性算出部304は、前回取得した伝送特性情報を再取得した伝送特性情報で更新する(ステップS303)。なお、伝送特性情報の記憶及び更新は、伝送特性算出部304又は経路選択部305のどちらで行われても良い。伝送特性算出部304は、再取得した伝送特性情報を、RRH202を介してユーザ端末203に送信する(ステップS304)。なお、伝送特性情報は、通信経路上のRRH202において記憶されてもよく、この場合RRH202は自装置に記憶されている伝送特性情報をBBU201から受信した伝送特性情報で更新してもよい。
受信局側のユーザ端末203は、BBU201から伝送特性情報を受信し、自装置に記憶されている伝送特性情報を受信した伝送特性情報で更新する(ステップS401)。このとき、ユーザ端末203は少なくとも自装置が通信経路として使用しているRRH202について伝送特性情報を更新する。ユーザ端末203は、自装置が通信経路として使用していないRRH202については必ずしも伝送特性情報を記憶又は更新する必要はないが、その後の更なる移動を考慮して、自装置が通信経路として使用していないRRH202についても伝送特性情報を記憶又は更新してもよい。
ここで、ユーザ端末203において、再送すべきPDUが発生したと仮定する(ステップS402)。この場合、ユーザ端末203の経路選択部305は、自装置が通信経路として使用しているRRH202について伝送特性情報が取得されているか否かを判定する(ステップS403)。自装置が通信経路として使用しているRRH202について伝送特性情報が取得されていない場合(ステップS403−NO)、経路選択部305は、伝送特性によらない選択方法(例えば予め定められた所定の選択順序で選択する方法など)で再送経路を選択する(ステップS404)。一方、自装置が通信経路として使用しているRRH202について伝送特性情報が取得されている場合(ステップS403−YES)、経路選択部305は、BBU201に接続されているRRH202のうち優れた伝搬特性を持つRRH202を再送経路として選択する(ステップS405)。そして、ユーザ端末203は、ステップS404又はS405において再送経路として選択されたRRH202を介して当該PDUを再送する(ステップS406)。
なお、図5では、アップリンクの通信を例に再送発生時の処理の流れを説明したが、ダウンリンクの通信についても基本的には同様の処理の流れで再送経路を制御することができる。また、ダウンリンクの通信における再送発生時には、図5のように、アップリンクの通信に関して測定された伝送特性情報が簡易的に用いられても良いし、ダウンリンクの通信に関する伝送特性を測定する機能部がユーザ端末203側に備えられても良い。
以上説明した第1実施形態又はその変形例の無線通信システム100によれば、再送発生時に伝送特性が優れるRRHを再送経路として選択することで、符号誤り率を改善しつつ、遅延時間の増大を最小限に抑制することが可能になる。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の無線通信システムの具体例を示す概略図である。無線通信システム200(無線通信装置の一例)は、基地局装置601と、サブアレー602−1〜602−3(アンテナ装置の一例)とを備える。この場合、ユーザ端末603は、いずれかのサブアレー602を介して基地局装置601に接続する。基地局装置601に接続したユーザ端末603は、例えばインターネット等の上位ネットワークUNに接続することができる。サブアレー602−1〜602−3は、基地局装置601が有する複数のアンテナ素子を一定本数ごとにグループ化して構成されたものであり、各サブアレー602は所定距離だけ隔離された状態で基地局装置601に接続される。なお、各サブアレー602と基地局装置601との間は、同軸ケーブル等のメタルケーブルで接続されてもよいし、光ファイバ等の非メタルケーブルで接続されてもよい。
このように第2実施形態の無線通信システム200は、外形的には、第1実施形態の無線通信システム100のBBU201を基地局装置601に、RRH202をサブアレー602にそれぞれ置き換えた構成とみなすことができ、この場合も第1実施形態と同様に、ユーザ端末603は、複数のサブアレー602を介した空間多重伝送によって同時並行的に通信することが可能である。なお、サブアレー602は、それぞれが指向性を持つ1素子のアンテナで構成されてもよい。
図7は、第2実施形態における無線通信システム200の機能構成の具体例を示す図である。図7に示す無線通信システム200は1台の基地局装置601とN(Nは1以上の整数)台のサブアレー602とを備える。基地局装置601は、光I/F部303を備えない点、伝送特性算出部304に代えて伝送特性算出部304aを備える点、経路選択部305に代えて経路選択部305aを備える点で第1実施形態におけるBBU201と異なる。また、各サブアレー602は、光I/F部401を備えない点で第1実施形態におけるRRH202と異なる。他の機能部は第1実施形態と同様である。そのため、これらの同様の機能部については図2と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
伝送特性算出部304aは、ベースバンド信号処理部302から出力されるアップリンクの受信信号に基づいて、各サブアレー602を通信経路として選択した場合の伝送特性(例えばSINR)を算出する。伝送特性算出部304aは、算出によって得られた伝送特性情報を経路選択部305aに出力する。
経路選択部305aは、伝送特性算出部304aが算出した通信経路ごとの伝送特性に基づいて、再送発生時に通信経路として使用するサブアレー602を選択する。
なお、第2実施形態におけるユーザ端末603は、第1実施形態におけるユーザ端末203と同様に、基地局装置601と同様の機能構成を備える。
図8は、第2実施形態の無線通信システム200における再送発生時の処理の流れを示すシーケンス図である。図8のシーケンス図は、伝送特性算出部304aによる伝送特性の取得対象が各サブアレー602である点(ステップS501)、及び経路選択部305aによる通信経路(再送経路を含む)の選択対象がサブアレー602である点(ステップS601及びステップS602)が異なるものの、基本的には図3のシーケンス図と同様である。他の処理は第1実施形態と同様である。そのため、これらの同様の処理については図3と同じ符号を付すことによりその説明を省略する。
このように構成された第2実施形態の無線通信システム200によれば、基地局装置601と複数のアンテナ装置(例えばサブアレー602)とで構成される無線通信システムにおける再送発生時に、伝送特性が優れるサブアレーを再送経路として選択してPDUを再送することができる。
例えば、指向性をもつ複数のアンテナ(サブアレーに対応)を比較的高所に配置し、各アンテナが同じサービスエリアをカバーするように各アンテナの指向性を調整することで、ホールやスタジアムの観客席等に広範囲の無線通信環境を提供することが考えられる。このような用途の無線通信システムでは、各アンテナとユーザ端末との間の見通し環境を確保するために、各アンテナはある程度離間して設置されるのが望ましいが、アンテナの位置関係によっては必ずしも良好な見通し環境を確保できない場合もある。本発明は、このような用途の無線通信システムにも適用可能であり、本発明の適用によって、見通し環境の不良で発生する再送に起因する伝送遅延を低減することが可能となる。
また、本発明によれば、再送発生時に伝送特性が優れる通信経路を選択してPDUを再送することができる結果、符号誤り率を改善しつつ、遅延時間の増大を最小限に抑制することが可能になる。そのため、本発明は、遅延時間に対して厳しい条件が要求される5G(5th Generation)の移動体通信システムの実現に大きく貢献することができる。
<変形例>
上述した実施形態における各送信局(BBU201、基地局装置601、ユーザ端末203又は603)をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。