JP2018166656A - 超音波撮像装置及びその制御方法 - Google Patents

超音波撮像装置及びその制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】心血管の壁面の移動速度が得られるかに依らず、質量保存則に基づく演算によって血流の速度ベクトルを得る超音波撮像装置を提供する。【解決手段】本発明の超音波撮像装置は、検査対象が反射するエコー信号から、所定の計測点群における血流の送受信方向速度を抽出する。また質量保存則に基づく演算の演算起点を決定し、前記演算起点に対する超音波パケット送信で得られるパラレル受信エコー信号から組織速度の直交方向速度を算出する。各計測点の血流の送受信方向速度を用い、前記演算起点における直交方向速度を初期値として質量保存則に基づく演算を行い、計測点群における血流の直交方向速度を算出する。計測点群における送受信方向速度と直交方向速度から血流の速度ベクトル分布を算出する。【選択図】図5

Description

本発明は、医療用の超音波撮像装置に関し、特に心血管内の血流速度を求める技術に関する。
拡張型心筋症や大動脈拡張などの異常が生じた心血管では健常時と異なる血流が生じることが知られている。そのため、血流異常の評価は、心血管疾患の重症度の判定や治療判断に繋がる。このような血流異常を検出する医療用機器として、非侵襲的な血流計測が可能な超音波撮像装置が広く用いられている。
超音波撮像装置で血流計測に広く用いられているドプラ法は、血流の速度ベクトルの成分のうち、超音波の送受信方向の成分(以下、送受信方向速度という)のみを計測する方法であり、超音波の送受信方向と直交する方向の成分(以下、直交方向速度という)は、計測できない。これに対し、血流を、速さと方向の情報を共に含むベクトル(以下、速度ベクトルという)として計測する技術(VFM:Vector Flow Mapping)が提案されている(非特許文献1、特許文献1)。
この技術は、血流の速度ベクトルの成分のうち、送受信方向速度をドプラ法によって計測し、直交方向速度を質量保存則に基づく演算によって推定する。また、特許文献1に記載の技術では、VFMの演算において、送受信方向と直交する経路の両端の点を起点として、それぞれ演算で求めた直交方向速度に対して、壁面からの距離に応じた重みづけ合成を行うことで、最終的な直交方向速度を得ている。
Two−Dimensional Intraventricular Flow Mapping by Digital Processing Conventional Color−Doppler Echocardiography Images (damien Garcia et al., IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol.29, No.10, 1701−1712, 2010)
特開2013−192643号公報
非特許文献1及び特許文献1に記載の技術では、演算の初期値として、演算の起点となる心血管の壁面の移動速度が求まることが必須となる。しかし、計測対象とする心血管の形状や計測状態の良好度等によっては、演算の起点となる壁面の座標や、演算の初期値となる壁面の移動速度を求めることが困難であり、演算によって血流の直交方向速度が得られない場合がある。例えば、心血管30の形状に対して撮像範囲200を図1のように定めた場合、経路C1では、演算の起点P1およびP’1となる壁面の座標が得られない。また、経路C2では、演算の起点P’2となる壁面33の画像が不鮮明で壁面の移動速度が求められない。
本発明は、心血管の壁面の移動速度が得られるかに依らず、質量保存則に基づく演算によって血流の速度ベクトルを得ることが可能な超音波撮像装置およびその演算方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、質量保存則に基づく演算の起点を任意の位置に設定し、その演算起点について得たパラレル受信信号のパケット間移動量を求め、直交方向速度を算出する。
すなわち、本発明の超音波撮像装置は、検査対象に超音波ビームを送信する送信部と、前記検査対象が反射するエコー信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記エコー信号を処理する信号処理部と、を備え、前記受信部は、1回の超音波ビームの送信に対し複数の受信ビームを生成するパラレル受信部を有する。前記信号処理部は、前記エコー信号から前記検査対象の所定領域に含まれる複数の計測点における血流の送受信方向速度を抽出するドプラ速度抽出部と、前記送受信方向速度を用いて、質量保存則に基づく演算により、前記送受信方向と直交する方向の速度を算出する速度ベクトル分布演算部と、前記質量保存則に基づく演算において初期値として用いる直交方向速度の演算起点を設定する演算起点設定部と、前記演算起点における組織の直交方向速度を算出する直交方向速度算出部と、を備える。前記直交方向速度算出部は、前記演算起点に対するパケット送信時に前記パラレル受信部により得られた前記複数の受信ビームを用いて、前記演算起点における組織のパケット間移動量を算出し、前記パケット間移動量から前記直交方向速度を算出する。
また本発明の超音波撮像装置の動作制御方法は、超音波ビームを送信する送信部と、検査対象から反射するエコー信号を受信する受信部と、受信したエコー信号を用いて、質量保存則に基づく演算を行って検査対象の所定領域における血流の速度ベクトルを算出する信号処理部とを備えた超音波撮像装置の動作を制御する方法であり、前記所定領域において、前記質量保存則に基づく演算の演算起点を設定し、前記送信部が前記演算起点に対しパケット送信し、前記パケット送信における1回の超音波ビームの送信に対し前記受信部が複数の受信ビームを生成する制御を行い、前記信号処理部が、前記所定領域からのエコー信号を用いて、前記所定領域に含まれる複数の計測点における血流の、超音波の送受信方向の速度を算出し、前記パケット送信により得た複数の受信ビームを用いて、前記演算起点における組織の直交方向の速度を算出し、前記演算起点における組織の直交方向の速度を初期値として、前記送受信方向の速度を用いて、質量保存則に基づく演算を行う制御を行う。
本発明によれば、心血管の壁面の移動速度が得られない場合においても、質量保存則に基づく演算によって血流の速度ベクトルを得ることができる。また、本発明は、演算の初期値とする組織速度の直交方向速度を、超音波の送信回数を増やすことなく取得しており、計測のフレームレートや計測点数を減少させることがない。
質量保存則に基づき血流の直交方向速度を算出する演算の概念を示す図。 実施形態1の装置の概要を示すブロック図。 パラレル受信の概念を示す図。 微小領域に流入および流出する血流の質量保存則を示す図。 実施形態1の動作の流れを示す図。 実施形態2の超音波撮像装置の一構成例を示すブロック図。 パケット送信の送信シーケンスの例を示す図。 実施形態2における信号処理部の動作を示すフロー図。 演算起点の設定方法を説明する図で、(A)は表示画面上で検者が指定する例、(B)は輝度値から自動的に起点を判断する例を示す。 2次元信号トラッキングを説明する図。 速度ベクトル分布の表示例を示す図。 流線分布の表示例を示す図。 実施形態3における演算起点の設定例を示す図。 パラレル受信エコー信号の範囲内における3次元信号トラッキングの例を示す図。 実施形態4の超音波撮像装置の信号処理部の一構成例を示すブロック図。 実施形態4における信号処理部の動作を示すフロー図。 壁近傍の空間分解能を高くする撮像範囲を示す図。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお本明細書で参照する全図において、同じ機能を有する要素は同じ符号で示し、重複する記載は省略する。
<実施形態1>
本実施形態の超音波撮像装置100は、図2に示すように、検査対象に超音波ビームを送信する送信部11と、検査対象が反射するエコー信号を受信する受信部12と、受信部12により受信されたエコー信号を処理する信号処理部15と、を備えている。受信部12は、1回の超音波ビームの送信に対し複数の受信ビームを生成するパラレル受信処理部121を有している。また、信号処理部15は、エコー信号から検査対象の所定領域に含まれる複数の計測点における血流の送受信方向速度を抽出するドプラ速度抽出部151と、送受信方向速度を用いて、質量保存則に基づく演算により、送受信方向と直交する方向の速度を算出する速度ベクトル分布演算部153と、質量保存則に基づく演算において初期値として用いる直交方向速度の演算起点を設定する演算起点設定部(不図示)と、演算起点における組織の直交方向速度を算出する直交方向速度算出部155と、を備えている。直交方向速度算出部155は、演算起点に対するパケット送信時に前記パラレル受信部により得られた複数の受信ビームを用いて、演算起点における組織のパケット間移動量を算出し、パケット間移動量から直交方向速度を算出する。
送信部11には、検査対象に接して超音波信号を送受信する超音波探触子が接続される。送信部1は、所定の周波数の信号を発生する発振器111を備え、超音波探触子に駆動信号を送る。このとき、送信部11は、所定の位置に対して短時間に超音波を複数回送信するパケット送信を行う。
受信部12は、受信回路を含み、超音波探触子によって受信されたエコー信号に対し整相加算、検波、増幅などの信号処理を行う。パラレル受信処理部121は、図3に示すように、一つの送信ビームに対する複数の計測点からのエコー信号に対し、複数本の受信ビームを生成する整相処理を行い、受信信号を複数本のラインに分割する機能部である。RF信号である受信ビームについて深さ方向に窓を設定することで、1回のパケット送信により、受信ビームの分割数と深さ方向の分割数との積に相当するピクセル数のデータを取得することができる。
送信部11及び受信部12は、図示しない送受信回路に接続され、送受信回路の設定により、撮像法やスキャン方式を設定することができる。撮像法としては、2次元的な断面を撮像する平面的撮像方法と、3次元的な領域を撮像する立体的撮像方法があり、またスキャン方式についても連続波を用いる方式やパルス波を用いる種々の方式があり、本実施形態はいずれも採用できる。
信号処理部15は、受信部12が生成した受信ビームを用いて、Bモード画像等の超音波画像を作成し、撮像対象の組織(血液を含む)の動き、特に血流の速度ベクトルを算出する演算を行う。特に後者の機能のために、信号処理部15は、ドプラ速度抽出部151、速度ベクトル分布演算部153、及び直交方向速度算出部155を備えている。なお信号処理部15には、これら演算を行う機能部の他に、上述した送受信回路を含む装置の動作を制御する制御部や信号処理や画像処理のための処理回路を備えることができる。これら処理回路等は、特記しないかぎり公知の超音波撮像装置に備えられるものと同様であり、説明を省略する。
ドプラ速度抽出部151の機能は、従来のドプラ速度を算出する信号処理部の機能と同様であり、超音波の送受信方向に対し、移動する組織の超音波周波数の位相変化を用いて、送受信方向の速度(ドプラ速度)を算出する。なおドプラ速度抽出部151において算出されるドプラ速度は、送受信方向に沿った血流の速度であり、本明細書においては送受信方向速度ともいう。また送受信方向と直交する方向の速度を直交方向速度という。
速度ベクトル分布演算部153は、血流の速度ベクトルを算出する機能部であり、図1に示すように、速度ベクトルが定まった点Pを起点として、超音波の送受信方向に直交する経路Cに沿って質量保存則に基づく積分演算を行い、当該経路における計測点の血流速度ベクトルを算出する。質量保存則は、図4に示すように、微小領域35に流入する血流量と微小領域35から流出する血流量は同じであって微小領域35の質量が一定に保たれるというものであり、流入/流出する血流量は、流入する血流の送受信方向及び直交方向の速度成分を積分することで算出することができる。図4に示す4つの速度成分Vr、Vθ、のうち、送受信方向の速度Vr(i-1,j)、Vr(i,j)は、ドプラ速度抽出部31により求めることができるので、2つの直交方向の速度成分Vθ(i,j-1)、Vθ(i,j)のうち一つがわかれば、直交方向に沿って順次、直交方向速度を算出することができる。
このため、直交方向速度算出部155は、速度ベクトル分布演算部153における演算の初期値となる起点の直交方向速度を算出する。演算起点設定部は、任意の位置に演算起点を設定する。演算起点は、撮像範囲端(図1のP1、P’1)、ユーザーが指定する座標、または演算によって自動的に指定される座標のいずれでもよい。演算によって自動的に指定される座標とは、例えばBモード画像から血流と他の組織の境界を自動的に判断して領域分けされた血流の存在範囲の境界(図1のP2)などが挙げられる。演算起点設定部は、撮像範囲のうち観察対象である領域について、所定の深さ毎の直交経路について、演算起点を設定する。
直交方向速度算出部155は、送信部11が設定された演算起点を含む領域を対象としてパケット送信を行い、受信部12がパラレル受信して得た複数の受信ビームを用いて、演算起点における血流の直交方向速度を演算する。直交方向速度の演算は、まず信号トラッキングを用いて、スペックルトラッキングを行い、パケット間移動量を算出し、移動ベクトルを求める。移動ベクトルから直交方向速度(ベクトル)を算出する。ここで、信号トラッキングとは、例えばスペックルトラッキングのように、同一の散乱体または散乱体群に由来するエコー信号の信号強度分布の移動を、時相の異なる信号の比較によって検出する技術である。
以上説明した信号処理部15の機能の一部又は全部は、ソフトウェアおよびハードウェアのいずれか或いは両方により実現することが可能であり、例えば、信号処理部15に備えられるCPU(Central Processing Unit)が、機能部毎の演算アルゴリズムを含むプログラムを読み込んで実行することで実現してもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)FPGA(Field−Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアで実現してもよい。
次に上記構成における超音波撮像装置の動作の概要を、図5に示す。図示するように、まずドプラ速度計測を行い、所望の撮像範囲からエコー信号を得て、ドプラ速度推定部151がドプラ速度を算出する(S1)。一方、演算起点設定部にて、撮像範囲の所定の深さにおいて、速度ベクトル演算の起点を設定する(S2)。次いで設定した演算起点に対し、パケット送信及びパラレル受信を行い、直交方向速度算出部155が、パケット間の信号トラッキングにより演算起点を含む小領域の組織(血液を含む)の直交方向速度を算出する(S3)。速度ベクトル演算部153は、直交方向速度算出部155が算出した直交方向速度を初期値として、演算起点を設定した深さにおける直交方向の経路に沿って、質量保存則に基づく積分演算を行い、経路に沿った各計測点の直交方向速度を算出する。さらに各計測点の算出した直交方向速度とドプラ速度計測で求めた送受信方向速度とを用い、複数方向の成分からなる速度ベクトルを算出する(S4)。上述したS2〜S4の処理を、撮像範囲の深さ毎に実施し、最終的に撮像範囲全体の速度ベクトルを得る。算出した速度ベクトルは、任意の方法で出力することができる(S5)。
以上、説明したように、本実施形態によれば、演算起点設定部が設定した任意の演算起点について、パケット間の信号トラッキングによって求めた移動ベクトルを用いて、速度ベクトル演算の初期値となる直交方向速度を算出するので、血管の壁面の移動速度が得られない場合においても、質量保存則に基づく演算によって血流の速度ベクトルが得られる効果を得ることができる。また、速度ベクトル演算の初期値とする直交方向速度の取得に関して、例えば、送受信方向の異なる超音波ビームの送受信を追加することで2方向の速度成分を得る方法などとは異なり、超音波の送信回数を増やす必要がないので、計測のフレームレートや計測点数を維持したまま前記の効果を得ることができる。
以下、心血管撮像を例に、本発明を具体的な撮像手法に適用した実施形態を説明する。
<実施形態2>
本実施形態は、2次元血流ベクトル分布計測機能を有する超音波撮像装置に適用した実施形態である。図6は、本実施形態の装置の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、この超音波撮像装置100Aは、大きく分けて、装置本体10と超音波探触子2から成る。本体10は超音波探触子2を制御しながら超音波画像を生成するものであり、超音波信号を送信する送信部11、エコー信号を受信する受信部12、制御部14、信号処理部15、入力部16、表示部17、およびメモリ18を備えている。
超音波探触子2は、被検者の生体3に接し、送信部11で生成された信号に従い、生体3内の心血管30に対し超音波を照射し、受信部12は心血管30のエコー信号を受信する。超音波探触子2は、スキャン方式に応じて連続波あるいはパルス波を発生し、平面的撮像法により2次元的な断面を撮像する。
入力部16は、超音波撮像装置を操作する医師や技師(以下、まとめて検者という)が制御部14に対し超音波撮像装置の動作条件を設定するキーボードやポインティングデバイスを備える。また検査に心電図等の外部機器からの情報を利用する場合、外部機器からの情報を取り込む機能も備える。
制御部14は、入力部16によって設定された超音波撮像装置の動作条件に基づき送信部11、受信部12、表示部17および信号処理部15を制御するもので、例えばコンピュータシステムのCPUに構築することができる。
送信部11は、所定の周波数の信号を発生する発振器を備え、超音波探触子2に駆動信号を送る。このとき、送信部11は、所定の位置に対して短時間に超音波を複数回送信するパケット送信を行う。同一の位置に対して超音波を送信する回数は、4回、6回、8回など何回でもよいが、ここでは6回として以降の説明をする。パケット送信の送信シーケンスの例を図7に示す。図示する例では、Bモード画像を得るための超音波ビームの送信を行った後、複数の計測点(図では計測点1〜計測点10)に対し、それぞれ、パケット送信を行い、1フレームのデータを取得する様子を示している。図中、一つの計測点用送信に含まれる矩形の一つ一つがパケットを示す。
受信部12は、図示していないが、受信回路やサンプリング周波数が通常10MHzから50MHzのA/D(Analog−to−Digital)コンバーターを含み、そのほかに、超音波探触子2によって受信されたエコー信号に対し整相加算、検波、増幅などの信号処理を行う。ただし、A/Dコンバーターは受信部12の代わりに信号処理部15の前段に備えてもよく、その場合は整相加算、検波、増幅、パラレル受信などの信号処理を信号処理部15が行う。また、受信部12は、パラレル受信処理部121を有し、パラレル受信技術を用いることによって、1回の超音波送信で複数の受信ビームのエコー信号(以下、パラレル受信エコー信号という)を取得する。1回の超音波送信でエコー信号を取得する受信ビーム数は、例えば、4本、6本、8本など何本でもよいが、ここでは4本として以降の説明をする。また、受信部12は、図示していないが、超音波探触子2の受信素子毎、あるいは素子を束ねた開口部ごとのエコー信号を一時的に保存する受信データメモリを有してもよい。
次に、信号処理部15の詳細な構成要素を説明する。ここでは、CPUが実行するソフトウェアにより実現する場合を例に説明する。信号処理部15は、主要な要素として、Bモード画像形成部152、ドプラ速度抽出部151、演算起点設定部154、パケット間移動演算部159、速度ベクトル分布演算部153、表示画像形成部157を有する。ただし、従来の壁速度演算により得られた心血管壁の移動速度を、質量保存則に基づく演算の初期速度の一部に用いる場合は、壁速度演算部156を備える必要がある。信号処理部15は、これらの要素をプログラムとして有し、CPUがプログラムを読み込んで実行することにより、後述する機能を実現する。
Bモード画像形成部152は、受信部12から出力されるエコー信号から、検査対象の照射領域の2次元的な組織のBモード画像を形成する。ドプラ速度抽出部151は、受信部12から出力されるエコー信号から所定の計測点群における血流の送受信方向速度を抽出する。その際、送受信方向速度は、平面的撮像法を用いることで2次元的な空間分布として得る。
演算起点設定部154は、所定の深さの直交経路に関して、質量保存則に基づく演算の演算起点を決定する。演算起点の決定手法は、実施形態1と同様であり、撮像範囲端、入力部16で指定される座標、または演算によって自動的に指定される座標によって決定する。
パケット間移動演算部159は、実施形態1の直交方向速度算出部155と同様の機能を有するもので、受信部12から出力されるエコー信号から、演算起点設定部154で設定された演算起点における組織速度の直交方向速度を算出する。その際、組織速度の直交方向速度は、パラレル受信エコー信号の範囲内において、時相の異なるパラレル受信エコー信号間で信号トラッキングを行うことにより、組織速度の直交方向速度を初期速度として算出する。一般的に、信号トラッキングは、所定の計測点群を全て走査したフレーム間で行われるが、ここでは、同じ計測点に対して超音波を送信したパケット間でトラッキングを行うことにより、時相間の信号の移動量を受信ビームの範囲内に収める。そのため、送信シーケンスにおいて、例えば同じ計測点に対してパケットが短い間隔となるように超音波を送信する。図7では、例として同じ計測点に対してパケットが連続するように超音波を送信する場合を示している。同じ計測点に超音波を送信する時間間隔は、パケット間における信号分布の移動量がパラレル受信エコー信号の範囲の大きさを超えないように上限を規定する。このとき、算出する初期速度は、血流の直交方向速度であっても、心血管壁の直交方向速度であってもよい。
壁速度演算部156は、演算起点設定部154で設定された演算起点が心血管壁上である場合に、従来のVFMと同様に、Bモード画像の画像トラッキングなどによって壁速度を求める。ただし、全ての演算起点における初期速度をパケット間移動演算部159で求める場合は、壁速度演算部156は不要である。
速度ベクトル分布演算部153は、所定の深さの直交経路に関して、パケット間移動演算部159が算出した初期速度、場合によって壁速度演算部156が算出した初期速度、を初期値として、質量保存則に基づく演算を行うことにより、所定の計測点群における血流の直交方向速度を算出する。さらに、ドプラ速度抽出部151が各計測点について求めた送受信方向速度と、算出した直交方向速度とを組み合わせることにより、2次元速度ベクトルの2次元的な空間分布を速度ベクトル分布として得る。
表示画像形成部157は、Bモード画像形成部152が形成した画像や速度ベクトル分布演算部153が算出した速度ベクトルなどを、その他の付帯情報とともに表示部17に表示させるための画像を形成する。
本実施形態においても、信号処理部15の構成要素の一部又は全部の機能は、制御部14を構成するものと同一のCPU、あるいは異なるCPUで実行するソフトウェアで実現する他、ASICやFPGA、GPU等のハードウェアで実現してもよい。また図6の構成例では、信号処理部15は、制御部14内に備えられているが、信号処理部15は制御部14とは独立していてもよい。
メモリ18は、エコー信号、信号処理部15での演算に必要な情報(検者が入力部16により指示した情報等)や信号処理部15の処理結果(Bモード画像、ドプラ速度、演算起点の座標、初期速度、壁速度、速度ベクトル分布、表示画像等)を記憶する。
以上説明した装置の構成を踏まえ、信号処理部15の動作の実施形態の一例を、図8に示す計算処理フローを参照して説明する。
[ステップS11]
ドプラ速度抽出部151は、受信部12が出力したエコー信号を受け取った後、カラードプラ法を用いてエコー信号から血流の送受信方向速度を抽出する。その際、パルス波ドプラ法などの血流速度測定方式を用いてもよい。また、抽出したドプラ速度の空間分布や時間変化に対して、例えばローパスフィルタや、バンドパスフィルタ、平滑化フィルタなどの様々なフィルタを適用し所望の分布を得てもよい。
[ステップS12]
演算起点設定部154は、ステップS11のドプラ計測において撮像した範囲について、所定の深さの直交経路毎に、少なくとも1点の演算起点を決定する。例えば、ここでは図1に示す経路C1について、撮像範囲200の端の送信ビーム上の点P1を演算起点とする。なお図1において、扇型で示された範囲が送信ビーム22をスキャンする撮像範囲200であり、θはスキャンの角度、rは深さ方向を示している。
なお検者による演算起点の指定を受け付ける場合には、図9(A)のようなBモード画像を表示部17に表示し、検者がポインティングデバイス(入力部16)等を用いて、表示画像(GUI)上でカーソル50等より指定した位置を、起点として受け付けてもよい。またはBモード画像から血流と他の組織の境界を自動的に判断する場合には、例えば、図9(B)に示すように、Bモード画像の任意の座標を開始点として深さ方向と直交する方向に輝度値の変化を追跡し、複数ピクセルの輝度値の平均値が所定の閾値の範囲に入った場合(a)や、それに続く複数ピクセルの輝度値の平均値との差が所定の閾値を超えた場合(b)に血流と他の組織の境界であると判断する等、輝度値の変化から判断することができる。
[ステップS13]
パケット間移動演算部159は、図7に示す送信パルスのうち、演算起点を含む例えば計測点1用のパケット送信により受信部12(パラレル受信処理部121)が生成した複数のエコー信号を受け取った後、演算起点における組織速度の直交方向速度を算出する。直交方向速度の算出は、パラレル受信エコー信号の範囲内において、時相の異なるパラレル受信エコー信号間で信号トラッキングを行うことにより行う。一例として、同じ計測点に超音波を送信する時間間隔において、パケット間における信号分布の移動が、離散化したエコー信号の構成単位(以下、ピクセルという)に収まる場合を説明する。図10は、パラレル受信による分割数が4であって(受信ビーム24が4本)、深さ方向に離散化した単位数が4であり、合計4×4のピクセルが観察対象(トラッキング範囲)26である場合を示している。図示するように、一つのスペックル35に対応する信号分布が、超音波を送信する時間間隔即ちパケット間で、点線に示す位置から実線で示す位置に移動したとする。つまり信号分布の移動はサブピクセル単位であり、この場合、次の式(1)または式(2)に示すKanade−Lucas−Tomasi(以下、KLTという)の計算式を用いて、信号分布のサブピクセル移動を算出することができる。
Figure 2018166656
Figure 2018166656
これら式中、F(x)は移動前の信号分布、G(x)は異動後の信号分布を示し、また右肩のコンマは空間微分を表す。信号分布は、それぞれ2次元的な広がりを有するピクセル群(以下、トラッキング範囲という)で与える。図10に示す例では、直交経路に沿う方向に4ピクセル、深さ方向に4ピクセルの範囲がトラッキング範囲26であるが、トラッキング範囲はこれらに限定されず任意であり、パラレル受信の分割数や深さ方向の分割数で適宜設定することができる。ただし、トラッキング精度を保つためには、いずれかの方向のピクセル数が3以下にならないことが好ましい。また、ピクセル間で補間処理などの計算処理を行うことにより、直交経路に沿う方向のピクセル数を、見かけ上、パラレル受信ビームの本数より多くしてもよい。
また、ここでは、信号トラッキングをKLTの計算式を用いて行う例を示したが、トラッキングのアルゴリズムはこれに限らず、相互相関演算など、その他のアルゴリズムを用いてもよい。相互相関演算によるトラッキングの代表的な方法としては、式(3)に示す計算式を用いて、移動前の信号分布F(x)と移動後の信号分布G(x)の相互相関関数(F*G)(x)xを算出し、相互相関関数の値が最大となる座標xをパケット間における信号分布の移動量として算出する。
Figure 2018166656
直交方向について相互相関関数によるトラッキングを行う場合は、パラレル受信の受信ビーム数を8本など多数とする、ピクセル間で補間処理を行う、などの方法により、トラッキングする信号分布のピクセル数を多く確保することが有効である。
なお、図1に示す撮像範囲200のように、撮像範囲内に血流と他の組織の境界が存在し、ステップS12において、この境界(例えば点P2)を演算起点として設定した場合は、この経路については、壁速度演算部156が、従来通りBモード画像の画像トラッキングなどの手法により壁速度を算出し、これを初期速度としてもよい。
[ステップS14]
速度ベクトル分布演算部153は、所定の深さの直交経路に関して、ステップS12で設定した演算起点を起点とし、ステップS13で算出した演算起点における初期速度を初期値として、質量保存則に基づく血流の直交方向速度演算を行うことにより、所定の計測点群で血流の直交方向速度を算出する。質量保存則に基づく血流の直交方向速度演算においては、図4に示したように、深さ方向にdr、角度方向にdθの微小領域に流入する血流の総和と、前記微小領域から流出する血流の総和が等しいとする質量保存則から、次の式(4)が導かれる。
Figure 2018166656
式(4)は、血流速度の発散(dibV→)を0とおいた式であり、連続の式と称されるが、偏微分と積分を用いることにより、次の式(5)で表すこともできる。
Figure 2018166656
すなわち、点Qにおける直交方向速度Vθ(Q)は、送受信方向速度Vrのr方向の速度勾配(∂Vr/∂r)を、演算の起点Pからθ方向に積分することで求められる。実際の演算は、直交経路上の所定の計測点群における速度勾配(∂Vθ/∂θ)を加算合計することで行われる。
なお直交経路上に、演算起点設定部154が複数の演算起点を設定した場合には、それぞれの演算起点から求めた値を重みづけ合成して、血流の直交方向速度Vθを求めてもよい。例えば、演算起点が直交経路上の両端に、2点(例えば図1のP1とP’1、或いはP2とP’2)ある場合、重みづけ合成は、特許文献1と同様に、次の式(6)に従って行ってもよい。
Figure 2018166656
式中、ω(θ)は重みづけ関数である。ω(θ)は、例えば、演算起点Pで1の値を有し、演算起点から遠ざかるに従って減少するθに関する関数とする。なお、一般に式(5)は演算起点から離れるほど計算誤差が累積し、算出した値の正確性が失われるため、互いに離れた2点以上の演算起点から計算した直交方向速度Vθを重みづけ合成することは、精度のよい演算結果を得ることができる。
撮像範囲内で複数の経路について、それぞれ、ステップS12〜S14を繰り返す。
[ステップS15]
速度ベクトル分布演算部153は、さらに、ステップS14において求めた血流の直交方向速度Vθと、ドプラ速度抽出部151が求めた血流の送受信方向速度Vrと、を組み合わせることにより、2方向成分を有する速度ベクトルを得る。速度ベクトルを各計測点において求めることにより、2次元速度ベクトルの2次元的な空間分布が得られる。
なおステップS15の工程は、表示画像形成部157が受け持ってもよい。その場合、表示画像形成部157は、速度ベクトル分布演算部153が算出した直交方向速度と、ドプラ速度抽出部151が算出した送受信方向速度とを受け取り、2方向成分を有する2次元速度ベクトルを算出する。
[ステップS16]
表示画像形成部157は、Bモード画像形成部152から心血管30のBモード画像、ドプラ速度抽出部151からドプラ速度、演算起点設定部154から所定の深さにおける演算起点、速度ベクトル分布演算部153から2次元速度ベクトルの2次元的な空間分布、の各情報を受け取った後、それらの情報の全部または一部を、予め決められた形式や入力部16から入力される指示に従い、表示画像として形成する。表示画像は任意の形態を取ることができる。例えば、本実施例の装置構成においては、表示部17はBモード画像形成部152が算出したBモード画像に、速度ベクトル分布演算部153が算出した2次元速度ベクトルの2次元的な空間分布を重ねて表示してもよい。その際、速度ベクトルの空間分布は、例えば、図11に示すように、速度ベクトルの絶対値に応じて長さや色を変えた矢印を表示してもよいし、図12に示すように、速度ベクトル分布から算出される流線分布などの形態によって表示してもよい。
さらに、速度ベクトル分布や流線分布は、診断に必要な情報に応じて、平均流速が最大となる瞬間や渦が形成される瞬間など特定の時相のみで求めて表示してもよいし、これらの時間変化を表示してもよい。また、心拍のタイミングと同期した撮像を行い、複数心拍の画像から1心拍分の時間変化画像を作成してもよいし、複数の心拍の画像を平均化してもよい。このような平均化は、計測値のばらつきを抑えて分布内、フレーム間の計測値の変化を滑らかにするため、検者にとって見やすい画像が得られる効果がある。
以上、説明したように、本実施形態によれば、2次元血流ベクトル分布計測機能を有する超音波撮像装置において、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
<実施形態3>
本実施形態は、3次元血流ベクトル分布計測機能を有する超音波撮像装置に適用した実施形態である。装置の基本的な構成は、図6に示す実施形態2の構成と同様であり、以下、適宜図6を参照し、実施形態2と異なる点を中心に本実施形態を説明する。
本実施形態では、超音波探触子2を2次元アレイ探触子とし、立体的撮像法による3次元的な撮像を行うことにより、本発明は3次元血流の3次元速度ベクトル分布計測にも適用することが可能である。その際、パラレル受信エコー信号を取得するための受信ビームは2次元的な配置があるものとする。また、その本数は、例えば、4×4、4×6、6×8など何本でもよい。ただし、送受信方向に対して直交する2方向において、信号トラッキングの特性を等しくするためには、この2方向の受信ビーム数は等しいことが望ましい。ここでは、4×4本として以降の説明をする。
信号処理部15の動作の実施形態も、実施形態2で示した図8の計算処理フローと基本的に同じである。ただし、本実施形態では、超音波の送受信方向と、送受信方向に対して直交する2方向の、合計3方向の速度成分を演算対象とする。以下では、実施形態2との差を示す。
ステップS12において、所定の深さの演算起点を設定する際に、送受信方向に対する直交2方向をそれぞれθ1方向、θ2方向とした場合、所定の深さの直交断面において、θ1方向の各ライン上で少なくとも1点、θ2方向の各ライン上で少なくとも1点の演算起点を設定する。演算起点の位置は特に限定されるものではないが、演算の精度を高めるためには、所定の深さの直交断面で、図13に示すように、演算起点群が閉じていることが望ましい。なお図13において、黒丸が演算起点を示す。
ステップS13において、受信ビーム間の信号トラッキングを3次元的に行う。その際、例えばサブピクセルのトラッキングに用いるKLTの計算式(式(1)又は式(2))は、2次元トラッキングの場合と変わらないが、移動前の信号分布F(x)および移動後の信号分布G(x)をそれぞれ3次元的な広がりを有するピクセル群で与える。一例として、4×4×4ピクセルの範囲をトラッキング範囲26とした場合の信号トラッキングの例を図14に示す。
ステップS14において、連続の式を3次元的に与える。具体的には、例えば、式(4)の代わりに次に示す式(7)を用いる。
Figure 2018166656
ここで、式(7)の左辺は、送受信方向に直交する2方向から流入する血流VθdrとVθdrの和である。ここから、各々の方向の速度を求めるためには、例えば流入する血流を等量ずつ2方向に分配し、式(8)とする。
Figure 2018166656
式(8)をθ1方向およびθ2方向の少なくとも一方について積分することにより、所定の計測点群においてθ1方向およびθ2方向の直交方向速度Vθ1、Vθ2が算出される。積分する方向は、図13の例からわかるように、θ1方向およびθ2方向のいずれか一方であれば、各計測点の直交方向速度が算出されるが、それぞれで積分した場合には、一つの計測点について2つの結果が得られるので、重み付け加算等を行うことで精度を高めることができる。
また式(8)では血流の2方向への分配量を等量としたが、部位や血管壁からの距離などに応じて分配割合を適宜変更してもよく、その場合には、式(8)中の係数(1/2)を適宜変更する。
以上、説明したように本実施形態によれば、心血管の壁面の移動速度が得られない場合においても、質量保存則に基づく演算によって血流の速度ベクトルが得られるという効果に加え、超音波の送信回数を増やすことなく速度ベクトルを得る効果が活かされる。超音波撮像においては、超音波の送信回数とフレームレートはトレードオフの関係にある。3次元的な撮像では、送信ビームを2次元的に走査するため、2次元的な撮像と比較して、空間あたりの計測点数を同等に保とうとすると計測点の全数が多くなるためにフレームレートが低下し、フレームレートを同等に保とうとすると計測点の全数が減少するために空間あたりの計測点数が減少する。心血管内の渦流や螺旋流は局所的に生じ、また拍動とともに生成や消滅を繰り返す。このため、空間あたりの計測点数とフレームレートのいずれが不足しても、観測ができない。本実施形態では、超音波の送信回数を増やすことなく速度ベクトルを得ることができるので、結果として、空間分解能或いは時間分解能を低下させることなく血流情報を得ることができる。
一例として、パラレル受信を用いない従来のVFMと本実施形態とを用いて、同じ計測点数で3次元速度ベクトル分布を算出する際のフレームレートを比較する。まず、観測対象を心臓や胸部大動脈とし、撮像範囲を深さ15cm、角度40°×40°の範囲とする。このとき、超音波の進む速度を1540m/sとすると、1秒間における超音波の送信回数は約5000回となる。また、ドプラ法による計測を行うためのパケット送信の回数を6回、Bモード画像を形成するための送信を1回とする。局所的な渦流や螺旋流を観測するため、各深さにおいて2°刻みで計測を行うとする場合、各深さにおける計測点数は20×20(=400)点となる。パラレル受信を用いない従来のVFMの場合、深さあたりの計測点数と同数の超音波送信が必要となるので、フレームレートは次の式(9)となる。
Figure 2018166656
一方、本実施形態を適用する場合、1回の超音波送信で16点の計測点を得られる。したがって、フレームレートは次式(10)となる。
Figure 2018166656
一般に、血流から心血管疾患を診断するのに必要なフレームレートは、15〜20Hz以上と言われており、従来のVFMでは得られないフレームレートが本実施形態によって達成できることがわかる。
<実施形態4>
本実施形態は、血流の2次元又は3次元速度ベクトル分布を用いて診断パラメータを算出する機能を付加したことが特徴であり、上述した実施形態1〜3のいずれにも適用できる。
主な構成は、実施形態2について図6で示した構成例と同様であるが、本実施形態の信号処理部15は、図15に示すように、パケット間移動演算部159からの直交方向速度を得て速度ベクトル分布演算部153が演算した結果を入力とし、診断パラメータを算出する診断パラメータ演算部158が追加される。従来の超音波撮像装置においても、同様の機能を有する診断パラメータ演算部を備えることが可能であるが、本実施形態の診断パラメータ演算部158は、例えば、実施形態3の速度ベクトル分布演算部153から、フレームレートと同様のレートで3次元速度ベクトル分布を受け取り、処理を行う。
診断パラメータとして壁面せん断応力を算出する場合を例に、本実施形態の信号処理部の動作を説明する。図16は信号処理部の動作の流れを示す図であり、図8に示すステップS11〜S15までをまとめてS20として示している。
本実施形態でも、例えば、実施形態3と同様に、パケット間移動演算部159が所定の3次元の撮像範囲の各計測点について血流の直交方向速度を算出し、速度ベクトル分布演算部153が直交方向速度を用いて各計測点について3次元速度ベクトルを算出する(S20)。
診断パラメータ演算部158は、速度ベクトル分布演算部153から血流の速度ベクトル情報を受け取ると、次式(11)に従い、壁面せん断応力を算出する(S21〜S22)。
Figure 2018166656
式(11)において、μは血液粘度、yは壁面と垂直な断面、uは壁面と平行な速度成分である。このように壁面せん断応力σは、壁面と垂直な断面yにおいて、壁面と平行な速度成分uの速度分布の、壁面ywallにおける速度勾配に、血液粘度μを乗じることで得られる。
そこで、診断パラメータ演算部158は、まずステップS21において、壁面上の所定の計測点を起点とする断面において、血流の速度ベクトル分布から壁面と平行な速度成分uを算出し、ステップS22において、壁面と平行な速度成分の速度分布から、壁面における速度勾配を算出し、ステップS23において、壁面における速度勾配から壁面せん断応力を算出する。
このとき、壁面上の所定の計測点は、撮像範囲に含む壁面から診断パラメータ演算部158が自動的に選ぶ構成としてもよいし、検者が入力部16によって指定してもよい。複数の計測点において壁面せん断応力を算出することにより、壁面せん断応力分布が得られる。得られたた壁面せん断応力分布を表示画像とし(S24)、表示部に表示すること(S25)は、速度ベクトル分布を表示する実施形態のステップ(S16、S17)と同様である。
本実施形態によれば、速度ベクトル分布の計測において、高いフレームレートを維持することができるので、心臓の拍動に伴う血流変化に応じて刻々と変化する壁面せん断応力分布を高いフレームレートで表示することができる。また式(11)に示すように、壁面せん断応力分布は、血流の速度分布の空間微分により得られる診断パラメータであるため、離散的な空間微分を行うに当たり、高い空間分解能の速度ベクトル分布を得る必要があるが、本実施形態では、高い空間分解能を維持して速度ベクトル分布を得ることができるので、精度よくせん断応力分布を求めることができる。特に、図17に示すように、撮像範囲200を直交経路上の片側しか壁を含まない狭い範囲に限定し、計測点の間隔を狭めることにより、壁近傍において高い空間分解能を実現することができる。
実際の診断においては、血流の速度ベクトル分布を視覚情報として表示するよりも、速度ベクトル分布から算出される他の物理量が診断に有用な場合があり、特に例として示した壁面せん断応力分布は、動脈硬化、大動脈拡張、大動脈解離などの血管疾患と関連があるとされる。本実施形態によれば、刻々と時間変化する壁面せん断応力分布を正確に算出する効果がある。
但し、せん断応力分布は一例であり、診断パラメータとして、圧分布、血流動態、その他の物理量を算出することも可能である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、技術的に矛盾しない限り、実施形態の要素を組み合わせたり、要素を付加したりすることも本発明に包含される。
2・・・超音波探触子
3・・・生体
10・・・装置本体
11・・・送信部
12・・・受信部
14・・・制御部
15・・・信号処理部
16・・・入力部
17・・・表示部
18・・・メモリ
22・・・送信ビーム
24・・・受信ビーム
26・・・トラッキング範囲
30・・・心血管
33・・・画像が不鮮明な壁面
35・・・微小領域
121・・・パラレル受信処理部
151・・・ドプラ速度抽出部
152・・・Bモード画像形成部
153・・・速度ベクトル分布演算部
154・・・演算起点設定部
155・・・直交方向速度算出部
156・・・壁速度演算部
157・・・表示画像形成部
158・・・診断パラメータ演算部
159・・・パケット間移動演算部
200・・・撮像範囲

Claims (15)

  1. 検査対象に超音波ビームを送信する送信部と、
    前記検査対象が反射するエコー信号を受信する受信部と、
    前記受信部により受信された前記エコー信号を処理する信号処理部と、を備え、
    前記受信部は、1回の超音波ビームの送信に対し複数の受信ビームを生成するパラレル受信部を有し、
    前記信号処理部は、
    前記エコー信号から前記検査対象の所定領域に含まれる複数の計測点における血流の送受信方向速度であるドプラ速度を抽出するドプラ速度抽出部と、
    前記送受信方向速度を用いて、質量保存則に基づく演算により、前記送受信方向と直交する方向の速度を算出する速度ベクトル分布演算部と、
    前記質量保存則に基づく演算において初期値として用いる直交方向速度の演算起点を設定する演算起点設定部と、
    前記演算起点における組織の直交方向速度を算出する直交方向速度算出部と、を備え、
    前記直交方向速度算出部は、前記演算起点に対するパケット送信時に前記パラレル受信部により得られた前記複数の受信ビームを用いて、前記演算起点における組織のパケット間移動量を算出し、前記パケット間移動量から前記直交方向速度を算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  2. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記演算起点設定部は、前記所定領域の前記送受信方向と直交する方向の端部に、前記演算起点を設定することを特徴とする超音波撮像装置。
  3. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記演算起点設定部は、Bモード画像から血流と他の組織の境界を自動的に判断し、前記境界を基準として演算起点を決定することを特徴とする超音波撮像装置。
  4. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記演算起点の設定を受け付ける入力部をさらに備えることを特徴とする超音波撮像装置。
  5. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記直交方向速度算出部は、前記演算起点のパケット間移動量を用いて、前記演算起点の移動ベクトルを算出することにより、前記直交方向速度を算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  6. 請求項5に記載の超音波撮像装置であって、
    前記直交方向速度算出部は、前記パケット間移動量をサブピクセルの信号移動に対して算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  7. 請求項5に記載の超音波撮像装置であって、
    前記直交方向速度算出部は、前記パケット間移動量を隣接するピクセルの相互相関演算により算出すことを特徴とする超音波撮像装置。
  8. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記演算起点設定部は、1つの深さ方向について、2以上の演算起点を設定し、
    前記速度ベクトル分布演算部は、前記2以上の演算起点をそれぞれ用いて行った質量保存則に基づく演算の結果を、重み付け合成し、当該深さ方向における複数の計測点における血流の直交方向速度を算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  9. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記速度ベクトル分布演算部は、平面的撮像法により撮像した2次元的な断面において、
    2次元速度ベクトルを算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  10. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記速度ベクトル分布演算部は、立体的撮像法により撮像した3次元的な空間において、
    3次元速度ベクトルを算出することを特徴とする超音波撮像装置。
  11. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記信号処理部で得られた情報を表示する表示部を備え、
    前記表示部は、前記演算起点設定部が選出した前記演算起点をBモード画像に重ねて表示することを特徴とする超音波撮像装置。
  12. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記信号処理部で得られた情報を表示する表示部を備え、
    前記表示部は、前記ドプラ速度抽出部が抽出した血流の前記送受信方向速度と、前記速度ベクトル分布演算部が算出した血流の前記直交方向速度と、を組み合わせた速度ベクトルの空間分布を、ベクトルの空間分布図として表示することを特徴とする超音波撮像装置。
  13. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記信号処理部で得られた情報を表示する表示部を備え、
    前記表示部は、前記ドプラ速度抽出部が抽出した血流の前記送受信方向速度と、前記速度ベクトル分布演算部が算出した血流の前記直交方向速度と、を組み合わせた速度ベクトルの空間分布を、流線の空間分布図として表示することを特徴とする超音波撮像装置。
  14. 請求項1に記載の超音波撮像装置であって、
    前記速度ベクトル分布演算部の演算結果を用いて、前記検査対象の診断に必要なパラメータを算出する診断パラメータ演算部をさらに備えたことを特徴とする超音波撮像装置。
  15. 超音波ビームを送信する送信部と、検査対象から反射するエコー信号を受信する受信部と、受信したエコー信号を用いて、質量保存則に基づく演算を行って検査対象の所定領域における血流の速度ベクトルを算出する信号処理部とを備えた超音波撮像装置の動作を制御する方法であって、
    前記所定領域において、前記質量保存則に基づく演算の演算起点を設定し、
    前記送信部が前記演算起点に対しパケット送信し、前記パケット送信における1回の超音波ビームの送信に対し前記受信部が複数の受信ビームを生成する制御を行い、
    前記信号処理部が、
    前記所定領域からのエコー信号を用いて、前記所定領域に含まれる複数の計測点における血流の、超音波の送受信方向の速度を算出し、
    前記パケット送信により得た複数の受信ビームを用いて、前記演算起点における組織の直交方向の速度を算出し、
    前記演算起点における組織の直交方向の速度を初期値として、前記送受信方向の速度を用いて、質量保存則に基づく演算を行う制御を行うことを特徴とする方法。
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