JP2018162374A - 樹脂組成物、液体包装容器用フィルム、液体包装容器および医療容器 - Google Patents

樹脂組成物、液体包装容器用フィルム、液体包装容器および医療容器 Download PDF

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Abstract

【課題】高圧蒸気滅菌処理前後の柔軟性に優れ、ひいては高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れるフィルムを与え得る樹脂組成物を提供。【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(a)1と水添ブロック共重合体(b)2とを含有し、海島構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、水添ブロック共重合体(b)2が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、ポリオレフィン系樹脂(a)1と水添ブロック共重合体(b)2の合計100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(a)1の含有量が55〜90質量部であり、前記海島構造中、海相を形成する主成分が水添ブロック共重合体(b)2である、樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物、液体包装容器用フィルム、液体包装容器および医療容器に関するものである。
医療用の液体包装容器、例えば輸液バッグとしては、ガラス製のものおよびプラスチック製のものなどが用いられている。輸液バッグに注入された薬液は、密封された後、一般的には水蒸気滅菌またはオートクレーブ滅菌等の方法によって滅菌される。ガラス製のものはプラスチック製のものに比べて重く、且つ輸送時の衝撃または落下等によって破損し易いという問題があるため、プラスチック製の輸液バッグが広く用いられている。
プラスチック製の輸液バッグとしては、主に、軟質塩化ビニル樹脂製の輸液バッグ、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン製の輸液バッグが用いられてきた。しかし、軟質塩化ビニル樹脂製の輸液バッグは、柔軟性を付与するために多量の可塑剤を含有させるため、輸液の種類によっては可塑剤が輸液中に溶出するおそれがあり、安全性の面で懸念されている。また、医療用具は使い捨てされるため、軟質塩化ビニル樹脂製の輸液バッグも使用後には焼却されるが、軟質塩化ビニル樹脂に起因する有毒ガスが発生するという問題がある。一方、ポリオレフィン製の輸液バッグは、可塑剤を含まないために衛生面で好ましいが、ポリエチレン製の輸液バッグは柔軟性に優れる一方で滅菌処理時の耐熱性に劣り、ポリプロピレン製の輸液バッグは滅菌処理時の耐熱性には優れる一方で柔軟性が低いと共に耐衝撃性が不十分であるため、これらは取り扱い性の点で充分とはいえない。
一方、透明性、柔軟性、耐キンク性、膠着防止性、耐鉗子性、溶剤接着性、低温耐衝撃性、及び耐熱性に優れるチューブを提供することを課題として、特定の水添ブロック共重合体(a)、特定の水添ブロック共重合体(b)及びポリオレフィン系樹脂(c)からなる樹脂組成物を成形してなるチューブであって、水添ブロック共重合体(a)と水添ブロック共重合体(b)とポリオレフィン系樹脂(c)との質量比〔(c)/((a)+(b)+(c))〕が10/100〜60/100であるチューブが提案されている(特許文献1参照)。
また、従来と同等以上の透明性及び柔軟性を有しつつ、破袋強度に優れることを課題として、ポリプロピレン系樹脂(a)と、少なくとも一種の水添ブロック共重合体(b)とを含有する樹脂組成物(X)からなる層を少なくとも一層有する、液体包装容器用フィルムであって、前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(A)と、イソプレン(Ip)単位、ブタジエン(Bd)単位、又はイソプレン(Ip)及びブタジエン(Bd)単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、前記樹脂組成物(X)中で、水添ブロック共重合体(b)が(i)長軸1μm以上の島相又は共連続構造と、(ii)長軸300nm以下の島相、との両方の構造を形成する相分離構造を有し、前記樹脂組成物(X)において、ポリプロピレン系樹脂(a)と、水添ブロック共重合体(b)との質量比[(a)/{(a)+(b)}]が61/100〜95/100である、液体包装容器用フィルムが提案されている(特許文献2参照)。特許文献2には、特定の樹脂組成物からなる層が特定のモルフォロジーを有することにより、従来と同等以上の透明性及び柔軟性を有し、かつ、液体包装容器にした際に、優れた破袋強度が得られ、上記課題を解決し得ることが記載されている。
国際公開第2009/031625号 国際公開第2016/039257号
ところで、医療用途に用いられる液体包装容器は、高圧蒸気による滅菌処理に曝された後に使用される。しかし、高圧蒸気滅菌処理の際に、液体包装容器を構成するフィルムが硬くなって柔軟性が低下した結果、滅菌処理後の破袋強度が低下する場合があった。
そこで、本発明の課題は、高圧蒸気滅菌処理前後の柔軟性に優れ、ひいては高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れるフィルムを与え得る樹脂組成物を提供すること、該樹脂組成物を含有してなる液体包装容器用フィルムを提供すること、該液体包装容器用フィルムから形成された液体包装容器および前記樹脂組成物を用いて得られる液体包装容器を提供すること、並びに前記液体包装容器を有する医療容器を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、ある特定のモルフォロジーを有する樹脂組成物または該モルフォロジーを有し、且つ特定の粘度条件を有する樹脂組成物を用いて作製したフィルムであれば、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率が低くて柔軟性に優れ、ひいては高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れているため、上記課題を解決し得ることが判明し、本発明に至った。
本発明は、下記[1]〜[20]に関するものである。
[1]ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、海島構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、
前記海島構造中、海相を形成する主成分が前記水添ブロック共重合体(b)である、樹脂組成物。
[2]ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、共連続構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、
前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、
230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]が1以上である、樹脂組成物。
[3]230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]が1以上である、上記[1]の樹脂組成物。
[4]230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η2(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η2(b)との比[η2(a)/η2(b)]が0.7以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの樹脂組成物。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂(a)の溶解パラメータ(SP値)と、前記水添ブロック共重合体(b)の溶解パラメータ(SP値)との差(Δδ)が0.38〜1.0(J/cm0.5である、上記[1]〜[4]のいずれか1つの樹脂組成物。
[6]前記共役ジエン化合物が、ブタジエン、イソプレン、またはブタジエンとイソプレンの混合物である、上記[1]〜[5]のいずれか1つの樹脂組成物。
[7]前記共役ジエン化合物が、ブタジエン、またはブタジエンとイソプレンの混合物であり、且つ、前記重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)が−50〜−37℃である、上記[1]〜[6]のいずれか1つの樹脂組成物。
[8]前記共役ジエン化合物がイソプレンであり、且つ、前記重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)が−45〜−20℃である、上記[1]〜[6]のいずれか1つの樹脂組成物。
[9]前記水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量が3〜40質量%である、上記[1]〜[8]のいずれか1つの樹脂組成物。
[10]前記水添ブロック共重合体(b)の水素添加率が80モル%以上である、上記[1]〜[9]のいずれか1つの樹脂組成物。
[11]前記水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量が20,000〜500,000である、上記[1]〜[10]のいずれか1つの樹脂組成物。
[12]前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、およびこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂である、上記[1]〜[11]のいずれか1つの樹脂組成物。
[13]上記[1]〜[12]のいずれか1つの樹脂組成物を含有してなる液体包装容器用フィルム。
[14]高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が400MPa以下となり、且つ、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率(高圧蒸気滅菌処理後のヤング率/高圧蒸気滅菌処理前のヤング率)が1.05〜1.20である、上記[13]の液体包装容器用フィルム。
[15]上記[13]または[14]の液体包装容器用フィルムから形成された液体包装容器。
[16]内層と外層とを有する2層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
内層が、上記[1]〜[12]のいずれか1つの樹脂組成物からなり、
外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなる、液体包装容器。
[17]内層と外層との間に中間層を有する3層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
内層および中間層から選択される少なくとも一方が、上記[1]〜[12]のいずれか1つの樹脂組成物からなり、
外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなり、
前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
MPin<MPmid
を満たす、液体包装容器。
[18]前記各層の厚みが、内層5〜50μm、中間層100〜300μm、外層10〜120μmの範囲である、上記[17]の液体包装容器。
[19]高圧蒸気滅菌処理された、上記[15]〜[18]のいずれか1つの液体包装容器。
[20]上記[15]〜[19]のいずれか1つの液体包装容器を有する医療容器。
本発明によれば、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率が低くて柔軟性に優れ、ひいては高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れるフィルムを与え得る樹脂組成物を提供することができる。
また本発明によれば、該樹脂組成物を含有してなる液体包装容器用フィルムを提供することができ、該液体包装容器用フィルムから形成された液体包装容器および前記樹脂組成物を用いて得られる液体包装容器を提供することができ、並びに前記液体包装容器を有する医療容器を提供することができる。
透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した液体包装容器用フィルムの相構造の画像であり、実施例に記載のモルフォロジーの評価Aに相当する。 透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した液体包装容器用フィルムの相構造の画像であり、実施例に記載のモルフォロジーの評価Bに相当する。 透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した液体包装容器用フィルムの相構造の画像であり、実施例に記載のモルフォロジーの評価Cに相当する。
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物の一態様(以下、態様1と称する。)は、ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、海島構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、前記海島構造中、海相を形成する主成分が前記水添ブロック共重合体(b)である。
また、本発明の樹脂組成物の別の一態様(以下、態様2と称する。)は、ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、共連続構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]が1以上である。
ここで、態様1の樹脂組成物と態様2の樹脂組成物において、記号が同じものは、同じように定義される成分である。
まず、態様1および態様2のモルフォロジーについて以下に説明する。
(態様1のモルフォロジー)
態様1では、前記樹脂組成物において海島構造のモルフォロジー(図1参照)を有し、ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であるにも関わらず、当該海島構造中、海相を形成する主成分が前記水添ブロック共重合体(b)である。これにより、高圧蒸気滅菌処理によってもフィルムが硬くならず柔軟性を保つことができ、高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れるフィルムを与えることができる。柔軟性を有することで、液体包装容器を落下させたときにも破袋し難くなるため、破袋強度に優れることとなる。
ポリオレフィン系樹脂と水添ブロック共重合体とを上記範囲で含有する従来の樹脂組成物(例えば、特許文献2の樹脂組成物)は、海相を形成する主成分がポリオレフィン系樹脂であった。しかし、本発明者らは、海相を形成する主成分を上記水添ブロック共重合体(b)とすることによって、前記効果を発現させることに成功した。
前記海島構造中、海相を形成する主成分が前記水添ブロック共重合体(b)であるが、好ましくは、海相を形成する55質量%以上が前記水添ブロック共重合体(b)であり、より好ましくは、海相を形成する60質量%以上が前記水添ブロック共重合体(b)であり、さらに好ましくは、海相を形成する70質量%以上が前記水添ブロック共重合体(b)であり、特に好ましくは、海相を形成する80質量%以上が前記水添ブロック共重合体(b)である。海相中の水添ブロック共重合体(b)の含有量の上限値に特に制限はなく、100質量%であってもよいが、98質量%であってもよい。
海相は、前記水添ブロック共重合体(b)以外の成分、例えばポリオレフィン系樹脂(a)を含有することがある。このとき、ポリオレフィン系樹脂(a)は水添ブロック共重合体(b)中に溶け込んでいることが多く、そのとき、海相は、見かけ上、1つの成分から形成されているように見える。
一方、前記海島構造中、島相を形成する主成分は通常はポリオレフィン系樹脂(a)である。好ましくは、島相を形成する90質量%以上がポリオレフィン系樹脂(a)であり、より好ましくは、島相を形成する95質量%以上がポリオレフィン系樹脂(a)であり、さらに好ましくは、島相を形成する98質量%以上がポリオレフィン系樹脂(a)であり、特に好ましくは、島相を形成する実質的に100質量%がポリオレフィン系樹脂(a)である。
(態様2のモルフォロジー)
態様2では、前記樹脂組成物において共連続構造のモルフォロジー(図2参照)を有する。ここで、共連続構造とは、2成分または2成分以上がそれぞれ連続した相を形成しながら互いに混ざり合っているネットワーク構造であり、海島構造、シリンダー構造およびラメラ構造とは区別される。一般的には、「相分離した2相は三次元連続構造を成す」と説明されることもあるが、当該三次元連続構造は、必ずしも全て繋がっている必要はなく、一部が途切れていてもよい。
共連続構造のモルフォロジーにおいて、水添ブロック共重合体(b)が形成する相は、ポリオレフィン系樹脂(a)を含有していてもよい。このとき、ポリオレフィン系樹脂(a)は水添ブロック共重合体(b)中に溶け込んでいることが多く、そのとき、水添ブロック共重合体(b)が形成する相は、見かけ上、水添ブロック共重合体(b)のみから形成されているように見える。水添ブロック共重合体(b)が形成する相がポリオレフィン系樹脂(a)を含有しているとき、ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。なお、水添ブロック共重合体(b)が形成する相は、ポリオレフィン系樹脂(a)を含有していなくてもよい。
共連続構造のモルフォロジーを有することにより、高圧蒸気滅菌処理によってもフィルムが硬くならずに柔軟性を保つことができ、その結果、高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れるフィルムを与えることができる。
本発明において、樹脂組成物のモルフォロジーは、実施例に記載の方法で単層フィルムを作製し、そこから試験片を切り抜き、該試験片を実施例に記載の方法で観察することによって確認されたものとする。
(高圧蒸気滅菌処理)
高圧蒸気滅菌処理は、一般的に、密封された装置内で、所定温度および所定圧力下にて、飽和水蒸気中で加熱する処理であり、本発明においても同様の処理を意味している。滅菌処理は、オートクレーブ内にて、0.15〜0.35MPa、100〜130℃で10〜60分間滅菌処理することが好ましく、オートクレーブ内にて、0.15〜0.3MPa、115〜130℃で15〜45分間滅菌処理することがより好ましい。
本発明においては、実施例に記載の方法によって高圧蒸気滅菌処理を行い、樹脂組成物から形成されるフィルムのヤング率を測定することによって、高圧蒸気滅菌処理前後のフィルムの柔軟性の指標とした。
(態様1および態様2のモルフォロジーを形成する方法)
前記態様1および態様2のモルフォロジーを形成する方法に特に制限はないが、例えば、下記(i)、(ii)および(iii)からなる群から選択される少なくとも1つを満たす成分を用いる方法が挙げられる。
(i)230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]を好ましくは1以上とすること。態様1または態様2のモルフォロジーを形成する観点から、η1(a)/η1(b)は1〜30であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
なお、態様2においては、当該(i)は必須の要件である。
ここで、「230℃、せん断速度1.0×10−1」という条件は、押出成形条件を考慮した条件である。η1(a)/η1(b)が1以上であれば、態様1および態様2のモルフォロジーを形成し易く、また、30以下であれば、成形性の低下を抑制でき、さらに樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(a)の分散径が粗大化することによって生じる機械的特性の低下を抑制できる。
本発明において、粘度は、JIS K 7199(1999年)、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。上記η1(a)およびη1(b)ならびに後述するη2(a)およびη2(b)はそれぞれ同じ単位を使用し、例えばPa・sを使用する。
(ii)230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η2(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η2(b)との比[η2(a)/η2(b)]を好ましくは0.7以上、より好ましくは1以上とすること。態様1または態様2のモルフォロジーを形成する観点から、η2(a)/η2(b)は1〜30であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜6であることが特に好ましい。ここで、「230℃、せん断速度1.0×10−1」という条件は、射出成形条件を考慮した条件である。η2(a)/η2(b)が0.7以上であれば、態様1および態様2のモルフォロジーを形成し易く、また、30以下であれば、成形性の低下を抑制でき、さらに樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(a)の分散径が粗大化することによって生じる機械的特性の低下を抑制できる。
(iii)前記ポリオレフィン系樹脂(a)の溶解パラメータ(SP値)と、前記水添ブロック共重合体(b)の溶解パラメータ(SP値)との差(Δδ)を好ましくは0.38〜1.0(J/cm0.5とすること。態様1または態様2のモルフォロジーを形成する観点から、該Δδは、0.40〜0.90(J/cm0.5であることがより好ましく、0.40〜0.80(J/cm0.5であることがさらに好ましく、0.40〜0.75(J/cm0.5であることが特に好ましい。
本発明において、SP値は、化合物の構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメータ(Solubility Parameter)を意味する。Hoy法とは、Hoyの推算法に基づき計算されるものであり、前記推算法は、凝集エネルギー密度とモル分子容(モル体積;m/mol)とを基に分子構造から推算されるものである(D.W. Van Krevelen, K. te Nijenhuis, “Properties of Polymers, Fourth Edition”, Elsevier Science, 2009, pp.216-221)。
前記推算法では、ポリオレフィン系樹脂(a)、水添ブロック共重合体(b)の各々において10モル%以上を占める構造の全てを考慮する。また、10モル%未満の構造についても、構造及びモル分率が明らかなものについては計算に加えるものとする。
前記推算法により計算できない場合は、溶解度パラメータが既知の溶媒に対して溶解するか否かの判定による実験法で溶解度パラメータを算出し、それを代用することができる(「ポリマーハンドブック 第4版(Polymer Handbook Fourth Edition)」、ジェー・ブランド(J.Brand)著、ワイリー(Wiley)社、1998年発行)。この場合、溶解度パラメータの算出に用いるポリオレフィン系樹脂(a)、水添ブロック共重合体(b)の溶解度パラメータは、同一の実験法により得られた値を用いる。
本発明では、前記態様1のモルフォロジーを形成する観点からは、前記(i)、前記(ii)および前記(iii)からなる群から選択される少なくとも1つを満たす成分を用いることが好ましく、少なくとも(i)および(iii)の2つを満たす成分を用いるか、または少なくとも(ii)および(iii)の2つを満たす成分を用いることがより好ましく、(i)、(ii)および(iii)の全てを満たす成分を用いることがさらに好ましい。また、前記態様2のモルフォロジーを形成する観点からは、前記(i)と共に、前記(ii)および前記(iii)からなる群から選択される少なくとも1つを満たす成分を用いることが好ましく、少なくとも(i)および(iii)の2つを満たす成分を用いることがより好ましく、(i)、(ii)および(iii)の全てを満たす成分を用いることがさらに好ましい。
また、前記態様1および態様2のモルフォロジーを形成する限りにおいて、ポリオレフィン系樹脂(a)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、且つ水添ブロック共重合体(b)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂(a)または水添ブロック共重合体(b)を2種以上併用する例としては、前記(i)、(ii)および(iii)の少なくとも1つを満たす成分の組み合わせと、前記(i)、(ii)および(iii)をいずれも満たさない成分の組み合わせとを併用する態様が挙げられる。このような態様であっても、前記態様1のモルフォロジーとなっているか、または、少なくとも前記(i)を満たす各成分であって且つ前記態様2のモルフォロジーとなっていれば、本発明の効果が発現する。
態様1および態様2はいずれであってもよいが、本発明の効果の観点から、好ましくは態様1である。
以下、態様1および態様2の樹脂組成物の各成分について、順に説明する。
〔ポリオレフィン系樹脂(a)〕
ポリオレフィン系樹脂(a)を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、シクロヘキセン等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂(a)を構成するオレフィンは、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
中でも、ポリオレフィン系樹脂(a)としては、水添ブロック共重合体(b)との相容性、耐熱性および成形性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。本明細書において、ポリオレフィン系樹脂(a)に関する記載は全て、ポリプロピレン系樹脂に読み替えることができる。
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンに由来する構造単位(以下、プロピレン単位と略称することがある。)の含有量が60モル%以上であることが好ましく、それ以外について特に制限はなく、公知のポリプロピレン系樹脂を用いることができる。プロピレン単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。プロピレン以外に由来する構造単位としては、例えば、エチレンに由来する構造単位、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンに由来する構造単位のほか、後述の変性剤に由来する構造単位なども挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、およびこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。該変性物としては、ポリプロピレン系樹脂に変性剤をグラフト共重合して得られるものや、ポリプロピレン系樹脂の主鎖に変性剤を共重合させて得られるものなどが挙げられる。該変性剤としては、例えば、マレイン酸、シトラコン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のエステル、アミドまたはイミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ハロゲン化無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;不飽和モノカルボン酸のエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、アミドまたはイミド等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、変性されていないものが好ましい。
中でも、比較的安価、かつ容易に入手できるという観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体が好ましく、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体がより好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂(a)(好ましくはポリプロピレン系樹脂)の230℃、21.6Nの条件下におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜70g/10分であることが好ましく、1〜30g/10分であることがより好ましい。特に、押出成形する場合は、樹脂組成物の成形性の観点から、ポリプロピレン系樹脂の前記MFRは0.1〜30g/10分であることが好ましく、1〜20g/10分であることがより好ましく、1〜10g/10分であることがさらに好ましく、射出成形する場合は、樹脂組成物の成形性の観点から、1〜70g/10分であることが好ましく、1〜60g/10分であることがより好ましく、1〜30g/10分であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、メルトフローレートは、JIS K 7210(1999年)に準拠して測定した値である。
また、ポリオレフィン系樹脂(a)(好ましくはポリプロピレン系樹脂)の融点は、特に制限されるものではないが、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120〜170℃である。本明細書において、融点は、示差走査熱量計(DSC)「TGA/DSC1 Star System」(Mettler Toledo社製)を用いて、30℃から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱して融解させたサンプルを、250℃から30℃まで降温速度10℃/分で冷却後、昇温速度10℃/分で再度30℃から250℃まで昇温した際に測定される吸熱ピークのピークトップ温度である。
〔水添ブロック共重合体(b)〕
水添ブロック共重合体(b)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物である。
以下、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)について順に説明する。
(重合体ブロック(A))
重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする。該重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、樹脂組成物の透明性および機械的特性の観点から、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
上記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−ブロモメチルスチレン、m−ブロモメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。中でも、製造コストおよび物性バランスの観点から、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびこれらの混合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
但し、本発明の効果の妨げにならない限り、重合体ブロック(A)は芳香族ビニル化合物以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。該他の不飽和単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレン、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等から選択される少なくとも1種が挙げられる。重合体ブロック(A)が該他の不飽和単量体に由来する構造単位を含有する場合の結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
重合体ブロック(A)が芳香族ビニル化合物以外の他の不飽和単量体に由来する構造単位を含有している場合、その含有量は、重合体ブロック(A)の合計質量に基づいて10質量%以下であることが好ましい。
重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,500〜100,000、より好ましくは2,500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜30,000、特に好ましくは3,000〜15,000、最も好ましくは3,000〜8,000である。なお、本明細書に記載の「重量平均分子量」は全て、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
また、重合体ブロック(A)の含有量は、得られるフィルムおよび液体包装容器のゴム弾性および柔軟性の観点から、3〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることがさらに好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましく、5〜15質量%であることが最も好ましい。重合体ブロック(A)の含有量は、7〜15質量%であってもよいし、10〜15質量%であってもよい。なお、水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量は、H−NMR測定により求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
(重合体ブロック(B))
重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする。該重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有量は、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等から選択される少なくとも1種が挙げられる。中でも、ブタジエン、イソプレン、ブタジエンとイソプレンの混合物が好ましく、ブタジエン、またはブタジエンとイソプレンの混合物がより好ましい。なお、前記共役ジエンがブタジエンとイソプレンの混合物の場合、それらの混合比率[イソプレン/ブタジエン](質量比)に特に制限はないが、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは40/60〜70/30、特に好ましくは45/55〜65/35である。
また、重合体ブロック(B)が2種以上の共役ジエン化合物(例えば、ブタジエンとイソプレン)に由来する構造単位から構成されている場合は、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー、完全交互、一部ブロック状、ブロック、またはそれらの2種以上の組合せからなることができる。
重合体ブロック(B)の重量平均分子量は、得られるフィルムおよび液体包装容器の柔軟性の観点から、好ましくは10,000〜500,000であり、より好ましくは20,000〜400,000、さらに好ましくは40,000〜300,000、特に好ましくは75,000〜240,000、最も好ましくは85,000〜220,000である。
重合体ブロック(B)においては、ビニル結合構造単位(例えば、ブタジエン単量体の場合は1,2−結合構造単位であり、イソプレン単量体の場合は1,2−結合構造単位と3,4−結合構造単位の合計)の含有量(以下、ビニル結合量と称することがある)は、好ましくは40〜85モル%、より好ましくは40〜80モル%である。特に、重合体ブロック(B)がイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位を主体とする場合、ビニル結合量は、好ましくは40〜85モル%、より好ましくは40〜80モル%、さらに好ましくは40〜60モル%、特に好ましくは40〜55モル%である。また、重合体ブロック(B)がブタジエンに由来する構造単位を主体とする場合、ビニル結合量は、好ましくは40〜80モル%、より好ましくは60〜80モル%、さらに好ましくは70〜80モル%、特に好ましくは70〜78モル%、最も好ましくは72〜78モル%である。重合体ブロック(B)がイソプレンに由来する構造単位を主体とする場合、ビニル結合量は、好ましくは30〜60モル%、より好ましくは35〜60モル%、さらに好ましくは40〜55モル%、特に好ましくは40〜52モル%、最も好ましくは45〜52モル%である。
なお、得られるフィルムおよび液体包装容器の耐熱性および耐候性の観点から、重合体ブロック(B)が水素添加前に有していた炭素−炭素二重結合の80モル%以上が水素添加(以下、水添と略称することがある。)されていることが好ましく、85モル%以上が水添されていることがより好ましく、90モル%以上が水添されていることがさらに好ましく、93モル%以上が水添されていることが特に好ましい。なお、該値を、水添ブロック共重合体(b)の水素添加率(水添率)と称することがある。水素添加率の上限値に特に制限はないが、上限値は100モル%であってもよく、99.5モル%であってもよく、98モル%であってもよい。
なお、上記の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物由来の構造単位中の炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加後のH−NMR測定によって求めた値であり、より詳細には実施例に記載の方法に従って測定した値である。
さらに、重合体ブロック(B)は、本発明の効果の妨げにならない限り、共役ジエン化合物以外の他の重合性単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。該他の重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンおよびビニルアントラセン等の芳香族ビニル化合物、並びにメタクリル酸メチル、メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、β−ピネン、8,9−p−メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2−メチレンテトラヒドロフラン等から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく挙げられる。重合体ブロック(B)が共役ジエン化合物以外の他の重合性単量体に由来する構造単位を含有する場合、その結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパー状のいずれでもよい。
重合体ブロック(B)が共役ジエン化合物以外の他の重合性単量体に由来する構造単位を含有している場合、その含有量は、重合体ブロック(B)の合計質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物以外の他の重合性単量体に由来する構造単位を含有していなくてもよい。
(重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合様式)
水添ブロック共重合体(b)において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との結合形式は特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状、またはこれらの2つ以上が組合わさった結合様式のいずれでもよい。中でも、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の結合形式は直鎖状であることが好ましく、その例としては重合体ブロック(A)をAで、また重合体ブロック(B)をBで表したときに、A−B−Aで示されるトリブロック共重合体、A−B−A−Bで示されるテトラブロック共重合体、A−B−A−B−Aで示されるペンタブロック共重合体、(A−B)X型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等を挙げることができる。中でも、水添ブロック共重合体(b)の製造容易性および得られるフィルムおよび液体包装容器の柔軟性等の観点から、トリブロック共重合体(A−B−A)が好ましく用いられる。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが二官能のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は1つの重合体ブロックとして取り扱われる。これに従い、上記例示も含め、本来、厳密にはY−X−Y(Xはカップリング残基を表す)と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロックYと区別する必要がある場合を除き、全体としてYと表示される。本明細書においては、カップリング剤残基を含むこの種の重合体ブロックを上記のように取り扱うので、例えば、カップリング剤残基を含み、厳密にはA−B−X−B−A(Xはカップリング剤残基を表す)と表記されるべきブロック共重合体はA−B−Aと表記され、トリブロック共重合体の一例として取り扱われる。
また、水添ブロック共重合体(b)には、本発明の効果を損なわない範囲内で、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)以外の、他の重合性単量体からなる重合体ブロック(C)が存在していてもよい。この場合、重合体ブロック(C)をCで表したとき、ブロック共重合体の構造としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体等が挙げられる。
水添ブロック共重合体(b)において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは実質的に100質量%である。該値は、水添ブロック共重合体(b)がカップリング剤残基を含有する場合には、該カップリング剤残基を考慮しない値である。
水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量は、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは50,000〜400,000、さらに好ましくは50,000〜200,000、さらに好ましくは60,000〜150,000、最も好ましくは70,000〜100,000である。水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量が20,000以上であれば、樹脂組成物の耐熱性が良好となり、一方、500,000以下であれば、樹脂組成物の成形性が良好となる。
また、水添ブロック共重合体(b)の分子量分布(Mw/Mn)に特に制限はないが、得られる樹脂組成物の機械的特性の観点から、1.0〜1.4であることが好ましく、1.0〜1.2であることがより好ましい。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算分子量として求めた重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から算出した値であり、後述する実施例において重量平均分子量(Mw)の測定と同様の条件で求めることができる。
水添ブロック共重合体(b)は、本発明の効果を損なわない限り、分子鎖中および/または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を1種または2種以上有していてもよい。水添ブロック共重合体(b)は、該官能基を有していないことが好ましい。
水添ブロック共重合体(b)の流動性は、樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、230℃、21.6Nで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であることが好ましく、1〜90g/10分であることがより好ましい。特に、押出成形する際の成形性の観点からは0.1〜80g/10分であることが好ましく、1〜50g/10分であることがさらに好ましい。また、射出成形体の成形性および低温ヒートシール強度の観点からは、MFRは10〜100g/10分であることが好ましく、20〜100g/10分であることがより好ましく、40〜100g/10分であることがさらに好ましい。
(前記水添ブロック共重合体(b)の製造方法)
水添ブロック共重合体(b)は、溶液重合法、乳化重合法または固相重合法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でも、アニオン重合法が好ましい。アニオン重合法では、溶媒、アニオン重合開始剤、および必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次添加して、ブロック共重合体を得、次いでブロック共重合体を水素添加することにより、水添ブロック共重合体(b)を得ることができる。
上記方法において重合開始剤として用いられる有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のモノリチウム化合物およびテトラエチレンジリチウム等のジリチウム化合物等が挙げられる。
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、重合反応は、通常、0〜100℃で0.5〜50時間行う。
ルイス塩基は共役ジエン化合物由来の構造単位におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、N−メチルモルフォリン等が挙げられる。ルイス塩基は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した方法により重合を行った後、アルコール類、カルボン酸類、水等の活性水素化合物を添加して重合反応を停止させ、公知の方法にしたがって不活性有機溶媒中で水添触媒の存在下に水添して、水素添加物とすることができる。
水添反応は、水添触媒の存在下に、反応温度20〜100℃、水素圧力0.1〜10MPaの条件下で行うことができる。
水添触媒としては、例えば、ラネーニッケル;白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルト等の第8族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウム等の有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒等が挙げられる。
このようにして得られた水添ブロック共重合体(b)は、重合反応液をメタノールなどに注ぐことにより凝固させた後、加熱または減圧乾燥させるか、重合反応液を沸騰水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱または減圧乾燥することにより取得することができる。
水添ブロック共重合体(b)としては、得られるフィルムおよび液体包装容器において高い柔軟性を得る観点から、水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)が−50〜−20℃であることが好ましく、−50〜−25℃であることがより好ましい。特に、前記共役ジエン化合物が、ブタジエン、またはブタジエンとイソプレンの混合物である場合、前記水添ブロック共重合体(b)のガラス転移温度(Tg)は−50〜−37℃であることが好ましく、−47〜−40℃であることがより好ましい。
また、前記共役ジエン化合物がイソプレンである場合は、前記水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)は−45〜−20℃であることが好ましく、−40〜−20℃であることがより好ましく、−35〜−25℃であることがさらに好ましい。重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)は実施例に記載の方法により求めることができる。
(ポリオレフィン系樹脂(a)の含有割合)
ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)との合計100質量部に対するポリオレフィン系樹脂(a)の含有量は、55〜90質量部であることが必要であり、好ましくは60〜90質量部、より好ましくは65〜80質量部である。該含有量が55質量部未満であると、成形性が不足し、90質量部を越えると、ヤング率が高くなり、且つ透明性に乏しくなるほか、前記モルフォロジーの形成が困難になる。このように、本発明では、ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量の方が水添ブロック共重合体(b)の含有量よりも多く、そのため、一般的にはポリオレフィン系樹脂(a)が海島構造の海相を形成し易いといえる条件であるが、それにも関わらず、前記モルフォロジーを構成する点に特徴がある。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、前記ポリオレフィン系樹脂(a)および水添ブロック共重合体(b)に加えて、本発明の効果が損なわれない範囲において、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クマロン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィンおよびジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン等の他の重合体などが挙げられる。
樹脂組成物中、ポリオレフィン系樹脂(a)および水添ブロック共重合体(b)の合計含有量は、本発明の効果の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
[液体包装容器用フィルムおよび液体包装容器]
本発明の樹脂組成物は、フィルムまたはシート等の成形体とすることができ、該フィルムまたはシートから液体包装容器を製造することができる。つまり、本発明は、本発明の樹脂組成物を含有してなる液体包装容器用フィルムと、該液体包装容器用フィルムから形成される液体包装容器をも提供する。
本発明の液体包装容器用フィルムの高圧蒸気滅菌処理「前」のヤング率は、フィルムおよび液体包装容器の柔軟性の観点から、好ましくは400MPa以下、より好ましくは120〜400MPa、さらに好ましくは120〜260MPa、特に好ましくは130〜230MPaである。また、本発明の液体包装容器用フィルムの高圧蒸気滅菌処理「後」のヤング率は、フィルムおよび液体包装容器の柔軟性の観点から、好ましくは400MPa以下、より好ましくは120〜400MPa、さらに好ましくは140〜310MPa、特に好ましくは150〜290MPa、最も好ましくは150〜260MPaである。
高圧蒸気滅菌処理前のヤング率が低い場合、通常、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率が高くなり易い。しかし、本発明の液体包装容器用フィルムであれば、高圧蒸気滅菌処理前のヤング率が低い場合でも、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率を低く抑えることができる。このように、高圧蒸気滅菌処理の前後でのヤング率の変化は小さい方が好ましく、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率(高圧蒸気滅菌処理後のヤング率/高圧蒸気滅菌処理前のヤング率)が1.05〜1.20であることが好ましく、1.05〜1.15であることがより好ましい。
特に、本発明においては、高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が400MPa以下となり、且つ、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率(高圧蒸気滅菌処理後のヤング率/高圧蒸気滅菌処理前のヤング率)が1.05〜1.20であることが好ましく、1.05〜1.15であることがより好ましく、1.05〜1.12であることがさらに好ましい。
なお、ヤング率は実施例に記載の方法に従って測定した値である。
本発明の液体包装容器用フィルムは、単層であってもよいし、多層であってもよい。多層である場合には、少なくとも1層が本発明の樹脂組成物を含有していればよい。
液体包装容器用フィルムの厚みに特に制限はないが、好ましくは100〜500μm、より好ましくは110〜400μmである。
該液体包装容器用フィルムから形成された本発明の液体包装容器は、高圧蒸気滅菌処理前後において柔軟性に優れており、そのため、高圧蒸気滅菌処理後においても破袋強度に優れている。本発明の液体包装容器は、一部が仕切れられた複室包装容器であってもよい。また、この仕切りは、一定の圧力によって開放され、仕切られている複室が1つになるものであってもよい。
本発明の液体包装容器の好ましい一態様として、以下の〔I〕および〔II〕の液体包装容器が挙げられる。
〔I〕内層と外層とを有する2層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
内層が、本発明の樹脂組成物からなり、
外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなる、液体包装容器。
〔II〕内層と外層との間に中間層を有する3層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
内層および中間層から選択される少なくとも一方が、本発明の樹脂組成物からなり、
外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなり、
前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
MPin<MPmid
を満たす、液体包装容器。
これらの液体包装容器は、本発明の樹脂組成物からなる層を有することにより、高圧蒸気滅菌処理前後において柔軟性に優れており、そのため、高圧蒸気滅菌処理後においても破袋強度に優れている。
以下、〔I〕および〔II〕の液体包装容器の各層に用いる材料について説明する。
(内層および中間層)
内層は、液体と接する層である。中間層は、該内層と、外層との間に位置する層である。
前記〔I〕の液体包装容器においては、該内層は本発明の樹脂組成物からなる。また、前記〔II〕の液体包装容器においては、内層および中間層から選択される少なくとも一方が、本発明の樹脂組成物からなる。
(外層)
前記〔I〕および〔II〕の液体包装容器において、外層はプロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物(以下、樹脂組成物(Y)と称することがある)からなる。
該ポリプロピレン系樹脂は、前記ポリオレフィン系樹脂(a)の説明に記載されたポリプロピレン系樹脂と同じように説明される。中でも、ポリプロピレン系樹脂のプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは85〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。
ポリプロピレン系樹脂の融点は130〜180℃であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点が130℃以上であることにより、ヒートシール時のフィルムの肉痩せが抑制される。また、ポリプロピレン系樹脂の融点が180℃以下であることにより、フィルム成形性が良好となる。同様の観点から、ポリプロピレン系樹脂の融点は140〜175℃であることがより好ましく、150〜175℃であることがさらに好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、およびこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ホモポリプロピレンであることがより好ましい。
該樹脂組成物(Y)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロックとを有する水添ブロック共重合体を含有していてもよい。該水添ブロック共重合体としては、例えば、前記水添ブロック共重合体(b)と同様に説明される(但し、モルフォロジーの説明については除かれる。)水添ブロック共重合体を用いることができ、好ましいものも同様であり、製造方法も同様に説明される。
樹脂組成物(Y)は、前述の通り、ポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有し、好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは60〜99質量%含有し、さらに好ましくは70〜99質量%、特に好ましくは85〜99質量%含有する。ポリプロピレン系樹脂の含有量が55質量%以上であれば、力学強度および成形性が良好となる傾向にある。
また、樹脂組成物(Y)において、各成分の含有量が上記範囲にあると、透明性、柔軟性、ヒートシール性および耐熱性が良好となる傾向にある。なお、樹脂組成物(Y)はポリプロピレン系樹脂のみからなっていてもよく、本発明ではこのような場合も便宜上、外層が樹脂組成物からなると考えることとする。
前記樹脂組成物(Y)は、前記成分以外に、本発明の効果が損なわれない範囲において、その他の成分を含有していてもよい。
該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤;水添クロマン・インデン樹脂、水添ロジン系樹脂、水添テルペン樹脂、脂環族系水添石油樹脂等の水添系樹脂;オレフィンおよびジオレフィン重合体からなる脂肪族系樹脂等の粘着付与樹脂;水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン等の他の重合体が挙げられる。
なお、樹脂組成物(Y)中、その他の成分の合計含有量は、本発明の効果の観点から、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(内層、中間層および外層それぞれの厚み)
前記〔I〕および〔II〕の液体包装容器において、前記内層、中間層および外層の厚みに特に制限はなく、用途に応じて適宜調整することができる。内層の厚みは5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。中間層の厚みは100〜300μmが好ましく、100〜200μmがより好ましく、100〜180μmがさらに好ましい。外層の厚みは10〜120μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。
前記内層、中間層、外層の層間や、外層の表面には、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の層を有していてもよい。他の層としては、接着層、保護層、コーティング層、光反射層、光吸収層等が挙げられる。
本発明の液体包装容器としては、前記内層と前記中間層とが接していることが好ましく、前記中間層と前記外層とが接していることが好ましい。
(液体包装容器の製造方法)
本発明の液体包装容器の製造方法としては特に制限はなく、例えば公知の積層体の製造方法を利用して積層体を形成し、次いでヒートシールを行った後、切り離す(切り出す)ことによって液体包装容器とし、医療用途の場合にはさらに滅菌処理される。前述の通り、本発明においては、ヤング率を低く保つことが可能であるため、高圧蒸気滅菌処理することも可能である。ここで、前記した各層の材料を用いるとフィルム成形性が良好となるため、フィッシュアイおよび異物などが無いフィルム(積層体)を形成し易いというメリットがある。
積層体の製造方法としては、例えば次の方法が好ましく挙げられる。まず、各層の材料を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機を用いて混練して各層の樹脂組成物を調製する。得られた各樹脂組成物を、多層Tダイを用いた共押出し成形や、多層円形Tダイを用いた空冷または水冷インフレーション成形等により、フィルム状またはチューブ状等に成形する。成形時の樹脂温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは180〜220℃である。空冷または水冷インフレーション成形時の冷却温度は、好ましくは7〜70℃、より好ましくは10〜40℃である。また、液体包装容器の製造容易性の観点からは、チューブ状に成形するのが好ましい。チューブ状の成形体であれば、ヒートシールした後、切り離す(切り出す)ことによって、液体包装容器を製造できる。一方、フィルム状の成形体の場合には、2枚を重ね合わせてからヒートシールする必要がある。
医療用途の場合にはさらに滅菌処理として、水蒸気滅菌、高圧蒸気滅菌等がなされる。
なお、ポート、およびゴム栓等のキャップを含む液体排出部材を有することで、排出口を有する液体包装容器となり、輸液バッグ等の医療容器として有効に利用される。このように、本発明は、前記液体包装容器を有する医療容器も提供する。該医療容器は、一部が仕切られた複室容器であってもよい。また、この仕切りは、一定の圧力によって開放され、仕切られている複室が1つになるものであってもよい。
[用途]
以上のように、本発明の樹脂組成物は、液体包装容器の材料などとして有効に利用できる。
また、本発明の液体包装容器は、例えば、前述の医療容器のほか、レトルト食品、マヨネーズ、ケチャップ、清涼飲料水、アイス等を包装する食品包装容器等の種々の用途にも有効に利用できる。
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されない。なお、各実施例および比較例で使用されたポリオレフィン系樹脂(a)ならびに各製造例で得た水添ブロック共重合体の各物性は以下の方法により測定した。
<重量平均分子量(Mw)>
水添ブロック共重合体(b)または(b’)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算分子量として求めた。
・装置:GPC装置「HLC−8020」(東ソ−株式会社製)
・分離カラム:東ソ−株式会社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」および「G5000HXL」を直列に連結した。
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤の流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
<水添ブロック共重合体(b)または(b’)における、重合体ブロック(A)の含有量および重合体ブロック(B)の水素添加率>
H−NMR測定によって求めた。
・装置:核磁気共鳴装置「Lambda−500」(日本電子株式会社製)
・溶媒:重水素化クロロホルム
<水添ブロック共重合体(b)または(b’)における重合体ブロック(B)のビニル結合量(1,2−結合および3,4−結合の合計含有量)>
水素添加前のブロック共重合体のH−NMR測定を測定し、1,2−結合および3,4−結合のピーク面積と1,4−結合のピーク面積の合計に対する1,2−結合および3,4−結合のピーク面積の割合を算出し、ビニル結合量とした。
<重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)>
示差走査型熱量計「DSC6200」(セイコーインスツル株式会社製)用い、各例で製造した水添ブロック共重合体(b)または(b’)を精秤し、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線における重合体ブロック(B)に基づくピークの変曲点の温度を読みとり、これを重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)とした。
<ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)、水添ブロック共重合体(b)ないし(b’)の粘度η1(b)>
230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)ないし(b’)の粘度η1(b)とを、JIS K 7199(1991年)に準拠して測定した。
より詳細には、キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製)を用い、ポリオレフィン系樹脂(a)または水添ブロック共重合体(b)ないし(b’)をシリンダー内において230℃で5分間予熱した後、ピストンによって0.5〜500mm/minの速度でキャピラリー(φ1mm、L/D=10)より吐出し、対応するせん断速度における粘度を測定した。また、得られた値から、これらの粘度比[η1(a)/η1(b)]を求めた。
<ポリオレフィン系樹脂(a)のSP値、水添ブロック共重合体(b)ないし(b’)のSP値>
ポリオレフィン系樹脂(a)のSP値と、水添ブロック共重合体(b)ないし(b’)のSP値とを、化合物の構造に基づき、Hoy法により溶解度パラメータ(Solubility Parameter)を算出した。また、得られた値から、それらのSP値の差(Δδ)を求めた。
各実施例および比較例で製造した厚さ200μmの単層フィルムを用いて、以下の方法に従って、各測定および評価を行った。
<モルフォロジーの観察>
まず、単層フィルムから超薄切片(厚み60〜80nm程度)を作製し、染色(RuO染色、5分間)した。その後、染色された超薄切片を透過型電子顕微鏡「JEM−2100F」(日本電子株式会社製)にて倍率5,000倍で観察し、下記評価基準に従って評価した。なお、水添ブロック共重合体の重合体ブロック(A)が染色されている。
ここで、下記A評価の例として、実施例1で得た単層フィルムのモルフォロジーを図1に、下記B評価の例として、実施例4で得た単層フィルムのモルフォロジーを図2に、下記C評価の例として、比較例1で得た単層フィルムのモルフォロジーを図3に示す。
A:樹脂組成物が海島構造のモルフォロジーを有しており、水添ブロック共重合体(染色相)が、海相を構成している。
B:樹脂組成物が共連続構造のモルフォロジーを有している。
C:樹脂組成物が海島構造のモルフォロジーを有しており、水添ブロック共重合体(染色相)が、島相を構成している。
<ヤング率>
単層フィルムから25mm×75mmのサイズの試験片(厚さ200μm)を作製し、「インストロン3345」(インストロン社製)を用いて、常温(23℃)、5mm/分の条件下にてヤング率を測定した。
また、下記条件に従って高圧蒸気滅菌処理した後の単層フィルムから25mm×75mmのサイズの試験片(厚さ200μm)を作製し、上記と同様の条件にてヤング率を測定した。
ヤング率が小さいほど柔軟性に優れる。なお、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化が小さく且つ滅菌処理後のヤング率が低いほど、高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れることを意味する。
(高圧蒸気滅菌処理)
単層フィルムを高圧蒸気滅菌装置「ES−215」(株式会社トミー精工製)を用いて、0.2MPa、121℃、30分の条件で高圧蒸気滅菌処理を行った。
[実施例で使用した原料]
以下に、実施例および比較例で用いた各成分の詳細または製造方法を示す。また、表1〜3に各成分の物性値を纏める。
〔ポリオレフィン系樹脂(a)〕
ポリオレフィン系樹脂(a−1):「プライムポリプロ(登録商標)F327」(株式会社プライムポリマー製)、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂)、MFR7g/10分(230℃、21.6N)、融点138℃
〔水添ブロック共重合体(b)、(b’)〕
水添ブロック共重合体(b−1)〜(b−4)および水添ブロック共重合体(b’−1)〜(b’−4):下記製造例で得た水添ブロック共重合体を用いた。
[製造例1:水添ブロック共重合体(b)の製造]
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)152g(sec−ブチルリチウム16.0g相当)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン170gを仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン(1)1.0kgを加えて1時間重合させ、引き続いて40℃にてイソプレン8.2kgおよびブタジエン6.5kgの混合液[イソプレン/ブタジエン(質量比)=55/45]を加えて2時間重合を行い、さらに50℃に昇温した後、スチレン(2)1.0kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体(b−1)と称する)を得た。得られた水添ブロック共重合体(b−1)について、物性評価を前記方法に従って行った。その結果を表3に示す。
[製造例2〜4:水添ブロック共重合体(b)の製造]
製造例1において、各試薬および原料の種類およびそれらの使用量を表2(1)に記載のとおりに変更したこと以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(b−2)〜(b−4)を製造した。得られた水添ブロック共重合体(b−2)〜(b−4)について、物性評価を前記方法に従って行った。その結果を表3に示す。
[製造例5〜9:水添ブロック共重合体(b’)の製造]
製造例1において、各試薬および原料の種類およびそれらの使用量を表2(2)に記載のとおりに変更したこと以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(b’−1)〜(b’−5)を製造した。得られた水添ブロック共重合体(b’−1)〜(b’−5)について、物性評価を前記方法に従って行った。その結果を表3に示す。
[実施例1〜4、比較例1〜5:単層フィルムの製造]
下記表4に示す配合割合で全成分を予備混合した後、コペリオン社製の二軸押出機「ZSK26MC」(スクリュー長(L)/スクリュー径(D)=56)へ供給し、温度230℃で溶融混練して樹脂組成物を作製した。
次いで、水冷式下向インフレーション成形機を用いて、樹脂温度200℃、冷却水温度20℃、ライン速度10m/分の条件で、厚さ200μmの単層の液体包装容器用フィルムを成形した。得られたフィルムを用いて、前記方法に従って各評価および測定を行った。結果を表4に示す。
表4より、実施例1〜3で得られた樹脂組成物および単層フィルムは、海島構造のモルフォロジーを有しており、「海相」を形成する主成分が「水添ブロック共重合体(b)」であることがわかる。これらの場合、高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が低く、且つ高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率が低いことが示されており、液体包装容器としたときの高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れていると言える。
また、実施例4で得られた樹脂組成物および単層フィルムは、共連続構造のモルフォロジーを有していることがわかる。この場合も、高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が低く、且つ高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率が低いことが示されており、液体包装容器としたときの高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に優れていると言える。
一方、比較例1〜5で得られた樹脂組成物および単層フィルムは、海島構造のモルフォロジーを有しており、「海相」を形成する主成分が「ポリオレフィン系樹脂(a)」であることがわかる。これらの場合、高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が高いか、または高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率が高いことが示されており、液体包装容器としたときの高圧蒸気滅菌処理後の破袋強度に改善の余地があると言える。
本発明の液体包装容器は、種々の用途に使用できる。例えば、前述の医療容器のほか、レトルト食品、マヨネーズ、ケチャップ、清涼飲料水、アイス等を包装する食品包装容器等としても有効に利用できる。
1 ポリオレフィン系樹脂(a)
2 水添ブロック共重合体(b)
3 水添ブロック共重合体(b’)

Claims (20)

  1. ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、海島構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、
    前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
    前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、
    前記海島構造中、海相を形成する主成分が前記水添ブロック共重合体(b)である、樹脂組成物。
  2. ポリオレフィン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)とを含有し、共連続構造のモルフォロジーを有する樹脂組成物であって、
    前記水添ブロック共重合体(b)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン化合物に由来する構造単位を主体とする重合体ブロック(B)とを含むブロック共重合体の水素添加物であり、
    前記ポリオレフィン系樹脂(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の合計100質量部に対する前記ポリオレフィン系樹脂(a)の含有量が55〜90質量部であり、
    230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]が1以上である、樹脂組成物。
  3. 230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η1(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η1(b)との比[η1(a)/η1(b)]が1以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 230℃、せん断速度1.0×10−1における前記ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度η2(a)と、230℃、せん断速度1.0×10−1における水添ブロック共重合体(b)の粘度η2(b)との比[η2(a)/η2(b)]が0.7以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂(a)の溶解パラメータ(SP値)と、前記水添ブロック共重合体(b)の溶解パラメータ(SP値)との差(Δδ)が0.38〜1.0(J/cm0.5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記共役ジエン化合物が、ブタジエン、イソプレン、またはブタジエンとイソプレンの混合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記共役ジエン化合物が、ブタジエン、またはブタジエンとイソプレンの混合物であり、且つ、前記重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)が−50〜−37℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記共役ジエン化合物がイソプレンであり、且つ、前記重合体ブロック(B)のガラス転移温度(Tg)が−45〜−20℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(A)の含有量が3〜40質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記水添ブロック共重合体(b)の水素添加率が80モル%以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量が20,000〜500,000である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 前記ポリオレフィン系樹脂(a)が、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、およびこれらの変性物からなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含有してなる液体包装容器用フィルム。
  14. 高圧蒸気滅菌処理後のヤング率が400MPa以下となり、且つ、高圧蒸気滅菌処理前後のヤング率の変化率(高圧蒸気滅菌処理後のヤング率/高圧蒸気滅菌処理前のヤング率)が1.05〜1.20である、請求項13に記載の液体包装容器用フィルム。
  15. 請求項13または14に記載の液体包装容器用フィルムから形成された液体包装容器。
  16. 内層と外層とを有する2層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
    内層が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなり、
    外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなる、液体包装容器。
  17. 内層と外層との間に中間層を有する3層以上の積層体からなる液体包装容器であって、
    内層および中間層から選択される少なくとも一方が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなり、
    外層が、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるポリプロピレン系樹脂を55質量%以上含有する樹脂組成物からなり、
    前記内層を構成する樹脂成分の融点MPinと、前記中間層を構成する樹脂成分の融点MPmidが、下記式
    MPin<MPmid
    を満たす、液体包装容器。
  18. 前記各層の厚みが、内層5〜50μm、中間層100〜300μm、外層10〜120μmの範囲である、請求項17に記載の液体包装容器。
  19. 高圧蒸気滅菌処理された、請求項15〜18のいずれか1項に記載の液体包装容器。
  20. 請求項15〜19のいずれか1項に記載の液体包装容器を有する医療容器。
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