JP2018158894A - モノクローナル抗体 - Google Patents

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正也 大津
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【課題】抗ロイシンリッチリピート含有G蛋白質共役型受容体−6(LGR6)モノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物、さらに医薬、色素及び/又は造影剤を含む薬物送達システムの提供。【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるエピトープに結合する抗LGR6モノクローナル抗体。重鎖のCDR1、CDR2、CDR3の各々の特定のアミノ酸配列及び軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3の各々の特定のアミノ配列列であるモノクローナル抗体。キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であることが好ましい、モノクローナル抗体。前記モノクローナル抗体を含む医薬組成物又は薬物送システム。更に医薬色素及び/又は造影剤を含み、好ましくはモノクローナル抗体と結合している、薬物送達システム。【選択図】なし

Description

本発明は、配列番号11のアミノ酸配列からなるエピトープに結合する、抗LGR6モノクローナル抗体に関する。
ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役型受容体−6(leucine−rich repeat containing G protein−coupled receptor 6(LGR6))は、967アミノ酸からなる膜タンパク質であり、7回膜貫通型の領域とN末端の長い細胞外領域からなる構造を有している。また、LGR6遺伝子は、正常組織と比較して胃癌患者において発現が上昇する遺伝子の一つであることが知られている。
Gタンパク質共役型受容体は、一般に、細胞外の神経伝達物質やホルモンを受容してそのシグナルを細胞内に伝える機能を有している。しかし、LGR6のシグナル伝達の作用及び機能は、十分には解明されていなかった。
LGR6に対する抗体としては、複数のメーカーからポリクローナル抗体が供給されている。例えば、LGR6のN末端部分を抗原として作製された、LS−A621(LifeSpan BioSciences社)、ABIN122207(GenWay Biotech社)、NBP1−49696(Novus Biological社)である。その他、LGR6の445−504アミノ酸残基を抗原としたH00059352−A01(Abnova Corporation社)、456−548を抗原とした抗体(Novus Biologicalsh社)、516−528アミノ酸残基を抗原としたL4169(Sigma−Aldrich社)が知られている。
LGR6に結合するモノクローナル抗体としては、ウサギモノクローナル抗体としてEPR6874(GenTax社)が知られているが、抗原は、細胞内ドメインであった。
さらに最近、LGR6の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体が開発されたが、LGR6の発現組織を同定し、その検出を意図したものであり、LGR6の作用及び機能に着目したものでは無かった(特許文献1)。
WO2014/192974
本発明の課題は、膜タンパク質としてのLGR6の作用及び機能を解明し、それに寄与する物質を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、抗体がLGR6の特定の領域に結合すると、そのコンジュゲートが核内に移行することを、初めて見出し本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]配列番号11のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、抗LGR6モノクローナル抗体、
[2]重鎖の、CDR1のアミノ酸配列が配列番号2であり、CDR2のアミノ酸配列が配列番号3であり、CDR3のアミノ酸配列が配列番号4であり、軽鎖の、CDR1のアミノ酸配列が配列番号6であり、CDR2のアミノ酸配列が配列番号7であり、CDR3のアミノ酸配列が配列番号8である、[1]に記載のモノクローナル抗体、
[3]モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、[1]又は[2]に記載のモノクローナル抗体、
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、医薬組成物、
[5] [1]〜[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、薬物送達システム、
[6]さらに、医薬、色素及び/又は造影剤を含む、[5]に記載の薬物送達システム、
[7]医薬、色素及び/又は造影剤がモノクローナル抗体と結合している、[6]に記載の薬物送達システム。
本発明において抗体とは、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を伴う抗体組成物、多特異性抗体(例、二重特異性抗体、ダイアボディ、および一本鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例、Fab、F(ab’)2、およびFv))をいう。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と互換的に用いられる。
本発明の抗体は、膜タンパク質に結合し、核内に移行することができる。
本発明のLGR6抗体であるm164が生細胞の状態で細胞内の核に移行をしていることを示す図である。ヒト大腸癌由来の培養細胞であるHCT116細胞をガラスボトムディッシュ上で1日培養した後に、ディッシュを氷上に10分間静置後、m164抗体を培地に添加し、1時間氷上で静置した。培地を吸い取り、PBS(−)による洗浄後、Alexa fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG抗体含有培地を加え、30分間氷上で静置した。培地を吸い取り、PBS(−)による洗浄後、培地を加え、37℃、5% CO2環境下で培養をし、24時間に、培地を吸い取り、パラホルムアルデヒドによる固定とTriton−Xによる透過処理をおこなった後に、DAPIを加えて、核を染色した。このガラスボトムディッシュに対して蛍光顕微鏡で明視野とDAPIによる蛍光とAlexa fluor 488の蛍光を観察した。その結果、明視野(Bright field)と2蛍光の画像を重ね合わせた画像(Merge)から、m164由来のシグナルであるAlexa Fluor 488蛍光のシグナルは、DAPIで染色された核の領域内に局在することが明らかとなった。 本発明の抗体と抗原の断片との結合性を示す図である。LGR6の446位〜567位のアミノ酸配列からなるタンパク質を抗原として、LGR6抗体m164を得た。LGR6の446位〜567位のアミノ酸配列を3つに分割(446〜485、486〜527、528〜567)し、pet32bベクターを利用して、3種の組換えタンパク質を発現させ精製した。得られたタンパク質を用いたAg−ELISAを実施した。図の吸光度はブランク(抗原タンパク質なし)を引いた値を示す。図の結果より、LGR6抗体m164は486番目から527番目に結合することが示された。 本発明の抗体の細胞傷害活性を示す図である。96ウエル培養プレートにヒト大腸癌由来の培養細胞であるHCT116細胞を1ウエルあたり2400個播種し、一日37℃、5% CO環境下で培養をした。Streptavidin−Saporin(15 nM)とビオチン標識m164抗体(0.2 nMから200 nM)を混合し、4℃で1時間静置させた溶液を、一つの組み合わせにつき、3ウエルずつ加えた後に、37℃、5% CO環境下で3日間培養をした後に、生細胞数測定試薬であるCell counting Kit−8による吸光度測定を行うことで各ウエルの細胞の増殖の度合いを把握した。コントロールとしてStreptavidin−Saporinを加えず、ビオチン標識m164抗体のみ加えたウエルも上記の実験操作を行った。縦軸は450 nMの吸光度、横軸はm164抗体の終濃度を示した。実線と白丸はStreptavidin−Saporin(15 nM)とビオチン標識m164抗体の混合液を加えたもの、破線と白四角はコントロールとしてビオチン標識m164抗体のみを加えたものを示す。同じ組み合わせの3ウエルの吸光度から標準偏差を算出し、図中にエラーバーとして図示した。
本発明の抗原であるポリペプチドは、化学的か、又は大腸菌などを用いる遺伝子工学的手法によって合成することができる。
ペプチドの化学合成を行う場合は、周知のペプチドの合成方法によって合成することができる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置(例えば、島津製作所製:PSSM−8など)を使用してもよい。
ペプチドを遺伝子工学的に合成する場合は、まず、当該ペプチドをコードするDNAを設計し合成する。当該設計及び合成は、例えば、全長LGR6遺伝子を含むベクター等を鋳型とし、所望のDNA領域を合成し得るように設計したプライマーを用いて、PCR法により行うことができる。そして、上記DNAを適当なベクターに連結することによってタンパク質発現用組換えベクターを得て、この組換えベクターを目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することによって形質転換体を得る(Sambrook J.et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージ又はプラスミドが使用される。さらに、動物ウイルス、昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。組換えベクターの作製は、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位等に挿入してベクターに連結すればよい。形質転換に使用する宿主としては、目的の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞又は昆虫が挙げられる。ヤギ等の哺乳動物を宿主として使用することも可能である。宿主への組換えベクターの導入方法は公知である。
そして、前記形質転換体を培養し、その培養物から抗原として使用されるペプチドを採取する。「培養物」とは、(a)培養上清、(b)培養細胞若しくは培養菌体又はその破砕物のいずれをも意味するものである。
培養後、目的ペプチドが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりペプチドを抽出する。また、目的ペプチドが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、ペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、目的のペプチドを単離精製することができる。
本発明においては、無細胞合成系を用いたin vitro翻訳により抗原となるペプチドを得ることもできる。この場合は、RNAを鋳型にする方法とDNAを鋳型にする方法(転写/翻訳)の2通りの方法を用いることができる。無細胞合成系としては、市販のシステム、例えばExpresswayTMシステム(インビトロジェン社)等を用いることができる。
上記のようにして得られたペプチドは、適当なキャリアタンパク質、例えば牛血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ヒトチログロブリン、ニワトリガンマグロブリン等に結合することも可能である。
モノクローナル抗体の作製
本発明の抗原を単独か、又は担体及び希釈剤と共に非哺乳動物に投与することにより免疫する。動物1匹当たりの抗原の投与量、用いられるアジュバントの種類、免疫方法、免疫の間隔はポリクローナル抗体の作製と同様である。最終の免疫日から1〜30日後、好ましくは2〜5日後に、抗体価の認められた個体を選択し抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞又はリンパ節細胞が好ましい。
細胞融合
ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。融合操作は既知の方法、例えばKohlerらの方法に従い実施できる。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株としては、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えばP3X63−Ag8、P3X63−Ag8U.1、SP2/O−Ag14、PAI、P3U1、NSI/1−Ag4−1、NSO/1などのマウスミエローマ細胞株、YB2/0などのラットミエローマ細胞株などが挙げられる。
上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞との細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、1×10〜5×10個の抗体産生細胞と2×10〜10×10個のミエローマ細胞とを混合し(抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞比10:1〜1:1)、細胞融合促進剤存在のもとで融合反応を行う。細胞融合促進剤として、平均分子量1000〜6000ダルトンのポリエチレングリコール又はセンダイウイルス等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
ハイブリドーマの選別及びクローニング
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、細胞懸濁液を、例えば10〜20%のウシ胎児血清含有RPMI−1640培地などで適当に希釈後、マイクロタイタープレート上に限界希釈法で計算上0.3個/ウエルの密度で播種し、各ウエルにHAT培地などの選択培地を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、選択培地で培養開始後、10日前後から生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、生育してきたハイブリドーマをさらにスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマを培養したウエルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法等によって、スクリーニングすることができる。具体的には、96ウエルプレートに抗原を吸着させた後、仔牛血清、スキムミルク等でブロッキングする。ハイブリドーマ細胞の培養上清を固相化した抗原に37℃で1時間反応させた後、ペルオキシダーゼ標識した抗マウスIgGを37℃で1時間反応させ、オルトフェニレンジアミンを基質として用いて発色させる。酸で反応を停止させた後、490nmの波長における吸光度を測定することにより、スクリーニングすることができる。上記測定法により陽性を示したモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、限界希釈法等によりクローニングする。そして、最終的に、LGR6に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する細胞であるハイブリドーマを樹立する。
本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株(ハイブリドーマ)としては、例えば、「Mouse−Mouse hybridoma 164」(以下「164」という)が挙げられる。ハイブリドーマを培養することにより、均質なモノクローナル抗体を製造することができる。
モノクローナル抗体の採取
樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法として、通常の細胞培養法又は腹水形成法等を採用することができる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地又は無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃、5%CO濃度)で7〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物、例えばマウス(BALB/c)の腹腔内にハイブリドーマを約5×10〜2×10個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜2週間後に腹水を採取する。上記抗体の採取方法において抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
本発明の抗LGR6抗体としては、例えば、重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR)1〜3のアミノ酸配列がそれぞれ配列表に示されるアミノ酸配列からなり、かつ/又は軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)1〜3のアミノ酸配列がそれぞれ配列表に記載のアミノ酸配列からなるものが好ましい。
抗LGR6抗体のエピトープ
本発明の抗LGR6抗体のエピトープ(抗原決定基)は、配列表に記載のアミノ酸からなる領域からなる。
遺伝子組換え抗体の作製
本発明の抗体の好ましい態様の一つとして、遺伝子組換え抗体が挙げられる。遺伝子組換え抗体としては、限定はされないが、例えば、キメラ抗体、ヒト型化抗体及びヒト化抗体等が挙げられる。
キメラ抗体(すなわちヒト型キメラ抗体)は、マウス由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に連結(接合)した抗体であり(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81,6851−6855,(1984)等を参照)、キメラを作製する場合は、そのように連結した抗体が得られるよう、遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。
ヒト型化抗体を作製する場合は、いわゆるCDRグラフティング(CDR移植)と呼ばれる手法を採用することができる。CDRグラフティングとは、マウス抗体の可変領域から相補性決定領域(CDR)をヒト可変領域に移植して、フレームワーク領域(FR)はヒト由来のものでCDRはマウス由来のものからなる、再構成した可変領域を作製する方法である。次に、これらのヒト型化された再構成ヒト可変領域をヒト定常領域に連結する。このようなヒト型化抗体の作製法は、当分野において周知である(Nature,321,522−525(1986);J.Mol.Biol.,196,901−917(1987);Queen C et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029−10033(1989);特許第2828340号公報等を参照)。ここで、本発明のヒト型化抗LGR6抗体に用いることができるマウス由来のCDRのアミノ酸配列としては、配列表に記載のアミノ酸配列が好ましい。
ヒト抗体(完全ヒト抗体)は、一般に可変領域(V領域)の抗原結合部位である超可変領域(hyper variable region)、V領域のその他の部分及び定常領域の構造が、ヒトの抗体と同じ構造を有するものである。ヒト抗体を作製する技術も公知であり、ヒトに共通の遺伝子配列については遺伝子工学的手法によって作製する方法が確立されている。ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体の重鎖(H鎖)及び軽鎖(L鎖)の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics,(1977)16,133−143;Kuroiwa,Y.et.al.,Nuc.Acids Res.,(1998)26,3447−3448;Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects,(1999)10,69−73(Kitagawa,Y.,Matuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers;Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(2000)97,722−727等を参照)や、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology & Visual Science.,(2002)43(7),2301−8;Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics,(2002)1(2),189−203;Siriwardena,D.et.al.,Opthalmology,(2002)109(3),427−431等を参照)により取得することができる。
また、本発明においては、ハイブリドーマ又は当該ハイブリドーマから抽出したDNA若しくはRNAなどを原料として、上述した周知の方法に準じてキメラ抗体、ヒト型化抗体、ヒト化抗体を作製することができる。
さらに、本発明の抗体が融合したタンパク質は、抗体の可変領域とその他のタンパク質を公知の遺伝子組換え方法を用いることにより作製することができる。また、当該融合タンパク質は、モノクローナル抗体と他のタンパク質とをクロスリンカーを用いて架橋することにより作製することができる。
抗体断片の作製
本発明で使用されるLGR6に対する抗体の断片は、LGR6に特異的に結合する。
抗体の断片は、本発明の抗体の一部分の領域を意味し、例えば、Fab、Fab′、F(ab′)2、Fv、diabody(dibodies)、dsFv、scFv(single chain Fv)などが挙げられる。上記抗体断片は、本発明の抗体を目的に応じて各種タンパク質分解酵素で切断することにより得ることができる。
例えば、Fabは、抗体分子をパパインで処理することにより、F(ab′)2は、抗体分子をペプシンで処理することによりそれぞれ得ることができる。また、Fab′は、上記F(ab′)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得ることができる。
scFvの場合は、抗体の重鎖可変領域(H鎖V領域)及び軽鎖可変領域(L鎖V領域)をコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築する。このDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを宿主生物に導入して発現させることにより、scFvを製造することができる。
diabodyの場合は、抗体のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするcDNAを取得し、ペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるようにscFvをコードするDNAを構築する。このDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを宿主生物に導入して発現させることにより、diabodyを製造することができる。
dsFvの場合は、抗体のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築する。このDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを宿主生物に導入して発現させることにより、dsFvを製造することができる。
本発明の抗体断片の具体例としては、限定されるものではないが、例えば、配列表に記載のVH CDR1〜3のアミノ酸配列を含み、及び/又は配列表に記載のVL CDR1〜3のアミノ酸配列含む、抗体断片が挙げられる。
CDRを含む抗体断片(ペプチド)は、VH又はVLのCDR(CDR1〜3)の少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含む抗体断片は、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。CDRを含む抗体断片は、抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクター又は真核生物用発現ベクターに挿入して、該発現ベクターを原核生物又は真核生物へ導入することにより発現させて、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)及びtBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
結合親和性
結合親和性は、結合定数(KA)及び解離定数(KD)により決定することができる。親和性平衡定数(K)はKA/KDの比で表される。その結合親和性は、以下のようにして検出することができる。
結合親和性は、少なくとも1×10−10Mの解離定数(KD)を有しており、この解離定数に対し、例えば2〜5倍、5〜10倍、10〜100倍、100〜1000倍又は1000〜10,000倍高い親和性を有する。具体的には、本発明の抗体は、LGR6の結合親和性に関する解離定数(KD)が、1×10−10M、5×10−11M、1×10−11M、5×10−12M、1×10−12M、5×10−13M、1×10−13M、5×10−14M、1×10−14M、5×10−15M、又は1×10−15Mであり、1×10−10M〜1×10−13Mであることがより好ましい。あるいはこれらのKDよりも低い値であり高親和性であってもよい。
ここで、親和性の測定対象となる抗体の解離定数(KD)が、本発明の抗体のKDの約1〜100倍以内であるときは、当該抗体は、本発明の抗体と実質的に同一であるとして本発明に含まれる。
結合定数(KA)及び解離定数(KD)は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて測定することができ、結合率をリアルタイムで検出し、さらにモニタリングする公知の機器及び方法を採用することができる(例えばBiacore(登録商標)T200(GE Healthcare社)、ProteON XPR36(Bio−Rad社)など)。
本発明の医薬組成物及び/又は薬物送達システムは、抗LGR6抗体を含む。本発明の抗体は、癌に発現しているLGR6に対して特異的に結合することができるため、当該抗体を含む本発明の医薬組成物及び/又は薬物送達システムは癌の診断又は治療のために使用することができる。
本発明における診断又は治療の対象となる癌としては、例えば大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌、脳腫瘍、頚癌、食道癌、舌癌、肺癌、小腸の癌、十二指腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、前立腺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胆嚢癌、咽頭癌、肉腫、メラノーマ、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などが挙げられるが、好ましくは、正常細胞又は組織と比較してLGR6が有意に高く発現している癌が好ましい。そのような癌としては、例えば、大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌などが挙げられ、好ましくは大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌であり、より好ましくは大腸癌、乳癌である。
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体のほか、薬学的に許容できる担体を含むことができる。「薬学的に許容できる担体」とは、本発明の試薬に適する任意の担体(リポソーム、脂質小胞体、ミセル等)、希釈剤、賦形剤、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存料、界面活性剤、着色料、又は着香料などを指す。
また別の態様において、本発明は、癌の診断及び/又は治療用医薬組成物及び/又は薬物送達システムの製造のためのLGR6に対するモノクローナル抗体又はその断片の使用を提供する。また、本発明は、癌の診断及び/又は治療において使用するためのLGR6に対するモノクローナル抗体又はその断片を提供する。
癌の診断方法
本発明の癌の診断及び/又は治療方法は、本発明のLGR6に対する抗体(抗LGR6抗体)又はその断片と、被験者から採取された生体試料(以下、単に「生体試料」ともいう)とを接触させ、前記試料におけるLGR6を検出する工程を含む方法である。この場合、LGR6の検出結果と癌の可能性とを関連づけることが好ましい。
本発明において、「被験者」としては、例えばヒト、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ハムスター、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなどの哺乳動物が挙げられ、好ましくはヒトである。
また、生体試料としては、例えば、哺乳動物由来の組織、細胞、これらの破砕物又は抽出物、体液、排泄物そのもの又はこれらを含む試料を意味し、特に限定されるものではない。また、生体試料には、哺乳動物由来の組織、細胞、これらの破砕物又は抽出物、及び体液、排泄物に対し、任意の処理、例えば希釈、分離、核酸又はタンパク質の抽出、タンパク質の変性等を行うことにより得られた試料も含まれる。生体試料は、大腸癌又は胃癌を検査する場合は、体液、排泄物が好ましく、特に糞便であることが好ましい。膀胱癌、腎臓癌を検査する場合は組織、尿を使用することができ、乳癌、子宮癌を検査する場合は母乳や生理用品などを使用することができる。いずれの生体試料も適切な前処理を行うことによって適用可能である。
糞便を試料とする場合、特開2005−46065号公報に記載される方法で調製することが好ましい。当該方法は、糞便から癌細胞を効率よく回収できる方法である。具体的には、ストマッカーバックに便とバッファーを入れ、糞便の懸濁液を作製する。この懸濁液を、多段式フィルタ装置でろ過し、最終フィルタの口径を10 μm以下にすることで、細胞を最終フィルタ上に捕らえる。その中から、Ber−EP4抗体結合磁気ビーズ(Dynabeads Epithelial Enrich、ダイナル社)を用いて細胞を回収する。この他、パーコール遠心分離法など当業者が通常用いる細胞の効率的な回収方法を利用すればよい。
大腸癌や乳癌をはじめとする様々な癌において、体液を用いて早期に発見できる腫瘍マーカーはいまだ確立されていない。一般的なマーカーでは、ステージの進んだ癌であっても擬陰性を示すことがある。これに対し、本発明の抗体を用いれば、癌が進行する前に、体液や排泄物に含まれる、マーカーとしてのLGR6を発現する微量な細胞を検出および/または測定することができる。
「被験者」がヒトの場合、被験者には癌患者、例えば早期癌の患者、進行癌の患者、及び健常者が含まれる。ここで、早期癌は、例えば大腸癌、胃癌などの場合は癌細胞が粘膜層又は粘膜下層までに留まっていること、進行癌は癌細胞が固有筋層又はそれより深い層に達していることを基準に患者を区別して本発明の検出を行うことも可能である。また、血液試料としては末梢血が好ましく、末梢血由来の血清がより好ましい。さらに、組織には、癌組織及び癌が生じる可能性のある正常組織が含まれる。
本発明において、「接触」とは、本発明の抗体と被験者から採取された生体試料とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、反応用ウエルにおいて本発明の抗体と生体試料とを混合すること、当該生体試料に本発明の抗体を添加すること、本発明の抗体又は生体試料のいずれか一方を固定した担体に他方を添加すること等が含まれる。
本発明において、LGR6の検出、発現量の測定又は評価には、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、化学発光免疫測定法(CIA)、免疫比濁法、免疫比ろう法、ラテックス凝集法、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応、ウェスタンブロット法、免疫染色、免疫沈降法、イムノクロマト法などを利用できる。
このような検出等に用いるデバイスとしては、特に限定されないが、例えば、マイクロウエルプレート、アレイ、チップ、フローサイトメーター、表面プラズモン共鳴装置、イムノクロマトグラフィーストリップなどが利用できる。このようなデバイスを用いたときは、発色量、蛍光量、発光量などのシグナルを検出、測定及び/又は評価し、その検出、測定又は評価結果と癌の可能性等とを関連づけることができる。
本発明においては、LGR6の検出、発現量の測定又は評価結果に基づいて、被験者が癌に罹患している可能性の有無を診断することができる。
本発明の診断方法を、酵素免疫測定法や蛍光免疫測定法により実施する場合は、例えば、糞便より回収した癌細胞を含む細胞や患者より採取した組織から作製した切片など、上述した試料を適切に前処理したサンプルをマイクロウエルプレートやスライドガラスなどの固相に固定化して、免疫学的反応を行う。あるいは、チューブ内で細胞懸濁液を抗体と反応させることもできる。また、本発明のモノクローナル抗体をビーズやマイクロウエルプレートに固定化し、細胞と反応する方法も利用できる。
この場合、本発明のモノクローナル抗体を酵素や蛍光物質で標識することにより該反応を蛍光シグナルとして直接検出してもよく、または本発明のモノクローナル抗体に結合する標識された二次抗体を用いることによりシグナルを間接的に検出しても良い。標識物質としては、ペルオキシダーゼ(POD)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ビオチン−アビジン複合体など、当業者が通常用いる物質を利用できる。また、検出方法は、競合法、サンドイッチ法または直接吸着法など、いずれの方法を用いてもよい。そして、反応の強さや、反応させたサンプル中の全体の細胞の中で、抗体と結合した細胞の割合を測定し、予め設定した基準値や指標と比較することによって、癌に罹患している可能性を判定又は診断することができる。
本発明において、LGR6の検出、発現量の測定又は評価を免疫染色を用いて行う場合には、例えば、免疫組織染色における染色度合(LGR6の検出結果)を、強陽性(Strong)、陽性(Moderate)、弱陽性(Weak)、陰性(Negative)などに分類し、染色度合と癌の可能性とを関連付けることにより、癌を検出又は被験者
の癌の可能性(癌に罹患している可能性)の有無を診断することができる。
また、LGR6の細胞外領域は、血液中に放出される場合が想定されるため、血液試料中のLGR6の発現量を測定することにより、癌を検出又は被験者の癌の可能性の有無を診断することも可能である。この場合、LGR6の発現量の測定結果と癌の可能性とを関連づけて癌を検出するためには、生体試料中のLGR6の発現量の臨界値(cut−off値)を定めることが望ましい。
LGR6の発現量のcut−off値は、例えば、次のようにして求めることができる。まず、癌患者由来の生体試料におけるLGR6の発現量を測定する。このとき対象となる患者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、100例以上である。また、2例以上の健常者由来の生体試料におけるLGR6の発現量も測定しておくことが好ましく、対象となる健常者の例数は2例以上であり、例えば、5例以上、10例以上、50例以上、100例以上である。そして、癌患者由来の生体試料群と健常者由来の生体試料群の両方を含む全体から、LGR6の発現量のcut−off値を、統計処理により求める。統計処理としては、例えば、4−parameter logistic fitting法を用いて、標準曲線を作成する。LGR6を含まないサンプルのシグナル値を基準として、その数値の2倍をcut−off値と定めること等ができる。統計解析を行うための症例は、癌の種類(例えば、大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌、白血病等)、病期、再発の有無、転移の有無、手術前後等により分類することもできる。さらに、統計処理は、健常者のLGR6の発現量の測定値と、癌患者において癌の種類、病期、再発の有無、転移の有無、手術前後等により分類したときのLGR6の発現量の測定値とを適宜組み合わせて行うこともできる。
本発明において、血液試料中のLGR6(細胞外領域)の発現量の臨界値(cut−off値)は、血清中濃度で、例えば、約10ng/ml、11ng/ml、12ng/ml、13ng/ml、14ng/ml、15ng/ml、16ng/ml、17ng/ml、18ng/ml、19ng/ml、20ng/ml、21ng/ml、22ng/ml、23ng/ml、24ng/ml、25ng/ml、26ng/ml、27ng/ml、28ng/ml、29ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、65ng/mlであるが、好ましくは約20ng/mlである。
上記条件下でLGR6の発現量を測定した場合において、測定したLGR6の発現量が上記cut−off値以上であるときに、癌が検出されたと判定でき、又は被験者が癌に罹患している可能性があると診断することができる。本発明においては、前記判定又は診断のための血清中濃度の値に上限値を設けてもよく、例えば、上記各cut−off値以上であって、かつ所定上限値以下(例えば、200ng/ml以下、190ng/ml以下、180ng/ml以下、170ng/ml以下、160ng/ml以下、150ng/ml以下、145ng/ml以下、140ng/ml以下、135ng/ml以下、130ng/ml以下)であるときに、癌を検出又は被験者の癌の可能性の有無を診断することができる。
本発明において、癌を検出したときの当該検出結果の確からしさ(確率)は、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、好ましくは99%以上である。
さらに、本発明の別の態様において、一人の被験者(患者)のサンプルから測定されたLGR6の発現量を上記cut−off値と比較することで癌との関連性を診断及び/又は治療するほかに、複数の患者由来の生体試料を用いてLGR6の発現量を測定する場合がある。従って、上記cut−off値を決定する手法と同様にして、所定数の健常人及び患者を含む集団(1次母集団)においてLGR6の発現量を測定して統計解析処理し、これらの集団に属する被験者において癌が検出された群と検出されない群に分けることも可能である。さらに、このようにして得られた測定値を基本データとして、この基本データと他の集団(2次母集団)における診断及び/又は治療の対象となる個々の被験者由来の試料におけるLGR6の発現量とを比較することができる。
あるいは、それぞれの患者のデータを前記母集団の値に組み込んでLGR6の発現量を再度データ処理し、対象となる患者(母集団)の例数を増やすこともできる。例数を増やすことにより、LGR6の発現量の臨界値の精度を高め、これにより1人又は複数人の被験者における診断及び/又は治療精度を高めることができる。
本発明においては、(i)被験者の生体試料におけるLGR6の発現量と、(ii)健常者の生体試料におけるLGR6の発現量との比較を行うことも可能である。
そして、前記(i)の場合のLGR6の発現量が、前記(ii)の場合のLGR6の発現量と比較して高い場合、例えば、健常者の生体試料におけるLGR6の発現量の約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上高い場合に、癌が検出されたと判断でき、又は被験者が癌に罹患している可能性があると診断できる。
上記検出結果は、例えば、癌の検査又は治療効果の確定診断を行う場合の主要資料又は補助資料とすることができる。
LGR6の発現量は各種癌患者において発現するため、健康診断等においてLGR6の発現量が検出されてもどの癌であるのか特定することができない場合がある。そこで、集団で行う健康検診等の場では「癌が疑われる」という評価を行い、後に癌種の特定や進行度を決定する(精密検査を行う)ための補助資料として使用することができる。また、癌種がある程度疑われた患者由来の試料を用いてLGR6が検出されたときは、癌種の主要資料(確定診断等)に利用することができる。なお、癌種の特定には、他の腫瘍マーカー、画像診断、病理診断等を使用することができる。
本発明は、LGR6に対するモノクローナル抗体又はその断片と、被験者から採取された生体試料とを接触させ、前記試料におけるLGR6を検出する工程を含む、癌の診断を補助する方法も提供する。
さらなる実施態様において、本発明は、上に記載する抗LGR6抗体、医薬組成物、又は薬物送達システムのいずれかの治療的有効量を投与することを含む、癌を処置するための方法を提供する。
本発明における診断又は治療の対象となる癌としては、例えば大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌、脳腫瘍、頚癌、食道癌、舌癌、肺癌、小腸の癌、十二指腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、前立腺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胆嚢癌、咽頭癌、肉腫、メラノーマ、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などが挙げられるが、好ましくは、正常細胞又は組織と比較してLGR6が有意に高く発現している癌が好ましい。そのような癌としては、例えば、大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌などが挙げられ、好ましくは大腸癌、乳癌、子宮癌、胃癌であり、より好ましくは大腸癌、乳癌である。
本発明の医薬組成物、又は薬物送達システムは、用いた投与量および濃度でそれに暴露された細胞または哺乳動物に対して非毒性である医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤を含むことができる。生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液であることができる。生理学的に許容可能な担体の例は、緩衝剤、例えばリン酸、クエン酸、および他の有機酸など;抗酸化剤(アスコルビン酸を含む);低分子量核酸(約100塩基未満)、例えばRNA干渉用核酸の二重鎖又は単鎖;DNA切断酵素、例えばCAS9タンパク質;治療・検出用の放射性同位体元素を含む化合物、例えば211At含有化合物;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤、例えばEDTAなど;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;および/または非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)である。
また、本発明の医薬組成物、又は薬物送達システムは、本発明のモノクローナル抗体が核移行する性質を利用して、当該モノクローナル抗体に様々な物質を結合する(コンジュゲート形成する)ことにより、所望の物質を核内へ移行させることができる。本発明のモノクローナル抗体と結合させることのできる物質としては、例えば、医薬、色素、造影剤、タンパク質、ペプチド断片、DNA、RNAが挙げられる。医薬としては、以下に列挙する抗がん剤等が挙げられる。
本発明の別の態様において、本発明のモノクローナル抗体(その抗原結合断片を含む)は、少なくとも1種類の抗がん剤、トキシン、ラジオアイソトープ、または核酸、DNA切断酵素にコンジュゲートされる、このような抗がん剤、トキシン、ラジオアイソトープ、核酸、またはDNA切断酵素でコンジュゲートされた本発明のモノクローナル抗体も本発明の範囲に含まれる。また、本発明のモノクローナル抗体および少なくとも1種類の抗がん剤、トキシン、またはラジオアイソトープを含む抗体コンジュゲート(以下、本発明の抗体コンジュゲートともいう)も、本発明の範囲に含まれる。
例えば、本発明の別の態様において、本発明のモノクローナル抗体と核酸またはタンパク質を含む抗体コンジュゲートであって、本発明のモノクローナル抗体がDNA切断、ゲノムDNA編集、RNA干渉法、タンパク質翻訳抑制に働く核酸とコンジュゲート形成している抗体コンジュゲートが提供される。また、核酸は例えば、二本鎖DNA、二本鎖RNA、microRNA、ガイドRNA、タンパク質は例えばCAS9タンパク質、TALENである。
例えば、本発明の別の態様において、本発明のモノクローナル抗体とラジオアイソトープを含む抗体コンジュゲートであって、本発明のモノクローナル抗体が治療または検出可能なラジオアイソトープとコンジュゲート形成している抗体コンジュゲートが提供される。検出可能なラジオアイソトープは、例えば、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、211Atまたは153Smである。
例えば、本発明の別の態様において、本発明のモノクローナル抗体と抗がん剤またはトキシンとを含む抗体コンジュゲートであって、本発明のモノクローナル抗体が抗がん剤またはトキシンとコンジュゲート形成している抗体コンジュゲートが提供される。前記抗がん剤は好ましくは化学療法剤である。また、トキシンは、ジフテリア(Diphteria)トキシン、シュードモナス(Pseudomonas)エンドトキシンおよびエキソトキシン、スタフィロコッカス(Staphylococcal)エンテロトキシンA、真菌(例えば、α−サルシン、レストリクトシン)、植物(例えば、アブリン、リシン、モデシン、ビスカミン、ヨウシュウヤマゴボウ(pokeweed))、抗ウイルス性タンパク質、サポリン、ゲロニン、モモリジン、トリコサンチン、大麦トキシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、モモルディカ・チャランチア(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポアオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、およびトリコテセン等である。
作用機構には限定されず、「化学療法剤」は癌の治療において有用な化学化合物である。化学療法剤の種類には、限定するものではないが、アルキル化剤(alkylating agent)、アンチメタボライ、紡錘体阻害剤植物アルカロイド、細胞障害性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬、抗体、光増感剤及びキナーゼ阻害薬が含まれる。化学療法剤は、「ターゲティング療法」と従来の化学療法とに用いられる化合物を含む。化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標),Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標),Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5‐フルオロウラシル、CAS番号51−21−8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標),Lilly)、PD−0325901(CAS番号391210−10−9,Pfizer)、シスプラチン(シス−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663−27−1)、カルボプラチン(CAS番号41575−94−4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標),Bristol−MyersSquibb Oncology,Princeton,N.J.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標),Genentech)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペントアザ二環式[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキシアミド、CAS番号85622−93−1,TEMODAR(登録商標),TEMODAL(登録商標),Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブト−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル−エタンアミド,NOLVADEX(登録商標),ISTUBAL(登録商標),VALODEX(登録商標))、及びドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti−1/2、HPPD及びラパマイシンが含まれる。
化学療法剤の他の例には、DM1(N2’−Deacetyl−N2’−(3−mercapto−1−oxopropyl)−maytansine)、DM4(N2’−Deacetyl−N2’−(4−mercapto−4−methyl−1−oxopentyl)−maytansine)、MMAE(Monomethyl auristatin E)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標),Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標),Millennium Pharm.)、スーテント(SUNITINIB(登録商標),SU11248,Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標),Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標),Novartis)、XL−518(Mekインヒビター,Exelixis,国際公開2007/044515)、ARRY−886(Mekインヒビター,AZD6244,Array BioPharma,Astra Zeneca)、SF−1126(PI3Kインヒビター,Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3Kインヒビター,Novartis)、XL−147(PI3Kインヒビター,Exelixis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標),AstraZeneca)、リューコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス,RAPAMUNE(登録商標),Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標),GSK572016,Glaxo Smith Kline)、ロナファーニブ(SARASAR TM,SCH 66336,Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標),BAY43−9006,Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標),AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標),CPT−11,Pfizer)、SN−38、ティピファニブ(ZARNESTRA TM,Johnson & Johnson)、ABRAXANE TM(Cremophor−free),パクリタキセルのアルブミン−変更ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Il)、バンデタニブ(rINN,ZD6474,ZACTIMA(登録商標),AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標),Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンフォスファミド(TELCYTA(登録商標),Telik)、チオテパ、及びシクロフォスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin)(合成類似体、KW−2189及びCBI−TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne)抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、カリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1、例えば、Agnew Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)を参照のこと;ダイネミシン(dynemicin)、ダイネミシンA(dynemicinA);クロドロネート(clodronate)などのビスホスホネート(bisphosphonates);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne)抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗−代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(T−2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);ミトキサントン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ナベルビン(Navelbine);ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標),Roche);イバンドロナート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;、並びに上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類及び誘導体が含まれる。
本発明のモノクローナル抗体は、2つ以上の抗原結合部位有するバイスペシフィック抗体など多重特異性抗体でもよい。多重特異性抗体は異なる二つの抗体から抗原結合領域のクローニングとリンカーの組み合わせで作出することができる。LGR6を一方の抗原結合部位とし、他の結合部位を、細胞内特に核において機能するタンパク質とした場合に、m164抗体の性質を利用し、抗体が核に移行し、一方の抗原結合部位がタンパク質に結合することで、タンパク質の働きを阻害または促進することが期待され、既存の抗体では発揮できなかった細胞への作用を発揮することが期待される。
本発明の医薬組成物、又は薬物送達システムは、添付文書を含むことができる。添付文書は、適応、使用法、投与量、投与法、禁忌、パッケージされた産物と組み合わせる他の医薬、および/またはそのような医薬の使用に関する警告などに関する情報を含む、医薬の市販パッケージに通例含まれる適応に関する情報を含む、医薬の市販パッケージに通例含まれる使用説明書を指す。
本発明において薬物とは、癌の処置において有用な化学的化合物である。化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミドなど;アルキルスルホン酸、例えばブスルファンなど;アセトゲニン;デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコールベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、および9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;ペメトレキセド;カリスタチン;CC−1065;ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン;ドラスタチン;デュオカルマイシン;エリュテロビン;パンクラチスタチン;TLK−286;CDP323、経口アルファ4インテグリン阻害剤;サルコジクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード;ニトロソウレア;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質である。
また、この定義には、癌の増殖を促進することができるホルモンの効果を調節、低下遮断、または阻害するように作用する抗ホルモン薬剤が含まれ、しばしば、全身または体全体の処置の形態である。それらはホルモン自体でありうる。
投与経路は、従来公知の任意の方法を用いることができる。たとえば、適した様式での長期間にわたる単回または複数回のボーラスまたは注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内、または関節内経路による注射または注入、局所投与、吸入あるいは持続放出または延長放出の手段による。
実施例1 マウスの免疫と抗体のスクリーニング
(1)細胞の培養
マウス骨髄腫株P3X63−Ag8(ATCC受託番号CRL−1580)、ヒト大腸癌細胞株HCT116(DSファーマ社)を、それぞれ10%(v/v)の血清(Hyclone社製)を含むRPMI1640培地(Sigma−Aldrich社製)で80%コンフルエントを越えないように37℃、5%CO下で48〜72時間培養および継代を行った。
(2)LGR6遺伝子のクローニング
HEK293T細胞を培養し、Qiagen社のRNeasy Miniキットを用いて、total RNAを抽出した。抽出したtotal RNA 2 μgから、SuperScript III reverse transcriptase(Thermo Fisher scientific 社製)を用いて、逆転写(RT)反応を50℃で1時間行ってcDNAを合成し、85℃、5分間の加熱により、反応を停止させた。得られたcDNAを鋳型とし、以下のプライマーを用い、KOD PLUS(TOYOBO社製)を用いたPCR反応を行なうことで、LGR6のアミノ酸第446番目から第567番目(配列番号13)をコードする塩基配列である第1336番目から第1701番目を含むDNA(配列番号19)をフォワードプライマー(配列番号17)とリバースプライマー(配列番号18)を用いて増幅した。 PCR反応は、95℃、10分間のプレインキュベーションを行ない、次に95℃、15秒間のデナチュレーション、および58℃、1分間のアニーリング/エロンゲーションのサイクルを40サイクル行い、遺伝子断片を増幅した。
得られた増幅断片は、プライマー上に配置した制限酵素サイトにおいて、制限酵素(NcoI及びSalI)で切断し、pET32bベクター(Thermofisher scientific社製)へ組み込んだ。これにより、N末端側にTrx−、S−及びHis−Tagを持ち、C末端側にHis−Tagを持つLGR6の部分タンパク質をコードする塩基配列を含むDNAを得た。
(3)LGR6部分タンパク質の作製
上記(2)で作製したベクターでBL21(DE3)(Thermo Fisher scientific社製)を形質転換し、1%(w/v)のグルコースを含むLB培地[1%(w/v)トリプトン(BD BiosciencesSigma−Aldirich社製)、0.5%(w/v)Yeast extract(BD Biosciences社製)、0.5%(w/v)NaCl(Sigma−Aldirich社製)]で培養した。培地の濁度が600 nmの波長で0.6となった後、1 mM IPTG(WAKO社製)を加え、4時間培養を行った。菌体を遠心分離により回収後、超音波破砕を行い、LGR6細胞外領域を含む分画を不溶性タンパク質として得た。
約10 mgのサンプルをBuffer A(1 M 塩酸グアニジン(Sigma−Aldirich社製)、10 mM DTT(Sigma−Aldirich社製)、10 mM EDTA(Sigma−Aldirich社製))に溶解し、37℃で1時間反応させた。反応液を1 LのBuffer B(50 mM Tris、150 mM NaCl、5%グリセロール、0.4 mM酸化型グルタチオン(Sigma−Aldirich社製)、pH8.5)に緩やかに加え、4℃で18時間撹拌した。溶解したサンプルをNi−NTAレジン(QIAGEN社製)に供し、Buffer C(50 mM リン酸カリウム緩衝液、150 mM NaCl、200 mM Imidazole、pH8.0)で溶出した。Imidazoleを含まないBuffer Cに透析して、精製したLGR6のヒンジ領域部分タンパク質を得た。このタンパク質をヒンジ領域組換えタンパク質と称する。
(4)抗原−固相酵素免疫検定法(Ag―ELISA)
抗体に対しての結合を測定したい組換えタンパク質をPBS(−)で希釈し、96ウエルのELISAプレート(Nunc社製)に1ウエル当たり50ngとなるよう分注して、4℃で一晩放置することでプレート表面に結合させた。次に、0.05%(v/v)Tween20を含むPBS(−)(以下、PBS−Tと記載する)350μLで3回洗浄した後、1%スキムミルクを含むPBS−Tを300μLずつ各ウエルに分注し、1時間、室温でブロッキングした。PBS−Tで洗浄後、測定対象の抗体を含む溶液(マウス血清もしくはハイブリドーマ培養上清もしくは精製抗体希釈液)を100μLずつ分注し、1時間、室温で反応させた。PBS−Tで洗浄後、HRP標識抗マウス免疫グロブリン抗体(BETHYL社製)を10000倍希釈したものを各ウエル100μLずつ分注し、30分間、室温で反応させた。最終濃度0.5mg/mLとなるようオルトフェニレンジアミン(Sigma−Aldirich社製)を20mMの炭酸−クエン酸バッファー(pH 5.0)に希釈し、この溶液の2000分の1量の35%(w/w)過酸化水素水(WAKO社製)を添加した混合液を基質溶液として各ウエルに100μL入れ、室温で10分間反応させた。25μLの3N硫酸(WAKO社製)を添加することで反応を停止させた。492nmの吸収をプレートリーダー(Vmax、モレキュラーデバイス社製)で測定した。
(5)免疫
上記で作製したヒンジ領域組換えタンパク質をフロイント完全アジュバントと等量混合し、BALB/cマウスの腹腔内に100μL(約40μg/マウス)投与した。約3週間後、同じくヒンジ領域組換えタンパク質をフロイント不完全アジュバントと等量混合し、腹腔内に投与した。この作業を2週間おきに複数回繰り返し、その都度、マウス血清を回収した。血清を用い抗体価を測定し、力価の上昇を確認した。力価の上昇したマウスに対しては、最終免疫として、約40μgのヒンジ領域組換えタンパク質を静脈内に投与し、その3日後に脾臓を摘出した。
(6)細胞融合
マウスの脾臓由来のリンパ球をマウス骨髄腫株P3X63−Ag8と電気的に融合させた。細胞融合に際しては、1×10個の脾臓細胞と0.25×10個の骨髄腫株とを混合し、EP Buffer(0.3 M Mannitol、0.1mM CaCl、0.1mM MgCl)に細胞密度が0.25×10個/mLとなるよう懸濁し、電気融合装置LF201(ネッパジーン社製)で融合を行った。融合条件はメーカー推奨の手法に従った。融合後の細胞をHAT培地(Thermofisher scientific社製)に懸濁し、各ウエル100μLとなるよう30枚の96ウエルプレートに散布した。途中、HAT培地を200μL添加し、11〜16日間培養後に1ウエルあたり5〜12個のコロニーが形成されたことを、位相差顕微鏡で観察した
(7)ハイブリドーマのスクリーニング ハイブリドーマが増殖してきたウエルの培養上清を回収し、上記(3−1)に記載した抗原ELISAを用いてヒンジ領域組換えタンパク質に反応するモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマを選択した。
さらにヒンジ領域組換えタンパク質を作製する際に付加したTrx−、S−、His−Tagに反応する抗体を除くために、pET32bベクターのみを大腸菌に導入し、上記(3)記載の方法で発現させ、精製したタンパク質をネガティブコントロールとして用いた。以降では、このネガティブコントロールに利用したタンパク質をタグ組換えタンパク質と称する。
ヒンジ領域組換えタンパク質に反応し、タグ組換えタンパク質に反応しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を選択した結果、121種のクローンが取得された。これらのハイブリドーマ細胞の中から、ヒンジ領域組換えタンパク質に強く反応し、タグ組換えタンパク質に反応しない抗体を選択し、限界希釈により単クローニングを行い、ハイブリドーマ細胞を樹立した。これらのハイブリドーマの中から、産生する抗体がヒト大腸癌由来の培養細胞であるHCT116細胞に対して結合するかを抗体蛍光免疫細胞染色で選抜した結果、クローン番号164を選択した。以降では、このハイブリドーマクローン164が産生する抗体をm164抗体と称する。
クローン番号164のハイブリドーマ細胞を、それぞれ10cm ディッシュ10枚に90%コンフルエントとなるよう培養し、EX CELL Sp2/0(ニチレイバイオサイエンス社製)培地で10日間培養を行った。培養上清を回収し、ProteinGカラムを用いて精製した。培養上清100mLに対し、0.5mLのProteinGカラム(GEヘルスケア社)を用いた。PBSで平衡化したProteinGカラムに対し、培養液を1〜3mL/minの流速で通過させた後、6mLの洗浄バッファー(25mM Tris−HCl(pH7.4)、140mM NaCl、10mM KCl)で洗浄した。次に1mLの溶出バッファー(0.1M Glycine(pH 3.0))で抗体タンパク質を溶出させ、1M Tris−HCl(pH7.4)を用いてpH7.0〜7.4の間になるよう中和した。Amicon Ultra 30(Millipore社製)を用いて抗体を濃縮するとともにバッファーをPBS(−)に置換した。
実施例2.抗LGR6モノクローナル抗体の解析
(1)免疫蛍光細胞染色
ヒト大腸がん細胞であるHCT116細胞を80%コンフルエントとなるよう培養し、Cellmatrix type I−A(新田ゼラチン社)でコートしたGlass Bottom Dish (MATSUNAMI社)上に、1×10 cells/wellとなるよう播種した。1日間培養後、15分間氷上で静置した。培地を吸い取り、実施例1.(7)に記載したm164抗体を10 μg/mLとなるよう培地に希釈した溶液を細胞へ添加し、氷上で30分間反応させた。10% FBSを含む培地で洗浄した後、二次抗体として抗マウスIgGポリクローナル抗体−Alexa Fluor488標識(Thermo Fisher scientific 社製)で氷上、30分間反応させた。培地で1回洗浄した後、37℃に温めておいた10% FBSを含む培地を加えて、37℃、5%CO2下で24時間培養した。培地を取り除き、PBS(−)で2回洗浄した。細胞を固定するために、200 μLの4%パラホルムアルデヒドを添加し、室温で15分間処理した。PBS(−)2回で洗浄し、PBS(−)−0.25% Triton−X(界面活性剤)を添加し、室温で10分間処理した。PBS(−)で2回洗浄し、DAPI(DOJINDO)を添加し、室温で5分間反応した。PBS(−)で3回洗浄し、蛍光顕微鏡(BZ−8000、キーエンス社製)で観察した。
観察の結果、図1で示したように核を染色するDAPIの蛍光シグナルの領域内に、m164由来であるAlexa Fluor 488の蛍光シグナルが含まれていたことから、m164抗体は核内に局在していた。m164抗体、二次抗体添加をし、細胞を24時間培養した後までは、固定・浸透化処理を行っていないことから、m164抗体と二次抗体は、生細胞の状態で核内まで移行することが明らかとなった。
(2)抗体の可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列の決定
実施例1.(7)で得られたハイブリドーマ細胞を培養し、Qiagen社のRNeasy Miniキットを用いて、total RNAを抽出した。抽出したtotal RNA 500 ngから、SMARTer RACE 5’/3’ Kit(Clontech)を用いて、逆転写(RT)反応を行ってcDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型とし、以下のプライマーを用い、SeqAmp DNA Polymerase (Clontech)を用いたPCR反応を行なうことで、目的の遺伝子を増幅した。実施例1.(7)で得られたハイブリドーマ細胞から産生される抗体の代表例として、ハイブリドーマ細胞クローン番号164が産生するm164抗体の可変領域のアミノ酸配列を、下記方法を用いて決定した。
抗体のH鎖可変領域断片を増幅するために、10×UPMとmIgG1_CH_5’RACE_reverseプライマー(配列番号14)を用いてPCR反応により断片を得た。
抗体のL鎖リーダー配列及び可変領域断片を増幅するために、10×UPMとmIg kappa light chain R3プライマー(配列番号15)を用いてPCR反応により断片を得た。
精製したPCR増幅断片をGoTaq Flexi DNA polymeraseを用いて、70℃、15分間反応後、4℃、2分間氷冷することで、3’末端へdAを付加した。その後、pGEM−T−Easy Vector System(Promega社)を用い、いわゆるTAクローニング法によりH鎖断片及びL鎖断片をクローニングした。その後、SP6 promoter primer(配列番号16)を用いて、シークエンス反応を行い、H鎖とL鎖の可変領域部の配列を決定した。
m164抗体のH鎖可変領域(以下「VH」とも称する)のアミノ酸配列を配列番号1で示し、L鎖可変領域(以下「VL」とも称する)のアミノ酸配列を配列番号5で示した。VHの遺伝子配列をpFUSE2ss−CHIg−hG1ベクター(Invivogen社製)に挿入し、H鎖のヒトマウスキメラ抗体用の発現コンストラクトを作製した。このコンストラクトから翻訳されるヒトマウスキメラ抗体のH鎖の可変領域と定常領域のアミノ酸配列を配列番号9で示した。VLの遺伝子配列をpFUSE2ss−CLIg−hkベクター(Invivogen社製)に挿入し、L鎖のヒトマウスキメラ抗体用の発現コンストラクトを作製した。このコンストラクトから翻訳されるヒトマウスキメラ抗体のL鎖の可変領域と定常領域のアミノ酸配列を配列番号10で示した。また、m164抗体の可変領域のアミノ酸配列のうち、既存の抗LGR6抗体の可変領域のアミノ酸配列と比較して特に変化が大きい(相同性が低い)領域を、当該抗体の相補性決定領域(CDR)として同定した。
同定したm164抗体のCDR領域、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3を配列番号2、3及び4で示し、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を配列番号6、7及び8で示す。
(3)エピトープの特定
LGR6部分タンパク質のpet32ベクターへのクローニング
ハイブリドーマ細胞のスクリーニングの過程で、m164がLGR6のヒンジ領域部分タンパク質に結合することが示されたが、さらに狭い結合範囲(エピトープ)を調べるため、446番目から485番目の領域、486番目から527番目の領域、528番目から567番目の領域、それぞれに対応するDNA配列を、LGR6のヒンジ領域部分タンパク質をコードする二重鎖DNAを鋳型として、PCRにより増幅した。それぞれの断片をpet32b(−)ベクターに挿入した。これらのプラスミドを用いて、大腸菌であるBL21(DE3)を形質転換した。LGR6の446番目から527番目の領域、タンパク質の発現は実施例1の(3)に従った。菌体からの組換えタンパク質の精製は次の方法で行った。Sonication buffer(100mM リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.8,300mM NaCl)に懸濁した。超音波発生機(UD−201、トミー精工社製)をもいて超音波破砕後、10000xg、5分間、4℃で遠心分離を行い、可溶性画分を回収した。Sonication bufferで平衡化済みのNi−NTA レジン充填オープンカラムに、上清を添加し、上清がカラムを流れた後に、Sonication bufferによる洗浄を行い、さらに、Native溶出用基本buffer(100mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH6.0,300mM NaCl)で洗浄した。次に、Native溶出用基本buffer中のイミダゾールの終濃度を50mMから500mMまで段階的に上げた溶液をカラムに流し、溶出液をチューブに回収し、HISタグ融合タンパク質を溶出した。どのフラクションに目的のタンパク質があるかはSDS−PAGE後のCBB染色でバンドとして確認した。溶出液は、透析を用いて、PBS(−)に置換した。
Ag−ELISAの実施
実施例1(4)の方法に従った。それぞれの組換えタンパク質の96ウエルプレートへの塗布量は50 ng、m164抗体の添加濃度は1 μg/mlとした。ネガティブコントロールとしてpet32bベクターから発現・精製したタグ組換えタンパク質を用いた。図2よりLGR6抗体m164は486番目から527番目に結合することが示された。
m164抗体が結合するLGR6部分タンパク質の配列解析
m164抗体は図1から核内に移行したことを示したが、この機構を明らかにするため、m164抗体が結合するLGR6部分タンパク質の配列を解析した。cNLS MAPPERという核移行シグナルを配列から解析するデータベースを用いて、LGR6のヒンジ領域部分を解析したところ、LGR6の488番目から513番目であり、Scoreが5.5であった。このことからヒンジ領域部分の核移行シグナルが、m164抗体とLGR6の核移行に関与する可能性がある。
実施例3
(1)抗体薬物複合体を用いた細胞傷害活性
実施例2(1)の結果から、抗体に結合させるのを色素ではなく毒素や放射性物質などの細胞障害活性を持った物質にした場合には、本発明の抗体コンジュゲートは細胞障害活性を示すことが予想されたため、m164抗体を用いた抗体薬物複合体を用いた細胞傷害活性を測定した。
EZ−Link(商標)Maleimide−PEG2−Biotin(Thermo fisher scientific)を用いてビオチン標識下m164抗体(以下ビオチン標識m164抗体)を用いた。HCT116細胞を96ウエルプレートに1ウエルあたり2400個播種し、一晩37℃、5%CO下で培養した。ストレプトアビジン−サポリンであるStreptavidin−ZAP(Advanced targeting system社製)とビオチン標識m164抗体を混合した後、氷上で1時間反応させた。この混合液を各ウエルに添加した。添加後の終濃度は、Streptavidin−ZAPは15 nMで固定し、m164抗体は様々な終濃度(0.2、0.4、0.8、1.6、3、6、12、25、50、100、200nMのいずれか)とした。37℃、5%CO下で3日間培養した。その後培地を吸い取り、細胞数を吸光度から把握できる試薬であるCell counting kit−8(DOJINDO社)を培地で10倍に希釈した溶液を1ウエルに100μLずつ加えた。60分後に450nmの吸光度をプレートリーダー(Vmax、モレキュラーデバイス社製)で測定することで、各ウエルの細胞の増殖を把握した。図3に結果を示す。縦軸は450nMの吸光度、横軸はm164抗体の終濃度を示した。実線と白丸はStreptavidin−Saporin(15nM)とビオチン標識m164抗体の混合液を加えたもの、破線と白四角はコントロールとしてビオチン標識m164抗体のみを加えたものを示す。同じ組み合わせの3ウエルの吸光度から標準偏差を算出し、図中にエラーバーとして図示した。図より、Streptavidin−Saporin(15nM)とビオチン標識m164抗体は細胞の増殖を抑制させることが明らかとなった。サポリンに限らず、他の薬物、もしくは放射性同位体元素を含む化合物をm164抗体に標識させることで薬効を示すことが期待できる。
本発明のモノクローナル抗体は、膜タンパク質に結合し核内に移行し、医薬組成物及び/又は薬物送達担体として有用である。

Claims (7)

  1. 配列番号11のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、抗LGR6モノクローナル抗体。
  2. 重鎖の、CDR1のアミノ酸配列が配列番号2であり、CDR2のアミノ酸配列が配列番号3であり、CDR3のアミノ酸配列が配列番号4であり、軽鎖の、CDR1のアミノ酸配列が配列番号6であり、CDR2のアミノ酸配列が配列番号7であり、CDR3のアミノ酸配列が配列番号8である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  3. モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を含む、医薬組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を含む、薬物送達システム。
  6. さらに、医薬、色素及び/又は造影剤を含む、請求項5に記載の薬物送達システム。
  7. 医薬、色素及び/又は造影剤がモノクローナル抗体と結合している、請求項6に記載の薬物送達システム。
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