JP2018157592A - ラウドスピーカドライバの振動板をラウドスピーカドライバのシャーシに取りつけるサスペンション部材、並びに、ドライバ、及びドライバを有するラウドスピーカ - Google Patents

ラウドスピーカドライバの振動板をラウドスピーカドライバのシャーシに取りつけるサスペンション部材、並びに、ドライバ、及びドライバを有するラウドスピーカ Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、プログレッシブサスペンション部材を用いるドライバに通常見られる非線形の剛性によって引き起こされる高レベルの歪を被らないラウドスピーカドライバを提供する。
【解決手段】ラウドスピーカドライバの振動板をラウドスピーカドライバのシャーシに取りつけるサスペンション部材100が、2つの対向する直線セクション130と、2つの直線セクション130をつなぐ2つの対向する湾曲セクション110とを有する幾何学形状を有する。湾曲セクション110は、直線セクション130の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する。湾曲セクション110の径方向断面外形の平均高さは、直線セクション130の断面外形の高さよりも高い。直線セクション130は、湾曲セクション110よりも高い軸方向剛性を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は音の再生に関する。特に、本発明は、ラウドスピーカドライバの振動板を取りつける(suspend)することに関する。より具体的には、本発明は、請求項1のプリアンブル部分に記載のラウドスピーカサスペンション部材に関する。
ラウドスピーカに用いられている往復ドライバは通常、ドライバの機械的な剛性フレームワークを形成するシャーシと、交流電流によって生じる電磁誘導力によって軸方向に駆動される振動板と、振動板を囲むとともに振動板をシャーシに弾性的に結合するサスペンション部材とを備える。振動板の動きが正確かつ精密に制御されることが重要であり、これは、サスペンション部材設計の問題である。理想的には、振動板の動きは線形である。すなわち、換言すれば、振動板の軸方向の動きは、ドライバに加えられる交流電流の大きさに直接比例する。振動板の動きが非線形である場合、歪音となる。
概して、目的は、小さな変位の場合は全く一定の剛性、及び、大きな変位の場合は迅速に高まる剛性を有するプログレッシブサスペンション部材を提供することである。したがって、理想的なプログレッシブサスペンション部材は、小さな変位の場合は振動板の動きに少量の非線形性(歪)を加えつつも、大きな偏位(excursions)時の損傷からドライバを保護する。
ラウドスピーカドライバの周囲サスペンション部材は、サスペンション部材の形状がドライバ振動板の動きの方向に対して実質的に丸みがある場合に設計がより容易である。そのような構成では、軸方向の対称性があり、サスペンション部材がかける力(振動板をその静止位置に復元する)は通常、サスペンション部材の外周の全ての位置において等しいとともに対称である。通常、サスペンション部材の形状が実質的に丸みがある場合、サスペンション部材の断面外形(profile)は、サスペンション部材の外周全体にわたって同じ幾何学形状を有する。
サスペンション部材のサスペンション特性は通常、剛性外形(stiffness profile)、すなわち、サスペンションの剛性対振動板の変位をプロットするチャートによって表される。低歪のドライバの場合、剛性は、小さな変位の場合は全く均一であるべきであり、全く対称である、すなわち、正の変位の場合と負の変位の場合とで剛性値が全く等しくあるべきである。
振動板のサスペンションの設計は、振動板の幾何学形状が湾曲セクションだけでなく直線セクションも有する場合、より複雑となる。より詳細には、サスペンション設計は、直線セクションが曲線によってともにつなげられた振動板、すなわち「スタジアム形状」を有する振動板の場合に、課題がより深刻となる。そのようなドライバは一般的に、振動板をその静止位置に復元するためにサスペンション部材がかける力の不均一な分散を被る。そのようなドライバの剛性外形は、極度に非線形である可能性があり、損傷を防止するように振動板の過度の偏位を防止すべきプログレッシブサスペンションは、なすべき通りに常に機能とするとは限らない。この種の非線形性は、ラウドスピーカの出力曲線の歪として現れる可能性がある。
したがって、本発明の目的は、プログレッシブサスペンション部材を用いるドライバに通常見られる非線形の剛性によって生じる高レベルの歪を被らないラウドスピーカドライバを提供することである。
本発明の特定の目的は、振動板用のサスペンション部材であって、2つの平行な対向する直線セクションと、2つの直線セクションをつなぐ2つの対向する湾曲セクションとを特徴とする幾何学形状を有するとともに、振動板が、小さな変位の場合は振動板の線形(低歪)の動きを伴うとともに大きな変位の場合は迅速に高まる剛性を有する、より理想化された剛性外形を有することで、過度の偏位に起因するドライバ損傷を防止する、サスペンション部材を提供することである。本発明の目的はまた、望まれない影響(color:音色)を音に加える定在波共振パターンが引き起こす問題を低減するように、サスペンション部材がかける復元力を振動板上に再分布させることである。接線応力解放措置とサスペンション部材の復元力の再分布とを組み合わせることによって、線形偏位の範囲が従来のスピーカ設計よりも更に広がることができることが望ましい。
本発明の目的は、ラウドスピーカドライバの振動板をラウドスピーカドライバのシャーシに取りつける新規のサスペンション部材により達成される。新規のサスペンション部材は、2つの対向する第1のセクションと、2つの第1のセクションをつなぐ2つの対向する第2のセクションとを有する幾何学形状を有する。第2のセクション110は、第1のセクション130の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する。第2のセクションの径方向断面外形の平均高さは、第1のセクションの断面外形の高さよりも高い。第1のセクションは、第2のセクションよりも高い軸方向剛性を有する。
より具体的には、本発明に従ったサスペンション部材は、請求項1の特徴部分を特徴とする。
本発明の目的はまた、そのような新規のサスペンション部材を特徴とする新規のドライバ及びラウドスピーカにより達成される。
かなりの利点が本発明により得られる。新規の設計によって、小さな変位の場合は歪が低減し、サスペンション部材の設計により、まさに線形変位挙動が達成される。他方、同じサスペンション設計により、線形変位範囲外のより大きい変位の場合はプログレッシブサスペンション特性をつくり出すことによって適切なドライバ保護を提供する。接線応力解放の原理が新規の設計と併せて用いられる場合、線形変位範囲を更に広げることができる。接線応力解放原理は、本明細書において後に説明する。
新規のサスペンション部材は、更なる驚くべき有利な効果を有する。この部材のテストランによれば、本設計はまた定在波パターンが生じる周波数を高めることが示されている。定在波パターンは、音に影響を及ぼす共振である。振動板及びサスペンション部材における定在波によるカラーレーションを伴うことなくドライバを音再生に用いることができる上限周波数が高まる。
以下において、本発明の例示的な実施形態を添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
1つの実施形態に従ったサスペンション部材の等角図である。 図1のサスペンション部材の立面図である。 図1のサスペンション部材のB−B’の線に沿った長手方向断面図である。 図1の曲線セクションの起伏及び図1の直線セクションと曲線セクションとの間の遷移の詳細図である。 図1のサスペンション部材の直線セクションのA−A’の線に沿った断面図である。 磁石回路、ボイスコイル及びシャーシが部分切欠図として示されている、振動板をラウドスピーカドライバのシャーシに取りつけるように配置された、図1のサスペンション部材の等角図である。 図1のサスペンション部材の変位に応じた総体的な剛性、すなわち、曲線セクションのかなりの非線形剛性及び直線セクションの優位な剛性の対称的な特性とその剛性の漸増とを示すグラフである。 図1のサスペンション部材の変位に応じた剛性と及び理想的なプログレッシブ取りつけ(suspension)の剛性との比較を示す図である。 一定の径方向断面形状を有するサスペンション部材の剛性外形を示すグラフである。
1つの実施形態に従ったサスペンション部材100が2つの対向する第1のセクション130を有し、これらの第1のセクション130が2つの対向する第2のセクション110によってつながって、振動板300の幾何学形状に合致するようになっている。第2のセクション110は、湾曲しており、第1のセクション130の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する。図1及び図2に示されている実施形態において、第1のセクション130は実質的に直線であり、そのため、上記第1のセクション130のこの直線の曲率半径は、概ね無限大である。直線ボディは全て、非常に精査すれば、若干の曲率を有するが、湾曲した第2のセクション130は、いかなる場合であっても、第1のセクション130よりも湾曲している。明確にする目的から、上記第1のセクション及び第2のセクションは、以下でそれぞれ直線セクション110及び湾曲セクション130と呼ばれる場合もある。
実際、サスペンション部材100は、2つの対向する平行な直線セクション130と、2つの直線セクション130をつなぐ2つの対向する非線形セクション110とを有する。その結果として得られる形状は、スタジアムの形状、すなわち「楕円形」のレーストラックに類似する。図示の例において、非線形セクション110は、湾曲しており、半円形の形状を有する。非線形セクション110はまた、形状が複数の漸増的な変化又は角度を帯びることができ、それらの変化又は角度は合わせると半円形に近似する。本実施形態は湾曲セクションを特徴とするため、簡潔にする目的から、非線形セクションは以下、湾曲セクションと呼ぶものとする。図1からは、シャーシ及び振動板が省略されており、シャーシ及び振動板もまた、同様の幾何学形状すなわち「スタジアム形状」を有する。この文脈において、ドライバ又は振動板の形状又は幾何学形状という語句は、ドライバ又は振動板の前面の平面上へのドライバ又は振動板の幾何学形状の正射影として見た場合の振動板の幾何学形状を指し、平面は、振動板及びドライバの他の可動部品の動きの方向に対して垂直である。
この文脈において、軸方向という語は、ドライバの振動板が動くように構成される方向を指す。それぞれ、径方向という語は、当該の軸方向に対して垂直な全ての方向を意味する。さらに、前方という語は、振動板がラウドスピーカのエンクロージャーの内側(エアキャビティ)から離れて外方向に動く方向を意味する。逆に、後方という語は、前方向とは反対を意味する。すなわち、振動板が内方へとラウドスピーカのエンクロージャーの内側に向かって動く方向である。前面(front)及び後面(rear)という語はそれぞれ、前方向及び後方向のドライバの横側を表す。
また図1及び図2から明らかであるように、直線セクション130及び湾曲セクション110は、遷移セクション120によってともにつながっている。遷移セクション120は直線であることが好ましいが、湾曲していてもよい。遷移セクション120はいかなる場合においても、直線セクション130の外形から湾曲セクション110の外形に変形するように形状決めされる。次に、サスペンション部材の剛性の概念及び寸法決めの原則を詳述する。
簡略化した意味において、剛性は、変位に対してサスペンション部材がかける復元力の導関数であり、この導関数は、この分野において「δ力/δ変位」として表される。サスペンション部材がかける復元力が変位の関数として表される場合、グラフの任意の地点における、表された関数の勾配により、剛性が付与される。より正確には、非線形の弾性サスペンション部材の剛性は、d(f)/dxとして定義され、ここで、fは、例えばニュートン単位での、サスペンション部材がかける復元力であり、xは、例えばメートル単位での、静止位置からの変位である。
サスペンション部材がかける力の分配を調整するために、また、サスペンション部材の剛性全体をより線形にさせるために、サスペンション部材の周囲の種々の位置において異なる断面外形が用いられる。例えば、断面外形の高さ、したがって、サスペンション部材のロールに用いられる材料の自由長さを延ばして、その特定領域においてサスペンション部材がかける復元力を減らすことができる。逆に、断面外形の高さを低くして特定の領域においてサスペンション部材がかける復元力を増大させることができる。したがって、湾曲セクション110の剛性、直線セクション130の剛性、及び、これらの2つのセクションを結合する遷移セクション120の剛性も変更し、振動板300の遠端に過度に加重がかかることを回避するようにサスペンション部材100がかける復元力を分散させることが可能である。サスペンション部材100がかける復元力は、ドライバの中間のより近くに再分散され得る。この結果、定在波パターンに起因する問題が低減することで、定在波共振が起こる周波数が上がる。これにより、ドライバの上限周波数性能が高まる。
サスペンション部材100の剛性の直線セクション130とサスペンション部材のあまり剛性でない湾曲セクションとが組み合わさったものの種々の組合せを用いることによって、小さい変位に対してよりいっそう均一な剛性外形を与える理想的な組合せをシミュレーションにより見つけることができることがわかる。剛性な直線セクション130とあまり剛性でない湾曲セクション110との組合せにより、過度の偏位が引き起こすドライバに対する損傷を首尾よく防止する、十分に機能する漸次的な剛性外形も提供される。剛性な直線セクション130とあまり剛性でない湾曲セクション110との組合せにより、そのようなプログレッシブサスペンション部材に伴って通常存在する非線形性を伴うことなく、十分に機能するプログレッシブサスペンション部材がつくり出される。
ここで、これらの設計原理を1つの実施形態に従ったサスペンション部材100の断面図を示すことによって示す図3〜図5を参照する。
直線セクション130の断面外形の高さにより、サスペンション部材の漸次的な特性が始まる際に超える変位が定められる。サスペンション部材のロールの「自由長さ」は、サスペンション部材の材料が繰り出すと剛性が急峻に高まるため、関連がある。より多くの「自由長さ」は、剛性が急峻に高まる前により多く変位することを意味する。直線セクション130の断面外形の高さは、剛性外形の線形エリアにおいて「最も平坦な」剛性を与えるようにシミュレーションを用いて慎重に調整される。高さが低すぎることにより、剛性外形の端部が線形エリアにおいて上がる。逆に、高さが高すぎることにより、剛性外形の端部が線形エリアにおいて下がる。直線セクション130の長さにより、ドライバの中間近くに集中する復元力の大きさの程度が確定される。直線セクションが最も剛性であり、力の集中が最も高い。力のこの最も高い集中を可能な限りドライバの軸の近くに保つことにより、定在波が生じ得る、振動板300及びサスペンション部材100の距離が短くなる。振動板300及びサスペンション部材100の距離がより短くなることは周波数がより高くなることに等しく、上限周波数がより高くなると、定在波パターンによるカラーレーションなくドライバを用いることができる。
図3〜図5から見てとることができるように、サスペンション部材100の湾曲セクション110は、サスペンション部材100の直線セクション130よりも高い。特に、サスペンション部材100の外周に沿って見た場合、湾曲セクション110の径方向断面外形の平均高さは、直線セクション130の断面外形の高さよりも高い。湾曲セクション110の断面外形の高さが増すことにより、湾曲領域の剛性が低くなる。サスペンション部材のロールの「自由長さ」は、より「自由な長さ」により剛性がより低くなることが一般的であるため、関連がある。直線セクション130の断面外形の高さに比べてより高い断面外形を湾曲セクション110に用いることによって、湾曲セクションにおけるサスペンション部材の剛性を低くすることが可能である。サスペンション部材100の全周に同じ断面外形を用いることになる場合、湾曲セクション110は実際、直線セクション130よりもはるかに剛性となるであろう。これは理想的とは言えず、その理由は、定在波が生じ得る、振動板及びサスペンション部材の距離を低減するようにスピーカの中間の近くに復元力を集中させることが好ましいからである。振動板及びサスペンション部材の距離がより短くなることは周波数がより高くなることに等しく、上限周波数がより高くなると、定在波パターンによるカラーレーションなくドライバを用いることができる。
湾曲セクション110は、平坦な、線形の剛性外形を有しない。このため、極度に非線形の湾曲セクションの剛性による効果を低減することが好ましい。サスペンション部材の剛性全体が全体として振動板300に線形的な動きを提供することが望ましいため、サスペンション部材100全体の剛性が理想の剛性外形に可能な限り近づくように見えるまで、非線形の湾曲セクションからの剛性を低くするとともに極度に線形の直線セクションの剛性を高くすることも好ましい。
湾曲セクション110は特に、接線応力として知られている現象の作用を軽減するように設計されている。サスペンション部材の材料は、振動板が一方の方向に動くと伸張し、振動板が反対の方向に動くと接線方向に折り曲がる。接線方向の折り曲がりは、座屈又は皺寄りとも呼ばれる。上記の接線力は、振動板が動くとともにサスペンション部材の剛性が一定でなくなるにつれて力が急変化するため、サスペンション部材の剛性を極度に非線形にする。サスペンション部材100の湾曲セクション110において、サスペンション部材の半径がサスペンション部材のロールの半径幅に比べて小さい場合、少量の偏位時の小さな変位であっても過度の量の接線力が生じる。したがって、外周の半径は、接線応力の問題を回避するためにサスペンション部材の材料ロールの半径幅よりも著しく大きくなるように選択される。これは、半径が最大限になるにつれてサスペンション部材の形状が実質的に丸くなる際に達成することがより容易となる。他の形状の場合、半径がより小さい領域が存在する。半径がより小さい領域は、接線応力に起因する問題をより被りやすい。
サスペンション部材の材料ロールを接線方向に形成することを含む措置が、この接線応力を軽減するのに一般的に用いられる。これにより、いかなる接線応力解放も伴わない場合に生じる可能性がある力の急変化を伴うことなく振動板が動く際、サスペンション部材の材料が接線方向にスムーズに拡張及び収縮することが可能になる。本発明と接線応力解放機能部とを組み合わせることにより、座屈問題が排除されることが可能になることで、動きがかなりの線形となる変位範囲が更に拡大し、したがって、高い歪みを伴うことなくより大きい偏位が可能になる。
接線応力解放を行うために、サスペンション部材100の湾曲セクション110にうねりをつけることができる。サスペンション部材の直線セクションは、湾曲セクションのみが接線応力問題を被るため、接線応力解放を行うそのような更なる機能部はいっさい有しない。上述したように、湾曲セクション110の断面外形の平均高さは、サスペンション部材100の直線セクション130の断面外形の平均高さよりも高い。湾曲セクション110は、サスペンション部材100の長さに沿って、すなわち円周に沿って、平均高さが設定され、この高さは上下にうねっている。うねりの大きさが図4に「A」によって表されているのに対し、うねりの間隔が「B」によって表されている。高さの変動Aと、ピーク間の距離B、すなわち、連続した山点111と谷点112(図5)との間の距離とが、湾曲形状の設計パラメーターである。うねり振幅Aは、サスペンション部材100の断面の最も高い地点111から遷移セクション120の最も低い地点112にかけて下がる際、単調にゼロへと下がる。外形の最も低い点は、実質的に平坦であり、振動板300と接触する。
うねりの代わりに、湾曲セクション110の剛性及び接線応力を代替的に、隆起部(ridge)、溝、異なる幅又は材料厚さ等によって調整してもよい。
好ましい実施形態によれば、0.5mmの材料厚さを有するサスペンション部材に以下の寸法を用いることができる;A=1.25mm及びB=5.3mm、したがって、剛性な直線セクション130の最大高さは5mmであり、あまり剛性でない湾曲セクション110の最大高さは(正:is)10mmである。これらの2つの高さは、図5に示されている領域においてサスペンション部材の最も低い材料112からサスペンション部材の最も高い材料111にかけて測定される。
所与の例において、寸法Aは、山が高くなりすぎることを防止するように非常に小さく、そのように小さくなければ、望ましくない共振を有するであろう。概して、寸法Aと材料厚さとの間の適した相互関係は、Aが材料厚さの約2倍であることである。したがって、Aが材料厚さのおよそ2倍であることによって、Bが材料厚さのおよそ11倍であることで、うねりに関して適切な角度及び高さをもたらす。所与の例において、直線セクション130及び湾曲セクション110の相対的な高さはそれぞれ5mm及び10mmである。通常、サスペンションロールの高さは、サスペンションロールの幅に関連付けられ、そのため、幅と高さとの間の1対1の関係は、材料の半円形ロールに近い幾何学形状を形成する。湾曲セクションの高さは、サスペンションロールを幅広よりも高くするように延ばすことができる。これにより、上記で説明したように「自由長さ」を延ばすことによって湾曲セクションの剛性が低くなる。質量の高い非常に背のあるサスペンション部材もまた、共振問題を被りやすい。したがって、幅対高さの比がおよそ1対1である半円形ロールに近い状態に直線セクションを保ち、次に、最も理想的な剛性外形を与えるように可能な限り高く湾曲セクションの高さを延ばすことが有益である。
うねりの勾配をあまり急峻に設定することにより、用いる材料の量が増し、したがって、可動部品の質量を増やすため、うねりの勾配をあまり急峻でなく、好ましくは水平線に対して25度未満に選択することが好ましい。しかしながら、うねりの勾配が少なすぎると接線応力解放作用が限定され、そのため、うねりの勾配には水平線に対しておよそ15度〜20度が適切な平均値であろう。
また、図4から見てとることができるように、直線セクション130と湾曲セクション110との間の遷移セクション120は、直線セクション130が湾曲セクション110につながっている地点で生じる、直線セクション130の高さからうねっている湾曲セクション110の平均高さにかけて漸次的な遷移をもたらす。この高さ変化が生じる、サスペンション部材100に沿った長さが、図4に「C」で示されている。したがって、この変化外形の正確な形状もまた、湾曲形状の設計パラメーターである。遷移セクション120は、軸方向から見た場合、実質的に直線である。
遷移セクション120に関して、遷移セクションの勾配を急峻に設定することにより、用いる材料の量が増し、したがって、可動部品の質量を増やすため、勾配をあまり急峻でなく保つことが好ましい。実際、可動部品の質量を減らすことは、これにより効率が高くなり感度が増すため、好ましい。概して、遷移セクション120において水平線に対して25度未満の勾配が好ましい。上記の所与の例において、寸法Cが10.9mmであれば、水平線に対しておよそ25度の勾配が得られる。したがって、寸法Cは、直線セクション130と湾曲セクション110との間の高さ変化のおよそ2倍ちょっとである。
サスペンション部材100を構成するのに種々の材料を用いることができる。しかしながら、望まれないいかなる共振も減衰及び制御するために望ましい高い損失係数とともにサスペンション部材100の所望量の剛性を達成するために、適したヤング率を有する材料が選択されることが好ましい。
図6は、図1〜図5を参照して示されているようなサスペンション部材100が備わっているドライバの構造を示す。サスペンション部材100はその外周からドライバのシャーシ400に取り付けられる。サスペンション部材100はその内周から振動板300に取り付けられ、振動板300は、磁石回路500と協働するボイスコイル形成部200によって駆動される。図6から明らかであるように、サスペンション部材100は、サスペンション部材100の外形の高さが振動板から後方に延びるように振動板300を取りつける。換言すれば、サスペンション部材100の断面の最も低い地点は、サスペンション部材100の断面の最も高い地点よりも前方にある。代替的には、所要であれば、サスペンション部材100を逆さにして、山が前方を向く反対の配向で用いてもよい。これは、完全なラウドスピーカ設計において利用可能なスペースに基づく選択事項である。
サスペンション部材はシャーシに堅固に取り付けられる。サスペンション部材は、可動部品にあまり質量を加えないように、調整された量の糊によって振動板に慎重に取り付けられる。補強糊を用いて、振動板300がサスペンション部材100から剥離するのを防止することができる。他の液剤又は材料を振動板とサスペンション部材100との間の接合部に付加して、望まれない共振を減衰及び制御することができる。振動板とサスペンション部材との間の接合部は、定在波を制御するとともに、ドライバが許容可能な音質とともに用いることができる最も高い周波数を高めるように、又は、ドライバが定在波共振周波数で又は定在波共振周波数を超える周波数で用いられる場合に定在波共振の可聴性を下げるように慎重に調整される。
ここで図7及び図8を参照すると、図7及び図8は、図1のサスペンション部材の剛性と、理想的なサスペンション部材の剛性とを示す。図7から見てとることができるように、復元力は、直線セクションが最大の剛性を有するため、直線セクションに向かって集中し、したがって、ボイスコイルとサスペンション部材の直線セクションとの間の振動板を撓ませる優勢力が集中する。
サスペンション部材100の種々のセクションに関連する力及び算出された剛性外形は、有限要素分析ソフトウェアから得られる。図1のサスペンション部材のモデル化された総体的な剛性外形は、直線セクション130、遷移セクション120、及び湾曲セクション110にも関連する剛性外形の全ての総体的な組合せである。有限要素分析ソフトウェアを用いれば、サスペンション部材100の各セクションによる関与を分離することが可能になり、それによって、各セクションを個々に分析することが可能になる。「直線セクション」の剛性外形は、サスペンション部材100の直線セクション130に関連付けられる剛性部分を示し、「湾曲セクション」の剛性外形は、サスペンション部材100の湾曲セクション110に関連付けられる剛性部分を示す。
図8は、図1のサスペンション部材の「総体的な」剛性外形とプログレッシブサスペンション部材の「理想的な」剛性外形との比較のしかたを示す。「理想的な」剛性外形の場合の剛性外形は、およそ−0.006メートル〜+0.006メートルの線形変位範囲内で平坦である。この平坦なラインは一定の剛性に対応し、したがって、更なる歪が振動板の動きに加わらず、したがって、更なる歪がドライバの音出力に加わらない。また、「理想的な」サスペンション部材の剛性が−0.008未満の変位〜+0.008超の変位まで非常に急上昇する様子を見てとることができ、このことは、非常に大きな偏位時にドライバを損傷自体から保護することが望ましい。
湾曲セクション110が(径方向断面外形の)平均高さが大幅に増し、したがって「自由長さ」が増している場合であっても、湾曲セクション110の剛性は、直線セクション130の剛性外形に比べると比較的高いことを見てとることができる。湾曲セクション110の径方向断面幾何学形状が直線セクション130の径方向断面幾何学形状と同じであれば、湾曲セクション110の剛性外形は、剛性外形の完全な優位を占める。これは、湾曲セクション110の剛性外形が、低歪のプログレッシブサスペンション部材の場合に望まれる「理想的な」剛性外形(図8に見られるように)に類似しないため、望ましくない。この理由から、直線セクション130によるより理想的な関与が全体のサスペンション部材100の総体的な剛性外形全体の優位を占めるように、望ましくない湾曲セクション110による関与を低減する必要がある。
「直線セクション」剛性外形(図7に見られるように)は、図8のプログレッシブサスペンション部材の「理想的な」剛性外形との何らかの類似性を有することを見てとることができる。およそ−0.006〜+0.006の間の線形変位範囲において、剛性はおよそ50%だけ変化する。「直線セクション」の剛性外形は、−0.008未満の変位〜+0.008超の変位の場合に非常に急上昇し、これは、非常に大きな偏位時のドライバ自身の損傷からドライバを保護するために望ましい。
「湾曲セクション」の剛性外形(図7に見られるように)は、図8のプログレッシブサスペンション部材の「理想的な」剛性外形との類似性をいっさい有しないことを見てとることができる。およそ−0.006〜+0.006の間の線形変位範囲において、剛性はおよそ65%だけ変化し、これは、直線セクションの剛性外形よりも非線形である。「湾曲セクション」の剛性外形は、−0.008未満の変位〜+0.008超の変位の場合に全く上昇せず、これにより、プログレッシブな挙動が防止され、非常に大きな偏位時のドライバ自身の損傷を防ぐ保護を非機能にする。
「総体的な」剛性外形は、図8におけるプログレッシブサスペンション部材の「理想的な」剛性外形との厳密な類似性を有することを見てとることができる。およそ−0.006〜+0.006の線形変位範囲において、剛性はおよそ17%だけ変化し、これは、個々の「直線セクション」の剛性外形及び「湾曲セクション」の剛性外形よりもはるかに線形である。「総体的な」剛性外形は、−0.008未満の変位〜+0.008超の変位の場合に非常に急上昇し、これは、非常に大きな偏位時にドライバ自身の損傷からドライバを保護するために望ましい。
ここで図9を参照すると、図9は、一定の径方向断面幾何学形状を有するサスペンション部材の剛性外形を示す。このタイプのサスペンション部材は、直線セクション及び湾曲セクションにおいて同じ高さの断面幾何学形状を有する。接線応力を軽減するのに用いられるうねりは全くない。図9から見てとることができるように、サスペンション部材のプログレッシブな性質は失われている。およそ−0.006〜+0.006の線形変位範囲において、剛性はおよそ10%だけ変化し、これは実際、非常に線形である。
「一定の径方向断面幾何学形状」の剛性外形は、−0.008未満の変位〜+0.008超の変位の場合に、したがって、サスペンション部材のプログレッシブな性質の場合に全く上昇せず、これは、非常に大きな偏位がなくなっている際にドライバ自身の損傷からドライバを保護するために望ましい。
一定の径方向断面幾何学形状の剛性の大きさは、理想的な剛性よりもはるかに高い。サスペンション部材に関して低剛性、すなわち、よりコンプライアントな設計を有することが好ましい。低剛性設計は、低い可動質量によりドライバの低フリーエア共振を達成するために好ましい。
100 サスペンション部材
110 湾曲セクション
111 うねり山
112 うねり谷
120 遷移セクション
130 直線セクション
200 ボイスコイル
300 振動板
400 シャーシ
500 磁石回路

Claims (13)

  1. ラウドスピーカドライバの振動板(300)を前記ラウドスピーカドライバのシャーシ(400)に取りつけるサスペンション部材(100)であって、前記サスペンション部材(100)は、2つの対向する第1のセクション(130)と、前記振動板の幾何学形状に合致するように前記第1のセクション(130)をつなぐ2つの対向する第2の湾曲セクション(110)とを有する幾何学形状を有し、前記第2の湾曲セクション(110)は、前記第1のセクション(130)の曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、
    前記第2の湾曲セクション(110)の径方向断面外形の平均高さが、前記第1のセクション(130)の断面外形の高さよりも高いこと、及び、
    前記第1のセクション(130)は、前記第2の湾曲セクション(110)よりも大きい軸方向剛性を有し、
    前記第2の湾曲セクション(110)は前記サスペンション部材(100)の径方向円周断面の高さにおいて偏差を有すること、を特徴とするサスペンション部材。
  2. 請求項1に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第2の湾曲セクション(110)には、隆起部、溝、可変幅又は材料厚さ等の接線応力解放を与える形成部が備わっていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション部材。
  3. 請求項1に記載のサスペンション部材(100)であって、前記サスペンション部材の前記第2の湾曲セクション(110)は前記セクション(110)に沿って軸方向にうねっていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のサスペンション部材。
  4. 請求項3項に記載のサスペンション部材(100)であって、前記サスペンション部材(100)は或る材料厚さを有し、それにより、谷高さと山高さとの間のうねり振幅(A)が前記材料厚さのおよそ2倍であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のサスペンション部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第2の湾曲セクション(110)の前記径方向断面外形の前記平均高さは前記第1のセクション(130)の前記断面外形の前記高さの少なくとも2倍の高さであること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のサスペンション部材。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第2の湾曲セクション(110)のうねりの勾配が水平線に対して25度未満であること、を特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のサスペンション部材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第1のセクション(130)は直線遷移セクション(120)を介して前記第2の湾曲セクション(110)に接続され、前記直線遷移セクション(120)の高さは前記第1のセクション(130)の前記高さから少なくとも前記第2の湾曲セクション(110)を通した高さにかけて増すこと、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のサスペンション部材。
  8. 請求項7に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第2の湾曲セクション(110)の前記断面の最も高い地点(111)から測定される場合、前記第2の湾曲セクション(110)のうねり振幅は前記遷移セクション(120)まで単調にゼロへと下がること、を特徴とする請求項7に記載のサスペンション部材。
  9. 請求項7又は8に記載のサスペンション部材(100)であって、軸方向に見た場合、前記第1のセクション(130)及び前記遷移セクション(120)は実質的に直線であること、を特徴とする請求項7又は8に記載のサスペンション部材。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載のサスペンション部材(100)であって、前記第2の湾曲セクション(110)のうねりの勾配は水平線に対して25度未満であること、を特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のサスペンション部材。
  11. ラウドスピーカドライバであって、
    シャーシ(400)と、
    振動板(300)と、
    前記振動板(300)を前記シャーシ(400)に軸方向に取りつけるように構成されているサスペンション部材(100)と、
    を備え、
    前記サスペンション部材(100)は請求項1に記載のサスペンション部材であること、を特徴とするラウドスピーカドライバ。
  12. 前記サスペンション部材(100)は、前記サスペンション部材(100)の前記外形の高さが前記振動板から後方に延びるように前記振動板(300)を取りつけること、を特徴とする請求項11に記載のラウドスピーカドライバ。
  13. 請求項11に記載のラウドスピーカドライバを有すること、を特徴とするラウドスピーカ。
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