JP2018148802A - 果実等の病害抵抗性増大方法 - Google Patents
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Abstract
Description
かかる状況下、植物生体の機能的活性化と成長を図る農業技術として、植物生体の内側の内部高電位と表皮サイドの外部低電位とを結ぶ通電体を、外部の表皮サイドより植物生体に差し込み、植物生体の表皮サイドの電位を増大させることにより、植物生体の機能的活性化と成長の促進を図る技術が知られている(特許文献1,2を参照)。
また、上述した植物生体の機能的活性化と成長の促進を図る技術では、植物生体の中心柱の近傍の電位と外部の皮層近傍の電位は中心柱近傍電位が約150〜200mV電位が高いことに着目し、また、植物全体がそれぞれ有する極性的電位である自己の生体電位(培地と生体茎)が、植物生体の成長力を示す指標として用いられることに着目して、通電体を挿し込んで電位バランスの調整を図るものである。
本明細書において、病害抵抗性とは、植物が病原菌や微生物が侵入しようとするのを妨げる機能をいうが、これにとどまらず、植物の香りにより、虫や鳥を避ける忌避性(忌避効果)も含まれる意味で用いている。病害抵抗性を高めることにより、植物の病気の発生を抑制できるものである。また、忌避性(忌避効果)を高めることにより、葉や果実を食べる虫や動物などを植物に寄せ付けなくすることができる。
1)果樹の場合
異なる幹部、幹部と枝部、幹部と果実部、異なる枝部、枝部と果実部、若しくは異なる果実部
2)一年生草木植物の場合
異なる茎部、茎部と葉部、茎部と果実部、異なる葉部、葉部と果実部、若しくは異なる果実部
本発明の方法では、例えば、電極間に太陽光パネルを接続し、昼間のみに果樹又は一年生草木植物に電圧を印加させることでもよい。
ここで、印加する電圧は、20V以下の直流電圧、交流電圧又はパルス電圧であり、かつ、電極を挿入した箇所の集合体が50℃未満となるように調整されることが好ましい。
培養細胞に対する電圧印加により、培養細胞において、病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子の発現量を増大させることができる。病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子は、具体的には、probable WRKY transcription factor 33-like、又は、class IV chitinaseである。なお、培養に用いる培地などは特に限定されない。
また、上述の本発明の方法を施した培養細胞、その培養細胞から培養された苗木、その苗木を生育して収穫された果実、塊根、球根、塊茎、若しくは葉の何れかの農産物も様々な利用が期待できる。
ブドウ培養細胞に電気刺激を与えることによって、ブドウ培養細胞における病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子の発現量を増大できることについて説明する。
図1は、培養細胞を改質させる方法のフローを示している。例えば、ブドウ培養細胞の集合体に電極とその対極を挿入し(S11)、ブドウ培養細胞の両電極を集合体に接触させる(S12)。電極はソーラーパネルと繋がっており、照明光により電極間に電圧を印加する(S13)。ブドウ培養細胞の集合体の温度が50℃未満となるように照明光を調整する(S14)。そして、ブドウ培養細胞における病害抵抗性(忌避性)が増大(S15)するか否かを確認する。病害抵抗性(忌避性)が増大するか否かについては、病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子の発現量が増加するか否かによって確認する。
ブドウ培養細胞は、赤系ブドウ品種で樹勢が強い甲州ブドウ由来の品種(甲州)から培養細胞を作製し、下記表1に示すGB培地(ショ糖濃度20 g/L)上で、28℃、暗条件で培養した。
(1)DNAチップ上の全遺伝子のうち、2倍以上あるいは2分の1以下発現変動した遺伝子
(2)上記(1)の遺伝子の内、機能が明確で、ブドウ果実の品質に関与すると推定される遺伝子
(3)上記(1)の遺伝子の内、機能が未知な遺伝子
果実等の病害抵抗性を高めることは、植物の病気の発生を抑制して、殺菌剤などの農薬の使用量を減らすことによって、食の安全性を高めることにつながる。また、果実の外観品質を高めることができる。種々の植物に対して、本発明の方法を施すことにより、より低コストで病害抵抗性を高め、果実等の安全性や品質を高めることが期待できる。
本実施例では、ブドウ樹の幹に電極を埋め込み、ソーラーパネルを繋いで電極に電圧を印加し、電流処理を行った結果について説明する。
図3は、本実施例のブドウ樹を改質させる方法のフローを示している。図3に示すように、ブドウ樹の幹の異なる箇所に電極とその対極を挿入する(S01)。両電極をブドウ樹の幹の内部組織に接触させる(S02)。ソーラーパネルに太陽光が照射されることによって電極間に電圧が印加される(S03)。内部組織の温度が50℃未満となるように使用するソーラーパネルの仕様を調整する(S04)。そして、ブドウ果実の健康な房の数を測定し、病気の発生率を実測した。
果樹の病害抵抗性(忌避性)として、まず、野外栽培ブドウにおける房の発病率に及ぼす電気刺激の影響について説明する。
下記表3は、電流区(電流処理)と電極区(電極のみ)と対照区(処理なし)のそれぞれについて、病気(灰色かび病、晩腐病)に罹っている房の数、健康な房の数を測定し、病気の発生率を算出した結果を示している。ここで、“*”は対照区および電極区と比較してカイ二乗検定による有意差が見られたものである。
表3の結果から、病気(灰色かび病、晩腐病)に罹っている房の数は、電気処理で有意に減っていることが確認できる。ここで、病気の発生率(%)=病気に罹った房の数/(病気に罹った房の数+健康な房の数)×100で算出している。
図6は、表3における病気の発生率をグラフ化したものである。
図7は、ブドウ樹の病害抵抗性(忌避性)を示すグラフであり、電流区(電流処理)と電極区(電極のみ)と対照区(処理なし)のそれぞれについて、ブドウベと病に罹っている葉の数、健康な葉の数を測定し、病気の発生率を算出した結果をグラフ化したものである。
図7に示すように、葉の被害率の測定結果では、電流処理の実験区で葉の被害率の減少が対照と比較して0.01%の水準で有意差が見られた。
図8に示すように、4つの遺伝子は、何れも、電流処理の実験区が、他の実験区や対照区と比べて、遺伝子の増幅が20〜30日後に有意差が認められることから、電気処理による病害抵抗性(忌避性)の即効性は少ないものの、予防的効果に期待できる。
なお、図8の4つのグラフにおいて、バーは、3つの独立した苗から計算した平均±標準偏差を示している。また、“*”は電流処理の電流区で対照区と比較して0.05%の水準で有意差が見られたことを示している。
2 ブドウ培養細胞
3 ソーラーパネル
4 電極
Claims (15)
- 果樹又は一年生草木植物の異なる箇所に電極とその対極を挿入し、両電極を内部組織に接触させた状態で、電極間に電圧を印加することにより果実等の病害抵抗性を増大させる方法。
- 上記の内部組織に対する電圧印加により、病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子の発現量を増大させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 上記の病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子は、病原菌を殺菌する作用を有するキチナーゼ(chitinase)、又は、β-1,3-グルカナーゼ(β-1,3-glucanase)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 上記の電極とその対極を挿入する箇所は、
果樹の場合、異なる幹部、幹部と枝部、幹部と果実部、異なる枝部、枝部と果実部、若しくは異なる果実部であり、
一年生草木植物の場合、異なる茎部、茎部と葉部、茎部と果実部、異なる葉部、葉部と果実部、若しくは異なる果実部である、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。 - 印加する電圧は、1〜100V以下の直流電圧、交流電圧又はパルス電圧であり、かつ、電極を挿入した箇所の内部組織が50℃未満となるように調整されたことを特徴とする請求項11〜4の何れかに記載の方法。
- 電極間に太陽光パネルを接続し、昼間のみに果樹又は一年生草木植物に電圧を印加させたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の方法。
- 果実、塊根、球根、塊茎、若しくは葉の培養細胞の集合体に電極とその対極を挿入し、両電極を前記集合体に接触させた状態で、電極間に電圧を印加することにより果実等の病害抵抗性を増大させる方法。
- 印加する電圧は、20V以下の直流電圧、交流電圧又はパルス電圧であり、かつ、電極を挿入した箇所の前記集合体が50℃未満となるように調整されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 上記の培養細胞に対する電圧印加により、病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子の発現量を増大させたことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
- 上記の病害抵抗性タンパク質を産出する遺伝子は、probable WRKY transcription factor 33-like、又は、class IV chitinaseであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 請求項1〜6の何れかの方法を施した果樹又は一年生草木植物から収穫された農産物。
- 請求項7〜10の何れかの方法を施した培養細胞。
- 請求項12の培養細胞から培養された苗木。
- 請求項13の苗木を生育して収穫された果実、塊根、球根、塊茎、若しくは葉の何れかの農産物。
- 請求項11又は14の農産物を用いた果汁、果実酒、漬物を含む2次的加工食品。
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