JP2018145504A - 曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板よりも高い引張強度を有し、製造コストの過大な上昇を抑制しつつ強度と曲げ加工性を同時に向上させた、建築部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材を提供することを目的とする。【解決手段】上記の目的を達成するため、所定の化学組成を有する素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板であって、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、かつ硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出している、引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材を提供する。【選択図】図1
Description
本発明は、高耐食性が要求される用途で、かつ、主に曲げ加工が施されて使用される建築部材の素材に適した、引張強度780MPa以上の曲げ加工性に優れた溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材に関するものである。
近年、環境問題に対する関心が一層高まっており、建築部材をはじめとして、種々の加工品において、高強度−薄肉化による軽量化が求められている。また、プレス加工、伸びフランジ加工など、様々な変形様式の加工が施される場合には、素材鋼板には、強度に加えて延性や高い穴広げ性等が要求される。そのため、高価な合金元素の添加に加え複雑な熱処理を組み合わせて、金属組織を緻密に制御した発明が多くなされている。さらに、長寿命化や後めっき等の省略の点から高強度防錆鋼板が必要とされている場合も多い。
特許文献1〜3には、曲げ加工性に優れる高強度冷延鋼板、めっき鋼板およびその製造方法が開示されている。しかしながら、いずれも変態強化で高強度化を図るとともに残留オーステナイトを活用して高強度化と加工性の両立を図ったもので、Si、Mn等の高価な合金元素を多量に添加する必要があるため、製造コストが高くなる。また、変態強化では、硬質相と軟質相の大きな強度差に起因して、安定的に良好な曲げ性を確保するのは非常に困難である。
特許文献4には、マルテンサイトや残留オーステナイトを利用せず、フェライト組織をベースに微細析出物および転位強化を活用した高比例源かつ曲げ加工性に優れる冷延鋼板を開示している。しかしながら、C含有量が高く曲げ加工性のレベルは、必ずしも十分ではないことがわかった。本発明者らは、マルテンサイトや残留オーステナイトを用いずにフェライトまたはベイナイト組織をベースとしてTi等の微細析出物を用いて析出強化するとともに、粗大な硬質第2相やセメンタイトの析出を抑制することで高強度化と局部延性の指標となる穴広げ性を向上させた熱延めっき鋼板を特許文献5に開示している。しかし、特許文献5では非常に良好な曲げ加工性が得られるものの、必ずしも十分な強度が得られない。
本発明は、上述の問題に鑑み、780MPa以上の引張強度を有し、製造コストの過大な上昇を抑制しつつ強度と曲げ加工性を同時に向上させた、耐食性に優れる建築部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成を有するめっき鋼板が上記課題を解決できることを見出した。
具体的に、本発明は、素材鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4〜1.5であり、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、かつ硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出している、引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材を提供する。
さらに、TiとCの関係において、下記(1)式に表されるTi/C当量比が0.4〜1.5に制御されていることを条件とする。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
前記素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有してもよい。
また、前記のめっき組成は、例えば、質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなる。
また、前記の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法として、前記組成を有する素材鋼板に、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程を施し、熱間圧延での巻取温度を500℃から650℃、冷間圧延率を30%〜60%、連続溶融めっきラインでの焼鈍温度を550℃から750℃とする。
本発明は、製造コストが抑えられ、十分な強度を有し、曲げ加工性に優れた建築部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材を提供することができる。特に、本発明の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、先端R:1.0mm、135°曲げが可能であり、優れた加工性を有する。
本発明における建築部材とは、主に曲げ加工にて成形される建築部材であり形鋼、溶接鋼管、屋根パネルなどの二次部材、外装材、内装材、各種金具類および溶接部材を含む。
以下、本発明の成分、金属組織および製造方法について詳細に説明する。鋼組成及びめっき組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
<C:0.01〜0.08%>
Cは、Tiを含む炭化物を形成し、ベイニティックフェライトまたはフェライト組織中に微細析出し、高強度化に有効な元素である。C含有量が0.01%未満では780MPa以上の強度を得るのが困難であり、0.08%を越えて添加すると析出物の粗大化や硬質第2相およびセメンタイトの形成により、曲げ加工性が低下する。また、好ましくは、0.01〜0.06%、さらに好ましくは0.01〜0.04%である。
Cは、Tiを含む炭化物を形成し、ベイニティックフェライトまたはフェライト組織中に微細析出し、高強度化に有効な元素である。C含有量が0.01%未満では780MPa以上の強度を得るのが困難であり、0.08%を越えて添加すると析出物の粗大化や硬質第2相およびセメンタイトの形成により、曲げ加工性が低下する。また、好ましくは、0.01〜0.06%、さらに好ましくは0.01〜0.04%である。
<Si:0.8%以下>
Siは、固溶強化に有効な元素である。しかし、過剰に添加すると、溶融めっきラインでの加熱時に鋼板表面に酸化物を形成し、めっき性を阻害するとともに製造コストの上昇を招くので、添加量の上限を0.8%とする。また、好ましくは、0.4%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
Siは、固溶強化に有効な元素である。しかし、過剰に添加すると、溶融めっきラインでの加熱時に鋼板表面に酸化物を形成し、めっき性を阻害するとともに製造コストの上昇を招くので、添加量の上限を0.8%とする。また、好ましくは、0.4%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
<Mn:0.5〜1.7%>
Mnは、高強度化に有効な元素である。0.5%未満では780MPa以上の強度を得るのが難しく、1.7%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。また、製造コストの上昇を招く。したがって、添加量の上限を1.7%とする。また、好ましくは、1.0〜1.7%、さらに好ましくは1.0〜1.5%である。
Mnは、高強度化に有効な元素である。0.5%未満では780MPa以上の強度を得るのが難しく、1.7%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。また、製造コストの上昇を招く。したがって、添加量の上限を1.7%とする。また、好ましくは、1.0〜1.7%、さらに好ましくは1.0〜1.5%である。
<P:0.05%以下>
Pは固溶強化に有効な元素であるが、0.05%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。したがって、添加量の上限を0.05%とする。また、好ましくは、0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。なお、Pの含有量は0を含まない。
Pは固溶強化に有効な元素であるが、0.05%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。したがって、添加量の上限を0.05%とする。また、好ましくは、0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。なお、Pの含有量は0を含まない。
<S:0.005%以下>
SはMnと硫化物を形成し曲げ加工性を始めとする局部延性を劣化させる。このため、Sは極力低減すべき元素であるが、0.005%までは許容できるので、含有量の上限を0.005%に限定する。また、好ましくは、0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。なお、Sは不可避不純物であり、その含有量は0を含まない。
SはMnと硫化物を形成し曲げ加工性を始めとする局部延性を劣化させる。このため、Sは極力低減すべき元素であるが、0.005%までは許容できるので、含有量の上限を0.005%に限定する。また、好ましくは、0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。なお、Sは不可避不純物であり、その含有量は0を含まない。
<N:0.001〜0.005%>
Nは、鋼中に固溶Nとして残存するとBNを生成し、耐溶融金属脆化割れ性に有効なB量の減少につながる。検討の結果、N含有量は0.005%以下に制限されるが、通常は0.001%程度のNが存在していても問題ない。N含有量の範囲は、好ましくは、0.001〜0.004%である。
Nは、鋼中に固溶Nとして残存するとBNを生成し、耐溶融金属脆化割れ性に有効なB量の減少につながる。検討の結果、N含有量は0.005%以下に制限されるが、通常は0.001%程度のNが存在していても問題ない。N含有量の範囲は、好ましくは、0.001〜0.004%である。
<Ti:0.02〜0.2%>
TiはCと結合して、微細なTiの炭化物として析出し、高強度化とセメンタイトの析出抑制に有効な元素である。また、TiはNとの親和性が高く、鋼中のNをTiNとして固定するため、Tiを添加することは耐溶融金属脆化割れ性を高めるB量を確保する上で極めて有効である。これらの作用を十分得るためには0.02%以上の添加が必要である。一方、0.2%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、0.02から0.20%の範囲に限定する。Ti含有量は好ましくは、0.05〜0.20%、さらに好ましくは、0.08〜0.20%である。
TiはCと結合して、微細なTiの炭化物として析出し、高強度化とセメンタイトの析出抑制に有効な元素である。また、TiはNとの親和性が高く、鋼中のNをTiNとして固定するため、Tiを添加することは耐溶融金属脆化割れ性を高めるB量を確保する上で極めて有効である。これらの作用を十分得るためには0.02%以上の添加が必要である。一方、0.2%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、0.02から0.20%の範囲に限定する。Ti含有量は好ましくは、0.05〜0.20%、さらに好ましくは、0.08〜0.20%である。
<B:0.0005〜0.010%>
Bは結晶粒界に偏析して原子間結合力を高め、溶融金属脆化割れの抑制に有効な元素である。また、Bは粒界に偏析して変態を抑制し、ベイニティックフェライト組織を通じた高強度化に有効な元素である。0.0005%未満ではこれらの効果が無く、0.01%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに製造コストの上昇を招く。そのため、添加範囲を0.0005%から0.010%に限定する。
Bは結晶粒界に偏析して原子間結合力を高め、溶融金属脆化割れの抑制に有効な元素である。また、Bは粒界に偏析して変態を抑制し、ベイニティックフェライト組織を通じた高強度化に有効な元素である。0.0005%未満ではこれらの効果が無く、0.01%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに製造コストの上昇を招く。そのため、添加範囲を0.0005%から0.010%に限定する。
<Al:0.005〜0.1%以下>
Alは、製鋼時に脱酸材として添加される。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。一方、0.1%を超えて添加してもその効果は飽和するとともにかえって製造コストの上昇を招く。
Alは、製鋼時に脱酸材として添加される。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。一方、0.1%を超えて添加してもその効果は飽和するとともにかえって製造コストの上昇を招く。
<V:1.0%以下、Nb:0.1%以下の1種以上>
Nb、Vは加熱および熱延中のγ粒の粗大化を防止し、フェライト粒の微細化に有効である。また、Tiと同様にCを含む複合炭化物を形成し、強度上昇にも寄与する。このため必要に応じてこれらの元素の1種以上を含有することができる。
Nb、Vは加熱および熱延中のγ粒の粗大化を防止し、フェライト粒の微細化に有効である。また、Tiと同様にCを含む複合炭化物を形成し、強度上昇にも寄与する。このため必要に応じてこれらの元素の1種以上を含有することができる。
<Ti/C当量比:0.4〜1.5>
Ti/C当量比は、曲げ加工性を向上させるのに重要な値である。Ti/C当量比は、(1)式によって定義される。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
Ti/C当量比は、曲げ加工性を向上させるのに重要な値である。Ti/C当量比は、(1)式によって定義される。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
Ti/C当量比が0.4未満では、硬質第2相やセメンタイト量が増加するため、曲げ加工性が低下する。一方、Ti/C当量比が1.5を超え手添加してもその効果が飽和するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、0.4〜1.5の範囲に限定する。
<引張強度>
本発明は、軽量で耐久性に優れる建築部材用高強度鋼板及びそれを用いた建築部材に関するものであり、780MPa以上の引張強度の鋼板を対象としている。しかしながら、引張強度が1100MPaを超えると135°曲げにて割れを生じる。したがって、引張強度の範囲は780〜1100MPaの範囲に規定する。
本発明は、軽量で耐久性に優れる建築部材用高強度鋼板及びそれを用いた建築部材に関するものであり、780MPa以上の引張強度の鋼板を対象としている。しかしながら、引張強度が1100MPaを超えると135°曲げにて割れを生じる。したがって、引張強度の範囲は780〜1100MPaの範囲に規定する。
<金属組織>
本発明に関わる建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材のミクロ組織は、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2であるベイニティックフェライト相またはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とするとともに、硬質第2相及びセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出している。以下、これらについて説明する。
本発明に関わる建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材のミクロ組織は、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2であるベイニティックフェライト相またはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とするとともに、硬質第2相及びセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出している。以下、これらについて説明する。
転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2であるベイニティックフェライトまたはフェライトのいずれか単相またはベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とするとともに、硬質第2相及びセメンタイトの面積率を3%以下としたのは、780MPa以上の引張強度と良好な曲げ加工性を両立させるためである。
即ち硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下のフェライト及び/又はベイナイト組織とすることで、先端R:1.0mmの135°曲げで割れを生じない良好な曲げ加工性が得られ、転位密度を1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2とすることで、780MPa以上の引張強度を確保可能となる。セメンタイトは曲げ加工の際にフェライト相またはベイナイト相との界面で微小亀裂を生じ易く、曲げ割れの起点となるため曲げ加工性が大きく低下する。面積率で3%までは許容できるため、上限を3%以下とした。
なお、「主相」とは、本発明の鋼板の金属組織において、硬質第2相およびセメンタイトを除いた残りの相を意味する。
即ち硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下のフェライト及び/又はベイナイト組織とすることで、先端R:1.0mmの135°曲げで割れを生じない良好な曲げ加工性が得られ、転位密度を1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2とすることで、780MPa以上の引張強度を確保可能となる。セメンタイトは曲げ加工の際にフェライト相またはベイナイト相との界面で微小亀裂を生じ易く、曲げ割れの起点となるため曲げ加工性が大きく低下する。面積率で3%までは許容できるため、上限を3%以下とした。
なお、「主相」とは、本発明の鋼板の金属組織において、硬質第2相およびセメンタイトを除いた残りの相を意味する。
Tiを含む炭化物の平均粒径を20nm以下にしたのは、Tiを含む炭化物は熱間圧延時に析出し、その析出強化作用により強度が上昇する。また、曲げ加工性の向上には微細析出することが有効である。種々検討の結果、ベイニティックフェライト及び/又はフェライト相中に分散している炭化物の平均粒子径が20nm以下であることが極めて有効で20nmを超えると良好な曲げ加工性が得られなくなる。なお、Tiを含む炭化物とは、Nb、V等の炭化物も含んでいる。
・製造方法
上記加工性に優れた高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、例えば成分調整された鋼材(連続鋳造スラブなど)に、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により製造することができる。以下、その場合の製造条件を例示する。
上記加工性に優れた高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、例えば成分調整された鋼材(連続鋳造スラブなど)に、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により製造することができる。以下、その場合の製造条件を例示する。
上記の成分組成を満たす鋼スラブを1150〜1300℃の加熱温度で加熱し、850〜950℃の仕上温度で熱間圧延後、下記の巻取温度で巻き取る。以降、下記の巻取温度で熱延鋼帯を得る。さらに、この鋼帯を酸洗後、下記の条件で冷間圧延し、連続溶融めっきラインでめっき工程に付する。
<熱間圧延での巻取温度を500℃から650℃>
巻取温度が500℃未満では、Tiを含む炭化物の析出量が不十分となり強度が低下する。一方、巻取温度が650℃を超えるとTiを含む炭化物の粗大化が起こり、強度低下および曲げ加工性が低下する。
巻取温度が500℃未満では、Tiを含む炭化物の析出量が不十分となり強度が低下する。一方、巻取温度が650℃を超えるとTiを含む炭化物の粗大化が起こり、強度低下および曲げ加工性が低下する。
<冷間圧延率:30〜60%>
熱間圧延後は、連続酸洗ラインを通板して、表面のスケールを除去し、冷間圧延を施す。その際、冷間圧延の圧延率が30%未満では、連続溶融めっきラインでの焼鈍後の転位密度が1.8×1014/m2未満となり、780MPa以上の引張強度が得られなくなる場合がある。一方、60%を越えると転位密度が5.7×1014/m2を越えて延性の低下が大きくなり、曲げ加工性が劣化する場合がある。したがって、冷間圧延率は30%〜50%以下の範囲が好ましい。
熱間圧延後は、連続酸洗ラインを通板して、表面のスケールを除去し、冷間圧延を施す。その際、冷間圧延の圧延率が30%未満では、連続溶融めっきラインでの焼鈍後の転位密度が1.8×1014/m2未満となり、780MPa以上の引張強度が得られなくなる場合がある。一方、60%を越えると転位密度が5.7×1014/m2を越えて延性の低下が大きくなり、曲げ加工性が劣化する場合がある。したがって、冷間圧延率は30%〜50%以下の範囲が好ましい。
<連続溶融めっきラインでの焼鈍温度:550〜750℃>
焼鈍温度が550℃未満では鋼板表面が十分に還元せずめっき性が低下する。一方、焼鈍温度が750℃を超えると再結晶を生じて転位密度が1.8×1014/m2未満となり、強度低下を招く。すなわち、本発明は再結晶焼鈍以下の温度で焼鈍を施して、高い転位密度を維持することを特徴とするものであり、母材の金属組織は、熱延終了後時点の組織を基本としている。
焼鈍温度が550℃未満では鋼板表面が十分に還元せずめっき性が低下する。一方、焼鈍温度が750℃を超えると再結晶を生じて転位密度が1.8×1014/m2未満となり、強度低下を招く。すなわち、本発明は再結晶焼鈍以下の温度で焼鈍を施して、高い転位密度を維持することを特徴とするものであり、母材の金属組織は、熱延終了後時点の組織を基本としている。
<溶融Zn−Al−Mg系めっき>
本発明では、公知の溶融Zn−Al−Mg系めっきの手法を適用することができる。
めっき層中のAlは、めっき鋼板の耐食性を向上させる作用を有する。また、めっき浴中にAlを含有させることでMg酸化物系ドロス発生を抑制する作用もある。これらの作用を十分に得るには溶融めっきのAl含有量を3.0%以上とする必要があり、4.0%以上とすることがより好ましい。一方、Al含有量が22.0%を超えると、めっき層と素材鋼板との界面でFe−Al合金層の成長が著しくなり、めっき密着性が悪くなる。優れためっき密着性を確保するには15.0%以下のAl含有量とすることが好ましく、10.0%以下とすることがより好ましい。
本発明では、公知の溶融Zn−Al−Mg系めっきの手法を適用することができる。
めっき層中のAlは、めっき鋼板の耐食性を向上させる作用を有する。また、めっき浴中にAlを含有させることでMg酸化物系ドロス発生を抑制する作用もある。これらの作用を十分に得るには溶融めっきのAl含有量を3.0%以上とする必要があり、4.0%以上とすることがより好ましい。一方、Al含有量が22.0%を超えると、めっき層と素材鋼板との界面でFe−Al合金層の成長が著しくなり、めっき密着性が悪くなる。優れためっき密着性を確保するには15.0%以下のAl含有量とすることが好ましく、10.0%以下とすることがより好ましい。
めっき層中のMgは、めっき層表面に均一な腐食生成物を生成させて当該めっき鋼板の耐食性を著しく高める作用を呈する。その作用を十分に発揮させるには溶融めっきのMg含有量を0.05%以上とする必要があり、2.0%以上を確保することが望ましい。一方、Mg含有量が10.0%を超えるとMg酸化物系ドロスが発生し易くなる弊害が大きくなる。より高品質のめっき層を得るには5.0%以下のMg含有量とすることが好ましく、4.0%以下とすることがより好ましい。
溶融めっき浴中にTi、Bを含有させると、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板において斑点状の外観不良を与えるZn11Mg2相の生成・成長が抑制される。Ti、Bはそれぞれ単独で含有させてもZn11Mg2相の抑制効果は生じるが、製造条件の自由度を大幅に緩和させる上で、TiおよびBを複合で含有させることが望ましい。これらの効果を十分に得るには、溶融めっきのTi含有量は0.0005%以上、B含有量は0.0001%以上とすることが効果的である。ただし、Ti含有量が多くなりすぎると、めっき層中にTi−Al系の析出物が生成し、めっき層に「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にTiを添加する場合は0.10%以下の含有量範囲とする必要があり、0.01%以下とすることがより好ましい。また、B含有量が多くなりすぎると、めっき層中にAl−B系あるいはTi−B系の析出物が生成・粗大化し、やはり「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にBを添加する場合は0.05%以下の含有量範囲とする必要があり、0.005%以下とすることがより好ましい。
溶融めっき浴中にSiを含有させると前記Fe−Al合金層の成長が抑制され、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の加工性が向上する。また、めっき層中のSiはめっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効である。このようなSiの作用を十分に引き出すためには溶融めっきのSi含有量を0.005%以上とすることが効果的である。ただし、過剰にSiを添加すると溶融めっき浴中のドロス量が多くなるので、めっき浴にSiを含有させる場合は2.0%以下の含有量範囲とする。
溶融めっき浴中には素材鋼板やポット構成部材などからある程度のFeが混入してくる。Zn−Al−Mg系めっきにおいて、めっき浴中のFeは2.0%程度まで含有が許容される。めっき浴中には、その他の元素として例えば、Ca、Sr、Na、希土類元素、Ni、Co、Sn、Cu、Cr、Mnの1種以上が混入しても構わないが、それらの合計含有量は1質量%以下であることが望ましい。なお、溶融めっき浴組成はほぼそのまま溶融めっき鋼板のめっき層組成に反映される。
[実施例1]
表1に組成を示す各鋼を溶製し、そのスラブを1250℃に加熱した後、仕上げ圧延温度880℃、巻取温度520〜680℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を得た。各熱延鋼帯の巻取温度は表2中にそれぞれ示してある。
表1に組成を示す各鋼を溶製し、そのスラブを1250℃に加熱した後、仕上げ圧延温度880℃、巻取温度520〜680℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を得た。各熱延鋼帯の巻取温度は表2中にそれぞれ示してある。
熱延鋼帯を酸洗して30%および50%の冷延率で冷間圧延を施した後、連続溶融めっきラインにて、水素−窒素混合ガス中500〜790℃で焼鈍行い、約420℃まで平均冷却速度5℃/secで冷却して素材鋼板(めっき原板)とし、その後、鋼板表面が大気に触れない状態のまま下記のめっき浴組成を有する溶融Zn−Al−Mg系めっき浴中に浸漬した後引き上げ、ガスワイピング法にてめっき付着量を片面あたり約90g/m2に調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき浴温は約410℃であった。各鋼の冷延率、焼鈍温度も、表2に併せて示してある。
〔めっき浴組成(質量%)〕
Al:6.0%、Mg:3.0%、Ti:0.002%、B:0.0005%、Si:0.01%、Fe:0.1%、Zn:残部
Al:6.0%、Mg:3.0%、Ti:0.002%、B:0.0005%、Si:0.01%、Fe:0.1%、Zn:残部
〔Ti含有炭化物の平均粒子径〕
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、Ti含有炭化物が30個以上含まれる一定の領域内の当該炭化物の粒子径(長径)を測定し、その平均値をTi含有炭化物の平均粒子径とした。
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、Ti含有炭化物が30個以上含まれる一定の領域内の当該炭化物の粒子径(長径)を測定し、その平均値をTi含有炭化物の平均粒子径とした。
〔転位密度〕
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料の表層部から板厚の1/4まで機械研磨後、化学研磨を施して加工歪を除去し、X線解析により転位密度を計算により求めた。X線回折には、Co管球のKα1線を用い、<110>、<211>、<220>の3つの回折ピークの半価幅から局所歪ηを求め、次式を用いて転位密度を計算した。
ρ=14.4×η2/b2
ここで、ρが転位密度でbはバーガースベクトル(0.25nm)である。なお、転位密度の計算は、Modified Williamson-Hall/Warren-Averbach法を用いた。計算した転位密度は表2に併記する。
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料の表層部から板厚の1/4まで機械研磨後、化学研磨を施して加工歪を除去し、X線解析により転位密度を計算により求めた。X線回折には、Co管球のKα1線を用い、<110>、<211>、<220>の3つの回折ピークの半価幅から局所歪ηを求め、次式を用いて転位密度を計算した。
ρ=14.4×η2/b2
ここで、ρが転位密度でbはバーガースベクトル(0.25nm)である。なお、転位密度の計算は、Modified Williamson-Hall/Warren-Averbach法を用いた。計算した転位密度は表2に併記する。
〔セメンタイトの面積率〕
硬質第2相およびセメンタイトの面積率は、採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料を圧延方向断面に研磨し、ピクラール試薬にてエッチングしてSEM観察し、観察された組織から画像解析によって算出した。測定された硬質第2相及びセメンタイトの面積率を表2に併記する。
硬質第2相およびセメンタイトの面積率は、採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料を圧延方向断面に研磨し、ピクラール試薬にてエッチングしてSEM観察し、観察された組織から画像解析によって算出した。測定された硬質第2相及びセメンタイトの面積率を表2に併記する。
〔引張特性〕
試験片の長手方向が素材鋼板の圧延方向に対し直角になるように採取したJIS5号試験片を用い、JISZ2241に準拠して引張強さTS、全伸びT.Elを求めた。
試験片の長手方向が素材鋼板の圧延方向に対し直角になるように採取したJIS5号試験片を用い、JISZ2241に準拠して引張強さTS、全伸びT.Elを求めた。
〔曲げ加工性〕
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から圧延方向と直角方向に20×50mmのサンプルを採取し、これを135°曲げ試験に供した。即ち、採取したサンプルの長手方向の中央部で圧延方向が曲げの軸となるように先端R1.0mm、先端角度45°のV型パンチ、ダイスを用いて、20kNの押し付け力で曲げ加工を施し、曲げ加工部先端の外表面における割れの発生有無を○×で評価した。この評価基準を満足できれば、実際の建築部材への加工が可能である。
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から圧延方向と直角方向に20×50mmのサンプルを採取し、これを135°曲げ試験に供した。即ち、採取したサンプルの長手方向の中央部で圧延方向が曲げの軸となるように先端R1.0mm、先端角度45°のV型パンチ、ダイスを用いて、20kNの押し付け力で曲げ加工を施し、曲げ加工部先端の外表面における割れの発生有無を○×で評価した。この評価基準を満足できれば、実際の建築部材への加工が可能である。
〔溶融金属脆化割れ性の評価〕
建築部材を溶接する場合があるため、溶接の際に生じる溶融金属脆化割れ性に優れることも必要である。溶融金属脆化特性は、次の手順により溶接試験を行って評価した。
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から100mm×75mmのサンプルを切り出し、これを溶融金属脆化に起因する最大割れ深さを評価するための試験片とした。溶接試験は、図1に示す外観のボス溶接材を作成する「ボス溶接」を行い、その溶接部断面を観察して割れの発生状況を調べた。すなわち、試験片3の板面中央部に直径20mm×長さ25mmの棒鋼(JISに規定されるSS400材)からなるボス(突起)1を垂直に立て、このボス1を試験片3にアーク溶接にて接合した。溶接ワイヤーはYGW12を用い、溶接開始点から溶接ビード6がボスの周囲を1周し、溶接始点を過ぎた後もさらに少し溶接を進めて溶接開始点を過ぎて溶接ビードの重なり部分8ができたところで溶接を終了とした。溶接条件は、190A,23V,溶接速度0.3m/min、シールドガス:Ar−20vol.%CO2、シールドガス流量:20L/minとした。
建築部材を溶接する場合があるため、溶接の際に生じる溶融金属脆化割れ性に優れることも必要である。溶融金属脆化特性は、次の手順により溶接試験を行って評価した。
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から100mm×75mmのサンプルを切り出し、これを溶融金属脆化に起因する最大割れ深さを評価するための試験片とした。溶接試験は、図1に示す外観のボス溶接材を作成する「ボス溶接」を行い、その溶接部断面を観察して割れの発生状況を調べた。すなわち、試験片3の板面中央部に直径20mm×長さ25mmの棒鋼(JISに規定されるSS400材)からなるボス(突起)1を垂直に立て、このボス1を試験片3にアーク溶接にて接合した。溶接ワイヤーはYGW12を用い、溶接開始点から溶接ビード6がボスの周囲を1周し、溶接始点を過ぎた後もさらに少し溶接を進めて溶接開始点を過ぎて溶接ビードの重なり部分8ができたところで溶接を終了とした。溶接条件は、190A,23V,溶接速度0.3m/min、シールドガス:Ar−20vol.%CO2、シールドガス流量:20L/minとした。
なお、溶接に際しては、図2に示すように、あらかじめ試験片3を拘束板4と接合しておいたものを用いた。接合体は、まず120mm×95mm×板厚4mmの拘束板4(JISに規定されるSS400材)を用意し、この板面中央部に試験片3を置き、その後、試験片3の全周を拘束板4に溶接したものである。上記のボス溶接材の作製は、この接合体(試験片3と拘束板4)を水平な実験台5の上にクランプ2にて固定し、この状態でボス溶接を行ったものである。
ボス溶接後、ボス1の中心軸を通り、かつ前記のビードの重なり合う部分8を通る切断面9で、ボス1/試験片3/拘束板4の接合体を切断し、その切断面9について顕微鏡観察を行い、試験片3に観察された割れの最大深さを測定し、これを最大母材割れ深さとした。この割れは溶融金属脆化割れに該当するものである。最大母材割れ深さが0.1mm以下を合格、0.1mmを超えるものを不合格として評価した。
本発明範囲であるNo.1〜15は、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2で引張強度が780〜1100MPaであるとともに、先端曲げR1.0mmの135°曲げが可能な高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板である。
しかし、No.16はC量が多く、またNo.17はTi量が低くてTi/C当量比が低いため、硬質第2相+セメンタイト面積率が高く、曲げ加工性に劣る。No.18はMn量が多いため、硫化物の析出に起因して曲げ加工性に劣る。No.19はBが低いため、十分な引張強さが得られておらず、また、耐LMEC性が劣る。No.20はP量が多いため、曲げ加工性に劣る。No.21はC量が低く、十分な引張強さが得られない。No.22はMn量が低いため、十分な引張強さが得られていない。No.23は熱間圧延での巻取り温度が高いためTi炭化物の粒子径が大きく、曲げ加工性に劣る。No.24はめっきラインでの焼鈍温度が高すぎて転位密度が低くなり、引張強度に劣る。
しかし、No.16はC量が多く、またNo.17はTi量が低くてTi/C当量比が低いため、硬質第2相+セメンタイト面積率が高く、曲げ加工性に劣る。No.18はMn量が多いため、硫化物の析出に起因して曲げ加工性に劣る。No.19はBが低いため、十分な引張強さが得られておらず、また、耐LMEC性が劣る。No.20はP量が多いため、曲げ加工性に劣る。No.21はC量が低く、十分な引張強さが得られない。No.22はMn量が低いため、十分な引張強さが得られていない。No.23は熱間圧延での巻取り温度が高いためTi炭化物の粒子径が大きく、曲げ加工性に劣る。No.24はめっきラインでの焼鈍温度が高すぎて転位密度が低くなり、引張強度に劣る。
[実施例2]
表1のA鋼、F鋼を実施例1と同様にスラブを1250℃に加熱した後、仕上げ圧延温度880℃、巻取温度590℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を得た。得られた熱延鋼帯を酸洗して10%、30%、50%、60%および70%の冷延率で冷間圧延を施した後、連続溶融めっきラインにて、水素−窒素混合ガス中620、630℃で焼鈍行い、約420℃まで平均冷却速度5℃/secで冷却して素材鋼板(めっき原板)とし、その後、鋼板表面が大気に触れない状態のまま、実施例1と同じめっき浴組成を有する溶融Zn−Al−Mg系めっき浴中に浸漬した後引き上げ、ガスワイピング法にてめっき付着量を片面あたり約90g/m2に調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき浴温は約410℃であった。
表1のA鋼、F鋼を実施例1と同様にスラブを1250℃に加熱した後、仕上げ圧延温度880℃、巻取温度590℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を得た。得られた熱延鋼帯を酸洗して10%、30%、50%、60%および70%の冷延率で冷間圧延を施した後、連続溶融めっきラインにて、水素−窒素混合ガス中620、630℃で焼鈍行い、約420℃まで平均冷却速度5℃/secで冷却して素材鋼板(めっき原板)とし、その後、鋼板表面が大気に触れない状態のまま、実施例1と同じめっき浴組成を有する溶融Zn−Al−Mg系めっき浴中に浸漬した後引き上げ、ガスワイピング法にてめっき付着量を片面あたり約90g/m2に調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき浴温は約410℃であった。
得られためっき鋼板の引張特性、曲げ加工性、耐溶融金属脆化割れ性を調査し、表3にまとめて示した。
表3より、冷延率が30〜60%であれば、780〜1100MPaの引張強度と良好な曲げ加工性が得られるが、冷延率が30%未満では、引張強度が不足する場合がある。また、冷延率が60%を超えると、良好な曲げ加工性が得られない場合があることがわかる。
表3より、冷延率が30〜60%であれば、780〜1100MPaの引張強度と良好な曲げ加工性が得られるが、冷延率が30%未満では、引張強度が不足する場合がある。また、冷延率が60%を超えると、良好な曲げ加工性が得られない場合があることがわかる。
1 ボス
2 クランプ
3 試験片
4 拘束板
5 実験台
6 溶接ビード
7 試験片全周溶接部の溶接ビード
8 溶接ビードの重なり部分
9 切断面
2 クランプ
3 試験片
4 拘束板
5 実験台
6 溶接ビード
7 試験片全周溶接部の溶接ビード
8 溶接ビードの重なり部分
9 切断面
Claims (6)
- 素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、素材鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4〜1.5であり、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、かつ硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出している、引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)…(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。 - 素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載の、引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
- 前記溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板のめっき組成は、質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
- 素材鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4〜1.5であり、転位密度が1.8×1014/m2〜5.7×1014/m2である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれか単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、かつ硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出し、引張強度が780〜1100MPaであり、前記素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっきが施された建築部材。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)…(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。 - 素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項4に記載の建築部材。
- 前記溶融Zn−Al−Mg系めっきの組成は、質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項4又は5に記載の建築部材。
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JP2017043840A JP2018145504A (ja) | 2017-03-08 | 2017-03-08 | 曲げ加工性に優れた建築部材用高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びそれを用いた建築部材 |
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