以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。また、前後とは、アクチュエータからプレッサーが離れる方向である前方向と、前方向の反対である後方向とにそれぞれ対応する。
[第1実施形態]
概略斜視図である図1を参照して、薬液を注入するための注入装置100について説明する。注入装置100は、例えば、造影剤及び生理食塩水等の薬液が充填されたシリンジ(不図示)が搭載されるシリンジホルダー110と、搭載されたシリンジの後端(ピストンの後端)を押圧して、搭載されたシリンジから薬液を押し出すプレッサー115と、プレッサー115を前進又は後退させるアクチュエータ130とを備えている。そして、注入装置100は、アクチュエータ130を収容する上カバー141及び下カバー142を備えている。
シリンジホルダー110は、略L字状の接続パネル111を介してアクチュエータ130に固定された一対の支持部112によって支持されている。この一対の支持部112はプレッサー115の両側に位置しており、プレッサー115の進行方向に沿って延在している。また、シリンジホルダー110はシリンジを受け入れる凹部113を有しており、搭載されたシリンジはシリンジホルダー110に固定される。なお、注入装置100に搭載されるシリンジには、シリンジ内において摺動可能であるピストンが取り付けられている。
後述するように、アクチュエータ130は、送りネジナットと、送りネジ軸と、モーターと、モーターからの回転を送りネジ軸に伝達する伝達機構とを有している。そして、プレッサー115がピストンの後端に当接した状態でモーターが正転すると、プレッサー115がピストンを前方向に押すことになる。これにより、ピストンが前進すると、シリンジ内の薬液が押し出され、シリンジの先端に接続される延長チューブ、及びミキシングデバイス等を介して患者の体内に注入される。一方、モーターが逆転すると、プレッサー115がピストンを後方向に引き、シリンジ内に薬液が吸引される。なお、プレッサー115に設けられた爪は省略することも可能である。爪が省略された場合、又はシリンジが外された場合は、モーターが逆転するとプレッサー115のみが後退する。
上カバー141には、前進ボタン143、後退ボタン144、及びスタートボタン145等の操作ボタンが設けられている。また、上カバー141のアクチュエータ130側には不図示の防滴構造を有する基板が取り付けられており、操作ボタンは当該基板に接続されている。そして、オペレーターは、操作ボタンを操作して、注入装置100を手動で操作できる。具体的には、オペレーターが前進ボタン143を押している間、プレッサー115が前進する。さらに、オペレーターが後退ボタン144を押している間、プレッサー115が後退する。また、オペレーターがスタートボタン145を押すと、注入装置100は薬液の注入を開始する。
下カバー142は、上カバー141と係合するように構成されている。そして、アクチュエータ130を収納した状態で、下カバー142と上カバー141はネジ止め等の方法によって互いに固定される。これにより、アクチュエータ130が下カバー142と上カバー141との間に収容される。また、注入装置100はキャスタースタンド(不図示)に接続される接続部114を有しており、接続部114は接続パネル111から延在して、下カバー142及び上カバー141から露出する。また、接続部114は、後述するアクチュエータ130のフロントブロックに固定されている。
接続部114が床面に置かれたキャスタースタンドに接続されると、注入装置100はキャスタースタンドに回動自在に支持される。これにより、注入装置100の前側(シリンジが搭載される側)を床面に向ける姿勢と、注入装置100の後側(シリンジが搭載される側の反対側)を床面に向ける姿勢とに注入装置100を回動できる。また、注入装置100は、左右方向に回動できるようにキャスタースタンドに接続されることが好ましい。なお、接続部114は、天吊部材に接続することもできる。そして、接続部114が接続されると、天吊部材を介して天井から注入装置100を天吊することができる。
なお、注入装置100は、不図示の制御装置に有線又は無線接続されている。この制御装置は、タッチパネルを備えると共に、注入装置100のコントローラーとして機能する。また、制御装置には、動作パターン(注入プロトコル)のデータ及び薬液のデータ等が予め記憶されている。そして、患者に薬液を注入する場合、オペレーターは、タッチパネルを操作して、注入速度、注入量、注入時間及び体重等の患者の身体的データと、ヨード量及び薬液の種類等の薬液データとを制御装置に入力する。
制御装置は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、最適な注入条件を算出し、算出された注入条件に基づいて、患者に注入する薬液の量及び注入プロトコルを決定する。その後、注入装置100は、決定された注入プロトコルに従って、薬液を注入する。なお、制御装置は、動作パターン(注入プロトコル)のデータ、及びその他データ等を、外部の記憶媒体から取得することもできる。
続いて、図2から図5を参照して、アクチュエータ130について説明する。なお、図2は、プレッサーパイプ131が完全に後退した状態のアクチュエータ130を示す概略斜視図である。また、図3は、アクチュエータ130のケース170の長手方向に沿った概略断面図である。また、図4は、プレッサーパイプ131が完全に後退した状態のアクチュエータ130の内部を説明する概略斜視図であり、第2サイドブロック173とベースブロック174とを省略して示している。また、図5は、プレッサーパイプ131が完全に前進した状態のアクチュエータ130の内部を説明する概略斜視図であり、第2サイドブロック173を省略して示している。
図2に示すように、アクチュエータ130は、フロントブロック171、第1サイドブロック172、第2サイドブロック173、ベースブロック174及びリアブロック175を有するケース170を備えている。このケース170においては、フロントブロック171と、フロントブロック171に固定され且つ互いにネジ止めされた第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173と、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173に固定されたベースブロック174と、ベースブロック174に固定されたリアブロック175とが、前側からこの順で設けられている。
フロントブロック171は板状の形状を有し、フロントブロック171にはシリンジホルダー110の接続パネル111(図1)が固定される。そして、フロントブロック171は、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173の前端面に固定される。
第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173は、略L字状の外形を有している。そして、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173の下部からは、上カバー141に取り付けられた基板と電気的に接続されるコネクタ178が前方向に延在している。さらに、フロントブロック171の貫通穴179を通って、プレッサー115を支持するプレッサーパイプ131が前方向に露出している。なお、図2においては、プレッサーパイプ131が完全後退位置にある。
ベースブロック174は、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173の後端面にネジ止めによって固定されている。また、ベースブロック174は、内部が空洞であり且つ略直方体の外形を有している。そして、ベースブロック174を固定するネジは、ベースブロック174からフロントブロック171に向かう方向に挿入されている。これにより、フロントブロック171を起点としてアクチュエータ130に加わる負荷を、当該負荷の印加方向に延在するネジで支えることができる。
リアブロック175は、ベースブロック174の後端面に固定されている。また、リアブロック175は、内部が空洞であり且つ略直方体の外形を有している。これらの各ブロックを有するケース170は、アルミニウムのダイキャストによって形成することができる。なお、ケース170は、樹脂又は炭素繊維によって形成することもできる。
ケース170の各ブロックには、各ブロックの接合面に沿って延在するシール溝176が形成されている。例えば、ケース170の概略断面図である図3に示すように、第1サイドブロック172は、第2サイドブロック173との接合面にシール溝176を有している。このシール溝176は、第2サイドブロック173の接合面と対向して延在している。そして、シール溝176に塗布された液状シール剤によって、第1サイドブロック172の接合面と第2サイドブロック173の接合面とが接合される。これにより、アクチュエータ130を収容するケース170に防滴処理を施すことができる。なお、シール溝176は、第2サイドブロック173の接合面に形成されていてもよい。
続いて、図4及び図5に示すアクチュエータ130の内部構成を参照して、より詳細にアクチュエータ130を説明する。なお、図4においては、プレッサーパイプ131が完全後退位置にある。また、図5においては、プレッサーパイプ131が完全前進位置にある。
アクチュエータ130は、モーター132と、モーター132からの回転を伝達する伝達機構180と、伝達機構180に接続された送りネジ軸としてのボールネジ軸133(図5)と、ボールネジ軸133に取り付けられた送りネジナットとしてのボールネジナット134とを備えている。そして、ケース170(図2)は、ボールネジナット134と、ボールネジ軸133と、モーター132と、伝達機構180とを収容しており、これによりアクチュエータ130がモジュール化されている。
図4に示すように、アクチュエータ130は、プレッサーパイプ131を有している。そして、プレッサーパイプ131は、ボールネジナット134に接続されている。このボールネジナット134は、ボールネジ軸133に取り付けられている。さらに、ボールネジ軸133は、伝達機構180の従動ギア182に接続されている。そして、伝達機構180は、モーター132のシャフトに接続されている。
ボールネジナット134の前端には、フランジ部材190が外嵌されている。そして、フランジ部材190は、プレッサーパイプ131の後端に取り付けられた締結ナット138を締め付けることによって、ボールネジナット134に対して押し付けられ且つ固定されている。このフランジ部材190は、ボールネジ軸133の回り止めとして機能すると共に、前進又は後退時にボールネジナット134の移動のブレを防止する。
これにより、モーター132のシャフトの回転は、伝達機構180を介してボールネジ軸133に伝達される。すると、ボールネジ軸133は、伝達された回転に従って回転する。その結果、ボールネジナット134が、ボールネジ軸133の回転に伴い前方向又は後方向に摺動する。このボールネジナット134の摺動に伴い、プレッサーパイプ131と、当該プレッサーパイプ131に接続されたプレッサー115(図1)とが前進又は後進する。
なお、アクチュエータ130が注入装置100に搭載された状態では、モーター132は、ボールネジ軸133の下方に位置している。このモーター132は、コアレスモーター(DCコアレスモーター)である。なお、コアレスモーターに代えて、ステッピングモーター及び超音波モーター等の他のモーターを用いることもできる。ただし、コアレスモーターは慣性モーメントが小さいため、他のモーターよりも応答性及び加速性に優れている。
また、アクチュエータ130は、ボールネジナット134の移動の限界位置を検出するリミット検出部150を備えている。この限界位置は、設計上、プレッサー115が前進又は後退できる限界(設計限界)として許容される位置に対応して設定されている。リミット検出部150は、ボールネジ軸133に沿って延在しており、前側リミット検出部151と後側リミット検出部152とを有している。また、前側リミット検出部151と後側リミット検出部152とは、ボールネジ軸133に沿って延在する基板上に設けられている。これにより、ボールネジナット134と共に移動するプレッサー115及びプレッサーパイプ131のリミット位置を検出することができる。なお、図4においては、リミット検出部150が、ボールネジ軸133に対してモーター132側に配置されている。しかし、リミット検出部150がボールネジ軸133に沿って配置されていれば、他の位置に配置することもできる。
続いて、伝達機構180について図6を参照して説明する。なお、図6は、側方から見た状態の伝達機構180を示している。
伝達機構180は、モーター132のシャフトに接続された駆動ギア181と、ボールネジ軸133に接続された従動ギア182と、駆動ギア181及び従動ギア182の間に位置するアイドルギア183とを有する。すなわち、図6において、アイドルギア183は駆動ギア181の上方に位置しており、従動ギア182はアイドルギア183の上方に位置している。そして、アイドルギア183は、駆動ギア181及び従動ギア182と噛み合っている。また、従動ギア182の後方には、スリットディスク135とフォトインタラプタ136とが配置されている。なお、スリットディスク135とフォトインタラプタ136は、リアブロック175(図5)に収容されている。
駆動ギア181及び従動ギア182は金属製であり、例えば、ステンレス等の鋼材によって形成できる。また、アイドルギア183は樹脂製であり、例えば、ポリアセタール、及びガラス繊維強化樹脂等によって形成できる。なお、アイドルギア183は金属製であってもよいが、樹脂製のアイドルギア183によれば、異音を防止することができる。さらに、伝達機構180とボールネジナット134との間には、後側から順にベアリング161、注入圧力の測定に用いられる中空のロードセル160、及びアンギュラ玉軸受162が配置されている。
このロードセル160について、概略断面図である図7を参照してより詳細に説明する。ロードセル160は、略ボビン状の中空部材163と、中空部材163の胴部の外周面に貼り付けられた歪ゲージ164と、中空部材163を収容する略円筒状の外筒165とを有している。なお、図7では、一例として胴部の中央に2つの歪ゲージ164が貼り付けられているが、歪ゲージ164は3つ以上であってもよく又は1つであってもよい。
ロードセル160の前端面は、アンギュラ玉軸受162と当接している。そして、薬液の注入時には、矢印Aで示す方向に圧力が加わる。すると、中空部材163の前端及び後端は、矢印Bで示す方向に変形する。その結果、中空部材163の胴部及び歪ゲージ164には、矢印Cで示す方向に引き伸ばす力が加わる。このようにして、歪ゲージ164に注入圧力に応じた歪が加わるので、この歪を測定することによって注入圧力を測定することができる。
次に、図8を参照して、ボールネジナット134に固定されるフランジ部材190について説明する。なお、図8は、アクチュエータ130内のフランジ部材190を前側から見た様子を示している。
フランジ部材190には、中央にボールネジナット134の前端が挿入される穴部191が形成されている。そして、フランジ部材190は、締結ナット138(図4)で締め付けられることによって、ボールネジナット134に対して固定されている。また、フランジ部材190は、穴部191の両側、すなわち第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173に面する側に、2つの当接部192を有している。
一方、ケース170は、当接部192と当接してフランジ部材190を案内するガイド195を有している。このガイド195は、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173のそれぞれに形成されている。そして、当接部192のそれぞれは、ガイド195と当接する第1当接面121及び第2当接面122と、第1当接面121及び第2当接面122の間に設けられた湾曲面126とを有している。
第2当接面122は、当接部192のモーター132側に位置している。そして、第1当接面121は、湾曲面126を挟んで第2当接面122の反対側に位置している。換言すると、第1当接面121及び第2当接面122は、湾曲面126の両端からそれぞれ延在しており、ボールネジナット134の長手方向に沿って延在する外面である。また、湾曲面126は、当該長手方向に直交する方向に延在する外面である。このようなフランジ部材190は、低摩擦樹脂、例えば、イグリデュール(イグス株式会社製)によって形成することができる。
ガイド195は、断面略U字状の溝であると共に、ボールネジ軸133に沿って延在している。そして、第1当接面121及び第2当接面122は、ガイド195の内壁面と当接する。また、ガイド195内の中央には、ボールネジ軸133に沿って延在する略直方体状の凸部196が形成されている。そして、湾曲面126の頂点は、凸部196の頂面に当接する。このように、湾曲面126と凸部196とが点接触するため、接触面積を抑えてフランジ部材190に加わる抵抗力を抑制することができる。なお、フランジ部材190又はガイド195には、摺動性樹脂フィルムを貼り付けてもよく、潤滑剤を塗布してもよい。
このように、第1当接面121及び第2当接面122がガイド195の内壁面と当接することにより、フランジ部材190及びボールネジナット134の連れ回りが防止される。また、湾曲面126が凸部196と当接することにより、フランジ部材190及びボールネジナット134の左右方向、すなわち、ボールネジ軸133の延在方向に直交する方向の移動が防止される。その結果、ボールネジナット134の前進又は後退のブレを防止することができる。
より詳細に説明すると、当接面がない場合、ボールネジナット134は、ボールネジ軸133の延在方向、すなわちボールネジナット134の移動方向において、螺旋状の軌跡を描くように僅かにぶれながら移動する。このとき、ボールネジナット134がぶれる方向は、左右方向と、左右方向に直交する高さ方向である。そして、高さ方向の移動のブレは第1当接面121及び第2当接面122によって防止され、左右方向の移動のブレは湾曲面126によって防止される。
なお、フランジ部材190の当接部192は片側に1つのみであってもよく、3つ以上であってもよい。また、当接部192とガイド195との当接箇所は、3点より多くてもよい。ただし、当接箇所を最小にすることによって、フランジ部材190に加わる抵抗力を抑制することができる。
また、フランジ部材190は、リミット検出部150を遮蔽する遮蔽部197を有している。この遮蔽部197は、フランジ部材190の左右方向(幅方向)における略中央に位置している。また、遮蔽部197は、リミット検出部150に向かって突出しており、図8においては、後側リミット検出部152に向かって突出している。そして、リミット検出部150は、遮蔽部197を検出する。
すなわち、遮蔽部197は、ボールネジナット134と共に前進又は後退する。そして、ボールネジナット134が設計限界まで後退すると、遮蔽部197は、リミット検出部150の後側リミット検出部152を遮蔽する。さらに、ボールネジナット134が設計限界まで前進すると、遮蔽部197は、リミット検出部150の前側リミット検出部151(図4)を遮蔽する。なお、遮蔽部197はフランジ部材190と一体に形成されているが、フランジ部材190と別体に形成された遮蔽部197を、フランジ部材190に固定してもよい。
より具体的に、図9を参照してリミット検出部150について説明する。なお、図9は、リミット検出部150の概略分解図である。
前側リミット検出部151と後側リミット検出部152とは、基板153を介して断面L字状の取付部材154にネジ止めされている。そして、取付部材154は、第1サイドブロック172の内壁にネジ止めされている。この取付部材154には、ボールネジ軸133に沿って延在する長穴(不図示)が設けられている。そのため、長穴に沿って取付部材154を移動させることによって、第1サイドブロック172に対する取付部材154の固定位置を変えてリミット検出部150の位置を微調整できる。なお、取付部材154は、第2サイドブロック173の内壁に固定してもよい。
また、前側リミット検出部151及び後側リミット検出部152は、いずれも光学式のスリットセンサーである。そして、前側リミット検出部151は、遮蔽部197を検出することによって、プレッサー115の前進の設計限界を検出する。一方、後側リミット検出部152は、遮蔽部197を検出することによって、プレッサー115の後退の設計限界を検出する。
続いて、注入装置100の製造方法について説明する。まず、アクチュエータ130を製造するために、第1サイドブロック172、第2サイドブロック173、及びベースブロック174に防滴処理を行う。具体的には、各ブロックのシール溝176に液状シール材を塗布する。これにより、後の工程でケース170の各ブロック同士をネジ止めすると、それぞれが防滴状態で固定される。その後、ボールネジナット134にフランジ部材190を取り付ける。
次に、ベースブロック174に各部品を取り付ける。具体的には、プレッサーパイプ131、ボールネジナット134、アンギュラ玉軸受162、ロードセル160、ベアリング161、ボールネジ軸133、及び従動ギア182をベースブロック174に取り付ける。ここで、ロードセル160を取り付けるときには、ロードセル160にプレロードが加わるように取り付ける。これにより、中空部材163がわずかに変形した状態でロードセル160が取り付けられる。そのため、ロードセル160に負荷が加わった場合に、即座に歪を検出できる。さらに、ロードセル160とアンギュラ玉軸受162との間に隙間が生じることを防止できる。
また、ボールネジ軸133を取り付けるときには、ボールネジ軸133の位置及び姿勢の調整をさらに行ってもよい。なお、ボールネジナット134にフランジ部材190を固定するときには、プレッサーパイプ131の後端の締結ナット138を締め付ける。
さらに、ベースブロック174に、アイドラ軸とアイドルギア183とを取り付ける。そして、ベースブロック174にモーター132をネジ止めし、駆動ギア181をモーター132のシャフトに嵌め込む。その後、ベースブロック174にスリットディスク135とフォトインタラプタ136を取り付けて、ベースブロック174に予め取り付けられたコネクタ178に接続する。なお、ベースブロック174への各部品の取り付けは、どのような順序で行ってもよい。また、ロードセル160が不要である場合には、ロードセル160に代えて、ロードセル160と同じサイズのスペーサを取り付ける。
続いて、第1サイドブロック172に、その後端面側からベースブロック174をネジ止めする。このとき、フランジ部材190と、第1サイドブロック172のガイド195との位置合わせを行う。そして、取付部材154を介して、第1サイドブロック172にリミット検出部150を取り付ける。このとき、第1サイドブロック172に対して取付部材154をネジ止めする位置に応じて、ボールネジ軸133の延在方向におけるリミット検出部150の取り付け位置を調整する。その後、信号系のコネクタをセンサ系のコネクタと接続する。
次に、それぞれの接合面が当接するように、第2サイドブロック173を第1サイドブロック172にネジ止めする。さらに、第1サイドブロック172及び第2サイドブロック173に、両者の前端面側からフロントブロック171をネジ止めする。ここで、フロントブロック171の貫通穴179の位置及びサイズは、プレッサーパイプ131の直進性を維持するように予め調整されている。そのため、フロントブロック171をネジ止めすることによって、プレッサーパイプ131の位置及び姿勢が自動的に調整される。
さらに、第2サイドブロック173に、その後端面側からベースブロック174をネジ止めする。そして、ベースブロック174に、その後端面側からリアブロック175をネジ止めする。これにより、スリットディスク135及びフォトインタラプタ136等を収納するように、ベースブロック174の開口部がリアブロック175で覆われる。このようにして、アクチュエータ130を製造することができる。そして、製造されたアクチュエータ130は、シリンジホルダー110の接続パネル111にネジ止めされる。その後、上カバー141をシリンジホルダー110に被せて、アクチュエータ130を収容するように、下カバー142を上カバー141にネジ止めする。このようにして、注入装置100を製造することができる。
以上説明した第1実施形態に係るアクチュエータ130の製造方法によれば、従来と異なりプーリーとベルトがないため、ベルトのテンション調整工程が不要になる。また、従来よりも部品点数が少ないため、部品の取り付け工数を省略できる。また、前側リミット検出部151及び後側リミット検出部152が一体化されているため、それぞれの位置調整が不要になる。これにより、アクチュエータ130の製造時間を低減することができる。さらに、第1実施形態に係る注入装置100の製造方法によれば、予めアクチュエータ130を準備しておくことによって、注入装置100自体を組み立てるときの各部品の位置及び姿勢の調整、並びに防滴処理を省略又は簡略ができる。これにより、注入装置100の製造工数及び製造時間を大幅に低減できる。
また、第1実施形態に係る注入装置100によれば、アクチュエータ130の構成部品に不具合が生じた場合であっても、注入装置100の設置場所で修理を完了することができる。また、アクチュエータ130を収容するケース170に防滴処理を施すことによって、注入装置100のカバーを開いても防滴状態が解除されない。そのため、防滴状態を維持したまま、アクチュエータ130の修理又は交換を行うことができると共に、カバーが無くとも防滴状態を維持できる。さらに、アクチュエータ130のケース170によって、モーター132及び伝達機構180から生じる音が外部に漏れだすことを抑制できる。また、ケース170によって、モーター132及び伝達機構180に塗布される潤滑グリスが注入装置100のカバー内に飛散することを防止できる。
また、第1実施形態に係るフランジ部材190によれば、従来と異なり、ガイドシャフトを設ける必要がない。そのため、アクチュエータ130及び注入装置100を小型化することができる。
また、第1実施形態に係るロードセル160によれば、ロードセル160がアクチュエータ130のベースブロック174に収容されている。これにより、コネクタ178に対してロードセル160の位置が変わることがなく、ロードセル160とコネクタ178との間に可動する配線を設ける必要がない。さらに、防滴処理されたケース170又はカバーの外側に配線を延在させる必要がない。そのため、配線とケース170又はカバーとの隙間から漏液が生じることを防止できる。
なお、第1実施形態においては、注入装置100が1つのシリンジホルダー110を有している。しかし、注入装置100は、2つ以上のシリンジホルダー110を有していてもよい。この場合、シリンジホルダー110に対応して、注入装置100は、それぞれ2つ以上のアクチュエータ130及びプレッサー115を備える。
また、注入装置100に搭載されるシリンジは、薬液が充填されているシリンジ及び薬液が充填されていない空シリンジのいずれであってもよい。そして、薬液が充填されているシリンジには、予め薬液が充填されているプレフィルドシリンジ、オペレーターが吸引器若しくは充填器で空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジ、及びオペレーターが手動で空のシリンジに薬液を充填して得られたシリンジ等が含まれる。また、薬液が充填されていない空のシリンジを注入装置100に搭載した場合、オペレーターは、注入装置100、吸引器又は充填器により薬液をシリンジに充填することができる。さらに、シリンジには、RFID(Radio Frequency Identifier)又はバーコードといったデーターキャリアを設けることができる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報等が記録されている。そして、注入装置100は、データーキャリアから記録された情報を読み取り、薬液の注入圧力等を制御できる。
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
例えば、注入装置100は、撮像装置に有線又は無線接続することができる。そして、薬液の注入時及び画像の撮影時には、撮像装置と注入装置100との間で各種データが送受信される。この場合、例えば、注入装置100において撮像条件が設定又は表示されてもよく、撮像装置において注入条件が設定又は表示されてもよい。このような撮像装置としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用撮像装置がある。
また、注入装置100は、注入結果(注入履歴)に関する情報を、ネットワーク経由でRIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)、及びHIS(Hospital Information System)等の外部記憶装置に送信し記憶させることもできる。
さらに、注入装置100には、フットスイッチ及びハンドスイッチ等の遠隔操作装置が有線又は無線接続されていてもよい。オペレーターは、操作ボタンに代えて遠隔操作装置を操作して注入装置100を操作することができる。
なお、ボールネジ軸133及びボールネジナット134に代えて、台形ネジ軸及び台形ネジナットを用いることもできる。ただし、ボールを使用しないため、摩擦抵抗によって回転運動を直進運動に変換する効率が低下してしまう。さらに、摩擦抵抗によって、プレッサー115の直進速度が低下すると共に、プレッサー115に加わるトルクの検出精度が低下してしまう。そのため、ボールネジ軸133及びボールネジナット134を用いることがより望ましい。
また、ガイド195は、フランジ部材190の当接部192と当接すればよい。そのため、ガイド195は断面略E字状の形状の溝であってもよく、凸部196は半円柱の形状を有していてもよい。なお、フランジ部材190とボールネジナット134とは、接着によって固定してもよい。
また、ベルトのテンション調整を考慮しない場合は、駆動ギア181、従動ギア182及びアイドルギア183を有するギアトレインに代えて、駆動プーリー、従動プーリー及びタイミングベルトを有する伝達機構を用いることもできる。
さらに、第1実施形態においては、上下方向にボールネジ軸133とモーター132とが並ぶように、アクチュエータ130が縦置きで上カバー141及び下カバー142の間に収容されている。しかし、アクチュエータ130は、水平方向にボールネジ軸133とモーター132とが並ぶように、横置きで上カバー141及び下カバー142の間に収容されていてもよい。
100:注入装置、110:シリンジホルダー、115:プレッサー、121:第1当接面、122:第2当接面、126:湾曲面、130:アクチュエータ、132:モーター、133:送りネジ軸、134:送りネジナット、150:リミット検出部、151:前側リミット検出部、152:後側リミット検出部、170:ケース、171:フロントブロック、172:第1サイドブロック、173:第2サイドブロック、174:ベースブロック、175:リアブロック、180:伝達機構、190:フランジ部材、192:当接部、195:ガイド、193:当接面、197:遮蔽部