JP2018121557A - 活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質 - Google Patents

活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質 Download PDF

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真二 増田
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【課題】 生きた細胞における活性イオウ分子種の量や分布を測定できる手段を提供する。【解決手段】 活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、及びこのタンパク質のN末端側とC末端側に結合する二つの蛍光タンパク質を含む融合タンパク質であって、前記二つの蛍光タンパク質は蛍光共鳴エネルギー移動が生じ得る蛍光タンパク質である、融合タンパク質。【選択図】 図1

Description

本発明は、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、前記タンパク質を含む融合タンパク質、前記融合タンパク質をコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記融合タンパク質を発現する細胞、前記融合タンパク質を発現する非ヒト動物、並びに前記細胞又は前記非ヒト動物を用いた活性イオウ分子種の検出又は定量方法に関する。
硫化水素は、呼吸阻害を強力に引き起こす毒物である一方、様々な細胞や生体機能の恒常性の維持に重要な働きをしていることが以前から報告されていた。例えば、神経伝達調節(Abe, K. et al., (1996) J. Neurosci., 16, 1066-1071)、心筋保護(Elrod, J.W. et al., (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 104, 15560-15565)、抗アポトーシス(Sen, N. et al., (2012) Mol. Cell, 45, 13-24)、インスリン分泌調節(Yang, W. et al., (2005) J. Physiol., 569, 519-531)、平滑筋弛緩(Hosoki, R. et al., (1997) Biochem. Biophys. Res. Commun., 237, 527-531)、血管新生(Cai, W.J. et al., (2007) Cardiovasc. Res., 76, 29-40)、抗炎症(Zanardo, R.C. et al., (2006) FASEB J., 20, 2118-2120)に硫化水素が関与するという報告がある。
しかし、最近になって、硫化水素は生体内におけるシグナル分子そのものではなく、活性イオウ分子種の代謝産物や分解産物にすぎないことが分かってきた(Ida, T. et al., (2014) Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 111, 7606-7611)。このため、真のシグナル分子である活性イオウ分子種の生体内における機能を明らかにするため、活性イオウ分子種を高感度で検出できる手段が強く望まれている。
活性イオウ分子種を検出する試薬としては、Ming Xianらにより開発されたSSP4と呼ばれる蛍光プローブが知られている(非特許文献1)。この蛍光プローブは、フルオレセインにチオサリチル酸が結合した構造をとる。チオサリチル酸が結合した状態では、フルオレセインはほとんど蛍光を発しないが、活性イオウ分子種が存在すると、チオサリチル酸がはずれ、フルオレセインが遊離し、蛍光を発するようになる。
Chen, W. et al., (2015) Angew. Chem., 54, 13961-13965
上記の蛍光プローブを細胞内に導入するためには界面活性剤で処理する必要がある。このため、この蛍光プローブは、ライブセルイメージングには適用できない。また、フルオロセインの遊離は、活性イオウ分子種以外の物質によっても起こる可能性があり、検出感度においても問題があると考えられる。
本発明は、このような従来の技術の問題を解決し、生きた細胞における活性イオウ分子種の量や分布を測定できる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質の両端にCFPとYFPを結合させた融合タンパク質を活性イオウ分子種と共存させると、FRETによりYFPの蛍光強度が増大することを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(10)を提供するものである。
(1)以下の(a)、(b)、又は(c)で表されるアミノ酸配列からなり、かつ活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
(2)活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、及びこのタンパク質のN末端側とC末端側に結合する二つの蛍光タンパク質を含む融合タンパク質であって、前記二つの蛍光タンパク質は蛍光共鳴エネルギー移動が生じ得る蛍光タンパク質である、融合タンパク質。
(3)活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質が、以下の(a) (b)、又は(c)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、(2)に記載の融合タンパク質、
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
(4)二つの蛍光タンパク質が、CFP又はその変異体とYFP又はその変異体である、(2)又は(3)に記載の融合タンパク質。
(5)融合タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号5に記載のアミノ酸配列である、(2)に記載の融合タンパク質。
(6)(2)乃至(5)のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
(7)(6)に記載の核酸を含むベクター。
(8)(2)乃至(5)のいずれかに記載の融合タンパク質を発現する細胞。
(9)(2)乃至(5)のいずれかに記載の融合タンパク質を発現する非ヒト動物。
(10)(8)に記載の細胞、又は(9)に記載の非ヒト動物から採取された細胞若しくは組織に励起光を照射し、それによって生じる蛍光の検出又は蛍光の強度の測定を行う工程を含む、活性イオウ分子種の検出又は定量方法。
本発明の活性イオウ分子種の検出及び定量方法は、高感度で活性イオウ分子種を検出及び定量できるので、生体内における活性イオウ分子種の量や分布を正確に測定することができる。また、この方法は、生きた細胞を検出及び定量対象とすることができるという利点もある。
SqrRによる活性イオウ分子種に応答した遺伝子発現制御を模式的に表した図。 サルファイド応答性黄色蛍光タンパク質の蛍光スペクトルを示す図。 蛍光共鳴エネルギー移動型サルファイド応答性光タンパク質の蛍光スペクトルを示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明のタンパク質
本発明のタンパク質は、(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列、(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、又は(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質である。
本発明のタンパク質としては、ロドバクター・カプスラータス(Rhodobacter capsulatus)由来のSqrR(sulfide: quinone reductase repressor)を挙げることができる。SqrRは、スルフィド:キノンレダクターゼ遺伝子に対するリプレッサーとして働いている(図1)。即ち、活性イオウ分子種の存在しない条件では、SqrRはスルフィド:キノンレダクターゼ遺伝子のプロモーターの近くに結合し、この遺伝子の転写を抑制する。SqrRは二つのシステイン残基(Cys41及びCys107)を有しており、活性イオウ分子種の存在する条件では、この二つのシステイン残基のチオール基に活性イオウ分子種が結合する。このとき、二つのシステイン残基間に4個のイオウ原子を介した分子内架橋が形成される。この分子内架橋が形成されると、SqrRのDNAへの結合性が低下し、それにより、スルフィド:キノンレダクターゼ遺伝子の転写が開始される。
SqrRのアミノ酸配列は、配列番号1に示す通りである。このSqrRの全アミノ酸配列を含み、N末端側に14アミノ酸残基長いタンパク質はデータベース上に登録されているが(accession number ADE85198)、配列番号1に記載のアミノ酸配列のみからなるタンパク質は知られていない。従って、SqrRは新規なタンパク質である。なお、前記したタンパク質の最初のメチオニンをコードするコドンは開始コドンではなく、15番目のメチオニンをコードするコドンが開始コドンであることを本発明者は実験的に確認している。
SqrR以外の本発明のタンパク質としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。同一性は、90%以上であればよいが、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。SqrRは、二つのシステイン残基(Cys41及びCys107)を持ち、また、ヘリックスターンヘリックスモチーフを持つが、これらは、SqrRの機能に重要な役割を果たしていると考えられるので、このタンパク質においても維持されていることが好ましい。
また、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。ここで、「1若しくは数個」とは、通常は、1〜10個であり、好ましくは、1〜5個であり、より好ましくは1〜3個であり、更に好ましくは1個である。また、このタンパク質においても、二つのシステイン残基とヘリックスターンヘリックスモチーフは維持されていることが好ましい。なお、「欠失、置換若しくは付加」には、人為的な変異のほか、個体差、種や属の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutantやvariant)も含まれる。
本発明のタンパク質は、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御する機能を有する。ここで、「活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御する」とは、SqrRと同様に、活性イオウ分子種の存在しない条件では、遺伝子の転写を抑制し、活性イオウ分子種の存在する条件では、遺伝子の転写抑制を解除することをいう。
配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質や配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質が、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御できるかどうかは、これらのタンパク質がSqrRの代わりになるかどうかを調べることにより判定できる。例えば、SqrRの発現を抑制したロドバクター・カプスラータスを作製し、これに上記タンパク質を発現させ、野生型のロドバクター・カプスラータスと同様に、活性イオウ分子種の存在下でスルフィド:キノンレダクターゼ遺伝子が発現し、活性イオウ分子種の非存在下でスルフィド:キノンレダクターゼ遺伝子が発現しなければ、上記タンパク質は、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御できるということになる。
(2)融合タンパク質
本発明の融合タンパク質は、活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、及びこのタンパク質のN末端側とC末端側に結合する二つの蛍光タンパク質を含むものである。
活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質としては、上記の本発明のタンパク質を使用することができる。また、SqrRのホモログは、SqrRと同様に活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御する機能を有する可能性が高いので、このようなホモログを使用してもよい。SqrRのホモログは、プロテオバクテリアに属する細菌に存在し、その具体例としては、Rhodobacter sphaeroides由来のタンパク質(accession number WP_023003595)、Roseobacter litoralis由来のタンパク質(accession number AEI95148)、Rhodovulum sulfidophilum由来のタンパク質(accession number WP_042464829)、Rhodospirillum rubrum由来のタンパク質(accession number WP_011389407)、Erythrobacter sp. 由来のタンパク質(accession number WP_007163884)、Agrobacterium tumefaciens由来のタンパク質(accession number WP_035243515)、Thiobacillus denitrificans由来のタンパク質(accession number WP_026177434)、Comamonas aquatica由来のタンパク質(accession number WP_045267543)、Allochromatium vinosum由来のタンパク質(accession number ADC63927)、Escherichia coli由来のタンパク質(accession number WP_001329508)、Xylella fastidiosa由来のタンパク質(accession number WP_010893290)などを挙げることができる。
二つの蛍光タンパク質は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が生じ得る蛍光タンパク質の組合せであれば特に限定されない。好ましい組合せとしては、CFP(ドナー蛍光タンパク質)とYFP(アクセプター蛍光タンパク質)の組合せを挙げることができる。CFP及びYFPは市販されており、本発明においては市販品を使用することができる。また、CFPやYFPの代わりに、これらの変異体を使用することができる。CFPの変異体としては、ECFP、CyPetなどを例示することができ、YFPの変異体としては、EYFP、Ypet、mVenus、cpVenusなどを例示することができる。
活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質と蛍光タンパク質は、直接結合していてもよく、リンカーを介して結合していてもよい。また、二つの蛍光タンパク質は、ドナー蛍光タンパク質がN末端側、アクセプター蛍光タンパク質がC末端側に配置されていてもよく、逆に、ドナー蛍光タンパク質がC末端側、アクセプター蛍光タンパク質がN末端側に配置されていてもよい。
本発明の融合タンパク質は、上記の活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質と蛍光タンパク質を含むが、他のペプチドやタンパク質を含んでいてもよい。
本発明の融合タンパク質の好ましいアミノ酸配列としては、配列番号5に記載のアミノ酸配列を例示できる。
(3)核酸
本発明の核酸は、上記の本発明の融合タンパク質をコードするものである。ここで、「核酸」とは、主にDNAをいうが、RNAやこれらの核酸の修飾体をも含む。本発明の核酸の塩基配列の具体例としては、例えば、配列番号4に記載の塩基配列を挙げることができる。
本発明の核酸は、公知の方法に従って作製することができる。例えば、本発明のタンパク質をコードする核酸の3'末端及び5'末端のそれぞれに蛍光タンパク質をコードする核酸を結合させることにより、作製することができる。
(4)ベクター
本発明のベクターは、上記の本発明の核酸を含むものである。ベクターには、本発明の核酸が転写されるように、適当なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの調節配列が含まれていることが好ましい。
本発明のベクターは、公知の方法に従って作製することができる。例えば、市販のベクターに、本発明の核酸を挿入することにより、作製することができる。
(5)細胞
本発明の細胞は、上記の本発明の融合タンパク質を発現するものである。細胞はどのようなものであってもよいが、培養可能な細胞であることが好ましい。また、前述したように、活性イオウ分子種やこれを生じさせる硫化水素が、特定の細胞や組織において生理作用を示すことが報告されている。このような細胞や組織における活性イオウ分子種の動態を調べることは新たな治療薬や予防薬の開発につながると考えられる。従って、本発明の細胞は、活性イオウ分子種や硫化水素が生理作用を発揮している細胞であることが好ましい。このような細胞としては、心筋細胞、膵β細胞、神経細胞、平滑筋細胞などを挙げることができる。
本発明の細胞は、公知の方法に従って作製することができる。例えば、本発明の核酸と適当な調節配列を含むベクターを、対象とする細胞に導入することにより、作製することができる。
(6)非ヒト動物
本発明の非ヒト動物は、上記の本発明の融合タンパク質を発現するものである。動物の種類はヒト以外のものであれば特に限定されず、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、サル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエなどを挙げることができる。
本発明の非ヒト動物は、公知の方法に従って作製することができる。例えば、本発明の核酸と適当な調節配列を含むベクターを受精卵などに導入することにより作製することができる。このとき、導入するベクターは、活性イオウ分子種や硫化水素が生理作用を発揮する細胞や組織(例えば、心筋細胞、膵β細胞、神経細胞、平滑筋細胞など)で特異的に本発明の核酸を発現させ得るベクターを使用することが好ましい。
(7)活性イオウ分子種の検出又は定量方法
本発明の活性イオウ分子種の検出又は定量方法は、上記の本発明の細胞、又は上記の本発明の非ヒト動物から採取された細胞若しくは組織に励起光を照射し、それによって生じる蛍光の検出又は蛍光の強度の測定を行う工程を含むものである。
検出又は定量対象とする活性イオウ分子種は特に限定されず、過剰にイオウが付加し、酸化的反応性が高まった状態のチオール基を持つ分子を検出又は定量対象とすることができる。活性イオウ分子種の具体例としては、システインパースルフィド(CysSSH)やグルタチオンパースルフィド(GSSH)などを挙げることができる。励起光の照射、蛍光の検出、蛍光の強度の測定は、公知の方法に従って行うことができる。また、照射する励起光の波長、及び検出又は定量する蛍光の波長は使用する蛍光タンパク質の種類に応じて適宜選択することができる。本発明の活性イオウ分子種の検出又は定量方法を実施することにより、対象とする細胞や組織のどの位置にどのくらいの活性イオウ分子種が存在するかを推測することが可能になる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実験方法〕
サルファイド応答性黄色蛍光タンパク質(Sul-YFP)の作製
1)出発材料のYFPにmVenus遺伝子(参考文献1)を用いた。mVenus遺伝子を鋳型に、mVenus遺伝子全長を、プライマーセット(5’-TCGAAGGTAGGCATATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC-3’(配列番号6), 5’-CGACAAGCTTGAATTCTTACTTGTACAGCTCGTCCATGCCCAGGGTGATCCCGGCGGCGGTCACGAACTC-3’ (配列番号7))で増幅し、増幅した断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System (Promega) を用いて精製した。
2)pColdIベクター(TaKaRa)を2つの制限酵素(NdeIとEcoRI)で処理し、1)の断片をそこへ挿入した。この反応には、In Fusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いた。
3)2)で作製したプラスミドを鋳型に、mVenusのN末端45アミノ酸を境目にして、プライマーセット(5’-GAGCTGAACAGCCACAACGTCTATATC-3’ (配列番号8), 5’-GGTGCCGCCGTTGTACTCCAGCTTGTGCCC-3’ (配列番号9))を用いて、ベクターを含むプラスミド全体をPCRで増幅した。増幅した断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System (Promega) を用いて精製した。
4)クローン化したRhodobacter capsulatus SB1003株のsqrR遺伝子を鋳型に、sqrR遺伝子全長を、プライマー(5’-TACAACGGCGGCACCATGGGGTCCGACACGGAC-3’ (配列番号10), 5’-GTGGCTGTTCAGCTCGTCGCCCGAGCAGAACTGCTC-3’ (配列番号11))を用いて、PCRで増幅した。増幅した断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System (Promega) を用いて精製した。
5)上記4)の断片を、上記3)の断片へクローニングした。この反応には、In Fusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いた。得られたプラスミドの塩基配列が正しいことをシーケンシングで確認した。得られたプラスミドをpColdI:Sul-YFPと名付けた。
6)pColdI:Sul-YFPJを用いて、大腸菌株BL21(DE3)を形質転換した。
7)6)で得られた株を、アンピシリン100mg/L(最終濃度)を含む1.5LのLB培地で、OD600=0.8まで37度で培養した。その後、18度で一晩培養を続け、Hisタグ付きSul-YFPタンパク質の発現を誘導した。
8)翌日細胞を遠心で回収し、Sul-YFPを、His-Bind resin (Novagen)を用いて精製した。
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)型サルファイド応答性光タンパク質(FRET-sul)の作製
1)出発材料にECFP(Heim and Tsien 1996)とcpVenus(参考文献2)を用いた。ECFP遺伝子全長をプライマーセット(5’-TCGAAGGTAGGCATATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC-3’ (配列番号12), 5’-CGTGTCGGACCCCATGGCGGCGGTCACGAACTC-3’ 配列番号13))で増幅した。同様にcpVenus遺伝子全長を、プライマーセット(5’-TTCTGCTCGGGCGACGACGGCGGCGTGCAGCTC-3’ (配列番号14), 5’-CGACAAGCTTGAATTCTTACTCGATGTTGTGGCGGATC-3’ (配列番号15))で増幅した。増幅した断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System (Promega) を用いて精製した。
2)クローン化したRhodobacter capsulates SB1003株のsqrR遺伝子全長を、プライマーセット(5’-ATGGGGTCCGACACGGAC-3’ (配列番号16), 5’-GTCGCCCGAGCAGAACTG-3’ (配列番号17))を用いて、PCRで増幅した。増幅した断片をWizard SV Gel and PCR Clean-up System (Promega) を用いて精製した。
3)pColdIベクター(TaKaRa)を2つの制限酵素(NdeIとEcoRI)で処理し、1)の2つの断片と、2)の断片を混ぜ合わせ、4つのDNA断片を同時にIn Fusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いつなぎ合わせた。
4)得られたプラスミドの塩基配列が正しいことをシーケンシングで確認した。得られたプラスミドをpColdI:FRET-Sulと名付けた。
5)pColdI: FRET-Sulを用いて、大腸菌株BL21(DE3)を形質転換した。
6)5)で得られた株を、アンピシリン100mg/L(最終濃度)を含む1.5LのLB培地で、OD600=0.8まで37度で培養した。その後、18度で一晩培養を続け、Hisタグ付きSul-YFPタンパク質の発現を誘導した。
7)翌日細胞を遠心で回収し、FRET-Sulを、His-Bind resin (Novagen)を用いてマニュアルに従って精製した。
GSSHの調整
1)10 mM酸化型グルタチオン(GSSG)をDWを溶媒に作製した。
2)嫌気チャンバー内で、硫化ナトリウム(Na2S)を脱気した300 mMリン酸バッファー(pH 7.4)に溶かして0.5 Mの溶液を作製した。
3)嫌気チャンバー内で、100 μL 10 mM GSSG溶液と10 μL 0.5 M Na2S溶液を混ぜ、室温で30分インキュベートすることで、〜10 mM GSSH溶液を得た。
タンパク質の還元処理およびGSSH処理
1)終濃度5 mM となるようにジチオスレイトール(DTT)を精製タンパク質溶液に添加し、室温で1時間インキュベートした。
2)嫌気チャンバー内で、脱気したBuffer A (25 mM Tris-HCl (pH 8.0), 200 mM NaCl)を用いた限外濾過によってDTTを除去した。得られた溶液を還元型タンパク質溶液とした。
3)還元型タンパク質溶液に、タンパク質のモル濃度の40倍以上のGSSHを添加し、室温で30分以上インキュベートすることでGSSH処理を行った。
蛍光スペクトル測定
1)還元処理およびGSSH処理をしたタンパク質溶液3 mLを嫌気チャンバー内で4面の石英キュベットに入れ、蓋により密閉することでキュベット内の嫌気状態を維持した。
2)435 nmで励起した時の蛍光スペクトルを室温にて測定した。
〔実験結果〕
塩基配列及びアミノ酸配列
Sul-YFPのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列をそれぞれ配列番号3及び2に示す。配列番号2の塩基配列において、1-435及び781-1059がmVenusをコードしており、445-774がSqrRをコードしており、436-444と775-780がそれぞれリンカーペプチドをコードしている。
FRET-Sulのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列をそれぞれ配列番号5及び4に示す。配列番号4の塩基配列において、1-684がcpVenusをコードしており、685-1014がSqrRをコードしており、1015-1746がECFPをコードしている。
蛍光スペクトル測定
GSSH存在及び非存在下におけるSul-YFPの蛍光スペクトルを図2に示す。図に示すように、GSSH存在下の方がGSSH非存在下よりも蛍光強度は高かったが、どちらの条件においても蛍光強度はあまり高くなかった。
GSSH存在及び非存在下におけるFRET-Sulの蛍光スペクトルを図3に示す。図に示すように、GSSH存在下の方がGSSH非存在下よりも蛍光強度は高く、どちらの条件においても蛍光強度は高かった。この結果から、FRET-Sulの蛍光強度を測定することにより、GSSHの検出又は定量が可能であると考えられる。
〔参考文献〕
参考文献1:Nagai, T., Ibata, K., Park, E.S., Kubota, M., Mikoshiba, K. and Miyawaki, A. (2002) A variant of yellow fluorescent protein with fast and efficient maturation for cell-biological applications. Nature Biotech. 20: 87-90
参考文献2:Nagai, T., Yamada, S., Tominaga, T., Ichikawa, M. and Miyawaki, A. (2004) Expanded dynamic range of fluorescent indicators for Ca2+ by circularly permuted yellow fluorescent proteins. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 10554-10559.
本発明は、生体内における活性イオウ分子種の量や分布を正確に測定することを可能にするので、活性イオウ分子種が関与する様々な疾患の治療薬開発に有用である。

Claims (10)

  1. 以下の(a)、(b)、又は(c)で表されるアミノ酸配列からなり、かつ活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、
    (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列、
    (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
    (c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
  2. 活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質、及びこのタンパク質のN末端側とC末端側に結合する二つの蛍光タンパク質を含む融合タンパク質であって、前記二つの蛍光タンパク質は蛍光共鳴エネルギー移動が生じ得る蛍光タンパク質である、融合タンパク質。
  3. 活性イオウ分子種に応答して遺伝子発現を制御するタンパク質が、以下の(a) (b)、又は(c)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項2に記載の融合タンパク質、
    (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列、
    (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、
    (c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。
  4. 二つの蛍光タンパク質が、CFP又はその変異体とYFP又はその変異体である、請求項2又は3に記載の融合タンパク質。
  5. 融合タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号5に記載のアミノ酸配列である、請求項2に記載の融合タンパク質。
  6. 請求項2乃至5のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
  7. 請求項6に記載の核酸を含むベクター。
  8. 請求項2乃至5のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する細胞。
  9. 請求項2乃至5のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現する非ヒト動物。
  10. 請求項8に記載の細胞、又は請求項9に記載の非ヒト動物から採取された細胞若しくは組織に励起光を照射し、それによって生じる蛍光の検出又は蛍光の強度の測定を行う工程を含む、活性イオウ分子種の検出又は定量方法。
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