JP2018115887A - 車両転覆耐力評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】防風柵を考慮した風洞試験結果がなくても、防風柵が設けられている区間に関して、防風柵による防風効果を考慮した鉄道車両の転覆耐力を評価することができる車両転覆耐力評価方法を提供する。【解決手段】構造の異なる複数の鉄道路盤構造上の軌道を異なる種類の車両が走行する際の空気力を評価する風洞試験の結果に基づいて自然風の空気力に係わる空気力係数を求める工程と、防風柵の設置がある場合とない場合についての風洞試験の結果に基づいて横風により車両に作用する横力と揚力とローリングモーメントによる車輪と軌道との接点を中心とするモーメントの和を、ρU2A/2で表わされる値(ρ:空気密度,U:風速,A:車体面積)で除した基準化モーメントの比で表わされるモーメント減率を算出する工程と、算出されたモーメント減率が最も大きくなるときの防風柵の設置がある場合とない場合における空気力係数比を算出する工程とを含むようにした。【選択図】図5

Description

本発明は、自然風の空気力を受けて車両が転覆する限界風速を算出する車両転覆限界風速算出システムにおける防風柵設置による転覆耐力の向上を評価する車両転覆耐力評価方法に関する。
鉄道車両の運行においては、自然風による車両の転覆事故を回避するため、所定の風速以上の自然風を観測した際に車両の運行を停止もしくは所定の制限速度以下で走行させる強風時運行規制が行われている。具体的には、車両の転覆限界風速を例えば30m/s以上となるよう設計した上で、自然風の風速が25m/sになると車両の運行速度を制限し、自然風の風速が30m/sになると車両の運行を中止することが考えられる。
ところが、実際には、車体形状、地形、構造物、風向きなどの違いにより、車両に作用する自然風の空気力が異なるため、これらの条件によって車両を転覆に至らしめる限界風速が変わってくる。そこで、風洞実験で求められた空気力係数を用いて、車両諸元、構造物諸元、風向きなどに応じた転覆限界風速を算出する方法が提案されている。しかしながら、かかる転覆限界風速算出方法を実際の運行規制に適用するに際しては、パラメータの数が多いため膨大な計算が必要になるため、実用的でない。
そこで、本出願人は、効率的に転覆限界風速を算出することができ、より現実的な運行規制の実現を図ることができる転覆耐力評価方法に関する発明を開発し出願した(特許文献1)。
特許文献1に記載の発明は、車両転覆限界風速を算出する計算対象線区を複数の小区間に区切り、当該小区間ごとに、区間の線路構造に関する情報と走行する車両に関する情報とに基づいて求められる空気力係数を用いて車両転覆限界風速を算出するようにしたものである。
特開2013−86722号公報
特許文献1に記載されている車両転覆限界風速算出方法では、防風柵による防風効果(減風効果)を考慮せずに車両転覆限界風速を算出しており、実情を反映しないことがある。そのため、防風柵が設けられている区間に関しては、防風柵による防風効果を考慮した転覆耐力評価方法が望まれるようになって来ている。
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、防風柵を考慮した風洞試験結果が少なくても、防風柵が設けられている区間に関して、防風柵による防風効果を考慮した鉄道車両の転覆耐力を評価することができ、より現実的な運行規制の実現を図ることができる車両転覆耐力評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明は、
軌道に沿って防風柵を設置したことによる効果を加味して自然風の空気力に基づく車両転覆耐力を評価する車両転覆耐力評価方法において、
互いに構造の異なる複数の鉄道路盤構造上の軌道を異なる種類の車両が走行する際の空気力を評価する風洞試験の結果に基づいて、自然風の空気力に係わる横力係数と揚力係数とローリングモーメント係数を求める空気力係数取得工程と、
防風柵の設置がある場合と防風柵の設置がない場合についての風洞試験の結果に基づいて、横風により車両に作用する横力と揚力とローリングモーメントによる車輪と軌道との接点を中心とする接点回りモーメントの和を、ρU2A/2で表わされる値(ρ:空気密度,U:風速,A:車体面積)で除した基準化モーメントの比で表わされるモーメント減率を算出するモーメント減率算出工程と、
前記モーメント減率算出工程により算出されたモーメント減率が最も大きくなるときの、防風柵の設置がある場合と防風柵の設置がない場合における空気力係数比である横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出する空気力係数比算出工程と、
を含むようにしたものである。
本発明に係る車両転覆耐力評価方法によれば、モーメント減率を指標として防風柵の設置がある場合と防風柵の設置がない場合における空気力係数比である横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することができるため、着目する区間について防風柵を考慮した風洞試験結果がなくても、防風柵による防風効果を考慮した転覆耐力を評価することができ、より現実的な運行規制の実現を図ることができる。
ここで、望ましくは、車両中心から防風柵までの離隔をx、前記モーメント減率をyとした場合に、補間式y=ax+bを立て、該補間式における係数aおよび定数bを前記風洞試験の結果に基づいて決定し、決定された係数aおよび定数bと前記補間式とを用いて所望の離隔xに関するモーメント減率を算出する工程を有するようにする。
かかる方法によれば、風洞試験の結果に、評価しようとする区間における車両中心から防風柵までの離隔と同じ離隔を有する構造物に関するデータが含まれていなかったとしても、補間式によってモーメント減率を得ることができ、このモーメント減率を使用して空気力係数比である横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することができる。
また、望ましくは、前記空気力係数比算出工程においては、前記鉄道路盤構造を、橋りょうおよび高架橋と盛土の2つのグループに分類し、橋りょうおよび高架橋のグループと盛土のグループに対してそれぞれ異なる基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出するようにする。
鉄道路盤構造が橋りょうまたは高架橋であるか盛土であるかで、モーメント減率の値が大きく異なることが風洞試験結果から明らかであるが、上記のようにすることで、評価しようとする区間の鉄道路盤構造に応じて、信頼性の高い空気力係数比を算出することができる。
さらに、望ましくは、前記空気力係数比算出工程においては、
橋りょうおよび高架橋のグループに属する鉄道路盤構造に対して、
前記離隔が所定値以上の場合には、同一の基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出し、
前記離隔が所定値未満の場合には、前記補間式を用いてモーメント減率を推定し、該推定モーメント減率と基準モーメント減率とからモーメント減率比を求め、前記基準モーメント減率に対応する横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比に、前記モーメント減率比を乗じて横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出するようにする。
かかる方法によれば、車両中心から防風柵までの離隔が所定値以上の場合と、離隔が所定値未満の場合とで、それぞれ異なる方法でモーメント減率を決定し、横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出するため、車両中心と防風柵との離隔距離に応じた的確な空気力係数比を算出することができる。なお、「所定値」としては、2〜3.5mの範囲のいずれかの値、例えば2.76mを選択することが考えられる。
また、望ましくは、前記空気力係数比算出工程においては、盛土のグループに属する鉄道路盤構造に対して、前記離隔の大小にかかわらず同一の基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出するようにする。
かかる方法によれば、盛土のグループに属する鉄道路盤構造に対して、離隔の大小にかかわらず同一の基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することにより、結果の信頼性を大幅に低下させることなく、きわめて容易に空気力係数比を算出することができる。
本発明に係る車両転覆耐力評価方法によれば、防風柵を考慮した風洞試験結果が少なくても、防風柵が設けられている区間に関して、防風柵による防風効果を考慮した鉄道車両の転覆耐力を評価することができ、より現実的な運行規制の実現を図ることができるという効果がある。
本発明の実施形態に係る車両転覆耐力評価方法において使用する防風柵設置効果として「モーメント減率」なる概念を説明するための模式図である。 (A),(B)は、表1に示す風洞試験(2)により得られた複線高架橋(桁厚1m,3m)についての、風向角90°における防風柵の離隔距離と空気力係数との関係を示す図である。 風洞試験(2)と(3)の結果に基づく防風柵効果としてのモーメント減率と構造物条件長さ(橋りょう・高架橋は桁厚、盛土は高さ)との関係を示す図である。 風洞試験(2)の風向別のモーメント減率を示す図である。 風洞試験(3)で得られたモーメント減率とそれらの補間式および「橋りょう・高架橋」の基準とするモーメント減率に対し補間式から推定したモーメント減率を示す図である。 本発明に係る車両転覆耐力評価方法を実施するためのシステムの一構成例を示すブロック図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る車両転覆耐力評価方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る車両転覆耐力評価方法が適用される鉄道車両が走行する鉄道の構造には、橋りょうや高架橋、盛土等の形態があるとともに、同じ形態でも桁厚が異なるなど様々な種類が混在しているが、本発明者らが行なった、防風柵を設置したことによる効果(以下、防風柵効果と称する)を考慮した車両転覆耐力の評価についての検討結果から、本実施形態においては、「橋りょう,高架橋」と「盛土」の2種類に分類することとした。
また、本実施形態においては、防風柵効果を評価する目安として「モーメント減率」なる指標を用い、既に得られている防風柵なしでの5車種7構造物に関する風洞試験結果(1)から得られる空気力係数(横力係数,揚力係数,ローリングモーメント係数)に、防風柵効果を表わす空気力係数比(横力比,揚力比,ローリングモーメント比)を乗じることによって、防風柵を設けた場合の対象構造における車両への自然風の空気力の影響を評価するようにした。以下に、その根拠について説明する。
なお、車両の種類を断面形状で分類すると、概ね、通勤近郊車両、特急用車両、二階建て車両、寝台客車、貨物車量に分類されるため、風洞試験結果(1)では、車種として、通勤近郊車両の103系、特急用車両の485系、二階建て車両の285系、寝台客車の24系、貨物車両のコキの5種類を選択している。
先ず、上述の「モーメント減率」について、図1を用いて説明する。
なお、広義の「防風柵」には、スリットや隙間、多数の穴が設けられているものの他、全く隙間のない壁や塀なども含まれるが、本実施形態においては、レール上面からの高さが2m以上であって、充実率(全面積に対する非開口部面積の割合)が60%以上(充実率100%を除く)のものを「防風柵」と称する。
「モーメント減率」は、下記の計算式により基準化したモーメント(以下、基準モーメントと称する)から求めた防風柵効果の割合(防風柵あり/防風柵なし)を意味する。
次式(数1)のうち、第1式は、図1に示すように、左側から車体Tに対して横風が作用した際に、風下側の車輪とレールとの接触点Pを中心として車体Tに作用するモーメントMW/Rを表わす。そして、この第1式のモーメントMW/Rを、共通項ρU2A/2で除したものが基準モーメントである。そして、この基準モーメントを、同一構造物に関して、防風柵ありの場合と防風柵なしの場合について求め、その比(防風柵あり基準モーメント/防風柵なし基準モーメント)をとることで、モーメント減率が得られる。
Figure 2018115887
なお、式(数1)において、Mは車体Tに作用する中心回りのローリングモーメントである。また、式中の各符号の意味は、F:自然風による横力,F:自然風による揚力,C:横力係数,C:揚力係数,C:ローリングモーメント係数,ρ:空気密度,U:風速,A:車体面積,l1:車体中心高さ,l2:レール-車輪接触点間距離の1/2(=0.56m),h:車体高さ、である。ここで、l1,hについては、l1にはこれまで検討されたデータのうち最大の値(例えば2.56m)を使用し、hには平均値(例えば2.74m)を使用することとした。
ところで、本発明に先立って行われた、表1に示すような「(1)乱流境界層中の車両に働く空気力の評価」、「(2)防風柵の減風効果の評価」、「(3)車両に対する高欄等の減風効果の評価」の3回の風洞試験結果がある。このうち、風洞試験(1)は5車種7構造物(防風柵なし)を対象とし、風洞試験(2)は1車種13構造物を対象としかつ表2に示すように防風柵と車両中心位置との最小離隔距離を2.76m〜3.5m、最大離隔距離を30mとし、風洞試験(3)は1車種8構造物を対象としかつ高欄と車両中心位置との離隔距離を2.0m〜3.0mとして実施した。
Figure 2018115887
図2(A),(B)には、風洞試験(2)により得られた複線高架橋(桁厚1m,3m)についての、風向角90°における防風柵の離隔距離と空気力係数(横力係数C、揚力係数C、ローリングモーメント係数C)との関係を示す。なお、図2(A)は桁厚1mの複線高架橋に関するもの、図2(B)は桁厚3mの複線高架橋に関するもので、(A),(B)とも防風柵の高さは2mである。
図2より、横力係数Cと揚力係数Cは、離隔距離3mで最も大きい値となり、離隔距離13mで最も小さい値となる。そして、離隔距離が13m以上になるとC,Cは徐々に増加するが、離隔距離25m以下では離隔距離3mでの値を超えないことが分かる。
また、ローリングモーメント係数Cについては、離隔距離3mよりも離隔距離13mでの値が若干大きいが、全体としてほぼ変わらない。加えて、転覆限界風速の計算においては、C,Cの影響に比べてCの影響は小さいことが知られている。よって、防風柵効果は、車両中心位置と防風柵との離隔距離が2〜3mで最も小さくなり、それ以上の離隔距離では、所定の距離までは距離が大きくなるほど防風柵効果が増加することが分かる。
なお、最も小さい離隔距離は、実施した風洞試験の条件(構造物)により異なるが、風洞試験(2)では離隔2.76〜3.5mであり、この最小離隔距離で全ての構造物条件でC,Cが最も大きい値をとっていることから、本実施形態における車両転覆耐力の評価の検討にあたっては安全側である各構造物条件の最小離隔距離の値を用いることとした。表2に、本実施形態において検討対象とする各構造物条件における車両中心と防風柵との最小離隔距離を示す。
Figure 2018115887
空気力係数を決定する基本となる5車種7構造物に関する風洞試験(1)の構造物条件と1車種13構造物に関する風洞試験(2)の構造物条件を、表1を参照して比較すると、桁厚や盛土高さ等が異なることが分かる。風洞試験(1)の複数の構造物それぞれに防風効果の割合を設定するためには、細かい相違に対して補間や外挿、内挿といった推定が必要となり、それによって多くの誤差が加わる可能性がある。そこで、5車種7構造物の風洞試験(1)の構造物条件それぞれに異なる防風効果の割合を設定するのではなく、構造物条件をいくつかのグループに分け、各グループに対して安全側の防風効果の割合を設定することとした。
ここで、前述の5車種7構造物の風洞試験(1)の構造物条件は、単線橋りょう(桁厚1m,2m,3.5m),複線高架橋(桁厚1m,3.5m,6m),単線盛土(高さ8.72m)の大分類3つの7種類である。このうち橋りょうと高架橋は、模型では開床か閉床かの違いがあるが、空気力係数は桁厚の差による違いの方が大きいことから、従来の転覆限界風速の計算においては、橋りょうと高架橋を区別せず、単線と複線の区別で空気力係数を適用していた。
本実施形態においては、防風柵効果における構造物分類を検討するため、それぞれの構造物に関して、風向角90度における構造物条件長さ(橋りょう・高架橋は桁厚,盛土は盛土高さ)に対するモーメント減率(防風柵あり/防風柵なし)を、前述の式(数1)を用いて求めた。その結果を図3に示す。なお、参考のため、風洞試験(3)についての結果(車両中心位置と防風柵との離隔が3m)も記載してある。
図3より、風洞試験(3)の単線橋りょう以外では、構造物条件長さが長くなるほどモーメント減率が減少する傾向にあり、防風効果が得られることが分かる。また、風洞試験(3)の単線橋りょうを除いた場合、単線と複線、橋りょうと高架橋で大きな傾向の違いは見られないことが分かる。一方で、盛土に関しては、橋りょう、高架橋に比べて大きな防風効果が得られることが分か。そこで、防風効果に対する構造物の分類としては、「橋りょう,高架橋」と「盛土(素地含む)」の2種類とすることとした。
なお、風洞試験(3)の単線橋りょうでは、他の構造物と傾向が違っている。その理由としては、車両模型の床下機器割合が異なること、構造物に対する防風柵の設置方法に相違があること等が考えられる。そこで、上述のように、風洞試験(3)については試験により得られた値を採用せず、傾向のみを考慮することとした。具体的には、構造物条件長さに対する防風効果の傾向が、単線橋りょうのみ他の構造物条件と異なるので、本実施形態においては、構造物条件長さを考慮せず安全側の値(最も構造物条件長さが小さいもの)を採用することとした。
次に、基準とするモーメント減率と空気力係数比の求め方について説明する。
上記のように分類した2つの構造物である「橋りょう,高架橋」と「盛土(素地含む)」に対し、基準とするモーメント減率を求めるため、最も構造物条件長さが小さい「橋りょう,高架橋」の桁厚1mの構造物と、「盛土」の高さ3m構造物に関して、前記式(数1)により算出した風洞試験(2)の風向別のモーメント減率を図4に示す。
図4より、「橋りょう,高架橋」では風向角90°の場合が最も大きいモーメント減率となり、その中でも単線高架橋が最も大きな値(0.80)であることが分かる。また、「盛土」では、風向角70°でモーメント減率が最も大きな値(0.43)であることが分かる。これらのことから、基準となるモーメント減率を「橋りょう,高架橋」で0.80、「盛土(素地含む)」で0.43とし、その値となる空気力係数比をそれぞれの風洞試験結果から、次の表3のように設定することとした。
Figure 2018115887
なお,風向角による効果の違い(風向角特性)については、構造物により風向角特性の傾向が異なるので、本実施形態では安全側(盛土:70°,盛土以外:90°)の値を採用し、風向角による違いは考慮しないこととした。
橋りょうおよび高架橋については,車両中心から防風柵までの離隔が短くなるほど防風柵効果が小さくなると考えられていたが、これまでその傾向を定量的に推定できる風洞試験結果は得られていなかった。しかし、風洞試験(3)において、単線橋りょう(桁厚1m),複線高架橋(桁厚1m)では離隔が3mよりも短い構造物について風洞試験が実施された。このうち、単線橋りょうについては、風洞模型形状の相違等の理由により、図3から分かるように、風洞試験(2)の傾向と異なる結果が得られている。このことから、本実施形態においては単線橋りょうを除外し、複線高架橋(桁厚1m)について検討する。
風洞試験(3)の複線高架橋(桁厚1m,防風柵=高覧)で得られたモーメント減率および車両中心から離隔をx,モーメント減率をyとした場合の補間式(y=ax+b)を、次の表4に示す。
Figure 2018115887
風洞試験(3)の複線高架橋(桁厚1m)については、前述したように、模型形状の相違等から他の風洞試験と条件が異なるので、風洞試験で得られた値そのものは採用せず、その傾向(傾きa)のみを採用する。そのため、表4に示されている補間式から得られたモーメント減率の変化率すなわち補間式の傾きaを採用することとする。
図5に、風洞試験(3)の複線高架橋(桁厚1m)で得られたモーメント減率とそれらの補間式および表3に示した「橋りょう・高架橋」の基準とするモーメント減率に対し、前記補間式の傾きから推定したモーメント減率を示す。本実施形態では、防風柵と車両中心位置との離隔が2.76m未満である「橋りょう・高架橋」についての防風柵効果を考慮した転覆耐力(転覆限界風速)の計算においては、この推定モーメント減率を使用する。
要するに、橋りょうおよび高架橋に関する転覆限界風速の計算では、防風柵の効果を以下のように、防風柵と車両中心位置との離隔が2.76m以上である場合と2.76m未満である場合とに分けて取り入れればよい。
(1)防風柵と車両中心位置との離隔が2.76m以上である場合
次の表5の横力比(横力係数比),揚力比(揚力係数比),モーメント比(ローリングモーメント係数比)を5車種7構造物の風洞試験結果(1)に乗じて、各空気力係数を求める。
Figure 2018115887
(2)防風柵と車両中心位置との離隔が2.76m未満である場合
防風柵と車両中心との離隔の値により、以下の表6の式から、上記(1)の場合のモーメント減率(0.80)に対するモーメント減率比αrを推定し、その割合を考慮した横力比,揚力比,モーメント比を求めた後、5車種7構造物の風洞試験結果(1)に乗じて、各空気力係数を求める(表7参照)。なお、表6に示されている各式(Y=……)は、図5に示されている「推定したモーメント減率」のグラフを表わしている。また、モーメント減率比αrは、推定するモーメント減率をYとすると、αr=Y/0.8で表わされる。
Figure 2018115887
Figure 2018115887
一方、盛土に関しては、防風柵と車両中心との離隔にかかわらず、モーメント減率(0.43)を指標として、次の表8に示されている横力比(横力係数比),揚力比(揚力係数比),モーメント比(ローリングモーメント係数比)を、5車種7構造物の風洞試験結果(1)に乗じて,各空気力係数を求める。
Figure 2018115887
上記のようにして空気力係数が求まれば、公知の転覆限界風速の計算式を用いて、風洞試験(2)で実施したのと異なる条件(防風柵の離隔や高さ,路盤構造)を有する区域について車両転覆耐力を評価したい場合や、防風柵のない構造物に防風柵を設置したと仮定した場合に、それらの構造物を走行する車両へ自然風が作用した際に働く空気力を算出することができ、それによって車両転覆耐力を評価することができる。なお、具体的な転覆限界風速の算出は、特許文献1等において開示されている計算式と同様な式を使用して実行することができるので、本明細書においては、具体的な転覆限界風速の計算についての説明を省略する。
以上説明したように、本実施形態によれば、モーメント減率なる指標を用いたことで、防風柵が設置されていない構造物についても、防風柵効果を考慮した転覆耐力の評価を行うことができる。また、既に防風柵が設けられている区間に関して、当該防風柵を考慮した風洞試験結果がなくても、防風柵効果を考慮した車両の転覆耐力を評価することができる。
なお、本実施形態においては、図6に示すような機能ブロックからなるシステムを利用して車両の転覆耐力の評価を行うことができる。
図6に示すシステムは、一般的なコンピュータシステムにより実現することができるもので、マイクロプロセッサ(MPU)のようなプログラム方式の演算処理装置11およびROM(読出し専用メモリ)12やRAM(随時読出し書込み可能なメモリ)13のような記憶手段を備えた車両の転覆耐力評価実行部10と、車両転覆耐力の評価に必要なデータ(風洞試験結果や表3〜表8に関するデータ等)を記憶した記憶装置21と、ユーザインタフェース(ユーザI/F)22と、キーボードやマウスなどの入力装置23と、液晶表示パネルのような表示装置24と、を備えている。
上記記憶装置21には、本実施形態の車両転覆耐力の評価に必要なデータとして、表1に示す風洞試験結果(1)のデータ等が格納されるようになっている。
車両転覆耐力の評価の実行に必要なプログラムおよび特許文献1等において開示されている転覆限界風速の計算式は転覆耐力評価実行部10のROM12に記憶されており、マイクロプロセッサ(MPU)11が該プログラムおよび式に従って車両転覆耐力の評価および転覆限界風速の算出に必要な演算処理を実行する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における防風柵効果を考慮した転覆耐力の評価では、「橋りょう」と「高架橋」を同一の構造物として扱っているが、別々の構造物として扱うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、車両中心位置と防風柵との離隔距離が2.76m未満である場合に、表7に示すように、横力比(横力係数比),揚力比(揚力係数比),モーメント比(ローリングモーメント係数比)に同一のモーメント減率比αrを乗じているが、異なるモーメント減率比αrを乗じるようにしてもよい。

Claims (5)

  1. 軌道に沿って防風柵を設置したことによる効果を加味して自然風の空気力に基づく車両転覆耐力を評価する車両転覆耐力評価方法であって、
    互いに構造の異なる複数の鉄道路盤構造上の軌道を異なる種類の車両が走行する際の空気力を評価する風洞試験の結果に基づいて、自然風の空気力に係わる横力係数と揚力係数とローリングモーメント係数を求める空気力係数取得工程と、
    防風柵の設置がある場合と防風柵の設置がない場合についての風洞試験の結果に基づいて、横風により車両に作用する横力と揚力とローリングモーメントによる車輪と軌道との接点を中心とする接点回りモーメントの和を、ρU2A/2で表わされる値(ρ:空気密度,U:風速,A:車体面積)で除した基準化モーメントの比で表わされるモーメント減率を算出するモーメント減率算出工程と、
    前記モーメント減率算出工程により算出されたモーメント減率が最も大きくなるときの、防風柵の設置がある場合と防風柵の設置がない場合における空気力係数比である横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出する空気力係数比算出工程と、
    を含むことを特徴とする車両転覆耐力評価方法。
  2. 車両中心から防風柵までの離隔をx、前記モーメント減率をyとした場合に、補間式y=ax+bを立て、該補間式における係数aおよび定数bを前記風洞試験の結果に基づいて決定し、決定された係数aおよび定数bと前記補間式とを用いて所望の離隔xに関するモーメント減率を算出する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の車両転覆耐力評価方法。
  3. 前記空気力係数比算出工程においては、前記鉄道路盤構造を、橋りょうおよび高架橋と盛土の2つのグループに分類し、橋りょうおよび高架橋のグループと盛土のグループに対してそれぞれ異なる基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両転覆耐力評価方法。
  4. 前記空気力係数比算出工程においては、
    橋りょうおよび高架橋のグループに属する鉄道路盤構造に対して、
    前記離隔が所定値以上の場合には、同一の基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出し、
    前記離隔が所定値未満の場合には、前記補間式を用いてモーメント減率を推定し、該推定モーメント減率と基準モーメント減率とからモーメント減率比を求め、前記基準モーメント減率に対応する横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比に、前記モーメント減率比を乗じて横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両転覆耐力評価方法。
  5. 前記空気力係数比算出工程においては、盛土のグループに属する鉄道路盤構造に対して、前記離隔の大小にかかわらず同一の基準モーメント減率を採用して横力係数比と揚力係数比とローリングモーメント係数比を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の車両転覆耐力評価方法。
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