リチウム金属電極などの電極用の保護構造体が、提供されている。いくつもの材料が保護構造体に使用するのに適しているかもしれないが、電極構造体における保護構造体として使用するための1つの好適な材料は、その高いリチウムイオン伝導性のために窒化リチウムである。窒化リチウム層は、窒素ガスとリチウムとの反応によって生成され、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド基材、金属化基材、またはベア基材などの不活性基材(すなわち、リチウムを含まない基材)上にコーティングされてもよい。このようにして製造する場合、窒化リチウム層は、均一および連続的であり、そして実質的に非晶質および非多孔性であってもよい。次いで、保護された電極構造体を形成するために、窒化リチウム層を、リチウム金属上に積層するか、または配置することができる。
上記方法により使用可能な保護層を製造することができるが、本発明者らは、リチウム金属上に直接保護層を形成することが望ましいと認識している。金属リチウム上に直接窒化リチウム層を形成することにより、製造工程を簡略化する(別の積層工程を必要としない)、界面の数を減少させる、保護層の厚さを減少させる、および/またはより低い界面抵抗とより低い電池全体抵抗をもたらすことができる金属リチウムと窒化リチウムとの間の改善された界面を提供するなど、いくつかの優位性を提供することができる。しかしながら、窒化リチウムなどのいくつかの保護層が、金属リチウム表面の上部に被覆されている場合、保護層を形成するために使用される反応性ガス(例えば、窒素ガス)とリチウム金属との反応により、下にある金属リチウムの部分的または全体的変換が起こりうる。言い換えると、単に金属リチウム上に窒化リチウムの層を形成する代わりに、すべてのまたは一部のバルク金属リチウムもまた窒素と反応して、窒化リチウムを形成するかもしれない。下にあるバルク金属リチウムとのこの反応により、電解質が多孔性構造体を通って拡散し、下にある金属リチウムと反応することができるため、保護層として好適でない多結晶質の多孔性セラミック層となる。更に、リチウム表面の変換は不均一に進行するので、得られる窒化リチウムのセラミック層の厚さは、金属リチウムの表面中で実質的に均一でないかもしれない。
上記の点から見て、本発明者らは、減少した気孔率を有する実質的に連続した保護層を提供するために、窒化リチウム、または他の適当な保護層の被覆時に、下にある金属リチウムの変換を実質的に防止することが望ましいと認識している。以下でより詳細に説明するように、下層の金属リチウムの変換を回避する一つの方法は、下にある金属リチウムと保護層との間にリチウムイオン伝導性材料を提供することである。リチウムイオン伝導性材料は、下にある金属リチウムと続いて被覆された保護層との間のバッファとして作用してもよい。望ましくない反応を低減または防止するために、このバッファ層は、下層の金属リチウムと保護層のいずれか一方または両方と実質的に適合性を有する材料を含んでもよい。上記バッファ層は、効果的に保護層から金属リチウムを隔離するため、実質的に連続的および/または非多孔性であってもよい。
理論に束縛されるものではないが、窒化リチウム保護層の被覆時に下にある金属リチウムの表面の相互変換を実質的に回避することによって、実質的に連続の、より低い多孔性の、より非晶質の、より平滑な窒化リチウム層をもたらすことができ、保護層が被覆される。更に、以下でより詳細に説明するように、下にある金属リチウムの相互変換に関連する制御されていない実質的に不均一な成長を実質的に排除するために、窒化リチウムコーティングの厚さをより正確に制御してもよい。バッファ層なしで、下にある金属リチウム上に窒化リチウム保護層の直接被覆に起因する多結晶多孔性構造体と比較した場合、バッファ層を用いて形成した得られる保護構造体は、電解質とリチウム金属との反応を実質的に防止し、増加したサイクル寿命が得られることが期待される。更に、実質的に相互変換を回避する場合、窒化リチウム保護層の厚さがより制御可能であるため、具体的かつ実質的に均一な保護層の厚さを提供することができる。
明確にするために、本明細書中に記載された構造体を、電極前駆体または最終的な電極のいずれかを指すことができる電極構造体と呼ぶ。電極前駆体は、例えば、最終的な電極または最終の電気化学電池中に存在しないキャリア基材などの1つ以上の構成要素を含む電極、或いは最終的な電極として使用される前には、または最終の電気化学電池中に存在しない1つ以上の構成要素である電極を含んでもよい。従って、本明細書中に記載された態様は、電極前駆体または最終的な電極のいずれかに限定されるものではないと解されるべきである。代わりに、本明細書中に記載された態様は、電極前駆体、組立てられていない最終的な電極、および電気化学電池または他の適当なデバイスに組み立てられた最終的な電極のいずれかに適用することを意味する。
本明細書中に記載された電極構造体は、リチウム金属系に関して記載されているが、本明細書中に記載された方法および物品は、下にある電気活性物質が、その後、被覆される保護層と反応性を有する、如何なる好適な電気化学系にも適用可能であると解されるべきである。このような系は、例えば、他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属系(例えば、リチウムイオンアノードを含むアルカリ金属アノード)、或いは非アルカリ金属系さえも含んでもよい。更に、再充電可能な電気化学電池は、本開示から有用なものとなり得ることが意図されているが、非充電式(すなわち、一次)電気化学電池も、本開示から有用なものとなり得る。
図面を参照すると、現行の電極構造体の具体的な態様が、以下により詳細に記載されている。これは、図に示されている特定の層が互いの上に直接配置されているが、他の中間層はまた、いくらかの態様に示されている層の間に存在してもよいと解されるべきである。従って、本明細書中で使用されるように、層が別の層「の上に配置される」、別の層「の上に被覆される」または別の層「の上に」あると言及されるとき、上記層の上に直接配置される、上記層の上に直接被覆される、または、上記層の上に直接存在することができる、のいずれか、或いは介在層が存在してもよい。これに対し、別の層「の上に直接配置される」、別の層「に接触している」、別の層「の上に直接被覆される」または別の層「の直接上にある」層は、介在層が存在しないことを示している。
図1には、電極構造体2の1つの態様を示す。上記電極構造体は、電気活性物質層4、金属リチウム層4上に配置されたバッファ層6、上記バッファ層6上に配置された保護層8を含む。前述のように、電気化学電池内に存在する電解質との反応から、下にある電気活性物質層を保護するだけでなく、下にある電気活性物質層と保護層との間の反応を実質的に防止する両方のため、バッファ層6および保護層8は、実質的に連続かつ非多孔性であってもよい。
上記電気活性物質層4は、所望の用途に使用される如何なる適当な材料から形成されてもよい。従って、本明細書中に記載された態様の多くは、電気活性物質として金属リチウムを指すが、他の電気活性物質もまた可能である。いくつかの態様において、上記電気活性物質は、アルミニウム、銀、マグネシウム、亜鉛、またはケイ素でドーピングされたリチウム金属などの金属合金である。他の適用可能な合金の例が、発明の名称「Electrochemical Cell」の、米国特許出願公開第2011/0177398号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862528号;および、発明の名称「Lithium Alloy/Sulfur Batteries」の、米国特許出願公開第2008/0318128号明細書として公開された、2007年6月22日出願の米国特許出願第11/821576号に詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。他の態様において、好適な電気活性物質には、他のアルカリ金属またはアルカリ土類金属/合金系材料が挙げられる。
いくつかの態様において、上記電気活性物質層は、電気活性物質および集電体の両方として機能する。あるいは、高率電気化学電池用の電極構造体などのいくつかの態様において、集電体10を含むことが望ましい(図1を参照)。そのような態様において、上記集電体は、電気活性物質から電荷を収集し、リード線と外部接点にその電荷を伝導するように機能してもよい。いくつかの態様において、集電体はまた、電気活性物質の被覆および/または電極構造の支持のための構造要素として機能することができる。
上述したように、保護層の被覆ならびにその後の反応の間に電気活性物質層の変換を実質的に防止するために、バッファ層6は、保護層8から電気活性物質層4を実質的に隔離することができる。理論に束縛されるものではないが、多孔性および/または不連続であるバッファ層は、多孔性バッファ層を通して、反応ガス、材料、または流体の拡散により、保護層を形成するために使用される反応性ガス、材料、または流体から電気活性物質層を効果的に隔離しない。上記電気活性物質層を隔離するために、いくつかの態様において、バッファ層6が、電気活性物質層の実質的に全表面に渡って、実質的に連続で、非多孔性で、欠陥のないことが望ましい。いくつかの態様において、電気活性物質層および保護層と、バッファ層との反応を避けるために、バッファ層は、電気活性物質層および保護層の一方、または両方と実質的に適合性を有することが望ましい。更に、バッファ層が電気活性物質層の上に配置されることにより、バッファ層は電気活性物質層の電気活性種に対して伝導性を有することが望ましい。
場合によっては、バッファ層の少なくとも一部は実質的に非多孔性または連続でないが、孔、欠陥、または非連続部分は、バッファ層が、全体的に実質的に非多孔性および実質的に連続した構成を有することを可能にする材料で充填されてもよい。例えば、いくつかの態様において、バッファ層上への中間層の被覆により、中間層からの材料のいくらかがバッファ層の孔、欠陥、および/または非連続部分を充填することが可能となる。バッファ層の孔、欠陥、および/または非連続部分を充填する上記材料は、例えばセラミック、ガラス質セラミック、ガラス、またはポリマーであってもよい。他の態様において、上記バッファ層の少なくとも一部は実質的に非多孔性または連続でないが、後続の保護層の被覆時に電気活性物質の変換を実質的に防止または減少させるのに十分、電気活性物質層を被覆する。バッファ層の他の構成も可能である。
以下の実施例4において更に詳細に記載されているように、バッファ層を形成するための電気活性物質の表面の直接変換により、実質的に非多孔性の、連続バッファ層を生じない。理論に束縛されるものではないが、電気活性物質の表面上に配置された材料を、例えば、金属リチウムから酸化リチウムに直接変換することによって、大きな容量の増加を生じる。変換工程は継続するので、関連する体積変化を調節するために、下にある電気活性物質に対する変換された材料の剥離や破壊が発生する可能性があり、観察された多孔性バッファ層をもたらす。電気活性物質の表面の直接変換の1つの具体例は、例えば、酸化リチウムまたは他の材料を形成するための、金属リチウムなどの電気活性物質のプラズマ処理である。実施例に示されるように、得られる酸化リチウム層は、多孔性であり、金属リチウムの部分的または全体的変換をもたらす保護層の後続の被覆時に、下にある金属リチウムを隔離しない。このことから、少なくともいくつかの態様において、バッファ層を形成するために電気活性物質の表面を直接変換する代わりに、バッファ層を電気活性物質層上に被覆する。しかしながら、保護層の被覆時に電気活性物質を効果的に隔離するために他の中間層と組み合わせる場合、いくつかの態様において、電気活性物質の直接変換を行ってもよい。
バッファ層は、如何なる好適な材料から形成されてもよい。特定の態様に応じて、バッファ層は、電気絶縁性または導電性のいずれであってもよい。いくつかの態様において、バッファ層は、セラミック、ガラス質セラミック、またはガラスである。リチウム金属系電極構造体に関する現在の議論に関しては、保護層に好適な材料には、それらに限定されないが、リチウム酸化物(例えばLi2O、LiO、LiO2、LiRO2、ここでRは希土類金属である)、窒化リン酸リチウム、リチウムオキシニトリド、炭酸リチウム、ハロゲン化リチウム、ヨウ化リチウム、および臭化リチウムが挙げられる。本開示はこの方法に限定されないので、金属リチウムと非反応性である種々の他のリチウム伝導性セラミック材料を、バッファ層用に使用することもできる。いくつかの態様において、バッファ層は、複数の材料または材料の層から形成してもよい。
いくつかの態様において、バッファ層は、約10−7S/cm以上、約10−6S/cm以上、約10−5S/cm以上、約10−4S/cm以上、約10−3S/cm以上の電気活性種に対するイオン伝導度、または他の適当な伝導度を示してもよい。これに対応して、バッファ層は、約10−1S/cm以下、約10−2S/cm以下、約10−3S/cm以下、約10−4S/cm以下の伝導度、または他の適当な伝導度を示してもよい。上記の組み合わせが可能である(例えば、約10−7S/cm以上および約10−4S/cm以下の伝導度)。他の範囲も可能である。
いくらかの態様において、電気活性物質層の厚さは、例えば約2〜200μmの範囲で変化してもよい。例えば、電気活性物質層は、約200μm以下、約100μm以下、約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下、約5μm以下の厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。いくつかの態様において、電気活性物質層は、約1μm以上、約2μm以上、約3μm以上、約4μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約15μm以上、約20μm以上、約50μm以上、約75μm以上、約100μm以上、約150μm以上の厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約2μm以上および約200μm以下)。他の範囲も可能である。厚さの選択は、所望のサイクル寿命、セル容量、所望のアノード‐カソードバランス、および他の適当なパラメータなどの、電池設計パラメータに依存してもよい。
電気活性物質層は、物理蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学蒸着、熱蒸着、ジェット蒸着、レーザーアブレーション、または他の適当な方法を用いて形成してもよい。電気活性物質層を、それらに限定されないが、フォイル;下にある基材上のコーティング;複合材料(例えば、ケイ素またはグラファイト粒子などのナノ材料または基材に取り付けられた繊維マットまたはナノワイヤの形態の、炭素および/またはグラファイトの三次元構造体を有するリチウム金属);或いは他の適当な構造体によって具体化してもよい。
上記に加えて、バッファ層が電極または電気化学電池に含まれている場合、電池の内部抵抗を低減することが望ましい場合がある。そのような態様において、バッファ層を含むことにより電池の内部抵抗を制限するために、比較的薄いバッファ層を提供することが望ましい場合がある。いくつかの態様において、バッファ層は、約2μm以下、約1μm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約50nm以下である厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。これに対応して、バッファ層は、約50nm以上、約100nm以上、約200nm以上、約300nm以上、約400nm以上、約500nm以上、約600nm以上、約700nm以上である厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約100nm以上および約1μm以下のバッファ層厚さ)。他の範囲も可能である。
バッファ層は、スパッタリング、電子ビーム蒸着、真空熱蒸着、レーザーアブレーション、化学蒸着(CVD)、熱蒸着、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、レーザ強化化学蒸着およびジェット蒸着などの好適な方法によって被覆してもよい。用いられる上記技術は、被覆される材料の種類、層の厚さ、および他の適当な考慮事項に依存してもよい。
保護層は、電気化学電池内に存在する電解質から電気活性物質層を実質的に隔離することができ、電気活性種に対して伝導性を有する好適な材料から形成されてもよい。いくつかの態様において、保護層は、「単一イオン伝導性材料層」とも呼ぶことができる。保護層はまた、電気絶縁性であってもよい。いくつかの態様において、保護層は、セラミック、ガラス質−セラミック、またはガラスである。リチウム金属系電極構造体に関する現在の議論に関して、保護層に好適な材料には、それらに限定されないが、窒化リチウム、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、アルミン酸リチウム、リン酸リチウム、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムランタン酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムホスホスルフィド、リチウムオキシニトリド、窒化リン酸リチウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。本開示は、このように限定されるものではないので、金属リチウムと反応性を有する種々の他のリチウム伝導性材料もまた、保護層に使用することができる。
集電体用の好適な材料としては、それらに限定されないが、金属(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、不動態化金属、および他の適当な金属);金属化ポリマー;導電性ポリマー;その中に分散された導電性粒子を含むポリマー;および他の適当な材料が挙げられる。いくつかの態様において、集電体は、物理蒸着、化学蒸着、電気化学蒸着、スパッタリング、ドクターブレード法、フラッシュ蒸着、または選択された材料のための他の適当な被覆技術を用いて、電気活性物質層の上に被覆される。また、集電体は、別々に形成され、適当な方法を用いて電極構造体に接合されてもよい。
本明細書中に記載されるように、いくつかの態様において、保護層8は、電気化学電池中の電解質から下にある電気活性物質層を保護するために、実質的に連続で、かつ非多孔性であることが望ましい。更に、いくつかの態様において、安定な最終電極構造体を形成するために、保護層がバッファ層と実質的に適合性を有することも望ましい。しかしながら、場合によっては、保護層は、バッファ層と実質的に適合性を有さない。そのような態様において、バッファ層および保護層の両方と適合性を有する図1に示すような中間層12は、安定した最終電極構造体を提供するために、バッファ層と保護層との間に配置されてもよい。中間層の例としては、ポリマー層、ガラス質層、セラミック層、およびガラス質‐セラミック層が挙げられる。
いくつかの態様において、保護層は、約10−7S/cm以上、約10−6S/cm以上、約10−5S/cm以上、約10−4S/cm以上、約10−3S/cm以上の電気活性種に対するイオン伝導度、または他の適当な伝導度を示してもよい。これに対応して、保護層は、約10−1S/cm以下、約10−2S/cm以下、約10−3S/cm以下、約10−4S/cm以下の伝導度、または他の適当な伝導度を示してもよい。上記の組み合わせが可能である(例えば、約10−6S/cm以上および約10−1S/cm以下の伝導度)。他の範囲も可能である。
バッファ層と同様に、保護層が電極または電気化学電池に含まれる場合、電池の内部抵抗を低減することが望ましい場合がある。従って、保護層を含むことにより電池の内部抵抗を制限するために、比較的薄い保護層を提供することが望ましい場合がある。いくつかの態様において、保護層は、バッファ層の厚さの約10倍以下、約5倍以下、約4.5倍以下、約4倍以下、約3.5倍以下、約3倍以下、約2倍以下の厚さ、バッファ層の厚さ以下の厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。これに対応して、保護層は、バッファ層の厚さの約0.1倍以上、約0.2倍以上、約0.5倍以上の厚さ、バッファ層の厚さ以上の厚さ、バッファ層の厚さの約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約4.5倍以上の厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。
上記の組み合わせが可能である(例えば、バッファ層の厚さの約2倍以上およびバッファ層の厚さの約10倍以下である保護層の厚さ)。他の範囲も可能である。
上記に加えて、他の態様において、保護層は、約2μm以下、約1μm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約50nm以下である厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。これに対応して、保護層は、約50nm以上、約100nm以上、約200nm以上、約300nm以上、約400nm以上、約500nm以上、約600nm以上、約700nm以上である厚さ、または他の適当な厚さを有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約100nm以上および約1μm以下の保護層厚さまたは約100nm以上および約200nm以下の保護層厚さ)。他の範囲も可能である。
いくつかの態様において、保護層およびバッファ層を横切る電荷移動抵抗は、保護層のないバッファ層を横切る電荷移動抵抗よりも低い。理論に束縛されるものではないが、バッファ層と電解質との界面インピーダンスより低い電解質との界面インピーダンスを有する保護層を用いることにより、上記電池の全電荷移動抵抗を低減することができる。比抵抗値は、電極に用いられる特定の保護層とバッファ層の伝導度に依存する。以下の実施例に詳細に記載されるように、例えば、特定のセル内の単独の酸化リチウム層の抵抗値は約6Ω/cm2である。これは、窒化物保護層が酸化リチウムバッファ層の上に配置された場合の約2Ω/cm2の抵抗値と比較することができる。上記窒化物層が酸化リチウムバッファ層上に被覆される場合には、溶媒/セラミック界面を横切るリチウムイオンの電荷移動は、より容易になると考えられる。更に、理論に束縛されるものではないが、溶媒/セラミック界面の抵抗は、セラミック/セラミックおよびセラミック/リチウム金属界面よりも非常に高い。従って、溶媒/セラミック界面の抵抗を低減することにより、電池の全体抵抗に有用な低減をもたらすことができる。
いくつかの態様において、保護層は、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、約150nm以下、約140nm以下、約130nm以下、約120nm以下、約110nm以下のRa、または他の適当な表面粗さを有してもよい。これに対応して、保護層は、約50nm以上、約60nm以上、約70nm以上、約80nm以上、約90nm以上、約100nm以上、約110nm以上、約120nm以上、約130nm以上、約140nm以上、約150nm以上、約200nm以上の算術平均表面粗さ(Ra)、または他の適当な表面粗さを有してもよい。
これに対応して、上記の組み合わせが可能である(例えば、より大きいか、約50nm以上および約150nm以下のRaを有する保護層)。他の範囲も可能である。また、上記のものよりも大きい粗さが用いられてもよいが、それはまた、上記のものよりも小さい粗さもまた有用であってもよいことに留意すべきである。
バッファ層と同様に、保護層は、スパッタリング、電子ビーム蒸着、真空熱蒸着、レーザーアブレーション、化学蒸着(CVD)、熱蒸着、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、レーザ強化化学蒸着、およびジェット蒸着等の好適な方法によって被覆してもよい。使用される技術は、被覆される材料の種類、層の厚さ、および他の適当な考慮事項に依存してもよい。
単一の保護層が図面に示されているが、複数の保護層、または多層の保護構造体が使用される態様も想定される。例えば、いくらかの態様において、電極構造体または電気化学電池は、アノードを保護する複数の保護層を含んでもよく、各保護層は、本明細書中に記載された様々な厚さ、伝導度、および/または算術平均表面粗さを有してもよい。保護層の各々は、同じ材料、または異なる材料から形成されてもよい。
いくつかの態様において、保護層は、ポリマー層などの介在層によって、別の保護層から分離することができる。全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる、発明の名称「Electrochemical Cell」の、米国特許出願公開第2011/0177398号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862528号においてより詳細に記載されるように、可能な多層構造体は、ポリマー層と単一イオン伝導層の配置を含むことができる。例えば、多層の保護層は、いくつかの態様において、単一イオン伝導層およびポリマー層(単数または複数)を交互に含んでもよい。可能な多層構造の他の例および構成がまた、Affinitoらの、発明の名称「Rechargeable Lithium/Water, Lithium/Air Batteries」の、米国特許出願公開第2007/0221265号明細書として公開された、2006年4月6日出願の米国特許出願第11/400,781号において、より詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
いくつかの態様において、いくらか多孔性有する保護層は、保護層のピンホールおよび/またはナノ細孔をポリマーで充填することができるように、ポリマーまたは他の材料で処理することができる。そのような構造を形成するための技術の例が、発明の名称「Electrochemical Cell」の、米国特許出願公開第2011/0177398号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862528号およびAffinitoらの、発明の名称「Rechargeable Lithium/Water, Lithium/Air Batteries」の、米国特許出願公開第2007/0221265号明細書として公開された、2006年4月6日出願の米国特許出願第11/400,781号において、より詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
これらの種は、層内の欠陥やオープンスペースを通って拡散する傾向があるので、多層保護層は、電気活性物質層への種の直接の流れを減少させることにより、優れた透過バリアとして作用することができる。従って、樹状突起の形成、自己放電、およびサイクル寿命の損失を低減することができる。多層保護層の他の優位性には、構造体の機械的特性を含む。単一イオン伝導層に隣接するポリマー層の位置決めは、単一イオン伝導層に亀裂がはいる傾向を減少させることができ、構造体のバリア性を高めることができる。従って、これらの積層体は、ポリマー層を介在させない構造体よりも製造工程時の取り扱いによる応力に対してより強固であることができる。また、多層保護層は、電池の充放電のサイクルの間に、電気活性物質層から前後へのリチウムの移行に伴う体積変化に対する向上した耐性を有することができる。
理論に束縛されるものではないが、バッファ層および/または保護層内に位置する結晶粒界は、電池の内部抵抗を増加させることができる電気活性種に対する拡散バリアとして作用することができる。従って、いくつかの態様において、バッファ層および/または保護層が、結晶性材料および/または多結晶材料から構成されても、または実質的に形成されてもよいが、他の態様において、バッファ層および/または保護層が、非晶質材料から構成されても、または実質的に形成されてもよい。例えば、バッファ層および/または保護層は、部分的に、または実質的に、非晶質材料層であってもよい。理論に束縛されるものではないが、一つまたは両方の層を一部または実質的に非晶質にすることによって、比較的より結晶性および/または多結晶性である層と比較して、結晶粒界の数が減少し、観察される電池の内部抵抗の減少につながる。バッファ層と保護層の一方が、部分的に、または実質的に非晶質であり、他方が実質的に結晶性であり、および/または多結晶性である態様が想定される。保護層とバッファ層の両方が、部分的に、または実質的に非晶質の態様も想定される。バッファ層が非晶質、部分的に非晶質、結晶性、または多結晶性であるかどうかを測定するために、多くの異なる検出方法を用いてもよい。適当な試験には、それらに限定されないが、X線回折法、X線光電子分光法、透過型電子顕微鏡、示差走査熱量測定法、および光分光法が挙げられる。
バッファ層と保護層は、適当な方法を用いて、部分的に、または実質的に非晶質化することができる。例えば、化学量論比から少し外れた組成物の被覆は、非晶質材料を被覆するのに有利である。1つの例示的な態様において、実質的に非晶質バッファ層は、窒素および酸素(例えば、リチウムオキシニトリド)を含む1つ以上の材料を含み、そして適当なモル比を用いることができるが、バッファ層中の窒素の酸素に対するモル比(窒素/酸素)が、約3:1(3/1)以下、約2:1(2/1)以下、または1:1(1/1)以下であり、約1:2(1/2)以上、約1:1(1/1)以上、または2:1(2/1)以上である。上記範囲の組合せが可能である(例えば、約1:2(1/2)以上、かつ約3:1(3/1)以下である、窒素の酸素に対するモル比(窒素/酸素))。更に、バッファ層は、炭酸リチウムなどの炭素を含む材料、または別の炭素質材料を含んでもよく、そして適当なモル比を用いることができるが、バッファ層中のリチウムの炭素に対するモル比(リチウム/炭素)が、約2:1(2/1)以下、約1.75:1(1.75/1)以下、約1.5:1(1.5/1)以下、または1.25:1(1.25/1)以下であり、約1:1(1/1)以上、約1.25:1(1.25/1)以上、約1.5:1(1.5/1)以上、または1.75:1(1.75/1)以上である。上記範囲の組合せが可能である(例えば、約1:1(1/1)以上、かつ約2:1(2/1)以下である、リチウムの炭素に対するモル比(リチウム/炭素))。いくつかの態様において、バッファ層は、バッファ層における第二成分として、炭酸リチウム、または他の炭素質材料を含んでもよい。以下でより詳細に述べるように、例えば、炭酸リチウム、または他の炭素質材料は、バッファ層の第二成分として共蒸着されてもよい。
別の態様において、バッファ層は含んでいてもよい、またはリチウム、窒素、および酸素を含む材料を含んでも、または上記材料から形成されてもよい。例えば、バッファ層のリチウム含有量は、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、40%、45%、50%以上、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)であってもよい。これに対応して、バッファ層は、約75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)であるリチウム含有量を含んでもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1%以上、かつ約50%以下のリチウム含有量)。他の範囲も可能である。
リチウム含有量に加えて、バッファ層は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、40%以上、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)である窒素含有量を含んでもよい。バッファ層は、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)である窒素含有量を含んでもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1%以上、かつ約50%以下の窒素含有量)。他の範囲も可能である。
バッファ層の酸素含有量は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、40%、45%、50%、55%、60%以上、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)であってもよい。バッファ層は、約70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下、または他の適当なパーセンテージ(例えば、重量%またはモル%)である酸素含有量を含んでもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約1%以上、かつ約70%以下の酸素含有量)。他の範囲も可能である。
上記範囲の元素状物質は、多くの異なるバッファ層組成を提供するために組み合わせてもよい。例えば、バッファ層は、約1%〜約75%のリチウム、約0%〜約50%の窒素、および約0%〜約70%の酸素の含む組成を有してもよい。上記範囲の元素状物質の他の組み合わせも可能である。更に、いくつかの態様において、上記組成は、ドーパントまたは他の好適な付加物の使用と組み合わせてもよい。
別の例示的な態様において、実質的に非晶質の保護層は、リチウムと窒素とを含む材料(例えば、窒化リチウム)を含んでもよく、そして保護層中のリチウムの窒素に対するモル比(リチウム/窒素)が、約3:1(3/1)以下(例えば、約2.5:1(2.5/1)以下、約2:1(2/1)以下、または約1.5:1(1.5/1)以下)および約1:1(1/1)以上(例えば、より大きい約1.5:1(1.5/1)以上、または約2:1(2/1)以上)である。窒化リチウムを含む特定の保護層が上述されているが、それらに限定されないが、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、アルミン酸リチウム、リン酸リチウム、窒化リン酸リチウム、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、酸化リチウム、酸化リチウムランタン、酸化リチウムチタン、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムホスホスルフィド、ハロゲン化リチウム、およびこれらの組合せが含む他の導電性セラミックスを用いることができる。
理論に束縛されるものではないが、非化学量論的組成物を被覆する場合の非晶質相の形成は、それらに限定されないが、競合平衡相、準結晶形成、結晶形成の阻害(frustration)、および他の適用可能な現象を含む多くの物理的現象によるものであってもよい。
いくつかの態様において、バッファ層および/または保護層は、電気活性種に対する電気伝導性および/または伝導度を相対的に変化させるためにドーパントを含んでもよい。可能なドーパントには、炭素、窒素、および硫黄系化合物だけでなく、他の適当な化合物が挙げられる。具体的な例としては、それらに限定されないが、炭酸リチウム、硝酸リチウム、硫化物、および元素状態の硫黄が挙げられる。使用される被覆方法に応じて、ドーパントは、バッファ層および/または保護層を形成するための特定の付加物であってもよく、または使用される被覆方法の副生成物として被覆されてもよい。例えば、炭酸リチウムは、二酸化炭素ガスおよびリチウム蒸気の混合物をプラズマ支援被覆法に用いる場合に、酸化リチウムバッファ層の被覆時に形成されてもよい。具体的な例は上記されているが、保護層および/またはバッファ層の所望のドーピングを提供するために、多くの適当な方法を使用することができると解されるべきである。
図3に示すように、本明細書中に記載された電極構造体の製造方法の一つの態様が提供される。図示の方法では、電気活性物質層は、ステップ100で提供されてもよい。次いで、バッファ層および保護層は、ステップ102および104において、下にある電気活性物質層上に被覆される。いくつかの態様において、集電体に対応する任意の基材、キャリア基材、および/または構造の基材をステップ106で提供してもよく、以下でより詳細に説明するように、任意の剥離層を、ステップ108で提供してもよい。特定の態様に応じて、上記基材および/または剥離層を、電気活性物質層を提供する、バッファ層を被覆させる、または保護層を被覆させる前または後に提供してもよい。また、以下でより詳細に説明するように、上記基材および剥離層は、本開示によって基材および剥離層をどこに配置するかについては限定していないので、電気活性物質層または保護層の表面のいずれかに対して配置してもよい。
図4A〜4Cに示す態様に示されるように、場合によっては、製造および組み立て時の電極構造体の取り扱いを容易にするために、キャリア基材14および剥離層16を提供することが望ましい。以下でより詳細に説明するように、特定の態様に応じて、キャリア基材14および剥離層16を保護層8の外面上に配置しても(図4A)、または電気活性物質層4の底面に配置してもよい(図4B)。図4Cに例示的に示されるように、キャリア基材の剥離後、最終電極構造体を形成してもよい。
本明細書中に記載されたように、電極の製造を容易にするために、剥離層をキャリア基材上に配置してもよい。キャリア基材として、如何なる好適な材料を使用してもよい。いくつかの態様において、キャリア基材の材料(および厚さ)は、高温などの特定の処理条件に耐える能力によって、少なくとも部分的に選択してもよい。基材材料を、剥離層への接着親和性に基づいて、少なくとも部分的に選択してもよい。場合によっては、キャリア基材は、ポリマー材料である。キャリア基材の全てまたは一部を形成するために使用され得る好適な材料の例には、任意に変更された分子量、架橋密度、および/または添加剤または他の成分の添加を有する、剥離層として好適な本明細書中に記載されたもののいくらかが挙げられる。いくらかの態様において、キャリア基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)(例えば、光学グレードのポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル;ポリアミド;または他の好適なポリマーを含んでもよい。他の場合において、キャリア基材は、銅、チタンなどの金属、またはガラスなどのセラミック材料を含んでもよい。キャリア基材はまた、充填剤、結合剤、および/または界面活性剤などの追加の成分を含んでもよい。
キャリア基材は、如何なる好適な厚さを有してもよい。例えば、キャリア基材の厚さは、約5μm以上、約15μm以上、約25μm以上、約50μm以上、約75μm以上、約100μm以上、約200μm以上、約500μm以上、または約1mm以上であってもよい。いくつかの態様において、上記キャリア基材は、約10mm以下、約5mm以下、約3mm以下、または約1mm以下の厚さを有してもよい。上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、約100μm以上、かつ約1mm以下)。他の範囲も可能である。場合によっては、キャリア基材は、剥離層の厚さ以上の厚さを有する。
図4Aおよび図4Bに示された態様において、剥離層16は、キャリア基材14および保護層8または電気活性物質層4の一方に対する比較的高い接着強度、並びにキャリア基材14および保護層8または電気活性物質層4の他方に対する比較的中位以下の接着強度を有してもよい。従って、剥離層は、剥離力をキャリア基材および/または電極構造体のいずれかに加える場合に、最終電極構造体からのキャリア基材の剥離を容易にするように機能することができる。
どの要素に対して離型層が比較的高い接着強度を示すかに応じて、剥離層を最終電極構造体内に組み込んでも、または、組み込まなくてもよい。剥離層が最終電極構造体に組み込まれているかどうかは、剥離層の化学的特性および/または物理的特性を調整することによって変化させることができる。例えば、剥離層16が最終電極構造体の一部であることが剥離層16のために望ましい場合、剥離層を、キャリア基材14との接着強度に対して、より大きな保護層8との接着強度を有するように調整してもよい。従って、剥離力をキャリア基材(および/または電極構造体)に加える場合、キャリア基材14は電極構造体から剥離し、剥離層16が電極構造体と共に残る(図4C参照)。
剥離層が最終の電気化学電池に組み込まれる態様において、剥離層を、電解質中で安定であり、実質的に電極の構造的一体性を妨害しない材料で形成してもよい。剥離層が最終電極構造体または最終の電気化学電池に組み込まれたいくらかの態様において、イオンの伝導を容易にするために、剥離層は電解質(例えば、高分子ゲル電解質)として機能しても、またはセパレータとして機能してもよい。剥離層の他の使用も可能である。いくらかの特定の態様において、剥離層は、リチウムイオンに対して伝導性であり、および/またはリチウムイオンを含むポリマーゲルから形成される。
これに対して、剥離層が最終電極構造体の一部でないことが望ましい場合、剥離層は、保護層8または電気活性物質層4との接着強度に対して、より大きなキャリア基材14との接着強度を有するように設計されてもよい。そのような態様において、剥離力をキャリア基材に加える場合、キャリア基材14および剥離層16を、図1および図2と同様の構造体となる電極構造体から剥離する。
剥離層は、キャリア基材および保護層に対して所望の剥離特性および伝導度を示す如何なる適当な材料を用いて形成してもよい。使用される特定の材料は、キャリア基材の特定の種類、剥離層の他方の面に接触する材料、剥離層が最終電極構造体に組み込まれているかどうか、および剥離層が、電気化学電池に組み込まれた後、更なる機能を有しているかどうかなどの要因に少なくとも一部依存する。
一組の態様において、剥離層は、ポリマー材料から形成されている。本開示はこのように限定されるものではないので、ポリマーが使用される場合、ポリマーは、実質的に架橋され、実質的に架橋されていない、または部分的に架橋してもよい。適当なポリマーの具体例には、それらに限定されないが、ポリオキシド、ポリスルホン、ポリアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、および全フッ素化ポリマーが挙げられる。上記ポリマーは、例えば、固体ポリマー(例えば、固体ポリマー電解質)、ガラス状ポリマー、またはポリマーゲルの形態であってもよい。
いくつかの態様において、剥離層は、特定のイオン(例えば、アルカリ金属イオン)に対して伝導性であるが、実質的に導電性であるポリマーを含む。このような材料の例には、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、LiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2)でドーピングされた導電性ポリマー(電子ポリマーまたは導電性ポリマーとしても知られる)が挙げられる。導電性ポリマーは、当該技術分野で知られており、このようなポリマーの例には、それらに限定されないが、ポリ(アセチレン)類、ポリ(ピロール)類、ポリ(チオフェン)類、ポリ(アニリン)類、ポリ(フルオレン)類、ポリナフタレン類、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、およびポリ(p−フェニレンビニレン)類が挙げられる。導電性添加剤を、導電性ポリマーを形成するポリマーに添加してもよい。
いくつかの態様において、剥離層は、1つ以上の種類のイオンに対して伝導性を有するポリマーを含む。場合によっては、剥離層は実質的に非導電性であってもよい。イオン伝導性種(実質的に非導電性であってもよい)の例には、リチウム塩でドーピングされた非導電性材料(例えば、電気的絶縁材料)が挙げられる。例えば、リチウム塩がドーピングされている、アクリレート、ポリエチレンオキシド、シリコーン、ポリ塩化ビニル、および他の絶縁性ポリマーは、イオン伝導性とすることができる(ただし、実質的に非導電性)。ポリマーの更なる例には、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、および炭化水素ポリマーが挙げられる。好適なイオン伝導性ポリマーには、例えば、リチウム電気化学電池用の固体ポリマー電解質およびゲルポリマー電解質に有用であることが知られているイオン伝導性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシドが挙げられる。好適なスルホン化ポリマーは、例えば、スルホン化シロキサンポリマー、スルホン化ポリスチレン‐エチレン‐ブチレンポリマー、およびスルホン化ポリスチレンポリマーが挙げられる。好適な炭化水素ポリマーには、例えば、エチレン‐プロピレンポリマー、ポリスチレンポリマーなどが挙げられる。
剥離層はまた、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリグリコールビニルエーテル、ポリグリコールジビニルエーテル、および共同譲受人のYingらの米国特許第6,183,901号明細書に記載されているようなセパレータ層の保護コーティング層用のものなどのモノマーの重合から形成される架橋ポリマー材料を含んでもよい。例えば、そのような架橋ポリマー材料は、ポリジビニルポリ(エチレングリコール)である。上記架橋ポリマー材料は、更に、イオン伝導性を高めるために、例えば、リチウム塩などの塩を含んでもよい。
剥離層に使用するのに好適な他の種類のポリマーには、それらに限定されないが、ポリアミン(例えば、ポリ(エチレンイミン)およびポリプロピレンイミン(PPI));ポリアミド(例えば、ポリアミド(ナイロン)、ポリ(ε−カプロラクタム)(ナイロン6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66))、ポリイミド(例えば、ポリイミド、ポリニトリル、およびポリ(ピロメリットイミド‐1,4‐ジフェニルエーテル)(Kapton));ビニルポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチネシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ビニルポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびポリ(イソヘキシルシアノアクリレート));ポリアセタール;ポリオレフィン(例えば、ポリ(ブテン‐1)、ポリ(n‐ペンテン‐2)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート);ポリエーテル
(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO));ビニリデンポリマー(例えば、ポリイソブチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン));ポリアラミド(例えば、ポリ(イミノ‐1,3‐フェニレンイミノイソフタロイル)およびポリ(イミノ‐1,4‐フェニレンイミノテレフタロイル));ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスチアゾール(PBT));多複素環化合物(例えば、ポリピロール);ポリウレタン;フェノール系ポリマー(例えば、フェノール‐ホルムアルデヒド);ポリアルキン(例えば、ポリアセチレン);ポリジエン(例えば、1,2‐ポリブタジエン、シスまたはトランス‐1,4‐ポリブタジエン);ポリシロキサン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(ジエチルシロキサン)(PDES)、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)、およびポリメチルフェニルシロキサン(PMPS));および無機ポリマー(例えば、ポリホスファゼン、ポリホスホネート、ポリシラン、ポリシラザン)が挙げられる。
前述のおよび本明細書中に記載されたポリマー材料は、イオン伝導性を向上させるために、リチウム塩(例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、LiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2)などの塩を更に含んでもよい。
剥離層に好適な材料を選択するための他の基準、剥離層の適当な接着性試験、および離型層を形成する方法が、発明の名称「Release System for Electrochemical Cells」の、米国特許出願公開第2011/068001号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,513号において、より詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
剥離層が最終電極構造体に組み込まれている態様において、電気化学電池内でセパレータとして機能することができる剥離層を提供することが望ましい場合がある。このような態様において、剥離層は、電気化学電池の電気活性種に対して伝導性を有する。剥離層の伝導度を、例えば、乾燥状態での材料の真性伝導度によって提供しても、または剥離層には湿潤状態で伝導性を示すゲルポリマーを形成するために電解質で膨潤可能であるポリマーを含んでもよい。イオン伝導性の量を示す材料は、このような態様において使用することができるが、いくつかの態様において、剥離層は、乾燥または湿潤状態で、イオン伝導度、例えば約10−7S/cm以上、約10−6S/cm以上、約10−5S/cm以上、約10−4S/cm以上、または他の適当なイオン伝導度を示してもよい材料から形成される。これに対応して、剥離層は、乾燥または湿潤状態で、イオン伝導度、例えば約10−3S/cm以下、約10−4S/cm以下、約10−5S/cm以下、約10−6S/cm以下、または他の適当なイオン伝導度を示してもよい。上記の組合せも可能である(例えば、約10−6S/cm以上、かつ約10−3S/cm以下のイオン伝導度)。他の範囲も可能である。
剥離層が、最終の電極構造体および/または電気化学電池に組み込まれたいくらかの態様において、剥離層は、上記電気化学電池のサイクル時の電気化学電池または上記電池の要素に加えられる力または圧力の印加に耐える能力を持つように設計されている。上記圧力は、外部から加えられる(例えば、いくつかの態様において、一軸)圧力であってもよい。外部から加えられる圧力を、いくつかの態様において、電気活性物質層を形成する材料の降伏応力よりも大きくなるように選択してもよい。例えば、電気活性物質層がリチウムを含む態様において、上記電池に加えられた加圧力は、約5kg/cm2以上であってもよい。いくつかの態様において、上記加圧力は、適用される圧力は、約5kg/cm2以上、約6kg/cm2以上、約7kg/cm2以上、約8kg/cm2以上、約9kg/cm2以上、または他の適当な圧力であってもよい。これに対応して、上記加圧力は、約20kg/cm2以下、約10kg/cm2以下、約9kg/cm2以下、約8kg/cm2以下、約7kg/cm2以下、約6kg/cm2以下、または他の適当な圧力であってもよい。上記の組み合わせも可能である(例えば、約5kg/cm2以上、かつ約10kg/cm2以下の加圧力)。他の範囲も可能である。電気化学電池に適当な圧力を印加するのに好適な構造体が、発明の名称「Electrochemical Cell」の、米国特許出願公開第2011/0177398号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,528号において、より詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
上記の電極構造体は、一般に、アノードとして使用されてもよい。本明細書中に記載された電気化学電池のカソードに使用するのに好適な対応するカソード活性物質としては、それらに限定されないが、電気活性遷移金属カルコゲン化物、電気活性導電性ポリマー、および電気活性硫黄含有物質、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中で使用される用語「カルコゲン化物」は、酸素、硫黄、およびセレンの元素の一つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲン化物の例としては、それらに限定されないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、およびIrからなる群から選択される遷移金属の電気活性酸化物、硫化物、およびセレン化物が挙げられる。1つの態様において、遷移金属カルコゲン化物は、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物からなる群から選択される。1つの態様において、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーを含む。好適な電気活性伝導性ポリマーの例には、それらに限定されないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される電気活性および電子伝導性ポリマーが挙げられる。
本明細書中で使用される「電気活性硫黄含有材料」は、電気化学的活性が硫黄‐硫黄共有結合の破壊または形成を含む任意の形での硫黄元素を含むカソード活性物質を意味する。好適な電気活性硫黄含有材料には、それらに限定されないが、硫黄原子および炭素原子を含む硫黄元素およびポリマーであってもなくてもよい、有機材料が挙げられる。好適な有機材料には、ヘテロ原子を更に含むもの、導電性ポリマーセグメント、複合材、および導電性ポリマーが挙げられる。
Li/S系を含むいくつかの態様において、その酸化形中の硫黄含有物質は、共有結合性‐Sm‐部分、イオン性‐Sm−部分、およびイオン性‐Sm2−部分からなる群から選択されるポリスルフィド部分、Smを含む(式中、mは3以上の整数である)。1つの態様において、硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Smのmは、6以上の整数である。別の態様において、硫黄含有ポリマーのポリスルフィド部分Smのmは、8以上の整数である。別の態様において、硫黄含有物質が硫黄含有ポリマーである。別の態様において、硫黄含有ポリマーがポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smが側鎖基としての末端硫黄原子の一方または両方によって共有結合している。更に別の態様において、硫黄含有ポリマーがポリマー主鎖を有し、ポリスルフィド部分Smが、ポリスルフィド部分の末端硫黄原子の共有結合によりポリマー主鎖中に組み込まれる。
1つの態様において、電気活性硫黄含有物質は、50重量%より多い硫黄を含む。別の態様において、電気活性硫黄含有物質は、75重量%より多い硫黄を含む。更に別の態様において、電気活性硫黄含有物質は、90重量%より多い硫黄を含む。
本発明の実施に有用な電気活性硫黄含有物質の性質は、当技術分野で知られているように、広範囲に変化してもよい。1つの態様において、電気活性硫黄含有物質は、元素状態の硫黄を含む。別の態様において、電気活性硫黄含有物質は、元素状態の硫黄および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。
他の態様において、本明細書中に記載された電気化学電池は、複合カソードを含む。複合カソードは、例えば、
(a)電気活性硫黄含有カソード物質であって、前記電気活性硫黄含有カソード物質は、その酸化状態で、式‐Sm‐のポリスルフィド部分を含み、mは、本明細書中に記載されるように、3以上の整数である、および
(b)は電気活性遷移金属カルコゲン化組成物
を含んでもよい。上記電気活性遷移金属カルコゲン化組成物は、電気活性硫黄含有カソード物質をカプセル化してもよい。場合によっては、電気活性硫黄含有カソード物質のアニオン性還元生成物の輸送を遅らせることができる。電気活性遷移金属カルコゲン化組成物は、式:MjYk(OR)l
(式中、Mは遷移金属であり;Yは、各々、同一または異なり、酸素、硫黄、またはセレンであり;Rは有機基であり、各々、同一または異なり;jは1〜12の範囲の整数であり;kは0〜72の範囲の数であり;lは0〜72の範囲の数である。)
を有する電気活性遷移金属カルコゲン化物を含んでもよい。いくつかの態様において、kおよびlは、両方とも0であることはできない。
上記電池中のカソード区画からのアニオン性還元生成物の外部拡散を遅らせるために、電気活性遷移金属カルコゲン化組成物の層によって、硫黄含有カソード物質を、電解質層または他の層或いは上記電池の部品から効果的に分離してもよい。この層は高密度または多孔性であることができる。
1つの態様において、カソードは、集電体上に被覆された、電気活性硫黄含有カソード物質、電気活性遷移金属カルコゲン化物、並びに任意に結合剤、電解質および導電性添加剤の混合物を含む。別の態様において、電気活性硫黄含有カソード物質のコーティングは、カチオン輸送性の、アニオン性還元生成物の輸送遅延性の、遷移金属カルコゲン化組成物の薄いコヒーレントフィルムコーティングによってカプセル化または含浸される。更に別の態様において、カソードは、カチオン輸送性の、アニオン性還元生成物の輸送遅延性の、遷移金属カルコゲン化組成物のカプセル化層で個々に被覆された粒子状電気活性硫黄含有カソード物質を含む。他の構成も可能である。
1つの態様において、複合カソードは、アルカリ金属カチオン輸送性の、その上アニオン性還元生成物の輸送遅延性の電気活性遷移金属カルコゲン化組成物のカプセル化層で個々に被覆された、直径約10μm未満の、粒子状の硫黄含有カソード物質を含む。上記粒子は、「コア‐シェル」構成、例えば、電気活性硫黄含有カソード物質のコアと、電気活性遷移金属カルコゲン化物を含む遅延性バリア層のシェルを有してもよい。任意に、複合カソードは、本明細書中に記載されるものなどの様々な種類の結合剤、電解質および導電性材料を含む充填剤を含有してもよい。
いくらかの態様において、複合カソードは、任意に、更に可溶性の電気活性硫黄含有カソード物質で含浸させた、シリカ、アルミナ、およびケイ酸塩などの非電気活性金属酸化物を含む、粒子状の、多孔性の電気活性遷移金属カルコゲン化組成物である。これは、電気活性硫黄含有カソード物質(例えば、電気活性有機硫黄および炭素‐硫黄カソード物質)のみを含むカソードと比較して、エネルギー密度およびエネルギー容量を増加させるのに有用であり得る。
一組の態様において、複合カソードは、含み 電気活性硫黄含有物質(例えば、炭素‐硫黄ポリマーまたは元素状態の硫黄);V2O5;導電性カーボン;およびPEO結合剤を含む。
複合カソードの更なる配置、要素、および優位性が、発明の名称「Novel composite cathodes,electrochemical cells comprising novel composite cathodes,and processes for fabricating same」の、2006年1月13日出願の米国特許出願公開第2006/0115579号明細書において、より詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
カソードは、強化された電子伝導性を提供するために、一つ以上の導電性フィラーを更に含んでもよい。導電性フィラーは、材料の電気伝導特性を向上させることができ、かつ、例えば、カーボンブラック(例えば、Vulcan XC72Rカーボンブラック、Printex XE2、またはAkzo Nobel Ketjen EC−600 JD)、グラファイト繊維、グラファイトフィブリル、黒鉛粉末(例えば、Fluka #50870)、活性炭素繊維、炭素織物、不活性炭素ナノファイバーなどの導電性炭素が挙げられる。導電性フィラーの他の非限定的な例には、金属被覆ガラス粒子、金属粒子、金属繊維、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、金属フレーク、金属粉末、金属繊維、金属メッシュが挙げられる。いくつかの態様において、導電性フィラーは、導電性ポリマーを含んでもよい。好適な電気活性導電性ポリマーの例には、それらに限定されないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなる群から選択される、電気活性および電子伝導性ポリマーが挙げられる。当業者に公知の他の導電性材料は、導電性フィラーとして使用することができる。導電性フィラーの量は、存在する場合には、カソード活性層の2〜30重量%の範囲で存在してもよい。上記カソードはまた、それらに限定されないが、金属酸化物、アルミナ、シリカ、および遷移金属カルコゲン化物を含む他の添加剤を含んでもよい。
カソードはまた、結合剤を含んでもよい。結合剤材料の選択は、それがカソード中の他の材料に対して不活性である限り、広範囲に変化してもよい。いくつかの態様において、結合剤材料は、ポリマー材料であってもよい。ポリマー結合剤材料の例には、それらに限定されないが、フッ化ポリビニリデン(PVDF)系ポリマー、例えばポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、PVF2、およびヘキサフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニル)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン‐テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリブタジエン、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとのそのコポリマーおよびターポリマー、およびスチレン‐ブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、エチレン‐プロピレン‐ジエン(EPDM)ゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミドまたはエチレン酢酸ビニルコポリマーとのそのブレンドが挙げられる。場合によっては、結合剤材料は、水性流体キャリアに実質的に可溶性であってもよく、それらに限定されないが、セルロース誘導体、典型的にはメチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキサイド(PEO)が挙げられる。一組の態様において、結合剤材料は、ポリスルフィドを含む電池要素に対して化学的に中性(例えば、不活性)であるポリ(エチレン‐コ‐プロピレン‐コ‐5‐メチレン‐2‐ノルボルネン)(EPMN)である。UV硬化性アクリレート、UV硬化性メタクリレート、および熱硬化性のジビニルエーテルを使用することもできる。結合剤の量は、存在する場合には、カソード活性層の2〜30重量%の範囲で存在してもよい。
他の好適なカソード物質も可能である。例えば、アルカリ金属イオン電池(例えば、リチウムイオン電池)用のカソードも可能である。
上記のように、組み立てられた電気化学電池は、電極および上記電池内に存在する他の要素に加えて、電解質を含む。電気化学電池に使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な場合には、これらの材料は更に、アノードとカソードの間のセパレータとして機能することができる。アノードとカソードとの間にイオンを貯蔵および輸送することができる好適な液体、固体、またはゲル材料を使用してもよい。上記電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために電子的に非伝導性であってもよい。一組の態様において、非水性電解質を使用し、別の一組の態様において、水性電解質を使用する。
いくつかの態様において、電解質は、ゲルまたは固体ポリマー層などのポリマー層として存在してもよい。場合によっては、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができることに加えて、アノードとカソードとの間に配置されたポリマー層は、加えられた力または圧力の下でのカソード粗さから、アノード(例えば、アノードのベース電極層)を遮断するように機能することができ、力または圧力下でアノード表面を平滑に維持し、ベース電極層と平滑なポリマー層との間に押された多層を維持することにより、アノード(例えば、セラミック、ポリマー多層)の多層構造を安定化する。いくつかのこのような態様において、ポリマー層は、平滑な表面に対応し、平滑な表面を有するように選択することができる。
上記電解質は、イオン伝導性および1つ以上の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を提供するために、1つ以上のイオン性電解質塩を含むことができる。好適な非水性電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなる群から選択される1種以上の物質を含む有機電解質を含んでもよい。リチウム電池用非水性電解質の例が、DornineyによるLithium Batteries,New Materials,Developments and Perspectives、第4章、第137〜165頁、AmsterdamのElsevier(1994年)に記載されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例が、AlamgirらのLithium Batteries,New Materials,Developments and Perspectives、第3章、第93〜136頁、AmsterdamのElsevier(1994年)に記載されている。
有用な非水性液体電解質溶媒の例には、それらに限定されないが、非水性有機溶媒、例えば、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、サルファイト、スルホラン、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環式エーテル、グライム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、それらの置換形、およびそれらのブレンドが挙げられる。使用してもよい非環式エーテルの例には、それらに限定されないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2‐ジメトキシプロパン、および1,3‐ジメトキシプロパンが挙げられる。使用してもよい環状エーテルの例には、それらに限定されないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2‐メチルテトラヒドロフラン、1,4‐ジオキサン、1,3‐ジオキソラン、およびトリオキサンが挙げられる。使用してもよいポリエーテルの例には、それらに限定されないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、高級グライム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられる。使用してもよいスルホンの例には、それらに限定されないが、スルホラン、3‐メチルスルホラン、および3‐スルホレンが挙げられる。それらのフッ素化誘導体もまた、液体電解質溶媒として有用である。本明細書中に記載された上記溶媒の混合物も使用することができる。
いくつかの態様において、アノードに対して有用である(例えば、リチウムに対して比較的低い反応性、良好なリチウムイオン伝導性、および/または比較的低いポリスルフィド溶解度を有する)特定の液体電解質溶媒には、それらに限定されないが、1,1‐ジメトキシエタン(1,1‐DME)、1,1‐ジエトキシエタン、1,2‐ジエトキシエタン、ジエトキシメタン、ジブチルエーテル、アニソールまたはメトキシベンゼン、ベラトロールまたは1,2‐ジメトキシベンゼン、1,3‐ジメトキシベンゼン、t‐ブトキシエトキシエタン、2,5‐ジメトキシテトラヒドロフラン、シクロペンタノンエチレンケタール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。カソードに対して有用である(例えば、比較的高いポリスルフィド溶解度を有し、および/または高い出力化および/または高い硫黄使用率を可能にすることができる)特定の液体電解質溶媒には、それらに限定されないが、ジメトキシエタン(DME、1,2‐ジメトキシエタン)またはグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ポリグライム、スルホラン、1,3‐ジオキソラン(DOL)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
具体的な溶媒混合物としては、それらに限定されないが、1,3‐ジオキソランおよびジメトキシエタン、1,3‐ジオキソランおよびジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3‐ジオキソランおよびトリエチレングリコールジメチルエーテル、および1,3‐ジオキソランおよびスルホランが挙げられる。混合物中の2つの溶媒の重量比は、約5/95〜95/5の範囲で変化してもよい。いくつかの態様において、溶媒混合物は、ジオキソランを含む(例えば、40重量%を超えるジオキソラン)。
場合によっては、水性溶媒を、リチウム電池用の電解質として使用することができる。水性溶媒には、イオン性塩のような他の成分を含むことができる、水を含むことができる。いくつかの態様において、電解質中の水素イオン濃度を低減するように、電解質は、水酸化リチウムなどの種、または電解質塩基を提供する他の種を含むことができる。
液体電解質溶媒はまた、ゲルポリマー電解質のための可塑剤としても有用であることができる。有用なゲルポリマー電解質の例には、それらに限定されないが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、全フッ素化膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、それらの誘導体、それらの共重合体、それらの架橋構造体および網目状構造体、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリマー、並びに任意に1つ以上の可塑剤が挙げられる。
有用な固体ポリマー電解質の例には、それらに限定されないが、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、それらの誘導体、それらの共重合体、それらの架橋構造体および網目状構造体、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリマーを含むものが挙げられる。
電解質溶媒に加えて、電解質を形成するための当技術分野で知られているゲル化剤、およびポリマーは、イオン伝導性を増加させるために、当技術分野で知られている1つ以上のイオン性電解質塩を更に含んでもよい。本明細書中に記載された電解質に使用するためのイオン性電解質塩の例には、それらに限定されないが、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO4、LiAsF6、LiSO3CF3、LiSO3CH3、LiBF4、LiB(Ph)4、LiPF6、LiC(SO2CF3)3、およびLiN(SO2CF3)2が挙げられる。有用である他の電解質塩には、リチウムポリスルフィド(Li2Sx)、および有機イオン性ポリスルフィドのリチウム塩(LiSxR)n、(式中、xは1〜20の整数であり、nは1〜3の整数であり、そしてRは有機基である)、並びにLeeらの米国特許第5,538,812号明細書に開示のものが挙げられる。溶媒中のイオン性リチウム塩の濃度範囲は、例えば、約0.2m〜約2.0m(mは溶媒のモル/kgである)で用いてもよい。いくつかの態様において、約0.5m〜約1.5mの範囲の濃度が使用される。Li/S電池の放電時に、形成されるリチウムスルフィドまたはポリスルフィドが通常は電解質にイオン伝導性を提供し、イオン性リチウム塩の添加を不要にすることができる点で、溶媒へのイオン性リチウム塩の添加は任意である。更に、無機硝酸塩、有機硝酸塩、または無機亜硝酸塩などのイオン性N−O添加剤を使用する場合、更なるイオン性リチウム電解質塩が必要でない場合には、電解質にイオン伝導度を提供することができる。
前述したように、不均一な電解質を、本開示の電極構造体を含む電気化学電池に使用してもよい。本明細書中で使用されるように、「不均一電解質」とは、少なくとも二つの異なる液体溶媒(第1、第2の電解質溶媒、またはアノード側およびカソード側電解質溶媒と呼ぶ)を含む電解質である。多くの態様において、多くの電解質系は、それらが大きく分離し、少なくとも一方が上記電池の少なくとも1つの要素から隔離され得る程度まで非混和性である(または電池内で非混和性にすることができる)1つ以上の溶媒を含むが、二つの異なる液体溶媒は、互いに混和性または不混和性であってもよい。不均一な電解質は、液体、ゲル、またはそれらの組み合わせの形態であってもよい。不均一な電解質の具体例を以下に示す。
本明細書中に記載されたいくらかの態様は、電気化学電池の動作時に分割することができる少なくとも二つの電解質溶媒を有する不均一な電解質を含むので、一つの目的は、自然に発生する溶媒混合、即ち、2つの非混和性液体のエマルジョンの発生の可能性を防止または減少することである。これは、いくつかの態様において、例えば、電極で不均衡に存在する高分子ゲル電解質、ガラス状ポリマー、または高粘度液体を形成することによって、電極(例えば、アノード)における少なくとも1つの電解質溶媒の「固定化」によって、達成することができる。
1つの態様において、不均一な電解質に好適な電解質は、アノードに対して分割し、アノードに対して有用である第1の電解質の溶媒(例えば、ジオキソラン(DOL);本明細書中では「アノード側電解質溶媒」と呼ぶ)およびカソードに対して分割し、カソードに対して有用である第2の電解質溶媒(例えば、1,2‐ジメトキシエタン(DME);本明細書中では「カソード側電解質溶媒」と呼ぶ)を含む。いくつかの態様において、アノード側電解質溶媒は、リチウム金属に対して比較的低い反応性を有し、カソード側電解質溶媒より低い、ポリスルフィド(例えばLi2Sx、ここで、x>2)に対する可溶性であってもよい。カソード側電解質溶媒は、ポリスルフィドに対して比較的高い溶解度を有してもよいが、リチウム金属に対してより反応性であってもよい。アノード側電解質溶媒がアノードに不均衡に存在し、カソード側電解質溶媒がカソードに不均衡に存在するように、電気化学電池の動作時に電解質溶媒を分離することによって、電気化学電池は、両方の電解質溶媒の望ましい特性(例えば、アノード側電解質溶媒の比較的低いリチウム反応性およびカソード側電解質溶媒の比較的高いポリスルフィド溶解度)から有用なものとなり得る。具体的には、アノードの消費量を減少させることができ、不溶性のポリスルフィドのカソードでの蓄積(即ち、「石板質の(slate)」低級ポリスルフィド、Li2Sx(式中、x<3)、例えばLi2S2およびLi2S)を減少させることができ、その結果、電気化学電池は、より長いサイクル寿命を有してもよい。更に、本明細書中に記載された電池は、高い比エネルギー(例えば、400Wh/kgより大きい)、改善された安全性を有してもよく、および/または広範囲の温度(例えば、−70℃〜+75℃)で動作可能であってもよい。電池中の特定の位置での、一方の種または溶媒の他方に対する不均衡な存在とは、第一の種または溶媒が、その位置に(例えば、電池電極の表面に)、モル比または重量比、少なくとも2:1、あるいは5:1、10:1、50:1、または100:1以上の比率で存在することを意味する。
いくつかの態様において、電気化学電池は、カソードとアノードとの間に介在するセパレータを更に含んでもよい。セパレータは、アノードとカソードを互いから分離または絶縁して短絡を防止し、かつ、アノードとカソードとの間のイオンの輸送を可能にする、固体の非導電性または絶縁性の材料であってもよい。
セパレータの細孔は、部分的にまたは実質的に電解質で充填されてもよい。セパレータは、電池の製造時にアノードおよびカソードで挟まれた多孔性自立膜として供給されてもよい。また、例えば、Carlsonらの国際公開第99/33125号パンフレットおよびBagleyらの米国特許第5,194,341号明細書に記載のように、多孔性セパレータ層を電極の一方の表面に直接塗布してもよい。
様々なセパレータ材料が当該技術分野で知られている。好適な固体多孔性セパレータ材料の例には、それらに限定されないが、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ガラス繊維濾紙、およびセラミック材料が挙げられる。本発明で使用するのに好適なセパレータおよびセパレータ材料の更なる例には、共同譲受人のCarlsonらの米国特許出願第08/995089号および同09/215112号に記載されているように、自立膜として、または電極の一方の上に直接コーティング塗布することのいずれかによって提供されてもよい、微孔性キセロゲル層、例えば、微孔性擬ベーマイト層を含むものである。固体電解質およびゲル電解質は、それらの電解質機能に加えて、セパレータとして機能してもよい。
いくつかの態様において、電気化学電池内の電気活性表面に垂直な力を加えることにより、苔状リチウム成長、樹状突起の形成、および他の適用可能な副反応などの望ましくない副反応による、活性物質の消耗を減少および/または防止してもよい。これに対応して、電気活性表面に垂直力を加えることにより、電気化学電池内に多量のアノード活性物質および/または電解質を含むことの必要性を低減および/または排除することができる。電池の充放電時の活性物質の損失に適応する必要性を低減および/または排除することによって、より少量のアノード活性物質を、電池およびデバイスを製造するために使用してもよい。例えば、後述の態様を含む多くの異なる構成を用いて、上記力を電池の外部または電池の内部要素に加えてもよい。好適な力を加えるのに使用することができる構造体の例が、発明の名称「Application of Force In Electrochemical Cells」の、米国特許出願公開第2010/0035128号明細書として公開された、2009年8月4日出願の米国特許出願第12/535,328号;発明の名称「Cathode for Lithium Battery」の、2010年3月19日出願の米国特許出願第12/727,862号により詳細に記載されており、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
以下の文献は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる:
発明の名称「Lithium Anodes for Electrochemical Cells」の、2001年5月23日出願の米国特許第7,247,408号;
発明の名称「Stabilized Anode for Lithium−Polymer Batteries」の、1996年3月19日出願の米国特許第5,648,187号;
発明の名称「Stabilized Anode for Lithium−Polymer Batteries」の、1997年7月7日出願の米国特許第5,961,672号;
発明の名称「Novel Composite Cathodes,Electrochemical Cells Comprising Novel Composite Cathodes,and Processes for Fabricating Same」の、1997年5月21日出願の米国特許第5,919,587号;
発明の名称「Rechargeable Lithium/Water, Lithium/Air Batteries」の、米国特許出願公開第2007/0221265号明細書として公開された、2006年4月6日出願の米国特許出願第11/400,781号;
発明の名称「Swelling Inhibition in Lithium Batteries」の、国際公開第2009/017726号パンフレットとして公開された、2008年7月29日出願の国際出願番号PCT/US2008/009158;
発明の名称「Separation of Electrolytes」の、米国特許出願公開第2010/0129699号明細書として公開された、2009年5月26日出願の米国特許出願第12/312,764号;
発明の名称「Primer for Battery Electrode」の、国際公開第2009/054987号パンフレットとして公開された、2008年10月23日出願の国際出願番号PCT/US2008/012042;
発明の名称「Protective Circuit for Energy−Storage Device」の、米国特許出願公開第2009/0200986号明細書として公開された、2008年2月8日出願の米国特許出願第12/069,335号;
発明の名称「Electrode Protection in both Aqueous and Non−Aqueous Electrochemical Cells,including Rechargeable Lithium Batteries」の、米国特許出願公開第2007/0224502号明細書として公開された、2006年4月6日出願の米国特許出願第11/400,025号;
発明の名称「Lithium Alloy/Sulfur Batteries」の、米国特許出願公開第2008/0318128号明細書として公開された、2007年6月22日出願の米国特許出願第11/821,576号;
発明の名称「Lithium Sulfur Rechargeable Battery Fuel Gauge Systems and Methods」の、米国特許出願公開第2006/0238203号明細書として公開された、2005年4月20日出願の米国特許出願第11/111,262号;
発明の名称「Co−Flash Evaporation of Polymerizable Monomers and Non−Polymerizable Carrier Solvent/Salt Mixtures/Solutions」の、米国特許出願公開第2008/0187663号明細書として公開された、2007年3月23日出願の米国特許出願第11/728,197号;
発明の名称「Electrolyte Additives for Lithium Batteries and Related Methods」の、国際公開第2009/042071号パンフレットとして公開された、2008年9月19日出願の国際出願番号PCT/US2008/010894;
発明の名称「Porous Electrodes and Associated Methods」の、国際公開第2009/089018号パンフレットとして公開された、2009年1月8日出願の国際出願番号PCT/US2009/000090;
発明の名称「Application of Force In Electrochemical Cells」の、米国特許出願公開第2010/0035128号明細書として公開された、2009年8月4日出願の米国特許出願第12/535,328号;
発明の名称「Cathode for Lithium Battery」の、2010年3月19日出願の米国特許出願第12/727,862号;
発明の名称「Hermetic Sample Holder and Method for Performing Microanalysis Under Controlled Atmosphere Environment」の、2009年5月22日出願の米国特許出願第12/471,095号;
(発明の名称「Release System for Electrochemical Cells」の、2009年8月24日出願の仮特許出願第61/236,322号から優先権を主張する)発明の名称「Release System for Electrochemical Cells」の、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,513号;
発明の名称「Electrically Non−Conductive Materials for Electrochemical Cells」の、2010年8月24日出願の米国仮特許出願第61/376,554号;
発明の名称「Electrochemical Cell」の、米国特許出願公開第2011/0177398号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,528号;
発明の名称「Electrochemical Cells Comprising Porous Structures Comprising Sulfur」の、米国特許出願公開第2011/0070494号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,563号[S1583.70029US00];
発明の名称「Electrochemical Cells Comprising Porous Structures Comprising Sulfur」の、米国特許出願公開第2011/0070491号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,551号[S1583.70030US00];
発明の名称「Electrochemical Cells Comprising Porous Structures Comprising Sulfur」の、米国特許出願公開第2011/0059361号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,576号[S1583.70031US00];
発明の名称「Electrochemical Cells Comprising Porous Structures Comprising Sulfur」の、米国特許出願公開第2011/0076560号明細書として公開された、2010年8月24日出願の米国特許出願第12/862,581号[S1583.70024US01];
発明の名称「Low Electrolyte Electrochemical Cells」の、米国特許出願公開第2012/0070746号明細書として公開された、2011年9月22日出願の米国特許出願第13/240,113号[S1583.70033US01];
発明の名称「Porous Structures for Energy storage Devices」の、米国特許出願公開第2011/0206992号明細書として公開された、2011年2月23日出願の米国特許出願第13/033,419号[S1583.70034US00];
発明の名称「Plating Technique for Electrode」の、米国特許出願公開第2013/0017441号明細書として公開された、2012年6月15日出願の米国特許出願第13/524,662号[S1583.70040US01];
発明の名称「Electrode Structure for Electrochemical Cell」の、2013年2月14日出願の米国特許出願第13/766,862号[S1583.70041US01];および
発明の名称「Electrode Structure and Method for Making the Same」の、2012年10月4日出願の米国特許出願第13/644,933号[S1583.70044US01].本明細書中に開示される全ての他の特許および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
本発明のいくつかの態様が本明細書中に記載および説明されたが、当業者は、機能を実行する、および/または、結果および/または本明細書中に記載された優位性の1つ以上を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に認識し、そのような変形および/または改良はそれぞれ、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書中に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することを容易に理解し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、そのために本発明の教示が用いられる特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書中に記載された本発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識し、または確認することができる。従って、前述の態様は、例示のためだけに示され、かつ添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明は、具体的に説明され、特許請求の範囲に記載された以外の方法で実施することができると理解されるべきである。本発明は、本明細書中に記載された、個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。また、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない場合には、本発明の範囲内に包含されている。
実施例1:異なる基材上への窒化リチウム物の被覆
窒化リチウム層を、銅の金属化ポリエチレンテレフタレート基材;4μm厚の金属リチウム;および約2μm未満の厚さを有する金属リチウム上に被覆した約100nm未満の厚さを有する酸化リチウムバッファ層;のそれぞれの上に被覆した。窒化リチウムおよび酸化リチウム層の被覆は、リチウム蒸気とプラズマ活性化窒素ガスの反応を用いて行った。銅金属化基板上に被覆した窒化リチウム層の画像200および三次元形状測定画像202を、図5に示す。金属リチウム上に直接被覆した窒化リチウム層の画像204および三次元形状測定画像206を、図6に示す。酸化リチウムバッファ層の上に被覆された窒化リチウム層の画像208および三次元形状測定画像210を、図7に示す。
無地の金属化基板上に被覆された窒化リチウム層は、約40nmの算術平均表面粗さ(Ra)を有する(図5を参照)実質的に連続で、かつ非晶質の窒化リチウム層を形成した。これに対して、未処理の金属リチウムの上への窒化リチウムの直接被覆によって、下層の金属リチウムが、約400nmの算術平均表面粗さ(Ra)を有する(図6を参照)多結晶質多孔性窒化リチウムへ総変換するという結果となった。酸化リチウムの最小限の層(例えば、バッファ層)で、金属リチウムを被覆した後、被覆した窒化リチウム層は、約100nmのRaおよび目標の厚さ200nm(図7を参照)に近い厚さを有する、より低い多結晶性の、より平滑な材料となった。
酸化リチウムバッファ層の上に被覆された窒化リチウム層のSEM画像を図8に示す。上記図は明らかに、被覆した窒化リチウム層8の下に配置された未反応のリチウム4を示している。上記酸化リチウムバッファ層は、示された図において、薄すぎて画像化できなかった。
実施例2:増加した酸化リチウム厚さを有する電極構造体
上記実施例の電極構造体中の酸化リチウムバッファ層の厚さが薄すぎて測定できないので、下層のリチウム金属層の変換を防止するリチウム金属層および窒化リチウム層の間のバッファ層の存在および有用性であることを示すために更なる実験を行った。標準技術(SEM断面画像)によって容易に測定可能である、約1μmの厚さを有する酸化リチウム層を、25μm厚さの金属リチウム基板上に被覆した。次いで、窒化リチウムの200nmのコーティングを、酸化リチウム層の上に被覆した。図9に示されているように、酸化リチウム層は可視であり、未反応の金属リチウム基板を窒化リチウムの層から分離する。更に、窒化リチウム層は、目標の200nmの厚さに近い厚さを有した。
実施例3:インピーダンス分光法
小型フラット対称リチウム‐リチウム電池を、1μmのバッファ酸化物層と25μmのリチウム金属の上に200nmの窒化リチウム層を含む電極から組み立てた。同様の電池を、リチウム窒化物コーティング(すなわち、25μmのリチウム金属の上の1μmの酸化物バッファ層)を使用しない同じ材料を用いて組み立てた。次いで、上記電池に対して、インピーダンス分光試験を行った。図10には、リチウム金属上に被覆した酸化リチウムの外側層を有する電極のみを含む電池(曲線300)、並びに酸化リチウムバッファ層および金属リチウムの上に被覆した窒化リチウムの外側層を有する電極を含む電池(曲線302)に対するインピーダンス分光結果を示す。図に示されるように、窒化リチウムおよび酸化リチウムの材料層の両方を組み込んだ電極構造体は、酸化リチウムのみを含む電極構造体のインピーダンスの約1/3未満であった。理論に束縛されるものではないが、酸化リチウム層上にコーティングされた窒化リチウムは、得られる電極構造体の電荷移動抵抗を低下させ、電池インピーダンスの減少が観察される。
実施例4:プラズマ処理を用いるバッファ層の形成
この実施例には、下にある金属リチウム基板の表面層を変換するプラズマ処理を用いてバッファ層を形成した結果を示す。上記プラズマ処理は、例えば、N2OまたはCO2などの適当な不動態化ガスを用いて行うことができる。上記の被覆プロセスと比較して、上記プラズマ処理は、金属リチウムの表面層のみを変換するプラズマ処理のために、比較的薄い酸化物層をもたらすことが予想された。予想通り、金属リチウム表面のプラズマ処理は、上記表面上のリチウムの一部を、酸化リチウムに変換した。しかしながら、下にある金属リチウム上に形成された酸化リチウム層は、非常に薄く、多孔性であり、不連続であった。上記層の多孔性および不連続性は、続いて被覆される材料を下にある金属リチウムと相互作用させ、おそらく後続の金属リチウムの変換に至るので、この多孔性で、不連続の酸化リチウム層は、バッファ層として使用するのに不適切であったことがわかった。