JP2018094621A - 複合部材、接合用アルミニウム合金部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】SPR接合時の耐割れ性を確保できる接合用Al合金部材を提供する。【解決手段】本発明の接合用Al合金部材は、Siを6〜12%含むAl合金の鋳物からなり、塑性変形して機械的に接合される接合部と、接合に関与しない非接合部とを備える。その接合部は、初晶アルミニウムの存在割合である初晶率が非接合部よりも大きく、非接合部の初晶率に対する接合部の初晶率の比率である初晶比は1.2以上であると好ましい。このような接合用Al合金部材の接合部は、鋳型内へ注湯されたAl合金の溶湯が初晶アルミニウムの晶出によって固液共存状態となったとき(例えば固相率が0.25〜0.95のとき)に、接合部に対応する領域を加圧ピンで局部的に加圧してダイカスト鋳造することにより得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金の鋳物に被接合部材を接合してできた複合部材、その鋳物からなる接合用アルミニウム合金部材およびその製造方法に関する。
部材の複雑化、大型化、多機能化、軽量化等に対応するため、形状、材質、機能等の異なる複数の部材を接合した複合部材が用いられる。接合は、複合部材の要求仕様等に応じて、接着、溶接、締結、結合等によりなされるが、強固な接合を比較的容易に行える機械的な接合が多用されている。例えば、着脱が必要な部材はネジ(ボルト・ナット等)で締結され、着脱が不要な部材はリベットで結合される。
リベットを用いると、溶接等ができない異種材間等でも容易に接合できる。また最近では、穿孔作業が不要(つまり自己穿孔式)で、強固な結合が可能なセルフピアシングリベット(Self Piercing Rivet/単に「SPR」という。)を用いた接合が注目されている。例えば、Al―Si系合金からなるダイカスト部材へSPRを打鋲して、別な薄板を接合する場合について下記の特許文献に記載がある([0029]、図3等)。
特開2010−90459号公報
特許文献1は、成分組成を調整したAl―Si系合金からなるダイカスト部材に熱処理(溶体化処理、時効処理)を施して延性を高めることにより、SPRの打鋲時に生じる割れを抑止することを提案している。
しかし、特許文献1では、接合部以外の部分は熱処理しなくても十分な特性を満たすにも拘わらず、SPRを打鋲したときの局所変形に伴う割れを防止するためだけに熱処理をしている。しかも、ダイカスト部材の熱処理時に生じるブリスタ(高圧ガス巣の膨張)を防止するために、特殊な高真空ダイカストも行っている。このような手法は、ダイカスト部材の高コスト化を招き、好ましくない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる手法により、耐割れ性に優れた接合部を有する接合用アルミニウム合金部材とその製造方法を提供することを目的とする。また、その接合用アルミニウム合金部材と被接合部材をリベット接合した複合部材も合わせて提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、局所変形により割れを生じ易い接合部に高延性な初晶アルミニウムを多く晶出させることにより接合部の耐割れ性を高めることを着想し、その効果を実際に確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《接合用アルミニウム合金部材》
(1)本発明の接合用アルミニウム合金部材は、アルミニウム合金の鋳物からなり、塑性変形して機械的に接合される接合部と、接合に関与しない非接合部とを備える接合用アルミニウム合金部材であって、前記アルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSiを6〜12%含み、前記接合部は、初晶アルミニウムの存在割合である初晶率が前記非接合部よりも大きい。
(2)本発明の接合用アルミニウム合金部材(単に「Al合金部材」ともいう。)によれば、熱処理等を施すまでもなく、割れ等を抑止しつつ、安定した品質でSPR等による機械的な接合を行うことができる。この理由は次のように考えられる。
Siを比較的多く含む鋳物は延性が必ずしも十分ではない。しかし、本発明に係る接合部は、接合部以外の部分(非接合部)よりも初晶アルミニウム(適宜、「α―Al」という。)が多くなっており、高延性となっている。このため本発明に係る接合部は、接合時にSPRが打鋲等されて局所的に大きな変形が生じるとしても、割れ難く、優れた耐割れ性を発揮する。
なお、本発明のAl合金部材の大部分を占める非接合部は、全体的な合金組成と冷却速度(凝固速度)に応じた通常の金属組織(鋳造組織)からなるため、予定された本来の機械的特性等を発揮する。従って、α―Al量が相対的に多い接合部が点在していても、本発明のAl合金部材の機械的特性(強度等)が大きく劣化等することはない。
《接合用アルミニウム合金部材の製造方法》
本発明は接合用アルミニウム合金部材の製造方法としても把握できる。つまり本発明は、アルミニウム合金の鋳物からなり、塑性変形することにより機械的に接合される接合部と接合に関与しない非接合部とを備える接合用アルミニウム合金部材の製造方法であって、全体を100%としてSiを6〜12%含むアルミニウム合金の溶湯を鋳型へ注湯する注湯工程と、該鋳型内へ注湯された溶湯を冷却して凝固させる冷却工程とを備え、さらに、該冷却工程中に、初晶アルミニウムが晶出して固液共存状態となっている該溶湯を、前記接合部に対応する領域で局部的に加圧する局部加圧工程を備える接合用アルミニウム合金部材の製造方法でもよい。
《複合部材》
さらに本発明は、上述したAl合金部材と他の部材とを接合した複合部材としても把握できる。つまり本発明は、上述した接合用アルミニウム合金部材と、該接合用アルミニウム合金部材に接合される少なくとも1以上の被接合部材と、該被接合部材側を貫通した先端部が前記接合用アルミニウム合金部材の接合部内で塑性変形して該接合用アルミニウム合金部材と該被接合部材を接合する接合具と、を備える複合部材でもよい。
《その他》
(1)本発明に係る初晶率は、該当部位を光学顕微鏡で観察して得られた金属組織写真(観察領域:20×5mm)を画像処理して求まるα―Alの面積率により算出する。接合部の初晶率は、基本的に、接合部の中央域にある金属組織を観察する。但し、接合後で塑性変形が生じている接合部については、塑性変形が生じていない領域または塑性変形量が最も少ない領域の金属組織を観察する。非接合部については、接合部の影響が及んでいない領域(例えば、接合部端から少なくとも10mm離間した領域)の金属組織を観察して、その初晶率を算出すればよい。
接合部の大きさや形状は、接合方法または接合具の形態により、適宜調整される。例えば、SPRを用いる場合なら、その脚部(軸部)の塑性変形域よりも一回り大きく接合部を設定すると好ましい。通常、SPRの脚部の塑性変形域と頭部の占有域はほぼ同程度の大きさであるため、接合部の面積は、例えば、SPRの頭部の面積の1〜2倍さらには1.2〜1.6倍としてもよい。SPRの頭部が円形状なら、接合部は、例えば、SPRの頭部径の1〜1.5倍さらには1.1〜1.3倍の直径を有する円形状としてもよい。
非接合部は、接合に関与しない領域であるが、換言すると、接合部以外の領域、または接合時に塑性変形しない領域といい得る。なお、接合部と非接合部の境界を明確にする必要があるときは、初晶率に基づいて判断してもよい。例えば、接合部から十分に離れた非接合部の初晶率の1.1倍付近を、両者間の境界としてもよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
局部加圧工程の様子を模式的に示す説明図である。 鋳造に用いた金型(要部)と製作した鋳物の概観図である。 比較試料に係るSPR接合部材を示す概観図である。 各試料に係るSPR接合部の断面を示すX線CT写真である。 各試料に係る接合部分の金属組織写真である。 各試料に係る機械的特性を示す棒グラフである。 加圧開始時(固相率)を変化させたときの各金属組織を示す写真である。 試料の製作に用いたAl合金溶湯の凝固曲線である。 加圧開始時の固相率とSPR接合時に生じた割れの数との相関図である。 鋳物に含まれるSi量とその機械的特性との相関図である。 金型の材質(冷却速度)と鋳物のたわみまたは曲げ強度との関係を示す分散図である。 金型の材質(冷却速度)と初晶Al中に固溶しているSi量またはMg量との関係を示す分散図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明のAl合金部材のみならず、その製造方法やAl合金部材を用いた複合部材にも適宜該当する。また方法的な構成要素であっても、一定の場合、物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《接合部》
本発明に係る接合部は、非接合部よりも初晶率が高く、例えば、非接合部の初晶率に対する接合部の初晶率の比率(初晶比)が1.2以上、1.25以上さらには1.3以上であると好ましい。なお、接合部と非接合部の特性バランスを図る観点から、敢えていうと、初晶比の上限値は2以下さらには1.5以下であると好ましい。
接合部は周囲(非接合部)よりも初晶率が高くて相対的に高延性であるが、α―Al中に含まれる合金元素(Si等)が増加すると、接合部の延性が低下し得る。そこで、接合部は、初晶アルミニウムに含まれる合金元素の固溶量が非接合部よりも少ないと好ましい。
合金元素の固溶量は、合金組成(元素の種類、その含有量)、冷却速度等により異なるため、一概に規定し難い。そこで、例えば、α―Alに固溶している合金元素の合計量が、非接合部よりも接合部で、0.05%以上、0.1%以上さらには0.15%以上少ないと好ましい。
また、本発明のAl合金部材(鋳物)は、熱処理をしなくても、初晶率の高い接合部が高い耐割れ性を発揮する。このような熱処理されていない鋳物では、非接合部が鋳造組織のままとなっており、共晶ネットワーク組織を有することが多い。逆にいえば、熱処理されている場合、その共晶ネットワーク組織が崩れて、粒状のα―Alや共晶等が分散した組織となっている。なお、共晶ネットワーク組織とは、α―Alを取り囲むように共晶(Al―Si系)が連なってできている組織である。
ちなみに、本発明に係る接合部は、接合方法(接合具)にも依るが、例えば、直径または一辺が、3〜15mmさらには4〜10mm程度の円形状または方形状をしている。接合部自体は、大きくないため、Al合金部材中に複数配設されていても、Al合金部材の特性(強度等)には殆ど影響しない。
《Al合金》
本発明のAl合金部材は、鋳造用のAl―Si系合金からなり、少なくともSiを6〜12%、7〜11%さらには8〜10.5%含むと好ましい。Siが過少では鋳造性が低下して、引け量が大きくなり、鋳物内部に鋳造欠陥が発生し易くなる。Siが過多になると、鋳物の機械的特性(特に伸び)が低下し易くなり、接合部における耐割れ性も低下し得る。なお、本明細書でいう合金組成は、特に断らない限り、接合部と非接合部の両方を含む全体を100質量%(単に「%」という。)として示した質量割合である。
本発明に係るAl合金は、Si以外に、Mg、Ti、Zr、Cu、Fe等の合金元素またはSr、Na、Sb等の改質元素を含んでもよい。具体的には次の通りである。
Mgは、Al基地を強化し、0.1〜1%さらには0.2〜0.7%含まれると好ましい。Mgが過少では、その効果が十分に得られず、Mgが過多になると、MgSi等が晶出して延性や靭性を低下させ得る。
TiとZrは、結晶粒を微細化させると共にAl基地を強化させ、それぞれ0.05〜0.3%さらには0.07〜0.2%、合計で0.06〜0.4%さらには0.08〜0.3%含まれると好ましい。Tiおよび/またはZrが過少ではその効果が乏しく、それらが過多では、鋳造組織中に粗大なTi化合物またはZr化合物が晶出するようになり、却って、鋳物の機械的特性(特に延性)が低下し得る。
Sr、NaまたはSbは、共晶Siを微細化させて、鋳物(主に非接合部)の機械的特性(特に延性または靱性)を向上させ得る。これらの改質元素は微量で十分であり、例えば、含有合計量を0.003〜0.05%さらには0.01〜0.03%とするとよい。
《接合用アルミニウム合金部材の製造方法》
鋳物からなるAl合金部材は、上述したAl合金の溶湯を鋳型へ注湯する注湯工程と、その溶湯を鋳型内で冷却して凝固させる冷却工程とを経て得られる。そして本発明に係る接合部は、その冷却工程中に、α―Alが晶出して固液共存状態となっている溶湯を、接合部に対応する領域で局部的に加圧する局部加圧工程により形成される。この局部加圧工程により、初晶率の高い接合部が形成される様子を図1に模式的に示した。なお、このような局部加圧を的確に行うために、本発明の製造方法は、金型のキャビティへ溶湯を加圧しつつ注湯するダイカスト鋳造によりなされると好ましい。
局部加圧の少なくともその一部は、溶湯の固相率が0.25〜0.95、0.3〜0.8さらには0.4〜0.7のときになされると好ましい。固相率の過小なときに局部加圧がなされると、初晶が少なく接合部の初晶率が高まらない。固相率の過大なときに局部加圧がなされると、溶湯の流動性が低いため、高い初晶率が望めない。なお、詳細は後述するが、本発明に係る固相率は、凝固曲線と実測した冷却曲線とに基づいて定める。
本発明に係る冷却工程は、750℃/s以下さらには700℃/s以下の冷却速度でなされると好ましい。冷却速度が過大では、Si等の合金元素がα―Al中に多く固溶して、接合部の延性が低下し得る。
冷却工程を通じた最大の冷却速度が上記の範囲内であれば良い。通常、溶湯の注湯直後に冷却速度が最大となり、合金元素の固溶量はα―Alが晶出する初期にほぼ定まる。従って、本発明に係る冷却速度は、注湯工程完了後または冷却工程開始時の冷却速度と考えてもよい。なお、冷却速度は、接合部またはその近傍で測定された温度の時間変化により求められたものであるほど好ましい。
《複合部材》
本発明のAl合金部材は、形状、材質等が異なる別な被接合部材と接合され得る。接合方法は種々あり得るが、接合部の高延性または高耐割れ性を利用して、リベット(特にSPR)により接合されると好ましい。
被接合部材は、Fe系部材(特に鋼板)、Al系部材、Mg系部材、Ti系部材等の金属部材の他、樹脂部材、さらには各種FRPのような複合部材等でもよい。なお、「X系部材」とは、純X部材、X合金部材またはXを含む複合部材を意味する。また、被接合部材の少なくともリベット接合部は、リベットが貫通する(薄)板状であると好ましい。
様々な試料(Al合金部材)を製作し、それらの機械的特性や耐割れ性の評価、金属組織の観察等を行った。このような具体例を挙げつつ、本発明をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
《試料の製造》
(1)図2に示すような加圧ピンを備えた金型(鋳型)を用いて、同図に示すようなAl合金からなる鋳物(Al合金部材)をダイカスト鋳造した(鋳造工程)。具体的にいうと、下部から所望組成に調製したAl合金の溶湯を図下方にあるプランジャー(図略)で加圧して、ランナ、ゲートを通して矩形状のキャビティ(70mm×50mm×5mm)へ射出した(注湯工程)。この際、プランジャの移動速度:0.4m/sとし、鋳造圧力:65MPaとした。なお、特に断らない限り、金型には工具鋼(JIS SKD61)を用いた。
溶湯の注湯(射出)完了後の所定時期(加圧開始時/射出開始から0.1〜2.1秒後)で、キャビティの中央部(接合部に相当する領域)に設置しておいた加圧ピン(φ17mm)を作動させた。具体的にいうと、予めキャビティの内壁面より7.2mm外側に後退させておいた加圧ピンを271MPaで押圧した。これにより、キャビティ内で初晶(α―Al)が晶出して固液共存状態となっている溶湯の一部を局部的に加圧した。
こうして、Si量の異なる次の3種のAl合金組成からなる板状の鋳物(試料)を得た。いずれの合金組成もAl合金(溶湯)全体を100質量%とした質量割合である。なお、後述する実施例3を除き、合金1からなる鋳物について、以下に示す測定、観察、評価を行った。
合金1:Al―7%Si―0.3%Mg―0.1%Ti
合金2:Al―8.5%Si―0.3%Mg―0.1%Ti
合金3:Al―10%Si―0.3%Mg―0.1%Ti
(2)比較試料として、上述した局部加圧を行わない鋳物も併せて製作した。
(3)SPR接合用に、上述した各鋳物を平面切削した肉厚5mmの試験片を用意した。SPRは、ボロン鋼製、頭部(円盤状部);φ8mm、脚部(円筒部):φ5.3mm×長さ6mm×肉厚1mmを用いた。被接合部材は、70mm×50mm×1mmの鋼板を用いた。
接合は、加圧ピンを配置した領域に対応する試験片の部分(接合部)に、被接合部材を重ねて配置し、被接合部材側からSPRをPOP JOISPND 油圧システムを用いて荷重56kN、速度100mm/sで打鋲した。
《観察》
(1)先ず、比較試料(試料C1/合金1)を用いてSPR接合した様子を図3に示した。図3から明らかなように、局部加圧を行わない領域にSPR接合すると、局所変形の大きな箇所で割れが発生した。
次に、その試料C1と、局部加圧を行った試料(試料11/合金1/加圧開始時:0.6s/固相率:0.5)とについて、SPR接合部を、二つの断面位置で撮影したX線CT写真を図4に示した。図4から明らかなように、局部加圧を行った試料11では、試料C1と異なり、局所変形の大きな箇所にも割れが発生しないことが確認できた。
(2)試料11と試料C1の接合部に相当する領域を光学顕微鏡で観察した金属組織写真を図5に示した。各組織写真をルーゼックス画像解析装置で処理して、初晶(白色部)と共晶(灰色部)の割合から各初晶率を求めた。試料11の初晶率は試料C1の初晶率に対して1.3倍(95%/73%)に増加していることがわかった。
《測定》
試料11と試料C1に係る機械的特性を図6に示した。図6から明らかなように、両試料は引張強さが略同等であるにもかかわらず、試料11は試料C1に対して(破断)伸びが約1.8倍(13.7%/7.7%)にまで急増し、非常に高延性となっていることがわかった。なお、引張試験は、接合部に相当する領域が中央になるように切り出した引張試験片を用いて行った。
以上から、キャビティへの注湯完了後に、所定タイミングで局部加圧を行うことにより、SPR接合しても割れない高延性な接合部を有する鋳物が得られることが確認できた。
[実施例2]
(1)合金1からなる溶湯を用いて、局部加圧する加圧開始時を変更した種々の試料21〜24を製作した。各試料に係る加圧開始時、固相率、および金属組織(マクロ組織とミクロ組織)を図7にまとめて示した。なお、マクロ組織は、断面をそのまま観察したものであるが、ミクロ組織は光学顕微鏡で観察した200倍のものである。
図7に示した固相率は、図8に示した凝固曲線から求めた加圧開始時の溶湯の固相率である。図8に示した冷却曲線は、溶湯のキャビティへの射出開始時からの経過時間と、キャビティ内の溶湯の温度とを実測して求めた。図8に示した固相率は、その実測した冷却曲線に基づいて凝固解析を行い、放出した潜熱量から算出したものである。
ちなみに、加圧ピン圧力を271MPaで押圧した場合、加圧ピンは約0.05秒程度でフルストローク状態となり、その内端面はキャビティの内壁面と面一状態となる。
図7に示した試料21のように、固相率がほぼ0のときに局部加圧を行うと、その加圧部は、初晶Alデンドライト間に共晶ネットワークが存する金属組織となり、局部加圧を行わないときと同様な金属組織となった。
一方、試料22、23のように、固相率が上昇したときに局部加圧を行うと、ほぼ全面が初晶Al相で占められた金属組織が得られた。試料24のように、固相率がかなり高いときに局部加圧を行っても、共晶(Al―Si)が出現するものの、大半が初晶Alで占められた金属組織となった。
(2)試料21〜24に示した鋳物からなる試験片を用いて、実施例1の場合と同様なSPR接合を行った。その際、各試験片に生じる割れの個数を目視によりカウントした。こうして求めた割れの数と、図7に示した各試料の固相率との相関を図9に示した。
図9から明らかなように、固相率が0.2以下のときに局部加圧を行っても初晶率の高い金属組織が得られず、SPR接合時の割れをあまり抑制できないことがわかった。一方、固相率が0.3以上さらには0.4以上となるようなときに局部加圧を行うと、初晶率が高い金属組織が得られ、SPR接合しても割れが殆ど生じないことがわかった。
[実施例3]
実施例1に示した合金1を用いた鋳物(試料11、試料C1)と同様に、合金2を用いた鋳物(試料12、試料C2)および合金3を用いた鋳物(試料13、試料C3)も製作した。
各鋳物から切り出した引張試験片を用いて、それぞれの機械的特性(引張強さと伸び)を測定した。こうして得られた結果を、各合金中に含まれるSi量と関連付けて、図10にまとめて示した。
図10から明らかなように、鋳物中のSi量が少なくなると、初晶Al(α―Al)が増加する一方で共晶が減少するため、(破断)伸びが増加して高延性となる。しかし、Si量が多い場合でも、局部加圧を行うことにより、引張強さを殆ど低下させることなく、十分に大きい伸びを確保できた。
局部加圧した試料12(Si:8.5%)、試料13(Si:10%)に係る伸びから外挿すると、Si:12%のときでも局部加圧を行うことにより、局部加圧をせずにSPR接合時の割れを生じた試料C1(Si:7%)よりも、伸びを高くできることもわかった。従って、局部加圧を行う場合なら、少なくともSi量を12%にしても耐割れ性の確保が可能となり得る。
[実施例4]
銅合金(Cr―Ti銅/熱伝導率:150W/mK)からなる金型を用いて、実施例1の場合と同様に鋳物(試料31)も製造した。
実施例1で用いた工具鋼(SKD61/熱伝導率:29.8W/mK)からなる金型の場合、注湯完了後の冷却速度が666℃/sであった。これは図8に示した冷却曲線で、射出開始からの時間:0.22〜0.232秒の間に溶湯温度が616℃〜608℃に変化していることからわかる。一方、銅合金からなる金型の場合、同様に冷却速度を求めると、1700℃/sであった。
このように、金型の材質変更により、冷却速度を約2.5倍以上変化させた鋳物(試料11と試料31)を得ることができた。なお、各材質の熱伝導率に比例した冷却速度となっていないのは、金型の内壁面と溶湯(鋳物)の界面に存在する熱抵抗のためと考えられる。
各試料に係る鋳物から切り出した試験片を用いて、それぞれ3点曲げ試験を行い、破断するまでのたわみ量と、破断するまでの曲げ強度を測定した。この結果を図11に示した。図11から明らかなように、冷却速度を調整することにより、SPR接合時における塑性変形能の指標値となるたわみ量を増加させて、接合部における耐割れ性を高めることができることがわかった。
各試料に係る鋳物の初晶Al中に固溶しているSi量とMg量を、電子マイクロプローブ装置(EPMA)を用いた測定した。この結果を図12に示した。図12から明らかなように、冷却速度が相対的に小さくてたわみ量の多い鋳物(試料11)は、α―Al中におけるSiとMgの固溶量が相対的に少ないことがわかった。
従って、冷却速度を低くすることにより、初晶Al中における合金元素の固相量が低下し、これによりSPR接合される領域(接合部)の塑性変形能ひいては耐割れ性が高まり得ることがわかった。

Claims (8)

  1. アルミニウム合金の鋳物からなり、塑性変形して機械的に接合される接合部と、接合に関与しない非接合部とを備える接合用アルミニウム合金部材であって、
    前記アルミニウム合金は、全体を100質量%(単に「%」という。)としてSiを6〜12%含み、
    前記接合部は、初晶アルミニウムの存在割合である初晶率が前記非接合部よりも大きい接合用アルミニウム合金部材。
  2. 前記非接合部の初晶率に対する前記接合部の初晶率の比率である初晶比は1.2以上である請求項1に記載の接合用アルミニウム合金部材。
  3. 前記接合部は、前記初晶アルミニウムに含まれる合金元素の固溶量が前記非接合部よりも少ない請求項1または2に記載の接合用アルミニウム合金部材。
  4. 前記非接合部は、共晶ネットワーク組織を有する請求項1〜3のいずれかに記載の接合用アルミニウム合金部材。
  5. アルミニウム合金の鋳物からなり、塑性変形することにより機械的に接合される接合部と接合に関与しない非接合部とを備える接合用アルミニウム合金部材の製造方法であって、
    全体を100%としてSiを6〜12%含むアルミニウム合金の溶湯を鋳型へ注湯する注湯工程と、
    該鋳型内へ注湯された溶湯を冷却して凝固させる冷却工程とを備え、
    さらに、該冷却工程中に、初晶アルミニウムが晶出して固液共存状態となっている該溶湯を、前記接合部に対応する領域で局部的に加圧する局部加圧工程を備える接合用アルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 前記局部加圧工程は、前記溶湯の固相率が0.25〜0.95のときになされる請求項5に記載の接合用アルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 前記冷却工程は、750℃/s以下の冷却速度でなされる請求項5または6に記載の接合用アルミニウム合金部材の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載した接合用アルミニウム合金部材と、
    該接合用アルミニウム合金部材に接合される少なくとも1以上の被接合部材と、
    該被接合部材側を貫通した先端部が前記接合用アルミニウム合金部材の接合部内で塑性変形して該接合用アルミニウム合金部材と該被接合部材を接合する接合具と、
    を備える複合部材。
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