JP2018093557A - 電力伝送システム - Google Patents

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Abstract

【課題】好適なフリーポジション電力伝送システムを実現すること。
【解決手段】送電パネルは、電界結合電力伝送技術における結合容量を形成する電極対を構成する一方の送電電極と、送電電極を駆動する駆動部とを含むブロックを1単位として、複数のブロックが配置され、隣接するブロックの夫々の前記送電電極を駆動する場合には相異なる極性となるように制御する。受電部は、結合容量を形成する電極対を構成する他方の受電電極が複数個配列され、複数の前電電極には方向の異なるダイオードが一対接続され、複数の受電電極の夫々について、対向している送電電極が駆動している場合にその極性を識別して、当該送電電極からの電圧又は電流を整流及び平滑することで、送電電極からの電力を受電して伝送する。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種の負荷に対して電力伝送を行うための電力伝送システムに関する。
本発明者は、電力電送の新たな方式として「電界結合方式」を既に発明し、さらに、当該新たな方式を実現可能な回路の技術(以下、「電界結合電力電送技術」と呼ぶ)について既に発明している(特許文献1参照)。
電界結合電力伝送技術は、2枚の金属板(導電性の板)を対向させて、これら2枚の金属板を電極対としてコンデンサ(このようなコンデンサを以下「接合容量」と呼ぶ)を形成した状態で、高周波電流を流すことで非接触の電力電送を実現する技術である。
電界結合電力電送技術を適用した電力電送システムは、電源からの電力を送電する送電部と、送電部から電力を受電して負荷に供給する受電部とを備えている。この場合、送電部の末端に設けた金属板(電極)と、受電部の先端に設けた金属板(電極)とを対向させることで、接合容量が形成される。
電界結合電力電送技術を適用した従来の非接触の電力伝送システムとしては、直列共振を利用した電力伝送システムが存在する(特許文献2参照)。
図13は、電界結合電力電送技術を適用した従来の非接触式の電力伝送システムの回路図である。
従来の非接触の電力伝送システムにおいて、電力伝送領域100に配置された固定体101は、送電電極105、106を備える。
また、電力被供給領域102に配置された可動体103は、送電電極105、106に対して対向状かつ非接触に配置される受電電極107、108を備える。
これら相互に対向させた送電電極105、106と受電電極107、108とから結合コンデンサ109が構成されている。
結合コンデンサ109と、可動体103に設けられたコイル110とにより直列共振回路が形成される。
交流電源115の周波数をスイッチング制御して共振周波数とすることで、固定体101から可動体103へ共振状態で電力伝送を行うことが可能となる。
この従来の非接触の電力伝送システムでは、受電電極107、108は、送電電極105、送電電極106の相互間に跨ることがないように、送電電極105、106の並設間隔よりも十分に小さくなるように形成される。
しかしながら、この従来の非接触の電力伝送システムでは、可動体103の配置位置によっては、受電電極107、108と送電電極105、106とが相互に鉛直方向に完全に対応する位置に配置されない。その結果、受電電極107、108が送電電極105、106の一部のみに掛かるように配置される場合が生じる。
この場合には、結合コンデンサ109のコンデンサ容量が所定容量からずれてしまい、所定の直列共振条件が満足されないために、送電効率が低下する可能性があった。
このため、本願発明者らは、さらに、直列共振に代えて並列共振を利用した非接触式の電力伝送システムを提案した(特許文献3参照)。
図14は、従来の非接触式の電力伝送システムであって、図13とは異なる電力伝送システムの回路図である。
この従来の非接触式の電力伝送システムにおいて、送電電極105、106にはインダクタ120及びコンデンサ121が並列接続されている。
これらインダクタ120及びコンデンサ121と、結合コンデンサ109とにより並列共振回路が形成される。これにより、固定体101から可動体103へ共振状態で電力伝送を行うことが可能となる。
特に、負荷部のインピーダンスを増大させることができるため、結合コンデンサ109における電圧降下を低減でき、結合コンデンサ109のコンデンサ容量の変動に関わらず安定した電力伝送を可能とすることができる。
この従来の非接触式の電力伝送システムにおいても、受電電極107は、送電電極105、送電電極106の相互間に跨ることがないように、送電電極105、106の並設間隔よりも十分に小さくなるように形成される。
特開2009−38329号公報 特開2009−89520号公報 特開2010−193692号公報
しかしながら、上記特許文献3に記載の電力伝送システムは、送電電極の各々にインダクタ及びコンデンサが並列接続されており、広い範囲に送電電極を並設した場合には、この広い範囲の送電電極を含む共振回路の電流が電源に流れるため、電源の容量が極めて大きくなってしまうという問題があった。
また、従来の非接触の電力伝送システムは、電磁誘導方式であれば、「銅を多用する」「大電力用途では、フリーポジションが難しい」「フェライト及び銅コイルが使用され、重い」、「通信機能を別途用意しなければならず、通信と送電の一体化が得にくい。」といった問題点もさらに有する。
また、磁気共鳴方式であれば、「空間に高周波磁場を分布させるため、導電性ループがあれば発熱させる」、「小電力用途にのみ使用されるとなれば、コンセントとの併用となり、シンブルなシステムではなくなる」、「発熱部位がある」、「通信機能を別途用意しなければならず、通信と送電の一体化が得にくい」といった問題点をさらに有する。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電界結合技術を用いた電力伝送システムにおいて、非接触によるフリーポジション化を達成できる電力伝送システムであって、必要な範囲にのみ共振回路を形成して電流を流すことができ、電磁波放射が少ない、電力伝送システムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し目的を達成するため、電力伝送システムは次のような構成を取ることができる。
本発明の一態様の電力伝送システムは、
電界結合電力伝送技術を用いて電力を伝送する電力電送システムであって、
前記電界結合電力伝送技術における結合容量を形成する電極対を構成する一方の送電電極と、前記送電電極を駆動する駆動部とを含むブロックを1単位として、
複数のブロックが配置され、隣接するブロックの夫々の前記送電電極を駆動する場合には相異なる極性となるように制御する
送電パネルと、
前記結合容量を形成する電極対を構成する他方の受電電極が複数個配列され、
複数の前記受電電極には方向の異なるダイオードが一対接続され、
複数の前記受電電極の夫々について、対向している前記送電電極が駆動している場合にその極性を識別して、当該送電電極からの電圧又は電流を整流及び平滑することで、前記送電電極からの電力を受電して伝送する
受電部と、
を備える電力電送システム。
本発明によれば、電界結合技術を用いた電力伝送システムにおいて、フリーポジション電力伝送システムでありながら、電磁波放射が少ない、感電しにくい、給電部以外の場所には電力伝送されないという高い安全性を持つとともに、伝送効率が高く、人体や機器等との間の電界通信機能も備えることができる。より具体的には、全体として次の点の効果を有する。
(1)完全フリーポジションが、パワースケーラビリティをもって実現できる。図9に示すように、レーザープリンタ、PC、スマートフォン、LEDランプ等の1kWから数Wの幅広い機器に対して、机の任意地点において機能させることが出来る。さらに、相互通信も可能である。
(2)不要な場所での送電が完全停止できるとともに、送電すべき機器とそうでないものが通信により区別できるため、人が送電面に接触していても、害を与えることが無い。なお、送電面に眼球、脳がたとえ近接する様な場合でも、影響がない。
(3)電磁波放射が少ない
オーバーハング及びアンダーレイヤにより、電力伝送に伴う放射電磁波を低減出来る。ただし、低電力の人体通信は、意図的に電磁波を受電体の周りにまとわりつかせて通信させることを狙っている。低電力に限定しているため、人体への影響はない。
(4)感電対策
駆動されている送電電極に人が触れない構造を採用している。受電体を持ち上げた時には、電流量が低減するため、これをモニタしてインバータの動作が停止できる。
万が一、トップコートが剥離しても、強固な絶縁層(酸化膜)が人体の接触に対して感電することを防げる。この様に、多重な安全処置がとられている。
(5)機器の安全設計
各送電電極には、インバータが取り付けられている。トランジスタで、インバータ出力をON/OFFさせるシステムでは、そのトランジスタが壊れた時には電力を送電する方向に動く(危険サイドに動く)が、インバータを搭載している場合には、それが壊れた時には電力送電が停止する(安全サイドに動く)。
(6)資源的問題
材料として、価格上昇の危険性の有る銅の使用が少ないため、資源的影響は受けにくい。標準規格に採用され、全世界的に広がるためには不可欠な要素である。
(7)複数の通信チャネルの装備
送電パネルと受電体間のパワー制御、ロケーションデータの供給、システムモニタ等に使用する通信、各種サーバーとのLANを介した通信、各種サーバーと受電体間の通信の取次等を行うとともに、電界通信機能を設けることにより、人体が保有するモバイル機器との通信制御も可能にする。
(8)システム的対応性
人・環境(建物)・機器・ネットワーク間の通信を可能にするプラットホームとして活用できる。ネットワークを介してファームウェアを変更可能にする等、システム的対応が可能になる。
インバータを分散したことにより、個々のインバータは小さいもので済むため、小型かつ低用量ディバイスも利用可能になる。
フリーポジション電力伝送パネル及び受電体を示す図である。 ブロックの詳細を示す図である。 通信制御部のブロック図を示す図である。 オーバーハングとバックレイヤーによる放射低減を示す図である。 寄生容量による効率低下防止用インダクタンスを示す図である。 送電パネルの中央に受電体がある時の送電パネルの動作を示す図である。 トップコート層を示す図である。 介護ロボットの一例を示す図である。 机上でのフリーポジションの例を示す図である。 電界通信の様子の第1の例を示す図である。 電界通信の様子の第2の例を示す図である。 電界通信の様子の第3の例を示す図である。 従来の非接触の電力伝送システムに係る固定体及び可動体の回路図である。 他の従来の電力伝送システムに係る固定体及び可動体の回路図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
(1) フリーポジション電力伝送パネルと受電体の構造
図1は、フリーポジション電力伝送パネル及び受電体の構造を示す図である。下部に送電パネルがあり、その上に受電部が乗っている。図には記していないが、送電パネルは、取扱い容易なサイズで製作されており、それらが横方向に連続して配置され、テーブル面や床面を構築する(テーブルの場合には、一枚板で作られる場合もある。)。それらの送電パネルには、直流給電されるとともに、LANを介して双方向通信が行えるようになっている。
受電部は、配列された受電電極が有り、個々の受電電極には方向の異なるダイオードが一対接続され、受電電極の一部が正の送電電極の上に乗り、他の部分が負の送電電極に載った場合に、それらを自動的に識別して整流・平滑して負荷に電力を供給でき、一部のエネルギーを蓄電池に蓄えられるようになっている。
さらに、送電パネルとの間で通信が行えるようにしている。
受電部には、シールドカバーで覆われているが、その縁端部はオーバーハングと称して、受電部周辺部をカバーしている。このオーバーハングを用いることにより、操作者は電力が出ている送電電極に触ることが出来ない。
操作者が持ち上げて、送電電極に触ろうとすると、インピーダンスが高くなる。このために、自動的に電力送電は止まる。その結果、操作者はアクティブな電極に触ることが出来ない。
電力伝送に用いる周波数は、MHz帯であり、通信に用いる周波数は、GHz帯である。このため、送電不可能な程度に持ち上げられても、通信は可能であるため、制御系(通信系)が被制御系(送電系)を上回る信頼性が得られる。
通信は、シールドカバーと、受電電極間に電位差を発生させて行う。非接触電力の受電は、受電電極間の電位差を用いているのに対して異なる。
送電パネルは、直流・通信ベースプレート、ブロックアレイ、バックレイヤ、送電電極、トップコート及び、これらを保持するフレーム(図示せず)を含むように構成されている。
直流・通信ベースプレートは、3層構造のパネルであり、上層と下層のパネルは端部で接続されていて、閉構造となっている(シールド構造)。
中間層のパネルと上層パネルの間には、発泡体等の電磁波を透過する材料を用い、非減衰性二次元導波路として機能させている。配列されたブロックの位置に合わせて中間層と上層で突起を作り、同軸構造で外部と接続できるようにしている。
二次元導波路を伝播する電磁波は、物理的な突起のある部分でのみ外部とコンタクトするため、その結合係数は低く設定できるため、非減衰二次元導波路内での多重反射は少ない。また、中間層と下層の間には電波吸収性材料が挟まれていて、減衰性二次元導波路になっている。
さらに、中間層は端部で上層と下層で閉ざされているシールド部には接していない。このため、非減衰性二次元導波路を進んできた電磁波は、ほとんど反射することなく減衰性二次元導波路に導かれる。
減衰性二次元導波路には、電波吸収体が挟まれているため、二次元面内を進行してゆくにつれて減衰する。電波吸収体は、反射を防ぐため、周辺部ではインピーダンスがあまり変わらない程度のものを挟み込み、中央部に進むにつれて吸収特性を上げてゆく。
下層の中央部では、ほとんど電磁波が染み出ないため、開口部を開けても問題ない。
この開口部から、中間層とシールド間に直流電力を給電する。さらに、下層部を貫通して上層部中央部に通信用トランシーバ用のプローブアンテナを立てる。
減衰性二次元導波路は、パネルの幅を利用して、徐々に電磁波を吸収できるため、極めて反射の少ない通信環境が構築できる。
各突起部の先端は、同軸線路となっていて、直流、クロック信号、通信波をブロックに供給できる。各ブロックは、通信制御部、インバータ、インダクタ及びスイッチから構成されている。インバータの周波数、位相を変化させることにより、非接触電力伝送モードと、電界通信モードが切替できるようになっている。各ブロックは、さらに、受電体との通信を可能にするためにバックレイヤを設けている。このバックレイヤは、受電部における放射電界を低減させるためにも有効である。しかしながら、送電電極の近傍に取付けているため、寄生容量が発生してしまい、伝送効率を落としてしまう。これを防止するために、寄生容量と並列共振するインダクタを設けている。
(2) ブロック
各ブロックは、同じ規格で作られているため、量産効果によってコストが低減できるようにしている。さらに、各ブロックは、周辺との間で、11か所の接点で接続される。
このブロックアレイの上には、バックレイヤの穴あき金属パネルが配置され、この穴を介して、各ブロックと送電電極が接続されている。バックレイヤと送電電極の間には、フィルム等で間隔と誘電率が制御されて正確に容量が出るように配慮されている。この容量と非接触電力伝送周波数で共振するように、インダクタの値が決定される。
送電パネルは、直流・通信プレート、ブロックアレイ、バックレイヤと送電電極のパネルの三要素を結ぶだけの構造にしてあり、容易に製造できるように配慮している。さらに、ブロックの厚さに依存するが、これが薄くできるのならば、全体として薄いものを製作できる。
図2は、ブロックの模式図と、平面図を示す図である。
ブロックは、通信制御部とインバータから構成されていて、インバータの天部から送電電極に接続する線が出ている。その線には、通信用のカップリングコンデンサ及び電界通信時の送受切替スイッチが付けられていている。カップリングコンデンサにより、この線を流れる通信信号が通信制御部に流れるようになっている。さら、そこからは、4方向にインダクタが出ていて、隣接ブロックに接続される。
インバータの他方の出力は、4方向に分配されており、その内の2方向にはスイッチが付けられて、隣接ブロックと接続されている。スイッチの切替信号は、通信制御装置から出力されている。
通信制御装置からは、バックレイヤにも線が伸びている。
図3は、通信制御部のブロック図を示す図である。
直流・通信ベースプレートから直流電力をもらうとともに、通信信号を送受している。直流電力には、同期信号も重畳している。
電力の一部はバッテリに蓄え、その電力をCPU、トランシーバ、ゲートドライバ等に給電している。通信信号線はトランシーバに接続されている。同期信号は、BPFで分離されて波形整形回路で整形され、CPUに送られている。
トランシーバを介して、サーバーからの信号を受けたり、隣接ブロックとの調整を行っている。さらに、トランシーバは受電体との間でも通信を行っているため、受電体側の都合による送電停止要求を受けたり、受電体が単なる金属片であるか否かも認知して送電できる。インバータに、送電電流モニタ機能を設けていれば、送電流が正常範囲内であるか認識できる。送電電流が低減した場合には、直ちにゲートドライバの出力を停止してインバータ出力を停止できる。
クロック信号は、直流送電線に重畳され、各送電パネルの位相を合わせている。これにより、送電パネル間でシームレスに非接触電力伝送及び電界通信が可能になる。
インバータ用のゲートドライバは、インバータを構成するトランジスタに所定の周波数及び位相のゲート信号を流したり、インバータを電界通信用のジェネレータに使用する場合には、送信信号で変調する。
スイッチコントローラは、ブロックと連接ブロック間のスイッチ操作、インバータを電力伝送用として使用する場合と、電界通信用として使用する場合の回路の切替、さらに、電界通信として使用する場合でも送信モードと受信モードの切替を行っている。
電界通信用レシーバは、電界通信によって受け取った信号をデータ化してCPUに送信する。
CPUは、統合的管理、センサデータによる状況判定、データの受け渡しと一時的保管機能も果たす。メモリ等は特に記していないが、当然の機能として含まれているものとする。
(3) 電磁波放射低減対策
フリーポジション電力送電パネルは、数kW程度の機器まで動かすことを考えている。例えば、レーザープリンタ、鉄板焼き機器、トースター、ラミネータ、ジューサー等がある。これらの機器まで動かすことが出来れば、システムの単純化が出来る。
低い電力の機器のみフリーポジションで動かす他システムの場合には、大電極機器はコンセントから電力を取る必要がある。このため、新しい送電インターフェースであるフリーポジション電力伝送機器と在来のコンセントが混在することになり、シンプルで美しいシステムにはならない。
コンセントを一掃してシンプルなシステムにするためには、大電力機器を使用した時でも、電磁波放射が低減できなければならない。その様な対策として、受電体を被うシールドカバーとその周縁部に設けたオーバーハングが必要になる。さらに、送電電極の下部に設けたバックレイヤが必要になる。
すなわち、図4(a)に示すように、送電電極の駆動電極と非駆動電極の境界部において、オーバーハングとバックレイヤと非駆動送電電極が、駆動している電極の極性と逆の極性で電荷が発生する。しかし、オーバーハングが非駆動送電電極まで延びていれば、駆動されている送電電極の極性と、駆動電極が誘導する周囲の逆極性電荷の間に生ずる電界は、空間に出ることなく封じ込められる。空間との端面では同一電極に帯電されたオーバーハング、非駆動送電電極、バックレイヤがあるため、空間に変位電流が流れない。
図4(b)は、シールドカバーやバックレイヤが無いときの様子を示す図である。バックレイヤが無ければ、異なる電荷で帯電された(位相の反転する)駆動送電電極間で上下に電界が発生して電磁波を放射し、下側に放射された電磁波も送電電極の隙間から空間に放射される。シールドカバーが無いときには、駆動された送電電極と受電電極間、駆動された送電電極と非駆動送電電極間に電界が発生して電磁波を空間に放射する。
シールドカバーがあってオーバーハングが無いときにも、駆動された送電電極とシールドカバー間に電界が発生し、電磁波が放射される。
オーバーハングとバックレイヤ及び非駆動送電電極で駆動送電電極を挟み込むことにより放射電磁界が低減できる。
(4) 寄生容量による効率低減防止用インダクタス
バックレイヤによって放射電磁界が低減できるのは、バックレイヤが送電電極の近傍にあるからである。しかし、これでは送電電極とバックレイヤ間に寄生容量が発生してしまう。この寄生容量により、非接触電力送電する際に送電パネル内で電流が流れてしまい、送電効率が低減してしまう。
これを防止するために、図5に示すように、各ブロックは隣接ブロックとの間にインダクタンスを設ける。これにより、図5に示すように隣接ブロックのインバータが逆極性で動作しても、漏洩キャパシタンスとインダクタンスで並列共振を起こさせれば、送電周波数においてインピーダンスが高くなるため、送電ロスが低減できる。
さらに、インバータの極性を逆極性で動作させるため、電圧を二倍にすることが出来、送電電力を大きくすることが出来る。
ブロックにインダクタを組込み、組立作業の単純化を図るためには、インダクタが小さく直列抵抗も小さいものが好ましい。このためには、寄生容量を大きく安定化させる必要がある。このためには、送電電極とバックレイヤ間にシート状の誘電材を挟み込んで一体化しておくことが必要である。
この部分の共振周波数は、式(1)で示すようになる。

・・・(1)
送信周波数fに対して、LC=constの関係にあるため、Cを大きくすれば、Lは小さい値で済む。Lが小さければ、Lの抵抗も小さくなり損失が低減する。このため、適度な範囲でCを大きくする構造を採用することが好ましい。
(5)送電パネル動作の説明
図6は、送電パネルの平面図を示す図である。中央に、受電体が置かれている。受電体には、3×4の送電電極が正極と負極の電圧を市松模様状に替えて駆動している。この部分のブロックは、隣接ブロック間のスイッチをOnにして接続させている。さらに、隣接するインバータの位相を反転させて駆動している。
オーバーハング部のインバータは、電界通信用の周波数で駆動し、その外側ではオーバーハング部を取り囲むように、逆位相の電界通信用周波数で駆動している。これにより、受電体は電界通信用の電界で取り囲まれ、通信機器を動作させることが可能になる。なお、電界通信用の駆動素子の配列は、下記のように周辺部に限定されるものではなく、用途に応じて任意の配置が取れるものとする。
(6) 感電対策
その他配慮事項としては、感電防止策がある。
オーバーハングを設けているため、駆動電極は完全に包囲されていて、人が触ることは出来ない。
送電パネルと受電体間の通信で受電装置を認識してから送電を開始するため、単に金属板が置かれても動作はしない。人がいても、その部分の送電電極が駆動することはない。
図7に示すように、送電電極の表面には、凹凸構造があってその表面は酸化膜でおおわれている。さらに、凹凸部にトップコート層がアンカー効果によって接着されているため、強固な膜が形成されている。トップコート層が剥離したとしても、酸化膜が残るため、人体は電極と直接接することはない。
(7) ロボットの動作支援
本送電パネルをロボットに応用した場合には、図8に示す介護用ロボットに電力を供給する。しかし、図8のロボットのように、低面積の小さいロボットは、人を支える際に倒れてしまう。これを防止するために、支え構造が展開される方式もあるが、場所を取られてしまうとともに、支え構造を展開することが出来ない場面もある。
このためロボット底面に磁石を有し、必要時には床面に吸着して作業を行う方式も考えられる。他方、吸盤で吸着する方法も考えられる。また、ハイブリッド型として吸盤の周囲部が磁石で吸い付く方式も考えられる。
磁気吸着方式を用いる場合には、送電電極が強磁性体で形成されている必要がある。さらに、吸着盤方式に対応するためには、空気が漏れない平坦度と密閉性を有する必要がある。
送電電極が強磁性体で作られている場合には、送電パネルを壁に取り付け、磁気的に機器を取り付けて固定して送電することもできる。この様な場合には、任意の場所に機器の再配置も可能になる。
人体をモデルにした電界通信(人体通信)の図を追加する。
足の下部のインバータと周辺のインバータの位相を反転させると、図10に示すように、人体にまとわりつくように、電場が発生する。人がポータブル機器を保有し、ポータブル機器内に電界が受けられる機構があれば、ポータブル機器と電力伝送床間で通信が行える。
ただし、床のインバータの発振形態は、図10に限定されず、図11や図12の場合もあり得る。
図11は、受電体の下部のインバータは動作させずに、周辺部のみ動作させた場合を示す図である。これでも動作させられると考えられる。バックレイヤがグランドとして機能する。
図12は、対象物に対して前後左右で位相を反転させた場合を示す図である。この場合には、ヌル点が存在するため、反転させる送電電極の動作パターンを変化させる必要がある。
フリーポジション電力伝送パネル及び受電体の構造

Claims (1)

  1. 電界結合電力伝送技術を用いて電力を伝送する電力電送システムであって、
    前記電界結合電力伝送技術における結合容量を形成する電極対を構成する一方の送電電極と、前記送電電極を駆動する駆動部とを含むブロックを1単位として、
    複数のブロックが配置され、隣接するブロックの夫々の前記送電電極を駆動する場合には相異なる極性となるように制御する
    送電パネルと、
    前記結合容量を形成する電極対を構成する他方の受電電極が複数個配列され、
    複数の前記受電電極には方向の異なるダイオードが一対接続され、
    複数の前記受電電極の夫々について、対向している前記送電電極が駆動している場合にその極性を識別して、当該送電電極からの電圧又は電流を整流及び平滑することで、前記送電電極からの電力を受電して伝送する
    受電部と、
    を備える電力電送システム。
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